説明

HOXで誘導される増殖を制限する遺伝子をブロックする幹細胞増殖因子およびその方法

本発明は、幹細胞のHOXで誘導される増殖を通常制限する少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを低下するブロッカーを含み、これによる遺伝子の発現レベルの低下がHOXペプチドを含む幹細胞の増殖を増強する、幹細胞増殖因子に関する。本発明は、細胞膜を通過可能なHOXペプチドの活性を有するアミノ酸配列と、幹細胞のHOXで誘導される増殖を通常制限する少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを低下するブロッカーとを含み、これによるHOXペプチドの存在下での遺伝子の発現レベルの低下が幹細胞の増殖を増強する、幹細胞増殖を増強する組成物にも関する。好ましいHOXペプチドはHOXB4であり、好ましい遺伝子はPBXである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
(a)発明の技術分野
本発明は、幹細胞のHOXで誘導される増殖を通常制限する少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを低下するブロッカーを使用して幹細胞増殖を増強するための、幹細胞増殖因子、それらの構築体、組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(b)先行技術の説明
ヒトにおいて、造血幹細胞(HSC)による血液系の再構成の成功は、移植されたHSCの数および増殖の両方に依存する。臍帯血はHSCの豊富な給源であるが、各標本につき利用可能な細胞の数はほとんどの場合、ヒト成人において血液系をうまく再構成するには余りにも少ない。従って、HSCの増殖に寄与するであろう因子を同定することは非常に興味深い。
【0003】
HSCをインビトロにおいて維持または適度に増殖するサイトカインの組合せを同定することについてはかなりの進歩があるが(Conneally, E., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:9836-9841,1997;Miller, C. L. and Eaves, C. J., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 94:13648-13653,1997)、HSCの著しいエキソビボ増殖をもたらす培養条件は決定されていない。多くの研究が、HSC増殖は、細胞の内因性経路の活性化により実現することができることを示唆している。培養培地に添加された可溶性Jagged-1に反応したNotch-1の活性化は、多能性コロニー形成細胞(CFC)の増殖およびリンパ球系-骨髄系再構築能を伴うHSCの維持をもたらした(Varnum- Finney, B., et al., Nat. Med., 6:1278-1281, 2000;Karanu, F. N., et al., J. Exp. Med., 192:1365-1372, 2000)。ヒトHSCの増大した自己複製も、可溶性Sonic Hedgehog(Shh)が補充された培養において説明されている(Bhardwaj, G., et al., Nat. Immunol., 2:172-180, 2001)。しかし、これらの増殖の大きさは依然比較的少ないものである。
【0004】
Hox遺伝子は、造血の調節に関連しており(Magli, M. C., et al., J. Cell Physiol., 173:168-177, 1997において検証)、ヒト白血病の発症に寄与している(Buske, C. and Humphries, R. K., Int. J. Hematol., 71:301-308, 2000において検証)。
【0005】
増大しつつある一連の証拠により、HOXB4は造血において興味深い特性を示すことが示唆されている。マウス骨髄移植モデルにおいて、HOXB4のレトロウイルスによる過剰発現は、形質導入されたHSC数において最大で正味1000倍の増加を誘導し(Sauvageau, G., et al., Genes Dev., 9:1753-1765, 1995;Thorsteinsdottir, U., et al., Blood., 94:2605-2612, 1999;Antonchuk, J., et al., Exp. Hematol., 29:1125-1134, 2001)、対照レトロウイルスベクターにより形質導入された細胞と比べた場合に、造血再構成の速度および大きさにおいて有意な増加を促進している(Antonchuk, J., et al., supra)。最近、免疫無防備状態のNOD-SCIDマウスを用い、HOXB4は、未成熟ヒト細胞に対し同様の作用を生じることが示された(Buske, C., et al., Blood., 100:862-868, 2002)。最近の研究は、HOXB4が、マウスHSCのエキソビボ増殖を迅速に40倍誘導したことも明らかにしている(Antonchuk, J., et al., Cell, 109:39-45, 2002)。HOXB4形質導入HSCの増強された増殖は、成熟細胞の正常な産生における減損を伴わずに生じる。更に白血病悪性転換は、HOXB4形質導入細胞の長期にわたるレシピエントにおいて認められない。
【0006】
HOXB4のDNA結合能は、そのHSC増殖能にとって必要である。しかしPBX蛋白質との協同的なDNA結合を形成する能力を欠いているHOXB4点変異蛋白質も、野生型HSCの同様の増殖を誘導する能力を保持している。
【0007】
HOXB4過剰発現細胞における内因性PBX1蛋白質の発現レベルは、適当な技術によりノックダウン(低下)することができる。これらのHSC細胞は、PBX1K.D.HOXB4発現HSCと称される。これらは、この処理を受けずHOXB4を過剰発現するように操作されたものよりも、少なくとも20倍大きく競合する。PBX1K.D.HOXB4発現HSCは、正常なインビボ分化を示し、マウスに存在するHSCの最大数の調節に関連した内因性機構を無効にせず、白血病または骨髄増殖を引き起こさない。
【0008】
従って、幹細胞のHOXで誘導される増殖を通常制限する少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを低下するブロッカーを使用し、幹細胞増殖を増強するための、幹細胞増殖因子、それらの構築体、組成物および方法が提供されることは非常に望ましいであろう。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明のひとつの目的は、幹細胞のHOXで誘導される増殖を通常制限する少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを低下するブロッカーを使用し、幹細胞増殖を増強するための、幹細胞増殖因子、それらの構築体、組成物および方法を提供することである。
【0010】
本発明のひとつの態様に従い、幹細胞のHOXで誘導される増殖を通常制限する少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを低下するブロッカーを含み、これによる遺伝子の発現レベルの低下がHOXペプチドを含む幹細胞の増殖を増強する、幹細胞増殖因子が提供される。
【0011】
本発明のひとつの態様に従い、細胞膜を通過することができるHOXペプチドの発現のための第一の核酸配列と、幹細胞のHOXで誘導される増殖を通常制限する少なくとも1種の遺伝子の発現をブロックする第二の核酸配列とを含み、これによるHOXペプチドの存在下でのこの遺伝子の発現レベルの低下が幹細胞の増殖を増強する、幹細胞増殖を増強するための核酸構築体が提供される。
【0012】
本発明のひとつの態様に従い、細胞膜を通過することができるHOXペプチドの活性を有するアミノ酸配列と、HOXで誘導される幹細胞の増殖を通常制限する少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを低下するブロッカーとを含み、これによるHOXペプチドの存在下での遺伝子の発現レベルの低下が幹細胞の増殖を増強する、幹細胞の増殖を増強する組成物が提供される。
【0013】
本発明のひとつの態様に従い、HOXペプチド過剰発現のための核酸配列と、HOXで誘導される幹細胞の増殖を通常制限する少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを低下するブロッカーとを含み、これによる過剰発現したHOXペプチドの存在下での遺伝子の発現レベルの低下が幹細胞の増殖を増強する、幹細胞の増殖を増強する組成物が提供される。
【0014】
本発明のひとつの態様において、幹細胞を、有効量の本発明の因子、または有効量の本発明の組成物で、幹細胞を増殖させるのに十分な時間処理する工程を含む、幹細胞の増殖を増強する方法が提供される。
【0015】
ひとつの本発明の態様において、患者の造血能を回復する医薬品の調製のための、本発明の因子、本発明の構築体、または本発明の組成物の使用が提供される。
【0016】
ブロッカーは、アンチセンス、抗体、SiRNA、ペプチドおよび化学物質からなる群より選択されうる。
【0017】
遺伝子は、PBX遺伝子であってよく、ブロッカーは、PBX発現をブロックする核酸配列であってよい。好ましいPBX遺伝子は、PBX1である。
【0018】
ブロッカーは、PBX1に対するアンチセンスDNAであってよい。
【0019】
好ましい幹細胞は造血幹細胞であり、より好ましくはヒトまたはマウスの造血幹細胞である。
【0020】
別の本発明の態様において、HOXペプチドは、HOXB4ペプチドである。
【0021】
ひとつの本発明の態様において、アミノ酸配列は、細胞膜を通ることができるHIV由来のペプチドを含む。このようなHIV由来のペプチドは、例えば、トランス活性化蛋白質由来のNH2末端蛋白質伝達ドメイン(PTD)からなることができる。
【0022】
本発明に従い、幹細胞に、有効量の先に定義されたような因子、または有効量のこの因子を含む組成物を送達する工程を含み、ここでHOXB4は幹細胞中に存在し、PBX発現が幹細胞においてブロックされる、幹細胞の増殖を増強する方法が更に提供される。この方法は、HOXヌクレオチド配列によりコードされたHOXペプチドの活性を有するアミノ酸配列を送達する工程を更に含みうる。
【0023】
本発明のひとつの目的は、高い増殖能を有する造血幹細胞(HSC)を作出するための材料および方法を提供することである。
【0024】
本発明の好ましい態様に従い、遺伝子HOXB4を過剰発現する一方で、PBXレベルが抑制されるようなHSCを作出する手法が提供される。この特に遺伝子操作されたHSC型は、HOXB4は過剰発現されるがPBXレベルは操作されないこれまでに報告されたHSC系統よりも何倍も競合的である。
【0025】
全ての刊行物、特許および特許出願は、各々個々の刊行物、特許または特許出願が具体的かつ個別にその全体が参照として組入れられるのと同程度に、それらの全体が本明細書に参照として組入れられる。
【0026】
好ましい態様の詳細な説明
以下に、HOXB4を過剰発現しつつPBX1発現は抑制され、その結果インビトロでもインビボでもHSCの大きく増強された増殖を生じるような、HSCを作出する手法を詳細に説明する。企図された手法に関する科学的理由および論理も、明確化のために記されている。本発明は、PBX1発現に関して例証されている。当業者は当然、PBXファミリーのいずれの遺伝子も使用することができることを理解するであろう。実際、PBXファミリーの様々なメンバー間には、高い相同性が存在する。Pbx1は、HOX蛋白質との協同的DNA結合を形成することが知られている蛋白質をコードしている遺伝子である。ヒトおよびマウスを含む哺乳類のゲノムには、少なくとも4種のPbx遺伝子(Pbx1、Pbx2、Pbx3およびPbx4)が存在する。4種のPbx遺伝子は全て、蛋白質の全領域にわたり高い配列類似性を伴う蛋白質をコードしている。PBX蛋白質はこのように類似しているので、これらは同様の機能を発揮すると予想される。従って分析される細胞型に応じて、PBXファミリーメンバーは、HOXB4の幹細胞増殖機能を妨害する可能性があることが予想される。従って全てのPBX遺伝子が本発明に含まれる。
【0027】
HOXB4は、PBX蛋白質と、モノマーとしてかまたはヘテロダイマーとして協同的にかのいずれかでDNAに結合することができる。PBX1と協同的DNA結合相互作用を形成する能力を欠いているHOXB4点変異蛋白質も依然、HSC増殖をもたらし得る。このことは、内因性PBXはHSCのHOXB4で誘導される増殖には必要ではないことを示唆している。
【0028】
本発明の本質的部分のひとつは、初代骨髄細胞におけるPBX1レベルをノックダウンするプロセスである。
【0029】
HSCにおいて発現されたより低いレベルのPBX遺伝子が、これらの細胞のHOXB4で誘導される増殖を更に増強するかどうかを決定するために、実験を行った。半定量的RT-PCRを用い、HSC活性について高度に濃縮された骨髄細胞の表現型が純粋な亜集団において発現された3種の公知のPBX遺伝子全ての相対的mRNAレベルを測定した。3種のPBX遺伝子全ての発現はほとんどの未成熟画分(Sca1+Lin-)において検出されたが、PBX1の発現が優性であるように見える。図1において、示した骨髄亜集団から単離された総RNAを、逆転写および全体的増幅に供した。増幅されたcDNAのサザンブロット分析に使用されたプローブを図の左側に示し、オートラジオグラムの曝露時間を右側に記した。PBXファミリーの各メンバーに特異的なプローブは、サザンブロット分析において推定されたサイズのゲノムPBX含有バンドを同定した対応するCDSのbox-less断片であった。Pbx3ブロットは、Pbx1およびPbx2ブロットよりも3倍長い曝露時間が必要であることに注意されたい。
【0030】
先行する研究により、PBX1に対するアンチセンスcDNAのレトロウイルスによる形質導入は、この蛋白質の内因性レベルの抑制のための非常に有効な道具であることを明らかにしている(Krosl, J. and Sauvageau, G., Oncogene. 19: 5134-5141,2000)。アンチセンスPBX1 cDNAおよび黄色蛍光蛋白質(a/s PBX1-YFP)、もしくはHOXB4および緑色蛍光蛋白質(HOXB4-GFP)をコードしている組換えレトロウイルス、または両ベクターの組合せにより、マウス骨髄細胞を感染させた。ベクターの説明については、図2を参照のこと。
【0031】
YFPおよびGFP発現のフローサイトメトリー分析により評価された遺伝子導入効率の代表例を図3に示す。この図において左側パネルは、5-FU処理した(trated)マウスに由来する骨髄細胞集団における、YFP、GFPおよびYFP+GFP発現のフローサイトメトリー分析の結果を示している。分析は、a/s PBX1(YFP+)、HOXB4(GFP+)、およびa/s PBX1+HOXB4(GFP+およびYFP+)レトロウイルス産生細胞との共培養物から骨髄細胞を収集した翌日に行った。a/s PBX1-YFPおよびHOXB4-GFPで同時感染した細胞集団において、二重感染率(YFP+/GFP+)は総細胞集団の9〜14%であり、単独で感染した細胞(すなわちYFP+またはGFP+)は、各々35〜44%および12〜15%であることが認められた。
【0032】
図3の右側パネルは、GFP+/YFP+(右上側パネル)またはGFP+(右下側パネル)細胞で開始されたクローン集団から単離されたDNAにおけるプロウイルス組込みのサザンブロット分析を示している。組換えHOXB4-GFPおよびa/s PBX1-YFPレトロウイルス産生細胞との共培養物から回収した翌日、GFP+/YFP+およびGFP+ウインドウからの細胞を、MoFloを用いて選別し、標準メチルセルロースに播種した。多系統混合コロニー(CFU-GEMM)を7日目に無作為に摘採し、液体培養で増殖させ、合計0.7〜1x107個細胞を得た。これらのクローンから単離したDNAを、KpnIで消化して4.4kb a/s PBX1-YFPプロウイルスゲノムを放出させ、HOXB4-GFPプロウイルスのLTRおよびIRESを切断して2.3kb HOXB4-および1.7kb GFP-含有断片を作出した。使用したプローブを右側に記す。これらの結果は、全てのGFP+/YFP+クローンが[HOXB4-GFP+a/s PBX1-YFP]形質導入前駆細胞を起源とすること(図3、右上側パネル)と、GFP+細胞はHOXB4-GFP形質導入細胞のみで占められていること(図3、右下側パネル)とを確認したものである。
【0033】
図4に示したウェスタンブロット分析は、GFP+およびGFP+/YFP+の両集団が高レベルのHOXB4蛋白質を発現したこと(図4、上側パネル)と、このアンチセンス方法がGFP+/YFP+ BM細胞におけるPBX1蛋白質レベルのノックダウンに効果的であること(図4、中パネルの第三レーン)とを示している。
【0034】
簡略化のために、アンチセンスレトロウイルスベクターの結果としてより低いレベルのPBX1を発現している細胞を「PBX1K.D.」(Knock Down PBX)として、また、HOXB4およびアンチセンスPBX1を発現するように操作されたものを「HOXB4-PBX1K.D.」細胞とする。
【0035】
図5は、骨髄系クローンが単離されたII群レシピエントにおける、HOXB4およびPBX1蛋白質レベルのウェスタンブロット分析を示している。CTRL、HOXB4およびPBX1プロウイルスの組込みが陰性のクローン;+HOXB4、HOXB4プロウイルスが定着(harboring)しているクローン(図13、右側パネル、クローン#2.1参照);上部に記したクローン番号は、図13左側パネルにおいて遺伝子型が決定されたクローンに対応している。図5の左側パネルは、HOXB4-GFPおよびa/s PBX1-YFPプロウイルスの組込みについて陰性のクローン;+Hoxb4、HOXB4-GFPプロウイルスが定着しているクローンを示している。右側パネルは、HOXB4-GFPおよびa/s PBX1-YFP形質導入CFCにより作出された骨髄系クローンを示している。これは、低レベルのPBX蛋白質が本発明のアンチセンス方法により達成されることを明確に示している。
【0036】
HOXB4-PBX1K.D.骨髄細胞がHOXB4を過剰発現しているものよりも高いインビトロ増殖能を有することを示す証拠がある。HOXB4過剰発現は、形質導入された骨髄細胞に有意なインビトロ増殖の利点をもたらす(Antonchuk, J., et al., Exp. Hematol., 29:1125-1134,2001)。形質導入BM細胞の4種の異なる集団で開始されるインビトロ競合増殖アッセイを用い(図6参照)、HOXB4-PBX1K.D. BM細胞は、HOXB4細胞よりもはるかに良く増殖し:3日以内に、HOXB4-PBX1K.D.細胞の割合(黒い四角)は、HOXB4細胞について決定された値の約2倍に増加し、9日目までに、その集団の60%以上を占める支配的細胞型となった。対照的に、PBX1K.D.(YFP+)細胞の割合は、培養中経時的に一貫して低下し、12日目までにはほとんど検出不能となり、このことはPBX1K.D.細胞が形質導入されない細胞に勝る増殖の利点を有さないことを明確に示している。
【0037】
4つの集団の各々(すなわち、HOXB4-PBX1K.D.;HOXB4;PBX1K.D.;未形質導入)由来のコロニー形成細胞(CFC)のインビトロ増殖は、同数の選別されたGFP+、GFP+/YFP+、YFP+およびGFP-/YFP-細胞で開始した液体培養において評価した。培養の12日目までに、HOXB4-PBX1K.D. CFCは、HOXB4細胞について決定されたレベルの約2.5倍に増加し(図7)、それらの出発時の数よりも正味220倍増殖した。PBX1K.D. CFCの増殖は、形質導入されない細胞において認められるものと類似していた(すなわち、6〜7倍)。
【0038】
重要なことに、HOXB4過剰発現細胞に勝るHOXB4-PBX1K.D.の競合力は、これらはHOXB4-PBX1K.D.細胞の有無のいずれで増殖されているかに関わらず、同様に増殖したので、負のフィードバック機構に起因するものではなかった。
【0039】
以下の段落は、PBX1K.D.が、HOXB4を過剰発現している骨髄細胞の再構築能を増大することの証拠を提供している。
【0040】
HOXB4細胞の未形質導入細胞との混合物(I群)、または先の項で詳述した4種の集団と同じものを含む細胞の混合物(II群)の移植により、BM移植キメラの二つの異なる群を作出した。両群について、骨髄移植片に対する各亜集団の相対的貢献度を、図8に示し(t=0:4種のマウスの代表群)、図8の下側のヒストグラムに3つの実験全てをまとめている(t=0参照)。I群のレシピエント(接種材料は約10%のHOXB4-GFP形質導入細胞を含む)において、GFP+細胞は、4種のレシピエントのFASCプロファイルにより示されたように、再構成後7週目でPBL 25±4%を表し(図8、中央)、30週目までに42±6%に増加し(図8、下側)、これらの細胞の再構築の利点を明確に表している。同様の条件で対照GFP形質導入細胞は、これらの時点で造血系の3%未満が再構成された。
【0041】
(1)HOXB4-PBX1K.D.;(2)HOXB4過剰発現;(3)PBX1K.D.、および(4)未形質導入細胞、の混合物を受けた(図9、上側)、初代II群レシピエントにおいて移植された代表的骨髄移植片の組成の説明。14種の異なる初代レシピエントの移植片組成物のまとめ(3種の実験由来)を、図8における右側パネルの下側に示す(t=0)。全ての場合において、HOXB4形質導入細胞およびHOXB4-PBX1K.D.細胞は各々、接種材料の約10%およびPBX1K.D.細胞の約25%を示した。YFP+/GFP+細胞(HOXB4-PBX1K.D.細胞を表す)は、7週目までに約10%から32±6%へ(図9、中央)、30週目までに51±7%へ増加したが、GFP+細胞(HOXB4細胞)の割合は、出発時の10%以上には増加しなかった(図9下側の黒色バー)。YFP+細胞(HOXB4-PBX1K.D.細胞)は、最初の移植片の最大28%を示したが、それらの数は、早い時点で7%未満に減少し、移植後12週目を超えると検出不能となった(図9下側の白色バー)。YFP-/GFP-(すなわち未形質導入)細胞は、再構成の最大50%を占めるように見えた。しかし、以下に示されるように、CFCの大半はHOXB4-PBX1K.D.細胞またはHOXB4細胞を起源としている。この知見は、明らかにGFP-YFP- PBLにおけるマーカー遺伝子のいずれかの発現レベルは、FACS検出閾値を下回り続けること、または組込まれたプロウイルスのかなりの割合は失活されたことを示唆している。
【0042】
IおよびII群の初代レシピエントは全て、最大9ヵ月の観察期間、健常であり続け、それらの骨髄、脾臓および胸腺内に、骨髄系細胞およびリンパ球系細胞の正常な数および分布を有した。これらの各器官におけるGFPおよび/またはYFPを発現している細胞の割合を、4種のマウスについて、図10に示している(移植後16週より後)。骨髄移植片の約1/10を表しているGFP+YFP+(HOXB4-PBX1K.D.)細胞は、骨髄および脾臓由来のMac-1+細胞の約60〜75%を占め;骨髄および脾臓由来のB細胞の約45〜75%ならびにCD4+/CD8+胸腺細胞の約80〜85%を占めている(図10の灰色バー参照)。これらのマウスの末梢血中の低い割合のGFP+YFP-(HOXB4形質導入)細胞と一致して、これらの細胞の小さい貢献(5〜7%)のみが、これらの初代レシピエントからの骨髄、脾臓および胸腺において検出することができた(図10、黒色バー)。
【0043】
HOXB4形質導入細胞のレシピエントにおいてしばしば認められるように(Genes Dev., 1995)、これらの複合造血系キメラは、脾臓骨髄系およびBリンパ球系コロニー形成細胞(CFC)の数において、わずかな上昇を有した(分析されたマウス数による統計学的差異はない:n=6)(図11)。様々なCFC型の分布は、GFP+またはYFP+細胞と対照細胞との間で異ならなかった(図12)。GFPおよび/またはYFP発現細胞の間のエピ蛍光による識別は不可能であるので、本発明者らは、個別に無作為に摘採されたコロニーから単離されたDNAを、組込まれたHOXB4およびa/s PBX1プロウイルスの存在について分析した(図13、代表的クローン)。総計において、二重形質導入細胞を起源とする3種のレシピエント由来の骨髄系CFC(HOXB4-PBX1K.D.)は44/53または80%であり、HOXB4形質導入細胞からはわずかに4/53または7%であった。驚くべきことに、HOX4のみではなくa/s PBX1プロウイルスも定着されていない無作為に作出されたクローンはわずかに5/53または9%であり、このことは形質導入されない移植体由来の細胞および内因性宿主細胞の造血系再構成への貢献は最小であることを示唆している。
【0044】
まとめると、これらの結果は、以下の点を示している:(1)HOXB4-PBX1K.D.細胞はインビボにおいて、HOXB4形質導入細胞よりもはるかに多く競合した;(2)HOXB4形質導入細胞は、形質導入されない細胞またはPBX1K.D.細胞よりもより多く競合した。従ってPBX1K.D.により付与された再構築の利点は、HOXB4過剰発現の状況においてのみ生じた。しかしこれらの研究は、HOXB4-PBX1K.D.細胞のインビボにおける競合的利点が、幹細胞レベルで、またはより成熟した前駆細胞において生じたかどうかは明らかにしなかった。
【0045】
HOXB4-PBX1K.D. HSCの増殖を、インビボにおいても研究した。インビボ増殖は、CRU(競合的再構築単位)アッセイを用いて評価し(Szilvassy, S. J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:8736-8740,1990;Sauvageau, G., et al., Genes Dev., 9:1753-1765,1995;Thorsteinsdottir, U., et al., Blood., 94:2605-2612,1999)、同じレシピエントのHOXB4形質導入細胞の増殖と比較した。移植後16週目で、骨髄細胞を造血系キメラ(II群)から収集し、二代目レシピエントへ漸減希釈で移植した。二代目レシピエントのリンパ球系および骨髄系再構成への形質導入(GFP+、GFP+/YFP+またはYFP+のいずれか)細胞の貢献を、移植後16週目にフローサイトメトリーにより決定し、既報のように最尤推定法を用いてCRU数の概算を行った(Szilvassy, S. J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:8736-8740,1990)。その時点までに、HOXB4-PBX1K.D. CRU頻度(frequency)は1/17,500(図14)であり、これは1匹のマウスにつき約104CRUを表し、成体マウスの造血系は約2x108個細胞を含むと考えられる。本発明者らの初代レシピエントは約10のHOXB4-PBX1K.D CRUを受け取った(表1)。
【0046】
(表1)移植後16週目のCRU回復

予備刺激の2日後の5-FU由来の骨髄細胞におけるCRU頻度は、1/2670(1/1680から1/4218、95%CI)であった。移植されたCRU数は、レトロウイルス生産株を用いる共培養物へ導入された細胞の子孫を表している。
形質導入されたCRUの割合は、レトロウイルス生産株との共培養からの回収の翌日に骨髄細胞によるGFP、YFPおよびGFP+YFP発現のフローサイトメトリー分析により決定された感染率から計算した。
CRU頻度は、限定希釈分析を用い、2種(I群)および3種(II群)のレシピエントから決定された平均値を表す。
示された値は、CRU頻度から計算し、ひとつの大腿骨は総骨髄の約10%を表すと仮定される。
【0047】
これらのデータは、HOXB4-PBX1K.D. CRUについてインビボにおける最大1000倍の正味の増殖を示唆している。これらの同じ初代レシピエント由来のHOXB4形質導入細胞のCRU頻度はわずかに1/430,000と推定され、このことは50倍の範囲内の推定された増殖に関するこれらのマウスにおける最良で約500CRUを表している。多くの2代目レシピエント(n=90)のいずれも、PBX1K.D.集団由来のCRUを伴い再構成されなかったので、PBX1K.D.細胞のCRU頻度は決定することができないが、これらは初代レシピエント1匹につき移植された細胞の約25%を示した。II群レシピエントについては、CRU頻度は、移植後32週目にも決定し、16週目に示されたものと同様の数が認められ、このことはHOXB4-PBX1K.D. CRUの増殖は経時的に安定化されていることを示唆している。まとめると、これらのCRUアッセイの結果は、HOXB4-PBX1K.D.のHOXB4細胞に勝る大きいインビボにおける競合的利点は、HSCレベルで生じることを示している。
【0048】
本発明者らの造血系キメラにおけるHOXB4-PBX1K.D. CRUの再生が実際に多能性の二重に形質導入されたHSCにより媒介されたことを証明するために、また、再構成に貢献した細胞クローン数を決定するために、初代レシピエント、およびCRUアッセイに使用した対応する2代目レシピエントの、骨髄、脾臓および胸腺から単離されたDNAにおけるプロウイルスの組込みのサザンブロット分析を行った(図15、代表的サザンブロット分析)。2種の組込まれたプロウイルス(すなわち、HOXB4-GFPおよびa/s PBX1-YFP)間の識別を促進するために、DNAをEcoRIおよびHindIIIで消化した。これらはHOXB4-GFPプロウイルスをGFPの上流で切断し、その結果各プロウイルスの組込みは、識別できるオートラジオグラフィーバンドを形成し(クローン分析)、また、a/s PBX1プロウイルスから3kb PBX1-YFPカセットを放出した(2つのレトロウイルスの概略的説明については図2参照、3Kbでの共通シグナルについては図15参照)。
【0049】
5x103〜1x106個の細胞を移植された初代レシピエントおよび2代目レシピエントの骨髄、脾臓および胸腺において、複数のHOXB4プロウイルスの組込みが検出できた。これらのバンドのオートラジオグラフィー強度の変動は、数種のプロウイルスの組込みを伴う稀なクローンよりもむしろ、複数の細胞クローン(少なくとも4種、図15の「a、b、cおよびd」参照)が、これらの組織の再構成に貢献したことを示唆している(図15、左側および中央パネル)。再構成しているHSCの多能性の性質は、約1CRUを移植されたマウスにおいて明らかになっており(図15、右側パネル)、ここで同じプロウイルスの組込みパターンを、2代目レシピエント1.2.A、1.2.B、1.2.Cおよび1.2.Dの骨髄および胸腺において検出することができる。加えて、数種類のこれらのクローンの初代レシピエントにおける自己複製分裂が報告され、その理由はひとつの細胞クローンは、2代目レシピエントの1種よりも多くで再構築されるからである(例えば数種のマウスにおいてクローンaまたはcを参照)。この試験を完了するために、DNAを、これらのマウスの骨髄由来のクローン原性前駆細胞からも単離した。合計36種の骨髄系クローンを、図15に示された様々な2代目マウスから分析し、サザンブロット分析により、全て(36/36)が、二重に形質導入されたHSCを起源としたことが明らかとなった(図16、代表的分析)。同様の再構築の結果が、分析した全ての3種の初代レシピエントから決定された。
【0050】
個別のCRUの増殖能は、限定希釈で移植されたマウスにおいて推定することができ、ここで単独のCRUの活性は、成熟骨髄系細胞およびリンパ球系細胞の1〜5%の生成に貢献する。II群の初代マウスからの2代目レシピエントのフローサイトメトリー分析は、限定希釈でのHOXB4-PBX1K.D. CRUは、平均4±2%のGFP+/YFP+ PBLを生じた(平均値±SD、n=30)ことを明らかにした。従ってHOXB4-PBX1K.D. HSCの競合的性質は、個別の幹細胞の増大した生産量に起因したものではなく、むしろこれらの初代レシピエントにおける幹細胞集団の優先的かつ競合的増殖に起因していた。
【0051】
最大HSCプールサイズの厳密な制御に関する証拠は、HOXB4-PBX1K.D.、対、HOXB4形質導入HSCの競合的性質の何らかの理解を提供する。図14および表1に示されるように、様々な集団のCRU頻度は、本発明者らの混合型キメラにおいて、HOXB4-PBX1K.D.細胞に関する1/17,500細胞から、HOXB4形質導入細胞に関する1/430,000細胞まで、かなり変動した。HOXB4-PBX1K.D.、対、HOXB4の競合的状況において検出されたHOXB4で形質導入されたCRUの数(図17、右側パネル、黒色バー)は、約10%のHOXB4形質導入細胞および90%の形質導入されない細胞により再構成されたI群レシピエントについて決定された値(図17、右側パネル、黒色バー)、または本発明者らの先の実験において決定された値(Antonchuk, J., et al., Exp. Hematol., 29:1125-1134,2001;Antonchuk, J., et al., Cell., 109:39-45,2002;Sauvageau, G., et al., Genes Dev., 9:1753-1765,1995;および、Thorsteinsdottir, U., et al., Blood., 94:2605-2612,1999)よりもはるかに低かった。しかしII群マウスのHOXB4-PBX1K.D. CRU頻度は、I群レシピエントにおいて形質導入されたCRUについて決定された値(図17、左側パネルの黒色バーを右側パネルの灰色バーと比較)、ならびに先に報告された値(Ref)とは同等であり、かつ同じレシピエント内のHOXB4細胞の頻度よりも少なくとも20倍高かった(図17、右側パネル)。従って優れた再構成能を持つ細胞(すなわち、HOXB4-PBX1K.D. CRU)との競合において、HOXB4で形質導入されたCRUは、それらの増殖を、形質導入されない細胞で通常認められるレベルに制限し、このことはマウスにおけるHSCコンパートメントの総サイズを調節する機構の存在を示唆している。
【0052】
まとめると、これらの試験は、HOXB4で誘導される幹細胞増殖の新たな筋道を明らかにし、HOXB4形質導入細胞のインビボにおける増殖を制限する非細胞自律機構を明らかにしている。
【0053】
HOXB4は、HSCの顕著なインビボおよびエキソビボ増殖を誘導することが可能である独自の因子として特徴付けられている。この開示は、HSCを増殖するHOXB4特異的能力は、PBX1に対するアンチセンス的方法を使用することにより、更に約20倍増大され得ることを明らかにしている。この作用は、数種のマウスから単離された多くのクローンにおいて認められた。HOXB4-PBX1K.D. HSCの全てのレシピエントは、健常でありつづけ、最大9ヶ月の観察期間について造血系疾患の検出可能な徴候を伴わず、このことは、有意なインビボ増殖を経験した形質導入されたHSCは機能的に損なわれないことを明らかにしている。これらの特徴は、HOXB4のHSCのエキソビボ増殖を促進する能力(Antonchuk, J., et al., Cell., 109:39-45,2002)と組合せ、幹細胞移植を基にした新たな戦略の開発に大きい関わりを有するであろう。より根元的基礎を基に、これらの研究は、HOXB4過剰発現細胞のインビボにおける増殖は、HOXB4-PBX1KD細胞などのより競合的集団の存在下において阻害され得ることを明らかにした。この競合的状況において、HOXB4形質導入細胞は、それらの幹細胞増殖能を発揮することに失敗し、レシピエントにおいては、HSCプールの小さい画分のみを再生した。興味深いことに、高度に競合的なHOXB4-PBX1K.D. HSCは、HSCプールサイズを、HOXB4形質導入細胞により観察されたものよりもより大きい値まで再構築しなかったが、これは正常な操作されていない動物を特徴付ける値に達し、このことは、インビボにおけるHOXB4形質導入HSCの数を調節する非細胞自律機構の存在を示している。
【0054】
HOXB4-PBX1K.D.およびHOXB4形質導入細胞のインビボにおける増殖を制限する機構は同定されていない。HOXB4-PBX1K.D.細胞の存在または非存在下で培養されたHOXB4形質導入細胞の増殖率は同等であり、このことはこの機構はエキソビボ増殖の間は活発ではないかもしれないことを示唆している。しかし本発明者らの研究は、HOXB4-PBX1K.D.形質導入HSCの存在および非存在下で培養されたHOXB4形質導入HSCのインビトロ増殖は直接評価しておらず、従って現時点で、HOXB4形質導入HSCのインビボおよびインビトロにおける自己複製分裂を特異的に制限する何らかの機構の可能性を排除することができない。
【0055】
HSC特異的マイトジェンとしてHOXB4を活用する方法を開発するために、最近本発明者らが報告したHOXB4形質導入HSCの正味40倍のエキソビボ増殖が、PBX1K.D.の状況において20倍程まで更に増強され得るかどうかを決定することが重要であろう。PBX1 siRNAのような他の方法が、本明細書において報告されたアンチセンス的方法と同等の作用を達成することができるかを決定することも興味深いであろう。
【0056】
先に報告された知見(DiMartino, J. F., et al., Blood., 98:618-626,2001)と一致するように、PBX1K.D.細胞は、増殖の利点を示さない;これは、PBX1K.D.が大きい有意性を獲得するHOXB4過剰発現の状況においてのみである。従って本発明者らの知見は、HSCの自己複製に関連した増殖は、PBX1とは無関係の様式でHOXB4反応性遺伝子のサブセットにより変更することができることを示唆し、ならびにPBX1は、HOXB4で誘導されるHSC増殖の負の調節因子として作用することを示している。PBX1-/-マウスは、HOXB4で誘導される幹細胞増殖におけるPBX1の役割を研究するためのもう一つのモデルとなりうる。しかしPBX1-/-は、脾臓の欠損に関連した全身性形成不全を特徴とする、胚性致死の表現型を生じる(DiMartino, J. F., et al., Blood., 98:618-626,2001)。PBX1-/-胚の発達の間に活性な補償機構が、正常な成体HSCプールの確立に関連した様々な内在のおよび外来の機構に影響を及ぼし、その結果HSCのHOXB4に対する固有の反応を変更することがある。本研究において使用されるアンチセンス的方法は、PBX1レベルの大きい低下をもたらす上で明確に成功し(図4および5参照)、パラログPBX2およびPBX3のレベルは落ち着いた状態で有り続けるのに十分に特異的である(図5)が、他の蛋白質の発現レベルが影響を受ける可能性は排除できない。しかし本発明者らが現在進めている研究は、PBX1の同時過剰発現は、HOXB4によりHSCに付与された再構築の利点を逆行させることを示しており、その結果本発明者らのノックダウン戦略のPBX1依存型作用について激しい論争となっている。
【0057】
HOXB4は、成体造血幹細胞の著しいインビボおよびエキソビボ増殖を誘導することが可能である(Sauvageau, G., et al., Genes Dev., 9:1753-1765,1995;Thorsteinsdottir, U., et al., Blood., 94:2605-2612,1999;Antonchuk, J., et al., Exp. Hematol., 29:1125-1134,2001;Antonchuk, J., et al., Cell., 109:39-45,2002)。本開示に示された結果は、内因性PBX1レベルの低下は、HOXB4形質導入HSCの競合的増殖能を約20倍まで更に増強することができることを示している。本発明者らは、PBX1K.D.の増殖作用は、最も原始的なHOXB4形質導入造血細胞に主に拘束されること、これらの細胞は正常なHSCレベルまで増殖するがこれを超えることはないこと、および全ての造血系統へと運命付けられた後代を作出するそれらの能力を保持することを示している。本発明者らの知見は、より競合するHOXB4-PBX1K.D形質導入集団の存在は、HOXB4細胞の増殖活性を減少することも示しており、これはHOXB4で誘導される幹細胞増殖の程度を制御する外来性機構の存在を示唆している。
【0058】
以下は、本研究に使用した材料および方法である。
【0059】
動物:(C57Bl/6J x C3H/HeJ) F1および(C57Bl/6Ly-Pep3b x C3H/HeJ) F1マウスは、Clinical Research Institute of Montrealの特定病原体除去(SPF)動物施設において繁殖させた。全ての動物は、換気した檻において飼育し、無菌の食餌および酸性水を与えた。
【0060】
レトロウイルスベクター:MSCV-IRES-GFPおよびMSCV-HOXB4-IRES-GFPベクターの作成は、既報の通りである(Antonchuk, J., et al., Exp. Hematol., 29:1125-1134,2001)。MSCV-a/s PBX1b-PGK-YFPベクターを作成するために、PBX1b ORFをコードしている1.4kb断片を平滑端とし、MSCV-PGK-YFPのHpaI部位にサブクローニングした(EK, EMBO 2000)。
【0061】
初代骨髄細胞のレトロウイルス感染および移植
レトロウイルスを産生するGP+E-86細胞の作出、骨髄細胞の単独または二重感染は、既報のように行った(Kroon, E., et al., EMBO J., 20:350-361,2001)。対照のコンペティター骨髄細胞は、形質導入されないGP+E-86細胞と共培養したが、それ以外はレトロウイルス感染が施される細胞と全く同じに処理した。レトロウイルス生産株との共培養から回収した翌日、形質導入された(GFP+、YFP+、またはGFP+/YFP+)細胞の割合を、MoFlo(Cytomation, Fort Collins, CO)を用いてフローサイトメトリーにより決定した。10%GFP+細胞またはYFP+細胞を含有する移植のための接種材料は、感染した細胞集団を、形質導入されないコンペティターで希釈することにより作成した。二重に形質導入された(HOXB4-GFP、およびa/s PBX1-YFP、およびHOXB4-GFP+ a/s PBX1-YFP)細胞集団は、GFP+/YFP+細胞の割合が常に移植体において10%に相当するように、コンペティターで希釈した。12〜16週齢のレシピエントマウスに放射線照射し(850cGy、160cGy/分、137Csγ線源、J. L. Shepherd, CA)、2.5x105個の細胞を、新たに単離した1x105個の骨髄細胞と共に移植し、一過性の放射線防護を提供した。
【0062】
初代骨髄細胞のインビトロ増殖
形質導入された細胞のインビトロでの競合的増殖能を決定するために、レトロウイルス産生株との共培養から回収した翌日に、異なる割合のGFP+、およびYFP+、およびGFP+/YFP+骨髄細胞集団を含有する培養を、15%FCSおよび10ng/mLのIL-3を補充した培地において5x104個細胞/mLで開始した。3日毎に、生存(トリパンブルー陰性)細胞を計数し、新鮮培地で希釈して細胞密度を5x104〜5x105個細胞/mLの間に維持した。同時点で、GFP+、およびYFP+、およびGFP+/YFP+細胞の相対含量を、フローサイトメトリーにより決定した。形質導入された骨髄系CFCのインビトロ増殖能を決定するために、GFP+、またはYFP+、またはGFP+/YFP+細胞を、レトロウイルス産生株との共培養から回収した1日後に選別し、前述のように液体培養を開始し維持した。6および12日間増殖した後、培養物の適当なアリコートを、IL-3 10ng/mL、IL-6 10ng/mL、SCF 50ng/mL、およびEpo 5U/mLを含有するメチルセルロース(以後、標準メチルセルロースと称する)に播種した。10日目にコロニーをスコア化した。これらの実験に使用するCOS細胞由来の上清の形態でメチルセルロースおよびサイトカインを調製し、IRCMで定量した。全ての他の培地成分は、GIBCO/Invitrogen Corp.(Burlington, ON, カナダ)から購入した。
【0063】
フローサイトメトリー
移植キメラの骨髄、脾臓および胸腺から単離した細胞を、2%FCSと、Mac-1もしくはB-200を認識するアロフィコシアニン(APC)複合抗体、またはCD4およびCD8細胞表面マーカー(Pharmingen, Mississauga, ON)とを含むPBS中に再懸濁した。氷上で30分間インキュベーションした後、細胞を、2%FCSを含有するPBSで2回洗浄し、所定の細胞表面抗原を発現しているGFP+、YFP+、およびGFP+/YFP+細胞画分を、MoFlo(Cytomation, Fort Collins, CO)を用いるフローサイトメトリーにより決定した。データは、Summit V3.1ソフトウェア(Cytomation, Fort Collins, CO)により解析した。Ly5.1+末梢血由来のMNCを、FITC複合抗Ly5.1抗体(Pharmingen Mississauga, ON)を用いて同定した。
【0064】
競合的再構築およびCRUアッセイ
造血系再構成に対する移植した形質導入された(GFP+、YFP+、およびGFP+/YFP+)HSCの貢献を移植後様々な時点で決定するために、尾静脈から採取した血液約50μLを、過剰な塩化アンモニウム(StemCell Technologies)と共にインキュベーションし、赤血球を溶解し、GFP+、YFP+、およびGFP+/YFP+ PBLの割合を、フローサイトメトリーにより決定した。骨髄系(SSChiFSClow)およびリンパ球系(SSClowFSChi)の両亜集団中の、GFP+、またはYFP+、またはGFP+/YFP+細胞を2%より大きい割合で有するマウスを、少なくとも1回形質導入されたHSCにより再構築されたとみなした。骨髄系細胞とリンパ球系細胞の間の識別の忠実性は、系統特異的マーカー(Mac-1対B-220)を検出するための細胞表面染色を用いて証明した。初代レシピエントのHSC数は、限定希釈式移植ベースのアッセイ(CRUアッセイ)を用いて評価したが、これは競合的長期リンパ球系-骨髄系再構築能を持つ細胞を検出する(Szilvassy SJ, PNAS, 1990)。簡単に述べると、初代Hoxb-GFP+、またはHoxb-GFP++a/s PBX1-YFP++a/s PBX1-YFP++HOXB4-GFP+レシピエントを、移植後16または32週目に屠殺し、それらの骨髄細胞を、変動希釈し、1x105個の新たに単離したヘルパー骨髄細胞と共に、致死量放射線照射した2代目レシピエントに注射した(5x103〜1x106個細胞/レシピエント、5〜10レシピエント/希釈)。2代目レシピエントにおけるドナー由来のGFP+、またはYFP+、またはGFP+/YFP+細胞によるリンパ球系および骨髄系の再構築のレベルを、移植後16週目に、PBLのフローサイトメトリー分析により評価した。CRU頻度は、Limit Dilution Analysisソフトウェア(StemCell Technologies)を使用し、異なる希釈での陰性レシピエントの割合にポアソン統計を適用することにより算出した。同じ型の解析を、レシピエントの骨髄および胸腺から単離されたDNAにおけるプロウイルスの組込みのサザンブロット分析により生じたオートラジオグラムに適用し、ここでHOXB4-GFPおよび/またはa/s PBX1-YFPプロウイルスの存在は、再構成されたレシピエントを同定した。レトロウイルス生産株との共培養において導入された骨髄集団におけるCRU頻度を決定するために、5-FU処理したLy5.1マウス([C57Bl/6Ly-Pep3b x C3H/HeJ] F1)由来の骨髄を、IL-3(6ng/mL)、IL-6(10ng/mL)、およびSCF(100ng/mL)を補充した培地において2日間培養し、致死量放射線照射したLy5.2マウス(C57Bl/6J x C3H/HeJ)F1に、様々な希釈(5x103〜1x106個細胞/レシピエント、5〜10レシピエント/希釈)で移植した。移植片に由来するLy5.1+細胞の2代目レシピエントの再構成に対する貢献を移植後16週目にフローサイトメトリーにより推定し、被験試料のCRU頻度を既述のように決定した。
【0065】
骨髄系クローンのCFCアッセイおよびインビトロ増殖
初代および2代目レシピエントの骨髄および脾臓の細胞集団中の骨髄系およびpreBクローン原性前駆細胞の頻度を、既報の通りに決定した(Thorsteinsdottir, U., et al., Blood., 99:121-129,2002)。クローン性骨髄系細胞集団を作成するために、個別のウェルに分離した多系統混合したコロニーを、メチルセルロースから、15%FSC、IL-3(10ng/mL)、IL-6(10ng/mL)、IL-11(100ng/mL)、SCF(10ng/mL)、および10-5Mβ-メルカプトエタノールを補充したIMDM中の液体培地に移した。その後クローン集団を、10〜14日間増殖し、総細胞収量を≧107個細胞/培養とした。
【0066】
サザンおよびウェスタンブロット分析
移植キメラの骨髄、脾臓および胸腺からならびに骨髄系クローンからの高分子量DNAを、KpnIで消化し、これは末端反復配列(LTR)を切断し、4.4kb a/sPBX1-YFPプロウイルスゲノムを放出し、ならびにHOXB4-GFPプロウイルスのLTRおよびIRESにおいては、HOXB4-GFPプロウイルスの2.3kb HOXB4-および1.7kb GFP-含有断片を分離した。独自のHOXB4プロウイルスの組込みを検出するために、DNAを、EcoRIおよびHindIIIで切断し、これはHOXB4-GFPプロウイルスからHOXB4 cDNAを放出し、a/s Pbx-YFPプロウイルスから3kb a/s PBX1-PGK-YFPカセットを切出した。サザンブロット分析は、標準技法を用いて行った。使用したプローブは、PBX1の600bp(ORFのnt930-1525)PVU II断片、HOXB4 cDNAの490bp SalI-PmlI断片、および730bp YFP cDNAであった。全細胞溶解液の調製およびウェスタンブロット分析は、既報のように行った(Krosl, J.およびSauvageau, G.、Oncogene、19:5134-5141,2000)。使用した一次抗体は、ラットの抗HOXB4(Gould, A., et al., Genes Dev., 11:900-913,1997、およびDevelopmental Studies Hybridoma Bank, University of Iowa)、ウサギ抗PBX1、ウサギ抗c-Jun、ならびにホースラディッシュペルオキシダーゼ複合抗ラット抗体および抗ウサギ抗体(Santa Cruz Biotech., Santa Cruz, CA)であった。
【0067】
cDNA作成、増幅および分析
精製した骨髄亜集団から単離した総RNAの逆転写および増幅は、既報のように行った(JL, G&D 1999)。使用したプローブは、前述のPBX1の600 bp PvuII断片、Pbx2の540bp(ORFのnt670-1210)PvuII断片、Pbx3の540bp(nt400-940)PvuII断片、およびアクチンcDNAであった。PBS遺伝子発現を同定するオートラジオグラフィーのシグナル強度は、Alpha Imager(商標) 2000 Documentation and Analysis system(AlphaInnotech, San Leandro, CA)を用い評価した。
【0068】
本発明は、特定の具体例に関連して説明されているが、更なる修飾が可能であり、本出願は、本発明の原理に従う全体的な本発明のあらゆる変動、用途、または適合を含むことを意図し、本発明が属する技術分野において公知のまたは慣習的実践とされるような、前述の本質的特徴に適合し得、添付の特許請求の範囲に従うような、本発明の開示からの逸脱を含むことが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】マウス骨髄細胞の未成熟亜集団におけるPbx遺伝子発現を図示している。
【図2】PBX1を抑制するのに適したいくつかのレトロウイルスベクターを図示している。
【図3】骨髄細胞のフローサイトメトリー分析およびサザンブロット分析の結果を図示している。
【図4】HSC培養のウェスタンブロット分析を図示している。
【図5】HSCの異なる型を移植したマウスから採取した試料中のPBX1蛋白質レベルのウェスタンブロット分析を図示している。
【図6】異なるHSCから開始された液体培養中で形質導入された初代骨髄細胞の増殖を図示している。
【図7】異なるHSCのインビトロ増殖を図示している。
【図8】HOXB4形質導入骨髄細胞による競合的再構成を図示している。
【図9】HOXB4およびHOXB4+a/sPBX1形質導入細胞による競合的再構成を図示している。
【図10】図10Aから10Cは、異なるHSCが移植されたマウスからの骨髄(図10A)、脾臓(図10B)および胸腺(図10C)由来の造血細胞のフローサイトメトリー分析を図示している。
【図11】図11Aから11Dは、異なるHSCが移植されたマウスにおける骨髄(図11Aおよび11C)および脾臓(図11Bおよび11D)の骨髄系(図11Aおよび11B)およびリンパ球系(図11Cおよび11D)CFC含量の数を図示している。
【図12】マウスにおける骨髄および脾臓由来の骨髄系CFCの分布を図示している。
【図13】HSCレシピエント由来の骨髄系クローンから単離されたDNAにおけるプロウイルス組込みのサザンブロット分析を図示している。
【図14】2代目レシピエントの造血系の再構成のためのHOXB4(GFP+)およびa/s PBX1+HOXB4(GFP+/YFP+)形質導入HSCの貢献を図示している。
【図15】10%HOXB4、13%a/s PBX1+HOXB4、および24%a/s PBX1で形質導入された骨髄が移植されたマウスおよび移植後16週目に屠殺したその2代目レシピエントの骨髄、脾臓および胸腺から分離されたDNAにおけるプロウイルスの組込みのサザンブロット分析を図示している。
【図16】HOXB4およびa/s Pbx+HOXB4形質導入細胞の2代目レシピエントから分離された骨髄系クローンのサザンブロット分析を図示している。
【図17】異なるHSCを受けた群における競合的再構成後のCRU回復の比較を図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞のHOXで誘導される増殖を通常制限する少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを低下するブロッカーを含み、これによる該遺伝子の発現レベルの低下がHOXペプチドを含む幹細胞の増殖を増強する、幹細胞増殖因子。
【請求項2】
ブロッカーが、アンチセンス、抗体、SiRNA、ペプチドおよび化学物質からなる群より選択される、請求項1記載の幹細胞増殖因子。
【請求項3】
遺伝子がPBX遺伝子である、請求項1記載の幹細胞増殖因子。
【請求項4】
ブロッカーが、PBX発現をブロックする核酸配列である、請求項3記載の幹細胞増殖因子。
【請求項5】
ブロッカーが、PBX1に対するアンチセンスDNAである、請求項4記載の幹細胞増殖因子。
【請求項6】
ブロッカーが、PBX1発現ブロッカーである、請求項1記載の幹細胞増殖因子。
【請求項7】
幹細胞が造血幹細胞である、請求項1記載の幹細胞増殖因子。
【請求項8】
造血幹細胞が、ヒトまたはマウスの造血幹細胞である、請求項7記載の幹細胞増殖因子。
【請求項9】
細胞膜を通過可能なHOXペプチドの発現のための第一の核酸配列と、幹細胞のHOXで誘導される増殖を通常制限する少なくとも1種の遺伝子の発現をブロックする第二の核酸配列とを含み、これによるHOXペプチドの存在下での該遺伝子の発現レベルの低下が幹細胞増殖を増強する、幹細胞増殖を増強する核酸構築体。
【請求項10】
遺伝子がPBX遺伝子である、請求項9記載の構築体。
【請求項11】
HOXペプチドがHOXB4ペプチドである、請求項9記載の構築体。
【請求項12】
幹細胞が造血幹細胞である、請求項9記載の構築体。
【請求項13】
造血幹細胞が、ヒトまたはマウスの造血幹細胞である、請求項12記載の構築体。
【請求項14】
PBX発現をブロックする第二の核酸配列が、PBX1に対するアンチセンスDNAである、請求項10記載の構築体。
【請求項15】
細胞膜を通過可能なHOXペプチドの活性を有するアミノ酸配列と、幹細胞のHOXで誘導される増殖を通常制限する少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを低下するブロッカーとを含み、これによるHOXペプチドの存在下での該遺伝子の発現レベルの低下が幹細胞増殖を増強する、幹細胞増殖を増強する組成物。
【請求項16】
遺伝子がPBX遺伝子である、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
アミノ酸配列がHOXB4ペプチドからなる、請求項15記載の組成物。
【請求項18】
アミノ酸配列が、細胞膜を通過することが可能であるHIV由来のペプチドを含む、請求項15記載の組成物。
【請求項19】
HIV由来のペプチドが、トランス活性化蛋白質からのNH2末端蛋白質伝達ドメイン(PTD)からなる、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
幹細胞が造血幹細胞である、請求項15記載の組成物。
【請求項21】
造血幹細胞が、ヒトまたはマウスの造血幹細胞である、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
ブロッカーが、PBX発現をブロックする核酸配列である、請求項16記載の組成物。
【請求項23】
ブロッカーが、PBX1に対するアンチセンスDNAである、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
HOXペプチドの過剰発現のための核酸配列と、幹細胞のHOXで誘導される増殖を通常制限する少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを低下するブロッカーとを含み、これによる過剰発現されたHOXペプチドの存在下における該遺伝子の発現レベルの低下が幹細胞増殖を増強する、幹細胞増殖を増強する組成物。
【請求項25】
遺伝子がPBX遺伝子である、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
HOXペプチドがHOXB4ペプチドである、請求項24記載の組成物。
【請求項27】
幹細胞が造血幹細胞である、請求項24記載の組成物。
【請求項28】
造血幹細胞が、ヒトまたはマウスの造血幹細胞である、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
ブロッカーが、PBX発現をブロックする核酸配列である、請求項24記載の組成物。
【請求項30】
ブロッカーが、PBX1に対するアンチセンスDNAである、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
幹細胞を、有効量の請求項1〜8のいずれか1項記載の因子、または有効量の請求項15〜30のいずれか1項記載の組成物で、該幹細胞の増殖を可能にするのに十分な時間処理する工程を含む、幹細胞の増殖を増強する方法。
【請求項32】
HOXペプチドがHOXB4ペプチドであり、遺伝子がPBXである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
幹細胞を、HOXヌクレオチド配列によりコードされたHOXペプチドの活性を有するアミノ酸配列で処理する工程を更に含む、請求項31記載の方法。
【請求項34】
アミノ酸配列がHOXB4ペプチドからなる、請求項33記載の方法。
【請求項35】
アミノ酸配列が、細胞膜を通過することが可能であるHIV由来のペプチドを含む、請求項33または34記載の方法。
【請求項36】
HIV由来のペプチドが、トランス活性化蛋白質からのNH2末端蛋白質伝達ドメイン(PTD)からなる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
幹細胞が造血幹細胞である、請求項31記載の方法。
【請求項38】
造血幹細胞が、ヒトまたはマウスの造血幹細胞である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
幹細胞が、インビトロ、インビボまたはエキソビボにおいて処理される、請求項31〜38のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
患者の造血能を回復するための医薬品の調製のための、請求項1〜8のいずれか1項記載の因子、または請求項9〜14のいずれか1項記載の構築体、請求項15〜30のいずれか1項記載の組成物の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公表番号】特表2006−501829(P2006−501829A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542126(P2004−542126)
【出願日】平成15年10月6日(2003.10.6)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001539
【国際公開番号】WO2004/033672
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(505132079)
【出願人】(500489613)
【Fターム(参考)】