説明

ICカードの偽造検知システム

【課題】安価なICメモリカードをプリペイドカードに適用する場合、確実に偽造を検知できるシステムを提供する。
【解決手段】データ記録部8とアドレス制御部9で構成し、データ記録部8をn個のブロックに分割し、各ブロックに1〜nのシーケンス番号を書き込む領域を設ける。ICカード1の発行時は、各ICカード1に付与する固有パターンとしてUID毎に異なるシーケンス番号の書き込みパターンを用意し、発行するICカード1のUIDによってパターンを選択し、そのパターンに従ってデータ記録部8の各ブロックにシーケンス番号を書き込む。ICカード1に付与された固有パターンとしてのシーケンス番号の書き込みパターンはUIDとともに検証時の参照データとしてPOS5のデータベース7に登録される。ICカード1の検証時は、UIDをキーにしてデータベース7から固有パターンをアクセスし、それとICカード1のシーケンス番号の書き込みパターンを比較・照合して偽造を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード型電子マネーのセキュリティ技術に関し、特にICメモリカードをプリペイドカードに適用する場合の偽造検知技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリペイドカードの偽造や変造による不正使用の被害は年々増加の一途を辿っており、大きな社会問題になっている。これらの問題はすべて記憶媒体に使用される磁気カードの情報が簡単に読み取られ、コピーされてしまうことに起因している。
プリペイドカードの残額をオフラインで管理(度数管理)する場合、センタにオンライン接続して残額を照会できないので、記録媒体に高度なセキュリティ機能を持たせる必要がある。
この問題を解決したのがICカードで、物理・論理・構造・運用の4階層からなる安全対策を備えて高い耐タンパ性を保ち、情報をメモリに記録してアクセスを制御し、高度な暗号技術により正規の手順を踏むことなく外部から直接メモリにアクセスして情報を読み出すことができないようになっている。
【0003】
ICカードにはICチップの中にメモリだけを内蔵して情報の読み出しや書き込みを行うICメモリカードと、CPUとメモリを内蔵して演算や認証処理を行うスマートカードがある。また、リーダ/ライタに外部端子を接続して通信する接触型と、リーダ/ライタに無線接続して通信する非接触型がある。
このうちスマートカードは製造コストが非常に高く、それを安価な磁気カードのように手軽に使い捨てや小額のプリペイドカードに適用するのは経済的に困難である。
これに対し、ICメモリカードは比較的安価で、使い捨てや小額のプリペイドカードにも使えるが、単純に情報の読み出しや書き込みだけを行うので、スマートカードに比べて偽造や変造に対するセキュリティ強度が落ちる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は以上のような点であり、本発明は、安価なICメモリカードをプリペイドカードに適用する場合、確実に偽造を検知できるシステムを提供することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため本発明は、ICカード型電子マネーの残額をPOS側で管理するシステムにおいて、取引情報を記録するICカードのデータエリアを複数のブロックに分割し、各ブロックにブロック毎に異なるシーケンス番号をランダムに書き込んで固有パターンとし、ICカード発行時はこの固有パターンを固体識別番号とともにPOS側のデータベースに登録し、ICカード検証時は前記固有パターンをデータベースから読み出し、ICカードから得られた固有パターンと照合して固体識別番号に対応する固有パターンであるか否かを検証して偽造を検知することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、ICカードから得られた固有パターンを事前にデータベースに登録した固有パターンと照合し、固体識別番号に対応する固有パターンであるか否かを判定して偽造を検知する。ICカードの固有パターンは偽造・複製ができても固体識別番号は偽造できないので、ICカードを偽造・複製した場合、ICカードから得られた固有パターンと事前にデータベースに登録した固体識別番号に対応する固有パターンが一致しなくなる。
従って、安価なICメモリカードに簡単なロジック回路を追加するだけで高い確度で偽造を検知できる。その結果、磁気カードに代わって使い捨てや小額のプリペイドカードにもICメモリカードを適用できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0008】
図1に、本発明を実施したICカードの構成図を示す。
ICカード1は、PVC、ABS、PETなどで作成したカード基板2にICチップ3とアンテナコイル4を一体に組み込み、POS5に接続するリーダ/ライタ6が発射する電波をアンテナコイル4で受信して励起電圧を発生し、これを整流してICチップ3の動作電源とする。また、受信した電波を復調してコマンド信号を取り出し、コマンド信号に応じたデータ処理を行った後、応答信号を変調して電力増幅することなく再発射する。
ICチップ3は、CPUなしのロジック回路31、ROM32、RAM33、FRAM34、通信インタフェース35などで構成する。
【0009】
ロジック回路31は、メモリ制御などによりROM32、RAM33、FRAM34間におけるデータ転送処理を行い、通信インタフェース35は、リーダ/ライタ6との間で非接触シリアルデータ伝送処理を行う。
ROM32は、ICチップ3の固体識別番号であるUIDを格納するための読み出し専用のメモリで、ICチップ3の製造時に直接回路を焼き付ける。そのためUIDの書き換えには同じ製造設備を必要とするので偽造ができず、高い真正性が保証されている。
RAM33は、一時的なデータを読み書きするためのワークメモリである。
FRAM34は、電源が供給されなくてもデータを保持でき、電子マネーの取引情報を記録するために使用する書き込み可能な不揮発性メモリである。
【0010】
図2に、本発明を実施した取引情報を記録するデータエリアの構成図を示す。
データエリアは、データ記録部8とアドレス制御部9で構成し、データ記録部8をn(図の例では12)個のブロックに分割し、各ブロックに1〜n(図の例では1〜12)のシーケンス番号を書き込む領域(図の例ではブロックの先頭)を設ける。
各領域にはブロック毎に異なるシーケンス番号をランダムに書き込み、シーケンス番号の若い(または古い)ブロックから順にデータの書き込みを行う。
【0011】
ICカード1の発行時は、各ICカード1に付与する固有パターンとしてUID毎に異なるシーケンス番号の書き込みパターンを用意し、発行するICカード1のUIDによってパターンを選択し、そのパターンに従ってデータ記録部8の各ブロックにシーケンス番号を書き込む。このときn個のブロックに対するシーケンス番号の書き込みパターンの数は、n!(図の例では12!=479001600)となる。
【0012】
UIDをそのまま数として扱うと膨大な量になる場合は、例えばUIDの上位nビット、下位nビット、あるいはUIDをnで割った数などを用いて数を圧縮する。
ICカード1に付与された固有パターンとしてのシーケンス番号の書き込みパターンはUIDとともに検証時の参照データとしてPOS5のデータベース7に登録される。
ICカード1の検証時は、UIDをキーにしてデータベース7から固有パターンをアクセスし、それとICカード1のシーケンス番号の書き込みパターンを比較・照合して偽造を検知する。
前述したようにUIDは偽造ができず、偽造・複製ができるのは固有パターンとしてのシーケンス番号の書き込みパターンだけなので、攻撃者が固有パターンを偽造・複製しても必ず事前にデータベース7に登録したUIDとの対応関係が崩れ、その結果偽造を検知できる。
【0013】
アドレス制御部9は、カレント部91とNEXT部92で構成し、最新の取引情報を記録したブロックをカレント部91がポイントし、次回の取引情報を記録すべきブロックをNEXT部92がポイントする。また、アプリケーション毎にエリアを区分し、それぞれのエリアを使用してアプリケーション毎に異なるアドレス管理ができるようにする。
【0014】
図3に、本発明を実施したオフライン取引処理の流れ図を示す。
取引処理は、POS5に取引金額を入力してリーダ/ライタ6にICカード1をかざすことから始まる。
まず、POS5がリーダ/ライタ6を介してICカード1からUIDとデータエリアの記録情報を読み取る(ステップ101)。
次に、読み取ったUIDの妥当性を検証し、妥当であればICカード1の正当性を認証し、そうでなければ否認する(ステップ102)。
妥当性の検証は、読み取ったUIDの識別符号がその電子マネーシステムに割り当てられたもであるかを確認して行う。
次に、読み取ったデータエリアの記録情報を秘密鍵で復号化し、データ記録部8のブロックを先頭から順にサーチしてシーケンス番号の書き込みパターンを抽出する(ステップ103)。
次に、UIDをキーにしてデータベース7を検索し、対応する固有パターンをアクセスする(ステップ104)。
次に、この固有パターンとステップ103で抽出したシーケンス番号の書き込みパターンを比較・照合し、一致すればICカード1の正当性を認証し、一致しなければ否認する(ステップ105)。
UIDの固有パターンと一致しない書き込みパターンが検出された場合、そのパターンで作られた偽造品や複製品が大量に出回る恐れがあるとして後日そのパターンをセンタに転送し、センタから各POS5に対してそのパターンで書かれたICカード1の使用停止通知を行う。
次に、アドレス制御部9のカレント部91とNEXT部92が指し示すデータ記録部8のブロックのシーケンス番号をそれぞれ特定し、順序が正常であればICカード1の正当性を認証し、正常でなければ否認する(ステップ106)。
【0015】
次に、カレント部91が指し示すデータ記録部8のブロックを特定し、このブロックの残額を取引金額で減額し、場所・日時・金額などの情報を付加して更新データを作成する(ステップ107)。
次に、この更新データを秘密鍵で暗号化し、これにNEXT部92が指し示すブロックのアドレスを付加してICカード1にデータの書込命令を送信する(ステップ108)。
これに対し、ICカード1がデータ記録部8の該当ブロックに更新データを書き込む。
【0016】
次に、NEXT部92のアドレスを秘密鍵で暗号化してカレントアドレスの書込命令を送信する(ステップ109)。
これに対し、ICカード1がカレント部91にこのアドレスを書き込む。
次に、NEXT部92が指し示すブロックのシーケンス番号を特定し、データ記録部8のブロックを先頭から順にサーチして次のシーケンス番号が存在するブロックを特定する(ステップ110)。
次に、このブロックのアドレスを秘密鍵で暗号化してNEXTアドレスの書込命令を送信する(ステップ111)。
これに対し、ICカード1がNEXT部92にこのアドレスを書き込む。
ICカード1にコプロなどの暗号処理回路を追加してアドレス制御部9の暗号化をICチップ3内で行えば、さらにセキュリティ強度が向上する。
また、アドレス制御部9を含むデータエリアの暗号化をリーダ/ライタ6で行うことも可能である。その場合、POS5における暗号化とは異なる仕組みにすればセキュリティ強度をより強化できる。
最後に、取引のあったICカード1のUIDと更新データをデータベース7に保存して処理を終了する(ステップ112)。
以上のUIDと更新データは後日センタに転送してセンタで管理する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を実施したICカードの構成図である。
【図2】本発明を実施した取引情報を記録するデータエリアの構成図である。
【図3】本発明を実施したオフライン取引処理の流れ図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ICカード
2 カード基板
3 ICチップ
31 ロジック回路
32 ROM
33 RAM
34 FRAM
35 通信インタフェース
4 アンテナコイル
5 POS
6 リーダ/ライタ
7 データベース
8 データ記録部
9 アドレス制御部
91 カレント部
92 NEXT部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカード型電子マネーの残額をPOS側で管理するシステムにおいて、
取引情報を記録するICカードのデータエリアを複数のブロックに分割し、
各ブロックにブロック毎に異なるシーケンス番号をランダムに書き込んで固有パターンとし、
ICカード発行時はこの固有パターンを固体識別番号とともにPOS側のデータベースに登録し、
ICカード検証時は前記固有パターンをデータベースから読み出し、
ICカードから得られた固有パターンと照合して固体識別番号に対応する固有パターンであるか否かを検証して偽造を検知することを特徴とするICカードの偽造検知システム。
【請求項2】
前記ICカードがCPUを内蔵せずにロジックでメモリを制御するICメモリカードであることを特徴とする請求項1記載のICカードの偽造検知システム。
【請求項3】
前記データエリアの記録情報はPOS側において書き込み時に暗号化され、読み出し時には復号化されることを特徴とする請求項1記載のICカードの偽造検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−114882(P2007−114882A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303388(P2005−303388)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(504170816)株式会社ICブレインズ (20)
【Fターム(参考)】