説明

GLP−1医薬組成物

【課題】より容易にかつ信頼可能的に製造されて、より容易かつ再現可能的に患者へ投与されて、そして望まれない副作用を低下又は消失させるために低下した初期血漿濃度を提供するGLP−1製剤。
【解決手段】グルカゴン様ペプチド−1のペプチド類似体、その医薬的に許容される塩、哺乳動物を治療するためにそのような類似体を使用する方法、並びに、その故に有用な前記類似体を含んでなる医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカゴン様ペプチド−1のペプチド類似体、その医薬的に許容される塩、哺乳動物を治療するためにそのような類似体を使用する方法、並びに、その故に有用な前記類似体を含んでなる医薬組成物へ向けられる。
【背景技術】
【0002】
グルカゴン様ペプチド−1(7−36)アミド(GLP−1)は、グルカゴン前駆体のプレプログルカゴンの組織特異的な翻訳後プロセシングにより腸のL細胞において合成され(Varndell, J. M., et al., J. Histochem Cytochem, 1985:33:1080-6)、食事に応答して循環中へ放出される。GLP−1の血漿濃度は、絶食レベルのほぼ15ピコモル/Lから食後ピークレベルの40ピコモル/Lへ上昇する。血漿グルコース濃度におけるある一定の上昇に対し、血漿インスリンの増加は、グルコースを経口で投与するとき、静脈内と比較してほぼ3倍高いことが証明されている(Kreymann, B., et al., Lancet 1987:2, 1300-4)。インクレチン(incretin)効果として知られる、このインスリン放出の食事性の亢進は、主として体液性であり、GLP−1は、ヒトにおいて最も強力な生理学的インクレチンであると今日考えられている。向インスリン効果に加えて、GLP−1は、グルカゴン分泌を抑制し、胃の空洞化を遅らせ(Wettergren A., et al., Dig Dis Sci 1993:38:665-73)、末梢のグルコース処理を高める可能性がある(D'Alessio, D. A. et al., J. Clin Invest 1994:93:2293-6)。
【0003】
1994年に、GLP−1の単回皮下(s/c)投薬によってインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)の患者の食後血糖値が完全に正常化され得るという観察に従って、GLP−1の治療ポテンシャルが示唆された(Gutniak, M. K., et al., Diabetes Care 1994:17:1039-44)。この効果は、インスリン放出の増加とグルカゴン分泌の低下の両方により仲介されると考えられた。さらに、GLP−1の静脈内注入は、NIDDMの患者において食後の胃空洞化を遅らせることが示された(Williams, B., et al., J. Clin Endo Metab 1996:81:327-32)。スルホニル尿素と異なり、GLP−1の向インスリン作用は、血漿グルコース濃度に依存する(Holz, G. G. 4th, et al., Nature 1993: 361: 362-5)。従って、低い血漿グルコース濃度ではGLP−1仲介性インスリン放出がないことにより、重篤な低血糖症に抗して保護される。こういった作用の組合せは、NIDDMを治療するために今日使用されている他の薬剤に優る独自の潜在的な療法上の利点をGLP−1に与える。
【0004】
数多くの研究により、健常被検者へ与えるとき、GLP−1は、インスリン及びグルカゴンの濃度だけでなく、血糖値にも強力に影響を及ぼし(Orskov, C. Diabetologia 35:701-711, 1992;「実験薬理学要覧、グルカゴンIII(Glucagon III, Handbook of Experimental Pharmacology)」(Lefevbre PJ 監修、ベルリン、Springer Verlag, 1996)中、Holst, J. J., et al.,「糖尿病管理におけるGLP−1の潜在可能性(Potential of GLP-1 in diabetes management)」(311-326頁))、この効果がグルコース依存性である(Kreymann, B., et al., Lancet ii: 1300-1304, 1987; Weir, G. C., et al., Diabetes 38:338-342, 1989)ことが示されている。さらに、これは、糖尿病の患者にも有効であり(Gutniak, M., N. Engl J Med 226:1316-1322, 1992; Nathan, D. M. et al., Diabetes Care 15:270-276, 1992)、2型糖尿病の被検者の血糖値を正常化し(Nauck, M. A., et al., Diagbetologia 36:741-744, 1993)、1型患者の血糖コントロールを改善し(Creutzfeldt, W. O., et al., Diabetes Care 19:580-586, 1996)、その治療薬剤としての使用の可能性を高めている。
【0005】
しかしながら、GLP−1は、代謝的に不安定であり、in vivo では1〜2分の血漿半減期(t1/2)しか有さない。外因的に投与したGLP−1も、速やかに分解される(Deacon, C. F., et al., Diabetes 44: 1126-1131, 1995)。この代謝不安定性により、ネイティブGLP−1の治療ポテンシャルは制限される。
【0006】
GLP−1とその類似体の治療ポテンシャルを製剤における改善を通して改善するために、いくつかの試みがなされてきた。例えば、国際特許公開公報番号WO01/57084は、結晶と医薬的に許容される担体を含んでなる、注射可能な医薬品のような医薬組成物の調製に有用であると言われるGLP−1類似体の結晶を生成する方法を記載する。GLP−1(7−37)OHの不均質な微結晶性クラスターを生理食塩水溶液より成長させて、亜鉛及び/又はm−クレゾールでの結晶浸漬処理の後で試験した(Kim and Haren, Pharma. Res. Vol. 12 No. 11 (1995))。針状結晶と非結晶性の沈殿を含有するGLP(7−36)NH2の粗結晶懸濁液が亜鉛又はプロタミンを含有するリン酸溶液より調製された(Pridal, et. al., International Journal of Pharmaceutics Vol. 136, pp. 53-59 (1996))。ヨーロッパ特許公開公報番号EP0619322A2は、塩類と低分子量ポリエチレングリコール(PEG)のある種の組合せを含むpH7〜8.5の緩衝液において上記タンパク質の溶液を混合することによる、GLP−1(7−37)OHの微結晶型の調製を記載する。米国特許第6,566,490号は、精製ペプチド生成物の生成に役立つと言われる、GLP−1の種となる微結晶について特に記載する。米国特許第6,555,521(US521)号は、改善された純度を有して、延長されたin vivo活性を明示すると言われる、正方晶系の平棒又は板状の形を有するGLP−1結晶を開示する。US521号は、そのような結晶が、速やかに固まって、一緒に凝集又は密集し、シリンジ針を詰まらせ、予測不能な投薬を概して悪化させると言われた、先行の結晶性クラスターや無定形の結晶性懸濁液よりも相対的に均質であり、より長い時間の間、懸濁状態のままであることを教示する。
【0007】
生物分解性トリブロックコポリマーのポリ[(dl−ラクチド−コグリコリド)−b−エチレングリコール−b−(−ラクチド−コグリコリド)]がGLP−1の制御放出製剤における使用を示唆されたことがある。しかしながら、他のポリマー系と同じように、トリブロックコポリマーの製造には、複雑なプロトコールと一貫性のない微粒子形成が伴う。
【0008】
同様に、生物分解性ポリマー、例えば、ポリ(乳酸−コグリコール酸)(PLGA)も、ペプチドの持続送達製剤における使用を示唆されたことがある。しかしながら、このような生物分解性ポリマーの使用は、一般に、これらのポリマーが水において乏しい溶解度を有し、水と混和不能の有機溶媒(例えば、塩化メチレン)及び/又は製造の間の厳しい調製条件を必要とするので、当該技術分野では好まれていない。そのような有機溶媒及び/又は厳しい調製条件は、目的のペプチド又はタンパク質のコンホメーション変化を誘発するリスクを高めて、構造の完全性の減少と生物学的活性の低下をもたらすとみなされている(Choi et al., Pharm. Research, Vol. 21, No. 5, (2004))。ポロキサマーも同様に欠点があるとされた(同上)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許公開公報番号WO01/57084
【特許文献2】EP0619322A2
【特許文献3】USP6,566,490B
【特許文献4】USP6,555,521B
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Kim and Haren, Pharma. Res. Vol. 12 No. 11 (1995)
【非特許文献2】Pridal, et. al., International Journal of Pharmaceutics Vol. 136, pp. 53-59 (1996)
【非特許文献3】Choi et al., Pharm. Research, Vol. 21, No. 5, (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
先述の参考文献に記載されたGLP−1組成物は、不純物を捕捉する傾向があり、及び/又は、他にも、再現可能的に製造して投与することが難しいので、GLPの医薬製剤を調製するのに理想的とは言えない。また、GLP類似体は、上昇濃度で嘔吐を誘発することが知られているので、初期の血漿濃度が低下した持続的な医薬効果を提供する必要がある。従って、より容易にかつ信頼可能的に製造されて、より容易かつ再現可能的に患者へ投与されて、そして望まれない副作用を低下又は消失させるために低下した初期血漿濃度を提供するGLP−1製剤へのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要約
本発明は、以下のパラグラフ(1)〜(67)、並びに特許請求項において以下に要約することができる。従って:
(1)1つの側面において、本発明は、グルカゴン様ペプチド−1、エキセンディン−4、及びこれらの類似体及び誘導体からの少なくとも1つの向インスリン分子を含んでなり、その水溶解度が、6と8の間のpHと約4〜40℃で1mg/mL未満、好ましくは0.5mg/mL未満である医薬組成物へ向けられる。
(2)好ましくは、前記の向インスリン分子は、約5〜9、より好ましくは約6〜8の等電点を有し、但し分子は、ヒトGLP−1(7−36)NH2でもヒトGLP−1(7−37)−OHでもない。
【0013】
(3)1つの態様において、本発明は、水をさらに含んでなる、パラグラフ(1)に記載の組成物を特徴とする。
(4)非水媒体をさらに含んでなる、パラグラフ(1)〜(3)のいずれか1つに記載の組成物。
【0014】
(5)分子が7未満、好ましくは5未満のpHの水溶液に存在する、パラグラフ(1)〜(4)のいずれか1つに記載の組成物。
【0015】
(6)分子が4.5以下のpHの澄明溶液に存在する、パラグラフ(1)〜(5)のいずれか1つに記載の組成物。
【0016】
(7)分子が7より高い、好ましくは8より高いpHの水溶液に存在する、パラグラフ(1)〜(4)のいずれか1つに記載の組成物。
【0017】
(8)分子が10以上のpHの澄明溶液に存在する、パラグラフ(7)に記載の組成物。
【0018】
(9)分子の粒子が水性懸濁液又はゲルに存在する、パラグラフ(1)〜(4)のいずれか1つに記載の組成物。
【0019】
(10)分子の粒子が約4〜10のpHの水性懸濁液又はゲルに存在する、パラグラフ(9)に記載の組成物。
【0020】
(11)分子の粒子が非水媒体に存在する、パラグラフ(1)〜(3)のいずれか1つに記載の組成物。
【0021】
(12)分子が約0.001〜500mg/mL、好ましくは約0.1〜10mg/mLの濃度で存在する、パラグラフ(1)〜(11)のいずれか1つに記載の組成物。
【0022】
(13)保存剤をさらに含んでなる、パラグラフ(1)〜(12)のいずれか1つに記載の組成物。
【0023】
(14)前記保存剤が、m−クレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、及びメチルパラベンからなる群より選択される、パラグラフ(13)に記載の組成物。
【0024】
(15)前記保存剤が0.01mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、パラグラフ(14)に記載の組成物。
【0025】
(16)等張剤をさらに含んでなる、パラグラフ(1)〜(15)のいずれか1つに記載の組成物。
【0026】
(17)前記等張剤が0.01mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、パラグラフ(1)〜(16)に記載の組成物。
【0027】
(18)二価イオン、好ましくは亜鉛をさらに含んでなる、パラグラフ(1)〜(17)のいずれか1つに記載の組成物。
【0028】
(19)前記亜鉛が0.0005mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、パラグラフ(18)に記載の組成物。
【0029】
(20)安定化剤をさらに含んでなる、パラグラフ(1)〜(19)のいずれか1つに記載の組成物。
【0030】
(21)前記安定化剤が、イミダゾール、アルギニン、及びヒスチジンからなる群より選択される、パラグラフ(20)に記載の組成物。
【0031】
(22)界面活性剤をさらに含んでなる、パラグラフ(1)〜(21)のいずれか1つに記載の組成物。
【0032】
(23)キレート剤をさらに含んでなる、パラグラフ(1)〜(22)のいずれか1つに記載の組成物。
【0033】
(24)緩衝剤をさらに含んでなる、パラグラフ(1)〜(23)のいずれか1つに記載の組成物。
【0034】
(25)前記緩衝剤が、Tris、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、グリシン、アスパラギン酸、及びBis−Trisからなる群より選択される、パラグラフ(24)に記載の組成物。
【0035】
(26)塩基性ポリペプチドをさらに含んでなる、パラグラフ(1)〜(25)のいずれか1つに記載の組成物。
【0036】
(27)前記塩基性ポリペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、プロタミン、プトレシン、スペルミン、スペルミジン、及びヒストンからなる群より選択される、パラグラフ(26)に記載の組成物。
【0037】
(28)アルコール又は単糖若しくは二糖をさらに含んでなる、パラグラフ(1)〜(27)のいずれか1つに記載の組成物。
【0038】
(29)前記アルコール又は単糖若しくは二糖が、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセロール、トレハロース、マンニトール、グルコース、エリスロース、リボース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、スクロース、及びラクトースからなる群より選択される、パラグラフ(28)に記載の組成物。
【0039】
(30)硫酸アンモニウムをさらに含んでなる、パラグラフ(1)〜(29)のいずれか1つに記載の組成物。
【0040】
(31)分子が、L若しくはD−Arg及びL若しくはD−hArgからなる群より選択される少なくとも2つの残基を有するGLP−1類似体及び誘導体からなる群より選択される、パラグラフ(1)〜(30)のいずれか1つの組成物。
【0041】
(32)分子が、残基26及び34の少なくとも1つがL若しくはD−Arg又はL若しくはD−hArgであるGLP−1類似体及び誘導体からなる群より選択される、パラグラフ(31)の組成物。
【0042】
(33)前記GLP−1類似体が、式(I):
【0043】
【化1】

【0044】
[式中:
7は、L−Hisであるか又は欠失され;
8は、Ala、D−Ala、Aib、Gly、Ser、Gly、β−Ala、Val、Acc、N−Me−Ala、N−Me−D−Ala又はN−Me−Glyであり;
9は、Glu、N−Me−Glu、N−Me−Asp又はAspであり;
10は、Gly、Acc、β−Ala又はAibであり;
11は、Thr又はSerであり;
12は、Phe、Acc、Aic、Aib、3Pal、4Pal、1Nal、2Nal、Cha、Trp又は(X1n−Pheであり;
13は、Thr又はSerであり;
14は、Ser又はAibであり;
15は、Asp又はGluであり;
16は、Val、Acc、Aib、Leu、Ile、Tle、Nle、Abu、Ala、1Nal、2Nal又はChaであり;
17は、Ser又はThrであり;
18は、Ser又はThrであり;
19は、Tyr、Cha、Phe、3Pal、4Pal、Acc、1Nal、2Nal又は(X1n−Pheであり;
20は、Leu、Acc、Aib、Nle、Ile、Cha、Tle、Val、Phe、1Nal、2Nal又は(X1n−Pheであり;
21は、Glu又はAspであり;
22は、Gly、Acc、β−Ala又はAibであり;
23は、Gln又はAsnであり;
24は、Ala、Aib、Val、Abu、Tle又はAccであり;
25は、Ala、Aib、Val、Abu、Tle又はAccであり;
26は、Lys、Arg、hArg、Orn、Dab、又はDapであり;
27は、Glu又はAspであり;
28は、Phe、3Pal、4Pal、1Nal、2Nal、Aic、Acc、Aib、Cha、Trp又は(X1n−Pheであり;
29は、Ile、Acc、Aib、Leu、Nle、Cha、Tle、Val、Abu、Ala、Phe、1Nal、2Nal又は(X1n−Pheであり;
30は、Ala、Aib又はAccであり;
31は、Trp、2Nal、3Pal、4Pal、Phe、Acc、Aib、Cha又は(X1n−Pheであり;
32は、Leu、Acc、Aib、Nle、Ile、Cha、Tle、1Nal、2Nal、Phe、(X1n−Phe又はAlaであり;
33は、Val、Acc、Aib、Leu、Ile、Tle、Nle、Cha、Ala、1Nal、2Nal、Phe、Abu、Lys又は(X1n−Pheであり;
34は、Lys、Arg、hArg、Orn、Dab又はDapであり;
35は、Gly、β−Ala、Gaba、Ava、HN−CH(CH2m−C(O)、Aib、Acc、D−アミノ酸であるか又は欠失され;
36は、L若しくはD−Arg、D若しくはL−Lys、D若しくはL−hArg、D若しくはL−Orn、L若しくはD−Dab、L若しくはD−Dapであるか又は欠失され;そして
37は、Gly、β−Ala、Gaba、Ava、Aib、Acc、Ado、Aun、Aec、D−アミノ酸であるか又は欠失され;
1は、それぞれの出現につき、それぞれの出現につき独立して、(C1〜C6)アルキル、OH、又はハロゲンであり;
nは1、2、3、4又は5であり;
1は、OH、NH2、(C1〜C30)アルコキシ、又はNH−X2−CH2−Z0である{ここでX2は、(C1〜C12)炭化水素部分であり、Z0は、H、OH、CO2H又はCONH2である}]による化合物である、パラグラフ(32)の組成物。
【0045】
(34)前記GLP−1類似体が式:
【0046】
【化2】

【0047】
【化3】

【0048】
【化4】

【0049】
による化合物である、パラグラフ(33)に記載の組成物。
【0050】
(35)より好ましい態様において、本発明は、前記GLP−1類似体が式:
【0051】
【化5】

【0052】
による化合物である、パラグラフ(34)に記載の組成物を特徴とする。
【0053】
(36)なおより好ましい態様において、本発明は、前記GLP−1類似体が式:
【0054】
【化6】

【0055】
による化合物である、パラグラフ(34)に記載の組成物を特徴とする。
【0056】
(37)GLP−1受容体からのアゴニスト効果をその必要な被検者において誘発する方法であって、該方法は、パラグラフ(1)又はパラグラフ(33)に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩の有効量を前記被検者へ投与することを含む。
【0057】
(38)I型糖尿病、II型糖尿病、肥満、グルカゴノーマ、気道の分泌障害、代謝障害、関節炎、骨粗鬆症、中枢神経系疾患、再狭窄、及び神経変性疾患からなる群より選択される疾患を治療の必要な被検者において治療する方法であって、該方法は、パラグラフ(1)に記載の組成物又はその医薬的に許容される塩の有効量を前記被検者へ投与することを含む。好ましくは、前記疾患は、I型糖尿病又はII型糖尿病である。
【0058】
(39)本発明の製剤に使用の式(I)の別のより好ましい化合物は、本開示の「実施例」セクションにおいて下記に具体的に例示されるそれぞれの化合物、又はその医薬的に許容される塩である。
【0059】
(40)なお別の側面において、本発明は、GLP−1受容体からのアゴニスト効果をその必要な被検者において誘発する方法を提供し、該方法は、上記に定義される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の有効量を含んでなる、本発明の製剤を前記被検者へ投与することを含む。
【0060】
(41)さらなる側面において、本発明は、I型糖尿病、II型糖尿病、肥満、グルカゴノーマ、気道の分泌障害、代謝障害、関節炎、骨粗鬆症、中枢神経系疾患、再狭窄、神経変性疾患、腎不全、鬱血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺浮腫、高血圧、及び食物摂取の抑制が所望される障害からなる群より選択される疾患を治療の必要な被検者において治療する方法を提供し、該方法は、上記に定義される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の有効量を含んでなる、本発明の製剤を使用のために前記被検者へ投与することを含む。直前の方法の好ましい方法は、治療する疾患がI型糖尿病又はII型糖尿病である場合である。
【0061】
(42)なおより好ましい側面において、本発明は、パラグラフ(40)又は(41)による方法を特徴とし、ここで前記組成物は、[Aib8,35,Arg26,34,Phe31]hGLP−1(7−36)NH2の塩と亜鉛の塩から本質的になり、より好ましくは、ここで前記組成物のpHは7.0未満、なおより好ましくは、5.0未満、なおより好ましくは、4.0未満である。
【0062】
(43)より好ましい態様において、本発明は、[Aib8,35,Arg26,34,Phe31]hGLP−1(7−36)NH2の濃度が0.5〜8.0mg/ml、より好ましくは約2.0〜約6.0mg/ml、なおより好ましくは約3.5〜5.5mg/ml、なおさらにより好ましくは約4.0mg/mlである、パラグラフの組成物を特徴とする。
【0063】
(44)本発明のさらに好ましい態様を以下のパラグラフ(45)〜(77)に記載する:
(45)亜鉛とGLP−1又はエキセンディン−4の類似体を含んでなる澄明溶液又はゲルの医薬組成物。
【0064】
(46)被検者への皮下投与後に沈殿を生成する、パラグラフ(45)に記載の医薬組成物。
【0065】
(47)水をさらに含んでなる、パラグラフ(46)に記載の組成物。
【0066】
(48)非水媒体をさらに含んでなる、パラグラフ(46)及び(47)のいずれか1つに記載の組成物。
【0067】
(49)分子が2.5と10.5の間、好ましくは3.5と8の間のpHの水溶液に存在する、パラグラフ(47)〜(48)のいずれか1つに記載の組成物。
【0068】
(50)分子が約0.001〜500mg/mL、好ましくは約0.1〜10mg/mLの濃度で存在する、パラグラフ(46)〜(49)のいずれか1つに記載の組成物。
【0069】
(51)保存剤をさらに含んでなる、パラグラフ(46)〜(50)のいずれか1つに記載の組成物。
【0070】
(52)前記保存剤が、m−クレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、及びメチルパラベンからなる群より選択される、パラグラフ(51)に記載の組成物。
【0071】
(53)前記保存剤が0.01mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、パラグラフ(52)に記載の組成物。
【0072】
(54)等張剤をさらに含んでなる、パラグラフ(45)〜(53)のいずれか1つに記載の組成物。
【0073】
(55)前記等張剤が0.01mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、パラグラフ(54)に記載の組成物。
【0074】
(56)前記亜鉛が0.0005mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、パラグラフ(46)〜(55)のいずれか1つに記載の組成物。
【0075】
(57)安定化剤をさらに含んでなる、パラグラフ(46)〜(56)のいずれか1つに記載の組成物。
【0076】
(58)前記安定化剤が、イミダゾール、アルギニン、及びヒスチジンからなる群より選択される、パラグラフ(57)に記載の組成物。
【0077】
(59)界面活性剤をさらに含んでなる、パラグラフ(46)〜(58)のいずれか1つに記載の組成物。
【0078】
(60)キレート剤をさらに含んでなる、パラグラフ(46)〜(59)のいずれか1つに記載の組成物。
【0079】
(61)緩衝剤をさらに含んでなる、パラグラフ(46)〜(60)のいずれか1つに記載の組成物。
【0080】
(62)前記緩衝剤が、Tris、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、グリシン、アスパラギン酸、及びBis−Trisからなる群より選択される、パラグラフ(61)に記載の組成物。
【0081】
(63)塩基性ポリペプチドをさらに含んでなる、パラグラフ(46)〜(62)のいずれか1つに記載の組成物。
【0082】
(64)前記塩基性ポリペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、プロタミン、プトレシン、スペルミン、スペルミジン、及びヒストンからなる群より選択される、パラグラフ(63)に記載の組成物。
【0083】
(65)アルコール又は単糖若しくは二糖をさらに含んでなる、パラグラフ(46)〜(64)のいずれか1つに記載の組成物。
【0084】
(66)前記アルコール又は単糖若しくは二糖が、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセロール、トレハロース、マンニトール、グルコース、エリスロース、リボース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、スクロース、及びラクトースからなる群より選択される、パラグラフ(65)に記載の組成物。
【0085】
(67)(Aib8,35,Arg26,34,Phe31)hGLP−1(7−36)NH2;又はその医薬的に許容される塩を含んでなる、パラグラフ(46)〜(66)のいずれか1つに記載の組成物。
【0086】
(68)式:[Aib8,35,Arg26,34,Phe31]hGLP−1(7−36)NH2による類似体、又はその医薬的に許容される塩から本質的になる医薬組成物。
【0087】
(69)固形ミクロ錠剤の形態である、パラグラフ(68)に記載の医薬組成物。
【0088】
(70)水をさらに含んでなり、半固体を生成する、パラグラフ(68)に記載の医薬組成物。
【0089】
(71)ほぼ25%(重量/重量)の(Aib8,35,Arg26,34,Phe31)hGLP−1(7−36)NH2を含有する、パラグラフ(70)に記載の半固体の医薬組成物。
【0090】
(72)式:
【0091】
【化7】

【0092】
による類似体、またはこれを亜鉛と医薬的に許容される担体又は希釈剤と一緒に含んでなる医薬組成物。
【0093】
(73)前記亜鉛が0.0005mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、パラグラフ(72)に記載の組成物。
【0094】
(74)前記亜鉛が0.01mg/mL〜0.50mg/mLの濃度で存在する、パラグラフ(73)に記載の組成物。
【0095】
(75)前記希釈剤が医薬的に許容される水溶液を含む、パラグラフ(72)に記載の組成物。
【0096】
(76)前記希釈剤が滅菌水を含む、パラグラフ(75)に記載の組成物。
【0097】
(77)I型糖尿病、II型糖尿病、肥満、グルカゴノーマ、気道の分泌障害、代謝障害、関節炎、骨粗鬆症、中枢神経系疾患、再狭窄、神経変性疾患、腎不全、鬱血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺浮腫、高血圧、及び食物摂取の抑制が所望される障害からなる群より選択される疾患を治療の必要な被検者において治療する方法であって、該方法は、パラグラフ(43)と(45)〜(76)のそれぞれに記載のものを含んでなる製剤のリストより、その出現について独立的に選択される製剤を前記被検者へ投与することを含む。直前の方法の好ましい方法は、治療する疾患がI型糖尿病又はII型糖尿病である場合である。
【0098】
N末端のアミノ酸を例外として、本開示におけるアミノ酸のあらゆる略字(例、Ala)は、−NH−CH(R)−CO−の構造を表し、ここでRは、アミノ酸の側鎖である(例、AlaではCH3)。N末端アミノ酸では、略字が(R23)−N−CH(R)−CO−の構造を表し、ここでRはアミノ酸の側鎖であり、そしてR2とR3は上記に定義される通りであるが、但し、A7がUra、Paa又はPtaであるとき、いずれの場合もUra、Paa及びPtaがここではdes−アミノアミノ酸とみなされるので、R2とR3は存在しない。Amp、1Nal、2Nal、Nle、Cha、3−Pal、4−Pal、及びAibは、それぞれ以下のα−アミノ酸の略字である:4−アミノ−フェニルアラニン、β−(1−ナフチル)アラニン、β−(2−ナフチル)アラニン、ノルロイシン、シクロヘキシルアラニン、β−(3−ピリジニル)アラニン、β−(4−ピリジニル)アラニン、及びα−アミノイソ酪酸。他のアミノ酸の定義は、以下の通りである:Uraは、ウロカニン酸である;Ptaは、(4−ピリジルチオ)酢酸である;Paaは、trans−3−(3−ピリジル)アクリル酸である;Tma−Hisは、N,N−テトラメチルアミジノ−ヒスチジンである;N−Me−Alaは、N−メチル−アラニンである;N−Me−Glyは、N−メチル−グリシンである;N−Me−Gluは、N−メチル−グルタミン酸である;Tleは、tert−ブチルグリシンである;Abuは、α−アミノ酪酸である;Tbaは、tert−ブチルアラニンである;Ornは、オルニチンである;Aibは、α−アミノイソ酪酸である;β−Alaは、β−アラニンである;Gabaは、γ−アミノ酪酸である;Avaは、5−アミノ吉草酸である;Adoは、12−アミノドデカン酸である;Aicは、2−アミノインダン−2−カルボン酸である;Aunは、11−アミノウンデカン酸である;そして、Aecは、構造:
【0099】
【化8】

【0100】
により表される、4−(2−アミノエチル)−1−カルボキシメチル−ピペラジンである。
【0101】
Accが意味するのは、1−アミノ−1−シクロプロパンカルボン酸(A3c);1−アミノ−1−シクロブタンカルボン酸(A4c);1−アミノ−1−シクロペンタンカルボン酸(A5c);1−アミノ−1−シクロヘキサンカルボン酸(A6c);1−アミノ−1−シクロヘプタンカルボン酸(A7c);1−アミノ−1−シクロオクタンカルボン酸(A8c);及び1−アミノ−1−シクロノナンカルボン酸(A9c)の群より選択されるアミノ酸である。上記の式において、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシフェニルアルキル、及びヒドロキシナフチルアルキルは、1〜4のヒドロキシ置換基を含有する場合がある。COX5は、−C=O・X5を表す。−C=O・X5の例には、限定されないが、アセチル及びフェニルプロピオニルが含まれる。
【0102】
本明細書に使用する他の略字の完全名は、以下の通りである:Bocはt−ブチルオキシカルボニル、HFはフッ化水素、Fmはホルミル、Xanはキサンチル、Bzlはベンジル、Tosはトシル、DNPは2,4−ジニトロフェニル、DMFはジメチルホルムアミド、DCMはジクロロメタン、HBTUは2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロリン酸塩、DIEAはジイソプロピルエチルアミン、HOAcは酢酸、TFAはトリフルオロ酢酸、2ClZは2−クロロベンジルオキシカルボニル、2BrZは2−ブロモベンジルオキシカルボニル、OcHexはO−シクロヘキシル、Fmocは9−フルオレニルメトキシカルボニル、HOBtはN−ヒドロキシベンゾトリアゾール、PAM樹脂は4−ヒドロキシメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、TrisはTris(ヒドロキシメチル)アミノメタン、そしてBis−TrisはBis(2−ヒドロキシエチル)アミノ−tris(ヒドロキシメチル)メタン(即ち、2−Bis(2−ヒドロキシエチル)アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール)を表す。
【0103】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」には、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードが含まれる。
用語「(C1〜C12)炭化水素部分」、「(C1〜C30)炭化水素部分」、等には、指定数の炭素を有する分岐鎖及び直鎖のアルキル、アルケニル、及びアルキニル基が含まれるが、但し、アルケニル及びアルキニルの場合は、最小で2つの炭素がある。
【0104】
本発明のペプチドはまた、本明細書において別の形式、例えば(A5c8)hGLP−1(7−36)NH2により示され、天然の配列より置換されたアミノ酸を最初の括弧のセット内に置く(例えば、hGLP−1のAla8に対するA5c8)。略字のGLP−1は、グルカゴン様ペプチド−1を意味し;hGLP−1は、ヒトグルカゴン様ペプチド−1を意味する。括弧内の数字は、ペプチド中に存在するアミノ酸の番号を意味する(例えば、hGLP−1(7−36)は、ヒトGLP−1のペプチド配列のアミノ酸7〜36である。hGLP−1(7−37)の配列は、Mojsov, S., Int. J. Peptide Protein Res., 40, 1992, pp. 333-342 に収載されている。hGLP−1(7−36)NH2中の「NH2」の表記は、このペプチドのC末端がアミド化していることを示す。hGLP−1(7−36)は、C末端が遊離酸であることを意味する。hGLP−1(7−38)において、37及び38位の残基は、他に示さなければ、それぞれGly及びArgである。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1は、本発明による組成物を実施例H.1に従って使用してラットへ投与したときのペプチドの血漿濃度の時間経過を図示する。
【図2】図2は、本発明による組成物を実施例H.2に従って使用してラットへ投与したときのペプチドの血漿濃度の時間経過を図示する。
【図3】図3は、本発明による組成物を実施例H.3に従って使用してラットへ投与したときのペプチドの血漿濃度の時間経過を図示する。
【図4】図4は、本発明による組成物を実施例H.4に従って使用してビーグル犬へ投与したときのペプチドの血漿濃度の時間経過を図示する。
【図5】図5は、本発明による組成物を実施例I.1に従って使用してラットへ投与したときのペプチドの血漿濃度の時間経過を図示する。
【図6】図6は、本発明による組成物を実施例I.2に従って使用してラットへ投与したときのペプチドの血漿濃度の時間経過を図示する。
【図7】図7は、本発明による組成物を実施例I.3に従って使用してラットへ投与したときのペプチドの血漿濃度の時間経過を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0106】
発明の詳細な説明
ペプチドの合成
本発明を実施するのに有用なペプチドは、標準の固相ペプチド合成によって製造することができて、製造した。例えば、Stewart, J. M., et al.,「固相合成(Solid Phase Synthesis)」(ピアス・ケミカル社、第2版、1984年)を参照のこと。上記一般式の置換基R2及びR3は、当該技術分野で知られている標準法によってN末端アミノ酸の遊離アミンへ付加することができる。例えば、アルキル基(例、(C1〜C30)アルキル)は、還元アルキル化を使用して付加することができる。ヒドロキシアルキル基、例えば(C1〜C30)ヒドロキシアルキルも還元アルキル化を使用して付加してよく、ここでは遊離ヒドロキシ基をt−ブチルエステルで保護する。アシル基、例えばCOE1は、塩化メチレン中3モル当量の遊離酸及びジイソプロピルカルボジイミドと完了樹脂を1時間混合することにより、遊離酸、例えばE1COOHをN末端アミノ酸の遊離アミンへカップリングさせることによって付加することができる。遊離酸が遊離ヒドロキシ基を含有する(例、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸)ならば、カップリングは、さらに3モル当量のHOBTを用いて実施すべきである。
【0107】
1がNH−X2−CH2−CONH2(即ち、Z0=CONH2)であるとき、ペプチドの合成は、BocHN−X2−CH2−COOHより開始して、これをMBHA樹脂へカップリングさせる。R1がNH−X2−CH2−COOH(即ち、Z0=COOH)であるならば、ペプチドの合成は、BocHN−X2−CH2−COOHより開始して、これをPAM樹脂へカップリングさせる。この特別な工程では、4モル当量のBoc−HN−X2−CH2−COOH、HBTU及びHOBtと10モル当量のDIEAを使用する。カップリング時間は、約8時間である。
【実施例】
【0108】
保護化アミノ酸、1−(N−tert−ブトキシカルボニル−アミノ)−1−シクロヘキサン−カルボン酸(Boc−A6c−OH)は、以下のように合成した。19.1g(0.133モル)の1−アミノ−1−シクロヘキサンカルボン酸(Acros Organics, Fisher Scientific, ペンシルヴェニア州ピッツバーグ)を200mlのジオキサンと100mlの水に溶かした。これへ67mlの2N NaOHを加えた。この溶液を氷水浴に冷やした。この溶液へ32.0g(0.147モル)の二炭酸ジtert−ブチルを加えた。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。次いで、ジオキサンを減圧で除去した。残存する水溶液へ200mlの酢酸エチルを加えた。この混合物を氷水浴に冷やした。4N HClを加えることによって、水層のpHを約3へ調整した。有機層を分離した。水層を酢酸エチル(1x100ml)で抽出した。2つの有機層を合わせて水(2x150ml)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧で濃縮乾固させた。残渣を酢酸エチル/ヘキサンにおいて再結晶させた。9.2gの純粋な生成物を得た。収率29%。
【0109】
Boc−A5c−OHは、Boc−A6c−OHに類似したやり方で合成した。他の保護化Accアミノ酸は、本明細書の教示により可能であるように、類似したやり方で当業者により製造することができる。
【0110】
A5c、A6c、及び/又はAibを含有するペプチドの合成において、カップリング時間は、これらの残基とそれらの直後にある残基について2時間である。(Tma−His7)hGLP−1(7−36)NH2の合成では、4ml DMF中HBTU(2ミリモル)及びDIEA(1.0ml)を使用して、最終カップリング反応においてペプチド−樹脂のN末端遊離アミンと反応させる;カップリング時間は、約2時間である。
【0111】
上記一般式の置換基R2及びR3は、当該技術分野で知られた標準法によってN末端アミノ酸の遊離アミンへ付加することができる。例えば、アルキル基(例、(C1〜C30)アルキル)は、還元アルキル化を使用して付加することができる。ヒドロキシアルキル基、例えば(C1〜C30)ヒドロキシアルキルも還元アルキル化を使用して付加してよく、ここでは遊離ヒドロキシ基をt−ブチルエステルで保護する。アシル基、例えばCOX1は、塩化メチレン中3モル当量の遊離酸及びジイソプロピルカルボジイミドと完了樹脂を約1時間混合することにより、遊離酸、例えばX1COOHをN末端アミノ酸の遊離アミンへカップリングさせることによって付加することができる。遊離酸が遊離ヒドロキシ基を含有する(例、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸)ならば、カップリングは、さらに3モル当量のHOBTを用いて実施すべきである。
【0112】
以下の実施例は、本発明を有利に実施することができるペプチドを作製するのに使用し得て、使用した合成法について記載し、この合成法は、当業者によく知られている。当業者には他の方法も知られている。実施例は、例示の目的のために提供するのであって、本発明の範囲をいかなるやり方でも限定するものではない。
【0113】
Boc−βAla−OH、Boc−D−Arg(Tos)−OH、及びBoc−D−Asp(OcHex)は、Nova Biochem(カリフォルニア州サンディエゴ)より購入した。Boc−Aun−OHは、Bachem(ペンシルヴェニア州キング・オブ・プルシア)より購入した。Boc−Ava−OHとBoc−Ado−OHは、Chem−Impex International(イリノイ州ウッドデール)より購入した。Boc−2NaI−OHは、Synthetech社(オレゴン州オールバニー)より購入した。
【0114】
実施例1
(Aib8,35,Arg26,34,Phe31)hGLP−1(7−36)NH2
表題ペプチドは、加速Boc化学固相ペプチド合成を行うために改良したアプライド・バイオシステムズ(カリフォルニア州フォスターシティ)モデル430Aペプチド合成機で合成した。Schnolzer, et al., Int. J. Peptide Protein Res., 90:180 (1992) を参照のこと。0.91ミリモル/gの置換体がある4−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂(Peninsula,カリフォルニア州ベルモント)を使用した。Bocアミノ酸(Bachem,カリフォルニア州トーランス;Nova Biochem.,カリフォルニア州ラホヤ)を以下の側鎖保護とともに使用した:
【0115】
【化9】

【0116】
合成は、0.20ミリモルのスケールで行った。Boc基は、100% TFA、2x1分間の処理により除去した。Bocアミノ酸(2.5ミリモル)は、4mLのDMF中のHBTU(2.0ミリモル)及びDIEA(1.0mL)で予め活性化して、ペプチド−樹脂TFA塩の中和に先立つことなくカップリングさせた。カップリング時間は5分であったが、但し、Boc−Aib−OH残基と以下の残基:Boc−Lys(2CIZ)−OH及びBoc−His(DNP)−OHではカップリング時間が2時間であった。
【0117】
ペプチド鎖の組立ての最後に、樹脂を20%メルカプトエタノール/10% DIEAのDMF溶液で2x30分間処理して、His側鎖上のDNP基を外した。次いで、100% TFA、2x2分の処理によりN末端Boc基を外した。DMF中10% DIEAでのペプチド−樹脂の中和(1x1分)の後で、15%エタノールアミン/15%水/70% DMFの溶液、2x30分間での処理によりTrpの側鎖上のホルミル基を外した。このペプチド−樹脂をDMF及びDCMで洗浄し、減圧で乾燥させた。1mLのアニソール及びジチオスレイトール(24mg)を含有する10mLのHFにおいてペプチド−樹脂を0℃で75分間撹拌することによって、最終の切断を行った。窒素のフローによってHFを除去した。残渣をエーテル(6x10mL)で洗浄し、4N HOAc(6x10mL)で抽出した。
【0118】
水性抽出液中のペプチド混合物は、逆相VYDAC(登録商標)C18カラム(Nest Group,マサチューセッツ州サウスバラ)を使用する逆相分取用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製した。10ml/分の流速の線形勾配(105分にわたり20%〜50%のB溶液)(A溶液=0.1% TFA含有水;B溶液=0.1%のTFAを含有するアセトニトリル)でカラムを溶出させた。分画を採取して、分析用HPLCで確認した。純粋な生成物を含有する分画を合わせて、凍結乾燥させた。ほぼ18mgの白い固形物を得た。純度は、分析用HPLC解析に基づけば99%であった。エレクトロスプレー質量分光計(MS(ES))の解析により、3356.6で分子量を得た(3356.77の計算分子量と一致)。
【0119】
実施例2〜82の合成は、本発明を実施するのに有用な他のペプチジル化合物と同様に、所望されるペプチドに依存して適切な保護化アミノ酸を使用すること以外は、上記実施例1の(Aib8,35,Arg26,34,Phe31)hGLP−1(7−36)NH2の合成について記載の手順と実質的に同じやり方で達成することができる。
【0120】
実施例2〜82
【0121】
【化10】

【0122】
【化11】

【0123】
【化12】

【0124】
本明細書に例示する化合物の代表的なサンプリングについての物理データを以下の表1に示す。
【0125】
【表1】

【0126】
実験手順
A.GLP−1受容体アフィニティーの定量
本発明を実施するのに有用な化合物は、以下の手順を使用して、GLP−1受容体へ結合するその能力を試験することができる。
【0127】
細胞培養:
GLP−1受容体を発現するRIN 5Fラットインスリノーマ細胞(ATCC番号 CRL−2058,アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、バージニア州マナッサス)を、10%胎仔ウシ血清を含有するダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)中で培養して、5% CO2/95%空気の加湿雰囲気において約37℃で維持した。
【0128】
放射リガンド結合:
20mlの氷冷50mM Tris−HCl中のRIN細胞のBrinkman Polytron(ニューヨーク州ウェストベリ)(設定6,15秒)でのホモジェナイゼーションにより放射リガンド結合試験用に膜を調製した。ホモジェネートを遠心分離(39,000g/10分)により2回洗浄し、2.5mM MgCl2,0.1mg/ml バシトラシン(シグマケミカル、ミズーリ州セントルイス)、及び0.1% BSAを含有する50mM Tris−HClに最終ペレットを再懸濁させた。アッセイのために、アリコート(0.4ml)を、0.05mlの非標識競合試験ペプチドを含めるか含めずに、0.05nM(125I)GLP−1(7−36)(〜2200Ci/ミリモル、New England Nuclear,マサチューセッツ州ボストン)とともにインキュベートした。100分間のインキュベーション(25℃)の後で、0.5%ポリエチレンイミンに予浸しておいたGF/Cフィルター(Brandel,メリーランド州ゲイサースブルグ)に通す迅速濾過によって、結合した(125I)GLP−1(7−36)を遊離のものから分離した。次いで、このフィルターを5mlアリコートの氷冷50mM Tris HClで3回洗浄し、フィルターに捕捉された結合放射活性をγ−スペクトリメトリー(Wallac LKB,メリーランド州ゲイサースブルグ)により計数した。特異結合は、[結合した全(125I)GLP−1(7−36)]−[1000nM GLP−1(7−36)(Bachem,カリフォルニア州トーレンス)の存在下に結合した(125I)GLP−1(7−36)]として定義した。
【0129】
B.pHに対する溶解度の定量
有利にも、本発明に使用の化合物は、ほぼ中性又は生理学的なpH値を有する水溶液において相対的に不溶性であり、酸性又は塩基性のpH値を有する水溶液において相対的に可溶性である。好ましくは、本発明に使用の化合物は、ほぼ6とほぼ8の間のpHで、そしてほぼ4℃とほぼ40℃の間の温度付近で、1mg/mL未満、より好ましくは0.5mg/mL未満の水溶解度を有する。
【0130】
B.1.緩衝化生理食塩水中のpHに対する化合物溶解度の定量
本発明を実施するのに有利に使用し得る化合物は、異なるpH及び温度でのPBS中のその溶解度を定量するために、以下の手順を使用して試験することができて、試験した。
【0131】
1パケットのプレ混合粉末(SIGMA,製品番号:P−3813)を1リットルの脱イオン水に溶かすことによってストックPBS緩衝化溶液を作製して、138mM NaCl,2.7mM KCl,及び7.4のpHを有する10mMリン酸緩衝化生理食塩水を得た。このストック溶液のpHをリン酸及び/又は水酸化ナトリウムで調整することによって、異なるpH値のPBS緩衝液を作製した。
【0132】
実施例1の化合物の2mg試料をガラス瓶へ秤量した。各バイアルへ50μlアリコートのPBS緩衝液を一定のpHで加えた。この溶液を激しく撹拌し、必要ならば音波処理して、澄明にした。試験するそれぞれのpHについて、2mgの化合物を溶かすのに必要とされる緩衝液の全量を記録して、溶解度を計算した。
【0133】
室温(20〜25℃)で澄明であるペプチド溶液を冷蔵庫(4℃)に一晩入れてから、ペプチドの4℃での溶解度を試験した。
【0134】
B.2.生理食塩水中のpHに対する化合物溶解度の定量
本発明を実施するのに有利に使用し得る化合物は、異なるpH値及び温度での生理食塩水中のその溶解度を定量するために、以下の手順を使用して試験することができて、試験した。
【0135】
9グラムのNaClを1リットルの脱イオン水に溶かすことによってストック生理食塩水溶液を調製した。このストック溶液のpHをHCl及び/又はNaOHで調整することによって、異なるpH値の生理食塩水溶液を作製した。
【0136】
実施例1の化合物の2mg試料をガラス瓶へ秤量した。各バイアルへ50μlアリコートの生理食塩水溶液を一定のpHで加えた。このバイアルを激しく撹拌し、必要ならば音波処理して、澄明にした。試験するそれぞれのpHについて、2mgの化合物を溶かすのに必要とされる生理食塩水の全量を記録して、溶解度を計算した。
【0137】
室温(20〜25℃)で澄明である溶液を冷蔵庫(4℃)に一晩入れてから、4℃での溶解度を試験した。
【0138】
B.3.生理食塩水中の化合物溶解度のpH7.0での定量
本発明を実施するのに有利に使用し得る化合物は、pH=7を有する生理食塩水中の室温でのその溶解度を定量するために、以下の手順を使用して試験することができて、試験した。
【0139】
9グラムのNaClを1リットルの脱イオン水に溶かすことによって生理食塩水溶液を調製した。(Aib8,Arg26,34,β−Ala35)hGLP−1(7−36)NH2(実施例6)、(Aib8,35,Arg26,34)hGLP−1(7−36)NH2(実施例24)、及び(Aib8,35,Arg26,34,2Nal31)hGLP−1(7−36)NH2(実施例32)の各2mgを別々のガラス瓶へそれぞれ秤量して、1mLアリコートの生理食塩水を加え、激しい撹拌と音波処理をして、澄明にした。2mgのペプチドを溶かすのに使用する生理食塩水の全量を記録して、室温での溶解度を計算した。
【0140】
B.4.生理食塩水中の化合物溶解度の様々なpHでの定量
本発明を実施するのに有利に使用し得る化合物は、様々なpH値を有する生理食塩水中の室温でのその溶解度を定量するために、以下の手順を使用して試験することができて、試験した。
【0141】
9グラムのNaClを1リットルの脱イオン水に溶かすことによってストック生理食塩水溶液を調製した。このストック生理食塩水溶液のアリコートをHCl及びNaOHで処理することによって、様々なpH値を有する生理食塩水溶液を入手した。
【0142】
(Aib8,35,Arg26,34,Phe31)hGLP−1(7−36)NH2(実施例23)及び(Aib8,35,Phe31,Arg34)hGLP−1(7−36)NH2(実施例34)の2mg試料をガラス瓶へそれぞれ秤量した。50μlの生理食塩水緩衝液のアリコートを一定のpHで加えた。この溶液を激しく撹拌して音波処理して、澄明にした。2mgのペプチドを溶かすのに使用する緩衝液の全量を記録して、溶解度を計算した。
【0143】
C.亜鉛濃度に対する化合物の水溶解度の定量
本発明を実施するのに有利に使用し得る化合物は、異なる亜鉛濃度でのpH7の水中のその溶解度を定量するために、以下の手順を使用して試験することができて、試験した。
【0144】
ZnCl2を脱イオン水に溶かして100mg/mlの濃度として、HClを使用してpHを2.7へ調整することによって、ストック亜鉛溶液を調製した。このストック溶液の適切な希釈液を作製することによって、様々なZnCl2濃度を有する溶液(「Zn試験溶液」)を調製した。
【0145】
実施例1の化合物の1mgを250μlの各Zn試験溶液に溶かして、4mg/mlの実施例1化合物を有する溶液を得た。次いで、0.2N NaOHを使用してこの溶液のpHを調整すると、白い沈殿が生成することを観察した。この沈殿溶液を遠心分離して、HPLCを使用してその母液について分析した。試験化合物ピークのUV吸収面積を測定して、較正曲線への比較より、試験化合物の母液中の濃度を定量した。
【0146】
本発明を実施するのに使用し得る化合物の代表例として、実施例1の化合物について直前のアッセイで試験して、以下の結果を得た(生理食塩水、pH7.0、室温):
【0147】
【表2】

【0148】
D.pH=4.0を有するペプチド/亜鉛溶液の調製
pH2.7を有するHCl溶液中100mg/mlのZnCl水溶液の希釈により、0.5mg/ml ZnCl溶液を調製した。この溶液の250μlに実施例1の化合物の1mgを溶かして、4mg/mlの化合物と0.5mg/mlのZnClをpH4で有する澄明な溶液を得た。

【0149】
E.pH=7.0を有するペプチド/亜鉛懸濁液/ゲルの調製
in vivo 薬物動態(「PD」)試験に使用の試験化合物のpH7.0での粒子懸濁液又はゲルは、以下の手順を使用して作製することができる。
【0150】
上記の製法Dにおいて作製した澄明溶液(pH4、ZnCl 0.5mg/ml、実
施例1の化合物 4mg/ml)のほぼ250μLを、ほぼ25μLの0.2N NaO
Hを使用して、pH7.0へ中和する。
【0151】
F.IEFゲルを使用するpIの定量
InvitrogenのNovex IEF pH3−10ゲルを使用して、GLP−1ペプチドのpIを測定した。試験するペプチジル化合物を水に溶かして、0.5mg/mlの濃度とした。それぞれのそのような化合物につき、生じる溶液の5μlを5μlのNovex(登録商標)Sample Buffer 2X(20mM アルギニン遊離塩基、20mM リジン遊離塩基、及び15%グリセロールを含む)と混合して、生じる10μlの試料溶液を、タンパク質の標準試料と並べて、ゲル上へロードした。
【0152】
泳動緩衝液もInvitrogenより入手して、ゲルは、製造業者の使用説明書に従って、全般的には以下のように操作した:100V定圧、1時間に続いて、200V定圧、1時間、続いて500V定圧、30分間。
【0153】
次いで、3.5%スルホサリチル酸を含有する12% TCAにおいてこのゲルを30分間固定してから、Novex(登録商標)Colloidal Blue Kitに見出される使用説明書に従って、コロイド状クーマシーブルーで2時間染色してから、水で一晩脱色した。
【0154】
このゲルを走査して、プログラム:Fragment Analysis 1.2.により解析した。10.7、9.5、8.3、8.0、7.8、7.4、6.9、6.0、5.3、5.2、4.5、4.2、及び3.5のpI値を有する標準化合物のpIに対して、未知のペプチドのpIを計算した。
【0155】
本発明を実施するのに使用し得る好ましい化合物は、ほぼ6.0〜ほぼ8.5、より好ましくはほぼ6.5〜ほぼ8.0、なおより好ましくはほぼ7.0〜ほぼ7.8のpI値を有する。驚くべきことに、使用に特によく適している本発明の組成物は、生理学的なpHに近似したpIを有することがわかった。
【0156】
G.in vivo アッセイ
本発明の組成物は、in vivo での亢進効果を促進するその能力を定量するために、以下のアッセイを使用して試験することができて、試験した。
【0157】
G.1. 実験手順:
実験に先立つ日、ほぼ300〜350gの重量である成体の雄性スプリーグ・ドーリーラット(Taconic,ニューヨーク州ジェーマンタウン)に、クロロヒドレート麻酔下に右心房頚動脈カニューレを移植した。次いで、このラットを18時間絶食させた後で、適切な試験組成物又は担体対照を0時間点で注射した。実験全体を通して、ラットは絶食させ続けた。
【0158】
0時間点で、ラットに(a)実施例1の化合物:(Aib8,35,Arg26,34,Phe31)hGLP−1(7−36)NH2をpH4.0で澄明な溶液(即ち、製法Dの溶液)として、又は(b)実施例1の化合物をpH7.0で懸濁液又はゲル(即ち、製法Eの懸濁液又はゲル)として皮下(sc)注射した。いずれの場合も、注射量はごく少量(4〜6μL)であり、被検者へ投与したGLP−1化合物の用量は75μg/kgであった。sc注射後の適切なときに、静脈内(iv)カニューレより500μlの血液試料を吸引して、ラットにivグルコースチャレンジを与えて、亢進したインスリン分泌の存在を試験した。グルコースチャレンジの時間は、化合物注射後の0.25、1、6、12、及び24時間であった。最初の血液試料を吸引した後で、グルコース(1g/kg)をiv注射して、500μlのヘパリン添加生理食塩水(10U/mL)をさっと流し入れた。その後、500μlの血液試料をグルコース注射後2.5、5、10、及び20分で吸引した。これらのそれぞれの直後に500μlのヘパリン添加生理食塩水(10U/mL)のカニューレからのiv注射を続けた。血液試料を遠心分離し、各試料より血漿を採取して、インスリン含量をアッセイするまで、この試料を−20℃に保存した。ラットインスリン酵素結合性免疫吸着剤アッセイ(ELISA)キット(アメリカン・ラボラトリー・プロダクツ社、ニューハンプシャー州ウィンダム)を使用して、各試料中のインスリンの量を定量した。
【0159】
結果:
驚くべきことに、実施例1の化合物の澄明溶液と懸濁液若しくはゲル型の両方で、グルコース注射により誘導される持続的なインスリン亢進活性が実験の全24時間にわたり観察された。
【0160】
G.2.実験手順:
本アッセイは、上記の製法Dに従って調製した(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の溶液、又は担体対照を時間0でラットに皮下(sc)注射すること以外は、G.1.と同様に実施した。G.1.と同じように、注射量はごく少量(4〜6μL)であり、被検者へ投与するGLP−1化合物の用量は75μg/kgであった。
【0161】
結果:
グルコース注射により誘導される持続的なインスリン亢進活性が実験の全24時間にわたり観察された。
【0162】
G.3.実験手順:
全般手順は、G.1.に提供するものと同じであった。この事例では、製法Dに従って調製した実施例1の化合物、又は担体対照を時間0で皮下(sc)注射した。グルコースチャレンジの時間点は、注射後1、6、12、24、48、及び72時間であった。ivカニューレからのグルコース注射と後続の血液サンプリングは、実験G.1.と同じように実施した。絶食期間の延長のために、担体とグルコースのみの対照を各時点で含めた。
【0163】
結果:
グルコースにより誘導される持続的なインスリン亢進活性が、試験組成物の皮下投与後少なくとも48時間の間、観察された。さらに、実験G.1.と同じように、グルコースへ応答した初期の高レベルのインスリン亢進は観察されなかった。
【0164】
H.in vivo アッセイ
本発明の組成物は、活性化合物の in vivo での延長放出を促進するその能力を定量するために、以下に記載のアッセイ:H.1.〜H.4.を使用して試験することができて、試験した。本発明を実施するのに使用し得る化合物の代表例として、実施例1の化合物:(Aib8,35,Arg26,34,Phe31)hGLP−1(7−36)NH2を以下の表3に記載する様々な例示製剤へ製剤化して、アッセイ:H.1.〜H.4.へ処した。
【0165】
以下のアッセイに使用の組成物は、以下の一般手順に従って作製した:
HClを使用してpH2.7へすでに調整した注射用滅菌水(Braun,ルビ、スペイン)に塩化亜鉛(メルク、Mollet del Valles,バルセロナ、スペイン)を溶かすことによって、100mg/ml ZnCl2のストック溶液を作製した。このストック溶液の希釈によって、様々な濃度(例えば、0.1mg/ml、0.5mg/ml、2mg/ml、等)で亜鉛を含有する溶液を入手した。より低い濃度(例えば、10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml)で亜鉛を含有する溶液は、1mg/ml ZnCl2を含んでなるストック溶液の希釈によって、類似したやり方で調製した。
【0166】
アッセイする化合物、例えば、実施例1のペプチドの適量を秤量し、それぞれの生じる亜鉛溶液の適量に溶かして、所望される化合物の濃度(例えば、4mg/ml)を有する澄明溶液を得た。次いで、生じる溶液をミクロ濾過して、必要ならば、投与前に、遮光性バイアルに保存した。
【0167】
試験被検者の血漿中の試験化合物の濃度は、当該技術分野で知られたいくつかの方法によって定量することができる。1つの簡便な方法では、試験化合物に対するウサギ由来抗体を、例えば125Iで放射ヨウ素化した既知量の試験化合物との競合において利用するラジオイムノアッセイにより化合物(例えば、実施例1の化合物)の濃度を定量する。
【0168】
H.1.薬物動態試験1
本発明による組成物を使用して被検者へ投与した生物活性化合物のバイオアベイラビリティに対する亜鉛の効果を以下のように定量することができて、定量した。
【0169】
上記に記載の手順に従って、pH=2.7で実施例1の化合物の4mg/mLと0.0、0.1、0.5、及び2.0mg/mlのZnCl2をそれぞれ有するように、4種の水性組成物を製剤化した。表3、実施例H1a、H1b、H1c、及びH1dを参照のこと。この4種の組成物のそれぞれを16匹のスプリーグ・ドーリーラット(チャールズ・リバー・ラボラトリーズ、マサチューセッツ州ウィルミントン、アメリカ)へ皮下投与した。ラットの平均週齢は、ほぼ8〜9週で、平均体重はほぼ260〜430gであった。ラットには食餌と水を自由に提供した。実施例1の化合物の注射(用量=75μg/kg,実施例1の化合物)後の血漿レベルを図1に図示する。
【0170】
H.2.薬物動態試験2
本発明による組成物を使用して被検者へ投与した生物活性化合物のバイオアベイラビリティに対する注射量の効果を以下のように定量することができて、定量した。
【0171】
上記に記載の手順に従って、pH=2.7で実施例1の化合物の3000、300、及び75μg/mLと0.5mg/mlのZnCl濃度をそれぞれ有するように、3種の水性組成物を製剤化した。表3、実施例H2a、H2b、及びH2cを参照のこと。この3種の組成物のそれぞれを16匹のスプリーグ・ドーリーラット(チャールズ・リバー・ラボラトリーズ、マサチューセッツ州ウィルミントン、アメリカ)へ皮下投与した。ラットの平均週齢は、ほぼ8〜10週で、平均体重はほぼ330〜460gであった。ラットは、試験の開始に先立って一晩絶食させた。注射の容量は、実施例1の化合物の75μg/kgを各ラットに提供するように選択した(それぞれ、0.025ml/kg、0.25ml/kg、及び1ml/kg)。実施例1の化合物の注射後の血漿レベルを図2に図示する。
【0172】
H.3.薬物動態試験3
本発明による組成物を使用して被検者へ投与した生物活性化合物のバイオアベイラビリティに対する亜鉛の効果を以下のように定量することができて、定量した。
【0173】
上記に記載の手順に従って、pH=2.7で実施例1の化合物の4mg/mLと10、20、及び30μg/mlのZnClをそれぞれ有するように、3種の水性組成物を製剤化した。表3、実施例H3a、H3b、及びH3cを参照のこと。この3種の組成物のそれぞれを16匹の雄性白子スプリーグ・ドーリーラット(St.Feliu de Codines,バルセロナ、ES)へ皮下投与した。これらのラットは、試験の開始に先立って一晩絶食させた。実施例1の化合物の注射(用量=75μg/kg,実施例1の化合物)後の血漿レベルを図3に図示する。
【0174】
H.4.薬物動態試験4
本発明による組成物を使用して被検者へ投与したときの生物活性化合物のバイオアベイラビリティに対する亜鉛及び生物活性化合物の濃度の効果を以下のように定量することができて、定量した。
【0175】
上記に記載の手順に従って、2種の水性組成物を製剤化した。第一の溶液は、1.45mg/mlの実施例1の化合物と30μg/mlのZnClを含み、第二の溶液は、1.45mg/mlの実施例1の化合物を含んだが、亜鉛は含まなかった。いずれの溶液もpH=2.7を有した。表3、実施例H4a及びH4bを参照のこと。それぞれの溶液を、ほぼ54〜65ヶ月の月齢とほぼ16〜21kgの体重に及ぶ雄性ビーグル犬(Isoquimen,バルセロナ、スペイン)へ皮下投与した。イヌは、試験の開始に先立って一晩絶食させた。さらに、活性化合物のみを含有する第二の溶液は、静脈内で投与した。注射剤は、いずれも25μg/kgの用量を提供した。実施例1の化合物の注射後の血漿レベルを図4に図示する。
【0176】
【表3】

【0177】
I.in vivo アッセイ
I.1.薬物動態試験:半固体組成物
被検者への投与後さらに延長された期間の時間にわたり生物学的に有意な血漿濃度のペプチドを提供する、本発明の半固体水性組成物の能力について、以下のように定量することができて、定量した。
【0178】
ある量の実施例1の化合物(酢酸塩)を十分な注射用滅菌水ともにホモジェナイズすることによって実施例1の化合物の水性半固体組成物を作製して、ほぼ25%のペプチド(例、0.250mg/mg)を含む半固体のペースト様組成物を提供した。この組成物を、19/0.6(0.35mm)UNIMED針が装着した0.3mLシリンジへロードした。ほぼ60mgの半固体組成物(ほぼ15mgのペプチドを含有する)を10匹の雄性スプリーグ・ドーリーラット(Harlan Iberica,バルセロナ、スペイン)のそれぞれへ投与した。ラットの平均週齢はほぼ10週で、平均体重はほぼ220〜330gであった。ラットは試験の開始に先立ってほぼ14時間絶食させたが、水は自由に与えた。試験組成物の投与後は、ラットに食餌と水を自由に与えた。実施例1の化合物の注射後の血漿レベルを図5に図示する。
【0179】
I.2.薬物動態試験:1mgマイクロ錠剤
被検者への投与後さらに延長された期間の時間にわたり生物学的に有意な血漿濃度のペプチドを提供する、亜鉛も希釈剤も他の賦形剤も含まない、本発明の固体組成物の能力についても、以下のように定量することができて、定量した。
【0180】
ほぼ1mgのペプチドを提供するような重量の実施例1の化合物の酢酸塩の試料を標準の打錠型へ加えて圧縮して、固体マイクロ錠剤を形成させた。このマイクロ錠剤を、1.2/1.0(0.25mm)針が装着したICOプランジャーシリンジ(即ち、1mmの内径を有する)へロードした。このマイクロ錠剤を10匹の雄性スプリーグ・ドーリーラット(チャールズリバー・ラボラトリーズ)のそれぞれへ投与した。ラットの週齢はほぼ10〜12週に及び、体重はほぼ320〜480gに及んだ。ラットは試験の開始に先立ってほぼ14時間絶食させたが、水は自由に与えた。試験組成物の投与後は、ラットに食餌と水を自由に与えた。実施例1の化合物の注射後の血漿レベルを図6に図示する。
【0181】
I.3.薬物動態試験:15mgマイクロ錠剤
実施例1の化合物の15mgを含有するようにマイクロ錠剤を製剤化すること以外は、上記に記載したのと実質的に同じ手順を試験1.3に適用した。ラットの週齢はほぼ11〜13週に及び、体重はほぼ300〜480gに及んだ。実施例1の化合物の注射後の血漿レベルを図7に図示する。
【0182】
先述の in vivo 実験の結果を図示する図面において、プロットした点は、試験集団の平均値を表す。
【0183】
本発明に使用するペプチドは、有利にも、医薬的に許容される塩の形態で提供することができる。そのような塩の例には、限定されないが、有機酸(例、酢酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、又はパモ酸)、無機酸(例、塩酸、硫酸、又はリン酸)、及び高分子の酸(例、タンニン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、又はポリ乳酸−グリコール酸の共重合体)と形成されるものが含まれる。本発明のペプチドの塩を作製する典型的な方法は、当該技術分野でよく知られていて、塩交換の標準法により達成することができる。従って、本発明のペプチドのTFA塩(TFA塩は、TFA含有緩衝溶液で溶出させる分取用HPLCを使用することによってペプチドの精製より生じる)は、このペプチドを少量の0.25N酢酸水溶液に溶かすことによって、酢酸塩のような別の塩へ変換することができる。生じる溶液を半分取用HPLCカラム(Zorbax,300 SB,C−8)へ適用する。このカラムを(1)0.1N酢酸アンモニウム水溶液で0.5時間、(2)0.25N酢酸水溶液で0.5時間、そして(3)4ml/分での流速の線形勾配(30分にわたり20%〜100%のB溶液)(A溶液は0.25N酢酸水溶液であり;B溶液はアセトニトリル/水(80/20)中0.25N酢酸である)で溶出させる。ペプチドを含有する分画を採取して、凍結乾燥させる。
【0184】
当業者によく知られるように、GLP−1の既知の使用と潜在的な使用は、多様で多岐にわたる(Todd, J. F., et al., Clinical Science, 1998, 95, pp. 325-329; 及び Todd, J. F. et al., European Journal of Clinical Investigation, 1997, 27, pp. 533-536 を参照のこと)。従って、アゴニスト効果を誘発させる目的で本発明の化合物を投与すると、GLP−1そのものと同じ効果及び使用を有する場合がある。GLP−1のこれらの多様な使用は、以下のように要約してよい:I型糖尿病、II型糖尿病、肥満、グルカゴノーマ、気道の分泌障害、代謝障害、関節炎、骨粗鬆症、中枢神経系疾患、再狭窄、神経変性疾患、腎不全、鬱血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺性浮腫、高血圧、及び、食物摂取の抑制が所望される障害の治療。アンタゴニスト効果を被検者より誘発させる本発明のGLP−1類似体は、以下を治療するために使用し得る:胃切除術又は小腸切除術に関連した低血糖症及び吸収不良症候群。
【0185】
故に、本発明には、式(I)の化合物の少なくとも1つを有効成分として含んでなる、本明細書に定義される医薬組成物がその範囲内に含まれる。
【0186】
本発明の製剤中の有効成分の投与量は変動してよいが、有効成分の量は、好適な投与量が得られるようなものであることが必要である。選択される投与量は、所望される治療効果、投与の経路、そして治療の期間に依存して、通常は、担当医によって決定される。一般に、本発明の活性に有効な投与量は、1x10-7〜200mg/kg/日、好ましくは1x10-4〜100mg/kg/日の範囲であり、これは、単回用量として投与しても、頻回用量へ分割してもよい。
【0187】
本発明の製剤は、好ましくは、非経口的に、例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、等により投与する。
【0188】
本発明による非経口投与用の調製物には、所望される in vivo 放出プロフィールが達成されるならば、無菌の水性又は非水性溶液剤、懸濁液剤、ゲル剤、又は乳剤が含まれる。非水性溶媒又は担体の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油及びとうもろこし油のような植物油、ゼラチン、及び、オレイン酸エチルのような注射可能の有機エステルである。そのような剤形は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤のようなアジュバントを含有してもよい。それらは、例えば、細菌保持フィルターに通す濾過によって、滅菌剤を組成物へ取り込むことによって、組成物に照射することによって、又は組成物を加熱することによって滅菌することができる。それらは、滅菌水や他の無菌の注射可能な媒体に使用の直前に溶かすことができる無菌の固形組成物の形態で製造してもよい。
【0189】
他に定義しなければ、本明細書に使用するすべての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。また、本明細書で言及される公開公報、特許出願、特許、及び他の参考文献は、いずれも参照により組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルカゴン様ペプチド−1、エキセンディン−4、及びこれらの類似体及び誘導体からの少なくとも1つの分子を含んでなり、その水溶解度が、6と8の間のpHと約4〜40℃で1mg/mL未満、好ましくは0.5mg/mL未満である、医薬組成物。
【請求項2】
分子が約5〜9、好ましくは約6〜8の等電点を有し、但し分子は、ヒトGLP−1(7−36)NH2でもヒトGLP−1(7−37)−OHでもない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
水をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
非水媒体をさらに含んでなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
分子が7未満、好ましくは5未満のpHの水溶液に存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
分子が4.5以下のpHの澄明溶液に存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
分子が7より高い、好ましくは8より高いpHの水溶液に存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
分子が10以上のpHの澄明溶液に存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
分子の粒子が水性懸濁液又はゲルに存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
分子の粒子が約4〜10のpHの水性懸濁液又はゲルに存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
分子の粒子が非水媒体に存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
分子が約0.001〜500mg/mL、好ましくは約0.1〜10mg/mLの濃度で存在する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
保存剤をさらに含んでなる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記保存剤が、m−クレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、及びメチルパラベンからなる群より選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記保存剤が0.01mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
等張剤をさらに含んでなる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記等張剤が0.01mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
二価イオンをさらに含んでなる、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記二価イオンが亜鉛であり、前記亜鉛は、0.0005mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
安定化剤をさらに含んでなる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記安定化剤が、イミダゾール、アルギニン、及びヒスチジンからなる群より選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
界面活性剤をさらに含んでなる、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
キレート剤をさらに含んでなる、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
緩衝剤をさらに含んでなる、請求項1〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記緩衝剤が、Tris、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、グリシン、アスパラギン酸、及びBis−Trisからなる群より選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
塩基性ポリペプチドをさらに含んでなる、請求項1〜25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記塩基性ポリペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、プロタミン、プトレシン、スペルミン、スペルミジン、及びヒストンからなる群より選択される、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
アルコール又は単糖若しくは二糖をさらに含んでなる、請求項1〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記アルコール又は単糖若しくは二糖が、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセロール、トレハロース、マンニトール、グルコース、エリスロース、リボース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、スクロース、及びラクトースからなる群より選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
硫酸アンモニウムをさらに含んでなる、請求項1〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
分子が、L若しくはD−Arg及びL若しくはD−hArgからなる群より選択される少なくとも2つの残基を有するGLP−1類似体及び誘導体からなる群より選択される、請求項1〜30のいずれか1項の組成物。
【請求項32】
分子が、残基26及び34の少なくとも1つがL若しくはD−Arg又はL若しくはD−hArgであるGLP−1類似体及び誘導体からなる群より選択される、請求項31の組成物。
【請求項33】
前記GLP−1類似体が式(I):
【化1】

[式中:
7は、L−Hisであるか又は欠失され;
8は、Ala、D−Ala、Aib、Gly、Ser、Gly、β−Ala、Val、Acc、N−Me−Ala、N−Me−D−Ala又はN−Me−Glyであり;
9は、Glu、N−Me−Glu、N−Me−Asp又はAspであり;
10は、Gly、Acc、β−Ala又はAibであり;
11は、Thr又はSerであり;
12は、Phe、Acc、Aic、Aib、3Pal、4Pal、1Nal、2Nal、Cha、Trp又は(X1n−Pheであり;
13は、Thr又はSerであり;
14は、Ser又はAibであり;
15は、Asp又はGluであり;
16は、Val、Acc、Aib、Leu、Ile、Tle、Nle、Abu、Ala、1Nal、2Nal又はChaであり;
17は、Ser又はThrであり;
18は、Ser又はThrであり;
19は、Tyr、Cha、Phe、3Pal、4Pal、Acc、1Nal、2Nal又は(X1n−Pheであり;
20は、Leu、Acc、Aib、Nle、Ile、Cha、Tle、Val、Phe、1Nal、2Nal又は(X1n−Pheであり;
21は、Glu又はAspであり;
22は、Gly、Acc、β−Ala又はAibであり;
23は、Gln又はAsnであり;
24は、Ala、Aib、Val、Abu、Tle又はAccであり;
25は、Ala、Aib、Val、Abu、Tle又はAccであり;
26は、Lys、Arg、hArg、Orn、Dab、又はDapであり;
27は、Glu又はAspであり;
28は、Phe、3Pal、4Pal、1Nal、2Nal、Aic、Acc、Aib、Cha、Trp又は(X1n−Pheであり;
29は、Ile、Acc、Aib、Leu、Nle、Cha、Tle、Val、Abu、Ala、Phe、1Nal、2Nal又は(X1n−Pheであり;
30は、Ala、Aib又はAccであり;
31は、Trp、2Nal、3Pal、4Pal、Phe、Acc、Aib、Cha又は(X1n−Pheであり;
32は、Leu、Acc、Aib、Nle、Ile、Cha、Tle、1Nal、2Nal、Phe、(X1n−Phe又はAlaであり;
33は、Val、Acc、Aib、Leu、Ile、Tle、Nle、Cha、Ala、1Nal、2Nal、Phe、Abu、Lys又は(X1n−Pheであり;
34は、Lys、Arg、hArg、Orn、Dab又はDapであり;
35は、Gly、β−Ala、Gaba、Ava、HN−CH(CH2m−C(O)、Aib、Acc、D−アミノ酸であるか又は欠失され;
36は、L若しくはD−Arg、D若しくはL−Lys、D若しくはL−hArg、D若しくはL−Orn、L若しくはD−Dab、L若しくはD−Dapであるか又は欠失され;そして
37は、Gly、β−Ala、Gaba、Ava、Aib、Acc、Ado、Aun、Aec、D−アミノ酸であるか又は欠失され;
1は、それぞれの出現につき、それぞれの出現につき独立して、(C1〜C6)アルキル、OH、又はハロゲンであり;
nは1、2、3、4又は5であり;
1は、OH、NH2、(C1〜C30)アルコキシ、又はNH−X2−CH2−Z0である{ここでX2は、(C1〜C12)炭化水素部分であり、Z0は、H、OH、CO2H又はCONH2である}]による化合物である、請求項1〜32のいずれか1項の組成物。
【請求項34】
前記化合物が:
【化2】

【化3】

【化4】

である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記化合物が:
【化5】

である、請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
前記化合物が:
【化6】

である、請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩の有効量と医薬的に許容される担体又は希釈剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項38】
GLP−1受容体からのアゴニスト効果をその必要な被検者において誘発する方法であって、請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩の有効量を前記被検者へ投与することを含む、前記方法。
【請求項39】
I型糖尿病、II型糖尿病、肥満、グルカゴノーマ、気道の分泌障害、代謝障害、関節炎、骨粗鬆症、中枢神経系疾患、再狭窄、及び神経変性疾患からなる群より選択される疾患を治療の必要な被検者において治療する方法であって、請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩の有効量を前記被検者へ投与することを含む、前記方法。
【請求項40】
前記疾患がI型糖尿病又はII型糖尿病である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
式:
【化7】

による類似体、またはこれを亜鉛と医薬的に許容される担体又は希釈剤と一緒に含んでなる医薬組成物。
【請求項42】
前記亜鉛が0.0005mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記希釈剤が医薬的に許容される水溶液を含む、請求項41又は42に記載の組成物。
【請求項44】
亜鉛とGLP−1又はエキセンディン−4の類似体を含んでなる、澄明溶液又はゲルの医薬組成物。
【請求項45】
被検者への皮下投与後に沈殿を生成する、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
水をさらに含んでなる、請求項44に記載の組成物。
【請求項47】
非水媒体をさらに含んでなる、請求項44及び45のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項48】
分子が2.5と10.5の間、好ましくは3.5と8の間のpHの水溶液に存在する、請求項44〜46のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項49】
分子が約0.001〜500mg/mL、好ましくは約0.1〜10mg/mLの濃度で存在する、請求項44〜47のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項50】
保存剤をさらに含んでなる、請求項44〜48のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項51】
前記保存剤が、m−クレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、及びメチルパラベンからなる群より選択される、請求項49に記載の組成物。
【請求項52】
前記保存剤が0.01mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、請求項50に記載の組成物。
【請求項53】
等張剤をさらに含んでなる、請求項44〜51のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項54】
前記等張剤が0.01mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、請求項52に記載の組成物。
【請求項55】
前記亜鉛が0.0005mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、請求項44〜53のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項56】
安定化剤をさらに含んでなる、請求項44〜54のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項57】
前記安定化剤が、イミダゾール、アルギニン、及びヒスチジンからなる群より選択される、請求項55に記載の組成物。
【請求項58】
界面活性剤をさらに含んでなる、請求項44〜56のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項59】
キレート剤をさらに含んでなる、請求項44〜57のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項60】
緩衝剤をさらに含んでなる、請求項44〜58のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項61】
前記緩衝剤が、Tris、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、グリシン、アスパラギン酸、及びBis−Trisからなる群より選択される、請求項59に記載の組成物。
【請求項62】
塩基性ポリペプチドをさらに含んでなる、請求項44〜60のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項63】
前記塩基性ポリペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、プロタミン、プトレシン、スペルミン、スペルミジン、及びヒストンからなる群より選択される、請求項61に記載の組成物。
【請求項64】
アルコール又は単糖若しくは二糖をさらに含んでなる、請求項44〜61のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項65】
前記アルコール又は単糖若しくは二糖が、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセロール、トレハロース、マンニトール、グルコース、エリスロース、リボース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、スクロース、及びラクトースからなる群より選択される、請求項62に記載の組成物。
【請求項66】
(Aib8,35,Arg26,34,Phe31)hGLP−1(7−36)NH2;又はその医薬的に許容される塩を含んでなる、請求項44〜64のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項67】
式:[Aib8,35,Arg26,34,Phe31]hGLP−1(7−36)NH2による類似体、又はその医薬的に許容される塩から本質的になる医薬組成物。
【請求項68】
固形ミクロ錠剤の形態である、請求項67に記載の医薬組成物。
【請求項69】
水をさらに含んでなり、半固体を生成する、請求項67に記載の医薬組成物。
【請求項70】
ほぼ25%(重量/重量)の(Aib8,35,Arg26,34,Phe31)hGLP−1(7−36)NH2を含有する、請求項69に記載の半固体の医薬組成物。
【請求項71】
式:
【化8】

による類似体を亜鉛と医薬的に許容される担体又は希釈剤と一緒に含んでなる医薬組成物。
【請求項72】
前記亜鉛が0.0005mg/mL〜50mg/mLの濃度で存在する、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
前記亜鉛が0.01mg/mL〜0.50mg/mLの濃度で存在する、請求項72に記載の組成物。
【請求項74】
前記希釈剤が医薬的に許容される水溶液を含む、請求項71に記載の組成物。
【請求項75】
前記希釈剤が滅菌水を含む、請求項74に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−1381(P2011−1381A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224218(P2010−224218)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【分割の表示】特願2006−545462(P2006−545462)の分割
【原出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(509120469)イプセン ファルマ ソシエテ パール アクシオン サンプリフィエ (51)
【氏名又は名称原語表記】IPSEN PHARMA S.A.S.
【住所又は居所原語表記】65 Quai Georges Gorse,F−92100 Boulogne Billancourt FRANCE
【Fターム(参考)】