説明

GPS受信装置、及びその現在時刻取得方法

【課題】GPS受信装置において、より多様な使用環境下において現在時刻の取得を可能とする。
【解決手段】GPS信号に含まれる時刻情報により示される時刻を現在位置に応じて補正する構成である。2衛星A,BにおけるGPS信号のタイミング情報と、2衛星A,Bのエフェメリス情報またはアルマナック情報に基づき、現在位置が含まれると考えられる地球表面上における所定の幅を有する軌跡線100を算出する。算出した軌跡線100が、設定されている使用地域を横切るか否かに基づいて使用地域の変化の有無を判断し、使用地域に変化が無いと判断さしたときには、GPS信号の時刻情報により示される時刻を使用地域に応じた現在時刻に補正する。使用場所が大きく変化していない場合においては、現在位置が計算することができない環境下であっても、一定の条件下では、使用場所に応じた現在時刻を取得することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS信号から取得した複数衛星の衛星情報に基づき現在位置を計算するGPS受信装置、及びその現在時刻取得方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS(Global Positioning System)を利用し、複数の衛星から送られてくる電波を受信することにより現在位置を計測するGPS受信装置にあっては、使用目的に応じた種々のものが一般に使用されている。GPS受信装置は、衛星等から事前に取得したアルマナック情報により示される衛星毎の概略位置に基づいて4機以上の衛星を捕捉して、各衛星から受信したGPS信号、すなわち航法データ(衛星情報)に含まれるエフェメリス情報を利用して利用者の位置情報を高精度に計算している(例えば下記特許文献1参照
【0003】
一方、前記航法データには、各衛星が有する高精度の時計の時刻情報、すなわち毎週日曜日の00:00:00を起点とした6秒単位の数値であるTOW(Time Of Week:週経過時間)が含まれており、係る時刻情報から正確な現在時刻を得ることができる(例えば下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−61336号公報
【特許文献2】特開2007−263598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の航法データに含まれる時刻情報から正確な現在時刻を得る場合、GPSの時刻基準(GPS時)は協定世界時(UTC:Coordinated UT)であるため、正しい現在時刻を得るには現在位置(使用者の居場所)における地域(国等)で採用されている標準時のUTCとの時差に応じて時刻情報から得られた時刻を補正する必要がある。
【0006】
しかしながら、GPS受信装置が、例えば腕時計のような携帯型の電子機に組み込まれている場合、ビルに囲まれた路地・木々の多い場所や家の中、及び利用者がGPS受信装置を携帯し動いているときなどでは、現在位置の計算に必要な定数の衛星が捕捉できない、あるいは捕捉できたとしても受信感度が低く、GPS信号からエフェメリス情報を取得するには到らない場合も多く、その場合には、時刻情報が取得できたにもかかわらず、現在位置を計算することができず、結果的に正しい現在時刻を得ることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、より多様な使用環境下において現在時刻の取得が可能となるGPS受信装置、及びその現在時刻取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1記載の発明に係るGPS受信装置にあっては、複数の衛星から送られているGPS信号を受信して現在位置を計算する一方、GPS信号に含まれる時刻情報により示される時刻を現在位置に応じて補正することによって使用場所に応じた現在時刻を取得するGPS受信装置において、設定されている使用地域を記憶する記憶手段と、前記GPS信号を受信し衛星情報を取得する受信手段と、この受信手段によるGPS信号の受信状態が所定の受信状態であるか否かを判断する第1の判断手段と、この第1の判断手段によりGPS信号の受信状態が所定の受信状態であると判断されたことを条件として、GPS信号が受信できた2つの衛星の衛星情報に基づき、現在位置が含まれる地球表面上の所定の幅を有する帯状の軌跡線を算出する算出手段と、この算出手段により算出された軌跡線が、前記記憶手段に記憶されている使用地域を横切るか否かに基づいて使用地域の変化の有無を判断する第2の判断手段と、この判断手段により使用地域に変化が無いと判断されたことを条件として、前記時刻情報により示される時刻を前記記憶手段に記憶されている使用地域に応じた現在時刻に補正する時刻補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の発明に係るGPS受信装置にあっては、前記第1の判断手段は、前記受信手段によるGPS信号の受信に際し捕捉できた衛星が2つのみであった場合にGPS信号の受信状態が所定の受信状態であると判断することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3記載の発明に係るGPS受信装置にあっては、前記第1の判断手段は、前記受信手段によるGPS信号の受信に際し3以上の衛星が捕捉できたが、3つの衛星の衛星情報が取得できなかった場合にGPS信号の受信状態が所定の受信状態であると判断することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4記載の発明に係るGPS受信装置にあっては、前記算出手段は、前記受信手段によるGPS信号の受信に際し捕捉できた2つの衛星の衛星情報であって、当該2つの衛星からGPS信号の受信動作に際して取得された各衛星のエフェメリス情報に基づき前記軌跡線を算出することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5記載の発明に係る現在時刻取得方法にあっては、複数の衛星から送られているGPS信号を受信して現在位置を計算する一方、GPS信号に含まれる時刻情報により示される時刻を現在位置に応じて補正することによって使用場所に応じた現在時刻を取得するGPS受信装置において、前記GPS信号の受信状態が所定の受信状態であるか否かを判断する工程と、前記受信状態が所定の受信状態であると判断されたことを条件として、GPS信号が受信できた2つの衛星の衛星情報に基づき、現在位置が含まれる地球表面上の所定の幅を有する帯状の軌跡線を算出する工程と、算出した軌跡線が、前記記憶手段に記憶されている使用地域を横切るか否かに基づいて使用地域の変化の有無を判断する工程と、使用地域に変化が無いと判断したことを条件として、前記時刻情報により示される時刻を記憶手段に記憶されている使用地域に応じた現在時刻に補正する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より多様な使用環境下において現在時刻の取得が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るGPS受信装置を示すブロック図である。
【図2】受信部の詳細を示したブロック図である。
【図3】時刻合わせ動作の内容を示すフローチャートである。
【図4】図3に続くフローチャートである。
【図5】図4に続くフローチャートである。
【図6】複数の衛星における航法データの送信タイミングの違いを示すタイミングチャートである。
【図7】航法データの要部を示したデータ構成図である。
【図8】時刻合わせ動作時のGPS受信部における動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図9】2衛星のタイミング情報と各衛星のエフェメリス情報に基づき計算される地球表面の軌跡線を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態を図にしたがって説明する。図1は、本発明に係るGPS受信装置の構成を示すブロック図であり、図示したようにGPS受信装置は、アンテナ1と、RF部2、GPS受信部3、時計部4、電源部5を有している。
【0016】
RF部2は、アンテナ1から入力した受信信号すなわちGPS信号を増幅する高周波増幅回路と、増幅後の高周波信号を中間周波信号に変換する周波数変換回路、変換後の中間周波信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路を含み、入力したGPS信号をデジタルの中間周波信号(IF信号)に変換してGPS受信部3に出力する。
【0017】
GPS受信部3は、GPS衛星(以下、単に衛星という)から送られてくる電波であって、正確な位置計測に必要な4機の衛星の電波を同時に受信するための4チャンネル分の受信部31(図では受信部(1)〜(4))と、計算処理部32、制御部33、クロック発生部34から構成されている。
【0018】
図2は、各々の受信部31の詳細を示したブロック図である。各々の受信部31は本発明の受信手段であって、それぞれが逆拡散処理部31aとデータ復調部31bとから構成されている。RF部2から入力した中間周波信号は、逆拡散処理部31aで衛星毎に異なる拡散コードで逆拡散処理が施され逆拡散信号としてデータ復調部31bに送られ、データ復調部31bでBPSK復調され復調データとして計算処理部32へ出力される。なお、上記逆拡散信号は、アナログ的でもデジタル的でもソフト的でも良いが、ここではそれは入力されたGPS信号の強さに従った振幅を持っており、一定のレベル以下ではエラーが増大し復調できないものとする。
【0019】
計算処理部32は、各々の受信部31から入力した復調データ、すなわちGPS信号に重畳されている航法データから、クロック発生部34で生成された基準パルスに基づいて各衛星における航法データの送信タイミングをタイミング情報として取得し、各復調データから衛星の軌道位置を算出し、上記タイミング情報と上記軌道位置から受信位置(現在位置)を計算し、位置情報としてタイミング情報と共に制御部33へ送出する。また、復調データから収得した衛星の時刻情報を制御部33へ送出する。さらに、受信位置の算出必要とする情報が取得できたかどうかを示す取得情報も制御部33へ送出する。
【0020】
制御部33は、時計部4からの要求に応じてGPS受信部3の全体を制御するものであって、GPS受信部3の各部における動作、及び計算処理部32の動作を制御するとともに、後述する時刻合わせ動作においては本発明の第1の判断手段、算出手段、第2の判断手段として機能する。また、制御部33は本発明の時刻補正手段としても機能し、計算処理部32から送られた衛星の時刻情報により示される時刻を現在位置に応じ補正し、補正後の現在時刻を現在時刻情報として時計部4へ送出するとともに、上記位置情報により示される受信位置を含む都市の名称を概略位置エリア情報として時計部4へ送出する。
【0021】
また、制御部33には、GPS受信部3や計算処理部32の動作を制御するためのプログラムデータや、協定世界時(UTC)との時差が同一である複数の地域(タイムゾーン)を示すタイムゾーン情報(時差が同一である地域を特定するための緯度、経度等)と、特定の地域エリアを示す概略位置エリア情報、及びその特定の地域エリアに関する地図上での領域を示す領域情報と、各エリアに対応するタイムゾーンとから構成される地域情報が記憶されたメモリ33aが設けられている。
【0022】
ここで、上記の概略位置エリア情報は、例えば世界各地の都市の名称(日本ならば市町村単位の都市名)や、駅名、ランドマーク等である。なお、後述する時刻合わせ動作においては、メモリ33aに記憶されているとともに受信位置が該当する特定の地域エリアを示す概略位置エリア情報(都市名等)が時計部4へ送出される。
【0023】
また、メモリ33aは記憶データの書き替えが可能であるとともに、GPS受信装置の使用開始当初や任意の時点で取得した最新のアルマナック情報や、後述する時刻合わせ動作で特定した使用場所の都市名や、ユーザによって使用場所として予め設定(選択)された都市名も記憶されるものであって、本発明の記憶手段として機能する。
【0024】
前記時計部4は、図示しないが現在時刻を計時する時計回路部と、年月日を記憶するレジスタ、現在設定されているタイムゾーンに関する情報等の必要に応じて変更される種々の設定情報が記憶される設定メモリ、現在時刻や年月日、タイムゾーン確認などのための都市名等を表示する小型のLCDからなる表示部、それらの各部、及びGPS受信部3の動作の制御(ON/OFF)をつかさどる制御部、複数の操作ボタンから構成されている。
【0025】
前記電源部5は、コイン型電池やソーラー電池、充電池等の小型の電池、およびDC/DCコンバータなどで構成され、RF部2、GPS受信部3、時計部4の各部へ動作に必要な電力を供給する。
【0026】
そして、上記構成からなるGPS受信装置においては、ユーザが任意の時点で所定の操作ボタンを押すと、GPS受信部3が衛星の時刻情報に基づいた正確な現在時刻や、前述した概略位置エリア情報を時計部4へ送るとともに、それに伴い時計部4が時刻や、使用場所の地域エリアを示す都市名等を更新する時刻合わせ動作が行われる。
【0027】
以下、時刻合わせ動作におけるGPS受信装置の具体的な動作内容を図3〜図5のフローチャートにしたがって説明する。なお、以下の説明では前記メモリ33aには、取得してから所定期間内(数ヶ月以内)の有効なアルマナック情報が記憶されているものとする。
【0028】
図3〜図5は、上記時刻合わせ動作時における主としてGPS受信部3における制御部33の処理手順を示したフローチャートであって、図3に示したように制御部33は、ユーザのボタン操作に応じて時計部4がGPS受信部3への電力供給を開始することにより動作を開始し、直ちに所定のタイミングで4チャンネル全ての受信部31の電源をONにして、GPS信号の受信動作を開始する(ステップS1)。なお、受信部31の電源をONにするタイミングは、時計部4から送られた現在時刻情報とメモリ33aに記憶されているアルマナック情報とに基づき判断する。以後、制御部33は、後述するように衛星から送られている電波の受信環境、すなわち捕捉できた衛星の数や、受信信号から実際に取得できた衛星情報の内容に応じた処理を行う。
【0029】
ここで、衛星の捕捉とは、衛星から送られている航法データの送信タイミングとの同期を確立して衛星毎のタイミング情報を取得する動作である。図6は、各衛星から送られているGPS信号間での航法データの送信タイミングの違いを示すタイミングチャートであり、特に航法データにおいて6秒周期の5個のサブフレームのうちの第1サブフレームに相当する部分を示したものである。なお、上記タイミング情報とは、前記クロック発生部34で生成した基準パルスに対する各受信チャンネルにおける航法データの受信タイミングの遅延時間、すなわち図6に示した第1サブフレームのプリアンブルデータ(先頭8ビットの同期用のデータ)の受信タイミングの遅延時間ΔTa〜ΔTdである。係る遅延時間には誤差が存在しており、一般的にはこの遅延時間に光速を掛け合わせたものが擬似距離と呼ばれている。
【0030】
そして、受信動作の開始後において制御部33は、4衛星のタイミング情報と、各衛星のエフェメリス情報の全てが取得できたか否かを確認し、それらが取得できた場合には(ステップS1でYES)、その時点で全ての受信部31の電源をOFFにして、計算処理部32に4衛星のタイミング情報と、全エフェメリス情報を使用して正確な位置計算を行わせる(ステップS3)。
【0031】
しかる後、計算処理部32において計算された正確な位置に基づくタイムゾーンより現在時刻を計算し、その現在時刻情報と使用場所を示す概略位置エリア情報とを時計部4へ通知する(ステップS4)。すなわち、計算された位置に基づいて、まず使用場所の地域が含まれるタイムゾーンを特定し、特定したタイムゾーンの時差に応じて、航法データに含まれる時刻情報(具体的にはTOW)によって示されるGPS時刻を補正し、補正後の時刻を現在時刻情報として時計部4へ通知する。また、計算された位置を含む地域エリアの都市名等をメモリ33aから検索し時計部4へ通知する。
【0032】
これに伴い時計部4が、使用者に知らせる(表示する)現在時刻と概略位置エリア情報(都市名等)を更新する(図4のステップS13)。なお、時計部4は、この時点でGPS受信部3への電力供給を停止し、これにより1回の時刻合わせ動作を終了する。
【0033】
一方、上述した場合とは異なりGPS信号の受信環境が悪く、4衛星のタイミング情報、及び各衛星のエフェメリス情報の全てに基づいた正確な位置計算が行えない場合、制御部33は、その時々の受信環境に応じた以下の手順に従い計算処理部32に概略の位置計算を行わせる。
【0034】
すなわち4衛星のタイミング情報は取得できたが、各衛星のエフェメリス情報の全てを取得できないときには(ステップS2でNO)、各衛星のエフェメリス情報のうちで少なくとも一般に軌道6要素と呼ばれている基本情報が取得できているかを確認する(ステップS5)。図7は、航法データの要部を示したデータ構成図である。周知のように航法データのうち第1のサブフレームには衛星時刻が記述され、第2及び第3のサブフレームにはエフェメリスが、さらに第4及び第5のサブフレームにはアルマナックがそれぞれ記述されており、各々のサブフレームには、ワード番号で示される位置に決められたデータが記述されている。同図に丸付き数字(1〜6)で示したデータが、エフェメリス及びアルマナックにそれぞれ含まれる軌道6要素である。
【0035】
そして、軌道6要素が取得できている場合には(ステップS5でYES)、その時点で全ての受信部31の電源をOFFにして、計算処理部32に4衛星のタイミング情報と、各衛星の軌道6要素のみを使用した概略の位置計算を計算処理部32に行わせる(ステップS6)。なお、この場合の測位精度は±300m程度である。しかる後、計算された概略位置に基づいて使用場所のタイムゾーンを特定するとともに、特定したタイムゾーンより現在時刻を計算し、その現在時刻情報と使用場所を示す概略位置エリア情報とを時計部
【0036】
これに伴い時計部4が、使用者に知らせる(表示する)現在時刻と都市名等を更新する(図4のステップS13)。なお、時計部4は、この時点でGPS受信部3への電力供給を停止し、これにより1回の時刻合わせ動作を終了する。
【0037】
また、上記の場合に比べGPS信号の受信環境は良くないものの、3衛星のタイミング情報と、各衛星のエフェメリス情報の全てが取得できた場合には(ステップS5がNO、ステップS8でYES)、その時点で全ての受信部31の電源をOFFにして、計算処理部32に3衛星のタイミング情報、及びエフェメリス情報を使用した概略の位置計算を計算処理部32に行わせる(ステップS9)。すなわちGPS受信装置が地球表面上に存在すること前提として概略の位置計算を行わせる。
【0038】
係る場合においても、計算された概略位置に基づいて使用場所のタイムゾーンを特定するとともに、特定したタイムゾーンより現在時刻を計算し、その現在時刻情報と使用場所を示す概略位置エリア情報とを時計部4へ通知する(ステップS7)。
【0039】
さらに、3衛星のタイミング情報は取得できたが、各衛星についてエフェメリス情報の全てを取得できないときには(ステップS8でNO)、各衛星のエフェメリス情報のうちで少なくとも軌道6要素が取得できていれば(ステップS10でYES)、その時点で全ての受信部31の電源をOFFにして、計算処理部32に3衛星のタイミング情報と、各衛星の軌道6要素のみを使用した概略の位置計算を計算処理部32に行わせる(ステップS11)。すなわち、前述したステップS9と同様に、GPS受信装置が地球表面上に存在すること前提として概略の位置計算を行わせる。なお、この場合の測位精度は±500m程度である。
【0040】
係る場合においても、計算された概略位置に基づいて使用場所のタイムゾーンを特定するとともに、特定したタイムゾーンより現在時刻を計算し、その現在時刻情報と使用場所を示す概略位置エリア情報とを時計部4へ通知する(ステップS7)。
【0041】
一方、電波の受信環境がさらに良くない等の理由により3衛星のタイミング情報、及びそれらの衛星の軌道6要素が取得できていない場合、すなわち上述したいずれの受信条件にも該当していない場合には(ステップS10でNO)、その時点で全ての受信部31の電源をOFFにした後(ステップS12)、図4のステップS14へ進み以下の処理を行う。
【0042】
すなわち3衛星以上のタイミング情報が取得できており(ステップS14でYES)、かつGPS信号の再受信動作を未だ行っていないときには(ステップS15でNO)、図5に示したように、まず、タイミング情報が取得できている3衛星以上の衛星のうちで、いずれか2衛星について各々の衛星のエフェメリス情報のうちで少なくとも軌道6要素が取得できているか否かを確認し、それらが取得できていなければ(ステップS16でNO)、直ちに図4のステップS33の処理へ進み、位置計算不可と判断してタイムゾーンの変化の有無が不明である旨の測位結果情報を時計部4へ通知する。これに伴い時計部4が、利用者に対し別の場所へ移動した上での時刻合わせの再実行を促すメッセージ等の表示を行う(ステップS35)。これにより1回の時刻合わせ動作を終了する。
【0043】
一方、上記とは異なり、前述したステップS16の判別結果がYESであって、いずれか2衛星について軌道6要素が取得できていた場合には、タイミング情報が取得できているがエフェメリス情報が不足している衛星(1又は2衛星)の情報不足箇所に応じたタイミングで、当該衛星に対応する受信チャンネルの受信部31のみをONとして2回目の受信動作を開始させ、不足分のエフェメリス情報の取得に要する所定期間の受信待ちを行う(ステップS17)。
【0044】
そして、上記の所定期間内に4衛星のタイミング情報と、各衛星のエフェメリス情報の全てが取得できた場合、すなわちエフェメリス情報が不足していた全て衛星のエフェメリス情報が取得できた場合には(ステップS18でYES)、前述した図3のステップS3の処理へ戻る。そして、計算処理部32に正確な位置計算を行わせた後、計算された正確な位置に基づくタイムゾーンより現在時刻を計算し、その現在時刻情報と使用場所を示す概略位置エリア情報とを時計部4へ通知する(ステップS4)。
【0045】
また、上記の受信条件は満たさないが4衛星のタイミング情報と、各衛星のエフェメリス情報のうちで少なくとも軌道6要素が取得できた場合には(ステップS18がNO、ステップS19でYES)、前述した図3のステップS6の処理へ戻る。そして、計算処理部32に概略の位置計算を行わせた後、計算された概略位置に基づくタイムゾーンより現在時刻を計算し、その現在時刻情報と使用場所を示す概略位置エリア情報とを時計部4へ通知する(ステップS7)。
【0046】
さらに、上記の受信条件は満たさないが3衛星のタイミング情報と、各衛星のエフェメリス情報の全てが取得できた場合(ステップS19がNO、ステップS20でYES)には、前述した図3のステップS9の処理へ戻る。そして、概略の位置計算を行い、計算した概略位置に基づくタイムゾーンより現在時刻を計算し、その現在時刻情報と概略位置に応じた使用場所を示す概略位置エリア情報とを時計部4へ通知する(ステップS7)。
【0047】
また、上記の受信条件は満たさないが3衛星のタイミング情報と、各衛星のエフェメリス情報のうちで少なくとも軌道6要素が取得できた場合には(ステップS20がNO、ステップS21でYES)、前述した図3のステップS11の処理へ戻る。そして、計算処理部32に概略の位置計算を行わせた後、計算された概略位置に基づくタイムゾーンより現在時刻を計算し、その現在時刻情報と概略位置に応じた使用場所を示す概略位置エリア情報とを時計部4へ通知する(ステップS7)。
【0048】
一方、ステップS18〜S21の判別結果の全てがNOであって上述したいずれの条件をも満たさない場合、つまりステップS17で試行した2回目の受信動作を行っても、3衛星のタイミング情報と、その3衛星中の2衛星についての全エフェメリス情報(又は軌道6要素)しか取得できなかった場合には、引き続き、その時点でタイミング情報は取得できたが、エフェメリス情報(軌道6要素)が取得できなかった残りの1つ衛星に関する部分のアルマナック情報が所定時間内(例えば3分以内)に存在する、つまり残りの1つ衛星に関するアルマナック情報の特定部分の送信タイミングが所定時間内である否かを、残りの1つ衛星の衛星識別情報に基づき判断する。そして上記送信タイミングが所定時間内に到来しなければ(ステップS22でNO)、直ちに後述する図4のステップS28の処理へ移行する。
【0049】
これに対し、上記送信タイミングが所定時間内である場合には(ステップS22でYES)、前述した再受信を行う以前の段階でエフェメリス情報が取得できていた衛星の捕捉に使用された受信チャンネルのうちで受信感度が良好であった受信チャンネルのみをONとして、受信部31に前記残り1衛星に関する部分のアルマナック情報の取得に向けた受信動作を開始させる(ステップS23)。その後、必要とするアルマナック情報の取得期間の経過後に上記受信部31をOFFにする(ステップS24)。
【0050】
図8は、上記処理におけるGPS受信部3の動作の一例を示すタイミングチャートである。同図は、時刻合わせ動作の開始当初の受信動作で3衛星(衛星A、衛星B、衛星C)のタイミング情報が取得でき、かつ2衛星については(衛星A、衛星B)が全エフェメリス情報を取得できたが、残りの1衛星(衛星C)についてはエフェメリス情報の軌道6要素ができなかったため、その衛星(衛星C)の不足情報の取得のみを目的とした受信動作(再受信)を行ったが、上記不足情報の取得にも失敗した場合であって、所定時間内にその衛星(衛星C)のアルマナック情報が存在していたため、それを当初全エフェメリス情報の取得に成功していた衛星(衛星A)から取得する場合を示したものである。
【0051】
そして、ステップS23で開始した受信動作によってアルマナック情報が受信できた場合には(ステップS25でYES)、計算処理部32に3衛星のタイミング情報と、それらの2衛星のエフェメリス情報(又は軌道6要素)と、残り1衛星のアルマナック情報を使用した概略の位置計算を行わせる(ステップS26)。なお、このときの位置計算も既説したステップS9,S11と同様、GPS受信装置が地球表面上に存在すること前提とした位置計算である。また、この場合の測位精度は±3km程度である。
【0052】
しかる後、計算された概略位置に基づいて使用場所のタイムゾーンを特定するとともに、特定したタイムゾーンより現在時刻を計算し、その現在時刻情報と使用場所を示す概略位置エリア情報とを時計部4へ通知する(ステップS27)。これに伴い時計部4が、使用者に知らせる(表示する)現在時刻と都市名等を更新する(図4のステップS13)。これにより1回の時刻合わせ動作を終了する。
【0053】
なお、ステップS23で開始した受信動作によってアルマナック情報が受信できなかった場合には(ステップS25でNO)、直ちに後述する図4のステップS28の処理へ移行する。
【0054】
さらに、以上の処理とは異なり前述した図4のステップS14の判別結果がNOであって、時刻合わせ動作の開始当初の受信動作で3衛星以上のタイミング情報が取得できなかった場合、またはステップS15がYESであって、前述したステップS17の受信動作を行っても3衛星のタイミング情報と、それらの衛星の軌道6要素が取得できていなかった場合、さらに図5のステップS22、又はステップS25の判別結果がNOであって、必要とするアルマナック情報が所定時間内に存在しないか、必要とするアルマナック情報が取得できなかった場合には、ステップS28以降の処理を行う。
【0055】
この場合には、その時点でいずれか2衛星のタイミング情報と、少なくとも各々の衛星の軌道6要素とが取得できているか否かをまず確認し、それらが取得できていない場合には(ステップS28でNO)、先に述べたように位置計算不可と判断し、タイムゾーンの変化の有無が不明である旨の測位結果情報を時計部4へ通知する(ステップS33)。これに伴い時計部4が、利用者に対し別の場所へ移動した上での時刻合わせの再実行を促すメッセージ等の表示を行う(ステップS35)。これにより1回の時刻合わせ動作を終了する。
【0056】
さらに、上記の場合とは異なり、いずれか2衛星のタイミング情報と、少なくとも各々の衛星の軌道6要素とが取得できている場合には(ステップS28でYES)、計算処理部32に、それら2衛星分の情報のみに基づいて、現在位置(受信位置)が含まれると考えられる領域であって地球表面上における所定の幅を有する軌跡線を算出させる(ステップS29)。すなわち計算処理部32に、2衛星までの距離の差を計算させるとともに、その距離差が一定である無数の点により構成される2衛星を焦点とした回転双曲面と地球表面とが交わる線を中心とし、かつ2衛星までの距離の計算誤差に応じた一定幅(±10km程度)を有する帯状のエリアを算出させる。
【0057】
図9は、計算処理部32によって算出される軌跡線100を便宜的に示した図であり、図示したように軌跡線100は、同一地点において、仮に任意の3衛星(A,B,C)のタイミング情報と各々の衛星の軌道6要素とが取得できたとき、それらに基づいて計算される地球表面上の概略位置エリア(±数Kmの概略位置)200を横切るものとなる。
【0058】
これを前提として、続くステップS30においては、先に計算処理部32で算出された軌跡線が、制御部33のメモリ33aに概略位置エリア情報として記憶されている特定の地域エリアであって、前回の時刻合わせ動作に際して現在位置として計算された受信位置が該当する地域エリア(地図上の特定の領域)、又はユーザによる使用場所の設定に際して選択された都市名等に対応する地域エリア、すなわち既に設定されている概略位置エリアを横切るか否かを判断する(ステップS31)。
【0059】
そして、上記の軌跡線が設定済の概略位置エリアを横切る場合には(ステップS31でYES)、タイムゾーンに変化無しとして、設定済の概略位置エリアに対応するタイムゾーンより現在時刻を計算し、その現在時刻情報を時計部4へ通知する(ステップS31)。これに伴い時計部4が、使用者に知らせる(表示する)現在時刻を更新する(ステップS32)。これにより1回の時刻合わせ動作を終了する。
【0060】
また、上記の軌跡線が設定済の概略位置エリアを横切らない場合には(ステップS31でNO)、位置計算不可と判断し、概略位置エリアに変化があった旨の測位結果情報を時計部4へ通知する(ステップS34)。これに伴い時計部4が、利用者に対し別の場所へ移動した上での時刻合わせの再実行を促すメッセージ等の表示を行う(ステップS35)。これにより1回の時刻合わせ動作を終了する。
【0061】
以上のように本実施形態のGPS受信装置においては、GPS信号の受信環境に応じて正確な位置計算や概略の位置計算によって現在位置を計算するとともに、計算した現在位置に基づいて、まず使用場所の地域が含まれるタイムゾーンを特定し、特定したタイムゾーンの時差に応じてGPS時刻を補正し、補正後の時刻を現在時刻情報として時計部4へ通知する。
【0062】
その際、GPS信号の受信環境が悪く、GPS信号の連続した2回の受信動作(ステップS1、ステップS17の受信動作)を行っても、いずれか2つの衛星のタイミング情報と、それらのエフェメリス情報(エフェメリス情報の全て、又は軌道6要素)しか取得できなかった場合には(ステップS28でYES)、前述したように2衛星のエフェメリス情報に基づき軌跡線を算出し、係る軌跡線に基づいて使用地域の変化の有無を判断した後、使用地域が変化していなければ、GPS時刻を既に設定されている概略位置エリアに対応するタイムゾーンの時差に応じて補正することによって現在時刻を取得する。
【0063】
係ることから、使用場所が大きく変化していない場合においては、時刻合わせ動作時にGPS信号の受信環境が悪く、正確な現在位置はもとより概略の現在位置についても計算することができない環境下であっても、最低限2つの衛星のタイミング情報と、それらのエフェメリス情報(少なくとも軌道6要素)さえ取得できれば、使用場所に応じた現在時刻を取得することができる。したがって、より多様な使用環境下において現在時刻の取得が可能となる。
【0064】
ここで、本実施形態においては、2つ衛星のタイミング情報が取得できていても、各々の衛星について少なくとも軌道6要素が取得できていない場合には(ステップS28でNO)、直ちに現在時刻の取得を行わない構成としたが、例えばメモリ33aに記憶されているアルマナック情報が比較的新しいものである場合には、そのアルマナック情報に含まれる上記2つ衛星の概略軌道に関する情報を使用して軌跡線を算出し、その軌跡線に基づいて使用地域の変化の有無を判断した後、使用地域が変化していなければ、GPS時刻を既に設定されている概略位置エリアに対応するタイムゾーンの時差に応じて補正することによって現在時刻を取得する構成としてもよい。
【0065】
また、本実施形態においては、GPS信号の受信環境が悪く、4つの衛星のタイミング情報、及び各衛星のエフェメリス情報の全てに基づいた正確な位置計算が行えない場合であっても、その時々の受信環境に応じて概略の位置計算を行う構成のGPS受信装置について説明したが、これに限らず、本発明の現在時刻取得方法は、時刻合わせ動作に際して常に正確な位置計算のみを行うGPS受信装置にも適用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 アンテナ
2 RF部
3 GPS受信部
4 時計部
5 電源部
31 受信部
31a 逆拡散処理部
31b データ復調部
32 計算処理部
33 制御部
34 クロック発生部
100 軌跡線
A〜C 衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の衛星から送られているGPS信号を受信して現在位置を計算する一方、GPS信号に含まれる時刻情報により示される時刻を現在位置に応じて補正することによって使用場所に応じた現在時刻を取得するGPS受信装置において、
設定されている使用地域を記憶する記憶手段と、
前記GPS信号を受信し衛星情報を取得する受信手段と、
この受信手段によるGPS信号の受信状態が所定の受信状態であるか否かを判断する第1の判断手段と、
この第1の判断手段によりGPS信号の受信状態が所定の受信状態であると判断されたことを条件として、GPS信号が受信できた2つの衛星の衛星情報に基づき、現在位置が含まれる地球表面上の所定の幅を有する帯状の軌跡線を算出する算出手段と、
この算出手段により算出された軌跡線が、前記記憶手段に記憶されている使用地域を横切るか否かに基づいて使用地域の変化の有無を判断する第2の判断手段と、
この判断手段により使用地域に変化が無いと判断されたことを条件として、前記時刻情報により示される時刻を前記記憶手段に記憶されている使用地域に応じた現在時刻に補正する時刻補正手段と
を備えたことを特徴とするGPS受信装置。
【請求項2】
前記第1の判断手段は、前記受信手段によるGPS信号の受信に際し捕捉できた衛星が2つのみであった場合にGPS信号の受信状態が所定の受信状態であると判断することを特徴とする請求項1記載のGPS受信装置。
【請求項3】
前記第1の判断手段は、前記受信手段によるGPS信号の受信に際し3以上の衛星が捕捉できたが、3つの衛星の衛星情報が取得できなかった場合にGPS信号の受信状態が所定の受信状態であると判断することを特徴とする請求項1記載のGPS受信装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記受信手段によるGPS信号の受信に際し捕捉できた2つの衛星の衛星情報であって、当該2つの衛星からGPS信号の受信動作に際して取得された各衛星のエフェメリス情報に基づき前記軌跡線を算出することを特徴とする請求項1又は2記載のGPS受信装置。
【請求項5】
複数の衛星から送られているGPS信号を受信して現在位置を計算する一方、GPS信号に含まれる時刻情報により示される時刻を現在位置に応じて補正することによって使用場所に応じた現在時刻を取得するGPS受信装置において、
前記GPS信号の受信状態が所定の受信状態であるか否かを判断する工程と、
前記受信状態が所定の受信状態であると判断されたことを条件として、GPS信号が受信できた2つの衛星の衛星情報に基づき、現在位置が含まれる地球表面上の所定の幅を有する帯状の軌跡線を算出する工程と、
算出した軌跡線が、前記記憶手段に記憶されている使用地域を横切るか否かに基づいて使用地域の変化の有無を判断する工程と、
使用地域に変化が無いと判断したことを条件として、前記時刻情報により示される時刻を記憶手段に記憶されている使用地域に応じた現在時刻に補正する工程と
を含むことを特徴とする現在時刻取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−204057(P2010−204057A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52750(P2009−52750)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】