説明

HCV感染の予防および治療のためのワクチン

本発明は、成熟した E2 エンベロープ糖タンパク質のアミノ末端の 27 個のアミノ酸が欠失しているかまたは該 27 個のアミノ酸の中に突然変異を有している肝炎ウイルス C (HCV) E2 糖タンパク質の CD81 結合ペプチド、または CD81 と結合する能力を保持しているその変異体に関する。さらに、本発明は、該 CD81 結合ペプチドを含むポリペプチド、該 CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチドならびに本発明のポリヌクレオチドを含む発現カセットおよびベクターを提供する。さらに、本発明は、該 CD81 結合ペプチド、該 CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチド、該発現カセットもしくは該ベクター、およびアジュバントを含む組成物に関する。さらに、本発明は、本発明の CD81 結合ペプチド、ポリヌクレオチド、発現カセット、ベクターもしくは組成物、および医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物を提供する。さらに、本発明は、哺乳類における HCV に対する免疫応答、好ましくは特異性の広い免疫応答の誘導のための本発明の CD81 結合ペプチド、ポリヌクレオチド、発現カセット、ベクター、組成物または医薬組成物、ならびに哺乳類において HCV に対する、好ましくは様々な遺伝子型の HCV に対する治療的および/または予防的免疫応答を誘導するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、様々な HCV 遺伝子型による感染に対する特異性の広い(broad-specificity)予防的および/または治療的免疫応答を誘導することができる、超可変領域1(HVR1)が欠失しているかまたは該領域内に突然変異を有する C型肝炎ウイルス(HCV)糖タンパク質 E2 由来の CD81 結合ペプチドおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
世界の人口のおよそ 3% (1億7000万人前後)が C型肝炎ウイルス(HCV)に感染し、急性感染した患者の約 50 から 80 % が、肝硬変および肝細胞癌を発症する危険のある、ウイルスの残存を伴う慢性肝炎を発症する (Timm and Roggendorf, 2007)。
【0003】
HCV は、3つの構造タンパク質、カプシドおよびウイルスエンベロープタンパク質 E1 および E2 ならびに少なくとも6つの非構造タンパク質、NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A および NS5B をコードする 9.5 kb のプラス鎖 RNA ゲノムを有する、フラビウイルス科のメンバーである。ゲノム全体が、後に細胞およびウイルスのプロテアーゼによって別々のタンパク質へ切り分けられる約 3000 アミノ酸のタンパク質へ翻訳される。HCV ポリタンパク質内における HCV 構造タンパク質および非構造タンパク質のアミノ酸座標は、およそ以下の通りである: カプシド (aa 1 から 191)、E1 (aa 192 から 383)、E2 (384 から 746)、P7 (aa 747 から 809)、NS2 (aa 810 から 1026)、NS3 (aa 1027 から 1657)、NS4A (aa 1658 から 1711)、NS4B (aa 1712 から 1972)、NS5A (aa 1973 から 2420)、および NS5B (aa 2421 から 3011)、ここで、アミノ酸の位置は HCV の遺伝子型または分離株(isolate)によって数アミノ酸シフトし得る。HCV の粒子は、その中に2つのエンベロープ糖タンパク質、E1 および E2 がヘテロダイマーとして固定されている脂質二重層によって囲まれたヌクレオカプシドからなる (Lavie et al.、2007)。HCV の E2 は、HCV 遺伝子型の間で大きな多様性を示す〜70 kDa の糖タンパク質であり、そのアミノ末端において超可変領域 1 (HVR1) と称される非常に多様な 27 アミノ酸の配列を含む。エンベロープタンパク質は、ビリオン付着および細胞進入の主要なメディエーターであると考えられている。HCV による感染の間に必須の工程は、そのエンベロープ糖タンパク質 E2 (またはヘテロダイマー性の E1E2 複合体) と一連の細胞膜タンパク質 (HCV 受容体)との分子的相互作用である。ビリオンの最初の付着はグリコサミノグリカンおよび低密度リポタンパク質受容体を含み得、スカベンジャー受容体クラス B タイプ I、4回膜貫通の(tetraspanning) CD81 およびタイトジャンクションタンパク質(tight junction protein)であるクローディン-1、-6 または -9 との連続的相互作用がその後に続く(Dubuisson et al.、2008)。抗 CD81 抗体による HCV エンベロープタンパク質と CD81 との相互作用の干渉が、HCV 感染を阻害または干渉することが記載されている (Keck et al.、2008)。
【0004】
系統学的解析に基づき、6つの主要な遺伝子型への HCV の分類が提唱され、新たな HCV 変異株の命名のための基準が定められた (Timm and Roggendorf、2007)。これらの提案は、3つの主要な公共の HCV 配列データベースのための HCV 命名スキームを提供する: 欧州 (Combet et al.、2007)、米国 (Kuiken et al.、2005) および日本 (http://s2as02.genes.nig.ac.jp/)。HCV の遺伝子型は、ヌクレオチドレベルで互いに 31%-33% 異なり、該遺伝子型は、互いに 20% から 25% 異なる、疫学的に区別される複数のサブタイプへさらに分けられる (Simmonds、2004)。
【0005】
ウイルスにコードされる HCV の RNA ポリメラーゼはプルーフリーディング機能を欠いており、そのため、ウイルスゲノムの複製はエラーが起こり易い。理論上は、ある感染した宿主において、日常的に、ゲノムのあらゆる単一の位置においてあらゆる突然変異が生じ得る (Timm & Roggendorf、2007)。この高いエラー率は、疑似種(quasispecies)と称される、同じ宿主内における不均一だが近縁なウイルス群の生成に反映されている(Simmonds、2004)。高レベルの遺伝的可変性(genetic variability)は、HCV が免疫系を回避することを可能にし、通常、慢性疾患をもたらすと考えられている。最も可変性の領域の1つは、エンベロープ糖タンパク質 E2 内の 27 個のアミノ末端のアミノ酸に位置する超可変領域 1 (HVR1)である。受容体認識に関与する HCV エンベロープ決定基に向けられた抗体は、HCV 感染の中和にとって重要であると考えられる。しかし、HVR1 を標的とする抗体は、分離株特異的であることが示された。一貫して、いずれも HVR1 を有する、E2 の全長もしくはそのカルボキシ末端が切断されたバージョンを含む HCV 糖タンパク質または二量体複合体 E1E2 を含む免疫原は、相同な HCV 株による感染を防止するのに効果的な中和抗体を誘導することができるが、非相同な HCV 株による感染の防止においてはずっと効果が低く、したがって、ワクチン接種による HCV 感染に対する特異性の広い保護には適さない。
【0006】
本発明は、非相同な HCV 株に対する免疫応答を誘発することができる抗原/免疫原を提供し、その結果、これらの抗原は、ワクチン接種による特異性の広い保護または HCV 感染に対する治療に適用可能である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の概要
第一の側面において、本発明は、哺乳類における HCV に対する免疫応答の誘導のための、
成熟した E2 エンベロープ糖タンパク質の N末端の 27 個のアミノ酸が欠失しているかまたは該 27 個のアミノ酸の中に突然変異を有する HCV E2 の CD81 結合ペプチド、または CD81 と結合する能力を保持しているその変異体、
該ペプチドを含むポリペプチド、ただし、該ポリペプチドが野生型の E2 ではないことを条件とする、
該ペプチドまたは該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(i) 該ポリヌクレオチドおよび (ii) ポリアデニル化シグナル、プロモーター、エンハンサー、異種性タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびペプチドタグをコードするヌクレオチド配列からなる群から選択される1以上のポリヌクレオチドを含む発現カセット、
該ポリヌクレオチドまたは該発現カセットを含むベクター、
該ペプチド、該ポリペプチド、該ポリヌクレオチド、該発現カセットもしくは該ベクター、およびアジュバントを含む組成物、または
該ペプチド、該ポリペプチド、該ポリヌクレオチド、該発現カセット、該ベクターもしくは該組成物、および医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物、
に関する。
【0008】
別の態様において、本発明は、哺乳類において HCV に対する免疫応答を誘導するための方法であって、該哺乳類に対し、免疫応答を生成するのに有効な量で、
成熟した E2 エンベロープ糖タンパク質の N末端の 27 個のアミノ酸が欠失しているかまたは該 27 個のアミノ酸の中に突然変異を有する HCV E2 の CD81 結合ペプチド、または CD81 と結合する能力を保持しているその変異体、
該ペプチドを含むポリペプチド、ただし、該ポリペプチドが野生型の E2 ではないことを条件とする、
該ペプチドまたは該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(i) 該ポリヌクレオチドおよび (ii) ポリアデニル化シグナル、プロモーター、エンハンサー、異種性タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびペプチドタグをコードするヌクレオチド配列からなる群から選択される1以上のポリヌクレオチドを含む発現カセット、
該ポリヌクレオチドまたは該発現カセットを含むベクター、
該ペプチド、該ポリペプチド、該ポリヌクレオチド、該発現カセットもしくは該ベクター、およびアジュバントを含む組成物、または
該ペプチド、該ポリペプチド、該ポリヌクレオチド、該発現カセット、該ベクターもしくは該組成物、および医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物、
を投与する事を含む方法に関する。
【0009】
好ましい態様において、免疫応答は治療的および/または予防的である。好ましくは、免疫応答は、2以上の異なる HCV 遺伝子型に対して向けられる。
【0010】
好ましい態様において、免疫応答を生成する(プライミング)ためのベクターは、DNA プラスミド、アデノウイルス(Ad)ベクター (例えば、非複製性の Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63、ChAd82、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 ベクターまたは複製可能な Ad4 および Ad7 ベクター)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター (例えば、5 型 AAV)、アルファウイルスベクター (例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV)および VEE-SIN キメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター (例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC(ワクシニアのコペンハーゲン(Copenhagen)株に由来する)、およびアビポックス(avipox)ベクター: カナリアポックス(canarypox)(ALVAC)およびフォウルポックス(fowlpox)(FPV)ベクター)、および水疱性口内炎ウイルスベクターからなる群から選択され、免疫応答を増強する(ブースティング)ためのベクターは、DNA プラスミド、アデノウイルス(Ad)ベクター (例えば、非複製性の Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63、ChAd82、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147 PanAd1、PanAd2 および PanAd3 ベクターまたは複製可能な Ad4 および Ad7 ベクター)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター (例えば、5 型 AAV)、アルファウイルスベクター (例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV)、および VEE-SIN キメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター (例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC(ワクシニアのコペンハーゲン株に由来する)、およびアビポックスベクター: カナリアポックス(ALVAC)およびフォウルポックス(FPV)ベクター)、および水疱性口内炎ウイルスベクターからなる群から選択され、ここで、プライミングのためのベクターとブースティングのためのベクターは、異なっているかまたは同一である。
【0011】
さらなる側面において、本発明は、配列番号 3 または 9 に示されるアミノ酸配列のアミノ酸 28 から 364 もしくはその変異体に相当するかまたは配列番号 5 または 7 に示されるアミノ酸配列のアミノ酸 28 から 363 もしくはその変異体に相当する CD81 結合ペプチドに関する。
【0012】
さらなる側面において、本発明は、本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドに関する、ただし、該ポリペプチドは野生型の E2 ではない。
【0013】
別の側面において、本発明は、本発明の CD81 結合ペプチドまたは本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0014】
さらなる側面において、本発明は、(i) 本発明のポリヌクレオチドおよび (ii) ポリアデニル化シグナル、プロモーター、エンハンサー、異種性タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびペプチドタグをコードするヌクレオチド配列からなる群から選択される1以上のポリヌクレオチドを含む発現カセットに関する。
【0015】
さらなる側面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明の発現カセットを含むベクターに関する。
【0016】
さらなる側面において、本発明は、(i) 成熟した E2 エンベロープ糖タンパク質の N末端の 27 個のアミノ酸、即ち超可変領域 1 (HVR1) が欠失しているかまたは該 27 個のアミノ酸の中に突然変異を有する HCV E2 の CD81 結合ペプチドまたは CD81 と結合する能力を保持しているその変異体をコードするポリヌクレオチド、(ii) 該 CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ただし、該ポリペプチドは野生型の E2 ではない、または (iii) (a) (i) または (ii) のポリヌクレオチドおよび (b) ポリアデニル化シグナル、プロモーター、エンハンサー、異種性タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびペプチドタグをコードするヌクレオチド配列からなる群から選択される1以上のポリヌクレオチドを含む発現カセット、を含むベクターに関する。
【0017】
本発明の全ての側面の好ましい態様において、ベクターは、プラスミド DNA ベクター、ウイルスベクター、ウイルス様粒子、細菌の胞子およびバクテリオファージからなる群から選択され、好ましくは、ベクターは、プラスミド DNA、アデノウイルス(Ad)ベクター (例えば、非複製性の Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63、ChAd82、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 ベクターまたは複製可能な Ad4 および Ad7 ベクター)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター (例えば、5 型 AAV)、アルファウイルスベクター (例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV) および VEE-SIN キメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター (例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC(ワクシニアのコペンハーゲン株に由来する)、およびアビポックスベクター、例えばカナリアポックス(ALVAC)およびフォウルポックスウイルス(FPV)ベクター)、および水疱性口内炎ウイルスベクターである。本発明の全ての側面の特に好ましい態様において、ベクターは、好ましくは複製欠損の、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 ベクターから選択される。
【0018】
さらなる側面において、本発明は、本発明の CD81 結合ペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の発現カセットもしくは本発明のベクター、およびアジュバントを含む組成物に関する。
【0019】
さらなる側面において、本発明は、本発明の CD81 結合ペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の発現カセット、本発明のベクターもしくは本発明の組成物、および医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図の簡単な説明
【図1】野生型エンベロープ糖タンパク質 E2 (Ad6E2) をコードするアデノウイルスベクターを用いて免疫化したマウスからの血清の中和。個々のマウスからの血清を、異なる遺伝子型(図の上部の差し込み図において示される)からの HCVcc に対するその中和活性について試験した。個々のマウスからの血清は、横軸上に示される。縦軸上には、各個々の HCVcc についての血清の中和レベルが示される。
【図2】HVR1 を欠くエンベロープ糖タンパク質 E2 (Ad6DeltaE2) をコードするアデノウイルスベクターを用いて免疫化したマウスからの血清の中和。個々のマウスからの血清を、異なる遺伝子型(図の上部の差し込み図において示される)からの HCVcc に対するその中和活性について試験した。個々のマウスからの血清は、横軸上に示される。縦軸上には、各個々の HCVcc についての血清の中和レベルが示される。
【図3】公的に利用可能なアラインメントソフトウェアである ClustalW (http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.html)をデフォルトのパラメータ(Protein Gap Open Penalty = 10.0; Protein Gap Extension Penalty = 0.2; Protein matrix = Gonnet; Protein/DNA ENDGAP = -1; Protein/DNA GAPDIST = 4)で用いた、HCV 分離株 T212、BK、H77 および N2 からのエンベロープ糖タンパク質 E2 のアミノ酸配列のアラインメント。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の詳細な説明
定義
本発明を以下において詳細に説明する前に、方法、プロトコールおよび試薬は異なり得るため、本発明は本明細書に記載される特定の方法、プロトコールおよび試薬には限定されないことが理解されるべきである。本明細書において使用される用語は単に特定の態様を説明するためのものであって、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される本発明の範囲を制限することを意図するものではないことも理解されるべきである。特に定義しない限り、本明細書において用いる全ての技術的および科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0022】
好ましくは、本明細書において用いる用語は、“A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)”、H.G.W. Leuenberger、B. Nagel、and H. Kolbl、Eds.、Helvetica Chimica Acta、CH-4010 Basel、Switzerland、(1995) に記載されるものと同様に定義される。
【0023】
本発明の実施は、他に示さない限り、当該技術分野において公知の、化学、生化学、組換え DNA 技術および免疫学的方法の常套の方法を用いる。かかる技術は、文献において十分に説明されている (例えば、Fundamental Virology、3rd Edition、B.N. Fields and D.M. Knipe eds.、Raven Press、New York 1996; Handbook of Experimental Immunology、D.M. Weir and C.C. Blackwell eds.、Blackwell Scientific Publications、Oxford 1973; Molecular Cloning: A Laboratory Manual、2nd Edition、J. Sambrook et al. eds.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor 1989 を参照)。
【0024】
いくつかの文書が本明細書中に引用されている。本明細書中に引用される上記または下記の各々の文書(全ての特許、特許出願、科学論文、製造者の説明書、指示書等を含む)は、引用によりその全体が本明細書に取り込まれる。先行発明に基づいて本発明がかかる開示事項に先行する資格がないことを認めるものと解釈される事項は、本明細書中には存在しない。
【0025】
本明細書および特許請求の範囲を通して、特に断りのない限り、“含む”との単語および“含む”および“含んでいる”等のバリエーションは、記載される整数または工程または整数もしくは工程の群を包含することを意味するが、他の整数または工程または整数もしくは工程の群を排除することを意味するものではないと理解される。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いる場合、単数形の“ある”、“ひとつの”および “該”は、特に断りのない限り、複数の対象を包含する。したがって、例えば、“ある免疫原”とは、2以上の免疫原の混合物等を包含する。
【0027】
“C型肝炎ウイルス”(HCV)の用語は、あらゆる HCV 遺伝子型、例えば、遺伝子型 1、1a、1b、1c、2、2a、2b、2c、3、3a、3b、4、4a、4b、4c、4d、4e、5、5a、6、6a、7、7a、7b、8、8a、8b、9、9a、10、10a、11 および 11a、ならびにこれらの遺伝子型に包含される系統および分離株をいい、例えば、Viral Bioinformatics Resource Center (http://www.hcvdb.org/viruses.asp) によって開示されるものをいう。特に好ましい分離株は、T212 (遺伝子型 1b)、BK (遺伝子型 1b)、H77 (遺伝子型 1a) および N2 (遺伝子型 1b) である。HCV は、およそ 3000 アミノ酸を含むタンパク質、即ち、細胞性またはウイルスのプロテアーゼによって別々の構造および非構造 HCV タンパク質へとさらに切断される HCV ポリタンパク質へ翻訳される 9.5 kb のプラス-センス鎖の(positive-sense) RNA ゲノムを含有する。好ましい遺伝子型は、1a、1b、1c、2a、2b、2c、3a および 3b である。特に好ましい遺伝子型は 1a および 1b である。
【0028】
“E2 タンパク質”の用語は、HCV E2 領域に由来するポリペプチドを表し、好ましくは HCV ポリタンパク質のアミノ酸 384 から 746 または 747 に相当する、HCV のエンベロープ糖タンパク質 2 をいい、ここで、該ポリタンパク質内における正確なアミノ酸の位置は HCV 遺伝子型に応じてシフトし得る。E2 タンパク質は、上記のあらゆる HCV 遺伝子型および系統および分離株から得ることができる。好ましくは、E2 タンパク質は、配列番号 3、5、7 または 9 に示されるアミノ酸配列に相当するか又は該配列からなり、最も好ましくは、配列番号 9 に示されるアミノ酸配列に相当するか又は該配列からなる。さらに、E2 タンパク質は、シグナル配列、例えば HCV ポリタンパク質のおよそアミノ酸 370 から始まり、エンベロープ糖タンパク質 E1 の約 14 個のカルボキシ末端のアミノ酸に相当するシグナルペプチド (好ましくは、配列番号 11、12 または 13) または異種性のシグナル配列、例えば配列番号 15 に示される組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)のシグナルペプチド (ヌクレオチド配列は配列番号 14 に示される) を含み得る。
【0029】
E2 タンパク質は、HCV ポリタンパク質のアミノ酸 384 から 410 に相当する、アミノ末端の“超可変領域 1 (HVR1)”を含む。好ましくは、該 HVR1 は、配列番号 3、5、7 または 9 のアミノ酸位置 1 から 27 のアミノ酸配列を有する。さらに、E2 タンパク質は、HCV ポリペプチドのアミノ酸位置およそ 715-730 から始まりアミノ酸残基 747 まで伸長し得るカルボキシ末端の膜貫通ドメイン(TMD)を含む。例えば、HCV 分離株 T212 (配列番号 3) および N2 (配列番号 9) の E2 TMD は、HCV ポリペプチドのアミノ酸位置 718 から 747 まで伸長しており、HCV 分離株 BK (配列番号 5) および H77 (配列番号 7) の E2 TMD は、HCV ポリペプチドのアミノ酸位置 717 から 746 まで伸長している。本明細書において定義する E2 タンパク質は、TMD もしくはその部分を含んでもよく、または含まなくてもよい。例えば、E2 タンパク質は、カルボキシ末端のアミノ酸残基が HCV 分離株 T212 および N2 の HCV ポリタンパク質の位置 746、745、717、716、715、714、685、684、683、682、666、665、664、663、662、661 または 660、即ち、配列番号 3 または 9 に示されるアミノ酸配列の位置 363、362、334、333、332、331、302、301、300、299、283、282、281、280、279、278 または 277 に相当するよう、または、HCV 分離株 BK および H77 の HCV ポリタンパク質の位置 745、744、716、715、714、713、684、683、682、681、665、664、663、662、661、660 または 659、即ち、配列番号 5 または 7 に示されるアミノ酸配列の位置 362、361、333、332、331、330、301、300、299、298、282、281、280、279、278、277 または 276 に相当するよう、カルボキシ末端で切断されてもよい。当業者は、他の遺伝子型、系統または分離株に由来する E2 タンパク質における相当するアミノ酸位置をどのように決定するかについて良く理解している。例えば、標準的なアラインメントソフトウェア、例えば ClustalW (http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.html) をデフォルトの設定(Protein Gap Open Penalty = 10.0; Protein Gap Extension Penalty = 0.2; Protein matrix = Gonnet; Protein/DNA ENDGAP = -1; Protein/DNA GAPDIST = 4) で用い、所与の E2 アミノ酸配列を、配列番号 3 (T212)、5 (BK)、7 (H77) または 9 (N2) に示されるアミノ酸配列のいずれかまたは全てと共に整列させることができる。上記のカルボキシ末端のアミノ酸に相当するアミノ酸位置は、当業者によって、かかるアラインメントから得ることができる。かかるアラインメントは、図 3 に示される。
【0030】
“HCV E2 の CD81 結合ペプチド”の用語は、CD81 と結合する能力を有する、HCV のエンベロープ糖タンパク質 E2 (E2 タンパク質) に由来するペプチドをいい、HCV の遺伝子型は上記のあらゆる遺伝子型であり得る。遺伝子型は、好ましくは 1a、1b、1c、2、2a、2b、3、3a、3b、4、5 および 6 からなる群から選択され、好ましくは配列番号 3、5、7 または 9 に示されるアミノ酸配列に相当するか又は該配列を有するものである。
【0031】
“HCV E2 の CD81 結合ペプチドの変異体”は、配列番号 3、5、7 または 9 に示されるアミノ酸配列の一つと、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、好ましくは最適な配列アラインメントを用いた変異体の全長にわたって、および/または最適な配列アラインメントの領域にわたって有し、かつ、以下に定義する CD81 との結合性を示し、ここで、最適な配列アラインメントは、当該技術分野において公知のツール、例えば Align を、標準の設定、好ましくは EMBOSS::needle、Matrix: Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5 で用いて得ることができる。“HCV E2 変異体の CD81 結合ペプチド”の用語は、さらに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15 またはそれ以上のアミノ酸位置においてアミノ酸置換を有し、かつ、配列番号 3、5、7 または 9 に示されるアミノ酸配列の一つと、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、最適な配列アラインメントを用いた変異体の全長にわたって、および/または最適な配列アラインメントの領域にわたって有する、HCV E2 由来の CD81 結合ペプチドをいい、ここで、最適な配列アラインメントは、当該技術分野において公知のツール、例えば Align を、標準の設定、好ましくは EMBOSS::needle、Matrix: Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5 で用いて得ることができる。好ましい態様において、上記のアラインメントのスコアは、変異体の配列を、配列番号 3、5、7 または 9 と共に、少なくとも 100、110、120、130、140、150、160、165、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260 または 270 アミノ酸の長さにわたって整列させた場合に得られる。したがって、好ましくは、その HCV E2 変異体は、変異体の配列を配列番号 3 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 100 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 5 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 100 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 7 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 100 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 9 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 100 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 3 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 110 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 5 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 110 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 7 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 110 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 9 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 110 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 3 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 120 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 5 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 120 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 7 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 120 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 9 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 120 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 3 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 130 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 5 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 130 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 7 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 130 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 9 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 130 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 3 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 140 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 5 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 140 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 7 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 140 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 9 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 140 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 3 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 150 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 5 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 150 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 7 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 150 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 9 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 150 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 3 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 160 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 5 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 160 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 7 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 160 アミノ酸の長さにわたって有し、変異体の配列を配列番号 9 と共に整列させた場合に、少なくとも 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、少なくとも 160 アミノ酸の長さにわたって有する。HCV E2 の CD81 結合ペプチドの変異体は E2 由来ではないさらなるアミノ酸、例えば、タグ、酵素等を含んでいてもよく、かかるさらなるアミノ酸はかかるアラインメントにおいて考慮しない、即ち、アラインメントスコアの算出から除外されるということが理解される。
【0032】
“CD81”の用語は、テトラスパニング(tetraspanning)ファミリーとしても知られる膜貫通 4 スーパーファミリーのメンバーをいう。これらのメンバーのほとんどは、4つの疎水性ドメインの存在によって特徴付けられる細胞表面タンパク質である。該タンパク質は、細胞の発達、活性化、増殖および運動性の調節において重要な役割を果たすシグナル伝達イベントを媒介する。CD81 は、インテグリンと複合体を形成し、かつ、HCV 侵入の媒介に関与することが知られている細胞表面の糖タンパク質である。所与の E2 タンパク質と CD81 との結合を評価するために、完全な CD81 タンパク質またはその細胞外部分のいずれかを、当該技術分野において公知の、本明細書において以下に記載されるタンパク質-タンパク質結合アッセイにおいて用いる。突然変異によって HCV の E2 から得られるペプチドは、他の点では同一である、それぞれの野生型 HVR1 が欠失している E2 ペプチド、好ましくは他の点では同一であり、配列番号 3、5、7 または 9 を有し、かつ HVR1 領域が欠失している HCV E2 ペプチドの結合の、少なくとも 20%、好ましくは 30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100% またはそれ以上を示す場合には、“CD81 結合性”であるとみなされる。したがって、“成熟した E2 タンパク質の N末端の 27 個のアミノ酸の中に突然変異を有する HCV E2 の CD81 結合ペプチド”は、他の点では同一である、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチド、好ましくは他の点では同一であり、配列番号 3、5、7 または 9 のアミノ酸配列を有し、かつ、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチドの、CD81 と結合する能力の少なくとも 20% を示すこと、他の点では同一である、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチド、好ましくは他の点では同一であり、配列番号 3、5、7 または 9 のアミノ酸配列を有し、かつ、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチドの、CD81 と結合する能力の少なくとも 30% を示すこと; 他の点では同一である、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチド、好ましくは他の点では同一であり、配列番号 3、5、7 または 9 のアミノ酸配列を有し、かつ、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチドの、CD81 と結合する能力の少なくとも 40% を示すこと; 他の点では同一である、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチド、好ましくは他の点では同一であり、配列番号 3、5、7 または 9 のアミノ酸配列を有し、かつ、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチドの、CD81 と結合する能力の少なくとも 50% を示すこと; 他の点では同一である、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチド、好ましくは他の点では同一であり、配列番号 3、5、7 または 9 のアミノ酸配列を有し、かつ、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチドの、CD81 と結合する能力の少なくとも 60% を示すこと; 他の点では同一である、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチド、好ましくは他の点では同一であり、配列番号 3、5、7 または 9 のアミノ酸配列を有し、かつ、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチドの、CD81 と結合する能力の少なくとも 70% を示すこと; 他の点では同一である、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチド、好ましくは他の点では同一であり、配列番号 3、5、7 または 9 のアミノ酸配列を有し、かつ、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチドの、CD81 と結合する能力の少なくとも 80% を示すこと; 他の点では同一である、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチド、好ましくは他の点では同一であり、配列番号 3、5、7 または 9 のアミノ酸配列を有し、かつ、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチドの、CD81 と結合する能力の少なくとも 90% を示すこと; 他の点では同一である、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチド、好ましくは他の点では同一であり、配列番号 3、5、7 または 9 のアミノ酸配列を有し、かつ、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチドの、CD81 と結合する能力の少なくとも 95% を示すこと; 他の点では同一である、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチド、好ましくは他の点では同一であり、配列番号 3、5、7 または 9 のアミノ酸配列を有し、かつ、HVR1 が欠失している HCV E2 ペプチドの、CD81 と結合する能力の 100% 以上を示すことが特に好ましい。
【0033】
“HVR1 が欠失している”HCV E2 の CD81 結合ペプチドとは、超可変領域 1 (HVR) が欠失している、即ち、HCV ポリペプチドのアミノ酸 384 から 410 に相当するアミノ酸が欠失している、E2 タンパク質由来の CD81 結合ペプチドを意味する。好ましい態様において、HVR1 が欠失している HCV E2 の CD81 結合ペプチドは、配列番号 3 または 9 のアミノ酸 28 から 364、配列番号 5 または 7 のアミノ酸 28 から 363、または CD81 と結合する能力を保持しているその変異体に相当するアミノ酸配列を有し、かつ、好ましくは、野生型 E2 または野生型 HVR1 を含むその変異体と比較して、好ましくは野生型の HVR1 を除いて CD81 結合ペプチドと同一のアミノ酸配列を有する E2 タンパク質と比較して、増大した CD81 結合を示す。
【0034】
“ペプチド”の用語は、単一のアミノ酸鎖で構成される、タンパク質または完全長タンパク質の一部をいう。“タンパク質”の用語は、二次および三次構造を回復するペプチドを含み、また、いくつかのアミノ酸鎖、即ち、四次構造を形成するいくつかのサブユニットで構成されるタンパク質をいう。
【0035】
2以上のペプチド中の残基は、該残基がポリペプチド構造中の類似の(analogous)位置を占める場合に、互いに“相当する”と称される。当該技術分野において周知の通り、2以上のポリペプチド中における類似の位置は、ポリペプチド配列をアミノ酸配列または構造類似性に基づいて整列させることによって決定することができる。かかるアラインメントツールは当業者に周知であり、かつ、例えばワールドワイドウェブ上で得ることができ、例えば、標準的な設定、好ましくは Align に関しては EMBOSS::needle、Matrix: Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5 を用いる、ClustalW (www.ebi.ac.uk/clustalw) または Align (http://www.ebi.ac.uk/emboss/ align/index.html)が挙げられる。当業者は、満足のいくアラインメントを作成するためにいずれかの配列においてギャップを導入する必要があり得ることを理解している。2つのポリペプチド間の“最適な配列アラインメント”は、整列された同一の残基の数が最大となるアラインメントとして定義される。“最適な配列アラインメントの領域”は、2つの整列された配列の間の配列類似性、好ましくは同一性が、10、20 または 30 アミノ酸の長さにわたって 30% 未満、好ましくは 20% 未満、より好ましくは 10% 未満となる場合に終了し、その結果、類似性スコアを決定するための比較配列の長さの境界(metes and bounds)を決定する。
【0036】
“配列類似性”の用語は、最適な配列アラインメントの同じ位置におけるアミノ酸が同一または類似であること、好ましくは同一であることを意味する。“類似のアミノ酸”は、類似の特性、例えば極性、溶解度、親水性、疎水性、電荷またはサイズを有する。類似のアミノ酸は、好ましくは、ロイシン、イソロイシンおよびバリン; フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン; リジン、アルギニンおよびヒスチジン; グルタミン酸およびアスパラギン酸; グリシン、アラニンおよびセリン; スレオニン、アスパラギン、グルタミンおよびメチオニンである。当業者は、配列類似性検索ツール、例えばワールドワイドウェブ上で利用可能なもの(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/similarity.html)について良く認識している。
【0037】
本発明において“増大した CD81 結合性”の用語は、本発明の HCV E2 の CD81 結合ペプチドが、好ましい態様において、野生型 HVR1 を有する野生型 E2 糖タンパク質と比較して、好ましくは、野生型の HVR1 を除いて該 CD81 結合ペプチドと同一のアミノ酸配列を有する E2 タンパク質と比較して、結合アッセイにおいて、CD81 に対する増大した結合性を示すことを意味する。かかる結合アッセイは当業者に周知であり、本明細書において以下に記載される。例えば、組換え E2 と細胞上に提示された CD81 との結合後のプルダウン(pull-down)実験、または組換え CD81 を用いる ELISA アッセイ。あるいは、蛍光活性化細胞分取(fluorescence-activated cell sorting) (FACS) に基づくアッセイを用いることによって細胞表面への E2 の結合を解析することができる。
【0038】
ポリペプチドに関して“精製された”との用語は、絶対的な純度、例えば均質な調製物を要求するものではなく、ポリペプチドが天然の環境よりも比較的純粋であることを示す。一般的に、精製されたポリペプチドは、他のタンパク質、脂質、炭水化物もしくは自然に付随する他の物質を実質的に含まず、好ましくは機能的に有意なレベルにおいて、例えば、少なくとも 85% 純粋、より好ましくは少なくとも 95% 純粋、最も好ましくは少なくとも 99% 純粋である。当業者は、タンパク質精製のための標準的な手法を用いてポリペプチドを精製することができる。実質的に純粋なポリペプチドは、非還元ポリアクリルアミドゲル上で単一のメジャーバンドを生成する。
【0039】
“単離されたポリヌクレオチド”の用語は、(i) その天然の環境から単離されたか、(ii) ポリメラーゼ連鎖反応によって増幅されたか、または (iii) 完全にもしくは部分的に合成されたポリヌクレオチドをいい、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖のポリマーを意味し、センス鎖およびアンチセンス鎖両方の DNA および RNA 分子を包含する。該用語は、cDNA、ゲノム DNA および組換え DNA を含む。ポリヌクレオチドは、遺伝子全体またはその一部からなり得る。好ましい態様において、本明細書において定義するポリヌクレオチドは、上記のあらゆる HCV 遺伝子型、系統または分離株の HCV E2 の CD81 結合ペプチド、またはその縮重変異体をコードする。“縮重変異体”は、同じアミノ酸配列をコードするが、ヌクレオチド配列中の少なくとも一つのコドンが異なる核酸配列を意味する。縮重変異体は、2以上の異なるコドンが同じアミノ酸をコードすることができる遺伝コードの縮重によって生じる。
【0040】
本明細書において用いる“ベクター”の用語は、当業者に公知のあらゆるベクターを含み、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、例えばラムダファージ、ウイルスベクター、例えばアデノウイルス(Ad)ベクター (例えば、非複製性の Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63 および ChAd82 ベクターまたは複製可能な Ad4 および Ad7 ベクター)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター (例えば、5 型 AAV)、アルファウイルスベクター (例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV) および VEE-SIN キメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター (例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC (ワクシニアのコペンハーゲン株に由来する)、およびアビポックスベクター: カナリアポックス(ALVAC)およびフォウルポックス(FPV)ベクター)、および水疱性口内炎ウイルスベクター、ウイルス様粒子、または細菌の胞子が挙げられる。
【0041】
チンパンジーアデノウイルス (本明細書において、ナミチンパンジーのアデノウイルスについては“ChAd”とも、ボノボのチンパンジーアデノウイルスについては“PanAd”とも省略する) は、ヒトアデノウイルスの一般的な血清型に対するヒトの既存の免疫に伴う有害作用を減少させるための基礎を提供する。つまり、チンパンジーアデノウイルスに基づくウイルスベクターは、遺伝的ワクチンの開発のためのヒト由来アデノウイルスベクターの使用の代替手段を意味する (Farina SF、J Virol. 2001 Dec;75(23):11603-13.; Fattori E、Gene Ther. 2006 Jul;13(14):1088-96)。ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 型のアデノウイルスは、これらのアデノウイルスの型に対して向けられた既存の中和抗体がヒトにおいて全く存在しないことによって特徴付けられる。したがって、これらのアデノウイルスは、例えば免疫化および/または遺伝子治療に用いることができる、特に価値のある医学的ツールを提供する。
【0042】
上記のアデノウイルスベクターに加えて、ナミチンパンジー(Pan troglodytes)から単離されたアデノウイルスベクター ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146 および ChAd147、ならびにボノボ(Pan paniscus)からの PanAd1、PanAd2 および PanAd3 もまた、“ベクター”の用語に含まれる。
【0043】
例えば、本願において“ベクター”の用語に含まれるアデノウイルスベクターは、ECACC (European Collection of Cell Culture、Porton Down、Salisbury、SP4 OJG、UK) に寄託され、08110601 (ChAd83)、08110602 (ChAd73)、08110603 (ChAd55)、08110604 (ChAd147) および 08110605 (ChAd146) からなる群から選択される寄託番号を有するアデノウイルスであり得る。上記のアデノウイルス系統 (ラテン名: マストアデノウイルス属(Mastadenovirus)、アデノウイルス科(Adenoviridae)) の寄託は、2008年11月6日に、Okairos AG、Elisabethenstr. 3、4051 Basel、Switzerland によってなされた。これらの寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の下で維持される。これらの寄託は、単に当業者の便宜のためになされたものであり、35 U. S. C. 112 の下に寄託が要求されることを認めるものではない。寄託物の公共利用に関する全ての制限は、特許が付与されると、37 C. F. R. 1. 808 (b) に規定される要件を除いて、取消不可能な形で(irrevocably)解除される。これらのアデノウイルスおよびそれらに基づくベクターは、その全体が本明細書に取り込まれている 2009年2月2日出願の PCT/EP2009/000672、2009年4月24日出願の US 61/172,624、および 2009年5月1日出願の US 61/174,852 において、より詳細に記載されている。
【0044】
さらに、本願において“ベクター”の用語に含まれるアデノウイルスベクターは、配列番号 28 に示されるゲノムヌクレオチド配列(PanAd1)を含むアデノウイルスであり得る。
【0045】
さらに、本願における“ベクター”の用語は、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および/または PanAd3 のファイバー(fiber)、ヘキソン(hexon)および/またはペントン(penton)タンパク質の1以上をその表面上に保有するか、または ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および/または PanAd3 のファイバー、ヘキソンおよび/またはペントンタンパク質の1以上をコードするヌクレオチド配列を好ましくはそのゲノム中に保有するウイルスベクターを含む。ファイバー、ヘキソンおよびペントンタンパク質は、最も表面に露出したアデノウイルスエピトープを提示する、アデノウイルスのカプシドタンパク質である。ウイルス ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 に特異的な中和抗体は、ヒトの血清中には含まれない。したがって、上記チンパンジーのヘキソン、ペントンおよびファイバータンパク質配列の一つの利点は、これらのタンパク質の配列を、例えば医学上の目的のために操作された他のアデノウイルスを改良するために用い得ることである。例えば、カプシドタンパク質またはその機能性断片(functional fragment)を、例えば、あらゆるアデノウイルスのそれぞれ主要な構造カプシドタンパク質またはその機能性断片の1以上を交換/置換してヒトにおける減少した血清有病率を有する改良された組換えアデノウイルスを得るために用いることができる。
【0046】
ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 のファイバー、ヘキソンおよびペントンタンパク質のタンパク質配列は、それぞれ、配列番号 29 (ChAd55 ファイバー)、配列番号 30 (ChAd73 ファイバー)、配列番号 31 (ChAd83 ファイバー)、配列番号 32 (ChAd146 ファイバー)、配列番号 33 (ChAd147 ファイバー)、配列番号 34 (PanAd1 ファイバー)、配列番号 47 (PanAd2 ファイバー)、配列番号 50 (PanAd3 ファイバー)、配列番号 35 (ChAd55 ヘキソン)、配列番号 36 (ChAd73 ヘキソン)、配列番号 37 (ChAd83 ヘキソン)、配列番号 38 (ChAd146 ヘキソン)、配列番号 39 (ChAd147 ヘキソン)、配列番号 40 (PanAd1 ヘキソン)、配列番号 48 (PanAd2 ヘキソン)、配列番号 51 (PanAd3 ヘキソン)、配列番号 41 (ChAd55 ペントン)、配列番号 42 (ChAd73 ペントン)、配列番号 43 (ChAd83 ペントン)、配列番号 44 (ChAd146 ペントン)、配列番号 45 (ChAd147 ペントン)、配列番号 46 (PanAd1 ペントン)、配列番号 49 (PanAd2 ペントン) および配列番号 52 (PanAd3 ペントン)に示される。
【0047】
本発明における“ChAd55”、“ChAd73”、“ChAd83”、“ChAd146”、“ChAd147”、“PanAd1”、“PanAd2”および/または“PanAd3”の用語はまた、アデノウイルスベクター ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および/または PanAd3 の1以上の、ファイバー、ヘキソンおよびペントンタンパク質または該タンパク質をコードするヌクレオチド配列の1以上、好ましくは全てを保有する、全てのアデノウイルスベクターを包含する。例えば、本発明におけるベクターは、ChAd55 からのファイバー、ヘキソンおよび/またはペントンタンパク質または該タンパク質をコードするヌクレオチド配列を保有するか、または ChAd73 からのファイバー、ヘキソンおよび/またはペントンタンパク質または該タンパク質をコードするヌクレオチド配列を保有するか、または ChAd83 からのファイバー、ヘキソンおよび/またはペントンタンパク質または該タンパク質をコードするヌクレオチド配列を保有するか、または ChAd146 からのファイバー、ヘキソンおよび/またはペントンタンパク質または該タンパク質をコードするヌクレオチド配列を保有するか、または ChAd147 からのファイバー、ヘキソンおよび/またはペントンタンパク質または該タンパク質をコードするヌクレオチド配列を保有するか、または PanAd1 からのファイバー、ヘキソンおよび/またはペントンタンパク質または該タンパク質をコードするヌクレオチド配列を保有するか、または PanAd2 からのファイバー、ヘキソンおよび/またはペントンタンパク質または該タンパク質をコードするヌクレオチド配列を保有するか、または PanAd3 からのファイバー、ヘキソンおよび/またはペントンタンパク質または該タンパク質をコードするヌクレオチド配列を保有するか、または ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および/または PanAd3 からのファイバー、ヘキソンおよび/またはペントンタンパク質または該タンパク質をコードするヌクレオチド配列を保有し、かつ、好ましくは ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および/または PanAd3 以外のいかなる他のアデノウイルスからのいかなるファイバー、ヘキソンおよび/またはペントンタンパク質または該タンパク質をコードするヌクレオチド配列をも保有しない、好ましくは複製欠損の、あらゆるアデノウイルスベクターであり得る。
【0048】
アデノウイルスベクターは、好ましくは複製欠損のものである。“複製欠損の”アデノウイルスとは、ウイルスの複製に必須の遺伝子産物の少なくとも機能欠失(functional deletion)または完全な除去を含むよう操作されたことによって複製することができなくなったアデノウイルスをいう。例えば、E1A、E1B、E2A、E2B、E3 および E4 遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子を、欠失させ、非機能性にし、および/または上述の発現カセットによって置換することができる。当業者は、アデノウイルス、例えば、寄託されたアデノウイルス系統においてこれらのゲノム上の変化を導入する方法を良く認識している。この点に関し、寄託された系統の好ましい改変である、標的細胞への送達のための分子を含む改変アデノウイルスを作出する方法を、上述した。
【0049】
本発明の全ての側面の特に好ましい態様において、ベクターまたは組換えベクターは、上記の、複製欠損の ChAd55、複製欠損の ChAd73、複製欠損の ChAd83、複製欠損の ChAd146、複製欠損の ChAd147、複製欠損の PanAd1、複製欠損の PanAd2 および複製欠損の PanAd3 ベクターからなる群から選択される。
【0050】
ベクターは、発現ベクターおよびクローニングベクターを含む。発現ベクターは、プラスミドベクターおよびウイルスベクターを含み、通常、適切な転写およびプロセシングのための調節エレメントと共に、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有する。存在し得る調節エレメントは、該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と天然に関連するもの、および該ヌクレオチド配列と関連しない外来性調節エレメントを含む。外来性調節エレメント、例えば外来性プロモーターは、特定の宿主における、例えば細菌、酵母、植物、昆虫または哺乳類の細胞における発現のために有用である。機能発現のために有用な調節エレメントの例としては、プロモーター、ターミネーター、リボソーム結合部位およびポリアデニル化シグナルが挙げられる。クローニングベクターは通常、特定の所望の DNA 変異体を操作および増幅するために用いられ、該所望の DNA 変異体の発現に必要な機能性配列を欠いていてもよい。さらに、本明細書に記載されるベクターは、DNA ワクチンの送達のためにも用いられる。
【0051】
“組換え”核酸またはベクターへの言及は、互いに天然には関連しない2以上の核酸領域の存在を示す。
【0052】
“発現カセット”の用語は、発現されるべき少なくとも1つの核酸配列を、その転写および翻訳制御配列と共に含む核酸分子をいう。発現カセットの変更は、それが組み込まれているベクターに、異なる配列または配列の組み合わせの発現を行わせる。5' および 3' 末端に存在するよう操作された制限部位のため、該カセットは容易に挿入し、除去し、または別のカセットによって置換することができる。
【0053】
本明細書において用いる場合、“組換え宿主細胞”とは、対象とするペプチド、例えば、本発明の HCV E2 の CD81 結合ペプチドまたはその変異体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞をいう。このポリヌクレオチドは、宿主細胞内において、(i) そのまま自由に分散した状態で、(ii) ベクター中に組み込まれた状態で、または (iii) 宿主細胞のゲノムまたはミトコンドリア DNA 中に組み込まれた状態で見出し得る。組換え細胞は、対象とするポリヌクレオチドの発現のため、または本発明のポリヌクレオチドもしくはベクターの増幅のために用いることができる。“組換え宿主細胞”の用語は、本発明のポリヌクレオチドまたは組換えベクターを用いて形質転換され、トランスフェクトされ、または感染させられた元の細胞の後代を含む。組換え宿主細胞は、細菌の細胞、例えば大腸菌(E. coli)細胞、酵母細胞、例えばサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)、植物細胞、昆虫細胞、例えば SF9 または Hi5 細胞、または哺乳類細胞であり得る。哺乳類細胞の好ましい例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、アフリカミドリザル腎臓(COS)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK 293)細胞、HELA 細胞、Huh7.5 ヒト肝細胞癌細胞、Hep G2 ヒト肝細胞癌細胞、Hep 3B ヒト肝細胞癌細胞等である。
【0054】
本明細書において用いる場合、“ワクチン”とは、HCV 抗原に対する免疫応答を刺激する役割を果たす免疫原を含む医薬組成物をいい、ここで、該免疫原は、好ましくは、HVR1 が欠失しているかまたは HVR1 の中に突然変異を有する HCV E2 の CD81 結合ペプチドである。ワクチンは、予防および/または治療目的に役立ち得る。免疫応答は、HCV に対する完全な保護および/または治療を提供する必要はない。好ましくは、相同および非相同な HCV の感染に対して保護的および/または治療的な免疫応答が生じる。好ましくは、ワクチンによって誘導される保護的および/または治療的な免疫応答は、例えば交差反応性の抗体の誘導によって、広い特異性を示す。いくつかの場合において、ワクチンは、免疫応答を増強するために、免疫学的アジュバントを含む。本発明のワクチンまたは医薬組成物は、免疫原、即ち、本発明の HCV E2 の CD81 結合ペプチドを、タンパク質として含んでいてもよく、あるいは、ワクチンは、本発明の免疫原をコードする核酸を含んでいてもよく、例えば、DNA ワクチンが挙げられる。
【0055】
“治療上有効な量”とは、それが投与される個体において免疫学的応答を誘導する、本発明の HCV E2 の CD81 結合ペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチド、本発明の発現カセットまたは本発明のベクターの量を意味する。かかる応答は通常、免疫原、即ち、本発明の HVR1 が欠失しているかまたは HVR1 の中に突然変異を有する HCV E2 の CD81 結合ペプチドに対する、分泌性、細胞性および/または抗体に媒介される免疫応答の発生をもたらす。通常、かかる応答は、これらに限定されないが、以下の効果の1以上を含む: 免疫学的クラス、例えば免疫グロブリン A、D、E、G または M のいずれかからの抗体の産生; B および T リンパ球の増殖; 免疫学的細胞に対する活性化、増殖および分化シグナルの供給; ヘルパー T 細胞、サプレッサー T 細胞、および/または細胞傷害性 T 細胞および/または γδ T 細胞集団の増殖。
【0056】
本明細書において用いる場合、“アジュバント”の用語は、抗原/免疫原の投与の前に、投与と共に、または投与の後に投与された場合に、抗原単独の投与と比較して、抗原に対する免疫応答の質および/または強度を促進、延長および/または増強し、その結果、あらゆる所与のワクチンにおいて必要な抗原/免疫原の量、および/または対象とする抗原/免疫原に対して適切な免疫応答を生成するために必要な注入頻度を減少させる物質をいう。
【0057】
“抗体”の用語は、モノクローナルおよびポリクローナル抗体の両方、即ち、HCV E2 の CD81 結合ペプチドまたはその変異体の中の抗原もしくはハプテンを認識することができるあらゆる免疫グロブリンタンパク質またはその部分をいう。抗原結合部分は、組換え DNA 技術によって、またはインタクトな抗体の酵素的または化学的切断によって、作成し得る。いくつかの態様において、抗原結合部分は、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、Fv、dAb、および相補性決定領域(CDR)変異体、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、例えばヒト化抗体、ダイアボディ(diabody)、および該ポリペプチドとの特異的抗原結合性を付与するのに十分な、抗体の少なくとも一部を含むポリペプチド、を包含する。
【0058】
“交差反応性の抗体の誘導”の用語は、非相同な HCV 系統による感染の予防または治療において効果的な抗体を誘導することができることを意味する。
【0059】
“非相同な HCV 系統による感染”とは、そのエンベロープ糖タンパク質 E2 中の配列が、用いられる免疫原が由来する系統のものとは異なっている HCV 系統による感染を意味する。対照的に、“相同な HCV 系統による感染”とは、免疫原として用いられるエンベロープタンパク質 E2 が由来する遺伝子型または該遺伝子型と近縁な遺伝子型を有する HCV 系統による感染を意味する。
【0060】
本発明において、哺乳類において HCV に対する免疫応答を誘導/生成するための免疫原の投与を“プライミング”と称し、哺乳類において HCV に対する免疫応答を増強するための免疫原の投与を“ブースティング”と称する。プライミングおよびブースティングは、抗原/免疫原をタンパク質として用いて行ってもよい。好ましい態様において、プライミングおよびブースティングは、本発明の CD81 結合ペプチドをコードする核酸配列を含むベクターを用いて行うことができ、ここで、プライミングのためのベクターとブースティングのためのベクターは同一であっても、異なっていてもよい。“非相同プライム-ブースト(heterologous prime-boost)”の用語は、哺乳類において HCV に対する免疫応答を誘導/生成(プライミング)するためのベクターと、哺乳類において HCV に対する免疫応答を増強(ブースティング)するためのベクターが異なることを意味する。非相同プライム-ブーストの好ましい態様において、交差反応性ではない2つの異なるアデノウイルスベクターが用いられる。
【0061】
“患者”とは、HCV に感染し得る哺乳類をいう。患者の例は、ヒトおよびチンパンジーである。
【0062】
本明細書において用いる場合、“賦形剤”の用語は、活性成分ではない医薬製剤中の全ての物質、例えば、担体、結合剤、潤滑剤、増粘剤(thickener)、界面活性剤、保存剤、乳化剤、緩衝剤、香味料または着色剤を示すことを意図する。
【0063】
“医薬上許容される担体”との用語は、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント(tragacanth)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等を含む。
【0064】
説明
本発明者らは、超可変領域 1 (HVR1) が欠失しているかまたは該領域内に突然変異を有する、HCV エンベロープタンパク質 E2 由来の CD81 結合ペプチドが、組成物(ワクチン)中における免疫原として用いられる場合に、特異性の広い免疫応答を誘導できることを見出した。
【0065】
いかなる理論とも結合することなく、HVR1 の突然変異または欠失は、CD81 に対する結合性の増大をもたらすと考えられ、この事は E2 内の CD81 結合部位の露出が野生型の E2 と比較して増強していることを示す。例えば医薬組成物またはワクチンにおいて、抗原/免疫原として用いる場合、これらの露出した CD81 結合部位は、免疫応答の生成のための、好ましくは該 CD81 結合部位に対して向けられた抗体の生成のためのエピトープとしての役割を果たす。かかる抗体は、HCV 受容体である CD81 と HCV エンベロープタンパク質との間の相互作用に干渉し得、その結果、ウイルスのドッキングと侵入を阻害することにより、HCV 感染に干渉し、または該感染を阻害する。
【0066】
1つの側面において、本発明は、超可変領域 1 (HVR1) が欠失している、即ちアミノ末端の 27 個のアミノ酸が欠失しているか、または該 HVR1 内に突然変異を有する、C型肝炎ウイルス(HCV)のエンベロープタンパク質 E2 の CD81 結合ペプチドに関する。本発明の HCV E2 の CD81 結合ペプチドの好ましい態様において、HVR1 の N 個のアミノ酸が突然変異または欠失しており、ここで、N は 1 から 27 の間の任意の数字、即ち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26 または 27 である。
【0067】
さらにより好ましい態様において、HVR1 が欠失しているかまたは該 HVR1 内に突然変異を有する CD81 結合ペプチドは、野生型 HVR1 を有する野生型 E2 糖タンパク質と比較した場合に、好ましくは野生型の HVR1 を除いて該 CD81 結合ペプチドと同一のアミノ酸配列を有する E2 タンパク質と比較した場合に、CD81 に対する増大した結合性を示す。
【0068】
当業者は、CD81 との結合を試験するための実験について良く認識している。例えば、CD81 を発現する細胞、例えば CD81 をコードする発現コンストラクトを用いてトランスフェクトされた CHO 細胞、または MOLT-4 細胞を、例えば、好ましくは濃縮された、本発明の組換え可溶性 CD81 結合ペプチドを発現および分泌する細胞の培養上清としての、または本発明の CD81 結合ペプチドを発現する組換え細胞の細胞抽出物の形態の、本発明の CD81 結合ペプチドまたはその変異体と共にインキュベートする。CD81 結合について試験するためには、CD81 結合ペプチドがペプチドまたはタンパク質タグ、例えば His タグと融合していることが好ましい。細胞の洗浄および溶解の後、細胞に結合した CD81 結合ペプチドの検出のため、該ライセートをウエスタンブロッティングによって解析する。例えば、遺伝子型 1a の組換え E2 タンパク質の検出のために、検出可能なマーカーまたは検出可能なシグナルを生成することができる酵素、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼを含む二次抗体と組み合わせて、ラットモノクローナル抗体 6-1/a (Flint et al.、1999) を用い得る。あるいは、市販の、ペプチドまたはタンパク質タグに対して向けられた一次抗体、例えば抗 His タグ抗体を、適切な二次抗体と組み合わせて用い得る。
【0069】
あるいは、プルダウン実験において、CD81 タンパク質、例えば CD81 の大きな細胞外ループ(LEL)を含む GST 融合タンパク質を、好ましくは濃縮された、本発明の組換え可溶性 CD81 結合ペプチドを発現および分泌する細胞の培養上清と共に、または本発明の CD81 結合ペプチドを発現する組換え細胞の細胞抽出物と共にインキュベートし得る。好ましい態様において、CD81 結合ペプチドは、ペプチドまたはタンパク質タグ、例えば His タグと融合している。次いで、混合物を、例えばグルタチオンビーズと共にインキュベートする。ビーズの洗浄および溶出の後、GST-CD81 融合タンパク質、例えば GST-CD81 LEL 融合タンパク質と結合した CD81 結合ペプチドを、CD81 結合ペプチドまたはペプチドもしくはタンパク質タグ、例えば His タグに対して向けられた抗体を用いて、上記のウエスタンブロッティングによって解析し得る。代わりに、GST-CD81 タンパク質を酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)プレート上に固定化し、次いで該プレートを、好ましくは濃縮された、本発明の組換え可溶性 CD81 結合ペプチドを発現および分泌する細胞の培養上清と共に、または本発明の CD81 結合ペプチドを発現する組換え細胞の細胞抽出物と共にインキュベートしてもよい。プレートを洗浄した後、結合している CD81 結合ペプチドを、CD81 結合ペプチドまたはペプチドもしくはタンパク質タグ、例えば当該技術分野において周知の抗 His タグ抗体に対して向けられた抗体、および検出可能なマーカーまたは検出可能なシグナルを生成することができる酵素、例えばアルカリフォスファターゼを含む二次抗体とのインキュベーションを用いて検出する。該当する場合には、次いでプレートを適切な基質と共に、即ち、アルカリフォスファターゼの場合には例えば p-ニトロフェニルホスフェートと共にインキュベートし、ELISA リーダーを用いてシグナルを検出する。シグナルの強度は、結合の程度を示す。
【0070】
あるいは、本発明の CD81 結合ペプチドの CD81 との結合は、蛍光活性化細胞分取(FACS)に基づくアッセイによって解析し得る。CD81 を発現する細胞、例えば CD81 をコードする発現コンストラクトを用いてトランスフェクトされた CHO 細胞、または MOLT-4 細胞を、例えば、好ましくは濃縮された、組換え可溶性 CD81 結合ペプチドを発現および分泌する細胞の培養上清としての、または本発明の CD81 結合ペプチドを発現する組換え細胞の細胞抽出物の形態の、好ましくはタンパク質またはペプチドタグ、例えば His タグと融合した、本発明の CD81 結合ペプチドまたはその変異体と共にインキュベートする。細胞を洗浄し、CD81 結合ペプチドまたはペプチドもしくはタンパク質タグに対して向けられた抗体、例えば抗 His タグ抗体を、蛍光標識された二次抗体、例えばフィコエリトリン結合抗体と組み合わせて使用し、結合している CD81 結合ペプチドを検出する。フローサイトメトリーデータの取得は FACS 装置、例えば FACSCalibur (Becton Dickinson) 上で行い、適切な解析ソフトウェア、例えば CellQuest ソフトウェア (Becton Dickinson) を用いて解析する。
【0071】
本発明のかかる側面の一つの態様において、HVR1 は、アミノ末端の 27 個のアミノ酸、例えば配列番号 3、5、7 または 9 のアミノ酸配列に示されるアミノ酸 1 から 27 に相当するアミノ酸のうち“N個”のアミノ酸に突然変異を有し、ここで、“N”は 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26 および 27 個のアミノ酸から選択される。例えば、配列番号 3、5、7 または 9 に示されるアミノ酸配列のアミノ酸 1 から 27 と比較して HVR1 内の 1 から 27 のアミノ酸位置において、即ち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26 または 27 のアミノ酸位置において以下の突然変異を有し、かつ、HCV E2 の野生型 CD81 結合ペプチドに照らして増大した CD81 結合性をもたらす HCV E2 の CD81 結合ペプチドが、本発明に包含される。好ましくは、以下のアミノ酸が置換されている: アミノ酸位置 1 における Cys、Phe、Leu、Met、Pro、Trp または Tyr; アミノ酸位置 2 におけるアミノ酸 Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 3 におけるアミノ酸 Ala、Asp、Glu、Phe、Gly、Lys、Pro または Trp; アミノ酸位置 4 におけるアミノ酸 Asp、Glu、Phe Gly、Lys、Asn、Pro または Trp; アミノ酸位置 5 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Gly、His、Lys、Asn、Pro、Arg または Tyr; アミノ酸位置 6 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Phe、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 7 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Phe、Ile、Lys、Leu、Asn、Pro、Thr、Trp または Tyr; アミノ酸位置 8 におけるアミノ酸 Asp、Phe、Gly、Met、Pro、Trp または Tyr; アミノ酸位置 9 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Phe、Gly、His、Ile、Lys または Trp; アミノ酸位置 10 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Phe、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Thr、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 11 におけるアミノ酸 Asp、Ile、Leu、Met、Asn、Pro、Thr、Val または Trp; アミノ酸位置 12 におけるアミノ酸 Cys、Phe、Lys、Met または Trp; アミノ酸位置 13 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Flu、Phe、Gly、His、Lys、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Trp または Tyr; アミノ酸位置 14 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Ile または Pro; アミノ酸位置 15 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Phe、His、Leu、Met、Pro、Trp または Lys; アミノ酸位置 16 におけるアミノ酸 Ala、Cys、Asp、Glu、His、Lys、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Thr または Trp; アミノ酸位置 17 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Gln または Trp; アミノ酸位置 18 におけるアミノ酸 Cys、Glu、Phe、His、Ile、Met、Pro、Gln、Val、Trp または Lys; アミノ酸位置 19 におけるアミノ酸 Ala、Cys、Asp、Glu、Gly、His、Lys、Asn、Pro、Gln、Arg、Thr、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 20 におけるアミノ酸 Ala、Cys、Asp、Glu、Gly、His、Ile Lys、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Thr、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 21 におけるアミノ酸 Cys、Glu、Phe、His、Ile、Lys、Pro、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 22 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Gly または Asn; アミノ酸位置 23 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Phe、His、Ile、Lys、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 24 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Phe、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Thr、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 25 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、Ile、Leu または Pro; アミノ酸位置 26 におけるアミノ酸 Ala、Cys、Asp、Phe、Gly、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Ser、Thr、Val、Trp または Tyr、および/またはアミノ酸位置 27 におけるアミノ酸 Ala、Cys、Phe、Gly、Ile、Met、Pro または Trp。好ましい態様において、位置 2、6、7、10、13、16、19、20、23 および/または 26 またはこれらのいずれかの組み合わせが、相当するアミノ酸位置に関して、上記のアミノ酸によって置換されている。より好ましい態様において、位置 2、6、7、16、19、20、23 および/または 26 またはこれらのいずれかの組み合わせが、相当するアミノ酸位置に関して、上記のアミノ酸によって置換されている。
【0072】
上記の HVR1 突然変異のいずれかを単独でまたは組み合わせて含む、上記のいずれかの HCV 遺伝子型のあらゆる E2 の CD81 結合ペプチドが、本発明に包含される。
【0073】
好ましい態様において、CD81 結合ペプチドは、遺伝子型 1、1a、1b、1c、2、2a、2b、2c、3、3a、3b、4、4a、4b、4c、4d、4e、5、5a、6、6a、7、7a、7b、8、8a、8b、9、9a、10、10a、11 および 11a からなる群から選択される天然の HCV 遺伝子型に由来する。特に好ましいものは、遺伝子型 1a、1b、1c、2、2a、2b、3、3a、3b、4、5、および 6 である。よりいっそう好ましい遺伝子型は、1a および 1b である。
【0074】
さらに、全ての HCV 系統/分離株が本発明に包含される。本発明に包含される好ましい遺伝子型、系統および分離株の配列は、例えば、Viral Bioinformatics Resource Center のホームページ(http://www.hcvdb/viruses.asp)上で得ることができる。本発明の全ての側面に関して特に好ましい HCV 分離株は、HCV 遺伝子型 1b 分離株 T212、HCV 遺伝子型 1b 分離株 BK、HCV 遺伝子型 1a 分離株 H77 および HCV 遺伝子型 1b 分離株 N2 である。好ましい態様において、本発明の CD81 結合ペプチドは、配列番号 3 または 9 に示されるアミノ酸配列のアミノ酸 28 から 364、配列番号 5 または 7 に示されるアミノ酸配列のアミノ酸 28 から 363、または好ましくは CD81 と結合する能力を保持しており、より好ましくは野生型 HVR1 を含む対応する(accordant) CD81 結合ペプチドまたはその変異体と比較して、好ましくは野生型の HVR1 を除いて CD81 結合ペプチドと同一のアミノ酸配列を有する E2 タンパク質と比較して増大した CD81 結合性を示すこれらの変異体に相当するか、またはこれらからなる。
【0075】
別の好ましい態様において、本発明の CD81 結合ペプチドは、配列番号 3 または 9 に示されるアミノ酸 28 から 363、28 から 362、28 から 334、28 から 333、28 から 332、28 から 331、28 から 302、28 から 301、28 から 300、28 から 299、28 から 283、28 から 282、28 から 281、28 から 280、28 から 279、28 から 278 または 28 から 277、または配列番号 5 または 7 に示されるアミノ酸 28 から 362、28 から 361、28 から 333、28 から 332、28 から 331、28 から 330、28 から 301、28 から 300、28 から 299、28 から 298、28 から 282、28 から 281、28 から 280、28 から 279、28 から 278、28 から 277 または 28 から 276 に相当するか、またはこれからなる。
【0076】
別の好ましい態様において、本発明の CD81 結合ペプチドは、最初の 27 個のアミノ末端のアミノ酸が N 個のアミノ酸において突然変異を有している配列番号 3、5、7 または 9 に示されるアミノ酸配列に相当し、ここで、“N個”は 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26 および/または 27 個のアミノ酸から選択される。かかる態様においては、HVR1 内の突然変異が、野生型 E2 と比較して増大した CD81 結合性をもたらすことが好ましい。かかる HVR1 突然変異については上述した。別の好ましい態様において、本発明の CD81 結合ペプチドは、配列番号 3 または 9 に示されるアミノ酸 1 から 363、1 から 362、1 から 334、1 から 333、1 から 332、1 から 331、1 から 302、1 から 301、1 から 300、1 から 299、1 から 283、1 から 282、1 から 281、1 から 280、1 から 279、1 から 278 または 1 から 277、または配列番号 5 または 7 に示されるアミノ酸 1 から 362、1 から 361、1 から 333、1 から 332、1 から 331、1 から 330、1 から 301、1 から 300、1 から 299、1 から 298、1 から 282、1 から 281、1 から 280、1 から 279、1 から 278、1 から 277 または 1 から 276 に相当し、ここで、最初の 27 個のアミノ末端のアミノ酸は N 個のアミノ酸において突然変異を有しており、N は 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27 個のアミノ酸から選択される。かかる態様においては、HVR1 内の突然変異が、野生型 HVR1 を有する野生型 E2 糖タンパク質と比較して、好ましくは野生型の HVR1 を除いて CD81 結合ペプチドと同一のアミノ酸配列を有する E2 タンパク質と比較して増大した CD81 結合性をもたらすことが好ましい。かかる HVR1 突然変異については上述した。
【0077】
別の側面において、本発明は、好ましくは天然の HCV 遺伝子型に由来する、HVR1 が欠失しているかまたは該 HVR1 内に突然変異を有する上記の HCV E2 の CD81 結合ペプチドのいずれかを含むポリペプチドを包含する。好ましい態様において、本発明は、別のタンパク質またはタンパク質変異体とインフレーム(in frame)に融合した上記の CD81 結合ペプチドのいずれかを含むポリペプチドを提供し、ここで、該タンパク質またはその変異体は非相同(HCV 由来でない)であっても相同(HCV 由来)であってもよい、ただし、該ポリペプチドが野生型 E2 でないことを条件とする。本発明のかかる側面のよりいっそう好ましい態様において、該ポリペプチドは、野生型 HVR1 を有する野生型 E2 糖タンパク質と比較して、好ましくは野生型の HVR1 を除いて該 CD81 結合ペプチドと同一のアミノ酸配列を有する E2 タンパク質と比較して、増大した CD81 結合性を示す。
【0078】
好ましい態様において、異種性タンパク質は、インターロイキン 2 (IL2)、ユビキチン、抗体断片結晶化可能領域(antibody fragment crystallizable region) (Fc領域)、フューリン切断部位、熱不安定性エンテロトキシン(LTB)の B サブユニットからの T ヘルパーユニバーサルエピトープ、または単純ヘルペスウイルス(HSV)の糖タンパク質 D (gD) であり得る。特に好ましい態様において、異種性タンパク質は、フューリン切断部位、熱不安定性エンテロトキシン(LTB)の B サブユニットからの T ヘルパーユニバーサルエピトープ、および HSV の gD タンパク質からなる群から選択される。
【0079】
フューリンは、RxRR または RxKR に対してC末端で切断し、ここで、x は任意のアミノ酸である。フューリン切断部位の例は、HIV gp160 内に生じるモチーフである REKR である(Hallenberger et al.、1997)。RHRR および RKRR は、それぞれヒト TGFβ および IGFR-1 において生じる。エピトープまたはタンパク質を分離するために RxR/KR を用いる場合の x についての一つの制約は、接合部においてネオエピトープ(neo-epitope)を生成するのを避けることである。ネオエピトープは、それ自体が必ずしも危険という訳ではないが、標的エピトープとの競合を生じる可能性がある。ほとんどの接合部エピトープを避けるための一つの方法は、x を脂肪族アミノ酸 (L,M,V,I,A) の一つにしないことであり、その理由は、これらが A2制限(A2-restricted)エピトープのアンカー位置において最もよく見出されるからである。
【0080】
癌胎児性抗原と融合した熱不安定性エンテロトキシン(LTB)の B サブユニットは、抗原特異的免疫応答および抗腫瘍効果を誘発する (Facciabene et al.、2007)。
【0081】
単純ヘルペスウイルスの糖タンパク質 D (gD) と融合したウイルス抗原が、gD を伴わずに発現させた同じ抗原によって誘発される応答よりもずっと強力な、抗原に対する T および B 細胞応答を誘導したことが示されている(Lasaro et al.、2008)。
【0082】
本発明のポリペプチドに含まれる異種性タンパク質の別の例は、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)である。好ましい態様において、好ましくは配列番号 15 に示されるアミノ酸配列に相当するかまたは該配列からなる、好ましくは配列番号 14 に示されるヌクレオチド配列によってコードされる tPA の分泌シグナル配列が、本発明の CD81 結合ペプチドのアミノ末端に融合している。
【0083】
本発明のかかる側面の一つの態様において、ポリペプチドは、好ましくは天然の HCV 遺伝子型に由来する本発明の CD81 結合ペプチドの他には天然の HCV 配列を含まない。別の態様において、ポリペプチドは、本発明の CD81 結合ペプチドの他には天然の HCV E1 または E2 配列を含まない。
【0084】
本発明のかかる側面の別の態様において、本発明のポリペプチドに含まれる相同タンパク質は、E2 以外の HCV タンパク質、即ち、カプシド、E1、NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A または NS5B のいずれかであり得る。好ましい態様において、本発明のポリペプチドに含まれる相同タンパク質は、エンベロープ糖タンパク質 E1 である。アミノ酸配列は、上記の HCV 遺伝子型、系統または分離株のいずれかに由来し得る。好ましい態様において、E1 タンパク質は HCV 分離株 T212、BK、H77 または N2 に由来する。より好ましい態様において、E1 タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号 17、19、21 および 23 に示されるアミノ酸配列の一つに相当するかまたは該配列からなる。本発明のかかる態様のポリペプチドに含まれる E1 タンパク質は、完全長の E1 タンパク質またはその断片であり得る。好ましい態様において、E1 タンパク質断片は、E1 タンパク質のカルボキシ末端の 14 個のアミノ酸に相当するかまたは該アミノ酸からなる。好ましい態様において、E1 タンパク質は、配列番号 17、19、21 または 23 に示されるアミノ酸配列のアミノ酸 179 から 192 に相当するかまたはこれからなり、好ましくは配列番号 11、12 または 13 に示されるアミノ酸配列からなる。
【0085】
本発明のかかる側面の一つの態様において、ポリペプチドに含まれる本発明の CD81 結合ペプチドは、天然の HCV 配列と隣接していない。好ましい態様において、ポリペプチドに含まれる本発明の CD81 結合ペプチドは、天然の HCV E1 および/または E2 配列と隣接していない。
【0086】
本発明の別の側面は、上記の HCV E2 の CD81 結合ペプチドおよびその変異体をコードするかまたは上記の本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードする、好ましくは天然の HCV 遺伝子型に由来する、好ましくは単離された、ポリヌクレオチドを提供することである。かかる単離されたヌクレオチド変異体を得るために適用される分子生物学的方法は、当業者に一般的に知られている(標準的な分子生物学的方法については、引用により本明細書に取り込まれている Sambrook et al.、Eds.、"Molecular Cloning: A Laboratory Manual"、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York (1989) を参照されたい)。例えば、RNA を HCV 感染細胞から単離し、ランダムプライマー(例えばランダムヘキサマーまたはデカマー)または対象とする変異体の生成に特異的なプライマーを用いる逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を適用して cDNA を生成させることができる。その後、例えば Viral Bioinformatics Resource Center のホームページ上で利用可能な配列データに基づいて当業者が設計できる変異体特異的プライマーを用いる標準的な PCR によって、対象とする変異体を増幅することができる。
【0087】
本発明の CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、上記のあらゆる HCV 遺伝子型に由来し得る。好ましい態様において、本発明の本発明の CD81 結合ペプチドまたはその変異体をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号 1、2、4、6 または 8 に示されるヌクレオチド配列に由来する。これに関し、“由来する”とは、配列番号 1、2、4、6 および 8 が完全長の HCV E2 ペプチドをコードし、好ましい CD81 結合 E2 ペプチドをコードするポリヌクレオチドが、それぞれにコードされる E2 ペプチドによって要求される、該ポリヌクレオチドの 5' および 3' 末端における欠失を含むことをいう。
【0088】
好ましい態様において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、HVR1 を欠いており、好ましくは野生型 E2 と比較して増大した CD81 結合性を示す HCV E2 の CD81 結合ペプチドをコードする。好ましい態様において、CD81 結合ペプチドまたはその変異体の好ましい態様をコードする単離されたポリヌクレオチドは、配列番号 1 (HCV 遺伝子型 1b、分離株: T212) または 8 (HCV 遺伝子型 1b、分離株: N2) に示されるヌクレオチド配列またはその縮重変異体のヌクレオチド 82 から 1092、または配列番号 4 (HCV 遺伝子型 1b、分離株: BK) または 6 (HCV 遺伝子型 1a、分離株: H77) またはその縮重変異体のヌクレオチド 82 から 1089 に由来する。好ましい態様において、本発明の HCV E2 の CD81 結合ペプチドまたはその変異体をコードする単離されたポリヌクレオチドのコドン使用頻度がそれぞれの発現宿主生物に最適化され、好ましくは、該ポリヌクレオチドは配列番号 2 に示されるヌクレオチド配列またはその縮重変異体のヌクレオチド 82 から 1092 に由来する。これに関し、“由来する”とは、配列番号 1、2、4、6 および 8 が完全長の HCV E2 ペプチドをコードし、好ましい CD81 結合 E2 ペプチドをコードするポリヌクレオチドが、それぞれにコードされる CD81 結合 E2 ペプチドによって要求される、該ポリヌクレオチドの 5' および 3' 末端における欠失を含むことをいう。
【0089】
好ましい態様において、HCV E2 の CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、以下のヌクレオチド配列の群から選択されるヌクレオチド配列からなる: 配列番号 1、2 または 8 に示されるヌクレオチド 82 から 1092、82 から 1089、82 から 1086、82 から 1002、82 から 999、82 から 996、82 から 993、82 から 906、82 から 903、82 から 900、82 から 897、82 から 849、82 から 846、82 から 843、82 から 840、82 から 837、82 から 834 および 82 から 831、ならびに配列番号 4 または 6 に示されるヌクレオチド 82 から 1089、82 から 1086、82 から 1083、82 から 999、82 から 996、82 から 993、82 から 990、82 から 903、82 から 900、82 から 897、82 から 894、82 から 846、82 から 843、82 から 840、82 から 837、82 から 834、82 から 831 および 82 から 828。CD81 と結合する能力を保持しているペプチドをコードするポリヌクレオチド変異体または上記のポリヌクレオチド配列の変異体もまた、本発明に包含される。
【0090】
別の態様において、ポリヌクレオチドは、HVR1 内に突然変異を有し、好ましくは増大した CD81 結合性を示す CD81 結合ペプチドまたはその変異体をコードする。好ましくは、HVR1 は、配列番号 1、2、4、6 または 8 に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド 1 から 81 によってコードされる。例えば、配列番号 3、5、7 または 9 に示されるアミノ酸配列のアミノ酸 1 から 27 と比較して、HVR1 内の 1 から 27 のアミノ酸位置において、即ち 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26 または 27 アミノ酸位置において以下の突然変異を有する HCV E2 の CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、増大した CD81 結合性をもたらすものであり、本発明に包含される: アミノ酸位置 1 におけるアミノ酸 Cys、Phe、Leu、Met、Pro、Trp または Tyr; アミノ酸位置 2 におけるアミノ酸 Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 3 におけるアミノ酸 Ala、Asp、Glu、Phe、Gly、Lys、Pro または Trp; アミノ酸位置 4 におけるアミノ酸 Asp、Glu、Phe、Gly、Lys、Asn、Pro または Trp; アミノ酸位置 5 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Gly、His、Lys、Asn、Pro、Arg または Tyr; アミノ酸位置 6 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Phe、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 7 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Phe、Ile、Lys、Leu、Asn、Pro、Thr、Trp または Tyr; アミノ酸位置 8 におけるアミノ酸 Asp、Phe、Gly、Met、Pro、Trp または Tyr; アミノ酸位置 9 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Phe、Gly、His、Ile、Lys または Trp; アミノ酸位置 10 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Phe、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Thr、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 11 におけるアミノ酸 Asp、Ile、Leu、Met、Asn、Pro、Thr、Val または Trp; アミノ酸位置 12 におけるアミノ酸 Cys、Phe、Lys、Met または Trp; アミノ酸位置 13 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Lys、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Trp または Tyr; アミノ酸位置 14 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Ile または Pro; アミノ酸位置 15 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Phe、His、Leu、Met、Pro、Trp、または Tyr; アミノ酸位置 16 におけるアミノ酸 Ala、Cys、Asp、Glu、Gly、His、Lys、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Thr または Trp; アミノ酸位置 17 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Gln または Trp; アミノ酸位置 18 におけるアミノ酸 Cys、Glu、Phe、His、Ile、Met、Pro、Gln、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 19 におけるアミノ酸 Ala、Cys、Asp、Glu、Gly、His、Lys、Asn、Pro、Gln、Arg、Thr、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 20 におけるアミノ酸 Ala、Cys、Asp、Glu、Gly、His、Ile、Lys、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Thr、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 21 におけるアミノ酸 Cys、Glu、Phe、His、Ile、Lys、Pro、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 22 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Gly または Asn; アミノ酸位置 23 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Phe、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 24 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Phe、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Thr、Val、Trp または Tyr; アミノ酸位置 25 におけるアミノ酸 Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、Ile、Leu または Pro; アミノ酸位置 26 におけるアミノ酸 Ala、Cys、Asp、Phe、Gly、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Ser、Thr、Val、Trp または Tyr、および/またはアミノ酸位置 27 におけるアミノ酸 Ala、Cys、Phe、Gly、Ile、Met、Pro または Trp。好ましい態様において、位置 2、6、7、10、13、16、19、20、23 および/または 26 またはこれらのいずれかの組み合わせが、相当するアミノ酸位置について、上に示すアミノ酸によって置換されている。より好ましい態様において、位置 2、6、7、16、19、20、23 および/または 26 またはこれらのいずれかの組み合わせが、相当するアミノ酸位置において、上に示すアミノ酸によって置換されている。当業者は、ヌクレオチド配列中に突然変異を生じさせるためのツールについて良く認識している。例えば、突然変異は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または市販の突然変異誘発キット、例えば Stratagene(La Jolla、CA、USA)の QuickChange(登録商標) Site-Directed Mutagenesis Kit または Clontech(Mountain View、CA、USA)の Transformer(商標) Site-Directed Mutagenesis Kit を用いる部位特異的突然変異誘発によって、ポリヌクレオチド中に導入し得る。
【0091】
好ましい態様において、HCV E2 の CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、以下のヌクレオチド配列の群から選択されるヌクレオチド配列に由来する: 配列番号 1、2 または 8 に示されるヌクレオチド 1 から 1092、1 から 1089、1 から 1086、1 から 1002、1 から 999、1 から 996、1 から 993、1 から 906、1 から 903、1 から 900、1 から 897、1 から 849、1 から 846、1 から 843、1 から 840、1 から 837、1 から 834 および 1 から 831、ならびに配列番号 4 または 6 に示されるヌクレオチド 1 から 1089、1 から 1086、1 から 1083、1 から 999、1 から 996、1 から 993、1 から 990、1 から 903、1 から 900、1 から 897、1 から 894、1 から 846、1 から 843、1 から 840、1 から 837、1 から 834、1 から 831 および 1 から 828、ここで、ヌクレオチド 1 から 81 は、これらのヌクレオチドが N 個のアミノ酸が突然変異しているかまたは欠失している HVR1 をコードするよう、突然変異しているかまたは欠失しており、ここで N は 1 から 27 の間のいずれかの数字、即ち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26 または 27 である。該ポリヌクレオチド配列の変異体もまた、該ポリヌクレオチドが、好ましくは、野生型 HVR1 を有する野生型 E2 糖タンパク質と比較して、好ましくは野生型の HVR1 を除いて該 CD81 結合ペプチドと同一のアミノ酸配列を有する E2 タンパク質と比較して増大した CD81 結合性で CD81 と結合することができるペプチドをコードする限り、本発明に包含される。増大した CD81 結合性をもたらす HVR1 突然変異については上述した。
【0092】
本発明のかかる側面の一つの態様において、本発明の CD81 結合ペプチドまたはその変異体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号 1、2、4、6 または 8 に示されるヌクレオチド配列の一つと 60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% の配列類似性、好ましくは配列同一性を、最適な配列アラインメントを用いたポリヌクレオチドまたはその変異体の全長にわたって、および/または最適な配列アラインメントの領域にわたって示し、ここで、最適な配列アラインメントは、当該技術分野において公知のツール、例えば Align を、標準の設定、好ましくは EMBOSS::needle、Matrix: Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5 を用いて得ることができる。好ましくは、かかるポリヌクレオチドは、配列番号 1、2、4、6 または 8 のポリヌクレオチド配列に基づく CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、ここで、該ストリンジェントな条件とは、約 65℃におけるハイブリダイゼーション、その後の約 65℃における 2xSSC バッファーにおける約 1 時間の洗浄、その後の約 65℃における 0.2×SSC バッファー中における約 30 分間の洗浄を含む。
【0093】
別の好ましい態様において、ポリヌクレオチドは、本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードする。好ましい態様において、本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、異種性タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み得る。本発明に関して、“異種性タンパク質をコードするヌクレオチド配列”とは、HCV に由来しないタンパク質をコードするヌクレオチド/ポリヌクレオチドを意味する。かかる異種性タンパク質の例は、下記のタンパク質タグである。好ましくは、異種性タンパク質は、インターロイキン 2 (IL2)、ユビキチン、抗体断片結晶化可能領域(Fc領域)、フューリン切断部位、LTB からの T ヘルパーユニバーサルエピトープ、および単純ヘルペスウイルス(HSV)の糖タンパク質 D (gD) からなる群から選択される。特に好ましい態様において、異種性タンパク質は、フューリン切断部位、熱不安定性エンテロトキシン(LTB)の B サブユニットからの T ヘルパーユニバーサルエピトープ、および HSV の gD タンパク質からなる群から選択される。当業者は、例えば公共データベース、例えば国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)によって提供されるデータベース(NCBI; http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez)を用いてかかるヌクレオチド配列を得るための方法について良く認識している。
【0094】
好ましくは、異種性タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、本発明の CD81 結合ペプチドをコードするヌクレオチドの 5'- または 3'-末端とインフレームに融合している。
【0095】
別の態様において、本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、E2 以外の HCV タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み得る。本発明に関して、“E2 以外の HCV タンパク質をコードするヌクレオチド配列”とは、エンベロープ糖タンパク質 E2 をコードするヌクレオチド配列を除く、HCV タンパク質をコードする他のあらゆるヌクレオチド配列、即ち、カプシド、E1、NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、NS5B をコードするヌクレオチド配列を意味する。好ましい態様において、E2 以外の HCV タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、エンベロープ糖タンパク質 E1 をコードするヌクレオチド配列である。E1 配列は、上記の HCV 遺伝子型、系統または分離株のいずれかに由来し得る。好ましい態様において、E1 配列は、HCV 分離株 T212、BK、H77 または N2 に由来する。より好ましい態様において、E1 ヌクレオチド配列は、配列番号 16、18、20 および 22 に示されるヌクレオチド配列またはその縮重変異体の一つに由来するかまたはこれからなる。E1 ヌクレオチド配列は、完全長の E1 タンパク質またはその断片をコードし得る。好ましい態様において、E1 ヌクレオチド配列は、E1 タンパク質のカルボキシ末端の 14 個のアミノ酸をコードする。好ましい態様において、カルボキシ末端の 14 個のアミノ酸が配列番号 11、12 または 13 に示される配列を有するよう、E1 タンパク質は、配列番号 17、19、21 または 23 に示されるアミノ酸配列を有する。
【0096】
好ましくは、E2 以外の HCV タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、本発明の CD81 結合ペプチドをコードするヌクレオチド配列の 5'- または 3'-末端、より好ましくは 5'-末端とインフレームに融合している。
【0097】
本発明のかかる側面の一つの態様において、本発明の CD81 結合ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、天然の HCV ヌクレオチド配列と隣接していない。好ましい態様において、本発明の CD81 結合ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、天然の HCV E1 および/または E2 配列と隣接していない。
【0098】
別の態様において、本発明のポリヌクレオチドは、コードされるペプチドまたはポリペプチドの分泌をもたらす機能性配列を含む。シグナル配列変異体は、通常、細胞からのタンパク質の分泌を指示する、疎水性アミノ酸で構成されるシグナルペプチドをコードする。好ましくは、分泌シグナルペプチドは、E1 のカルボキシ末端に位置する HCV エンベロープタンパク質 E1 に由来する。好ましい態様において、E1 シグナル配列は、配列番号 17、19、21 または 23 のアミノ酸 179 から 192 に相当するかまたはこれからなり、相当するアミノ末端のアミノ酸によって約 1、2、3、4、5、6、7、8、9 または 10 アミノ酸延長され得る。好ましい態様において、E1 分泌シグナル配列は、配列番号 11、12 または 13 に示されるアミノ酸からなる。別の好ましい態様において、分泌シグナルペプチドは、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)に由来し、好ましくは、tPA シグナル配列は、配列番号 15 に示されるアミノ酸配列に相当するかまたは該配列からなり、かつ、配列番号 14 に示されるヌクレオチド配列またはその縮重変異体によってコードされる。したがって、好ましい態様において、本発明のポリヌクレオチドは、本発明の CD81 結合ペプチドをコードするかまたは本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の 5'-末端とインフレームに融合した、E1 または tPA シグナル配列を含む。
【0099】
本発明はまた、上記のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を含む。
【0100】
別の側面において、本発明は、上記のポリヌクレオチドと、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、Kozak 配列、異種性タンパク質をコードするヌクレオチド配列、エピトープタグ、ペプチドタグもしくはタンパク質タグをコードするヌクレオチド配列、およびポリアデニル化シグナルからなる群から選択される1以上のポリヌクレオチドとを含む発現カセットを提供する。
【0101】
プロモーターは、RNA ポリメラーゼによって認識され、下流領域の転写を媒介する遺伝的エレメント(genetic element)である。好ましいプロモーターは、増大した転写レベルをもたらす強力なプロモーターである。強力なプロモーターの例は、最初期ヒトサイトメガロウイルスプロモーター(CMV) およびイントロン A を有する CMV である(Chapman et al.、1991)。プロモーターのさらなる例としては、天然のプロモーター、例えば EF1 αプロモーター、マウス CMV プロモーター、アフリカミドリザル CMV プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、SV40 初期/後期プロモーター、およびβ-アクチンプロモーターが挙げられる。さらに、人工プロモーター、例えば合成の筋肉特異的プロモーターおよびキメラ性筋肉特異的/CMV プロモーターもまた、本発明において適用可能である (Li et al.、1999; Hagstrom et al.、2000)。
【0102】
さらに、調節された発現もまた、本発明のかかる側面に包含される。遺伝子、cDNA またはヌクレオチド配列の調節された発現は、一般的に、誘導性(inducible)プロモーターによって達成され得る。かかるプロモーターの活性は、化学的または物理的因子によって始動され得る。例えば、化学的に調節されるプロモーターとしては、その転写活性がアルコール、テトラサイクリン、ステロイド、金属または他の化合物の存在または不存在によって調節されるプロモーターが挙げられる。例えば、メタロチオネインプロモーター (Makarov et al.、1994)、テトラサイクリン誘導プロモーター系 (Baron et al.、1997)、または細胞周期に調節されるプロモーター系を用い得る。
【0103】
好ましい態様において、Ad ベクターに挿入された導入遺伝子の調節された発現は、プロモーター(即ち、ヒト CMV プロモーター)と連結した Tet オペレーター配列を転写開始部位の直ぐ下流、かつ翻訳開始部位の前に挿入することによって得ることができる。その結果得られる CD81 結合ペプチドをコードするベクターは、Tet リプレッサータンパク質を発現する細胞(即ち、Tet リプレッサータンパク質を発現する HEK 293 細胞株)において生産される。同じ調節された発現は、Tet または lac オペレーター配列と関連するウイルスまたは細胞起源のあらゆるプロモーターを用いることによって得ることができ、対応するベクターは Tet リプレッサーまたは lac リプレッサータンパク質を発現する適切な細胞株において生産される。
【0104】
エンハンサー領域は、転写を増大させる。エンハンサー領域の例としては、CMV エンハンサーおよび SV40 エンハンサーが挙げられる (Hitt et al.、1995; Xu et al.、2001)。エンハンサー領域は、プロモーターと関連することができる。
【0105】
リボソーム結合部位は、開始コドンの位置またはその近くに位置する。好ましいリボソーム結合部位の例としては、CCACCAUGG、CCGCCAUGG および ACCAUGG が挙げられ、ここで、AUG は開始コドンである。好ましい Kozak 配列は、AUG に先行する GCCACC である。
【0106】
本発明のかかる側面において、“異種性タンパク質をコードするヌクレオチド配列”とは、HCV タンパク質をコードしないあらゆるヌクレオチド配列を意味する。かかるヌクレオチド配列は、例えば選択マーカーをコードし得、それによって、例えば抗生物質耐性を付与し得る。選択マーカーの例は、ネオマイシン耐性遺伝子である。好ましくは、かかる異種性ヌクレオチド配列は、CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、例えば配列内リボソーム進入部位(IRES)によって連結され、この事が、別々の、融合していない2つのタンパク質、即ち、CD81 結合ペプチドまたは本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドおよび異種性タンパク質の発現をもたらす。
【0107】
エピトープタグ、ペプチドタグまたはタンパク質タグは、対象とするポリペプチド変異体の精製を促進する。かかるエピトープタグ、ペプチドタグまたはタンパク質タグとしては、これらに限定されないが、ヘマグルチニン- (HA-)、FLAG-、myc-タグ、ポリ-His-タグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ- (GST-)、マルトース結合タンパク質- (MBP-)、NusA-、およびチオレドキシン-タグ、または蛍光タンパク質-タグ、例えば(増強)緑色蛍光タンパク質 ((E)GFP)、(増強)黄色蛍光タンパク質 ((E)YFP)、サンゴ(Discosoma species)由来(DsRed)または単量体(mRFP)の赤色蛍光タンパク質(RFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP) 等が挙げられる。好ましい態様において、エピトープタグ、ペプチドタグまたはタンパク質タグは、例えば、プロテアーゼ、例えばトロンビン、第Xa因子、プレシジョン(PreScission)、TEV プロテアーゼ等を用いて、対象とするポリペプチド変異体から切り離すことができる。かかるプロテアーゼの認識部位は、当業者に周知である。
【0108】
ポリアデニル化シグナルは、転写された RNA の切断および該 RNA へのポリ(A)テールの付加に関与する。高等真核生物におけるポリアデニル化シグナルは、ポリアデニル化付加部位から約 11 から 30 ヌクレオチドにおける AAUAAA 配列を含有する。ポリ(A)テールは、mRNA プロセシングにとって重要である。発現カセットの部分として使用し得るポリアデニル化シグナルとしては、最小ウサギβグロビンポリアデニル化シグナルおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(BGH)が挙げられる (Xu et al.、2001; US PS 5,122,458)。さらなる例としては、合成ポリアデニル化シグナル(SPA)および SV40 ポリアデニル化シグナルが挙げられる。SPA 配列は以下の通りである: AAUAAAAGAUCUUUAUUUUCAUUAGAUCUGUGUGUUGGUUUUUUGUGUG (配列番号 10)
【0109】
別の側面において、本発明は、本発明の CD81 結合ペプチドもしくは本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは上記の発現カセットを含む組換えベクターに関する。
【0110】
つまり、1つの側面において、本発明は、(i) 超可変領域 1 (HVR1)が欠失している、即ちアミノ末端の 27 個のアミノ酸が欠失しているか、または HVR1 内に突然変異を有する、C型肝炎ウイルス(HCV)エンベロープタンパク質 E2 の CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチド、または (ii) 本発明の該 CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または (iii) 該ポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む組換えベクターに関し、該 CD81 結合ペプチド、該ポリペプチド、該ポリヌクレオチドおよび該発現カセットのさらなる好ましい態様については上記の通りである。
【0111】
当業者は、対象とするポリヌクレオチド配列のベクターへの組込みのために用いられる技術についてよく認識している (Sambrook et al.、1989 も参照されたい)。かかるベクターは、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、例えばバクテリオファージλ、ウイルスベクター、例えばアデノウイルス(Ad)ベクター (例えば、非複製性の Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63、ChAd82、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 ベクターまたは複製可能な Ad4 および Ad7 ベクター)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター (例えば、5 型 AAV)、アルファウイルスベクター (例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV) および VEE-SIN キメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター (例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC (ワクシニアのコペンハーゲン株に由来する)、およびアビポックスベクター: カナリアポックス(ALVAC)およびフォウルポックス(FPV)ベクター)、および水疱性口内炎ウイルスベクター (ウイルスベクターについての総説として、Robert-Guroff、2007 を参照されたい)、バキュロウイルスベクター、ウイルス様粒子、細菌の胞子、または人工染色体ベクター、例えば細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、または P1 人工染色体(PAC)を含む当業者に公知のあらゆるベクターを包含する。該ベクターは、原核生物または真核生物発現に適する発現ベクターであり得る。該ベクターは、複製起点(ori)、マルチクローニングサイト、および調節配列、例えばプロモーター(構成的または誘導性)、転写開始部位、リボソーム結合部位、転写終結部位、ポリアデニル化シグナル、および選択マーカー、例えば抗生物質耐性または突然変異または欠失の相補性に基づく栄養要求性マーカーを含み得る。一つの態様において、本発明の CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、調節配列と操作可能に連結している。上記の発現カセットをベクターへ導入する場合、該ベクターが発現カセット中に存在する調節エレメントを含むことは必要とされない。この場合において、ベクターは、クローニング、増幅または選択のために必要なエレメント、例えば選択可能なマーカー、複製起点、相同組換え領域、および/または便利な制限部位を含み得る。好ましい態様において、ベクターは、ウイルスベクター、ウイルス様粒子、細菌の胞子、バクテリオファージベクター、およびプラスミドからなる群から選択される。よりいっそう好ましい態様において、ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、MVA(改変ワクシニアウイルスアンカラ)、ALVAC、NYVAC、フォウルポックスウイルスベクター、アルファウイルスベクターまたは麻疹ウイルスベクターからなる群から選択されるウイルスベクターである。よりいっそう好ましい態様において、ウイルスベクターはアデノウイルスおよび MVA から選択され、最も好ましい態様においては、ウイルスベクターは、複製欠損の ChAd55、複製欠損の ChAd73、複製欠損の ChAd83、複製欠損の ChAd146、複製欠損の ChAd147、複製欠損の PanAd1、複製欠損の PanAd2 および複製欠損の PanAd3 ベクターからなる群から選択される。
【0112】
別の側面において、本発明は、本発明の CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチド、本発明の CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセット、または本発明のポリヌクレオチドもしくは発現カセットを含むベクターを含む組換え宿主細胞を提供する。組換え宿主細胞は、原核生物細胞、例えば古細菌および細菌の細胞または真核生物細胞、例えば酵母、植物、昆虫または哺乳類の細胞であり得る。一つの態様において、宿主細胞は細菌細胞、例えば大腸菌(E. coli)細胞である。当業者は、該単離されたポリヌクレオチドまたは該組換えベクターを該宿主細胞へ導入するための方法について良く認識している。例えば、細菌細胞は、例えば化学的形質転換、例えば塩化カルシウム法またはエレクトロポレーションを用いて、容易に形質転換することができる。別の態様において、組換え宿主細胞は、真核生物細胞である。酵母細胞は、例えば酢酸リチウム形質転換法またはエレクトロポレーションを用いて形質転換し得る。他の真核生物細胞は、例えば、市販のリポソームに基づくトランスフェクションキット、例えば Lipofectamine(商標) (Invitrogen)、市販の脂質に基づくトランスフェクションキット、例えば Fugene (Roche Diagnostics)、ポリエチレングリコールに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、遺伝子銃(biolistic)、エレクトロポレーション、またはウイルス感染を用いてトランスフェクトすることができる。本発明の好ましい態様において、組換え宿主細胞は、本発明の HCV E2 の CD81 結合ペプチドを発現する。よりいっそう好ましい態様において、該発現は、本発明の可溶性 CD81 結合ペプチドをもたらす。これらの CD81 結合ペプチドは、所望により上記のエピトープタグ、ペプチドタグまたはタンパク質タグを利用する、当業者に周知のタンパク質精製法を用いて精製することができる。
【0113】
別の側面において、本発明は、本発明の CD81 結合ペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチド、上記の本発明の発現カセット、または本発明のポリヌクレオチドもしくは発現カセットを含むベクター、およびアジュバントを含む組成物を提供する。本発明の組成物において用い得るアジュバントの例は、水酸化アルミニウム(ミョウバン)のゲル様沈殿; AlPO4; アルハイドロゲル(alhydrogel); グラム陰性細菌の外膜からの細菌産物、特に、モノホスホリルリピド A (MPLA)、リポ多糖 (LPS)、ムラミルジペプチドおよびこれらの誘導体; フロイント不完全アジュバント; リポソーム、特に、中性リポソーム、組成物および所望によりサイトカインを含むリポソーム; 非イオン性ブロックコポリマー; ISCOMATRIX アジュバント (Drane et al.、2007); CpG ジヌクレオチド(CpG モチーフ)を含む非メチル化 DNA、特に、ホスホロチオエート(PTO)主鎖(CpG PTO ODN)またはホスホジエステル(PO)主鎖(CpG PO ODN)を有する CpG ODN; 合成リポペプチド誘導体、特に Pam3Cys; リポアラビノマンナン; ペプチドグリカン; ザイモサン; 熱ショックタンパク質(HSP)、特に HSP 70; dsRNA およびその合成の誘導体、特に Poly I:poly C; ポリカチオン性ペプチド、特に ポリ-L-アルギニン; タキソール(taxol); フィブロネクチン; フラジェリン; イミダゾキノリン; アジュバント活性を有するサイトカイン、特に、GM-CSF、インターロイキン-(IL-)2、IL-6、IL-7、IL-18、I 型および II 型インターフェロン、特に、インターフェロンγ、TNFα; 25-ジヒドロキシビタミン D3 (カルシトリオール); および合成オリゴペプチド、特に MHCII に提示されるペプチドである。ポリオキシエチレン(POE)およびポリオキシプロピレン(POP)を含有する非イオン性ブロックポリマー、例えば POE-POP-POE ブロックコポリマーは、アジュバントとして用い得る (Newman et al.、1998)。このタイプのアジュバントは、活性成分として核酸を含む組成物にとって特に有用である。
【0114】
特定の受容体の活性化は、免疫応答を刺激する。かかる受容体は、当業者に公知であり、例えば、サイトカイン受容体、特に I 型サイトカイン受容体、II 型サイトカイン受容体、TNF 受容体; および転写因子として働くビタミン D 受容体; および Toll様受容体 1 (TLR1)、TLR-2、TLR 3、TLR4、TLR5、TLR-6、TLR7 および TLR9 を含む。かかる受容体に対するアゴニストは、アジュバント活性を有する、即ち、免疫賦活性である。好ましい態様において、本発明の組成物のアジュバントは、1以上の Toll様受容体アゴニストであり得る。より好ましい態様において、アジュバントは Toll様受容体 4 アゴニストである。特に好ましい態様において、アジュバントは、好ましくは配列番号 27 に示されるヌクレオチド配列によってコードされる、Toll様受容体 9 アゴニストである。
【0115】
別の側面において、本発明は、本発明の CD81 結合ペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドもしくは本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、上記の本発明の発現カセット、本発明のポリヌクレオチドもしくは発現カセットを含むベクター、または本発明の組成物、および医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤を含む、医薬組成物またはワクチンを提供する。一つの態様において、本発明の医薬組成物またはワクチンは、本発明の CD81 結合ペプチドを含むタンパク質、医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤、および所望によりアジュバントを含む。別の態様において、本発明の医薬組成物またはワクチンは、本発明の CD81 結合ペプチド、医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤、および所望によりアジュバントを含む。好ましい態様において、本発明の医薬組成物またはワクチンは、本発明の CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチド、医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤、および所望によりアジュバントを含む。別の態様において、本発明の医薬組成物またはワクチンは、本発明の発現カセット、医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤、および所望によりアジュバントを含む。好ましい態様において、本発明の医薬組成物またはワクチンは、本発明の CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチドもしくは本発明の発現カセットを含むベクター、医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤、および所望によりアジュバントを含む。より好ましい態様において、該ベクターは、ウイルスベクター、ウイルス様粒子、細菌の胞子、バクテリオファージベクター、またはプラスミドである。よりいっそう好ましい態様において、ベクターは、ウイルスベクター、例えばアデノウイルス(Ad)ベクター (例えば、非複製性の Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63、ChAd82、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 ベクターまたは複製可能な Ad4 および Ad7 ベクター)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター (例えば、5 型 AAV)、アルファウイルスベクター (例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV)、および VEE-SIN キメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター (例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC (ワクシニアのコペンハーゲン株に由来する)、およびアビポックスベクター: カナリアポックス(ALVAC)およびフォウルポックス(FPV)ベクター)、および水疱性口内炎ウイルスベクターである。より好ましい態様において、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、MVA、ALVAC、NYVAC、フォウルポックスウイルスベクター、アルファウイルスベクターまたは麻疹ウイルスベクターからなる群から選択される。よりいっそう好ましい態様において、本発明の医薬組成物またはワクチンに含まれる該ベクターは、アデノウイルスベクターまたは MVA であり、最も好ましい態様において、医薬組成物に含まれるウイルスベクターは、複製欠損の ChAd55、複製欠損の ChAd73、複製欠損の ChAd83、複製欠損の ChAd146、複製欠損の ChAd147、複製欠損の PanAd1、複製欠損の PanAd2 および複製欠損の PanAd3 ベクターからなる群から選択される。別の好ましい態様において、本発明の医薬組成物またはワクチンは、本発明の組成物および医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤を含む。
【0116】
好ましい態様において、本発明の CD81 結合ペプチドは、本発明の組成物、医薬組成物またはワクチンにおいて免疫原として用いられる。該免疫原は、本発明の組成物、医薬組成物またはワクチン中においてタンパク質として、即ち、本発明の CD81 結合ペプチドを含むタンパク質または本発明の CD81 結合ペプチド自身として存在してもよく、または、該免疫原は、例えば核酸ワクチン、例えば DNA ワクチンの場合のように、本発明の組成物、医薬組成物またはワクチン中に存在する核酸によってコードされてもよい。
【0117】
好ましい態様において、本発明の組成物、医薬組成物またはワクチンは、患者において現存する HCV 感染の処置のために用いられる。かかる態様において、本発明の組成物、医薬組成物またはワクチンは、HCV に感染している哺乳類/患者、好ましくはヒト患者において、HCV に対して向けられた免疫応答を増強または誘導する。HCV に感染している患者に対して、HCV 感染の処置に用いられる有効量の本発明の医薬組成物またはワクチンは、以下の効果のうちの1以上を達成するのに十分なものである: 感染を予防すること、HCV の複製能力を減少させること、HCV ロード(load)を減少させること、ウイルスのクリアランスを増大させること、および HCV 特異的免疫応答、例えば細胞媒介性免疫応答を増大させること。別の好ましい態様において、本発明の組成物、医薬組成物またはワクチンは、HCV に対して向けられた免疫応答を誘導することによって、好ましくは免疫記憶を誘導することによって、哺乳類/患者、好ましくはヒト患者を HCV による感染から保護する予防的目的のために使用される。HCV に感染していない患者に対しては、予防的目的のための有効量の本発明の医薬組成物またはワクチンは、以下の効果のうちの1以上を達成するのに十分なものである: HCV 感染に対する HCV 特異的免疫応答の1以上の構成要素、例えば体液性および細胞媒介性免疫応答を生成する能力の増大、HCV 感染に対する感受性の減少、および感染するウイルスの、慢性疾患のための持続性感染を確立する能力の減少。
【0118】
本発明の組成物、医薬組成物またはワクチンは、当該技術分野において周知の技術と共に本明細書において提供されるガイダンスを用いて製剤し、患者に投与することができる。一般的な医薬的投与のためのガイドラインは、例えば、各々が引用により本明細書に取り込まれる Modern Vaccinology、ed. Kurstak、Plenum Med. Co. 1994; Remington's Pharmaceutical Sciences 18th Edition、ed. Gennaro、Mack Publishing、1990; および Modern Pharmaceutics 2nd Edition、eds. Banker and Rhodes、Marcel Dekker、Inc.、1999 において提供される。
【0119】
本発明の組成物、医薬組成物またはワクチンは、典型的には、注射剤(injectable)として、溶液または懸濁液として調製される。注入前の、液体媒体における溶液または懸濁液に適する固形形態もまた、調製し得る。本発明の医薬組成物またはワクチンは、治療上有効な量の HCV E2 の本発明の CD81 結合ペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチド、本発明の発現カセット、または本発明のベクターを含む。
【0120】
本発明の組成物、医薬組成物またはワクチンの固形の投与形態は、賦形剤、例えば微結晶セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、グリシン、およびデンプン (好ましくはトウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカデンプン)、崩壊剤、例えばデンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、および特定の複合ケイ酸塩(complex silicate)、および造粒結合剤(granulation binder)、例えばポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン、およびアカシアを含有し得る。さらに、潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、およびタルクが含まれ得る。同様のタイプの固形組成物はまた、ゼラチンカプセルにおける充填剤として採用し得る。この点に関して好ましい賦形剤としては、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0121】
非経口投与に適する本発明の組成物、医薬組成物またはワクチンは、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩またはグルコースを含み得る無菌水溶液の形態で使用されるのが最も良い。該水溶液は、必要に応じて、適切に緩衝されるべきである(好ましくは 3 から 9 の pH に)。好ましい態様において、本発明の医薬組成物は、非経口経路、好ましくは静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、皮内経路によって、または皮膚を通した押付け(impression)によって投与される。最も好ましい経路は、筋肉内経路である。
【0122】
鼻腔内投与および吸入による投与に適する本発明の組成物、医薬組成物またはワクチンは、乾燥粉末吸入器、または適切な噴霧剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン、例えば 1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134A.TM.) または 1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA.TM.)、二酸化炭素、または他の適切なガスの使用を伴う加圧された容器、ポンプ、スプレーもしくはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で送達されるのが最も良い。加圧された容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーは、例えばエタノールと噴霧剤の混合物を溶剤として用いる活性化合物の溶液または懸濁液を含み得、潤滑剤、例えばソルビタントリオレエートをさらに含有してもよい。
【0123】
別の側面において、本発明は、哺乳類における HCV に対する免疫応答の誘導のための、本発明の CD81 結合ペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドもしくは本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、本発明の発現ベクター、本発明のベクター、本発明の組成物、または本発明の医薬組成物もしくはワクチンを提供する。好ましい態様において、該哺乳類はヒトである。好ましい態様において、免疫応答は治療的および/または予防的なものである。治療的免疫応答は、現存する HCV 感染に対して向けられ、かつ、HCV の感染する能力、複製する能力を減少させ、HCV ロードを減少させ、ウイルスのクリアランスを増大させる。予防的免疫応答は、将来の HCV 感染に対する感受性を減少させ、および/または感染するウイルスの、慢性疾患のための持続性感染を確立する能力を減少させる。好ましい態様において、免疫応答、好ましくは治療的および/または予防的な免疫応答は、2以上の、即ち 3、4、5、6、7、8、9、10 またはそれ以上の異なる HCV 分離株に対して向けられる。よりいっそう好ましい態様において、免疫応答は、2以上の、即ち 3、4、5、6、7 またはそれ以上の異なる HCV 遺伝子型に対して向けられる。つまり、かかる好ましい態様における免疫応答は、HCV 遺伝子型に関して広い特異性を示す。好ましい態様において、免疫応答は、非相同な HCV 感染に対して向けられる。
【0124】
別の側面において、本発明は、免疫応答を生成するのに有効な量の本発明の CD81 結合ペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドもしくは本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、本発明の発現カセット、本発明のベクター、本発明の組成物または本発明の医薬組成物もしくはワクチンを哺乳類に投与することを含む、該哺乳類において HCV に対する免疫応答を誘導するための方法を提供する。一つの態様において、本発明は、免疫応答を誘導するのに有効な量の本発明の組成物または医薬組成物もしくはワクチンを哺乳類に投与することを含む、該哺乳類において HCV に対する免疫応答を誘導するための方法を提供する。別の態様において、本発明は、哺乳類において HCV に対する免疫応答を誘導するための医薬組成物またはワクチンの製造のための、本発明の CD81 結合ペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドもしくは本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、本発明の発現カセット、本発明のベクターまたは本発明の組成物の使用に関する。
【0125】
本発明の方法または使用の好ましい態様において、哺乳類はヒトである。本発明の方法または使用の別の好ましい態様において、免疫応答は、治療的および/または予防的なものである。治療的免疫応答は、現存する HCV 感染に対して向けられ、かつ、HCV の感染する能力、複製する能力を減少させ、または HCV ロードを減少させ、またはウイルスのクリアランスを増大させる。予防的免疫応答は、将来の HCV 感染に対する感受性を減少させ、および/または感染するウイルスの、慢性疾患のための持続性感染を確立する能力を減少させる。好ましい態様において、本発明の方法または使用は、患者における現存する HCV 感染の処置に適用される。かかる態様において、本発明の方法または使用は、HCV に感染している哺乳類/患者、好ましくはヒト患者における HCV に対して向けられた免疫応答の増強または誘導をもたらす。HCV に感染している患者に対して、HCV 感染の処置のために用いられる有効量は、以下の効果のうちの1以上を達成するのに十分なものである: HCV の感染する能力、複製する能力を減少させること、または HCV ロードを減少させること、またはウイルスのクリアランスを増大させること、および HCV 特異的免疫応答、例えば体液性および細胞媒介性免疫応答を増大させること。別の好ましい態様において、本発明の方法または使用は、HCV に対して向けられた免疫応答を誘導することによって、哺乳類/患者、好ましくはヒト患者を、HCV による感染から保護する予防的効果をもたらす。HCV に感染していない患者に対しては、予防的目的のための有効量は、以下の効果のうちの1以上を達成するのに十分なものである: HCV 特異的免疫応答の1以上の構成要素、例えば HCV 感染に対する体液性および細胞媒介性免疫応答を生成する能力の増大、HCV 感染に対する感受性の減少、および感染するウイルスの、慢性疾患のための持続性感染を確立する能力の減少。
【0126】
本発明の方法または使用の別の好ましい態様において、免疫応答は、2以上の、即ち 3、4、5、6、7、8、9、10 またはそれ以上の異なる HCV 分離株に対して向けられる。よりいっそう好ましい態様において、免疫応答は、2以上の、即ち 3、4、5、6、7 またはそれ以上の異なる HCV 遺伝子型に対して向けられる。つまり、かかる好ましい態様における免疫応答は、HCV 遺伝子型に関して広い特異性を示す。本発明の方法または使用の好ましい態様において、免疫応答は、非相同な HCV 感染に対して向けられる。
【0127】
本発明の方法または使用の別の好ましい態様において、本発明の CD81 結合ペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチド、本発明の CD81 結合ペプチドもしくは本発明の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、本発明の発現カセット、本発明のベクター、本発明の組成物または本発明の医薬組成物もしくはワクチンを含む少なくとも1つのブースター用量が、免疫応答を増強するのに有効な量で、哺乳類に投与される。本発明の方法または使用の好ましい態様において、本発明の組成物、医薬組成物またはワクチンを含む少なくとも1つのブースター用量が、免疫応答を増強するのに有効な量で、哺乳類に投与される。
【0128】
本発明の方法または使用の一つの態様において、哺乳類において HCV に対する免疫応答を誘導/生成するための(プライミング)ベクターと、哺乳類において HCV に対する免疫応答を増強するための(ブースティング)ベクターは、同一である。別の態様において、哺乳類における HCV に対するプライミングのためのベクターと、哺乳類における HCV に対するブースティングのためのベクターは、異なっている。したがって、本発明の方法または使用の好ましい態様において、非相同プライム-ブースト投与計画が適用される。非相同プライム-ブーストは、プライミングのための1つのタイプのベクターおよびブースティングのための別のタイプのベクターの使用を含む、混合様式(mixed modality)である。非相同プライム-ブーストは、関連するベクター、例えば異なるアデノウイルス血清型およびより遠縁のウイルス、例えばアデノウイルスおよびフォウルポックスウイルスに基づくベクターを含み得る。好ましい態様において、非相同プライム-ブーストは、2つの血清学的に異なる非交差反応性のアデノウイルスベクターを含む。
【0129】
本発明の方法または使用の好ましい態様において、免疫応答を誘導/生成するためのベクターは、アデノウイルス(Ad)ベクター (例えば、非複製性の Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63、ChAd82、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 ベクターまたは複製可能な Ad4 および Ad7 ベクター)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター (例えば、5 型 AAV)、アルファウイルスベクター (例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV)、および VEE-SIN キメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター (例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC (ワクシニアのコペンハーゲン株に由来する)、およびアビポックスベクター: カナリアポックス(ALVAC)およびフォウルポックス(FPV)ベクター)、および水疱性口内炎ウイルスベクターからなる群から選択され、免疫応答を増強するためのベクターは、アデノウイルス(Ad)ベクター (例えば、非複製性の Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49 ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63、ChAd82 および ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 ベクターまたは複製可能な Ad4 および Ad7 ベクター)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター (例えば、5 型 AAV)、アルファウイルスベクター (例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV)、および VEE-SIN キメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター (例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC (ワクシニアのコペンハーゲン株に由来する)、およびアビポックスベクター: カナリアポックス(ALVAC)およびフォウルポックス(FPV)ベクター)、および水疱性口内炎ウイルスベクターからなる群から選択される。一つの態様において、プライミングおよびブースティングのためのベクターは、同一である。別の態様において、プライミングおよびブースティングのためのベクターは、異なっている。好ましい態様において、プライミングおよびブースティングのためのベクターは、血清学的に異なる、非交差反応性のアデノウイルスベクターである。
【0130】
プライミングとブースティングの間の時間の長さは、通常、約4ヶ月から1年まで変動するが、他の期間も用い得る。一つの態様において、プライムとブーストの間の間隔は、少なくとも 6 ヶ月の期間である。別の態様において、プライムとブーストの間の間隔は、少なくとも 3 ヶ月の期間である。プライミングは、1つのタイプのベクターを用いる複数のプライミング工程、例えば 2、3 または 4 回のプライミングを含み得る。
【0131】
ウイルスベクター、即ち、アデノウイルス(Ad)ベクター (例えば、非複製性の Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63、ChAd82 および ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 ベクターまたは複製可能な Ad4 および Ad7 ベクター)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター (例えば、5 型 AAV)、アルファウイルスベクター (例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV)、および VEE-SIN キメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター (例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC (ワクシニアのコペンハーゲン株に由来する)、およびアビポックスベクター: カナリアポックス(ALVAC)およびフォウルポックス(FPV)ベクター)、および水疱性口内炎ウイルスベクターを含む本発明の組成物、医薬組成物またはワクチンに関し、患者に投与される組成物または医薬組成物もしくはワクチン組成物中のウイルス粒子の量は、用いる転写および翻訳プロモーターの強さおよび発現される遺伝子産物の免疫原性に依存する。一般的に、免疫学上または予防上有効な用量の、1 x 107 から 1 x 1012 のウイルス粒子 (即ち、1 x 107、2 x 107、3 x 107、5 x 107、1 x 108、2 x 108、3 x 108、5 x 108、または 1 x 109、2 x 109、3 x 109、5 x 109) および好ましくは約 1 x 1010 から 1 x 1011 の粒子が投与される。アデノウイルスベクターに関し、免疫学上および/または予防上有効な用量は、好ましくは 1 x 108 から 1 x 1011 ウイルス粒子 (即ち、1 x 108、5 x 108、1 x 109、5 x 109、1 x 1010、2.5 x 1010、5 x 1010) である。
【0132】
好ましくは、投与は、直接的に筋肉組織の中へ行われる。皮下注入、皮内導入、皮膚を通した押付け、および他の投与様式、例えば腹腔内、静脈内または吸入送達も考慮される。投与される活性成分、即ち免疫原または免疫原をコードする核酸の正確な量は、他の要因の間で、処置される対象、処置される個体の年齢および全身状態、個体の免疫系の抗体を合成する能力、望まれる保護の程度、処置される状態の重篤度、選択される特定の HCV E2 の CD81 結合ペプチドおよびその投与様式に応じて異なる。適切な有効量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0133】
HCV E2 の CD81 結合ペプチド、即ち免疫原を、タンパク質として含む本発明の組成物または医薬組成物もしくはワクチンに関し、大きな哺乳類、例えば霊長類、例えばヒヒ、チンパンジーまたはヒトに対する投与のための用量は、用量あたりおよそ 0.1 μgから約 5.0 mg、または当該範囲の間のあらゆる量、例えば用量あたり 0,5 から約 1.0 mg、1 μgから約 500 μg、2.5 μgから約 250 μg、4 μgから約 200 μg、例えば 4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100μg等であり得る。本発明の CD81 結合ペプチドの投与は、処置された哺乳類において、少なくとも 1 週間、2 週間、1 ヶ月、2 ヶ月、3 ヶ月、4 ヶ月、5 ヶ月、6 ヶ月、1年、またはそれ以上持続する抗 E2 抗体力価を誘発することができる。HCV E2 の CD81 結合ペプチドはまた、記憶免疫応答を提供するために投与することができる。かかる応答が達成される場合、抗体力価は時間と共に低下し得るが、HCV ウイルス免疫原への曝露は、例えばわずか数日以内における、迅速な抗体の誘導をもたらす。所望により、抗体力価は、最初の注入の後 2 週間、1 ヶ月、2 ヶ月、3 ヶ月、4 ヶ月、5 ヶ月、6 ヶ月、1 年またはそれ以上において本発明の HCV E2 の CD81 結合ペプチドの1以上のブースター注入を提供することによって、哺乳類において維持することができる。
【実施例】
【0134】
実施例
実施例は、本発明をさらに説明するためのものであり、より良い理解に役立つ。それは決して、本発明の範囲を制限するものとはみなされない。
【0135】
Ad6E2 (配列番号 3 に示されるアミノ酸配列に相当する HCV 遺伝子型 1b、分離株 T212 の E2 をコードするアデノウイルスベクター) または Ad6DeltaE2 (配列番号 3 に示されるアミノ酸配列のアミノ酸 28 から 364 に相当する、HVR1 が欠失している HCV 遺伝子型 1b、分離株 T212 の E2 をコードするアデノウイルスベクター) を用いる免疫化によって誘導された血清の中和特性を、培養された Huh7.5 ヒト肝細胞癌細胞(Lindenbach et al.、2005; Wakita et al.、2005; Zhong et al.、2005) を感染させるために細胞培養由来の HCV (HCVcc) を用いるモデル系において試験した。
【0136】
感染した Huh7.5 細胞から、定量的 PCR 解析により HCV RNA を試験することによって、感染性を測定した。1a (H77)、1b (ukn)、2a (J6) 遺伝子型からの HCV エンベロープを提示する3つの HCVcc をこれらのアッセイにおいて用い、誘導された抗体の交差中和能力(cross-neutralization potential)を評価した。
【0137】
免疫化したマウスからの抗血清を、56℃において 1 時間、熱により不活化し、その後 1:300 (Ad6E2 で免疫化したマウスの血清について) または 1:100 (Ad6DeltaE2 で免疫化したマウスの血清について) の希釈で 10% FBS/DMEM 中の HCVcc と混合し、37℃において 1 時間インキュベートした。ウイルス/血清混合物を、12 ウェルプレートに播種された Huh7.5 細胞(ウェルあたり 8×104 細胞)へ移し、37℃で 6 時間インキュベートした。ウイルス含有培地を除去し、10% FBS を有する DMEM で置換し、37℃でインキュベートした。72 時間後に細胞溶解によって HCVcc 感染を終結させ、ウイルス RNA に対する定量的 PCR によって感染性を測定した。免疫血清の存在下におけるウイルスの感染性を、同じ希釈における免疫前の対照サンプルの存在下における平均の感染性と比較することによって、中和を決定した。
【0138】
HCVcc の生成のため、既に説明した通り、T7 MEGAscript kit (Ambion) を用いる XbaI-直鎖化テンプレートのインビトロ転写およびオンカラム(on-column) DNase 処理を有する RNeasy mini kit (QIAGEN) を用いる精製によって、J6/JFH1、J6/JFH1/E1E2 ukn および J6/JFH1/E1E2 H77 の RNA を合成した。製造者のプロトコールに従い、TransIT-mRNA Transfection kit (Mirus) によって RNA を Huh7.5 細胞へトランスフェクトした。ウイルスを含むトランスフェクトされた細胞からの上清を、トランスフェクション後 3-4 日において回収し、孔径 0.45 μmのフィルターを通して清澄化し、感染のために直接用いるか、または有意な量の感染性を失うことなく 4℃で 2-3 週間保存した。
【0139】
感染した細胞からの HCV RNA の定量解析のため、“RNeasy mini kit”のカラム(Qiagen)を用いて RNA を調製し、50 μl の容量の RNaseを含まない水の中に溶出させた。それぞれのサンプルの 1-10 マイクロリットルを、ABI PRISM 7900HT Sequence Detector (Applied Biosystems、Darmstadt、Germany) を使用する定量的 RT-PCR 解析のために用いた。増幅は、Taqman 2X Universal PCR Master Mix No AmpErase UNG (Applied Biosystems) を用い、以下のプライマーおよび 3'-リン酸封鎖された、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)およびテトラクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(TAMRA)で標識されたプローブ (Applied Biosystems) を用いて、少なくとも複製して(in duplicate)行った: HCV-JFH1 Taqman プローブ、5'-6FAM-AAA GGA CCC AGT CTT CCC GGC AA-TAMRA-3' (配列番号 24) ; HCV-JFH1-S147、5'-TCT GCG GAA CCG GTG AGT A-3' (配列番号 25); HCV-JFH1-A221、5'-GGG CAT AGA GTG GGT TTA TCC A-3' (配列番号 26)。
【0140】
完全長の E2 を発現するベクター(Ad6E2)を用いて免疫化した動物からの血清は、Ad6DeltaE2 で免疫化したマウスからの免疫血清に対し、相同な HCVcc に対する高い中和活性を示した。かかる知見は、後者の抗血清における抗 HVR1 中和抗体の欠如と一致する。しかし、E2 ベクターによって誘導された抗体は、非相同な HCVcc の感染に干渉する能力が限られていた(図 1)。対照的に、DeltaE2 アデノウイルスベクターを用いて免疫化したマウスは、試験した3つ全ての HCVcc を中和することができた(図 2)。
【0141】
引用文献

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【0142】

【0143】

【0144】

【0145】

【0146】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類における HCV に対する免疫応答の誘導のための、
成熟した E2 エンベロープ糖タンパク質の N末端の 27 個のアミノ酸の中に欠失を有するかまたは該 27 個のアミノ酸の中に突然変異を有する HCV E2 の CD81 結合ペプチド、または CD81 と結合する能力を保持しているその変異体、
該ペプチドを含むポリペプチド、ただし、該ポリペプチドは野生型の E2 ではない、
該ペプチドまたは該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(i) 該ポリヌクレオチドおよび (ii) ポリアデニル化シグナル、プロモーター、エンハンサー、異種性タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびペプチドタグをコードするヌクレオチド配列からなる群から選択される1以上のポリヌクレオチドを含む発現カセット、
該ポリヌクレオチドまたは該発現カセットを含むベクター、
該ペプチド、該ポリペプチド、該ポリヌクレオチド、該発現カセットもしくは該ベクター、およびアジュバントを含む組成物、または
該ペプチド、該ポリペプチド、該ポリヌクレオチド、該発現カセット、該ベクターもしくは該組成物、および医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項2】
免疫応答が治療的および/または予防的なものである、請求項1の CD81 結合ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、発現カセット、ベクター、組成物または医薬組成物。
【請求項3】
免疫応答が2以上の異なる HCV 遺伝子型に対して向けられる、請求項1または2の CD81 結合ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、発現カセット、ベクター、組成物または医薬組成物。
【請求項4】
HVR1 の N 個のアミノ酸が突然変異または欠失している、請求項1から3のいずれか一項の CD81 結合ペプチド、ここで、N は 1 から 27 までのいずれかの数字である。
【請求項5】
野生型 HVR1 を有する野生型 E2 糖タンパク質と比較して増大した CD81 結合性を示す、請求項1から4のいずれか一項の CD81 結合ペプチド。
【請求項6】
天然の HCV 遺伝子型に由来するものである、請求項1から5のいずれか一項の CD81 結合ペプチド。
【請求項7】
HCV 遺伝子型が、1、1a、1b、1c、2、2a、2b、2c、3、3a、3b、4、4a、4b、4c、4d、4e、5、5a、6、6a、7、7a、7b、8、8a、8b、9、9a、10、10a、11 および 11a からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項の CD81 結合ペプチド。
【請求項8】
配列番号 3 または 9 に示されるアミノ酸配列のアミノ酸 28 から 364 またはその変異体に相当するか、または配列番号 5 または 7 に示されるアミノ酸配列のアミノ酸 28 から 363 またはその変異体に相当する、請求項1から7のいずれか一項の CD81 結合ペプチド。
【請求項9】
アミノ酸位置 28 から始まり、配列番号 3 または 9 に示されるアミノ酸配列のアミノ酸位置 363、361、334、333、332、331、302、301、300、299、283、282、281、280、279、278 または 277 で終わるかまたは配列番号 5 または 7 に示されるアミノ酸配列の位置 362、361、333、332、331、330、301、300、299、298、282、281、280、279、278、277 または 276 で終わるアミノ酸配列からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項の CD81 結合ペプチド。
【請求項10】
HCV エンベロープ糖タンパク質 E1 またはその断片をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項のポリペプチド。
【請求項11】
CD81 結合ペプチドの配列の前に、好ましくは配列番号 11、12 または 13 に示されるアミノ酸配列を有する E1 のカルボキシ末端の 14 個のアミノ酸が先行している、請求項1から3または10のいずれか一項のポリペプチド。
【請求項12】
CD81 結合ペプチドの配列の前に、好ましくは配列番号 15 に示されるアミノ酸配列を有する組織プラスミノーゲンアクチベーターのシグナル配列が先行している、請求項1から3のいずれか一項のポリペプチド。
【請求項13】
プラスミド DNA ベクター、ウイルスベクター、ウイルス様粒子、細菌の胞子、およびバクテリオファージからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項のベクター。
【請求項14】
プラスミド DNA、アデノウイルス(Ad)ベクター (例えば、非複製性の Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63、ChAd82、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 ベクターまたは複製可能な Ad4 および Ad7 ベクター)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター (例えば、5 型 AAV)、アルファウイルスベクター (例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV) および VEE-SIN キメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター (例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC (ワクシニアのコペンハーゲン株に由来する)、およびアビポックスベクター、例えばカナリアポックス(ALVAC)およびフォウルポックスウイルス(FPV)ベクター)、または水疱性口内炎ウイルスベクターである、請求項13のベクター。
【請求項15】
アジュバントが、I 型サイトカイン受容体、II 型サイトカイン受容体、TNF 受容体、転写因子として働くビタミン D 受容体、および Toll様受容体 1 (TLR1)、TLR-2、TLR 3、TLR4、TLR5、TLR-6、TLR7、および TLR9 からなる群から選択される受容体のアゴニストである、請求項1から3のいずれか一項の組成物。
【請求項16】
アジュバントが、Toll様受容体 4 または 9 のアゴニストである、請求項15の組成物。
【請求項17】
哺乳類において HCV に対する免疫応答を誘導するための方法であって、該哺乳類に対し、免疫応答を生成するのに有効な量で、
成熟した E2 エンベロープ糖タンパク質の N末端の 27 個のアミノ酸の中に欠失を有するかまたは該 27 個のアミノ酸の中に突然変異を有する HCV E2 の CD81 結合ペプチド、または CD81 と結合する能力を保持しているその変異体、
該ペプチドを含むポリペプチド、ただし、該ポリペプチドは野生型の E2 ではない、
該ペプチドまたは該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(i) 該ポリヌクレオチドおよび (ii) ポリアデニル化シグナル、プロモーター、エンハンサー、異種性タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびペプチドタグをコードするヌクレオチド配列からなる群から選択される1以上のポリヌクレオチドを含む発現カセット、
該ポリヌクレオチドまたは該発現カセットを含むベクター、
該ペプチド、該ポリペプチド、該ポリヌクレオチド、該発現カセットもしくは該ベクター、およびアジュバントを含む組成物、または
該ペプチド、該ポリペプチド、該ポリヌクレオチド、該発現カセット、該ベクターもしくは該組成物、および医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物
を投与することを含む方法。
【請求項18】
免疫応答が治療的および/または予防的なものである、請求項17の方法。
【請求項19】
免疫応答が2以上の異なる HCV 遺伝子型に対して向けられる、請求項17または18の方法。
【請求項20】
該 CD81 結合ペプチド、該ポリペプチド、該ポリヌクレオチド、該発現カセット、該ベクター、該組成物または該医薬組成物を含む少なくとも1つのブースター用量が、免疫応答を増強するのに有効な量で該哺乳類に投与される、請求項17から19のいずれか一項の方法。
【請求項21】
免疫応答を生成するためのベクターと免疫応答を増強するためのベクターが同一である、請求項20の方法。
【請求項22】
免疫応答を生成するためのベクターと免疫応答を増強するためのベクターが異なっている、請求項20の方法。
【請求項23】
免疫応答を生成するためのベクターが、DNA プラスミド、アデノウイルス(Ad)ベクター (例えば、非複製性の Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63、ChAd82、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 ベクターまたは複製可能な Ad4 および Ad7 ベクター)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター (例えば、5 型 AAV)、アルファウイルスベクター (例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV) および VEE-SIN キメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター (例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC (ワクシニアのコペンハーゲン株に由来する)、およびアビポックスベクター: カナリアポックス(ALVAC)およびフォウルポックス(FPV)ベクター)、および水疱性口内炎ウイルスベクターからなる群から選択され、かつ、免疫応答を増強するためのベクターが、DNA プラスミド、アデノウイルス(Ad)ベクター (例えば、非複製性の Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63、ChAd82、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 ベクターまたは複製可能な Ad4 および Ad7 ベクター)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター (例えば、5 型 AAV)、アルファウイルスベクター (例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV) および VEE-SIN キメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター (例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC (ワクシニアのコペンハーゲン株に由来する)、およびアビポックスベクター: カナリアポックス(ALVAC)およびフォウルポックス(FPV)ベクター)、および水疱性口内炎ウイルスベクターからなる群から選択される、請求項20から22のいずれか一項の方法。
【請求項24】
免疫応答を生成するためのベクターと免疫応答を増強するためのベクターが異なっている、請求項23の方法。
【請求項25】
免疫応答を生成するためのベクターと免疫応答を増強するためのベクターが、血清学的に異なる、非交差反応性のアデノウイルスベクターである、請求項24の方法。
【請求項26】
配列番号 3 または 9 に示されるアミノ酸配列のアミノ酸 28 から 364 またはその変異体に相当するか、または配列番号 5 または 7 に示されるアミノ酸配列のアミノ酸 28 から 363 またはその変異体に相当する CD81 結合ペプチド。
【請求項27】
アミノ酸位置 28 から始まり、配列番号 3 または 9 に示されるアミノ酸配列のアミノ酸位置 363、361、334、333、332、331、302、301、300、299、283、282、281 または 280 で終わるかまたは配列番号 5 または 7 に示されるアミノ酸配列の位置 362、361、333、332、331、330、301、300、299、298、282、281、280 または 279 で終わるアミノ酸配列からなる群から選択される、請求項26の CD81 結合ペプチド。
【請求項28】
請求項26または27の CD81 結合ペプチドを含むポリペプチド、ただし、該ポリペプチドは野生型の E2 ではない。
【請求項29】
HCV エンベロープ糖タンパク質 E1 またはその断片をさらに含む、請求項28のポリペプチド。
【請求項30】
CD81 結合ペプチドの配列の前に、好ましくは配列番号 11、12 または 13 に示されるアミノ酸配列を有する E1 のカルボキシ末端の 14 個のアミノ酸が先行している、請求項28または29のポリペプチド。
【請求項31】
CD81 結合ペプチドの配列の前に、好ましくは配列番号 15 に示されるアミノ酸配列を有する組織プラスミノーゲンアクチベーターのシグナル配列が先行している、請求項28のポリペプチド。
【請求項32】
請求項26または27の CD81 結合ペプチドまたは請求項28から31のいずれか一項のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項33】
(i) 請求項32のポリヌクレオチドおよび (ii) ポリアデニル化シグナル、プロモーター、エンハンサー、異種性タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびペプチドタグをコードするヌクレオチド配列からなる群から選択される1以上のポリヌクレオチドを含む発現カセット。
【請求項34】
請求項32のポリヌクレオチドまたは請求項33の発現カセットまたは請求項1から8の CD81 結合ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項35】
プラスミド DNA ベクター、ウイルスベクター、ウイルス様粒子、細菌の胞子、およびバクテリオファージからなる群から選択される、請求項34のベクター。
【請求項36】
プラスミド DNA、アデノウイルス(Ad)ベクター (例えば、非複製性の Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63、ChAd82、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2 および PanAd3 ベクターまたは複製可能な Ad4 および Ad7 ベクター)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター (例えば、5 型 AAV)、アルファウイルスベクター (例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV) および VEE-SIN キメラ)、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター (例えば、ワクシニアウイルス、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC (ワクシニアのコペンハーゲン株に由来する)、およびアビポックスベクター、例えばカナリアポックス(ALVAC)およびフォウルポックスウイルス(FPV)ベクター)、または水疱性口内炎ウイルスベクターである、請求項35のベクター。
【請求項37】
請求項26または27の CD81 結合ペプチド、請求項28から31のいずれか一項のポリペプチド、請求項32のポリヌクレオチド、請求項33の発現カセットもしくは請求項34から36のいずれか一項のベクター、およびアジュバントを含む組成物。
【請求項38】
アジュバントが、I 型サイトカイン受容体、II 型サイトカイン受容体、TNF 受容体、転写因子として働くビタミン D 受容体、および Toll様受容体 1 (TLR1)、TLR-2、TLR 3、TLR4、TLR5、TLR-6、TLR7 および TLR9 からなる群から選択される受容体のアゴニストである、請求項37の組成物。
【請求項39】
アジュバントが、Toll様受容体 4 または 9 のアゴニストである、請求項38の組成物。
【請求項40】
請求項26または27の CD81 結合ペプチド、請求項28から31のいずれか一項のポリペプチド、請求項32のポリヌクレオチド、請求項33の発現カセット、請求項34から36のいずれか一項のベクターもしくは請求項37から39のいずれか一項の組成物、および医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−521985(P2011−521985A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512017(P2011−512017)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003970
【国際公開番号】WO2009/146902
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(509280453)オカイロス アーゲー (3)
【Fターム(参考)】