説明

ICタグ及びICタグの製造方法

【課題】小型化を実現でき、かつ、信頼性が高く歩留りのよいICタグ及びICタグの製造方法を提供する。
【解決手段】ICタグ10は、インレット100と、インレット100を底面に配置する凹部111を有する一次成形品11と、インレット100を封止する二次成形品12とを備え、非接触で外部機器と通信可能なものとした。このICタグ10は、インレット100を凹部111の底面111aに配置又は固定した一次成形品11を二次成形用金型710,720内に配置し、二次成形用樹脂R2をゲート721から圧入して、少なくとも凹部を充填してインレットを封止する二次成形品12を成形する。二次成形用金型710,720は、二次成形用樹脂R2を射出するゲート721の中心線h1がインレット100と交わらない位置に形成されているものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で外部機器と通信可能なICタグ及びICタグの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICタグは、RFID(Radio Frequency Identification)とも称され、個体の識別が可能な情報を保持するICチップを備え、専用の読み取り機を用いて、無線通信により非接触での情報の読み取りが可能となっている。ICタグは、小型であり、単体毎の認識が可能であることから、近年では、例えば、製品等の工場での工程管理や、流通情報の管理等、多岐にわたる分野において利用されている。
【0003】
また、ICタグは、使用される用途よっては高温や低温、高湿等の厳しい環境に置かれたり、外部から衝撃等を受けたりする場合がある。そのため、ICタグには、インサート成形等によりアンテナやICチップ等を樹脂によって外装し、これらを保護する形態となっているものがある。
従来、このようにICタグをインサート成形等により成形する場合、ICチップ及びICチップに接続されたアンテナ等、又は、これらを備えるインレットを配置する凹部(ポケット)を設けた一次成形品を作成し、凹部にインレット等を配置又は固定し、二次成形を行い封止するという方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−332116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、インレットが配置された一次成形品に対して二次成形用の樹脂を射出成形して封止し、ICタグを製造するとき、二次成形用の金型内に均一に樹脂を充填するために、射出される二次成形用の樹脂には、高い熱と圧力とがかけられている。
従来の樹脂製のフィルム状の基材に金属箔等によりアンテナが形成されたインレットは、基材の剛性が小さく、また、基材の耐熱温度が射出された二次成形用の樹脂の温度より低い場合がある。このことに起因して、従来の樹脂製のフィルム状基材を備えたインレットを用いた場合には、射出される二次成形用の樹脂の射出時の熱と圧力とによって、(1)インレットの基材が溶けたり、変形したりする、(2)インレットが流される等して基材がしわになる、(3)アンテナやチップが基材から分離する、(4)ICチップが破損する、(5)アンテナとICチップの接続不良が生じる等という問題があった。
【0006】
また、ICタグは、その用途に応じて、さらなる小型化が求められている。しかし、従来のフィルム状等の基材の一方の面に金属箔等でアンテナコイル(コイル状のアンテナ)を形成した単層構造のインレットを用いたICタグでは、アンテナコイルの内周面積を確保しながら十分な巻数を確保して所定のインダクタンス等を確保することが困難であり、ICタグの小型化の妨げとなっていた。
【0007】
本発明の課題は、小型化を実現でき、かつ、信頼性が高く歩留りのよいICタグ及びICタグの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、外部機器と非接触で通信可能なアンテナ部と、前記アンテナ部に接続されて前記アンテナ部を介して通信する情報を管理するICチップとを備えるインレット(100)と、前記インレットを底面(111a)に配置可能な凹部(111)を有する一次成形品(11)と、少なくとも前記凹部に充填され、前記インレットを封止する二次成形品(12)と、を備えるICタグであって、前記二次成形品(12)は、二次成形用樹脂(R2)を二次成形用金型(710,720,910,920)内に圧入するゲート(721,921)の形状に対応した形状を有するゲート部(121,221,321,421)を表面に備え、前記ゲート部の中心を通り、前記ゲート部が形成される面に垂直な直線(h0,h3)が、前記インレットと交差しないこと、を特徴とするICタグ(10,20,30,40)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載のICタグにおいて、前記アンテナ部は、少なくとも1枚の絶縁基板に形成されていること、を特徴とするICタグ(10,20,30,40)である。
請求項3の発明は、請求項1に記載のICタグにおいて、前記アンテナ部は、金属線を巻いた巻線アンテナであること、を特徴とするICタグである。
【0009】
請求項4の発明は、外部機器と非接触で通信可能なアンテナ部と、前記アンテナ部に接続されて前記アンテナ部を介して通信する情報を管理するICチップとを備えるインレット(100)と、前記インレットを底面(111a)に配置する凹部(111)を有する一次成形品(11)と、少なくとも前記凹部に充填され、前記インレットを封止する二次成形品(12)と、を備えるICタグの製造方法であって、前記インレットを、前記凹部の底面に配置する配置工程と、前記配置工程の後に、前記インレットを配置した前記一次成形品を二次成形用金型(710,720,910,920)内に配置し、二次成形用樹脂(R2)を二次成形用金型内に圧入して前記二次成形品を成形する二次成形工程と、を備え、前記二次成形工程において、前記二次成形用樹脂が射出される前記二次成形用金型のゲート(721,921)は、前記ゲートの中心線(h1,h3)が前記インレットと交差しない位置に設けられていること、を特徴とするICタグの製造方法である。
請求項5の発明は、請求項4に記載のICタグの製造方法において、前記ゲート(121,221,321,421)は、前記ICタグ(10,20,30,40)の厚み方向において、前記インレット(100)よりも垂直方向上側に位置すること、を特徴とするICタグの製造方法である。
請求項6の発明は、請求項4又は請求項5に記載のICタグの製造方法において、前記ゲート(121,221,321,421)の中心線(h1,h3)は、前記底面の法線方向に平行であること、を特徴とするICタグの製造方法である。
【0010】
請求項7の発明は、請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載のICタグの製造方法により製造されたICタグ(10,20,30,40)である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明によるICタグは、インレットと、一次成形品と、二次成形品とを備え、二次成形品は、二次成形用樹脂を圧入する二次成形用金型のゲートの形状に対応した形状を有するゲート部を表面に備え、このゲート部の中心を通りゲート部が形成される面に垂直な直線がインレットと交差しないので、二次成形品の射出成形に、ゲートから射出された二次成形用樹脂がインレットに与える熱や圧力による影響を抑えることができ、歩留りがよく信頼性の高いICタグとすることができる。
【0012】
(2)少なくとも1枚の絶縁基板にアンテナ部が形成されているので、フィルム状の基材に金属箔等を用いてアンテナ部を形成した従来のインレットに比べて剛性が高い。従って、インレットの横方向に設けられたゲートから二次成形用樹脂を圧入する場合にも、射出された二次成形用樹脂によってインレットが配置されるべき位置から流されたり、変形したり、しわになったり等といった不具合を防止できる。
また、アンテナ部が形成された絶縁基板を複数積層する場合には、上述の従来のインレットと同様の特性等を有したまま、より小型のインレットとすることができるので、ICタグの小型化を図ることができる。
【0013】
(3)アンテナ部は、金属線を巻いた巻線アンテナであるので、フィルム状の基材に金属箔等を用いてアンテナ部を形成した従来のインレットに比べて剛性が高い。従って、インレットの横方向に設けられたゲートから二次成形用樹脂を圧入する場合にも、射出された二次成形用樹脂によってインレットが配置されるべき位置から流されたり、変形したり、しわになったり等といった不具合を防止できる。
また、樹脂製のフィルム状の基材を用いていないので、二次成形用樹脂の熱によって基材が溶けたり、変形したりする等の不具合が生じない。
さらに、金属線の巻数等を適宜調節することにより、所望する周波数等を容易に調整できる。
【0014】
(4)本発明によるICタグの製造方法は、インレットと、一次成形品と、二次成形品とを備えるICタグの製造方法であって、インレットを、凹部の底面に配置する配置工程の後に、インレットを配置した一次成形品を二次成形用金型内に配置し、二次成形用樹脂を二次成形用金型内に圧入して二次成形品を成形する二次成形工程を備え、二次成形工程において用いられる二次成形用金型のゲートは、ゲートの中心線がインレットと交わらない位置に設けられている。従って、ゲートから射出された二次成形用樹脂が、射出時の高い熱と圧力とを有したままインレットに直接当たることを防止できる。よって、二次成形用樹脂の熱と圧力とに起因するインレットの破損等を防止でき、信頼性が高く歩留りのよいICタグを提供できる。
【0015】
(5)ゲートは、ICタグの厚み方向において、インレットよりも垂直方向上側に位置するので、射出された二次成形用樹脂の重さによってインレットが押さえられ、二次成形用金型内で浮かび上がることを防止でき、一次成形品の凹部の底面の所定の位置に確実に配置できる。
【0016】
(6)ゲートの中心線は、底面の法線方向に平行であるので、金型の作製が容易であり、生産コストを低減できる。
【0017】
(7)本発明によるICタグの製造方法により製造されたICタグであるので、小型化が可能であり、かつ、信頼性が高く歩留りのよいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態のICタグを説明する図である。
【図2】第1実施形態のICタグの製造方法(配置工程及び二次成形工程)を示す図である。
【図3】二次成形用金型のゲートの射出方向にインレットが配置されている状態を示す図である。
【図4】第2実施形態〜第4実施形態のICタグを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、図1を含め、以下に示す各図において、理解を容易にするために、適宜XYZ座標を設けた。
また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のICタグを説明する図である。
図1(a)は、第1実施形態のICタグ10の斜視図である。図1(b)は、ICタグ10をZ軸方向プラス側から見た図(平面図)であり、図1(b)中において、後述する一次成形品11の凹部111の底面111a及びインレット100等が破線で示してある。図1(c)は、ICタグ10を図1(b)に示すX軸に平行な矢印S1−S1で切断した断面図である。
ICタグ10は、リーダライタ等の外部機器と非接触で通信可能なRFIDである。このICタグ10は、一次成形品11、インレット100、二次成形品12等を備え、一次成形品11と二次成形品12との間にインレット100を内包する形態となっている。
また、ICタグ10は、略直方体形状であり、図1(b)に示すように、その平面形状(Z軸方向から見た形状)は、その寸法が約10mm×10mm〜20mm×20mmの範囲内であり、従来のカード型等のICタグに比べて非常に小型である。本実施形態のICタグ10は、略直方体形状であり、その平面形状が約10mm×10mm、全体の厚み(Z軸方向の寸法)が約3.8mmとなっている。
【0021】
インレット100は、不図示のアンテナ部が表面に形成された不図示の絶縁基板を複数積層した多層基板と、アンテナ部に接続された不図示のICチップ等とを備えており、例えば、特開2007−213514号公報に開示されるような多層基板型のインレットである。インレット100の表面は耐熱性を有するエポキシ樹脂やシリコーン等によって封止され、アンテナ部及びICチップが外部に露出しないように被覆されている。
アンテナ部は、外部機器と非接触で通信可能であり、絶縁基板の表面に形成されている。また、ICチップは、このアンテナ部に接続され、アンテナ部を介して外部機器と通信する情報を管理する機能を有しており、複数積層された絶縁基板の表面に配置されている。
このインレット100は、図1(c)に示すように、インレット100の表面をなす面100aと、後述の一次成形品11の凹部111の底面111aとが接した状態で配置又は固定される。この面100aは、アンテナ部が形成された絶縁基板の面に略平行な面である。
【0022】
インレット100は、その平面形状(図1(b)においてZ軸方向から見た形状)が略矩形状であって、その寸法が5mm×5mm〜15mm×15mmの範囲内であり、従来のカードタイプやスティックタイプのインレット等に比べて非常に小型である。本実施形態のインレット100は、その平面形状の寸法が約5.5mm×5.5mmであり、厚さ(Z軸方向の寸法)が0.8mmの略平板状ものを用いている。
また、本実施形態では、インレット100に用いられる絶縁基板は、その平面形状が約5.5mm×5.5mmの略矩形状であり、積層された多層基板の表面に配置されたICチップは、平面形状が約2.0mm×2.0mmの略矩形状であり、絶縁基板(すなわち、インレット100)の平面形状の面積に比して大きい面積を占めている。なお、ICチップとしては、平面形状が約0.4mm×0.4mm〜約2.0mm×2.0mmの範囲内で、所望する特性等に応じて、適宜選択して使用できる。
【0023】
なお、本実施形態のインレット100は、平面形状が略矩形状のものを用いたが、これに限らず、例えば略円形状等の形状のもの等を適宜選択して使用してよい。
また、インレット100は、ICチップが、積層された絶縁基板間に配置されたものを用いてもよい。
【0024】
一次成形品11は、略直方体形状であり、平面形状(図1(b)に示す、Z軸方向から見た形状)が略矩形状である。一次成形品11の一方の面(二次成形品12側の面)には、インレット100を配置する凹部111が形成され、凹部111の周囲は縁部112が形成されている。
凹部111は、断面形状(図1(c)に示す断面における形状)が略矩形状の有底の溝である。凹部111の底面111aの面積は、インレット100の面100aと略等しいかインレット100の面100aに比べて大きく、インレット100を底面111aに容易に固定又は配置可能である。この底面111aの平面形状は、本実施形態ではインレット100の面100aの形状に合わせて略矩形状としたが、例えば、インレット100の面100aが円形状であれば、それに合せて底面111aも円形状等としてもよいし、他の形状としてもよい。
【0025】
一次成形品11は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を材料とし、不図示の金型等を用いて射出成形することにより作製されている。
なお、本実施形態では、一次成形品11に用いる樹脂として、PPSを例示したが、これに限らず、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)や、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリカーボネート樹脂(PC)等、使用する環境や望まれる特性等に応じて、適宜様々な熱可塑性樹脂及びこれらを組み合わせた樹脂を選択して使用できる。また、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等、射出成形可能な熱硬化性樹脂を用いてもよい。
【0026】
二次成形品12は、インレット100が配置された凹部111を充填してインレット100を封止する樹脂成形品である。二次成形品12は、一次成形品11と同様の樹脂(本実施形態では、PPS)を用い、射出成形により作製されている。
なお、本実施形態では、一次成形品11と二次成形品12とは、同様の樹脂によって形成される例を示したが、一次成形品11と二次成形品12とが異なる樹脂によって形成されるものとしてもよい。
二次成形品12の表面には、ゲート部121が形成されている。このゲート部121は、後述する二次成形用金型710,720のゲート721の射出口721aや、射出口721aの周囲に形成された凸状のゲート逃げ部721bの形状に対応したバリ121bや凹み121hを有している。
ゲート部121は、二次成形品12の表面でありXY平面に平行な面122に形成され、外部に表出している。このゲート部121は、図1(b)に示すように、Z軸方向から見て、インレット100の領域の外側(すなわち、インレットとは重ならない領域)に形成されており、ゲート部121の中心を通り、ゲート部121が形成されている面122に垂直な直線h0は、インレット100とは交差しない。本実施形態では、ゲート部121は、図1(b)に示すように、面122において、Y軸方向において略中央であってX軸方向において外端部となる位置に形成されている。
【0027】
次に、第1実施形態のICタグ10の製造方法を説明する。
図2は、第1実施形態のICタグの製造方法(配置工程及び二次成形工程)を示す図である。
まず、インレット100と、予め射出成形等により作製された一次成形品11とを用意し、図2(a)に示すように、インレット100を一次成形品11の凹部111の底面111aに配置又は固定する(配置工程)。
次に、二次成形工程を行う。まず、インレット100を備えた一次成形品11を、二次成形用金型710,720内に配置する(図2(b)参照)。
このとき、二次成形用金型720に形成されたゲート721は、一次成形品11とは対向する面に形成されており、射出口721aの位置は、インレット100の表面よりも垂直方向上側(Z軸方向プラス側)である。また、ゲート721の中心線h1は、インレット100の面100a及び底面111aに対して略垂直である。なお、このゲート721の中心線h1は、ゲート721の中心を通り、射出方向に平行な直線であり、ICタグ10のゲート部121の中心を通りゲート部121が形成された面122に垂直な直線h0と一致する。
【0028】
次に、図2(c)に示すように、所定の温度まで加熱して溶融され、所定の圧力を付与された二次成形用樹脂R2(本実施形態では、PPS)が、ゲート721から所定の速度で二次成形用金型710,720内に射出される。二次成形用樹脂R2は、一次成形品11の縁部112に一旦当たる等してから二次成形用金型710,720内を流動し、凹部111を充填してインレット100を封止するように二次成形用金型710,720内に充填される。
そして、二次成形用金型710,720内に二次成形用樹脂R2を充填した後、ゲートを閉じて、図2(d)に示すように、二次成形用金型710,720に所定の圧力を付与しながら冷却する。これは、溶融状態の樹脂が冷却によって体積が若干収縮するので、収縮による変形を防ぐためである。この圧力の方向は、図2(c)に示す矢印P方向であり、インレット100の面100a及び凹部111の底面111aに略垂直な方向である。
冷却した後、図2(e)に示すように、二次成形用金型710,720から離型し、所定の表面処理等を行って、ICタグ10が完成する。
【0029】
ここで、仮に、二次成形用樹脂R2を射出する二次成形用金型のゲートが、インレット100の真上に配置された場合を説明する。
図3は、二次成形用金型810,820のゲート821の射出方向にインレット100が配置されている状態を示す図である。図3中に示す矢印は、二次成形用樹脂R2の流動方向である。
図3に示すように、このとき、ゲート821の中心線h2は、インレット100と交わる。そして、ゲート821から射出された二次成形用樹脂R2は、高温かつ高圧を有する状態でインレット100に直接当たる。
【0030】
インレット100は、耐熱性を有するエポキシ樹脂等で、その表面が封止されているが、ゲート821から射出された二次成形用樹脂R2の温度は、エポキシ樹脂等の封止樹脂の耐熱温度に対して、50℃から100℃以上高い温度となる場合が多い。例えば、本実施形態では、射出される二次成形用樹脂R2(PPS)は、約300℃まで加熱されるが、エポキシ樹脂の耐熱温度は、約250℃程度である。
そのため、二次成形用樹脂R2の熱によって、インレット100の封止樹脂が溶解又は劣化し、ICチップの耐熱温度(約250℃)を超える高温に、ICチップが晒される場合がある。
しかも、ゲート821から射出される二次成形用樹脂R2には、所定の速度で二次成形用金型810,820内を流動させる目的で、所定の圧力(射出圧力)が付与されている。この圧力は、本実施形態では、50MPa程度という大きな圧力となる。このような大きな圧力を有する二次成形用樹脂R2が、ゲート821からの射出によってインレット100及びインレット100内のICチップ等を直撃することとなる。
【0031】
このような高圧及び高温の二次成形用樹脂R2が、インレット100を直撃することによって、ICチップの破損やアンテナとICチップの接続不良や断線、アンテナの絶縁基板からの剥離、絶縁基板の破損や変形等が生じ、これにより、ICタグの良品率が下がり、歩留りが低下するという問題が生じる。
また、上述のようなインレット100の破損等を免れたとしても、ICチップとアンテナとの接続が不安定になったり、一部のアンテナが絶縁基板から剥離した状態となったりする等の不具合を有したままICタグとして製品化された場合には、ICタグの寿命は短いものとなり、製品としての信頼性が低下する。
【0032】
これに対して、本実施形態では、図2に示すように、ゲート721の中心線h1がインレット100と交わらない位置、すなわち、二次成形用樹脂R2の射出方向から見てインレット100の領域外となる位置に、ゲート721が設けられているので、二次成形用樹脂R2の圧入によるインレット100の破損や寿命の低下を防止できる。
従って、本実施形態によれば、信頼性が高く、歩留りのよいICタグ10とすることができ、そのようなICタグ10を容易に製造することができる。
また、ゲート721の位置がインレット100よりも垂直方向上側に設けられているので、圧入された二次成形用樹脂R2によってインレット100を上から押さえることができ、確実に底面111aに配置することができる。
【0033】
さらに、本実施形態のような多層基板型のインレット100を用いることにより、従来のフィルム状の基材の一面にアンテナを金属箔により形成した単層構造のインレットを用いる場合に比べ、ICタグ10をより小型化することができる。
そのうえ、絶縁基板をインレット100の基材として用いることにより、従来の樹脂製のフィルム状の基材等を用いるインレットに比べて、インレット自体の剛性が高くなり、射出された二次成形用樹脂R2の圧力(射出圧力)によって、インレットが流されたり、浮いたり、しわになったりすることがなく、ICタグ10の信頼性をより向上させることができる。
【0034】
(第2実施形態〜第4実施形態)
図4は、第2実施形態〜第4実施形態のICタグを説明する図である。
第2実施形態〜第4実施形態のICタグ20,30,40は、第1実施形態に示したICタグ10とは、二次成形品22,32,42のゲート部221,321,421の位置が異なる(すなわち、二次成形用金型のゲートの位置及びゲートの中心線の方向が異なる)点以外は、第1実施形態のICタグ10と略同様の形態である。従って、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図4には、第2実施形態〜第4実施形態のICタグとして、それぞれ、ICタグ20,30,40を示している。
【0035】
図4(a),(b)には、第2実施形態のICタグ20を示している。図4(a)は、第2実施形態のICタグ20の平面形状(Z軸方向プラス側から見た形状)を示し、図4(b)は、図4(a)に示す矢印S2−S2で切断した断面図である。この第2実施形態のICタグ20は、二次成形品22が突出部22Aを有し、その突出部22Aにゲート部221が形成されている。
突出部22Aは、図4(a),(b)に示すように、二次成形品22のZ軸方向に沿って一次成形品11とは反対側の面であって、X軸方向におけるICタグ20の端部であり、Y軸方向においてICタグ20の略中央となる位置に、X軸方向プラス側に曲線で構成される略三角形状に突出した形態となっている。なお、突出部22Aの形状は、上述の形態だけでなく、例えば、円形状や矩形状等、適宜選択して形成してよい。
この突出部22AのZ軸方向プラス側の面に、ゲート部221が設けられている。
【0036】
図4(c)は、二次成形用金型910,920内に、一次成形品11とインレット100を配置し、二次成形用樹脂R2を圧入している様子を示している。
本実施形態のICタグ20は、二次成形工程において、図4(c)に示すような二次成形用金型910,920を用いて作製される。
この二次成形用金型910,920のゲート921は、図4(c)に示すように、突出部22Aに対応する位置に形成されており、ゲート921の中心線h3は、インレット100と交わらない。
上述のような二次成形用金型910,920及びゲート921を用いることにより、二次成形品22の成形時には、二次成形用金型920のゲート921から圧入された二次成形用樹脂R2は、一度、二次成形用金型910の面911に当たって、射出時の圧力が低減され、その温度も射出時に比べて低下する。
これにより、本実施形態によれば、インレット100に高温及び高圧の二次成形用樹脂R2が直接当たることを防止でき、二次成形用樹脂R2の圧力及び熱がインレット100に与える影響を小さくすることができる。従って、二次成形工程でのインレット100の破損等を防止でき、信頼性が高く歩留りのよいICタグ20を提供することができる。
【0037】
図4(d)に示す第3実施形態のICタグ30の断面図が示されている。
この第3実施形態のICタグ30は、二次成形品32のゲート部321が、ICタグ30の表面であって、底面111aに平行な面に直交する面(Z軸に平行な面)322に形成されており、ゲート部321を通りゲート部321が形成された面322に垂直な直線h4は、インレット100と交差しない。
このICタグ30は、二次成形用金型のゲートが、インレット100よりもZ軸方向プラス側(垂直方向上側)であって、ゲートの中心線とインレット100とが交差しない位置に設けられており、また、ゲートの中心線がインレット100の面100a及び一次成形品11の底面111aに平行であるという特徴を備えた不図示の二次成形用金型を用いて成形されている。
ゲート部321の位置等がICタグ10の意匠や機能上問題ない場合等には、このような位置にゲート部321が形成されるような二次成形用金型を用いてICタグ30を作製してもよい。
【0038】
図4(e)に示す第4実施形態のICタグ40は、一次成形品41に形成された凹部の底面411aの面積がインレット100の面100aよりも大きく、インレット100と接しない余白部411bを有している。そのため、第4実施形態のICタグ40は、第1実施形態のICタグ10に比べて、ICタグ40自体の平面形状の大きさ(Z軸方向からみた形状の面積)が大きくなっている。
ゲート部421は、二次成形品42の表面であって、余白部411bに対応する位置に形成されており、ゲート部421を通りゲート部421が形成された面に垂直な直線は、インレット100と交差しない。
さほど小型化が重要視されない場合等には本実施形態のような形態とすれば、複雑な金型を用いることなく、射出された二次成形用樹脂R2の熱と圧力とがインレットに与える影響を低減することができる。
【0039】
(変形形態)
以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)各実施形態において、二次成形用樹脂R2を圧入する二次成形用金型のゲート721,921は、1点であり、これに対応する二次成形品12,22,32,42のゲート部121,221,321,421は、1箇所である例を示したが、これに限らず、例えば、2点以上のゲートから二次成形用樹脂R2を圧入してもよく、これに伴い、ゲート部は2箇所以上形成されてもよい。
このように複数のゲートから二次成形用樹脂R2を射出することにより、ショートモールド等の成形不良や、成形時のゲートからの距離に起因した二次成形品の強度の差等を防止できる。
【0040】
(2)各実施形態において、インレット100は、アンテナが形成された絶縁基板を複数積層した多層基板型のものを用いる例を示したが、これに限らず、例えば、アンテナが形成された絶縁基板を1枚用いたインレットとしてもよい。
また、絶縁基板等の基材を用いず、非接触通信可能銅線等の金属線を用いた巻線アンテナと、この巻線アンテナに接続されたICチップとから構成され、基材を有しないインレット等を用いてもよい。このとき、巻線アンテナの巻数や径等は、使用する最適周波数やICチップの端子等に基づいて適宜選択してよい。
【0041】
(3)各実施形態において、ICタグ10,20,30,40は、その平面形状(Z軸方向から見た形状)が略矩形の直方体形状である例を示したが、これに限らず、その平面形状は、略円形形状、略半円形状、略三角形形状や略六角形形状等の多角形形状等であってもよい。
【0042】
(4)各実施形態において、一次成形品の縁部112は、4辺とも同じ幅である例を示したが、これに限らず、例えば、二次成形品のゲート部に対向する一次成形品の縁部の幅を、他の縁部よりも太くして、一次成形品のゲート部を設け、一次成形品のゲート部に対向する位置に、二次成形品のゲートが形成される(すなわち、二次成形用金型のゲートが配置される)形態としてもよい。
また、各実施形態では、一次成形品11の凹部111を囲む4辺に、縁部112が形成される例を示したが、これに限らず、例えば、縁部112は、3辺のみ、又は、2辺のみに形成される形態とし、インレット100の角部と縁部112が形成する角部分とを合せる等により、インレット100の位置決めを可能とし、凹部111の底面111aに配置する形態としてもよい。
【0043】
(5)各実施形態において、一次成形品11及び二次成形品12は、ともに射出成形によって成形される例を示したが、これに限らず、熱や圧力を用いる成形であるならば、本実施形態を適用することが可能である。例えば、圧縮成形や、コンパウンド成形、トランスファー成形等により、成形する場合にも本願は適用できる。
【0044】
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0045】
10,20,30,40 ICタグ
11,41 一次成形品
111 凹部
111a,411a 底面
12,22,32,42 二次成形品
121,221,321,421 ゲート部
710,720,910,920 二次成形用金型
721,921 ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器と非接触で通信可能なアンテナ部と、前記アンテナ部に接続されて前記アンテナ部を介して通信する情報を管理するICチップとを備えるインレットと、
前記インレットを底面に配置可能な凹部を有する一次成形品と、
少なくとも前記凹部に充填され、前記インレットを封止する二次成形品と、
を備えるICタグであって、
前記二次成形品は、
二次成形用樹脂を二次成形用金型内に圧入するゲートの形状に対応した形状を有するゲート部を表面に備え、
前記ゲート部の中心を通り、前記ゲート部が形成される面に垂直な直線が、前記インレットと交差しないこと、
を特徴とするICタグ。
【請求項2】
請求項1に記載のICタグにおいて、
前記アンテナ部は、少なくとも1枚の絶縁基板に形成されていること、
を特徴とするICタグ。
【請求項3】
請求項1に記載のICタグにおいて、
前記アンテナ部は、金属線を巻いた巻線アンテナであること
を特徴とするICタグ。
【請求項4】
外部機器と非接触で通信可能なアンテナ部と、前記アンテナ部に接続されて前記アンテナ部を介して通信する情報を管理するICチップとを備えるインレットと、
前記インレットを底面に配置する凹部を有する一次成形品と、
少なくとも前記凹部に充填され、前記インレットを封止する二次成形品と、
を備えるICタグの製造方法であって、
前記インレットを、前記凹部の底面に配置する配置工程と、
前記配置工程の後に、前記インレットを配置した前記一次成形品を二次成形用金型内に配置し、二次成形用樹脂を二次成形用金型内に圧入して前記二次成形品を成形する二次成形工程と、
を備え、
前記二次成形工程において、前記二次成形用樹脂が射出される前記二次成形用金型のゲートは、前記ゲートの中心線が前記インレットと交差しない位置に設けられていること、
を特徴とするICタグの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のICタグの製造方法において、
前記ゲートは、前記ICタグの厚み方向において、前記インレットよりも垂直方向上側に位置すること、
を特徴とするICタグの製造方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のICタグの製造方法において、
前記ゲートの中心線は、前記底面の法線方向に平行であること、
を特徴とするICタグの製造方法。
【請求項7】
請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載のICタグの製造方法により製造されたICタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−191613(P2010−191613A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34284(P2009−34284)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】