説明

GPSを用いた測量システム

【課題】海上工事などにおいて、高精度で杭などの移動体を位置決めすることができる。
【解決手段】GPS30を用いた測量システム1は、陸上4に設けたGPS固定局31と、夫々にGPS移動局32を取り付けることで常に絶対位置が把握され、自動追尾機能を有する複数のトータルステーション10と、鋼管杭2に固定され、トータルステーション10と同数以上の反射体20と、GPS移動局32の位置に基づき、トータルステーション10が反射体20を視準して得られた反射体20の位置座標を修正し、鋼管杭2の現実の位置を算出する解析手段41と、鋼管杭2の現実の位置と計画位置との差を演算する比較手段42とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として海上工事の杭打設工事などで移動体の位置を測量するGPSを用いた測量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海上工事などで施工される鋼管杭(移動体)の打設工事において、鋼管杭の打設位置を測量する際には、海上にほとんど動揺のない測量櫓を設置し、基準点をその測量櫓上に設置する方法とされていた。この場合には、広範囲の施工に際しては数多くの測量櫓を設置する必要があるうえ、波浪がある水深の深い箇所では頑丈な測量櫓を設置しなければならなかった。また、鋼管杭の測量については、鋼管杭に対して二方向の測量櫓上の不動点から測量工によって手動追尾によってトランシット測量或いは光波側距を行っていた。この場合、鋼管杭に対する測量には、測量機械1台毎に必ず一人の測量工が配置されなければならず、測量工の技量による施工精度のバラツキがあり、さらには、人手による測量及び合図伝達による作業では手間や時間がかかり非効率的であった。
そこで、測量櫓を設置することなく、しかも測量の効率化を図る方法が、例えば特許文献1に提案されている。
特許文献1は、海上で動揺する鋼管杭を打設するための杭リーダ(鋼管杭を支持して打設方向に送り込む装置)を装備した杭打ち船に1台のトータルステーションを設置し、このトータルステーションで杭リーダを視準して位置座標を自動測量すると共に、RTK(リアルタイムキネマテック)−GPS測量によりトータルステーションの位置を観測することで、動揺する杭打ち船(トータルステーション)の位置をリアルタイムに確認しながら鋼管杭の打設施工を行うものである。
【特許文献1】特許第3676277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1では、杭打ち船上に杭リーダとトータルステーションとが設けられ、さらに杭リーダは杭打ち船に固定されている構成であり、それら両者の相対位置が変わらないことから、トータルステーションで杭リーダを視準することが容易とされている。ところが、バイブロハンマ(振動機)に上端部を支持された鋼管杭を、そのバイブロハンマと共にクレーンによって吊り下げて打設するような工事では、クレーンのブーム(特許文献1の杭リーダに相当)と鋼管杭とが固定状態ではなく、つまり、施工中の鋼管杭は振動、揺動、回転、上下することになるため、特許文献1のようにクレーンのブームの位置をトータルステーションで視準する方法だけでは、鋼管杭の位置、即ち打設精度を確保することが難しいといった問題があった。
とくに、近年では、海上施工のように厳しい施工条件であっても鋼管杭の打設精度を確保(例えば±50mm以内)することが要求され、施工精度に余裕をもたせることをなくして工事費の増大を抑える傾向があり、鋼管杭が不規則に揺れ、回転などする場合における好適な測量方法が求められていた。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、海上工事などにおいて、高精度で杭などの移動体を位置決めすることができるGPSを用いた測量システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るGPSを用いた測量システムでは、移動体を測量するGPSを用いた測量システムであって、GPS固定局と、自動追尾機能を有する複数のトータルステーションと、複数のトータルステーションの内少なくとも1台が設置されている動揺する架台と、トータルステーションが設置されて動揺する架台に設けられた少なくとも1台のGPS移動局と、移動体に固定されていてトータルステーションと同数以上の反射体と、複数のトータルステーションがそれぞれ反射体の一つを視準して得られた反射体の現実の位置を、トータルステーションと同一の動揺する架台上にあるGPS移動局の位置あるいはトータルステーションの当初設定の位置に基づき算出し、さらに複数の反射体の現実の位置から移動体の現実の位置を算出する解析手段と、移動体の現実の位置と移動体の計画位置との差を演算する比較手段とを備えていることを特徴としている。
本発明では、トータルステーションによって移動体に設けた反射体を自動で視準し、さらにGPS移動局を備えたトータルステーションはGPSによって常に絶対位置が求められている。そして、トータルステーションによって視準した反射体の位置座標を補正し、移動体の現実の位置を把握し、移動体の計画位置と現実の位置とを比較しながら、移動体を計画位置となるように精度よく確実に位置決めすることができる。さらに、複数のトータルステーションによって移動体を視準する構成であり、移動体の動きに対応することができる。
【0006】
また、本発明に係るGPSを用いた測量システムでは、解析手段で算出された移動体の現実の位置と、移動体の計画位置とを表示するモニタが設けられていることが好ましい。
本発明では、モニタは、移動体の現実の位置と計画位置とが重ね合わされて同一平面上のモニタにリアルタイムに表示させることができる。そして、このモニタを確認しながら、移動体の位置決め操作を行うことができる。
【0007】
また、本発明に係るGPSを用いた測量システムでは、移動体は杭であって、杭の周方向に所定間隔をもって反射体が設けられていることが好ましい。
本発明では、複数のトータルステーションによって同時に視準することで杭の中心位置を算出することができる。
【0008】
また、本発明に係るGPSを用いた測量システムでは、反射体の側方には、遮蔽板が設けられていることが好ましい。
本発明では、遮蔽板を設けることで、トータルステーションによって二つの反射体を同時に捕捉することがなくなり、例えば移動体が回転などしたときに、周方向隣の反射体を自動的に捕捉して、自動追尾することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のGPSを用いた測量システムによれば、GPS移動局を備えたトータルステーションの位置をGPSによりリアルタイムで確認でき、複数のトータルステーションによって視準した反射体の位置座標をGPS移動局の現在位置に応じて修正することで、移動体の現実の位置を把握することができる。このように、トータルステーションの設置位置にかかわらず、例えば移動体の計画位置と現実の位置とを比較しながら、移動体を計画位置となるように精度よく確実に位置決めすることができる。したがって、トータルステーションを例えば海上で動揺する架台に設置することができるため、陸から遠い場所で杭などの移動体を、クレーンを使用して打設する工事において、杭が回転、揺動、振動、上下する場合であってもリアルタイムでその杭の現在の位置を確認しながら、計画位置に打設できるようにクレーンを操作して施工することができる。
すなわち、本測量システムでは、海上の架台上のトータルステーションの変動量をリアルタイムに把握し、基準点(GPS移動局)の位置座標を修正することにより、変動する条件により発生する誤差を打ち消すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態によるGPSを用いた測量システムについて、図1乃至図5に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態による測量システムの全体概要を示す図、図2は鋼管杭に設けられる反射体の取付け状態を示す水平断面図、図3はモニタの表示内容を示す図、図4は測量システムにおける測量手順を示すフローチャート、図5はトータルステーションによる視準状態を示す概要図である。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態による測量システム1は、海上において鋼管杭2(移動体、杭)を打設する工事に採用され、鋼管杭2の打設位置をトータルステーション10及びGPS30を用いて測量するものである。
本測量システム1は、海上に配置されている3台の台船などの架台3の夫々に設けられていて鋼管杭2を視準するトータルステーション10(10A,10B、10C)と、鋼管杭2の頭部付近周囲に固定された複数の反射体20と、陸上4に設けられた1台のGPS固定局31と、トータルステーション10に設けられていて基準点をなすGPS移動局32(32A、32B、32C)とを備えている。
これから、架台3とGPS移動局32とトータルステーション10の望遠鏡中心位置との相対位置関係は固定されることになる。なお、GPS移動局32は必ずしもトータルステーション10に直接的に設けられている必要はなく、トータルステーション10との相対位置関係が固定できる範囲で、同じ架台3上でトータルステーション10の付近に別途に設けてもよい。本実施の形態では、この位置関係を満たす範囲で架台上にGPS移動局が設けられるものであり、トータルステーションに直接的に設ける場合も含むものとする。
そして、測量システム1には、GPS移動局32(トータルステーション10)の位置座標(後述する移動局位置座標P)から、トータルステーション10によって視準された鋼管杭2の位置座標(後述する現実位置座標R)を算出して、さらに鋼管杭2の中心位置(後述する現実中心位置K)を算出し、鋼管杭2の計画中心位置Kと比較するコンピュータ40が設けられ、その現実中心位置Kと計画中心位置Kとを出力するモニタ50が設けられている。
【0012】
以下、測量システム1の構成について、さらに詳しく説明する。
先ず、鋼管杭2は、その杭上端部が振動機能を有するバイブロハンマ(図示省略)によって支持され、そのバイブロハンマと共に船上に装備されたクレーン5によって吊られた状態とされている。そして、鋼管杭2は、海上における計画した打ち込み位置(計画位置)に鉛直方向に吊り降ろされると共に、バイブロハンマの振動によって海底地盤に打ち込まれる。なお、鋼管杭2は、クレーン5で吊られている状態であることから、通常は吊り降ろしの際に杭周方向に回転したり揺れが生じるものであり、これに基づいて以下説明する。
【0013】
図1に示すように、GPS30は、例えば周知のRTD(リアルタイムダイナミクス)基線解析ソフトウェア(RTD−GPSという)を使用して3箇所のGPS移動局32A,32B、32Cの正確な位置をリアルタイムで把握する機能を有するものである。なお、このRTD−GPSでは、時間的な誤差を解消することができ、測量誤差を小さくさせることができる。
そして、GPS固定局31及びGPS移動局32は、とくに図示はしないが、それぞれアンテナ及び受信機を備えている。これらは、GPS30からの電波を受信する。この受信信号はGPS移動局32の位置座標を特定できるものであり、この信号が無線又は有線によりコンピュータ40に転送される。
【0014】
ここで、GPS移動局32が設置されている架台3は、周知のように波浪の影響、或いは潮位の影響による水面の変動によって常時位置が不規則に変動するものである。そのため、測量システム1では、GPS30によって刻々と変化する各GPS移動局32A、32B、32C(トータルステーション10A、10B、10C)の位置座標をリアルタイムに観測する必要がある。なお、この位置座標を移動局位置座標P(P(XPA、YPA、ZPA)、P(XPB、YPB、ZPB)、P(XPC、YPC、ZPC))とし、GPS固定局31の位置座標を固定局位置座標P(XP0、YP0、ZP0)とする。なお、(X、Y、Z)は、X、Yを水平方向、Zを鉛直方向とする3次元直交座標系である。
【0015】
図1に示すように、各トータルステーション10は、発光部と受光部とを備え、レーザ光線L(図2参照)を1つの反射体20に向けて照射させ、その反射光を受光して、光の位相差から反射体20まで距離を自動測量する。そして、トータルステーション10は、周知技術である自動追尾機能を有していて、鋼管杭2の回転や揺れなどで移動する鋼管杭2の反射体20に対して追従させることでリアルタイムに視準することができる。
また、トータルステーション10は、前記GPS移動局32との相対位置が変わらないため、GPS30により常に絶対位置が把握されている状態とされる。
そして、3台のトータルステーション10A、10B、10Cでは、鋼管杭2に対して3方向からそれぞれ視準し、刻々と変化する反射体20の位置座標(これを、反射体位置座標R(R(XRA、YRA、ZRA)、R(XRB、YRB、ZRB)、R(XRC、YRC、ZRC)とする)、或いはそれぞれのトータルステーション10A、10B、10Cからそれぞれの反射体20までの方位角と鉛直角および距離情報としてのr、r、rを得て、それらの情報を所定時間毎に有線或いは無線でコンピュータ40に送信する。
【0016】
図2に示すように、トータルステーション10によって視準される反射体20は、例えば反射プリズムや反射シートなどが使用され、鋼管杭2の上端周囲2aにその周方向に所定間隔をもって、トータルステーション10と同数以上に取り付けられている。
そして、各反射体20には、遮蔽板21が設けられ、所定の角度で入射されるトータルステーション10のレーザ光を遮断する構成をなしている。遮蔽板21を設けることで、トータルステーション10によって二つの反射体20を同時に捕捉することがなくなり、鋼管杭2が回転したときに、一時的に捕捉状態が途切れても直ぐに周方向隣の反射体20を自動的に捕捉して、自動追尾することができる。
つまり、施工中に鋼管杭2が回転し、初めに視準していた反射体20(これを符号20Aとする)が視準できなくなったときに、自動的に隣の反射体20B(あるいは符号20Cの反射体)に切り替えて視準することができる。したがって、トータルステーション10の自動追尾範囲内において、視準範囲内から視準していた反射体20が外れる場合であっても測量不能になることを防止できる。
【0017】
次に、コンピュータ40の構成についてさらに具体的に説明する。
図1に示すように、コンピュータ40は、解析手段41と比較手段42とを備えている。
解析手段41は、各トータルステーション10、GPS固定局31及びGPS移動局32から第一通信手段43によって伝達される信号(移動局位置情報、固定局位置情報、反射体位置座標R或いはトータルステーション10から反射体20までの方位角と鉛直角及び距離情報r)に基づいて鋼管杭2の現実の位置(鋼管杭2に取り付けた反射体20の現実の位置でもあり、これを補正反射体位置座標R’とする)を算出するものである。
具体的には、GPS30からの信号を受けたGPS移動局32の受信信号とGPS固定局31の受信信号によって、GPS固定局位置座標P、GPS移動局位置座標Pが算出される。GPS移動局32とトータルステーション10の望遠鏡中心位置については、架台の変動が水平方向の変動だけで水平方向の回転や鉛直方向の傾斜変動が無視できる場合にはその相対位置関係が決まるので、トータルステーション10の望遠鏡中心位置座標が算出される。そして、このトータルステーション10の望遠鏡中心位置座標に、トータルステーション10の望遠鏡中心を基準とした3次元直交座標系における反射体位置座標Rをそれぞれの座標毎に加算して補正反射体位置座標R’が算出される。あるいは、トータルステーション10からの情報が反射体20までの方位角と鉛直角および距離情報rである場合には、その情報rを基に3次元直交座標系に換算して反射体位置座標Rとしてからトータルステーション10の望遠鏡中心位置座標に加算して補正反射体位置座標R’が算出される。
なお、補正反射体位置座標R’は、トータルステーション10A、10B、10C毎に、R’(XR’A、YR’A、ZR´A)、R’(XR’B、YR’B、ZR´B)、R’(XR’C、YR’C、ZR´C)とされる。
【0018】
また、比較手段42は、鋼管杭2の外周の3点に位置する現実の位置(補正反射体位置座標R’)から円の中心、すなわち鋼管杭2の現実中心位置K(XK0、YK0、ZK0)を算出し、現実中心位置Kと鋼管杭2の計画中心位置K(XKi、YKi、ZKi)との差を演算するものである(図5参照)。
なお、ここで、鋼管杭2(移動体)の現実の中心位置が鋼管杭2の現実の位置となる。これは鋼管杭2が円形であるためで、円形の場合の位置把握としては中心位置が適当だからである。移動体の位置把握に方向が関係してくるような場合、例えば移動体が三角形、長方形、不定形のような場合では、この移動体の現実の位置を把握する部位としては、移動体の外形の頂点、重心位置、外形線を採用する等、種々ある。いすれにしても、移動体の位置把握に最適な部位を採用すればよい。そしてこれらの部位による移動体の現実の位置は、移動体に取り付けた反射体の補正反射体位置から計算によって算出される。当然、移動体の計画位置は移動体の現実の位置を採用した部位と同じとなる。
【0019】
図3に示すように、モニタ50は、水平面座標系(XY座標系)における鋼管杭2の頭部付近の現実中心位置K(XK0、YK0)と計画中心位置K(XKi、YKi)とが重ね合わされて同一平面上のモニタ50にリアルタイムに表示させる構成をなしている。そして、上述した鋼管杭2の現実中心位置Kと計画位置(計画中心位置K(XKi、YKi)との差をXY座標毎に数値で表示させるようにしてもよい。また、実際の施工時には、鋼管杭2の現実の位置が許容範囲である場合には「OK」を表示させ、この許容範囲から外れている場合には「NG」を表示させるようにしてもよい。
【0020】
そして、このモニタ50は、クレーン5(図1参照)の運転室内で、運転者から見やすい位置に設置しておくことが好ましいとされる(なお、図1ではクレーン5とモニタ50とが離れた位置となっている)。そのときクレーン5の運転者は、鋼管杭2を吊った状態でモニタ50を見ながら、鋼管杭2を所定の位置となるように操作することもできる。
また、打設された鋼管杭2の位置は、コンピュータ40に記録、保管させるようにしてもよい。さらに、鋼管杭2の施工中の振れに対するクレーン5の操作データ(揚重速度など)と合わせてデータ管理してもよい。
【0021】
次に、このような構成からなる測量システム1を用いて鋼管杭2の打設位置を測量する方法と杭の打設方法について図4などを参照して説明する。なお、本実施の形態では、鋼管杭2(杭)の打設位置の測量が目的であるため、Z座標も計測するのであるが、そのZ座標を除きXY座標だけで説明する。
また、符号10A、10B、10Cのトータルステーションは、夫々を区別するために第一乃至第三トータルステーションと呼ぶ。
先ず、ステップS1では、打設する鋼管杭2の水平面における計画位置(図5の符号S)の計画中心位置K(XKi、YKi)と、GPS固定局31の固定局位置座標P(XP0、YP0)をコンピュータ40(図1参照)に設定しておく。このとき、GPS移動局32を備えている各トータルステーション10は、GPS移動局32との相対位置が変わることがないため、GPS30により常に絶対位置が把握されている状態となっている。
【0022】
次に、図5に示すように、ステップS2では、時刻T1において、所定位置(実際の位置)で、第一トータルステーション10Aで所定の反射体20を視準して反射体位置座標R(XRA、YRA)、あるいはr(このrは前述のrである)を得る。そして、ステップS3で同時刻T1における第一トータルステーション10Aの移動局位置情報がGPS30(図1参照)によって観測される。
さらに、ステップS4では、ステップS2及びS3で得られた位置情報がコンピュータ40に転送される。このとき、反射体位置座標Rは、解析手段41により移動局位置座標Pに応じて補正反射体位置座標R’(XR’A、YR’A)に補正される(図1参照)。
【0023】
そして、上記の第一トータルステーション10AのステップS2〜S4の動作と同時(時刻T1)に、第二トータルステーション10B、第三トータルステーション10Cのそれぞれについても、第一トータルステーション10Aと同様にステップS2〜S4が行われ、コンピュータ40の解析手法41により補正反射体位置座標R’(XR’B、YR’B)、R’(XR’C、YR’C)、すなわち鋼管杭2の外周の3点の座標が算出される。
次いで、ステップS5では、コンピュータ40の比較手段42によってステップS4で算出された3点の補正反射体位置座標R’、R’、R’から平面視で鋼管杭2の円の中心位置、すなわち現実中心位置K(XK0、YK0)が算出される。
【0024】
その後、ステップS6で、コンピュータ40の比較手段42によって設定された鋼管杭2の平面視で計画中心位置Ki(Xi、Yi)と、上記算出した現実の鋼管杭2の現実中心位置K(XK0、YK0)とを比較して差し、ステップS7でその値をモニタ50に出力表示する。
そして、ステップS2〜S7は、図5に示す時刻T1におけるものであり、トータルステーション10による視準及びGPS30による観測は自動でリアルタイムに行われているため、時刻T2、T3、…において順次ステップS2〜S7を実行させることで、モニタ50にはリアルタイムで現在位置を表示することができる。
このように、測量システム1では、鋼管杭2の現在の位置をリアルタイムで把握でき、鋼管杭2の計画位置と比較しながらクレーン5を使用して鋼管杭2を位置決めして、打ち込みすることができる。
なお、本測量システム1では、測量開始時に各トータルステーション10で反射体20に照準を合わせれば自動的に測量管理が可能となり、測量工の人員を削減することができる。
【0025】
上述のように本実施の形態によるGPSを用いた測量システムでは、GPS移動局32を備えたトータルステーション10の位置をGPS30によりリアルタイムで確認でき、複数のトータルステーション10によって視準した反射体20の位置座標をGPS移動局32の現在位置に応じて修正することで、鋼管杭2の現実の位置(現実中心位置K)を把握することができる。このように、トータルステーション10の設置位置にかかわらず、鋼管杭2の計画位置と現実の位置とを比較しながら、鋼管杭2を計画位置となるように精度よく確実に位置決めすることができる。したがって、トータルステーション10を、海上で動揺する架台3に設置することができるため、陸から遠い場所で鋼管杭2をクレーン5を使用して打設する工事において、鋼管杭2が回転、揺動、振動、上下する等で変動する場合であってもリアルタイムでその鋼管杭2の現在の位置を確認しながら、計画位置に打設できるようにクレーン5を操作して施工することができる。
すなわち、本測量システム1では、海上の架台3上のトータルステーション10の変動量をリアルタイムに把握し、基準点(GPS移動局32)の位置座標を補正することにより、変動する条件により発生する誤差を打ち消すことができる。
【0026】
以上、本発明によるGPSを用いた測量システムの実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では3台のトータルステーション10A、10B、10Cを用いて鋼管杭2を視準しているが、この鋼管杭視準用のトータルステーションは2台或いは4台以上であってもかまわない。
また、本実施の形態では、GPS移動局32(トータルステーション10)を架台3上に設置しているが、これに限定されることはなく、海上の所定位置に配置されている動揺体、例えば、導杭導枠、起重機船、桟橋などの架台或いは振動の影響を受ける地盤(これも本発明の「架台」に相当する)に適用することができる。
【0027】
なお、上記実施の形態では架台3には、GPS移動局32とトータルステーション10とが1台ずつ設けられている。これは、架台3の変動が水平方向の変動だけで水平方向の回転や鉛直方向が傾く変動が無視できる場合に採用される。架台3の変動が水平方向の回転を伴うような場合(変形例1)には、この架台3上の別の位置にGPS移動局を別途1台設ける。この場合、この2台のGPS移動局の位置情報から、トータルステーションの望遠鏡中心位置座標と、架台3の水平方向の向き(方位角)の変動量が算出される。そして、トータルステーションで測量した方位角に前記架台3の向きの変動量を加算して修正方位角とし、これを基に反射体位置座標Rが算出される。その後、トータルステーションの望遠鏡中心位置座標に反射体位置座標Rを加算して補正反射体位置座標R’が算出される。
さらに、架台3が鉛直方向の傾斜変動をも伴う場合(変形例2)には、この架台3上の別の位置にGPS移動局を別途2台設ける。この場合、この3台のGPS移動局の位置情報から、トータルステーションの望遠鏡中心位置座標と、架台3の水平方向の向き(方位角)の変動量が算出される。そして、トータルステーションで測量した方位角に前記架台3の向きの変動量を加算して修正方位角とし、これを基に反射体位置座標Rが算出される。その後、トータルステーションの望遠鏡中心位置座標に反射体位置座標Rを加算して補正反射体位置座標R´が算出される。
【0028】
以上、架台3が水平回転を伴う場合、鉛直方向の傾斜変動をも伴う場合のGPS移動局の架台上の設置台数を説明したが、例えば架台3が大きなもので、ここに鋼管杭視準用の2台のトータルステーションを設けるようなときには、水平回転を伴う場合(変形例3)は、それぞれのトータルステーションにGPS移動局が設けられていればよく、鉛直方向の傾斜変動をも伴う場合(変形例4)は、同じ架台上に別途1台のGPS移動局を設けることになる。更に、架台3が水平回転を伴わない水平方向の移動だけを考慮すればよいという条件下(変形例5)では、同じ架台3上にある2台のトータルステーションの内一方の1台だけにGPS移動局を設けることが考えられる。
いずれにしても、GPS移動局の架台3への設置台数は架台3の変動状況によって変わるものであるから、架台3の変動状況を勘案してそれぞれの架台3毎にGPS移動局の設置台数を決めればよい。
【0029】
また、上記の変形例(1〜5)も含めた各実施の形態において鋼管杭の水平面的な打設位置測量だけでなく、鋼管杭の鉛直性も鋼管杭打設途中に測量する場合(変形例6)は、鋼管杭の長さ方向中間部付近周囲にも、鋼管杭の頭部付近周囲に設けた反射体20と同様な反射体を設けるようにする。この場合、中間部の反射体を視準するトータルステーションは、上記の実施例における鋼管杭頭部付近周囲に設けた反射体20を視準するトータルステーション10の付近でかつ同一架台3上に別途1台設ければよい。そのようにすれば中間部視準用としての追加のGPS移動局は必要なく、上記の頭部視準用のトータルステーションの位置座標を算出するために設けたGPS移動局の受信情報を共用して中間部視準用のトータルステーションの位置座標が算出でき、またこの座標から鋼管杭中間部の補正反射体位置座標と現実中心位置が算出できる。そして、比較手段42で、XY座標での鋼管杭の中間部計画中心位置(鋼管杭の頭部付近の計画中心位置と同じ)と鋼管杭の中間部の現実中心位置との差を演算する。モニタ50には、XZ座標やYZ座標の断面を表示するようにし、鋼管杭の計画中心位置を表す鉛直線と、鋼管杭の頭部付近と中間部付近の現実中心位置間を直線で表したものを重ね合わせ表示する。また、傾斜計などの数値で表示する。このように表示することにより鋼管杭の傾きが確認できる。そして鋼管杭の傾きが許容範囲以内であれば「OK」を、許容範囲外になれば「NG」を表示するようにしてもよい。
【0030】
また、上記の変形例(1〜6)も含めた各実施の形態において、鋼管杭視準用のトータルステーションは全て変動する架台に設けられている場合で説明したが、全てのトータルステーションが全て動揺(変動)する架台に設ける必要はなく、そのうちの一部は陸上や動かない架台等の不動とみなされる盤上に設けるものであってよい。不動盤上にトータルステーションを設けた場合GPS移動局はなくてもよい。その場合、そのトータルステーションが視準した反射体位置情報と、そのトータルステーションの当初設定位置座標に基づいて鋼管杭の中心位置が算出される。ただ、不動盤上であっても、そこの位置に少なくとも1台のGPS移動局を設けておく、つまり全てのトータルステーションには、対応するGPS移動局がある方が好ましい。本発明は、複数のトータルステーションの内、少なくとも1台が動揺する架台に設ける必要性がある場合に好適に適用できるものであり、その場合その架台上には少なくとも1台のGPS移動局が設けられることになる。
【0031】
なお、コンピュータ40の解析手段41および比較手段42は、上記の全ての変形例も含めた各実施の形態に対応できるようになっている。例えば、解析手段では同じ架台上に視準用のトータルステーションとGPS移動局が設けられているところでは、GPS移動局の位置情報に基づいてトータルステーションの望遠鏡中心位置座標が算出されるとともに補正反射体位置座標が算出され、視準用のトータルステーションに対応するGPS移動局が設けられていないところでは、当初設定のトータルステーションの位置座標に基づき補正反射体位置座標が算出される。そして、複数の補正反射体位置座標を基に鋼管杭の現実の中心位置を算出するようになっている。それから、図示はしていないが、コンピュータ40は、当初設定のトータルステーションの位置座標、鋼管杭の中心位置座標等の各種データやRTD基線解析ソフトを保存する記憶手段を有している。
それから、本発明の測量システムにおいて、解析手段では移動体の補正反射体位置だけの出力(モニタ表示)、移動体の現実の位置までの出力(モニタ表示)、でよい場合が考えられるので、コンピュータ40の解析手段、比較手段それぞれは、その場合に対応できるような出力手段を有している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態による測量システムの全体概要を示す図である。
【図2】鋼管杭に設けられる反射体の取付け状態を示す水平断面図である。
【図3】モニタの表示内容を示す図である。
【図4】測量システムにおける測量手順を示すフローチャートである。
【図5】トータルステーションによる視準状態を示す概要図である。
【符号の説明】
【0033】
1 測量システム
2 鋼管杭
3 架台
5 クレーン
10 トータルステーション
20 反射体
21 遮蔽板
30 GPS
31 GPS固定局
32 GPS移動局
40 コンピュータ
41 解析手段
42 比較手段
50 モニタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を測量するGPSを用いた測量システムであって、
GPS固定局と、
自動追尾機能を有する複数のトータルステーションと、
前記複数のトータルステーションの内少なくとも1台が設置されている動揺する架台と、
前記トータルステーションが設置されて動揺する架台に設けられた少なくとも1台のGPS移動局と、
前記移動体に固定されていて前記トータルステーションと同数以上の反射体と、
前記複数のトータルステーションがそれぞれ前記反射体の一つを視準して得られた前記反射体の現実の位置を、前記トータルステーションと同一の動揺する架台上にあるGPS移動局の位置あるいは前記トータルステーションの当初設定の位置に基づき算出し、さらに前記複数の反射体の現実の位置から前記移動体の現実の位置を算出する解析手段と、
前記移動体の前記現実の位置と前記移動体の計画位置との差を演算する比較手段と、
を備えていることを特徴とするGPSを用いた測量システム。
【請求項2】
前記解析手段で算出された前記移動体の前記現実の位置と、前記移動体の計画位置とを表示するモニタが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のGPSを用いた測量システム。
【請求項3】
前記移動体は杭であって、前記杭の周方向に所定間隔をもって前記反射体が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のGPSを用いた測量システム。
【請求項4】
前記反射体の側方には、遮蔽板が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のGPSを用いた測量システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−14877(P2008−14877A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188625(P2006−188625)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(503148568)ジオサーフ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】