説明

IDカード

【課題】 高画質の顔画像と鮮明で高品位な印刷が施され、カード券面情報が優れた耐久性を有し、偽造することが困難で、真偽判定においては簡便な方法で的確に判定でき、かつ高い生産性を有するIDカードを提供する。
【解決手段】 ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により黒色発色する発色層を有し、レーザー光照射により画像や文字情報をカード券面上に形成するIDカードにおいて、該発色層上にプロセスインキを用いたオフセット印刷によりフォーマット情報を印刷したことを特徴とするIDカード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のIDカードに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車の運転免許証等の免許証類をはじめ、パスポート、外国人登録証、身分証明証、写真付き会員証、写真付き名刺等の多くの各種認証識別カード(以下、IDカードという)が普及してきている。
【0003】
従来、IDカードの画像は、例えば、支持体の表面に銀塩写真法により顔写真や文字画像を形成し、更にその表面に保護層を設けた構成がとられている。この銀塩写真法等による顔写真のごとき階調画像は、他の記録手段を用いた場合と比較して、圧倒的に優れた画質を得ることができる。しかし、これとは逆に銀塩写真方式では、文字あるいはマークのごとき、2値画像を同時に得ようとした場合には、シャープネスに欠け、あるいは濃度に欠けるという問題点があった。このことは、銀塩写真の階調性に由来しており、階調画像を最適化するが故に、2値画像は劣化するという事情がある。
【0004】
このような事情から、顔写真部分をカードに埋め込み、あるいはラミネートシートに挟み込み、他の文字記録は2値画像に適した記録方法、例えば、印刷や種々のプリンターを用いた方法で記録する手法がとられてきた。しかし、この方法の場合には、カードに埋め込み、あるいは挟み込む為に手間取り、仕上がりもモノシック性に欠けたIDカードとなってしまう。
【0005】
上記課題に対し、プラスチックカード上に昇華転写印刷方式による画像を印画し、印画後にオーバーシートしてカードの提供する方法(例えば、特許文献1参照。)、インクジェット記録方式で顔写真や文字情報を印画、印字されたカードが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。また、熱拡散性染料受像層を設け、該受像層に色素である染料を受容して転写画像を形成した後、紫外線硬化保護層を設け、高品位の顔画像等を有するIDカードが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。これら提案されている方法では、銀塩に近い印画を得ることができるが、カード上の印画、印字を全て同じ印画方式、あるいは印字方式で行うため、カード生産性やコスト面で課題を持ち、形成した画像や文字の耐久性も十分ではない。それに加えて、近年IDカードで重要視されているセキュリティへの配慮も十分では無かった。
【0006】
特許文献1の昇華転写印刷方式による印画、印字後にオーバーシートしたカード、特許文献2のインクジェット記録方式で顔写真や文字情報を印画、印字されたカードにおいては、受像層上に印画像や文字情報が形成されるため、削り取る等の方法で印画像や文字情報を除去し、その後に昇華転写印刷方式、インクジェット記録方式あるいは他の方式により新たな印画像や文字情報を印画、印字、の様に、比較的容易に改竄でき、セキュリティの面では懸念があった。
【0007】
印画、印字のセキュリティを強化されたカードとしては、レーザー光照射により券面上に印画、印字するカード(例えば、特許文献4〜8参照。)が開示されており、該カードはカード基材上にあるレーザー光照射により黒色に発色する発色層を有し、レーザー光照射で発色層の中に印画像や印字情報を形成することができるため、削り取ることが殆ど不可能でありことから、偽造防止効果を上げることができる。
【0008】
上記特許文献4〜6に記載のレーザー印字カードにおいては、レーザー光照射により、黒色画像、黒色印字情報などの黒色情報を券面上に形成するが、近年では、更に、レーザー光照射により黒色以外のカラー発色する画像形成技術が検討され、発色性前駆体を封入したマイクロカプセル、発色性前駆体と接触反応により発色する重合性基を有する顕色剤モノマー、及び光重合開始剤を含む発色層を有し、レーザー光により該発色層を発色させて画像を形成する画像形成技術が示されている。(例えば、特許文献9〜13参照。)。
【0009】
上記各特許文献に記載の画像形成技術をIDカードに適用し、イエロー発色、マゼンタ発色、シアン発色の機能を持たせることにより、レーザー光照射により、発色層内部にカラー画像を形成したカードとなり、カラー画像の削り取り等の改竄手段ができず、偽造防止効果を高めたIDカードとなる。また、カード発色層の内部に印画像、印字情報を形成することで、従来の受像層上に昇華インキ画像、インクジェット印刷画像、溶融型インキ文字情報を形成したものに対し、摩耗性、耐水性、耐候性等の耐久性を大きく上げることが可能となる。
【0010】
しかしながら、IDカードのセキュリティ機能強化については、レーザー光による発色層内部への画像形成技術だけでは偽造防止に不十分であり、またIDカードでは比較的短時間の真偽判定が求められるが、レーザー光による発色層内部への画像形成技術の場合、見た目は溶融リボンによる溶融文字印字情報や昇華転写方式やインクジェット方式での印画像との大差無いため、瞬時の真偽判定強化とはならない。
【0011】
また、IDカードのほぼ全面上にレーザー光による発色層内部への印画、印字を行う場合、レーザー光による印画、印字形成は時間がかかるため、生産性の面で問題あり、作成時間の短縮化のためにレーザー光の照射エネルギーの強化や、多数のレーザー光照射装置を設置した場合には、大型機器化による高コストや設置場所が限定される等の問題、高エネルギー使用で環境への配慮が不十分となる。
【特許文献1】特開2002−144747号公報
【特許文献2】特開2001−239779号公報
【特許文献3】特開平6−24183号公報
【特許文献4】特開平8−248864号公報
【特許文献5】特開平10−6044号公報
【特許文献6】特開2001−175838号公報
【特許文献7】特開2004−122614号公報
【特許文献8】特開2004−98368号公報
【特許文献9】特開平8−90919号公報
【特許文献10】特開平8−127180号公報
【特許文献11】特開平11−249294号公報
【特許文献12】特開2000−199952号公報
【特許文献13】特開2001−33956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、第一の目的は、高画質の顔画像と鮮明で高品位な印刷が施され、カード券面情報が優れた耐久性を有するIDカードを提供することにある。本発明の第二の目的は、偽造することが困難であり、かつ真偽判定においては簡便な方法で的確に判定できるIDカードを提供することにある。本発明の第三の目的は、高い生産性を有するIDカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0014】
(請求項1)
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により黒色発色する発色層を有し、レーザー光照射により画像や文字情報をカード券面上に形成するIDカードにおいて、該発色層上にプロセスインキを用いたオフセット印刷によりフォーマット情報を印刷したことを特徴とするIDカード。
【0015】
(請求項2)
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により黒色発色する発色層を有し、レーザー光照射により画像や文字情報をカード券面上に形成するIDカードにおいて、該発色層上に特色インキまたはプロセスインキの色再現領域外の座標上に位置する特殊インキを用いた印刷によりフォーマット情報を印刷したことを特徴とするIDカード。
【0016】
(請求項3)
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により黒色発色する発色層を有し、レーザー光照射により画像や文字情報をカード券面上に形成するIDカードにおいて、該発色層上にカーボンレスブラックインキを用いた印刷により画像情報と文字情報からなるフォーマット情報を印刷したことを特徴とするIDカード。
【0017】
(請求項4)
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により黒色発色する発色層を有し、レーザー光照射により画像や文字情報をカード券面上に形成するIDカードにおいて、該発色層上にフォーマット情報の印刷と転写箔の付与を施したことを特徴とするIDカード。
【0018】
(請求項5)
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により黒色発色する発色層を有し、レーザー光照射により画像や文字情報をカード券面上に形成するIDカードにおいて、該発色層上にフォーマット情報の印刷とホログラム転写箔の付与を施したことを特徴とするIDカード。
【0019】
(請求項6)
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により、イエロー発色、マゼンタ発色及びシアン発色する発色層を有し、レーザー光によりカラー画像を形成するIDカードにおいて、該発色層上にプロセスインキを用いたオフセット印刷によりフォーマット情報を印刷したことを特徴とするIDカード。
【0020】
(請求項7)
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により、イエロー発色、マゼンタ発色及びシアン発色する発色層を有し、レーザー光によりカラー画像を形成するIDカードにおいて、該発色層上に特色インキまたはプロセスインキの色再現領域外の座標上に位置する特殊インキを用いた印刷によりフォーマット情報を印刷したことを特徴とするIDカード。
【0021】
(請求項8)
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により、イエロー発色、マゼンタ発色及びシアン発色する発色層を有し、レーザー光によりカラー画像を形成するIDカードにおいて、該発色層上にカーボンレスブラックインキを用いた印刷により画像情報と文字情報からなるフォーマット情報を印刷したことを特徴とするIDカード。
【0022】
(請求項9)
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により、イエロー発色、マゼンタ発色及びシアン発色する発色層を有し、レーザー光によりカラー画像を形成するIDカードにおいて、該発色層上にフォーマット情報の印刷と転写箔の付与を施したことを特徴とするIDカード。
【0023】
(請求項10)
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により、イエロー発色、マゼンタ発色及びシアン発色する発色層を有し、レーザー光によりカラー画像を形成するIDカードにおいて、該発色層上にフォーマット情報の印刷とホログラム転写箔の付与を施したことを特徴とするIDカード。
【0024】
(請求項11)
前記フォーマット情報の印刷が、凸版印刷または平版オフセット印刷により施されたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のIDカード。
【0025】
(請求項12)
前記フォーマット情報の印刷が、凸版印刷及び平版オフセット印刷の複合印刷により施されたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のIDカード。
【0026】
(請求項13)
前記フォーマット情報の印刷が、画像情報及び文字情報からなる有色印刷とOPニスを用いた無色印刷により施されたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のIDカード。
【0027】
(請求項14)
前記フォーマット情報の印刷が、アンカーニスを用いた無色印刷と、画像情報及び文字情報からなる有色印刷とOPニスを用いた無色印刷により施されたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のIDカード。
【0028】
(請求項15)
前記フォーマット情報の印刷を施した後、溶融リボンを用いて溶融文字情報を印字したことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のIDカード。
【0029】
(請求項16)
前記画像情報及び文字情報からなる有色印刷が、平版オフセット印刷方式で印刷したことを特徴とする請求項13または14に記載のIDカード。
【0030】
(請求項17)
前記画像情報及び文字情報からなる有色印刷を行う平版オフセット印刷に用いる版が、フェアドットスクリーンであることを特徴とする請求項16に記載のIDカード。
【0031】
(請求項18)
カード裏面の全面が、樹脂ラミネート加工または透明樹脂層印刷が施されていることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載のIDカード。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、高画質の顔画像と鮮明で高品位な印刷が施され、カード券面情報が優れた耐久性を有し、偽造することが困難で、真偽判定においては簡便な方法で的確に判定でき、かつ高い生産性を有するIDカードを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0034】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上にレーザー光照射により黒色発色する発色層を有するIDカード材料にフォーマット情報を印刷し、レーザー光照射により顔画像や文字情報、画像情報を印刷するIDカードにおいて、フォーマット情報の印刷を、1)プロセスインキを用いたオフセット印刷、2)特色インキまたは色再現領域外の座標上に位置する特殊インキを用いた印刷、3)少なくとも1種のカーボンレスブラックインキを用いた印刷、により行われ、フォーマット情報の印刷上に透明転写箔、ホログラム転写箔を設けることで、高画質の顔画像と鮮明で高品位な印刷が施され、カード券面情報が優れた耐久性を有するとともに、高い偽造防止性、簡便で的確な真偽判定が出来、更には高い生産性を有するIDカードを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0035】
また同様に、ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上にレーザー光照射によりイエロー発色、マゼンタ発色、及びシアン発色する発色層を有するIDカード材料にフォーマット情報を印刷し、レーザー光照射により顔画像や文字情報、画像情報を印刷するIDカードにおいて、フォーマット情報の印刷を、1)プロセスインキを用いたオフセット印刷、2)特色インキまたは色再現領域外の座標上に位置する特殊インキを用いた印刷、3)少なくとも1種のカーボンレスブラックインキを用いた印刷、により行われ、フォーマット情報の印刷上に透明転写箔、ホログラム転写箔を設けることで、高画質の顔画像と鮮明で高品位な印刷が施され、カード券面情報が優れた耐久性を有するとともに、高い偽造防止性、簡便で的確な真偽判定が出来、更には高い生産性を有するIDカードを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0036】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0037】
本発明のIDカードの基本的な構成を、図1に示す。
【0038】
図1は、本発明の黒色発色層を有するIDカードの構成の一例を示す断面図である。
【0039】
図1において、IDカード10は、ポリエステルまたはポリカーボネートからなる支持体11上に、レーザー光照射黒色発色層12、透明樹脂層13、フォーマット印刷層14、透明樹脂層13をそれぞれ積層した構成である。
【0040】
また、図2は、本発明のカラー発色層を有するIDカードの構成の一例を示す断面図である。
【0041】
図2において、IDカード20は、ポリエステルまたはポリカーボネートからなる支持体21上に、レーザー光照射イエロー発色層22、透明樹脂中間層23、レーザー光照射シアン発色層24、透明樹脂中間層23、レーザー光照射マゼンタ発色層25、透明樹脂層26、フォーマット印刷層27、透明樹脂層26をそれぞれ積層した構成である。
【0042】
次いで、本発明のIDカードの各構成要素の詳細について説明する。
【0043】
〔支持体〕
本発明のIDカードにおいては、支持体としてポリエステルまたはポリカーボネートからなる支持体を用いることを特徴とする。
【0044】
本発明で用いることのできるポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体、PET−G等のポリエステル樹脂を挙げることができる。
【0045】
本発明に係る支持体中には、必要に応じて、例えば、ICメモリー、光メモリー、磁気メモリー等を内蔵してもよく、単層でも上記フィルムの複合フィルムでもよい。基体の厚みは100〜1000μm程度、好ましくは200〜700μmである。また、裏面側には筆記層を設けてもよい。
【0046】
本発明のIDカードにおいては、カード基材の一方の面側に、レーザー光による黒色に発色する層、またはカラー発色する層、具体的にはイエロー発色、マゼンタ発色、及びシアン発色する発色層を有することを特徴とする。
【0047】
〔黒色発色層〕
黒色発色層は、レーザー光の照射による熱エネルギーで黒色に発色する層であり、カード基材上に形成される。黒色発色層はレーザー光照射前では透明が好ましく、レーザー光照射により黒色に発色する。本発明に用いられる黒色発色層に用いられる材料は、レーザー光によりマーキングが可能となるものであれば良く、無機系、金属系、有機色素系、高分子材料等の制限は特に無く、一般的に追記型光記録媒体に用いられるような材料系は、すべて可能である。光吸収層は、光吸収材料の蒸着、コーティングによる単独膜でも、ポリマー中に溶解、分散した塗液のコーティングによる塗膜のいずれでも良い。また無機と有機の複合蒸着膜でもよい。また、前述のいずれかの方法で光吸収層を薄膜フィルム上に形成し、そのフィルムをカードに接着して光吸収層をカード上に設けることも可能である。
【0048】
レーザー書き込み部分を光学的に明確にし、読み取り感度を高める目的で光吸収層の下層に反射膜層を設けたり、逆に光吸収層の上層に反射防止膜層、ハードコート層等のコーティング層を積層してもよい。また、このような光吸収層とコーティング層との層間に光吸収層の物理的、化学的変化によるレーザー書き込みで生ずる体積変化を吸収し得る比較的柔らかい緩衝層を設けても良い。レーザー書き込み部分を明確にし、読み取りレーザー光のレーザー書き込み位置検出を容易にするため、レーザー書き込み位置のガイドとなるトラックを溝形式あるいは印刷等で形成してもよい。
【0049】
レーザー書き込みは、書き換え不可能にする必要があり、物理的、化学的に不可逆な変化でなければならない。従って、レーザー書き込みの原理としては、レーザー光の光エネルギーを光吸収層が吸収し、層内で光−熱エネルギー変換による発熱をもとに光吸収層の構成要素が熱分解して書き込みする方法が、安定性の観点から好ましい。
【0050】
具体的な黒色発色層としては、下記のような構成が挙げられるが、これに限るものではない。
【0051】
透明樹脂と光吸収性材料を用いた光吸収層材料、例えば、アクリル樹脂と光吸収材料(色素、カーボンブラック)の混合物がある。色素ととしては、例えば、金属フタロシアニン系色素、縮合多環系色素、イオン性染料、シアニン系色素、ナフトキノン系色素、金属錯体系色素、インドアニリン系色素、アゾ系色素が挙げられる。これらの材料系は、それぞれ単独で用いても、また混合して使用してもよい。この発色層は、特定波長のレーザー光の吸収性のよい層であり、例えば、Nd:YAGレーザーなどを使用することができ、厚み1〜50μm程度のものが好適に使用される。
【0052】
〔カラー発色層〕
カラー発色層としては、層中に発色成分を含有する熱感応性マイクロカプセルと、該マイクロカプセル外部に、少なくとも、同一分子内に重合性基と発色成分と反応して発色させる部位を有する実質的に無色の化合物と、光重合開始剤を含有する発色層である。
【0053】
具体的態様としては、電子供与性無色染料を内包させたマイクロカプセル、マイクロカプセル外部に、電子受容性基と重合性基を同一分子内に有する化合物、光重合開始剤を含有するカラー発色層であり、カード基体上に形成される。
【0054】
このカラー発色層は、レーザー露光によりマイクロカプセル外部にある光硬化性組成物が重合して硬化し、潜像が形成され、加熱により未露光部分に存在する前記電子受容性基と重合性基を同一分子内に有する化合物がカラー発色層内を移動し、マイクロカプセル内の電子供与性無色染料と反応して、イエロー、マゼンタまたはシアンに発色する。
【0055】
電子供与性無色染料としては、従来より公知のものを使用することができる。以下に、その具体例を示すが、本発明に使用することができる電子供与性無色染料は、これらに限定されるものではない。具体的には、フタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、ピリジン系、ピラジン系化合物、フルオレン系化合物等の各種化合物を挙げることができる。
【0056】
フタリド系化合物としては、例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジエチルアミノ−o−ブトキシフェニル)−4−アザフタリド等が挙げられる。
【0057】
フルオラン系化合物としては、例えば、2−(ジベンジルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン等が挙げられる。
【0058】
チアジン系化合物としては、例えば、ベンゾイルロイコンメチレンブルー、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー等が挙げられる。
【0059】
ロイコオーラミン系化合物としては、例えば、4,4′−ビス−ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニル−ロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等が挙げられる。
【0060】
ローダミンラクタム系化合物としては、例えば、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン−(p−ニトリノ)ラクタム等が挙げられる。
【0061】
スピロピラン系化合物としては、例えば、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン3,3’−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン等が挙げられる。
【0062】
ピリジン系、ピラジン系化合物としては、例えば、米国特許第3,775,424号、同第3,853,869号、同第4,246,318号に記載の化合物が挙げられる。
【0063】
フルオレン系化合物としては、例えば、特開昭63−94878号等に記載の化合物が挙げられる。
【0064】
本発明のIDカードにおいては、シアン、マゼンタ、イエローの各発色色素用の電子供与性無色染料を使用する。シアン、マゼンタ、イエロー発色色素としては、米国特許第4,800,149号等に記載の各色素を使用することができる。更に、イエロー発色色素用電子供与性無色染料としては、米国特許第4,800,148号等に記載の色素も使用することができ、シアン発色色素用電子供与性無色染料としては、特開平63−53542号等に記載の色素も使用することができる。
【0065】
前記電子供与性無色染料の使用量は、イエロー発色、マゼンタ発色、及びシアン発色する発色層中に、各々0.01〜3g/m2が好ましく、0.1〜1g/m2がより好ましい。前記使用量が、0.01g/m2未満であると、十分な発色濃度を得ることができないことがあり、3g/m2を超えると、塗布適性が劣化することがある。本発明においては、イエロー発色、マゼンタ発色、及びシアン発色する発色層を多層構成とし、図2に記載のように複数積層して構成する。
【0066】
前記重合性基を有する電子受容性化合物、即ち、同一分子中に電子受容性基と重合性基とを有する化合物としては、重合性基を有し、かつ発色成分の一つである電子供与性無色染料と反応して発色し、かつ光重合して膜を硬化しうるものであれば全て使用することができる。前記電子受容性化合物としては、特開平4−226455号に記載の3−ハロ−4−ヒドロキシ安息香酸、特開昭63−173682号に記載のヒドロキシ基を有する安息香酸のメタアクリロキシエチルエステル、アクリロキシエチルエステル、同59−83693号、同60−141587号、同62−99190号に記載のヒドロキシ基を有する安息香酸とヒドロキシメチルスチレンとのエステル、欧州特許第29,323号に記載のヒドロキシスチレン、特開昭62−167077号、同62−16708号に記載のハロゲン化亜鉛のN−ビニルイミダゾール錯体、同63−317558号に記載の電子受容性化合物等を参考にして合成できる化合物等が挙げられる。
【0067】
前記電子受容性基と重合性基とを同一分子内に有する化合物としては、例えば、スチレンスルホニルアミノサリチル酸、ビニルベンジルオキシフタル酸、β−メタクリロキシエトキシサリチル酸亜鉛、β−アクリロキシエトキシサリチル酸亜鉛、ビニロキシエチルオキシ安息香酸、β−メタクリロキシエチルオルセリネート、β−アクリロキシエチルオルセリネート、β−メタクリロキシエトキシフェノール、β−アクリロキシエトキシフェノール、β−メタクリロキシエチル−β−レゾルシネート、β−アクリロキシエチル−β−レゾルシネート、ヒドロキシスチレンスルホン酸−N−エチルアミド、β−メタクリロキシプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート、β−アクリロキシプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート、メタクリロキシメチルフェノール、アクリロキシメチルフェノール、メタクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、等が挙げられるが、これらに限定されるものでは無い。
【0068】
前記重合性基を有する電子受容性化合物は、前記電子供与性無色染料と組合わせて用いられる。この場合、電子受容性化合物の使用量としては、使用する電子供与性無色染料1質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましい。0.5質量部未満であると、十分な発色濃度を得ることができないことがあり、20質量部を超えると、感度の低下や塗布適性の劣化を招くことがある。
【0069】
次に、本発明に係るイエロー発色、マゼンタ発色、及びシアン発色する発色層中に用いる光重合開始剤について説明する。
【0070】
光重合開始剤は、光露光することによりラジカルを発生して層内で重合反応を起こし、かつその反応を促進させることができる。この重合反応により記録層膜は硬化し、所望の画像形状の潜像を形成することができる。
【0071】
光重合開始剤は、公知のものの中から適宜選択することができる。公知の光重合開始剤として、例えば、米国特許第4,950,581号(第20欄、第35行〜第21欄、第35行)に記載のものを挙げることができる。化合物としては2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−スチルフェニル)−s−トリアジン等のトリハロメチルトリアジン等のトリアジン化合物や、ベンゾイルパーオキサイド等のカチオン系光重合開始剤も用いることができる。
【0072】
光重合開始剤としては、300〜1000nmに最大吸収波長を有する分光増感化合物と該分光増感化合物と相互作用する化合物とを含有するものが好ましい。具体的にはに、分光増感化合物色素/ホウ素化合物等が挙げられる。
【0073】
分光増感化合物と相互作用する化ホウ素化合物としては、特開昭62−143044号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号等に記載の有機ボレート化合物、またはカチオン性色素から得られる分光増感色素系ボレート化合物、有機系ボレート塩化合物等が挙げられる。
【0074】
分光増感化合物としては、300〜1000nmの波長領域に最大吸収波長を有する分光増感色素が好ましい。画像露光に用いる光源として、青色、緑色、赤色等の光源や赤外レーザー等を選択することができる。例えば、異なる色相に発色する単色のカラー発色層を積層した多色のIDカードにおいてカラー画像を形成する場合には、発色色相の異なる各単色カラー発色層中に異なる吸収波長を有する分光増感色素を存在させ、その吸収波長に適合した光源を用いることにより、カラー画像を得ることができる。
【0075】
前記分光増感色素としては、公知の化合物の中から適宜選択することができ、例えば、後述の「分光増感化合物と相互作用する化合物」に関する特許公報や、「Research Disclogure,Vol.200,1980年12月、Item 20036」や「増感剤」(p.160〜p.163、講談社;徳丸克己・大河原信/編、1987年)等に記載のものが挙げられ、具体的には、3−ケトクマリン化合物、チオピリリウム塩、ナフトチアゾールメロシアニン化合物、メロシアニン化合物等が挙げられる。前記分光増感化合物の使用量としては、感光感熱記録層または感光感圧記録層の総質量に対し、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。
【0076】
光重合開始剤中の分光増感色素と有機ボレート化合物との総量は、重合性基を有する化合物の使用量に対し、0.1〜10質量%の範囲で使用することが好ましく、0.1〜5質量%の範囲で使用することがより好ましいが、0.1〜1質量%の範囲で使用することが最も好ましい。
【0077】
本発明に係るカラー発色層では、電子供与性無色染料の発色成分をマイクロカプセルに内包して使用することが好ましい。マイクロカプセル化する方法としては、米国特許第2,800,457号、同第2,800,458号に記載の親水性壁形成材料のコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3,287,154号、英国特許第990,443号、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−771号等に記載の界面重合法、米国特許第3,418,250号、同第3,660,304号に記載のポリマー析出による方法、米国特許第3,796,669号に記載のイソシアネートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3,914,511号に記載のイソシアネート壁材料を用いる方法、米国特許第4,001,140号、同第4,087,376号、同第4,089,802号に記載の尿素−ホルムアルデヒド系、尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4,025,455号に記載のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシブロビルセルロース等の壁形成材料を用いる方法、特公昭36−9168号、特開昭51−9079号に記載のモノマーの重合によるin situ法、英国特許第952,807号、同第965,074号に記載の電解分散冷却法、米国特許第3,111,407号、英国特許第930,422号に記載のスプレードライング法、特公平7−73069号、特開平4−101885号、特開平9−263057号に記載の方法等の従来公知の方法を用いることができる。
【0078】
マイクロカプセル化する方法としては、発色成分を疎水性の有機溶媒に溶解または分散させ調製した油相を、水溶性高分子を溶解した水相と混合し、ホモジナイザー等の手段により乳化分散した後、加温することによりその油滴界面で高分子形成反応を起こし、高分子物質のマイクロカプセル壁を形成させる界面重合法を採用することができるが、これに限定されない。
【0079】
本発明に係るカラー発色層において好ましいマイクロカプセルは、常温では、マイクロカプセル壁の物質隔離作用によりマイクロカプセル内外の物質の接触が妨げられ、ある値以上に熱が加えられた場合のみ、マイクロカプセル内外の物質の接触が可能となるようなものである。この現象は、マイクロカプセル壁の材料、マイクロカプセル内包物質、添加剤等を適宜選択することにより、マイクロカプセルの物性の変化として自由にコントロールすることができる。
【0080】
本発明において使用しうるマイクロカプセル壁の材料は、油滴内部または油滴外部に添加される。マイクロカプセル壁の材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレンメタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等が挙げられる。中でも、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましく、ポリウレタン、ポリウレアがより好ましい。
【0081】
本発明において、発色成分を含有するマイクロカプセルを形成する際、内包する発色成分は、カプセル中に溶液状態で存在していても、固体状態で存在していてもよい。
【0082】
内包する発色成分は溶解する溶媒としては、一般に、高沸点溶媒の中から適宜選択することができ、リン酸エステル、フタル酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、その他のカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、アルキル化ビフェニル、アルキル化ターフェニル、塩素化パラフィン、アルキル化ナフタレン、ジアリルエタン、常温で固体の化合物、オリゴマーオイル、ポリマーオイル等が用いられるできる。
【0083】
マイクロカプセルの平均粒子径としては、20μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、0.1μm以上であることが特に好ましい。
【0084】
本発明に係るカラー発色層のバインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール等の水溶性バインダー、ポリスチレン、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリメチルアクリレート,ポリブチルアクリレート,ポリメチルメタクリレート,ポリブチルメタクリレートやそれらの共重合体等のアクリル樹脂、フェノール樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エチルセルロース、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の溶剤可溶性高分子、或いは、これらの高分子ラテックスを用いることもできる。
【0085】
本発明に係る多層から構成される多色カラー発色層は、支持体上に複数の単色の発色層を積層して構成され、各発色層にそれぞれ発色色相の異なる発色成分を含有するマイクロカプセルと、それぞれ異なる波長の光に感光する光重合性組成物とを含有させることにより多色のカラー発色層とすることができる。光重合性組成物は、それぞれ異なる吸収波長を有する分光増感化合物を使用することにより、異なる波長の光に感光する光重合性組成物とすることができる。この場合、各単色の発色層間に中間層を設けることもでき、最上層のカラー発色層の上に保護層を設けてることもできる。
【0086】
本発明に係る多色カラー発色層は、イエロー発色する発色成分を含有するマイクロカプセルを含む発色層、マゼンタ発色する発色成分を含有するマイクロカプセルを含む発色層、シアン発色する発色成分を含有するマイクロカプセルを含有する発色層で構成することが好ましい。
【0087】
〔アンカーニス層〕
本発明のIDカードにおいては、レーザー光照射黒色発色層上、或いはレーザー光照射カラー発色層上にフォーマット情報を印字、印画するが、フォーマット情報が印刷される前に、アンカーニスを用いたアンカー層を印刷により形成することが好ましい。
【0088】
アンカーニス層としては、引っ張り弾性率(ASTM D790)が196MPa以上であることが好ましく、また、1960MPa以下であることが好ましい。
【0089】
アンカーニス層の厚さは、クッション効果の観点から、2μm以上(特に、5μm以上)であることが好ましく、また、全体の厚さやカール抑制の観点から、アンカーニス層の厚さは通常、1〜100μm、好ましくは3〜30μmである。
【0090】
また、アンカーニス層を形成する材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体樹脂、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体樹脂、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体樹脂、スチレン−水素添加イソプレン−スチレンブロック共重合体樹脂などのポリオレフィン樹脂であることが、柔軟性を有するので好ましい。
【0091】
〔OPニス層〕
本発明のIDカードにおいては、フォーマット情報を印刷した後、少なくともフォーマット情報の印刷領域上に、OPニス層を印刷で設けることが好ましい。
【0092】
本発明に係るOPニスのOPは「オーバープリント」の略で、OPニスとは印刷工程時に印刷物に最終インクとして塗布される無色でほぼ透明な溶液である。OPニス層の組成物は、各種のものが好適に利用でき、オフセット印刷機、凸版印刷機、グラビア印刷機、専用のニス引き機等によって受像層表面に塗布される。
【0093】
本発明で用いることのできるOPニス層の組成物を例示すると、例えば、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、水添ロジンエステル等の樹脂と、アマニ油、シナキリ油、脱水ヒマシ油等の乾性油、さらに、コバルトドライヤ、また必要に応じ、ゲル化剤、体質顔料等の添加剤を加えたもの、また、低重合度の塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル酸エステル・スチレン共重合樹脂、さらに、コロイダルディスパージョン、またはエマルジョンの形で使用される各種アクリル共重合樹脂、高酸価のロジンマレイン酸樹脂、セラミック及びその誘導体等の樹脂、アルコール類やセロソルブ類等の補助剤、また必要に応じ、水溶化剤、可塑剤、ワックス、防湿剤等の添加剤を加えたもの、あるいは、ポリイソシアネートポリマーとポリオールからなる熱硬化性のポリウレタン系の熱硬化型OPニス組成物等を挙げることができる。
【0094】
OP層の印刷としては、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式もしくはシルクスクリーン方式等で塗布され、乾燥後実質的に無色透明の皮膜を形成する。
【0095】
オフセット印刷方式で塗布する場合、OPニス組成物としては、例えば、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂、またはこれら乾性油変性樹脂等の樹脂と、あまに油、桐油、大豆油等の乾性油、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、アロマチックハイドロカーボン、ナフテン、α−オレフィンまたはこれらの混合物等の溶剤、ドライヤー、乾燥抑制剤等の添加剤から構成される。
【0096】
また、グラビア印刷方式で塗布する場合、OPニス組成物としては、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ゴム樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂及びセルロース樹脂からなる群の中から選ばれる樹脂、及びトルエン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤から構成することができる。
【0097】
また、OPニス組成物が活性エネルギー線硬化型OPニス組成物である場合、活性エネルギー線硬化型OPニス組成物は、紫外線あるいは電子線等の活性エネルギー線によって硬化し得るものであり、通常使用されているオフセット印刷用活性エネルギー線硬化型OPニス組成物、シルクスクリーン印刷用活性エネルギー線硬化型OPニス組成物、凸版印刷用等活性エネルギー線硬化型OPニス組成物等を用いることができる。このような活性エネルギー線硬化型OPニス組成物は、基本的に、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーまたはオリゴマーからなる活性エネルギー線硬化性樹脂成分を含有し、必要に応じて、光硬化開始剤、樹脂、増感剤、体質顔料、その他の各種添加剤を含んでいてもよい。エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーまたはオリゴマーからなる活性エネルギー線硬化性樹脂成分の例を挙げると、(メタ)アクリル酸エステル、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(テトラ)(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(ヘキサ)(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリレートである。これら2種以上の混合物も使用できる。
【0098】
活性エネルギー線硬化型OPニス組成物に使用され得る光硬化開始剤としては、一般的に市販される光硬化開始剤を使用することができる。そのような光硬化開始剤の例を挙げると、例えば、イルガキュアー651、イルガキュアー184、ダロキュアー1173、イルガキュアー907、イルガキュアー369(以上、チバ・スペシャルティーケミカルズ社製);カヤキュアーDETX、カヤキュアーITX(以上、日本化薬社製);ベンゾフェノン、アセトフェノン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル等であり、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、光硬化開始剤とともに、増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル等の脂肪族アミン、芳香族アミンを併用してもよい。
【0099】
活性エネルギー線硬化型OPニス組成物に配合され得る樹脂は、OPニス組成物皮膜強度の向上、印刷用紙への当該ニスの固着性の向上等の目的で必要に応じて使用されるものである。そのような樹脂としては、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂を用いることができ、さらには、(メタ)アクリル酸で変成された樹脂を用いることもできる。(メタ)アクリル酸変成樹脂としては、一分子内に(メタ)アクリロイル基を有するウレタン系(メタ)アクリレート、エポキシ系(メタ)アクリレート、ポリオール系(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0100】
〔熱接着性樹脂層〕
本発明のIDカードにおいては、発色層上にフォーマット情報の印刷と共に、転写箔を付与することが好ましく、例えば、熱転写法により熱接着性樹脂層を設けることが好ましい。
【0101】
本発明において、熱接着性樹脂層は、フォーマット情報印刷を設けたカード上に加熱加圧することにより、実質的に透明な熱接着性樹脂転写箔を転写して画像を保護する。
【0102】
熱接着性樹脂転写箔は、フィルム支持体上に離型層、透明樹脂層、中間層、接着層等からなる転写箔として構成される。
【0103】
支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、等のポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6.6等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂シート、または上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、金属箔等の単層体或いはこれら2層以上の積層体が挙げられる。本発明の支持体の厚みは10〜200μm望ましくは15〜80μmである。10μm以下であると支持体が転写時に破壊してしまい問題である。この発明の特定離型層においては、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0104】
支持体には必要に応じて凹凸を有することができる。凹凸作成手段としては、マット剤練り込み、サンドブラスト加工、ヘアライン加工、マットコーティング、もしくはケミカルエッチング等が挙げられる。マットコーティングの場合有機物及び無機物のいずれでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号等に記載のアルカリ土類金属またはカドミウム、亜鉛等の炭酸塩、等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号や英国特許第981,198号等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号等に記載されたポリカーボネートの様な有機マット剤を用いることができる。マット剤の付着方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。また、複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。この発明で凹凸加工する場合、転写面、背面のいずれか片面以上に施すことが可能である。
【0105】
剥離層としては、高ガラス転移温度を有するアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ボリビニルブチラール樹脂などの樹脂、ワックス類、シリコンオイル類、フッ素化合物、水溶性を有するポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、Si変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース樹脂、ヒドロキシセルロース樹脂、シリコン樹脂、パラフィンワックス、アクリル変性シリコーン、ポリエチレンワックス、エチレン酢酸ビニルなどの樹脂が挙げられ、他にポリジメチルシロキサンやその変性物、例えばポリエステル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、アルキッド変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等のオイルや樹脂、またはこの硬化物、等が挙げられる。他のフッ素系化合物としては、フッ素化オレフィン、パーフルオロ燐酸エステル系化合物が挙げられる。好ましいオレフィン系化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の分散物、ポリエチレンイミンオクタデシル等の長鎖アルキル系化合物等が挙げられる。これらの離型剤で溶解性の乏しいものは分散するなどして用いることができる。転写箔を2枚転写する場合は熱可塑性エラストマーを添加してもよい。熱可塑性エラストマーは具体的にスチレン系(スチレン・ブロック・コポリマー(SBC))、オレフィン系(TP)、ウレタン系(TPU)、ポリエステル系(TPEE)、ポリアミド系(TPAE)、1,2−ポリブタジエン系、塩ビ系(TPVC)、フッ素系、アイオノマー樹脂、塩素化ポリエチレン、シリコーン系等が挙げられ、具体的には1996年度版「12996の化学商品」(化学工業日報社)等に記載されている。
【0106】
本発明で好適に用いられるポリスチレンとポリオレフィンのブロックポリマーからなる引っ張り伸びが100%以上熱可塑性エラストマーとは、スチレンおよび炭素数10以下の直鎖または分岐の飽和アルキルのブロックからなる熱可塑性樹脂(以下熱可塑性樹脂S1ともいう)を言う。特に、ポリスチレン相とポリオレフィンを水素添加した相をもつブロックポリマーであるスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS)、スチレン−エチレン/プロピレン(SEP)のブロックポリマー等が挙げられる。
【0107】
また、必要に応じて、離型層と透明樹脂層、あるいは活性光線硬化層との間に熱硬化型樹脂層を用いてもよい。具体的には、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0108】
転写箔の透明樹脂層は、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、スチレン、パラメチルスチレン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等のビニル単量体やセルロース系、熱可塑性ポリエステル、天然樹脂等、他の任意の高分子重合体を併用してもよい。また、その他、赤松清監修、「新・感光性樹脂の実際技術」、(シーエムシー、1987年)や「10188の化学商品」657〜767頁(化学工業日報社、1988年)記載の業界公知の有機高分子重合体を併用してもよい。本発明においては、画像記録体上に保護をする目的で光または/熱硬化性層を転写箔で設けることが好ましく、場合により紫外線硬化液を画像記録体上に塗布するために光または/熱硬化性層の他に、一般的透明樹脂層を有することも可能である。
【0109】
光または/熱硬化性層とは前記の組成物からなる材料であれば特に制限はない。光または/熱硬化性層を使用する場合は、光硬化または熱硬化があらかじめしてあることが好ましいが場合により、半硬化済みの光または/熱硬化性層であっても良い。
【0110】
透明樹脂層の厚みは0.3〜50μmが好ましく、より好ましくは0.3〜30μm、特に好ましくは0.3〜25μmである。
【0111】
転写箔の中間層としては、中間層1層以上の層から構成されることが好ましく場合によりプライマー層、バリヤ層として介在しても層間の接着性をさらに向上させてもよい。
【0112】
例えば、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、セルロース系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、SEBS樹脂、SEPS樹脂、およびそれらの変性物などを用いることができる。
【0113】
上述した樹脂の中でも、好ましくは塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、SEBS樹脂、SEPS樹脂である。これらの樹脂は一種を単独に用いることもできるし、二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0114】
具体的な化合物としては、ポリスチレンとポリオレフィンのブロックポリマーからなる熱可塑性樹脂、ポリビニルブチラール等が好ましい。本発明の中間層において、重合度が1000以上のポリビニルブチラール樹脂としては積水化学工業(株)製のエスレックBH−3、BX−1、BX−2、BX−5、BX−55、BH−S、電気化学工業(株)製のデンカブチラール#4000−2、#5000−A、#6000−EP等が市販されている。中間層のポリブチラールの熱硬化樹脂としては熱硬化前の重合度に限定はなく低重合度の樹脂でもよく、熱硬化にはイソシアネート硬化剤やエポキシ硬化剤等を用いることができ、熱硬化条件は50〜90℃で1〜24時間が好ましい。中間層の厚みは0.1〜1.0μmが好ましい。また、その他の添加剤とを使用しても良く特に制限はない。
【0115】
転写箔の接着層としては、熱貼着性樹脂としてエチレン酢酸ビニル樹脂、エチンエチルアクリレート樹脂、エチレンアクリル酸樹脂、アイオノマー樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、粘着付与剤(例えばフェノール樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂など)などが挙げられそれらの共重合体や混合物でもよい。具体的には、ウレタン変性エチレンエチルアクリレート共重合体としては東邦化学工業(株)製のハイテックS−6254、S−6254B、S−3129等が市販され、ポリアクリル酸エステル共重合体としては日本純薬(株)製のジュリマーAT−210、AT−510、AT−613、互応化学工業(株)製のプラスサイズL−201、SR−102、SR−103、J−4等が市販されている。ウレタン変性エチレンエチルアクリレート共重合体とポリアクリル酸エステル共重合体の質量比は9:1から2:8が好ましく、接着層の厚みは0.1〜1.0μmが好ましい。
【0116】
転写箔の被転写材への転写は通常サーマルヘッド、ヒートローラー、ホットスタンプマシンなどの加熱しながらかあつを行える手段を用い転写を行うことができる。具体的にはホットスタンプマシンを使用する場合、表面温度150〜300℃に加熱し、直径5cmゴム硬度85のヒートローラーを用いて圧力5〜50MPaで、0.5〜10秒間熱をかけて転写を行うことができる。
【0117】
〔ホログラム転写箔〕
本発明のIDカードにおいては、発色層上にフォーマット情報の印刷と共にホログラム転写箔を付与することが好ましい。
【0118】
本発明に係るホログラム転写箔層は、ホログラム転写箔をフォーマット情報印刷を設けたカード上に加熱加圧することにより、転写して形成することができる。
【0119】
ホログラム転写箔としては、レリーフ型ホログラム、リップマン型ホログラムを使用することができる。
【0120】
レリーフ型ホログラム箔としては、支持体フィルム上にホログラム形成層とホログラム効果層とをこの順に積層してなる。具体的に言うと、ホログラム転写箔は、例えばポリエチレンテフタレートフィルム等の支持体フィルムの表面に、常温で固体であり、しかも熱形成性を有する樹脂層、例えば常温で固体の熱可塑成性の電子線硬化性樹脂層(ホログラム形成層)を形成し、この面にホログラムの干渉模様が凹凸状に形成されているホログラム原版を加圧圧縮させて、凹凸形状を樹脂表面に転写し、硬化し、さらに凹凸形状の表面に十分な透明性とある角度での大きな反射性を兼ね備え、かつホログラム形成層と屈折率が異なる材料(例えば、TiO2、SiO2、ZnS等の蒸着膜)からなる薄膜のホログラム効果層を形成することによって得ることができる。
【0121】
支持体フィルムとホログラム形成層との間には離型層、場合によっては中間層を有し、ホログラム効果層上にはカードに接着するための接着層、場合によってはホログラム効果層と接着層の間に中間層を有する。
【0122】
離型層、接着層、中間層は、前記熱接着性樹脂層に使われるのと同様の層を適用することができる。
【0123】
昼光、照明光等の白色光で像が再生されるホログラムは、通常の状態でもホログラム像が観察されるので、装飾性にも優れている。一方、レーザー光によって像が再生されるタイプのものは、改ざんの発見性に優れている。
【0124】
〔フォーマット情報の印刷〕
本発明のIDカードにおいては、フォーマット情報の印刷を、各種の印刷により行うことを特徴とする。
【0125】
本発明でいうフォーマット情報とは、例えば、属性情報である氏名、住所、生年月日、資格等であり、属性情報は通常文字情報として記録され、フォーマット印刷は、従来、オフセット印刷、グラビア印刷、シルク印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、凸版印刷、インクジェット方式、昇華転写方式、電子写真方式、熱溶融方式、再転写方式等のいずれの方式によって形成されていたが、本発明においては、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷方法で行うことを特徴とする。
【0126】
フォーマット情報の印刷方法としては、平版オフセット印刷、凸版印刷が好ましく、平版オフセット印刷と凸版印刷の両方の印刷を入れた複合印刷も好ましく適用できる。
【0127】
(プロセスインキを用いたオフセット印刷)
請求項1または請求項6に係る発明では、フォーマット情報の印刷がプロセスインキを用いたオフセット印刷により行われることを特徴であり、好ましくは平版オフセット印刷
により印刷する。
【0128】
本発明でいうプロセスインキとは、イエロー(Yellow)、マゼンタ(Magenta)、シアン(Cyan)、ブラック(Black)の4色刷で色再現が可能な組合せのインキであであり、本発明で規定する構成からなるIDカードにおいて、フォーマット情報の印刷をプロセスインキを用いた平版オフセット印刷により行うことにより、鮮明で高品位な印刷が施されて、大量生産に好適であり、耐久性に優れ、長期間に亘って鮮明にその情報を維持し、個人情報を確実に保存することのできるIDカードを作製することができる。
【0129】
平版オフセット印刷は、画線部と非画線部の高低差に凹凸がなく、ほぼ同一平面で構成されており、版面から直接インキを被印刷物に印刷せずに、インキを一度転写体(ブランケット)に転移させた後、被印刷物に転移する印刷方式である。平版オフセット印刷では、通常、インキの油と水が混ざりにくい性質を利用し、湿し水と呼ばれる水を使用する。
【0130】
(特色インキまたは色再現領域外の座標上に位置する特殊インキを用いたト印刷)
請求項2または請求項7に係る発明では、フォーマット情報の印刷を、特色インキ、または色再現領域外の座標上に位置する特殊インキを用いた印刷で行うことを特徴とする。
【0131】
印刷方式としては、オフセット印刷が好ましく、平版オフセット印刷、凸版オフセット印刷、等のオフセット印刷で印刷できる。
【0132】
本発明でいう特色インキとは、上記プロセスインキであるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックを適宜調合して形成したカラーインキであり、例えば、ブルー、グリーン、レッド、バイオレット、パープル、オレンジ等のインキが挙げられる。
【0133】
また、本発明でいう色再現領域外の座標上に位置する特殊インキとは、例えば、パールインキ、メタリックインキ、蛍光インキ等が挙げられる。
【0134】
本発明では、カードの画像に見る角度により色彩が変化するパールインキと呼ばれる色彩変化インキを用いて画像情報を形成する方法も挙げられる。パールインキは、薄膜状の金属粒子などを顔料として含んでなるもので、この金属粒子により光を多重反射する性質を有する。この反射光は、金属粒子の厚さや粒径により、光の波長、すなわち、色が決まり、この光が互いに干渉し合うことで色彩変化を生じさせるものである。本発明では、IDカードに形成する画像情報にこの様な反射光の干渉による色彩変化させる性質を有するパールインキを用いることにより、作成したカードを複写した場合はパールインキで画像形成を行った領域の画像を正確に再現させず、コピーによるカードの偽造防止を可能にしている。また、正規のカードと複写物とを目視で容易に判別することが可能である。
【0135】
パールインキには、パール顔料が含有されており、パール顔料としては、古くは真珠粉や貝殻の内側部分の微粉等を用いていたが、現在では微細なフレーク(薄片)の外側を、金属酸化物もしくは金属酸化物の混合物より被覆したものが主に用いられている。
【0136】
微細なフレークとしては、例えば、雲母、タルク、カオリン、オキシ塩化ビスマス、あるいは、ガラスフレーク、SiO2フレーク、もしくは合成セラミックのフレーク等があり、これらの微細なフレークの外側を被覆する金属酸化物の例としては、TiO2、Fe23、SnO2、CrO3、ZnOがある。これらの組合せの中でも、雲母、ガラスフレーク、もしくはSiO2フレークを、TiO2被覆またはFe23被覆されたものが好ましい。パール顔料の個々のフレークの大きさは、1〜100μmである。パールインキ用のパール顔料としては、上記のものを自製してもよいが、メルク社製の商品名「Iriodin」、資生堂(株)製の商品名「インフィニットカラー」等の市販品を使用することができる。
【0137】
本発明のIDカードに使用されるメタリックインキとしては、厚い画像皮膜が形成可能で、金属粉の密度が大きく、粒度の比較的粗くなる金属光沢を得る印刷方式が好ましく、さらに、カードに曲げやねじれの様な外力が加わってもメタリックインキ画像が画像形成層から剥離しない耐久性や、長期にわたり金属光沢を発現する耐候性や耐摩擦性等を満足する画像形成方式を採用することが望ましい。この様な優れた耐久性を有するメタリックインキ画像を形成する技術としては、例えば、特開平8−290646号公報に開示されたメタリックインキを用いた印刷技術が挙げられる。
【0138】
メタリックインキとは、一般的には、光を反射させることにより金属光沢を発現させる金属フレーク等の金属粉や、屈折率を変化させる粉等を含有させたインキのことをいい、ビヒクルに金属粉を混和して作製される。例えば、金インキには黄銅の粉末や黄色系に着色したアルミ粉末が用られる。また、黄銅における亜鉛の含有量を調整したり、あるいはアルミ箔の着色を調整することにより、赤口や青口等の色調を変えたものも得られる。また、銀インキにはアルミ粉末が用いられる。
【0139】
本発明で用いられるメタリックインキは、IDカードの作成方法に合わせて金属粉の粒度や密度を適宜調整して使用される。
【0140】
この様に、本発明のIDカードは、フォーマット情報の印刷にメタリックインキを用いてカード作成を行うことにより、作成したIDカードをカラーコピーで複写しても、正規カードが有するメタリックインキ特有の金属の質感を再現することができない。そして、IDカード上に作成された画像情報中の特定パターンに金属光沢を付与するだけで、かなりの精度で本物と偽物との識別判定を目視で行うことが可能となる。
【0141】
また、蛍光インキの材料としては、たとえば、粒径0.7〜50μmの無機蛍光顔料、有機蛍光顔料、ビヒクル等が質量率15〜45%で含まれるものが用いられる。
【0142】
無機蛍光顔料としては、耐久性、対候性に優れ、たとえば、Ca、Ba、Mg、Zn、Cd等の酸化物、硫化物、ケイ酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩等の結晶を主成分とし、Mn、Zn、Ag、Cu、Sb、Pb等の金属元素、または、ランタノイド類等の希土類元素を活性剤として添加して得られる顔料であり、例えば、特開昭50−6410号、同61−65226号、同64−22987号、同64−60671号、特開平1−168911号等に記載されている無機蛍光体を適宜使用することができるが、その結晶母体としては、Y22S、Zn2SiO4、Ca5(PO43Cl等に代表される金属酸化物、ZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを賦活剤または共賦活剤として組み合わせたものが好ましい。
【0143】
結晶母体及び賦活剤または共賦活剤は、特に元素の組成に制限はなく、同族の元素と一部置き換えたものでも使用可能で、紫外から青色領域を吸収して可視光を発するものであればどのような組み合わせでも使用可能であるが、無機酸化物蛍光体、または無機ハロゲン化物蛍光体を使用することが好ましい。
【0144】
有機蛍光顔料としては、粒径が小さくできるため、インキ化しやすく、例えば、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、トリアゾール、カルバゾール、ピリジン、ナフタル酸、イミダゾロン等の誘導体、クリオレセイン、エオシン等の色素、アントラセン等のベンゼン環をもつ化合物等である。
【0145】
ビヒクルとしては、例えば、波長400〜700nmの可視光領域内に吸収域をもたないものが用いられ、熱可塑性が高いもの(熱硬化性が低いもの)から示すと、たとえば、天然樹脂(たとえば、蛋白質、ゴム、セルロース類、シェラック、コパル、でん粉、ロジン等)、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ、不飽和ポリエステルが用いられ、好適には、溶剤不要のため汚染しにくい光重合硬化型もしくは電子線硬化型のアクリル系樹脂が用いられる。
【0146】
本発明のIDカードにおいて用いることのできる特殊インキとしては、上記説明した各特殊インキの他に、例えば、赤外線吸収インキ、燐光インキ、示温インキ、色相変化インキ等が挙げられる。
【0147】
(カーボンレスブラックインキを用いた平版オフセット印刷)
請求項3または請求項8に係る発明では、フォーマット情報の印刷を、少なくとも1種のカーボンレスブラックインキを用いた印刷で行うことを特徴とする。
【0148】
本発明でいうカーボンレスブラックインキとは、黒色顔料であるカーボンブラックは使用せずに、プロセスインキであるイエロー、マゼンタ、シアンの各インキを、例えば、1:1:1に調肉し、その添加剤として樹脂,マット剤等を必要に応じて混合することにより調製したインキである。
【0149】
次いで、本発明のIDカートに係るその他の要素について説明する。
【0150】
本発明においては、フォーマット情報を印刷した後、少なくともフォーマット情報の印刷領域上に設けられる透明樹脂層の印刷を、平版オフセット印刷以外の印刷方式で行うことが好ましい。
【0151】
平版オフセット印刷以外の印刷方式としては、例えば、グラビア印刷、シルク印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、凸版印刷、インクジェット方式、昇華転写方式、電子写真方式、熱溶融方式、再転写方式等の印刷方式を挙げることができるが、その中でも、凸版印刷により透明樹脂層2を印刷することが、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から説くに好ましい。
【0152】
また、本発明のIDカードにおいては、フォーマット情報の印刷に用いる平版オフセット印刷が、湿し水ローラ等により湿し水を付与する方式である平版水有りオフセット印刷であることが好ましい。また、必要に応じて、湿し水を用いない平版水無しオフセット印刷も用いることができる。
【0153】
また、本発明のIDカードにおいては、平版オフセット印刷で用いる版が、フェアドットスクリーンであることが好ましい。
【0154】
一般に、カラー印刷の階調再現方法としては、網点(例えば、スクエア、チェーン、ラウンド形状)の大小により階調を表現するAMスクリーン(Amplitude Modulation)が知られており、ハイライト部からシャドウ部で丸みを持たせたサイズの異なる網点で、規則正しい配列により調子再現を行っている、しかしながら、AMスクリーンは、一定のピッチで網点が配列されているため、ロゼッタモアレ、干渉モアレ、トーンジャンプといった問題が発生する。これに対し、同一形状のドットをランダムに配置し、一定面積当たりのドット密度を変化させて階調を表現するFMスクリーン(Frequency Modulation)があり、この方法により高精細な印刷品質を達成できたが、中庸トーン部で単位ドットの密度が極めて高くなるため、AMスクリーンに比較して刷りにくいという欠点を抱えている。
【0155】
上記のそれぞれの方式のドット構造と配列の利点を利用し、画像の濃淡に応じて網点密度と形状を使い分ける方法、すなわち、フェアドットスクリーンが近年開発がなされた。
【0156】
フェアドットスクリーンでは、濃度1〜10%のハイライト領域と、濃度90〜99%のシャドウ領域では、FMスクリーンの様に一定のサイズの網点を用いて、密度の変化により階調表現を行う。これに対し、濃度が10〜90%のハーフトーン領域では、AMスクリーンと同様に網点サイズ(不定形)を変化させ、ドット配列はFMスクリーンと同様にランダムに配置されており、スクリーン角度の違いによる干渉の発生が低減されている。
【0157】
本発明において、フェアドットスクリーンから構成された版を用いることにより、粒状性がコントロールされ、調子再現性に優れた高品質の画像が得られる観点から好ましい。
【0158】
本発明のIDカードにおいては、カード裏面の全面が樹脂ラミネート加工または透明樹脂層印刷が施されていることが好ましい。これらの塗設方法としては、例えば、コンバーテック(1990.1〜1993.3号)に記載されているごとき方法であり、樹脂ラミネート加工方法法としては、例えば、ウエットラミネーション、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押し出しラミネーション等を挙げることができ、また、透明樹脂層印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等を用いることができる。
【0159】
上記の樹脂ラミネート加工または透明樹脂層印刷に用いられる樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン、芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリパラバン酸、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられるが、この樹脂ラミネート層を形成する樹脂としては、ネックインが小さく、ドローダウン性が良好な樹脂であることが好ましく、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アイオノマー樹脂、ナイロン、ポリウレタンなどが挙げられる。この中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特に高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−ポリプロピレン共重合体等を単独、或は2種以上の樹脂を混合して用いるのが好ましい。
【実施例】
【0160】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を表す。
【0161】
実施例1
下記の内容に従って、レーザー光照射により黒色画像、黒色文字情報を形成したIDカードを作製した。
【0162】
《支持体の作製》
厚さ350μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人(株)製:テトロンHS350)の両面に、白色ポリプロピレン樹脂層(三菱油化(株)製:ノーブレンFL25HA)をエクストルージョンラミネート法で厚さ50μmになるように設けた。得られた複合樹脂シートの一方の面に25W/m2・分でコロナ放電処理を施し、このシートを支持体とした。
【0163】
《レーザー光照射黒色発色層の形成》
アクリル樹脂に対し、200ppmのカーボンブラックを添加したアクリル樹脂塗布液を、上記支持体上の片面側に塗設し、10μmのアクリル樹脂層を形成した後、その上に5μmの透明アクリル樹脂層を設けて、レーザー光照射黒色発色層を形成した。
【0164】
《表側フォーマット情報の印刷》
上記形成したレーザー光照射黒色発色層上に、下記の各方法に従ってフォーマット情報を印刷した試料101〜122を作製した。
【0165】
〔試料101の作製:本発明〕
レーザー光照射黒色発色層上に、オフセット機を用いた平版オフセット印刷法により、紫外線硬化型オフセットインキ墨、藍、紅及び黄(以上、大日本インキ製:ダイキュア)により、AMスクリーングの網点多色印刷(静物画)を施した後、紫外線照射によりインキを硬化した。印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。その後、紫外線硬化型オフセット印刷用OPニス(T&K TOKA社製)を平版オフセット印刷法により印刷し、紫外線照射によりOPニスを硬化したのち、レーザー光照射により顔画像、文字情報を券面上に形成して試料101を作製した。なお、印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。
【0166】
なお、レーザー光照射による画像、文字情報の作成は、レーザー発振装置として、富士電機社製のNd:YAGレーザー(DW5200/30W)を用い、スキャン速度:300mm/sec、パルスくり返し周波数:3kHz、励起制御電流値13Aの条件の照射により、モノクロ顔画像と文字情報を券面上に作成した。
【0167】
〔試料102の作製:本発明〕
黒色発色層上に、オフセット機を用いた平版オフセット印刷法により、オフセット機を用いた平版オフセット印刷法により、赤い特色インキ(DIC564)と草色の特色インキ(DIC572)の紫外線硬化オフセットインキ(大日本インキ製・ダイキュア)により彩紋パターンを印刷した後、透明樹脂層として紫外線硬化型オフセット印刷用OPニス(T&K TOKA社製)を平版オフセット印刷法により印刷し、紫外線照射によりインキ及びOPニスを硬化したのち、上記と同様にしてレーザー光照射により顔画像、文字情報を券面上に形成し試料102を作製。印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。
【0168】
〔試料103の作製:本発明〕
黒色発色層上に、オフセット機を用いた平版オフセット印刷法により、紫外線硬化型オフセットインキ墨、藍、紅及び黄(以上、大日本インキ製:ダイキュア)により、AMスクリーングの網点多色印刷(静物画)を施した後、ザ・インクテック(株)製の紫外線硬化型オレンジ系蛍光インキを用いて、平版オフセット印刷により文字印刷を行い、次いで、透明樹脂層として紫外線硬化型オフセット印刷用OPニス(T&K TOKA社製)を平版オフセット印刷法により印刷し、紫外線照射によりインキ及びOPニスを硬化したのち、上記と同様にしてレーザー光照射により顔画像、文字情報を券面上に形成し試料103を作製。印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。
【0169】
〔試料104の作製:本発明〕
黒色発色層上に、オフセット機を用いた平版オフセット印刷法により、紫外線硬化型オフセットインキ墨、藍、紅及び黄(以上、大日本インキ製:ダイキュア)を用いた4色印刷をAMスクリーン網点の多色印刷(静物画)を施した後、オフセット機を用いた凸版版オフセット印刷法により、下記の組成からなる紫外線硬化型パールインキを3回の重ね刷りによるベタパターンの印刷を行い、透明樹脂層として紫外線硬化型オフセット印刷用OPニス(T&K TOKA社製)を凸版オフセット印刷法により印刷し、紫外線照射によりインキ及びOPニスを硬化したのち、上記と同様にしてレーザー光照射により顔画像、文字情報を券面上に形成し試料104を作製。印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。
【0170】
〈紫外線硬化型パールインキ〉
パール顔料(メルク社製、TiO2被覆雲母、商品名:Iriodin) 20部
オリゴエステル系アクリレート 68部
エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート 10部
芳香族系光重合開始剤 2部
〔試料105の作製:本発明〕
黒色発色層上に、オフセット機を用いた平版オフセット印刷法により、紫外線硬化型オフセットインキ藍、紅及び黄(以上、大日本インキ製:ダイキュア)と、プロセスインキ藍、紅、黄から構成されるカーボン顔料を含まないカーボンレスブラックインキを用いて、AMスクリーングの網点多色印刷(静物画)を施した後、紫外線照射によりインキを硬化した。印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。その後紫外線硬化型オフセット印刷用OPニス(T&K TOKA社製)を平版オフセット印刷法により印刷し、紫外線照射によりOPニスを硬化したのち、上記と同様にしてレーザー光照射により顔画像、文字情報を券面上に形成し試料105を作製。印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。
【0171】
〔試料106〜110の作製:本発明〕
試料101〜105の各試料と同様にフォーマット印刷まで行い、レーザー光照射前に以下の転写箔を設け、その後上記と同様にしてレーザー光照射により顔画像、文字情報を券面上に形成し、それぞれ試料106〜110とした。
【0172】
《転写箔の作製》
〔透明樹脂転写箔Aの作製〕
ダイアホイルヘキスト(株)製のポリエチレンテレフタレート(S−25)の片面に、下記の組成からなる離型層塗布液1、中間層塗布液1、バリヤー層塗布液1及び接着層塗布液1をこの順でワイヤーバーコーティングにてそれぞれ塗布、乾燥して、透明樹脂転写箔Aを作製した。
【0173】
(離型層塗布液1)
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製 ダイアナールBR−87) 5部
ポリビニルアセトアセタール(積水化学(株) KS−1 SP値:9.4) 5部
メチルエチルケトン 40部
トルエン 50部
離型層塗布液1を塗布した後、90℃で30秒間の乾燥を行った。
【0174】
(中間層塗布液1)
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学(株)製:エスレックBX−1) 5部
タフテックスM−1913(旭化成社製) 3.5部
硬化剤:ポリイソシアネート(コロネートHX 日本ポリウレタン製) 1.5部
メチルエチルケトン 20部
トルエン 70部
中間層塗布液1を塗布した後、90℃で30秒間の乾燥を行った。なお、硬化剤の硬化は、50℃、24時間で行った。
【0175】
(バリヤー層塗布液1)
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学(株)製:エスレックBシリーズ BX−1)
4部
タフテックスM−1913(旭化成社製) 4部
硬化剤:ポリイソシアネート(コロネートHX 日本ポリウレタン製) 2部
トルエン 50部
メチルエチルケトン 40部
バリヤー層塗布液1を塗布した後、70℃で30間の乾燥を行った。
【0176】
(接着層塗布液1)
ウレタン変性エチレンエチルアクリレート共重合体(東邦化学工業(株)製:ハイテックS6254B) 8部
ポリアクリル酸エステル共重合体(日本純薬(株)製:ジュリマーAT510)2部
水 45部
エタノール 45部
接着層塗布液1を塗布した後、70℃で30秒間の乾燥を行った。
【0177】
なお、上記方法に従って作製した透明樹脂転写箔Aの剥離層の乾燥膜厚は0.5μm、中間層の乾燥膜厚は3.0μm、バリヤー層の乾燥膜厚は5.0μm、接着層の乾燥膜厚は3.0μmとした。
【0178】
〔透明樹脂転写箔Bの作製〕
ダイアホイルヘキスト(株)製ポリエチレンテレフタレート(S−25)の片面に下記の組成からなる離型層塗布液2、活性光線硬化層塗布液1、中間層塗布液2及び接着層塗布液2をこの順でワイヤーバーコーティングにてそれぞれ塗布、乾燥して、透明樹脂転写箔Bを作製した。
【0179】
(離型層塗布液2)
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、ダイアナールBR−87) 5部
ポリビニルアセトアセタール(積水化学(株)、KS−1 SP値:9.4) 5部
メチルエチルケトン 40部
トルエン 50部
離型層塗布液2を塗布した後、90℃で30秒間の乾燥を行った。
【0180】
(活性光線硬化層塗布液1)
活性光線硬化性化合物(新中村化学社製 A−9300) 35部
活性光線硬化性化合物(新中村化学社製 EA−1020) 11.75部
反応開始剤:イルガキュア184(日本チバガイギー社製) 5部
活性光線硬化層樹脂1 48部
界面活性剤F−179(大日本インキ社製) 0.25部
活性光線硬化層塗布液1を塗布した後、90℃で30秒間の乾燥を行った後、高圧水銀灯を照射して硬化させた。
【0181】
〈活性光線硬化層樹脂1の調製〉
窒素気流下の三ツ口フラスコに、メタアクリル酸メチル73部、スチレン15部、メタアクリル酸12部とエタノール500部、α、α′−アゾビスイソブチロニトリル3部を入れ、窒素気流中80℃のオイルバスで6時間反応させた。その後、トリエチルアンモニウムクロライド3部、グリシジルメタクリレート1.0部を加え、3時間反応させてアクリル系共重合体である活性光線硬化層樹脂1を得た。Mwは17000、酸価は32。
【0182】
(中間層塗布液2)
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学(株)製:エスレックBX−1) 3.5部
タフテックスM−1913(旭化成社製) 5部
硬化剤:ポリイソシアネート(コロネートHX 日本ポリウレタン製) 1.5部
メチルエチルケトン 90部
中間層塗布液2を塗布した後、90℃で30秒間の乾燥を行った。なお、硬化剤の硬化は、50℃、24時間で行った。
【0183】
(接着層塗布液2)
ウレタン変性エチレンエチルアクリレート共重合体(東邦化学工業(株)製:ハイテックS6254B) 8部
ポリアクリル酸エステル共重合体(日本純薬(株)製:ジュリマーAT510)2部
水 45部
エタノール 45部
接着層塗布液2を塗布した後、70℃で30秒間の乾燥を行った。
【0184】
なお、上記方法に従って作製した透明樹脂転写箔Bの剥離層の乾燥膜厚は0.5μm、活性光線硬化層の乾燥膜厚は8.0μm、中間層の乾燥膜厚は1.0μm、接着層の乾燥膜厚は0.5μmとした。
【0185】
(転写箔の形成)
試料カード上に透明保護層を有する転写箔Aを表面温度200℃に加熱し、直径5cmゴム硬度85のヒートローラーを用いて圧力15MPaで1.2秒間熱をかけて転写を行なった。次いで、その上に透明保護層を有する転写箔Bを表面温度200℃に加熱し、直径5cmゴム硬度85のヒートローラーを用いて圧力15MPaで1.2秒間熱をかけて転写を行なった。
【0186】
〔試料111〜115の作製:本発明〕
試料101〜105と同様にフォーマット情報印刷まで行った後、下記ホログラム転写箔の転写を前記転写箔Aと同様の条件で施し、ホログラム転写箔の上に前記転写箔Bを前記と同様の条件で施した後に、前記と同様にしてレーザー光照射により顔画像、文字情報を券面に書き込み、試料111〜115を作製した。
【0187】
(ホログラム転写箔の作製)
ダイアホイルヘキスト(株)製ポリエチレンテレフタレート(S−25)の片面に下記処方の剥離層、ホログラム層及び接着層をワイヤーバーコーティングにて塗工乾燥して、光学変化素子(ホログラム)転写箔を得た。
【0188】
〈剥離層:膜厚0.5μm〉
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、ダイアナールBR−87) 5部
ポリビニルアセトアセタール(SP値:9.4 積水化学(株)、KS−1) 5部
メチルエチルケトン 40部
トルエン 50部
〈ホログラム層:膜厚2μm〉
膜厚2μmのアクリルウレタン樹脂からなる層を塗布し、その上にTiO2の蒸着膜を設けた後、金型により刻印を施してホログラム層を得た。
【0189】
〈接着層:膜厚2μm〉
スチレン系樹脂(旭化成(株)、タフテックM−1953) 6部
脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学(株)、アルコンP100) 3.5部
炭酸カルシウム(奥多摩工業(株)、タマパールTP−123) 0.5部
トルエン 90部
〔試料116〜120の作製:本発明〕
黒色発色層上に下記アンカーニス層を施した以外は全て試料101〜105と同様にして、試料116〜120を作製した。
【0190】
〈透明樹脂層形成アンカーニス〉
炭酸カルシウム系体質顔料(大日本インキ化学工業(株)製) 5部
エポキシアクリレート樹脂 35部
アクリル酸オリゴマー 45部
光重合開始剤:イルガキュアー184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
5.9部
重合禁止剤:ハイドロキノン 0.1部
助剤:ワックス・レベリング剤 4部
なお、透明樹脂層形成アンカーニスの印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。
【0191】
〔試料121の作製:比較例〕
(支持体の作製)
厚さ350μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人(株)製:テトロンHS350)の両面に、白色ポリプロピレン樹脂層(三菱油化(株)製:ノーブレンFL25HA)をエクストルージョンラミネート法で厚さ50μmになるように設けた。得られた複合樹脂シートの一方の面に25W/m2・分でコロナ放電処理を施し、このシートを支持体とした。
【0192】
(昇華型感熱転写記録用の受像層の形成)
前記支持体のコロナ放電処理した面側に、下記の組成からなる第1受像層形成用塗布液、第2受像層形成用塗布液及び第3受像層形成用塗布液をこの順に塗布乾燥して、それぞれの厚みが0.2μm、2.5μm、0.5μmになるように積層することにより受像層を形成した。
【0193】
〈第1受像層形成用塗布液〉
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製:エスレックBL−1) 9部
イソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートHX) 1部
メチルエチルケトン 80部
酢酸ブチル 10部
〈第2受像層形成用塗布液〉
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製:エスレックBX−1) 6部
金属イオン含有化合物(*A:MS−1) 4部
メチルエチルケトン 80部
酢酸ブチル 10部
*A)MS−1:Ni2+[C715COC(COOCH3)=C(CH3)O-2
〈第3受像層形成用塗布液〉
ポリエチレンワックス(東邦化学工業(株)製:ハイテックE1000) 2部
ウレタン変性エチレンアクリル酸共重合体(東邦化学工業(株)製:ハイテックS6254) 8部
メチルセルロース(信越化学工業(株)製:SM15) 0.1部
水 90部
昇華熱転写画像を記録した領域以外の受像層上に、凸版印刷法により、紫外線硬化型オフセットインキ藍、紅及び黄(以上、大日本インキ製:ダイキュア)により、AMスクリーングの網点多色印刷(静物画)を施し、紫外線照射にてインキを硬化、その後紫外線硬化型オフセット印刷用OPニス(T&K TOKA社製)を平版オフセット印刷法により印刷し、紫外線照射によりOPニスを硬化したのち、ニスカ製IDカードプリンタで顔画像、文字情報をプリント、オーバーコートを施し、試料121を作製した。
【0194】
《IDカードの評価》
〔セキュリティ機能の評価〕
比較品である試料121はコピー技術等で、券面情報がほぼ同等のカード作成ができる。それに対し、本発明の試料101〜121はルーペ等を用いることで、個人情報の上にフォーマット情報を持つことが観察可能である。一般的なカードは、フォーマット情報上に個人情報作成、或いは同時に作成するため、本発明のカードは偽造されやすい一般的カードに対して、偽造防止性を有する。更に試料102〜104、試料107〜109、試料112〜114、試料117〜119では、コピーでは再現出来ないかルーペ等で見れば判定できる印刷での偽造防止技術を搭載、試料105、110、115、120では赤外光観察では見えないブラックインキ使用での偽造防止を搭載し、それら搭載技術が個人情報上に形成されていることで、更なる偽造防止効果を発揮している。
【0195】
また、転写箔を設けたカードにおいては、転写箔を無理に剥がそうとすると下の券面情報は全て破壊されることでのセキュリティ機能を持つが、本発明の試料106〜115の転写箔やホログラム転写箔を無理に剥がした場合に、フォーマット情報部は破壊、レーザー光照射黒色形成情報は破壊されないという結果となり、一般的な転写箔を有するカードとの違いからのセキュリティ性が高い。更に本発明試料111〜115はホログラム転写箔形成から、視覚的にも高いセキュリティを有する。
【0196】
〔剥離耐性の評価〕
フォーマット情報印刷面上及び顔画像部のカード表面に片刃のカミソリの刃を、面に対して30度の角度で切り込みを1mm間隔で縦横に11本ずつ入れ、1mm角の碁盤目を100個作成した。この上にセロハン粘着テープ(ニチバン社製)を強く貼り付け、その一端を手でもって垂直にはがし、剥離によるフォーマット情報、及び顔画像のダメージを目視評価し、下記の基準に従って剥離耐性の評価を行った。
【0197】
A:フォーマット情報、顔画像部ともに全く影響無し
B:フォーマット情報、顔画像部ともに影響小、カード最上層の剥離は少しあるが、券面情報への影響は小さい
C:フォーマット情報、顔画像部のいずれか一方に、わずかに剥離が認められる
D:顔画像部、フォーマット情報部ともに、一部がテープ剥離を起こしている
F:顔画像部、フォーマット情報部ともに、テープ剥離での情報欠落が目立つ
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0198】
【表1】

【0199】
上記結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなる本発明のIDカードは、高セキュリティを備えると共に、剥離に対する高い耐久性を有する。
【0200】
また、カード券面上への情報入力で長時間、高エネルギーのレーザー光照射により、カード全面に情報入力する方法に対し、本発明はフォーマット情報印刷からレーザー光照射までの画像、文字情報形成は最低限の時間で良く、高い生産性を有することを確認することができた。
【0201】
実施例2
下記の内容に従って、レーザー光照射によりカラー画像、カラー文字情報を形成するIDカードを作製した。
【0202】
《支持体の作製》
厚さ350μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人(株)製:テトロンHS350)の両面に、白色ポリプロピレン樹脂層(三菱油化(株)製:ノーブレンFL25HA)をエクストルージョンラミネート法で厚さ50μmになるように設けた。得られた複合樹脂シートの一方の面に25W/m2・分でコロナ放電処理を施し、このシートを支持体とした。
【0203】
《レーザー光照射カラー発色層の形成》
前記支持体シートの片面に、特開2000−199952号公報の実施例5に記載の方法と同様にして、レーザー光照射により多色に発色する3層のカラー発色層を設けた。
【0204】
《表側フォーマット情報の印刷》
〔試料201の作製:本発明〕
カラー発色層上に、オフセット機を用いた平版オフセット印刷法により、紫外線硬化型オフセットインキ墨、藍、紅及び黄(以上、大日本インキ製:ダイキュア)により、AMスクリーングの網点多色印刷(静物画)を施した後、紫外線照射によりインキを硬化した。印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。その後、紫外線硬化型オフセット印刷用OPニス(T&K TOKA社製)を平版オフセット印刷法により印刷し、紫外線照射によりOPニスを硬化した。印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。次に、下記の方法に従って溶融型感熱転写記録用のインクシートによる文字情報を転写し、実施例1に記載の方法と同様にして転写箔を設け、その後、表層側から、まず波長780nmの半導体レーザー光を用いて顔画像を露光し、次いで波長657nmの半導体励起のYLF固体レーザー光を用いて顔画像を露光し、さらに波長532nmのYAG固体レーザー光を用いて顔画像を露光した。露光により潜像の形成された後、120℃の熱板で5秒間加熱し、更に58000luxの高輝度シャーカステン上で30秒間カラー発色層を光照射して、カラーの顔画像を券面上に形成し、試料201とした。
【0205】
(文字情報の形成)
フォーマット情報印刷部上に、下記の溶融型感熱転写記録用のインクシートを用いて、インクシート裏面側からサーマルヘッドを用いて出力0.5W/ドット、パルス幅1.0m秒、ドット密度16ドット/mmの条件で加熱することにより各染料を熱転写させ、文字情報を形成した。
【0206】
〈溶融型感熱転写記録用のインクシートの作製〉
裏面に融着防止加工した厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートシートに、下記の組成からなる下記インク層形成用塗布液を、厚みが2μmになる様に塗布、乾燥して溶融型感熱転写記録用のインクシートを得た。
【0207】
〈インク層形成用塗布液〉
カルナバワックス 1部
エチレン酢酸ビニル共重合体(三井デュポンケミカル社製:EV40Y) 1部
カーボンブラック 3部
フェノール樹脂(荒川化学工業(株)製:タマノル521) 5部
メチルエチルケトン 90部
〔試料202の作製:本発明〕
カラー発色層上に、オフセット機を用いた平版オフセット印刷法により、オフセット機を用いた平版オフセット印刷法により、赤い特色インキ(DIC564)と草色の特色インキ(DIC572)の紫外線硬化オフセットインキ(大日本インキ製・ダイキュア)により彩紋パターンを印刷した後、透明樹脂層として紫外線硬化型オフセット印刷用OPニス(T&K TOKA社製)を平版オフセット印刷法により印刷し、紫外線照射によりインキ及びOPニスを硬化。印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。その後、試料201と同様にして、文字情報、転写箔、レーザー光照射によるカラー顔画像を形成させ、試料202を作製した。
【0208】
〔試料203の作製:本発明〕
カラー発色層上に、オフセット機を用いた平版オフセット印刷法により、紫外線硬化型オフセットインキ墨、藍、紅及び黄(以上、大日本インキ製:ダイキュア)により、AMスクリーングの網点多色印刷(静物画)を施した後、ザ・インクテック(株)製の紫外線硬化型オレンジ系蛍光インキを用いて、平版オフセット印刷により文字印刷を行い、次いで、透明樹脂層として紫外線硬化型オフセット印刷用OPニス(T&K TOKA社製)を平版オフセット印刷法により印刷し、紫外線照射によりインキ及びOPニスを硬化した。印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。その後、試料201と同様にして、文字情報、転写箔、レーザー光照射によるカラー顔画像を形成させ、試料203を作製した。
【0209】
〔試料204の作製:本発明〕
カラー発色層上に、オフセット機を用いた平版オフセット印刷法により、紫外線硬化型オフセットインキ墨、藍、紅、黄(以上、大日本インキ製:ダイキュア)を用いた4色印刷をAMスクリーン網点の多色印刷(静物画)を施した後、オフセット機を用いた凸版版オフセット印刷法により、下記の組成からなる紫外線硬化型パールインキを3回の重ね刷りによるベタパターンの印刷を行い、透明樹脂層として紫外線硬化型オフセット印刷用OPニス(T&K TOKA社製)を凸版オフセット印刷法により印刷し、紫外線照射によりインキ及びOPニスを硬化した。印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。
【0210】
〈紫外線硬化型パールインキ〉
パール顔料(メルク社製、TiO2被覆雲母、商品名:Iriodin) 20部
オリゴエステル系アクリレート 68部
エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート 10部
芳香族系光重合開始剤 2部
その後、試料201と同様にして、文字情報、転写箔、レーザー光照射によるカラー顔画像を形成させ、試料204を作製した。
【0211】
〔試料205の作製:本発明〕
カラー発色層上に、オフセット機を用いた平版オフセット印刷法により、紫外線硬化型オフセットインキ藍、紅及び黄(以上、大日本インキ製:ダイキュア)と、プロセスインキ藍、紅、黄から構成されるカーボン顔料を含まないカーボンレスブラックインキを用いて、AMスクリーングの網点多色印刷(静物画)を施した後、紫外線照射によりインキを硬化した。印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。その後紫外線硬化型オフセット印刷用OPニス(T&K TOKA社製)を平版オフセット印刷法により印刷し、紫外線照射によりOPニスを硬化。印刷時の紫外線照射条件は、高圧水銀灯で200mj相当であった。
【0212】
その後、試料201と同様にして、文字情報、転写箔、レーザー光照射によるカラー顔画像を形成させ、試料205を作製した。
【0213】
〔試料206〜210の作製:本発明〕
上記試料201〜205の作製において、転写箔を、実施例1の試料111〜115の作製に用いたホログラム転写箔に変更した以外は同様にして、試料206〜210を作製した。
【0214】
《IDカードの評価》
〔セキュリティ機能の評価〕
本発明の試料201〜110はルーペ等を用いることで、顔情報の上にフォーマット情報を持つことが観察可能である。一般的なカードは、フォーマット情報上に個人情報作成、或いは同時に作成するため、本発明のカードは偽造されやすい一般的カードに対して、偽造防止性を有する。更に試料202〜204、試料207〜209コピーでは再現出来ないかルーペ等で見れば判定できる印刷での偽造防止技術を搭載、試料205、210では赤外光観察では見えないブラックインキ使用での偽造防止を搭載し、それら搭載技術が個人情報上に形成されていることで、更なるの偽造防止効果を発揮している。
【0215】
また、転写箔を設けたカードにおいては、転写箔を無理に剥がそうとすると下の券面情報は全て破壊されることでセキュリティ機能を持つが、本発明に係る転写箔やホログラム転写箔を無理に剥がした場合に、フォーマット情報部は破壊、レーザー光照射黒色形成情報は破壊されないという結果となり、一般的な転写箔を有するカードとの違いから、セキュリティ性が高いことを確認することができた。更に、本発明の試料206〜210はホログラム転写箔形成から、視覚的にも高いセキュリティを有することを確認することができた。
【0216】
〔剥離耐性の評価〕
実施例1に記載の方法と同様にして、剥離耐性の評価を行い、得られた結果を表2に示す。
【0217】
【表2】

【0218】
上記結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなる本発明の試料は、高セキュリティを備え、かつ剥離に対する高い耐久性を有していることが分かる。
【0219】
また、カード券面上への情報入力で時間、高エネルギーのレーザー光照射によりカード全面に情報入力する従来の方法に対し、本発明ではフォーマット情報印刷からレーザー光照射での画像、文字情報形成は最低限の時間で良く、高い生産性を有することも確認することができた。
【0220】
実施例3
実施例1に記載の101、106、111、116、及び実施例2に記載の201、206の作製において、AMスクリーングの網点多色印刷(静物画)をフェアドットスクリーンの網点多色印刷(静物画)に変更した以外は同様にして試料301〜306を作製し、実施例1、2と同様の評価を行った結果、実施例1、2と同様の結果を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】本発明の黒色発色層を有するIDカードの構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のカラー発色層を有するIDカードの構成の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0222】
10、20 IDカード
11、21 支持体
12 レーザー光照射黒色発色層
13、26 透明樹脂層
14、27 フォーマット印刷層
22 レーザー光照射イエロー発色層
23 透明樹脂中間層
24 レーザー光照射シアン発色層
25 レーザー光照射マゼンタ発色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により黒色発色する発色層を有し、レーザー光照射により画像や文字情報をカード券面上に形成するIDカードにおいて、該発色層上にプロセスインキを用いたオフセット印刷によりフォーマット情報を印刷したことを特徴とするIDカード。
【請求項2】
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により黒色発色する発色層を有し、レーザー光照射により画像や文字情報をカード券面上に形成するIDカードにおいて、該発色層上に特色インキまたはプロセスインキの色再現領域外の座標上に位置する特殊インキを用いた印刷によりフォーマット情報を印刷したことを特徴とするIDカード。
【請求項3】
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により黒色発色する発色層を有し、レーザー光照射により画像や文字情報をカード券面上に形成するIDカードにおいて、該発色層上にカーボンレスブラックインキを用いた印刷により画像情報と文字情報からなるフォーマット情報を印刷したことを特徴とするIDカード。
【請求項4】
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により黒色発色する発色層を有し、レーザー光照射により画像や文字情報をカード券面上に形成するIDカードにおいて、該発色層上にフォーマット情報の印刷と転写箔の付与を施したことを特徴とするIDカード。
【請求項5】
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により黒色発色する発色層を有し、レーザー光照射により画像や文字情報をカード券面上に形成するIDカードにおいて、該発色層上にフォーマット情報の印刷とホログラム転写箔の付与を施したことを特徴とするIDカード。
【請求項6】
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により、イエロー発色、マゼンタ発色、及びシアン発色する発色層を有し、レーザー光によりカラー画像を形成するIDカードにおいて、該発色層上にプロセスインキを用いたオフセット印刷によりフォーマット情報を印刷したことを特徴とするIDカード。
【請求項7】
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により、イエロー発色、マゼンタ発色及びシアン発色する発色層を有し、レーザー光によりカラー画像を形成するIDカードにおいて、該発色層上に特色インキまたはプロセスインキの色再現領域外の座標上に位置する特殊インキを用いた印刷によりフォーマット情報を印刷したことを特徴とするIDカード。
【請求項8】
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により、イエロー発色、マゼンタ発色及びシアン発色する発色層を有し、レーザー光によりカラー画像を形成するIDカードにおいて、該発色層上にカーボンレスブラックインキを用いた印刷により画像情報と文字情報からなるフォーマット情報を印刷したことを特徴とするIDカード。
【請求項9】
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により、イエロー発色、マゼンタ発色及びシアン発色する発色層を有し、レーザー光によりカラー画像を形成するIDカードにおいて、該発色層上にフォーマット情報の印刷と転写箔の付与を施したことを特徴とするIDカード。
【請求項10】
ポリエステルまたはポリカーボネートからなるカード基材上に、レーザー光照射により、イエロー発色、マゼンタ発色及びシアン発色する発色層を有し、レーザー光によりカラー画像を形成するIDカードにおいて、該発色層上にフォーマット情報の印刷とホログラム転写箔の付与を施したことを特徴とするIDカード。
【請求項11】
前記フォーマット情報の印刷が、凸版印刷または平版オフセット印刷により施されたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のIDカード。
【請求項12】
前記フォーマット情報の印刷が、凸版印刷及び平版オフセット印刷の複合印刷により施されたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のIDカード。
【請求項13】
前記フォーマット情報の印刷が、画像情報及び文字情報からなる有色印刷とOPニスを用いた無色印刷により施されたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のIDカード。
【請求項14】
前記フォーマット情報の印刷が、アンカーニスを用いた無色印刷と、画像情報及び文字情報からなる有色印刷とOPニスを用いた無色印刷により施されたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のIDカード。
【請求項15】
前記フォーマット情報の印刷を施した後、溶融リボンを用いて溶融文字情報を印字したことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のIDカード。
【請求項16】
前記画像情報及び文字情報からなる有色印刷が、平版オフセット印刷方式で印刷したことを特徴とする請求項13または14に記載のIDカード。
【請求項17】
前記画像情報及び文字情報からなる有色印刷を行う平版オフセット印刷に用いる版が、フェアドットスクリーンであることを特徴とする請求項16に記載のIDカード。
【請求項18】
カード裏面の全面が、樹脂ラミネート加工または透明樹脂層印刷が施されていることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載のIDカード。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−103221(P2006−103221A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294679(P2004−294679)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】