説明

ICチップ、ICチップにおけるメモリ初期化方法、ICチップ用処理プログラム、携帯端末

【課題】インターフェースが行う処理動作に影響を与えることなく、効率よくメモリを初期化可能なICチップ等を提供する。
【解決手段】複数のインターフェースを備え、各インターフェースが非同期に他の通信端末と通信するために動作するICチップであって、すべての前記インターフェースの動作処理に用いられる共通の情報が記憶される共通領域、各インターフェースの動作処理のみで用いられる情報が記憶される専用領域、とを有するメモリと、1のインターフェースの起動を検出する第1の検出手段と、検出した前記インターフェースの起動後、各インターフェースの動作状態を検出する第2の検出手段と、前記各インターフェースの動作状態に応じて、当該共通領域又は少なくとも1のインターフェースの専用領域を初期化する初期化手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のインターフェースを備えるICチップ等における処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、接触型IC(Integrated Circuit)チップが搭載されたUIM(User Identity Module)が設けられた携帯端末が普及している。このような携帯端末は、更に非接触型ICチップとしてのCLF(Contact Less Front-end)を搭載し、当該CLFを、UIMが備える既存のインターフェースとは別のインターフェースに接続することで、UIM内で既存のインターフェースで動作する接触アプリケーションに加え、別のインターフェースで動作する非接触アプリケーションを管理する。
【0003】
UIMにはRAMが内蔵されており、起動時等に初期化される。このRAMには、上記接触アプリケーションや非接触アプリケーションを動作させる上で必要な情報が記憶される。
【0004】
近年、回路の集積度の向上等によりメモリの容量が増大する傾向にあり、RAMの容量の増加にともなってRAMの初期化に時間を要することは明らかであり、予め規定された初期応答時間に間に合わない可能性がある。
【0005】
また、複数のインターフェースを備えたメモリカードのリセット方法として、特許文献1には、複数のインターフェースのそれぞれを選択してリセットする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−21317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に示すメモリの初期化方法によれば、1のインターフェースの選択によりそれぞれのインターフェースをばらばらに、又はすべて初期化することが可能となるものの、他のインターフェースの起動状態を見ていないため、複数のインターフェースがほぼ同時、且つ非同期に動作する場合、すなわち、例えば接触型ICチップが動作しているときに非接触ICチップの動作により決済の動作を行う際、RAMの内容が全部初期化されてしまうと、決済の動作を行っている途中で当該接触型ICチップの動作で使用されている情報が消去されてしまい、処理動作に影響を与えてしまうこととなり、このような問題はサービス上避ける必要がある。
【0008】
ところで、このような携帯端末は、複数のインターフェースが非同期で動作するため、異なる処理が2つのインターフェースでほぼ同時に発生、すなわち競合が発生する可能性があり、今後は、RAM内にインターフェース毎に専用の領域を設ける必要性がある。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題等に鑑みてなされたものであり、複数のインターフェースを用いて行われる夫々の処理動作に影響を与えることなく、効率よくメモリを初期化可能なICチップ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載のICチップは、複数のインターフェースを備え、各インターフェースが非同期に他の通信端末と通信するために動作するICチップであって、すべての前記インターフェースの動作処理に用いられる共通の情報が記憶される共通領域、各インターフェースの動作処理のみで用いられる情報が記憶される専用領域、とを有するメモリと、1の前記インターフェースの起動を検出する第1の検出手段と、検出した前記インターフェースの起動後、各インターフェースの動作状態を検出する第2の検出手段と、前記各インターフェースの動作状態に応じて、当該共通領域又は少なくとも1のインターフェースの専用領域を初期化する初期化手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載のICチップは、複数のインターフェースを備え、各インターフェースが非同期に他の通信端末と通信するために動作するICチップであって、すべての前記インターフェースの動作処理に用いられる共通の情報が記憶される共通領域、各インターフェースの動作処理のみで用いられる情報が記憶される専用領域、とを有するメモリと、他のインターフェースと比較して初期応答に係る時間的制約が長い1の特権インターフェース、又は他のインターフェースの起動を検出する第1の検出手段と、前記第1の検出手段により特権インターフェースの起動が検出された場合に、当該特権インターフェースの起動後に、すべてのインターフェースの動作状態を検出する第2の検出手段と、前記検出の結果、すべてのインターフェースの起動が検出されなかった場合に、共通領域及び専用領域のすべてを初期化し、他のインターフェースの起動が検出された場合に、特権インターフェースの専用領域のみを初期化する初期化手段と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載のICチップにおけるメモリ初期化方法は、複数のインターフェースと、すべての前記インターフェースの動作処理に用いられる共通の情報が記憶される共通領域、各インターフェースの動作処理のみで用いられる情報が記憶される専用領域、とを有するメモリと、を備え、各インターフェースが非同期に他の通信端末と通信するために動作するICチップにおけるメモリ初期化方法であって、1の前記インターフェースの起動を検出する第1の検出ステップと、検出した前記インターフェースの起動後、各インターフェースの動作状態を検出する第2の検出ステップと、前記各インターフェースの動作状態に応じて、当該共通領域又は少なくとも1の前記インターフェースの専用領域を初期化する初期化ステップと、を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載のICチップ用処理プログラムは、複数のインターフェースと、すべての前記インターフェースの動作処理に用いられる共通の情報が記憶される共通領域、各インターフェースの動作処理のみで用いられる情報が記憶される専用領域、とを有するメモリと、を備え、各インターフェースが非同期に他の通信端末と通信するために動作するICチップに含まれるコンピュータを、1の前記インターフェースの起動を検出する第1の検出手段、検出した前記インターフェースの起動後、各インターフェースの動作状態を検出する第2の検出手段、及び、前記各インターフェースの動作状態に応じて、当該共通領域又は少なくとも1の前記インターフェースの専用領域を初期化する初期化手段として機能させることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の携帯端末は、複数のインターフェースと、すべての前記インターフェースの動作処理に用いられる共通の情報が記憶される共通領域、各インターフェースの動作処理のみで用いられる情報が記憶される専用領域、とを有するメモリと、を備える接触型ICチップと、当該接触型ICチップと第1の前記インターフェースを介して通信可能なコントローラと、当該接触型ICチップと第2の前記インターフェースを介して通信可能な非接触型ICチップと、を備える携帯端末において、前記接触型ICチップは、1の前記インターフェースの起動を検出する第1の検出手段と、検出した前記インターフェースの起動後、各インターフェースの動作状態を検出する第2の検出手段と、前記各インターフェースの動作状態に応じて、当該共通領域又は少なくとも1の前記インターフェースの専用領域を初期化する初期化手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インターフェースの起動及び動作状態に応じて、携帯端末1の動作に影響を与えないように、初期化する領域を設定し、初期化を実行するように構成したので、動作に影響を与えることなく、RAMの初期化を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る携帯端末の概要構成例を示すブロック図である。
【図2】RAMの内部構成を示す概念図である。
【図3】実施例1に係るRAMの内部構成を示す概念図である。
【図4】実施例1に係るRAMの初期化処理例を示す表である。
【図5】実施例1におけるCPUの動作処理例を示すフローチャート図である。
【図6】実施例2に係るRAMの内部構成を示す概念図である。
【図7】実施例2に係るRAMの初期化処理例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、携帯端末に対して本発明を適用した場合の実施の形態である。
【0018】
先ず、図1を参照して、本実施形態に係る携帯端末の構成及び機能概要について説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る携帯端末の概要構成例を示すブロック図である。図1に示すように、携帯端末1は、携帯端末1の機能を担うコントローラ11、CLF12、及びUIM13等を備えて構成されている。なお、携帯端末1には、例えば操作キー、ディスプレイ、スピーカ、及び移動体通信部等を備える携帯電話機やPDA等を適用できる。
【0020】
コントローラ11は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、各種プログラム及びデータを記憶する不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリ等)、データを一時記憶するRAM、UIM13との間の第1のインターフェースを担うI/Oポート等を備えている。コントローラ11は、UIM13との間で第1のインターフェースを介して通信可能になっている。そして、コントローラ11は、携帯端末1の通信(移動体通信網やインターネットを介して行われる通信)処理や携帯端末1のユーザからの操作キーを介した操作指示に応じて各種処理を実行する。このような処理の中で、コントローラ11は、例えば、暗号化処理や認証処理等に係るコマンド信号を第1のインターフェースを介してUIM13へ送信する。また、コントローラ11は、例えば、起動時、又はUIM13との間で通信エラーが発生した場合に、第1のインターフェースのリセット信号をUIM13へ送信するようになっている。
【0021】
CLF12は、NFCの規格で規定される非接触通信を行う非接触型ICチップであり、図示しないが、CPU、各種プログラム及びデータを記憶する不揮発性メモリ、データを一時記憶するRAM、UIM13との間の第2のインターフェースを担うI/Oポート(SWIO)等を備えている。また、CLF12は、非接触のフィールド内で図示しない非接触リーダとの間で各種信号の送受信を行うためのアンテナ12aに接続されている。そして、ユーザが携帯端末1を図示しない非接触リーダに翳すと、非接触リーダから送信されたサービス要求に係るコマンド信号を第2のインターフェースを介してUIM13へ送信するようになっている。
【0022】
UIM13は、UICC(Universal Integrated Circuit Card)の一つであり、従来のSIM(Subscriber Identity Module)をベースに機能を拡張された接触型ICチップを搭載する。そして、UIM13は、CPU、各種プログラム及びデータを記憶する不揮発性メモリ、データを一時記憶するRAM、コントローラ11との間の第1のインターフェースXを担うI/Oポート、CLF12との間の第2のインターフェースYを担うI/Oポート(C6)等を備えている。なお、CLF12とUIM13間の第2のインターフェースYには、SWP(Single Wire Protocol)が適用される。
【0023】
また、UIM13は、図示しないが、USBメモリなどの外部記憶媒体との間の第3のインターフェースZを担うI/Oポート(C4又はC8)を備えている。
【0024】
UIM13は、コントローラ11及びCLF12から送信されるコマンド信号等に応じて各種アプリケーションプログラムにしたがって動作し、所定の処理を行う。
【0025】
また、例えば、UIM13のCPUは、コントローラ11からのリセット信号によって、インターフェースXのリセット処理を実行する。このリセット処理には、例えば、UIM13のクロック設定、記憶装置(RAM等)及び周辺回路(乱数生成器,暗号コプロセッサ等)の動作確認、記憶装置(RAM等)の初期化、スタックポインタ初期化、周辺回路の初期設定等が含まれる。
【0026】
なお、上記UIM13におけるICチップの動作は、用途(例えば、通信用または電子取引用)及び作動モード(接触または非接触)により異なり、このような用途及び作動モードによる基本動作は公知技術であるため、詳細な説明を省略する。
【0027】
ところで、本実施形態に示す携帯端末1のように、複数のインターフェースX〜Zを備え、各インターフェースX〜Zを介して複数の処理が同時、且つ非同期に動作する場合、それぞれの処理に必要な情報がRAM内で区分けして管理されている必要がある。
【0028】
そこで、本実施形態のRAMの内部は、図2に示すように、全てのインターフェースX〜Zの動作処理用に用いられる共通の情報が記憶される共通領域16と、各インターフェースの動作処理用にのみ用いられる専用の情報が記憶される専用領域(ここでは、インターフェースXに対応する領域を特権I/F専用領域17、インターフェースYに対応する領域を第2I/F専用領域18、インターフェースZに対応する領域を第3I/F専用領域19とする。)と、を有している。
【0029】
また、今後、RAMの容量の増加によって、リセット処理による初期化に時間を要し、例えば、インターフェースの種類によっては、リセット信号に対して応答する初期応答までの制限時間が短いものもあり、その場合には初期応答に間に合わない可能性がある。
【0030】
そこで、本実施形態に示す携帯端末1のUIM13のCPUは、所定のインターフェースの起動状態及び動作状態に応じて、初期化する領域を規定することで、動作に影響を与えることなく、RAMの初期化を効率的に行う。なお、インターフェースの起動状態は、例えば、電源の入力や信号の入力の有無等を検出することにより判断し、動作状態とは信号のやりとりの有無等を検出することにより判断される。
【0031】
また、所定の信号を受信して初期応答するまでの時間がインターフェース毎に規定されており、複数のインターフェースを用いる場合に、上記初期応答の時間はインターフェース毎に異なる。本実施形態では、その初期応答の時間が長く時間的制約に余裕のあるインターフェースを特権インターフェース(以下、「特権I/F」と称する。)として設定し、この特権I/Fの起動後に、他のインターフェースの動作状態に応じて、他のインターフェースに対応する専用領域を、他のインターフェースが起動する前に初期化しておくことで、他のインターフェースが起動した時に初期化する必要がなくなり、例えば、初期応答の時間が短く時間的制約が厳しい他のインターフェースの初期化処理の負担を軽減することができる。
【0032】
具体的には、UIM13のCPUは、各インターフェースX〜Zの起動状態を検出するとともに、起動後の各インターフェースX〜Zの動作状態を検出し、以下に示すようにRAMの初期化を行う。なお、初期化後は、初期化済みを示すフラグ等の手段を用いて初期化の有無が設定される。
【0033】
まず、UIM13のCPUは、例えばインターフェースXを上述の「特権I/F」とし、この特権I/Fが起動後、すべてのインターフェースX〜Zの動作状態を検出し、すべてのインターフェースX〜Zが動作していない場合にはRAM内の全ての領域16〜19を初期化する。
【0034】
また、UIM13のCPUは、特権I/Fが起動後、特権I/Fが動作してなく、且ついずれかの他のインターフェースY又はZが動作している場合には、RAM内の、特権インターフェースと、動作していないインターフェースY又はZの専用領域18又は19のみを初期化する。
【0035】
このように時間的制約に余裕のある特権I/Fの起動後のRAM内の初期化においては、すべてのインターフェースX〜Zが動作していない場合にすべてのインターフェースX〜Zに対応する領域(共通領域を含む。)を初期化し、他のインターフェースが動作している場合には、動作してないインターフェースに対応する専用領域のみを初期化することで、携帯端末1の動作に影響を与えることなく、RAMの初期化を効率的に行うことが可能となる。
【0036】
また、UIM13のCPUは、特権I/F以外のいずれかのインターフェースY又はZの起動後、すべてのインターフェースX〜Zが動作していない場合には、RAM内の、共通領域16と先に起動したインターフェースの専用領域18又は19のみを初期化する。
【0037】
さらに、UIM13のCPUは、特権I/F以外のいずれかのインターフェースY又はZの起動後、先に起動したインターフェースとは異なる他のインターフェースが動作している場合は、RAM内の先に起動したインターフェースの専用領域18又は19のみを初期化する。
【0038】
このように特権I/F以外のインターフェースの起動後のRAM内の初期化においては、すべてのインターフェースX〜Zが動作していない場合には共通領域と先に起動したインターフェースの専用領域のみを初期化し、先に起動したインターフェースとは異なる他のインターフェースが動作している場合には、先に起動したインターフェースの専用領域のみを初期化することで、携帯端末1の動作に影響を与えることなく、RAMの必要な領域の初期化を確実に行うことが可能となる。
【0039】
なお、いずれかのインターフェースの起動後、先に起動した当該インターフェースが動作している場合には、携帯端末1の動作処理に影響を与えることから、初期化処理は一切行わない。
【0040】
−実施例1−
次に、具体的なRAMの初期化の処理例について説明する。まず、接触型ICチップを動作させるためのISO7816インターフェースと非接触型ICチップを動作させるためのSWP/HCI通信で接続されたSWPインターフェースを備えた携帯端末での処理例を説明する。図3はRAM内の構造例である。
【0041】
図3に示すように、本実施例のRAMは、ISO7816インターフェースとSWPインターフェースの動作処理用に用いられる共通の情報が記憶される共通領域21、ISO7816インターフェースの動作処理用にのみ用いられる専用の情報が記憶されるISO7816インターフェース専用領域22、SWPインターフェースの動作処理用にのみ用いられる専用の情報が記憶されるSWPインターフェース専用領域23に区分けされて、各インターフェースの起動及び動作状態にしたがって、RAM内の各領域が初期化される。
【0042】
以下に、各インターフェースの起動状態にしたがって各領域を初期化する処理例を図4及び図5を用いて説明する。図4は具体的なRAM内の初期化処理例を示す表であり、図5は実施例1におけるCPUの動作処理例を示すフローチャート図である。なお、本実施例において、特権インターフェースはISO7816インターフェースとする。
【0043】
まず、図5に示すように、UIM13のCPUは、各インターフェースとの起動状態(電気的な接続など)を検出し(ステップS1)、各インターフェースの起動が検出されない場合には処理を終了する。
【0044】
ここで、ステップS2において、電源ONなどにより、ISO7816インターフェースにおける起動を検出した場合(ステップS2:Yes)、その後のすべての各インターフェースにおける接続状態(信号の有無など)を検出する(ステップS3)。
【0045】
そして、ステップS4において、すべてのインターフェースの動作が検出されない場合には(ステップS4:Yes)、図4に示すように、RAM内のすべての領域21〜23を初期化して(ステップS5)、処理を終了する。
【0046】
また、ステップS6において、ISO7816インターフェースにおける動作が検出されず、SWPインターフェースにおける動作が検出された場合には(ステップS6:Yes)、図4に示すように、ISO7816インターフェースの専用領域22のみを初期化して(ステップS7)、処理を終了する。
【0047】
また、ISO7816インターフェースにおける動作が検出された場合には(ステップS8)、携帯端末1の動作処理に影響を与えることから、SWPインターフェースにおける動作にかかわらず、図4に示すように、RAMの初期化を行わずに処理を終了する。
【0048】
一方、ステップS2において、ISO7816インターフェースの起動が検出できない(ステップS2:No)、すなわち、ステップS9において、非接触ICチップの動作により、SWPインターフェースにおける起動を検出した場合、その後のすべての各インターフェースにおける接続状態を検出する(ステップS10)。
【0049】
そして、ステップS11において、すべてのインターフェースの動作が検出されない場合には(ステップS11:Yes)、図4に示すように、共通領域21とSWPインターフェースの専用領域23のみを初期化し(ステップS12)、処理を終了する。
【0050】
また、ステップS13において、ISO7816インターフェースにおける動作が検出され、SWPインターフェースにおける動作が検出されない場合には(ステップS13:Yes)、図4に示すように、SWPインターフェースの専用領域23のみを初期化し(ステップS14)、処理を終了する。
【0051】
また、SWPインターフェースにおける動作が検出された場合には(ステップS15)、携帯端末1の動作処理に影響を与えることから、ISO7816インターフェースにおける動作にかかわらず、図4に示すように、RAMの初期化を行わずに処理を終了する。
【0052】
このようにすれば、携帯端末1の動作に影響を与えることなく、RAMの必要な領域の初期化を効率的に行うことが可能となる。
【0053】
−実施例2−
次に、上述したISO7816インターフェース、SWPインターフェースに加え、USB用インターフェースを備えた携帯端末での処理例を説明する。図6はRAM内の構造例を示し、図7は具体的なRAM内の初期化処理例を示す表である。
【0054】
図示しないが、UIM13はコンタクト基板上に8個の外部端子をもち、ISO7816インターフェースは、C1〜C3、及びC5に、SWPインターフェースはC6に、USB用のインターフェースは、C4又はC8に割り当てられる。このようにして構成された携帯端末1は、各インターフェースが非同期に動作し、同時に動作させることが可能である。
【0055】
図6に示すように、本実施例のRAM内は、ISO7816インターフェース、SWPインターフェース、及びUSB用インターフェースの動作処理用に用いられる共通の情報が記憶される共通領域26、ISO7816インターフェースの動作処理用にのみ用いられる専用の情報が記憶されるISO7816インターフェース専用領域27、SWPインターフェースの動作処理用にのみ用いられる専用の情報が記憶されるSWPインターフェース専用領域28、及びUSB用インターフェースの動作処理用にのみ用いられる専用の情報が記憶されるUSB用インターフェース専用領域29に区分けされて、各インターフェースの起動及び動作状態にしたがって、RAM内の各領域が初期化される。
【0056】
以下に、各インターフェースの起動状態にしたがって各領域を初期化する処理例を図6を用いて説明する。なお、本実施例において、特権インターフェースはISO7816インターフェースとする。
【0057】
図6に示すように、UIM13のCPUは、ISO7816インターフェースが起動後、すべてのインターフェースの動作が検出されない場合には、RAM内のすべての領域26〜29を初期化する。
【0058】
また、UIM13のCPUは、ISO7816インターフェースが起動後、ISO7816インターフェースの動作が検出されずにUSB用インターフェース又は/及びSWPインターフェースの動作が検出された場合には、起動していないインターフェースの専用領域27、28、又は専用領域29のみを初期化する。
【0059】
また、UIM13のCPUは、SWPインターフェース又はUSB用インターフェースの起動後、すべてのインターフェースの動作が検出されない場合には、共通領域26と先に起動したインターフェースの専用領域28又は29を初期化する。
【0060】
また、SWPインターフェース又はUSB用インターフェースの起動後、少なくともいずれか1つのインターフェースの動作が検出された場合には、先に起動したインターフェースの専用領域28又は29のみを初期化する。
【0061】
なお、いずれかのインターフェースの起動後、先に起動が検出されたインターフェースの動作が検出された場合には、携帯端末1の動作処理に影響を与えることから、初期化処理は一切行わない。
【0062】
このようにすれば、携帯端末1の動作に影響を与えることなく、RAMの必要な領域の初期化を効率的に行うことが可能となる。
【0063】
以上説明したように、上記実施形態によれば、インターフェースの起動及び動作状態に応じて、携帯端末1の動作に影響を与えないように、初期化する領域を設定し、初期化を実行するように構成したので、動作に影響を与えることなく、RAMの初期化を効率的に行うことができる。特には、時間制約に余裕のあるインターフェースを特権I/Fとして設定し、この特権I/Fの起動後に、他のインターフェースの動作状態に応じて、他のインターフェースに対応する専用領域を、他のインターフェースが起動する前に初期化しておくように構成したことで、他のインターフェースが起動した時に初期化する必要がなくなり、例えば、時間制約の厳しい他のインターフェースの初期化処理の負担を軽減することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 携帯端末
11 コントローラ
12 CLF
13 UIM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインターフェースを備え、各インターフェースが非同期に他の通信端末と通信するために動作するICチップであって、
すべての前記インターフェースの動作処理に用いられる共通の情報が記憶される共通領域、各インターフェースの動作処理のみで用いられる情報が記憶される専用領域、とを有するメモリと、
1のインターフェースの起動を検出する第1の検出手段と、
検出した前記インターフェースの起動後、各インターフェースの動作状態を検出する第2の検出手段と、
前記各インターフェースの動作状態に応じて、当該共通領域又は少なくとも1のインターフェースの専用領域を初期化する初期化手段と、
を備えていることを特徴とするICチップ。
【請求項2】
複数のインターフェースを備え、各インターフェースが非同期に他の通信端末と通信するために動作するICチップであって、
すべての前記インターフェースの動作処理に用いられる共通の情報が記憶される共通領域、各インターフェースの動作処理のみで用いられる情報が記憶される専用領域、とを有するメモリと、
他のインターフェースと比較して初期応答に係る時間的制約が長い1の特権インターフェース、又は他のインターフェースの起動を検出する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段により特権インターフェースの起動が検出された場合に、当該特権インターフェースの起動後に、すべてのインターフェースの動作状態を検出する第2の検出手段と、
前記検出の結果、すべてのインターフェースの起動が検出されなかった場合に、共通領域及び専用領域のすべてを初期化し、他のインターフェースの起動が検出された場合に、特権インターフェースの専用領域のみを初期化する初期化手段と、
を備えていることを特徴とするICチップ。
【請求項3】
前記第2の検出手段は、
前記第1の検出手段により他のインターフェースの起動が検出された場合に、当該他のインターフェースの起動後に、すべてのインターフェースの動作状態を検出し、
前記初期化手段は、
前記検出の結果、特権インターフェース及び先に起動した他のインターフェースの動作が検出されなかった場合に、共通領域及び先に起動した他のインターフェースの専用領域のみを初期化し、特権インターフェースの動作が検出され、且つ先に起動した他のインターフェースの動作が検出されなかった場合に、先に起動した他のインターフェースの専用領域のみを初期化することを特徴とする請求項2に記載のICチップ。
【請求項4】
前記初期化手段は、
前記検出の結果、先に起動した特権インターフェース又は他のインターフェースの動作が検出された場合には、初期化処理を行わないことを特徴とする請求項2又は3に記載のICチップ
【請求項5】
前記ICチップは、UIM(User Identity Module)に搭載されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のICチップ。
【請求項6】
前記UIMは、携帯端末に装着されていることを特徴とする請求項5に記載のICチップ。
【請求項7】
複数のインターフェースと、すべての前記インターフェースの動作処理に用いられる共通の情報が記憶される共通領域、各インターフェースの動作処理のみで用いられる情報が記憶される専用領域、とを有するメモリと、を備え、各インターフェースが非同期に他の通信端末と通信するために動作するICチップにおけるメモリ初期化方法であって、
1の前記インターフェースの起動を検出する第1の検出ステップと、
検出した前記インターフェースの起動後、各インターフェースの動作状態を検出する第2の検出ステップと、
前記各インターフェースの動作状態に応じて、当該共通領域又は少なくとも1の前記インターフェースの専用領域を初期化する初期化ステップと、
を備えていることを特徴とするICチップにおけるメモリ初期化方法。
【請求項8】
複数のインターフェースと、すべての前記インターフェースの動作処理に用いられる共通の情報が記憶される共通領域、各インターフェースの動作処理のみで用いられる情報が記憶される専用領域、とを有するメモリと、を備え、各インターフェースが非同期に他の通信端末と通信するために動作するICチップに含まれるコンピュータを、
1の前記インターフェースの起動を検出する第1の検出手段、
検出した前記インターフェースの起動後、各インターフェースの動作状態を検出する第2の検出手段、及び、
前記各インターフェースの動作状態に応じて、当該共通領域又は少なくとも1の前記インターフェースの専用領域を初期化する初期化手段として機能させることを特徴とするICチップ用処理プログラム。
【請求項9】
複数のインターフェースと、すべての前記インターフェースの動作処理に用いられる共通の情報が記憶される共通領域、各インターフェースの動作処理のみで用いられる情報が記憶される専用領域、とを有するメモリと、を備える接触型ICチップと、当該接触型ICチップと第1の前記インターフェースを介して通信可能なコントローラと、当該接触型ICチップと第2の前記インターフェースを介して通信可能な非接触型ICチップと、を備える携帯端末において、
前記接触型ICチップは、
1の前記インターフェースの起動を検出する第1の検出手段と、
検出した前記インターフェースの起動後、各インターフェースの動作状態を検出する第2の検出手段と、
前記各インターフェースの動作状態に応じて、当該共通領域又は少なくとも1の前記インターフェースの専用領域を初期化する初期化手段と、
を備えていることを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−93857(P2012−93857A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239058(P2010−239058)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】