説明

HIV−プロテアーゼ阻害剤の合成に有用な中間体及びその製造法

HIV−プロテアーゼ阻害剤の合成に有用な、光学活性3−アミノ−ブテンおよび1,2−ジヒドロキシ−3−アミノ−ブタン中間体化合物、並びにこれらの中間体化合物の製造法が開示される(式I)。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に1,2−ジヒドロキシ−3−アミノ−ブタン、それらの3−アミノ−ブテン前駆体、及びそれらを製造するための化学的方法に関する。本発明のブテン及びブタン化合物はプロテアーゼ阻害剤ネルフィナビル(nelfinavir)メシラート及びその遊離塩基の合成における中間体として有用であり、それら(ネルフィナビルメシラート及びその遊離塩基)はHIV−感染患者の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
HIV感染患者の治療は、最近の最も差し迫った生物医学的課題の一つである。有望な新しい治療法が、ヒト組織におけるウイルスの急速な増殖を阻止又は阻害するための重要な方法として出現した。HIVプロテアーゼ阻害剤はウイルスにおける重要な酵素経路を遮断し、その結果、実質的にウイルス負荷を減少させ、それは免疫系の定常的衰退とその結果のヒトの健康への有害な影響を遅延する。下記の式:
【化1】

を有するHIVプロテアーゼ阻害剤であるネルフィナビルメシラートはHIV感染患者の有効な治療であることが示された。ネルフィナビルメシラートは1996年1月16日発行の特許文献1に開示されている。この特許の全体を本願に参照により組み入れる。
【0003】
本発明の前に、ネルフィナビルメシラート生成物及び慣用法で製造された中間体の立体化学は出発材料の立体化学により決定された。従って、ネルフィナビルメシラート又はその遊離塩基の種々の立体異性体は、特定のエナンチオマー出発材料を使用すれば製造できた。本発明はネルフィナビルの製造のための用途の広い且つ有用な合成経路を提供し、これにより重要な立体中心を1,2−ジヒドロキシ−3−アミノ−ブタン置換体の合成における比較的後の段階で確立する。
【0004】
環式スルフェートの使用により製造されたHIV−プロテアーゼ阻害剤は、例えば特許文献2に論じられている。ネルフィナビルメシラートを製造するために本発明で使用される非対称ジヒドロキシ化は全般的に特許文献3及び非特許文献1に論じられている。
【0005】
本発明に関する他の背景方法は特許文献4に見られる。ネルフィナビルメシラートの合成において中間体として有用なアミド誘導体の製造法は特許文献5及び特許文献6に見られる。これらの文献を本願に参照により組み入れる。
【特許文献1】米国特許第5,484,926号
【特許文献2】米国特許第5,705,647号
【特許文献3】WO93/07142
【特許文献4】米国特許第5,587,481号
【特許文献5】WO97/11937
【特許文献6】WO97/11938
【非特許文献1】Reetz外、Asymmetric Dihydroxylation of Chiral y−Amino α,β−Unsaturated Esters:Tuming the Mismatched into the Matched Case via Protective Group Tuning,Tetrahedron Letters Vol.37,9293−9296頁(1996)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は光学活性3−アミノ−ブテンの製造法、光学活性3−アミノ−ブテンの光学活性1,2−ジヒドロキシ−3−アミノ−ブタンへの立体選択的変換、及びこれにより製造された光学活性の3−アミノ−ブテン及び1,2−ジヒドロキシ−3−アミノ−ブタンに関する。
【0007】
一態様において、本発明はR,S又はR,Rアミノ−ヒドロキシアルカノールを、対応する保護されたR−アミノアルケンのジヒドロキシ化により立体選択的に製造する方法を提供する。詳しくは、本発明は3(R)−アミノ−ブテン、1,2(R)−ジヒドロキシ−3(R)−アミノ−ブタン又は1,2(S)−ジヒドロキシ−3(R)−アミノ−ブタン、3(R)−アミノ−ブテンの製造法、及び保護されたR−アミノアルケンの立体選択的ジヒドロキシ化により1,2(R)−ジヒドロキシ−3(R)−アミノ−ブタン又は1,2(S)−ジヒドロキシ−3(R)−アミノ−ブタンを形成する方法を提供する。
【0008】
本発明の側面の一つにおいて、本発明は式:
【化2】

(式中、R1は適当な窒素保護基であり、R2はHであるか、又はR1はR2と共に適当な窒素保護基を形成し、そしてR3はチオアルキル又はチオアリールである)を有する化合物に関する。
【0009】
本発明の別の側面において、本発明は式1の化合物に関し、該化合物は下記の群:
【化3】

から選び得る。
【0010】
本発明の更に別の側面において、本発明は下記の式:
【化4】

(式中、R1は適当な窒素保護基でありそしてR2はHであるか、又はR1はR2と共に適当な窒素保護基を形成し、そしてR3はチオアルキル又はチオアリールである)を有する化合物に関する。式2に関する化合物は下記を含み得る:
【化5】

【0011】
別の側面において、本発明は下記の式:
【化6】

(式中、R3はチオアルキル又はチオアリールである)を有する化合物に関する。式2aに関する化合物は下記を含む:
【化7】

【0012】
別の側面において、本発明は式4又は5:
【化8】

を有する化合物の立体選択的製造法に関し、該製造法は式1:
【化9】

の化合物を式4又は5の化合物に、それぞれの出発化合物をオスミウム含有酸化試薬の組合せK2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2で、キラル補助試薬としてDHQD2PHALの存在下で処理して、それぞれ式4又は5で表される化合物を得ることを含む。式中、R1は適当な窒素保護基でありそしてR2はHであるか、又はR1はR2と共に適当な窒素保護基を形成し、そしてR3はチオアルキル又はチオアリールである。好ましくはR3はチオアリール基又はチオフェニル基である。本発明の方法は更に、式1の化合物を下記の化合物:
【化10】

の一つに立体選択的に変換することを含み得る。
【0013】
別の側面では、本発明は式2の化合物を式4の化合物に、そして/又は式3の化合物を式5の化合物に、ラセミ化を引き起こすことなく窒素保護基を除去することにより変換して、それぞれ式4又は5で表される化合物を得る方法に関する。
【0014】
更に別の側面では、本発明は式6:
【化11】

の化合物を式7、7a又は式8:
【化12】

(式7中、R4は脱離基である)の化合物に、ヒドロキシ−ブテン6をメタンスルホニルクロリドで適当な溶媒の存在下で処理することにより化合物7を得るか、又はメタンスルホニルクロリドでアミン塩基の存在下で極性非プロトン性溶媒中で処理してブテン−メシラート7a:
【化13】

を得、そしてブテン−メシラート7aをチオフェノキシド(ここで該チオフェノキシドはチオフェノールと非求核性塩基を極性非プロトン性溶媒中で用いてその場で形成される)で処理してチオフェノール−ブテン8:
【化14】

を得ることにより、変換する方法に関する。
【0015】
この反応で、好ましくはR4はクロロ、ブロモ又は−OSO2−R’であり、ここでR’はアルキル又はアリールである。
【0016】
更に、化合物7aを立体選択的に式8の化合物に変換し、そして式8の化合物を式9、10、11又は12:
【化15】

の化合物に変換し得る。
【0017】
更に本発明は、式9若しくは10、又はそれらの混合物を、アミンを脱保護することにより式11若しくは12、又はそれらの混合物に変換することを含む。式9、10、11又は12の化合物は次に式17:
【化16】

のネルフィナビル遊離塩基化合物に変換し得る。
【0018】
本発明の更に別の側面の一つにおいて、本発明は式9の化合物を、アミンを脱保護することにより式11の化合物に変換し、そして次に式11の化合物を、慣用の手順により新たなアミン保護基、即ちカルバメート基、で置換することにより式14:
【化17】

の化合物に変換する方法に関する。
【0019】
式14の化合物は次に更に、式14の化合物をメチルフェニルスルホニルクロリド及びアミン塩基溶媒で処理し、次いで水性塩基で処理して、式15:
【化18】

の化合物を得ることにより、式15の化合物に変換し得る。
【0020】
式15の化合物は次に更に、式16:
【化19】

の化合物に変換し得る。
式16の化合物は次に更に、式17のネルフィナビル遊離塩基に変換し得る。
【0021】
本発明の更に別の側面において、本発明は式8の化合物を式19又は20:
【化20】

の化合物に、2段階法により変換する方法に関し、該2段階法においては、フタルイミドを慣用の手順を用いて(即ち、エタノールアミンを用いた処理により)除去して3−アミノ−4−チオフェニル−1−ブテンを得、次いでカルボベンジルオキシクロリド(Cbz−Cl)を用いて慣用の条件下で(例えば塩基の存在下で)処理して化合物20を得る。
【0022】
化合物20は式13若しくは14:
【化21】

の化合物又はそれらの混合物に、K2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2のオスミウム含有酸化試薬組合せを用いたキラル補助試薬の存在下でのCbz−3(R)−アミノ−4−チオフェニル−1−ブテン20の立体選択的ジヒドロキシ化により変換し得る。更に、本発明は式13の化合物を式17、21又は21a:
【化22】

(式21中、R4は脱離基であり、そして式21a中、R'''はアルキル又はアリールである)の化合物に変換する方法を含む。本願のスキームBを参照されたい。更に、本発明は式21aの化合物を式22(以下に示す)の化合物に変換する方法、及び式22の化合物を式17のネルフィナビル遊離塩基に本願のスキームBに従って変換する方法を含む。
【化23】

【0023】
上記のそれぞれの式に関して、好ましくはR1はアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アリールアルコキシカルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル又はアリールアルキルであり、そしてR2はHである。更に好ましくは、R1はアリールアルコキシカルボニル又はアリールアルキルであり、そしてR2はHである。更に一層好ましくは、R1はベンジルオキシカルボニル又はベンジルであり、そしてR2はHである。更に、R1とR2はそれらが結合する窒素と共にフタルイミド又はスクシンイミド基を形成し得る。
【0024】
定義
本願で使用する用語“含む”及び“含有する”は、本願では開かれた非限定的意味で使用される。
【0025】
用語“アルキル”は、鎖中に1ないし12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基を云う。例示的アルキル基にはメチル(Me、それはまた構造的には“/”で描かれる)、エチル(Et)、n−プオピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル(tBu)、ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル等が含まれる。
【0026】
用語“ヘテロアルキル”は、鎖中に2ないし12個の原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であって、原子の1個又はそれ以上がS、O及びNから選ばれるヘテロ原子であるものを云う。例示的ヘテロアルキルにはアルキルエーテル、第2及び第3アルキルアミン、アルキルスルフィド等が含まれる。
【0027】
用語“アルケニル”は、鎖中に2ないし12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルケニル基を云う。例示的アルケニル基にはプロパ−2−エニル、ブタ−2−エニル、ブタ−3−エニル、2−メチルプロパ−2−エニル、ヘキサ−2−エニル等が含まれる。
【0028】
用語“アルキニル”は、鎖中に2ないし12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキニル基を云う。例示的アルキニル基にはプロパ−2−イニル、ブタ−2−イニル、ブタ−3−イニル、2−メチルブタ−2−イニル、ヘキサ−2−イニル等が含まれる。
【0029】
用語“ハロアルキル”は、鎖中に2ないし12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルケニル基であって、水素の1個又はそれ以上がハロゲンで置換されたものを云う。例示的ハロアルキル基にはトリフルオロメチル、2−ブロモプロピル、3−クロロヘキシル、1−ヨード−イソブチル等が含まれる。
【0030】
用語“アリール”(Ar)は、環当たり3から12個の環原子を有する単環式、又は融合若しくはスピロ多環式の芳香族炭素環(全てが炭素である環原子を有する環構造体)を云う。アリール基の例示的例には下記の基:
【化24】

が含まれる。
【0031】
用語“ヘテロアリール”(ヘテロAr)は、環当たり3から12個の環原子を有する単環式、又は融合若しくはスピロ多環式の芳香族ヘテロ環(炭素原子並びに窒素、酸素及びイオウのヘテロ原子から選ばれる環原子を有する環構造体)を云う。アリール基の例示的例には下記の基:
【化25】

が含まれる。
【0032】
用語“シクロアルキル”は、環当たり3から12個の環原子を有する飽和又は部分的に飽和した単環式、又は融合若しくはスピロ多環式の炭素環を云う。シクロアルキル基の例示的例には下記の基:
【化26】

が含まれる。
【0033】
用語“ヘテロシクロアルキル”は、飽和又は部分的に飽和し、そして環当たり3から12個のC原子、及びN、O及びSヘテロ原子から選ばれた環原子を有する単環式、又は融合若しくはスピロ多環式の環構造体を云う。ヘテロシクロアルキル基の例示的例には下記の基:
【化27】

が含まれる。
【0034】
用語“ハロゲン”は塩素、フッ素、臭素又はヨウ素を表す。用語“ハロ”はクロロ、フルオロ、ブロモ又はヨードを云う。
【0035】
用語“置換された”は、特定の基が1又はそれ以上の置換基を有することを意味する。用語“非置換の”は、特定の基が置換基をもたないことを意味する。用語“場合によっては置換された”は、特定の基が非置換であるか、又は1若しくはそれ以上の置換基で置換されていることを意味する。
【0036】
“アルキルチオ”とは基−SRaを意味することを意図し、ここでRaは前に定義したアルキル基である。
【0037】
“アリールチオ”とは基−SRcを意味することを意図し、ここでRcは前に定義したアリール基である。
【0038】
“アシル”とは−C(O)−R基を意味することを意図し、ここでRはアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール基である。“アシルオキシ”とは−OC(O)−R基を意味することを意図し、ここでRはアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール基である。“チオアシル”とは−C(S)−R基を意味することを意図し、ここでRはアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール基である。“スルホニル”とは−SO2−2価基を意味することを意図する。“スルフェニル”とは−SO−2価基を意味することを意図する。“スルホ”とは−SO2H基を意味することを意図する。
【0039】
“ヒドロキシ”とは−OH基を意味することを意図する。“アミン”又は“アミノ”とは基−NH2を意味することを意図する。“アルキルアミノ”とは基−NHRaを意味することを意図し、ここでRaはアルキル基である。“ジアルキルアミノ”とは基−NRabを意味することを意図し、ここでRa及びRbはそれぞれ独立してアルキル基であり、そしてヘテロシクロアルキル基を含むことを意図し、ここでRa及びRbは一緒にアミン窒素を含むヘテロ環式環を形成する。“アルキレンジオキシ”とは、隣接する原子(例えばフェニル又はナフチル環上の隣接する原子)に結合した2価の基−ORaO−を意味することを意図し、ここでRaは低級アルキル基である。“アルコキシカルボニル”とは基−C(O)ORaを意味することを意図し、ここでRaはアルキル基である。“アルキルスルホニル”とは基−SO2aを意味することを意図し、ここでRaはアルキル基である。
【0040】
“アルキルアミノカルボニル”とは基−C(O)NHRaを意味することを意図し、ここでRaはアルキル基である。“ジアルキルアミノカルボニル”とは基−C(O)NRabを意味することを意図し、ここでRa及びRbはそれぞれ独立してアルキル基である。
【0041】
“メルカプト”とは基−SHを意味することを意図する。
【0042】
“カルボキシル”とは基−C(O)OHを意味することを意図する。
【0043】
“ケト”又は“オキソ”とは基=Oを意味することを意図する。“チオケト”とは基=Sを意味することを意図する。
【0044】
“カルバモイル”とは基−C(O)NH2を意味することを意図する。
【0045】
“シクロアルキルアルキル”とは基アルキル−シクロアルキルを意味することを意図し、ここでアルキル及びシクロアルキルは前に定義した通りであり、そして基−CH2−シクロヘキサン又は−CH2−シクロヘキセン中に存在する結合配列により代表される。“アリールアルキル”とは基アルキルアリールを意味することを意図し、ここでアルキル及びアリールは前に定義した通りであり、そしてベンジル基に存在する結合配列により代表される。“アミノカルボニルアルキル”とは基アルキルC(O)NH2を意味することを意図し、そして基−CH2CH2C(O)NH2に存在する結合配列により代表される。“アルキルアミノカルボニルアルキル”とは基アルキルC(O)NHRa(Raはアルキル基である)を意味することを意図し、そして基−CH2CH2C(O)NHCH3に存在する結合配列により代表される。“アルキルカルボニルアミノアルキル”とは基アルキルNHC(O)−アルキルを意味することを意図し、そして基−CH2NHC(O)CH3に存在する結合配列により代表される。“ジアルキルアミノカルボニルアルキル”とは基アルキルC(O)NRab(Ra及びRbはそれぞれ独立してアルキル基である)を意味することを意図する。“アリールオキシ”とは基−ORc(Rcはアリール基である)を意味することを意図する。“ヘテロアリールオキシ”とは基−ORd(Rdはヘテロアリール基である)を意味することを意図する。“ヘテロアリールチオ”とは基−SRd(Rdはヘテロアリール基である)を意味することを意図する。
【0046】
“適当な窒素保護基”とは、本発明で使用する反応条件に対して安定であり、そして本願で製造されるジヒドロキシ化された化合物の3−アミノ又は2−ヒドロキシ中心において、ラセミ化を引き起こさない条件下で除去できる基である。
【0047】
本願で使用する用語“脱離基”とは、置換反応において結合の切断によって分子から離れる基を云う。脱離基の例にはハライド、アリールスルホネート、アルキルスルホネート、及びトリフレートが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
前に定義したアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル及びヘテロアリール基、並びにこれらの基を含む置換基は場合によっては少なくとも一つの置換基によって置換されていてもよい。用語“場合によっては置換された”とは、特定の基が非置換であるか、又は1又はそれ以上の適当な置換基で置換されていることを示すことを意図する。指示に従って、種々の基が非置換であるか又は置換されていてもよい(即ち、それらは場合によっては置換されている)。用語“置換基”又は“適当な置換基”とは、例えば通常の試験によって、当業者に認識され得る又は選ばれ得るあらゆる適当な置換基を意味することを意図する。
【0049】
本発明の化合物は非対称炭素原子を有し得る。本発明の化合物中の炭素−炭素結合は本願では
【化28】

を用いて描かれ得る。非対称炭素原子への結合を描くための実線の使用は、その炭素原子でのすべての可能な立体異性体が含まれることを示すことを意味する。非対称炭素原子への結合を描くためのくさび形の実線若しくは点線の使用は、示された立体異性体のみが含まれることを示すことを意味する。本発明の化合物は一つより多くの非対称炭素原子を含むことが可能である。これらの化合物において、非対称炭素原子への結合を描くための実線の使用は、すべての可能な立体異性体が含まれることを意味することを示す。本発明の化合物中の一つ又はそれ以上の非対称炭素原子への結合を描くための実線の使用、及び同じ化合物中の他の非対称炭素原子への結合を描くためのくさび形の実線若しくは点線の使用は、ジアステレオマーの混合物が存在することを意味する。
【0050】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明及びその好ましい態様を例示する以下の記載から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
本発明の方法は、下記の一般的スキーム(スキームA)に従ってアミノ−ブテンをオスミウム含有酸化剤で処理して対応するジヒドロキシアミノ−ブタンを得ることを含む:
【化29】

式中、
1は適当な窒素保護基であり、
2はHであるか、又は
1はR2と共に適当な窒素保護基を形成し;そして
3はチオアルキル又はチオアリールである。
【0052】
ネルフィナビルの製造に使用する場合、R3は好ましくはチオアリール基又はチオアリール基に変換できる基である。更に好ましくは、R3はチオフェニル基(−S−Ph)である。何故なら、チオフェニル基はネルフィナビル遊離塩基化合物中に存在するからである。
【0053】
イミドイル保護、例えば窒素上のフタルイミド、スクシンイミド又はN−ジホルミル保護、を含む本願に記載の工程において、ジヒドロキシ化段階で高度の立体選択性が得られる。フタルイミド保護基が除去され、そして他の保護基、例えばカルバメート、アルキル又はアミド、で置換された場合は、高度の立体選択性は達成されない。従って、ジヒドロキシ化の前に窒素上のイミド型保護をするのが好ましい。
【0054】
本発明はまた、本願に記載した方法に有用な、上記の式1、2、3、4及び5を有する化合物を提供する。
【0055】
中間体化合物
本発明による中間体化合物は、互変異性体及び立体異性体型の式1の化合物を含み、それらは当業界でよく知られた技術を用いて容易に得られる。例えば、光学的活性(R)及び(S)異性体は立体特異的合成により、例えばキラルシントン及びキラル試薬を用いて製造し得、或いはラセミ混合物は慣用技術を用いて分割し得る。
【0056】
化合物は互変異性の現象を示すかもしれないが、この明細書内の式の図形は可能な互変異性形の一つだけを特に描いていることが理解される。従って、式は描いた化合物のあらゆる互変異性形を表し、構造式で描かれた特定の化合物形のみに限定されないことが理解される。
【0057】
式1の化合物は“E”若しくは“Z”の立体配置異性体、又はE及びZ異性体の混合物として存在し得ることも理解される。従って、式は描いた化合物のあらゆる立体配置形を表すことを意図し、式の図形によって描かれた特定の化合物形のみに限定されないことが理解される。
【0058】
本発明化合物のいくつかは単一立体異性体(即ち、他の立体異性体が本質的にない)、ラセミ体、及び/又はエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物として存在し得る。かかる単一立体異性体、ラセミ体、及びそれらの混合物のすべては本発明の範囲内にあることが意図される。一つの好ましい態様において、光学的に活性な(即ち、本願に記載したように、エナンチオマー又はジアステレオマーが多い)本発明化合物は光学的に純粋な形態で使用される。
【0059】
更に、式1は、適用可能な場合は、化合物の溶媒和並びに非溶媒和の形態を包含するよう意図される。従って、各式は、水和形態並びに非水和形態を含む、指示された構造を有する化合物を含む。
【0060】
例示的な置換アリールは、1又はそれ以上、好ましくは1ないし3の、下記から独立して選ばれる置換基を含む;ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、チオエーテル、ニトロ(NO2)、アミノ、アリールオキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシル、ハロ(C1−C4)アルキル、C1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、カルボキシル、C1−C4アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−(C1−C4)アルキルカルバモイル、アミノ、C1−C4アルキルアミノ、ジ(C1−C4)アルキルアミノ、又は式−(CH2a−R7(式中、aは1、2、3又は4;そしてR7はヒドロキシ、C1−C4アルコキシ、カルボキシル、C1−C4アルコキシカルボニル、アミノ、カルバモイル、C1−C4アルキルアミノ、ジ(C1−C4)アルキルアミノ、アリール、飽和若しくは部分的飽和複素環、アシル、モルホリノ(C1−C4)アルコキシカルボニル又はピリジル(C1−C4)アルコキシカルボニルである)の基。
【0061】
例示的な置換アルキルは1又はそれ以上の下記から独立して選ばれる置換基を含む;アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ニトロ、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロシクロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニル、アリールカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニルオキシ、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロアリールアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、及びヘテロアリールチオ。
【0062】
例示的な置換アルキル基は低級アルキルメルカプトアルキル、アルキルチオアルキル、アリールチオアルキル、ニトロアルキル、アミノアルキル、アリールオキシアルキル、アシル、ハロ(C1−C4)アルキル、ヒドロキシ(C1−C4)アルキル、C1−C4アルキルチオ(C1−C4)アルキル、ヘテロアリール(C1−C4)アルキル、ヘテロシクロアルキル(C1−C4)アルキル、及びアリール(C1−C4)アルキル基を含み、例えばクロロメチル、2−ブロモエチル、1−クロロイソプロピル、3−フルオロプロピル、2,3−ジブロモブチル、3−クロロイソブチル、ヨード−t−ブチル、トリフルオロメチル、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシイソプロピル、4−ヒドロキシブチル、メチルチオメチル、エチルチオメチル、プロピルチオプロピル、sec−ブチルチオメチル、ピロリルメチル、キノリニルメチル、1−インドリルエチル、2−フリルエチル、3−チエンー2−イルプロピル、1−イミダゾリルイソプロピル、4−チアゾリルブチル、フェニルメチル、2−フェニルエチル、3−ナフチル−プロピル、1−ナフチルイソプロピル、4−フェニルブチル等を含む。
【0063】
本発明の化合物が塩基の場合、所望の塩は当業界で知られた適当な方法により製造し得、その遊離塩基を無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等、を用いるか、又は有機酸、例えば酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデリン酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、蓚酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸又はガラクツロン酸のようなピラノシジル酸、クエン酸又は酒石酸のようなアルファ−ヒドロキシ酸、アスパラギン酸又はグルタミン酸のようなアミノ酸、安息香酸又は桂皮酸のような芳香族酸、p−トルエンスルホン酸又はエタンスルホン酸のようなスルホン酸等、を用いて処理することを含む。
【0064】
本発明の化合物が酸の場合、所望の塩は当業界で知られた適当な方法により製造し得、その遊離酸を無機又は有機塩基、例えばアミン(第一級、第二級又は第三級);アルカリ若しくはアルカリ土類金属水酸化物等、を用いて処理することを含む。適当な塩の例には、グリシン及びアルギニンのようなアミノ酸;アンモニア;第一級、第二級及び第三級アミン;及びピペリジン、モルホリン及びピペラジンのような環式アミンから誘導された有機塩;並びにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及びリチウムから誘導された無機塩が含まれる。
【0065】
本発明の全ての化合物は少なくとも一つのキラル中心を含み、そして単一の立体異性体、及び/又はエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物として存在し得る。かかる立体異性体、ジアステレオマー及びそれらの混合物は本発明の範囲内に包含されることが意図される。ここに示した化学構造に存在するキラル炭素の立体化学は特定されていないが、化学構造は各キラル炭素のいずれかの立体異性体を含む化合物を包含することが意図される。
【0066】
特定の化合物を記載した場合、用語“光学活性”は本願では化合物がエナンチオマー又はジアステレオマーが豊富であることを示すために使用される。エナンチオマーが豊富な化合物は50%より多くの単一の立体異性体を含み、そして好ましくは75%より多くの単一の立体異性体を含む。ジアステレオマーが豊富な化合物は、各キラル炭素が該ジアステレオマー中に存在する単一の立体異性体を50%より多く含み、そして各キラル炭素が該ジアステレオマー中に存在する単一の立体異性体を好ましくは75%より多く含む。しかしながら、該化合物は光学的に純粋な形態で存在するのが好ましい。
【0067】
特定の化合物を記載する場合、用語“光学的に純粋”とは本願では該化合物が実質的にエナンチオマー又はジアステレオマーが純粋であることを示す。実質的にエナンチオマーが純粋な化合物は単一の異性体を少なくとも90%、そして好ましくは単一の異性体を少なくとも95%含む。実質的にジアステレオマーが純粋な化合物は各キラル炭素が該ジアステレオマー中に存在する単一の異性体を少なくとも90%、そして好ましくは各キラル炭素が該ジアステレオマー中に存在する単一の異性体を少なくとも95%含む。更に好ましくは、本発明の光学的に純粋な化合物は単一の異性体を少なくとも97.5%、そして最も好ましくは単一の異性体を少なくとも99%含む。本願で単一の立体異性体と確認された化合物は、単一の異性体を少なくとも90%含む形態で存在する化合物を記載することを意味する。
【0068】
本発明の方法でジヒドロキシ化反応は、化学量論的量又は触媒量のオスミウム含有酸化剤を使用して行い得る。触媒量の酸化剤を使用した場合は、ジヒドロキシ化は、オスミウム再酸化剤として役立つ化学量論的量の第2の酸化剤の存在下で行い得る。化学量論的量の酸化剤を使用した場合は、酸化剤は反応混合物中に存在するブテンの量と等モルの量で使用される。触媒量の酸化剤を使用した場合は、酸化剤は反応混合物中に存在するブテンのモル量の約1%から約15%の量で使用される。
【0069】
ジヒドロキシ化は触媒量のオスミウム含有酸化剤をフェリシアン化カリウムと組み合わせて使用して行うのが好ましい。特に有用なオスミウム酸化剤組合せ物はK2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2であり、それはキラル補助試薬としてのDHQD2PHALの存在下で使用し得る。
【0070】
好ましくはアミノ−ブテンのアミノ基は酸化剤で処理する前に保護基で保護される。上記の式1で、R1及び/又はR2は適当な窒素保護基を表す。従って、例えば本願のスキームAを参照すると、化合物2及び3は化合物1のジヒドロキシ化形である。適当な窒素保護基R1及び/又はR2は、除去されて化合物4及び/又は5を形成した場合、ラセミ化を引き起こさない基である。窒素保護基は方法の一連の反応における適当な時点で除去して所望の中間体又は目的化合物を得ることができる。適当な窒素保護基及びアミノ基の保護方法及び脱保護方法は当業者に知られており、その例はT.Greene and P.Wuts,Protecting Groups in Chemical Synthesis(第3版),John Wiley & Sons,NY(1999年)に見られる。その全体を参照により本願に組み入れる。いくつかの例では、窒素保護基は、本発明の方法に用いられる反応条件下で反応性であるように具体的に選ばれる。これらの状況下では、反応条件は、選ばれた保護基を、本発明における中間体化合物として有用であるか或いは目的化合物における所望のアミノ置換基である置換基に変換する。
【0071】
一般に、窒素保護基は、R1がアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アリールアルコキシカルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル又はアリールアルキル、そしてR2がHである基から選ぶことができる。例示的な適当な窒素保護基には、R1がベンジルオキシカルボニル、ベンジルカルボニル、t−ブチルカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル、アリル、ベンジル又は置換ベンジル基(例えば4−メトキシベンジル)そしてR2がHである基を含む。特に好ましい態様では、R1はアリールアルコキシカルボニル(例えばベンジルオキシカルボニル)又は
アリールアルキル(例えばベンジル)から選ばれ、そしてR2はHである。他の好ましい態様では、R1及びR2はそれらが結合した窒素と共にフタルイミド
【化30】

又はスクシンイミド
【化31】

基を形成する。
【0072】
前に指示したように、本発明の方法におけるジヒドロキシ化反応は立体選択的に起こるのが好ましい。ここでは、可能なジアステレオマー生成物が他の生成物よりも優先的に形成される。従って、本発明の方法で得られるジヒドロキシブタン生成物はR及びSの両異性体の混合物であって、二つの異性体が同じでない濃度で存在する混合物である。本願で使用するアミノ−ブテンは実質的にエナンチオマー的に純粋である(単一エナンチオマーを少なくとも95%含む)。従って、得られるアミノ−ブタンジオール生成物はジアステレオマーの混合物として得られ、ジアステレオマー過剰は生成物のエナンチオマー純度と一致する。好ましくは、ジアステレオマー比は生成物のエナンチオマー完全性(integrity)を反映すべきである。場合によっては、ジアステレオマーは慣用の手順を用いて分離して、ジアステレオマー的に純粋な生成物を得てもよい。本発明の方法によって製造されたジアステレオマーを分離するために有用であろう例示的方法は、クロマトグラフィー及び結晶/再結晶を含む。他の有用な方法は“Enantiomers,Racemates,and Resolutions,”J.Jacques外,1981年,John Wiley and Sons,New York,NYに見られる。その開示を参照により本願に組み入れる。ジヒドロキシ化反応の立体選択性は反応をキラル補助試薬の存在下で行うことにより達成される。本願で使用される用語“キラル補助試薬”とは、本願で使用するジヒドロキシ化反応条件に対して安定で、ジヒドロキシ化反応の立体化学的結果に影響を及ぼすことができる光学活性化合物を云う。ジヒドロキシ化反応はキラル補助試薬としてキニン又はキニジンアルカロイドを使用して行って、立体選択的に1,2(R)−ジヒドロキシ−3(R)−アミノ−ブタン又は1,2(S)−ジヒドロキシ−3(R)−アミノ−ブタンを形成するのが有利であろう。本発明のジヒドロキシ化反応に有用であり得るキラル補助試薬の例には、ジヒドロキニジン1,4−フタラジンジニルジエーテル((DHQD)2PHAL)、ヒドロキノン2,5−ジフェニル−4,6−ピリミジンジニルジエーテル、(DHQ)2PYR、ヒドロキノンアントラキノン−1,4−ジイルジエーテル(DHQ)2AQN、及びWO93/07142に開示された光学活性試薬が含まれる。WO93/07142の開示を本願に参照用に含める。特に有用なキラル補助試薬には、(DHQD)2PHAL、(DHQ)2PYR、及び(DHQ)2AQNが含まれる。一般にジヒドロキシ化反応は、キラル補助試薬を、反応混合物中に存在するブテンのモル量の約1%から約6%の量で使用して行われる。
【0073】
一般に、ジヒドロキシ化反応は極性溶媒又は極性溶媒の混合物、及び有機溶媒又は有機溶媒の混合物、及び水中で行い得る。好ましくは、その反応は極性プロトン性溶媒中で行い得る。有用な溶媒にはt−ブタノール、アセトン、t−ブタノール/水、及びアセトン/水が含まれる。ジヒドロキシ化反応はあらゆる適当な温度で行い得る。一般に、該反応は約0℃からほぼ室温の温度で行い得る。
【0074】
本発明の一態様では、保護された(R)−アミノ−ブテンは、キラル補助試薬としてDHQD2PHALを使用して立体選択的にアミノ−ヒドロキシブタノールに変換される。この工程に有用な出発材料は市販の(NSC Technologies、Mt.Prospect、Illinois、から)3(R)−アミノ−4−ヒドロキシ−1−ブテンのフタルイミドである。この材料はネルフィナビルの製造における有用な前駆体である4−ヒドロキシ基を含む。ここで、4−ヒドロキシ基は、ネルフィナビルの製造に有用であろうチオフェニル置換基に変換され得る。この変換工程は、まずヒドロキシ基を脱離基に転換し、次に脱離基をチオフェニル基で置き換えることにより成し遂げ得る。この種の置換工程は十分研究されそして多様の転換のいずれかを使用して成し遂げ得る。脱離基とは置換反応で結合の破壊により分子から離れる基を云い、ハライド、アリールスルホネート、アルキルスルホネート、及びトリフレートを含むが、これらに限定されない。例えば、ヒドロキシ基はハロ基、メシラート(−OSO2CH3)、トリフレート(−OSO2CF3)、トシレート(−OSO2−(p−トリル))、又は求核試薬により置換され得る他の通常認められた脱離基に変換され得る。求核試薬はいかなる形態でもよく、例えば求核基を含む試薬、特にチオフェノキシド基(例えばPH−SK+)、又は有機金属試薬であり得る。
【0075】
本発明の方法のこの態様は、以下に示されるように、3(R)−フタルイミド−4−ヒドロキシ−1−ブテン6から3(R)−フタルイミド−4−チオフェニル−ブテン8への変換により例示される:
【化32】

【0076】
この方法では、ヒドロキシ−ブテン6がまず、慣用の条件下で(例えば、アミン塩基、例えばトリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン、の存在下で、極性非プロトン性溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メチル−t−ブチルエーテル、又はテトラヒドロフラン、中)、メタンスルホニルクロリドを用いた処理によりブテン−メシラート7aに変換される。当業者は、本発明の方法において化学転換が、中間体基質及び実施される転換と両立性の薬学的に許容される溶媒を用いて実施され得ることを認識するであろう。得られたメシラートは次にチオフェノキシド(チオフェノール及び非求核性塩基、例えばジイソプロピルエチルアミン、炭酸カルシウム等、を用いてその場で形成されたもの)を用いて、極性非プロトン性溶媒中で処理して、チオフェニル−ブテン8を形成する。化合物8の立体選択的ジヒドロキシ化は、オスミウム含有酸化試薬組合せ、K2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2、を用いて、キラル補助試薬としてのDHQD2PHALの存在下で行い、1,2(R)−ジヒドロキシ−3(R)フタルイミド−4−(フェニルチオ)−ブタン9及び1,2(S)−ジヒドロキシ−3(R)−フタルイミド−4−(フェニルチオ)−ブタン10を13:1の比で与えることができる。
【化33】

【0077】
フタルイミドアミノ保護基の除去は、該ブタン化合物の3−アミノ又は2−ヒドロキシ中心においてラセミ化を引き起こさない慣用の方法を用いて行い得る。保護基を除去するための一般的方法は、前のGreene及びWutsの文献に記載されている。例えば、メチルアミンでの処理はフタルイミド9をジヒドロキシ−アミノ−ブタン11に変換する。
【化34】

この化合物は引き続き、ネルフィナビル又はネルフィナビルメシラートの製造に有用な他の中間体化合物に誘導化及び転換され得る。
【0078】
本発明のジヒドロキシ化方法により立体選択的に形成された立体異性体は、別のキラル補助試薬を用いることにより変えることができることを当業者は認識するであろう。当業者はまた、いろいろな補助試薬の存在下でのいろいろな窒素−保護基及び/又はいろいろなブテン置換基を含む3(R)−アミノ−ブテンの立体選択的ジヒドロキシ化は1,2(R)−ジヒドロキシ−3(R)−アミノ−ブテン及び1,2(S)−ジヒドロキシ−3(R)−アミノ−ブテンのいろいろな割合での混合物を生成し得ることを認識するであろう。即ち、ジヒドロキシ化反応の立体選択性は、反応に使用した特定の基質及び特定のキラル補助試薬(例えば、いろいろなキニン又はキニリジンアルカノイドキラル補助試薬を使用する)に依存して変わり得る。しかしながら、本願の教示に基づきそして日常の実験を通して(例えば、いろいろな窒素保護基を有する化合物又はいろいろな置換基を有する化合物を製造し、そしてジヒドロキシ化反応をいろいろなキラル補助試薬を使用して行う)、当業者は、特定のアミノ−ブテンの所望の立体異性体を立体選択的に提供するキラル補助試薬を選ぶことができるであろう。
【0079】
例えば、3(R)−アミノ−ブテンのジヒドロキシ化を、DHQD2PHAL以外のキラル補助試薬を使用し、そして場合によっては前に例示したフタルイミドとは異なる窒素保護基を有するアミノ−ブテンを使用して行って、1,2(S)−ジヒドロキシ−3(R)−アミノ−4−(フェニルチオ)−ブタンを立体選択的に得ることができる。窒素保護基は所望により、ジヒドロキシ化前に、上記のようにして製造したフタルイミド−保護3(R)−アミノ−4−チオフェニル−1−ブテン8をCbz−保護3(R)−アミノ−4−チオフェニル−1−ブテンに変換することにより交換してもよい。詳しくは、Cbz−保護3(R)−アミノ−4−チオフェニル−1−ブテン20を上記のフタルイミド−保護3(R)−アミノ−4−チオフェニル−1−ブテン8から2段階方法により製造し得る。ここで、該フタルイミドは慣用の手順(即ち、エタノールアミンでの処理)により除去して3−アミノ−4−チオフェニル−1−ブテンを得、次いで慣用の条件下(例えば塩基の存在下)でカルボベンジルオキシクロリド(Cbz−Cl)で処理する。Cbz−保護3(R)−アミノ−4−チオフェニル−1−ブテン20の立体選択的ジヒドロキシ化を、オスミウム含有酸化試薬組合せK2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2を用いて、キラル補助試薬としてのキヌクリジンの存在下で行い、1,2(S)−ジヒドロキシ−3(R)−Cbz−4−(フェニルチオ)−ブタン13及び1,2(R)−ジヒドロキシ−3(R)−Cbz−4−(フェニルチオ)−ブタン14を4:1の割合で得てもよい。
【0080】
【化35】

【0081】
主なジヒドロキシブタン13の2−ヒドロキシ基がネルフィナビル中のヒドロキシ基と同じ絶対配置を有するのが有利である。従って、この物質はネルフィナビル又はネルフィナビルメシラートの製造にも有用である。
【0082】
本願に記載したアミノ−ブテンのジヒドロキシ化の速度はアルキルアミンの添加により加速し得る。例えば、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)の使用はジヒドロキシ化の速度を加速することが発見された。更に、DABCOのような複合アルキルアミンを本発明の方法でキラル補助試薬として使用し得ることが発見された。例えば、キラル補助試薬としてのDABCOの存在下でK2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2を用いてCbz−アミノ−ブテン20をジヒドロキシ化すると、1,2(S)−ジヒドロキシ−3(R)−Cbz−4−(フェニルチオ)−ブタン13及び1,2(R)−ジヒドロキシ−3(R)−Cbz−4−(フェニルチオ)−ブタン14が約2:1の割合で30%の収率で得られた。一般に、ジヒドロキシ化反応の加速は、反応混合物に存在するブテンのモル量の約10%から約100%の量のDABCOを使用することにより達成し得る。DABCOをキラル補助試薬として使用した場合、DABCOは上記の他のキラル補助試薬と同じ量で使用し得る。
【0083】
従って、式1の化合物は式2:
【化36】

の化合物に、式1の化合物をキラル補助試薬としてのDHQD2PHALの存在下で、オスミウム含有酸化試薬組合せK2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2で処理することにより、立体選択的に変換される。
【0084】
式1の化合物はまた式3:
【化37】

の化合物に、式1の化合物をキラル補助試薬としてのDHQD2PHALの存在下で、オスミウム含有酸化試薬組合せK2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2で処理して式3の化合物を得ることにより、立体選択的に変換され得る。
【0085】
また、式2の化合物は式4の化合物に、一方、式3の化合物は式5の化合物に、ラセミ化を引き起こさずに窒素保護基を除去してそれぞれ式4又は5を得ることにより、変換され得る。
【0086】
式6:
【化38】

の化合物は、式6の化合物をアミン塩基の存在下で極性非プロトン性溶媒中でメタンスルホニルクロリドで処理してブテン−メシラート7a:
【化39】

を得、そしてブテン−メシラート7aをチオフェノキシドで処理して(ここで、チオフェノキシドは極性非プロトン性溶媒中でチオフェノール及び非求核塩基を使用してその場で形成される)チオフェニル−ブテン8:
【化40】

を得ることにより、式8の化合物に変換される。
【0087】
特に、式6:
【化41】

の化合物は式7a:
【化42】

(式中、R1はアルキル又はアリール、好ましくはメチル、トリフルオロメチル又はp−トリルである)の化合物に変換し、そして式7aの化合物は、式6又は7aの化合物を、キラル補助試薬としてのDHQD2PHALの存在下でオスミウム含有酸化試薬組合せK2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2で処理して式8の化合物に変換して、それぞれ式7a又は8:
【化43】

の化合物を得る。
【0088】
次に、式8の化合物は、式9:
【化44】

の化合物、又は式10:
【化45】

の化合物、又はそれらの混合物に、式8の化合物をキラル補助試薬としてのDHQD2PHALの存在下でオスミウム含有酸化試薬組合せK2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2で処理して変換して、式9又は10の化合物を得る。
【0089】
或いは、式9の化合物は式11:
【化46】

の化合物に、そして/又は式10の化合物は式12:
【化47】

の化合物に、それぞれの出発材料を、窒素保護を脱保護する試薬で処理することにより変換して、ラセミ化を引き起すことなくそれぞれ式11又は12で表される化合物を得ることにより、変換される。
【0090】
更に、式9の化合物は式14:
【化48】

の化合物に、そして/又は式11の化合物は式14の化合物に、それぞれの出発材料を窒素保護基の二環式環を開環する試薬で処理する(例えば、化合物9から化合物14への変換)か、或いは窒素保護基を単一段階で加える(例えば、化合物11から化合物14への変換)ことにより変換する。化合物9から化合物14への変換と同様の方法で、式10の化合物は式13:
【化49】

の化合物に、窒素の脱保護、次いでベンゾカルバメート形成により変換される。式12の化合物は、それぞれの出発材料を上記のカルバメート形成段階を使用して処理して、式13の化合物に変換される。
【0091】
本発明はまた、式14の化合物を式15:
【化50】

の化合物に、式14の化合物をメチルフェニルスルホニルクロリド及びアミン塩基溶媒で処理し、次いで水性塩基で処理して、式15の化合物を得ることにより変換する方法を含む。式15の化合物は更に、式16:
【化51】

の化合物に、(2S,3R)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4−フェニルチオ−1−ブテンオキシド15及び(3S,4aS,8aS)−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸t−ブチルアミドを含む溶液をイソプロピルアルコール中で加熱し;2N水酸化カリウム水溶液を加え;トルエンを加え、そして水及び1N塩酸で洗い;水性層を抽出しそして合わせ;そして抽出された生成物を乾燥して(3S,4aS,8aS)−2−(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルチオブチル)−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸t−ブチルアミド16を得ることにより、変換される。
【0092】
式16の化合物は次に、ネルフィナビル及び/又はネルフィナビルメシラート、即ち、それぞれ式17及び18:
【化52】

の化合物に、WO97/11937及びWO97/11938(これらは本願に参照により組み入れる)に記載された方法に従って変換される。
【0093】
或いは式8の化合物は式20:
【化53】

の化合物に、まず式8の化合物を式19:
【化54】

の化合物に変換し、次に式19の化合物を、本願に記載した異なる保護基を加えることにより式20の化合物に変換して、変換される。式8の化合物は異なる保護基を加えるための好ましい基質である。何故なら、それは引き続くジヒドロキシ化段階において高い立体選択性を与えるからである。
【0094】
式20:
【化55】

の化合物もまた式13:
【化56】

の化合物、又は式14:
【化57】

の化合物、又はそれらの混合物に、それぞれの出発化合物をキラル補助試薬としてのDHQD2PHALの存在下でオスミウム含有酸化試薬組合せK2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2で処理して、それぞれ式13又は14の化合物を得ることにより、立体選択的に変換される。
【0095】
同様の方法で、式13の化合物は式21:
【化58】

(式中、R4は本願に定義した脱離基である)の化合物に変換される。特に、式21aの化合物は、式13の化合物をp−トルエンスルホニルクロリド(トシルクロリド)及び塩基、例えばトリエチルアミン、と塩化メチレン中で反応させることにより形成される。好ましくはR4はクロロ、ブロモ、−OSO2−R’(ここでR’はアルキル又はアリール、好ましくはメチル、トリフルオロメチル又はp−トリルである)である。
【0096】
式20の化合物は式21a:
【化59】

(式中、R'''はアルキル又はアリール、好ましくはメチル、トリフルオロメチル又はp−トリルである)の化合物に、そして式21aの化合物は式22:
【化60】

の化合物に、それぞれの出発化合物をキラル補助試薬としてのDHQD2PHALの存在下でオスミウム含有酸化試薬組合せK2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2で処理して、それぞれ式21a又は22の化合物を得ることにより、変換される。反応は下記のスキーム(スキームB)に従って行われ得る。
【0097】
【化61】

【0098】
式22の化合物の形成は、式21aの化合物をPHIQ(3S,4aR,8aR,3−N−t−ブチルカルボキサミド−デカヒドロイソキノリン)で処理することにより達成し得る。化合物22からのベンジルオキシカルボニル窒素保護基の慣用の条件下(但し、選んだ条件は立体中心のラセミ化を引き起こさない)での除去は式16の化合物を与え、それは上記のようにネルフィナビル及びネルフィナビルメシラートに変換し得る。
【実施例】
【0099】
下記の実施例の化合物の構造は、下記の1つ又はそれ以上により確認した:プロトン磁気共鳴分光法、赤外分光法、元素微量分析及び融点。プロトン磁気共鳴(1HNMR)スペクトルは、磁場強度300メガヘルツ(MHz)で操作するVarian UNITYplus300又はGeneral Electric QE−300分光計で決定した。化学シフトは、内部テトラメチルシラン標準からのダウンフィールドの百万中の部(ppm,δ)で報告する。或いは、1HNMRスペクトルは次のように残留プロトン性溶媒シグナルを参照する:CHCl3=7.26ppm;DMSO=2.49ppm;C6HD5=7.15ppm。ピーク多重度は次のように表す;s,1重項;d,二重項;dd,二重項の二重;t,3重項;q,四重項;br,ブロードな共鳴;m,多重項。カップリング定数はヘルツで与える。赤外線吸収(IR)スペクトルはPerkin−Elmer 1600系FTIR分光計を用いて得た。元素微量分析はAtlantic Microlab Inc.、Norcross、GA、により行った。融点はMel−Temp装置で測定し、補正しなかった。全反応は、他の記載がない限り、隔壁封止フラスコ中で僅かに正のアルゴン圧力下で行った。全ての市販の試薬は、次の例外以外はそれぞれの供給者から受け取ったままで使用した。テトラヒドロフラン(THF)は使用前にナトリウム−ベンゾフェノンケチルから蒸留した。ジクロロメタン(CH2Cl2)は使用前に水素化カルシウムから蒸留した。
【0100】
本願で使用する略語には下記が含まれる:Et2O(ジエチルエーテル)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、MTBE(tert−ブチルメチルエーテル)、CH3OH(メタノール)、EtOH(エタノール)、EtOAc(酢酸エチル)、DME(エチレングリコールジメチルエーテル)、Ac(アセチル)、Me(メチル)、Ph(フェニル)、Tr(トリフェニルメチル)、Ts(トシレート)、Cbz(ベンジルオキシカルボニル)、Boc(tert−ブトキシカルボニル)、TFA(トリフルオロ酢酸)、DIEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)、TMEDA(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)、AcOH(酢酸)、Ac2O(無水酢酸)、NMM(4−メチルモルホリン)、DCC(ジシクロヘキシルーカルボジイミド)、DDQ(2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン)、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナー5−エン)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)、DMAC(N,N−ジメチルアセトアミド)、PNB(p−ニトロベンゾイル)、及びPHIQ(3S,4aR,8aR,3−N−t−ブチルカルボキサミドデカヒドロイソキノリン)。
【0101】
本発明による種々の化合物の特定例は以下の実施例に示したようにして有利に製造し得る。これらの実施例及びそこに含まれる化合物は決して本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0102】
実施例1:3−フタルイミド−4−チオフェニルブテン8の製造
【化62】

酢酸エチル150ml中のメタンスルホニルクロリド(1.2モル、1.2当量、137.5g、93ml)の溶液を、酢酸エチル800ml中のフタルイミド−アルコール6(217.2g、1.0モル、NSC Technologies、Mt.Prospect、ILから入手)及びトリエチルアミン(1.3モル,1.3当量,131g及び181ml)の氷冷(0℃)溶液に、得られた混合物の温度を20℃より低く維持するのに充分な速度で加えた。添加の終わりに混合物を周囲温度に温め、そして3時間攪拌した。HPLC分析は出発材料を示さなかった。水(500ml)を加え、そして得られた混合物を15分間攪拌し、その後、水性相を除去した。この抽出工程を水500mlを使用して2回繰り返し、次いで食塩水500mlで抽出した。酢酸エチルの大部分を減圧下で36℃−45℃(ポット温度50℃−70℃)で2時間にわたって蒸留により除去した。DMF(1L)を加え、そして酢酸エチルの蒸留を減圧下で75℃にて1時間続けた。得られた混合物を周囲温度に冷却した後、チオフェノール(2.0モル,2.0当量,221g,206ml)及びジイソプロピルエチルアミン(2.0モル,2.0当量,258.5g,350ml)を加え、そして得られた混合物を65℃(内部温度)に加熱した。HPLC分析は1%未満の出発メシラートが22時間後に残ったことを示した(1H NMR分析は1−3%のメシラートを示した),メシラート7aの1H NMR:(300MHz,CDCl3)δ7.85(m,2H),7.75(m,2H),6.12(ddd,J=7,10,18Hz,IH),5.40(重なるm,2H),5.10(m,IH),4.88(dd,J=10,10Hz),4.50(dd,J=5,10Hz),2.98(s,3H)。反応混合物を周囲温度に冷却しそ
して26時間放置した。
【0103】
混合物をMTBE2Lに注ぎ、それぞれ1Lの1N HCI(2x)、水性飽和NaHCO3(Ix)及び食塩水(Ix)で次々と洗った。得られた有機相をNa2SO4で乾燥し、そして濾過した。濾液を、ポット温度が96℃に達するまで大気圧で蒸留してMTBEを除去した。蒸留を停止しそして混合物を周囲温度に冷却した。得られた溶液をヘキサン(1L)で希釈し、次に攪拌した。種結晶を攪拌混合物に加えた。10分後、薄オレンジ色沈殿物が形成した。更に2時間攪拌した後、固体を沈殿させ、そしてヘキサンをデカントした。得られたスラリーを新しいヘキサン(500ml)で希釈し、そして30分間攪拌した。混合物を濾過し、そして薄オレンジ色固体をヘキサン1Lで洗い、減圧下で乾燥して8を231.9g(75%)、濾過容易な薄オレンジ色固体として得た。式8の化合物が本願に定義したようにエナンチオマー的に純粋な形態で得られた。1H NMR(300MHZ,CDCl3)δ7.75(m,2H),7.69(m,2H,7.33(d,J=7Hz,2H),7.17(t,J=7,7Hz,2H),7.09(m,IH),6.20,(ddd,J=7,10,17Hz,IH),5.25(d,J=17Hz,IH),5.22(d,J=10Hz,IH),4.90(m,IH),3.77(dd,J=10,14Hz,IH),3.28(dd,J=5,14Hz,IH)。
【0104】
実施例2:1,2(R)−ジヒドロキシ−3(R)フタルイミド−4−(フェニルチオ)−ブタン(9)及び1,2(S)−ジヒドロキシ−3(R)−フタルイミド−4−(フェニルチオ)−ブタン(10)の製造
【化63】

2L三角フラスコにフェリシアン化カリウム(197.5g,0.60モル,3.0当量)、オスミウム酸カリウム(0.368g,0.001モル,0.005当量)、重炭酸ナトリウム(50.4g,0.60モル,3.0当量)、炭酸カリウム(82.9g,0.60モル,3.0当量)、メタンスルホンアミド(22.8g,0.24モル,1.2当量)及びDHQD2PHAL(1.55g,0.002モル,0.01当量)を入れた。この混合物をt−ブタノール/水(1:1v/v)900mlに溶かし、0℃−5℃に冷却した。化合物8(61.84g,0.20モル,1.0当量)を固体として1回で加えた。混合物を18時間激しく攪拌し、そして亜硫酸水素ナトリウム30gでクエンチした。水(600ml)を加え、そして混合物を酢酸エチル(600mlx2及び300mlx2)で抽出した。合わせた酢酸エチル抽出物を1N NaOH(1Lx1)、1N HCI(500mlx1)及び食塩水(1Lx1)で連続的に洗い、そして減圧下で濃縮してジオール9及び10の混合物61.7gを金色油状物として得た。それは静置するとゆっくり固化した。収率はほぼ90%であった。1H NMR分析は、生成物がジオール立体異性体9及び10の13:1混合物であることを示し、それをさらに精製することなく使用した。化合物9の1H NMR:(300MHZ,CDCl3)δ7.4−7.1(重なるm,10H),5.30(br
s,1H),5.09(br s,2H),4.00(m,1H),3.85(m,1H),3.52(重なるm,2H),3.15(重なるm,2H),2.30(br,2H)。
【0105】
実施例3:1,2(S)−ジヒドロキシ−3(R)−Cbz−4−(フェニルチオ)−ブタン(13)及び1,2(R)−ジヒドロキシ−3(R)−Cbz−4−(フェニルチオ)−ブタン(14)の製造
【化64】

実施例2で得たジオール9及び10の混合物(6.62g,19.3ミリモル)を40%水性メチルアミン25mlに懸濁し、そして60℃に5時間加熱した。反応物を周囲温度に冷却し、そしてアルゴン流を溶液中に2時間泡立てると、容量が著しく減少した。混合物を減圧雰囲気(約18mmHg)に1時間置いて、残留するメチルアミンを除去して、透明褐色の水溶液を得た。この溶液に水(5ml)、重炭酸ナトリウム(2.48g,60ミリモル)及び酢酸エチル(30ml)を連続的に加えた。得られた混合物を5℃(氷浴)に冷却した後、クロロギ酸ベンジル(3.75g,3.2ml,22ミリモル)を滴下し、そして得られた混合物を1時間攪拌した。酢酸エチル層を分離し、そしてそれぞれ40ml部分の1N HCl、飽和重炭酸ナトリウム水溶液、及び食塩水で連続的に洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして蒸発させると、化合物13及び14の混合物(1:13混合物として)6.89gが薄褐色油状物(103%)として残った。それは静置するとゆっくり固化した。
【0106】
実施例4:3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4−チオフェニルブテン19の製造
【化65】

化合物8(50g,0.16M)を40%水性メチルアミン250mlに懸濁し、次に60℃(油浴)に5時間加熱した。得られた溶液を室温に冷却した。残留したメチルアミンを減圧下で回転蒸発器を使用して除去した。得られた水溶液を酢酸エチル(2x100ml)で抽出した。酢酸エチル層を合わせ、そして飽和NaCl100mlで洗い、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして減圧下で回転蒸発器を使用して濃縮して、アミノ−ブテン29.11gを黄色油状物として得た(理論的収量よりも僅かに多い)。HPLCは純度が92%であることを示した。
1H NMR(300MHZ,CDCl)δ7.35(d,J=8Hz,2H),7.27(t,J=7,8Hz,2H),7.17(t,J=7,7Hz,1H),5.83(ddd,J=6,10,17Hz,1H),5.18(d,J=17Hz,1H),5.09(d,J=11Hz,1H),3.47(m,1H),3.11(dd,J=5,14Hz,1H),2.82(dd,J=8,13Hz,1H),1.69(brs,2H)。この物質は更に精製することなく使用した。
【0107】
クロロギ酸ベンジル(21.4ml,25.5g,0.15モル,1.05当量)を室温で、
酢酸エチル120ml中のアミノ−ブテン(25.5g,0.142モル,1当量)の溶液及び水120ml中の重炭酸ナトリウム(25.05g,0.298モル,2当量)を含む攪拌混合物に滴下した。10分後、HPLCは出発材料を示さなかった。攪拌2時間後、層を分離し、有機層を0.5Mクエン酸50ml、飽和重炭酸ナトリウム50ml、及び飽和塩化ナトリウム50mlで洗い、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして減圧下で回転蒸発器を用いて濃縮して19を31.84g、黄褐色固体(72%収量)として得た。(濾紙を通して熱濾過して褐色不溶性油状物を除いた後)固体を熱いヘキサンから再結晶して、白色針状結晶(24.78g,56%収量,2回の収穫)を得た。HPLCは純度が99%であることを示した。1H NMR(300MHZ,CDCl3)δ7.4−7.2(重なるm,10H),5.84(ddd,J=7,11,17Hz,1H),5.21(重なるm,2H),5.10(br s,2H),5.04(br s,1H),4.45(m,1H),3.15(m,2H)。
【0108】
実施例5:3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4−チオフェニルブタンジオール13及び14の製造
【化66】

化合物19(1g,0.003モル,1.0当量)を固体として1回で、t−ブタノール/水(1:1v/v)15ml中のフェリシアン化カリウム(2.96g,0.009モル,3当量)、オスミウム酸カリウム(0.005g,0.000015モル,0.005当量)、重炭酸ナトリウム(0.76g,0.009モル,3当量)、炭酸カリウム(1.24g,0.009モル,3当量)、メタンスルホンアミド(0.28g,0.003モル,1当量)及び(DHQ)2PYR(0.026g,0.00003モル,0.01当量)を含む三つ首丸底フラスコに加えた。得られた混合物を0℃−5℃で12時間、次に室温で18時間攪拌した。固体生成物を次に濾過し、t−ブタノール/水(1:1v/v)で洗い、そして乾燥して白色固体0.9g(収量86%)を得た。HPLCはジオール13及び14の割合が4:1であることを示した。この生成物混合物を酢酸エチル/ヘキサン(3:1v/v)から再結晶して、13を0.18g、白色結晶性固体として得た。HPLCは純度97%の13を示した。1H NMR(300MHZ,CDCl3)δ7.4−7.2(重なるm,10H),5.2(d,1H),5.1(s,1H),3.9(br m,1H),3.7(m,2H),3.5(m,1H),3.3(m,2H),3.1(m,1H),2.6(d,1H)。
【0109】
実施例6:3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4−フェニルチオ−1−ブテンオキシド15の製造
【化67】

p−ニトロベンゾイルクロリド(20.8g,0.112モル)を3−10℃からで0℃−5℃の(2R,3R)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4−フェニルチオ−1,2−ブタンジオール14(39.0g)及びトリエチルアミン(39.1ml,0.280モル)のテトラヒドロフラン(300ml)溶液に加えた。得られた混合物を1時間氷冷却しながら攪拌した。メタンスルホニルクロリド(10.4ml,0.135モル)を2−12℃で滴下し、混合物を1時間氷冷却しながら攪拌した。不溶性物質を濾取し、酢酸エチルで洗った。濾液及び洗浄液を合わせ、減圧下で濃縮した。得られた残留物を酢酸エチル(300ml)に溶かし、連続的に水(50ml)、0.5Mクエン酸水溶液(50ml)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)及び飽和食塩水(50ml)で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。得られた残留物をトルエン(400モル)/ジイソプロピルエーテル(300ml)から再結晶して、(2R,3R)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4−フェニルチオ−2−メタンスルホニルオキシ−1−(4−ニトロベンジルオキシ)ブタン(38.6g,(2R,3R)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4−フェニルチオ−1,2−ブタンジオール14からの収量51%)を無色結晶として得た。1H NMR(CDCl3,300MHz)δ8.5−8.0(m,4H),7.5−7.2(m,10H),5.44(ddd,J=6.9,5.1,2.3Hz,1H),5.11(s,2H),5.09(brd d,1H),4.57(dd,J=12.0,6.9Hz,1H),4.50(dd,J=12.0,5.1Hz,1H),4.21(m,1H),3.25(dd,J=14.0,6.2Hz,1H),3.05(s,3H),3.05(dd,J=14.0,8.2Hz,1H) IR(KBr):3347,1725,1699,1531,1514,1349,1283,1172,1109,1028,925cm-1,[α]D25:−14.0°(cl.01,CHCl3);元素分析(C2626292):計算値:C,54.35;H,4.56;N,4.88;実測値:C,54.49;H,4.19;N,4.75。
【0110】
2N水酸化カリウム水溶液(28.7ml,57.4ミリモル)を(2R,3R)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4−フェニルチオ−2−メタンスルホニル−オキシ−1−(4−ニトロベンゾイルオキシ)ブタン(15.0g,26.1モル)の攪拌した室温の1,4−ジオキサン(120ml)溶液に加えた。得られた混合物を室温で1時間攪拌した。トルエン(200ml)を加え、得られた混合物を連続的に水(200ml)、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(200ml)、及び飽和食塩水(100ml)で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮して、(2S,3R)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4−フェニルチオ−1−ブテンオキシド15を8.43g(収量98%)無色油状物として得た。この物質を更に精製することなく使用した。1H NMR(CDCl3,300MHz)δ7.5−7.1(m,10H),5.2−5.0(m,3H),3.70(m,1H),3.22(d,J=5.6Hz,2H),2.99(m,1H),2.9−2.6(m,2H) IR(KBr):3302,1694,1538,1323,1256,1100,1028,1006,882cm-1[α]D25:−26.2δ(c1.01,CHCl3);元素分析(C1819NO3S):計算値:C,65.63;H,5.81;N,4.25,実測値:C,65.36;H,5.85;N,4.33。
【0111】
実施例7:(3S,4aS,8aS)−2−((2R,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルチオブチル)−デカヒドロイソキナリン−3−カルボン酸t−ブチルアミド16の製造
【化68】

(2S,3R)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4−フェニルチオ−1−ブテンオキシド15(8.43g)及び(3S,4aS,8aS)−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸t−ブチルアミド(4.98g,20.9ミリモル)のイソプロピルアルコール(70ml)溶液を70−75°に5時間加熱した。2N水酸化カリウム水溶液(52.3ml,104.5mモル)を加え、加熱を70−75℃で15時間続けた。室温に冷却後、トルエン(120ml)を加え、そして混合物を水(120ml)及び1N塩酸(80mlx1,40mlx1)で洗った。水性抽出物を合わせ、トルエン(100mlx3)で洗った。水性抽出物のpHを5N水酸化カリウム水溶液を用いてpH12に調節し、次にトルエン(120ml)で抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮して、(3S,4aS,8aS)−2−((2R,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルチオブチル)−デカヒドロイソキナリン−3−カルボン酸t−ブチルアミド16を無色油状物として9.39g、収率85%、得た。1H NMR(CDCl3,300MHz)δ7.5−7.1(m,5H),6.05(brds,1H),3.68(m,1H),3.37(dd,J=13.0,2.8Hz,1H),3.02−2.88(m,2H),2.83(dd,J=13.0,9.8Hz,1H),2.64(dd,J=13.2,5.1Hz,1H),2.60(dd,J=8.0.3.7Hz,1H),2.30(dd,J=13.2,6.6Hz,1H),2.27(dd,J=11.8,3.3Hz,1H),1.32(s.9HI),2.0−1.0(m,12H)。
【0112】
実施例8:(3S,4aS,8aS)−2−[(2R,3R)−2−ヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシ−2−メチルベンゾイルアミノ)−4−フェニルチオブチル]デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸t−ブチルアミド17の製造
【化69】

3−アセトキシ−2−メチルベンゾイルクロリド(4.37g,20.6ミリモル)の酢酸エチル(40ml)溶液を水(40ml)及び酢酸エチル(40ml)の混合物中の(3S,4aS,8aS)−2−((2R,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルチオブチル)−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸t−ブチルアミド16(9.1g,21ミリモル)及び炭酸水素ナトリウム(4.55g,54.2ミリモル)の攪拌懸濁液に氷冷しながら滴下した。混合物を更に1時間氷冷しながら攪拌した。水(20ml)を加え、そして有機層を分離し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(20ml)で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮して、(3S,4aS,8aS)−2−[(2R,3R)−3−(3−アセトキシ−2−メチルベンゾイルアミノ)−2−ヒドロキシ−4−フェニルチオブチル]−デカヒドロイソキナリン−3−カルボン酸t−ブチルアミド(12.7g,収率96%)を無色且つ無定形で得た。1H NMR(CDCl3,300MHz)δ7.5−7.1(m,8H),7.1−7.0(m,1H),5.51(brd s,1H),4.48(m,1H),4.07(m,1H),3.81(dd,J=13.7,9.2Hz,1H),3.41(dd,J=13.7,4.7Hz,1H),2.91(dd,J=11.7,2.0Hz,1H),2.56(dd,J=12.9,9.1Hz,1H),2.44(m,1H),2.32(s,3H),2.27.(s,3H),2.3−2.1(m,2H),1.99(m,1H),1.9−1.1(m.11H),1.07(s,9H)。
【0113】
アンモニア水(28%,24ml)を(3S,4aS,8aS)−2−[(2R,3R)−3−(3−アセトキシ−2−メチル−ベンゾイルアミノ)−2−ヒドロキシ−4−フェニルチオブチル]−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸t−ブチルアミド(12.7g)のメタノール(96ml)溶液に加えた。得られた混合物を室温で1.5時間攪拌した。得られた沈殿物を濾過により集め、そしてメタノール(75ml)/水(25ml)の混合溶液で洗った。残留物を500℃で減圧下で乾燥して、(3S,4aS,8aS)−2−[(2R,3R)−2−ヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシ−2−メチルベンゾイルアミノ)−4−フェニルチオブチル]デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸t−ブチルアミド17を8.00g、無色結晶として得た(2R,3R−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4−フェニルチオ−2メタンスルホニルオキシ−1−(4−ニトロベンゾイルオキシ)ブタンからの収率54%)。1H NMR(CD3OD,300MHz)δ7.49(m,2H),7.27(m,2H),7.17(m,1H),7.01(m,1H),6.90(m,1H),6.79(m,1H),4.43(M,1H),4.06(m,1H),3.54(dd,J=10.1,3.5Hz,1H),3.37(m,1H),3.04(dd,J=8.7,1.7Hz,1H),2.60(m,2H),2.24(s,3H),2.17(m,2H),2.01(M,1H),1.9−1.1(m,11H),1.17(s,9H)。
【0114】
前に与えた実施例及び製造法は本発明の化合物及びかかる化合物の製造法を更に例示する。本発明の範囲は実施例及び製造法の範囲によって決して限定されないことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式中、R1は適当な窒素保護基でありそしてR2はHであるか、又はR1はR2と共に適当な窒素保護基を形成し、そしてR3はチオアルキル又はチオアリールである)を有する化合物。
【請求項2】
【化2】

から成る群から選ばれる請求項1記載の化合物。
【請求項3】
【化3】

から成る群から選ばれる請求項1記載の化合物。
【請求項4】
式:
【化4】

(式中、R1は適当な窒素保護基でありそしてR2はHであるか、又はR1はR2と共に適当な窒素保護基を形成し、そしてR3はチオアルキル又はチオアリールである)を有する化合物。
【請求項5】
式:
【化5】

を有する請求項4記載の化合物。
【請求項6】
式:
【化6】

を有する請求項4記載の化合物。
【請求項7】
式:
【化7】

(式中、R3はアルキルチオ又はアリールチオである)を有する化合物。
【請求項8】
式:
【化8】

を有する請求項7記載の化合物。
【請求項9】
式4又は5:
【化9】

で表わされる化合物の立体選択的製造法であって、式1:
【化10】

(式中、R1は適当な窒素保護基でありそしてR2はHであるか、又はR1はR2と共に適当な窒素保護基を形成し、そしてR3はアルキルチオ又はアリールチオである)の化合物を、K2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2のオスミウム含有酸化試薬の組合せで、キラル補助試薬としてDHQD2PHALの存在下で処理して、式4又は5で表される化合物を得ることを含む上記製造法。
【請求項10】
式8;
【化11】

で表わされる化合物の製造法であって、下記のステップ:
a)ヒドロキシ−ブテン6:
【化12】

をメタンスルホニルクロリドで、アミン塩基の存在下で極性非プロトン性溶媒中で処理してブテン−メシラート7a:
【化13】

を得る段階、及び
b)ブテン−メシラート7aをチオフェノキシド(ここで該チオフェノキシドはチオフェノールと非求核性塩基を極性非プロトン性溶媒中で用いてその場で形成される)で処理してチオフェノール−ブテン8:
【化14】

を得る段階
を含む上記製造法。
【請求項11】
式8:
【化15】

の化合物を式9又は式10:
【化16】

の化合物に立体選択的に変換する方法であって、式8の化合物をK2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2のオスミウム含有酸化試薬の組合せで、キラル補助試薬としてのDHQD2PHALの存在下で処理して、式9又は式10で表される化合物を得ることを含む上記方法。
【請求項12】
式8:
【化17】

の化合物を式11又は式12:
【化18】

の化合物に立体選択的に変換する方法であって、下記のステップ:
a)チオフェニル−ブテン8をオスミウム含有酸化試薬の組合せK2OsO2(OH)4/K3Fe(CN)6、K2CO3、NaHCO3及びCH3SO2NH2で、キラル補助試薬としてのDHQD2PHALの存在下で処理して、1,2(S)−ジヒドロキシ−3(R)フタルイミド−4−(フェニルチオ)−ブタン9:
【化19】

を得、そして
b)1,2(S)−ジヒドロキシ−3(R)フタルイミド−4−(フェニルチオ)−ブタン9を処理してフタルイミドアミノ保護基を除去して(ここで該処理は該ブタン化合物の3−アミノ又は2−ヒドロキシル中心でのラセミ化を引き起こさない)式11又は12で表わされるジヒドロキシ−アミノ−ブタン化合物を得る
を含む上記方法。
【請求項13】
式16:
【化20】

で表わされる化合物の製造法であって、下記のステップ:
a)(2S,3R)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4−フェニルチオ−1−ブテンオキシド15:
【化21】

及び(3S,4aS,8aS)−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸t−ブチルアミドを含むイソプロピルアルコール溶液を加熱し;
b)2N水酸化カリウム水溶液を添加し;
c)トルエンを添加しそして水及び1N塩酸で洗い;
d)抽出し、そして水性層を合わせ;そして
e)抽出された生成物を乾燥して(3S,4aS,8aS)−2−((2R,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルチオブチル)−デカヒドロイソキナリン−3−カルボン酸t−ブチルアミド16を得る
を含む上記製造法。
【請求項14】
1がアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アリールアルコキシカルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ベンジル又はアリールアルキルであり、そしてR2がHである、請求項1、2、4又は5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項15】
1とR2が、それらが結合する窒素と共にフタルイミド、スクシンイミド又はジホルミル部分を形成する、請求項1、2、4又は5のいずれか1項記載の化合物。


【公表番号】特表2006−525307(P2006−525307A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506570(P2006−506570)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001380
【国際公開番号】WO2004/099129
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(503053011)ファイザー インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】