説明

IDタグ

【課題】バックスキャッタ通信時において、安定した内部電源電圧を供給し、リーダ/ライタとの通信距離を向上させる。
【解決手段】ASK前段昇圧回路13は、アンテナ端子LA,LBがそれぞれ接続されており、整流回路9と並列に接続された構成となっている。このASK前段昇圧回路13には、変調部として作用するバックスキャッタ用スイッチ12が設けられている。バックスキャッタ通信時において、バックスキャッタ信号’1’を送信する場合、バックスキャッタ用スイッチ12がONすることによって捨てられてしまう電流は、変調/復調部4の信号受信の経路のみから発生することになり、インピーダンスマッチング分以外の余分な電流ロスを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification:電波方式認識)システムの通信技術に関し、特に、IDタグにおける通信品質の向上に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信によりデータ交信することができる自動認識技術として、RFIDが広まりつつある。このRFIDは、情報を記憶可能なIDタグと、該IDタグにおける情報の読み出しや書き込みを行うリーダ/ライタとによって構成されている。IDタグは、たとえば、非接触ICチップなどの半導体集積回路装置、およびアンテナからなる。
【0003】
IDタグは、リーダ/ライターから出力される電波をアンテナで受信し、該アンテナで受信した電波を整流回路で整流/安定化して内部電源電圧VDDを生成する。この内部電源電圧VDDは、IDタグ内の内部回路(論理回路など)に供給される。
【0004】
IDタグとリーダ/ライタとの通信は、リーダ/ライタから出力される電波を変調して行われる。リーダ/ライタからIDタグへの通信は、リーダ/ライタから出力された電波をASK(Amplitude Shift Keying:振幅シフトキーイング)変調し、ASK変調した電波をタグが復調することで行われる。
【0005】
また、IDタグからリーダ/ライタへの通信は、バックスキャッタ方法を用いたものが知られている。このバックスキャッタ方法とは、IDタグの入力インピーダンスを変化させることにより、該IDタグの反射係数を変化させ、リーダ/ライタへ反射する電波の電力量を変化させることで実現する。
【0006】
バックスキャッタ方法では、たとえば、IDタグのアンテナ間(内部回路に電流を供給する経路)に、たとえば、MOSトランジスタなどからなるバックスキャッタ用スイッチを挿入するものが知られている。
【0007】
このバックスキャッタ用スイッチをON(導通)させることにより、IDタグにおけるアンテナ間のインピーダンスを変化させてマッチングをずらし、バックスキャッタ通信を実現する。
【0008】
この種のバックスキャッタ方法を用いたIDタグの通信技術については、たとえば、IDタグの整流器内にダイオードスイッチを設けてバックスキャッタの制御行うものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−54515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記のようなRFIDにおけるバックスキャッタによる通信技術では、次のような問題点があることが本発明者により見い出された。
【0010】
IDタグにおける内部回路の消費電流は、バックスキャッタ通信時でも変化しないため、バックスキャッタ通信時においても、整流回路が内部回路に電流を供給することが望ましい。
【0011】
しかし、バックスキャッタ通信時には、アンテナ間をバックスキャッタ用スイッチで短絡するため、アンテナの後段に接続された整流回路に電力が入力されないことになってしまう。これによって、整流回路は、内部回路に電流を供給することができなくなってしまうという問題がある。
【0012】
IDタグには、静電容量素子などの電源容量が備えられており、整流回路からの電流供給が低下した場合に、該電源容量の電荷が電源電圧VDDとして内部回路に対して供給されるが、この電源容量から供給される電源が、動作限界以下の電圧になると、IDタグは動作しなくなってしまうことなる。
【0013】
よって、バックスキャッタ通信時における通信距離限界などに大きく影響してしまうことになる。
【0014】
また、特許文献1のようにバックスキャッタ用スイッチをアンテナ間ではなく、内部回路に電流を供給する整流回路内に設けた場合には、入力インピーダンスをずらすためにONしたバックスキャッタ用スイッチが電源電圧VDD供給用の電流を引き抜いてしまうことになる。
【0015】
そのため、アンテナ間にバックスキャッタ用スイッチを設けた場合と同様に、電源電圧VDDとして供給する電流を捨てることになり、整流回路からの電流供給が略なくなってしまうことになる。
【0016】
さらに、IDタグとリーダ/ライタとの通信距離がごく短い場合、大電力入力となり、整流回路の各素子に大きい電圧が発生する。一般的に、整流回路内の各素子の耐圧を確保するため、整流回路には、大電力入力時のみ電流を引き抜き、整流回路内の各電位を低下させる保護回路が加えられる。
【0017】
この種の保護回路は、たとえば、ダイオード接続されたMOSトランジスタが直列接続された構成からなり、整流回路の出力部と基準電位VSSとの間に接続されている。整流回路に大電力が入力された場合、保護回路からの電流引き抜きパスの電流が支配的となり、バックスキャッタ用スイッチをONさせても、大きく入力インピーダンスを変化させることができなくなってしまい、十分なバックスキャッタ強度を実現できないという問題がある。
【0018】
本発明の目的は、バックスキャッタ通信時において、安定した内部電源電圧を供給し、通信距離を向上させることのできる技術を提供することにある。
【0019】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0021】
本発明は、リーダ/ライタから受けた電波を電力に変換し、該リーダ/ライタへ情報を送信する際にバックスキャッタ通信を行うIDタグであって、リーダ/ライタからの電波を送受信するアンテナと、該アンテナに接続され、アンテナが受信したリーダ/ライタから出力された電波の電磁誘導による電力を整流して一次電圧を生成する整流回路と、該整流回路が生成した一次電圧を安定化して内部電源電圧を生成し、内部回路に供給する安定化電圧回路と、IDタグが、バックスキャッタ通信を行う際に、アンテナのインピーダンスを変化させてマッチングをずらすバックスキャッタ用スイッチとを備え、該バックスキャッタ用スイッチは、整流回路に並列接続された内部回路に設けられているものである。
【0022】
また、本発明は、前記整流回路に並列接続された内部回路が、アンテナが受信したリーダ/ライタから出力された電波を昇圧/整流し、包絡線検波を行うASK前段昇圧回路であり、バックスキャッタ用スイッチは、ASK前段昇圧回路に設けられているものである。
【0023】
さらに、本発明は、前記バックスキャッタ用スイッチが、ASK前段昇圧回路の出力部と基準電位との間に接続されているものである。
【0024】
また、本発明は、前記バックスキャッタ用スイッチを動作制御する制御信号をレベル変換するレベルシフタを備え、該レベルシフタは、バックスキャッタ用スイッチを、整流回路が生成した一次電圧によって駆動させるものである。
【0025】
さらに、本発明は、前記整流回路に並列接続された内部回路が、アンテナが受信したリーダ/ライタから出力された電波を昇圧/整流して昇圧電源電圧を生成し、情報の格納を行うメモリ部の動作電源として供給するメモリ用昇圧回路よりなるものである。
【0026】
また、本願のその他の発明の概要を簡単に示す。
【0027】
本発明は、リーダ/ライタから受けた電波を電力に変換し、該リーダ/ライタへ情報を送信する際にバックスキャッタ通信を行うIDタグであって、リーダ/ライタからの電波を送受信するアンテナと、該アンテナに接続され、アンテナが受信したリーダ/ライタから出力された電波の電磁誘導による電力を整流して一次電圧を生成する第1の整流回路と、該第1の整流回路が生成した一次電圧を安定化して内部電源電圧を生成し、第1の内部回路に供給する第1の安定化電圧回路と、第1の整流回路に並列接続され、アンテナが受信したリーダ/ライタから出力された電波の電磁誘導による電力を整流して一次電圧を生成する第2の整流回路と、第1の整流回路が生成した一次電圧を安定化して内部電源電圧を生成し、第2の内部回路に供給する第2の安定化電圧回路と、IDタグがバックスキャッタ通信を行う際に、アンテナのインピーダンスを変化させてマッチングをずらすバックスキャッタ用スイッチとを備え、該バックスキャッタ用スイッチは、第1の整流回路に並列接続された第2の整流回路に設けられているものである。
【0028】
また、本発明は、前記第1の内部回路が、基準クロックを生成し、論理回路に供給するクロック生成回路からなり、前記第2の内部回路は、該論理回路からなるものである。
【0029】
さらに、本発明は、第1の整流回路に並列接続され、アンテナが受信したリーダ/ライタから出力された電波を昇圧/整流し、包絡線検波を行うASK前段昇圧回路を有するものである。
【発明の効果】
【0030】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0031】
(1)バックスキャッタ通信時におけるIDタグとリーダ/ライタとの通信可能距離を向上させることができる。
【0032】
(2)また、近距離通信される大電力入力時においても、バックスキャッタ強度を確保することができる。
【0033】
(3)さらに、上記(1)、(2)により、RFIDシステムの通信品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0035】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1によるIDタグの構成例を示すブロック図、図2は、図1のIDタグにおける整流部、および変調/復調部の構成例を示した説明図、図3は、IDタグによるバックスキャッタ通信時におけるバックスキャッタ信号の説明図である。
【0036】
本実施の形態1において、IDタグ1は、自動認識技術の1つであるRFIDに用いられる。IDタグ1は、図1に示すように、アンテナ2、整流部3、変調/復調部4、送信系論理回路5、受信系論理回路6、制御回路7、およびメモリ部8から構成されている。
【0037】
整流部3は、アンテナ2を介して受信した電波から、動作電力となる内部電源電圧VDDを生成し、変調/復調部4、送信系論理回路5、受信系論理回路6、制御回路7、ならびにメモリ部8にそれぞれ供給する。
【0038】
整流部3は、整流回路9、および電源電圧制御回路10から構成されている。整流回路9は、アンテナ2を介して受信した電波を、昇圧、および整流する。電源電圧制御回路10は、整流回路9によって整流された電圧を安定化させ、内部電源電圧VDDとして出力する。
【0039】
変調/復調部4は、変調部と復調部とから構成されている。変調部は、アンテナ2が接続されるアンテナ端子インピーダンスをデータに応じて変化させることで反射波(バックスキャッタ)を変調する。
【0040】
復調部は、情報の読み出しや書き込みを行うリーダ/ライタから送信されるASK(Amplitude Shift Keying:振幅シフトキーイング)変調でキャリア信号に加えられた各種コマンドなど復調してデジタル信号に変換して受信系論理回路6に出力する。
【0041】
送信系論理回路5は、応答の有無、応答種別、応答パラメータの指示を受け必要に応じてメモリ部8からデータを取り出し、応答データの伝送速度に応じて変調/復調部4のバックスキャッタ用スイッチ12(図2)を動作させる。
【0042】
受信系論理回路6は、変調/復調部4が復調した信号のコマンド判定を行う。制御回路7は、受信系論理回路6が判定したコマンドに基づいて、メモリ部8への情報の読み出し/書き込みにおける動作制御を司り、情報の読み出し/書き込みを行う。
【0043】
メモリ部8は、たとえば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)などの不揮発性メモリからなり、各種データなどが格納される。
【0044】
図2は、IDタグ1における整流部3、および変調/復調部4の構成を示した説明図である。
【0045】
整流回路9によって整流された電圧(一次電圧)は、電源電圧制御回路10によって安定化され、内部電源電圧VDDとして、変調/復調部4、および送信系論理回路5、受信系論理回路6、制御回路7、ならびにメモリ部8からなる内部回路11に出力される。
【0046】
電源電圧制御回路10は、レギュレータ10a、および静電容量素子10bからなる。安定化電圧回路となるレギュレータ10aは、整流回路9が整流された電圧を安定化させ、内部電源電圧VDDを生成する。静電容量素子10bは、レギュレータ10aの出力部と基準電位VSSとの間に接続されている。この静電容量素子10bは、電荷を蓄積し、レギュレータ10aからの電流供給が低下した際に、変調/復調部4やその他の内部回路である内部回路11に電源を供給する。
【0047】
整流回路9の入力部には、アンテナ端子LA,LBがそれぞれ接続されている。アンテナ端子LAには、アンテナ2の一方の端部が接続されており、アンテナ端子LBには、該アンテナ2の他方の端部が接続されている。
【0048】
また、変調/復調部4は、バックスキャッタ用スイッチ12からなる変調部と、ASK前段昇圧回路13、および復調回路14とからなる復調部とから構成されている。バックスキャッタ用スイッチ12は、たとえば、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタからなり、IDタグ1からリーダ/ライタへデータ送信するバックスキャッタ通信時に送信系論理回路5の制御に基づいてON/OFF動作を行う。
【0049】
ASK前段昇圧回路13は、リーダ/ライタから出力された電波を昇圧/整流し、包絡線検波を行う。復調回路14は、ASK前段昇圧回路13から出力された検波信号をASK復調してデジタル信号に変換する。
【0050】
ASK前段昇圧回路13は、静電容量素子15,16、およびダイオード17,18から構成されている。また、このASK前段昇圧回路13には、変調部であるバックスキャッタ用スイッチ12が設けられている。
【0051】
静電容量素子15の一方の接続部には、アンテナ端子LAが接続されており、該静電容量素子15の他方の接続部には、ダイオード17のカソード、ダイオード18のアノード、ならびにバックスキャッタ用スイッチ12の一方の接続部がそれぞれ接続されている。
【0052】
ダイオード18のカソードには、静電容量素子16の一方の接続部が接続されており、該ダイオード18のカソードがASK前段昇圧回路13の出力部となっている。また、ダイオード17のアノード、バックスキャッタ用スイッチ12の他方の接続部、および静電容量素子16の他方の接続部には、アンテナ端子LBがそれぞれ接続されている。
【0053】
次に、本実施の形態によるバックスキャッタ用スイッチ12の作用について説明する。
【0054】
図3は、バックスキャッタ通信時におけるバックスキャッタ信号の説明図である。この図3に示した信号は、アンテナ端子LA,LB間の振幅を示している。
【0055】
バックスキャッタ通信においては、図示するように、IDタグ1がバックスキャッタ信号’1’を送信する際には、送信系論理回路5の制御によってバックスキャッタ用スイッチ12をONさせることにより、アンテナ端子LA,LB間のインピーダンスを変化させてマッチングをずらして反射係数を大きくする。
【0056】
また、IDタグ1がバックスキャッタ信号’0’を送信する際には、送信系論理回路5がバックスキャッタ用スイッチ12をOFFして反射係数を小さくしている。
【0057】
このバックスキャッタ通信時において、バックスキャッタ用スイッチ12をONさせるバックスキャッタ信号’1’を送信する際に、バックスキャッタ用スイッチ12を内部電源電圧VDDに電流供給する整流回路9などと並列に接続される経路であるASK前段昇圧回路13に設けたことにより、整流部3の経路から、内部電源電圧VDDに供給する電流を引き抜くことを防止することができる。
【0058】
よって、バックスキャッタ通信時に、バックスキャッタ用スイッチ12がONすることによって捨てられてしまう電流は、変調/復調部4の信号受信の経路のみから発生することになる。
【0059】
このことから、バックスキャッタ用スイッチ12がONした際にインピーダンスマッチング分以外の余分な電流ロスを防止することができる。また、バックスキャッタ用スイッチ12をASK前段昇圧回路13に設けても、ASK信号受信とバックスキャッタ通信とは異なるタイミングで行われるために、復調部への悪影響はない。
【0060】
さらに、ASK前段昇圧回路13は、整流部3のように大電圧を供給するような回路構成になっていないために、大電力入力時においても、整流回路9のように強い電流引き抜きパスを必要としない。よって、大電力時のバックスキャッタ強度も確保しやすいことになる。
【0061】
それにより、本実施の形態1によれば、バックスキャッタ通信時におけるIDタグ1とリーダ/ライタとの通信可能距離を大きくすることができる。
【0062】
また、IDタグ1とリーダ/ライタが近距離通信される大電力入力時においても、バックスキャッタ強度を確保することができる。
【0063】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2によるIDタグに設けられたASK前段昇圧回路、およびバックスキャッタ用スイッチの回路例を示す説明図、図5は、図4の整流部、および変調/復調部の構成例を示す回路図である。
【0064】
本実施の形態2において、IDタグ1(図1)は、前記実施の形態1と同様に、アンテナ2、整流部3、変調/復調部4、送信系論理回路5、受信系論理回路6、制御回路7、およびメモリ部8から構成されている。
【0065】
また、整流部3の構成についても、前記実施の形態1と同様に、整流回路9、レギュレータ10a、および静電容量素子10bからなり、変調/復調部4の構成においても、前記実施の形態1と同様に、バックスキャッタ用スイッチ12(変調部)とASK前段昇圧回路13、および復調回路14とからなる復調部とから構成されている。
【0066】
さらに、ASK前段昇圧回路13の構成についても、静電容量素子15,16、およびダイオード17,18から構成されており、該ASK前段昇圧回路13にバックスキャッタ用スイッチ12が設けられているが、前記実施の形態1と異なる点は、バックスキャッタ用スイッチ12の接続位置である。
【0067】
図4は、ASK前段昇圧回路13、およびバックスキャッタ用スイッチ12の回路例を示す説明図である。
【0068】
この場合、バックスキャッタ用スイッチ12は、図2で示したダイオード17,18の間ではなく、ASK前段昇圧回路13の出力部と基準電位VSSとの間に(静電容量素子16の一方の接続部にバックスキャッタ用スイッチ12の一方の接続部が接続され、静電容量素子16の他方の接続部にバックスキャッタ用スイッチ12の他方の接続部が接続されている)接続されている。
【0069】
前記実施の形態1で示したバックスキャッタ用スイッチ12の接続位置では、ダイオード17,18で構成される整流回路の動作時に大きな振幅が発生してしまい、バックスキャッタ用スイッチ12であるMOSトランジスタの寄生容量や寄生抵抗などによって余分な電力を消費してしまうことになるが、図4に示したバックスキャッタ用スイッチ12の接続位置では、該整流回路の振幅を略なくすことができるので、余分な電力の消費を防止することができる。
【0070】
図5は、本発明を適用したIDタグ1における整流部3、および変調/復調部4の構成例を回路図である。
【0071】
整流回路9は、静電容量素子C1〜C4、ダイオードD1〜D8、および抵抗R1から構成されている。チャージポンプ回路を構成する静電容量素子C1,C2の一方の接続部には、アンテナ端子LAがそれぞれ接続されている。
【0072】
静電容量素子C1の他方の接続部には、ダイオードD4のアノード、およびダイオードD3のカソードがそれぞれ接続されている。静電容量素子C2の他方の接続部には、ダイオードD1のカソード、ならびにダイオードD2のアノードがそれぞれ接続されている。
【0073】
ダイオードD2のカソードには、ダイオードD3のアノード、および静電容量素子C3の一方の接続部がそれぞれ接続されている。ダイオードD4のカソードには、抵抗R1の一方の接続部、静電容量素子C4の一方の接続部、およびダイオードD5のアノードがそれぞれ接続されている。
【0074】
ダイオードD5のカソードには、ダイオードD6のアノードが接続されており、ダイオードD6のカソードには、ダイオードD7のアノードが接続されている。また、ダイオードD7のカソードには、ダイオードD8のアノードが接続されている。
【0075】
また、ダイオードD1のアノード、静電量素素子C3,C4の他方の接続部、ならびにダイオードD8のカソードには、アンテナ端子LBがそれぞれ接続されている。ダイオードD5〜D8は、たとえば、ダイオード接続されたMOSトランジスタからなり、整流回路9に大電力が入力された際に電流の引き抜きを行う保護回路である。
【0076】
ASK前段昇圧回路13は、静電容量素子15,16、およびダイオード17,18から構成されており、接続構成は、図4と同様である。また、図5では、バックスキャッタ用スイッチ12をMOSトランジスタで示している。
【0077】
続いて、レギュレータ10aは、抵抗R2,R3、オペアンプOP、トランジスタT1、および基準電圧発生回路VrCから構成されている。抵抗R1の他方の接続部(整流回路9の出力部)には、クランプ用のMOSトランジスタとなるトランジスタT1の一方の接続部、および抵抗R2の一方の接続部がそれぞれ接続されている。この接続部は、レギュレータ10aの出力部ともなり、復調回路14、および内部回路11の電源端子にも接続されている。
【0078】
抵抗R2の他方の接続部には、抵抗R3の一方の接続部、およびオペアンプOPの一方の入力部がそれぞれ接続されている。基準電圧発生回路VrCは、基準電圧VREFを生成する。
【0079】
オペアンプOPの他方の入力部には、基準電圧発生回路VrCが生成した基準電圧VREFが入力されるように接続されている。抵抗R3の他方の接続部、ならびにトランジスタT1の他方の接続部には、アンテナ端子LBが接続されている。
【0080】
また、静電容量素子10bの一方の接続部には、トランジスタT1の一方の接続部が接続されており、静電容量素子10bの他方の接続部には、トランジスタT1の他方の接続部が接続されている。
【0081】
それにより、本実施の形態2によれば、バックスキャッタ通信時におけるIDタグ1とリーダ/ライタとの通信可能距離をより大きくすることができる。
【0082】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3によるIDタグに設けられた整流部、変調/復調部、メモリ部、メモリ用昇圧回路、および内部回路の構成を示した説明図である。
【0083】
本実施の形態3において、IDタグ1は、アンテナ2、整流部3、変調/復調部4、送信系論理回路5、受信系論理回路6、制御回路7、およびメモリ部8からなる前記実施の形態1と同様の構成に、新たにメモリ部8に電源を供給するメモリ用昇圧回路8aが新たに設けられている。
【0084】
図6は、IDタグ1における整流部3、変調/復調部4、メモリ部8、ならびにメモリ用昇圧回路8aの構成を示した説明図である。
【0085】
この場合、変調部を構成するバックスキャッタ用スイッチ12が変調/復調部4のASK前段昇圧回路13に設けられているのではなく、メモリ用昇圧回路8aに設けられている点が前記実施の形態1と異なっている。
【0086】
メモリ用昇圧回路8aの入力部には、アンテナ端子LA,LBがそれぞれ接続されており、整流回路9と並列接続された構成となっている。メモリ用昇圧回路8aは、アンテナ2を介して受信した電波から、メモリ部8の動作電力となる昇圧電源電圧を生成し、メモリ部8に供給する。
【0087】
また、その他の接続構成については、前記実施の形態1の図2と同様であるので、説明は省略する。
【0088】
それによって、本実施の形態1においても、バックスキャッタ通信時におけるIDタグ1とリーダ/ライタとの通信可能距離を大きくすることができる。
【0089】
また、本実施の形態3の構成では、ASK前段昇圧回路13にバックスキャッタ用スイッチ12が不要となるので、たとえば、図7に示すように、整流回路9内にASK前段昇圧回路13(図示せず)を備える構成としてもよい。
【0090】
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4によるIDタグにおける整流部、および変調/復調部の構成例を示した説明図である。
【0091】
本実施の形態4は、図8に示すように、前記実施の形態1の図2の構成に、新たにレベルシフタ19を備えた構成となっている。レベルシフタ19は、送信系論理回路5から出力される内部電源電圧VDD−基準電位VSS振幅のバックスキャッタ用スイッチ12の制御信号を、整流回路9が昇圧、および整流した電源電圧VPP−基準電位VSS振幅にレベル変換してバックスキャッタ用スイッチ12に出力する。
【0092】
電源電圧VPPは、内部電源電圧VDDよりも電圧レベルが高い。この電源電圧VPPでバックスキャッタ用スイッチ12であるMOSトランジスタをONさせることによって、大電力入力時であっても該MOSトランジスタのON抵抗を小さくすることができ、バックスキャッタ強度を十分確保することが可能となる。
【0093】
それにより、本実施の形態4においては、IDタグ1とリーダ/ライタとの近距離通信した際の大電力入力時であっても安定した通信を行うことができる。
【0094】
(実施の形態5)
図9は、本発明の実施の形態5によるIDタグの構成例を示したブロック図である。
【0095】
本実施の形態5は、整流部3、内部回路11、ASK前段昇圧回路13、および復調回路14からなる前記実施の形態1の図2と同様の構成に、図9に示すように、整流部3aと第1の内部回路となる内部回路11aとを新たに設けた構成となっている。
【0096】
第2の内部回路となる内部回路11には、たとえば、基準クロック信号を生成するクロック信号生成回路などが設けられており、内部回路11aには、その他のロジック系回路である送信系論理回路5、受信系論理回路6、制御回路7、ならびにメモリ部8などが設けられる。
【0097】
整流部3aの構成は、整流部3(第1の整流回路となる整流回路9、第2の電圧安定化回路となるレギュレータ10a、および静電容量素子10b)と同様に、第2の整流回路となる整流回路、第2の安定化電圧回路となるレギュレータ、および静電容量素子から構成されており、バックスキャッタ用スイッチ12は、たとえば、内部回路11aに内部電源電圧VDD2を供給する整流部3aに設けられた構成となっている。
【0098】
バックスキャッタ用スイッチ12がONになった際、整流部3は、バックスキャッタ用スイッチ12が設けられていないために、整流部3aに比べて、より安定した内部電源電圧VDDを供給することが可能となる。
【0099】
よって、バックスキャッタ用スイッチ12がONの場合でも、内部回路11に設けられたクロック信号生成回路が、周波数変動の少ない安定した基準クロック信号を生成することができる。
【0100】
それにより、本実施の形態5によれば、IDタグ1の通信性能を向上させることができる。
【0101】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、RFIDシステムにおけるリーダ/ライタとIDタグと通信技術に適している。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施の形態1によるIDタグの構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のIDタグにおける整流部、および変調/復調部の構成例を示した説明図である。
【図3】IDタグによるバックスキャッタ通信時におけるバックスキャッタ信号の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態2によるIDタグに設けられたASK前段昇圧回路、およびバックスキャッタ用スイッチの回路例を示す説明図である。
【図5】図4の整流部、および変調/復調部の構成例を示す回路図である。
【図6】本発明の実施の形態3によるIDタグに設けられた整流部、変調/復調部、メモリ部、メモリ用昇圧回路、および内部回路の構成を示した説明図である。
【図7】本発明の他の実施の形態によるIDタグに設けられた整流部、変調/復調部、メモリ部、メモリ用昇圧回路、および内部回路の構成を示した説明図である。
【図8】本発明の実施の形態4によるIDタグにおける整流部、および変調/復調部の構成例を示した説明図である。
【図9】本発明の実施の形態5によるIDタグの構成例を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0104】
1 IDタグ
2 アンテナ
3 整流部
3a 整流部
4 変調/復調部
5 送信系論理回路
6 受信系論理回路
7 制御回路
8 メモリ部
8a メモリ用昇圧回路
9 整流回路
10 電源電圧制御回路
10a レギュレータ
10b 静電容量素子
11 内部回路
11a 内部回路
12 バックスキャッタ用スイッチ
13 ASK前段昇圧回路
14 復調回路
15,16 静電容量素子
17,18 ダイオード
19 レベルシフタ
LA,LB アンテナ端子
C1〜C4 静電容量素子
D1〜D8 ダイオード
R1〜R3 抵抗
OP オペアンプ
T1 トランジスタ
VrC 基準電圧発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダ/ライタから受けた電波を電力に変換し、前記リーダ/ライタへ情報を送信する際にバックスキャッタ通信を行うIDタグであって、
前記リーダ/ライタからの電波を送受信するアンテナと、
前記アンテナに接続され、前記アンテナが受信した前記リーダ/ライタから出力された電波の電磁誘導による電力を整流して一次電圧を生成する整流回路と、
前記整流回路が生成した一次電圧を安定化して内部電源電圧を生成し、内部回路に供給する安定化電圧回路と、
前記IDタグが、バックスキャッタ通信を行う際に、前記アンテナのインピーダンスを変化させてマッチングをずらすバックスキャッタ用スイッチとを備え、
前記バックスキャッタ用スイッチは、前記整流回路に並列接続された内部回路に設けられていることを特徴とするIDタグ。
【請求項2】
請求項1記載のIDタグにおいて、
前記整流回路に並列接続された内部回路は、
前記アンテナが受信した前記リーダ/ライタから出力された電波を昇圧/整流し、包絡線検波を行うASK前段昇圧回路であり、
前記バックスキャッタ用スイッチは、
前記ASK前段昇圧回路に設けられていることを特徴とするIDタグ。
【請求項3】
請求項2記載のIDタグにおいて、
前記バックスキャッタ用スイッチは、
前記ASK前段昇圧回路の出力部と基準電位との間に接続されていることを特徴とするIDタグ。
【請求項4】
請求項2または3記載のIDタグにおいて、
前記バックスキャッタ用スイッチを動作制御する制御信号をレベル変換するレベルシフタを備え、
前記レベルシフタは、
前記バックスキャッタ用スイッチを、前記整流回路が生成した一次電圧によって駆動させることを特徴とするIDタグ。
【請求項5】
請求項1記載のIDタグにおいて、
前記整流回路に並列接続された内部回路は、
前記アンテナが受信した前記リーダ/ライタから出力された電波を昇圧/整流して昇圧電源電圧を生成し、情報の格納を行うメモリ部の動作電源として供給するメモリ用昇圧回路であることを特徴とするIDタグ。
【請求項6】
リーダ/ライタから受けた電波を電力に変換し、前記リーダ/ライタへ情報を送信する際にバックスキャッタ通信を行うIDタグであって、
前記リーダ/ライタからの電波を送受信するアンテナと、
前記アンテナに接続され、前記アンテナが受信した前記リーダ/ライタから出力された電波の電磁誘導による電力を整流して一次電圧を生成する第1の整流回路と、
前記第1の整流回路が生成した一次電圧を安定化して内部電源電圧を生成し、第1の内部回路に供給する第1の安定化電圧回路と、
前記第1の整流回路に並列接続され、前記アンテナが受信した前記リーダ/ライタから出力された電波の電磁誘導による電力を整流して一次電圧を生成する第2の整流回路と、
前記第1の整流回路が生成した一次電圧を安定化して内部電源電圧を生成し、第2の内部回路に供給する第2の安定化電圧回路と、
前記IDタグがバックスキャッタ通信を行う際に、前記アンテナのインピーダンスを変化させてマッチングをずらすバックスキャッタ用スイッチとを備え、
前記バックスキャッタ用スイッチは、前記第1の整流回路に並列接続された前記第2の整流回路に設けられていることを特徴とするIDタグ。
【請求項7】
請求項6記載のIDタグにおいて、
前記第1の内部回路は、基準クロックを生成し、論理回路に供給するクロック生成回路からなり、
前記第2の内部回路は、前記論理回路からなることを特徴とするIDタグ。
【請求項8】
請求項6または7記載のIDタグにおいて、
前記第1の整流回路に並列接続され、前記アンテナが受信した前記リーダ/ライタから出力された電波を昇圧/整流し、包絡線検波を行うASK前段昇圧回路を有することを特徴とするIDタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−130896(P2009−130896A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307000(P2007−307000)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】