説明

HIV阻害2−(4−シアノフェニル)−6−ヒドロキシルアミノピリミジン

式(I)
【化1】


[式中、
はハロであり;
およびRは各々独立してC1〜6アルキルである]
のHIV複製阻害剤、その製薬学的に許容しうる付加塩;もしくは立体化学的異性体;有効成分としてこれらの化合物を含有する製薬学的組成物ならびにこれらの化合物および組成物を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)複製阻害特性を有する2−(4−シアノフェニル)−6−ヒドロキシルアミノピリミジンに関する。本発明は、さらに、これらのピリミジンの製造方法およびこれらの化合物を含んでなる製薬学的組成物およびHIV感染の防止もしくは処置におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在利用可能であるHIV薬に対するHIVウイルスの耐性は、治療の失敗の主な原因であり続ける。これは、通常は異なる活性プロフィールを有する2つもしくはそれ以上の抗HIV薬の併用療法の導入につながっている。HAART治療(高活性抗レトロウイルス療法)の導入により著しい進歩が遂げられ、それによりそれで処置したHIV患者集団における罹患率および死亡率の重要な低下がもたらされている。HAARTは、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)およびプロテアーゼ阻害剤(PI)の様々な組み合わせを伴う。抗レトロウイルス治療の現在の指針は、初期の処置にさえそのような3剤併用療法処方計画を推奨する。しかしながら、これらの多剤併用療法は必ずしも有効であるとは限らず、そしてHIVを完全に排除するというわけではない。抗HIV併用療法を受けている患者の半分は、主に使用する1つもしくはそれ以上の薬剤に対するウイルスの耐性のために、処置に十分に応答しないことが報告されている。代わりの組み合わせへの切り替えは、通常、一時的な軽減を与えるが、長期処置のいずれの形態も多剤耐性の発生のために最後には失敗する。さらに、耐性ウイルスは新規感染個体に持ち越されることが示されており、これらの薬剤未投与患者に非常に限られた治療選択肢をもたらす。
【0003】
HIVウイルスにおける標的とされる酵素は、既知の薬剤がこれらの突然変異体HIVウイルスに対して効果が低くなるか、もしくは効果がなくなりさえするように突然変異することができる。すなわち、言い換えれば、HIVウイルスは利用可能な薬剤に対して増え続ける耐性を作り出す。抗HIV治療に応答しない患者において見出されるNNRTIに耐性を示すHIV株のますます多くは、二重もしくは多重突然変異株でさえある。そのようなHIV突然変異体株は、逆転写酵素遺伝子で2つもしくはそれ以上の突然変異を保有し、そしてそれ故にNNRTIに基づく治療に対して強い耐性を示す。
【0004】
速く突然変異しそして既存の薬剤治療に対して耐性を作り出すその能力のために、HIVに対して有効である有効成分の新規組み合わせの継続する必要性がある。特に、併用療法の新規タイプにおける使用のための化学構造および活性プロフィールが異なる、抗HIV効果的有効成分の新規タイプの継続する必要性がある。二重および多重突然変異HIV株に対して有効である抗HIV効果的有効成分の新規タイプの特別な必要性がある。従って、そのような有効成分を見出すことは、達成すべき非常に望ましい目標である。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、特に薬剤の組み合わせの新規成分として、HIV治療において用途を見出し得る特定の新規な一連のビスアリール置換されたピリミジン誘導体を提供する。HIV複製阻害特性を有するビスアリール置換されたピリミジンは、WO00/27825から既知である。
【0006】
本発明の新規な一連のピリミジン誘導体は、特に逆転写酵素遺伝子で二重もしくは多重突然変異を有するHIV株に対して、HIV複製阻害特性の点において優れて作用する。
【0007】
本発明は式
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、
はハロであり;
およびRは各々独立してC1〜6アルキルである]
の化合物、その製薬学的に許容しうる付加塩;もしくは立体化学的異性体に関する。
【0010】
本明細書において用いる場合、「C1〜4アルキル」という用語は、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチル−1−プロピルなどのような1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基を定義し;「C1〜6アルキル」には、C1〜4アルキル基および1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチル−1−ブチル、2−メチル−1−ペンチルなどのような5もしくは6個の炭素原子を有するその高級同族体が包含される。C1〜6アルキルの中で興味深いのは、C1〜4アルキル基である。
【0011】
ハロという用語には、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードが包含される。
【0012】
治療的使用には、式(I)の化合物の塩は、対イオンが製薬学的に許容しうるものである。しかしながら、製薬学的に許容しうるものではない酸および塩基の塩もまた、例えば製薬学的に許容しうる化合物の製造もしくは精製において、用途を見出し得る。全ての塩は、製薬学的に許容しうるかもしくはそうでないにしても、本発明の範囲内に包含される。
【0013】
「製薬学的に許容しうる付加塩」という用語は、本明細書において用いる場合、式(I)の化合物が形成することのできる治療的に有効な無毒の酸付加塩形態を含んでなるものとする。後者は、無機酸、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸、臭化水素酸など;硫酸;硝酸;リン酸など;もしくは有機酸、例えば酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、2−ヒドロキシプロパン酸、2−オキソプロパン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、2−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸などのような適切な酸で塩基形態を処理することにより都合よく得ることができる。逆に、該塩形態は、アルカリでの処理により遊離塩基形態に転化することができる。酸性プロトンを含有する式(I)の化合物は、適切な有機および無機塩基での処理によりそれらの治療的に有効な無毒の金属もしくはアミン付加塩形態に転化することができる。
【0014】
付加塩という用語は、また、式(I)の化合物が形成することのできる水和物および溶媒付加形態も含んでなる。そのような形態の例は、例えば水和物、アルコラートなどである。
【0015】
式(I)の化合物およびそれらの付加塩のあるものは、1つもしくはそれ以上のキラリティー中心を含有し、そして立体化学的異性体として存在し得る。RおよびRがC4〜6アルキルである場合に立体異性体が存在し得る。「立体化学的異性体」という用語は、本明細書において用いる場合、式(I)の化合物およびそれらの付加塩が有することのできる可能な立体異性体の全てを定義する。式(I)の化合物の立体化学的異性体は、本発明の範囲内に包含されるものとする。
【0016】
化合物の好ましい亜群は、Rがクロロもしくはブロモである、より好ましくはRがブロモである、上記に特定したとおりの式(I)の化合物もしくは本明細書において特定した式(I)の化合物の任意の亜群である。
【0017】
化合物の別の好ましい亜群は、RおよびRがC1〜4アルキルである、より好ましくはRおよびRがメチルである、上記に特定したとおりの式(I)の化合物もしくは本明細書において特定した式(I)の化合物の任意の亜群である。
【0018】
特に興味深いのは、Rがブロモであり、RおよびRがメチルであるか;もしくはRがクロロであり、そしてRおよびRがメチルである化合物である。
【0019】
一般に、式(I)の化合物は、式(III)のピリミジン誘導体を式NHOPの保護されたヒドロキシルアミンと反応させ、かくして中間体(II)を得、後でそれから保護基を取り除くことにより製造することができる。式(III)のピリミジン誘導体における基Wは、ハロ、例えばクロロもしくはブロモのような適当な脱離基を表し、好ましくはそれはクロロである。
【0020】
【化2】

【0021】
代わりの態様において、以下の反応スキームにおけるように中間体(III)をヒドロ
キシルアミンと反応させて式(I)の化合物を直接製造することができる:
【0022】
【化3】

【0023】
適当な保護基(上記のスキームにおいてPで表される)には、メトキシエトキシメチル(MEM)、テトラヒドロピラニル(THP)、第三級ブチル(t.Bu)などのような酸分解により、またはベンジル(Bz)などのような水素化により取り除くことができるもの、酸性もしくは塩基性条件下で切断することができるトリメチルシリル(TMS)、t.ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、t.ブチルジフェニルシリルなどのようなトリアルキルシリル基を包含する当該技術分野において使用されるヒドロキシ保護基のいずれかが包含される。好ましいのは、THP基である。
【0024】
保護されたヒドロキシルアミンNHOPと出発物質(III)との反応は、好ましくは反応の経過中に遊離される酸を受け取るために加えることができる塩基、例えば炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩もしくは炭酸水素塩またはトリアルキルアミン、例えばトリエチルアミンのような有機塩基の存在下で、適当な溶媒において実施することができる。適当な溶媒には、例えば、アセトニトリル、アルコール、例えばエタノール、2−プロパノール;極性非プロトン性溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン、アセトニトリル;エーテル、例えば1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフランが包含される。好ましいのはエーテル、特にテトラヒドロフランである。
【0025】
このようにして得られる中間体(II)における基Pは、当該技術分野で既知の方法に従って除去することができる。PがTHPである場合、それは塩酸のようなハロゲン化水素酸で、スルホン酸で、またスルホン基含有イオン交換樹脂のような酸性樹脂でものような酸性条件下で都合よく取り除くことができる。
【0026】
化合物(I)はまた、ヒドロキシルアミンを用いて(III)から直接製造することもできる。この反応は、保護されたヒドロキシルアミンと(III)とのものと同様の条件を用いて行うことができる。
【0027】
式(I)の化合物の製造の上記の合成方法において、そしてまた中間体の製造の以下の方法においても、基Rはハロであるが、それはまたPOClもしくはPOBrのようなハロゲン化剤でハロ基に転化することができるヒドロキシもしくは保護されたヒドロキシ(例えばベンジルオキシ)のようなハロ基の前駆体を表すこともできる。これは、望ましくない副反応を防ぐために行うことができる。
【0028】
式(II)の中間体はまた、以下の反応スキームにおいて概説するように、式(IV)もしくは(VI)の中間体を式(V)もしくは(VII)の中間体と反応させることにより製造することもでき、ここで、R、RおよびRは式(I)の化合物もしくはその任意の亜群について特定したとおりであり、そしてWは例えばハロゲン、例えばクロロ、ブロモなどのような適当な脱離基を表す。式(II)の中間体は、脱保護反応により式(I)の最終生成物に転化することができる。あるいはまた、化合物(I)が直接得られるようにヒドロキシルアミノ基が保護されていない中間体(IV)もしくは(VI)を用いることができる。
【0029】
【化4】

【0030】
ピリミジン誘導体(IV)および(VI)のそれぞれとシアノアニリン(V)およびシアノフェニル誘導体(VII)のそれぞれとの反応は、好ましくは、例えばアセトニトリル、例えばエタノール、2−プロパノールのようなアルコール;N,N−ジメチルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン;エーテル、例えば1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アセトニトリルのような適当な溶媒において行われる。反応は、適当な酸、例えばショウノウスルホン酸および例えばテトラヒドロフランもしくはアルコール、例えばエタノール、1−もしくは2−プロパノールのような適当な溶媒の量を加えることにより、または酸性化溶媒、例えばエタノール、1−もしくは2−プロパノールのようなアルカノールに溶解した塩酸を用いることにより得ることができる酸性条件下で行うことができる。
【0031】
代わりの態様において、保護されていないピリミジン誘導体(IV)、すなわち、Pが水素である中間体(IV)を(V)と反応させ、このようにして式(I)の最終生成物を直接生成せしめることができる。副反応を防ぐために、保護された中間体(IV)を使用することおよび後で基Pを取り除くことが好ましい。
【0032】
式(II)の中間体はまた、以下のスキームにおいて概説するように、シアノフェニル誘導体(VIII)をピリミジン誘導体(IX)と反応させることにより、もしくはシアノフェニル誘導体(X)をピリミジン誘導体(XI)と反応させることにより製造することもできる。
【0033】
【化5】

【0034】
これらの反応スキームにおいて、R、RおよびRは式(I)の化合物もしくはその任意の亜群について特定したとおりであり、Pは上記に特定したとおりの保護基であり、そしてWは上記に特定したとおりの適当な脱離基を表す。これらの反応は、好ましくは適当な溶媒、特に(V)と(IV)との反応に関して上記に挙げた溶媒のいずれかにおいて行われる。
【0035】
代わりの態様において、保護されていないピリミジン誘導体(IX)もしくは(XI)、すなわち、Pが水素である中間体(IX)もしくは(XI)を(VIII)もしくは(X)と反応させ、このようにして式(I)の最終生成物を直接生成せしめることができる。副反応を防ぐために、保護された中間体(IX)もしくは(XI)を使用することおよび後で基Pを取り除くことが好ましい。
【0036】
式(I)の化合物はさらに、当該技術分野で既知の基転化反応に従って式(I)の化合物を相互に転化することにより製造することができる。例えばクロロアナログは、ハロゲン交換反応により、対応するブロモアナログに転化することができ、逆もまた同様である。
【0037】
式(I)の化合物のあるものおよびその前駆体中間体のあるものは、不斉原子を含有し得る。該化合物および該中間体の純粋な立体化学的異性体は、当該技術分野で既知の方法の適用により得ることができる。
【0038】
前の反応スキームにおいて使用するいくつかの中間体の合成は以下に記述され、ここで、反応スキームにおいてR、RおよびRは式(I)の化合物もしくはその任意の亜群について特定したとおりであり、そしてWは適当な脱離基、特にクロロもしくはブロモを表す。
【0039】
式(III)の出発物質は、WO−00/27825に記載のとおり製造することができる。特に、それらは以下のスキームにおいて概説するとおり製造することができる。
【0040】
【化6】

【0041】
置換された4−シアノフェノール(VIII)をピリミジン誘導体(XII)と反応させ、ここで、各Wは独立して上記に特定したような脱離基を表す。
【0042】
式(IV)の中間体は、以下の反応スキームにおいて概説するように製造することができる。
【0043】
【化7】

【0044】
同様に、中間体(VI)は、以下のスキームにおいて概説するようにピリミジン(XIV)から出発して製造することができる。
【0045】
【化8】

【0046】
上記の反応において、アミノ基は適当な保護基で保護されることができ、もしくはそうでないかもしれない。代わりの態様において、保護されていないピリミジン誘導体(XIII)もしくは(XIV)、すなわち、Pが水素である中間体(XIII)もしくは(XIV)を(VIII)もしくは(X)と反応させることができる。副反応を防ぐために、保護された中間体(XIII)もしくは(XIV)を使用することおよび後で基Pを取り
除くことが好ましい。
【0047】
中間体(IX)は、以下のスキームにおいて概説するようにピリミジン誘導体(XIII)をシアノアニリン(V)と縮合することにより製造することができる。所望に応じて副反応を防ぐために、反応していないW基および/もしくはRは上記のようにハロの前駆体であることができる。
【0048】
【化9】

【0049】
中間体(XI)は、以下のスキームにおいて概説するようにピリミジン誘導体(XV)をシアノアニリン(V)と縮合することにより製造することができる。所望に応じて副反応を防ぐために、(XV)におけるヒドロキシ基を保護することができ、そしてRは上記のようにハロの前駆体であることができる。
【0050】
【化10】

【0051】
さらなる態様において、本発明は式
【0052】
【化11】

【0053】
[式中、
、RおよびRは本明細書および請求項において特定したとおりであり、そしてPはヒドロキシ保護基である]
の化合物もしくはその酸付加塩;その立体化学的異性体を提供する。好ましい酸付加塩は、製薬学的に許容しうる酸付加塩、特に上記のものである。保護基Pは、上記に特定したとおりであることができる。
【0054】
なおさらなる態様において、本発明は、Wがクロロであり、Rがブロモであり、そしてRおよびRがメチルである式(III)の化合物もしくはその酸付加塩を提供し、この化合物は式(III−a):
【0055】
【化12】

【0056】
により表すことができる。好ましい酸付加塩は、製薬学的に許容しうる酸付加塩、特に上記のものである。
【0057】
式(I)の化合物は、特にヒトにおける後天性免疫不全症候群(エイズ)の病原因子であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対して、抗レトロウイルス特性(逆転写酵素阻害特性)を示す。HIVウイルスは、ヒトT−4細胞に優先的に感染し、そしてそれらを破壊するかもしくはそれらの正常な機能、特に免疫系の調整を変える。結果として、感染患者は減少し続ける数のT−4細胞を有し、それらはさらに異常に機能する。従って、免疫学的防御系は感染および新生物と闘ことができず、そしてHIV感染患者は通常は肺炎のような日和見感染でもしくは癌で死亡する。HIV感染と関連する他の症状には、血小板減少症、カポジ肉腫および進行性脱髄を特徴とする中枢神経系の感染が包含され、認知症ならびに進行性構音障害、運動失調および見当識障害のような症状をもたらす。HIV感染はさらにまた、末梢神経障害、進行性全身性リンパ節腫脹(PGL)およびエイズ関連症候群(ARC)とも関連している。
【0058】
本発明の化合物はまた、(多)薬剤耐性HIV株、特に(多)薬剤耐性HIV−1株に対する活性も示し、さらに特に本発明の化合物はHIV株、特に1つもしくはそれ以上の当該技術分野で既知の非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤への耐性を獲得しているHIV−1株に対する活性を示す。当該技術分野で既知の非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は、本発明の化合物以外のそして当業者に既知である非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、特に市販の非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤である。本発明の化合物はまた、ヒトα−1酸性糖タンパク質にほとんどもしくは全く結合親和性を有さず;ヒトα−1酸性糖タンパク質は、本発明の化合物の抗HIV活性に影響を及ぼさないかもしくは弱く影響を及ぼすだけである。
【0059】
式(I)の化合物、その製薬学的に許容しうる付加塩および立体化学的異性体は、それらの抗レトロウイルス特性、特にそれらの抗HIV特性、特にそれらの抗HIV−1活性のために、HIVに感染した個体の処置において、そしてこれらの感染の予防のために有用である。一般に、本発明の化合物は、その存在が酵素逆転写酵素により媒介されるかもしくはそれに依存するウイルスに感染した温血動物の処置において有用であることができる。本発明の化合物で防止するかもしくは処置することができる症状、特にHIVおよび他の病原性レトロウイルスと関連する症状には、エイズ、エイズ関連症候群(ARC)、進行性全身性リンパ節腫脹(PGL)、ならびに例えばHIVに媒介される認知症および多発性硬化症のような、レトロウイルスにより引き起こされる慢性中枢神経系疾患が包含される。
【0060】
従って、本発明の化合物もしくはその任意の亜群は、上記の症状に対する薬剤として用いることができる。薬剤としての該使用もしくは処置の方法は、HIVおよび他の病原性レトロウイルス、特にHIV−1と関連する症状と闘うために有効な量のHIV感染患者への投与を含んでなる。特に、式(I)の化合物は、HIV感染の処置もしくは防止のための薬剤の製造において用いることができる。
【0061】
本発明のさらなる態様において、ウイルス感染、特にHIV感染を患っているヒトを包含する温血動物を処置する方法もしくはヒトを包含する温血動物が患うのを防ぐ方法が提供される。該方法は、ヒトを包含する温血動物への式(I)の化合物、その製薬学的に許容しうる付加塩もしくは可能な立体異性体の有効量の投与、好ましくは経口投与を含んでなる。
【0062】
別の態様において、式(I)の化合物もしくはその任意の亜群は、式(I)の化合物もしくはその任意の亜群の有効量を該哺乳類に投与することを含んでなる、突然変異体HIVウイルスでの哺乳類の感染もしくは感染と関連する疾患を防止するか、処置するかもしくはそれと闘う方法において有用である。
【0063】
別の態様において、式(I)の化合物もしくはその任意の亜群は、式(I)の化合物もしくはその任意の亜群の有効量を該哺乳類に投与することを含んでなる、多剤耐性HIVウイルスでの哺乳類の感染もしくは感染と関連する疾患を防止するか、処置するかもしくはそれと闘う方法において有用である。
【0064】
さらに別の態様において、式(I)の化合物もしくはその任意の亜群は、式(I)の化合物もしくはその任意の亜群の有効量を阻害を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、HIVウイルス、特に突然変異体HIV逆転写酵素、さらに特に多剤耐性突然変異体HIV逆転写酵素を有するHIVウイルスの複製を阻害する方法において有用である。
【0065】
好ましくは、本発明の方法において記載したような哺乳類はヒトである。
【0066】
本発明はまた、式(I)の化合物の治療的に有効な量および製薬学的に許容しうる担体もしくは希釈剤を含んでなるウイルス感染を処置するための組成物も提供する。
【0067】
本発明の化合物もしくはその任意の亜群は、投与目的のための様々な製薬学的形態に調合することができる。適切な組成物として、薬剤を全身的に投与するために通常用いられる全ての組成物を挙げることができる。本発明の製薬学的組成物を製造するために、有効成分として、場合により付加塩形態の、特定の化合物の有効量を製薬学的に許容しうる担体と緊密に混合して合わせ、この担体は、投与に所望される製剤の形態により多種多様な形態をとることができる。これらの製薬学的組成物は、特に経口的、経直腸的、経皮的、もしくは非経口注入による投与に適当な単位投与形態物が望ましい。例えば、経口用投与形態物の組成物を製造することにおいて、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、エマルジョンおよび液剤のような経口用液状製剤の場合には例えば水、グリコール、油、アルコールなどのような通常の製薬学的媒質のいずれかを;または散剤、丸剤、カプセル剤および錠剤の場合には澱粉、糖、カオリン、希釈剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などのような固形担体を用いることができる。
【0068】
錠剤およびカプセル剤は、それらの投与の容易さのために、最も都合のよい経口用投与単位形態物に相当し、この場合、固形の製薬学的担体が明らかに用いられる。非経口組成物では、担体は、例えば溶解性を促進するために他の成分を含むことができるが、通常、少なくとも大部分において滅菌水を含んでなる。例えば、注入可能な液剤を製造すること
ができ、ここで、担体は食塩水溶液、グルコース溶液もしくは食塩水とグルコース溶液の混合物を含んでなる。注入可能な懸濁剤もまた製造することができ、この場合、適切な液状担体、沈殿防止剤などを用いることができる。また包含されるのは、使用直前に液状製剤に転化することが意図される固形製剤である。経皮投与に適当な組成物において、担体は、場合によりわずかな割合の任意の性質の適当な添加剤と組み合わせて、場合により浸透促進剤および/もしくは適当な湿潤剤を含んでなり、これらの添加剤は皮膚に重大な悪影響をもたらさない。該添加剤は、皮膚への投与を容易にすることができ、そして/もしくは所望の組成物を製造するのに役立つことができる。これらの組成物は様々な方法で、例えば経皮パッチとして、スポットオンとして、軟膏として投与することができる。本発明の化合物はまた、吸入もしくは吹送によって、この手段による投与に当該技術分野において用いられる方法および製剤を用いて投与することもできる。従って、一般に本発明の化合物は、液剤、懸濁剤もしくは乾燥粉末の形態で肺に投与することができる。経口もしくは経鼻吸入もしくは吹送による液剤、懸濁剤もしくは乾燥粉末の送達用に開発される任意の系は、本発明の化合物の投与に適している。
【0069】
式(I)の化合物の溶解性を促進するために、適当な成分、例えばシクロデキストリンを組成物に含むことができる。適切なシクロデキストリンは、α−、β−、γ−シクロデキストリンもしくはそのエーテルおよび混合エーテル(ここで、シクロデキストリンのアンヒドログルコース単位のヒドロキシ基の1つもしくはそれ以上は、C1〜6アルキル、特にメチル、エチルもしくはイソプロピル(例えばランダムにメチル化されたβ−CD);ヒドロキシC1〜6アルキル、特にヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルもしくはヒドロキシブチル;カルボキシC1〜6アルキル、特にカルボキシメチルもしくはカルボキシエチル;C1〜6アルキルカルボニル、特にアセチルで置換される)である。コンプレクサント(complexants)および/もしくは可溶化剤として特に特筆すべきは、β−CD、ランダムにメチル化されたβ−CD、2,6−ジメチル−β−CD、2−ヒドロキシエチル−β−CD、2−ヒドロキシエチル−β−CD、2−ヒドロキシプロピル−β−CDおよび(2−カルボキシメトキシ)プロピル−β−CD、そして特に2−ヒドロキシプロピル−β−CD(2−HP−β−CD)である。別のタイプの置換されたシクロデキストリンは、スルホブチルシクロデキストリンである。
【0070】
混合エーテルという用語は、少なくとも2つのシクロデキストリンヒドロキシ基が例えばヒドロキシプロピルおよびヒドロキシエチルのような異なる基でエーテル化されるシクロデキストリン誘導体を意味する。
【0071】
平均モル置換(M.S.)は、アンヒドログルコースのモル当たりのアルコキシ単位の平均モル数の尺度として用いられる。平均置換度(D.S.)は、アンヒドログルコース単位当たりの置換されたヒドロキシルの平均数をさす。M.S.およびD.S.値は、核磁気共鳴(NMR)、質量分析法(MS)および赤外分光法(IR)のような様々な分析技術により決定することができる。使用する技術により、わずかに異なる値が1つの既定のシクロデキストリン誘導体に対して得られる可能性がある。好ましくは、質量分析法により測定した場合に、M.S.は0.125〜10の間であり、そしてD.S.は0.125〜3の間である。
【0072】
経口もしくは直腸投与のための他の適当な組成物は、式(I)の化合物および1つもしくはそれ以上の適切な製薬学的に許容しうる水溶性ポリマーを含んでなる固体分散体からなる粒子を含んでなる。
【0073】
下記に使用する「固体分散体」という用語は、一方の成分がもう一方の成分もしくは複数の成分(可塑剤、防腐剤などのような、当該技術分野において一般に既知である追加の製薬学的に許容しうる調合剤が含まれる場合)の全体にわたって大体均一に分散している
、少なくとも2つの成分、特に(in casu)式(I)の化合物および水溶性ポリマー、を含んでなる固体状態(液体もしくは気体状態とは対照的に)の系を定義する。該系が全体にわたって化学的にそして物理的に均一もしくは均質であるかまたは熱力学において定義されるように1相からなるように成分の該分散体が存在する場合、そのような固体分散体は「固溶体」と呼ばれる。固溶体は、その中の成分がそれらを投与する生物に対して通常は容易に生物学的に利用可能であるので好ましい物理系である。
【0074】
「固体分散体」という用語はまた、固溶体より全体にわたって均質さが低い分散体も含んでなる。そのような分散体は、全体にわたって化学的にそして物理的に均一ではないかもしくは1つより多くの相を含んでなり、例えば、系は、式(I)の非晶質、微晶質もしくは結晶化合物、または非晶質、微晶質もしくは結晶水溶性ポリマー、または両方が、水溶性ポリマー、もしくは式(I)の化合物を含んでなる別の相、または式(I)の化合物および水溶性ポリマーを含んでなる固溶体に大体均一に分散しているドメインもしくは小領域を有する。該ドメインは、いくつかの物理的特徴を顕著に特徴とし、サイズが小さく、そして固体分散体の全体にわたって均一に且つランダムに分散している固体分散体内の領域である。
【0075】
溶融押し出し、噴霧乾燥および溶解蒸発を包含する様々な技術が、固体分散体を製造するために存在する。固体分散体を製造した後に、得られる生成物を場合により粉砕しそしてふるいにかけることができる。固体分散体生成物は、600μm未満、好ましくは400μm未満、そして最も好ましくは125μm未満の粒子サイズを有する粒子に粉砕するかもしくは砕くことができる。次に、上記のように製造した粒子を錠剤およびカプセル剤のような製薬学的投与形態物に通常の技術により調合することができる。
【0076】
粒子における水溶性ポリマーは、2%(w/v)で水溶液に20℃で溶解した場合に、1〜5000mPa.sの、より好ましくは1〜700mPa.sの、そして最も好ましくは1〜100mPa.sの見掛けの粘度を有するポリマーである。例えば、適当な水溶性ポリマーには、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩、カルボキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースエステル、澱粉、ペクチン、キチン誘導体、トレハロースのような二糖、オリゴ糖および多糖、アルギン酸もしくはそのアルカリ金属およびアンモニウム塩、カラギーナン、ガラクトマンナン、トラガカント、寒天−寒天、アラビアゴム、グアルゴムおよびキサンタンゴム、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、メタクリレートコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンとのコポリマー、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの組み合わせ、ポリアルキレンオキシドおよびエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーが包含される。好ましい水溶性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0077】
また、1つもしくはそれ以上のシクロデキストリンをWO97/18839に開示されているように上記の粒子の製造において水溶性ポリマーとして用いることもできる。これらのシクロデキストリンには、当該技術分野において既知である製薬学的に許容しうる非置換のおよび置換されたシクロデキストリン、さらに特にα、βもしくはγシクロデキストリンまたはその製薬学的に許容しうる誘導体が包含される。
【0078】
上記の粒子を製造するために用いることができる置換されたシクロデキストリンには、米国特許3,459,731に記述されているポリエーテルが包含される。さらなる置換されたシクロデキストリンは、式(I)の化合物の溶解性を促進するための薬剤として上に記述したものである。
【0079】
水溶性ポリマーに対する式(I)の化合物の比率は、広く異なり得る。例えば、1/100〜100/1の比率を適用することができる。シクロデキストリンに対する式(I)の化合物の興味深い比率は、約1/10〜10/1の間である。さらに興味深い比率は、約1/5〜5/1の間である。
【0080】
さらに、1000nm未満の有効平均粒子サイズを維持するために十分な量でその表面上に吸着した表面改質剤を有するナノ粒子の形態の式(I)の化合物を調合することは好都合であり得る。有用な表面改質剤には、式(I)の化合物の表面に物理的に接着するが該化合物に化学的に結合しないものが包含されると考えられ、そして既知の有機および無機製薬学的賦形剤から選択することができる。そのような賦形剤には、様々なポリマー、低分子量オリゴマー、天然物および界面活性剤が包含される。好ましい表面改質剤には、非イオン性および陰イオン界面活性剤が包含される。
【0081】
式(I)の化合物を調合するさらに別の興味深い方法は製薬学的組成物を含み、それにより、式(I)の化合物を親水性ポリマーに導入し、そしてこの混合物を多数の小ビーズ上に被覆フィルムとして適用し、このようにして都合よく製造することができそして経口投与用の製薬学的投与形態物を製造するために適当な組成物を生成せしめる。そのようなビーズは、中心の丸いもしくは球状のコア、親水性ポリマーのコーティングフィルムおよび式(I)の化合物ならびに場合により密封コーティング層を含んでなる。ビーズにおけるコアとしての使用に適当な材料はマニホールドであり、ただし、該材料は製薬学的に許容でき、そして適切な大きさおよび硬度を有する。そのような材料の例は、ポリマー、無機物質、有機物質ならびに糖およびその誘導体である。
【0082】
投与の容易さおよび投薬量の均一性のために単位投与形態物の上記の製薬学的組成物を調合することは特に好都合である。単位投与形態物は、本明細書において用いる場合、単位投薬量として適当な物理的に別個の単位をさし、各単位は、必要な製薬学的担体と会合して所望の治療効果をもたらすように計算された有効成分の所定の量を含有する。そのような単位投与形態物の例は、錠剤(分割錠もしくはコート錠を包含する)、カプセル剤、丸剤、散剤パケット、カシェ剤、座薬、注入可能な液剤もしくは懸濁剤など、およびその分離した倍量である。
【0083】
HIV感染の処置における当業者は、本明細書に提示する試験結果から有効毎日量を決定することができる。一般に、有効毎日量は0.01mg/kg〜50mg/kg体重、より好ましくは0.1mg/kg〜10mg/kg体重であると考えられる。必要な用量を1日を通して適切な間隔で2、3、4もしくはそれ以上のサブ用量(sub−doses)として投与することは、適切であり得る。該サブ用量は、例えば単位投与形態物当たり1〜1000mg、そして特に5〜200mgの有効成分を含有する、単位投与形態物として調合することができる。
【0084】
正確な投薬量および投与の頻度は、当業者に周知であるように、使用する式(I)の特定の化合物、処置する特定の症状、処置する症状の重症度、特定の患者の年齢、体重および一般的な身体状態ならびに該個体が服用し得る他の薬剤により決まる。さらに、該有効毎日量は、処置した患者の応答によりそして/もしくは本発明の化合物を処方する医師の評価により減らすかもしくは増やすことができることは明らかである。従って、上記の有効毎日量範囲は指針でしかなく、そして本発明の範囲もしくは使用をいかなる程度にも限定するものではない。
【0085】
式(I)の本発明の化合物は、ウイルス感染の処置のために単独でまたは抗ウイルス薬、抗生物質、免疫調節剤もしくはワクチンのような他の治療薬と組み合わせて使用することができる。それらはまた、ウイルス感染の防止のために単独でもしくは他の予防薬と組み合わせて使用することもできる。本発明の化合物は、ワクチンおよび個体を長期にわたってウイルス感染から守る方法において用いることができる。該化合物は、ワクチンにおける逆転写酵素阻害剤の通常の利用と一致する方法で単独でもしくは本発明の他の化合物と一緒にもしくは他の抗ウイルス薬と一緒にそのようなワクチンにおいて用いることができる。従って、本発明の化合物は、ワクチンにおいて通常用いられる製薬学的に許容しうる添加剤と組み合わせ、そしてHIV感染から長期にわたって個体を守るために予防的に有効な量で投与することができる。
【0086】
また、1つもしくはそれ以上の追加の抗レトロウイルス化合物と式(I)の化合物の組み合わせを薬剤として用いることができる。従って、本発明はまた、抗HIV処置における同時、別個もしくは順次使用のための組み合わせた製剤として、(a)式(I)の化合物および(b)1つもしくはそれ以上の追加の抗レトロウイルス化合物を含有する製品にも関する。異なる薬剤は、製薬学的に許容しうる担体と一緒に単一の製剤に合わせることができる。該他の抗レトロウイルス化合物は、スラミン、ペンタミジン、チモペンチン、カスタノスペルミン、デキストラン(デキストラン硫酸)、フォスカルネット−ナトリウム(ホスホノギ酸三ナトリウム);ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、例えばジドブジン(AZT)、ジダノシン(ddI)、ザルシタビン(ddC)、ラミブジン(3TC)、スタブジン(d4T)、エムトリシタビン(FTC)、アバカビル(ABC)、D−D4FC(ReversetTM)、アロブジン(MIV−310)、アムドキソビル(amdoxovir)(DAPD)、エルブシタビン(elvucitabine)(ACH−126,443)など;デラルビジン(delarvidine)(DLV)、エファビレンズ(EFV)、ネビラピン(NVP)、カプラビリン(CPV)、カラノリドA、TMC120、エトラビリン(TMC125)、TMC278、BMS−561390、DPC−083などのような非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI);ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NtRTI)、例えばテノフォビル(TDF)およびフマル酸テノフォビルジソプロキシルなど;TIBO(テトラヒドロイミダゾ−[4,5,1−jk][1,4]−ベンゾジアゼピン−2(1H)−オンおよびチオン)タイプの化合物、例えば(S)−8−クロロ−4,5,6,7,−テトラヒドロ−5−メチル−6−(3−メチル−2−ブテニル)イミダゾ−[4,5,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン−2(1H)−チオン;α−APA(α−アニリノフェニルアセトアミド)タイプの化合物、例えばα−[(2−ニトロフェニル)アミノ]−2,6−ジクロロベンゼン−アセトアミドなど;TAT−インヒビターのようなトランス活性化タンパク質の阻害剤、例えばRO−5−3335;REV阻害剤;プロテアーゼ阻害剤、例えばリトナビル(RTV)、サキナビル(SQV)、ロピナビル(ABT−378もしくはLPV)、インジナビル(IDV)、アンプレナビル(VX−478)、TMC−126、BMS−232632、VX−175、DMP−323、DMP−450(モゼナビル(Mozenavir))、ネルフィナビル(AG−1343)、アタザナビル(BMS232,632)、パリナビル、TMC−114、RO033−4649、ホスアンプレナビル(GW433908もしくはVX−175)、P−1946、BMS186,318、SC−55389a、L−756,423、チプラナビル(PNU−140690)、BILA 1096 BS、U−140690など;侵入阻害剤、これは融合阻害剤(例えばT−20、T−1249)、吸着阻害剤およびコレセプター阻害剤を含んでなる;後者はCCR5アンタゴニストおよびCXR4アンタゴニスト(例えばAMD−3100)を含んでなる;侵入阻害剤の例はエンフビルチド(ENF)、GSK−873,140、PRO−542、SCH−417,690、TNX−355、マラビロク(UK−427,857)である;成熟阻害剤は例えばPA−457(Panacos Pharmaceuticals)である;ウイルスインテグラーゼの阻害剤;リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤(細胞阻害剤)、例えばヒドロキシウレアなどのような任意の既知の抗レトロウイルス化合物であることができる。
【0087】
本発明の化合物をウイルス生活環における異なる事象を標的とする他の抗ウイルス薬と投与することにより、これらの化合物の治療効果を増強することができる。上記のような併用療法は、該組み合わせの各成分がHIV複製の異なる部位に作用するのでHIV複製を阻害することにおいて相乗効果を及ぼす。そのような組み合わせの使用は、その薬剤を単剤療法として投与する場合と比較して所望の治療もしくは予防効果に必要とされる既定の従来の抗レトロウイルス薬の投薬量を減らすことができる。これらの組み合わせは、薬剤の抗ウイルス活性を妨げることなしに通常の単独の抗レトロウイルス治療の副作用を減らすかもしくは除くことができる。これらの組み合わせは、任意の関連する毒性を最小限に抑えながら、単剤療法への耐性の可能性を減らす。これらの組み合わせはまた、関連する毒性を増加することなしに従来の薬剤の効能を増加することもできる。
【0088】
本発明の化合物はまた、感染ならびにエイズおよびARC、例えば認知症のようなHIV感染と関連する疾患もしくは疾患の症状を防ぐかもしくはそれと闘うために免疫調節剤、例えばラバミソール、ブロピリミン、抗ヒトアルファインターフェロン抗体、インターフェロンアルファ、インターロイキン2、メチオニンエンケファリン、ジエチルジチオカルバメート、腫瘍壊死因子、ナルトレキソンなど;抗生物質、例えばイセチオン酸ペンタミジンなど;コリン作動薬、例えばタクリン、リバスティグミン、ドネペジル、ガランタミンなど;NMDAチャンネル遮断薬、例えばメマンチンと組み合わせて投与することもできる。式(I)の化合物はまた、式(I)の別の化合物と組み合わせることもできる。
【0089】
本発明はHIV感染を防止するかもしくは処置するための本発明の化合物の使用に焦点を当てるが、本発明の化合物はまた、それらの生活環における必須の事象のために同様の逆転写酵素に依存する他のウイルスの阻害剤として用いることもできる。
【0090】
本発明のピリミジン誘導体は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の複製を阻害するそれらの能力に関して好都合に作用するだけでなく、突然変異体株、特に逆転写酵素をコードするウイルスゲノムにおいて二重もしくは多重突然変異を示す株の複製を阻害する向上した能力も示す。従って、本発明の化合物は、1つもしくはそれ以上の既知のNNRTI薬(非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬)に耐性になっているHIVに感染した患者の処置において用途を見出すことができ、それらの株は薬剤もしくは多剤耐性HIV株と呼ばれる。
【0091】
以下の実施例は本発明を説明するものとし、そしてそれにその範囲を限定するものではない。
[実施例]
【実施例1】
【0092】
2.11gの4−[(4,6−ジクロロ−2−ピリミジニル)アミノ]ベンゾニトリル(0.00796mol)に500mlのCHClを加え、そして混合物を300分間攪拌して出発化合物のほとんど全てを溶解させた。1−ブロモ−2,5−ピロリジンジオン(0.0397mol)を一度に加え、そして反応混合物を室温で攪拌した。約30分後に、混合物は清澄な橙色の溶液になり、そして反応物は時間とともに次第に赤みを帯びできた。40時間後に、TLCおよびHPLC/MSは、反応が完了したことを示した。溶離剤としてCHClを用いてフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより反応混合物を精製した。所望の生成物を含有する画分を単離し、そして溶媒を蒸発させた。残留物をアセトニトリルから再結晶化させて1.51gの4−[(5−ブロモ−4,6−ジクロロ−2−ピリミジニル)アミノ]ベンゾニトリルを生成せしめた、収率55%(中間体1)。
【実施例2】
【0093】
0.47gの4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンゾニトリル(0.00320mol)および1,4−ジオキサン(3ml)の混合物をアルゴンガス下で圧力管に加えた。0.13gのNaH60%(0.00320mol)を加え、そして混合物を2分間攪拌した。1−メチル−2−ピロリジノン(3ml)を加え、そして混合物を10分間攪拌した。中間体1(0.00291mol)を加え、そして混合物を密封管において155℃で16時間加熱した。混合物を水(15ml)に注ぎ込んだ。管を水、1,4−ジオキサン(11ml)で、そして再び水で洗浄し、そして反応混合物を注ぎ込んだ水相と洗浄物を合わせた。このようにして得られる溶液を15分間攪拌し、そして冷蔵庫に入れた。得られる物質を濾過して1.43gの4−[[5−ブロモ−6−クロロ−2−[(4−シアノフェニル)アミノ]−4−ピリミジニル]オキシ]−3,5−ジメチルベンゾニトリルを得た、収率45%(中間体2)。
【実施例3】
【0094】
4−[[6−テトラヒドロピラニルオキシアミノ−5−ブロモ−2−[(4−シアノフェニル)アミノ]−4−ピリミジニル]オキシ]−3,5−ジメチルベンゾニトリルの合成
【0095】
【化13】

【0096】
実施例2に記載のとおりに得られる、中間体2(1.55g、2.89mmol)のHBr塩、トリエチルアミン(1.43ml、1.04g、10.2mmol、3.5当量)およびO−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)ヒドロキシルアミン(2.00g、17.1mmol、5.9当量)の混合物をTHF(30ml)において一晩還流させた。LCMS分析は、50%の転化を示した。別のバッチのO−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)ヒドロキシルアミン(1.00g、8.54mmol、3当量)を加え、そして反応混合物を週末にわたって還流させた。LCMS分析は、完全な転化を示した。反応混合物を冷却し、シリカゲルを加え、そしてTHFを蒸発させた。0.3%のトリエチルアミンを含有するヘプタン/EtOAc 2/1を用いるカラムクロマトグラフィーにより2.7gの黄色の油を生成せしめ、それをEtOAcに溶解し、2回飽和NHCl、水およびブラインで洗浄した。NaSOで乾燥させた後に、1.43g(92%)の白黄色の泡状物(foam)が得られた(中間体3)。
LCMS分析(4ml/分の直線勾配t100%10mM水性HCOOH/アセトニトリル〜t10100%10mM水性HCOOH/アセトニトリル、UV−DAD):98%純粋、t=7.2分、質量スペクトルm/z533,535[M−H]
【実施例4】
【0097】
4−[[6−ヒドロキシルアミノ−5−ブロモ−2−[(4−シアノフェニル)アミノ]−4−ピリミジニル]オキシ]−3,5−ジメチルベンゾニトリルの合成
【0098】
【化14】

【0099】
メタノール中の中間体3(1.40g、2.61mmol)およびAmberlyst−15(1.10g、80wt%)の混合物をアルゴン下で室温で一晩攪拌した。Amberlyst−15を濾過により分離し、そして濾液を濃縮し、THFに溶解し、そしてシリカゲルに結合させた。ヘプタン/EtOAc 1/1を用いるカラムクロマトグラフィーは、部分的な分離のみを与えた。純粋画分を蒸発させ、そして残留固体をジクロロメタン中で攪拌し、濾過して250mg(21%)の化合物1を白色の固体として生成せしめた。混合画分はまた所望の生成物を含有したが、これらはさらに精製せず、分析した;mp211℃(分解)。
H NMR(300MHz、DMSO)δ2.14(s、6H)、7.41(d、2H)、7.55(d、2H)、7.75(s、2H)、9.08(2、1H)、9.88(s、1H)、9.94(2、1H)。
LCMS分析(1ml/分の直線勾配t95%10mM水性HCOOH/アセトニトリル〜t155%10mM水性HCOOH/アセトニトリル、UV−DAD):98%純粋、t=9.90分、質量スペクトルm/z449,451[M−H]
【実施例5】
【0100】
製剤
カプセル剤
実施例4において記述した化合物である化合物1をエタノール、メタノールもしくは塩化メチレンのような有機溶媒、好ましくはエタノールと塩化メチレンの混合物に溶解する。酢酸ビニルとのポリビニルピロリドンコポリマー(PVP−VA)もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のようなポリマー、典型的に5mPa.sをエタノール、メタノール、塩化メチレンのような有機溶媒に溶解する。好適には、ポリマーをエタノールに溶解する。ポリマーおよび化合物溶液を混合し、そして次に噴霧乾燥させる。化合物/ポリマーの比率は、1/1〜1/6から選択する。中間範囲は、1/1.5および1/3であることができる。適当な比率は、1/6であることができる。次に、噴霧乾燥した粉末、固体分散体を投与用のカプセルに詰める。1個のカプセルにおける薬剤装填量は、使用するカプセルサイズにより50〜100mgの間である。
【0101】
フィルムコート錠
錠剤コアの製造
100gの化合物1、570gのラクトースおよび200gの澱粉の混合物をよく混合し、そしてその後で約200mlの水中5gのドデシル硫酸ナトリウムおよび10gのポリビニルピロリドンの溶液で湿らせる。湿った粉末混合物をふるいにかけ、乾燥させ、そして再びふるいにかける。次に、100gの微晶質セルロースおよび15gの水素化植物油を加える。全体をよく混合し、そして錠剤に圧縮し、各々10mgの有効成分を含んでなる10.000個の錠剤を生成せしめる。
【0102】
コーティング
75mlの変性エタノール中10gのメチルセルロースの溶液に150mlのジクロロメタン中5gのエチルセルロースの溶液を加える。次に、75mlのジクロロメタンおよび2.5mlの1,2,3−プロパントリオールを加える。10gのポリエチレングリコールを融解し、そして75mlのジクロロメタンに溶解する。後者の溶液を前者に加え、そして次に2.5gのオクタデカン酸マグネシウム、5gのポリビニルピロリドンおよび30mlの濃縮色懸濁液を加え、そして全体を均質化する。このようにして得られる混合物で錠剤コアをコーティング装置においてコーティングする。
【実施例6】
【0103】
抗ウイルススペクトル
薬剤耐性HIV株の増加する出現のために、本発明の化合物をいくつかの突然変異を保有する臨床的に単離されたHIV株に対するそれらの効能について試験した。これらの突然変異は、逆転写酵素阻害剤に対する耐性と関連し、そして例えばAZTおよびデラビルジンのような現在市販されている薬剤に対して様々な程度の表現型交差耐性を示すウイルスをもたらす。
【0104】
本発明の化合物の抗ウイルス活性を野生型HIVおよび逆転写酵素遺伝子に突然変異を保有するHIV突然変異体の存在下で評価する。化合物の活性は細胞アッセイを用いて評価し、そして残留活性をpEC50値で表す。表における縦列IIIBおよびA〜Gは、様々な株IIIB、A〜Gに対するpEC50値を記載する。
株IIIBは、野生型HIV−LAI株であり;
株Aは、HIV逆転写酵素に突然変異Y181Cを含有し、
株Bは、HIV逆転写酵素に突然変異K103Nを含有し、
株Cは、HIV逆転写酵素に突然変異L100Iを含有し、
株Dは、HIV逆転写酵素に突然変異Y188LおよびS162Kを含有し、
株Eは、HIV逆転写酵素に突然変異L100IおよびK103Nを含有し、
株Fは、HIV逆転写酵素に突然変異K101EおよびK103Nを含有し、
株Gは、HIV逆転写酵素に突然変異L100I、K103N、E138G、V179I、Y181C、L214F、V276V/IおよびA327A/Vを含有する。
【0105】
【表1】

【0106】
化合物AはWO00/27825に開示されている化合物であり、そして以下の構造:
【0107】
【化15】

【0108】
を有する。
【0109】
対照化合物Aと比較して、化合物1は株EおよびFのような二重突然変異体株に対して向上した活性を示した。化合物1は特に、多重突然変異株Gに対して向上した活性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、
はハロであり;
およびRは各々独立してC1〜6アルキルである]
の化合物、その製薬学的に許容しうる付加塩;もしくは立体化学的異性体。
【請求項2】
がクロロもしくはブロモである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がブロモである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
およびRがメチルである請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
製薬学的に許容しうる担体および有効成分として請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項6】
薬剤として使用するための請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
有効成分および担体を緊密に混合することを含んでなる請求項5に記載の組成物の製造方法。
【請求項8】
中間体(III)を保護されたヒドロキシルアミンと反応させ、かくして中間体(II)を得;そして次に中間体(II)を脱保護し、かくして最終生成物(I)を得:
【化2】

そして所望に応じて、式(I)の化合物を製薬学的に許容しうる酸で処理することによりそれらの製薬学的に許容しうる酸付加塩形態を製造することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化合物の製造方法。
【請求項9】

【化3】

[式中、
、RおよびRは請求項1〜4のいずれかにおいて定義したとおりであり、そしてPはヒドロキシ保護基であり、特にPはテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルである]
の化合物もしくはその酸付加塩;もしくはその立体化学的異性体。

【公表番号】特表2008−531658(P2008−531658A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557513(P2007−557513)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060407
【国際公開番号】WO2006/094930
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(504347371)テイボテク・フアーマシユーチカルズ・リミテツド (94)
【Fターム(参考)】