説明

HIV患者における腸の機能不全の治療

本発明は、HIV患者における腸の機能不全の治療に特に適した、初乳および脂肪ブレンドを含む栄養組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、栄養組成物に関する。とりわけ、本発明は、HIV患者における腸の機能不全の治療のための栄養組成物の使用に関する。
【発明の背景】
【0002】
HIV患者における腸の機能不全は、ウイルス感染および炎症反応性の両方の結果である。腸の機能不全は、しばしば腸の炎症状況に関連している。腸の透過性の増大または不十分な腸のバリア機能は、慢性炎症性疾患、アレルギー、食中毒、およびHIV感染の患者にしばしばみられる病的特徴である。
【0003】
栄養溶液がこれまでに提案されている。WO2004/112509は、新生児における最適な腸のバリア成熟のための栄養調合乳(formula)を記載する。提案される調合乳は、少なくとも一の微生物、EPAおよび消化できないオリゴサッカリドを含有する。
【0004】
本発明者らは、先の出願 (PCT/NL2004/000444) において、ポリ不飽和脂肪酸、とりわけエイコサペンタエン酸 (EPA)、ドコサヘキサエン酸 (DHA) およびアラキドン酸 (ARA) が、効果的に腸のバリア抵抗性を改善し、腸の密着結合透過性を低減することができることを記載した。更に、ARAの前駆体、ガンマリノレン酸(GLA)も、その有効性にマイナスの影響を及ぼすことなく使用可能であることを記載した。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、選択されたポリ不飽和脂肪酸(PUFA)および初乳の組合せを提供する。PUFAおよび初乳の組合せは、バリアの完全な状態を改善し、組織再生をサポートすることにより、腸の機能を効果的に改善する。腸のバリアの完全な状態は、腸の透過性を低減し、粘液の生産を向上させることにより相乗的に改善される。後者は、腸の炎症状況に見舞われたHIV患者、より具体的には成人のHIV患者において、バリアの完全な状態を改善するために特に重要である。
【0006】
驚くべきことに、本発明者らは、初乳が、PUFAと相乗的に作用して、腸の透過性を低減し、組織再生をサポートし、これにより腸の機能を改善することを見出した。
【0007】
したがって、一つの態様において、本発明は、初乳、およびEPAを含む脂肪ブレンドを含む組成物に関する。好ましくは、EPAは、全脂肪ブレンドの10〜40 wt%の範囲で存在する。更なる態様において、本発明の組成物中の脂肪ブレンドは、DHAを更に含み、好ましくは、脂肪ブレンドは、全脂肪ブレンドの1〜25 wt%のDHAを含む。別の態様において、本発明の組成物中の脂肪ブレンドは、GLAを更に含み、好ましくは、脂肪ブレンドは、全脂肪ブレンドの1〜15 wt%のGLAを更に含む。更に別の態様において、本発明の組成物中の脂肪ブレンドは、DHAおよびGLAを、好ましくは上記で規定される特定の量で更に含む。
【0008】
本発明の一つの側面は、HIV患者における腸の機能不全の予防および/または治療のための栄養組成物の製造のための、初乳、およびEPAを含む脂肪ブレンドの使用である。
【発明の詳細な説明】
【0009】
重大な臨床症状のないHIV感染患者の25〜30%までが、異常な腸機能、たとえば腸の上皮内層(lining)の漏出による栄養物の吸収の低下および/または透過性の増大を示すと推定される。腸の機能不全のこれら側面の蔓延は、疾患の進行の間に増大することが知られている。実際、最終的にほとんど全てのAIDS患者が、ある程度、腸の機能に障害が起きていると考えられる。本発明の組成物は、HIV患者の腸機能を改善するために有利に使用することができる。
【0010】
理論にしばられることなく、図1にスキームが提案され、ここでは、HIV感染の間に、下痢、感染および吸収不良などの臨床発現により最終的に特徴づけられる異常な腸機能につながる関係因子が描かれている。
【0011】
腸細胞のHIVによる感染は、炎症反応につながり、炎症反応は、最終的に、下痢、他の感染および吸収不良などのHIV患者にしばしばみられる胃腸(GI)症状につながり得ることが提案される。この反応は、炎症反応により直接媒介されるか、あるいは、腸バリア崩壊または腸症(吸収の低下および粘膜の生産)により間接的に媒介され得る。提案される構成要素はすべて、スキーム中の一または複数の矢印でその効果を及ぼす。
【0012】
初乳
初乳は、出産後の哺乳類の母親、とりわけ出産後の雌牛の乳腺により分泌されるプレミルク液である。初乳は、多くの生物学的に活性な成分を含有するため、増殖因子および免疫グロブリンなどの生物学的に活性な分子の優れた供給源である。初乳は、液体形態であってもよいし、乾燥形態であってもよい。本発明の文脈上、適切には、初乳は、たとえばUS6202546に記載されるとおり調製することができる濃縮タンパク質パウダーの形態である。市販の初乳パウダーは、約70〜80 wt%のタンパク質を含む。液体の初乳は、4〜20 wt%のタンパク質を含む。
【0013】
本明細書において初乳タンパク質は、液体形態または乾燥形態、たとえば濃縮タンパク質パウダーの、初乳に存在するタンパク質フラクションをいう。好ましくは、タンパク質は、タンパク質フラクションに存在する生物学的に活性な分子が不活性化されないように、本質的に変性していない。
【0014】
HIV患者に有益な効果を有するため、約5〜50グラムの初乳タンパク質が一日ベースで提供され、一日あたり好ましくは10〜30グラム、最も好ましくは約15 gの初乳タンパク質が提供される。既に述べたとおり、市販の初乳パウダーは、約70〜80 wt%のタンパク質を含む。したがって、本発明の製品は、一日用量で約6〜75 gの初乳パウダーを含む。一日あたり少なくとも1グラムの免疫グロブリンG、好ましくは1〜10グラム、最も好ましくは2〜8グラムの免疫グロブリンGが提供されるように、充分な初乳を提供することが好ましい。
【0015】
また、初乳またはミルクからの抽出物、たとえば、EP0545946に記載されるホエー増殖因子抽出物またはWO02083164に記載されるカゼイン抽出物、免疫グロブリン濃縮物、ラクトフェリン、または他の濃縮ホエーフラクションを、HIV患者の腸のバリア機能を改善するために使用することもできる。理論にしばられることなく、増殖因子および/または抗体は、腸組織の再生の向上に関与し、これにより腸の完全な状態を改善すると考えられる。好ましくは、初乳またはホエー抽出物は、出産から1〜5日の間、好ましくは出産から1〜3日の間に雌牛から入手した新鮮な初乳に存在するのと少なくとも同じ量またはそれより多い量の免疫グロブリンおよび増殖因子を含む。初乳中の免疫グロブリン-Gの量は、乾燥物質に基いて、好ましくは20〜40 wt%である。初乳中に存在する増殖因子には、インスリン様増殖因子1および2、トランスフォーミング増殖因子1および2、ベータセルリン、KGF、および当業者に公知のその他のものが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、これら増殖因子の濃度は、新鮮な液体の初乳中の濃度(これは、一般に公知であるし、あるいは測定することができる)と(乾燥重量に基いて)少なくとも同じ範囲である。抽出物を使用する利点は、タンパク質の量を過剰に増大させることなく、本発明の製品の免疫グロブリンおよび増殖因子の含量を増大させることができる点である。
【0016】
ポリ不飽和脂肪酸
本発明の文脈上、脂肪ブレンドの用語は、n-3脂肪酸および/またはn-6脂肪酸のグループに属する少なくとも一の他の脂肪酸とともにEPAを少なくとも含む組成物をいう。
【0017】
既に述べたとおり、ポリ不飽和脂肪酸、とりわけエイコサペンタエン酸 (EPA、C20:5n-3)、ドコサヘキサエン酸 (DHA) およびアラキドン酸 (ARA) は、効果的に腸の密着結合透過性を低減することができる。ARAの前駆体、ガンマリノレン酸(GLA、C18:3n-6)は、その有効性にマイナスの影響を及ぼすことなく使用することができる。これは、GLAがARAより炎症性が低いため好都合である。したがって、EPAおよび必要に応じてDHAおよび/またはGLAを含む脂肪ブレンドが好ましい。上述の脂肪酸は、効果的に上皮の抵抗性をサポートし、炎症状況により引き起こされる上皮の透過性の増大を低減することができる。加えて、粘膜の炎症反応性をターゲットにすることは、腸のバリア機能および上皮の吸収能力に対する炎症メディエイターの有害な効果を低減することができる。よって、初乳に加えて、EPAと、好ましくはGLAおよびDHAを含む、腸のバリアの完全な状態を改善するのに適した組成物が提供される。
【0018】
生化学的経路に基いて、脂肪酸の他の組合せも有効であるという仮説をたてることができる。よって、一または複数の他のPUFAまたはその混合物(脂肪プレンド)を含む組成物も提供される。たとえば、EPA、ドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6n-3)、ジホモ-ガンマリノレン酸(DGLA、C20:3n-6)、ステアリドン酸(STA、C18:4n-3)、アルファリノレン酸(ALA、C18:3n-3)、ドコサペンタエン酸(DPA、C22:5n-3)、エイコサテトラエン酸(ETE、C20:4n-3)および/またはアラキドン酸(ARA、n-6)の何れかの混合物を含む脂肪ブレンドが使用され得る。とりわけ、EPAと、DHA、DGLA、STA、ALA、DPA、ETEおよび/またはARAの何れかとの混合物を含む脂肪ブレンドが使用され得る。
【0019】
一つの態様において、少なくとも約25 en%、好ましくは少なくとも約30 en%、より好ましくは少なくとも約35 en%の、n-3および/またはn-6脂肪酸を含む脂肪ブレンドが使用される(en%は、エネルギーパーセンテージの略であり、調製物の全カロリー値に寄与する各構成成分の相対量を表す)。適切には、比較的高い一日用量のポリ不飽和脂肪酸が使用される。好ましい一日の量は、少なくとも1グラムPUFA、好ましくは1〜25グラムPUFA、より好ましくは2〜15グラムPUFAであり、最も好ましくは3〜10グラムPUFAの量である。
【0020】
最適な脂肪ブレンドは、好ましくは、1〜3のn-3/n-6脂肪酸比を含む。1.5〜2.7の比は、これにより、脂肪ブレンドを含む製品の最適な安定性が付与されるため、更に好ましい。更に、n-3の脂肪ブレンド中の重量パーセントは、全脂肪酸含量の15〜50 wt%、最も好ましくは20〜50 wt%であり、n-6の重量パーセントは、脂肪ブレンドの全脂肪酸含量の10〜50 wt%、好ましくは10〜40 wt%、最も好ましくは15〜35 wt%である。完成製品に存在する他の脂肪酸は、n-3/n-6脂肪酸比に有意に影響を及ぼすべきではない。完成製品のn-3/n-6比は、1〜3、好ましくは1.5〜2.7にすべきである。したがって、適切には、最適な脂肪ブレンドは、40 wt%〜60 wt%ルリジサ油および40%〜60%魚油を含み得る。
【0021】
好ましい一日の量、すなわち一日用量は、少なくとも0.15グラムEPAが使用される。好ましくは、0.15〜5グラムEPAである。DHAおよび/またはGLAを含む本発明の態様において、0.10〜4.0グラムDHAおよび0.05〜2.5グラムGLAが使用される。好ましくは、とりわけEPAに加えてDHAおよび/またはGLAを使用するケースにおいて、0.5〜2.5グラムEPA、0.3〜2.0グラムDHA、および0.25〜1.25グラムGLAが使用される。最も好ましくは、0.75〜1.5グラムEPA、0.5〜1.2グラムDHA、および0.37〜1.0グラムGLAの量である。一つの態様において、栄養組成物は、一日用量で0.15〜5 gのEPAおよび0.05〜2.5 gのGLAを含む。
【0022】
優れたコンプライアンスに関連し得る製品の安定性および味を損なわないように、脂肪酸と初乳の比を、ある範囲内にすることが重要である。製品は、好ましくは、初乳タンパク質グラムあたり、0.01〜0.30グラムEPA、および存在する場合には、初乳タンパク質グラムあたり、0.006〜0.25グラムDHAおよび0.003〜0.17グラムGLAを含む。好ましい態様は、初乳と、EPAを含む脂肪ブレンドとを含む組成物であり、EPAは、全脂肪ブレンドの10〜40 wt% EPAの範囲で存在する。より好ましくは、組成物は、全脂肪ブレンドの1〜25 wt% DHAを更に含むか、あるいは脂肪ブレンドは、全脂肪ブレンドの1〜15 wt% GLAを更に含む。より好ましくは、脂肪ブレンドは、全脂肪ブレンドの1〜25 wt% DHAおよび1〜15 wt% GLAを更に含む。
【0023】
システインまたはシステインの供給源
驚くべきことに、本発明者らは、NACの形態の過剰なシステインまたはシステインリッチなタンパク質材料が、腸に炎症を有するHIV患者において、腸のバリア機能を更に改善できることを見出した。したがって、別の態様において、本発明は、腸のバリアの完全な状態を更に改善することができる、栄養組成物へのシステイン供給源の添加を提供する。
【0024】
提供される組成物は、上述の一または複数の成分に加えて、適量のシステインおよび/またはシステインの供給源を必要に応じて更に含む。本明細書において「システインの供給源」の用語は、任意の形態の生物学的に利用可能なシステインを含有する全ての化合物を指し、化合物に存在するか、または摂取後に体内で化合物から誘導され得るシステインアミノ酸の量としてモルベースで計算される。腸の炎症の間に、本発明者らは、脂肪ブレンドと初乳を含む栄養組成物にシステイン、システインの供給源またはその両方を添加することにより腸の機能を改善することができることを見出した。
【0025】
本明細書において、以下、「システイン等価物」は、それ自体システインとしてのある量のシステイン、またはシステインの供給源で存在するある量のシステインを指す。たとえば、100 mg NAC(N-アセチルシステイン;MW=163.2)は、74 mgシステイン(MW 121.15)に相当する。同様に、これは、タンパク質またはペプチドに適用することができる。ペプチド(MW=Xダルトン)が3つのシステインアミノ酸(3Yダルトン)を含有するとき、このペプチドの100 mgは、100×3Y/X mgシステインに相当する。よって、このペプチドの100 mgは、300Y/X mgシステイン等価物である。
【0026】
本発明の適切なシステインの供給源は、たとえば、変性および/または未変性形態のタンパク質、たとえばミルクタンパク質、たとえばホエータンパク質、たとえばアルファ-ラクトアルブミンまたはアルブミンおよびβ-ラクトグロブリン、または卵タンパク質である。これらタンパク質は、システインリッチであるため、特に適している。エンドウ、ポテト、ダイズおよびイネなどの植物タンパク質を、システインを供給するために使用することもできる。また、これらタンパク質源の加水分解産物、あるいはシステインリッチのタンパク質またはペプチドをリッチにしたフラクションを使用することができる(たとえばEP 1201137に記載される)。更に、合成システイン等価物、たとえばシステインの誘導体、たとえばグルタチオン、システイン、システイン塩、N-アセチルシステインおよび/またはジアセチルシステインを使用することができる。
【0027】
HIV感染ターゲット患者は、適切には、少なくとも約100 mgのシステイン等価物の一日用量、好ましくは一日あたり少なくとも約200、400、または600 mgシステイン等価物、より好ましくは一日あたり少なくとも約1000 mgシステイン等価物を投与される。一日の投与量は、一日に数回摂取される2、3またはそれ以上の投与量ユニットに分割可能であることが理解される。
【0028】
更に別の態様において、本発明の組成物は、グルタチオンの全身および/または組織レベルを向上させることができる一または複数の化合物を必要に応じて更に含む。これらのなかで、リポ酸、ピルベート、オキサロアセテート、オキサロアスパルテートの全てが、グルタチオンレベルを刺激することが見出されている。かかるグルタチオンレベル刺激化合物は、システインに加えて使用してもよいし、システインの代わりに使用してもよい。
【0029】
栄養組成物
本発明の栄養組成物は、HIV患者に特に有益である。本発明の栄養組成物は、種々のエネルギー密度を有することができるが、腸の機能不全を有するHIV患者は、あまり食欲がないため、全ての成分の一日用量を少量の体積で提供することが有益である。したがって、一つの好ましい態様は、全ての成分が、少量の体積の中に高い密度でパッケージされた栄養バーである。更に、成分をバーの形態で加工する別の利点は、組成物の味と安定性が改良されることである。製品をバーの形態で調製する場合、好ましくは、最大100 gの一つのバーを、単回投与で一日あたり投与するが、より小さいバーの複数回投与も可能であり、好ましくは一日あたり最大約100 gを超えない。
【0030】
別の好ましい態様は、少量の体積のみを必要とし、かつ成分の味と安定性を保証する方法で成分を供給する液体組成物である。好ましくは、本発明の組成物を投与するために、一日用量あたり250 ml以下の液体組成物、更に好ましくは150 ml以下が使用される。
【0031】
かかるコンパクトな栄養製品の利点は、HIV患者が充分な食欲がないときに、少量の体積は、製品のコンプライアンスとロイヤルティーを改良するということである。食欲不振がひどいとき、経管栄養法、たとえば夜間栄養補給により製品を投与することもできる。経管栄養の粘度は、20℃で100 s-1のずり速度において、1〜100、好ましくは1.2〜30、最も好ましくは1.5〜20 N.s/m2の範囲にすべきである。
【0032】
完成した栄養調合乳は、充分な栄養サポートがなく、タンパク質、脂肪および炭水化物などの多量養素、並びにビタミンおよびミネラルなどの微量養素を更に必要とするHIV患者に特に有益であり得る。したがって、好ましい態様は、栄養的に高い価値のタンパク質、脂肪、炭水化物、ミネラルおよびビタミンを含み、ここでビタミンとミネラルは、Food for Special Medical Purposes (FSMP) 規則により要求される十分な量で存在することが求められる。本発明の組成物の好ましい態様は、15〜50 en%脂質、25〜60 en%初乳タンパク質、15〜45 en%炭水化物、並びにシステインまたはNAC、ホエー、初乳、卵タンパク質またはその組合せから選択されるシステインの供給源を含む。
【0033】
本発明の別の側面は、製品の快適性、たとえば味とコンプライアンスを更に改良するための栄養療法(regimen)、たとえば固体(ドライ)製品と液体製品の組合せである。栄養療法(regimen)は、とりわけ初乳と好ましくはNACを含有するバーの投与、並びに殺菌およびパスツール殺菌などの液体処理工程に耐えることができる成分、たとえば本発明の脂肪ブレンド、繊維などを含む液体製品の投与を含む。よって、一つの側面において、本発明は、少なくとも一の固体組成物a)および少なくとも一の液体組成物b)を含むパーツの栄養キットであって、固体組成物a)が、初乳および好ましくはNACを含み、組成物b)が、10〜40 wt%のEPA、1〜25 wt%のDHA、および1〜15 wt%のGLAを含む脂肪ブレンドを含む栄養キットに関する。
【0034】
液体食品を摂取する多くのHIV患者において、下痢は大きな問題である。50〜500 mOsm/kg、より好ましくは100〜400 mOsm/kgのオスモル濃度を有する本発明の初乳組成物をドライ栄養組成物または液体栄養組成物として投与することにより、便通の問題は軽減することが見出された。
【0035】
上述のとおり、栄養組成物は、好ましくは過剰な量のカロリーをデリバーすべきではない。よって、栄養組成物は、好ましくは、500 kcal/一日用量より多くを含有せず、より好ましくは200〜400 kcal/一日用量、より好ましくは250〜350 kcal/一日用量である。
【0036】
本明細書および特許請求の範囲において、“含む(to comprise)”の動詞およびその活用形は、非限定的な意味で使用され、その用語の後につづく項目を含むが、具体的に言及していない項目を除外しないことを意味する。加えて、不定冠詞“a”または“an”による構成要素の言及は、一つの構成要素およびたった一つの構成要素であることを文脈が明らかに要求していない限り、一より多い構成要素が存在する可能性を除外しない。よって、不定冠詞“a”または“an”は、通常「少なくとも一つ」を意味する。
【実施例】
【0037】
例1.HIV患者における腸の機能不全の治療のための液体栄養組成物
【表1】

【0038】
例2.HIV患者のためのパウダー栄養組成物
【表2】

【0039】
例3.コンプライアンスの改良のための液体および固体製品の栄養療法(regimen)
2.0 gのルリジサ油および3 gのEPA/DHA油を含む100 mlの液体栄養組成物、並びに20グラムの初乳および1.2グラムのNACを含む、室温で0.7未満の水分活性を有する100 gの固体または非水性組成物を含むパーツの栄養キット。
【0040】
例4.一日用量としてのHIV患者のための栄養組成物
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】スキームを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初乳、およびEPAを含む脂肪ブレンドを含む(HIV患者に特に適した)栄養組成物。
【請求項2】
脂肪ブレンドが、10〜40 wt%のEPAを含む、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項3】
脂肪ブレンドが、1〜25 wt%のDHAを更に含む、請求項1または2に記載の栄養組成物。
【請求項4】
脂肪ブレンドが、1〜15 wt%のGLAを更に含む、請求項1または2または3に記載の栄養組成物。
【請求項5】
脂肪ブレンドのn-3/n-6脂肪酸比が1〜3であり、n-3脂肪酸の重量パーセントが、脂肪ブレンドの全脂肪酸含量の15〜50%であり、n-6脂肪酸の重量パーセントが、脂肪ブレンドの全脂肪酸含量の10〜50%である、請求項1〜4の何れかに記載の栄養組成物。
【請求項6】
組成物が、一日用量で少なくとも100 mgのシステイン等価物を提供するシステインおよび/またはシステインの供給源を更に含む、請求項1〜5の何れかに記載の栄養組成物。
【請求項7】
システインの供給源が、N-アセチルシステイン、ホエー、卵タンパク質、またはその組合せである、請求項6に記載の栄養組成物。
【請求項8】
出産から1〜5日の間、好ましくは出産から1〜3日の間に雌牛から入手可能な新鮮な初乳に存在するのと少なくとも同じ量またはそれより多い量の抗体および増殖因子を含む哺乳類ミルク製品の抽出物と、前記初乳を部分的または完全に置き換えた、請求項1〜7の何れかに記載の栄養組成物。
【請求項9】
組成物が、15〜50 en%の脂質、25〜65 en%の初乳タンパク質、15〜45 en%の炭水化物、並びにシステインまたはNAC、ホエー、初乳、卵タンパク質もしくはその組合せからなる群より選択されるシステインの供給源を含む、請求項1〜8の何れかに記載の栄養組成物。
【請求項10】
HIV患者における腸の機能不全の予防および/または治療のための栄養組成物の製造のための、初乳、およびEPAを含む脂肪ブレンドの使用。
【請求項11】
栄養組成物が、一日用量で5〜50グラムの初乳タンパク質を含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
栄養組成物が、一日用量で少なくとも0.15 gのEPAを含む、請求項10または11に記載の使用。
【請求項13】
栄養組成物が、一日用量で0.15〜5 gのEPAおよび0.05〜2.5 gのGLAを含む、請求項10〜12の何れかに記載の使用。
【請求項14】
少なくとも一の固体組成物a)および少なくとも一の液体組成物b)を含むパーツの栄養キットであって、組成物a)が、初乳および好ましくはNACを含み、組成物b)が、10〜40 wt%のEPA、1〜25 wt%のDHA、および1〜15 wt%のGLAを含む脂肪ブレンドを含む、栄養キット。

【図1】
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【公表番号】特表2008−536914(P2008−536914A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507571(P2008−507571)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/NL2005/050082
【国際公開番号】WO2006/112694
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(505296821)エヌ.ブイ.・ヌートリシア (32)
【Fターム(参考)】