説明

GPS受信機およびGPS受信機の測位方法

【課題】測位感度や測位スピードなどの性能を劣化させること無く、レンジの計算に必要となるレンジデータを周期的に取得でき、かつ、消費電力の省力化をも実現する。
【解決手段】周波数変換部4からのIFデータに対して、同期保持部6はキャリア周波数の同期、C/Aコードの位相同期を捕捉して保持し、レンジデータなどの必要な情報を取得する。レンジデータを取得した場合には、制御部7は、スイッチ23をオフにして同期保持部6への電源の供給を停止し、取得したレンジデータなどを用いて測位演算を行い、現在位置を示す測位情報を求めてこれを出力するが、測位情報の出力周期と、測位情報を求めるのにかかる時間に応じて、同期保持部6を停止させる時間を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、携帯型ナビゲーションシステムや自動車、航空機、船舶などのいわゆる移動体のナビゲーションシステムなどに用いられるGPS(Global Positioning System)受信機およびGPS受信機で用いられる測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星(GPS衛星)を利用して移動体などの位置を測定するGPSシステムにおいて、GPS受信機は、4個以上のGPS衛星からの信号を受信し、その受信信号から受信機の位置を計算し、ユーザに知らせることが基本機能である。
【0003】
GPS受信機は、GPS衛星からの信号を復調してGPS衛星の軌道データを獲得し、GPS衛星の軌道および時間情報と受信信号の遅延時間から、自受信機の3次元位置を連立方程式により導き出す。受信信号を得るGPS衛星が4個必要となるのは、GPS受信機内部の時間と衛星の時間とで誤差があり、その誤差の影響を除去するためである。
【0004】
民生用GPS受信機の場合には、GPS衛星からのL1帯、C/A(Clear and Aquisition)コードと呼ばれるスペクトラム拡散信号電波を受信して、測位演算を行う。
【0005】
C/Aコードは、送信信号速度(チップレート)が1.023MHz、符号長が1023のPN(Pseudorandom Noise;擬似ランダム雑音)系列の符号、例えばGold符号で、50bpsのデータを拡散した信号により、周波数が1575.42MHzの搬送波(以下、キャリアという。)をBPSK(Binary Phase Shift Keying)変調した信号である。この場合、符号長が1023であるので、C/Aコードは、PN系列の符号が、図28(A)に示すように、1023チップを1周期(したがって、1周期=1ミリ秒)として、繰り返すものとなっている。
【0006】
このC/AコードのPN系列の符号は、GPS衛星ごとに異なっているが、どのGPS衛星が、どのPN系列の符号を用いているかは、予めGPS受信機で検知できるようにされている。また、後述するような航法メッセージによって、GPS受信機では、どのGPS衛星からの信号を、その地点およびその時点で受信できるかが判るようになっている。したがって、GPS受信機では、例えば3次元測位であれば、その地点およびその時点で取得できる4個以上のGPS衛星からの電波を受信して、スペクトラム逆拡散し、測位演算を行って、自分の位置を求めるようにする。
【0007】
そして、図28(B)に示すように、衛星信号データの1ビットは、PN系列の符号の20周期分、つまり、20ミリ秒単位として伝送される。つまり、データ伝送速度は、50bpsである。PN系列の符号の1周期分の1023チップは、ビットが“1”のときと、“0”のときとでは、反転したものとなる。
【0008】
図28(C)に示すように、GPSでは、30ビット(600ミリ秒)で1ワードが形成される。そして、図28(D)に示すように、10ワードで、1サブフレーム(6秒)が形成される。図28(E)に示すように、1サブフレームの先頭のワードには、データが更新されたときであっても常に規定のビットパターンとされるプリアンブルが挿入され、このプリアンブルの後にデータが伝送されてくる。
【0009】
さらに、5サブフレームで、1フレーム(30秒)が形成される。そして、航法メッセージは、この1フレームのデータ単位で伝送されてくる。この1フレームのデータのうちの始めの3個のサブフレームは、エフェメリス情報と呼ばれる衛星固有の情報である。この情報には、衛星の軌道を求めるためのパラメータと、衛星からの信号の送出時刻とが含まれる。
【0010】
GPS衛星のすべては、原子時計を備え、地上局の監視のもと、各GPS衛星は、共通の時刻情報を用いることができるようにしている。GPS衛星からの航法メッセージのエフェメリス中には、ウィークナンバと、TOW(タイム・オブ・ウィーク)という時刻を表現するデータがある。
【0011】
ウィークナンバは、10ビット、0〜1023のデータであり、1980年1月6日(日曜日)を第0週として週毎にカウントアップされるものである。TOWは、17ビット、0〜100800(=3600×24×7/6)のデータであり、日曜日の午前0時を0として6秒毎にカウントアップされるものである。
【0012】
GPS受信機は、受信した航法データから上述のウィークナンバとTOWとを取得して絶対時刻を求めることができる。なお、6秒以下の値は、GPS衛星からの信号にGPS受信機がロックするように動作する過程で、GPS受信機の持っている基準発振器の精度でGPS衛星の時刻に同期するようにすることができる。また、GPS衛星のPN系列の符号は、原子時計に同期したものとして生成される。
【0013】
エフェメリス情報の軌道情報は、数時間ごとに更新されるが、その更新が行われるまでは、同一の情報となる。しかし、エフェメリス情報の軌道情報は、これをGPS受信機のメモリに保持しておくことにより、数時間は、同じ情報を、精度良く使用することができるものである。
【0014】
1フレームのデータの残りの2サブフレームの航法メッセージは、アルマナック情報と呼ばれる全ての衛星から共通に送信される情報である。このアルマナック情報は、全情報を取得するために25フレーム分必要となるもので、各GPS衛星のおおよその位置情報や、どのGPS衛星が使用可能かを示す情報などからなる。
【0015】
このアルマナック情報は、少なくとも6日に1回などの所定のタイミングで更新されるが、その更新が行われるまでは、同一の情報となる。しかし、このアルマナック情報は、GPS衛星のおおよその位置を知るという使い方では、その寿命は数か月である。しかし、GPS受信機としては、適宜更新して新しいデータとするほうが望ましい。
【0016】
GPS衛星からの信号を受信して、上述のデータを得るためには、まず、キャリアを除去した後、GPS受信機に用意される受信しようとするGPS衛星で用いられているC/Aコードと同じPN系列の符号(以下、PN系列の符号をPN符号という。)を用いて、そのGPS衛星からの信号について、C/Aコードの位相同期を取ることによりGPS衛星からの信号を捕捉し、スペクトラム逆拡散を行う。C/Aコードとの位相同期が取れて、逆拡散が行われると、ビットが検出されて、GPS衛星からの信号から時刻情報等を含む航法メッセージを取得することが可能になる。
【0017】
GPS衛星からの信号の捕捉は、C/Aコードの位相同期検索により行われるが、この位相同期検索においては、GPS受信機のPN符号とGPS衛星からの
信号のPN符号との相関を検出し、例えば、その相関検出結果の相関値が予め定めた値よりも大きい時に、両者が同期していると判定する。そして、同期が取れていないと判別されたときには、何らかの同期手法を用いて、GPS受信機のPN符号の位相を制御して、GPS衛星からの信号のPN符号と同期させるようにしている。
【0018】
ところで、上述したように、GPS衛星からの信号(GPS信号)は、データをPN符号(拡散符号)で拡散した信号によりキャリアをBPSK変調した信号であるので、当該GPS信号をGPS受信機が受信するには、拡散符号のみでなく、キャリアおよびデータの同期をとる必要があるが、拡散符号とキャリアの同期は独立に行うことはできない。
【0019】
そして、GPS受信機では、GPS信号は、そのキャリア周波数を数MHz以内の中間周波数に変換して、その中間周波数信号で、上述の同期検出処理するのが普通である。この中間周波数信号におけるキャリアには、主にGPS衛星の移動速度に応じたドップラーシフトによる周波数誤差と、GPS信号を中間周波数信号に変換する際に、GPS受信機内部で発生させる局部発信器の周波数誤差分が含まれる。
【0020】
したがって、これらの周波数誤差要因により、中間周波数信号におけるキャリア周波数は未知であり、その周波数サーチが必要となる。また、PN符号の1周期内での同期点(同期位相)は、GPS受信機とGPS衛星との位置関係に依存するのでこれも未知であるから、上述のように、何らかの同期手法が必要となる。
【0021】
従来のGPS受信機では、キャリアについての周波数サーチと、スライディング相関器+DLL(Delay Locked Loop)+コスタスループによる同期手法を用いている。これについては、以下に説明を加える。
【0022】
GPS受信機のPN符号の発生器を駆動するクロックは、GPS受信機に用意される基準周波数発振器を分周したものが、一般に用いられている。この基準周波数発振器としては、高精度の水晶発振器が用いられており、この基準周波数発振器の出力から、GPS衛星からの受信信号を中間周波数信号に変換するのに用いる局部発振信号を生成する。
【0023】
図29は、この周波数サーチを説明するための図である。すなわち、GPS受信機のPN符号の発生器を駆動するクロック信号の周波数が、ある周波数f1であるときに、PN符号についての位相同期検索、つまり、PN符号の位相を1チップずつ順次ずらして、それぞれのチップ位相のときのGPS受信信号とPN符号との相関を検出し、相関のピーク値を検出することにより、同期が取れる位相を検出するようにする。
【0024】
前記のクロック信号の周波数がf1の時において、1023チップ分の位相検索の全てで同期する位相が存在しなければ、例えば基準周波数発振器に対する分周比を変えて、前記の駆動クロック信号の周波数を周波数f2に変更し、同様に1023チップ分の位相検索を行う。これを、図29のように、前記の駆動クロック信号の周波数をステップ的に変更して繰り返す。以上の動作が周波数サーチである。
【0025】
そして、この周波数サーチにより、同期可能とされる駆動クロック信号の周波数が検出されると、そのクロック周波数で最終的なPN符号の位相同期が行われる。これにより、水晶周波数発振器の発振周波数ずれがあっても、衛星信号を捕捉することが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
ところで、従来、GPS衛星からの信号を連続的に受信して測位し続ける場合、キャリアおよびPN符号の同期を捕捉し、捕捉した同期を保持するために、GPS受信機内の回路、特にDLLおよびコスタスループの回路は連続的に動作させるようにしている。
【0027】
また、測位演算するためには、図30に示すように、GPS衛星と受信機との距離(レンジ)が必要になる。このレンジは、例えば、0.5秒ごと、1秒ごと、あるいは、2秒ごとなどの所定の周期で取得すれば十分であるものである。しかし、通常、このレンジは、例えば、図31に示すように、0.1秒(100ミリ秒)間隔などのように、比較的に短い間隔で測定するようにし、常に精度良くレンジを取得することができるようにしている。
【0028】
このため、GPS受信機は、常時、フルに動作している状態となり、GPS受信機の消費電力は大きいものとなっていた。GPS受信機は、移動体に搭載されて、あるいは、ユーザによって持ち運ばれて使用されるものであり、バッテリからの電源によって、できるだけ長い時間、精度良く動作できるようにしておくことが重要である。
【0029】
そこで、GPS受信機の消費電力を小さくする目的でGPS受信機の電源のオン/オフを繰り返すようにし、間欠的に動作させるようにすることが考えられている。
【0030】
しかしながら、GPS受信機を間欠動作させる場合、常時電源が入っている状態に比べ、GPS受信機の測位感度や測位スピードといった性能を犠牲にしてしまう場合がある。つまり、GPS受信機を間欠動作させるようにすると、正確な測位ができなくなり、GPS受信機の大まかな位置しか検出できなくなったり、あるいは、正確な位置を検出するまでに時間がかかったりするようになる場合がある。
【0031】
上述の問題点は、ユーザの手動による間欠動作や、レンジデータの取得周期やGPS受信機の現在位置を示す測位情報の出力周期などを無視した周期で間欠動作を行うようにした場合には、特に問題となる。
【0032】
以上のことにかんがみ、この発明は、測位感度や測位スピードなどの性能を劣化させること無く、レンジの計算に必要となるレンジデータを周期的に取得することができるとともに、消費電力の省力化をも実現するGPS受信機およびGPS受信機で用いられる測位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明のGPS受信機は、
GPS衛星から送信された高周波GPS信号を中間周波GPS信号に変換する周波数変換手段と、
前記周波数変換手段によって得られた中間周波GPS信号に対して搬送波の同期と拡散符号の位相同期とを捕捉する同期捕捉手段と、
前記捕捉手段によって捕捉した前記搬送波の同期と拡散符号の位相同期とを初期値として保持すると共に、前記周波数変換手段からの前記中間周波GPS信号の供給を受けて、当該中間周波GPS信号からレンジデータを取得する同期保持手段と、
前記同期保持手段からの前記レンジデータに基づいて現在位置を測位演算し、当該現在位置を示す測位情報を出力する測位演算手段と、
前記測位演算手段から前記測位情報を出力する周期を変更する出力周期変更手段と、
前記同期保持手段から前記レンジデータを取得した後、前記同期保持手段の動作を停止させる停止手段と、
前記測位情報を出力する周期に応じて前記停止手段の停止時間を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする。
【0034】
この請求項1に記載のGPS受信機によれば、人工衛星からの高周波GPS信号は、周波数変換手段において中間周波GPS信号にダウンコンバートされ、同期捕捉手段に供給される。同期捕捉手段においては、周波数変換手段からの中間周波GPS信号のキャリアの同期と拡散符号の位相同期とが捕捉され、これが同期保持手段に供給される。
【0035】
同期保持手段においては、同期捕捉手段からのキャリアの同期と拡散符号の位相同期とが保持されると共に、これらに基づいて周波数変換手段からの中間周波GPS信号からレンジデータが取得され、これが測位演算手段に供給される。測位演算手段においては、これに供給されたレンジデータを用いて、測位演算が行われ、現在位置を示す測位情報が求められて、これが所定の周期で出力される。この測位情報を出力する周期は、出力周期変更手段により変更することができるようにされる。
【0036】
そして、同期保持手段を通じてレンジデータが取得された後に、制御手段により停止手段が制御され、同期保持手段の動作が停止するようにされるが、制御手段は、測位情報を出力する周期に応じて、同期保持手段の動作の停止時間を制御することができるようにされる。
【0037】
これにより、所定の周期ごとに測位情報を確実に取得できるようにすると共に、測位情報の出力の周期内で、同期保持手段の動作を停止させる停止時間を設けることにより、消費電力の省力化をも実現することができるようにされる。
【発明の効果】
【0038】
この発明によれば、例えば所定の周期で連続的に測位情報を出力する場合でも、GPS受信機の消費電力を低減させることができる。
【0039】
また、同期保持部等の動作時間を変更できるようにしておくことにより、測位感度、測位スピードなどのGPS受信機の性能を低下させることなく、GPS受信機の消費電力の低減の割合を変え、GPS受信機の消費電力を効率的に低減させることができる。
【0040】
また、同期保持部等の部分を間欠動作させた場合でも、GPS信号により提供される航法データは効率よく取得することができる。
【0041】
また、必要な航法データを取得した後に、間欠動作が行うようにされるので、停止後の動作再開は、航法データが何も得られていない状態からの動作となるのではなく、既に取得したデータを利用して、迅速な同期捕捉、同期保持、レンジデータの取得が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図を参照しながら、この発明による装置、方法の一実施の形態について説明する。
【0043】
図1は、この発明による装置、方法が適用されたこの実施の形態のGPS受信機を説明するためのブロック図である。図1に示すように、この実施の形態のGPS受信機は、アンテナ1と、増幅器2と、BPF(BandPass Filter)3と、周波数変換部4と、同期捕捉部5、同期保持部6、制御部7と、各部分に供給するクロック信号を形成するタイミング発生器8と、電源制御部9と、水晶発振器(図1においては、XOと記載。)10と、温度補償回路付き水晶発振器(以下、TCXOという。)11とを備えたものである。
【0044】
さらに、この実施の形態のGPS受信機には、図1に示すように、電源供給オン/オフスイッチ21、22、23、24が設けられている。スイッチ21は、周波数変換部4に対する電源の供給をオン/オフするためのものであり、スイッチ22は、同期捕捉部5に対する電源の供給をオン/オフするためのものである。また、スイッチ23は、同期保持部6に対する電源の供給をオン/オフするためのものであり、スイッチ24は、制御部7に対する電源の供給をオン/オフするためのものである。
【0045】
スイッチ21、22、23、24のそれぞれは、制御部7によって制御される電源制御部9からの対応する切換制御信号CT1、CT2、CT3、CT4によって切換制御される。すなわち、周波数変換部4、同期保持部5、同期捕捉部6、制御部7のそれぞれごとに電源のオン/オフ制御を行うことができるようにしている。
【0046】
この電源制御部9と、スイッチ21、22、23、24とにより、各回路部分の間欠動作を実現し、測位感度や測位スピードを落とすことなく、消費電力の省力化を実現するようにしている。なお、図1において、点線で囲んだ部分が、1個のIC(集積回路)として構成するようにされる。
【0047】
まず、この実施の形態のGPS受信機の間欠動作を説明する前に、この実施の形態のGPS受信機の構成と動作について説明する。GPS衛星からの高周波GPS信号は、アンテナ1により受信され、増幅器2に供給される。
【0048】
高周波GPS信号は、前述もしたように、各GPS衛星から送信される信号であり、50bpsの送信データを送信信号速度が1.023MHz、符号長が1023で、GPS衛星ごとに決められるパターンのPN符号(拡散符号)によりスペクトラム拡散した信号(C/Aコード)により、周波数が1575.42MHzのキャリアをBPSK変調したものである。
【0049】
増幅器2は、これに供給された高周波GPS信号を所定のレベルにまで増幅し、BPF3に供給する。BPF3は、これに供給された高周波GPS信号から不要成分を除去し、不要成分除去後の高周波GPS信号を周波数変換部4に供給する。
【0050】
[周波数変換部について]
周波数変換部4は、これに供給された高周波GPS信号を中間周波数の信号である中間周波GPS信号にダウンコンバートし、これをアナログ/デジタル変換して、中間周波データ(以下、IFデータという。)を形成し、これを同期捕捉部5と同期保持部6とに供給するものである。
【0051】
図2は、周波数変換部4の構成例を説明するための図である。図2に示すように、周波数変換部4は、増幅器41、中間周波変換回路(以下、IF変換回路という。)42、増幅器43、LPF(LowPass Filter)44、アナログ/デジタル変換器(以下、A/D変換器と略称する。)45、周波数シンセサイザの構成とされた局部発振回路46を備えたものである。
【0052】
そして、BPF3からの1575.42MHzの高周波GPS信号は、増幅器41を通じてIF変換回路42に供給される。また、TCXO11からの出力が局部発振回路46に供給され、これよりTCXO11の出力周波数と周波数比が固定された局部発振出力が得られる。
【0053】
局部発振回路46からの局部発振出力は、IF変換回路42に供給されて、1575.42MHzの高周波GPS信号(RF)が、1.023MHzの中間周波GPS信号(IF)に低域変換される。この中間周波GPS信号は、増幅器43で増幅され、LPF44で帯域制限された後、A/D変換器45に供給される。A/D変換器45は、これに供給された中間周波GPS信号をデジタル信号に変換してIFデータを形成し、これを同期捕捉部5と、同期保持部6とに供給する。
【0054】
[同期捕捉部について]
同期捕捉部5は、これに供給されたIFデータを所定期間分蓄積するようにし、このIFデータに対して、キャリア周波数(搬送波周波数)の同期と、C/Aコードの位相同期とを高速に捕捉する処理を行い、C/Aコード位相、キャリア周波数、相関ピークレベル、衛星番号を検出して、これを制御部7に供給するものである。
【0055】
図3は、同期捕捉部5の構成例を説明するためのブロック図である。図3に示すように、同期捕捉部5は、サンプラ51、RAM(Random Access Memory)52、DSP(Digital Signal Processer)53、RAM54、ROM(Read Only Memory)55を備えたものである。
【0056】
そして、周波数変換部4からのIFデータは、サンプラ51に供給される。サンプラ51は、これに供給されたIFデータを所定の周波数の信号でサンプリングし、サンプリングしたIFデータをRAM52に書き込むことによって、所定量のIFデータをRAM52に格納するようにする。
【0057】
RAM54は、主にDSP53において行われる処理の作業領域として用いられるものであり、ROM55は、DSP53において実行されるプログラムや処理に必要となるデータを記憶しているものである。
【0058】
そして、DSP53は、RAM52に格納されたIFデータと、自機が発生させるPN符号とについて、FFT(Fast Fourier Transform)を用いた同期捕捉処理を行うことにより、前述もしたように、C/Aコード位相、キャリア周波数、相関ピークレベルを検出する。
【0059】
[同期捕捉部の具体的な構成と動作について]
図4は、DSP53の具体的な動作を説明するためのブロック図である。DSP53は、拡散符号発生部534、FFT処理部531、535、乗算部533、逆FFT処理部537、相関点検出部538の機能を備え、いわゆるデジタルマッチドフィルタの構成とされたものである。
【0060】
同期捕捉部5のRAM52に書き込まれた信号(IFデータ(受信信号))は、C/Aコードの1周期分(1023チップ)ずつ、読み出されてFFT処理部531でFFT処理され、そのFFT結果がメモリ532に書き込まれる。このメモリ532としては、図4において括弧内に示したように、例えば、RAM52の空き領域が用いられるようにされる。そして、メモリ532に書き込まれたIFデータのFFT結果は、詳しくは後述するように、その読み出し位置が制御されて読み出され、乗算部533に供給される。
【0061】
一方、この実施の形態においてDSP53は、例えば、ROM55に記憶保持されている情報に基づいて、所定の符号パターンのPN符号のうち、そのときにDSP53において処理対象となっているGPS衛星からの信号に使用されているPN符号と同じ系列の1周期分(1023チップ)のPN符号を発生させる。
【0062】
DSP53において発生するようにされた1周期分のPN符号は、FFT処理部535に供給されてFFT処理され、その結果がメモリ536に書き込まれる。このメモリ536としては、図4において括弧内に示したように、例えば、RAM54が用いられるようにされる。このメモリ536からは、通常の場合と同様に、FFT結果が低い周波数から順に読み出されて乗算部533に供給される。
【0063】
乗算部533では、メモリ532からの受信信号であるIFデータのFFT結果と、メモリ536からのPN符号のFFT結果とが乗算され、周波数領域におけるIFデータとPN符号との相関の度合いが演算される。ここで、乗算部533での乗算は、受信信号の離散フーリエ変換結果と、拡散符号の離散フーリエ変換結果とのどちらか一方の複素共役と他方とを乗算する演算となる。そして、その乗算結果は逆FFT処理部537に供給されて、周波数領域の信号が時間領域の信号に戻される。
【0064】
逆FFT処理部537から得られる逆FFT結果は、IFデータとPN符号との時間領域における相関検出信号となっており、この相関検出信号は、相関点検出部538に供給される。相関点検出部538では、IFデータとPN符号との同期が取れたかどうかを検出し、同期が取れたと検出した場合には、相関検出信号のピーク値の位相を相関点として検知する。
【0065】
この相関検出信号は、拡散符号の1周期分の各チップ位相における相関値を示すものとなっており、IFデータ中の拡散符号と、拡散符号発生器534からの拡散符号(PN符号)とが同期している場合には、図5に示すように、1023チップのうちのある1つの位相での相関が、予め決められるスレッショールド値を超えるようなピーク値を示す相関波形が得られる。このピーク値の立つチップ位相が、相関点の位相となる。
【0066】
一方、IFデータ中の拡散符号と、拡散符号発生部534からの拡散符号とが同期していない場合には、図5のようなピーク値が立つ相関波形は得られず、いずれのチップ位相においても、予め定められるスレッショールド値を超えるようなピークは立たない。
【0067】
相関点検出部538は、例えば、予め定めた値を超えるピーク値が、この相関点検出部538に供給される相関検出信号に存在するかどうかにより、受信信号であるIFデータとこのGPS受信機において発生させるようにしたPN符合との同期がとれたかどうかを検出し、同期が取れたと検出した場合には、上述のピーク値の位相を相関点として検知する。
【0068】
以上の説明では、受信信号であるIFデータのキャリア成分については考慮していないが、実際には、受信信号r(n)は、図27の式(3)に示すようにキャリアを含んでいる。この式(3)においては、Aは振幅、d(n)はデータ、foは中間周波信号におけるキャリア角周波数、n(n)はノイズを表している。
【0069】
サンプラ51でのサンプリング周波数をfs、サンプリング数をN(したがって、0≦n<N、0≦k<N)とすると、離散フーリエ変換後の離散周波数kと実周波数fとの関係は、0≦k≦N/2では、f=k・fs/N、N/2<k<Nではf=(k−N)・fs/N(f<0)である。なお、離散フーリエ変換の性質により、R(k)、C(k)は、k<0、k≧Nでは循環性を示す。
【0070】
そして、受信信号r(n)から、データd(n)を得るためには、拡散符号c(n)とキャリアcos2πnf0との同期をとってキャリア成分を除去する必要がある。すなわち、後述する図27の式(2)で、R(k)のみにキャリア成分が含まれている場合には、図5のような相関波形が得られない。
【0071】
この実施の形態では、FFTによる周波数領域での処理のみの簡単な構成により、拡散符号c(n)とキャリアcos2πnf0との同期をとってキャリア成分を除去することができるようにしている。
【0072】
すなわち、FFT処理部531から得られるGPS衛星からの受信信号であるIFデータのFFT結果は、通常は、受信信号の周波数成分の周波数が低いものから順にメモリ532から読み出されて、乗算部533に供給されるが、この実施の形態では、メモリ532からは、DSP53が読み出しアドレス制御部として機能し、DSP53からの制御に従って、読み出しアドレスがシフト制御されて、順次、IFデータのFFT結果が読み出される。
【0073】
DSP53には、受信信号を得たGPS衛星についてのドップラーシフト量を正確に見積もり、かつ、GPS受信機内部の発振周波数および時間情報を正確に校正することに基づいて検出した受信信号のキャリア周波数の情報が供給される。このキャリア周波数の情報は、GPS受信機内部でのみ作成することもできるが、通常は、例えば、通信ネットワーク等を通じて外部から取得するようにすることもできる。
【0074】
そして、DSP53は、この取得したキャリア周波数の情報に基づいて、そのキャリア周波数分だけ、読み出しアドレスをシフトして、メモリ532から受信信号であるIFデータのFFT結果を、順次、読み出し、乗算部533に供給するようにする。
【0075】
このように受信信号r(n)のFFT結果を、メモリ532から、受信信号のキャリア周波数分だけシフトして読み出すことにより、後述するように、キャリア成分を除去した受信信号のFFT結果と等価なFFT結果を得ることができ、そのキャリア成分を除去したFFT結果と、拡散符号の1周期分のFFT結果との乗算結果を逆拡散することにより、確実に図5のように相関点でピークを生じる相関検出出力が得られる。
【0076】
なお、後述もするように、メモリ532からのFFT結果の読み出しアドレスを制御するのではなく、メモリ536からの拡散符号のFFT結果の読み出しアドレスを制御することにより、拡散符号のFFT結果に、受信信号r(n)のキャリア分を加え、乗算部533での乗算によって、実質的によりキャリア成分の除去を行うようにすることもできる。
【0077】
以下に、メモリ532または536からの読み出しアドレスの制御によって、受信信号のキャリアとPN符号(拡散符号)との同期によるキャリア成分の除去について、DSP53でのデジタルマッチドフィルタの処理の動作説明と共に、さらに詳細に説明する。
【0078】
この実施の形態において、DSP53では、デジタルマッチドフィルタの処理が行われるものであるが、このデジタルマッチドフィルタの処理の原理は、図27の式(1)に示すように、時間領域での畳み込みのフーリエ変換が周波数領域では乗算になるという定理に基づくものである。
【0079】
この式(1)において、r(n)は時間領域の受信信号、R(k)はその離散フーリエ変換を表す。また、c(n)は拡散符号発生部からの拡散符号、C(k)はその離散フーリエ変換を表す。nは離散時間、kは離散周波数である。そして、F[]は、フーリエ変換を表している。
【0080】
2つの信号r(n)、c(n)の相関関数を改めてf(n)と定義すると、f(n)の離散フーリエ変換F(k)は、図27の式(2)のような関係になる。したがって、r(n)を図2のA/D変換器45からの信号とし、c(n)を拡散符号発生部534からの拡散符号とすれば、r(n)とc(n)の相関関数f(n)は、通常の定義式によらず、前記式(2)により以下の手順で計算できる。
【0081】
・受信信号r(n)の離散フーリエ変換R(k)を計算する。
・拡散符号c(n)の離散フーリエ変換C(k)の複素共役を計算する。
・R(k)、C(k)の複素共役より、式(2)のF(k)を計算する。
・F(k)の逆離散フーリエ変換により相関関数f(n)を計算する。
【0082】
ところで、前述したように、受信信号r(n)に含まれる拡散符号が、拡散符号発生部534からの拡散符号c(n)と一致していれば、上記手順により計算した相関関数f(n)は、図5のように相関点でピークを生ずる時間波形となる。上述したように、この実施の形態では、離散フーリエ変換および逆フーリエ変換に、FFTおよび逆FFTの高速化アルゴリズムを適用したので、定義に基づいて相関を計算するより、かなり高速に計算を行うことができる。
【0083】
次に、受信信号r(n)に含まれるキャリアと拡散符号との同期について説明する。
前述したように、受信信号r(n)は、図27の式(3)に示すようにキャリアを含んでいる。受信信号r(n)から、データd(n)を得るためには、拡散符号c(n)とキャリアcos2πnf0との同期をとって除去する必要がある。すなわち、前述の図27の式(2)で、R(k)のみにキャリアが含まれている場合には、図5のような相関波形が得られない。
【0084】
ドップラーシフト量が正確に見積もられ、かつ、GPS受信機内部の発振周波数および時間情報が正確であれば、受信信号r(n)のキャリア周波数f0が既知となる。その場合には、図6に示すように、FFT処理部531の前段に乗算部541を設け、この乗算部541において受信信号r(n)と信号発生部542からの周波数f0のキャリアとを乗算して周波数変換することにより、FFTを行う前に受信信号r(n)からキャリア成分を除くことができる。
【0085】
その場合には、メモリ532からは、そのキャリア成分が除去された受信信号r(n)のFFT結果が得られ、このFFT結果と、拡散符号c(n)のFFT結果とが乗算部533で乗算されるので、逆FFT処理部537の出力としては、図5のように相関点にピークを生じる時間波形が確実に得られる。
【0086】
なお、図6で括弧内に記載したように、受信信号r(n)からキャリア成分を除去するのではなく、拡散符号c(n)についてのFFT処理部535の前段に乗算部541を設けて、この乗算部541において拡散符号c(n)と信号発生部542からの周波数f0のキャリアとを乗算して周波数変換することにより、拡散符号にキャリア成分を加えるようにしても同様である。
【0087】
すなわち、その場合には、メモリ532から読み出した受信信号のFFT結果に含まれるキャリア成分と、メモリ536から読み出した拡散符号のFFT結果に含まれる、加えられたキャリア成分とが同期しているため、逆FFT処理部537からは、図5のように相関点でピークを生じる相関検出出力が得られる。
【0088】
しかし、以上説明したような図6のように時間領域の信号にキャリア周波数の信号を乗算する方法による場合には、キャリア成分を除くための乗算部が特に必要になり、構成が複雑になると共に、その乗算演算の分だけ、処理速度が遅くなるという不利益がある。
【0089】
ところで、FFTの性質として、上述のような周波数乗算は、図27の式(4)のように表すことができる。この式(4)で、F[]は離散フーリエ変換、φ0 はキャリアとの位相差、k0 はf0 に対応するkであって、f0 =k0 ・fs /Nである。この式(4)より、受信信号r(n)を図6のように周波数変換した信号のFFTは、r(n)のFFTであるR(k)を、キャリア周波数分k0だけシフトした形になる。
【0090】
以上のことから、図6の構成は、図7のような構成に置換可能となる。すなわち、受信信号r(n)や拡散符号c(n)にキャリア周波数を乗算する代わりに、受信信号のFFT結果または拡散符号のFFT結果をメモリ532またはメモリ536からの読み出す際の読み出しアドレスを、キャリア周波数分だけシフトするようにするものである。
【0091】
この場合に、図7で、受信信号r(n)をシフトする場合はダウンコンバージョンで、k0 >0とし、また、拡散符号c(n)をシフトする場合はアップコンバージョンで、k0 <0とする。
【0092】
以上説明したように、式(4)に示したFFTの性質を利用すれば、図6の信号発生器542は不要になり、図7のように、FFT結果のメモリからの読み出しアドレス位相をシフトするだけでよくなり、構成が簡単になると共に、処理の高速化に繋がる。
【0093】
なお、前述の式(4)における位相差φ0 は未知であるため、図4では無視しているが、例えば、図27の式(5)により計算されるF’(k)の逆FFTの演算結果として得られる相関関数f’(n)(0≦n<N)は複素数となり、その実部をfR’(n)、虚部をfI’(n)とすると、相関ピークの振幅|f’(n)|は、図27の式(6)に示すようにして得られ、位相φは、図27の式(7)に示すようにして得られるので、式(4)の右辺のexp(jφ0 )の乗算は省略してよい。なお、位相φは、式(3)のデータd(n)の符号に対応したπだけ異なる2つの値に式(4)の位相差φ0 が加わった値となる。
【0094】
そして、図4の各ブロックの出力には、上述したような信号出力r(n)、c(n)および演算結果R(k)、C(k)、f'(n)が示されている。
【0095】
このように、この実施の形態のGPS受信機において、FFTを利用してデジタルマッチドフィルタを構成する場合に、図4のように受信信号のFFT結果を、キャリア周波数分だけメモリのアドレスをシフトして、拡散符号と乗算する構成によって、相関点npが、例えば図4に示すような波形で得られ、4個のGPS衛星、つまり4種類の拡散符号c(n)について、相関点npが判れば、GPS受信機位置の計算が可能になる。
【0096】
すなわち、この実施の形態によれば、FFTを利用したデジタルマッチドフィルタ処理を行う場合において、受信信号のキャリアと拡散符号との同期を取るために、時間領域で乗算を行うことなく、受信信号のFFT結果と拡散符号のFFT結果同士の周波数領域での乗算の際に、受信信号のFFT結果と拡散符号のFFT結果のうちの一方のFFT結果をシフトするという簡便な方法により、受信信号のキャリア成分を除去することができる。
【0097】
なお、図4の例では、受信信号のFFT結果R(k)の方の、メモリの読み出しアドレスをシフトさせたが、拡散符号のFFT結果C(k)の方のメモリの読み出しアドレスを、受信信号のFFT結果R(k)の場合とは逆方向にシフト(乗算器でのアップコンバージョンの形になる)しても良い。
【0098】
また、上述の実施の形態の説明においては、拡散符号発生器534とFFT処理部535とを別々に設けるようにしたが、それぞれのGPS衛星に対応する拡散符号をあらかじめFFTしておいたものをメモリに記憶させておくことで、衛星信号の受信時における拡散符号c(n)のFFT計算を省略することができる。
【0099】
このように、この実施の形態のGPS受信機の同期捕捉部5は、FFTを用いて同期捕捉処理を高速に行い、C/Aコード位相、キャリア周波数、相関ピークレベル、衛星番号を検出して、これらを制御部7に通知し、制御部7は、これらを同期保持部6に供給することになる。
【0100】
なお、図1において点線で示したように、同期捕捉部5において検出するようにしたC/Aコード位相、キャリア周波数、相関ピークレベル、衛星番号を直接に、同期捕捉部5から同期保持部6に通知するようにすることもできる。
【0101】
[同期捕捉部の具体的な構成と動作の他の例(1)について]
図4に示した例の場合には、GPS衛星からの受信信号のキャリア周波数が既知である場合であったが、以下に説明する他の例は、キャリア周波数が未知である場合である。図8は、この例の同期捕捉部5の具体的な構成と動作について説明するためのブロック図である。この図8において、図4を用いて前述したGPS受信機の同期捕捉部5と同一部分には、同一番号を付してある。
【0102】
この例では、図8に示すように、相関点検出部538の相関検出出力を、読み出しアドレス制御部539に供給する。読み出しアドレス制御部539は、受信信号r(n)のFFT結果のメモリ532からの読み出しアドレスの前記シフト量を、過去のデータから決定した予測アドレスを中心に、相関点検出部538の相関検出出力に基づいて変更制御して、相関点検出部538で図5に示したようなピークが得られるようにする。相関点検出部538で図5に示したようなピークが得られたときには、読み出しアドレス制御部539は、読み出しアドレスのシフト制御を、そのときのシフト量で停止する。
【0103】
この例における同期捕捉部5のDSP53での処理の流れを、図9および図10のフローチャートを参照しながら説明する。なお、この図9および図10のフローチャートは、DSP53でのソフトウエア処理に対応するものである。
【0104】
まず、周波数変換部4のA/D変換器45にてデジタル信号に変換されたIF信号(受信信号)を信号r(n)としてメモリ52に取り込む(ステップS1)。次に、この信号r(n)をFFT処理部531でFFTし、そのFFT結果R(k)をメモリ532に書き込む(ステップS2)。次に、信号を受信したGPS衛星に対応する拡散符号のFFT結果C(k)をメモリ536にセットする(ステップS3)。
【0105】
次に、受信信号r(n)のFFT結果R(k)のメモリ532からの読み出しアドレスのシフト量の初期値k0’を、過去のデータから決定する(ステップS4)。そして、決定した初期値k0’を、メモリ532からのFFT結果の読み出しアドレスのシフト量k'として設定すると共に、シフト制御の変更回数mを初期値m=0にセットする(ステップS5)。
【0106】
次に、メモリ532から、受信信号r(n)のFFT結果R(k)を、読み出しアドレスを、k'だけシフトして読み出す(ステップS6)。そして、読み出したFFT結果R(k−k')と、拡散符号のFFT結果とを乗算して相関関数F’(k)を求める(ステップS7)。
【0107】
次に、この相関関数F’(k)の逆FFTを行って時間領域の関数f’(n)を求める(ステップS8)。そして、この関数f’(n)について、ピーク値f’(np)を求め(ステップS9)、そのピーク値f’(np)が予め設定されているスレッショールド値fthより大きいかどうか判別する(ステップS11)。
【0108】
ステップS11での判別の結果、ピーク値f’(np)が、予め設定されているスレッショールド値fthより小さいときには、相関点が検出できなかったとして、シフト制御の変更回数mが予め設定された最大値mmaxよりも小さいかどうか判別する(ステップS16)。そして、シフト制御の変更回数mが予め設定された最大値mmaxよりも小さいと判別したときには、シフト制御の変更回数mを1だけインクリメント(m=m+1)すると共に、新たなシフト量k'を、
k'=k'+(−1)×m
として設定し(ステップS17)、その後、ステップS6に戻る。そして、上述したステップS6以降の処理を繰り返す。
【0109】
また、ステップS16で、シフト制御の変更回数mが、予め設定された最大値mmaxよりも大きいと判別したときには、すべての衛星について、上述の拡散符号同期サーチ処理が終了したか否か判別し(ステップS14)、すべての衛星についての拡散符号同期サーチ処理が終了したと判別したときには、サーチ動作を終了する(ステップS18)。
【0110】
また、ステップS14で、拡散符号同期サーチが終了していない衛星があると判別したときには、次に拡散符号同期サーチを行う衛星を選択し、その選択した衛星が用いる拡散符号c(n)に拡散符号を変更する(ステップS15)。そして、ステップS3に戻り、上述したステップS3以降の処理を実行する。
【0111】
また、ステップS11において、ピーク値f’(np)が、予め設定されているスレッショールド値fthより大きいと判別したときには、そのピーク値f’(np)を取る離散時間(拡散符号の位相)npを相関点として検出すると共に、前記FFT結果R(k)のメモリ532からの読み出しアドレスのシフト量の初期値k0’を、そのときのシフト量k'に設定し直す(ステップS12)。
【0112】
そして、検出した相関点npが、4個目であるか否か判別し(ステップS13)、4個目であると判別したときには、後述もするように受信機位置計算処理および同期保持部6における同期保持処理へ移行する。なお、ステップS12で検出した相関点npが得られるときの読み出しアドレスシフト量k'から、当該受信中のGPS衛星についてのドップラーシフト量およびGPS受信機の発振周波数の誤差を推定することができる。すなわち、受信信号のキャリア周波数を検知することができる。
【0113】
ステップS13で、検出した相関点npが、4個以下であると判別したときには、すべての衛星について、上述の拡散符号同期サーチ処理が終了したか否か判別し(ステップS14)、すべての衛星についての拡散符号同期サーチ処理が終了したと判別したときには、サーチ動作を終了する(ステップS18)。
【0114】
また、ステップS14で、拡散符号同期サーチが終了していない衛星があると判別したときには、次に拡散符号同期サーチを行う衛星を選択し、その選択した衛星が用いる拡散符号c(n)に拡散符号を変更する(ステップS15)。そして、ステップS3に戻り、上述したステップS3以降の処理を実行する。なお、上述したような信号出力および演算結果は、図8中にも示してある。
【0115】
以上のようにして、この例によれば、GPS衛星からの受信信号のキャリア周波数が未知であっても、FFTによる周波数領域での処理を積極的に用いて、受信信号のキャリアと拡散符号との同期検出を行って、キャリア成分を除去することができる。したがって、FFTを利用したデジタルマッチドフィルタによるGPS受信信号と拡散符号との相関点の検出を、高速、かつ簡単な構成で実現することができる。
【0116】
なお、この例においても、それぞれの衛星に対応する拡散符号をあらかじめFFTしておいたものをメモリに記憶させておくことで、衛星信号の受信時における拡散符号c(n)のFFT計算を省略することができる。
【0117】
[同期捕捉部の具体的な構成と動作の他の例(2)について]
上述したように、デジタルマッチドフィルタによって受信信号と拡散符号の相関点を検出する場合には、その相関点を検出する単位データ長は、拡散符号の1周期長とするのが通常である。
【0118】
しかし、GPS衛星からの受信信号では、前述したように、データの1ビットは、拡散符号の20周期分であり、この20周期分では、すべて同じパターンの符号となっている。この例では、この特質を生かして、デジタルマッチドフィルタによって受信信号と拡散符号の相関点を検出する単位データ長は、拡散符号の複数周期長とする。
【0119】
このように、受信信号について、拡散符号の複数周期分単位でFFT演算処理をすることにより、受信感度が向上し、同じ時間領域の信号を累積加算する方法に比べてキャリア周波数のサーチがし易くなる。以下、この例(他の例(2))にいて、さらに説明する。
【0120】
時間領域において、拡散符号のM周期(Mは2以上の整数)に渡って累積加算を行った1周期長のデータに対して相関点を検出する先行例がある(例えば米国特許4998111号明細書または「An Introduction to Snap TrackTM Server−Aided GPS Technology, ION GPS−98 Proceedings」参照)。
【0121】
すなわち、図11に示すように、この先行例の方法においては、受信信号r(n)について、拡散符号との乗算結果を、M周期分に渡って累積加算するものである。この先行例の方法は、GPS衛星からの受信信号の周期性とノイズの統計的な性質とを利用してC/Nを高めるもので、受信信号のキャリアと拡散符号の同期が事前にとれている状態であれば、C/NがM倍に改善され、したがって受信感度(相関点の検出感度)はM倍に向上する。
【0122】
しかし、受信信号のキャリアと拡散符号との同期がとれていないと位相の異なるM個のキャリアが加算合成されてしまい、累積加算した結果においては肝心のGPS信号が相殺されてしまって相関ピークは検出できなくなる。
【0123】
このため、受信信号のキャリア周波数が未知の場合には、キャリア周波数をサーチする必要があり、サーチする各々の周波数毎に累計加算を行うといった効率の悪い操作を行わざるを得なくなる。
【0124】
これに対して、図4、図8を用いて上述した例では、上述したようにして周波数領域において、FFT結果のメモリからの読み出しアドレスをシフトするという簡便な方法により、受信信号のキャリアと拡散符号との同期がとれるので、累積加算の効果を最大限に発揮させることができる。
【0125】
この例では、図8を用いて前述した方式と同様に、GPS衛星からの受信信号のキャリア周波数は未知として、キャリア周波数のサーチを行うのであるが、その場合に、受信信号r(n)については、拡散符号のM周期分毎にFFTを行うようにする。そして、この拡散符号のM周期分毎に、受信信号のFFT結果のメモリからの読み出しアドレスのシフト量の制御による受信信号のキャリア周波数のサーチを行う。
【0126】
前述した図27の式(3)中のデータd(n)は、M≦20とすれば、拡散符号のM周期中では1または−1の固定値になるので無視できる。すると、式(3)は、
r(n)=A・c(n)cos2πnf0 +n(n)
となり、これをM周期長で離散フーリエ変換すると、データの数はM×N(Nは拡散符号の1周期分のデータ数)なので、離散フーリエ変換後のkと実周波数fの関係は、サンプリング周波数fs に対して0≦k≦MN/2では、f=kfs /MNとなり、MN/2<k<MNでは、f=(k−MN)fs /MN(f<0)となって、分解能がM倍になる。
【0127】
しかし、拡散符号c(n)は周期信号であり、その1周期長の時間をT(GPSのC/AコードではT=1ミリ秒)とすると、f=1/T以下の精度の周波数成分はない。したがって、受信信号r(n)の離散フーリエ変換後のFFT結果R(k)(ただし、0≦k<MN)中の拡散符号c(n)の周波数成分はM個おき、すなわち、MN個のデータのうちのN個の点に集中し、その振幅は、M周期分が累積加算されるため、1周期長での同じ周波数成分のM倍になる。M=4としたときのスペクトラム例を図12に示す。
【0128】
図12の例では、信号のスペクトラムが4個おきにあり、それらの間には信号成分はない。N個の点以外では、拡散符号c(n)の周波数成分は0になる。一方、ノイズn(n)は、多くの場合、非周期信号であるから、MN個の全周波数成分にエネルギーが分散される。したがって、受信信号r(n)のFFT結果R(k)中における拡散符号c(n)のN個の周波数成分の総和において、時間領域での累積加算と同様に、C/NがM倍向上することになる。
【0129】
受信信号r(n)中に、図27の式(3)に示したキャリア成分cos2πnf0がなければ、FFT結果R(k)中の拡散符号c(n)の周波数成分は、k=i×M(0≦i<N)に集中するが、キャリア成分が存在するので、この例では、メモリからのFFT結果R(k)の読み出しアドレスを、拡散符号の1周期当たりについて、k=(i×M)−k0 として、キャリア周波数分のk0 だけ循環的にシフトするようにする。
【0130】
以上説明した例の全体の構成は、図8に示した場合と同様となるが、メモリ52に取り込まれるIFデータは、拡散符号のM周期分となる上述の処理動作を、そのDSP53の内部構成に反映させた構成図を図13に示す。ただし、図においては、0≦K<MN,0≦k<Nとしている。
【0131】
すなわち、FFT処理部531からは、FFT演算処理単位を拡散符号のM周期とするFFT結果R(K)が得られ、メモリ532に書き込まれる。そして、このメモリ532から、読み出しアドレスがシフト制御されてFFT結果が読み出されて乗算部533に供給され、メモリ536からの拡散符号c(n)のFFT結果と乗算される。
【0132】
この例の場合、この乗算部533から得られる相関関数F(k)は、図27の式(8)に示すようなものとなるようにされる。なお、式(8)で、kは、拡散符号のFFT結果C(k)の複素共役におけるkであり、k0 については、f0 =k0 ・fs /MNである。
【0133】
このとき、図13において、逆FFT処理部537から得られる相関関数f’(n)のピークは、R(K)がM周期の拡散符号を含むので、0≦n<MNの範囲においてM個現れることになる。しかし、相関点の検出は、拡散符号の1周期についての1個でよいので、逆FFT処理部537での計算は、図4、図8を用いて説明した例の場合と同様に、0≦n<Nの範囲だけで済み、N≦n<MNにおける計算は必要ない。
【0134】
以上のようにして、この例によれば、受信信号r(n)のFFTを拡散符号の1周期のM倍とすることにより、相関点の検出感度、したがって、受信感度を向上させることができる。
【0135】
なお、この例においても、それぞれの衛星に対応する拡散符号をあらかじめFFTしておいたものをメモリに記憶させておくことで、衛星信号の受信時における拡散符号c(n)のFFT計算を省略することができる。
【0136】
[同期捕捉部の具体的な構成と動作の他の例(3)について]
前述の同期捕捉部の具体的な構成と動作の他の例(2)では、拡散符号のM周期(M>1)分を含む受信信号r(n)をFFT処理することで、未知のキャリア周波数のサーチを可能にすると共に、受信感度の向上を図ることができるものであるが、データサンプルの数が、拡散符号1周期分の場合のN個からM倍のMN個になるため、FFTの計算時間および図13におけるメモリ532の容量が大きくなる。この例(他の例(3))は、このメモリ容量の問題を改善したものである。
【0137】
図12の例のように、拡散符号のM周期(M>1)をFFT処理単位とした場合のFFT結果R(K)中の周波数成分はM個おきにしか存在しないので、それらのM個おきの周波数成分の間の成分は不要である。
【0138】
ここで、FFT結果R(K)(ただし、0≦K<MN)を、R(i×M)、R(i×M+1)、R(i×M+2)、・・・、R(i×M+M−1)(0≦i<N)のM組に分ける。M=4組に分けた場合の、それぞれの組の分割スペクトラムの例を図14〜図17に示す。キャリア周波数は未知であるが、M組のうちの1組に、相関を検出する対象となるGPS信号のエネルギーがある。図14〜図17の例では、図14のR(i×M)の組に、受信信号r(n)の周波数成分が含まれ、それ以外の3つの分割スペクトラムにはノイズしかない状態を表している。
【0139】
なお、実際の信号ではキャリア周波数k0は、正確にはk'=k0でないため、例えばk0がk0’とk0’+1との間にあったとすると、k'=k0’とk'=k0’+1との両方で相関が検出され、k0に近い方が大きな相関を示す。
【0140】
FFT結果R(K)を前記のようにM組に分割した場合、Mが2のべき乗であれば、FFT計算手順の性質から、各組は、それぞれ独立に計算できる。
【0141】
図18は、8個のデータg(0)〜g(7)のFFT計算の信号の流れ図である。図18のFFT結果G(K)を、4個おきのデータに分けるとすると、(G(0),G(4))、(G(1),G(5))、(G(2),G(6))、(G(3),G(7))の4組となる。この中の(G(0),G(4))に注目すると、図19に示す部分だけの計算でよいことが判る。そして、この計算の構造は、他の組(G(1),G(5))、(G(2),G(6))、(G(3),G(7))においても同様となるものである。
【0142】
この4組のデータを1組ずつ調べることにすると、まず、(G(0),G(4))を計算し、調べ終わったら(G(0),G(4))を格納したメモリを開放して次の組に進む。(G(1),G(5))、(G(2),G(6))、(G(3),G(7))と、順次計算して調べ終わったらメモリを開放するという操作を行うことにより、メモリは、G(0)〜G(7)を一括してFFTを求めるのに比べて、1/4のメモリ容量でよくなる。乗算回数は、M個に分割して計算した場合と全体を一括してFFT計算をした場合とでは同じになる。
【0143】
上記の例と同様のことが、Mを2のべき乗にすることで、R(i×M)、R(i×M+1)、R(i×M+2)、・・・、R(i×M+M−1)に適用でき、FFT結果を格納するメモリの容量は、MNの1/M、すなわち、Nで済む。また、R(i×M)、R(i×M+1)、R(i×M+2)、・・・、R(i×M+M−1)の順で相関を検出する際に、途中の組で相関点が検出できてしまえば、残る組については調べる必要がなくなるので、拡散符号のM周期毎の受信信号を一括してFFT処理して検出するより、処理時間が短くなると期待できる。
【0144】
以上説明したこの例の場合の拡散符号およびキャリア同期のフローチャートを、図20および図21に示す。図20および図21の例ではFFTの回数を最小にするため、キャリア周波数のサーチを、各FFTの組毎に、対象とする衛星すべてについて相関検出を行うようにしている。なお、この図20および図21のフローチャートは、同期捕捉部5のDSP53でのソフトウエア処理に対応するものである。
【0145】
まず、R(K)(0≦K<MNであり、K=i×M+j)の分割組数についての変数j(0≦j≦M)を初期化し(ステップS21)、次に、周波数変換部4のA/D変換器45にてデジタル信号に変換された受信信号を信号r(n)(ただし、0≦n≦MN)としてメモリ52に取り込む(ステップS22)。次に、この信号r(n)をFFT処理部531でFFTし、そのFFT結果R(K)(ただし、K=i×M+j)をメモリ532に書き込む(ステップS23)。次に、信号を受信したGPS衛星に対応する拡散符号のFFT結果C(k)をメモリ536にセットする(ステップS24)。
【0146】
次に、受信信号r(n)のFFT結果R(K)のメモリ532からの読み出しアドレスのシフト量の初期値k0’を、例えば過去のデータから決定する(ステップS25)。そして、決定した初期値k0’を、メモリ532からのFFT結果の読み出しアドレスのシフト量k'として設定すると共に、シフト制御の変更回数mを、初期値m=0にセットする(ステップS26)。
【0147】
次に、メモリ532から、受信信号r(n)のFFT結果R(K)を、その読み出しアドレスを、k'だけシフトして読み出す(ステップS27)。そして、読み出したFFT結果R(K−k')と、拡散符号のFFT結果とを乗算して相関関数F’(k)を求める(ステップS28)。
【0148】
次に、この相関関数F’(k)の逆FFTを行って時間領域の関数f’(n)を求める(ステップS29)。そして、この関数f’(n)について、ピーク値f’(np)を求め(ステップS30)、そのピーク値f’(np)が予め設定されているスレッショールド値fthより大きいかどうか判別する(ステップS31)。
【0149】
ステップS31での判別の結果、ピーク値f’(np)が、予め設定されているスレッショールド値fthより小さいときには、相関点が検出できなかったとして、シフト制御の変更回数mが予め設定された最大値mmaxよりも小さいかどうか判別する(ステップS32)。そして、シフト制御の変更回数mが予め設定された最大値mmaxよりも小さいと判別したときには、シフト制御の変更回数mを1だけインクリメント(m=m+1)すると共に、新たなシフト量k'を、
k'=k'+(−1)×m
として(ステップS33)、ステップS27に戻る。そして、上述したステップS27以降の処理を繰り返す。
【0150】
また、ステップS32で、シフト制御の変更回数mが、予め設定された最大値mmaxよりも大きいと判別したときには、すべての衛星について、上述の拡散符号同期サーチ処理が終了したか否か判別し(ステップS36)、すべての衛星についての拡散符号同期サーチ処理が終了したと判別したときには、変数jがその最大値Mより小さいかどうか判別し(ステップS38)、小さいときには、変数jをインクリメントし(ステップS39)、その後、ステップS23に戻り、このステップS23以降の処理を繰り返す。
【0151】
また、ステップS38で、変数jが最大値Mに等しいあるいは最大値Mより大きいと判別したときには、サーチ動作を終了する(ステップS40)。
【0152】
また、ステップS36で、拡散符号同期サーチが終了していない衛星があると判別したときには、次に拡散符号同期サーチを行う衛星を選択し、その選択した衛星が用いる拡散符号c(n)に拡散符号を変更する(ステップS37)。そして、ステップS24に戻り、上述したステップS24以降の処理を実行する。
【0153】
また、ステップS31において、ピーク値f’(np)が、予め設定されているスレッショールド値fthより大きいと判別したときには、そのピーク値f’(np)を取る離散時間(拡散符号の位相)npを相関点として検出すると共に、前記FFT結果R(k)のメモリ532からの読み出しアドレスのシフト量の初期値k0’を、そのときのシフト量k'に設定し直す(ステップS34)。
【0154】
そして、検出した相関点npが、4個目であるか否か判別し(ステップS35)、4個目であると判別したときには、受信機位置計算処理および同期保持処理へ移行する。なお、ステップS34で検出した相関点npが得られるときのシフト量k'から、当該受信中のGPS衛星についてのドップラーシフト量およびGPS受信機の発振周波数の誤差が推定することができる。
【0155】
ステップS35で、検出した相関点npが、4個以下であると判別したときには、ステップS36に進み、上述したステップS36以降の処理を実行する。
【0156】
なお、図4を用いて説明した方式の場合のように、キャリア周波数が既知である場合には、R(i×M)、R(i×M+1)、R(i×M+2)、・・・、R(i×M+M−1)の中で該当するものだけを計算すれば、拡散符号の多周期分を含む時間分を単位として受信信号をFFTする方法は、同様に適用できる。
【0157】
以上説明した4つの例のGPS受信機の拡散符号およびキャリアの同期捕捉方法は、従来の手法であるスライディング相関器が原理的に時間を要するのに対し、高速なDSP等の活用で処理時間の大幅な短縮が期待できる。
【0158】
なお、以上の実施の形態の説明では、GPS衛星からの受信信号の場合に、この発明を適用したが、この発明は、GPS衛星からの信号に限らず、拡散符号でデータをスペクトラム拡散した信号により搬送波が変調されている受信信号の拡散符号およびキャリアの同期捕捉を行う場合のすべてに適用可能である。
【0159】
[同期保持部について]
同期保持部6は、制御部7を通じて供給される同期捕捉部5からのC/Aコード位相、キャリア周波数、衛星番号に応じて、これらの情報を設定し、周波数変換部4からのIFデータに対して、キャリア周波数の同期と、C/Aコードの位相同期とを迅速に捕捉し、捕捉したキャリア周波数の同期と、C/Aコードの位相同期とを保持するように動作する。
【0160】
この場合、同期保持部6は、同期捕捉部5において捕捉されたキャリア周波数の同期と、C/Aコードの位相同期とを用いて、瞬時にキャリア周波数の同期と、C/Aコードの位相同期とを捕捉し、この同期が取れた状態を保持するように動作する。そして、この実施の形態において、同期保持部6は、コスタスループとDLL(Delay Locked Loop)とにより構成されたものである。
【0161】
図22は、同期保持部6の構成例を説明するためのブロック図である。図22において、参照符号612〜619が付された部分がコスタスループ61である。また、図22において、参照符号621〜644が付された部分がDLL62である。
【0162】
コスタスループ61は、キャリア周波数の同期の保持、送信データである航法メッセージの抽出を行う部分であり、DLL62は、C/Aコードの位相同期の保持を行う部分である。そして、コスタスループ61とDLL62とが協働し、受信信号であるIFデータをスペクトラム拡散しているPN符号と同じPN符号を用いてスペクトラム逆拡散を行ってスペクトラム拡散前の信号を得るとともに、このスペクトラム拡散前の信号を復調して航法メッセージを得て、これを制御部7に供給する。以下、コスタスループ61とDLL62との動作について具体的に説明する。
【0163】
(コスタスループ61について)
周波数変換部4からのIFデータは、同期保持部6の乗算器611、621、631に供給される。これら乗算器611、621、631のそれぞれには、図22に示すように、PN符号発生器(図22においてはPNGと記載。)644からの一致(プロンプト)PN符号P、進み(アーリ)PN符号E、遅れ(レート)PN符号Lのそれぞれが供給される。
【0164】
PN符号発生器644は、後述もするように、NCO643からの信号に基づいて、一致PN符号Pと、進みPN符号Eと、遅れPN符号Lとを発生させる。この場合、NCO643は、同期捕捉部5の捕捉結果に基づいて制御部7において設定される周波数情報の供給を受け、同期保持しようとしている目的とする受信信号であるIFデータをスペクトラム拡散しているPN符号と、同じPN符号であって、位相が一致する進み遅れのないPN符号を発生させるようにPN符号発生器644を制御する信号を形成し、これをPN符号発生器644に供給する。
【0165】
PN符号発生器644は、NCO643からの信号に基づいて、上述もしたように、同期保持しようとしている目的とするIFデータをスペクトラム拡散しているPN符号と同じPN符号であって、位相が一致する進み遅れのない一致(プロンプト)PN符号Pと、一致(プロンプト)PN符号Pに対して位相が所定量分進むようにされたPN符号である進み(アーリ)PN符号Eと、一致(プロンプト)PN符号Pに対して、位相が所定量分遅れるようにされたPN符号である遅れ(レート)PN符号Lを形成し、乗算器611、621、631のそれぞれに供給する。
【0166】
コスタスループ61の前段に設けられた乗算器611は、周波数変換部4からのIFデータとPN符号発生器644からの一致PN符号Pとを乗算することにより、スペクトラム逆拡散を行い、この逆拡散がなされた信号をコスタスループ61に供給する。
【0167】
コスタスループ61は、図22に示すように、数値制御型発振器(以下、NCOと略称する。)612と、乗算器613、614と、LPF(LowPass Filter)615、616と、位相検出器617と、ループフィルタ618と、相関検出器619とからなっている。
【0168】
乗算器611において逆拡散された信号は、コスタスループ61の乗算器613、614に供給される。図22に示すように、乗算器613には、制御部7からの周波数情報であるキャリア周波数に応じてNCO612において形成される直交位相のI(Sine)信号と、Q(Cosine)信号とのうち、I信号が供給され、乗算器614には、Q信号が供給される。
【0169】
乗算器613においては、逆拡散されたIFデータとNCO612からのI信号とが乗算され、その結果がLPF615を通じて位相検出器617に供給される。また、乗算器614においては、逆拡散されたIFデータとNCO612からのQ信号とが乗算され、その結果がLPF616を通じて位相検出器617に供給される。
【0170】
LPF615、616は、制御部7からのカット・オフ周波数情報の供給を受け、これに供給された信号の帯域外ノイズを除去するものである。位相検出器617は、LPF615、616からの出力信号に基づいて、IFデータのキャリアとNCO612が発生させた信号との位相誤差を例えば1ミリ秒間隔で検出し、この位相誤差をループフィルタ618を介してNCO612に供給する。これによりNCO612が制御されて、NCO612からの出力キャリア信号の位相が、受信信号のキャリア成分に追従するようにされる。
【0171】
なお、コスタスループ61のループフィルタ618は、制御部7から供給されるパラメータに応じて、位相検出器617からの位相誤差情報を積分して、NCO612を制御するNCO制御信号を形成するものである。NCO612は、ループフィルタ618からのNCO制御信号によって、前述したように、NCO612からの出力キャリア信号の位相が、受信信号のキャリア成分に追従するようにされるのである。
【0172】
また、コスタスループ61のLPF615、616からの出力は、相関検出器619に供給される。相関検出器619は、これに供給されるLPF615、616からの出力信号を自乗して加算し、これを出力する。この相関検出器619からの出力は、IFデータとPN符号発生器644からの一致PN符号Pとの相関値(P)示すものである。この相関値(P)は、例えば、図示しないレジスタに格納され、制御部7が用いることができるようにされる。
【0173】
制御部7は、相関検出器619からの相関値(P)から、キャリア周波数の同期がロックしているか、アンロックなのかを判定し、アンロックである場合には、キャリア周波数を引き込んでロックするように、コスタスループ61を制御することになる。
【0174】
そして、送信データの復調出力は、LPF615から得られ、これがデコードされて航法メッセージ(ナビゲーションメッセージ)として制御部7において用いることができるようにされる。
【0175】
(DLL62について)
一方、乗算器621は、周波数変換部4からのIFデータとPN符号発生器644からの進みPN符号Eとを乗算することにより、スペクトラム逆拡散を行い、この逆拡散がなされた信号をDLL62の乗算器622、623に供給する。そして、乗算器622には、前述したように、NCO612において形成されるI信号が供給され、乗算器623には、NCO612において形成されるQ信号が供給される。
【0176】
乗算器622は、逆拡散されたIFデータとNCO612からのI信号とを乗算し、その結果をLPF624を通じて相関検出器626に供給する。同様に、乗算器623は、逆拡散されたIFデータとNCO612からのQ信号とを乗算し、その結果をLPF625を通じて相関検出器626に供給する。なお、LPF624、625は、コスタスループ61のLPF615、616と同様に、制御部7からのカット・オフ周波数情報の供給を受け、これに供給された信号の帯域外ノイズを除去するものである。
【0177】
相関検出器626は、これに供給されるLPF624、625からの出力信号を自乗して加算し、これを出力する。この相関検出器626からの出力は、IFデータと、PN符号発生器644からの進みPN符号Eとの相関値(E)示すものである。この相関値(E)は、位相検出器641に供給されるとともに、例えば、図示しないレジスタに格納され、制御部7が用いることができるようにされる。
【0178】
同様に、乗算器631は、周波数変換部4からのIFデータとPN符号発生器644からの遅れPN符号Lとを乗算することにより、スペクトラム逆拡散を行い、この逆拡散がなされた信号をDLL62の乗算器632、633に供給する。乗算器632には、前述したように、NCO612において形成されるI信号が供給され、乗算器633には、NCO612において形成されるQ信号が供給される。
【0179】
乗算器632は、逆拡散されたIFデータとNCO612からのI信号とを乗算し、その結果をLPF634を通じて相関検出器636に供給する。同様に、乗算器633は、逆拡散されたIFデータとNCO612からのQ信号とを乗算し、その結果をLPF635を通じて相関検出器636に供給する。LPF634、635は、前述のLPF624、625と同様に、制御部7からのカット・オフ周波数情報の供給を受け、これに供給された信号の帯域外ノイズを除去するものである。
【0180】
相関検出器636は、これに供給されるLPF634、635からの出力信号を自乗して加算し、これを出力する。この相関検出器636からの出力は、IFデータと、PN符号発生器644からの遅れPN符号Lとの相関値(L)を示すものである。この相関値(L)は、位相検出器641に供給されるとともに、例えば、図示しないレジスタに格納され、制御部7が用いることができるようにされる。
【0181】
位相検出器641は、相関検出器626からの相関値(E)と、相関検出器636からの相関値(L)との供給を受け、両者の位相誤差を検出し、これに基づき相関値(E)と相関値(L)とが同じレベルとなるように、PN符号発生器644に供給するNCOからの出力信号を調整するようにするための信号を形成して、これをループフィルタ642を介してNCO643に供給する。
【0182】
NCO643は、前述もしたように、同期捕捉部5の捕捉結果に応じた制御部7からの初期周波数を示す周波数情報の供給を受け、目的とするGPS衛星からの信号であるIFデータをスペクトラム拡散しているPN符号と同期の合ったPN符号を発生させるようにPN符号発生器644を動作させる信号を発生させるが、上述のように、ループフィルタ642を介して位相検出器641からの信号に基づいて、PN符号発生器644に供給する信号の位相を調整する。
【0183】
これにより、NCO643からの信号に応じてPN符号発生器644において発生させるPN符号の位相が調整され、PN符号発生器644において発生させる一致PN符号Pが、IFデータをスペクトラム拡散しているPN符号に追従するようにされ、一致PN符号Pを用いてIFデータについて正確に逆スペクトラム拡散することができ、コスタスループ61において、受信データの復調ができるようにされる。
【0184】
なお、DLL62のループフィルタ642は、前述したコスタスループ61のループフィルタ618と同様に、制御部7から供給されるパラメータに基づいて、位相検出器641からの位相誤差情報を積分して、NCO643を制御するNCO制御信号を形成するものである。
【0185】
このようにして、スペクトラム拡散変調されたIFデータについて、同期保持部6において同期保持し、送信データとしての航法メッセージが同期保持部6のコスタスループ61により復調される。そして、航法メッセージの復調出力は、前述もしたように、LPF615から得られ、これが図示しないデータ復調回路に供給されて制御部7に供給可能なデータに復調された後、これが制御部7に供給されて測位計算に用いられることになる。
【0186】
なお、実際には、異なる複数個のGPS衛星からの信号を受信して並行して処理することができるように、少なくとも4つ以上のコスタスループ61とDLL62とからなる部分が同期保持部6内に設けられるようにされ、この並列に設けられた各コスタスループ61とDLL62とからなる部分において、上述のようなキャリア周波数とC/Aコードについて、同期の捕捉(同期の引き込み)、および、同期の保持が行われ、航法メッセージが取得するようにされる。
【0187】
[制御部について]
制御部7は、この実施の形態のGPS受信機の各部を制御するとともに、同期保持部6からの航法メッセージの供給を受け、測位演算を行ったり、各種の時間検出(時間計測)を行ったりする部分である。
【0188】
図23は、制御部7の構成例を説明するための図である。図23に示すように、制御部7は、CPU(Central Processing Unit)71、ROM(Read Only Memory)72、RAM(Random Access Memory)73、タイムカウンタ74、RTC(Real Time Clock)75を備えたものである。
【0189】
ここで、ROM72は、CPU71において実行するプログラムや処理に用いる各種のデータが格納されているものである。RAM73は、各種の処理においての途中結果を一時記憶するなど、主に作業領域として用いられるものである。また、タイムカウンタ74、RTC75は、各種の時間検出(時間計測)を行う場合に用いられるものである。
【0190】
そして、前述もしたように、図1に示したこの実施の形態のGPS受信機の制御部7は、同期捕捉部5を制御して高速に受信信号のキャリア周波数の同期、C/Aコードの位相同期を捕捉するようにし、この捕捉結果に基づいて、同期保持部6を制御して、受信信号のキャリア周波数の同期、C/Aコードの位相同期を瞬時に引き込み、これを保持して、ナビゲーションデータとしてのビット・データを得て、測位演算を行い、現在位置を正確に算出して、これをホストI/O端子31を通じて出力するなどのことができるようにされている。
【0191】
なお、図1においてタイミング発生器8は、TCXO11からの基準周波数信号の供給を受け、これを逓倍/分周して、各部に供給するクロック信号を形成し、これをCPU、同期捕捉部5、同期保持部6などの各部に供給し、その各部の目的とする部分を動作することができるようにするものである。
【0192】
[間欠動作について]
そして、この実施の形態のGPS受信機は、図1に示したように、制御部7によって制御される電源制御部9により、周波数変換部4、同期捕捉部5、同期保持部6、制御部7のそれぞれに対応して設けられた電源のオン/オフを行うスイッチ21、22、23、24のそれぞれを個別に制御することができるようにしている。
【0193】
この実施の形態のGPS受信機においては、いわゆる帰還ループの構成とされた同期保持部6への電源供給を制御し、同期保持部6を間欠動作させることにより、GPS受信機の消費電力を低減させるようにしている。
【0194】
この実施の形態のGPS受信機は、図31に示したように、例えば、100ミリ秒ごとなどの非常に短い周期でレンジを測定するのではなく、使用に十分耐えうる時間間隔である1秒ごとにレンジを測定して当該GPS受信機の現在位置を示す測位情報を算出して出力するようにしている。以下、当該GPS受信機の現在位置を示す測位情報を1秒ごとに算出して出力するようにした場合における、当該GPS受信機の間欠動作について説明する。
【0195】
まず、この実施の形態のGPS受信機の電源スイッチが押下操作されることにより、この実施の形態のGPS受信機に電源が投入するようにされると、GPS受信機の各部に電源が供給するようにされる。この場合、電源制御部9は、スイッチ21、22、24のそれぞれをオンにする。したがって、周波数変換部4、同期捕捉部5、制御部7のそれぞれも動作状態とされる。
【0196】
そして、GPS衛星からの高周波GPS信号は、アンテナ1により受信され、アンプ2、BPF3を通じて周波数変換部4に供給され、ここで中間周波GPS信号にダウンコンバートされるとともに、同期捕捉部5、同期保持部6とに供給される。
【0197】
同期捕捉部5は、前述したように、いわゆるマッチドフィルタの構成とされたものであり、FFTを用いて高速にキャリア周波数の同期と、C/Aコードの位相同期とを捕捉し、捕捉したキャリア周波数とC/Aコードの位相同期とを制御部7に供給する。
【0198】
制御部7は、同期捕捉部5からの情報に基づいて、キャリア周波数、C/Aコードの位相同期などの必要な情報を初期値として同期保持部6に設定する。そして、電源制御部9は、制御部7の制御により、スイッチ23をオフからオンに切り換える切換制御信号CT3を形成し、これをスイッチ23に供給してスイッチ23をオンにする。これにより、同期保持部6に電源が供給され、同期保持部6は、目的とするGPS衛星からのGPS信号を迅速に捕捉し、これを保持するように動作する。
【0199】
前述もしたように、同期捕捉部5において、比較的広範な範囲でキャリア周波数と、C/Aコードの位相同期を、サーチして捕捉するようにされ、この捕捉結果が用いられて同期保持部が制御されるので、同期保持部6においは、ごく限られた範囲において、キャリア周波数とC/Aコードの位相同期をサーチすればよいので、捕捉を極めて迅速に行うことができるようにされる。
【0200】
ここで、キャリア周波数とC/Aコードの位相同期が合うまで、待つことになる。ここで、待つ時間は、CPU71の処理スピードや他の条件などにより、捕捉にかかる時間が変わることもある。キャリア周波数の同期と、C/Aコードの位相同期とが捕捉できたら、これを保持するようにし、位置計算に必要となるGPS信号の送信時刻などのレンジデータを取得して制御部7に供給する。このとき、レンジのばらつきを低減させるフィルタを考慮して、必要な分のレンジデータを取得するようにしてもよい。
【0201】
必要な分のレンジデータが取得できたならば、制御部7は、電源制御部9を制御し、スイッチ23をオフに切り換えるようにする。すなわち、電源制御部9は、スイッチ23をオンからオフに切り換える切換制御信号CT3を形成し、これをスイッチ23に供給してスイッチ23をオフにする。これにより、同期保持部6への電源の供給が停止され、同期保持部6の動作が停止し、消費電力を低減させる。
【0202】
この後、制御部7は、取得したレンジデータにより位置計算を行い、計算して得た当該GPS受信機の現在位置を示す測位情報を当該GPS受信機から出力する処理を行う。そして、前述もしたように、1秒ごとに当該GPS受信機の現在位置を示す測位情報を出力するものとし、この測位情報を得るために必要なレンジデータの取得に0.5秒かかったとすると、レンジデータの取得が終了し、測位情報を計算して出力するまでの0.5秒間は、同期保持部6の動作を停止させることができるのである。
【0203】
図24は、この例の同期保持部6の動作期間と停止期間につい説明するための図である。図24に示すように、1秒(1sec)ごとに、当該GPS受信機の位置を示す測位情報を計算して出力する場合、同期保持部6においてのレンジデータの取得に0.5秒(0.5sec)かかる場合には、レンジデータ取得後、測位情報を出力するまでの0.5秒間は、同期保持部6を停止させることができる。
【0204】
そして、測位情報出力後において、停止していた同期保持部6に電源を供給して動作させ、前述したように、同期の引き込み及び保持を行いレンジデータを取得した後、同期保持部6への電源の供給を停止させるというように、動作と停止とを、ほぼ0.5秒づつ行うようにすることにより、同期保持部6の動作時間を常時動作されている場合のほぼ半分程度とすることができ、その分、GPS受信機の消費電力を低減させることができる。
【0205】
なお、ここでは、同期保持部6だけを間欠動作させる場合を例にして説明したが、これに限るものではない。例えば、同期保持部6の動作/停止に一致させて、周波数変換部4の動作/停止を制御するようにしても良い。これは、同期保持部6が動作していない場合には、受信信号であるGPS信号が同期保持部6に供給されても何ら処理されず、同期保持部6が停止している間は、周波数変換部4の動作を停止しても何ら問題ないためである。
【0206】
また、測位情報の出力が1秒ごとであるこの例の場合、レンジデータの取得後、測位情報を算出するまでの時間が1秒より短い場合には、その間においては、同期捕捉部5、制御部7などの全体の回路部分への電源の供給を停止させるか、あるいは、動作を停止させることによって、さらに消費電力を低減させることができる。
【0207】
上述した主に同期保持部6の間欠動作について、図25のフローチャートを用いてさらに説明する。図25は、この実施の形態のGPS受信機の間欠動作を説明するためのフローチャートであり、例えば、この実施の形態のGPS受信機に電源が投入された場合に実行される処理である。
【0208】
図1に示したこの実施の形態のGPS受信機に電源が投入されると、同期保持部6以外の各部に電源が供給され、周波数変換部4からのIFデータの供給を受ける同期捕捉部5は、高速に同期捕捉処理を実行し、キャリア周波数、C/Aコード位相などの情報を得る(ステップS101)。
【0209】
そして、ステップS101で得たキャリア周波数、C/Aコードなどの情報に基づいて、同期保持部6の動作に必要となる情報の初期値を設定する(ステップS102)。この実施の形態のGPS受信機においては、同期保持部6への初期値の設定は、制御部7を介して行われることになる。
【0210】
この後、制御部7は、電源制御部9を制御して、同期保持部6に対して設けられているスイッチ23をオンにして、同期保持部6を動作させる(ステップS103)。
【0211】
なお、この例においては、同期保持部6の電源のオン/オフに同期させて、周波数変換部4の電源のオン/オフも制御する。しかし、周波数変換部4は、同期捕捉のために電源投入直後に電源がオンにされている。このため、図25に示すように、繰り返し実行されることになるステップS103の1回目の処理においては周波数変換部4の電源をオンにする処理は省略する。
【0212】
そして、2回目以降のステップS103の処理においては、周波数変換部4に対して設けられているスイッチ21をオンにすることにより、電源オフ状態にある周波数変換部4を同期捕捉部6に同期して動作させるようにすることになる。
【0213】
ステップS103の処理の後、同期保持部6は、制御部7を通じて初期設定される同期捕捉部5からの捕捉の結果得られた情報に基づいて、GPS信号について迅速に同期捕捉を行うので、同期が捕捉されるまで待ち(ステップS104)、同期の捕捉ができたときには、その後においても同期を保持するようにし、レンジを計算するために必要となるレンジデータを取得し制御部7に供給する(ステップS105)。
【0214】
制御部7は、レンジデータを取得すると、電源制御部9を制御し、同期保持部6に対して設けられているスイッチ23と、周波数変換部4に対して設けられているスイッチ21をオフにし、同期保持部6と周波数変換部4の動作を停止させる(ステップS106)。
【0215】
そして、制御部7は、取得したレンジデータを用いて当該GPS受信機の位置を計算し(ステップS107)、計算して得た当該受信機の位置を示す情報(測位情報)を出力する(ステップS108)。この後、図25に示すように、ステップS102からの処理を繰り返す。
【0216】
そして、測位情報を出力する周期が1秒である場合には、図25に示すように、周波数変換部4、同期保持部6を動作させておかなければならないのは、例えば、約0.5秒間であるので、レンジデータ取得後から測位データを出力するまでの、約0.5秒間は、周波数変換部4、同期保持部6を停止させることにより、当該GPS受信機の一連の測位処理に影響を及ぼすことなく、当該GPS受信機の消費電力を低減させることができる。
【0217】
なお、前述の実施の形態においては、測位情報を1秒ごとに出力する場合を例にして説明したが、測位情報の出力周期(出力する間隔)は1秒に限るものでない。測位情報の出力周期を1秒より短くしたり、逆に長したりすることができる。しかし、測位情報の出力周期を2秒、3秒と増すようにすることにより、消費電力を低減させることができる割合を高めることができる。
【0218】
ただし、測位情報を出力する周期が長い場合、同期保持部6に設定する初期値の誤差が大きくなり、キャリア同期、C/Aコードの位相同期を捕捉するまでにかかる時間が長くなってしまう。このため、測位情報を出力する周期に応じて、同期保持部6の、あるいは、同期保持部6および周波数変換部4の動作時間を変えることができるようにしておく。
【0219】
図26は、例えば同期保持部の動作時間を変えることができるようにした場合を説明するための図である。図26Aに示すように、例えば標準モードとして、測位情報の出力周期がTである場合、同期の引き込み及び保持処理からレンジデータの取得までかかる時間は、T/2程度であるとする。この場合、少なくとも、T/2程度は、同期保持部6を停止させ、この間に取得したレンジデータを用いて測位演算を行い、測位情報を出力するようにする。
【0220】
しかし、図26Bに示すように、測位情報の出力周期が図26Aに示した標準モードの周期Tよりも短い周期TSのいわゆるショートモードの場合には、同期保持部6に設定されたキャリア周波数などの値が、同期保持部6の停止中にずれる割合が少なく、同期の引き込みおよび保持処理からレンジデータの取得までかかる時間は、TS/2以下である。すなわち、標準モードの場合よりも、同期の引き込みからレンジデータの取得にかかる時間は短くて済むと考えられる。このような場合には、同期保持部6の動作時間を短くすることができるようにしておく。
【0221】
逆に、図26Cに示すように、測位情報の出力周期が図26Aに示した標準モードの周期Tよりも長い周期TLのいわゆるロングモードの場合には、同期保持部6に設定されたキャリア周波数などの値が、同期保持部6の停止中にずれる割合が大きく、同期の引き込み及び保持処理からレンジデータの取得までかかる時間は、標準モードの場合よりも、同期の引き込みからレンジデータの取得にかかる時間は長くなる。このような場合には、同期保持部6の動作時間を長くすることができるようにしておく。
【0222】
しかし、図26Cに示したいわゆるロングモードの場合に、同期の引き込み及び保持処理からレンジデータの取得までかかる時間が、TL/2よりも短くなれば、同期保持部6を停止させておくことができる時間を長く取ることができるので、消費電力の省力化の割合を高めることができるのである。
【0223】
なお、同期保持部6の動作時間は、この実施の形態においては、図1に示したスイッチ23のオン/オフ制御により変えることができる。すなわち、同期捕捉部6の動作時間を長くしたければ、スイッチ23がオンになっている状態を長くすればよいし、逆に、同期保持部6の動作時間を短くしたければ、スイッチ23がオンになっている状態を短くすればよい。
【0224】
また、同期保持部6を停止させておく時間は、同期保持部6を動作させておく時間に応じて変えるようにすることもできるし、また、測位演算に必要な時間として固定的に定めることもできる。
【0225】
また、上述したように、測位情報の出力周期が長い場合には、同期保持部6において用いるキャリア周波数などの値がずれてしまうために同期の引き込みに時間がかかってしまう。同様に、測位情報の出力周期が短くても、GPS受信機の加速が大きい場合には、GPS受信機は短時間に大きく移動することになり、同期保持部6においての同期の引き込みが困難なほど、同期保持部6で用いられるキャリア周波数などの値がずれてしまう場合もあると考えられる。
【0226】
そこで、測位情報の出力周期が長い場合、あるいは、GPS受信機の加速が所定の値よりも大きな場合には、現在までに制御部7が取得したGPS衛星の軌道情報、位置情報、速度データ、時間データなどの情報から、制御部7が同期保持部6において用いるキャリア周波数などの所定の値を予測し、これを同期保持部に設定し直した後に、同期保持部6を起動させるようにしてもよい。
【0227】
このようにした場合には、同期保持部6においての同期の引き込みにかかる時間が非常に長くなることを防止することができるので、GPS受信機の消費電力の低減を図ることができる。
【0228】
また、測位データの出力周期に応じて、同期保持部6の動作時間を変えるようにした場合に、同期保持部6に設定するキャリア周波数などの初期値や動作時間は、制御部7において予測するようにし、これを用いて動作/停止の制御を行うようにしてもよい。この場合、測位情報の出力周期、軌道情報、位置情報、速度データ、時間データなどの情報から予測することができる。
【0229】
なお、前述の実施の形態においては、同期保持部6を、または、同期保持部6および周波数変換部4を間欠動作するようにしたが、これに限るものではない。例えば、図25のフローチャートに示したように、同期捕捉部5は、電源投入直後においてのみ、GPS信号に対する同期捕捉を高速に行うが、その後においては、用いられることは無くなる。
【0230】
そこで、図25におけるステップS101の処理の後、同期捕捉部5に対するスイッチ22をオフにして、同期捕捉部5の動作を停止させるようにしてもよい。また、前述したように、同期保持部6に設定するようにするキャリア周波数などの情報の制御部7における予測に変えて、必要に応じて同期捕捉部を動作させて、キャリア周波数の同期、C/Aコードの位相同期を捕捉するようにし、その結果を同期保持部6に設定するようにしてもよい。
【0231】
したがって、同期捕捉部5にオン/オフを同期保持部6のオン/オフに一致するように制御するようにしてもよいし、同期捕捉部5は、同期捕捉を行って正確なキャリア周波数やC/Aコード位相の同期捕捉が必要になる比較的に長い周期で、つまり、同期保持部6のオン/オフ制御よりも長い周期で、同期捕捉部5のオン/オフを行うようにしてもよい。
【0232】
また、高速な同期捕捉が可能な同期捕捉部5を備えないGPS受信機を構成することも可能であるが、この場合には、前述もしたように、同期保持部、あるいは、同期保持部および周波数変換部の間欠動作を行うようにすることによってGPS受信機の消費電力を省力化することができる。すなわち、コスタスループとDLLからなる同期捕捉、同期保持を行うようにするGPS受信機にこの発明を適用することができる。
【0233】
また、同期保持部は、コスタスループとDLLとからなるものに限るものではなく、他の方法によって、キャリア周波数の同期とC/Aコードの位相同期とを捕捉、保持し、送信データの復調、抽出が可能な回路により構成されていてももちろんよい。
【0234】
なお、前述した実施の形態においては、GPS受信機の各ブロックに供給する電源の供給を制御することにより、間欠動作を行うようにしたが、これに限るものではない。電源の供給を制御するのではなく、例えば、クロック信号の供給を停止させることにより、目的とするブロックの処理を停止させ、消費電力を低減させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】この発明によるGPS受信機の一実施の形態を説明するためのブロック図である。
【図2】図1に示したGPS受信機の周波数変換部の一例を説明するためのブロック図である。
【図3】図1に示したGPS受信機の同期捕捉部の一例を説明するためのブロック図である。
【図4】図1に示した同期捕捉部のDSPの機能とDSPにおいて行われる同期捕捉処理を説明するためのブロック図である。
【図5】相関検出出力のスペクトラムの例を示す図である。
【図6】同期捕捉処理の他の例を説明するための図である。
【図7】同期捕捉処理の他の例を説明するための図である。
【図8】図1に示した同期捕捉部のDSPの機能とDSPにおいて行われる同期捕捉処理との他の例(1)を説明するためのブロック図である。
【図9】図8に示した機能を有するDSPにおける動作を説明するためのフローチャートの一部である。
【図10】図8に示した機能を有するDSPにおける動作を説明するためのフローチャートの一部である。
【図11】図1に示した同期捕捉部のDSPにおいて行われる同期捕捉処理の他の例(2)を説明するためのブロック図である。
【図12】図1に示した同期捕捉部のDSPにおいて行われる同期捕捉処理の他の例(2)を説明するためのブロック図である。
【図13】図1に示した同期捕捉部のDSPにおいて行われる同期捕捉処理の他の例(2)を説明するためのブロック図である。
【図14】図1に示した同期捕捉部のDSPにおいて行われる同期捕捉処理の他の例(3)を説明するための図である。
【図15】図1に示した同期捕捉部のDSPにおいて行われる同期捕捉処理の他の例(3)を説明するための図である。
【図16】図1に示した同期捕捉部のDSPにおいて行われる同期捕捉処理の他の例(3)を説明するための図である。
【図17】図1に示した同期捕捉部のDSPにおいて行われる同期捕捉処理の他の例(3)を説明するための図である。
【図18】図1に示した同期捕捉部のDSPにおいて行われる同期捕捉処理の他の例(3)の要部の説明に用いる図である。
【図19】図1に示した同期捕捉部のDSPにおいて行われる同期捕捉処理の他の例(3)の要部の説明に用いる図である。
【図20】図13に示したDSPにおける動作を説明するためのフローチャートの一部である。
【図21】図13に示したDSPにおける動作を説明するためのフローチャートの一部である。
【図22】図1に示したGPS受信機の同期保持部の一例を説明するためのブロック図である。
【図23】図1に示したGPS受信機の制御部の一例を説明するためのブロック図である。
【図24】図1に示したGPS受信機において行われる間欠動作を説明するための図である。
【図25】図1に示したGPS受信機において行われる間欠動作を説明するためのフローチャートである。
【図26】間欠動作時の動作時間の変更について説明するための図である。
【図27】この発明の実施の形態の説明に用いる計算式を示す図である。
【図28】GPS衛星からの信号の構成を示す図である。
【図29】従来のキャリアおよび拡散符号の同期処理を説明するための図である。
【図30】GPS受信機において測位演算に用いられるレンジについて説明するための図である。
【図31】従来のGPS受信機においてのレンジの測定タイミングを説明するための図である。
【符号の説明】
【0236】
1…アンテナ、2…増幅器(ローノイズアンプ)、3…BPF、4…周波数変換部、5…同期捕捉部、6…同期保持部、7…制御部、8…タイミング発生器、9…電源制御部、10…XO(水晶発振器)、11…TCXO(温度補償機能付き水晶発振器)、21、22、23、24…電源オン/オフ用スイッチ、31…ホストI/O端子、32…制御端子、33…付加機能端子、CT1、CT2、CT3、CT4…切換制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS衛星から送信された高周波GPS信号を中間周波GPS信号に変換する周波数変換手段と、
前記周波数変換手段によって得られた中間周波データに対して搬送波の同期と拡散符号の位相同期とを捕捉する同期捕捉手段と、
前記捕捉手段によって捕捉した前記搬送波の同期と拡散符号の位相同期とを初期値として保持すると共に、前記周波数変換手段からの前記中間周波GPS信号の供給を受けて、当該中間周波GPS信号からレンジデータを取得する同期保持手段と、
前記同期保持手段からの前記レンジデータに基づいて現在位置を測位演算し、当該現在位置を示す測位情報を出力する測位演算手段と、
前記測位演算手段から前記測位情報を出力する周期を変更する出力周期変更手段と、
前記同期保持手段から前記レンジデータを取得した後、前記同期保持手段の動作を停止させる停止手段と、
前記測位情報を出力する周期に応じて前記停止手段の停止時間を制御する制御手段と
を備えることを特徴とするGPS受信機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記測位情報を出力する周期に応じて前記周波数変換手段の動作の停止時間を制御することを特徴とする請求項1に記載のGPS受信機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記測位情報を出力する周期が所定値よりも長い場合には、前記停止手段の停止時間を長く設定することを特徴とする請求項1に記載のGPS受信機。
【請求項4】
GPS衛星から送信された高周波GPS信号を中間周波GPS信号に変換する周波数変換手段と、
前記周波数変換手段によって得られた中間周波データに対して搬送波周波数の同期と拡散符号の位相同期とを捕捉する同期捕捉手段と、
前記捕捉手段によって捕捉した前記搬送波の同期と拡散符号の位相同期とを初期値として保持すると共に、前記周波数変換手段からの前記中間周波GPS信号の供給を受けて、当該中間周波GPS信号からレンジデータを取得する同期保持手段と、
前記同期保持手段からの前記レンジデータに基づいて現在位置を測位演算し、当該現在位置を示す測位情報を出力する測位演算手段と、
前記測位情報を出力する周期に応じて前記同期保持手段の動作時間を制御する制御手段と
を備えることを特徴とするGPS受信機。
【請求項5】
初期値として用いられる搬送波周波数の同期と拡散符号の位相同期のずれを予測する予測手段を備えることを特徴とする請求項4に記載のGPS受信機。
【請求項6】
前記予測手段は、前記測位情報を出力する周期に応じて、前記同期保持手段に保持された前記搬送波周波数の値を予測して前記同期保持部に初期値として設定の更新することを特徴とする請求項5に記載のGPS受信機。
【請求項7】
前記制御手段は、前記測位情報を出力する周期が長い場合に前記同期保持手段の動作時間を長くするように制御することを特徴とする請求項4に記載のGPS受信機。
【請求項8】
GPS衛星から送信された高周波GPS信号を中間周波GPS信号に変換する周波数変換手段と、
前記周波数変換手段によって得られた中間周波データに対して搬送波の同期と拡散符号の位相同期とを捕捉する同期捕捉手段と、
前記捕捉手段によって捕捉した前記搬送波の同期と拡散符号の位相同期とを初期値として保持すると共に、前記周波数変換手段からの前記中間周波GPS信号の供給を受けて、当該中間周波GPS信号からレンジデータを取得する同期保持手段と、
前記同期保持手段からの前記レンジデータに基づいて現在位置を測位演算し、当該現在位置を示す測位情報を出力する測位演算手段と、
前記同期保持手段から前記レンジデータを取得した後、前記同期保持手段の動作を停止させる停止手段と、
前記測位情報を出力する周期に応じて前記停止手段の停止時間を制御する制御手段と
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項9】
GPS衛星から送信された高周波GPS信号を中間周波GPS信号に変換する周波数変換ステップと、
前記周波数変換ステップによって得られた中間周波データに対して搬送波の同期と拡散符号の位相同期とを捕捉する同期捕捉ステップと、
前記捕捉ステップによって捕捉した前記搬送波の同期と拡散符号の位相同期とを初期値として保持すると共に、前記周波数変換手段からの前記中間周波GPS信号の供給を受けて、当該中間周波GPS信号からレンジデータを取得する同期保持ステップと、
前記同期保持ステップにおいて取得した前記レンジデータに基づいて現在位置を測位演算し、当該現在位置を示す測位情報を出力する測位演算ステップと、
前記同期保持ステップから前記レンジデータを取得した後、前記同期保持ステップにおける動作を停止させる停止ステップと、
前記測位情報を出力する周期に応じて前記停止手段の停止時間を制御する制御ステップと
を備えることを特徴とするGPS受信機の測位方法。
【請求項10】
GPS衛星から送信された高周波GPS信号を中間周波GPS信号に変換する周波数変換ステップと、
前記周波数変換ステップによって得られた中間周波データに対して搬送波周波数の同期と拡散符号の位相同期とを捕捉する同期捕捉ステップと、
前記捕捉ステップによって捕捉した前記搬送波の同期と拡散符号の位相同期とを初期値として保持すると共に、前記周波数変換手段からの前記中間周波GPS信号の供給を受けて、当該中間周波GPS信号からレンジデータを取得する同期保持ステップと、
前記同期保持ステップにおいて取得した前記レンジデータに基づいて現在位置を測位演算し、当該現在位置を示す測位情報を出力する測位演算ステップと、
前記測位情報を出力する周期に応じて前記同期保持手段の動作時間を制御する制御ステップと
を備えることを特徴とするGPS受信機の測位方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2006−234847(P2006−234847A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160539(P2006−160539)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【分割の表示】特願2002−47505(P2002−47505)の分割
【原出願日】平成14年2月25日(2002.2.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】