説明

HSP27を標的化するRNAアンタゴニスト

本発明は、Hsp27の発現低下を誘導する、細胞中のHsp27 mRNAを標的化するオリゴマー化合物(オリゴマー)に関する。Hsp27発現の低下は、癌などの特定の医学的障害の治療にとって有益である。本発明は、オリゴマーを含む治療用組成物および治療方法などの前記オリゴマーを用いてHsp27の発現を調節するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、Hsp27の発現を調節するための化合物、組成物および方法を提供する。特に、本発明は、細胞中のHsp27 mRNAを標的化し、Hsp27の発現低下を誘導するオリゴマー化合物(オリゴマー)に関する。Hsp27発現の低下は、癌などの様々な医学的障害にとって有益である。
【0002】
関連出願
本出願は、35 U.S.C.§119(e)の下で、2008年7月2日に出願された米国特許仮出願第61/077,588号(その開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)の利益を請求する。本出願はまた、2008年7月2日に出願されたEP 08104612に由来する優先権も主張する。
【背景技術】
【0003】
Hsp27は、いくつかの哺乳動物細胞中で構成的に発現されるが、特に、病理学的状態において発現される分子シャペロンである。さらに、これらのタンパク質は、抗アポトーシス特性を有し、癌細胞中で発現された場合に腫瘍原性である。Hsp27の発現は、白血病、乳癌、胃癌、肝臓癌、および前立腺癌、ならびに骨肉腫などの実質的に全ての癌形態における予後不良と関連する。Hsp27発現の増加はまた、いくつかの抗癌治療に対する応答も予測することができる。例えば、Hsp27の発現は、乳癌における化学療法に対する耐性に関与し、白血病患者における化学療法に対する貧弱な応答を予測する。
【0004】
癌の調節の他に、Hsp27タンパク質の発現はまた、ミオパシーおよび喘息の治療にとっても重要であると考えられてきた。
【0005】
Oncogenex社は、OGX-427アンチセンス化合物と呼ばれるHsp27 mRNAを標的化するアンチセンスオリゴヌクレオチドを開発している。WO2007/025229および米国特許第7,101,991号は、Hsp27を標的化するアンチセンスオリゴヌクレオチドを開示している。
【0006】
Hsp27を標的化する改良されたアンチセンスオリゴマーが必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、10〜30個のモノマーなどの10〜50個のモノマーの連続的配列(第1領域)であって、哺乳動物のHsp27遺伝子もしくはmRNAに対応する領域または哺乳動物のHsp27遺伝子もしくはmRNA、例えば、配列番号137に記載の配列を有する核酸、もしくはその天然の変異体などの哺乳動物のHsp27をコードする核酸の標的領域の逆相補体と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、98%もしくは99%)同一(相同)である前記連続的配列を含む、10〜30個のモノマーなどの10〜50個のモノマーのオリゴマーを提供する。かくして、例えば、前記オリゴマーは、配列番号137に示される配列を有する一本鎖核酸分子の領域にハイブリダイズする。
【0008】
本発明は、10〜30個のモノマーなどの10〜50個のモノマーの連続的配列(第1領域)であって、哺乳動物のHsp27遺伝子もしくはmRNAに対応する領域、または哺乳動物のHsp27遺伝子もしくはmRNA、例えば、配列番号137に記載の配列を有する核酸、もしくはその天然の変異体などの哺乳動物のHsp27をコードする核酸の標的領域の逆相補体と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、98%もしくは99%)同一(相同)であり、第1領域中の少なくとも1個のモノマーが、Locked Nucleic Acid (LNA)モノマーであるヌクレオシド類似体である前記連続的配列を含む、10〜30個のモノマーなどの10〜50個のモノマーのオリゴマーを提供する。かくして、例えば、前記オリゴマーは、配列番号137に示される配列を有する一本鎖核酸分子の領域にハイブリダイズする。
【0009】
本発明は、本発明に従うオリゴマー、および該オリゴマーに共有結合された少なくとも1個の非ヌクレオチドまたは非ポリヌクレオチド部分を含むコンジュゲートを提供する。
【0010】
本発明は、本発明に従うオリゴマーまたはコンジュゲートと、製薬上許容し得る希釈剤、担体、塩またはアジュバントとを含む医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明は、癌などの過増殖性障害または他の過増殖性障害などの本明細書に開示される疾患または医学的障害の治療のためなどの医薬としての使用のための、本発明に従うオリゴマーまたはコンジュゲートを提供する。
【0012】
本発明は、癌などの過増殖性障害などの本明細書に開示される疾患または障害の治療のための医薬の製造における、本発明に従うオリゴマーまたはコンジュゲートの使用を提供する。
【0013】
本発明は、癌などの過増殖性障害などの本明細書に開示される疾患または障害を治療する方法であって、例えば、有効量の本発明に従うオリゴマー、コンジュゲートまたは医薬組成物を、該疾患または障害に罹患するか、またはそれに罹りやすい動物(該疾患または障害に罹患するか、またはそれに罹りやすい患者など)に投与することを含む前記方法を提供する。
【0014】
一実施形態においては、前記疾患または障害または症状は、Hsp27遺伝子またはmRNAの過剰発現と関連する。
【0015】
本発明は、Hsp27を発現している細胞中でのHsp27の阻害のための方法であって、該細胞中でのHsp27発現の阻害に影響する(例えば、Hsp27発現に対する阻害効果を引き起こす)ように、該細胞と、本発明に従うオリゴマーまたはコンジュゲートとを接触させることを含む前記方法を提供する。
【0016】
本発明は、10〜50個の連続するモノマーの第1領域を含み、第1領域の配列が、哺乳動物Hsp27遺伝子に対応する領域または哺乳動物Hsp27をコードする核酸の標的領域の逆相補体と少なくとも80%同一である、10〜50個のモノマーのオリゴマーを提供する。
【0017】
本発明はさらに、本発明のオリゴマーに共有結合した少なくとも1個の非ヌクレオチドまたは非ポリヌクレオチド部分(「コンジュゲートした部分」)を含む、本発明に従うオリゴマーを含むコンジュゲートを提供する。
【0018】
本発明は、本発明のオリゴマーまたはコンジュゲートと、製薬上許容し得る希釈剤、担体、塩またはアジュバントとを含む医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明はさらに、医学における使用のための、本発明に従うオリゴマーを提供する。
【0020】
本発明はさらに、癌、ミオパシーおよび喘息からなる群より選択される疾患などの、本明細書に記載の1種以上の疾患の治療のための医薬の製造における本発明のオリゴマーの使用を提供する。
【0021】
本発明はさらに、癌、ミオパシーおよび喘息からなる群より選択される疾患などの、本明細書に記載の1種以上の疾患の治療のための使用のための、本発明に従うオリゴマーを提供する。
【0022】
本発明のオリゴマーを含む医薬組成物および他の組成物も提供する。さらに、細胞または組織中のHsp27の発現を下方調節する方法であって、該細胞または組織を、in vitroまたはin vivoで、有効量の本発明の1種以上のオリゴマー、コンジュゲートまたは組成物と接触させることを含む前記方法を提供する。
【0023】
また、Hsp27の発現、または過剰発現と関連する疾患または症状を有することが疑われるか、またはそれに罹りやすい動物(非ヒト動物またはヒト)に、治療上または予防上有効量の本発明の1種以上のオリゴマー、コンジュゲートまたは医薬組成物を投与することにより、該非ヒト動物またはヒトを治療する方法も開示する。さらに、Hsp27の発現の阻害のため、およびHsp27の活性に関連する疾患の治療のためのオリゴマーの使用方法を提供する。
【0024】
本発明は、癌、ミオパシーおよび喘息からなる群より選択される疾患を治療する方法であって、有効量の1種以上のオリゴマー、そのコンジュゲート、または医薬組成物を、それを必要とする動物(それを必要とする患者など)に投与することを含む前記方法を提供する。
【0025】
本発明は、細胞または組織中のHsp27の発現を阻害する(例えば、下方調節することによる)方法であって、該細胞または組織を、in vitroまたはin vivoで、有効量の1種以上のオリゴマー、そのコンジュゲート、または医薬組成物と接触させて、Hsp27の発現の下方調節を行う工程を含む前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】示されたオリゴヌクレオチドを用いてPC3細胞をトランスフェクトした24時間後の、GAPDHに対して正規化されたHsp27 mRNAを示すリアルタイム定量PCRを示す。
【図2】示されたオリゴヌクレオチドを用いてPC3細胞をトランスフェクトした後のMTS細胞増殖を示す。
【図3】Hsp27 cDNA(mRNA)配列 - ヒト - 配列番号137を示す。GenBankアクセッション番号NM_001540。
【図4】A549細胞中でのオリゴマーのIC50決定を示す。Hsp27オリゴマー(オリゴと呼ぶ場合がある)を用いるトランスフェクションの24時間後のA549細胞から得られたQPCRデータである。このデータをGAPDH mRNA発現を用いて正規化し、モック(100%)における標的発現と比較する。モックトランスフェクトされた細胞は、トランスフェクション剤のみ(陰性対照)を用いてトランスフェクトされたものである。
【図5】PC3細胞中でのオリゴマーのIC50決定を示す。Hsp27オリゴを用いるトランスフェクションの24時間後のPC3細胞から得られたQPCRデータである。このデータをGAPDH mRNA発現を用いて正規化し、モック(100%)における標的発現と比較する。モックトランスフェクトされた細胞は、トランスフェクション剤のみ(陰性対照)を用いてトランスフェクトされたものである。
【図6】血清安定性アッセイを示す。0、24、48および120時間で取られたアリコートを用いて37℃で消化した。その結果をPAGE中でのゲル電気泳動により可視化する。DNAホスホロチオエートを陽性対照として用いた。
【図7】Hsp27オリゴマーで処理されたマウスのマウス肝臓におけるHsp27 mRNAの下方調節を示す。
【図8】Hsp27オリゴマーで処理されたマウスにおけるマウス血液血清中でのALTレベルを示す。
【図9】Hsp27オリゴマーで処理されたマウスにおけるマウス血液血清中でのASTレベルを示す。
【図10】配列番号135に記載の配列を有するオリゴマーを用いる長期間培養を示す。
【図11】配列番号135に記載の配列を有するオリゴマーを用いる長期間培養がHsp27 mRNAおよびタンパク質を下方調節することを示す。
【図12】抗Hsp27 LNAに基づくオリゴヌクレオチドと細胞傷害剤との組合せ効果の例を示す。細胞増殖に対するTNFαとの組合せの効果を示す。
【図13】PC3異種移植片における配列番号135に記載の配列を有するオリゴマーの抗腫瘍効果を示す。
【図14】動物モデルにおける抗Hsp27オリゴヌクレオチドによる腫瘍中での標的ノックダウンを示す。マーカー中のバンドのサイズは43 kDa、34 kDaおよび23 kDaである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
オリゴマー
本発明は、配列番号137に示されるHsp27核酸などの哺乳動物Hsp27をコードする核酸分子、および哺乳動物Hsp27をコードするそのような核酸分子の天然の変異体の機能の調節における使用のために、オリゴマー化合物(本明細書ではオリゴマーと呼ぶ)を用いる。本発明の文脈における用語「オリゴマー」とは、2個以上のモノマーの共有連結(共有結合)により形成される分子(すなわち、オリゴヌクレオチド)を指す。いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは、10〜50個の共有連結されたモノマー、例えば、10〜30個の共有連結されたモノマー、例えば、10〜24個の共有連結されたモノマー、例えば、10〜18個の共有連結されたモノマー、例えば、10〜16個の共有連結されたモノマーを含むか、またはそれからなる。
【0028】
いくつかの実施形態においては、用語「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」、「単位」および「モノマー」は互換的に用いられる。ヌクレオチドまたはモノマーの配列に言及する場合、言及されるものはA、T、G、CまたはUなどの塩基の配列であることが認識されるであろう。
【0029】
本明細書で用いられる用語「ヌクレオチド」とは、糖部分、塩基部分およびリン酸もしくはホスホロチオエートヌクレオチド間連結基などの共有連結された基(連結基)を含むグリコシドを指し、DNAもしくはRNAなどの天然ヌクレオチドと、本明細書では「ヌクレオチド類似体」とも呼ばれる、修飾された糖および/もしくは塩基部分を含む非天然ヌクレオチドとの両方を含む。本明細書では、単一のヌクレオチド(単位)を、モノマーまたは核酸単位と呼ぶこともできる。
【0030】
生化学の分野では、用語「ヌクレオシド」は、糖部分と塩基部分とを含むグリコシドを指すように一般的に用いられ、従って、オリゴマーのヌクレオチド間のヌクレオチド間結合により共有連結された「ヌクレオチド」単位に言及する場合に用いることができる。バイオテクノロジーの分野では、用語「ヌクレオチド」は、核酸モノマーまたは単位を指すように用いられることが多く、そのようなものとして、オリゴヌクレオチドの文脈においては、「ヌクレオチド配列」などの塩基を指し、典型的には、核酸塩基配列を指す(すなわち、糖主鎖およびヌクレオシド間結合の存在は暗黙的である)。同様に、特に、1個以上のヌクレオシド間連結基が改変されたオリゴヌクレオチドの場合、用語「ヌクレオチド」は、「ヌクレオシド」を指してもよく、例えば、用語「ヌクレオチド」を、ヌクレオシド間の結合の存在または性質を特定する場合でも用いることができる。
【0031】
当業者であれば、本発明の文脈において、オリゴヌクレオチド(オリゴマー)の5'末端ヌクレオチドが、5'ヌクレオチド間連結基を含まないが、それは5'末端基を含んでも、または含まなくてもよいことを理解できるであろう。
【0032】
用語「モノマー」は、核酸中に天然に存在し、修飾された糖もしくは修飾された核酸塩基を含まないヌクレオシドとデオキシヌクレオシド(集合的に「ヌクレオシド」)、すなわち、リボース糖もしくはデオキシリボース糖が、天然の、非修飾核酸塩基(塩基)部分に共有結合している化合物(すなわち、プリンおよびピリミジンヘテロ環アデニン、グアニン、シトシン、チミンもしくはウラシル)と、糖部分がリボースもしくはデオキシリボース糖以外のものである(二環式糖もしくは2'置換糖などの2'修飾糖など)か、または塩基部分が修飾されている(例えば、5-メチルシトシン)か、またはその両方である、核酸中に天然に存在するか、もしくは核酸中に天然に存在しないヌクレオシドである「ヌクレオシド類似体」の両方を含む。
【0033】
「RNAモノマー」は、リボース糖と非修飾核酸塩基を含有するヌクレオシドである。
【0034】
「DNAモノマー」は、デオキシリボース糖と非修飾核酸塩基を含有するヌクレオシドである。
【0035】
「ロックド核酸(Locked Nucleic Acid)モノマー」、「ロックドモノマー」または「LNAモノマー」は、本明細書の以下にさらに記載されるような、二環式糖を有するヌクレオシド類似体である。
【0036】
用語「に対応する(corresponding to)」および「に対応する(corresponds to)」とは、オリゴマーのヌクレオチド/ヌクレオシド配列(すなわち、核酸塩基もしくは塩基配列)または連続的ヌクレオチド/ヌクレオシド配列(第1領域)と、i)核酸標的の逆相補体のサブ配列、および/もしくはii)本明細書で提供されるヌクレオチド/ヌクレオシドの配列から選択されるさらなる配列の等価な連続的ヌクレオチド/ヌクレオシド配列との比較を指す。ヌクレオチド/ヌクレオシド類似体を、その等価な、または対応するヌクレオチド/ヌクレオシドと直接比較する。i)またはii)の下でさらなる配列に対応する第1領域は、典型的には、第1領域の長さにわたってその配列(連続的ヌクレオチド/ヌクレオシド配列など)と同一であるか、または本明細書に記載のように、いくつかの実施形態においては、対応する配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%相同である、少なくとも97%相同である、少なくとも98%相同である、少なくとも99%相同である、例えば、100%相同である(同一である)など、少なくとも80%相同であってよい。
【0037】
用語「対応するヌクレオシド類似体」および「対応するヌクレオシド」は、ヌクレオシド類似体中の塩基部分と、ヌクレオシド中の塩基部分が同一であることを示す。例えば、「ヌクレオシド」がアデニンに連結された2'-デオキシリボース糖を含む場合、「対応するヌクレオシド類似体」は、例えば、アデニン塩基部分に連結された修飾糖を含む。
【0038】
用語「オリゴマー」、「オリゴマー化合物」および「オリゴヌクレオチド」は、本発明の文脈において互換的に用いられ、例えば、リン酸基(ヌクレオシド間でホスホジエステル結合を形成する)またはホスホロチオエート基(ヌクレオシド間でホスホロチオエート結合を形成する)による2個以上のモノマーの共有連結により形成された分子を指す。前記オリゴマーは、10〜50個のモノマー、例えば、10〜30個のモノマー、例えば、10〜24個のモノマー、例えば、10〜18個のモノマー、例えば、10〜16個のモノマーからなるか、またはそれを含む。オリゴマーは、例えば、9〜30個の連続するモノマー、例えば、9〜24個のモノマー、例えば、9〜18個のモノマー、例えば、9〜16個のモノマーからなる第1領域(連続配列)からなるか、またはそれを含む。
【0039】
いくつかの実施形態においては、用語「連続配列」、「連続モノマー」および「領域」は互換的である。
【0040】
いくつかの実施形態においては、オリゴマーは、本明細書に記載のヌクレオシド、またはヌクレオシド類似体、またはその混合物を含む。「LNAオリゴマー」または「LNAオリゴヌクレオチド」とは、1個以上のLNAモノマーを含むオリゴヌクレオチドを指す。
【0041】
必要に応じてオリゴマー内に含まれるヌクレオシド類似体は、対応するヌクレオシドと同様に機能するか、または特定の改良された機能を有してもよい。いくつかの、または全てのモノマーがヌクレオシド類似体であるオリゴマーは、細胞膜を貫通する能力、細胞外および/もしくは細胞内ヌクレアーゼに対する良好な耐性ならびに核酸標的に対する高い親和性および特異性などの、そのようなオリゴマーのいくつかの望ましい特性のため、天然の形態よりも好ましいことが多い。LNAモノマーは、例えば、1つ以上の上記特性を付与するために特に好ましい。
【0042】
様々な実施形態において、オリゴマー内に存在する1個以上のヌクレオシド類似体は、対応する天然のヌクレオシドに対する機能において「サイレント」または「等価」である、すなわち、オリゴマーが標的遺伝子発現を阻害するように機能する方法に対する機能的効果を有さない。にもかかわらず、そのような「等価な」ヌクレオシド類似体は、例えば、それらが製造するのがより容易であるか、もしくはより安価であるか、または保存もしくは製造条件下でより安定であるか、またはタグもしくは標識を含んでもよい場合、有用である。しかしながら、典型的には、前記類似体は、オリゴマーが、例えば、標的核酸の標的領域に対する結合親和性の増加および/または細胞内ヌクレアーゼなどのヌクレアーゼに対する耐性の増加、および/または細胞中への輸送の容易性の増加をもたらすことにより、発現を阻害するように機能する方法に対する機能的効果を有するであろう。
【0043】
かくして、様々な実施形態において、本発明に従うオリゴマーは、ヌクレオシドモノマーおよびLNAモノマーなどの少なくとも1個のヌクレオシド類似体モノマー、または他のヌクレオシド類似体モノマーを含む。
【0044】
用語「少なくとも1」は、1以上の整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などを含む。本発明のオリゴマーの核酸またはタンパク質標的に言及する場合などの様々な実施形態において、用語「少なくとも1」は、用語「少なくとも2」および「少なくとも3」および「少なくとも4」を含む。同様に、いくつかの実施形態においては、用語「少なくとも2」は、用語「少なくとも3」および「少なくとも4」を含む。
【0045】
いくつかの実施形態においては、オリゴマーは、第1領域中に9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個の連続モノマーを含むか、またはそれからなる。
【0046】
いくつかの実施形態においては、オリゴマーは、10〜24個の連続モノマー、例えば、10〜22個の連続モノマー、例えば、10〜18個の連続モノマー、例えば、10〜16個の連続モノマー、例えば、12〜18個の連続モノマー、例えば、13〜17個もしくは12〜16個の連続モノマー、例えば、13、14、15、16もしくは24個の連続モノマーを含むか、またはそれからなる。オリゴマー、または連続するヌクレオチド配列長に関する範囲が与えられる場合、それはその範囲に提供される低い方と大きい方の長さを含み、例えば、10〜30は10と30の両方を含むことが理解されるべきである。
【0047】
特定の実施形態においては、オリゴマーは、10、11、12、13、もしくは14個の連続モノマーを含むか、またはそれからなる。
【0048】
様々な実施形態において、本発明に従うオリゴマーは、24個以下のモノマー、例えば、22個以下のモノマー、例えば、20個以下のモノマー、例えば、18個以下のモノマー、例えば、15、16もしくは17個のモノマーからなる。いくつかの実施形態においては、本発明のオリゴマーは20個未満のモノマーを含む。
【0049】
様々な実施形態において、本発明のオリゴマーはRNAモノマーを含まない。
【0050】
様々な実施形態において、本発明に従うオリゴマーは、線状分子であるか、または合成された場合に線状である。そのような実施形態においては、前記オリゴマーは、一本鎖分子であり、典型的には、例えば、オリゴマーが内部二重らせんを形成するような同じオリゴマー内の別の領域と相補的である少なくとも3、4もしくは5個の連続モノマーの短い領域を含まない。いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは本質的に二本鎖ではない、すなわち、siRNAではない。
【0051】
いくつかの実施形態においては、本発明のオリゴマーは、モノマーの連続ストレッチ(第1領域)であって、その配列が本明細書に開示される配列番号により同定される前記ストレッチからなる(例えば、表1〜3を参照)。他の実施形態においては、オリゴマーは、標的をコードする核酸分子のモノマーの連続ストレッチからなる第1領域と、少なくとも1個のさらなるモノマーからなる1個以上のさらなる領域とを含む。いくつかの実施形態においては、第1領域の配列は、本明細書に開示される配列番号により同定される。
【0052】
ギャップマー設計
典型的には、本発明のオリゴマーはギャップマーである。
【0053】
「ギャップマー」は、本明細書では領域Bと呼ばれる少なくとも6個もしくは7個のDNAモノマーの領域などの、本明細書の以下にさらに記載されるRNAse(例えば、RNAseHなど)を動員することができるモノマーの連続ストレッチを含むオリゴマーである。領域Bは、その5'および3'末端の両方で、それぞれA領域およびC領域と呼ばれる領域に隣接し、領域Aと領域Cはそれぞれ、1〜6個のヌクレオシド類似体などの親和性を増強するヌクレオシド類似体などのヌクレオシド類似体を含むか、またはそれからなる。RNaseは、好ましくは、大腸菌またはヒトRNaseHなどのRNaseHである。オリゴマーが相補的RNA分子(mRNA標的など)との二重らせん中で形成される場合、RNaseHを動員するオリゴマーの能力を決定する。
【0054】
いくつかの実施形態においては、RNAseを動員することができるモノマーを、DNAモノマー、α-L-LNAモノマー、C4'アルキル化DNAモノマー(参照により本明細書に組み入れられるものとするPCT/EP2009/050349およびVesterら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 18(2008), 2296-2300を参照)、およびUNA(ロックされていない核酸)ヌクレオチド(参照により本明細書に組み入れられるものとするFluiterら、Mol. Biosyst., 2009, 10, 1039を参照)からなる群より選択する。UNAは、典型的には糖のC2'-C3'結合(すなわち、C2'およびC3'炭素間の共有炭素間結合)が除去され、ロックされていない「糖」残基を形成するロックされていない核酸である。
【0055】
典型的には、ギャップマーは、5'側から3'側に向かって、領域A-B-C、または必要に応じてA-B-C-DまたはD-A-B-Cを含む:領域A(A)は、少なくとも1個のヌクレオシド類似体、例えば、少なくとも1個のLNAモノマー、例えば、1〜6個のヌクレオシド類似体、例えば、LNAモノマーからなるか、もしくはそれを含み、領域B(B)は、DNAモノマーなどの、RNAseを動員することができる少なくとも5個の連続モノマー(mRNA標的などの標的RNA分子の相補的標的領域との二重らせん中で形成された場合)からなるか、もしくはそれを含み;領域C(C)は、少なくとも1個のヌクレオシド類似体、例えば、少なくとも1個のLNAモノマー、例えば、1〜6個のヌクレオシド類似体、例えば、LNAモノマーからなるか、もしくはそれを含み;ならびに領域D(D)は、存在する場合、1、2もしくは3個のモノマー、例えば、DNAモノマーからなるか、もしくはそれを含む。
【0056】
様々な実施形態において、領域Aは、1、2、3、4、5もしくは6個のヌクレオシド類似体、例えば、LNAモノマー、例えば、2〜5個のヌクレオシド類似体、例えば、2〜5個のLNAモノマー、例えば、3もしくは4個のヌクレオシド類似体、例えば、3もしくは4個のLNAモノマーからなる;ならびに/または領域Cは、1、2、3、4、5もしくは6個のヌクレオシド類似体、例えば、LNAモノマー、例えば、2〜5個のヌクレオシド類似体、例えば、2〜5個のLNAモノマー、例えば、3もしくは4個のヌクレオシド類似体、例えば、3もしくは4個のLNAモノマーからなる。
【0057】
特定の実施形態においては、領域Bは、RNaseHなどのRNAseを動員することができる5、6、7、8、9、10、11もしくは12個の連続モノマー(例えば、連続ヌクレオチド)、またはRNAseを動員することができる6〜10個、もしくは7〜9個の連続モノマー、例えば、10もしくは9もしくは8個の連続モノマーからなるか、またはそれを含む。特定の実施形態においては、領域Bは、少なくとも1個のDNAモノマー、例えば、1〜12個のDNAモノマー、好ましくは、4〜12個のDNAモノマー、より好ましくは6〜10個のDNAモノマー、例えば、7〜10個のDNAモノマー、最も好ましくは8、9もしくは10個のDNAモノマーからなるか、またはそれを含む。
【0058】
様々な実施形態において、領域Aは、3もしくは4個のヌクレオシド類似体、例えば、LNAモノマーからなり、領域Bは、7、8、9もしくは10個のDNAモノマーからなり、領域Cは3もしくは4個のヌクレオシド類似体、例えば、LNAモノマーからなる。そのような設計は、(A-B-C)3-10-3、3-10-4、4-10-3、3-9-3、3-9-4、4-9-3、3-8-3、3-8-4、4-8-3、3-7-3、3-7-4、4-7-3を含み、DNAモノマーなどの1個もしくは2個のモノマーを有してもよい領域Dをさらに含んでもよい。
【0059】
さらなるギャップマー設計は、参照により本明細書に組み入れられるものとするWO2004/046160に開示されている。
【0060】
参照により本明細書に組み入れられるものとする米国特許仮出願第60/977,409号から優先権を主張するWO2008/113832号は、「ショートマー」ギャップマーオリゴマーに言及する。いくつかの実施形態においては、本明細書で提供されるオリゴマーはそのようなショートマーギャップマーであってよい。
【0061】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、10、11、12、13、14、15もしくは16個のモノマーからなり、該オリゴマーの領域はパターン(5'-3')、A-B-C、または必要に応じて、A-B-C-DもしくはD-A-B-Cを有し、ここで領域Aは1、2もしくは3個のヌクレオシド類似体モノマー、例えば、LNAモノマーからなり、領域BはRNaseHなどのRNAseを動員することができる7、8、9もしくは10個の連続モノマーからなり、領域Cは1、2もしくは3個のヌクレオシド類似体モノマー、例えば、LNAモノマーからなる。存在する場合、領域Dは1個のDNAモノマーからなる。
【0062】
特定の実施形態においては、領域Aは1個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Aは2個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Aは3個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Cは1個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Cは2個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Cは3個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Bは7個のヌクレオシドモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Bは8個のヌクレオシドモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Bは9個のヌクレオシドモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Bは10個のヌクレオシドモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Bは1〜10個のDNAモノマー、例えば、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のDNAモノマーを含む。特定の実施形態においては、領域Bは1〜9個のDNAモノマー、例えば、2、3、4、5、6、7もしくは8個のDNAモノマーを含む。特定の実施形態においては、領域BはDNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Bはα-L-配置にある少なくとも1個のLNAモノマー、例えば、α-L-配置にある2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のLNAモノマーを含む。特定の実施形態においては、領域Bは少なくとも1個のα-L-オキシLNAモノマーを含む。特定の実施形態においては、α-L-配置にある領域B中の全てのLNAモノマーはα-L-オキシLNA単位である。特定の実施形態においては、A-B-C領域中に存在するモノマーの数は、(ヌクレオシド類似体モノマー-領域B-ヌクレオシド類似体モノマー):1-8-1、1-8-2、2-8-1、2-8-2、3-8-3、2-8-3、3-8-2、4-8-1、4-8-2、1-8-4、2-8-4、または; 1-9-1、1-9-2、2-9-1、2-9-2、2-9-3、3-9-2、1-9-3、3-9-1、3-9-3、4-9-1、1-9-4、または; 1-10-1、1-10-2、2-10-1、2-10-2、1-10-3、3-10-1、2-10-3、3-10-2、もしくは3-10-3からなる群より選択される。特定の実施形態においては、本発明のオリゴマーのA-B-C領域中に存在するモノマーの数は、それぞれ、2-7-1、1-7-2、2-7-2、3-7-3、2-7-3、3-7-2、3-7-4、および4-7-3からなる群より選択される。特定の実施形態においては、領域AおよびCのそれぞれは、3個のLNAモノマーからなり、領域Bは8もしくは9もしくは10個のヌクレオシドモノマー、好ましくはDNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域AおよびCのそれぞれは2個のLNAモノマーからなり、領域Bは8もしくは9個のヌクレオシドモノマー、好ましくはDNAモノマーからなる。
【0063】
様々な実施形態において、他のギャップマー設計としては、領域Aおよび/もしくはCが3、4、5もしくは6個のヌクレオシド類似体、例えば、2'-O-メトキシエチル-リボース糖(2'-MOE)を含むモノマーまたは2'-フルオロ-デオキシリボース糖を含むモノマーからなり、領域Bが8、9、10、11もしくは12個のヌクレオシド、例えば、DNAモノマーからなり、領域A-B-Cが3-9-3、3-10-3、5-10-5もしくは4-12-4モノマーを有するものが挙げられる。さらなるギャップマー設計は、参照により本明細書に組み入れられるものとするWO 2007/146511A2に開示されている。
【0064】
ヌクレオシド間結合
本明細書に記載のオリゴマーのモノマーを、連結基を介して一緒に結合させる。好適には、各モノマーを、連結基を介して3'側の隣接するモノマーに連結する。
【0065】
当業者であれば、本発明の文脈において、オリゴマーの末端の5'モノマーは5'連結基を含まないが、それは5'末端基を含んでも、または含まなくてもよいことを理解できるであろう。
【0066】
用語「連結基」および「ヌクレオシド間結合」とは、2個の連続するモノマーを一緒に共有結合させることができる基を意味する。特定例および好ましい例としては、リン酸基(隣接するヌクレオシドモノマー間でホスホジエステルを形成する)およびホスホロチオエート基(隣接するヌクレオシドモノマー間でホスホロチオエート結合を形成する)が挙げられる。
【0067】
好適な連結基としては、WO2007/031091に、例えば、WO2007/031091(参照により本明細書に組み入れられるものとする)の34頁の第1パラグラフに列挙されたものが挙げられる。
【0068】
様々な実施形態においては、連結基を、その通常のホスホジエステルから、ホスホロチオエートもしくはボラノホスフェート(これらの2個の基はRNaseHにより切断可能であり、それにより、標的遺伝子の発現のRNaseを介するアンチセンス阻害を可能にする)などの、ヌクレアーゼ攻撃に対してより耐性であるものに改変することが好ましい。
【0069】
いくつかの実施形態においては、本明細書に提供される好適な硫黄(S)を含有する連結基が好ましい。様々な実施形態において、ホスホロチオエート連結基は、特に、ギャップマーのギャップ領域(B)にとって好ましい。特定の実施形態においては、ホスホロチオエート結合を用いて、フランキング領域(AおよびC)中のモノマーを一緒に連結する。様々な実施形態において、ホスホロチオエート結合を、領域AもしくはCを領域Dに連結するために、および領域D内のモノマーを一緒に連結するために用いる。
【0070】
様々な実施形態において、領域A、BおよびCは、特に、例えば、ヌクレオシド類似体の使用がエンドヌクレアーゼ分解から領域AおよびC内の連結基を保護する場合、例えば、領域AおよびCがLNAモノマーを含む場合、ホスホジエステル結合などのホスホロチオエート以外の連結基を含む。
【0071】
様々な実施形態において、オリゴマーの隣接モノマーを、ホスホロチオエート基を用いて互いに連結する。
【0072】
特に、ヌクレオシド類似体モノマーの間の、もしくはそれに隣接するホスホロチオエート連結基(典型的には、領域Aおよび/もしくはC中)を用いる、1もしくは2個の結合などのホスホジエステル結合の、ホスホロチオエート主鎖を有するオリゴマー中への含有が、オリゴマーの生体利用能および/または生体分布を改変することができることが認識される(参照により本明細書に組み入れられるものとするWO2008/053314を参照)。
【0073】
上記の実施形態などの、いくつかの実施形態においては、好適かつ具体的に指摘しない場合、全ての残りの連結基はホスホジエステルまたはホスホロチオエートのいずれか、またはその混合物である。
【0074】
いくつかの実施形態においては、全てのヌクレオシド間連結基はホスホロチオエートである。
【0075】
本明細書に提供されるものなどの、特定のギャップマーオリゴヌクレオチド配列に言及する場合、様々な実施形態において、結合がホスホロチオエート結合である場合、本明細書に開示されるものなどの代替的な結合を用いることができ、例えば、特にLNAモノマーなどのヌクレオシド類似体間の連結のためには、リン酸(ホスホジエステル)結合を用いることができることが理解されるであろう。同様に、様々な実施形態において、本明細書に提供されるものなどの、特定のギャップマーオリゴヌクレオチド配列に言及する場合、LNAモノマーなどの領域AもしくはC中の1個以上のモノマーは、5-メチルシトシン塩基を含み、その領域中の他のモノマーは非修飾シトシン塩基を含んでもよい。
【0076】
標的核酸
用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は本明細書では互換的に用いられ、上記のように2個以上のモノマーの共有連結により形成される分子と定義する。2個以上のモノマーを含む「核酸」は、任意の長さのものであってよく、この用語は本明細書に記載の長さを有する「オリゴマー」に対して包括的である。用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、一本鎖、二本鎖、部分的に二本鎖、および環状の分子を含む。
【0077】
本明細書で用いられる用語「標的核酸」とは、哺乳動物Hsp27ポリペプチド、例えば、ヒトHsp27、例えば、配列番号137に示される配列を有する核酸、およびそのような核酸の天然の対立遺伝子変異体をコードするDNAもしくはRNA(例えば、mRNAもしくはプレ-mRNA)を指す。特定の実施形態においては、哺乳動物Hsp27は、マウスHsp27である。いくつかの実施形態においては、例えば、研究または診断において用いる場合、「標的核酸」は、上記DNAもしくはRNA核酸標的から誘導されたcDNAもしくは合成オリゴヌクレオチドである。本発明に従うオリゴマーは、典型的には、標的核酸にハイブリダイズすることができる。
【0078】
標的核酸の例としては、その対応するタンパク質配列と共に以下の表に示されるGenBankアクセッション番号を有する哺乳動物Hsp27をコードする核酸が挙げられる。
【0079】

核酸に関する上記のGenBankアクセッション番号はcDNA配列を指すものであり、mRNA配列自体を指すものではないことが認識される。成熟mRNAの配列を、チミン塩基(T)をウラシル塩基(U)により置換した対応するcDNA配列から直接誘導することができる。
【0080】
用語「その天然変異体」とは、マウス、サル、および好ましくはヒトHsp27などの哺乳動物などの規定の分類群内に天然に存在するHsp27ポリペプチドまたは核酸配列の変異体を指す。典型的には、ポリヌクレオチドの「天然変異体」に言及する場合、この用語は染色体転座もしくは複製により第7染色体:75.77-75.77 Mbに認められるHsp27をコードするゲノムDNAの任意の対立遺伝子変異体、およびそれから誘導されたmRNAなどのRNAも包含する。「天然変異体」はまた、Hsp27 mRNAの選択的スプライシングから誘導された変異体も含んでもよい。特定のポリペプチド配列に言及する場合、例えば、この用語は、天然形態のタンパク質も含み、従って、例えば、シグナルペプチド切断、タンパク質溶解的切断、糖鎖付加などの翻訳同時または翻訳後修飾により加工することができる。
【0081】
特定の実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーは、Watson-Crickの塩基対形成、Hoogsteenの水素結合、または逆転Hoogsteen水素結合により、オリゴマーのモノマーと標的核酸のモノマーとの間の標的核酸の領域(「標的領域」)に結合する。そのような結合は、「ハイブリダイゼーション」とも呼ばれる。別途指摘しない限り、結合は相補的塩基のWatson-Crick対形成によるものであり(すなわち、アデニンとチミン(DNA)もしくはウラシル(RNA)、およびグアニンとシトシン)、オリゴマーの配列は標的領域の逆相補体の配列と同一であるか、または部分的に同一であるため、オリゴマーは標的領域に結合する;本明細書の目的のために、前記オリゴマーを標的領域と「相補的」または「部分的に相補的」であると言い、標的領域の配列に対するオリゴマー配列の「相補性」の%は、標的領域の配列の逆相補体に対する「同一性」(相同性)%である。
【0082】
本明細書で用いられる用語「逆相補体」、「逆相補的」および「逆相補性」は、用語「相補体」、「相補的」および「相補性」と互換性である。
【0083】
本文により明確に為されない限り、本明細書での「標的領域」は、本明細書の以下に記載のアラインメントプログラムおよびパラメーターを用いる、特定のオリゴマー(またはその領域)の配列の逆相補体と最良に整列する配列を有する標的核酸の領域であろう。
【0084】
本発明のオリゴマー(またはその領域)と本明細書に開示されるものなどの哺乳動物Hsp27をコードする核酸の標的領域との間の「相補性」の程度を決定する際、「相補性」の程度(「相同性」または「同一性」とも言う)を、オリゴマー(またはその領域)の配列と、それと共に最良に整列する標的領域(または標的領域の逆相補体)の配列との間の同一性%(または相同性%)として表す。この%を、2個の配列間で同一である整列した塩基の数を計数し、オリゴマー中の連続モノマーの総数で割って、100を掛けることにより算出する。そのような比較において、ギャップが存在する場合、そのようなギャップは、ギャップ内のモノマー数が本発明のオリゴマーと標的領域との間で異なる領域よりもむしろ、単に不一致であるのが好ましい。
【0085】
本明細書で用いられる用語「相同な」および「相同性」は、用語「同一性」および「同一の」と互換性である。
【0086】
アミノ酸およびポリヌクレオチドのアラインメント、配列同一性%、ならびに相補性の程度を、標準的な設定を用いるClustalWアルゴリズムを用いて本発明のために決定することができる:http://www.ebi.ac.uk/emboss/align/index.html, Method: EMBOSS::water (local): Gap Open = 10.0, Gap extend = 0.5を参照、Blosum 62(タンパク質)、またはヌクレオチド/核酸塩基配列にはDNAfullを用いる。
【0087】
理解されるように、文脈に応じて、「不一致(ミスマッチ)」とは、配列中の非同一性(例えば、オリゴマーの核酸塩基配列とそれが結合する標的領域の逆相補体との間;例えば、2個の整列されたHsp27をコードする核酸の塩基配列の間)、または配列中の非相補性(例えば、オリゴマーとそれが結合する標的領域との間)を指す。
【0088】
いくつかの実施形態においては、本発明に従うオリゴマーは、Hsp27標的遺伝子を発現している、または発現することができる細胞中での1個以上のHsp27標的遺伝子の発現を阻害(下方調節などによる)することができる(すなわち、細胞中のHsp27標的遺伝子のHsp27抑制を軽減することによる)。
【0089】
Hsp27 mRNAを標的化するオリゴマーは、5'非翻訳リーダー、エクソン、イントロンおよび3'非翻訳尾部などの標的mRNA核酸に沿った任意の部位にハイブリダイズすることができる。しかしながら、Hsp27 mRNAを標的化するオリゴマーは標的核酸の成熟mRNA形態にハイブリダイズするのが好ましい。
【0090】
好適には、本発明のオリゴマーまたはそのコンジュゲートは、Hsp27遺伝子の発現を下方調節(例えば、低下または除去)することができる。様々な実施形態において、本発明のオリゴマー(またはコンジュゲート)は、典型的には、ヒト細胞などの哺乳動物細胞中で、Hsp27の阻害を行うことができる。特定の実施形態においては、本発明のオリゴマー、またはそのコンジュゲートは、標的核酸に結合し、オリゴマーまたはコンジュゲートの非存在下での発現レベルと比較して少なくとも10%または20%、より好ましくは、オリゴマーまたはコンジュゲートの非存在下でのHsp27発現レベルと比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%のHsp27 mRNA発現の阻害を行う。いくつかの実施形態においては、そのような阻害は、約0.04 nM〜約25 nM、例えば、約0.8 nM〜約20 nMのオリゴマーまたはコンジュゲートを用いる場合に認められる。本明細書に例示されるように、細胞型は、いくつかの実施形態においては、ヒト細胞、例えば、癌細胞、例えば、ヒト肺癌細胞またはヒト前立腺癌細胞(例えば、in vitroでトランスフェクトされた細胞)である。用いられるオリゴマー濃度は、いくつかの実施形態においては、5 nMである。用いられるオリゴマー濃度は、いくつかの実施形態においては、25 nMである。用いられるオリゴマー濃度は、いくつかの実施形態においては、1 nMである。細胞を処理するのに用いられるオリゴマーの濃度は、実施例に例示されるように、トランスフェクション(Lipofecton)を用いるin vitro細胞アッセイにおいて実施される様々な典型的な実施形態にあることに留意すべきである。トランスフェクション剤の非存在下では、標的の下方調節を得るのに必要なオリゴマー濃度は、典型的には1〜25μM、例えば、5μMである。
【0091】
様々な実施形態において、mRNA発現の阻害は、100%未満(すなわち、発現の完全未満の阻害)、たとえば、98%未満の阻害、95%未満の阻害、90%未満の阻害、80%未満の阻害、例えば、70%未満の阻害である。様々な実施形態において、遺伝子発現の調節を、例えば、SDS-PAGE、次いで、標的タンパク質に対する好適な抗体を用いるウェスタンブロッティングなどの方法により、タンパク質レベルを測定することにより決定することができる。あるいは、発現レベルの調節を、例えば、ノーザンブロッティングまたは定量的RT-PCRにより、mRNAのレベルを測定することにより決定することができる。mRNAレベルを介して測定する場合、約0.04 nM〜約25 nM、例えば、約0.8 nM〜約20 nMなどの好適な用量を用いる場合、下方調節のレベルは、様々な実施形態においては、典型的には、本発明のオリゴマー、コンジュゲートまたは組成物の非存在下での正常レベルの10〜20%のレベルまでである。
【0092】
従って、本発明は、Hsp27タンパク質および/もしくはmRNAを発現している細胞中でのHsp27タンパク質および/もしくはmRNAの発現を下方調節するか、または阻害する方法であって、該細胞と、有効量の本発明に従うオリゴマーもしくはコンジュゲートとを接触させて、該細胞中でのHsp27タンパク質および/もしくはmRNAの発現を下方調節するか、または阻害することを含む前記方法を提供する。好適には、前記細胞は哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞である。前記接触を、いくつかの実施形態においては、in vitroで行ってもよい。前記接触を、いくつかの実施形態においては、in vivoで行うことができる。
【0093】
オリゴマー配列
いくつかの実施形態においては、本発明のオリゴマーは、配列番号1〜128からなる群より選択される配列と同一である配列を有する。
【0094】
さらに、本発明の1種以上のオリゴマーと(全体に、もしくは完全に)相補的であるか、または部分的に相補的である標的領域を含む標的核酸(例えば、Hsp27をコードするDNAもしくはmRNAも提供される。特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、対立遺伝子変異体(第7染色体遺伝子座:75.77-75.77 Mbに存在するHsp27など)などのHsp27標的領域の変異体に結合する。いくつかの実施形態においては、Hsp27標的領域の変異体は、配列番号137に記載の配列を有する標的領域に対して少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する。かくして、他の実施形態においては、本発明のオリゴマーは、配列番号1〜128からなる群より選択される配列と比較した場合、1、2または3個の塩基において異なる配列を有する。典型的には、Hsp27標的領域の変異体に結合する本発明のオリゴマーは、Hsp27を阻害する(例えば、下方調節により)ことができる。
【0095】
他の実施形態においては、本発明のオリゴマーは、LNAオリゴマー、例えば、配列番号129〜136に示される配列を有するこれらのオリゴマーである。様々な実施形態において、本発明のオリゴマーは、Hsp27 mRNAおよびタンパク質発現の強力な阻害剤である。いくつかの実施形態においては、語句「強力な阻害剤」とは、実施例5のリポフェクタミントランスフェクションアッセイにより決定される5 nM未満のIC50を有するオリゴマーを指す。いくつかの実施形態においては、IC50は4 nM未満、例えば、2 nM未満である。
【0096】
様々な実施形態において、本発明のオリゴマーは、配列番号131または配列番号135の配列を有するLNAオリゴマーである。
【0097】
様々な実施形態において、前記オリゴマーは、配列番号137中の標的領域の逆相補体の配列と同一であるか、または部分的に同一である塩基配列を有する第1領域を含むか、またはそれからなる。様々な実施形態において、前記オリゴマーは、配列番号1〜128からなる群より選択される配列を有する第1領域を含むか、またはそれからなる。
【0098】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、哺乳動物Hsp27をコードする核酸の標的領域の配列と全体的に相補的(完全に相補的)である塩基配列を有する第1領域を含むか、またはそれからなる。
【0099】
しかしながら、いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは、Hsp27標的核酸の最良に整列された標的領域と比較して1、2、3、もしくは4個(以上)の不一致を含むが、標的領域に依然として十分に結合して、Hsp27 mRNAまたはタンパク質発現の阻害を行う。Watson-Crick水素結合した二本鎖に対する不一致の脱安定化効果を、例えば、オリゴマーの長さの増加および/またはオリゴマー内に存在する、LNAモノマーなどのヌクレオシド類似体の数の増加により相殺することができる。
【0100】
様々な実施形態において、オリゴマー塩基配列は、例えば、哺乳動物Hsp27をコードする標的核酸の最良に整列された標的領域の塩基配列と比較して、3個以下、例えば、2個以下の不一致を含む。
【0101】
いくつかの実施形態においては、オリゴマー塩基配列は、哺乳動物Hsp27をコードする核酸の最良に整列された標的領域の塩基配列と比較した場合、1個以下の不一致を含む。
【0102】
様々な実施形態において、本発明のオリゴマー、またはその第1領域の塩基配列は、配列番号1〜15および121、16〜30および122、31〜45および123、46〜60および124、61〜75および125、76〜90および126、91〜105および127、ならびに106〜120および128からなる群より選択される塩基配列と少なくとも80%同一であり、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であり、例えば、100%同一であるのが好ましい。
【0103】
特定の実施形態においては、本発明のオリゴマー、またはその第1領域の塩基配列は、配列番号137中に存在する標的領域の逆相補体の塩基配列と少なくとも80%同一であり、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であり、例えば、100%同一である。
【0104】
様々な実施形態において、本発明のオリゴマー、またはその第1領域の塩基配列は、好ましくは配列番号137の標的領域と少なくとも80%相補的であり、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%相補的であり、例えば、100%相補的(完全に相補的)である。
【0105】
いくつかの実施形態においては、前記オリゴマー(またはその第1領域)は、配列番号1、16、31、46、61、76、91および106からなる群より選択される塩基配列を有するか、または配列番号1、16、31、46、61、76、91および106の少なくとも9もしくは10個の連続モノマーからなる群より選択される。他の実施形態においては、本発明のオリゴマーまたはその第1領域の配列は、配列番号1、16、31、46、61、76、91および106の配列、または必要に応じて選択された配列もしくはその領域と整列させた場合、少なくとも9もしくは10個の連続モノマーの配列を有するオリゴマー中のものとは異なる1、2、もしくは3個の塩基部分を含む。
【0106】
いくつかの実施形態においては、本明細書で用いられる用語「第1領域」とは、オリゴマーの一部(サブ配列)を指す。例えば、配列番号1に記載の16個のモノマーの配列は、配列番号121に記載の24個のモノマーの配列のサブ配列である、すなわち、配列番号121に記載の配列は配列番号1に記載の配列を含む。
【0107】
いくつかの実施形態においては、前記オリゴマー(またはその第1領域)は、配列番号121〜128からなる群より選択される塩基配列、またはその少なくとも9もしくは10個の連続モノマーの配列を有する。他の実施形態においては、前記オリゴマー(またはその第1領域)の配列は、配列番号121〜128の配列、または選択された配列もしくはその領域と最適に整列させた場合、その少なくとも9もしくは10個の連続モノマーの配列を有するオリゴマー中のものと異なる1、2、または3個の塩基部分を含む。
【0108】
様々な実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号1、16、31、46、61、76、91および106からなる群より選択される配列中に同一に存在する塩基配列を有する、12〜16個などの9、10、11、12、13、14、15または16個の連続モノマーの領域を含む。他の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号1、16、31、46、61、76、91および106の配列を有するオリゴマー中のものと異なる1、2もしくは3個の塩基部分を含む領域を含む。
【0109】
いくつかの実施形態においては、第1領域は、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28もしくは29個の連続モノマー、例えば、9〜22個、例えば、12〜24個、例えば、12〜22個、例えば、12〜18個、例えば、12〜16個のモノマーからなる。好適には、いくつかの実施形態においては、第1領域は、本発明のオリゴマーと同じ長さのものである。
【0110】
いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは、標的領域と非相補的である、第1領域の5'および/もしくは3'末端にさらなるモノマー、例えば、オリゴマーの5'末端および/もしくは3'末端に、独立に1、2、3、4もしくは5個のさらなるモノマーを含む。様々な実施形態において、本発明のオリゴマーは、標的領域と相補的であるさらなるモノマーにより5'および/もしくは3'にフランキングする、標的と相補的である第1領域を含む。いくつかの実施形態においては、さらなる5'または3'モノマーは、DNAまたはRNAモノマーなどのヌクレオシドである。様々な実施形態において、5'または3'モノマーは、本明細書に記載のギャップマーオリゴマーの文脈において言及される領域Dである。
【0111】
いくつかの実施形態においては、本発明に従うオリゴマーは、配列番号121に記載の核酸塩基配列を有する連続モノマー(第1領域)、または配列番号1〜15などの、10、11、12、13、14、15もしくは16個の連続モノマーなどのその少なくとも9個の連続モノマーからなるか、またはそれを含む。
【0112】
いくつかの実施形態においては、本発明に従うオリゴマーは、配列番号122に記載の核酸塩基配列を有する連続モノマー(第1領域)、または配列番号16〜30などの、10、11、12、13、14、15もしくは16個の連続モノマーなどのその少なくとも9個の連続モノマーからなるか、またはそれを含む。
【0113】
いくつかの実施形態においては、本発明に従うオリゴマーは、配列番号123に記載の核酸塩基配列を有する連続モノマー(第1領域)、または配列番号31〜45などの、10、11、12、13、14、15もしくは16個の連続モノマーなどのその少なくとも9個の連続モノマーからなるか、またはそれを含む。
【0114】
いくつかの実施形態においては、本発明に従うオリゴマーは、配列番号124に記載の核酸塩基配列を有する連続モノマー(第1領域)、または配列番号46〜60などの、10、11、12、13、14、15もしくは16個の連続モノマーなどのその少なくとも9個の連続モノマーからなるか、またはそれを含む。
【0115】
いくつかの実施形態においては、本発明に従うオリゴマーは、配列番号125に記載の核酸塩基配列を有する連続モノマー(第1領域)、または配列番号61〜75などの、10、11、12、13、14、15もしくは16個の連続モノマーなどのその少なくとも9個の連続モノマーからなるか、またはそれを含む。
【0116】
いくつかの実施形態においては、本発明に従うオリゴマーは、配列番号126に記載の核酸塩基配列を有する連続モノマー(第1領域)、または配列番号76〜90などの、10、11、12、13、14、15もしくは16個の連続モノマーなどのその少なくとも9個の連続モノマーからなるか、またはそれを含む。
【0117】
いくつかの実施形態においては、本発明に従うオリゴマーは、配列番号127に記載の核酸塩基配列を有する連続モノマー(第1領域)、または配列番号91〜105などの、10、11、12、13、14、15もしくは16個の連続モノマーなどのその少なくとも9個の連続モノマーからなるか、またはそれを含む。
【0118】
いくつかの実施形態においては、本発明に従うオリゴマーは、配列番号128に記載の核酸塩基配列を有する連続モノマー(第1領域)、または配列番号106〜120などの、10、11、12、13、14、15もしくは16個の連続モノマーなどのその少なくとも9個の連続モノマーからなるか、またはそれを含む。
【0119】
ヌクレオシドおよびヌクレオシド類似体
いくつかの実施形態においては、用語「ヌクレオシド類似体」および「ヌクレオチド類似体」は互換的に用いられる。
【0120】
様々な実施形態において、前記オリゴマー中に存在する少なくとも1個のモノマーは、5-メチルシトシン、イソシトシン、シュードイソシトシン、5-ブロモウラシル、5-プロピニルウラシル、6-アミノプリン、2-アミノプリン、イノシン、ジアミノプリン、2-クロロ-6-アミノプリン、キサンチンおよびヒポキサンチンから選択される塩基などの、修飾塩基を含むヌクレオシド類似体である。
【0121】
様々な実施形態において、前記オリゴマー中に存在する少なくとも1個のモノマーは、修飾糖を含むヌクレオシド類似体である。
【0122】
いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーの少なくとも2個の連続モノマー間の結合は、ホスホジエステル結合以外のものである。
【0123】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、修飾塩基を有する少なくとも1個のモノマー、修飾糖を有する少なくとも1個のモノマー(同じモノマーであってよい)、および非天然である少なくとも1個のモノマー間結合を含む。
【0124】
ヌクレオシド類似体の特定例は、例えば、Freier & Altmann; Nucl. Acid Res., 1997, 25, 4429-4443およびUhlmann; Curr. Opinion in Drug Development, 2000, 3(2), 293-213により、ならびにスキーム1(いくつかのヌクレオシド類似体がヌクレオチドとして示されている)に記載されている。
【化1】

【0125】
かくして、前記オリゴマーは、天然ヌクレオシド-好ましくはDNAモノマーだけでなく、RNAモノマーの単純な配列、またはヌクレオシドと1個以上のヌクレオシド類似体の組合せを含むか、またはそれからなってもよい。いくつかの実施形態においては、そのようなヌクレオシド類似体は、好適には、標的核酸の標的領域に対する前記オリゴマーの親和性を増強する。
【0126】
好適かつ好ましいヌクレオシド類似体の例は、WO2007/031091に記載されているか、またはそこで参照されている。
【0127】
いくつかの実施形態においては、ヌクレオシド類似体は、2'-置換基、例えば、2'-O-アルキル-リボース糖、2'-アミノ-デオキシリボース糖、および2'-フルオロ-デオキシリボース糖を提供するように改変された糖部分を含む。
【0128】
いくつかの実施形態においては、ヌクレオシド類似体は、結合親和性を増強し、またヌクレアーゼ耐性をいくらか増加させることができる二環式糖(LNA)を含む。様々な実施形態においては、LNAモノマーを、オキシ-LNA(β-D-オキシ-LNA、およびα-L-オキシ-LNAなど)、および/またはアミノ-LNA(β-D-アミノ-LNAおよびα-L-アミノ-LNA)および/またはチオ-LNA(β-D-チオ-LNAおよびα-L-チオ-LNA)および/またはENA(βD-ENAおよびα-L-ENA)から選択する。特定の実施形態においては、LNAモノマーはβ-D-オキシ-LNAである。LNAモノマーを以下でさらに説明する。
【0129】
様々な実施形態においては、LNAモノマーもしくは2'-置換糖を含むモノマーなどのオリゴマーへの親和性を増強するヌクレオシド類似体の組込み、または修飾連結基の組込みは、ヌクレアーゼ耐性の増加を提供する。様々な実施形態においては、親和性を増強するヌクレオシド類似体の組込みにより、オリゴマーのサイズを低下させることができ、また、標的配列の標的領域に特異的に結合するオリゴマーのサイズを低下させることができる。
【0130】
いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは、少なくとも1個のヌクレオシド類似体を含む。いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは、少なくとも2個のヌクレオシド類似体を含む。いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは3〜8個のヌクレオシド類似体、例えば、6もしくは7個のヌクレオシド類似体を含む。様々な実施形態においては、少なくとも1個のヌクレオシド類似体は、ロックされた核酸(LNA)モノマーである;例えば、少なくとも3個または少なくとも4個または少なくとも5個または少なくとも6個または少なくとも7個または8個のヌクレオシド類似体がLNAモノマーである。いくつかの実施形態においては、全てのヌクレオシド類似体がLNAモノマーである。
【0131】
好ましいオリゴマー塩基配列に言及する場合、特定の実施形態においては、前記オリゴマーは対応するヌクレオシド類似体、例えば、対応するLNAモノマーまたはオリゴマー/標的領域二本鎖の二本鎖安定性(Tm)を上昇させる他の対応するヌクレオシド類似体(すなわち、親和性を増強するヌクレオシド類似体)を含む。
【0132】
様々な実施形態においては、存在する場合、オリゴマーの塩基配列と標的領域の塩基配列との任意の不一致は、本明細書に記載の領域B内および/もしくは本明細書に記載の領域D内などの親和性を増強するヌクレオシド類似体を含むオリゴマーの領域(例えば、領域AもしくはC)、ならびに/またはDNAモノマーからなる領域、ならびに/または標的領域と相補的であるオリゴマーの領域に対して5'もしくは3'側にある領域以外に位置するのが好ましい。
【0133】
いくつかの実施形態においては、本発明のオリゴマー内に存在するヌクレオシド類似体(本明細書に記載の領域AおよびC中など)を、例えば、2'-O-アルキル-リボース糖を含むモノマー、2'-アミノ-デオキシリボース糖を含むモノマー、2'-フルオロ-デオキシリボース糖を含むモノマー、LNAモノマー、アラビノース糖を含むモノマー(「ANAモノマー」)、2'-フルオロ-アラビノース糖を含むモノマー、d-アラビノ-ヘキシトール糖を含むモノマー(「HNAモノマー」)、参照により本明細書に組み入れられるものとするChristensen(2002) Nucl. Acids. Res. 30: 4918-4925に定義された挿入モノマー、および2'-O-メトキシエチル-リボース(2'MOE)糖から独立に選択する。いくつかの実施形態においては、本発明のオリゴマー、またはその領域中に存在する上記の型のヌクレオシド類似体のうちの1種のみが存在する。
【0134】
特定の実施形態においては、ヌクレオシド類似体は、2'MOE糖、2'-フルオロ-デオキシリボース糖、もしくはLNA糖を含み、そのようなものとして、本発明のオリゴマーはこれらの3種の型から独立に選択されるヌクレオシド類似体を含んでもよい。ヌクレオシド類似体を含む特定のオリゴマーの実施形態においては、少なくとも1個の前記ヌクレオシド類似体は、2'-MOE-リボース糖を含み、例えば、2'-MOE-リボース糖を含む2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のヌクレオシド類似体である。いくつかの実施形態においては、少なくとも1個のヌクレオシド類似体は、2'-フルオロ-デオキシリボース糖を含み、例えば、2'-フルオロ-DNAヌクレオチド糖を含む2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のヌクレオシド類似体である。
【0135】
様々な実施形態においては、本発明に従うオリゴマーは、少なくとも1個のロックド核酸(LNA)モノマー、例えば、1、2、3、4、5、6、7もしくは8個のLNAモノマー、例えば、3〜7個もしくは4〜8個のLNAモノマー、または3、4、5、6もしくは7個のLNAモノマーを含む。様々な実施形態においては、全てのヌクレオシド類似体はLNAモノマーである。特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、β-D-オキシ-LNAモノマーと、1個以上の以下のLNAモノマー:チオ-LNAモノマー、アミノ-LNAモノマー、オキシ-LNAモノマー、および/もしくはβ-Dもしくはα-L配置にあるENAモノマー、またはその組合せの両方を含む。特定の実施形態においては、オリゴマー中の全てのLNAモノマーのシトシン塩基部分は、5-メチルシトシンである。本発明の特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、LNAモノマーとDNAモノマーの両方を含む。典型的には、LNAモノマーとDNAモノマーの総数は10〜25、好ましくは10〜24、好ましくは10〜20、好ましくは10〜18、さらにより好ましくは12〜16である。本発明のいくつかの実施形態においては、前記オリゴマーまたはその領域は少なくとも1個のLNAモノマーからなり、残りのモノマーはDNAモノマーである。特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、必要に応じてホスホロチオエートなどの修飾連結基を有するLNAモノマーとヌクレオシド(RNAもしくはDNAモノマー、最も好ましくはDNAモノマー)のみを含む。
【0136】
様々な実施形態においては、オリゴマー中に存在する少なくとも1個のヌクレオシド類似体は、5-メチルシトシン、イソシトシン、シュードイソシトシン、5-ブロモウラシル、5-プロピニルウラシル、6-アミノプリン、2-アミノプリン、イノシン、ジアミノプリン、および2-クロロ-6-アミノプリンからなる群より選択される修飾塩基を有する。
【0137】
LNA
用語「LNA」または「LNAモノマー」とは、「ロックド核酸(Locked Nucleic Acid)」として知られる二環式ヌクレオシド類似体を指す。「LNAオリゴヌクレオチド」の文脈で用いられる場合、LNAとは1個以上のそのような二環式ヌクレオシド類似体を含むオリゴヌクレオチドを指す。LNAヌクレオシドは、二環系を形成するリボース糖環のC2'とC4'の間、例えば、以下に記載のR4*基とR2*基の間のリンカー基(架橋など)の存在を特徴とする。
【0138】
本発明のオリゴヌクレオチド化合物(オリゴマー)中で用いられるLNAは、一般式I:
【化2】

【0139】
[式中、全てのキラル中心について、非対称の基はRもしくはS方向で認められ;
式中、Xは-O-、-S-、-N(RN*)-および-C(R6R6*)-から選択され、より好ましくは-O-であり;
Bは水素、置換されていてもよいC1-4-アルコキシ、置換されていてもよいC1-4-アルキル、置換されていてもよいC1-4-アシルオキシ、天然の核酸塩基および核酸塩基類似体、DNA挿入剤、光化学的に活性な基、熱化学的に活性な基、キレート化剤、リポーター基、ならびにリガンドから選択され、好ましくは、Bは核酸塩基もしくは核酸塩基類似体であり;
Pは隣接するモノマーとのヌクレオシド間連結、もしくは5'-末端基であり、該ヌクレオシド間連結もしくは5'-末端基は必要に応じて置換基R5もしくは同等に適用可能な置換基R5*を含み;
P*は隣接するモノマーとのヌクレオシド間連結、もしくは3'-末端基であり;
R4*およびR2*は一緒になって、例えば、-C(RaRb)-、-C(Ra)=C(Rb)-、-C(Ra)=N-、-O-、-Si(Ra)2-、-S-、-SO2-、-N(Ra)-、および>C=Z(式中、Zは-O-、-S-、および-N(Ra)-から選択され、RaおよびRbは水素、置換されていてもよいC1-12-アルキル、置換されていてもよいC2-12-アルケニル、置換されていてもよいC2-12-アルキニル、ヒドロキシ、置換されていてもよいC1-12-アルコキシ、C2-12-アルコキシアルキル、C2-12-アルケニルオキシ、カルボキシ、C1-12-アルコキシカルボニル、C1-12-アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1-6-アルカノイルオキシ、スルホノ、C1-6-アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1-6-アルキルチオ、ハロゲン、DNA挿入剤、光化学的に活性な基、熱化学的に活性な基、キレート化剤、リポーター基、およびリガンドから各々独立に選択され、式中、それぞれのアリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、2個のゲミナル置換基RaおよびRbは一緒になって置換されていてもよいメチレン(=CH2)を形成してもよく、全てのキラル中心について、非対称の基はRもしくはS方向で認められる)から各々独立に選択される1〜4個の基/原子からなるビラジカルなどの二価リンカー基を形成し、ならびに;
それぞれの置換基R1*、R2、R3、R5、R5*、R6およびR6*は、水素、置換されていてもよいC1-12-アルキル、置換されていてもよいC2-12-アルケニル、置換されていてもよいC2-12-アルキニル、ヒドロキシ、C1-12-アルコキシ、C2-12-アルコキシアルキル、C2-12-アルケニルオキシ、カルボキシ、C1-12-アルコキシカルボニル、C1-12-アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1-6-アルカノイルオキシ、スルホノ、C1-6-アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1-6-アルキルチオ、ハロゲン、DNA挿入剤、光化学的に活性な基、熱化学的に活性な基、キレート化剤、リポーター基、およびリガンドから独立に選択され、式中、それぞれのアリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、2個のゲミナル置換基は一緒になってオキソ、チオキソ、イミノ、もしくは置換されていてもよいメチレンであり;RNは水素およびC1-4-アルキルから選択され、2個の隣接する(非ゲミナル)置換基は二重結合をもたらすさらなる結合であってよい]
;ならびにその塩基塩および酸付加塩の構造を有するのが好ましい。全てのキラル中心について、非対称の基はRもしくはS方向で認められる。
【0140】
本明細書で用いられる定義が置換されたC1-4-アルキル、置換されたC1-6-アルキル、置換されたC1-12-アルキル、置換されたC2-12-アルケニル、置換されたC2-6-アルケニル、置換されたC2-12-アルキニル、置換されたC2-6 アルキニル、置換されたC1-12-アルコキシ、置換されたC1-6-アルコキシ、置換されたC1-4-アルコキシ、置換されたC1-4-アシルオキシ、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、置換されたメチレン、置換されたアシル、置換されたC1-6-アミノアルキルまたは置換されたアミドを指す場合、好適な置換基は、好ましくは、1個以上のRg基(式中、それぞれのRgは、水素、C1-6アルキル、置換されたC1-6アルキル、C2-6アルケニル、置換されたC2-6アルケニル、C2-6アルキニル、置換されたC2-6アルキニル、CN、OJ1、SJ1、NJ1J2、N3、COOJ1、C(=X)J1、C(=X)NJ1J2、CN、O-C(=O)NJ1J2、O-C(=X)J1、NJ1C(=NH)NJ1J2およびNJ1C(=X)NJ1J2 (式中、XはOもしくはSであり; それぞれのJ1およびJ2は、H、C1-6アルキル、置換されたC1-6アルキル、C2-6アルケニル、置換されたC2-6アルケニル、C2-6アルキニル、置換されたC2-6アルキニル、C1-6アミノアルキル、置換されたC1-6アミノアルキルおよび保護基から独立に選択される)から独立に選択される)を含むのが好ましい。好ましくは、それぞれのRgは、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、CN、OJ1、SJ1、NJ1J2、N3、COOJ1、C(=X)J1、C(=X)NJ1J2、CN、O-C(=O)NJ1J2、O-C(=X)J1、NJ1C(=NH)NJ1J2およびNJ1C(=X)NJ1J2 (式中、XはOもしくはSであり;それぞれのJ1およびJ2はH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アミノアルキルおよび保護基から独立に選択される)から独立に選択される。好適な保護基は、Theodora W GreeneおよびPeter G M Wutsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版(John Wiley & Sons, 1999)に記載されている。
【0141】
いくつかの実施形態においては、R4*およびR2*は一緒になって、C(RaRb)-C(RaRb)-、C(RaRb)-O-、C(RaRb)-NRa-、C(RaRb)-S-、およびC(RaRb)-C(RaRb)-O-(式中、RaおよびRbは上記で定義された通りである)から選択されるリンカー基を形成する。いくつかの実施形態においては、RaおよびRbは水素およびC1-6アルキルから各々独立に選択され、より好ましくは、水素およびメチルから各々独立に選択される。
【0142】
いくつかの実施形態においては、R1*、R2、R3、R5、R5*は、水素、ハロゲン、C1-6アルキル、置換されたC1-6アルキル、C2-6アルケニル、置換されたC2-6アルケニル、C2-6アルキニル、置換されたC2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、置換されたC1-6アルコキシ、アシル、置換されたアシル、C1-6アミノアルキルおよび置換されたC1-6アミノアルキルから各々独立に選択される。全てのキラル中心について、非対称の基はRもしくはS方向で認められる。
【0143】
いくつかの好ましい実施形態においては、R1*、R2、R3、R5、R5*は全て水素である。
【0144】
いくつかの実施形態においては、R1*、R2、R3は水素、ハロゲン、C1-6アルキル、置換されたC1-6アルキル、C2-6アルケニル、置換されたC2-6アルケニル、C2-6アルキニル、置換されたC2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、置換されたC1-6アルコキシ、アシル、置換されたアシル、C1-6アミノアルキルおよび置換されたC1-6アミノアルキルから各々独立に選択される。全てのキラル中心について、非対称の基はRもしくはS方向で認められる。
【0145】
いくつかの好ましい実施形態においては、R1*、R2、R3は全て水素である。
【0146】
いくつかの実施形態においては、R5およびR5*は、H、-CH3、-CH2-CH3-、-CH2-O-CH3、および-CH=CH2から各々独立に選択される。好ましくは、いくつかの実施形態においては、R5またはR5*のいずれかは水素であり、他方の基(それぞれR5またはR5*)はC1-5アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、置換されたC1-6アルキル、置換されたC2-6アルケニル、置換されたC2-6アルキニルおよび置換されたアシル(-C(=O)-)から選択され;式中、各置換基は、ハロゲン、C1-6アルキル、置換されたC1-6アルキル、C2-6アルケニル、置換されたC2-6アルケニル、C2-6アルキニル、置換されたC2-6アルキニル、OJ1、SJ1、NJ1J2、N3、COOJ1、CN、O-C(=O)NJ1J2、N(H)C(=NH)NJ1J2およびN(H)C(=X)N(H)J2(式中、XはOもしくはSであり; それぞれのJ1およびJ2はH、C1-6 アルキル、置換されたC1-6 アルキル、C2-6 アルケニル、置換されたC2-6アルケニル、C2-6 アルキニル、置換されたC2-6 アルキニル、C1-6 アミノアルキル、置換されたC1-6アミノアルキルおよび保護基から独立に選択される)から独立に選択される置換基で一置換もしくは多置換される。いくつかの実施形態においては、R5またはR5*は、置換されたC1-6アルキルである。いくつかの実施形態においては、R5またはR5*は置換されたメチレンであり、ここで好ましい置換基としては、F, NJ1J2、N3、CN、OJ1、SJ1、O-C(=O)NJ1J2、N(H)C(=NH)NJ1J2およびN(H)C(O)N(H)J2から独立に選択される1個以上の基が挙げられる。いくつかの実施形態においては、それぞれのJ1およびJ2は、独立にHまたはC1-6アルキルである。いくつかの実施形態においては、R5またはR5*は、メチル、エチル、またはメトキシメチルである。いくつかの実施形態においては、R5またはR5*はメチルである。いくつかの実施形態においては、R5またはR5*はエチレニルである。いくつかの実施形態においては、R5またはR5*は置換されたアシルである。いくつかの実施形態においては、R5またはR5*はC(=O)NJ1J2である。全てのキラル中心について、非対称の基はRもしくはS方向で認められる。そのような5'修飾二環式ヌクレオチドの例は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとするWO 2007/134181に開示されている。
【0147】
いくつかの実施形態においては、Bは核酸塩基、例えば、核酸塩基類似体および天然核酸塩基、例えば、プリンもしくはピリミジン、または置換プリンもしくは置換ピリミジン、またはアデニン、シトシン、チミン、アデニン、ウラシル、および/または修飾核酸塩基もしくは置換された核酸塩基、例えば、5-チアゾロ-ウラシル、2-チオ-ウラシル、5-プロピニル-ウラシル、2'-チオ-チミン、5-メチルシトシン、5-チオゾロ-シトシン、5-プロピニル-シトシンおよび2,6-ジアミノプリンから選択される核酸塩基である。
【0148】
いくつかの実施形態においては、R4*およびR2*は一緒になって、-C(RaRb)-O-、-C(RaRb)-C(RcRd)-O-、-C(RaRb)-C(RcRd)-C(ReRf)-O-、-C(RaRb)-O-C(RcRd)-、-C(RaRb)-O-C(RcRd)-O-、-C(RaRb)-C(RcRd)-、-C(RaRb)-C(RcRd)-C(ReRf)-、C(Ra)=C(Rb)-C(RcRd)-、-C(RaRb)-N(Rc)-、-C(RaRb)-C(RcRd)-N(Re)-、-C(RaRb)-N(Rc)-O-、-C(RaRb)-S-および-C(RaRb)-C(RcRd)-S-(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、およびRfは、水素、置換されていてもよいC1-12-アルキル、置換されていてもよいC2-12-アルケニル、置換されていてもよいC2-12-アルキニル、ヒドロキシ、C1-12-アルコキシ、C2-12-アルコキシアルキル、C2-12-アルケニルオキシ、カルボキシ、C1-12-アルコキシカルボニル、C1-12-アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1-6-アルカノイルオキシ、スルホノ、C1-6-アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1-6-アルキルチオ、ハロゲン、DNA挿入剤、光化学的に活性な基、熱化学的に活性な基、キレート化剤、リポーター基、およびリガンドから各々独立に選択され、式中、それぞれのアリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、2個のゲミナル置換基RaおよびRbは一緒になって置換されていてもよいメチレン (=CH2)である)から選択されるリンカー基を形成する。全てのキラル中心について、非対称の基はRもしくはS方向で認められる。
【0149】
いくつかの実施形態においては、R4*およびR2*は一緒になって、-CH2-O-、-CH2-S-、-CH2-NH-、-CH2-N(CH3)-、-CH2-CH2-O-、-CH2-CH(CH3)-、-CH2-CH2-S-、-CH2-CH2-NH-、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-O-、-CH2-CH2-CH(CH3)-、-CH=CH-CH2-、-CH2-O-CH2-O-、-CH2-NH-O-、-CH2-N(CH3)-O-、-CH2-O-CH2-、-CH(CH3)-O-、-CH(CH2-O-CH3)-O-、-CH2-CH2-および-CH=CH-から選択されるリンカー基である。全てのキラル中心について、非対称の基はRもしくはS方向で認められる。
【0150】
いくつかの実施形態においては、R4*およびR2*は一緒になって、リンカー基C(RaRb)-N(Rc)-O-(式中、RaおよびRbは、水素、ハロゲン、C1-6 アルキル、置換されたC1-6 アルキル、C2-6 アルケニル、置換されたC2-6 アルケニル、C2-6 アルキニル、置換されたC2-6 アルキニル、C1-6 アルコキシ、置換されたC1-6アルコキシ、アシル、置換されたアシル、C1-6 アミノアルキルおよび置換されたC1-6 アミノアルキルから各々独立に選択され、より好ましくは、RaおよびRb は水素であり、; Rcは、水素、ハロゲン、C1-6 アルキル、置換されたC1-6 アルキル、C2-6 アルケニル、置換されたC2-6 アルケニル、C2-6 アルキニル、置換されたC2-6 アルキニル、C1-6 アルコキシ、置換されたC1-6 アルコキシ、アシル、置換されたアシル、C1-6 アミノアルキル、置換されたC1-6 アミノアルキルから選択され、より好ましくは、Rcは水素である)を形成する。
【0151】
いくつかの実施形態においては、R4*およびR2*は一緒になって、リンカー基C(RaRb)-O-C(RcRd)-O-(式中、Ra、Rb、Rc、およびRdは、水素、ハロゲン、C1-6 アルキル、置換されたC1-6 アルキル、C2-6 アルケニル、置換されたC2-6 アルケニル、C2-6 アルキニル、置換されたC2-6 アルキニル、C1-6 アルコキシ、置換されたC1-6 アルコキシ、アシル、置換されたアシル、C1-6 アミノアルキル、置換されたC1-6 アミノアルキルから各々独立に選択され、より好ましくは、Ra、Rb、Rc、およびRdは水素である)を形成する。
【0152】
いくつかの実施形態においては、R4*およびR2*は、リンカー基-CH(Z)-O-(式中、Zは、C1-6 アルキル、C2-6 アルケニル、C2-6 アルキニル、置換されたC1-6 アルキル、置換されたC2-6 アルケニル、置換されたC2-6 アルキニル、アシル、置換されたアシル、置換されたアミド、チオールおよび置換されたチオールから選択され; 置換された基の各々は、独立に、ハロゲン、オキソ、ヒドロキシル、OJ1、NJ1J2、SJ1、N3、OC(=X)J1、OC(=X)NJ1J2、NJ3C(=X)NJ1J2およびCN(式中、それぞれのJ1、J2およびJ3は、独立に、HもしくはC1-6 アルキルであり、XはO、SもしくはNJ1である)から独立に選択される必要に応じて保護された置換基で一置換もしくは多置換されていてもよい)を形成する。いくつかの実施形態においては、ZはC1-6 アルキルまたは置換されたC1-6 アルキルである。いくつかの実施形態においては、Zはメチルである。いくつかの実施形態においては、Zは置換されたC1-6 アルキルである。いくつかの実施形態においては、前記置換基はC1-6 アルコキシである。いくつかの実施形態においては、ZはCH3OCH2-である。全てのキラル中心について、非対称の基はRもしくはS方向で認められる。そのような二環式ヌクレオチドの例は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする米国特許第7,399,845号に開示されている。いくつかの実施形態においては、R1*、R2、R3、R5、R5*は全て水素である。いくつかの実施形態においては、R1*、R2、R3*は水素であり、R5、R5*の一方または両方は上記のように、およびWO 2007/134181に記載のように水素以外のものであってよい。
【0153】
いくつかの実施形態においては、R4*およびR2*は一緒になって、置換されたアミノ基を含むリンカー基を形成する、例えば、R4*およびR2*は一緒になって、基-CH2-N(Rc)-(式中、RcはC1-12 アルキルオキシである)からなるか、またはそれを含むリンカー基を形成する。いくつかの実施形態においては、R4*およびR2*は一緒になって、リンカー基-Cq3q4-NOR-(式中、q3およびq4は、水素、ハロゲン、C1-6 アルキル、置換されたC1-6 アルキル、C2-6 アルケニル、置換されたC2-6 アルケニル、C2-6 アルキニル、置換されたC2-6 アルキニル、C1-6 アルコキシ、置換されたC1-6 アルコキシ、アシル、置換されたアシル、C1-6 アミノアルキルおよび置換されたC1-6 アミノアルキルから各々独立に選択され; それぞれの置換された基は、独立に、ハロゲン、OJ1、SJ1、NJ1J2、COOJ1、CN、O-C(=O)NJ1J2、N(H)C(=NH)N J1J2およびN(H)C(=X=N(H)J2 (式中、XはOもしくはSであり; J1およびJ2のそれぞれは、H、C1-6 アルキル、C2-6 アルケニル、C2-6 アルキニル、C1-6 アミノアルキルおよび保護基から独立に選択される)から独立に選択される置換基で一置換もしくは多置換されている)を形成する。全てのキラル中心について、非対称の基はRもしくはS方向で認められる。そのような二環式ヌクレオチドの例は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとするWO2008/150729に開示されている。いくつかの実施形態においては、R1*、R2、R3、R5、R5*は、水素、ハロゲン、C1-6 アルキル、置換されたC1-6 アルキル、C2-6 アルケニル、置換されたC2-6 アルケニル、C2-6 アルキニル、置換されたC2-6 アルキニル、C1-6 アルコキシ、置換されたC1-6 アルコキシ、アシル、置換されたアシル、C1-6 アミノアルキルおよび置換されたC1-6 アミノアルキルから各々独立に選択される。いくつかの実施形態においては、R1*、R2、R3、R5、R5*は全て水素である。いくつかの実施形態においては、R1*、R2、R3は全て水素であり、R5、R5*の一方または両方は上記のように、およびWO 2007/134181に記載のように水素以外のものであってよい。いくつかの実施形態においては、R4*およびR2*は一緒になって、リンカー基C(RaRb)-O-(式中、RaおよびRbは、ハロゲン、C1-C12アルキル、置換されたC1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、置換されたC2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、置換されたC2-C12アルキニル、C1-C12アルコキシ、置換されたC1-C12アルコキシ、OJ1SJ1、SOJ1、SO2J1、NJ1J2、N3、CN、C(=O)OJ1、C(=O)NJ1J2、C(=O)J1、O-C(=O)NJ1J2、N(H)C(=NH)NJ1J2、N(H)C(=O)NJ1J2およびN(H)C(=S)NJ1J2から各々独立に選択され; またはRaおよびRbは一緒になって=C(q3)(q4)(式中、q3およびq4は、各々独立に、H、ハロゲン、C1-C12アルキルもしくは置換されたC1-C12アルキルである)であり; それぞれの置換された基は、独立に、ハロゲン、C1-C6アルキル、置換されたC1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、置換されたC2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、置換されたC2-C6アルキニル、OJ1、SJ1、NJ1J2、N3、CN、C(=O)OJ1、C(=O)NJ1J2、C(=O)J1、O-C(=O)NJ1J2、N(H)C(=O)NJ1J2およびN(H)C(=S)NJ1J2(式中、それぞれのJ1およびJ2はH、C1-C6アルキル、置換されたC1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、置換されたC2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、置換されたC2-C6アルキニル、C1-C6アミノアルキル、置換されたC1-C6アミノアルキルおよび保護基から独立に選択される)から独立に選択される置換基で一置換もしくは多置換されている)を形成する。そのような化合物は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとするWO2009/006478に開示されている。
【0154】
いくつかの実施形態においては、R4*およびR2*は、リンカー基-Q-(式中、QはC(q1)(q2)C(q3)(q4)、C(q1)=C(q3)、C[=C(q1)(q2)]-C(q3)(q4)もしくはC(q1)(q2)-C[=C(q3)(q4)]であり; q1、q2、q3、q4は、H、ハロゲン、C1-12 アルキル、置換されたC1-12アルキル、C2-12アルケニル、置換されたC1-12 アルコキシ、OJ1、SJ1、SOJ1、SO2J1、NJ1J2、N3、CN、C(=O)OJ1、C(=O)-NJ1J2、C(=O) J1、-C(=O)NJ1J2、N(H)C(=NH)NJ1J2、N(H)C(=O)NJ1J2およびN(H)C(=S)NJ1J2(式中、それぞれのJ1およびJ2はH、C1-6 アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アミノアルキルおよび保護基から独立に選択される)から各々独立に選択され; 必要に応じて、式中、QがC(q1)(q2)(q3)(q4)であり、q3もしくはq4のうちの一方がCH3である場合、q3もしくはq4の他方のうちの少なくとも一方またはq1およびq2のうちの一方はH以外である)を形成する。いくつかの実施形態においては、R1*、R2、R3、R5、R5*は全て水素である。全てのキラル中心について、非対称の基はRもしくはS方向で認められる。そのような二環式ヌクレオチドの例は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとするWO2008/154401に開示されている。いくつかの実施形態においては、R1*、R2、R3、R5、R5*は、水素、ハロゲン、C1-6アルキル、置換されたC1-6アルキル、C2-6アルケニル、置換されたC2-6アルケニル、C2-6アルキニル、置換されたC2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、置換されたC1-6アルコキシ、アシル、置換されたアシル、C1-6アミノアルキルおよび置換されたC1-6 アミノアルキルから各々独立に選択される。いくつかの実施形態においては、R1*、R2、R3、R5、R5*は全て水素である。いくつかの実施形態においては、R1*、R2、R3は全て水素であり、R5、R5*の一方または両方は、上記のように、およびWO 2007/134181もしくはWO2009/067647に記載のように水素以外のものであってよい(α-L-二環式核酸類似体)。
【0155】
いくつかの好ましい実施形態においては、本発明のオリゴヌクレオチド化合物中に存在するLNAモノマーは、好ましくは、一般式II:
【化3】

【0156】
[式中、Yは-O-、-CH2O-、-S-、-NH-、N(Re)および-CH2-から選択され;ZおよびZ*は、ヌクレオシド間結合、RH、末端基および保護基から各々独立に選択され;Bは天然もしくは非天然ヌクレオチド塩基部分(核酸塩基)であり、RHは水素およびC1-4アルキルから選択され;Ra、Rb、Rc、RdおよびReは、水素、置換されていてもよいC1-12-アルキル、置換されていてもよいC2-12-アルケニル、置換されていてもよいC2-12-アルキニル、ヒドロキシ、C1-12-アルコキシ、C2-12-アルコキシアルキル、C2-12-アルケニルオキシ、カルボキシ、C1-12-アルコキシカルボニル、C1-12-アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1-6-アルカノイルオキシ、スルホノ、C1-6-アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1-6-アルキルチオ、ハロゲン、DNA挿入剤、光化学的に活性な基、熱化学的に活性な基、キレート化剤、リポーター基、およびリガンドから各々独立に選択され、それぞれのアリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、2個のゲミナル置換基RaおよびRbは一緒になって、置換されていてもよいメチレン(=CH2)であってよく;ならびにRHは水素およびC1-4アルキルから選択される]
の構造を有する。いくつかの好ましい実施形態においては、Ra、Rb、Rc、RdおよびReは、水素およびC1-6アルキルから各々独立に選択され、より好ましくはメチルである。全てのキラル中心について、非対称の基はRもしくはS方向で認められ、例えば、2個の立体化学的異性体の例としては、以下に例示することができるβ-Dおよびα-L異性体が挙げられる:
【化4】

【0157】
特定のLNA単位の例を以下に示す(スキーム2)。
【化5】

【0158】
用語「チオ-LNA」は、上記一般式中のYがSまたは-CH2-S-から選択されるロックされたヌクレオシドを含む。チオ-LNAは、β-Dおよびα-L配置の両方にあってよい。
【0159】
用語「アミノ-LNA」は、上記一般式中のYが-N(H)-、N(R)-、CH2-N(H)-および-CH2-N(R)(式中、Rは水素およびC1-4アルキルから選択される)から選択されるロックされたヌクレオシドを含む。アミノ-LNAはβ-Dおよびα-L配置の両方にあってよい。
【0160】
用語「オキシ-LNA」は、上記一般式中のYが-O-であるロックされたヌクレオシドを含む。オキシ-LNAはβ-Dおよびα-L配置の両方にあってよい。
【0161】
用語「ENA」は、上記一般式中のYが-CH2-O-(式中、-CH2-O-の酸素原子は塩基Bに関して2'位置に結合している)であるロックされたヌクレオシドを含む。Reは水素またはメチルである。
【0162】
いくつかの例示的な実施形態においては、LNAはβ-D-オキシ-LNA、α-L-オキシ-LNA、β-D-アミノ-LNAおよびβ-D-チオ-LNAから選択され、特に、β-D-オキシ-LNAである。
【0163】
RNAse Hの動員
いくつかの実施形態においては、オリゴマーは、翻訳の立体障害などによる標的mRNAの非RNaseを介する分解、または他の機構を介して機能する;しかしながら、様々な実施形態において、本発明のオリゴマーは、RNase Hなどのエンドリボヌクレアーゼ(RNase)などの1種以上のRNAse酵素または複合体を動員することができる。
【0164】
典型的には、前記オリゴマーは、標的RNAの標的領域との二本鎖を形成する場合、RNaseを動員することができる、7、8、9、10、11、12、13、14、15もしくは16個の連続モノマーなどの、少なくとも8個もしくは少なくとも9個の連続モノマーなどの少なくとも7個の連続モノマーなどの少なくとも6個の領域を含む。RNAseを動員することができるオリゴマーの領域は、本明細書に記載のギャップマーの文脈において言及されるように、領域Bであってよい。いくつかの実施形態においては、領域BなどのRNAseを動員することができるオリゴマーの領域は、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のモノマーからなる。
【0165】
EP 1 222 309は、RNaseH活性を決定するためのin vitroでの方法を提供し、これを用いてRNaseHを動員する本発明のオリゴマーの能力を決定することができる。オリゴマーは、参照により本明細書に組み入れられるものとするEP 1 222 309の実施例91〜95により提供される方法を用いて、RNA標的の相補的領域と接触させた場合に、それが、同じ塩基配列を有するが、オリゴヌクレオチド中の全てのモノマー間にホスホロチオエート連結基を有し、2'置換を含まないDNAモノマーのみを含むオリゴヌクレオチドを用いて決定された初期速度の少なくとも1%、例えば、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%もしくは20%以上の、pmol/l/分で測定される初期速度を有する場合、RNaseHを動員することができると見なされる。
【0166】
いくつかの実施形態においては、オリゴマーは、EP 1 222 309の実施例91〜95により提供される方法を用いて、RNA標的の相補的標的領域およびRNaseHと接触させた場合に、pmol/l/分で測定されるRNaseH初期速度が、同じ塩基配列を有するが、オリゴヌクレオチド中の全てのモノマー間にホスホロチオエート連結基を有し、2'置換を含まないDNAモノマーのみを含むオリゴヌクレオチドを用いて決定された初期速度の1%未満、例えば、5%未満、例えば、10%未満または20%未満である場合、RNaseHを本質的に動員することができないと見なされる。
【0167】
他の実施形態においては、オリゴマーは、EP 1 222 309の実施例91〜95により提供される方法を用いて、RNA標的の相補的標的領域およびRNaseHと接触させた場合に、pmol/l/分で測定されるRNaseH初期速度が、同じ塩基配列を有するが、オリゴヌクレオチド中の全てのモノマー間にホスホロチオエート連結基を有し、2'置換を含まないDNAモノマーのみを含むオリゴヌクレオチドを用いて決定された初期速度の少なくとも20%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも80%である場合、RNaseHを動員することができると見なされる。
【0168】
典型的には、標的RNAの相補的標的領域との二本鎖を形成し、RNaseを動員することができるオリゴマーの領域は、DNAモノマーと、必要に応じてLNAモノマーを含み、標的領域とのDNA-RNA様の二本鎖を形成する。LNAモノマーは、好ましくはα-L配置にあり、特に好ましくはα-L-オキシLNAである。
【0169】
様々な実施形態においては、本発明のオリゴマーは、ヌクレオシドとヌクレオシド類似体の両方を含み、ギャップマー、ヘッドマーまたはミクスマーの形態にある。
【0170】
「ヘッドマー」は、領域Xと、それと連続的である領域Yを含み、領域Xの最も3'側のモノマーに連結された領域Yの最も5'側のモノマーを有するオリゴマーと定義される。領域Xは、非RNaseを動員するヌクレオシド類似体の連続的ストレッチを含み、領域YはRNaseにより認識かつ切断可能なDNAモノマーまたはヌクレオシド類似体モノマーの連続的ストレッチ(少なくとも7個の連続モノマーなど)を含む。
【0171】
「テイルマー」は、領域Xとそれと連続的である領域Yを含み、領域Xの最も3'側のモノマーに連結された領域Yの最も5'側のモノマーを有するオリゴマーと定義される。領域Xは、RNaseにより認識かつ切断可能なDNAモノマーまたはヌクレオシド類似体の連続的ストレッチ(少なくとも7個の連続モノマーなど)を含み、領域Yは非RNaseを動員するヌクレオシド類似体の連続的ストレッチを含む。
【0172】
「ミクスマー」と呼ばれる他の「キメラ」オリゴマーは、(i)RNaseにより認識かつ切断可能なDNAモノマーまたはヌクレオシド類似体、および(ii)非RNase動員ヌクレオシド類似体モノマーの選択的組成物からなる。
【0173】
いくつかの実施形態においては、標的領域に関するオリゴマーの親和性の増強に加えて、いくつかのヌクレオシド類似体はまた、RNase(例えば、RNaseH)結合および切断を媒介する。α-L-LNAモノマーはある程度までRNaseH活性を動員するため、いくつかの実施形態においては、α-L-LNAモノマーを含むオリゴマーのギャップ領域(例えば、本明細書に記載の領域B)は、RNaseHにより認識かつ切断可能なより少ないモノマーからなり、ミクスマー構築物中により高い可撓性が導入される。
【0174】
コンジュゲート
本開示の文脈においては、用語「コンジュゲート」は、それ自体核酸でもモノマーでもない1個以上の部分(「結合部分」)への、本明細書に記載のオリゴマーの共有結合(「コンジュゲーション」)により形成される化合物を指す。そのような結合部分の例としては、タンパク質、脂肪酸鎖、糖残基、糖タンパク質、ポリマー、またはその組合せなどの大分子化合物が挙げられる。典型的には、タンパク質は標的タンパク質に対する抗体であってよい。典型的なポリマーはポリエチレングリコールであってよい。
【0175】
従って、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のオリゴマーと、該オリゴマーに共有結合した核酸でもモノマーでもない少なくとも1個の結合部分とを含むコンジュゲートである。したがって、本発明のオリゴマーが本明細書に開示されるような特定の塩基配列を有する連続モノマーからなる特定の実施形態においては、前記コンジュゲートはまたオリゴマーに共有結合した少なくとも1個の結合部分を含んでもよい。
【0176】
本発明の様々な実施形態においては、前記オリゴマーを、オリゴマー化合物の細胞取込みを増加させる部分にコンジュゲートさせる。WO2007/031091は、好適なリガンドおよびコンジュゲート(部分)を提供し、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0177】
様々な実施形態においては、コンジュゲーション(結合部分への)は、本発明のオリゴマーの活性、細胞分布または細胞取込みを増強することができる。そのような部分としては、限定されるものではないが、抗体、ポリペプチド、脂質部分、例えば、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル-s-トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-o-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-h-ホスホナート、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、アダマンタン酢酸、パルミチル部分、オクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分が挙げられる。
【0178】
特定の実施形態においては、本発明のオリゴマーを、活性薬剤物質、例えば、アスピリン、イブプロフェン、サルファ剤、抗糖尿病剤、抗細菌剤または抗生物質に結合させる。
【0179】
特定の実施形態においては、結合部分はステロール、例えば、コレステロールである。
【0180】
様々な実施形態においては、結合部分は、正に荷電したポリマー、例えば、長さ1〜50個、例えば、2〜20個、例えば、3〜10個のアミノ酸残基の正に荷電したペプチド、および/またはポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)もしくはポリプロピレングリコールを含むか、またはそれからなる(参照により本明細書に組み入れられるものとするWO 2008/034123を参照されたい)。好適には、ポリアルキレンオキシドなどの正に荷電したポリマーを、WO 2008/034123に記載の遊離性リンカーなどのリンカーを介して本発明のオリゴマーに結合させることができる。
【0181】
例えば、以下の部分を、本発明のコンジュゲート中で用いることができる。
【化6】

【0182】
活性化オリゴマー
本明細書で用いられる用語「活性化オリゴマー」とは、1個以上の結合部分、すなわち、本明細書に記載のコンジュゲートを形成する、それ自体は核酸でもモノマーでもない部分へのオリゴマーの共有結合を可能にする少なくとも1個の機能的部分に共有結合(すなわち、官能化)した本発明のオリゴマーを指す。典型的には、機能的部分は、例えば、3'-ヒドロキシル基もしくはアデニン塩基の環外NH2基を介してオリゴマーに共有結合することができる化学基、好ましくは、結合部分(例えば、アミノ、スルフヒドリルもしくはヒドロキシル基)に結合することができる親水性基および末端基であるスペーサーを含むであろう。いくつかの実施形態においては、末端基は保護されておらず、例えば、NH2基である。他の実施形態においては、末端基を、例えば、Theodora W. GreeneおよびPeter G. M. Wutsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版 (John Wiley & Sons, 1999)に記載のものなどの任意の好適な保護基により保護する。好適なヒドロキシル保護基の例としては、酢酸エステルなどのエステル、ベンジル、ジフェニルメチル、もしくはトリフェニルメチルなどのアラルキル基、およびテトラヒドロピラニルが挙げられる。好適なアミノ保護基の例としては、ベンジル、α-メチルベンジル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、およびトリクロロアセチルもしくはトリフルオロアセチルなどのアシル基が挙げられる。
【0183】
いくつかの実施形態においては、機能的部分は自己切断性である。他の実施形態においては、機能的部分は生分解性である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする米国特許第7,087,229号を参照されたい。
【0184】
いくつかの実施形態においては、本発明のオリゴマーを5'末端で活性化(すなわち、官能化)して、オリゴマーの5'末端への結合部分の共有結合を可能にする。他の実施形態においては、本発明のオリゴマーを3'末端で官能化することができる。さらに他の実施形態においては、本発明のオリゴマーを、主鎖に沿って、またはヘテロ環塩基部分上で官能化することができる。さらに他の実施形態においては、本発明のオリゴマーを、5'末端、3'末端、主鎖および塩基から独立に選択される2個以上の位置で官能化することができる。
【0185】
いくつかの実施形態においては、本発明の活性化オリゴマーを、合成の間に、機能的部分に共有結合した1個以上のモノマーを組み入れることにより合成する。他の実施形態においては、本発明の活性化オリゴマーを、官能化されていないモノマーと共に合成し、該オリゴマーを合成の完了時に官能化する。
【0186】
いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーを、アルキル部分が式(CH2)w(式中、wは1〜10の整数、好ましくは約6である)を有し、アルキルアミノ基のアルキル部分が直鎖もしくは分枝鎖であってよく、官能基をエステル基(-O-C(O)-(CH2)wNH)を介してオリゴマーに結合させた、アミノアルキルリンカーを含むヒンダードエステルを用いて官能化する。
【0187】
他の実施形態においては、前記オリゴマーを、(CH2)w-スルフヒドリル(SH)リンカー(式中、wは1〜10の整数、好ましくは約6であり、アルキルアミノ基のアルキル部分が直鎖もしくは分枝鎖であってよく、官能基をエステル基(-O-C(O)-(CH2)wSH)を介してオリゴマーに結合させる)を含むヒンダードエステルを用いて官能化する。いくつかの実施形態においては、スルフヒドリル活性化オリゴヌクレオチドを、ポリエチレングリコールもしくはペプチドなどのポリマー部分を用いてコンジュゲートさせる(ジスルフィド結合の形成を介する)。
【0188】
上記のヒンダードエステルを含む活性化オリゴマーを、当業界で公知の任意の方法により、特に、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとするPCT公開WO 2008/034122およびその中の実施例に開示された方法により合成することができる。
【0189】
少なくとも1個の機能的部分に共有結合した活性化オリゴマーを、当業界で公知の任意の方法により、特に、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする米国特許出願公開第2004/0235773号ならびにZhaoら(2007) J. Controlled Release 119:143-152; およびZhaoら(2005) Bioconjugate Chem. 16:758-766に開示された方法により合成することができる。
【0190】
さらに他の実施形態においては、本発明のオリゴマーを、実質的には米国特許第4,962,029号および第4,914,210号に記載の官能化試薬、すなわち、親水性スペーサー鎖を介して、保護されたもしくは保護されていないスルフヒドリル、アミノもしくはヒドロキシル基を含む反対側の末端に連結された一方の末端にホスホルアミダイトを有する実質的に線状の試薬を用いて、オリゴマー中にスルフヒドリル、アミノもしくはヒドロキシル基を導入することにより官能化する。そのような試薬は主に、オリゴマーのヒドロキシル基と反応する。いくつかの実施形態においては、そのような活性化オリゴマーは、オリゴマーの5'ヒドロキシル基に結合した官能化試薬を有する。他の実施形態においては、活性化オリゴマーは、3'ヒドロキシル基に結合した官能化試薬を有する。さらに他の実施形態においては、本発明の活性化オリゴマーは、オリゴマーの主鎖上のヒドロキシル基に結合した官能化試薬を有する。さらなる実施形態においては、本発明のオリゴマーを、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする米国特許第4,962,029号および第4,914,210号に記載の2種以上の官能化試薬を用いて官能化する。そのような官能化試薬を合成し、モノマーまたはオリゴマー中にそれを組込む方法は、米国特許第4,962,029号および第4,914,210号に開示されている。
【0191】
いくつかの実施形態においては、固相に結合したオリゴマーの5'末端を、ジエニルホスホルアミダイト誘導体を用いて官能化した後、Diels-Alder付加環化反応を介して、保護されたオリゴマーと、例えば、アミノ酸もしくはペプチドとをコンジュゲーションさせる。
【0192】
様々な実施形態においては、オリゴマーへの、2'-カルバメート置換糖もしくは2'-(O-ペンチル-N-フタルイミド)-デオキシリボース糖などの2'-糖修飾を含むモノマーの組込みにより、オリゴマーの糖への結合部分の共有結合が容易になる。他の実施形態においては、1個以上のモノマーの2'位置にアミノを含有するリンカーを含むオリゴマーを、例えば、5'-ジメトキシトリチル-2'-O-(e-フタルイミジルアミノペンチル)-2'-デオキシアデノシン-3'-N,N-ジイソプロピル-シアノエトキシホスホルアミダイトなどの試薬を用いて調製する。例えば、Manoharanら、Tetradedron Letters, 1991, 34, 7171を参照されたい。
【0193】
さらに他の実施形態においては、本発明のオリゴマーは、N6プリンアミノ基、グアニンの環外N2、またはシトシンのN4もしくは5位置上などの核酸塩基上にアミンを含有する機能的部分を有する。様々な実施形態において、そのような官能化を、オリゴマー合成中に既に官能化された市販の試薬を用いることにより達成することができる。
【0194】
いくつかの機能的部分が市販されており、例えば、ヘテロ二官能性およびホモ二官能性連結部分がPierce Co. (Rockford, III)から入手可能である。他の商業的に入手可能な連結基は、両方ともGlen Research Corporation (Sterling, Va.)から入手可能な5'-アミノ-改変剤C6および3'-アミノ-改変剤試薬である。5'-アミノ-改変剤C6はAminolink-2としてABI(Applied Biosystems Inc., Foster City, Calif.)からも入手可能であり、3'-アミノ-改変剤はClontech Laboratories Inc. (Palo Alto, Calif.)からも入手可能である。
【0195】
組成物
様々な実施形態においては、本発明のオリゴマーを医薬製剤および組成物中で用いる。好適には、そのような組成物は、製薬上許容し得る希釈剤、担体、塩またはアジュバントを含む。WO2007/031091は、好適かつ好ましい製薬上許容し得る希釈剤、担体およびアジュバントを提供しており、参照により本明細書に組み入れられるものとする。好適な用量、製剤、投与経路、組成物、剤形、他の治療剤との組合せ、プロドラッグ製剤もWO2007/031091に提供されており、これも参照により本明細書に組み入れられるものとする。また、製剤および投与のための技術に関する詳細を、「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES」(Maack Publishing Co, Easton Pa.)の最新版に見出すことができる。
【0196】
いくつかの実施形態においては、本発明のオリゴマーを結合部分に共有結合させて、細胞膜を横断するオリゴマーの送達を助ける。細胞膜を横断するオリゴマーの送達を助ける結合部分の例は、コレステロールなどの脂肪族部分である。様々な実施形態においては、本発明のオリゴマーを、Lipofectamine 2000またはLipofectamine RNAiMAX(両方ともInvitrogenから市販されている)などのリポソームを形成する脂質製剤と共に製剤化する。いくつかの実施形態においては、本発明のオリゴマーを、1種以上の脂質様非天然小分子(「リピドイド」)の混合物と共に製剤化する。リピドイドのライブラリーを、従来の合成化学方法により合成し、様々な量および組合せのリピドイドをアッセイして、選択された投与経路により標的化された組織への特定のサイズのオリゴマーの効率的な送達のためのビヒクルを開発することができる。好適なリピドイドライブラリーおよび組成物を、例えば、参照により本明細書に組み入れられるものとする、http://www.nature.com/nbt/journal/vaop/ncurrent/abs/nbt1402.htmlで利用可能なAkincら(2008) Nature Biotechnol.に見出すことができる。
【0197】
本明細書で用いられる用語「製薬上許容し得る塩」とは、本明細書で同定されたオリゴマーの所望の生物活性を保持し、許容し得るレベルの望ましくない毒性効果を示す塩を指す。そのような塩の非限定例を、亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウム、ナトリウム、カリウムなどの金属陽イオンと共に形成された有機アミノ酸および塩基付加塩、またはアンモニア、N,N'-ジベンジルエチレン-ジアミン、D-グルコサミン、テトラエチルアンモニウム、もしくはエチレンジアミンから形成された陽イオン;または(c)(a)と(b)の組合せ;例えば、タンニン酸亜鉛塩などと共に形成させることができる。
【0198】
特定の実施形態においては、本発明に従う医薬組成物は、本発明のオリゴマーまたはコンジュゲートに加えて、他の活性成分、例えば、癌、ミオパシーおよび/もしくは喘息の治療にとって有用な活性薬剤を含む。
【0199】
いくつかの実施形態においては、さらなる活性薬剤を、ドセタキセル、ビンクリスチン、5-フルオロウラシル、TRAIL、イリノテカン、17-AAG、プラチン化合物、および放射線からなる群より選択する。
【0200】
一実施形態においては、本発明は、本発明に従う医薬組成物と、特定の実施形態においては本発明の医薬組成物の投与の前に、その間に、またはその後に投与するさらなる活性薬剤(例えば、ドセタキセル)とを投与することを含むことを特徴とする組合せ治療を提供する。
【0201】
本発明はまた、第1の部分が少なくとも1個の本発明に従うオリゴマー、コンジュゲートおよび/もしくは医薬組成物を含み、さらなる部分が癌、ミオパシーおよび/もしくは喘息の治療にとって有用な1種以上の活性薬剤(例えば、ドセタキセル)を含むキットの部分を提供する。従って、前記キットの部分を、本明細書に記載の治療方法であって、第1の部分とさらなる部分の両方を、同時に、または一方の後に他方を投与することを含む前記方法において用いることができることが想定される。
【0202】
用途
本明細書で用いられる用語「治療」とは、存在する疾患(例えば、本明細書の以下に記載の疾患もしくは障害)の治療、または疾患の防止、すなわち、予防の両方を指す。従って、特定の実施形態においては、「治療」は予防を含むことが認識されるであろう。
【0203】
様々な実施形態においては、本発明のオリゴマーを、例えば、診断、治療および予防のための研究試薬として用いることができる。
【0204】
いくつかの実施形態においては、そのようなオリゴマーを、細胞および実験動物中でのHsp27タンパク質の発現を特異的に阻害する(典型的には、Hsp27 mRNAを分解もしくは阻害することにより、タンパク質形成を防止することによる)ための研究目的のために使用し、それによって標的の機能的分析または治療的介入のための標的としてのその無用性の評価を容易にすることができる。
【0205】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーを診断において用いて、ノーザンブロッティング、in-situハイブリダイゼーションもしくは同様の技術により細胞および組織中でのHsp27発現を検出および/または定量することができる。
【0206】
様々な治療的実施形態においては、Hsp27の発現を調節することにより治療することができる疾患または障害を有することが疑われる非ヒト動物またはヒトを、本発明に従う有効量のオリゴマーを投与することにより治療する。さらに、治療上または予防上有効量の本発明の1種以上のオリゴマー、コンジュゲートまたは組成物を投与することにより、Hsp27の発現と関連する疾患または症状を有することが疑われるか、もしくはそれに罹りやすいヒトなどの動物を治療する方法を提供する。
【0207】
特定の実施形態においては、本発明はまた、本明細書に記載の障害の治療のための医薬の製造における本明細書に記載の本発明のオリゴマーもしくはコンジュゲートの使用、または本明細書に記載の障害の治療方法も提供する。
【0208】
様々な実施形態においては、本発明はまた、本明細書に記載の障害を治療する方法であって、本明細書に記載の本発明に従うオリゴマー、および/もしくは本発明に従うコンジュゲート、および/もしくは本発明に従う医薬組成物を、それを必要とする動物(それを必要とする患者)に投与することを含む前記方法も提供する。
【0209】
医学的適応
特定の治療的実施形態においては、治療しようとする障害は、前立腺癌、肺癌、白血病、胃癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、腎臓癌、膵臓癌、多発性ミエローマ、脳腫瘍、線維肉腫、骨肉腫および肝臓癌などの過増殖性障害(例えば、癌)である。様々な実施形態においては、本発明に従うそのような疾患または症状の治療を、放射線療法、化学療法または免疫療法などの1種以上の他の抗癌治療と組合わせることができる。
【0210】
特定の他の実施形態においては、治療しようとする障害は、ミオパシーおよび/または喘息である。
【0211】
様々な実施形態においては、前記疾患または障害は、Hsp27遺伝子またはタンパク質産物がHsp27と結合するか、もしくは相互作用する遺伝子の突然変異と関連する。従って、様々な実施形態において、標的mRNAは、突然変異形態のHsp27配列であり、例えば、それは1個以上の単一の点突然変異またはトリプレット反復を含む。
【0212】
様々な実施形態においては、前記疾患または障害は異常なレベルのHsp27と関連する。
【0213】
本明細書で用いられる用語「異常な」とは、本明細書に記載の疾患、障害または症状を有さない動物の細胞中での発現レベルと比較した、細胞中でのHsp27遺伝子の過剰発現(例えば、上方調節)を指す。
【0214】
いくつかの実施形態においては、本発明に従うオリゴマー、コンジュゲートまたは組成物を、Hsp27遺伝子の過剰発現(例えば、上方調節)と関連する症状の治療のために用いることができる。
【0215】
他の実施形態においては、前記疾患または障害は、異常なレベルの突然変異形態のHsp27と関連する。
【0216】
本明細書で用いられる用語「突然変異」および「突然変異形態」とは、配列番号137に示されるHsp27核酸の変異体を指す。前記変異体は、本明細書に記載の疾患、障害または症状と関連してもよい。いくつかの実施形態においては、本明細書で用いられる用語「変異体」とは、1個以上のヌクレオチド付加および/または置換および/または欠失により配列番号137と異なる塩基配列を有するヌクレオチド配列を指す。いくつかの実施形態においては、前記変異体は、配列番号137と少なくとも80%、85%、90%または95%の配列相同性(同一性)を有する。同じか、または異なる実施形態においては、変異体は配列番号137の全長にわたって、60個以下の追加のヌクレオチドおよび/または置換されたヌクレオチドおよび/または欠失したヌクレオチド;例えば、配列番号137の全長にわたって、30個以下の追加のヌクレオチドおよび/または置換されたヌクレオチドおよび/または欠失したヌクレオチド;例えば、15個以下の追加のヌクレオチドおよび/または置換されたヌクレオチドおよび/または欠失したヌクレオチドを有する。
【0217】
Hsp27はいくつかのポリペプチドの結合パートナーである。Hsp27は、再折畳み経路または細胞分解経路における輸送のために折畳まれていないタンパク質に結合することによりシャペロンとして働くことができる。Hsp27が結合することができるポリペプチドの例としては、アネキシンII、DAXX、F-アクチン、シトクロムc、キャスパーゼ-3、Akt1、AR、IκBα、FASおよびMDM2が挙げられる。様々な実施形態においては、本発明は、Hsp27に結合することができるポリペプチドをコードする遺伝子の発現を調節する方法に関する。他の実施形態においては、本発明は、Hsp27に結合することができるポリペプチドの活性を調節する方法に関する。いくつかの実施形態においては、ポリペプチドへのHsp27の結合は、Hsp27が結合したポリペプチドをコードする遺伝子の発現または活性の増加をもたらす。他の実施形態においては、ポリペプチドへのHsp27の結合は、Hsp27に結合したポリペプチドをコードする遺伝子の発現または活性の低下をもたらす。いくつかの実施形態においては、ポリペプチドへのHsp27の結合は、Hsp27に結合したポリペプチドの活性の増加をもたらす。他の実施形態においては、ポリペプチドへのHsp27の結合は、Hsp27に結合したポリペプチドの活性の低下をもたらす。
【0218】
本発明はさらに、本明細書に開示される任意かつ全ての症状の治療のための医薬の製造における本発明のオリゴマーの使用を提供する。
【0219】
様々な実施形態においては、本発明は、異常なレベルのHsp27 mRNAまたはタンパク質と関連する症状に罹患するか、またはそれに罹りやすい哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に、1個以上のLNAモノマーを含む、治療上有効量の本発明のオリゴマー、またはそのコンジュゲートを投与することを含む前記方法に関する。
【0220】
本発明の興味深い態様は、上記で開示された症状の治療のための医薬の調製における、本明細書に定義されるオリゴマー(化合物)または本明細書に定義されるコンジュゲートの使用に関する。
【0221】
様々な実施形態においては、本発明は、治療上有効量の本発明に従うオリゴマー、またはそのコンジュゲートを、そのような療法を必要とする非ヒト動物またはヒトに投与することを含む、疾患を予防または治療する方法を包含する。
【0222】
特定の実施形態においては、本発明のLNAオリゴマー、またはそのコンジュゲートを、連続的よりもむしろ短期間投与する。
【0223】
本発明の特定の実施形態においては、前記オリゴマー(化合物)を、結合部分に連結して、例えば、オリゴマーの細胞取込みを増加させる。一実施形態においては、結合部分は、コレステロールなどのステロールである。
【0224】
様々な実施形態においては、本発明は、異常なレベルのHsp27を治療する方法であって、本発明のオリゴマー、またはそのコンジュゲートもしくは医薬組成物を、そのような治療を必要とする動物(患者など)に投与することを含み、必要に応じて、さらなる化学療法剤の投与をさらに含む前記方法に関する。いくつかの実施形態においては、化学療法剤を、オリゴマーにコンジュゲートし、医薬組成物中に存在させるか、または別の製剤中で投与する。
【0225】
本発明はまた、医薬としての使用のための本明細書に定義されるオリゴマー、組成物またはコンジュゲートに関する。
【0226】
本発明はさらに、異常なレベルのHsp27または突然変異形態のHsp27(本明細書に記載の疾患の1つと関連するものなどの対立遺伝子変異体など)の発現の治療のための医薬の製造における、本明細書に定義されるオリゴマー、組成物、またはコンジュゲートの使用に関する。
【0227】
さらに、様々な実施形態において、本発明は、癌、ミオパシーおよび喘息からなる群より選択される疾患または症状に罹患する動物(患者など)を治療する方法であって、本明細書に定義される医薬組成物を、それを必要とする動物(患者など)に投与する工程を含む前記方法に関する。
【0228】
特定の実施形態においては、本発明の方法を、異常なレベルのHsp27により引き起こされる疾患に対する治療または予防に用いる。
【0229】
いくつかの実施形態においては、本発明は、異常なレベルのHsp27を治療する方法であって、本発明のオリゴマー、または本発明のコンジュゲートもしくは本発明の医薬組成物を、それを必要とする動物(患者など)に投与することを含む前記方法に関する。
【0230】
さらに、本発明は、本明細書に記載のものなどの疾患または症状に罹患する動物(ヒトなど)を治療する方法に関する。
【0231】
治療を必要とする動物(患者など)は、疾患または障害を罹患するか、または罹患する可能性がある動物(患者など)である。
【0232】
好適な動物としては、ヒトおよび非ヒト動物が挙げられる。
【0233】
いくつかの実施形態においては、動物は哺乳動物である。例としては、ヒト、げっ歯類(ラットおよびマウスなど)、ウサギ、霊長類、非ヒト霊長類(チンパンジーおよびサルなど)、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌおよびネコが挙げられる。
【0234】
好適な用量、製剤、投与経路、組成物、剤形、他の治療剤との組合せ、プロドラッグ製剤も、WO2007/031091(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に提供されている。
【0235】
本発明はまた、本明細書に記載のオリゴマーまたはコンジュゲートと、製薬上許容し得る希釈剤、担体またはアジュバントとを含む医薬組成物も提供する。WO2007/031091(参照により本明細書に組み入れられるものとする)は、好適かつ好ましい製薬上許容し得る希釈剤、担体およびアジュバントを提供する。
【0236】
実施形態
本発明の以下の実施形態を、本明細書に記載の他の実施形態と組合わせて用いることができる。
【0237】
1. 合計10〜30個のヌクレオチドの連続的ヌクレオチド配列であって、哺乳動物Hsp27遺伝子に対応する領域または配列番号137などの、そのmRNAの逆相補体もしくは天然の変異体と少なくとも80%相同である前記連続的ヌクレオチド配列を含む、長さ10〜30ヌクレオチドのオリゴマー。
【0238】
2. 連続的ヌクレオチド配列が、配列番号1〜15および121、16〜30および122、31〜45および123、46〜60および124、61〜75および125、76〜90および126、91〜105および127、ならびに106〜120および128のいずれかに対応する領域と少なくとも80%相同である、実施形態1に記載のオリゴマー。
【0239】
3. 連続的ヌクレオチド配列が、配列番号137の対応する領域の逆相補体との不一致を含まないか、または2個以下の不一致を含む、実施形態1または2に記載のオリゴマー。
【0240】
4. オリゴマーのヌクレオチド配列が連続的ヌクレオチド配列からなる、実施形態1〜3のいずれか1つに記載のオリゴマー。
【0241】
5. 連続的ヌクレオチド配列が、長さ10〜18ヌクレオチドである、実施形態1〜4のいずれか1つに記載のオリゴマー。
【0242】
6. 連続的ヌクレオチド配列がヌクレオチド類似体を含む、実施形態1〜5のいずれか1つに記載のオリゴマー。
【0243】
7. ヌクレオチド類似体が、Locked Nucleic Acid (LNA)単位;2'-O-アルキル-RNA単位、2'-OMe-RNA単位、2'-アミノ-DNA単位、および2'-フルオロ-DNA単位からなる群より選択される糖修飾ヌクレオチドなどの糖修飾ヌクレオチドである、実施形態6に記載のオリゴマー。
【0244】
8. ヌクレオチド類似体がLNAである、実施形態6に記載のオリゴマー。
【0245】
9. ギャップマーである実施形態6〜8のいずれか1つに記載のオリゴマー。
【0246】
10. Hsp27遺伝子またはmRNAを発現している細胞中でのHsp27遺伝子またはmRNAの発現を阻害する、実施形態1〜9のいずれか1つに記載のオリゴマー。
【0247】
11. 配列番号129、130、131、132、133、134、135および136からなる群より選択される実施形態1〜10のいずれか1つに記載のオリゴマー。
【0248】
12. 実施形態1〜11のいずれか1つに記載のオリゴマーと、該オリゴマーに共有結合した少なくとも1個の非ヌクレオチドまたは非ポリヌクレオチド部分とを含むコンジュゲート。
【0249】
13. 実施形態1〜10のいずれか1つに記載のオリゴマー、または実施形態12に記載のコンジュゲートと、製薬上許容し得る希釈剤、担体、塩もしくはアジュバントとを含む医薬組成物。
【0250】
14. 癌、ミオパシーおよび喘息の治療のためなどの医薬としての使用のための、実施形態1〜11のいずれか1つに記載のオリゴマー、または実施形態12に記載のコンジュゲート。
【0251】
15. 癌、ミオパシーおよび喘息の治療のための医薬の製造における、実施形態1〜11のいずれか1つに記載のオリゴマー、または実施形態12に定義されたコンジュゲートの使用。
【0252】
16. 実施形態1〜11のいずれか1つに記載のオリゴマー、または実施形態12に記載のコンジュゲート、または実施形態13に記載の医薬組成物を、癌、ミオパシーおよび喘息を罹患しているか、または罹患する可能性がある患者に投与することを含む、癌、ミオパシーおよび喘息を治療する方法。
【0253】
17. Hsp27を発現している細胞中でのHsp27の阻害のための方法であって、該細胞中でHsp27を阻害するように、実施形態1〜11のいずれか1つに記載のオリゴマー、または実施形態12に記載のコンジュゲートを該細胞に投与することを含む前記方法。
【0254】
(実施例)
【実施例1】
【0255】
モノマー合成
LNAモノマー構成要素および誘導体を、公開された手順およびそこに引用された参考文献に従って調製した(WO 07/031081およびそこに引用された参考文献を参照)。
【実施例2】
【0256】
オリゴヌクレオチド合成
オリゴヌクレオチド(オリゴマー)を、WO 07/031081に記載の方法に従って合成した。表1は、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドモチーフの例を示す。
【実施例3】
【0257】
オリゴヌクレオチドの設計
本発明に従って、本明細書で配列番号137として提示される、公開された配列GenBankアクセッション番号NM_001540を用いて、ヒトHsp27 mRNAの様々な領域を標的化する一連のオリゴヌクレオチド(オリゴマー)を設計した(図3)。
【表1】

【0258】

【0259】

【0260】

【0261】

【0262】
表2は、本発明のオリゴマーをそこから設計することができる24マーの配列モチーフを示す。太字は表1に示された16マーの配列モチーフを表す。
【表2】

【表3】

【実施例4】
【0263】
in vitroモデル:細胞培養
標的核酸発現に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果を、標的核酸が測定可能なレベルで存在するという条件で、様々な細胞型のいずれかにおいて試験することができる。標的を内因的に発現させるか、または該標的核酸をコードする核酸の一過的もしくは安定的トランスフェクションにより発現させることができる。標的核酸の発現レベルを、例えば、ノーザンブロット分析、リアルタイムPCR、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて日常的に決定することができる。以下の細胞型を例示目的で提供するが、標的が選択された細胞型中で発現されるという条件で、他の細胞型も日常的に用いることができる。細胞を、以下に記載の好適な培地中で培養し、95〜98%湿度および5%CO2、37℃で維持した。細胞を週に2〜3回、日常的に継代した。
【0264】
A549:ヒト肺癌細胞系A549を、DMEM (Sigma) + 10%ウシ胎仔血清(FBS) + 2 mM Glutamax I + ゲンタマイシン(25μg/ml)中で培養した。
【0265】
PC3:ヒト前立腺癌細胞系PC3を、DMEM (Sigma) + 10%ウシ胎仔血清(FBS) + 2 mM Glutamax I + ゲンタマイシン(25μg/ml)中で培養した。
【実施例5】
【0266】
in vitroモデル:アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる処理
トランスフェクションビヒクルとして陽イオン性リポソーム製剤LipofectAMINE 2000 (Gibco)を用いて、細胞をオリゴマー(オリゴヌクレオチド)で処理した。細胞を6穴細胞培養プレート(NUNC)中に播種し、75〜90%集密になった時に処理した。用いたオリゴヌクレオチド濃度は1 nM〜16 nMの最終濃度であった。オリゴヌクレオチド-脂質複合体の製剤化を、無血清OptiMEM (Gibco)および5μg/mLの最終脂質濃度のLipofectAMINE 2000を用いて、本質的には製造業者により記載されたように実行した。細胞を37℃で4時間インキュベートし、オリゴヌクレオチドを含有する培養培地の除去により処理を停止した。細胞を洗浄し、血清を含有する培地を添加した。オリゴヌクレオチド処理の後、細胞を20時間回復させた後、それらをRNA分析のために回収した。
【実施例6】
【0267】
in vitroモデル:RNAの抽出およびcDNA合成
細胞系からのRNA単離のために、RNeasy miniキット(Qiagenカタログ番号74104)を製造業者により提供されたプロトコルに従って用いた。第1鎖合成を、製造業者の説明書に従って、Ambion社製の逆転写酵素試薬を用いて実施した。
【0268】
各サンプルにつき、0.5μgの全RNAを、RNaseを含まないH2Oを用いて10.8μlに調整し、2μlのランダムデカマー(50μM)および4μlのdNTPミックス(2.5 mMの各dNTP)と混合し、70℃で3分間加熱した後、サンプルを氷上で急速冷却した。氷上でサンプルを冷却した後、2μlの10xバッファーRT、1μlのMMLV逆転写酵素(100 U/μl)および0.25μlのRNase阻害剤(10 U/μl)を各サンプルに添加した後、42℃で60分間インキュベートし、95℃で10分間、酵素を熱不活化した後、サンプルを4℃に冷却した。
【実施例7】
【0269】
in vitroモデル:リアルタイムPCRによるHsp27発現のオリゴヌクレオチド阻害の分析
Hsp27 mRNA発現のアンチセンス調節を、当業界で公知の様々な方法でアッセイすることができる。例えば、Hsp27 mRNAレベルを、例えば、ノーザンブロット分析、競合的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、またはリアルタイムPCRにより定量することができる。リアルタイム定量的PCRが現在好ましい。RNA分析を、全細胞RNAまたはmRNA上で実施することができる。RNA単離およびノーザンブロット分析などのRNA分析の方法は当業界で日常的であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sonsに教示されている。リアルタイム定量的PCRを、Applied Biosystem社から入手可能な市販のMulti-Color Real Time PCR Detection Systemを用いて都合良く達成することができる。
【0270】
Hsp27 mRNAレベルのリアルタイム定量的PCR分析
サンプル中のヒトHsp27 mRNAの含量を、製造業者の説明書に従って、ヒトHsp27 ABI Prism Pre-Developed TaqMan Assay Reagent (Applied Biosystemsカタログ番号Hs03044127_g1)を用いて定量した。
【0271】
グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH) mRNA量を、サンプル調製における任意の偏差を正規化するための内部対照として用いた。ヒトGAPDH mRNAのサンプル含量を、製造業者の説明書に従って、ヒトGAPDH ABI Prism Pre-Developed TaqMan Assay Reagent (Applied Biosystemsカタログ番号4310884E)を用いて定量した。
【0272】
リアルタイム定量的PCRは当業界でよく知られた技術であり、例えば、Heidら、Real time quantitative PCR, Genome Research (1996), 6: 986-994に教示されている。
【0273】
リアルタイムPCR
実施例6に記載のように実施した第1鎖合成に由来するcDNAを2〜20倍に希釈し、Applied Biosystems社製のTaqman 7500 FASTを用いるリアルタイム定量的PCRにより分析した。プライマーとプローブを、2 x Taqman Fast Universal PCRマスターミックス(2x)(Applied Biosystemsカタログ番号4364103)と混合し、10μlの最終容量となるように4μlのcDNAに添加した。各サンプルを3回分析した。目的のRNAを発現する細胞系から精製された材料上で調製されたcDNAの2倍希釈液をアッセイすることにより、標準曲線を作製した。鋳型なしの対照のために、滅菌H2OをcDNAの代わりに用いた。PCRプログラム:95℃で30秒、次いで95℃で3秒、60℃で30秒の40サイクル。標的mRNA配列の相対量を、Applied Biosystems Fast System SDS Software Version 1.3.1.21を用いて算出された閾値サイクルから決定した。
【実施例8】
【0274】
in vitro分析:オリゴヌクレオチドによるヒトHsp27発現のアンチセンス阻害
表4に提示されるオリゴヌクレオチドを、PC3細胞中、1、4および16 nMの濃度でHsp27 mRNA発現をノックダウンする能力について評価した(図1を参照)。データを、4 nMでモックトランスフェクトされた細胞と比較したHsp27 mRNAの下方調節(%)として表4に提示する。モックトランスフェクトされた細胞は、脂質を用いるが、オリゴを用いずにトランスフェクトされたものである(陰性対照)。小文字はDNA単位を表し、太字はβ-D-オキシ-LNA単位などのLNAを表す。LNAモノマー中の全てのシトシン塩基は5-メチルシトシンである。下付文字「s」はホスホロチオエート結合を表す。
【表4】

【0275】
表4に示されるように、配列番号129、130、131、132、133、134、135および136のオリゴヌクレオチドは、これらの実験において4 nMでHsp27 mRNA発現の約75%以上の阻害を示し、従って好ましい。また、例えば、Hsp27 mRNA発現の良好な阻害も提供する、長さ(より短い、もしくはより長い)および/または核酸塩基含量(例えば、類似体単位の型および/もしくは比率)を変化させる、例示されたアンチセンスオリゴヌクレオチド配列に基づくオリゴヌクレオチドも好ましい。
【実施例9】
【0276】
増殖する生細胞の測定(MTSアッセイ)
PC3細胞を、トランスフェクションの前日に、2 mlのDMEM培地(Sigma D5671) + 2 mM Glutamax I (Gibco 35050-038) + 10%FBS (Brochrom #193575010) + 25μg/μl ゲンタマイシン(Sigma G1397 50 mg/ml)中、6穴プレート中のウェルあたり200,000個の細胞の密度に播種した。次の日、細胞を実施例5に記載のようにトランスフェクトした。最終オリゴヌクレオチド濃度は4および16 nMであった。4時間の処理後、培地を除去し、細胞をトリプシン処理し、100μlのDMEM培地(Sigma D5671) + 2mM Glutamax I(Gibco 35050-038) + 10%FBS(Brochrom #193575010) + 25μg/μlのゲンタマイシン(Sigma G1397 50 mg/ml)中、透明な96穴プレート(Scientific Orange番号1472030100)中のウェルあたり5000個の細胞の密度に播種した。10μlのテトラゾリウム化合物[3-(4,5-ジメチル-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、内部塩;MTS]および電子カップリング試薬(フェナジンエトサルフェート;PES)(CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay, Promega)を添加することにより示された時点で生細胞を測定した。
【0277】
生細胞を、Powerwave (Biotek Instruments)中、490 nmで測定した。OD490 nmを時間(h)に対してプロットした(図2を参照)。
【実施例10】
【0278】
配列番号129、130、131、132、133、134、135および136とポリエチレングリコールとのコンジュゲートの調製
Fmocなどのブロッキング基でブロックされたヘキサン-1-アミンなどのアミノアルキル基を、日常的なホスホルアミダイト化学を用いてオリゴマーの5'リン酸基に結合させ、得られた化合物を酸化し、それを脱保護し、それを精製して、式(I):
【化7】

【0279】
を有する官能化オリゴマー(活性化オリゴマー)を達成することにより、オリゴマーを5'末端上で官能化する。
【0280】
式(I)または(III)中の用語「オリゴマー」とは、本発明のオリゴマー、例えば、配列番号129、130、131、132、133、134、135および136からなる群より選択されるオリゴマーを指す。
【0281】
PBSバッファー中の式(II):
【化8】

【0282】
(式中、PEG部分は12,000の平均分子量を有する)
に示されるものなどの活性化されたPEGと、式(I)の化合物の溶液を、室温で12時間攪拌する。反応溶液を塩化メチレンで3回抽出し、合わせた有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させる。残渣を二重蒸留水中に溶解し、陰イオン交換樹脂上に充填する。未反応のPEGリンカーを水で溶出させ、生成物をNH4HCO3溶液で溶出させる。純粋な生成物を含有する画分をプールし、凍結乾燥して、式(III):
【化9】

【0283】
(式中、オリゴマー(例えば、配列番号129、130、131、132、133、134、135および136)は遊離可能なリンカーを介して12,000の平均分子量を有するPEGポリマーに結合している)
のコンジュゲートを得る。
【実施例11】
【0284】
IC50の決定
用いる実験手順は実施例4、5、6および7に記載の通りである。試験した全部で6個のHsp27オリゴマー(オリゴ)は、A549(図4)およびPC3(図5)の両細胞系において4 nM以下のIC50を有する。
【実施例12】
【0285】
血漿安定性
Hsp27オリゴマーの安定性を、37℃で24時間(1日)、48時間(2日)および120時間(5日)、マウス血漿中でインキュベートした後に調査した。全てのオリゴマーが、in vitroでの安定性を示し、それによって90%を超える活性化合物が37℃でマウス血漿と共にインキュベートした場合に24時間後に残存していた。オリゴマー131および132については、より弱いバンドが24〜48時間後に出現し、それは120時間後に特に顕著になった。方法:マウス血漿(BomTac社製リチウムヘパリン:NMRIマウス、2005年9月14日に回収、Taconic Europe)を解凍し、45μl血漿/チューブでチューブに分注した。次いで、5μlのオリゴマー(200μM)を45μlの血漿に20μMの最終濃度となるように添加した。様々な時点(0時間、24時間、48時間および120時間)で、サンプルを回収し、液体窒素中でサンプルを簡易凍結することにより反応をクエンチした。分析のために、サンプルをローディングバッファーに添加し、変性条件下でのPAGE-配列決定ゲル上での電気泳動により分析した。その結果を図6に示す。
【実施例13】
【0286】
Tmの決定
LNAを含有するオリゴマー/RNA二本鎖の融点を、対応するソフトウェア(Perkin Elmer, Fremont, USA)を含むUV分光系を用いて決定した。LNAオリゴマーおよびその相補的RNAを、1.5μMの最終濃度でTm-バッファー(200 nM NaCl、0.2 nM EDTA、20 mM NaP、pH 7.0)に添加した。サンプルを95℃に3分間加熱した後、室温で30分間冷却することにより、二本鎖形成を調製した。融点(Tm)の値をLambda 25 UV/VIS分光計(Perkin Elmer)中で測定し、データを回収し、TempLabソフトウェア(Perkin Elmer)を用いて分析した。器具を、20〜95℃にオリゴマー二本鎖サンプルを加熱した後、サンプルを25℃に冷却するようにプログラミングした。このプロセスの間、260 nmでの吸光度を記録した。融点曲線を用いてTm値を算出した。RNAに対するオリゴマーのTmを決定した(表5)。配列番号129、130、131、132および135は約70℃のTmを有する。配列番号136は44.4℃のTmを有する。
【表5】

【実施例14】
【0287】
in vivo分析:HSP27オリゴヌクレオチドのin vivoでの(i.v.)投与後のマウス肝臓中でのマウスHSP27の下方調節
メスのNMRIマウスに、3日間連続で25 mg/kgの用量で配列番号129、130、131、132および135の配列を有するオリゴヌクレオチドを静脈内注射により投与した。動物を最後の投与の24時間後に屠殺した。肝臓を、使用までRNAlater安定化溶液中に保存した。全RNAを肝臓組織から抽出し、Hsp27 mRNAレベルをqPCR(定量的PCR)を用いて分析した。データを塩水処理した対照動物中でのHsp27発現と比較した。その結果を図7に示す。
【実施例15】
【0288】
in vivo分析:HSP27オリゴヌクレオチドの静脈内投与後のマウス肝臓中でのALTおよびASTの決定
メスのNMRIマウスに、0、3、6および9日目に10 mg/kgの用量で配列番号129、130、131、132および135の配列を有するオリゴヌクレオチドを静脈内注射により投与した。動物を最後の投与の24時間後に屠殺した。ALTおよびASTレベルを、屠殺の時点でマウスから得られた、赤血球を含まない血清中で決定した。マウス血清中でのアラニン-アミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸-アミノトランスフェラーゼ(AST)の活性を、製造業者の説明書に従ったが、96穴形式に調整した酵素的ALTアッセイ(ABX Pentra A11A01627 (ALT)またはA11A01629 (AST), Horiba ABX Diagnostics, France)を用いて決定した。簡単に述べると、血清サンプルをH2Oで2.5倍に希釈し、2回アッセイした。50μlの希釈サンプルまたは標準物(ABX Pentra社製multical、A11A01652)を各ウェルに添加した後、200μlの37℃のALT試薬ミックスを各ウェルに添加した。動的測定を340 nmおよび37℃で5分間、30秒の間隔で実施した。データを2倍希釈された標準曲線に対して補正し、結果をALT活性としてU/Lで提示した。その結果を図8および9に示す。
【実施例16】
【0289】
リポフェクションを用いない長期細胞培養
配列番号135に記載の配列を有する抗HSP27オリゴヌクレオチドがリポフェクションまたは他のトランスフェクション剤の非存在下で長期培養物中での細胞増殖の阻害を示す能力を調査した。20種を超える細胞系を、様々な用量、すなわち、0、0.32、0.63、1.25、2.5、5、10、および20マイクロモル濃度のオリゴヌクレオチドを含む標準増殖培地中で1〜7日間インキュベートした細胞培養物中で試験した。典型的な培地および細胞増殖アッセイ法法は実施例9に記載されている。リポフェクションの非存在下では、以下の細胞系が任意のオリゴヌクレオチド濃度で有意な阻害を示さなかった:15PC3(前立腺癌細胞系)、PC3(ヒト前立腺癌細胞系)、A549(ヒト肺癌細胞系)、DLD-1(ヒト結腸癌細胞系)、SW480(ヒト結腸腺癌細胞系)、518A2(ヒトメラノーマ細胞系)、Calu-6(ヒト肺癌細胞系)、22RV1(ヒト前立腺癌細胞系)、およびHep3B(ヒト肝癌細胞系)。以下の細胞系は、配列番号135の2.5〜20マイクロモル濃度で細胞増殖の20%〜70%の阻害を示した:H1581(大細胞癌細胞系)、U87MG(ヒトグリオブラストーマ-アストロサイトーマ、上皮様細胞系)、A427(ヒト肺腺癌細胞系)、LNCaP(ヒト前立腺腺癌細胞系)、BxPC3(ヒト膵臓癌細胞系)、HCC827(ヒト食道扁平細胞癌細胞系)、DU-145(ヒト前立腺癌細胞系)、H1975(非小細胞肺癌細胞系)、SKBR3(ヒト乳癌細胞系)、Huh7(ヒト肝癌細胞系)、HT1080(ヒト線維肉腫細胞系)、Jimt(ヒト乳癌細胞系)、MB231(ヒト乳腺癌細胞系)、HCC827R(肺癌細胞系HCC827に由来)、および786-O(ヒト腎細胞癌細胞系)。細胞培養の7日後の実施例データを図10に示す。配列番号135を有するオリゴマーに曝露されなかった対照細胞培養物は、100%の細胞増殖に対応する。試験した療法の結腸癌系は不応答であったが、試験した3種の乳癌細胞系は全て増殖阻害に対して応答性であったことに留意されたい。HT1080細胞ならびに配列番号135および131を用いるさらなる滴定実験により、2マイクロモル濃度の配列番号135に記載の配列を有するオリゴマーおよび0.6マイクロモル濃度の配列番号131の増殖阻害に関するIC50値が
示された。結論として、配列番号135の配列を有するオリゴマーは、試験した増殖条件下で、いくらかであるが、全てではない細胞系において中程度の増殖阻害を示した。
【実施例17】
【0290】
配列番号135の配列を有するオリゴマーとの長期培養物はHSP27 mRNAおよびタンパク質を下方調節する
細胞培養培地中でのアンチセンスオリゴヌクレオチドのインキュベーションの生物学的効果を試験した。リポフェクション方法(ナノモル濃度)と比較してより高いオリゴヌクレオチド濃度(マイクロモル濃度)を用いて、本発明者らは、データを正規化するためのGAPDHなどのハウスキーピング遺伝子の測定を含む標準的なリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応法を用いて標的HSP27 mRNAの相対レベルを測定することにより、標的下方調節に関してこれらの化合物を用いる細胞の処理を評価した。細胞系を、推奨された市販の培地(ATCC)と様々な用量のオリゴヌクレオチドを用いて、6穴マイクロウェル皿中に塗布した。ABI 7500系上でRT-PCR分析を行って、データをABI 7500 Fast System SDSソフトウェアを用いて分析した。遺伝子特異的プローブ-プライマーを、ABIソフトウェアを用いて設計した。PCR例示プログラムは以下の通りである:50℃で2分間、95℃で10分間、次いで、95℃で15秒間、60℃で1分間の40サイクル。抗HSP27抗体試薬、および抗チューブリン抗体(R&D Systems)を用いる化学発光の定量のために、Fuji Film LAS-1000上でウェスタンブロット分析を分析した。いくつかの細胞系を、実施例15に記載のようにリポフェクションまたは他のトランスフェクション剤の非存在下での長期間のインキュベーションの条件下で標的mRNAおよびタンパク質レベルを下方調節する抗HSP27オリゴヌクレオチドの能力について調査した。0〜5マイクロモル濃度の用量範囲の配列番号135の配列を有するオリゴマーと共に1〜7日間細胞培養を行った後、実施例7に記載の定量的リアルタイムPCRによりHSP27 mRNAレベルを測定した。HSP27タンパク質を、市販の抗体西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲート対HSP27または対照タンパク質、例えば、α-チューブリンを用いるウェスタンブロット免疫アッセイにより測定した。配列番号135の配列を有するオリゴマーによるHSP27の下方調節の特異性の評価を、乱雑または不一致のオリゴヌクレオチドの効果を評価することにより実施した。
【0291】
図11は、HSP27 mRNA(図11A)またはHSP27タンパク質(図11B)の用量依存的下方調節を示す。標的の下方調節のためのおおよそのIC50は、HSP27 mRNAまたはHSP27タンパク質について、細胞系15PC3(前立腺癌細胞系)中で6日後に300ナノモル濃度である。HT1080(ヒト線維肉腫細胞系)などのさらなる細胞系についても同様の結果が得られ、3〜4日後に2〜5ナノモル濃度でHSP27 mRNAおよびHSP27タンパク質の10倍のノックダウンを示した。HER3に対するアンチセンスはHSP27 mRNAをノックダウンすることができないため、HSP27 mRNAに対する効果は特異的であるようであった。結論として、腫瘍細胞系の細胞培養物中のLNAに基づくアンチセンスオリゴヌクレオチドの含有は、標的HSP27 mRNAおよびタンパク質のレベルの用量依存的かつ配列特異的低下を示すことができる。
【実施例18】
【0292】
細胞増殖に対する抗HSP27 LNAに基づくオリゴヌクレオチドとTNFαの組合せ効果
いくつかの細胞系を、リポフェクションまたは他のトランスフェクション剤の非存在下、長期間のインキュベーションの条件下で別の細胞傷害剤と組合わせた場合に細胞増殖を阻害する抗HSP27オリゴヌクレオチドの能力について調査した。配列番号135の配列を有する10マイクロモル濃度のオリゴマーと共に5日間、15PC3細胞(前立腺癌細胞系)を長期培養した後、用量範囲(0〜50 ng/mL)のTNF-αと共に3日間インキュベートしたところ、2つの薬剤の付加効果が得られた(図12、上)。配列番号135の配列を有する10マイクロモル濃度のオリゴマーと共に5日間、BxPC3細胞(ヒト膵臓癌細胞系)を長期培養した後、一定用量範囲のTNF-αと共に3日間インキュベートしたところ、細胞増殖に対する付加効果、または付加を超える効果が得られた(図12、下)。細胞をTNF-αおよび配列番号135の配列を有するオリゴマーで同時に7日間処理した場合、同様の結果が得られた。HSP27は、死受容体シグナリング経路に関与すると報告されており、これらの結果は、この経路の調節におけるHSP27の提唱された役割を支持している。
【0293】
従って、抗HSP27オリゴヌクレオチドを、様々な従来の細胞傷害剤と共に治療的に用いることができる。その例は、TRAIL、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびカンプトテシンである。他の組合せとしては、放射線増感剤としての抗HSP27オリゴヌクレオチドの使用、または特に、これらの薬剤に対する耐性が生じた場合、様々な抗癌抗体もしくは小分子と組合わせた使用が挙げられる。結論として、HSP27のシャペロン機能は、多くの療法の細胞傷害活性に対する耐性において役割を果たし、HSP27アンチセンス分子はこれらの薬剤の組合せの全体の治療効力を増強する有益な対抗作用活性を提供することができる。
【実施例19】
【0294】
動物モデルにおける抗HSP27オリゴヌクレオチドの抗腫瘍効果
2つのヒト腫瘍モデル、PC3(ヒト前立腺癌細胞系)およびDU-145(ヒト前立腺癌細胞系)を、マウスにおける異種移植片試験において腫瘍増殖阻害(TGI)を示す抗HSP27オリゴヌクレオチドの能力について調査した。1回目の試験においては、PC3の皮下腫瘍を無胸腺ヌードマウスにおいて確立し、腫瘍体積が約100 mm3に達した後、配列番号129、130、131、132、および135の5個のオリゴヌクレオチドのうちの1個の3、10、30または100 mg/kgの静脈内用量をマウスに投与した。投与計画は4回の総用量について3日目毎であった。抗腫瘍効果は配列番号130、131および135において観察されたが、平均腫瘍体積に基づけば、10日目の腫瘍増殖阻害(5匹のマウス/群)は26%〜66%のTGIを示した。マウス中のPC3またはDU-145腫瘍異種移植片を用いる2回目の試験を、合計10回の用量について3日目毎に3 mg/kgの配列番号135を用いた。この用量で29日目にPC3およびDU-145モデルの両方において、30%のTGIが観察された(図13)。3回目の試験は、10回の用量について3日目毎に60 mg/kgの静脈内用量でPC3異種移植片モデルにおける配列番号135のTGI効果を試験した。平均腫瘍体積に基づいて、29日目に40%のTGIが観察され(6匹のマウス/群)たが、この試験においては統計学的有意性を達成しなかった。
【実施例20】
【0295】
動物モデルにおける抗HSP27オリゴヌクレオチドによる腫瘍中での標的ノックダウン
ヒト腫瘍モデルPC3(ヒト前立腺癌細胞系)を、マウス中での異種移植片試験において標的mRNAおよびタンパク質のノックダウンを示す抗HSP27オリゴヌクレオチドの能力について試験した。この試験においては、PC3の皮下腫瘍を無胸腺ヌードマウスにおいて確立し、腫瘍体積が約100 mm3に達した後、配列番号129、130、131、132、および135に記載の配列を有する5個のオリゴヌクレオチドのうちの1個の3、10、30または100 mg/kgの静脈内用量をマウスに投与した(配列番号129、130および132に記載の配列を有するオリゴマーについてはデータを示さない)。投与計画は4回の総用量について3日目毎であった。これらの試験に由来する腫瘍組織を、mRNA分析のためにRNAlater中に回収するか、またはタンパク質分析のために急速凍結した。PC3腫瘍切片を、オリゴヌクレオチドの最後の投与の24時間後に加工した。定量的リアルタイムPCRを実施例14に記載のように行い、免疫アッセイによるタンパク質の定量を実施例17に記載のように実施した。
【0296】
腫瘍組織中のHSP27 mRNAは、それぞれ、各化合物については最大許容量(MTD)で、配列番号131および配列番号135の配列を有するオリゴマーについては30 mg/kgまたは100 mg/kgで、配列番号131および配列番号135に記載の配列を有するオリゴマーにより下方調節された(図14を参照)。また、HSP27タンパク質下方調節は両方のオリゴマー(配列番号131および配列番号135に記載の配列を有する)についても観察され、複数の腫瘍サンプル中の平均HSP27ノックダウンは約3倍の低下であった。配列番号135の配列を有するオリゴマーによるmRNAノックダウンは、MTDで約10倍であった。結論として、LNAに基づくアンチセンスオリゴヌクレオチド対HSP27は、この投与計画においては腫瘍組織中で標的特異的mRNAおよびタンパク質の下方調節を示した。
【0297】
上記明細書に記載の全ての刊行物は参照により本明細書に組み入れられるものとする。記載の方法および本発明の系の様々な改変および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者には明らかとなるであろう。本発明を特定の好ましい実施形態と関連して説明してきたが、特許請求された本発明はそのような特定の実施形態に過度に制限されるべきではないことが理解されるべきである。実際、生化学および分子生物学または関連する分野における当業者には明らかである本発明を実施するための記載の様式の様々な改変が、以下の特許請求の範囲内にあると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合計10〜30個のモノマーの連続する配列の第1領域を含む長さ10〜30個のモノマーのオリゴマーであって、前記連続する配列が、哺乳動物Hsp27遺伝子に対応する領域または哺乳動物Hsp27遺伝子もしくはmRNAなど、例えば、配列番号137に記載の配列を有する核酸、もしくはその天然の変異体などの哺乳動物Hsp27をコードする核酸の標的領域の逆相補体と少なくとも80%同一である、前記オリゴマー。
【請求項2】
前記連続する配列が配列番号91〜105および127、1〜15および121、16〜30および122、31〜45および123、46〜60および124、61〜75および125、76〜90および126、ならびに106〜120および128のいずれかに対応する領域と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%相同である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項3】
前記連続する配列が、配列番号137の対応する領域の逆相補体との不一致を含まないか、または1もしくは2個以下の不一致を含む、請求項1または2に記載のオリゴマー。
【請求項4】
前記連続する配列が長さ10〜18個のモノマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のオリゴマー。
【請求項5】
前記連続する配列がヌクレオシド類似体を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴマー。
【請求項6】
前記ヌクレオシド類似体が、Locked Nucleic Acid (LNA)単位;2'-O-アルキル-RNA単位、2'-OMe-RNA単位、2'-アミノ-DNA単位、および2'-フルオロ-DNA単位からなる群より選択される糖修飾ヌクレオシドなどの糖修飾ヌクレオシドであり、好ましくは該ヌクレオシド類似体がLNAである、請求項5に記載のオリゴマー。
【請求項7】
ギャップマーである、請求項5または6に記載のオリゴマー。
【請求項8】
Hsp27遺伝子またはmRNAを発現している細胞中でのHsp27遺伝子またはmRNAの発現を阻害する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のオリゴマー。
【請求項9】
配列番号129、130、131、132、133、134、135および136からなる群より選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のオリゴマーであって、好ましくは配列番号131または配列番号135である、前記オリゴマー。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のオリゴマーと、該オリゴマーに共有結合した少なくとも1個の非ヌクレオチドまたは非ポリヌクレオチド部分とを含むコンジュゲート。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のオリゴマーまたは請求項10に記載のコンジュゲートと、製薬上許容し得る希釈剤、担体、塩またはアジュバントとを含む医薬組成物。
【請求項12】
癌、ミオパシーおよび喘息の治療のためなどの、医薬としての使用のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載のオリゴマーまたは請求項10に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
癌、ミオパシーおよび喘息の治療のための医薬の製造における、請求項1〜9のいずれか1項に記載のオリゴマーまたは請求項10に記載のコンジュゲートの使用。
【請求項14】
癌、ミオパシーおよび喘息を治療する方法であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載のオリゴマーまたは請求項10に記載のコンジュゲートまたは請求項11に記載の医薬組成物を、癌、ミオパシーおよび喘息に罹患しているか、または罹患する可能性が高い動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
Hsp27を発現している細胞中でHsp27を阻害する方法であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載のオリゴマーまたは請求項10に記載のコンジュゲートを前記細胞に投与して、該細胞中でHsp27を阻害することを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−526494(P2011−526494A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515714(P2011−515714)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052860
【国際公開番号】WO2010/001349
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(596124151)エンゾン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (24)
【出願人】(510144465)サンタリス ファーマ アー/エス (6)
【Fターム(参考)】