説明

I.A.HIVの治療における逆転写酵素変調剤として使用の4−(3,5−ジシアノフェノキシ)ピラゾール誘導体

本発明は、式(I)のピラゾール誘導体とその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体、医薬品におけるその使用、それを含有する組成物、その製造の方法、及びそのような方法に使用する中間体に関する。本発明の化合物は、酵素の逆転写酵素へ結合して、その変調剤、特に阻害剤である。逆転写酵素は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染生活環に関連がある。この酵素の機能に干渉する化合物は、HIVと遺伝子関連レトロウイルスにより引き起こされる、後天性免疫不全症候群(AIDS)のような病態の治療に有用性を示した。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ピラゾール誘導体、医薬品におけるその使用、それを含有する組成物、その製造の方法、及びそのような方法に使用する中間体に関する。
逆転写酵素は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染生活環に関連がある。この酵素の機能に干渉する化合物は、HIVと遺伝子関連レトロウイルスにより引き起こされる、後天性免疫不全症候群(AIDS)のような病態の治療に有用性を示した。このウイルスは、突然変異して、既知の変調剤の効果に耐性になることができるので、HIV逆転写酵素の新しくてより優れた変調剤、特に阻害剤を提供することへの定常的なニーズがある。
【0002】
逆転写酵素阻害剤として作用するN−フェニルピラゾールのクラスが J. Med. Chem., 2000, 43, 1034 に開示されている。米国特許第3,303,200号において、抗ウイルス活性は、N−(ヒドロキシエチル)ピラゾール誘導体のクラスによるとされている。本出願の出願日の時点では未公開である、国際特許出願番号PCT/IB02/01234には、以下の式(I)の化合物が一般的に含まれているが、具体的に開示されているわけではない。
【0003】
本発明の化合物は、酵素の逆転写酵素へ結合して、その変調剤、特に阻害剤である。
このように、本発明によれば、式(I):
【0004】
【化1】

【0005】
の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体が提供される。
式(I)の化合物の製剤的に許容される塩には、その酸付加塩及び塩基性塩が含まれる。
【0006】
好適な酸付加塩は、無毒の塩を形成する酸より形成され、その例は、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸、重硫酸、硝酸、リン酸、リン酸水素、酢酸、フマル酸、パモ酸、アスパラギン酸、ベシラート、炭酸、重炭酸、カムシラート、D及びL−乳酸、D及びL−酒石酸、エシレート、メシレート、マロン酸、オロテート、グルセプタート、メチル硫酸、ステアリン酸、グルクロン酸、2−ナプシラート、トシラート、ヒベンザート(hibenzate)、ニコチン酸、イセチオネート、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、サッカリン酸、安息香酸、エシレート、及びパモ酸の塩である。
【0007】
好適な塩基性塩は、無毒の塩を形成する塩基より形成され、その例は、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、コリン、ジオラミン、オラミン、アルギニン、グリシン、トロメタミン、ベンザチン、リジン、メグルミン及びジエチルアミンの塩である。
【0008】
好適な塩に関する概説については、Berge et al, J. Pharm. Sci., 66, 1-19, 1997 とBighley et al「製薬技術百科(Encyclopedia of Pharmaceutical Technology)」マルセル・デッカー社、ニューヨーク(1996)13巻、453-497 頁を参照のこと。
【0009】
式(I)の化合物の製剤的に許容される溶媒和物には、その水和物が含まれる。
式(I)の化合物は、その製剤的に許容される誘導体を提供するために、化合物中の官能基のいずれでも修飾してよい。そのような誘導体の例は、Drugs of Today, 19巻、9号、1983, 499-538頁;Topics in Chemistry, 31章、306-316頁;及び「プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)」H. Bundgaad 著、エルセヴィエ、1985, 1章(これらの文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されていて、エステル、炭酸エステル、ヘミエステル、リン酸エステル、ニトロエステル、硫酸エステル、スルホキシド、アミド、スルホンアミド、カルバメート、アゾ化合物、ホスファミド、グリコシド、エーテル、アセタール及びケタールが含まれる。
【0010】
本発明には、あらゆる幾何異性、互変異性及び光学異性の型とその混合物(例、ラセミ混合物)が含まれる、式(I)の化合物とその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体のあらゆる異性体が網羅される。
【0011】
ジアステレオマーの分離は、慣用技術により、例えば化合物の立体異性混合物の分別結晶化、クロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により達成することができる。化合物の個々のエナンチオマーは、対応する光学的に純粋な中間体から製造しても、対応するラセミ化合物の好適なキラル支持体を使用するHPLCによるか、又は対応するラセミ化合物の好適な光学活性の酸又は塩基との反応により適宜形成されるジアステレオマー塩の分別結晶化による分割により製造してもよい。
【0012】
式(I)の化合物とその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体は、1以上の形態で結晶する能力を有する場合があり(多形として知られる特徴)、そのような多形の形態(「多形」)もすべて本発明の範囲内に含まれる。一般に、多形現象は、温度又は気圧又はその両方の変化に対する応答として起こる場合があり、結晶化プロセスにおける変動より生じる場合もある。様々な物理特性により多形を識別することができて、典型的には、化合物のX線回折パターン、溶解行動(solubility behavior)、及び融点を使用して多形を識別する。
【0013】
式(I)の化合物、その製剤的に許容される塩、溶媒和物及び誘導体、その異性体、及びその多形を以下「本発明の化合物」と呼ぶ。
好ましい本発明の化合物は、式(I)の化合物とその製剤的に許容される塩及び溶媒和物である。
【0014】
最も好ましい本発明の化合物は、式(I)の化合物である。
本発明の化合物は、優れた薬物動態特性をもたらす、優れた代謝安定性が含まれる有利な特性を明示する。さらに、本発明の化合物は、効力、作用時間、活性スペクトル、副作用プロフィール、溶解性、化学的安定性、等のようないくつかの他の有用な特性に関して、先行技術の化合物に優る利点を有する場合がある。
【0015】
本発明の化合物は、類似の構造の化合物の製造について当該技術分野で知られているどの方法によって製造してもよい。本発明の化合物は、以下の方法に記載の手順によっても、実施例に記載の特定の方法によっても、そのいずれかに類似した方法によっても製造することができる。本発明には、本発明の化合物を製造するためのこれら1以上の方法と、それに加えて、そこに使用するあらゆる新規中間体も含まれる。
【0016】
式(I)の化合物は、以下のスキーム1に示す経路に従って製造することができる。
【0017】
【化2】

【0018】
スキーム1において、式(I)の化合物は、随意に酸又は塩基(塩基は、好ましくはトリエチルアミンのような三級アミン塩基であり、酸は、好ましくは酢酸である)の存在下に、式(V)の2−ヒドロキシエチルヒドラジン又はその塩若しくは水和物と式(II)の化合物の縮合により製造することができる。典型的な手順において、酢酸のような好適な溶媒中の式(II)の化合物の溶液を式(V)のヒドラジン又はその塩若しくは水和物と、そして使用するならば、適切な酸又は塩基で、室温〜溶媒の還流温度の温度で処理する。好ましい手順において、該反応は、室温で行う。
【0019】
式(II)の化合物の機能的同等物もこの反応に使用してよい。これには、LとLがそれぞれ、それぞれの好適な脱離基、好ましくは−N(C〜Cアルキル)、最も好ましくは−N(CHである、式(VI)又は(VII)の化合物が含まれる。
【0020】
【化3】

【0021】
このように、式(I)の化合物は、随意に酸又は塩基(塩基は、好ましくはトリエチルアミンのような三級アミン塩基であり、酸は、好ましくは酢酸である)の存在下に、式(V)の化合物又はその塩若しくは水和物と式(VI)又は(VII)の化合物の縮合により製造することができる。典型的な手順において、エタノールのような好適な溶媒中の式(VI)又は(VII)の化合物の溶液を式(V)の化合物又はその塩若しくは水和物と、そして使用するならば、適切な酸又は塩基で、室温〜溶媒の還流温度の温度で処理する。好ましい手順において、反応混合物は、還流で加熱する。
【0022】
がジメチルアミノである式(VI)の化合物は、上昇温度、好ましくは約100℃での、好適に置換されたホルムアミドアセタールと式(VIII)の化合物の反応により製造することができる。Lがジメチルアミノである式(VII)の化合物は、同じ条件下での式(IX)の化合物の反応により製造することができる。
【0023】
【化4】

【0024】
式(VIII)の化合物は、市販品を利用するか、又は式(X):
【0025】
【化5】

【0026】
の化合物の式(XI):
【0027】
【化6】

【0028】
の化合物との反応によって製造してもよい。
典型的な手順において、アセトンのような好適な溶媒中の式(XI)の化合物の溶液を炭酸セシウムのような好適な塩基と式(X)の化合物で処理する。好ましい手順において、この反応混合物を例えば還流で加熱する。随意に、ヨウ化ナトリウム又はヨウ化テトラブチルアンモニウムのような求核触媒を加えてよい。
【0029】
式(IX)の化合物は、市販品を利用するか、又は式(XII):
【0030】
【化7】

【0031】
の化合物と式(XI)の化合物より、式(VIII)の化合物を式(X)の化合物より製造し得るのと同じやり方で製造してもよい。
式(II)の化合物は、式(III)の化合物の式(XI)の化合物との反応により製造することができる。
【0032】
典型的な手順において、アセトンのような好適な溶媒中の式(III)の化合物の溶液を式(XI)の化合物と炭酸カリウム若しくはセシウムのような好適な塩基で処理し、好ましくは、還流で加熱する。随意に、ヨウ化ナトリウム又はヨウ化テトラブチルアンモニウムのような求核触媒を加えてよい。
【0033】
式(III)の化合物は、市販品を利用するか、又は式(IV)の化合物の塩素化試薬との反応によって製造してもよい。典型的な手順において、アセトニトリルのような好適な溶媒中の式(IV)の化合物の冷却溶液を最初に臭化テトラブチルアンモニウムとクロロトリメチルシランで、次いで乾燥ジメチルスルホキシドで処理する。別の典型的な手順において、式(IV)の化合物を、随意にジクロロメタンのような好適な溶媒の存在下に、塩化スルフリルで処理する。
【0034】
式(I)の化合物はまた、式(XIII):
【0035】
【化8】

【0036】
のピラゾールの式(XIV):
Lg−CHCHOH (XIV)
のアルキル化剤又はその保護化誘導体との反応により製造してよい。
【0037】
典型的な手順において、エタノール又はN,N−ジメチルホルムアミドのような好適な溶媒中の式(XIII)のピラゾールの溶液を保護化ヒドロキシエチルブロミドのような式(XIV)のアルキル化剤とナトリウムエトキシド又は水素化ナトリウムのような塩基で処理し、0℃〜溶媒の還流温度の温度で加熱する。好ましい組合せは、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド、塩基として水素化ナトリウム、温度として0℃、そしてアルキル化剤として2−(2−ブロモエトキシ)テトラヒドロ−2H−ピランである。
【0038】
当業者により理解されるように、式(XIII)のピラゾールのアルキル化において、式(XIV)の化合物のOH基を保護することが必要であるか又は望ましい場合があり、この場合、式(I)の化合物は、−OP基(ここで、Pは、好適な保護基である)を担う対応化合物の脱保護化により最終的に製造される。好適な保護基の例は、当業者に明らかであるが、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、「有機合成の保護基(Protecting groups in Organic Synthesis)第2版」Theodora W. Green and Peter G. M. Wuts 著(1991)ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(特に、ヒドロキシル基の保護に関する10〜118頁)を参照のこと。−OP基を担うこうした化合物は、上記に記載の経路を、必要な変更を加えて使用して、製造することができる。
【0039】
式(IV)及び(V)の化合物は、市販品を利用するか、文献より知るか、又は当業者によく知られた方法により容易に製造する。
本発明の化合物は、単独で投与することができるが、一般的には、企図される投与経路と標準的な製剤実技に関して選択される、好適な医薬賦形剤、希釈剤又は担体と混合して投与される。
【0040】
例えば、本発明の化合物は、即時、遅延、修飾、持続、パルス又は制御放出適用のために、芳香剤又は着色剤を含有し得る錠剤、カプセル剤、多粒子剤、ゲル剤、フィルム剤、丸剤(ovules)、エリキシル剤、溶液剤又は懸濁液剤の形態で、経口、頬内又は舌下に投与することができる。本発明の化合物はまた、速分散性又は速溶解性の剤形として、又は高エネルギー分散液の形態において、又は被覆粒子として投与してよい。本発明の化合物の好適な製剤は、所望により、被覆型でも、非被覆型でもよい。
【0041】
そのような固体の医薬組成物、例えば、錠剤は、微結晶性セルロース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、グリシン及びデンプン(好ましくは、トウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカデンプン)のような賦形剤、ナトリウムデンプングリコラート、クロスカルメロースナトリウム及びある種の複合ケイ酸塩のような崩壊剤、並びにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ショ糖、ゼラチン及びアカシアのような造粒結合剤を含有してよい。追加的に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル及びタルクのような滑沢剤を含めてよい。
【0042】
一般例
錠剤の製剤は、典型的には、0.01mg〜500mgの活性化合物を含有し、一方、錠剤の充填重量は、50mg〜1000mgに及ぶ場合がある。10mg錠剤の製剤の例を以下に例示する:
成分 %(w/w)
本発明の化合物 10.000
乳糖 64.125
デンプン 21.375
クロスカルメロースナトリウム 3.000
ステアリン酸マグネシウム 1.500
薬物活性に準じて調整する量
錠剤は、標準法、例えば直接圧縮又は湿式若しくは乾式造粒法により製造する。錠剤の芯は適切な保護膜でコートしてよい。
【0043】
類似タイプの固体組成物は、ゼラチン又はHPMCカプセル剤中の充填剤としても利用してよい。これに関して好ましい賦形剤には、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖、又は高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。水性懸濁液剤及び/又はエリキシル剤では、本発明の化合物を様々な甘味剤又は芳香剤、着色物質又は色素と、乳化剤及び/又は懸濁剤と、そして水、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリンのような希釈剤と、そしてこれらの組合せと組み合わせてよい。
【0044】
本発明の化合物はまた、非経口的に、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、鞘内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内又は皮下に投与してよく、それらを注入又は無針注射の技術により投与してもよい。そのような非経口投与では、それらは無菌の水溶液剤の形態で最もよく使用され、それには、他の物質、例えばこの溶液を血液と等張にするのに十分な塩又はグルコースを含めてよい。この水溶液剤は、必要であれば、好適に緩衝化(好ましくは、3〜9のpHへ)すべきである。好適な非経口製剤の無菌条件下での調製は、当業者によく知られた標準製剤技術により容易に達成される。
【0045】
ヒト患者への経口及び非経口投与では、本発明の化合物の1日投与量レベルは、通常、0.01〜30mg/kg、好ましくは0.01〜5mg/kg(単回量又は分割量で)であろう。
【0046】
このように、本発明の化合物の錠剤又はカプセル剤は、ある時点で1回又は2回以上を適宜投与するための1〜500mgの活性化合物を含有してよい。個別の患者に最も適している実際の投与量を決定するのは、どんな場合でも医師であり、それは、特別な患者の年齢、体重及び応答に伴って変化するものである。上記の投与量は、平均的な症例の例示である。当然ながら、より高いか又はより低い投与量が有利である個別の事例もあり、そのようなものも本発明の範囲内にある。当業者は、ある状態の治療において、本発明の化合物が、必要とされるか又は所望されるように、単回用量として服用される場合があることを理解されよう。
【0047】
本発明の化合物は、経鼻又は吸入により投与してもよく、簡便には、好適な推進剤(propellant)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134A[登録商標])又は1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA[登録商標])のようなヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素、又は他の好適なガスの使用を伴うか又は伴わずに、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー又はネブライザーより乾燥粉末吸入器又はエアゾールスプレーの表出形態で送達される。加圧エアゾールの場合、投与量の単位は、目盛量を送達する栓を提供することによって決定することができる。加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、又はネブライザーは、例えば、エタノール及び推進剤の混合物を溶媒として使用し、さらに滑沢剤、例えばトリオレイン酸ソルビタンを含有し得る、活性化合物の溶液又は懸濁液を含有してよい。吸入器又は通気器に使用のカプセル剤及びカートリッジ剤(例えば、ゼラチンより作製される)は、本発明の化合物と乳糖又はデンプンのような好適な粉末基剤の粉末混合物を含有するように製剤化することができる。
【0048】
あるいは、本発明の化合物は、坐剤又はペッサリーの形態で投与してよく、またそれらは、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、溶液剤、クリーム剤、軟膏剤又は粒子散剤の形態で局所適用してもよい。本発明の化合物は、例えば、皮膚パッチ剤の使用により、皮膚からでも経皮的にも投与してよい。それらは、肺や直腸の経路より投与してもよい。
【0049】
それらは、眼の経路より投与してもよい。眼科使用では、本化合物は、等張でpH調整した無菌の生理食塩水中の微粒子化した懸濁液剤として、又は、好ましくは、塩化ベンジルアルコニウムのような保存剤と随意に組み合わせた、等張でpH調整した無菌の生理食塩水中の溶液剤として製剤化することができる。あるいは、それらは、ワセリンのような軟膏に製剤化してよい。
【0050】
皮膚への局所適用では、本発明の化合物は、例えば、以下の1以上との混合物中に懸濁又は溶解した活性化合物を含有する好適な軟膏剤として製剤化することができる:鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水。あるいは、それらは、例えば以下の1以上の混合物に懸濁又は溶解した好適なローション剤又はクリーム剤として製剤化してよい:鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水。
【0051】
本発明の化合物は、シクロデキストリンと組み合わせて使用してもよい。シクロデキストリンは、薬物分子と封入及び非封入複合体を形成することが知られている。薬物−シクロデキストリン複合体の形成は、薬物分子の溶解性、溶解速度、バイオアベイラビリティ及び/又は安定特性を改善する可能性がある。薬物−シクロデキストリン複合体は、ほとんどの剤形及び投与経路に概して有用である。薬物との直接複合化に代わるものとして、シクロデキストリンは、補助添加剤として、例えば担体、希釈剤又は可溶化剤として使用してよい。α、β及びγ−シクロデキストリンが最も一般的に使用され、好適な例がWO−A−91/11172、WO−A−94/02518及びWO−A−98/55148に記載されている。
【0052】
本明細書における治療へのあらゆる言及には、治癒的、緩和的及び予防的治療が含まれることを理解されたい。
経口投与が好ましい。
【0053】
本発明の範囲内に含まれるのは、本発明の化合物の1以上の追加治療薬剤との同時投与と、本発明の化合物を1以上の追加治療薬剤とともに含有する組成物の態様である。そうした組合せ療法は、あらゆる単独療法へ抵抗性の株系へ速やかに進化し得るHIVと関連するレトロウイルスによる感染症の予防及び/又は治療に特に有用である。あるいは、本発明の化合物で治療される疾患から生じるか又はそれに付随する疾患及び状態を治療するのに追加の治療薬剤が望ましい場合もある。例えば、HIV又は関連レトロウイルスの感染症の治療においては、治療される患者の免疫易感染性状態の結果として起こる日和見感染症、新生物や他の状態を追加的に治療することが望ましい場合がある。
【0054】
本発明の好ましい組合せには、本発明の化合物と以下の1以上での同時又は連続治療が含まれる:
(a)アバカビル、アデフォビル、ジダノシン、ラミブジン、スタブジン、ザルシタビン及びジドブジンのような逆転写酵素阻害剤;
(b)カパビリン、デラビルジン、エファビレンツ、及びネビラピンのような非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤;
(c)インジニビル、ネルフィナビル、リトナビル、及びサキナビルのようなHIVプロテアーゼ阻害剤;
(d)TAK−779又はUK−427,857のようなCCR5アンタゴニスト;
(e)AMD−3100のようなCXCR4アンタゴニスト;
(f)L−870,810又はS−1360のようなインテグラーゼ阻害剤;
(g)T−20のようなウイルス融合の阻害剤;
(h)トリジビル、KNI−272、アムプレナビル、GW−33908、FTC、PMPA、MKC−442、MSC−204、MSH−372、DMP450、PNU−140690、ABT−378、KNI−764、DPC−083、TMC−120又はTMC−125のような研究途上薬;
(i)フルコナゾール、イトラコナゾール又はボリコナゾールのような抗真菌剤;又は
(j)アジスロマイシンのような抗菌剤。
【0055】
本発明の化合物の逆転写酵素阻害剤としての活性は、以下のアッセイを使用して測定することができる。
HIV−1逆転写酵素の酵素阻害
大腸菌(Escherichia Coli)における発現により入手した、精製組換えHIV−1逆転写酵素(RT,EC,2.7.7.49)を使用して、ポリ(rA)−オリゴ(dT)逆転写酵素[3H]−SPA酵素アッセイ系(アマーシャム NK9020)又は[3H]−フラッシュプレート酵素アッセイ系(NEN−SMP103)のいずれか一方を使用して、製造業者の推奨法に従って、多数の試料についてアッセイするための96穴プレートアッセイ系を確立する。化合物を100% DMSOに溶かし、適切な緩衝液で5%の最終DMSO濃度へ希釈する。阻害活性は、DMSO対照に対する阻害比率で表す。化合物が逆転写酵素を50%阻害するときの濃度を化合物のIC50として表す。
【0056】
実施例1の化合物は、上記の手順に従って試験するとき、295ナノモル濃度のIC50値を有した。
本発明の化合物の代謝は、以下のアッセイを使用して測定することができる。
【0057】
A.ヒト肝ミクロソーム及びSupermix(登録商標)における代謝
本発明の化合物のミクロソーム及びSupermix(登録商標)における代謝易損性は、以下のようにアッセイすることができる。
【0058】
ミクロソーム分画をいくつかのヒト肝臓より単離して、P450含量を決定する。Supermix(登録商標)は、Gentestより入手する。50mMリン酸緩衝液(pH7.4)、5mM MgCl、1mM NADP、並びにイソクエン酸及びイソクエン酸デヒドロゲナーゼからなるNADPH産生系を含有するインキュベーション媒体へヒトミクロソーム(0.5μM シトクロムP450)とSupermix(登録商標)(0.05μM シトクロムP450)を加える。基質溶液は1μMであり、インキュベーションを37℃で1時間行う。この時間を通していくつかの時点で試料を採取し、hplc−ms−msアッセイを使用して解析する。
【0059】
実施例1の化合物は、上記の手順に従って試験するとき、>120分のt1/2値を有した(ヒトミクロソームとSupermix(登録商標)の両方で)。
B.ヒト肝細胞における代謝
本発明の化合物のヒト肝細胞における代謝易損性は、以下のようにアッセイすることができる。
【0060】
低温保存したヒト肝細胞をインビトロ・テクノロジーズ(In vitro Technologies)社より入手する。この肝細胞を融解し、100万個の細胞/50%クレブス−ハインスライト緩衝液(10%ウシ胎仔血清を含有する50%ウィリアムズE培地)1mlで懸濁させる。基質濃度は3μMであり、インキュベーションを37℃で3時間行う。この時間を通していくつかの時点で試料を採取し、hplc−ms−msアッセイを使用して解析する。
【0061】
実施例1の化合物は、上記の手順に従って試験するとき、<9ml/分/kgの未結合肝細胞クリアランス値を有した。
このように、本発明は以下を提供する:
(i)式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体;
(ii)式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体の製造の方法;
(iii)式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体が製剤的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と一緒に含まれる医薬組成物;
(iv)医薬品として使用の、式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は組成物;
(v)逆転写酵素の阻害剤又は変調剤として使用の、式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は組成物;
(vi)HIV又は遺伝子関連レトロウイルスの感染症、又は生じる後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療における使用の、式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は組成物;
(vii)式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は組成物の、逆転写酵素阻害又は変調活性を有する医薬品の製造への使用;
(viii)式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は組成物の、HIV又は遺伝子関連レトロウイルスの感染症、又は生じる後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療用医薬品の製造への使用;
(ix)式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は組成物の有効量を投与することを含んでなる、HIV又は遺伝子関連レトロウイルスの感染症、又は生じる後天性免疫不全症候群(AIDS)を治療する方法;
(x)本明細書に開示する特定の新規中間体。
【0062】
以下の実施例は、式(I)の化合物の製法を例示する。そこで使用する特定の中間体の合成は、実施例に続く「製法」セクションに記載する。
H−核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、すべての事例で仮説の構造に一致していた。主要ピークを明示するための慣用の略号を使用して、特徴的な化学シフト(δ)をテトラメチルシランからの百万分率(ppm)下方磁場で示す:例えば、s,一重項;d,二重項;t,三重項;q,四重項;m,多重項;br,ブロード。以下の略号を使用した:HRMS,高解像質量分析法;hplc,高速液体クロマトグラフィー;nOe,核オーバーハウザー効果;m.p.,融点;CDCl,重水素クロロホルム;D−DMSO,重水素ジメチルスルホキシド;CDOD,重水素メタノール。薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用した場合、それは、シリカゲル60 F254プレートを使用するシリカゲルTLCを意味し、Rは、TLCプレート上での化合物の移動距離を溶媒フロントの移動距離で割ったものである。
【0063】
実施例1
5−{[3−シクロプロピル−1−(2−ヒドロキシエチル)−5−メチル−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}イソフタロニトリル
【0064】
【化9】

【0065】
製法7からのジケトン(4.1g,15.4ミリモル)の酢酸(40ml)溶液へ窒素下に室温で2−ヒドロキシエチルヒドラジン(1.15ml,16.9ミリモル)を加えた。18時間撹拌した後で、この混合物を減圧で濃縮し、酢酸エチル:ペンタン(容量で50:50〜100:0へ変化させる)で溶出させるシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより残留オイルを精製して、さらなる精製を必要とする2つの位置異性体の試料を得た。
【0066】
低極性分画を黄色い固形物(1.2g)として単離し、その試料(815mg)をトルエン(5ml)からの再結晶により精製して、表題化合物(600mg)を無色の針状物として得た。この材料の試料(580mg)を、95:5 水:アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸水溶液)及びアセトニトリル(0〜1分 100:0、次いで1分にわたり70:30へ変化させて18分間、次いで1分にわたり100:0へ変化させる)で溶出させるLuna C8(II)150x21.2mm 10μmカラムを使用する分取用HPLCによりさらに精製して、表題化合物の試料を得た。ジクロロメタン(50ml)に溶かし、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(50ml)で洗浄することによって、この材料から残存する酸をなくした。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧で濃縮してフォーム(270mg)を得て、これをトルエン(5ml)より再結晶させて、表題化合物の試料(265mg)を無色の針状物として得た。M.p.127〜128℃。
【0067】
【化10】

【0068】
LRMS(大気圧化学イオン化):m/z[MH]309。
微量元素分析:実測値 C,66.14;H,5.24;N,18.15。C1716 理論値 C,66.22;H,5.23;N,18.17%。
【0069】
位置異性体はnOE NMRにより確定し、X線結晶法により明確に同定した。
高極性分画は、酢酸エチル:トルエン(容量で50:50)で溶出させるシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーによりさらに精製して、5−{[5−シクロプロピル−1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチル−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}イソフタロニトリル(以下の構造):
【0070】
【化11】

【0071】
を白い固形物(90mg)として得た。M.p.129〜130℃。
【0072】
【化12】

【0073】
LRMS(大気圧化学イオン化):m/z[MH]309。
実施例2
5−{[3−シクロプロピル−1−(2−ヒドロキシエチル)−5−メチル−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}イソフタロニトリル
製法9からのピラゾール(250mg,0.64ミリモル)のメタノール(6ml)撹拌溶液へパラ−トルエンスルホン酸(12mg,0.06ミリモル)を加えた。18時間後、この反応混合物を濃縮し、残渣を10%炭酸カリウム水溶液(20ml,w/v)とジクロロメタン(20ml)の間に分画した。分離した水層をジクロロメタン(2x20ml)で洗浄し、合わせた有機成分を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、表題化合物(195mg)を薄黄色いオイルとして得て、さらに精製せずに使用した。
【0074】
H NMR(400mHz,CDCl)は、上記の記載に一致した。
LRMS(サーモスプレー):m/z[MH]309。
製法1
1,3−ジブロモ−5−メトキシベンゼン
【0075】
【化13】

【0076】
3,5−ジブロモフルオロベンゼン(5.00g,39.6ミリモル)(アルドリッチ)のN,N−ジメチルホルムアミド(95ml)撹拌溶液へ窒素下に0℃でナトリウムメトキシド(メタノール中4.5M溶液の8.80ml,39.6ミリモル)を滴下した。この反応物を温めて室温とし、1時間撹拌してから,減圧で濃縮した。残渣をエーテル(500ml)に溶かし、生じた溶液を水(3x300ml)と塩水(300ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧で濃縮して、表題化合物(5.13g)を白い固形物として得た。
【0077】
【化14】

【0078】
LRMS(サーモスプレー):m/z[MH]266。
微量元素分析:実測値 C,31.56;H,2.29。COBr 理論値 C,31.62;H,2.27%。
【0079】
製法2
3,5−ジシアノメトキシベンゼン
【0080】
【化15】

【0081】
製法1の臭化物(38.0g,143ミリモル)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(9.3g,16.8ミリモル)及びシアン化亜鉛(20.0g,172ミリモル)のN,N−ジメチルアミド(300ml)撹拌溶液へ窒素下に室温でトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(6.53g,7.15ミリモル)を1分量で加えた。この反応物を100℃で14時間加熱して、室温へ冷やした。水(1500ml)を加え、この混合物を酢酸エチル(3x500ml)で抽出した。合わせた有機物を濾過し、濾液を水(500ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧で濃縮した。生じた固形物をトルエン(1000ml)で摩砕して、表題化合物(18.0g)を黄褐色の固形物として得た。
【0082】
【化16】

【0083】
製法3
3,5−ジシアノヒドロキシベンゼン
【0084】
【化17】

【0085】
三塩化アルミニウム(32.4g,243ミリモル)のジクロロメタン(250ml)撹拌懸濁液へ窒素下に0℃で製法2のニトリル(9.60g,60.7ミリモル)を少しずつ加えた。この懸濁液を45℃まで加熱して、6日間撹拌した。この反応物を室温へ冷やし、氷(450ml)上へ慎重に注いだ。濃塩酸(450ml)を滴下し、生じた懸濁液を室温で10分間撹拌した。生じた固形物を濾過により採取し、水で洗浄し、五酸化リンで乾燥させて、H−NMRと微量元素分析によればおよそ11%の出発材料を含有する黄褐色の固形物として、表題化合物(7.83g)を得た。
【0086】
【化18】

【0087】
製法4
3−オキソブタン酸
【0088】
【化19】

【0089】
水酸化ナトリウム(37.9g,0.947モル)を水(770ml)に溶かし、室温で撹拌しながら、3−オキソ−ブタン酸メチルエステル(100g,0.861モル)へ20分にわたり滴下した。この反応物を18時間撹拌し、硫酸アンモニウム(700g)で不活性化し、氷冷しながら、濃塩酸(21.5ml)の水(250ml)溶液でゆっくり酸性化した。この反応混合物をジエチルエーテル(6x200ml)で抽出し、合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧で濃縮して、ケト:エノール互変異性体の混合物(H−NMRにおいて観測されるような)である薄黄色いオイルとして、表題化合物(58.2g)を得た。
【0090】
【化20】

【0091】
製法5
1−シクロプロピル−1,3−ブタンジオン
【0092】
【化21】

【0093】
メタノール(145ml)に懸濁したマグネシウムくず(3.04g,125ミリモル)を窒素下に1時間加熱して還流させ、室温へ冷やし、メタノール(25ml)に溶かした製法4からのβ−ケト酸(25.5g,250ミリモル)を氷冷しながら滴下した。この反応物を室温で1時間撹拌し、溶媒を減圧で除去して、この酸のマグネシウム塩を得た。この間に、シクロプロパン−カルボン酸(9.91ml,125ミリモル)をジメチルホルムアミド(200ml)に溶かし、カルボニルジイミダゾール(22.4g,138ミリモル)を窒素下に0℃で少しずつ加えた。これを1.5時間撹拌し、上記からのマグネシウム塩をジメチルホルムアミド(100ml)溶液として0℃で加えた。この反応物を室温で92時間撹拌し、この混合物を2M塩酸水溶液(85ml)へ注いでから、水(170ml)で希釈した。この混合物をジエチルエーテル(6x200ml)で抽出し、合わせた有機抽出物を塩水(200ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて、減圧で濃縮した。残留した橙色のオイルをペンタン:ジエチルエーテル(100:0を90:10〜80:20へ変化させる、容量による)で溶出させるシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物(7.39g)を黄色いオイルとして得た。
【0094】
【化22】

【0095】
LRMS(エレクトロスプレー):m/z[MNa]149。
製法6
2−クロロ−1−シクロプロピル−1,3−ブタンジオン
【0096】
【化23】

【0097】
臭化tert−ブチルアンモニウム(932mg,2.89ミリモル)の乾燥アセトニトリル(50ml)溶液へ窒素下に室温でクロロトリメチルシラン(18.9ml,174ミリモル)を加え、この混合物を0℃へ冷やした。次いで、アセトニトリル(36ml)中の製法5からのジケトン(7.3g,57.9ミリモル)を加え、乾燥ジメチルスルホキシド(12.3ml,174ミリモル)の滴下を続けた。この反応物を0℃で1.5時間撹拌し、この混合物を水(500ml)で希釈し、ジエチルエーテル(2x200mlと100ml)で抽出し、合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧で濃縮した。ペンタン:ジエチルエーテル(100:0を95:5〜90:10へ変化させる、容量による)で溶出させるシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより残留オイルを精製して、表題化合物(5.76g)を無色のオイルとして得た。
【0098】
【化24】

【0099】
LRMS(エレクトロスプレー):m/z[M−H]159。
製法7
5−[1−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソプロポキシ]イソフタロニトリル
【0100】
【化25】

【0101】
製法6からのジケトン(2.46g,15.4ミリモル)のアセトン(75ml)撹拌溶液へ窒素下に60℃で炭酸セシウム(6.01g,18.5ミリモル)と製法3からのフェノール(2.66g,18.5ミリモル)を加え、この反応物を3時間撹拌した。冷却後、アセトンを減圧で除去し、残渣を1N塩酸水溶液(100ml)とジクロロメタン(100ml)の間に分画した。水相を分離し、ジクロロメタン(50ml)で抽出した。合わせた有機成分を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧で濃縮して、表題化合物(4.2g)をクリーム色の固形物として得た。
【0102】
【化26】

【0103】
LRMS(エレクトロスプレー):m/z[M−H]267。
製法8
5−[(3−シクロプロピル−5−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)オキシ]イソフタロニトリル
【0104】
【化27】

【0105】
製法7からのジケトン(1.50g、5.60ミリモル)の酢酸(22ml)溶液へ窒素下に室温でヒドラジン水和物(298μl,6.16ミリモル)を加えた。50℃で18時間撹拌した後で、この混合物を冷やして室温とし、減圧で濃縮した。残渣を10%炭酸カリウム水溶液(50ml)とジクロロメタン(50ml)の間に分画した。分離した水層をジクロロメタン(2x50ml)で2回洗浄した。合わせた有機成分を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧で濃縮して、薄黄色いオイルを得た。この粗生成物の混合物をペンタン:酢酸エチル(75:25〜67:33へ変化させる、容量による)で溶出させるシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物(1.20g)を薄黄色のオイルとして得た。
【0106】
【化28】

【0107】
LRMS(サーモスプレー):m/z[MH]260。
製法9
5−({3−シクロプロピル−5−メチル−1−[2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)エチル]−1H−ピラゾール−4−イル}オキシ)イソフタロニトリル
【0108】
【化29】

【0109】
製法8からのピラゾール(420mg,1.59ミリモル)のジメチルホルムアミド(4ml)撹拌溶液へ0℃で水素化ナトリウム(鉱油中60%(w/w)懸濁液の70mg)を加えた。添加が完了した後で、冷却浴を外し、この混合物を室温で30分間撹拌した。2−(2−ブロモエトキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(264μl,1.75ミリモル)のジメチルホルムアミド(2ml)溶液を加えた。2時間後、水(20ml)の添加により反応混合物を不活性化し、ジクロロメタン(3x20ml)で抽出した。合わせた有機成分を塩水(2x20ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して黄色いオイルを得た。この粗生成物の混合物をジクロロメタン:メタノール(100:0〜98:2へ変化させる、容量による)で溶出させるシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、2つの位置異性体の混合物(594mg)を得た。2つの位置異性体をトルエン:酢酸エチル(100:0〜80:20、75:25、67:33及び50:50へ変化させる、容量による)で溶出させるシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより分離して、表題化合物(257mg)(低極性分画)とその位置異性体(90mg)(高極性分画)を得た。
【0110】
低極性分画
【0111】
【化30】

【0112】
LRMS(サーモスプレー):m/z[MH]393。
高極性分画
5−({5−シクロプロピル−3−メチル−1−[2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)エチル]−1H−ピラゾール−4−イル}オキシ)イソフタロニトリル
【0113】
【化31】

【0114】
LRMS(サーモスプレー):m/z[MH]393。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体。
【請求項2】
式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体が1以上の製剤的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と一緒に含まれる医薬組成物。
【請求項3】
1以上の追加の治療薬剤が含まれる、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
医薬品として使用するための、式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体、又は請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
逆転写酵素の阻害剤又は変調剤(modulator)として使用するための、式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体、又は請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
HIV又は遺伝子関連レトロウイルスの感染症、又は生じる後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療に使用するための、式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体、又は請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体、又は請求項2又は3に記載の医薬組成物の、逆転写酵素阻害又は変調活性を有する医薬品の製造における使用。
【請求項8】
式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体、又は請求項2又は3に記載の医薬組成物の、HIV又は遺伝子関連レトロウイルスの感染症、又は生じる後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療用医薬品の製造への使用。
【請求項9】
式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体、又は請求項2又は3に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含んでなる、HIV又は遺伝子関連レトロウイルスの感染症、又は生じる後天性免疫不全症候群(AIDS)を治療する方法。
【請求項10】
式(I)の化合物又はその塩、溶媒和物又は製剤的に許容される誘導体を製造する方法であって:
(A)式(II)、(VI)又は(VII):
【化2】

の化合物の式(V):
NNHCHCHOH (V)
の化合物又はその塩又は水和物との縮合;
(B)式(XIII):
【化3】

のピラゾールの式(XIV):
Lg−CHCHOH (XIV)
のアルキル化剤又はその保護化誘導体でのアルキル化;
(C)式(I)の化合物の保護化誘導体を脱保護すること;
そして方法(A)〜(C)のいずれか1つにより製造される式(I)の化合物を、その製剤的に許容される塩、溶媒和物又は誘導体へ随意に変換することを含む、前記方法。
【請求項11】
式(II)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)又は(XIII)の化合物。

【公表番号】特表2006−504792(P2006−504792A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571926(P2004−571926)
【出願日】平成15年9月8日(2003.9.8)
【国際出願番号】PCT/IB2003/003946
【国際公開番号】WO2004/024147
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】