説明

ICチップ及び認証方法

【課題】 認証情報等を改ざん、コピーすることができない状態で保持可能なICチップ及び認証方法を提供する。
【解決手段】 ICカードに搭載されるICチップに、検知した磁場の強さに応じた出力値を出力する複数の磁場検知素子がX行Y列の2次元に配置されてなる磁気センサと、前記磁場検知素子の各々を選択する選択回路と、前記磁気センサの出力信号の増幅回路とを備え、磁気センサの表面には、複数の磁性体粒子がランダムに配置された認証情報保持部を含める。磁性体粒子のランダムな配置は再現することができないため、この配置情報からなる認証情報はコピー、改ざんすることができない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はICチップ及び認証方法に関し、特に認証情報等をコピーや改ざんが不能な状態で保持することができるICチップ及び認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、個体の認証媒体には様々なものが用いられてきた。例えばクレジットカード等では磁気記録、ホログラム等が用いられており最近ではICチップを内蔵したものがある。これらは認証情報が磁気的、光学的、あるいは電気的に読み取れるように、それぞれの記憶媒体に情報を予めさせておく。
しかしながら、磁気記録やホログラム等は容易に記録情報を読み出し、コピーすることができるため、これらの情報をコピーし不正に使用する者が増えてきている。この為、様々なセキュリティー対策も取られている。
【0003】
近年、使われるようになったICチップでは内部にメモリ素子を内蔵し認証情報を記録する。不正使用を避ける為に、公開鍵方式による暗号化技術を適用し、それに用いる秘密鍵をICチップ内のメモリに記憶させる方法が用いられている。
また磁気媒体を用いて複製をし難くする方法として、磁気ストライプ中にランダムに軟磁性体を混入し、これを磁気ヘッドにて読み出す方法が特許文献1により開示されている。
【特許文献1】特許第2843743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ICチップでは、上記秘密鍵などの認証情報を容易に読み取り、改ざんできない様に、ハードウエアとソフトウエアの両方で様々な手段が取られている。認証情報は、改ざんできないようにROMの様な読み出し専用メモリに記憶することは可能であるが、製造工程にて個々のチップに別の情報を書き込む必要があり、非常に製造工程が煩雑になる。従って、多くはEEPROMの様な書き換え可能なメモリに認証情報を記憶させる。
【0005】
しかしながら、認証情報を容易に読み取り或いは改ざん出来ない手法を適用したとしても、一旦その手法が分ってしまえば、メモリの情報を読み取り、改ざん、コピーし不正に使用することが可能となる。
また、磁気ストライプ中にランダムに軟磁性体を混入し、これを磁気ヘッドにて読み出す方法では、読み出す信号の空間分解能は磁気ヘッドのギャップに依存するため、空間分解能を上げるには限界がある。また、近年の印刷技術の進歩により磁気ヘッドにより読み取った信号から、同様の磁性体パターンを印刷することは容易になりつつある。
本発明の目的は、特に認証情報等を改ざん、コピーすることができない状態で保持可能なICチップ及び認証方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1によるICチップは、検知した磁場の強さに応じた出力値を出力する複数の磁場検知素子がX行Y列(X及びYは自然数である)の2次元に配置されてなる磁気センサと、前記磁場検知素子の各々を選択する選択回路と、前記磁気センサの出力信号の増幅回路とを備え、
前記磁気センサの表面には、複数の磁性体粒子がランダムに配置されたことを特徴とする。
【0007】
磁気センサ上に存在する磁性体粒子の位置情報および粒子数は2次元的に配置されてなる磁気センサにより検知することにより取得することができる。磁性体粒子はセンサ上にランダムに配置されているため、この磁気センサにより検知する情報を認証情報として用いることが出来る。微小な磁性体粒子と微小な磁気センサを用いることにより、磁性体粒子の情報が分ったとしても、全く同じものを複製することは不可能である。微小な磁気センサは近年の微細加工技術の進歩により、容易に微小化できる。ランダムに配置した微小な磁性体粒子の配置を複製することも原理的には可能であるが、非常に複雑な製造工程となり実現は困難である。
【0008】
本発明の請求項2によるICチップは、請求項1において、前記磁場検知素子が半導体ホール素子であることを特徴とする。
半導体ホール素子はICチップと同じ製造工程で作製することが出来る為、容易にICチップに混載することが出来る。
本発明の請求項3によるICチップは、請求項2において、前記半導体ホール素子は、一対の電流端子と、前記電流端子間に流れる電流を制御するゲート電極と、電流が前記電流端子間に流れる電流に略垂直に流れるように配置された一対の出力端子を有することを特徴とする。
ゲート電極を有することにより、磁場検出機能とスイッチング機能の両方を1つの半導体ホール素子が備えることになり、複数の半導体ホール素子を選択して磁場検出する時の選択回路が簡易になる。
【0009】
本発明の請求項4によるICチップは、請求項1〜3のいずれか1項において、前記磁性体粒子が超常磁性体であることを特徴とする。
磁性体粒子を超常磁性体とすることにより、磁性体粒子の磁化は外部から印加する磁場の強度に依存する。外部磁場を零にした時の残留磁化は零であるから、外部から磁場を印加して磁性体の磁化を変化させ情報を書き換えることはできない。
本発明の請求項5によるICチップは、請求項1〜4のいずれか1項において、前記増幅回路からの出力を外部装置に出力するための接続端子を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6によるICチップは、請求項1〜4のいずれか1項において、前記増幅回路からの出力信号に基づき、前記磁性体粒子の磁気センサ表面での配置情報を取得する信号処理手段を備えることを特徴とする。
本発明の請求項7によるICチップは、請求項1から6のいずれか1項において、複数の磁性体粒子を磁場中で前記ランダムに配置させたことを特徴とする。
磁性体粒子を磁場中で固定することにより、磁化した磁性体粒子が凝集し磁界方向に長細い形態にすることができる。これにより磁場を印加して磁気センサで磁性体粒子の配置情報を得る時、磁化し易くなり、より大きな信号出力を得ることができる。
【0011】
本発明の請求項8による認証方法は、請求項1〜7に記載されるICチップを用いた認証方法であって、前記複数の磁性体粒子に向けて磁場を印加し、
前記磁場中で前記磁場検知素子から出力される信号を取得し、
前記取得した信号に基づき、前記磁性体粒子の配置情報を取得し、認証情報として利用することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項9による認証方法は、請求項8において、複数種類の磁場条件下のそれぞれにおいて前記磁場検知素子から得られる信号に基づき取得可能な複数種類の前記磁性体粒子の配置情報のうち、任意の1つを選択し又はそれらを組み合わせて認証情報として利用することを特徴とする。
前記磁場条件、すなわち複数の磁性体粒子に向けて印加する磁場の条件が異なると、得られる磁性体粒子の配置情報も異なる。従って、複数種類の磁場条件下で磁性体粒子の配置情報を複数種類取得し、これを組み合わせることで、単一の磁場中で取得する場合に比べ、より多くの情報を認証情報として利用することができる。
ここで、磁場条件を決める要素としては、磁場の周波数、方向、強度等が挙げられる。また、磁性体粒子の配置情報は、磁性体粒子の磁気センサの表面における配置状態に関する情報全般をいい、複数種類の配置情報としては、例えば、特性(形状、体積、材質)の異なる磁性体粒子毎の配置情報等が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、認証情報や識別情報をコピー、改ざん不能な状態で保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1に、本実施形態のICチップを内蔵した接触式ICカードの概略を示す。
図1のICチップは、1チップ上に、CPUと、RAMと、ROMと、EEPROMと、通信インタフェースと、認証情報保持部と、を搭載している。認証情報保持部を備える以外は、従来のICカードのICチップと同様の構成であり、通信インターフェースを介して、接触あるいは非接触で、図示しないカードリーダとの間で相互に情報を送受するものである。
【0015】
CPUは、RAM、ROM及びEEPROMにデータやプログラムに基づいて、暗号化アルゴリズムを採用した情報の送受に関する従来の処理を行うとともに、後述するように、認証情報保持部から出力される信号に基づき、認証情報を取得する処理も行う。
認証情報保持部は、本発明の磁場検知素子に相当するホール素子を複数アレイ状に配置した磁気センサと、任意のホール素子を選択する選択回路と、ホール素子からの信号を増幅する増幅回路と、ホール素子からのアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路と、表面にランダムに配置した磁性体粒子と、で構成され、この磁性体粒子の検出信号を認証情報として出力する。
【0016】
以下、上記認証情報部について詳細に説明する。
(磁気センサの構成について)
図2に、本実施形態の認証情報部の磁気センサ1の外観の一部を示す。
磁気センサは、周知の技術であるCMOS(complementary mental−oxide semiconductor device)製造プロセスによりシリコン基板11上に形成される。磁気センサ1表面の凹部13の下には、ホール素子が形成されており、個々のホール素子の入力及び出力はゲート電極30及び金属配線4を介して行われる。最表面はプラズマCVD(chemical vapor deposition)によるチッ化シリコン膜或いは酸化シリコン膜で覆われる。
(ホール素子の構造について)
磁気センサ1を構成するホール素子の構造を図3を用いて説明する。
【0017】
このホール素子2の上面図が同図(a)に、一点鎖線aでの断面が同図(b)に、一点鎖線bでの断面が図(c)に、示されている。このホール素子はゲート電極30、ソース電極31、ドレイン電極32、出力電極33、34、及び、絶縁層35を含んで構成され、Pウエル領域36に形成される。出力電極を除くとn型MOSFETと同じ構成であり、図中では各々の電極への金属配線は省略してある。出力電極33、34は、磁気センサ1表面に略垂直に形成される磁束と、ソース−ドレイン極間を流れる電流と、に垂直に電流が流れるように構成する。
【0018】
このホール素子2の動作について説明する。ゲート電極30、ソース電極31、ドレイン電極32にバイアスを印加し、MOSFETと同様な動作状態に設定する。この時の動作状態は線形領域にあることが望ましい。この状態で外部から加わる磁束が存在しない場合、2つの出力電極33、34は同電位である。外部からホール素子面に対して垂直な磁束が加わると、磁束密度に比例した電圧が出力電極33と34との間に差動電圧として現れる。
【0019】
(ホール素子のアレイ状の配置、及び、各ホール素子の選択方法について)
次に、図4を用いてアレイ状に配置した各々のホール素子を選択して出力を取り出す方法について説明する。
各々のホール素子(E(0,0),E(0,1),・・・)のソース電極、ドレイン電極及び一対の出力電極は、半導体素子等を用いて構成されるスイッチ(R0,R1,・・・)を介してVL、VH、OUT1、OUT2へ接続されており、列方向Yの同一の列に共通に接続されている。また行方向Xの同一の行のゲート電極も共通で、各列毎に共通のゲート電極線C0、C1、・・・へと接続されている。VL、VHはホール素子側へバイアスを供給する配線であり、OUT1、OUT2はホール素子からの出力を増幅回路へ送る配線である。なお、図示しないが、各スイッチは制御線が接続され、ホール素子の選択信号に基づいて、オン−オフ制御されるようになっている。
【0020】
ホール素子E(0,0)を選択する場合について説明する。スイッチR0のみをオンし、スイッチR1、R2、・・・はオフする。またゲート電極線C0のみホール素子が動作状態になる電圧に設定し、ゲート電極線C1、C2、・・・はホール素子が動作しない電圧、すなわちソース電極、ドレイン電極にバイアスを印加してもソース−ドレイン間に電流が流れない状態に設定する。
【0021】
この時、ホール素子E(0,0)及び同一の行にあるホール素子のソース電極、ドレイン電極にVL、VHが印加されるが、電流はホール素子E(0,0)しか流れない。ホール素子E(0,0)の出力電極には磁束密度に応じた電圧が現れる。縦に並んだホール素子の出力電極は、動作状態になっていないため、OUT1,OUT2へはホール素子E(0,0)の出力電圧がそのまま出力される。この構成ではアレイの数が増えたとしても、アレイ内の配線数は同じで端部にスイッチが付け足されるだけなので、磁気センサ部の面積はほぼアレイの数に比例し、容易にホール素子数の多い磁気センサ部を構成することができる。
また、ホール素子数を増やすことにより認証情報の情報量を増やすことができる。
【0022】
(磁性体粒子の固定について)
CMOS製造プロセスにより作製したICチップの磁気センサ1表面に磁性体粒子Mgを滴下し、図2のように磁気センサ1表面に固定する。磁性体粒子Mgは予めエポキシ樹脂やシリコーン樹脂に混ぜたものを滴下して樹脂(図示せず)を硬化させることにより磁性体粒子Mgを固定しても良いし、水溶液や有機溶媒に混ぜたものを滴下して乾燥させた後、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂を滴下して硬化させ固定してもよい。磁気センサ上に滴下した磁性体粒子はランダムに分布しているため、これを認証情報として用いることが出来る。滴下する磁性体粒子の大きさはホール素子の感受面の大きさと同程度あるいは、より大きいものが望ましい。
【0023】
磁性体粒子は、ICチップの製造工程で固定してもよいし、使用時に固定してもよい。
さらに、固定時にICチップの裏面に磁石を配置し、磁気センサ1表面に対して垂直方向に磁界を印加してもよい。これにより磁性体粒子が磁気センサ1表面に対して垂直方向に柱状に凝集する。これを図5を用いて模式的に説明する。同図(a)は磁界を印加しない状態で磁性体粒子Mgを磁気センサ1の表面に固定したもので、同図(b)は、磁界を印加した状態で固定したものである。磁界を印加しない場合、磁性体粒子MgはICチップ上でその表面及びその積層方向に関してランダムに配置されるが、磁界を印加した場合には、磁性体粒子が外部磁界の形成方向に沿って柱状に凝集し、これがICチップの表面にランダムに配置される。磁性体は柱状形状になると長手方向に磁界を印加したとき磁化し易くなり、磁気センサからより大きな信号を得ることが出来る。
【0024】
(認証情報の読み出し方法について)
次に、認証情報保持部からの認証情報の読み出し方法について説明する。
読み出し時には、本実施形態のICチップを内蔵したICカードをカードリーダに挿入する。カードリーダは、ICカードが挿入されると、認証情報保持部に電磁石により磁場を印加する。
ICチップにおいて磁場が印加されたことを検知すると、CPUが所定のホール素子の選択信号を選択回路に出力し、これに基づき選択回路は選択したホール素子から出力を取り出しAD変換回路に出力する。CPUはAD変換回路によりデジタル信号に変換された出力信号に基づき、認証情報となる磁性体粒子Mgの配置情報を取得する。
【0025】
このCPUによる出力信号の処理は、後述するように磁場の印加方法によって異なるが、ホール素子出力に基づいて、磁気センサ1表面における磁性体粒子Mgの配置情報を取得することができる点で同じである。すなわち、磁性体粒子Mgがホール素子上にランダムに分布している場合、アレイ状に配置された各位置のホール素子が出力する信号レベルは異なる。従って、取得した信号レベルに対してしきい値を設け、2値或いは多値化したものを認証情報として用いる。例えば、図2の場合において、各ホール素子の出力を2値に換算すると、例えば、ホール素子E(2,0),ホール素子E(2,3)を1、その他のホール素子を0とした、2次元配列(1次元としてもよい)が得られる。なお、ホール素子E(n、m)は図2中の矢印の出発する左上のホール素子からX方向にn個目、Y方向にm個目のホール素子であることを意味する。
【0026】
次に、磁場の印加方法及び各印加方法での出力信号の処理方法について説明する。
(磁場の印加方法1について)
電磁石により交流磁場+直流磁場を印加する。この時、直流磁場は磁性体粒子の磁化の少なくとも一部が飽和する磁場である。近くに磁性体粒子のないホール素子の出力信号には、印加する交流磁場の周波数成分しか含まれないが、近くに磁性体粒子のあるホール素子の出力信号には、印加する交流磁場の周波数の2次高調波成分が含まれる。この2次高調波成分を認証情報として利用する。このとき、基本波の振幅を基準とし、2次高調波成分の振幅を取得する。磁場発生手段により発生する磁場が一定であれば、ある量の磁性体粒子が、ある量の磁性体粒子が存在する時の基本波と2次高調波の振幅の比は一定であるから、ホール素子の感度がばらついても影響されない。
【0027】
磁性体粒子の形状あるいは大きさにより、印加する磁場に対する磁化曲線は異なる。図6は異なる2つの形状の磁性体粒子の磁化曲線を模式的に示したものである。例えば曲線B2が球状の磁性体粒子のものだとすると、曲線B1はこれよりも印加する磁場方向に長細い形状のものである。これは磁性体粒子の材質が同じでも形状により反磁界係数が異なることにより曲線の傾きが異なることによる。飽和磁化は磁性体粒子の体積に比例する。
【0028】
ここで曲線B1の特性を持った磁性体粒子がホール素子A上に、曲線B2の特性を持った磁性体粒子がホール素子B上に存在する場合について説明する。直流磁場Hdc1と交流磁場Hac1を印加するとホール素子Aの出力には2次高調波成分が現れるがホール素子Bの出力には2次高調波は現れない。直流磁場Hdc1とは異なる強度の直流磁場Hdc2と交流磁場Hac2を印加するとホール素子Bの出力には2次高調波成分が現れるがホール素子Aの出力には2次高調波は現れない。このように異なった特性を持つ磁性体粒子が混在する時、複数のホール素子から得られる出力信号パターンは印加磁場に依存する。従って、印加する磁場条件により異なった認証情報を得ることができる。このことは読み取り条件を任意に設定することで任意の認証情報を取得し、あるいは、複数種類の磁場を印加することで複数種類の配置情報を組み合わせてより多くの情報量を有する認証情報を得ることができることを意味し、認証情報の複製をより困難なものとすることができる。
【0029】
(磁場の印加方法2について)
カードリーダの電磁石により交流磁場を印加する。この時、交流磁場は磁性体粒子の磁化の少なくとも一部が飽和する磁場である。近くに磁性体粒子のないホール素子の出力信号には、印加する交流磁場の周波数成分しか含まれないが、近くに磁性体粒子のあるホール素子の出力信号には、印加する交流磁場の周波数の3次高調波成分が含まれる。この3次高調波成分を認証情報として利用する。
【0030】
(磁場の印加方法3について)
電磁石により交流磁場を印加しホール素子の交流信号成分を取得し、次にこれに直流磁場を付加し再度ホール素子の交流信号成分を取得する。ここで交流磁場は磁性体粒子の磁化が飽和しない弱い磁場であり、直流磁場は磁性体粒子の少なくとも一部のが飽和する磁場である。近くに磁性体粒子のないホール素子の出力信号は交流磁場のみの時と交流磁場+直流磁場に時で同じ信号出力となる。近くに磁性体粒子があるホール素子の出力信号は、磁性体粒子により磁束が収束され、交流磁場+直流磁場では磁化が飽和する為、交流磁場のみの方が交流磁場+直流磁場よりも大きくなる。従って交流磁場のみの出力信号と交流磁場+直流磁場の出力信号の差分が、磁性体粒子による信号成分となり、これを認証情報として利用する。
【0031】
以上のようにして、ICチップ固有の情報を認証情報として認証情報保持部に保持し、これを取得したCPUにおいて認証情報を利用することができる。
認証情報としては、例えば、ICカードが公開鍵方式を適用する場合の秘密鍵の情報等が挙げられる。従来のICカードでは秘密鍵の情報はEEPROMに収められ、ハードウエアレベルおよびソフトウエアレベルで外部からの情報の参照は守られてはいるが完全ではない。本発明の磁気センサ搭載のICカードは磁気センサ部に収められている情報を複製することは現実的に不可能なのでICカードを複製することは不可能である。
【0032】
その他、秘密鍵のみでなく、1つ1つのICカードに固有な情報として、そのICカードの真正を証明する認証情報として用いることができる。例えば、ICカードの認証情報保持部に保持される認証情報と、ICカードのROMやEEPROMに保持される情報と、の対応関係を、認証を実施する端末に予め保持することで、認証実施時にはこれらの情報と取得した情報を照合することで認証を実施することが可能である。
【0033】
なお、上記実施形態では、ICチップに、磁気情報保持部と磁気情報保持部から情報を取得する手段と、を1チップに搭載しているが、認証情報保持部のみをICチップに搭載し、磁場を印加するカードリーダ側で増幅回路から出力されるアナログ信号をそのまま取得し、デジタル信号に変換して処理しても良い。この場合には、ICチップを簡易、低コストに構成することができ、種々の利用が可能となる。例えば、商品券や紙幣等のホログラムの代わりにこのICチップを設けるとともに、認証を実施する店舗側のカードリーダを備えた端末において商品券等に付された認証情報を予め保持しておく。すなわち、例えば磁性体粒子の配置が106通りある場合に、一部のみを商品券に割り当てる。この商品券に割り当てられた認証情報は、商品券を発行する店舗側で予め認証情報を読み取っておく。これにより、商品券等の使用時に、その認証情報を取得した端末で、予め保持する認証情報と照合することで、偽造された商品券でないか認証することができる。すなわち、本発明を別の観点で見るならばユニークな情報を読み取り可能な状態で保持するICチップを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態のICチップを内蔵した接触式ICカードの概略を示す図である。
【図2】本実施形態の認証情報部の磁気センサの部分的な外観を示す図である。
【図3】ホール素子の構造を説明する図である。
【図4】アレイ状に配置した各々のホール素子を選択して出力を取り出す方法について説明する図である。
【図5】(a)は磁界を印加しない状態で磁性体粒子を磁気センサの表面に固定した状態を示す模式図、(b)は、磁界を印加した状態で固定した場合を示す模式図である。
【図6】異なる形状の磁性体粒子の磁化曲線を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 磁気センサ
2 ホール素子
4 金属配線
11 シリコン基板
13 凹部
30 ゲート電極
31 ソース電極
32 ドレイン電極
33 出力電極
35 絶縁層
36 ウエル領域
C0 ゲート電極線
C1 ゲート電極線
Mg 磁性体粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知した磁場の強さに応じた出力値を出力する複数の磁場検知素子がX行Y列(X及びYは自然数である)の2次元に配置されてなる磁気センサと、前記磁場検知素子の各々を選択する選択回路と、前記磁気センサの出力信号の増幅回路とを備え、
前記磁気センサの表面には、複数の磁性体粒子がランダムに配置されたことを特徴とするICチップ。
【請求項2】
前記磁場検知素子が半導体ホール素子であることを特徴とする請求項1に記載のICチップ。
【請求項3】
前記半導体ホール素子は、一対の電流端子と、前記電流端子間に流れる電流を制御するゲート電極と、電流が前記電流端子間に流れる電流に略垂直に流れるように配置された一対の出力端子を有することを特徴とする請求項2に記載のICチップ。
【請求項4】
前記磁性体粒子が超常磁性体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のICチップ。
【請求項5】
前記増幅回路からの出力を外部装置に出力するための接続端子を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のICチップ。
【請求項6】
前記増幅回路からの出力信号に基づき、前記磁性体粒子の磁気センサ表面での配置情報を取得する信号処理手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のICチップ。
【請求項7】
複数の磁性体粒子を磁場中で前記ランダムに配置させたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のICチップ。
【請求項8】
請求項1〜7に記載されるICチップを用いた認証方法であって、
前記複数の磁性体粒子に向けて磁場を印加し、
前記磁場中で前記磁場検知素子から出力される信号を取得し、
前記取得した信号に基づき、前記磁性体粒子の配置情報を取得し、認証情報として利用することを特徴とする認証方法。
【請求項9】
複数種類の磁場条件下のそれぞれにおいて前記磁場検知素子から得られる信号に基づき取得可能な複数種類の前記磁性体粒子の配置情報のうち、任意の1つを選択し又はそれらを組み合わせて認証情報として利用することを特徴とする請求項8に記載の認証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−268802(P2006−268802A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92376(P2005−92376)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】