HIVの侵入を阻害するための二機能性分子
HIVの標的細胞への侵入を阻害する、二機能性分子が本明細書中で開示される。非Bおよび多剤耐性株を含むHIVに感染した患者の治療のための、新規抗HIV治療薬も開示される。1つの実施態様において、柔軟なリンカーに連結した、ポケット結合ドメインおよび7アミノ酸繰り返し(HR)結合ドメインを含む最初のC末端7アミノ酸繰り返し(CHR)ペプチドを含み、次にHR結合ドメインおよびトリプトファンリッチドメインを含む2番目のCHRペプチドに連結する、二機能性分子が本明細書中で開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本発明は、米国特許法§119(e)の下、2008年5月28日に出願された米国仮特許出願第61/056,580号の利益を主張し、この出願の全内容は、本明細書中において参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、抗ウイルス薬の分野に関連する。特に、本開示は、ヒト免疫不全ウイルスの標的細胞への侵入を阻害する、二機能性分子を含む抗ウイルス薬に関連する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
2007年の終わりまでに、世界中で約3320万人の人々が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染して生きており、そして2500万人を超える人々が、後天性免疫不全症候群(AIDS)のために死亡した。従って、HIV感染に対する新しい治療戦略を発見および開発することが、緊急に必要である。今までのところ、15個の逆転写酵素阻害剤(RTI)、10個のプロテアーゼ阻害剤(PI)、1つのインテグラーゼ阻害剤(II)、および2つの侵入阻害剤(EI)を含む、HIVに感染した人々を治療するための28個の抗HIV薬が米国食品医薬品局によって認可された。RTI、PI、およびIIは全て、ウイルスが宿主細胞へ入った後にHIVの複製を阻害するが、2つのEIは、宿主細胞へのHIVの侵入を阻害し得る。
【0004】
HIVの侵入は、外被糖タンパク質(Env)表面サブユニットgp120の、標的細胞上の一次受容体CD4への結合、および次いでケモカイン受容体(CCR5またはCXCR4)への結合によって開始される。これらの相互作用は、gp41の構造的再編成を引き起こし、安定なgp41の6ヘリックス束(6−HB)コア構造の形成を引き起こし、それはウイルスおよび標的細胞膜の両方を融合のために近接させる。6−HBにおいて、3つのN末端7アミノ酸繰り返し(NHRまたはHR1)が会合して中央の三量体コイルドコイルを形成し、一方3つのC末端7アミノ酸繰り返し(CHRまたはHR2)が、NHR三量体の表面の高度に保存された疎水性の溝に、逆平行の様式で斜めに包まれる。各溝において、NHR領域に、ポケット形成配列(残基565−581)によって形成される、高度に保存された疎水性の深いポケットが存在する。このポケットが、ウイルスの融合、および6−HBの安定性の維持に決定的な役割を果たす。
【0005】
FDAに認可されたEIの1つは、T20(一般名:エンフビルチド、商標名:Fuzeon(登録商標)[Trimeris])と命名された、HIV−1 gp41CHR配列(aa638−673)に基づいてデザインされた合成ペプチドである。T20は、HR(7アミノ酸繰り返し)結合ドメイン(HBD)およびトリプトファン−リッチドメイン(TRD)を含み(図1)、それを通してT20はHR配列、特にNHRのGIVモチーフ、および標的細胞膜にそれぞれ結合して、HIVの標的細胞との融合およびそれへの侵入を阻害し得る。
【0006】
T20治療患者における、T20耐性ウイルスの急速な出現のために、T20の臨床的な適用は制限される。インビトロおよびインビボの両方の研究は、T20耐性が、gp41NHRドメインのGIVおよび隣接する領域(aa36−45)における、単一のまたは二重の変異と関連する(例えばG36D、I37V、V38A、V38E、V38M、N42D、N42S、およびN43D)ことを示した。なぜなら、この領域はgp41の主な結合部位であり、そしてこれらの変異はT20のウイルスgp41NHR領域への結合に影響を与えるからである。T20の、NHRドメインのHR配列への結合は、ウイルスgp41CHRとNHR領域との間の相互作用と競合するほど十分には強力ではないので、T20は、ウイルスgp41NHR領域との相互作用を安定化するために、そのC末端TRDを、標的細胞膜と相互作用するために使用しなければならない。抗HIV薬としてのT20ペプチドの別の弱点は、高い投与量(90mg/投薬)で1日2回注射によって投与しなければならず、ほとんどの患者において有痛性の注射部位反応を引き起こすことである。さらに、ペプチド合成の高い生産コストのために、T20は、特に発展途上国において、使用するためには非常に高価である。
【0007】
C38は、HIV−1 gp41 CHR領域のaa626−673由来の38マーのペプチドである。それは、ポケット結合ドメイン(PBD)およびHBDを含み(図1)、それによってC38は、ウイルスgp41 NHR領域のポケット形成配列およびHR配列に結合して、安定な異種の6−HBを形成し、そして融合活性gp41コア形成を阻害する。これは、HIVの宿主細胞との融合、およびそれへの侵入の阻害を引き起こす。C38の主な結合部位は、aa36−45領域ではなくポケット形成配列であるので、gp41NHRドメインT1144におけるGIVモチーフおよび隣接する領域の変異は、C38の結合に重大な影響を与えない。従って、aa36−45に変異を有するウイルスは、T20に対して耐性であるが、C38に対して感受性である。
【0008】
T1144も、PBDおよびHBDを含む38マーのペプチドである(図1)。αヘリックス性および6−HBの安定性を増加させるために、および薬物動態学的性質を改善するために、C38のアミノ酸配列を改変することによって、それをデザインした。C38と同様、T1144は、T20に対して耐性であるものを含めて、HIV−1のR5およびX4株の両方に対して、T20よりもはるかに有効である。
【0009】
1つの最近の研究が、PBDnを含むCHRペプチド(例えばC34、C38、T1144)およびPBDを欠くCHRペプチド(例えばT20)の組み合わせが、T20感受性および耐性ウイルスの両方に対して、強力な相乗効果を示すことを示した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
標的細胞へのHIVの侵入を阻害する二機能性分子が、本明細書中で開示される。現在の抗HIV薬と異なる作用メカニズムによって、これらの分子を、非Bおよび多剤耐性株を含む、HIVに感染した患者の治療のための治療薬として使用し得る。
【0011】
T20および他の抗レトロウイルス薬に耐性のものを含む、HIV−1株による感染を治療および予防するための、組換えHIV侵入阻害剤として、二機能性分子をデザインし、そしてE.coliにおいて発現した。二機能性分子はそれぞれ、ポケット結合ドメインおよびHR結合ドメインを含むCHRペプチド、リンカー、およびHR結合配列およびトリプトファンリッチドメインから成るCHRペプチドを含む。合成CHRペプチドと比較して、TLT−1に基づく二機能性分子は、以下の利点を有する:i)それらは、より強力な抗HIV活性を有する;ii)それらは、T20耐性ウイルスに対してより有効である;iii)それらを、大量にE.coli発現システムにおいて発現し得、従ってはるかに低い生産コストを有する;iv)それらは、タンパク質分解酵素に対してより感受性が低い;v)それらは、生物学的溶液中でより安定である;およびvi)それらはより強力にNHRペプチドに結合して、高度に安定な6−HBを形成する。
【0012】
1つの実施態様において、柔軟なリンカーに連結した、ポケット結合ドメインおよび7アミノ酸繰り返し(HR)結合ドメインを含む最初のC末端7アミノ酸繰り返し(CHR)ペプチドを含み、次にHR結合ドメインおよびトリプトファンリッチドメインを含む2番目のCHRペプチドに連結する、二機能性分子が本明細書中で開示される。
【0013】
別の実施態様において、最初のCHRペプチドは、C34(配列番号11)、C36(配列番号12)、C38(配列番号3)、C46(配列番号13)、T1144(配列番号4)、T1144−C10(配列番号5)、シフビルチド(配列番号14)、C35−EK(配列番号15)、CP621−652(配列番号16)、CP32M(配列番号17)、T1249(配列番号18)、PBD−4HR(配列番号19)、およびC36B(配列番号20)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
別の実施態様において、2番目のCHRペプチドは、T20(配列番号2)、T20−A(配列番号22)、および4HR−LBD(配列番号23)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
別の実施態様において、柔軟なリンカーは、アミノ酸配列(GGGGS)nを含み、ここでnは2および8の間の整数である。
【0016】
さらに別の実施態様において、その二機能性分子はさらに、二機能性分子のC末端において、アミノ酸配列YSSGRIVTD(配列番号53)またはNSSGRIVTD(配列番号42)を含む。
【0017】
さらに別の実施態様において、その二機能性分子は、
【0018】
【化1】
のアミノ酸配列を含む。
【0019】
さらに別の実施態様において、その二機能性分子は、
【0020】
【化2】
のアミノ酸配列を含む。
【0021】
さらに別の実施態様において、その二機能性分子は、
【0022】
【化3】
のアミノ酸配列を含む。
【0023】
別の実施態様において、その二機能性分子を、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳類細胞から成る群から選択される発現システムにおいて、組換えDNA技術によって産生する。1つの実施態様において、その二機能性分子を、Escherichia coliにおいて産生する。
【0024】
別の実施態様において、その二機能性分子を、固体において、または溶液において合成する。さらに別の実施態様において、その二機能性分子を、数個の別々のセグメントとして合成し、そして次いで共に結合する。
【0025】
本明細書中で開示された二機能性分子を、ヒト免疫不全ウイルスに感染した個体に投与する工程;ウイルスの標的細胞への侵入を阻害する工程、および標的細胞のウイルスによる感染を阻害する工程を含む、ヒト免疫不全ウイルス感染を治療する方法も、本明細書中で提供される。
【0026】
本明細書中で開示された二機能性分子を、ヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクのある個体に投与する工程;ウイルスの標的細胞への侵入を阻害する工程;および標的細胞のウイルスによる感染を阻害する工程を含む、ヒト免疫不全ウイルスによる感染を予防する方法も、本明細書中で提供される。
【0027】
別の実施態様において、柔軟なリンカーに連結した、ポケット結合ドメインおよび7アミノ酸繰り返し(HR)結合ドメインを含む最初のC末端7アミノ酸繰り返し(CHR)ペプチドを含み、次にHR結合ドメインおよびトリプトファンリッチドメインを含む2番目のCHRペプチドに連結する二機能性分子を含む、医薬組成物が提供される。別の実施態様において、その医薬組成物は、二機能性分子に加えて、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む。
【0028】
さらに別の実施態様において、その医薬組成物は、複数の本明細書中で開示された二機能性分子を含む。別の実施態様において、その医薬組成物はさらに、少なくとも1つのさらなる抗ウイルス薬を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、二機能性HIV侵入阻害剤のデザイン、HIV−1HXB2gp41分子の概略図および代表的なHIV侵入阻害剤の配列を示す。FP、融合ペプチド;NHR、N末端7アミノ酸繰り返し;CHR、C末端7アミノ酸繰り返し;TR、トリプトファンリッチドメイン;TM、膜貫通ドメイン;CP、細胞質ドメイン。CHRペプチドのPBD(ポケット結合ドメイン)、HBD(7アミノ酸繰り返し結合ドメイン)、およびTRD(トリプトファンリッチドメイン)を、それぞれ太字、イタリック体、および下線で強調する。NHRの7アミノ酸繰り返し(HR)配列、GIVモチーフ(T20耐性の決定因子)およびポケット形成配列を、それぞれ下線、太字、およびイタリック体で強調する。
【図2】図2は、NHRおよびCHRペプチドの間の相互作用を示す。NHRドメインおよびCHRドメイン間の線は、それぞれNHRおよびCHRのe、gおよびa、d位置に位置する残基間の相互作用を示す。PBDおよびポケット形成配列の間の相互作用が、6ヘリックス束(6−HB)の安定化に決定的である。
【図3】図3は、精製したHIV侵入阻害剤のSDS−PAGE分析を示す。
【図4】図4は、色素転移アッセイによって決定した、HIV−1媒介の細胞−細胞融合の、HIV侵入阻害剤による阻害を示す。
【図5】図5は、p24アッセイによって決定された、MT−2細胞における研究室適応HIV−1 IIIB株(サブタイプB、X4)による感染の、HIV侵入阻害剤による阻害を示す。
【図6】図6は、一次HIV−1分離株(isolate)による感染の、HIV侵入阻害剤による阻害を示す。図6A−p24アッセイによって決定された、PBMCにおける一次HIV−1 92US657(サブタイプB、R5)による感染の阻害。図6B−p24アッセイによって決定された、PBMCにおける一次HIV−1分離株93IN101(サブタイプC、R5)による感染の阻害。
【図7】図7は、T20耐性HIV−1株、NL4−3V38A/N42Gによる感染の、HIV侵入阻害剤による阻害を示す。
【図8】図8は、ヒト血清(図8A)およびPBMC培養物(図8B)における、TLT−1の安定性を示す。
【図9】図9は、タンパク質分解酵素プロテイナーゼK(図9A)およびトリプシン(図9B)に対するTLT−1の感受性を示す。各サンプルを3組試験した。各実験を少なくとも1回繰り返し、そして代表的なデータのセットを、平均値±SDで示す。
【図10】図10は、円二色性(CD)によって決定された、TLT−1の2次構造、およびそのNHRペプチドと6−HBを形成する能力を示す。図10A−T1144、T20、およびTLT−1のCDスペクトル。図10B−N46、N46+T1144、N46+T20、N46+TLT−1のCDスペクトル。
【図11】図11は、N36との6−HBの形成に関する、TLT−1のnative PAGE(N−PAGE)分析を示す。
【図12】図12は、FN−PAGE分析による、6−HB形成に対するTLT−1の阻害効果(図12A)およびFN−PAGEゲルのクーマシーブルー染色(図12B)を示す。
【図13】図13Aは、TLT−1が、動物において高い力価の抗TLT−1抗体を誘導しなかったことを示す。図13Bは、TLT−1の抗HIV−1活性が、TLT−1を投与したマウスにおいて誘導される抗体によって阻害され得なかったことを示す。
【図14】図14は、HIV侵入阻害剤の推定相互作用モデルを示す。T20成分およびT1144成分は、別々のおよび相補的な機能ドメインを含む。T1144は、そのHBDおよびPBDによって、NHRドメイン中のHR配列およびポケット形成配列にそれぞれ結合して、安定な異種の6−HBを形成する。T20は、そのHBDおよびTRDによって、NHRのHR配列および脂質膜または融合脂質とそれぞれ相互作用する。TLT二機能性HIV侵入阻害剤は、以下のものを含むがこれに限らない、gp41NHRおよび脂質膜による4つの可能性のある相互作用モデルを有する:TLTは、T20成分およびT1144成分の両方で三量体の2つの溝を占めることによって、1つのNHR三量体と相互作用し得る(モデルI);TLTは、T20成分およびT1144成分の両方で、各三量体の1つの溝を占めることによって、2つのNHR三量体と相互作用し得る(モデルII);TLTは、T1144成分(モデルIII)またはT20成分(モデルIV)のいずれかで、1つの溝を占めることによって、1つのNHR三量体と相互作用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
(i)それぞれウイルスgp41NHR領域のポケット形成配列およびHR配列に結合する、ポケット結合ドメイン(PBD)および7アミノ酸繰り返し(HR)結合ドメイン(HBD)を含むC末端7アミノ酸繰り返し(CHR)ペプチド;(ii)それぞれウイルスgp41NHR領域のHR配列および標的細胞の脂質膜に結合する、HBDおよびトリプトファンリッチドメイン(TRD)を含むCHRペプチド;および(iii)これら2つの機能的ドメインが自由に動いて、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはHIV感染細胞上の対応する標的タンパク質に結合し得るように、2つのCHRペプチドを連結する、10から40アミノ酸から成る柔軟なリンカーから成る、二機能性(キメラ)分子が、本明細書中で提示される。その二機能性分子を、E.coli細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳類細胞において発現し、クロマトグラフィーによって精製し、そしてHIVによる細胞−細胞融合およびHIV複製に対するその阻害活性に関して試験する。
【0031】
【表1】
異なる機能的ドメインを含む2つのCHRペプチドを連結することによって、様々な二機能性タンパク質をデザインした。その二機能性侵入阻害剤は、100を超えるアミノ酸残基を含み、そして従って組換えタンパク質としての産生に適当であり、そして従ってペプチド合成の高いコストを回避する。
【0032】
代表的な二機能性HIV侵入阻害剤TLT−1(配列番号6)は、2つのCHRペプチド、T1144(配列番号4)およびT20(配列番号2)から成る。どちらもgp41NHRを標的とするが、異なる、および相補的な機能的ドメインを有する:T1144はPBDおよびHBDを含み、それによってT1144はウイルスgp41NHR領域のポケット形成配列およびHR配列にそれぞれ結合し、一方T20はHBDおよびTRDを含み、それによってT20はウイルスgp41NHR領域のHR配列および標的細胞の脂質膜とそれぞれ相互作用する。この方法において、TLT−1はgp41NHRの溝、深いポケット、および脂質膜と同時に相互作用して、融合コアの形成を防止する。
【0033】
35マーのリンカーは、図14で示した複数のモデルの少なくとも1つによって、TLT−1のNHRおよび脂質膜との相互作用のためのスペースを提供する。これらのモデルは、(i)T20成分およびT1144成分の両方で三量体の2つの溝を占めることによる、1つのNHR三量体との相互作用(モデルI);(ii)T20成分およびT1144成分の両方で、各三量体の1つの溝を占めることによる、2つのNHR三量体との相互作用;(iii)T1144成分(モデルIII)またはT20成分(モデルIV)のいずれかで、1つの溝を占めることによる、1つのNHR三量体との相互作用を含むがこれに限らない。TLT−1の2つの成分は、機能的に同等でなくてよい。例えば、T1144は、NHRに対してT20より強力に結合する。従って、これらの相互作用モデルの1つが、他を支配し得る。
【0034】
TLT−1を、高い収率で、E.coliにおいてうまく発現し、そして高いαヘリックス含有量で安定な構造へフォールディングした。TLT−1はN46ペプチドと緊密に結合し、そして高度に熱安定性の複合体を形成する。よって、TLT−1は6−HBの形成を強力に阻害し、そしてHIV−1 gp41による細胞−細胞融合に対して高度に活性である。
【0035】
TLT−1はまた、様々なHIV−1株、特にT−20耐性HIV−1株による感染に対して、低いnMの活性を実証した。
【0036】
TLT−1は、ヒト血清において、および末梢血単核球(PBMC)の存在下で安定であり、そしてT20またはT1144いずれか単独よりも、タンパク質分解に対して耐性である。高い安定性は、より長い半減期を示唆し、そして従ってこの二機能性分子は、より低い投与量において、およびより少ない投与頻度で有用であることが予測される。組換えタンパク質の産生は、合成ペプチドよりもスケールアップが容易であり、TLT−1の生産コストはT20およびT1144よりも非常に低いものであり得ることが示唆される。T20耐性株を含む様々なHIV−1株に対する低nM活性は、TLT−1は、T20治療が有効でなかった患者に対する臨床試験に適当であることを示唆する。TLT−1の投与はまた、薬剤耐性株の出現を遅らせ得る。高い抗レトロウイルスプロファイルは、TLT−1が新世代のHIV侵入阻害剤への開発に有望なものであることを示唆する。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
開示された分子のアミノ酸残基は、保存的な天然アミノ酸の置換を含む。例えば、タンパク質またはペプチドの一次配列は変化するが、通常その機能は変化しない、保存的アミノ酸置換がなされ得る。保存的アミノ酸置換は、典型的には以下のグループ内の置換を含む:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシンおよびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリンおよびスレオニン;リシンおよびアルギニン;およびフェニルアラニンおよびチロシン。
【0039】
さらに、非天然アミノ酸の置換が、開示された二機能性ペプチドの範囲内である。非天然アミノ酸は、D−アミノ酸、6−アミノヘキサン酸、H−3−ニトロ−Tyr−OH、1−(Fmoc−アミノ)−シクロペンタンカルボン酸、4−アミノ−ピペリジン−4−カルボン酸、11−(Boc−アミノ)−ウンデカン酸、7−アミノ−4−メチルクマリン、1−Boc−4−(Fmoc−アミノ)−ピペリジン−4−カルボン酸、1−Fmoc−4−(Fmoc−アミノ)−ピペリジン−4−カルボン酸、(RS)−3−アミノ−3−(3−ピリジル)−プロピオン酸、Bpoc−Ala−OH、H−Homoarg−OH、3−マレイミド−プロピオン酸、Fmoc−4−(ネオペンチルオキシスルホニル)−Abu−OH、Boc−α−アミノ−DL−Gly(Fmoc)−OH、Fmoc−α−アリル−DL−Gly−OH、Boc−Homocys(Trt)−OH、Boc−D−Homocys(Trt)−OH、Boc−Homophe−OH、H−Homophe−OH、H−DL−Isoser−OH、4−アミノ−3−(2,2−ジメトキシ−エチル)−フェノール、Fmoc−α−アミノ−D−Gly(Boc)−OH、H−D−Pra−OH、Fmoc−Aib−OH、スタチンBoc−フェニルスタチン、H−Ser(Bzl)−OH、H−Cys(Bzl)−OH、およびFmoc−N−Me−Val−OHを含むが、これに限らない。
【0040】
本明細書中で開示される1つの実施態様において、ポケット結合ドメインは、HIV−1株HXB−2のgp41のCHR領域のアミノ酸628−635(WMEWDREI;配列番号9)を含む。他の実施態様において、PBDは、任意のHIV−1株、任意のHIV−2株、または任意のサル免疫不全ウイルス(SIV)株のGP41のCHR領域の対応するアミノ酸を含む。別の実施態様において、PBDの1から3つの残基が、他の天然アミノ酸で置換される。さらに別の実施態様において、PBDの1から3つの残基が、非天然アミノ酸で置換される。
【0041】
本明細書中で開示される1つの実施態様において、HR結合ドメインは、HIV−1株HXB−2のgp41のCHR領域のアミノ酸636−665(NNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDK;配列番号10)を含む。他の実施態様において、HBDは、任意のHIV−1株、任意のHIV−2株、または任意のSIV株のGP41のCHR領域の対応するアミノ酸を含む。別の実施態様において、HBDの1から10個の残基が、他の天然アミノ酸で置換される。さらに別の実施態様において、HBDの1から10個の残基が、非天然アミノ酸で置換される。
【0042】
本明細書中で開示される1つの実施態様において、トリプトファンリッチドメインは、HIV−1株HXB−2のgp41のCHR領域のアミノ酸666−673(WASLWNWF;配列番号21)を含む。他の実施態様において、TRDは、任意のHIV−1株、任意のHIV−2株、または任意のSIV株のGP41のCHR領域の対応するアミノ酸を含む。別の実施態様において、TRDの1から3つの残基が、他の天然アミノ酸で置換される。さらに別の実施態様において、TRDの1から3つの残基が、非天然アミノ酸で置換される。
【0043】
本開示はまた、薬学的に許容可能な担体中に、HIVの標的細胞への侵入を阻害し得る、上記で記載した二機能性ペプチドを含む医薬組成物に向けられる。
【0044】
開示された医薬組成物の投与量および望ましい薬剤濃度は、想定される特定の使用に依存して変動し得る。適当な投与量または投与経路の決定は、通常の医師の技術の範囲内である。動物実験は、ヒト治療のための有効な用量の決定に信頼できる指針を提供する。有効な投与量の種間スケーリングを、Toxicokinetics and New Drug Development、Yacobiら編、Pergamon Press、New York 1989、42−96頁の、Mardenti,J.およびChappell,W 「The use of interspecies scaling in toxicokinetics」によって策定された原理に従って行い得る。本明細書中で使用される「治療的に有効な」量という用語は、例えば感染性疾患などの疾患の特定の治療を行うために必要な量を指す。「治療」は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)手段の両方を指し、ここでその目的は、標的となる病理学的状況または疾患を予防または遅らせる(軽減する)ことである。治療の必要がある者は、既に疾患を有する者、および疾患を有しやすい者または疾患を予防すべき者を含む。1つの実施態様において、その疾患は存在する。別の実施態様において、細胞または個体の寿命は、本明細書中で記載された方法のために延長される。
【0045】
上記で記載した化合物を、特定の適用に適するように、ヒトを含む哺乳類への投与のために、過度の実験無しに調合し得る。さらに、組成物の適当な投与量を、標準的な用量−反応プロトコールを用いて、過度の実験無しに決定し得る。
【0046】
よって、経口、鼻腔内、舌、舌下、頬側、および口腔内投与のためにデザインされた組成物を、当該分野で周知の手段によって、例えば不活性な希釈剤と共に、または薬学的に許容可能な担体と共に、過度の実験無しに作製し得る。その組成物は、ゼラチンカプセルに封入される、または錠剤に圧縮される。経口治療的投与の目的のために、その医薬組成物を、賦形剤と共に組み込んで、そして錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハ、チューインガム等の形態で使用し得る。「薬学的に許容可能な担体」は、任意の標準的な薬学的担体を意味する。適当な担体の例は、当該分野で周知であり、そしてリン酸緩衝生理的食塩水、Polysorb80を含むリン酸緩衝生理的食塩水、水、水中油型エマルションなどのエマルション、および様々な型の湿潤剤などの、任意の標準的な薬学的担体を含み得るがこれに限らない。他の担体はまた、滅菌溶液、錠剤、コーティングした錠剤、およびカプセルを含み得る。典型的には、そのような担体は、デンプン、乳、糖、ある型の粘土、ゼラチン、ステアリン酸またはその塩、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム、タルク、植物脂肪または植物油、ゴム、グリコール、または他の公知の賦形剤などの賦形剤を含む。そのような担体はまた、香味用添加物または着色用添加物または他の成分を含み得る。そのような担体を含む組成物を、周知の従来の方法によって調合する。
【0047】
錠剤、丸剤、カプセル、トローチ等も、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味料、および香味料を含み得る。結合剤のいくつかの例は、微晶性セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチンを含む。賦形剤の例は、デンプンまたはラクトースを含む。崩壊剤のいくつかの例は、アルギン酸、コーンスターチ等を含む。滑沢剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、またはステアリン酸カリウムを含む。流動促進剤の例は、コロイド性二酸化珪素である。甘味料のいくつかの例は、ショ糖、サッカリン等を含む。香味料の例は、ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジ香味料等を含む。これらの様々な組成物の調製に使用した材料は、薬学的に純粋および使用した量で無毒性であるべきである。
【0048】
その化合物を、例えば静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、または皮下注射によるように、容易に非経口投与し得る。非経口投与を、化合物を溶液または懸濁液へ組み込むことによって達成し得る。そのような溶液または懸濁液はまた、注射用水、生理的塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの、滅菌希釈剤を含み得る。非経口調合物はまた、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌薬、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、およびEDTAなどのキレート化剤も含み得る。酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの、張度を調整するための薬剤も加え得る。非経口調製物を、アンプル、使い捨てシリンジまたはガラスまたはプラスチック製の複数回投与バイアルに封入し得る。
【0049】
直腸投与は、化合物を、医薬組成物において、直腸または大腸へ投与する工程を含む。これを、坐剤、浣腸、ゲル、クリーム、錠剤等を用いて達成し得る。坐剤調合物を、当該分野で公知の方法によって容易に作製し得る。同様に、坐剤、ゲル、圧注、クリーム、錠剤、リング等を含む膣投与形態を処方し得る。その組成物は、例えば直腸内で溶解し、そして薬剤を放出する坐剤の形態で、直腸または膣投与のために意図され得る。直腸または膣投与のための組成物は、適当な非刺激性賦形剤として、油性の基剤を含み得る。そのような基剤は、制限無しに、ラノリン、カカオバター、およびポリエチレングリコールを含む。低融点ワックスが坐剤の調製のために好ましく、ここで脂肪酸グリセリドおよび/またはカカオバターの混合物が適当なワックスである。そのワックスを融解し得、そして撹拌によってシクロヘキシルアミン化合物をそこに均一に分散させる。次いで融解した均一な混合物を、簡便なサイズの型に注ぎ、冷却し、そしてそれによって凝固させる。
【0050】
局所投与のために意図された、開示された組成物は、溶液、エマルション、軟膏、クリーム、またはゲル基剤を適当に含み得る。例えばその基剤は、1つまたはそれを超える以下のものを含み得る:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱物油、水およびアルコールなどの希釈剤、および乳化剤および安定剤。局所投与のための医薬組成物に、増粘剤が存在し得る。
【0051】
経皮投与は、皮膚を通した組成物の経皮的吸収を含む。経皮処方物は、パッチ、イオントフォレシスデバイス、軟膏、クリーム、ゲル、膏薬等を含む。
【0052】
その組成物は、固体投薬単位または液体投薬単位の物理的形態を改変する、様々な物質を含み得る。例えば、その組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する物質を含み得る。コーティングシェルを形成する物質は、典型的には不活性であり、そして例えば糖、セラック、および他の腸溶性コーティング剤から選択され得る。あるいは、その活性成分を、ゼラチンカプセルまたはカシェ剤に包み得る。
【0053】
本開示の二機能性分子組成物を、適当な投薬レジメによって、治療的に有効な量で投与し得る。当業者によって理解されるように、必要な正確な量は、被験体の種、年齢および一般的な状況、感染の重症度、特定の薬剤(単数または複数)および投与の様式に依存して被験体ごとに変動し得る。いくつかの実施態様において、被験体の体重に基づいて、約0.001mg/kgから約50mg/kgの組成物を、1日1回またはそれを超えて投与して、望ましい治療的効果を得る。他の実施態様において、被験体の体重に基づいて、約1mg/kgから約25mg/kgの組成物を、1日1回またはそれを超えて投与して、望ましい治療的効果を得る。
【0054】
組成物の1日投与量全量を、確かな医学的判断の範囲内で、主治医が決定する。任意の特定の患者または被験体に関する、特定の治療的に有効な投与量レベルは、治療する疾患およびその疾患の重症度;採用された特定の化合物の活性;採用された特定の組成物;患者または被験体の年齢、体重、一般的な健康、性別および食事;採用された特定の化合物の投与時間、投与経路、および排泄速度;治療の期間;採用された特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用される薬剤;および医学的分野において周知の他の因子を含む、様々な因子に依存する。
【0055】
開示された組成物をまた、併用療法においても採用し得る。すなわち、現在開示されている組成物を、1つまたはそれを超える他の望ましい組成物、治療薬、処置、または医学的手順と同時に、その前に、またはそれに続いて投与し得る。投与される治療薬の特定の組み合わせは、主治医によって決定され、そして処置の適合性および達成される望ましい治療的効果を考慮する。組み合わせて利用される治療的に活性な薬剤を、単一の組成物、処置、または手順で一緒に投与し得る、またはあるいは、別々に投与し得ることが認識される。
【0056】
例えば、開示された組成物を、例えば1つまたはそれを超えるヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤(PI)、融合阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、ケモカイン受容体(CXCR4、CCR5)阻害剤、および/またはヒドロキシウレアを含むがこれに限らない、1つまたはそれを超える他のHIV阻害剤と組み合わせて投与し得る。
【0057】
ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は、アバカビル(ABC;Ziagen(登録商標))、ジダノシン(ジデオキシイノシン(ddI);Videx(登録商標))、ラミブジン(3TC;Epivir(登録商標))、スタブジン(d4T;Zerit(登録商標)、Zerit XR(登録商標))、ザルシタビン(ジデオキシシチジン(ddC);Hivid(登録商標))、ジドブジン(ZDV、以前はアジドチミジン(AZT)として公知であった;Retrovir(登録商標))、アバカビル、ジドブジン、およびラミブジン(Trizivir(登録商標))、ジドブジンおよびラミブジン(Combivir(登録商標))、およびエムトリシタビン(Emtriva(登録商標))を含むがこれに限らない。ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤は、テノホビルジソプロキシルフマレート(Viread(登録商標))を含む。HIVに対する非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は、ネビラピン(Viramune(登録商標))、メシル酸デラビルジン(Rescriptor(登録商標))およびエファビレンツ(Sustiva(登録商標))を含むがこれに限らない。
【0058】
プロテアーゼ阻害剤(PI)は、アンプレナビル(Agenerase(登録商標))、メシル酸サキナビル(Fortovase(登録商標)、Invirase(登録商標))、リトナビル(Norvir(登録商標))、硫酸インジナビル(Crixivan(登録商標))、メシル酸ネルフィナビル(nelfmavir mesylate)(Viracept(登録商標))、ロピナビルおよびリトナビル(Kaletra(登録商標))、アタザナビル(Reyataz(登録商標))、およびホスアンプレナビル(Lexiva(登録商標))を含む。アタザナビルおよびホスアンプレナビル(Lexiva)は、HIV−1感染の治療のために、米国食品医薬品局によって最近認可された、新しいプロテアーゼ阻害剤である(atazanavir(Reyataz) and emtricitabine(Emtriva) for HIV infection、Medical Letter on Drugs and Therapeutics、www.medletter.comからオンラインで入手可能;U.S.Department of Health and Human Services(2003)、Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV−infected Adults and Adolescents;aidsinfo.nih.gov/guidelinesからオンラインで入手可能、を参照のこと)。
【0059】
融合/侵入阻害剤は、CD4+細胞(白血球の型)の外側またはCCR5およびCXCR4などの共受容体、またはgp41およびgp120などのウイルス膜タンパク質へ結合する。融合/侵入阻害剤は、ウイルスおよび細胞の間の融合が起こること、またはウイルスの細胞への侵入を予防し、そして従って、HIV感染および増殖を予防する。融合/侵入阻害剤は、エンフビルチド(Fuzeon(登録商標))およびマラビロク(Selzentry(登録商標)、Pfizer)を含むがこれに限らない。
【0060】
インテグラーゼ阻害剤は、インテグラーゼの作用を阻害し、HIV−1の遺伝物質が、宿主DNAへ組み込まれるのを防止し、そしてそれによってウイルスの複製を停止する。インテグラーゼ阻害剤は、ラルテグラビル(Isentress(登録商標)、Merck);およびエルビテグラビル(GS9137、Gilead Sciences)を含むがこれに限らない。
【0061】
あるいはまたはさらに、本明細書中で開示された組成物を、1つまたはそれを超える感染症治療薬(例えば抗生物質等)、鎮痛薬、または免疫無防備状態の個体において通常見出されるが、HIVによって直接引き起こされるのではない、1つまたはそれを超える疾患、障害、または状態の症状に取り組むことを意図した他の薬剤と組み合わせて投与し得る。
【実施例】
【0062】
開示された二機能性分子の実施態様を実証するために、以下の実施例が含まれる。以下の実施例で開示される技術は、発明者らによって、本開示の実施においてよく機能することが発見された技術を示し、そして従ってその実施のための好ましい様式を構成すると考え得ることが、当業者によって認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示を考慮して、開示された特定の実施態様において、多くの変更をなし得、そして依然として本発明の精神および範囲から離れることなく同様のまたは類似の結果を得ることを認識するべきである。
【0063】
実施例1
二機能性分子TLT−1の発現、精製、および特徴付け
典型的な二機能性分子TLT−1のための発現プラスミドを創製するために、pTLT−1、T1144をコードするDNA断片、35マーのリンカー(GGGGS)7、およびT20を、3段階のオーバーラップPCRによっていっしょに連結した。まず、T1144、L35、およびT20 DNA断片を、表4で記載したような対応するプライマーペアを用いたオーバーラップPCRによって産生した。2番目に、L35およびT20をコードするDNA断片を、プライマーFL35およびプライマーRT20を用いるオーバーラップPCRによって連結した。3番目に、T1144およびL35−T20をコードする2つのDNA断片を、プライマーFT1144およびRT20を用いるオーバーラップPCRによって連結した。最後に、T1144−L35−T20をコードする増幅DNA断片を、BamHIおよびXhoIによって消化し、そして発現ベクターpGEX−6p−1へ挿入して、pTLT−1プラスミドを産生した。
【0064】
【表4】
TLT−1融合ペプチドを発現するために、E.coli株Rosetta2(DE3)pLysS(Novagen)を、pTLT−1で形質転換し、37℃でOD600=0.4になるまで培養し、次いで4時間誘導した。細胞を回収し、そしてプロテアーゼ阻害剤混合物(Roche)の存在下で、超音波処理によって溶解した。遠心後、TLT−1−GST融合タンパク質を含む上清を回収した。次いで、TLT−1−GSTを、グルタチオン−セファロース4Bアフィニティーカラムを用いて精製し、そしてPreScissionTMプロテアーゼ(GE Healthcare)で切断して、GSTから二機能性タンパク質を放出した。次いでその二機能性タンパク質を、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)によって精製し、そしてSDS−PAGEによって分析した。
【0065】
典型的な二機能性分子であるTLT−1は、38マーのT1144(TTWEAWDRAIAEYAARIEALLRALQEQQEKNEAALREL;配列番号4)、35マーのリンカー[(GGGGS)7;配列番号40]、および36マーのT20(YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF;配列番号2)から成っていた。できたベクターの配列決定は、3つの異なるベクターが産生されたことを示した。3つは全て、N末端に5つの付加的アミノ酸残基(GPLGS)を有していた。2つのプラスミドは、そのタンパク質配列がまた、C末端に9つの付加的アミノ酸残基(YSSGRIVTD[配列番号53]またはNSSGRIVTD[配列番号42])を有することを示した。1つのプラスミドは、C末端に付加的な9つの付加的アミノ酸残基を有していなかったが、予測される35マーのリンカーではなく、30マーのリンカー(配列番号39)を含んでいた。これらの3つのプラスミドは、E.coliにおいて、異なる発現効率を実証する、すなわち30マーのリンカーと共にTLT−1遺伝子を有するベクターは、細菌においてあまり発現せず、一方C末端に9つのさらなるアミノ酸を有する他の2つは、よりよく発現した。YSSGRIVTDを有するプラスミドを、さらなる研究のために代表的な二機能性分子として選択した。精製二機能性ペプチドは、SDS−PAGEによって約12kDの分子量を実証した(図3)。
【0066】
実施例2
TLT−1の抗HIV活性
TLT−1は、実験室適応HIV−1株および一次HIV−1株によるHIV−1媒介の細胞−細胞融合および感染の阻害において、高度に活性であった。
【0067】
HIV−1媒介の細胞−細胞融合を、エフェクター細胞としてCalcein AM−標識HIV−1 IIIBを慢性的に感染させたH9(H9/HIV−1 IIIB)細胞、および標的細胞としてMT−2細胞を使用した、色素移行アッセイ(Lu Hら、J Virol Methods 107:155−161、2003)によって決定した。キメラによる細胞−細胞融合の阻害パーセントを計算し、そして50%阻害濃度(IC50)を、CalcuSynソフトウェアを用いて計算した。図4および表5において示すように、TLT−1は、HIV−1媒介の細胞−細胞融合の阻害において、低nMレベルのIC50で高度に有効であり、T20より優れ、そして現在最も強力なHIV−1融合阻害剤であるT1144とほとんど同等であった。
【0068】
HIV−1 IIIB感染に対する二機能性分子の阻害活性を、p24産生に関するELISAによって決定した(Jiang Sら、J Exp Med 174:1557−1563、1991)。簡単には、連続的な2倍希釈の抗原特異的抗血清またはIgG抗体の存在下または非存在下で、10%FBSを含むRPMI1640培地中で、MT−2細胞を、100TCID50(50%組織培養物感染量)で、37℃で一晩HIV−1IIIBに感染させた。次いで培養上清を除去し、そして新しい培地を加えた。感染後4日目に、培養上清を回収し、そしてp24タンパク質ELISAにおける検出のために、等容量の5%Triton X−100と混合した。TLT−1はまた、HIV−1 IIIBの感染の阻害において、11nMのIC50で高度に強力であり、T20の6倍を超えて優れていた(図5および表5)。
【0069】
【表5】
一次HIV−1分離株92US657(サブタイプB、X5)および93IN101(サブタイプC、X5)による感染に対する二機能性分子の阻害活性を決定した(Jiang Sら、Antimicrob Agents Chemother 48:4349−4359、2004)。簡単には、末梢血単核球(PBMC)を、標準的な密度勾配(Histopaque−1077、Sigma)遠心分離を用いて、健康なドナーの血液から単離した。37℃で2時間インキュベートした後、非接着性細胞を回収し、そして10%FBS、5μgのフィトヘマグルチニン(PHA)/ml、および100UのIL−2/mlを含むRPMI 1640培地に5×105/mlで再懸濁し、続いて37℃で3日間インキュベートした。PHA刺激細胞に、連続2倍希釈の抗血清の非存在下または存在下で、対応する一次HIV−1分離株を、0.01の感染多重度(MOI)で感染させた。感染7日後に上清を回収し、そして上記で記載したように、ELISAによってp24抗原に関して試験した。上記で記載したように、CalcuSynソフトウェアを用いてIC50を計算した。図6および表5に示すように、TLT−1は、一次HIV−1分離株92US657および93IN101両方による感染を、低nMレベルのIC50で、用量依存性の様式(manor)で顕著に阻害した。
【0070】
HIV−1 NL4−3V38E/N42S(T20耐性変異体)による感染に対する二機能性分子の阻害活性を、ルシフェラーゼ活性によって決定した(Neurath ARら、BMC Infect Dis 2:6、2002)。簡単には、2×105または5×105のCEMx174 5.25M7細胞に、段階的な濃度の抗血清または精製IgG抗体の非存在下または存在下で、10%FBSを含むRPMI 1640培地中で、100TCID50(50%組織培養物感染量)で、HIV−1またはHIV−2をそれぞれ一晩感染させた。感染後4日目に、細胞を回収し、そして溶解緩衝剤(Promega、Madison、WI)を用いて溶解した。Ultra 384ルミノメーターリーダー(Tecan)によってルシフェラーゼ活性を測定し、そして阻害パーセントを計算した。TLT−1は、T20耐性株による感染の阻害において、5nMのIC50で高度に有効であり、一方T20は2,000nMまでの濃度で阻害を示さなかった(図7および表5)。
【0071】
実施例3
TLT−1の安定性
インビトロにおける安定性を試験するために、TLT−1、T20、またはT1144(最終濃度16μM)を、PBMC(10%ウシ胎仔血清を含むRPMI 1640中)またはヒト血清(100%)とそれぞれ37℃でインキュベートした。異なる間隔でサンプルを回収し、そして上記で記載したように、細胞−細胞融合阻害アッセイを用いて、活性成分の残存濃度に関して試験した。TLT−1は、ヒト血清およびPBMCの存在下で安定であり、そしてT1144およびT20よりもタンパク質分解に対してより抵抗性であった。TLT−1の安定性を、まずヒト血清およびPBMCの存在下でアッセイし、そしてT20およびT1144のそれと比較した。試験した3つのペプチドは全て、ヒト血清において安定であり、そして4日までの間完全に活性であり(図8A)、そしてその後活性を失い始めた;TLT−1は6日後に40%の活性を維持し、それぞれ20%および5%の残存活性を有するT1144およびT20よりも安定であった。T20はPBMC中で2日後に活性を失い始め、そして6日間のインキュベーション後90%を超える活性を失い、一方T1144およびTLT−1は、PBMCアッセイの間には活性の喪失を示さなかった(図8B)。
【0072】
タンパク質分解に対する抵抗性を決定するために、二機能性タンパク質TLT−1およびペプチドT20およびT1144を、PBS中に溶解し(最終濃度4μM)、そして0.1ユニット/mlのアガロースビーズ固定化プロテイナーゼK、または1ユニット/mlのトリプシンと、それぞれ37℃でインキュベートした。サンプルを様々な間隔で回収し、続いて細胞融合阻害アッセイを用いて、活性タンパク質またはペプチドの残存濃度を測定した。図9に示すように、T20はプロテイナーゼKによる5分の処理後、完全にその活性を失い、そしてT1144およびTLT−1は、プロテイナーゼKの処理で15分まで安定であり、そしてその後活性を失い始め、そして同様の分解曲線を示した。3つのペプチドは全て、トリプシンにおいて時間依存性の活性の喪失を示したが、TLT−1は、トリプシンテストにおいてよりなだらかな分解曲線で、T20およびT1144よりも安定であった。
【0073】
実施例4
TLT−1の2次元構造
TLT−1は、高いαヘリックス含有量で、構築されたタンパク質へフォールディングし、そしてN−ペプチドと共に高度に熱安定性の複合体を形成する。円二色性(CD)を用いて、タンパク質およびペプチド2次構造の変化を研究した。2つのペプチドの相互作用誘導2次構造の変化を決定するために、混合物のCDおよび同じ濃度における個々のペプチドのものを測定し、そして混合物のCDスペクトルと2つの別々のペプチドのスペクトルをあわせたものとを比較した。
【0074】
二機能性分子、または同じモル濃度のN46を含むその混合物を50mMのリン酸ナトリウムおよび150mMのNaCl、pH7.2に溶解し、そして37℃で30分間インキュベートした。最終的なペプチド濃度は10μMであった。個々のペプチドおよびペプチド混合物のCDスペクトルを、0.1nmの分解能の5.0nmのバンド、0.1−cmの光路長、4.0−sの反応時間、および50nm/分のスキャン速度を用いて、室温において、Jasco分光偏光計(Model J−715、Jasco Inc.、Japan)で得た。そのスペクトルを、溶媒に対応するブランクを引くことによって補正した。222nmにおける平均残基楕円率を、100%のヘリックス形成に関して予測される値(33,000 degree・cm2・dmol−1)で割ることによって、CDシグナルからαヘリックス含有量を計算した。熱変性を、4−98℃の範囲で2℃/分の熱勾配を適用することによって、222nmでモニターした。可逆性を決定するために、ペプチド混合物を4℃まで冷却し、そして4℃で30分間CDチャンバーに維持し、続いて上記で記載したように熱変性をモニターした。T20は溶液中で不定形であった(unstructured)が、T1144は、溶液中で約80%の計算された螺旋性を有する、典型的なαヘリックス構造を形成した。TLT−1は、T20およびT1144よりもはるかに高いヘリックス含有量を有していた(図10A)。以前の観察と一致して、T20はN46と6−HBを形成できなかったが、T1144はN46と相互作用して安定な6−HBを形成し得た。印象的なことに、二機能性分子TLT−1は、N46に強く結合し、そしてPBS中で非常に安定な複合体を形成した(図10B)。
【0075】
NペプチドおよびCペプチドの間の6−HBの形成を決定するために、未変性(native)−PAGE(N−PAGE)を行った。Nペプチド(N36)を、40μMの最終濃度でCペプチドと混合し、そして37℃で30分間インキュベートした。その混合物を、25μl/ウェルで、等容量のTrisglycine未変性サンプル緩衝液(Invitrogen)と共に、10×1.0cmの成形済み18%Tris−グリシンゲル(Invitrogen)にのせた。室温で2時間、125Vの定電圧で、ゲル電気泳動を行った。次いでゲルをクーマシーブルーで染色し、そしてFluorChem8800イメージングシステム(Alpha Innotech Corp.、San Leandro、CA)で画像化した。N−PAGEは、T1144と同様、TLT−1はN36と6−HBを形成し得ることを示した(図11)。
【0076】
実施例5
TLT−1は、6−ヘリックス束の形成を阻害する
TLT−1の6−HB形成を防止する能力を、蛍光C34−FAMプローブを用いた蛍光N−PAGE(FN−PAGE)によって決定した。図12に示すように、C34−FAMは、N36と安定な6−HBを形成した。T20、T1144、およびTLT−1のC34−FAM/N36 6−HB形成を阻害する能力も試験した。T20は、C34またはN36と競合して6−HB形成を防止することはできなかった。T1144は、C34−FAMと競合することによって、C34−FAM/N36 6−HB形成を完全に防止して、N36と安定な複合体を形成した。TLT−1は、C34−FAM/N36 6−HB形成を強力に防止し、そしてN36と複合体を形成した。重要なことに、N36/TLT−1/C34−FAM混合物において、速い移動速度を有する新しい蛍光バンドが見られた。そのバンドは、N36を含まないC34−FAMおよびTLTの混合物から成る、TLT−1/C34−FAM複合体と確認された(データは示していない)。速い移動速度は、TLT−1/C34−FAMがコンパクトな構造にフォールディングされ、そしてゲル中をより自由に移動することを示唆した。
【0077】
実施例6
TLT−1はそれほど免疫原性ではない
TLT−1は、分子量12kD程度のよくフォールディングされたタンパク質であり、そして従ってその抗原性を評価した。マウスをT20、T1144およびTLT−1で免疫し、10日後に2回追加免疫し、そして30日後に抗体レベルをチェックした。3つのペプチド全てに関して、非常に弱い抗体反応が観察され、そしてTLT−1はT20およびT1144よりもさらに低い免疫原性を示した(図13A)。T20、T1144およびTLT−1で免疫したマウス由来の抗血清は、HIV−1媒介の細胞−細胞融合に対していかなる阻害も示さず(図13B)、TLT−1を投与したマウスにおける弱い抗TLT−1抗体反応は、TLT−1の抗HIV活性を抑制し得ないことを確認した。
【0078】
他に示されなければ、本明細書および特許請求の範囲で使用される、成分の量、分子量などの性質、反応条件等を表す全ての数字は、「約」という用語によって、全ての場合において改変されることが理解される。よって、反対であることを指示する場合を除いて、本明細書および添付の特許請求の範囲において述べる数字のパラメーターは、本発明によって得ようとする望ましい性質に依存して変動し得る近似である。少なくとも、そして請求の範囲に対する同等物の原則の適用を制限する試みとしてではなく、数字パラメーターはそれぞれ、少なくとも報告された有意な数字の数を考えて、および通常のまるめの技術を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広い範囲を述べる数字の範囲およびパラメーターは近似であるにもかかわらず、特定の実施例において述べる数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、任意の数値は、必ずそのそれぞれの試験測定値において見出される標準偏差から生じる、ある誤差を内在的に含む。
【0079】
本発明を説明する文脈(特に以下の特許請求範囲の文脈)において使用される、「a」、「an」「the」という用語、および同様の指示対象は、本明細書中で他に指示する場合を除いて、または明らかに文脈によって否定されなければ、単数および複数形を両方含むと解釈される。本明細書中における値の範囲の引用は、単に、その範囲にはいる別々の値それぞれに個々に言及する、略式の方法となることが意図される。本明細書中で他に指示する場合を除いて、個々の値それぞれは、それが個々に本明細書中で引用されたかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書中で他に示されなければ、または他に明らかに文脈によって否定されなければ、本明細書中で記載された全ての方法を、任意の適当な順序で行い得る。本明細書中で提供される、任意のおよび全ての実施例、または典型的な言語(例えば「〜などの」)の使用は、単に、本発明をより良く明らかにすることが意図され、そして他に請求される本発明の範囲に対して制限を設けない。本明細書中の言語は、本発明の実施に必須の、任意の請求されない要素を示すと解釈されるべきでない。
【0080】
本明細書中で開示される本発明の代替要素または実施態様のグループ化は、制限として解釈されない。グループのメンバーはそれぞれ、個々に、またはグループの他のメンバーまたは本明細書中で見出される他の要素との任意の組み合わせで言及および請求され得る。グループの1つまたはそれを超えるメンバーを、利便性および/または特許性の理由で、グループへ含み得る、またはそこから消去し得ることが予想される。任意のそのような含有または消去が起こる場合、本明細書は改変されたようにそのグループを含むと考えられ、従って添付の特許請求の範囲において使用される全てのマーカッシュグループの書かれた記載を満たす。
【0081】
本明細書中で開示された特定の実施態様はさらに、〜から成る、または実質的に〜から成るという言語を用いて、本特許請求の範囲において制限され得る。本特許請求の範囲において使用する場合、出願時かまたは修正によって加えたかに関わらず、「〜から成る」という移行語句(transition term)は、本特許請求の範囲において特定されない任意の要素、工程、または成分を除外する。「実質的に〜から成る」という移行語句は、請求の範囲を、特定の物質または工程、および基本的および新規特徴(単数または複数)に物質的に影響を与えないものに制限する。そのように請求された本発明の実施態様は、本明細書中で生得的にまたは明白に記載または可能にされる。
【0082】
本発明を実施するために発明者らに公知である最良の方法を含む、本発明のある特定の実施態様を、本明細書中で記載する。もちろん、これらの記載された実施態様に対する変形物が、前述の記載を読むときに、当業者に明らかとなる。本発明者は、当業者がそのような変形物を適当なように採用することを予測し、そして本発明者らは本発明が本明細書中で明確に記載されたのとは違う方法で実施されることを意図する。よって、本発明は、適用可能な法律によって許される限り、ここに添付された特許請求の範囲において引用された内容の全ての改変物および同等物を含む。さらに、本明細書中で他に指示する場合を除いて、または他に明らかに文脈によって否定される場合を除いて、その全ての可能な変形物の、上記で記載した要素の任意の組み合わせが、本発明によって含まれる。
【0083】
さらに、本明細書を通じて、特許および印刷された出版物に対する多数の言及がなされた。上記で述べた参考文献および印刷された出版物はそれぞれ、その全体として個々に本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0084】
終わりに、本明細書中で開示された本発明の実施態様は、本発明の原則を説明することが理解される。採用し得る他の改変が、本発明の範囲内である。従って、制限としてではなく、例として、本発明の代替の形態を、本明細書中の教示に従って利用し得る。よって、本発明は、示された、および記載されたように正確には制限されない。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本発明は、米国特許法§119(e)の下、2008年5月28日に出願された米国仮特許出願第61/056,580号の利益を主張し、この出願の全内容は、本明細書中において参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、抗ウイルス薬の分野に関連する。特に、本開示は、ヒト免疫不全ウイルスの標的細胞への侵入を阻害する、二機能性分子を含む抗ウイルス薬に関連する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
2007年の終わりまでに、世界中で約3320万人の人々が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染して生きており、そして2500万人を超える人々が、後天性免疫不全症候群(AIDS)のために死亡した。従って、HIV感染に対する新しい治療戦略を発見および開発することが、緊急に必要である。今までのところ、15個の逆転写酵素阻害剤(RTI)、10個のプロテアーゼ阻害剤(PI)、1つのインテグラーゼ阻害剤(II)、および2つの侵入阻害剤(EI)を含む、HIVに感染した人々を治療するための28個の抗HIV薬が米国食品医薬品局によって認可された。RTI、PI、およびIIは全て、ウイルスが宿主細胞へ入った後にHIVの複製を阻害するが、2つのEIは、宿主細胞へのHIVの侵入を阻害し得る。
【0004】
HIVの侵入は、外被糖タンパク質(Env)表面サブユニットgp120の、標的細胞上の一次受容体CD4への結合、および次いでケモカイン受容体(CCR5またはCXCR4)への結合によって開始される。これらの相互作用は、gp41の構造的再編成を引き起こし、安定なgp41の6ヘリックス束(6−HB)コア構造の形成を引き起こし、それはウイルスおよび標的細胞膜の両方を融合のために近接させる。6−HBにおいて、3つのN末端7アミノ酸繰り返し(NHRまたはHR1)が会合して中央の三量体コイルドコイルを形成し、一方3つのC末端7アミノ酸繰り返し(CHRまたはHR2)が、NHR三量体の表面の高度に保存された疎水性の溝に、逆平行の様式で斜めに包まれる。各溝において、NHR領域に、ポケット形成配列(残基565−581)によって形成される、高度に保存された疎水性の深いポケットが存在する。このポケットが、ウイルスの融合、および6−HBの安定性の維持に決定的な役割を果たす。
【0005】
FDAに認可されたEIの1つは、T20(一般名:エンフビルチド、商標名:Fuzeon(登録商標)[Trimeris])と命名された、HIV−1 gp41CHR配列(aa638−673)に基づいてデザインされた合成ペプチドである。T20は、HR(7アミノ酸繰り返し)結合ドメイン(HBD)およびトリプトファン−リッチドメイン(TRD)を含み(図1)、それを通してT20はHR配列、特にNHRのGIVモチーフ、および標的細胞膜にそれぞれ結合して、HIVの標的細胞との融合およびそれへの侵入を阻害し得る。
【0006】
T20治療患者における、T20耐性ウイルスの急速な出現のために、T20の臨床的な適用は制限される。インビトロおよびインビボの両方の研究は、T20耐性が、gp41NHRドメインのGIVおよび隣接する領域(aa36−45)における、単一のまたは二重の変異と関連する(例えばG36D、I37V、V38A、V38E、V38M、N42D、N42S、およびN43D)ことを示した。なぜなら、この領域はgp41の主な結合部位であり、そしてこれらの変異はT20のウイルスgp41NHR領域への結合に影響を与えるからである。T20の、NHRドメインのHR配列への結合は、ウイルスgp41CHRとNHR領域との間の相互作用と競合するほど十分には強力ではないので、T20は、ウイルスgp41NHR領域との相互作用を安定化するために、そのC末端TRDを、標的細胞膜と相互作用するために使用しなければならない。抗HIV薬としてのT20ペプチドの別の弱点は、高い投与量(90mg/投薬)で1日2回注射によって投与しなければならず、ほとんどの患者において有痛性の注射部位反応を引き起こすことである。さらに、ペプチド合成の高い生産コストのために、T20は、特に発展途上国において、使用するためには非常に高価である。
【0007】
C38は、HIV−1 gp41 CHR領域のaa626−673由来の38マーのペプチドである。それは、ポケット結合ドメイン(PBD)およびHBDを含み(図1)、それによってC38は、ウイルスgp41 NHR領域のポケット形成配列およびHR配列に結合して、安定な異種の6−HBを形成し、そして融合活性gp41コア形成を阻害する。これは、HIVの宿主細胞との融合、およびそれへの侵入の阻害を引き起こす。C38の主な結合部位は、aa36−45領域ではなくポケット形成配列であるので、gp41NHRドメインT1144におけるGIVモチーフおよび隣接する領域の変異は、C38の結合に重大な影響を与えない。従って、aa36−45に変異を有するウイルスは、T20に対して耐性であるが、C38に対して感受性である。
【0008】
T1144も、PBDおよびHBDを含む38マーのペプチドである(図1)。αヘリックス性および6−HBの安定性を増加させるために、および薬物動態学的性質を改善するために、C38のアミノ酸配列を改変することによって、それをデザインした。C38と同様、T1144は、T20に対して耐性であるものを含めて、HIV−1のR5およびX4株の両方に対して、T20よりもはるかに有効である。
【0009】
1つの最近の研究が、PBDnを含むCHRペプチド(例えばC34、C38、T1144)およびPBDを欠くCHRペプチド(例えばT20)の組み合わせが、T20感受性および耐性ウイルスの両方に対して、強力な相乗効果を示すことを示した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
標的細胞へのHIVの侵入を阻害する二機能性分子が、本明細書中で開示される。現在の抗HIV薬と異なる作用メカニズムによって、これらの分子を、非Bおよび多剤耐性株を含む、HIVに感染した患者の治療のための治療薬として使用し得る。
【0011】
T20および他の抗レトロウイルス薬に耐性のものを含む、HIV−1株による感染を治療および予防するための、組換えHIV侵入阻害剤として、二機能性分子をデザインし、そしてE.coliにおいて発現した。二機能性分子はそれぞれ、ポケット結合ドメインおよびHR結合ドメインを含むCHRペプチド、リンカー、およびHR結合配列およびトリプトファンリッチドメインから成るCHRペプチドを含む。合成CHRペプチドと比較して、TLT−1に基づく二機能性分子は、以下の利点を有する:i)それらは、より強力な抗HIV活性を有する;ii)それらは、T20耐性ウイルスに対してより有効である;iii)それらを、大量にE.coli発現システムにおいて発現し得、従ってはるかに低い生産コストを有する;iv)それらは、タンパク質分解酵素に対してより感受性が低い;v)それらは、生物学的溶液中でより安定である;およびvi)それらはより強力にNHRペプチドに結合して、高度に安定な6−HBを形成する。
【0012】
1つの実施態様において、柔軟なリンカーに連結した、ポケット結合ドメインおよび7アミノ酸繰り返し(HR)結合ドメインを含む最初のC末端7アミノ酸繰り返し(CHR)ペプチドを含み、次にHR結合ドメインおよびトリプトファンリッチドメインを含む2番目のCHRペプチドに連結する、二機能性分子が本明細書中で開示される。
【0013】
別の実施態様において、最初のCHRペプチドは、C34(配列番号11)、C36(配列番号12)、C38(配列番号3)、C46(配列番号13)、T1144(配列番号4)、T1144−C10(配列番号5)、シフビルチド(配列番号14)、C35−EK(配列番号15)、CP621−652(配列番号16)、CP32M(配列番号17)、T1249(配列番号18)、PBD−4HR(配列番号19)、およびC36B(配列番号20)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
別の実施態様において、2番目のCHRペプチドは、T20(配列番号2)、T20−A(配列番号22)、および4HR−LBD(配列番号23)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
別の実施態様において、柔軟なリンカーは、アミノ酸配列(GGGGS)nを含み、ここでnは2および8の間の整数である。
【0016】
さらに別の実施態様において、その二機能性分子はさらに、二機能性分子のC末端において、アミノ酸配列YSSGRIVTD(配列番号53)またはNSSGRIVTD(配列番号42)を含む。
【0017】
さらに別の実施態様において、その二機能性分子は、
【0018】
【化1】
のアミノ酸配列を含む。
【0019】
さらに別の実施態様において、その二機能性分子は、
【0020】
【化2】
のアミノ酸配列を含む。
【0021】
さらに別の実施態様において、その二機能性分子は、
【0022】
【化3】
のアミノ酸配列を含む。
【0023】
別の実施態様において、その二機能性分子を、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳類細胞から成る群から選択される発現システムにおいて、組換えDNA技術によって産生する。1つの実施態様において、その二機能性分子を、Escherichia coliにおいて産生する。
【0024】
別の実施態様において、その二機能性分子を、固体において、または溶液において合成する。さらに別の実施態様において、その二機能性分子を、数個の別々のセグメントとして合成し、そして次いで共に結合する。
【0025】
本明細書中で開示された二機能性分子を、ヒト免疫不全ウイルスに感染した個体に投与する工程;ウイルスの標的細胞への侵入を阻害する工程、および標的細胞のウイルスによる感染を阻害する工程を含む、ヒト免疫不全ウイルス感染を治療する方法も、本明細書中で提供される。
【0026】
本明細書中で開示された二機能性分子を、ヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクのある個体に投与する工程;ウイルスの標的細胞への侵入を阻害する工程;および標的細胞のウイルスによる感染を阻害する工程を含む、ヒト免疫不全ウイルスによる感染を予防する方法も、本明細書中で提供される。
【0027】
別の実施態様において、柔軟なリンカーに連結した、ポケット結合ドメインおよび7アミノ酸繰り返し(HR)結合ドメインを含む最初のC末端7アミノ酸繰り返し(CHR)ペプチドを含み、次にHR結合ドメインおよびトリプトファンリッチドメインを含む2番目のCHRペプチドに連結する二機能性分子を含む、医薬組成物が提供される。別の実施態様において、その医薬組成物は、二機能性分子に加えて、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む。
【0028】
さらに別の実施態様において、その医薬組成物は、複数の本明細書中で開示された二機能性分子を含む。別の実施態様において、その医薬組成物はさらに、少なくとも1つのさらなる抗ウイルス薬を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、二機能性HIV侵入阻害剤のデザイン、HIV−1HXB2gp41分子の概略図および代表的なHIV侵入阻害剤の配列を示す。FP、融合ペプチド;NHR、N末端7アミノ酸繰り返し;CHR、C末端7アミノ酸繰り返し;TR、トリプトファンリッチドメイン;TM、膜貫通ドメイン;CP、細胞質ドメイン。CHRペプチドのPBD(ポケット結合ドメイン)、HBD(7アミノ酸繰り返し結合ドメイン)、およびTRD(トリプトファンリッチドメイン)を、それぞれ太字、イタリック体、および下線で強調する。NHRの7アミノ酸繰り返し(HR)配列、GIVモチーフ(T20耐性の決定因子)およびポケット形成配列を、それぞれ下線、太字、およびイタリック体で強調する。
【図2】図2は、NHRおよびCHRペプチドの間の相互作用を示す。NHRドメインおよびCHRドメイン間の線は、それぞれNHRおよびCHRのe、gおよびa、d位置に位置する残基間の相互作用を示す。PBDおよびポケット形成配列の間の相互作用が、6ヘリックス束(6−HB)の安定化に決定的である。
【図3】図3は、精製したHIV侵入阻害剤のSDS−PAGE分析を示す。
【図4】図4は、色素転移アッセイによって決定した、HIV−1媒介の細胞−細胞融合の、HIV侵入阻害剤による阻害を示す。
【図5】図5は、p24アッセイによって決定された、MT−2細胞における研究室適応HIV−1 IIIB株(サブタイプB、X4)による感染の、HIV侵入阻害剤による阻害を示す。
【図6】図6は、一次HIV−1分離株(isolate)による感染の、HIV侵入阻害剤による阻害を示す。図6A−p24アッセイによって決定された、PBMCにおける一次HIV−1 92US657(サブタイプB、R5)による感染の阻害。図6B−p24アッセイによって決定された、PBMCにおける一次HIV−1分離株93IN101(サブタイプC、R5)による感染の阻害。
【図7】図7は、T20耐性HIV−1株、NL4−3V38A/N42Gによる感染の、HIV侵入阻害剤による阻害を示す。
【図8】図8は、ヒト血清(図8A)およびPBMC培養物(図8B)における、TLT−1の安定性を示す。
【図9】図9は、タンパク質分解酵素プロテイナーゼK(図9A)およびトリプシン(図9B)に対するTLT−1の感受性を示す。各サンプルを3組試験した。各実験を少なくとも1回繰り返し、そして代表的なデータのセットを、平均値±SDで示す。
【図10】図10は、円二色性(CD)によって決定された、TLT−1の2次構造、およびそのNHRペプチドと6−HBを形成する能力を示す。図10A−T1144、T20、およびTLT−1のCDスペクトル。図10B−N46、N46+T1144、N46+T20、N46+TLT−1のCDスペクトル。
【図11】図11は、N36との6−HBの形成に関する、TLT−1のnative PAGE(N−PAGE)分析を示す。
【図12】図12は、FN−PAGE分析による、6−HB形成に対するTLT−1の阻害効果(図12A)およびFN−PAGEゲルのクーマシーブルー染色(図12B)を示す。
【図13】図13Aは、TLT−1が、動物において高い力価の抗TLT−1抗体を誘導しなかったことを示す。図13Bは、TLT−1の抗HIV−1活性が、TLT−1を投与したマウスにおいて誘導される抗体によって阻害され得なかったことを示す。
【図14】図14は、HIV侵入阻害剤の推定相互作用モデルを示す。T20成分およびT1144成分は、別々のおよび相補的な機能ドメインを含む。T1144は、そのHBDおよびPBDによって、NHRドメイン中のHR配列およびポケット形成配列にそれぞれ結合して、安定な異種の6−HBを形成する。T20は、そのHBDおよびTRDによって、NHRのHR配列および脂質膜または融合脂質とそれぞれ相互作用する。TLT二機能性HIV侵入阻害剤は、以下のものを含むがこれに限らない、gp41NHRおよび脂質膜による4つの可能性のある相互作用モデルを有する:TLTは、T20成分およびT1144成分の両方で三量体の2つの溝を占めることによって、1つのNHR三量体と相互作用し得る(モデルI);TLTは、T20成分およびT1144成分の両方で、各三量体の1つの溝を占めることによって、2つのNHR三量体と相互作用し得る(モデルII);TLTは、T1144成分(モデルIII)またはT20成分(モデルIV)のいずれかで、1つの溝を占めることによって、1つのNHR三量体と相互作用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
(i)それぞれウイルスgp41NHR領域のポケット形成配列およびHR配列に結合する、ポケット結合ドメイン(PBD)および7アミノ酸繰り返し(HR)結合ドメイン(HBD)を含むC末端7アミノ酸繰り返し(CHR)ペプチド;(ii)それぞれウイルスgp41NHR領域のHR配列および標的細胞の脂質膜に結合する、HBDおよびトリプトファンリッチドメイン(TRD)を含むCHRペプチド;および(iii)これら2つの機能的ドメインが自由に動いて、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはHIV感染細胞上の対応する標的タンパク質に結合し得るように、2つのCHRペプチドを連結する、10から40アミノ酸から成る柔軟なリンカーから成る、二機能性(キメラ)分子が、本明細書中で提示される。その二機能性分子を、E.coli細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳類細胞において発現し、クロマトグラフィーによって精製し、そしてHIVによる細胞−細胞融合およびHIV複製に対するその阻害活性に関して試験する。
【0031】
【表1】
異なる機能的ドメインを含む2つのCHRペプチドを連結することによって、様々な二機能性タンパク質をデザインした。その二機能性侵入阻害剤は、100を超えるアミノ酸残基を含み、そして従って組換えタンパク質としての産生に適当であり、そして従ってペプチド合成の高いコストを回避する。
【0032】
代表的な二機能性HIV侵入阻害剤TLT−1(配列番号6)は、2つのCHRペプチド、T1144(配列番号4)およびT20(配列番号2)から成る。どちらもgp41NHRを標的とするが、異なる、および相補的な機能的ドメインを有する:T1144はPBDおよびHBDを含み、それによってT1144はウイルスgp41NHR領域のポケット形成配列およびHR配列にそれぞれ結合し、一方T20はHBDおよびTRDを含み、それによってT20はウイルスgp41NHR領域のHR配列および標的細胞の脂質膜とそれぞれ相互作用する。この方法において、TLT−1はgp41NHRの溝、深いポケット、および脂質膜と同時に相互作用して、融合コアの形成を防止する。
【0033】
35マーのリンカーは、図14で示した複数のモデルの少なくとも1つによって、TLT−1のNHRおよび脂質膜との相互作用のためのスペースを提供する。これらのモデルは、(i)T20成分およびT1144成分の両方で三量体の2つの溝を占めることによる、1つのNHR三量体との相互作用(モデルI);(ii)T20成分およびT1144成分の両方で、各三量体の1つの溝を占めることによる、2つのNHR三量体との相互作用;(iii)T1144成分(モデルIII)またはT20成分(モデルIV)のいずれかで、1つの溝を占めることによる、1つのNHR三量体との相互作用を含むがこれに限らない。TLT−1の2つの成分は、機能的に同等でなくてよい。例えば、T1144は、NHRに対してT20より強力に結合する。従って、これらの相互作用モデルの1つが、他を支配し得る。
【0034】
TLT−1を、高い収率で、E.coliにおいてうまく発現し、そして高いαヘリックス含有量で安定な構造へフォールディングした。TLT−1はN46ペプチドと緊密に結合し、そして高度に熱安定性の複合体を形成する。よって、TLT−1は6−HBの形成を強力に阻害し、そしてHIV−1 gp41による細胞−細胞融合に対して高度に活性である。
【0035】
TLT−1はまた、様々なHIV−1株、特にT−20耐性HIV−1株による感染に対して、低いnMの活性を実証した。
【0036】
TLT−1は、ヒト血清において、および末梢血単核球(PBMC)の存在下で安定であり、そしてT20またはT1144いずれか単独よりも、タンパク質分解に対して耐性である。高い安定性は、より長い半減期を示唆し、そして従ってこの二機能性分子は、より低い投与量において、およびより少ない投与頻度で有用であることが予測される。組換えタンパク質の産生は、合成ペプチドよりもスケールアップが容易であり、TLT−1の生産コストはT20およびT1144よりも非常に低いものであり得ることが示唆される。T20耐性株を含む様々なHIV−1株に対する低nM活性は、TLT−1は、T20治療が有効でなかった患者に対する臨床試験に適当であることを示唆する。TLT−1の投与はまた、薬剤耐性株の出現を遅らせ得る。高い抗レトロウイルスプロファイルは、TLT−1が新世代のHIV侵入阻害剤への開発に有望なものであることを示唆する。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
開示された分子のアミノ酸残基は、保存的な天然アミノ酸の置換を含む。例えば、タンパク質またはペプチドの一次配列は変化するが、通常その機能は変化しない、保存的アミノ酸置換がなされ得る。保存的アミノ酸置換は、典型的には以下のグループ内の置換を含む:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシンおよびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリンおよびスレオニン;リシンおよびアルギニン;およびフェニルアラニンおよびチロシン。
【0039】
さらに、非天然アミノ酸の置換が、開示された二機能性ペプチドの範囲内である。非天然アミノ酸は、D−アミノ酸、6−アミノヘキサン酸、H−3−ニトロ−Tyr−OH、1−(Fmoc−アミノ)−シクロペンタンカルボン酸、4−アミノ−ピペリジン−4−カルボン酸、11−(Boc−アミノ)−ウンデカン酸、7−アミノ−4−メチルクマリン、1−Boc−4−(Fmoc−アミノ)−ピペリジン−4−カルボン酸、1−Fmoc−4−(Fmoc−アミノ)−ピペリジン−4−カルボン酸、(RS)−3−アミノ−3−(3−ピリジル)−プロピオン酸、Bpoc−Ala−OH、H−Homoarg−OH、3−マレイミド−プロピオン酸、Fmoc−4−(ネオペンチルオキシスルホニル)−Abu−OH、Boc−α−アミノ−DL−Gly(Fmoc)−OH、Fmoc−α−アリル−DL−Gly−OH、Boc−Homocys(Trt)−OH、Boc−D−Homocys(Trt)−OH、Boc−Homophe−OH、H−Homophe−OH、H−DL−Isoser−OH、4−アミノ−3−(2,2−ジメトキシ−エチル)−フェノール、Fmoc−α−アミノ−D−Gly(Boc)−OH、H−D−Pra−OH、Fmoc−Aib−OH、スタチンBoc−フェニルスタチン、H−Ser(Bzl)−OH、H−Cys(Bzl)−OH、およびFmoc−N−Me−Val−OHを含むが、これに限らない。
【0040】
本明細書中で開示される1つの実施態様において、ポケット結合ドメインは、HIV−1株HXB−2のgp41のCHR領域のアミノ酸628−635(WMEWDREI;配列番号9)を含む。他の実施態様において、PBDは、任意のHIV−1株、任意のHIV−2株、または任意のサル免疫不全ウイルス(SIV)株のGP41のCHR領域の対応するアミノ酸を含む。別の実施態様において、PBDの1から3つの残基が、他の天然アミノ酸で置換される。さらに別の実施態様において、PBDの1から3つの残基が、非天然アミノ酸で置換される。
【0041】
本明細書中で開示される1つの実施態様において、HR結合ドメインは、HIV−1株HXB−2のgp41のCHR領域のアミノ酸636−665(NNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDK;配列番号10)を含む。他の実施態様において、HBDは、任意のHIV−1株、任意のHIV−2株、または任意のSIV株のGP41のCHR領域の対応するアミノ酸を含む。別の実施態様において、HBDの1から10個の残基が、他の天然アミノ酸で置換される。さらに別の実施態様において、HBDの1から10個の残基が、非天然アミノ酸で置換される。
【0042】
本明細書中で開示される1つの実施態様において、トリプトファンリッチドメインは、HIV−1株HXB−2のgp41のCHR領域のアミノ酸666−673(WASLWNWF;配列番号21)を含む。他の実施態様において、TRDは、任意のHIV−1株、任意のHIV−2株、または任意のSIV株のGP41のCHR領域の対応するアミノ酸を含む。別の実施態様において、TRDの1から3つの残基が、他の天然アミノ酸で置換される。さらに別の実施態様において、TRDの1から3つの残基が、非天然アミノ酸で置換される。
【0043】
本開示はまた、薬学的に許容可能な担体中に、HIVの標的細胞への侵入を阻害し得る、上記で記載した二機能性ペプチドを含む医薬組成物に向けられる。
【0044】
開示された医薬組成物の投与量および望ましい薬剤濃度は、想定される特定の使用に依存して変動し得る。適当な投与量または投与経路の決定は、通常の医師の技術の範囲内である。動物実験は、ヒト治療のための有効な用量の決定に信頼できる指針を提供する。有効な投与量の種間スケーリングを、Toxicokinetics and New Drug Development、Yacobiら編、Pergamon Press、New York 1989、42−96頁の、Mardenti,J.およびChappell,W 「The use of interspecies scaling in toxicokinetics」によって策定された原理に従って行い得る。本明細書中で使用される「治療的に有効な」量という用語は、例えば感染性疾患などの疾患の特定の治療を行うために必要な量を指す。「治療」は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)手段の両方を指し、ここでその目的は、標的となる病理学的状況または疾患を予防または遅らせる(軽減する)ことである。治療の必要がある者は、既に疾患を有する者、および疾患を有しやすい者または疾患を予防すべき者を含む。1つの実施態様において、その疾患は存在する。別の実施態様において、細胞または個体の寿命は、本明細書中で記載された方法のために延長される。
【0045】
上記で記載した化合物を、特定の適用に適するように、ヒトを含む哺乳類への投与のために、過度の実験無しに調合し得る。さらに、組成物の適当な投与量を、標準的な用量−反応プロトコールを用いて、過度の実験無しに決定し得る。
【0046】
よって、経口、鼻腔内、舌、舌下、頬側、および口腔内投与のためにデザインされた組成物を、当該分野で周知の手段によって、例えば不活性な希釈剤と共に、または薬学的に許容可能な担体と共に、過度の実験無しに作製し得る。その組成物は、ゼラチンカプセルに封入される、または錠剤に圧縮される。経口治療的投与の目的のために、その医薬組成物を、賦形剤と共に組み込んで、そして錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハ、チューインガム等の形態で使用し得る。「薬学的に許容可能な担体」は、任意の標準的な薬学的担体を意味する。適当な担体の例は、当該分野で周知であり、そしてリン酸緩衝生理的食塩水、Polysorb80を含むリン酸緩衝生理的食塩水、水、水中油型エマルションなどのエマルション、および様々な型の湿潤剤などの、任意の標準的な薬学的担体を含み得るがこれに限らない。他の担体はまた、滅菌溶液、錠剤、コーティングした錠剤、およびカプセルを含み得る。典型的には、そのような担体は、デンプン、乳、糖、ある型の粘土、ゼラチン、ステアリン酸またはその塩、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム、タルク、植物脂肪または植物油、ゴム、グリコール、または他の公知の賦形剤などの賦形剤を含む。そのような担体はまた、香味用添加物または着色用添加物または他の成分を含み得る。そのような担体を含む組成物を、周知の従来の方法によって調合する。
【0047】
錠剤、丸剤、カプセル、トローチ等も、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味料、および香味料を含み得る。結合剤のいくつかの例は、微晶性セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチンを含む。賦形剤の例は、デンプンまたはラクトースを含む。崩壊剤のいくつかの例は、アルギン酸、コーンスターチ等を含む。滑沢剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、またはステアリン酸カリウムを含む。流動促進剤の例は、コロイド性二酸化珪素である。甘味料のいくつかの例は、ショ糖、サッカリン等を含む。香味料の例は、ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジ香味料等を含む。これらの様々な組成物の調製に使用した材料は、薬学的に純粋および使用した量で無毒性であるべきである。
【0048】
その化合物を、例えば静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、または皮下注射によるように、容易に非経口投与し得る。非経口投与を、化合物を溶液または懸濁液へ組み込むことによって達成し得る。そのような溶液または懸濁液はまた、注射用水、生理的塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの、滅菌希釈剤を含み得る。非経口調合物はまた、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌薬、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、およびEDTAなどのキレート化剤も含み得る。酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの、張度を調整するための薬剤も加え得る。非経口調製物を、アンプル、使い捨てシリンジまたはガラスまたはプラスチック製の複数回投与バイアルに封入し得る。
【0049】
直腸投与は、化合物を、医薬組成物において、直腸または大腸へ投与する工程を含む。これを、坐剤、浣腸、ゲル、クリーム、錠剤等を用いて達成し得る。坐剤調合物を、当該分野で公知の方法によって容易に作製し得る。同様に、坐剤、ゲル、圧注、クリーム、錠剤、リング等を含む膣投与形態を処方し得る。その組成物は、例えば直腸内で溶解し、そして薬剤を放出する坐剤の形態で、直腸または膣投与のために意図され得る。直腸または膣投与のための組成物は、適当な非刺激性賦形剤として、油性の基剤を含み得る。そのような基剤は、制限無しに、ラノリン、カカオバター、およびポリエチレングリコールを含む。低融点ワックスが坐剤の調製のために好ましく、ここで脂肪酸グリセリドおよび/またはカカオバターの混合物が適当なワックスである。そのワックスを融解し得、そして撹拌によってシクロヘキシルアミン化合物をそこに均一に分散させる。次いで融解した均一な混合物を、簡便なサイズの型に注ぎ、冷却し、そしてそれによって凝固させる。
【0050】
局所投与のために意図された、開示された組成物は、溶液、エマルション、軟膏、クリーム、またはゲル基剤を適当に含み得る。例えばその基剤は、1つまたはそれを超える以下のものを含み得る:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱物油、水およびアルコールなどの希釈剤、および乳化剤および安定剤。局所投与のための医薬組成物に、増粘剤が存在し得る。
【0051】
経皮投与は、皮膚を通した組成物の経皮的吸収を含む。経皮処方物は、パッチ、イオントフォレシスデバイス、軟膏、クリーム、ゲル、膏薬等を含む。
【0052】
その組成物は、固体投薬単位または液体投薬単位の物理的形態を改変する、様々な物質を含み得る。例えば、その組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する物質を含み得る。コーティングシェルを形成する物質は、典型的には不活性であり、そして例えば糖、セラック、および他の腸溶性コーティング剤から選択され得る。あるいは、その活性成分を、ゼラチンカプセルまたはカシェ剤に包み得る。
【0053】
本開示の二機能性分子組成物を、適当な投薬レジメによって、治療的に有効な量で投与し得る。当業者によって理解されるように、必要な正確な量は、被験体の種、年齢および一般的な状況、感染の重症度、特定の薬剤(単数または複数)および投与の様式に依存して被験体ごとに変動し得る。いくつかの実施態様において、被験体の体重に基づいて、約0.001mg/kgから約50mg/kgの組成物を、1日1回またはそれを超えて投与して、望ましい治療的効果を得る。他の実施態様において、被験体の体重に基づいて、約1mg/kgから約25mg/kgの組成物を、1日1回またはそれを超えて投与して、望ましい治療的効果を得る。
【0054】
組成物の1日投与量全量を、確かな医学的判断の範囲内で、主治医が決定する。任意の特定の患者または被験体に関する、特定の治療的に有効な投与量レベルは、治療する疾患およびその疾患の重症度;採用された特定の化合物の活性;採用された特定の組成物;患者または被験体の年齢、体重、一般的な健康、性別および食事;採用された特定の化合物の投与時間、投与経路、および排泄速度;治療の期間;採用された特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用される薬剤;および医学的分野において周知の他の因子を含む、様々な因子に依存する。
【0055】
開示された組成物をまた、併用療法においても採用し得る。すなわち、現在開示されている組成物を、1つまたはそれを超える他の望ましい組成物、治療薬、処置、または医学的手順と同時に、その前に、またはそれに続いて投与し得る。投与される治療薬の特定の組み合わせは、主治医によって決定され、そして処置の適合性および達成される望ましい治療的効果を考慮する。組み合わせて利用される治療的に活性な薬剤を、単一の組成物、処置、または手順で一緒に投与し得る、またはあるいは、別々に投与し得ることが認識される。
【0056】
例えば、開示された組成物を、例えば1つまたはそれを超えるヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤(PI)、融合阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、ケモカイン受容体(CXCR4、CCR5)阻害剤、および/またはヒドロキシウレアを含むがこれに限らない、1つまたはそれを超える他のHIV阻害剤と組み合わせて投与し得る。
【0057】
ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は、アバカビル(ABC;Ziagen(登録商標))、ジダノシン(ジデオキシイノシン(ddI);Videx(登録商標))、ラミブジン(3TC;Epivir(登録商標))、スタブジン(d4T;Zerit(登録商標)、Zerit XR(登録商標))、ザルシタビン(ジデオキシシチジン(ddC);Hivid(登録商標))、ジドブジン(ZDV、以前はアジドチミジン(AZT)として公知であった;Retrovir(登録商標))、アバカビル、ジドブジン、およびラミブジン(Trizivir(登録商標))、ジドブジンおよびラミブジン(Combivir(登録商標))、およびエムトリシタビン(Emtriva(登録商標))を含むがこれに限らない。ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤は、テノホビルジソプロキシルフマレート(Viread(登録商標))を含む。HIVに対する非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は、ネビラピン(Viramune(登録商標))、メシル酸デラビルジン(Rescriptor(登録商標))およびエファビレンツ(Sustiva(登録商標))を含むがこれに限らない。
【0058】
プロテアーゼ阻害剤(PI)は、アンプレナビル(Agenerase(登録商標))、メシル酸サキナビル(Fortovase(登録商標)、Invirase(登録商標))、リトナビル(Norvir(登録商標))、硫酸インジナビル(Crixivan(登録商標))、メシル酸ネルフィナビル(nelfmavir mesylate)(Viracept(登録商標))、ロピナビルおよびリトナビル(Kaletra(登録商標))、アタザナビル(Reyataz(登録商標))、およびホスアンプレナビル(Lexiva(登録商標))を含む。アタザナビルおよびホスアンプレナビル(Lexiva)は、HIV−1感染の治療のために、米国食品医薬品局によって最近認可された、新しいプロテアーゼ阻害剤である(atazanavir(Reyataz) and emtricitabine(Emtriva) for HIV infection、Medical Letter on Drugs and Therapeutics、www.medletter.comからオンラインで入手可能;U.S.Department of Health and Human Services(2003)、Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV−infected Adults and Adolescents;aidsinfo.nih.gov/guidelinesからオンラインで入手可能、を参照のこと)。
【0059】
融合/侵入阻害剤は、CD4+細胞(白血球の型)の外側またはCCR5およびCXCR4などの共受容体、またはgp41およびgp120などのウイルス膜タンパク質へ結合する。融合/侵入阻害剤は、ウイルスおよび細胞の間の融合が起こること、またはウイルスの細胞への侵入を予防し、そして従って、HIV感染および増殖を予防する。融合/侵入阻害剤は、エンフビルチド(Fuzeon(登録商標))およびマラビロク(Selzentry(登録商標)、Pfizer)を含むがこれに限らない。
【0060】
インテグラーゼ阻害剤は、インテグラーゼの作用を阻害し、HIV−1の遺伝物質が、宿主DNAへ組み込まれるのを防止し、そしてそれによってウイルスの複製を停止する。インテグラーゼ阻害剤は、ラルテグラビル(Isentress(登録商標)、Merck);およびエルビテグラビル(GS9137、Gilead Sciences)を含むがこれに限らない。
【0061】
あるいはまたはさらに、本明細書中で開示された組成物を、1つまたはそれを超える感染症治療薬(例えば抗生物質等)、鎮痛薬、または免疫無防備状態の個体において通常見出されるが、HIVによって直接引き起こされるのではない、1つまたはそれを超える疾患、障害、または状態の症状に取り組むことを意図した他の薬剤と組み合わせて投与し得る。
【実施例】
【0062】
開示された二機能性分子の実施態様を実証するために、以下の実施例が含まれる。以下の実施例で開示される技術は、発明者らによって、本開示の実施においてよく機能することが発見された技術を示し、そして従ってその実施のための好ましい様式を構成すると考え得ることが、当業者によって認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示を考慮して、開示された特定の実施態様において、多くの変更をなし得、そして依然として本発明の精神および範囲から離れることなく同様のまたは類似の結果を得ることを認識するべきである。
【0063】
実施例1
二機能性分子TLT−1の発現、精製、および特徴付け
典型的な二機能性分子TLT−1のための発現プラスミドを創製するために、pTLT−1、T1144をコードするDNA断片、35マーのリンカー(GGGGS)7、およびT20を、3段階のオーバーラップPCRによっていっしょに連結した。まず、T1144、L35、およびT20 DNA断片を、表4で記載したような対応するプライマーペアを用いたオーバーラップPCRによって産生した。2番目に、L35およびT20をコードするDNA断片を、プライマーFL35およびプライマーRT20を用いるオーバーラップPCRによって連結した。3番目に、T1144およびL35−T20をコードする2つのDNA断片を、プライマーFT1144およびRT20を用いるオーバーラップPCRによって連結した。最後に、T1144−L35−T20をコードする増幅DNA断片を、BamHIおよびXhoIによって消化し、そして発現ベクターpGEX−6p−1へ挿入して、pTLT−1プラスミドを産生した。
【0064】
【表4】
TLT−1融合ペプチドを発現するために、E.coli株Rosetta2(DE3)pLysS(Novagen)を、pTLT−1で形質転換し、37℃でOD600=0.4になるまで培養し、次いで4時間誘導した。細胞を回収し、そしてプロテアーゼ阻害剤混合物(Roche)の存在下で、超音波処理によって溶解した。遠心後、TLT−1−GST融合タンパク質を含む上清を回収した。次いで、TLT−1−GSTを、グルタチオン−セファロース4Bアフィニティーカラムを用いて精製し、そしてPreScissionTMプロテアーゼ(GE Healthcare)で切断して、GSTから二機能性タンパク質を放出した。次いでその二機能性タンパク質を、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)によって精製し、そしてSDS−PAGEによって分析した。
【0065】
典型的な二機能性分子であるTLT−1は、38マーのT1144(TTWEAWDRAIAEYAARIEALLRALQEQQEKNEAALREL;配列番号4)、35マーのリンカー[(GGGGS)7;配列番号40]、および36マーのT20(YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF;配列番号2)から成っていた。できたベクターの配列決定は、3つの異なるベクターが産生されたことを示した。3つは全て、N末端に5つの付加的アミノ酸残基(GPLGS)を有していた。2つのプラスミドは、そのタンパク質配列がまた、C末端に9つの付加的アミノ酸残基(YSSGRIVTD[配列番号53]またはNSSGRIVTD[配列番号42])を有することを示した。1つのプラスミドは、C末端に付加的な9つの付加的アミノ酸残基を有していなかったが、予測される35マーのリンカーではなく、30マーのリンカー(配列番号39)を含んでいた。これらの3つのプラスミドは、E.coliにおいて、異なる発現効率を実証する、すなわち30マーのリンカーと共にTLT−1遺伝子を有するベクターは、細菌においてあまり発現せず、一方C末端に9つのさらなるアミノ酸を有する他の2つは、よりよく発現した。YSSGRIVTDを有するプラスミドを、さらなる研究のために代表的な二機能性分子として選択した。精製二機能性ペプチドは、SDS−PAGEによって約12kDの分子量を実証した(図3)。
【0066】
実施例2
TLT−1の抗HIV活性
TLT−1は、実験室適応HIV−1株および一次HIV−1株によるHIV−1媒介の細胞−細胞融合および感染の阻害において、高度に活性であった。
【0067】
HIV−1媒介の細胞−細胞融合を、エフェクター細胞としてCalcein AM−標識HIV−1 IIIBを慢性的に感染させたH9(H9/HIV−1 IIIB)細胞、および標的細胞としてMT−2細胞を使用した、色素移行アッセイ(Lu Hら、J Virol Methods 107:155−161、2003)によって決定した。キメラによる細胞−細胞融合の阻害パーセントを計算し、そして50%阻害濃度(IC50)を、CalcuSynソフトウェアを用いて計算した。図4および表5において示すように、TLT−1は、HIV−1媒介の細胞−細胞融合の阻害において、低nMレベルのIC50で高度に有効であり、T20より優れ、そして現在最も強力なHIV−1融合阻害剤であるT1144とほとんど同等であった。
【0068】
HIV−1 IIIB感染に対する二機能性分子の阻害活性を、p24産生に関するELISAによって決定した(Jiang Sら、J Exp Med 174:1557−1563、1991)。簡単には、連続的な2倍希釈の抗原特異的抗血清またはIgG抗体の存在下または非存在下で、10%FBSを含むRPMI1640培地中で、MT−2細胞を、100TCID50(50%組織培養物感染量)で、37℃で一晩HIV−1IIIBに感染させた。次いで培養上清を除去し、そして新しい培地を加えた。感染後4日目に、培養上清を回収し、そしてp24タンパク質ELISAにおける検出のために、等容量の5%Triton X−100と混合した。TLT−1はまた、HIV−1 IIIBの感染の阻害において、11nMのIC50で高度に強力であり、T20の6倍を超えて優れていた(図5および表5)。
【0069】
【表5】
一次HIV−1分離株92US657(サブタイプB、X5)および93IN101(サブタイプC、X5)による感染に対する二機能性分子の阻害活性を決定した(Jiang Sら、Antimicrob Agents Chemother 48:4349−4359、2004)。簡単には、末梢血単核球(PBMC)を、標準的な密度勾配(Histopaque−1077、Sigma)遠心分離を用いて、健康なドナーの血液から単離した。37℃で2時間インキュベートした後、非接着性細胞を回収し、そして10%FBS、5μgのフィトヘマグルチニン(PHA)/ml、および100UのIL−2/mlを含むRPMI 1640培地に5×105/mlで再懸濁し、続いて37℃で3日間インキュベートした。PHA刺激細胞に、連続2倍希釈の抗血清の非存在下または存在下で、対応する一次HIV−1分離株を、0.01の感染多重度(MOI)で感染させた。感染7日後に上清を回収し、そして上記で記載したように、ELISAによってp24抗原に関して試験した。上記で記載したように、CalcuSynソフトウェアを用いてIC50を計算した。図6および表5に示すように、TLT−1は、一次HIV−1分離株92US657および93IN101両方による感染を、低nMレベルのIC50で、用量依存性の様式(manor)で顕著に阻害した。
【0070】
HIV−1 NL4−3V38E/N42S(T20耐性変異体)による感染に対する二機能性分子の阻害活性を、ルシフェラーゼ活性によって決定した(Neurath ARら、BMC Infect Dis 2:6、2002)。簡単には、2×105または5×105のCEMx174 5.25M7細胞に、段階的な濃度の抗血清または精製IgG抗体の非存在下または存在下で、10%FBSを含むRPMI 1640培地中で、100TCID50(50%組織培養物感染量)で、HIV−1またはHIV−2をそれぞれ一晩感染させた。感染後4日目に、細胞を回収し、そして溶解緩衝剤(Promega、Madison、WI)を用いて溶解した。Ultra 384ルミノメーターリーダー(Tecan)によってルシフェラーゼ活性を測定し、そして阻害パーセントを計算した。TLT−1は、T20耐性株による感染の阻害において、5nMのIC50で高度に有効であり、一方T20は2,000nMまでの濃度で阻害を示さなかった(図7および表5)。
【0071】
実施例3
TLT−1の安定性
インビトロにおける安定性を試験するために、TLT−1、T20、またはT1144(最終濃度16μM)を、PBMC(10%ウシ胎仔血清を含むRPMI 1640中)またはヒト血清(100%)とそれぞれ37℃でインキュベートした。異なる間隔でサンプルを回収し、そして上記で記載したように、細胞−細胞融合阻害アッセイを用いて、活性成分の残存濃度に関して試験した。TLT−1は、ヒト血清およびPBMCの存在下で安定であり、そしてT1144およびT20よりもタンパク質分解に対してより抵抗性であった。TLT−1の安定性を、まずヒト血清およびPBMCの存在下でアッセイし、そしてT20およびT1144のそれと比較した。試験した3つのペプチドは全て、ヒト血清において安定であり、そして4日までの間完全に活性であり(図8A)、そしてその後活性を失い始めた;TLT−1は6日後に40%の活性を維持し、それぞれ20%および5%の残存活性を有するT1144およびT20よりも安定であった。T20はPBMC中で2日後に活性を失い始め、そして6日間のインキュベーション後90%を超える活性を失い、一方T1144およびTLT−1は、PBMCアッセイの間には活性の喪失を示さなかった(図8B)。
【0072】
タンパク質分解に対する抵抗性を決定するために、二機能性タンパク質TLT−1およびペプチドT20およびT1144を、PBS中に溶解し(最終濃度4μM)、そして0.1ユニット/mlのアガロースビーズ固定化プロテイナーゼK、または1ユニット/mlのトリプシンと、それぞれ37℃でインキュベートした。サンプルを様々な間隔で回収し、続いて細胞融合阻害アッセイを用いて、活性タンパク質またはペプチドの残存濃度を測定した。図9に示すように、T20はプロテイナーゼKによる5分の処理後、完全にその活性を失い、そしてT1144およびTLT−1は、プロテイナーゼKの処理で15分まで安定であり、そしてその後活性を失い始め、そして同様の分解曲線を示した。3つのペプチドは全て、トリプシンにおいて時間依存性の活性の喪失を示したが、TLT−1は、トリプシンテストにおいてよりなだらかな分解曲線で、T20およびT1144よりも安定であった。
【0073】
実施例4
TLT−1の2次元構造
TLT−1は、高いαヘリックス含有量で、構築されたタンパク質へフォールディングし、そしてN−ペプチドと共に高度に熱安定性の複合体を形成する。円二色性(CD)を用いて、タンパク質およびペプチド2次構造の変化を研究した。2つのペプチドの相互作用誘導2次構造の変化を決定するために、混合物のCDおよび同じ濃度における個々のペプチドのものを測定し、そして混合物のCDスペクトルと2つの別々のペプチドのスペクトルをあわせたものとを比較した。
【0074】
二機能性分子、または同じモル濃度のN46を含むその混合物を50mMのリン酸ナトリウムおよび150mMのNaCl、pH7.2に溶解し、そして37℃で30分間インキュベートした。最終的なペプチド濃度は10μMであった。個々のペプチドおよびペプチド混合物のCDスペクトルを、0.1nmの分解能の5.0nmのバンド、0.1−cmの光路長、4.0−sの反応時間、および50nm/分のスキャン速度を用いて、室温において、Jasco分光偏光計(Model J−715、Jasco Inc.、Japan)で得た。そのスペクトルを、溶媒に対応するブランクを引くことによって補正した。222nmにおける平均残基楕円率を、100%のヘリックス形成に関して予測される値(33,000 degree・cm2・dmol−1)で割ることによって、CDシグナルからαヘリックス含有量を計算した。熱変性を、4−98℃の範囲で2℃/分の熱勾配を適用することによって、222nmでモニターした。可逆性を決定するために、ペプチド混合物を4℃まで冷却し、そして4℃で30分間CDチャンバーに維持し、続いて上記で記載したように熱変性をモニターした。T20は溶液中で不定形であった(unstructured)が、T1144は、溶液中で約80%の計算された螺旋性を有する、典型的なαヘリックス構造を形成した。TLT−1は、T20およびT1144よりもはるかに高いヘリックス含有量を有していた(図10A)。以前の観察と一致して、T20はN46と6−HBを形成できなかったが、T1144はN46と相互作用して安定な6−HBを形成し得た。印象的なことに、二機能性分子TLT−1は、N46に強く結合し、そしてPBS中で非常に安定な複合体を形成した(図10B)。
【0075】
NペプチドおよびCペプチドの間の6−HBの形成を決定するために、未変性(native)−PAGE(N−PAGE)を行った。Nペプチド(N36)を、40μMの最終濃度でCペプチドと混合し、そして37℃で30分間インキュベートした。その混合物を、25μl/ウェルで、等容量のTrisglycine未変性サンプル緩衝液(Invitrogen)と共に、10×1.0cmの成形済み18%Tris−グリシンゲル(Invitrogen)にのせた。室温で2時間、125Vの定電圧で、ゲル電気泳動を行った。次いでゲルをクーマシーブルーで染色し、そしてFluorChem8800イメージングシステム(Alpha Innotech Corp.、San Leandro、CA)で画像化した。N−PAGEは、T1144と同様、TLT−1はN36と6−HBを形成し得ることを示した(図11)。
【0076】
実施例5
TLT−1は、6−ヘリックス束の形成を阻害する
TLT−1の6−HB形成を防止する能力を、蛍光C34−FAMプローブを用いた蛍光N−PAGE(FN−PAGE)によって決定した。図12に示すように、C34−FAMは、N36と安定な6−HBを形成した。T20、T1144、およびTLT−1のC34−FAM/N36 6−HB形成を阻害する能力も試験した。T20は、C34またはN36と競合して6−HB形成を防止することはできなかった。T1144は、C34−FAMと競合することによって、C34−FAM/N36 6−HB形成を完全に防止して、N36と安定な複合体を形成した。TLT−1は、C34−FAM/N36 6−HB形成を強力に防止し、そしてN36と複合体を形成した。重要なことに、N36/TLT−1/C34−FAM混合物において、速い移動速度を有する新しい蛍光バンドが見られた。そのバンドは、N36を含まないC34−FAMおよびTLTの混合物から成る、TLT−1/C34−FAM複合体と確認された(データは示していない)。速い移動速度は、TLT−1/C34−FAMがコンパクトな構造にフォールディングされ、そしてゲル中をより自由に移動することを示唆した。
【0077】
実施例6
TLT−1はそれほど免疫原性ではない
TLT−1は、分子量12kD程度のよくフォールディングされたタンパク質であり、そして従ってその抗原性を評価した。マウスをT20、T1144およびTLT−1で免疫し、10日後に2回追加免疫し、そして30日後に抗体レベルをチェックした。3つのペプチド全てに関して、非常に弱い抗体反応が観察され、そしてTLT−1はT20およびT1144よりもさらに低い免疫原性を示した(図13A)。T20、T1144およびTLT−1で免疫したマウス由来の抗血清は、HIV−1媒介の細胞−細胞融合に対していかなる阻害も示さず(図13B)、TLT−1を投与したマウスにおける弱い抗TLT−1抗体反応は、TLT−1の抗HIV活性を抑制し得ないことを確認した。
【0078】
他に示されなければ、本明細書および特許請求の範囲で使用される、成分の量、分子量などの性質、反応条件等を表す全ての数字は、「約」という用語によって、全ての場合において改変されることが理解される。よって、反対であることを指示する場合を除いて、本明細書および添付の特許請求の範囲において述べる数字のパラメーターは、本発明によって得ようとする望ましい性質に依存して変動し得る近似である。少なくとも、そして請求の範囲に対する同等物の原則の適用を制限する試みとしてではなく、数字パラメーターはそれぞれ、少なくとも報告された有意な数字の数を考えて、および通常のまるめの技術を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広い範囲を述べる数字の範囲およびパラメーターは近似であるにもかかわらず、特定の実施例において述べる数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、任意の数値は、必ずそのそれぞれの試験測定値において見出される標準偏差から生じる、ある誤差を内在的に含む。
【0079】
本発明を説明する文脈(特に以下の特許請求範囲の文脈)において使用される、「a」、「an」「the」という用語、および同様の指示対象は、本明細書中で他に指示する場合を除いて、または明らかに文脈によって否定されなければ、単数および複数形を両方含むと解釈される。本明細書中における値の範囲の引用は、単に、その範囲にはいる別々の値それぞれに個々に言及する、略式の方法となることが意図される。本明細書中で他に指示する場合を除いて、個々の値それぞれは、それが個々に本明細書中で引用されたかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書中で他に示されなければ、または他に明らかに文脈によって否定されなければ、本明細書中で記載された全ての方法を、任意の適当な順序で行い得る。本明細書中で提供される、任意のおよび全ての実施例、または典型的な言語(例えば「〜などの」)の使用は、単に、本発明をより良く明らかにすることが意図され、そして他に請求される本発明の範囲に対して制限を設けない。本明細書中の言語は、本発明の実施に必須の、任意の請求されない要素を示すと解釈されるべきでない。
【0080】
本明細書中で開示される本発明の代替要素または実施態様のグループ化は、制限として解釈されない。グループのメンバーはそれぞれ、個々に、またはグループの他のメンバーまたは本明細書中で見出される他の要素との任意の組み合わせで言及および請求され得る。グループの1つまたはそれを超えるメンバーを、利便性および/または特許性の理由で、グループへ含み得る、またはそこから消去し得ることが予想される。任意のそのような含有または消去が起こる場合、本明細書は改変されたようにそのグループを含むと考えられ、従って添付の特許請求の範囲において使用される全てのマーカッシュグループの書かれた記載を満たす。
【0081】
本明細書中で開示された特定の実施態様はさらに、〜から成る、または実質的に〜から成るという言語を用いて、本特許請求の範囲において制限され得る。本特許請求の範囲において使用する場合、出願時かまたは修正によって加えたかに関わらず、「〜から成る」という移行語句(transition term)は、本特許請求の範囲において特定されない任意の要素、工程、または成分を除外する。「実質的に〜から成る」という移行語句は、請求の範囲を、特定の物質または工程、および基本的および新規特徴(単数または複数)に物質的に影響を与えないものに制限する。そのように請求された本発明の実施態様は、本明細書中で生得的にまたは明白に記載または可能にされる。
【0082】
本発明を実施するために発明者らに公知である最良の方法を含む、本発明のある特定の実施態様を、本明細書中で記載する。もちろん、これらの記載された実施態様に対する変形物が、前述の記載を読むときに、当業者に明らかとなる。本発明者は、当業者がそのような変形物を適当なように採用することを予測し、そして本発明者らは本発明が本明細書中で明確に記載されたのとは違う方法で実施されることを意図する。よって、本発明は、適用可能な法律によって許される限り、ここに添付された特許請求の範囲において引用された内容の全ての改変物および同等物を含む。さらに、本明細書中で他に指示する場合を除いて、または他に明らかに文脈によって否定される場合を除いて、その全ての可能な変形物の、上記で記載した要素の任意の組み合わせが、本発明によって含まれる。
【0083】
さらに、本明細書を通じて、特許および印刷された出版物に対する多数の言及がなされた。上記で述べた参考文献および印刷された出版物はそれぞれ、その全体として個々に本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0084】
終わりに、本明細書中で開示された本発明の実施態様は、本発明の原則を説明することが理解される。採用し得る他の改変が、本発明の範囲内である。従って、制限としてではなく、例として、本発明の代替の形態を、本明細書中の教示に従って利用し得る。よって、本発明は、示された、および記載されたように正確には制限されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二機能性分子であって、柔軟なリンカーに連結した、ポケット結合ドメインおよび7アミノ酸繰り返し(HR)結合ドメインを含む最初のC末端7アミノ酸繰り返し(CHR)ペプチドを含み、次にHR結合ドメインおよびトリプトファンリッチドメインを含む2番目のCHRペプチドに連結する、二機能性分子。
【請求項2】
前記最初のCHRペプチドは、C34(配列番号11)、C36(配列番号12)、C38(配列番号3)、C46(配列番号13)、T1144(配列番号4)、T1144−C10(配列番号5)、シフビルチド(配列番号14)、C35−EK(配列番号15)、CP621−652(配列番号16)、CP32M(配列番号17)、T1249(配列番号18)、PBD−4HR(配列番号19)、およびC36B(配列番号20)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項3】
前記2番目のCHRペプチドは、T20(配列番号2)、T20−A(配列番号22)、および4HR−LBD(配列番号23)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項4】
前記柔軟なリンカーは、アミノ酸配列(GGGGS)nを含み、ここでnは2および8の間の整数である、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項5】
前記二機能性分子の前記C末端において、アミノ酸配列YSSGRIVTD(配列番号53)またはNSSGRIVTD(配列番号42)をさらに含む、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項6】
前記二機能性分子は、
【化4】
のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項7】
前記二機能性分子は、
【化5】
のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項8】
前記二機能性分子は、
【化6】
のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項9】
前記二機能性分子は、組換えDNA技術によって産生される、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項10】
前記二機能性分子は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳類細胞から成る群から選択される発現システムにおいて産生される、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項11】
前記二機能性分子は、Escherichia coliにおいて産生される、請求項9に記載の二機能性分子。
【請求項12】
前記二機能性分子は、固体において、または溶液において合成される、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項13】
前記二機能性分子は、数個の別々のセグメントとして合成され、そして次いで共に結合される、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項14】
ヒト免疫不全ウイルス感染の治療における請求項1に記載の二機能性分子の使用であって、
該二機能性分子を、ヒト免疫不全ウイルスに感染した個体に投与する工程;
該ウイルスの標的細胞への侵入を阻害する工程;および
該標的細胞の該ウイルスによる感染を阻害する工程
を含む、使用。
【請求項15】
ヒト免疫不全ウイルスによる感染の予防における請求項1に記載の二機能性分子の使用であって、
該二機能性分子を、該ヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクのある個体に投与する工程;
該ウイルスの標的細胞への侵入を阻害する工程;および
該標的細胞の該ウイルスによる感染を阻害する工程
を含む、使用。
【請求項16】
ヒト免疫不全ウイルス感染を治療する方法であって、
請求項1に記載の二機能性分子を、該ヒト免疫不全ウイルスに感染した個体に投与する工程;
該ウイルスの標的細胞への侵入を阻害する工程;および
該標的細胞の該ウイルスによる感染を阻害する工程
を含む、方法。
【請求項17】
ヒト免疫不全ウイルスによる感染を予防する方法であって、
請求項1に記載の二機能性分子を、該ヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクのある個体に投与する工程;
該ウイルスの標的細胞への侵入を阻害する工程;および
該標的細胞の該ウイルスによる感染を阻害する工程
を含む、方法。
【請求項1】
二機能性分子であって、柔軟なリンカーに連結した、ポケット結合ドメインおよび7アミノ酸繰り返し(HR)結合ドメインを含む最初のC末端7アミノ酸繰り返し(CHR)ペプチドを含み、次にHR結合ドメインおよびトリプトファンリッチドメインを含む2番目のCHRペプチドに連結する、二機能性分子。
【請求項2】
前記最初のCHRペプチドは、C34(配列番号11)、C36(配列番号12)、C38(配列番号3)、C46(配列番号13)、T1144(配列番号4)、T1144−C10(配列番号5)、シフビルチド(配列番号14)、C35−EK(配列番号15)、CP621−652(配列番号16)、CP32M(配列番号17)、T1249(配列番号18)、PBD−4HR(配列番号19)、およびC36B(配列番号20)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項3】
前記2番目のCHRペプチドは、T20(配列番号2)、T20−A(配列番号22)、および4HR−LBD(配列番号23)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項4】
前記柔軟なリンカーは、アミノ酸配列(GGGGS)nを含み、ここでnは2および8の間の整数である、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項5】
前記二機能性分子の前記C末端において、アミノ酸配列YSSGRIVTD(配列番号53)またはNSSGRIVTD(配列番号42)をさらに含む、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項6】
前記二機能性分子は、
【化4】
のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項7】
前記二機能性分子は、
【化5】
のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項8】
前記二機能性分子は、
【化6】
のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項9】
前記二機能性分子は、組換えDNA技術によって産生される、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項10】
前記二機能性分子は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳類細胞から成る群から選択される発現システムにおいて産生される、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項11】
前記二機能性分子は、Escherichia coliにおいて産生される、請求項9に記載の二機能性分子。
【請求項12】
前記二機能性分子は、固体において、または溶液において合成される、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項13】
前記二機能性分子は、数個の別々のセグメントとして合成され、そして次いで共に結合される、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項14】
ヒト免疫不全ウイルス感染の治療における請求項1に記載の二機能性分子の使用であって、
該二機能性分子を、ヒト免疫不全ウイルスに感染した個体に投与する工程;
該ウイルスの標的細胞への侵入を阻害する工程;および
該標的細胞の該ウイルスによる感染を阻害する工程
を含む、使用。
【請求項15】
ヒト免疫不全ウイルスによる感染の予防における請求項1に記載の二機能性分子の使用であって、
該二機能性分子を、該ヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクのある個体に投与する工程;
該ウイルスの標的細胞への侵入を阻害する工程;および
該標的細胞の該ウイルスによる感染を阻害する工程
を含む、使用。
【請求項16】
ヒト免疫不全ウイルス感染を治療する方法であって、
請求項1に記載の二機能性分子を、該ヒト免疫不全ウイルスに感染した個体に投与する工程;
該ウイルスの標的細胞への侵入を阻害する工程;および
該標的細胞の該ウイルスによる感染を阻害する工程
を含む、方法。
【請求項17】
ヒト免疫不全ウイルスによる感染を予防する方法であって、
請求項1に記載の二機能性分子を、該ヒト免疫不全ウイルスに感染するリスクのある個体に投与する工程;
該ウイルスの標的細胞への侵入を阻害する工程;および
該標的細胞の該ウイルスによる感染を阻害する工程
を含む、方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A−12B】
【図13】
【図1】
【図14】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A−12B】
【図13】
【図1】
【図14】
【公表番号】特表2011−521648(P2011−521648A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511825(P2011−511825)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/045504
【国際公開番号】WO2009/155064
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(509051222)ニューヨーク ブラッド センター, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/045504
【国際公開番号】WO2009/155064
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(509051222)ニューヨーク ブラッド センター, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
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