IGEを標的としたDNAワクチン接種
本発明は、抗原提示細胞(APC)上のIgEレセプタ(FcεR)を標的とし、APCに特異的な調整要素を提供してDNAの発現を促進することによって媒介されるAPCにおいて、DNAワクチンを集中および発現する新規アプローチを対象とする。本発明は、DNAを集中および発現するための新規ワクチン、およびそのような化合物、組成、およびそれらを含む製品を使用する方法を提供する。本ワクチンは、アレルギー性疾患の予防または治療に使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究または開発に関する明細書
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与された助成金No.AI15251の下、政府の支援を受けて行われた。当政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
技術分野
本発明は、抗原提示細胞(APC)上のIgEレセプタ(FcεR)を標的とし、APCに特異的な調整要素を提供してDNAの発現を促進することによって媒介されるAPCにおいて、DNAワクチンを集中および発現する新規アプローチを対象とする。そのような改良DNAワクチンは、IgE媒介のアレルギー性疾患およびその他の疾患、例えば、自己免疫疾患、ウイルス性疾患などの感染症、およびDNAワクチン接種が有益な効果を持つことが予想される癌の管理において有用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
免疫グロブリンレセプタ(Fcレセプタとも呼ばれる)は、免疫グロブリンの定常領域を結合する細胞表面レセプタであり、抗原結合以外の様々な免疫グロブリン機能を媒介する。IgE分子のFcレセプタは、多くの細胞型の免疫系で見られる(非特許文献1)。現在、IgEに対して2つの異なるレセプタが知られている。IgEは、抗体として複数鎖高親和性レセプタFcεRI、および低親和性レセプタFcεRIIを通じて、その生物学的反応を媒介する。マスト細胞、好塩基球、樹状細胞、単球、マクロファージ、およびランゲルハンス細胞の表面に発現する高親和性レセプタFcεRIは、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリに属し、マスト細胞および好塩基球においてα鎖、β鎖、および2つのジスルフィド結合γ鎖(αβγ2)、また、樹状細胞、単球、マクロファージ、およびランゲルハンス細胞においてαγ2構造から成る四量体構造を有する(非特許文献2)。これらは、レセプタ発現およびシグナル伝達に必要である(非特許文献3)。レセプタのα鎖は、IgE重鎖の第3定常領域の遠位と相互作用する。ヒトFcεRIとの結合に関与するヒトIgEの特異的アミノ酸は、Arg‐408、Ser‐411、Lys‐415、Glu‐452、Arg‐465、およびMet‐469を含むことが確認されている(Presta らJ.Biol.Chem.269:26368‐73(1994))。相互作用は、約1010M−1の結合定数をもって、極めて特異的である。
【0004】
好酸球、白血球、Bリンパ球、および血小板を含む炎症細胞の表面に現れる、低親和性FcεRIIレセプタ(CD23)は、免疫グロブリンスーパーファミリから生じていないが、いくつかの動物レクチンとの、かなりの相同性を有し(Yodoi ら、Ciba Found.Symp.,147:133‐148(1989))、細胞質内NH2末端を持つ膜貫通鎖で構成されている。現在、FcεRIIは2つの形態(FcεRIIaおよびFcεRIIb)を有することが知られており、それらは、双方とも、クローン化および配列決定されている。それらは、N末端細胞質領域のみが異なり、細胞外領域は同一である。サイトカインIL‐4による誘導の際に、FcεRIIaは、通常、B細胞上で発現するが、FcεRIIbは、T細胞、B細胞、単球、および好酸球上で発現する。
【0005】
高親和性IgEレセプタFcεRIを通じ、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、重度の食物アレルギー、慢性蕁麻疹および血管性浮腫を含む一連の急性および慢性アレルギー反応、およびハチ刺されまたはペニシリンアレルギーなどに起因するアナフィラキシー・ショックの重篤な生理的状態において、IgEは重要な役割を果たす。マスト細胞および好塩基球の表面上でFcεRIに特異的に結合した抗原に対する多価抗原(アレルゲン)の結合は、複雑な一連のシグナル伝達事象を促し、結果的に急性および晩期アレルギー反応に寄与するホスト血管作用性および前炎症性メディエータを放出する(Metcalfeら、Physiol.Rev.77:1033‐1079(1997))。
【0006】
Bリンパ球の表面で見られる低親和性IgEレセプタFcεRIIの機能は、FcεRIの機能に比べ、十分に確立されていない。重合状態において、FcεRIIはIgEを結合し、この結合は、B細胞により生成される抗体の型(クラス)を制御する働きをしている可能性がある。
【0007】
マクロファージ/単球、血液樹状細胞(DC)、濾胞DC(FDC)、ランゲルハンス細胞(LC)、マスト細胞、および活性化B細胞を含む、ヒト抗原提示細胞(APC)は、FcεRIおよび/またはFcεRIIを特異的に発現する。IgE Dependent Antigen Focusing(IgE‐DAF:IgE依存性の抗原集中)経路を介してAPCにより効率的に抗原を補足し、B細胞に直接提示するか、または抗原を処理およびT細胞に提示して高い免疫反応を引き出すことができることが証明されている。
【0008】
FcεRIを含む末梢血樹状細胞に対する抗原‐IgE複合体の標的は、IgEの存在なしに抗原に対する樹状細胞の暴露後に引き起こされる反応よりもはるかに強力な抗原特異的T細胞反応を生じることが示されている(Maurerら、1995 J.Immunol.154:6258、Maurerら、1998,J.Immunol.161:2731)。FcεRIを介して樹状細胞によって摂取された抗原は、MHC含有区分に効率よく取り込まれる。そこで抗原は処理され、カテプシンS依存性経路を通じてMHC上に取り込まれる(Maurerら、1998 J.Immunol.161:2731)。またFDC、表皮ランゲルハンス細胞、皮膚DCといった他の種のDCは、FcεRIを発現し、これらの種のAPC上に発現したFcεRIは、IgE‐DAFおよび特定の環境および特別な位置における提示によって重要な働きをすると考えられている(Mudde、1990 Immunol Today 11:440)。例えば、FDCにおける抗原のIgE媒介による捕捉および提示は、抗原をその表面上に長期間維持するFDCの能力によって、長期に渡る免疫反応、および特殊な局在化およびリンパ様組織の胚中心におけるT細胞との相互作用を提供する可能性がある機序である(Muddeら、1990 Immunol Today 11:440)。そのようなIgE‐DAF機序は、所定の抗原の濃度が、従来の抗原捕捉および提示経路を通じて効果的に提示されうる濃度よりも低い場合に特に重要である。大部分のリガンド‐レセプタ相互作用より2〜3ログ高い、IgEのFc領域に対するFcεRIの極めて高い親和性(10−10〜10−11L/M範囲のKd)が、この相互作用が抗原提示の強化において特別な位置を占める理由のようである。
【0009】
またFcεRII(CD23)B細胞により媒介されるIgE‐DAFの研究も、IgE媒介の抗原捕捉と、それに続く処理および提示が、抗原に特異的なIgEがない場合より2〜3ログも効果的であることを示す(Muddeら、1990 Immunol Today 11:440、Kehryら、1989 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7556、Pirronら、1990 Eur.J.Immunol 20:1547)。抗原に特異的なIgGが同様の効果を示さず、IgE‐DAFがバイスタンダー抗原を提示しなかったため、そのようなIgE媒介による抗原提示活性の強化は、IgE依存およびIgE特異的であることが示された(Saxonら、2001 The Allergic Response in Host Defense(Clinical Immunology、Rich R.R.ら編、第2版内、 pp451))。FDCなど一部の種類のAPCは、両種のFcεRを発現するため、FcεRIおよびFcεRIIの両方を通じて抗原を捕捉および提示できるようである(Muddeら、1990 Immunol Today 11:440、Saxonら、2001 The Allergic Response in Host Defense(Clinical Immunology、 Rich R.R.ら編、第2版内、pp451))。
【0010】
アレルギー反応を制御する細胞および分子機序、および改善された治療に関する理解の進展にも関わらず、アレルギー性疾患、特に喘息および重度の食物アレルギーの発生率は、開発国および発展途上国の両方において近年劇的に増加している(Beasleyら、J.Allergy Clin.Immunol.105:466‐472(2000)、Peat and Li,J.Allergy Clin.Immunol.103:1‐10(1999)、Maら、J Allergy Clin Immunol.112:784‐8(2003))。
【0011】
高親和性IgEレセプタFcεRIを通じて、IgEは免疫反応において重要な役割を果たす。抗原に特異的なIgE/FcεRI経路を介した抗原(つまりアレルゲン)によるマスト細胞および好塩基球の活性によって、アレルギー反応に寄与するホスト血管作用性および前炎症性メディエータ(つまり脱顆粒)が放出される(Oliverら、Immunopharmacology 48:269‐281(2000)、Metcalfeら、Physiol:Rev.,77:1033‐1079(1997))。これらおよびその他の生化学的事象は、ヒスタミンなどの炎症性メディエータの高速分泌につながり、結果として局所的組織炎症、血管拡張、血管および粘膜透過性の増加、および追加の好塩基球およびマスト細胞を含む他の免疫系細胞の局所的回復などの生理反応を生じる。これらの反応は、適度であれば寄生虫およびその他の微生物に対する免疫において有益に働く。しかし、過剰な場合、この生理反応によってI型過敏性としても知られるアレルギーの多様な病理状態が生じる。
【0012】
アレルギーは、幅広い一連の状態および関連症状を呈し、それらは軽度、慢性、急性、および/または命にかかわる可能性がある。これらの様々な病状は、例えば、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、重度の食物アレルギー、慢性蕁麻疹および血管性浮腫、ならびに重篤なアナフィラキシー・ショックの生理状態である。多種多様な抗原は、アレルゲンとして作用することが知られており、アレルゲンへの暴露がこれらのアレルギー性病状をもたらす。一般的なアレルゲンは、ハチ刺され、ペニシリン、様々な食物アレルギー、花粉、動物タンパク質(特にイエダニ、ネコ、イヌ、およびゴキブリ)、および真菌アレルゲンを含むが、それらに限定されない。アレルゲンに対する最も重い反応は、気道狭窄およびアナフィラキシー・ショックに至る可能性があり、どちらも致死的状態となる可能性がある。アレルギー反応を制御する細胞および分子機構に関する理解の進歩、および改善された治療にも関わらず、アレルギー性疾患、特にアレルギー性喘息の発生率は、開発国および発展途上国のいずれにおいても近年劇的に増加している(Beasleyら、J.Allergy Clin.Immunol.105:466‐472(2000)、Peat and Li,J.Allergy Clin.Immunol.103:1‐10(1999))。そのため、アレルギー性疾患の治療法を開発する強い必要性がある。
【0013】
アレルギー性喘息は、遍在する環境アレルゲンへの暴露によってもたらされる状態であり、過敏な個人において炎症反応および上気道の狭窄を生じる。通常、軽度の喘息は、大部分の患者において、比較的少量の吸入コルチコステロイド剤によって制御することができるが、中度の喘息は、長時間作用する吸入β拮抗剤またはロイコトリエン阻害剤の追加投与によって管理される。重度の喘息の治療は、依然として重大な医療上の問題である。さらに、アレルギーの治療に現在使用されている治療薬の多くは、深刻な副作用をもたらす。現在臨床で使用されている抗IgE抗体(rhuMAb‐E25,Genentech,Inc.)および他の実験的治療(例えば、IL‐4拮抗薬)は、有望な結果を示しているが、喘息、重度の食物アレルギー、慢性蕁麻疹および血管性浮腫などのアレルギー性疾患を管理する追加の治療法および薬剤を開発する必要がある。
【0014】
アレルギー性疾患は、例えばアレルゲンをベースとするワクチン接種により治療できる。ここでは漸増用量のアレルゲンが注射によって何年も投与される。このアプローチは、費用と時間がかかり、多くのアレルギー症状において効果に乏しいか、または効果がなく、深刻な副作用をもたらし、死亡に至る場合もある。アレルギー性疾患の治療に対するアプローチの1つは、アレルゲンをベースとした免疫療法の使用によるものである。この方法は、抗原全体を「アレルギーワクチン」として使用し、相対的なアレルギー耐性の状態を誘導することが評価されている。このアレルギー治療法は、しばしば「脱感作」または「減感作」療法と呼ばれる。この方法では、一般に注射によって、漸増用量のアレルゲンを長期(しばしば、数ヶ月または数年)に渡り対象に投与する。この治療法の作用機序は、IgG抑制抗体の誘導、マスト細胞/好塩基球反応性の抑制、T細胞反応の抑制、T細胞アネルギーの促進、および/またはクローン除去を含み、長期的にアレルゲンに特異的なIgEのレベルを減少すると考えられる。しかし、このアプローチの使用は、多くの場合、有効性の乏しさ、および全身性および命にかかわる可能性があるアナフィラキシ反応を誘発する(ここでは、アレルゲンの臨床投与は、抑制を必要とする重度のアレルギー反応を誘導する)リスクを含む、深刻な副作用により妨げられる。(TePasら、Curr.Opin.Pediatrics 12:574‐578[2000])。
【0015】
この方法の改良版では、少量のアレルゲン分子を使用する。ここで、少量(つまりペプチド)は、アレルギー反応を調節するT細胞の免疫優勢エピトープを含むと推定される。これらのアレルゲン部分を使用する免疫耐性療法は、ペプチド療法とも呼ばれ、一般に注射によって、漸増用量のアレルゲンペプチドを対象に投与する。この治療の作用機序は、T細胞応答の抑制、T細胞アネルギーの促進、および/またはクローン削除を含むと考えられる。ペプチドは、アレルギー性(IgE)抗体にではなく、T細胞にのみ結合するよう設計されるため、このアプローチを使用することにより、治療に対するアレルギー反応を誘発しないことが望まれた。残念なことに、これらのペプチド療法の試行は失敗に終わっており、治療に対応してアレルギー反応がしばしば見られる。これらのペプチド療法の開発は、概ね中断されている。
【0016】
アレルギー反応は、Th2型免疫反応と強く関連する。歪んだTh2反応をバランスの取れた反応に調整することが、喘息を含むアレルゲン免疫療法疾患の主な目的である。この目的を達成するため、タンパク質をベースとしたアレルゲン免疫療法が広く臨床で使用されている。しかし、そのようなアレルゲン免疫療法の有効性は変化しやすく、長期(数年)の治療が必要である。さらに重要なことは、アレルゲン免疫療法が局所および全身性のアレルギー反応を予期せず引き起こす場合がある。アレルゲン免疫療法がアレルギー反応を引き起こすかどうかを予測する確実な方法はなく、免疫療法は、重度のアレルギー性喘息、およびその他の命にかかわるアレルギー症状において特に危険となる可能性がある。
【0017】
患者へのアレルゲン遺伝子の投与は、アレルギー免疫療法に対する有効なアプローチであることが示されている(Raz,E.ら、1996.,Proc Natl Acad Sci USA.93:5141、Hsu,C.Hら、(1996)Nat Med.2:540、Hsu,C.H.ら、(1996)Int Immunol.8:1405、Lee,D.L.ら、(1997)Int Arch Allergy Immunol.113:227、Slater,J.E.ら(1998),J Allergy Clin Immunol.102:469.、Li,X.ら(1999),J Immunol.162:3045;Toda,M.ら(2000).Immunology.99:179、Maecker,H.T.ら(2001).J Immunol.166:959、Jilek,S.ら(2001)J Immunol.166:3612:Hochreiter,R.ら(2001),Int Arch Allergy Immunol.124:406、Adel−Patient,K.ら(2001),Int Arch Allergy Immunol.126:59、Peng,H.J.ら(2002),Vaccine.20:1761、Bauer,R.ら(2003)Allergy.58:1003、Wolfowicz,C.B.ら(2003)Vaccine.21:1195、Jacquet,Aら(2003)Clin Exp Allergy.33:218、Chatel,J.M.ら(2003)Allergy.58:641、Sudowe,S.ら(2003)Mol Ther.8:567、Toda,M.ら(2002)Eur J Immunol.32:1631、Hochreiter,R.ら(2003)Eur J Immunol.33:1667、Roy,K.,ら、1999.Nat Med.5:387、Chew,J Cら、2003.Vaccine.21:2720、Sudowe,S.ら、2002.Gene Ther.9:147、Ludwig−Portugall,Iら、2004.J Allergy Clin Immunol.114:951、Sudowe,S.ら、2006.J Allergy Clin Immunol.117:196‐203)。
【0018】
アレルゲン遺伝子ワクチン接種は、安全かつ有効にアレルゲン特異的IgEの生成を抑制し、Th2反応を抑え、Th1反応を相互に強化することが示されているため、安全上の懸念および有効性の観点から、アレルゲン特異的免疫療法のタンパク質をベースとした免疫療法プロトコルに対する有望な代替となる。有効な場合、アレルゲンワクチン接種によって、Th2反応およびIgE生成の抑制、およびIFN‐γ、IgG2aおよびTh1反応の強化を含むバランスの取れたTh2/Th1反応が得られている(Darcan,Yら、Vaccine 23:4203)。さらに、アレルゲン遺伝子をベースとするワクチン接種は、肺などのアレルギー性炎症部位におけるマスト細胞の数を低減させることができた(Masuda K.(2005).Vet Immunol Immunopathol.108:185)。アレルゲン遺伝子は、裸のプラスミドDNAとして、筋肉内または皮内注射、遺伝子銃によるバイオリスティックトランスフェクション、またはプラスミドDNA‐ポリマー複合体として経口投与を含む様々な経路で投与されている。注射によるDNA免疫付与は、特定のIgE生成の進行を抑制する効果があることが報告されている。反対に、アレルゲンをコード化するベクターを用いたDNAワクチン接種が、既に確立されているIgE免疫反応を抑える能力については議論の余地がある。有効なアレルゲン遺伝子療法の主な障害は、アレルギー性疾患モデルにおけるDNA組み換えおよび発現の効率が乏しいことである。
【0019】
自己免疫疾患
米国人口の20%程が何らかの自己免疫疾患を有すると推定される。自己免疫疾患は、女性において不均衡な発現を呈し、自己免疫疾患の罹患者の75%程が女性であると推定される。自己免疫疾患の一部形態は個々には稀だが、関節リウマチおよび自己免疫性甲状腺炎などの一部疾患は、人口において著しい罹患率を占める(Rose and MacKay(Eds.),The Autoimmune Diseases,Third Edition,Academic Press[1998])。
【0020】
自己免疫疾患は、体が自己反応性T細胞およびB細胞を免疫レパートリーから排除できないことにより生じ、結果として、対象自身の生理機能に起因する分子に対する免疫反応を識別および誘導できるB細胞生成物(すなわち自己反応性抗体)、ならびにT細胞を循環させる。特定の自己免疫疾患は、一般に器官特異的(すなわち細胞型特異的)または全身性(すなわち非器官特異的)として分類できるが、一部の疾患は、この一連の分類の両端の側面を示す。器官特異的疾患は、例えば、Hashimoto甲状腺炎(甲状腺)およびインシュリン依存性糖尿病(膵臓)を含む。全身性疾患の例は、関節リウマチおよび全身性エリテマトーデスを含む。自己免疫反応は、体の任意の器官または組織に対して生成されうるため、自己免疫疾患は、多くの兆候と症状を示す。さらに、血管が、自己免疫性血管炎に見られるような自己免疫発作の標的である場合、すべての器官が関与する可能性がある。自己免疫疾患は、軽度から命にかかわるもの、急性から慢性、および再発するものまで幅広い重篤度を示す(Rose and MacKay(編),The Autoimmune Diseases,Third Edition,Academic Press[1998]、およびDavidson and Diamond,N.Engl.J.Med.,345(5):340‐350[2001])。
【0021】
一部の自己反応性抗原(すなわち自己抗原)の分子識別は、すべてではないが、一部の自己免疫疾患において既知である。自己免疫疾患の患者は、複数種の自己反応性抗体を有する場合と、逆に複数の自己免疫疾患状態において単一種の自己反応性抗体が観察される場合があり、このような疾患の不規則な性質によって、自己免疫疾患の診断および研究は困難になる(Mocciら、Curr.Opin.Immunol.,12:725‐730[2000]、およびDavidson and Diamond,N.Engl.J.Med.,345(5):340‐350[2001])。さらに、自己反応性抗体またはT細胞は、個人において提示される可能性があるが、疾患またはその他の病理の兆候をまったく示さない。そのため、多くの自己抗原の分子識別が知られているが、それらの自己抗原の正確な病因的役割は、一般に不明のままである(明確な例外は、例えば、重症筋無力症、自己免疫甲状腺疾患、多発性硬化症、および糖尿病)。
【0022】
自己免疫疾患の治療は存在するが、各方法にはそれぞれ特定の短所がある。自己免疫疾患の既存の治療は、一般に2つの群に分類できる。最初の、最も重要であル群は、一般に患者に欠けているホルモンまたはその他の成分を置換することによって、生理学的欠陥を補う治療である。例えば、自己免疫性糖尿病は、インシュリンの投与によって治療することができ、自己免疫性甲状腺疾患は、甲状腺ホルモンを付与することによって治療される。他の疾患の治療は、免疫性血小板減少における血小板などの様々な血液成分の置換、または薬物(例えば、エリスロポエチン)の使用を含み、免疫性貧血における赤血球の生成を促す。一部の場合、例えばループス腎炎および慢性関節リウマチにおいて、組織移植または機械的代用が可能な治療オプションとなる。あいにく、これらの種類の治療は、疾患症状を単に緩和させるだけで、根本的な自己免疫性病状、および様々な疾患に関連する合併症の進行を是正しないため最適ではない。根本的な自己免疫活性は依然として存在するため、罹患組織、組織移植、または置換タンパク質は、同様の免疫変性に陥りやすい。
【0023】
プロフェッショナルAPCとしてのDCは、すべてのDNA送達方法において、トランス遺伝子に特異的な免疫反応の開始に重要である(Takashima A.and Morita,A.(1999)J Leukoc Biol.66:350)。しかし、アレルゲン遺伝子ワクチン接種に関する現在の遺伝子導入方法のうち、DCに対するDNA遺伝子を特異的に標的とするものはない。結果としての、これらのアプローチの低い効率性は、ワクチン遺伝子のDCへの送達効率に関連していると思われる。
【0024】
一側面において、本発明は、DCに対してアレルゲン遺伝子を特異的に標的とするたの、アレルゲン遺伝子ワクチン接種の効率を高めるより良い方法を対象とする。IgEとFcεRIとの間の極めて高い親和性相互作用は、そのような効率の良いアレルゲンIT用アレルゲン遺伝子送達プラットフォームの開発に利用できる固有の特徴を提供する。そのような可能性は、アレルギー患者のAPC、とりわけDCおよびランゲルハンス細胞において、非アレルギー性個人のFcεRIよりはるかに高いレベルのFcεRIを発現するため、アトピー患者に対するアレルゲン遺伝子ベースのITに特に好適である(Mudde,G.C,Hansel,T.T.,and van Reijsen,F.C.(1990).Immunol Today.11:440、Haas,N.ら(1992).Acta Derm Venereol.72:271、Grabbe,J.ら(1993).Br J Dermatol.129:120、Haas,N.ら(1993)Exp Dermatol.2:157、Maurer,D.ら、(1994)J.Exp Med.179:745、Allam,J.P.ら(2003)J.Allergy.Clin.Immunol.112:141、Bieber Tら(1992)J Exp Med.175:1285)。この固有の特徴により、アレルギー患者におけるアレルゲンワクチン接種に対して、DCを特異的に標的とするIgE媒介のアレルゲン遺伝子導入をはるかに効率よく実現できることを保証する。そのため、現在の提案は、ヒトにおけるアレルゲン遺伝子ワクチン接種の成功利用に対する主要な障害を克服するように意図されている。
【0025】
本発明の目的は、抗原提示細胞(APC)上のIgEレセプタ(FcεR)を標的とし、APCに特異的な調整要素を提供してDNAの発現を促進することによって媒介されるAPCにおいて、DNAワクチンを集中および発現する改良ワクチンを提供することである。そのような改良DNAワクチンは、IgE媒介のアレルギー性疾患およびその他の疾患、例えば、自己免疫疾患、ウイルス性疾患などの感染症、およびDNAワクチン接種が有益な効果を持つことが予想される癌の管理において有用である。
【非特許文献1】Fridman,W.,FASEB J,5(12):2684‐90(1991)
【非特許文献2】Adamczewski,M.,and Kinet,J.P.,Chemical Immun.,59:173‐190(1994)
【非特許文献3】Tunon de Lara,Rev.Mal.Respir.,13(1):27‐36(1996)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0026】
発明の要約
本発明は、抗原提示細胞(APC)上のIgEレセプタ(FcεRs)を標的とし、APCに特異的な調整要素を提供してDNAの発現を促進することによって媒介されるAPCにおいてDNAを集中および発現するための新規ワクチン、およびそのような化合物、組成、およびそれらを含む製品を使用する方法を提供する。また本発明は、免疫媒介性疾患の予防または治療に好適な組成および方法を提供する。
【0027】
本発明の一側面は、核酸結合剤と機能的に連結される天然IgEレセプタに結合可能なIgEペプチドを含む、DNAワクチンを樹状細胞に送達するための組成に関する。
【0028】
本発明の別の側面は、DNAワクチンに直接または間接的に連結される核酸結合剤に機能的に連結されるIgEレセプタに結合可能なIgEペプチドを含む組成を対象とする。
【0029】
本発明の別の側面は、天然Fceレセプタを結合可能なIgE断片に機能的に接続されるアレルゲンをコード化する核酸を含むワクチンに関する。一実施形態において、核酸はIgE断片に間接的かつ機能的に接続される。
【0030】
別の実施形態において、IgE断片またはペプチド配列は、好ましくは、配列番号1のCH2‐CH3‐CH4ドメインアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、さらに好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態において、IgE断片またはペプチド配列は、天然ヒトIgE定常領域のCH2およびCH3ドメインの少なくとも一部を含む。代替的には、IgE断片またはペプチド配列は、厳しい条件下で、配列番号1のIgE重鎖定常領域ヌクレオチド配列の相補体の少なくとも一部に対して交配する核酸によりコード化されるアミノ酸配列を含む。
【0031】
本発明の一側面において、核酸は、核酸結合剤によりIgE断片に接続される。一実施形態において、核酸結合剤は、反復リジン、反復リジンおよびアルギニン、スペルミンまたはスペルミジン、あるいはポリエチルイミンポリマーから成る群から選択される。別の側面において、核酸結合剤はポリ‐I‐リジンを含む。別の側面において、核酸結合剤はポリ‐1‐リジン‐アルギニンを含む。本発明の別の側面において、IgE断片は、共有結合、ジスルフィド結合、またはアビジン/ストレプタビジン結合から成る群から選択される結合によって前記核酸結合剤に付加される。
【0032】
別の側面において、IgE断片またはペプチドは、IgEのCH2‐CH3‐CH4ドメイン、またはIgEのCH1‐CH2‐CH3‐CH4ドメインを含む。一実施形態において、IgE断片またはペプチドはヒト型である。
【0033】
すべての側面において、DNAワクチンまたはアレルゲンをコード化する核酸は、樹状細胞プロモータに操作可能に連結されてもよい。樹状細胞プロモータは、ファシンプロモータであってもよい。一実施形態において、核酸はベクターを含む。
【0034】
別の実施形態において、アレルゲンDNA配列は、表1に記載のアレルゲン群から選択されるアレルゲンをコード化する。一実施形態において、アレルゲンDNAはFel d1である。別の実施形態において、アレルゲンDNAは、ピーナッツのAra h1に対するアレルゲンDNAである。その他の実施形態において、DNAは主要なピーナッツアレルゲン(Ara h1‐6)をコード化するDNAの混合物を含む。
【0035】
その他の好ましい実施形態において、抗原核酸配列は、抗原核酸配列の少なくとも一部と少なくとも90%の同一配列を含む。さらに別の好ましい実施形態において、抗原核酸配列は、抗原をコード化する核酸分子の相補体の少なくとも一部に対し、厳しい条件下で交配する核酸配列を含む。
【0036】
別の実施形態において、DNA配列は、感染性因子に由来する免疫原のDNA配列である。別の実施形態において、DNA配列は、癌細胞に由来する免疫原のDNA配列である。別の実施形態において、DNA配列は、自己抗原などの自己アンチゲンである免疫原である。
【0037】
別の実施形態において、自己抗原DNA配列は、表2に記載の自己抗原群から選択される自己アンチゲンをコード化する。一部の好適な実施形態において、自己抗原DNA配列は、関節リウマチ自己抗原、多発性硬化症自己抗原、または自己免疫性I型糖尿病自己抗原、およびその一部から成る群から選択される自己抗原配列をコード化する。その他の好適な実施形態において、自己抗原DNA配列は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、αβ‐クリスタリン、ミエリン関連糖タンパク質、Po糖タンパク質、PMP22、2’,3’‐環状ヌクレオチド3’‐リン酸ヒドラーゼ(CNPase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インシュリン、64kD島細胞抗原(IA‐2、ICA512とも呼ばれる)、フォグリン(IA‐2β)、II型コラーゲン、ヒト軟骨gp39(HCgp39)、gp130‐RAPS、およびその一部から成る群から選択される自己抗原をコード化する。
【0038】
その他の好適な実施形態において、自己抗原核酸配列は、自己抗原核酸配列の少なくとも一部との少なくとも90%の同一配列を含む。さらに別の好適な実施形態において、自己抗原核酸配列は、自己抗原をコード化する核酸分子の相補体の少なくとも一部に対して厳しい条件下で交配する核酸配列を含む。
【0039】
本発明の別の側面は、本発明のワクチンを薬学的に許容しうる材料との混合で含む薬物組成である。
【0040】
本発明の別の側面は、容器、容器内の本発明のワクチン、および容器上のラベルまたは添付文書、あるいは容器に関連するラベルまたは添付文書を含む製品である。一実施形態において、ラベルまたは添付文書は、IgE媒介の生物学的反応の治療に関する説明書を含む。一実施形態において、生物学的反応はIgE媒介の過敏反応である。一実施形態において、ラベルまたは添付文書は、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、重度の食物アレルギー、慢性蕁麻疹、血管浮腫、およびアナフィラキシー・ショックから成る群から選択される状態の治療に関する説明書を含む。
【0041】
本発明の別の側面は、IgE媒介の生物学的反応に関連する状態を予防または治療する方法であり、本発明のワクチンの有効量を必要とする対象に投与するステップを含む。一実施形態において、対象はヒト患者である。一実施形態において、状態はIgE媒介の過敏反応である。一実施形態において、状態は、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、重度の食物アレルギー、慢性蕁麻疹、血管浮腫、およびアナフィラキシー・ショックから成る群から選択される状態である。
【0042】
別の側面において、本発明は、本発明の少なくとも1つのワクチンを対象に投与するステップを含む、対象におけるI型過敏反応に起因する症状を治療または予防する方法を提供する。別の実施形態において、I型過敏反応は、アナフィラキシ反応である。本方法の別の実施形態において、予防されるI型過敏症状は、アナフィラキシ反応を含む。
【0043】
本方法の様々な実施形態において、ワクチンは、生物学的反応の開始前、または生物学的反応中に対象に投与される。
【0044】
本発明のワクチンは、その他のワクチンまたは生物学的反応修飾因子の局所または全身使用などの治療とともに投与されてもよいことを意図している。
【0045】
本発明のこれらおよびその他の側面は、以下の詳細記述および添付の図面を参照することによりさらに明らかとなる。しかし、当然のことながら、本明細書に開示される特定の実施形態に対して、その本質的な精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更、修正、および置換を行ってもよい。また図面は、本発明の典型的な実施形態の例示および象徴を意図し、その他の例示されない実施形態も本発明の範囲内であると理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
発明の詳細な説明
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術的および科学的用語は、本発明が属する当該技術分野に精通する者によって一般に理解される意味と同意である。
【0047】
当外技術分野に精通する者は、本明細書に記載の方法および材料に類似または相当し、本発明の実施に使用可能な多くの方法および材料を認識するであろう。実際に、本発明は決して本明細書に記載の方法および材料に限定されない。本発明の目的で、以下の用語が定義される。
【0048】
定義
「機能的に接続される」という用語は、本明細書に記載のワクチンに含まれる核酸およびIgE断片に関連する場合、核酸が転写される能力を保持し、IgE断片がそのレセプタに結合する能力を保持することを示すために使用される。そのため、核酸配列に接続された後、IgE断片は天然の高親和性IgEレセプタ、例えば、天然ヒトFcεRI、または天然の低親和性IgEレセプタ、例えば、CD23としても知られるFcεRIIに特異的に結合する能力を保持する。
【0049】
例えば、ある分子の、IgGまたはIgEレセプタなどの結合標的用分子への結合親和性が、その他の知られている任意の天然ポリペプチドに対するその分子の結合親和性より著しく高い(少なくとも約2倍、少なくとも約4倍、または少なくとも約6倍高い)場合、結合は「特異的」である。
【0050】
「天然」または「天然配列」という用語は、自然に生じる核酸配列またはポリペプチドと同一の核酸配列またはアミノ酸配列を有する核酸配列またはポリペプチドを意味する。核酸またはポリペプチドは、その調製様式に関係なく、本発明に基づいて「天然」であるとされる。そのため、そのような天然配列核酸またはポリペプチドは、天然で分離するか、または組み換えおよび/または合成手段によって生成することができる。「天然」および「天然配列」という用語は、特に自然に存在する切断型または分泌型(例えば、細胞外ドメイン配列)、自然に存在する異型(例えば、選択的にスプライスされた型)、および自然に存在するポリペプチドのアレルギー性異型を包含する。
【0051】
「天然FcεRI」、「天然配列FcεRI」、「天然の高親和性IgEレセプタFcεRI」、および「天然配列の高親和性IgEレセプタFcεRI」という用語は同義的に使用され、任意の哺乳類を含む任意の種の自然に生じるFcεRIレセプタを意味する。FcεRIは、固有の酵素活性を欠くが、細胞質チロシンキナーゼとの関連を通じて細胞内シグナルを変換する、細胞表面レセプタの複数サブユニット免疫反応レセプタ(MIRR)族の一員である。さらなる詳細については、例えば、Kinet,J.P.,Annu.Rev.Immunol.17:931‐972(1999)、およびOtt and Cambier,J.Allergy Clin.Immunol.,106:429‐440(2000)を参照されたい。
【0052】
「天然FcεRII」、「天然配列FcεRII」、「天然の低親和性IgEレセプタFcεRII」、「天然配列の低親和性IgEレセプタFcεRII」、および「CD23」という用語は同義的に使用され、任意の哺乳類を含む任意の種の自然に生じるFcεRIIレセプタを意味する。複数のグループが、様々な種の低親和性IgEレセプタをクローン化および発現している。ヒト低親和性IgEレセプタのクローン化および発現は、例えば、Kikutaniら、Cell 47:657‐665(1986)、およびLudinら、EMBO J.6:109‐114(1987)により報告されている。対応するマウスレセプタのクローン化および発現は、例えば、Gollnickら、J.Immunol.144:1974‐82(1990)、およびKondoら、Int.Arch.Allergy Immunol.105:38‐48(1994)により開示されている。ウマおよびウシのCD23の分子クローン化および配列決定は、近年、Watsonら、Vet.Immunol.Immunopathol.73:323‐9(2000)により報告されている。低親和性IgEレセプタに関する以前の検討については、Delespesseら、Immunol.Rev.125:77‐97(1992)も参照されたい。
【0053】
「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、血清のグロブリンタンパク質の免疫付与部分、および天然に生じないが、同一の機能的特性を有する可能性のあるその他の糖タンパク質という意味で使用される。「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、特に「抗体」(Abs)を含む。抗体は、特定の抗原に対する結合特異性を示すが、免疫グロブリンは、抗体、および、他の抗原特異性を欠く他の抗体様分子の双方を含む。天然免疫グロブリンは、プラズマ細胞と呼ばれる個別のB細胞により分泌され、任意の周知の抗原特異性を持たない免疫グロブリンは、免疫系により低レベルで生成され、骨髄腫により高レベルで生成される。本明細書では、「免疫グロブリン」、「Ig」という用語、およびその文法的変型は、抗体、および周知の抗原特異性または抗原結合領域を持たないIg分子を含んで使用される。
【0054】
天然免疫グロブリンは、通常2つの同一軽(L)鎖および2つの同一重(H)鎖から成る約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に連結されるが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンイソタイプの重鎖間で変わる。各重鎖および軽鎖は、規則的間隔の鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、多くの定常領域が続く可変領域(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端(VL)に可変領域を有し、もう一端に定常領域を有する。軽鎖の定常領域は重鎖の第1定常領域と連携し、軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域と連携する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖可変領域間にインターフェースを形成すると考えられている。
【0055】
血清中で検出される主な哺乳類Igイソタイプ(クラス)、および対応するIg重鎖(括弧内にで示される)を、以下に挙げる。
【0056】
IgG(γ鎖):血清中の主なIgであって、抗原に応じて高まる主な抗体であり、4つの主なサブタイプを有し、その一部は胎盤を通過する。
【0057】
IgE(ε鎖):このIgは、マスト細胞および好塩基球にしっかりと結合し、抗原に追加結合されると、ヒスタミンおよび即時型アレルギーの他のメディエータを放出させ、花粉症、喘息およびアナフィラキシを含むアレルギー反応において主要な役割を果たし、寄生虫に対する保護的役割を果たし、抗原提示において重要な働きをする場合がある。
【0058】
IgA(α鎖):このIgは、血清中に存在し、唾液、涙、粘膜、および初乳などの外分泌物に特に多く含まれる。
【0059】
IgM(μ鎖):抗原に応答して最初に誘発されるIgである。後に生成される抗体よりも低い親和性を有し、五量体であって主として循環系に局在する。
【0060】
IgD(δ鎖):このIgは、臍帯血において比較的高い濃度で検出され、主に抗原の初期細胞レセプタとして働き、また主にリンパ球表面分子として機能する。
【0061】
IgG、IgE、IgA、IgM、およびIgDイソタイプの抗体は、それらの重鎖の定常領域において異なるが、同一可変領域、すなわち、同一抗原結合空洞を有してもよい。例えば、抗体などの免疫グロブリンの定常領域は、抗原に対する抗体の結合に直接関与しないが、補体活性化、または好塩基球、マスト細胞、リンパ球、単球、および顆粒球上で発現される1つまたは複数の抗体Fcレセプタとの結合などの、抗体により媒介される異なるエフェクタ機能と相関する。
【0062】
主なヒト抗体イソタイプ(クラス)の一部は、さらなるサブクラスに分類される。IgGは、4つの周知のサブクラス、IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、およびIgG4(γ4)を有し、IgAは2つの周知のサブクラス、IgA1(α1)およびIgA2(α2)を有する。
【0063】
Ig分子の軽鎖は、κ鎖またはλ鎖のいずれかである。
【0064】
免疫グロブリン重鎖の定常領域は、重鎖定常領域と呼ばれる球形の構造上分離した領域にさらに分割される。例えば、IgE免疫グロブリン重鎖は、4つの定常領域CH1、CH2、CH3、およびCH4を含み、ヒンジ領域を持たない。
【0065】
免疫グロブリン重鎖定常領域の配列を含む免疫グロブリン配列は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest第五版、Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)において開示されている。ヒトIgG1重鎖定常領域(γ1)に関する論考は、Ellisonら、Nucl.Acid Res.10:4071‐4079(1982)およびTakahashiら、Cell 29:671‐679(1982)を参照されたい。ヒトIgE重鎖定常領域(ε)に関する論考は、Maxら、Cell 29:691‐699(1982)を参照されたい。IgEイソ型は、Saxonら、J.Immunol.147:4000(1991)、Pengら、J.Immunol.148:129‐136(1992)、Zhangら、J.Exp.Med.176:233‐243(1992)およびHellman,Eur.J.Immunol.23:159‐167(1992)に記載されている。
【0066】
「天然IgE」および「天然配列IgE」という用語は同義で使用され、自然の生じる、任意の哺乳類を含む任意の種のIgE配列を意味する。一実施形態において、動物はヒトである。
【0067】
別の実施形態において、IgE断片は、天然IgEのCH2‐CH3‐CH4ドメインアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む。代替的に、IgE断片は、機能的CH1領域がない場合、天然ヒトIgE重鎖定常領域のCH2、CH3、およびCH4ドメインの少なくとも一部を含む。IgE配列は、天然FcεRIおよび/またはFcεRIIレセプタに結合する能力を含むがそれに限定されないIgEの生物活性を保持するIgE配列の変型を含む。一実施形態において、IgEの定常領域のアミノ酸配列は、図13の配列である(配列番号1)。
【0068】
単数形または複数形の「ペプチド」、「ポリペプチド」、または「タンパク質」という用語は、本明細書において、ペプチド結合により直鎖において互いに結合された2つ以上のアミノ酸を含む、任意のペプチドまたはタンパク質の意味で使用される。本明細書では、この用語は、一般に当該技術分野においてペプチド、オリゴペプチド、およびオリゴマーとも呼ばれる短鎖、および一般に当該技術分野においてタンパク質と呼ばれる長鎖の両方を意味する。本明細書で定義されるポリペプチドは、20の自然発生するアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよく、修飾されたアミノ酸を含んでもよい。修飾は、ポリペプチド分子内の任意の場所、例えば、末端アミノ酸において行うことができ、処理およびその他の翻訳後の修飾などの自然過程によって、または当該技術分野においてよく知られている化学および/または酵素修飾技術から生じる場合がある。周知の修飾は、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド派生物の共有結合、脂質または脂質派生物の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、交差結合、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル反応、共有交差結合の形成、シスチンの形成、パイログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ‐カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイレーション、硫酸化、アルギニル化などの転移RNAに媒介されるタンパク質へのアミノ酸付加、およびユビキチン化を含むが、それらに限定されない。そのような修飾は、当業者に周知であり、例えば、Creighton,T.E.,Proteins-Structure And Molecular Properties,第二版、W.H.Freeman and Company,New York(1993)、Wold,F.,“Posttranslational Protein Modifications:Perspectives and Prospects,”in Posttranslational Covalent Modification of Proteins,Johnson,B.C編,Academic Press,New York(1983),pp.1‐12、Seifterら、Meth.Enzymol.182:626‐646(1990)、およびRattanら、Ann.N.Y Acad.Sci.663:48−62(1992)などの科学文献において詳細に記載されている。
【0069】
修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノまたはカルボキシル末端を含むポリペプチドの任意の場所で生じうる。実際、共有修飾によるポリペプチドにおけるアミノまたはカルボキシル基の閉塞、またはその両方は、自然発生するポリペプチドおよび合成ポリペプチドにおいて共通し、そのような修飾は、本発明のポリペプチドにおいて同様に存在する可能性がある。例えば、E.coliにおいて形成されるポリペプチドのアミノ末端残基は、タンパク質分解処理に先立って、ほぼ不変にN‐ホルミルメチオニンとなる。したがって、グリコシル化が望ましい場合、ポリペプチドはグリコシル化ホスト、一般に真核ホスト細胞において発現される。昆虫細胞は、しばしば哺乳類細胞と同一の翻訳後グリコシル化を実行する。このため、昆虫細胞の発現系は、天然パターンのグリコシル化を有する哺乳類タンパク質を効率よく発現するように開発されている。
【0070】
当然のことながら、ポリペプチドは常に全体が直線であるとは限らない。例えば、ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分岐されてもよく、分岐の有無にかかわらず、一般に翻訳後事象の結果として環状であってもよく、自然過程、およびヒトの操作により生じる自然発生しない事象を含む。環状、分岐、および環状分岐ポリペプチドは、非翻訳自然過程、および完全な合成方法により同様に合成されてもよい。そのような構造は、本明細書において定義される、ポリペプチドの範囲内である。
【0071】
アミノ酸は、当該技術分野において一般に実施されるように、共通の1または3文字のコード化により表される。したがって、20の自然発生するアミノ酸は、以下のとおり指定される。アラニン=Ala(A)、アルギニン=Arg(R)、アスパラギン酸=Asp(D)、アスパラギン=Asn(N)、システイン=Cys(C)、グルタミン酸=Glu(E)、グルタミン=Gln(O)、グリシン=Gly(G)、ヒスチジン=His(H)、イソロイシン=Ile(I)、ロイシン=Leu(L)、リジン=Lys(K)、メチオニン=Met(M)、フェニルアラニン=Phe(F)、プロリン=Pro(P)、セリン=Ser(S)、トレオニン=Thr(T)、トリプトファン=Trp(W)、チロシン=Tyr(Y)、バリン=Val(V)。本明細書に記載のポリペプチドは、Lアミノ酸すべて、Dアミノ酸すべて、またはそれらの混合を含んでもよい。Dアミノ酸のみで構成されたポリペプチドは、ヒト体内で自然に検出されるプロテアーゼに耐性であることが期待されるという点で有利であり、長い半減期を有する場合がある。
【0072】
「アミノ酸配列変化」という用語は、参照(例えば、天然配列)ポリペプチドと比較して、そのアミノ酸配列に一部の相違を有する分子を意味する。アミノ酸の改変は、天然アミノ酸配列における置換、挿入、削除、またはそのような変化の任意の望ましい組み合わせであってもよい。
【0073】
置換変異型は、除去された天然配列における少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、同一の位置に異なるアミノ酸が挿入されたものである。置換は単一であってもよく、その場合は分子中ただ1つのアミノ酸が置換され、または複数であってもよく、その場合は2つ以上のアミノ酸が同一分子において置換される。
【0074】
挿入変異型は、天然アミノ酸配列において、特定の位置でアミノ酸に直接隣接して1つ以上のアミノ酸が挿入されるものである。アミノ酸に直接隣接するとは、αカルボキシまたはアミノ酸のαアミノ官能基のいずれかに接続されることを意味する。
【0075】
削除変異型は、天然アミノ酸配列において、1つ以上のアミノ酸が削除されたものである。通常、削除変異型は、分子の特定領域において少なくとも1つのアミノ酸が削除されている。
【0076】
「断片」、「部分」、および「一部」という用語は、本明細書において同義的に使用され、それが派生する物質の組成全体より小さい任意の物質組成を意味する。例えば、ポリペプチドの一部は、2つのアミノ酸残基から、1つのアミノ酸をアミノ酸配列全体から引いた大きさまでであってよい。しかし、ほとんどの場合、「部分」または「断片」は、その意図された使用に不可欠な活性または性質を保持することが望ましい。例えば、抗原の有効部分は、エピトープ決定因子を保持する部分である。
【0077】
本明細書において使用される「少なくとも一部」という用語は、物質組成の一部、およびその全体を包含することが意図される。
【0078】
「配列同一性」は、必要に応じて配列および導入ギャップを連携させて最大パーセントの配列同定を実現した後、参照ポリペプチド配列(例えば、天然ポリペプチド配列)におけるアミノ酸残基と同一の候補配列におけるアミノ酸残基のパーセントとして定義されるが、任意の同類置換は配列同一性の一部として考慮しない。%同一配列%値は、Altschulら(1997),“Gapped BLAST and PSI‐BLAST:a new generation of protein database search programs”,Nucleic Acids Res.,25:3389‐3402により定義されるように、NCBI BLAST2.0ソフトウェアによって生成される。パラメータは、ミスマッチのペナルティ(−1に設定)を例外として、デフォルト値に設定される。
【0079】
本明細書では「配列類似性」という用語は、上述のように核酸配列同一性の測定値であり、さらに保存アミノ酸置換が組み込まれる。
【0080】
交配反応の「厳しさ」は、当該技術分野において通常の技術を有する者が容易に決定でき、一般に、プローブ長、洗浄温度、および塩分濃度に依存する、経験に基づく計算値である。一般に、プローブが長いほど、適切なアニーリングに高い温度を必要とし、短いほど低い温度を必要とする。交配は、一般に、相補鎖がその溶解温度より低い環境で存在する場合に、変性したDNAが再アニールする能力に依存する。プローブと交配可能な配列間の望ましい相同の程度が高いほど、使用できる相対温度が高い。その結果、相対温度が高いほど反応条件がより厳しくなり、低いほど緩くなる傾向がある。交配反応の厳しさに関するさらなる詳細および説明については、Ausubel ら、Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers 1995)を参照されたい。
【0081】
「厳しい」交配条件は配列依存であり、環境パラメータ(例えば、塩分濃度および有機物の存在)により異なる。一般に、厳しい条件は、定義されたイオン強度およびpHにおける特定の核酸配列の熱融解点(Tm)より低い約5℃〜20℃に選択される。厳しい条件は、完全に相補的な核酸に結合される特定の核酸の熱融解点より低い約5℃〜10℃である。Tmは、核酸の50%(例えば、タグ核酸)が完全に合致するプローブに対して(定義されたイオン強度およびpHにおいて)交配する温度である。「厳しい」洗浄条件は、通常、対応するプローブ配列に対してタグの各セットを交配するため経験的に決定される。最初に配列は交配され(一般に厳しい交配条件下)、順次、より低濃度の塩または、より高濃度の洗剤を含む緩衝液で洗浄、または温度を順次高くし、それを、非特異的交配に固有のノイズ比に対するシグナルが、特定の交配の検出を促進するために十分高くなるまで行なう。厳しい温度条件は、通常約30℃を上回る温度、より一般に約37℃を上回る温度、場合によっては約45℃を上回る温度を含む。厳しい塩条件は、通常約1000mM未満であり、一般に約500mM未満、より一般に約400mM未満、典型的に約300mM未満、約200mM未満、または約150mM未満である。しかし、パラメータの組み合わせは、いかなる単一パラメータの測定値よりも重要である。例えば、Wetmurら、J.Mol.Biol.31:349‐70(1966)およびWetmur,Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology 26(34):227−59(1991)を参照されたい。
【0082】
一実施形態において、本明細書において定義される、「厳しい条件」または「厳しさが高い条件」は、50%ホルムアミド、6X SSC(0.75M NaCl,0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5X Denhardt溶液、超音波で分解したサケの精子DNA(100μg/ml)、0.5% SDS、および10%硫酸デキストランにおいて42℃で交配し、2X SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中42℃、0.1% SDS中55℃で洗浄した後、0.1% SDSを含む0.2X SSC中42℃での、厳しさの高い洗浄とすることができる。
【0083】
本明細書において使用される「相補体」、「相補性」、または「相補的」という用語は、逆平行の塩基対合の規則によって関連付けられる単鎖ポリヌクレオチドを説明するために使用される。例えば、配列5’‐CTAGT‐3’は、配列5’‐ACTAG‐3’に対して完全に相補的である。相補性は「部分的」であってもよく、ここで塩基対合は、100%未満であり、または、「完全」または「全体」であってもよく、それは、2つのポリヌクレオチド間の逆平行相補が完全に100%であることを意味する。当該技術分野における慣例により、単鎖核酸分子は、左端に5’、右端に3’をつけて記載される。
【0084】
「DNAワクチン」という用語は、ペプチドをコード化するDNA配列を意味する。哺乳類細胞に進入する際、DNA配列はペプチドに翻訳される。DNAワクチンは、アレルゲンの断片または部分、自己抗原の断片または部分、またはウイルスの断片または部分をコード化するDNAを含んでもよいことを意図している。
【0085】
「ウイルス」という用語は、哺乳類細胞に感染する病原体を意味する。ウイルスの例は、HIVウイルス、ヘルペスウイルス、乳頭腫ウイルス、肝炎ウイルス、水痘ウイルス、サイトメガロウイルス、パラミクソウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、風疹ウイルス、肺炎ウイルス、ライノウイルスなどを含むが、それらに限定されない。
【0086】
「アレルゲン」という用語、およびその文法的変型は、IgE媒介のアレルギーを誘導可能な特別抗原の意味で使用される。アレルゲンは、抗原として作用し、IgE媒介のアレルギー反応を促進するものであれば、ほとんど何であってもよい。一般的なアレルゲンは、例えば、食物、花粉、カビ、ダニならびに家で飼うペットの鱗屑を含む可能性のあるハウスダスト、ハナバチ、カリバチ、蚊などの昆虫の毒に見出される。一般的なアレルゲンを表1に挙げる。一実施形態において、アレルゲンはFel d1である。別の実施形態において、そのアレルゲンはピーナッツアレルゲンのAra hまたはラッカセイ(Arachis hypogea)または卵アレルゲンのオボムコイド(Gal d1)または牛乳アレルゲンのαカゼインである。
【0087】
本明細書では、「抗原」という用語は、抗体により認識される任意の作用物質を意味し、「免疫原」という用語は、対象において免疫応答を引き出すことができる任意の作用物質を意味する。「抗原」および「免疫原」という用語は、どちらもポリペプチドを包含するが、それに限定されない。すべてではないが、大部分の場合において、抗原は免疫原でもある。
【0088】
「自己アンチゲン(autoantigen)」および「自己抗原(self antigen)」という用語、ならびに文法的に相当する用語は、本明細書では、個人の免疫系の細胞成分(T細胞レセプタ)または体液成分(抗体)のいずれかにより認識される、その個人の生理機能に内生の抗原を意味する。自己抗原、および結果として生じる自己抗体および/または自己反応性T細胞の存在は、必ずしもそうではないが、病状に関連する場合が多い。自己抗体は、病気でない個人から検出される場合がある。自己抗原は、必ずしもそうではないが、ポリペプチドである場合が多い。自己抗体の認識の基礎となる機序、正常な自己認識、または自己免疫を誘発する機序の理解は、本発明の形成または使用には必要でない。
【0089】
「自己抗体」という用語は、本明細書では、上記で定義した自己抗原に対して特異的に結合するホスト有機体により生成される任意の抗体を意味する。自己抗体および/または自己反応性T細胞の存在は、本明細書において「自己免疫」と呼ばれる。対象における自己抗体または自己反応性T細胞の存在は、必ずしもそうではないが、病気(すなわち自己免疫疾患)に関連する場合が多い。
【0090】
「エピトープ」または「抗原決定因子」という用語は、本明細書では、特定の抗体可変領域と反応する領域を形成することにより、抗原/抗体結合に対して特異性を付与する抗原の一部を意味する。単一の抗原は、1つ以上のエピトープを有してもよい。免疫優勢エピトープは、抗原に対する抗体によって選択的に認識される抗原上のエピトープである。抗原がタンパク質である一部の場合において、エピトープを「マップ」することができ、「抗原ペプチド」は、抗体/抗原特異性に関与するタンパク質におけるアミノ酸にほぼ対応して生成される。そのような「抗原ペプチド」は、ペプチド免疫療法で用いられる。
【0091】
「自己免疫疾患」、「自己免疫状態」または「自己免疫障害」という用語は、本明細書において同義的に使用され、発現した自己免疫レパートリーの質的および/または量的欠陥により現れる変性免疫ホメオスタシスに関連する一連の持続性器官特異的または全身性臨床症状および兆候を意味する。自己免疫疾患の病因は、自己免疫反応により誘発された構造的損傷または機能的損傷のいずれかとして現れる。自己免疫疾患は、自己抗原のエピトープに対する体液(例えば、抗体媒介性)、細胞(例えば、細胞毒のTリンパ球媒介性)、またはそれらの組み合わせにより特性化される。罹患した個人の免疫系は、特異的な自己抗原を示す細胞および組織に向けて炎症カスケードを引き起こす。抗原、組織、細胞型、または攻撃を受けた器官の破壊により、疾患の症状が生じる。自己抗原は、すべてではないが、一部の自己免疫疾患において知られている。
【0092】
「免疫療法」、「脱感作療法」、「減感作療法」、「耐性療法」などの用語は、本明細書では、様々な過敏性疾患を治療する方法を説明する。ここで、アレルゲンまたは自己抗原を回避することは不可能であるか、または実践的でない。本明細書では、これらの用語は、概ね同義的に使用される。これらの方法は、一般に、抗原材料を制御された方法で対象に送達し、抗原に対する耐性を誘発し、および/または抗原に対する環境暴露により生じる免疫反応を下方制御するステップを含む。これらの治療は、一般に、長期間(数ヶ月または数年)に渡って、徐々に用量を増加させながら抗原(例えば、アレルゲンまたは自己抗原)を注射するステップを含む。免疫療法に使用される抗原は、一般に、ペプチドであるが、それに限らない。例えば、花粉症の脱感作療法は、空気中に浮遊する花粉に対するアレルギー応答を下方制御する。ここでは、対象に花粉抽出物を注射する。臨床的観点から、注射は不快で不便な場合が多いため、これらの治療は最適でない。さらに、治療中に命にかかわるアナフィラキシ応答を生じる著しい危険がある。免疫療法技術を様々な自己免疫疾患の治療に適用することが提案されている。ここで、自己抗原に対する耐性を誘導することを期待して自己抗原を対象に投与し、それによって、内生自己抗原または自己抗原組織の免疫破壊をなくす。例えば、自己免疫性I型糖尿病および多発性硬化症をそれぞれ下方制御する目的でインシュリンおよびミエリンベースのタンパク質が、動物モデルおよびヒトに送達されている。
【0093】
「ペプチド療法」および「ペプチド免疫療法」などの用語は、本明細書では、免疫療法の方法を表し、対象に送達される抗原(例えば、アレルゲンまたは自己抗原)は、短いポリペプチド(すなわち、1つのペプチド)である。さらに、ペプチド療法中に送達されるペプチドは、免疫不全エピトープ(例えば、ミエリンベースのタンパク質エピトープ(MBP)を定義するアミノ酸のみを含んでもよい。
【0094】
「ワクチン療法」、「ワクチン接種」、および「ワクチン接種療法」という用語は、本明細書において同義的に使用され、一般に免疫予防をもたらす任意の方法を意味する。一側面において、ワクチン療法は、特定の抗原に対する免疫反応、よって長期間効果のある免疫を誘導する。これらの方法は、一般に免疫材料を対象に送達して免疫を誘発するステップを伴う。別の側面において、「ワクチン療法」は、特定の抗原に対する免疫能力を下方制御する(例えば、アレルギー応答を抑制する)方法を意味する。この種のワクチン療法は、「耐性療法」とも呼ばれる。
【0095】
「I型」アレルギー反応または「即時型アレルギー」あるいは「アトピー性アレルギー」は、体内に進入した抗原が、マスト細胞または好塩基球上の高親和性レセプタFcεRIに付加されているIgEにより感作されたマスト細胞または好塩基球に遭遇すると起こる。アレルゲンは、感作されたマスト細胞または好塩基球に到達すると、表面結合されたIgEを交差結合し、ヒスタミンおよびプロテアーゼなどの予備形成されたメディエータ、ならびにロイコトリエンおよびプロスタグランジンなどの新規に合成された脂質由来のメディエータの放出を誘発する細胞内カルシウム(Ca2+)を増加させる。これらのオータコイドは、アレルギーの臨床症状をもたらす。さらに、IL‐4、TNF‐αなどのサイトカインは、好塩基球およびマスト細胞を脱顆粒化することにより放出され、IgE反応を伴う炎症反応を増大する働きをする(例えば、Immunology、第五版、Roittら編、1998,pp.302‐317を参照)。
【0096】
I型過敏反応に関連する症状および兆候は、関与しうる組織および器官が幅広いため非常に多様である。これらの症状および兆候は、皮膚、目、および喉の痒み、皮膚の腫れおよび発疹(血管性浮腫および皮膚の掻痒/蕁麻疹)、声帯領域の腫れによる声のかすれおよび呼吸困難、体の任意の場所に起こりうる持続性の凸凹した赤い発疹、息切れおよび喘鳴(気道における筋肉の締め付け、および気道の閉塞、すなわち気管支収縮による)、さらに、粘膜および液体生成の増加、気道筋肉の収縮による胸の締め付けおよび痛み、吐き気、嘔吐、下痢、低血圧による目眩および失神、頻拍または不整脈、気道および/または心臓障害の結果として死亡をも含むが、それらに限定されない。
【0097】
アレルギー反応に起因し、過敏症状および/または兆候を表す病状の例は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー[外因性]喘息、蕁麻疹および血管性浮腫の一部症例、食物アレルギー、および全身性反応を呈し、および命にかかわる可能性のある血圧喪失を含むアナフィラキシー・ショックであるが、それらに限定されない。
【0098】
「アナフィラキシ」、「アナフィラキシ応答」、「アナフィラキシ反応」、「アナフィラキシー・ショック」などの、本明細書において同義的に使用される用語は、以前に感作した対象が感作抗原を受けると発生する急性、多くの場合において爆発的なIgE媒介の全身性生理反応を表す。アナフィラキシは、以前の感作抗原が循環系に到達すると生じる。抗原が好塩基球およびマスト細胞上でIgEと反応すると、ヒスタミン、ロイコトリエン、および他の炎症メディエータが放出される。これらのメディエータは、アナフィラキシの特徴である平滑筋収縮(喘鳴および胃腸症状に関与する)および血管拡張(低血圧に関与する)を引き起こす。血管拡張および組織へ血漿が逃げることによって蕁麻疹および血管性浮腫が生じ、その結果、有効な血漿量が減少してショックの主な原因となる。液体が肺胞に入ると、肺水腫を引き起こす可能性もある。上気道の閉塞性血管性浮腫が生じる場合もある。反応が長期に渡ると、不整脈および心臓性ショックを来たす可能性がある。「アナフィラキシ様反応」という用語は、アナフィラキシ反応の特徴を示す生理反応を意味する。
【0099】
アナフィラキシ反応の症状は、患者間で著しく異なる。一般に、約1〜15分の間に(稀に2時間という長時間の後)、興奮および顔面紅潮、動機、錯感覚、痒み、耳の拍動、咳、くしゃみ、蕁麻疹および血管性浮腫、血管拡張、および喉頭水腫または気管支痙攣に起因する呼吸困難などの症状を含む。吐き気、嘔吐、腹痛、および下痢が見られる場合もある。さらに1分または2分以内にショックが生じる可能性があり、患者は激しい体の震え、失禁、無反応および心停止による死亡、巨大な血管性浮腫、血液量減少、重度の低血圧および血管運動虚脱、ならびに初期の心血管虚脱を起こす場合がある。拮抗薬であるエピネフリンがすぐに入手できない場合は、その時点で死亡が確実になる可能性もある。軽度のアナフィラキシ反応は、全身の痒み、蕁麻疹、血管性浮腫、軽い喘鳴、吐き気、および嘔吐を含む様々な症状を生じる。アナフィラキシのリスクが最も高い患者は、特定の薬物または抗原に対して以前に反応したことのある患者である。
【0100】
「核酸結合剤」という用語は、核酸に結合する作用物質を意味する。そのような物質は、レトロウイルスコート、アデノウイルスコート、別のウイルスまたはウイルス様形態(単純ヘルペス、およびアデノ関連ウイルス(AAV)コート)、リポソーム、ポリ‐リジン、ポリ‐1‐リジン(PLL)、ポリ‐アルギニン‐リジン、ポリ‐1‐アルギニン‐リジン(PRL)、合成ポリカチオン性分子、ポリエチレングリコール(PEG)、スペルミンまたはスペルミジンを含む。
【0101】
「ベクター」、「ポリヌクレオチドベクター」、「構成」、および「ポリヌクレオチド構成」という用語は、本明細書において同義的に使用される。本発明のポリヌクレオチドベクターは、RNA、DNAを含むがそれらに限定されない形態のうちのいずれかであってもよい。一実施形態において、ポリヌクレオチドはDNAである。本明細書では、「DNA」は、塩基A、T、C、およびGを含むだけでなく、メチル化ヌクレオチド、非荷電連結およびチオエートなどの核間修飾、糖類似体、およびポリアミドなどの修飾および/または代替骨格構造など、これら塩基の類似体または修飾形のいずれをも含む。
【0102】
「ホスト細胞」は、本発明の任意のベクターの受容体となりうる、または受容体となっている個別の細胞または細胞培養を含む。ホスト細胞は、単一ホスト細胞の子孫を含み、その子孫は、自然、偶然、または意図的な突然変異および/または変化のため、元の親細胞に対し(形態学または総DNA相補において)、完全に同一である必要はない。ホスト細胞は、本発明の核酸を含むベクターを有する、生体内で核酸導入または感染された細胞を含む。
【0103】
「プロモータ」という用語は、標的のDNA配列に操作可能に連結された場合に、そのDNA配列の転写を促進するヌクレオチド配列を意味する。プロモータは、「樹状細胞プロモータ」であるように意図され、プロモータが樹状細胞において活性であることを意味する。さらに、「樹状細胞プロモータ」は、IgEレセプタを発現する他の細胞において活性が低減するか、または非活性であることを意図している。「樹状細胞プロモータ」は、Fascinプロモータであることを意図している(Sudowe,S.ら、2006.“Prophylactic and therapeutic intervention in IgE responses by biolistic DNA vaccination primarily targeting dendritic cells”.J Allergy Clin Immunol 117:196‐203)。
【0104】
核酸は、別の核酸配列との機能的関係に置かれると、「操作可能に連結される」。例えば、先行連鎖または分泌リーダーのDNAが、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合に、ポリペプチドのDNAに操作可能に連結されるか、プロモータまたはエンハンサが、配列の転写に影響する場合に、コード化配列に操作可能に連結されるか、またはリボソーム結合部位が、翻訳を促進するよう配置される場合に、コード化配列に操作可能に連結される。一般に、「操作可能に連結される」とは、連結されるDNA配列が隣接しており、分泌リーダーの場合は、隣接してリーディングフェーズにある。しかし、エンハンサは隣接する必要がない。連結は、都合の良い制限部位における連結反応により行われる。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプタまたはリンカーは、従来の方法に合わせて使用される。
【0105】
「IgE媒介の生物学的反応」という用語は、高親和性IgEレセプタFcεRIおよび低親和性IgEレセプタRcεRIIを含む、IgEレセプタを通じたシグナル変換を特徴とする状態または疾病の意味で使用される。当該定義は、制限なく、アナフィラキシ過敏症、および例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、慢性蕁麻疹、および血管性浮腫などのアトピー性アレルギーに関連する状態、および通常、ハチ刺されまたはペニシリンなどの投薬によって引き起こされるアナフィラキシー・ショックの深刻な生理的状態を含む。
【0106】
「治療する」または「治療」という用語は、治療上の処置および予防措置の両方を意味する。ここでの目的は、好ましくない生理的変化または疾患を予防または減速(緩和)することである。この発明の目的のため、有益または望ましい臨床結果は、感出可能かどうかにかかわらず、症状の緩和、疾患の範囲の縮小、疾病の安定(すなわち、悪化しない)状態、疾病進行の遅延または減速、病状の改善または軽減、および鎮静(部分的または全体的)を含むがそれらに限定されない。治療を必要とする者は、既に状態または疾患を有する者、および状態または疾患を有する傾向がある者、または状態または疾患を予防すべき者を含む。
【0107】
「長期的」投与は、薬剤の望ましい効果またはレベルを長期間維持するため、急性モードとは反対に、連続モードによって薬剤を投与することを意味する。
【0108】
「断続的」投与は、中断なく連続的には行われず、定期的な形態で行われる治療である。
【0109】
1つまたは複数のさらなる治療薬「〜と組み合わせて」投与することは、同時(併用)および任意の順序による連続投与を含む。
【0110】
「有効量」は、有益または望ましい治療(予防を含む)結果をもたらすために十分な量である。有効量は、1つまたは複数の投与で投与される。
【0111】
「担体」または「薬学的にに許容しうる成分」という用語は、本明細書では、採用される容量および濃度において暴露される細胞または哺乳動物に対して毒性のない生理的に許容しうる担体、賦形剤、または安定剤を含む。多くの場合、生理的に許容しうる材料は水性pH緩衝液である。生理的に許容しうる担体の例は、リン酸、クエン酸、およびその他の有機酸などの緩衝液、アスコルビン酸を含む酸化防止剤、低分子量(約10未満の残基)のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸、グルコース、マンノース、デキストリンを含む単糖、二糖、および他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール、ナトリウムなどの塩形成対イオン、および/またはTWEENTMなどの非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICSTMを含む。
【0112】
「哺乳動物」または「哺乳類」という用語は、哺乳動物として分類される任意の動物を意味し、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどの家庭用動物および家畜、および動物園、運動競技用、またはペット用動物、またマウスおよびネズミなどの齧歯類を含む。一実施形態において、哺乳類はヒトである。
【0113】
本明細書において、「対象」または「患者」という用語は、同義的に使用され、任意の動物、および一実施形態において、検査、治療、分析、試験、または診断の対象である哺乳類を意味する。一実施形態では、ヒトが対象である。対象または患者は、疾患またはその他の病状を有しても有しなくてもよい。
【0114】
「疾患」、「障害」、および「状態」という用語は、本明細書において同義的に使用され、正常な身体機能の途絶、またはいずれの種の病状の出現をも意味する。正常な生理機能の途絶を引き起こす病因は、明らかである、または不明である場合がある。さらに、2人の患者が同一の疾患を診断されたとしても、個人が示す特定の症状は同一であるか、または同一でない場合がある。
【0115】
II.詳細な説明
本発明は、APC上のIgEレセプタ(FcεRs)を標的とし、APCに特異的な調整要素を提供してDNAの発現を促進することによって媒介される抗原提示細胞(APC)において、DNAワクチンを集中および発現する新規アプローチに関する。そのような改良DNAワクチンは、IgE媒介のアレルギー性疾患およびその他の疾患、例えば、自己免疫疾患、ウイルス性疾患などの感染症、およびDNAワクチンの接種が有益な効果を持つことが予想される癌の管理において有効である。
【0116】
大部分の喘息症例、特に幼児、子供、および若者に見られる症例は、環境アレルゲンに対するアレルギー反応に関連する。これは、ヒトアレルギー性喘息において長期回復(アレルギー耐性)を導くよう設計された、新規形式の遺伝子導入診療の開発を対象とする。ワクチンは、ヒトIgEおよび高いヒト関連アレルゲン、ネコFel d1を含む。ネコアレルゲンは、ヒトの主要なアレルゲンであり、そのサイズと高い浮遊性のため広く分散し、学校など公共の建物で検出されるものを含む。実際に、住宅地においてネコのいない住居のほぼ半数は、ネコアレルギーの対象において症状を引き起こすために十分なネコアレルゲンを有する(Arbes SJ Jr,Cohn RD,Yin M,Muilenberg ML,Friedman W,Zeldin DC.(2004).J Allergy Clin Immunol.114:111)。喘息の短期および長期治療に関する様々な新規および重要な薬物治療が開発されているが(例えば、優れた局所ステロイド、ロイコトリエン抑制剤、および抗IgE)、喘息の治療は依然として問題があり、さらに多くの重度の喘息症例が世界的に蔓延し続けている。ここで提案するような長期疾患回復を目的とする新規治療は、積極的な調査に値する。
【0117】
アレルゲン遺伝子ワクチン接種は、アレルギー性喘息およびその他のアレルギー状態を治療するアレルゲン特異的免疫療法に対するタンパク質ベースの免疫療法アプローチに対する有望な代替となる。このアプローチは、アレルゲン特異的IgE生成を効率的に抑制し、Th2反応を抑え、Th1反応を相互に強化することが示されている。しかし、アレルゲンDNAワクチンの開発は、DNAを専門の抗原提示細胞(APC)、および特に、樹状細胞(DC)に送達する遺伝子送達方法の効率が悪いことにより制限されている。ヒトAPC、特にDCおよびランゲルハンス細胞(LC)は、IgEの高親和性レセプタ(FcεR1)を発現することにより、「ポリプレックス」と呼ばれるDNA‐ヒトIgE分子複合体をコード化する結合アレルゲンを生成および投与して、標的の遺伝子をこれら細胞上に集中させるという事実を利用する。このポリプレックスは、10−10〜10−11L/MのKdとの極めて高い親和性、すなわち、大部分の生理的リガンド‐レセプタ(抗原‐抗体)相互作用よりも2〜3ログ高い親和性を有するIgE‐FcεRIを通じてAPCに送達される。この新規アプローチは、アレルゲン免疫療法において、APCを発現するFcεRIに高性能のIgE媒介のDNAワクチンを送達する。
【0118】
この高親和性IgE‐FcεRI相互作用を利用し、DCおよびLCを発現するヒトFcεRI(h FcεRI)に対して標的の遺伝子を特異的に標的とすることにより、アレルゲン遺伝子ワクチン接種を促進できる。アレルギー患者のAPCによる高レベルのFcεRI発現をモデルとするヒトFcεRIα鎖のトランス遺伝子(Tg)を担持するマウスが、有効なアレルゲンDNAワクチン接種のモデルシステム標的として使用され、アレルゲン特異的反応を調節し、アレルギー性喘息を含むアレルギー性疾患の治療を可能にする。例えば、マスト細胞および好塩基球などの他のFcεRI含有細胞ではなく、DCを発現する標的FcεRIにおけるアレルゲン遺伝子の発現は、他のFcεRI細胞ではなく、DCにおいて特異的に活性化されるため、アクチン束化タンパク質fascin遺伝子プロモータを構成に採用することにより行われる。IgE‐FcεRI相互作用の親和性が非常に高く、IgE媒介のアレルゲン遺伝子導入の有効性が予想されるため、当アプローチを使用する有効な免疫療法に必要なDNAワクチンの容量および頻度は、その他の免疫プロトコルと比べて著しく低いはずであり、考えられる副作用/毒性も同様に低いことが期待される。
【0119】
IgE断片は、天然高親和性IgEレセプタ(例えば、FcεRI)または天然低親和性IgEレセプタ(FcεRII、CD23)などの対応する天然レセプタに結合する能力を保持する必要がある。天然IgE重鎖定常領域配列内のレセプタ結合領域が確認されている。FcεRI結合研究に基づいて、Prestaら、J.Biol.Chem.269:26368‐26373(1994)は、3つのループC‐D、E‐F、およびF‐Gに配置され、ヒトIgE重鎖CH3ドメインの最も暴露した側に外部突起を形成するよう計算された6つのアミノ酸残基(Arg‐408、Ser‐411、Lys‐415、Glu‐452、Arg‐465、およびMet‐469)が、ほとんどの場合、静電相互作用によって、高親和性レセプタFcεRIとの結合に関与することを提案した。Helmら、J.Cell Biol.271(13):7494‐7500(1996)は、IgE分子における高親和性レセプタ結合部位が、IgE重鎖のCH3ドメイン内にPro343‐Ser353ペプチド配列を含むが、レセプタ結合構造を維持するための構造上足場を提供するには、このコアペプチドに対する配列NまたはC末端も必要であることを報告した。特に、彼らは、ε鎖のC末端領域において、Hisを含む残基がIgEとFcεRIとの相互作用の高親和性の維持に重要な貢献していることを発見した。Fcεポリペプチド配列は、そのような結合領域内の残基と結合するよう設計される。
【0120】
この知識に基づいて、アミノ酸配列の変形を、レセプタ結合に必須の天然アミノ酸残基を保持するか、またはそのような残基において保存的なアミノ酸改変(例えば、置換)のみを行うよう設計することができる。
【0121】
対応する天然配列の必要な結合特性を保持するアミノ酸配列変異型の生成において、アミノ酸の水治療指標を考慮してもよい。例えば、特定のアミノ酸を、生物活性の著しい変化なしに、同様の水治療指標またはスコアを持つ他のアミノ酸の代用とすることができることが知られている。そのため、水治療指標+4.5のイソロイチンは、一般に、バリン(+4.2)またはロイシン(+3.8)の代用とすることができ、置換が行われるポリペプチドの生物活性に著しく影響しない。同様に、リジン(−3.9)は一般にアルギニン(−4.5)の代用とすることができ、基礎となるポリペプチドの生物学的特性における著しい変化は予想されない。
【0122】
アミノ酸置換を選択するためのその他の考慮事項は、例えば、サイズ、親電子的特徴、様々なアミノ酸における電荷などの側鎖置換の類似点を含む。一般に、アラニン、グリシンおよびセリン、アルギニンおよびリジン、グルタミン酸およびアスパラギン酸、セリンおよびトレオニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは相互交換することができ、生物学的特性における著しい変化は予想されない。そのような置換は、一般に保存アミノ酸置換と呼ばれ、上記のように、本発明のポリペプチド内における置換の一種である。
【0123】
代替または追加として、アミノ酸改変は、本発明のIgE分子のレセプタ結合特性を強化する働きをする場合がある。改良されたレセプタ結合を持つ変型、およびその結果として得られる優れた生物学的特性は、アラニン走査突然変異誘発、PCR突然変異誘発、または他の突然変異誘発などの標準的な突然変異誘発技術を使用して、以下の記載または例において説明されるレセプタ結合アッセイと組み合わせて、容易に設計することができる、。
【0124】
レセプタ結合は、競合する結合アッセイ、直接および間接サンドウィッチアッセイなどの任意の知られたアッセイ方法を使用して試験できる。そのため、本明細書に含まれる高親和性または低親和性IgEレセプタへのIgEポリペプチドの結合は、RIAおよびELISAを含む競合する結合アッセイなどの従来の結合アッセイを使用して試験できる。リガンド/レセプタ複合体は、ろ過、遠心分離、フローサイトメトリなどの従来の分離方法を使用して識別でき、結合アッセイの結果は、Scatchard分析などの結合データの任意の従来のグラフィック表示を使用して分析できる。アッセイは、例えば、精製レセプタまたはレセプタを発現する無傷細胞を使用して実施してもよい。結合パートナーの1つまたは両方は、固定および/またはラベル表示されてもよい。特定の細胞をベースとした結合アッセイは、以下の例に記載される。
【0125】
ポリプレックスは、IgE分子複合体に付加されたDNAをコード化する結合アレルゲンを含む。一実施形態において、IgE分子複合体は、核酸結合剤に付加されるIgE断片を含む。核酸結合剤は、例えば、ポリ‐リジンまたはポリアルギニン‐リジンなどのアミノ酸鎖を含んでもよい。一実施形態において、ポリ‐リジンは、ポリ‐1‐リジン(PLL)である。ポリ‐1‐リジンは、少なくとも約10のリジン残基、少なくとも約20のリジン残基、少なくとも約30のリジン残基、少なくとも約60のリジン残基を含んでもよいと意図される。別の実施形態において、ポリ‐アルギニン‐リジンは、アルギニンおよびリジン残基を交互に含むポリ‐1‐アルギニンリジン(PRL)である。ポリ‐1‐アルギニン‐リジンは、少なくとも約10のアミノ酸残基、少なくとも約20の残基、少なくとも約30の残基、少なくとも約60の残基、少なくとも約80の残基を含んでもよいことを意図している。さらに、アルギニンおよびリジン残基は、交互でなくてもよく、ARG‐ARG‐ARG‐LYS‐LYS‐ARGなどのランダムな順番であってもよいことを意図している。
【0126】
別の実施形態において、IgEおよび核酸結合剤は、ポリペプチドリンカーにより接続されてもよい。ポリペプチドリンカーは、「スペーサ」として機能する。ポリペプチドリンカーは、通常約1〜約25の残基または約2〜約25の残基を含む。ポリペプチドリンカーは、少なくとも約10、または少なくとも約15のアミノ酸を含んでもよい。ポリペプチドリンカーは、アミノ酸残基で構成されてもよく、それがともに、親水性の比較的構造化されていない領域を提供する。ほとんど、あるいは全く二次構造を有さない連結アミノ酸配列は良好に作用する。スペーサにおける特定のアミノ酸は様々であるが、システインは避けるべきである。適切なポリペプチドリンカーは、例えば、WO88/09344(1988年12月1日公開)において、そのようなリンカーを含む多機能タンパク質を生成する方法として開示されている。
【0127】
IgE断片および核酸結合剤のポリプレックスが、細胞摂取配列をさらに含んでもよいことが意図されている。そのような細胞摂取配列は、ポリプレックスの細胞摂取およびアレルゲンワクチンの発現を強化する。一実施形態において、細胞摂取配列は、HIV tat ペプチド配列および/または核内保留シグナル(NLS)ペプチド配列であってもよい。細胞摂取配列は、IgE断片とPLLペプチド配列との間に配置されてもよい。HIV tat ペプチド配列は、GRKKRRQRRR(配列番号4)であってもよい。NLSペプチド配列は、PKKKRKV(配列番号5)であってもよい。
【0128】
組み換えDNA技術を使用し、IgE配列および核酸結合剤アミノ酸配列を生成してもよいことが意図されている。核酸結合剤アミノ酸配列をコード化するDNAに連結されるヒトIgE重鎖(CHε2‐CHε3‐CHε4)のDNA配列を含む融合遺伝子が生成される。このアプローチは、各IgE分子が核酸結合剤と関連し、異なる時点で行われるすべての実験において製品の質が同一となることを保証する。一実施形態において、核酸結合剤は、60反復リジンの180bpDNAコードによりコード化される。
【0129】
IgE配列および核酸結合剤は、非ポリペプチドリンカーにより接続されてもよい。そのようなリンカーは、例えば、レセプタ(抗体)の結合機能を損なうことなく2つの配列を連結できる残基であってもよい。共有二官能価架橋試薬は、アミノ、メルカプト基、グアニジン、インドール、カルボキシル特異基などの官能基の特異性に基づいて分割できる。これらのうち、遊離アミノ基に向けられた試薬は、それらの商業的入手性、合成の容易性、および適用できる反応条件が軽いことから特に普及している。ヘテロ二官能価架橋試薬の大部分は、1級アミン反応基およびチオール反応基を含む(検討のため、Ji,T.H.“Bifunctional Reagents” in:Meth.Enzymol.91:580‐609(1983)を参照されたい)。
【0130】
本発明のワクチンは、FcεR媒介の生物学的反応の抑制に使用できる。そのような生物学的反応は、FcエプシロンRを介する、アレルギー反応、または自己免疫反応の媒介であり、IgE媒介の反応に関連する状態、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、慢性蕁麻疹および血管性浮腫、ハチ(例えば、ミツバチおよびアシナガバチ)刺され、またはペニシリンなどの薬物に対するアレルギー反応(アナフィラキシー・ショックの重篤な生理反応まで)を含むが、それらに限定されない。
【0131】
一実施形態において、アレルゲンDNA配列は、以下の表1に挙げるアレルゲン配列から選択されるアレルゲンをコード化する。
【0132】
表1
【0133】
【表1−1】
【0134】
【表1−2】
【0135】
【表1−3】
【0136】
【表1−4】
【0137】
【表1−5】
【0138】
【表1−6】
【0139】
【表1−7】
【0140】
【表1−8】
【0141】
【表1−9】
【0142】
【表1−10】
【0143】
【表1−11】
【0144】
【表1−12】
【0145】
【表1−13】
他の実施形態において、融合分子の第2ポリペプチドのアミノ酸配列は、自己抗原配列を参照して定義される。自己抗原配列の例は、以下の表2に挙げる。表2に挙げられる自己抗原の部分は、融合ポリペプチドでの使用にも好適である。ここで、その部分は、少なくとも1つの自己抗原エピトープを保持し、自己抗体または自己反応性T細胞レセプタを特異的に結合する能力を保持する。例えば、多発性硬化症自己抗原ミエリンベースのタンパク質(アミノ酸83‐99)、プロテオリピドタンパク質(アミノ酸139‐151)、およびミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(アミノ酸92‐106)の有用な部分が知られている。ここで、その部分は、少なくとも1つの自己抗原エピトープを保持する。
【0146】
表2
【0147】
【表2−1】
【0148】
【表2−2】
【0149】
【表2−3】
【0150】
【表2−4】
【0151】
【表2−5】
【0152】
【表2−6】
【0153】
【表2−7】
【0154】
【表2−8】
追加の自己抗原を識別する方法は、当該技術分野において、例えばSEREX技術(serological identification of antigens by recombinant expression cloning:組み換え発現クローン化による抗原の血清学的識別)として既知であるため、有効な自己抗原配列を表2に提供される配列に限定することを意図しない。ここで、発現ライブラリは、自己免疫血清プローブを使用して審査される(Bachmannら、Cell 60:85-93[1990]、およびPietromonacoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1811-1815[1990]、Folgoriら、EMBO J.,13:2236-2243[1994])。同様に、自己免疫病因を有する追加の疾患が将来的に判明すると考えられるため、本発明の組成および方法を使用して治療できる自己免疫疾患は、表2にリストされる疾患に限定することを意図しない。
【0155】
2.ワクチンの調製
好適なベクターを、標準的な組み換えDNA技術を使用して調製し、それらは、例えば、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,2nd edition(Sambrookら、1989)、“Oligonucleotide Synthesis”(M.J.Gait編、1984)、“Animal Cell Culture”(R.I.Freshney編、1987)、“Methods in Enzymology”(Academic Press,Inc.)、“Handbook of Experimental Immunology”,第4版(D.M.Weir & C.C.Blackwell編、Blackwell Science Inc.,1987)、“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells”(J.M.Miller & M.P.Calos編、1987)、“Current Protocols in Molecular Biology”(F.M.Ausubelら編、1987)、“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullisら編、1994)、および“Current Protocols in Immunology”(J.E.Coliganら編、1991)に記載されている。分離されたプラスミドおよびDNA断片は、特定の順序で分割、調整、および結紮され、望ましいベクターを生成する。結紮後、発現する遺伝子を含むベクターは、好適なホスト細胞に変換される。
【0156】
ホスト細胞は、異種タンパク質の発現で知られる任意の真核または原核ホストである可能性がある。したがって、本発明のポリペプチドは、真核ホスト、例えば、真核細菌(イースト)または多細胞生物(哺乳類細胞培養)、植物および昆虫細胞から分離された細胞において発現しうる。異種ポリペプチドの発現に好適な哺乳類細胞株の例は、SV40(COS‐7,ATCC CRL 1651)により形質転換されたサル腎CVI細胞株、ヒト胎児腎細胞株293S(Grahamら、J.Gen.Virol.36:59[1977])、新生ハムスターの腎細胞(BHK,ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞(Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216[1980]、サル腎細胞(CVI‐VI‐76,ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル細胞(VERO‐76,ATCC CRL‐1587)、ヒト頚癌細胞(HELA,ATCC CCL 2)、イヌ科腎細胞(MDCK,ATCC CCL 34)、ヒト肺細胞(W 138,ATCC CCL 75)、およびヒト肝細胞(Hep G2,HB 8065)を含む。一般的な骨髄腫細胞において、特に、任意の内生抗体、例えば、骨髄腫細胞株SP2/0を生成する非免疫グロブリンを生成しないものを本明細書に記載の抗体の生成に使用してもよい。
【0157】
昆虫細胞ホストを採用する真核細胞発現系は、プラスミド発現系またはバキュロウイルス発現系のいずれかに依存することができる。典型的な昆虫ホスト細胞は、秋アワヨトウの幼虫(Spodoptera frugiperda)に由来する。異種タンパク質の発現のため、これらの細胞は、ウイルスポリへドリンプロモータの制御下で発現される標的の遺伝子を有する組み換え型のバキュロウイルスAutographa californica核多角体病ウイルスに感染させられる。このウイルスに感染した他の昆虫は、商業上「High 5」(Invitrogen)として知られるキャベツシャクトリムシ(Trichoplusia ni)に由来する細胞株を含む。しばしば使用される別のバキュロウイルスは、カイコ(Bombyx mori)に感染するBombyx mori核多角体病ウイルスである。多くのバキュロウイルス発現系は、例えば、Invitrogen(Bac‐N‐BlueTM)、Clontech(BacPAKTM Baculovirus Expression System)、Life Technologies(BAC‐TO‐BACTM)、Novagen(Bac Vector SystemTM)、Pharmingen and Quantum Biotechnologies)などから商業的に入手可能である。別の昆虫細胞ホストは、一般的なショウジョウバエである、キイロショウジョウバエであり、一時的または安定したプラスミドベースのトランスフェクションキットは、Invitrogen(The DESTM System)により商業的に提供される。
【0158】
Saccharomyces cerevisiaeは、下位の真核ホストの間で最も一般に使用される。しかし、Pichia pastoris(EP 183,070;Sreekrishnaら、J.Basic Microbiol.28:165-278(1988))などのその他多くの属、種、および株も使用可能であり、本明細書において有効である。イースト発現系は市販されており、例えば、Invitrogen(San Diego,Calif.)から購入できる。二官能価タンパク質発現に好適なその他のイーストは、Kluyveromycesホスト(米国特許番号第4,943,529号)、例えば、Kluyveromyces lactis;Schizosaccharomyces pombe(Beach and Nurse,Nature 290:140(1981);Aspergillusホスト、例えば、A.niger(Kelly and Hynes,EMBO J.4:475-479(1985))およびA.nidulans(Ballance et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.112:284-289(1983))、およびHansenulaホスト、例えば、Hansenula polymorphaを含むが、それらに限定されない。イーストは、安価な(最小の)培地上で急速に成長し、組み換えは、相補性により容易に選択でき、発現されたタンパク質は、細胞質の局在性または細胞外輸送のために特異的に設計できる。また、それらは大規模な発酵に好適である。
【0159】
原核生物は、初期クローン化ステップ用のホストであってもよく、大量のDNAの高速生成、部位特異的突然変異誘発に使用される単一鎖DNAテンプレートの生成、多くの突然変異体の同時審査、および生成された突然変異のDNA配列決定に役立つ。本発明のペプチドの生成に好適なE.coli株は、例えば、誘導可能なT7 RNAポリメラーゼ遺伝子を担持するBL21を含む(Studierら、Methods Enzymol.185:60-98(1990))、AD494(DE3)、EB105、およびCB(E.coli B)およびそれらの生物、K12株214(ATCC 31,446)、W3110(ATCC 27,325)、X1776(ATCC 31,537)、HB101(ATCC 33,694)、JM101(ATCC 33,876)、NM522(ATCC 47,000)、NM538(ATCC 35,638)、NM539(ATCC 35,639)などを含む。その他多くの種および属の原核生物を同様に使用してもよい。実際に、本発明のペプチドは、バクテリアにおける組み換えタンパク質発現を利用して、容易に大量生成することが可能であり、ここでペプチドは、親和性精製に使用される開裂可能なリガンドに融合される。
【0160】
様々なホスト細胞における発現に好適なプロモータ、ベクター、およびその他の構成要素は、当該技術分野において周知であり、例えば、上記のテキストに記載されている。
【0161】
特定の細胞または細胞株が、機能的活性型での生成に好適であるかどうかは、実験的分析によって特定される。例えば、望ましい分子のコード化配列を含む発現構成を使用して、候補細胞株に核酸導入してもよい。次に核酸導入した細胞を培地で成長させ、媒体を収集し、分泌されたポリペプチドの存在を試験する。次に、ELISAなどの当該技術分野で既知の方法により、生成物を定量する。
【0162】
代わりに、固相ペプチド合成などの化学合成によって全体分子を生成してもよい。そのような方法は、当該技術分野において熟練する者には周知である。一般に、これらの方法は、基本テキスト、例えば、固相ペプチド合成技術に関しては、J.M.Stewart and J.D.Young,Solid Phase Peptide Synthesis、第二版、Pierce Chemical Co.,Rockford,III.(1984)およびG.Barany and R.B.Merrifield,The Peptide:Analysis Synthesis,Biology,editors E.Gross and J.Meienhofer,Vol.2,Academic Press,New York,(1980),pp.3-254、伝統的な溶液合成に関しては、M.Bodansky,Principles of Peptide Synthesis,Springer‐Verlag,Berlin(1984)およびE.Gross and J.Meienhofer編、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,(上記)Vol.1などに記載される固相合成方法または液相合成方法のいずれかを採用する。
【0163】
本発明の分子は、アミノ酸配列の変異型を含んでもよい。そのようなアミノ酸配列変異型は、基礎となるDNA配列を好適な組み換えホスト細胞において発現するか、または上述のように、望ましいポリペプチドの体外合成によって生成できる。ポリペプチド変異型をコード化する核酸配列は、対応する天然(例えば、ヒト)ポリペプチドをコード化する核酸配列の部位特異的変異誘発により生成されてもよい。ポリメラーゼ鎖反応(PCR)増幅を使用する部位特異的変異誘発を使用してもよい。(例えば、1987年7月28日発行の米国特許番号第4,683,195号、およびCurrent Protocols In Molecular Biology,Chapter 15(Ausubelら編、1991)を参照されたい。その他の部位特異的変異誘発技術は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、以下の発行物に記載されている。Current Protocols In Molecular Biology(上記)第8章、Molecular Cloning:A Laboratory Manual.,2nd edition(Sambrookら、1989)、Zollerら、Methods Enzymol.100:468-500(1983)、Zoller & Smith,DNA 3:479-488(1984)、Zollerら、Nucl.Acids Res.,10:6487(1987)、Brakeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:4642-4646(1984);Botsteinら、Science 229:1193(1985)、Kunkelら、Methods Enzymol.154:367-82(1987),Adelmanら、DNA 2:183(1983)、およびCarter et al.,Nucl.Acids Res.,13:4331(1986)。カセット式変異誘発(Wellsら、Gene 34:315[1985])、および制限選択変異誘発(Wellsら、Philos.Trans.R.Soc.London SerA,317:415[1986])を使用してもよい。
【0164】
1つ以上のアミノ酸置換によるアミノ酸配列変異型は、いくつかの方法のうちの1つで生成されてもよい。アミノ酸がポリペプチド鎖において互いに近接して配置される場合、それらは、すべての望ましいアミノ酸置換をコード化する1つのオリゴヌクレオチドを使用して同時に変異することができる。しかし、アミノ酸が互いに離れて(例えば、10アミノ酸より多く離れて)配置される場合、すべての望ましい変化をコード化する単一のオリゴヌクレオチドを生成することは、より困難である。代わりに、2つの代替方法のうちの1つを採用してもよい。第1の方法では、置換される各アミノ酸に対して個別のオリゴヌクレオチドを生成する。次に、オリゴヌクレオチドを単一鎖のテンプレートDNAに同時にアニールし、テンプレートから合成されるDNAの第2鎖は、すべての望ましいアミノ酸置換をコード化する。代替方法は、2つ以上の一連の変異誘発を伴い、望ましい変異体を生成する。
【0165】
本発明のポリペプチドは、例えば、国際特許出願公開PCT WO92/09300において開示される連結ペプチドライブラリ法によって調製することもできる。この方法は、特定の事前定義された配列の変型である複数の分子を調製および分析するため特に好適であり、よって改善された生物学的特性を持ち、当該技術において知られている任意の技術、例えば、組み換えDNA技術および/または化学合成によって生成できるポリペプチドの識別において特に有効である。
【0166】
3.本発明のワクチンの治療上の使用
本発明は、特にIgE媒介の、いわゆる即時型アレルギー疾患を予防および治療するための新規の治療用DNAワクチン法を提供する。特に本発明は、Th2偏極性反応およびアレルギー性炎症の誘導が見られるアレルギー性疾患の予防および治療に使用する化合物を提供する。
【0167】
4.標的疾患の性質
Gell and Coombs Classificationに基づき、アレルギー反応は、誘発される免疫反応、および抗原に対する反応性の結果として進行する組織損傷の種類により分類される。I型反応(即時型アレルギー)は、体内に進入した抗原(この場合はアレルゲンと呼ぶ)が、マスト細胞または好塩基球に接触して起こり、マスト細胞または好塩基球は、その抗原に対するIgEが、その高親和性レセプタFcεRIに付加されることにより感作される。アレルゲンは、感作されたマスト細胞に到達すると、FcεRIに結合されたIgEと交差結合し、細胞内カルシウム(Ca2+)を増加させ、ヒスタミンおよびプロテアーゼ、およびロイコトリエン、プロスタグランジンといった新規に合成された脂質由来のメディエータなどを含む予備形成されたメディエータを放出させる。これらのオータコイドは、アレルギーの急性臨床症状を生じる。また刺激を受けた好塩基球およびマスト細胞は、アレルギー反応の急性期および遅延期に関与する炎症誘発メディエータを生成および放出する。免疫系の他の部分、例えば、T細胞およびNKT細胞が、全体的な直接過敏性反応において積極的役割を果たすことも現在明らかになっている。
【0168】
前述のように、これまで様々なアレルゲンが識別されており、実際に新規アレルゲンが毎週のように確認され、クローン化され、配列決定されている。
【0169】
アレルゲンを摂取すると、胃腸および全身にアレルギー反応を引き起こす。最も一般的に関与する食物アレルゲンは、ピーナッツ、甲殻類、牛乳、魚、大豆、小麦、卵およびくるみなどの木の実である。影響を受けやすい人において、これらの食物は、吐き気、嘔吐、下痢、蕁麻疹、血管性浮腫、喘息、および本格的なアナフィラキシを含む様々なアレルギー症状を引き起こす可能性がある。空気中に浮遊するアレルゲンを吸入すると、アレルギー性鼻炎およびアレルギー性喘息を引き起こす。これらは、暴露の性質によって急性または慢性となりうる。目が空気中に浮遊するアレルゲンに曝されると、アレルギー性結膜炎を生じる。一般に、空気中に浮遊するアレルゲンは、花粉、カビ胞子、チリダニ、および、他の昆虫タンパク質を含み、および季節的花粉症およびアレルギー性喘息の最多原因である。
【0170】
ラテックスグローブに見られるような天然ゴムラテックスタンパク質などのアレルゲンに皮膚暴露すると、アレルゲンに接触した場所に蕁麻疹などの局所アレルギー反応、および全身反応を示すこともある。
【0171】
アレルゲンへの全身暴露、例えば、ハチ刺され、ペニシリン注射、または手術中の患者体内における天然ゴムラテックス(NRL)グローブの使用によって生じる全身暴露は、気道閉塞および本格的なアナフィラキシまでを含む皮膚、胃腸、および呼吸器の反応を引き起こす場合がある。膜翅目は、刺されると一般にアレルギー反応を引き起こす昆虫であり、アナフィラキシー・ショックに至る場合も多い。例えば、ミツバチ、スズメバチ、カリバチ、およびクマンバチなどの様々なハチを含む。ヒアリ(Solenopsis invicta)として知られるある種のアリが米国内での生息範囲を拡大するにつれて、アレルギーの原因となるケースが増えている。NRLグローブ中のタンパク質は、医療従事者および患者にとって高まる懸念事項となっており、現時点において、この問題に対する有効な治療形態は、接触を避けること以外にない。
【0172】
5.標的疾病に対する化合物の使用
本明細書に開示の化合物を使用し、主要な環境および職業アレルゲンに対するIgE媒介の反応を急性的または長期的に抑制することができ、特にアレルギーワクチン接種(免疫療法)における保護の提供に使用し、特定のアレルゲンに対する治療中に非アレルギー反応性(いわゆる「アレルギー耐性」)の状態を誘発できる。また、リスクの高い個人(例えば、喘息の遺伝リスクがある者および職場で職業アレルゲンに曝される者)に投与された場合、環境および職業アレルゲンに対するアレルギー感作を回避することにより、アレルギー性疾患に対する予防効果を持つこともできる。
【0173】
6.本発明の組成および製剤
予防を含む治療に使用する場合、本発明の化合物を薬学的に許容しうる担体または希釈剤と混合し、医薬組成として形成できる。医薬組成の形成方法は、当該技術分野においてよく知られている。
【0174】
技術および処方は、一般にRemington’s Pharmaceutical Sciences,第18版、Mack Publishing Co.,Easton,Pa.1990に記載されている。また、Wang and Hanson “Parenteral Formulations of Proteins and Peptides: Stability and Stabilizers”,Journal of Parenteral Science and Technology,Technical Report No.10,Supp.42-2S(1988)も参照されたい。最適な投与形式は、各患者の担当医により決定される。
【0175】
本発明の医薬組成は、従来の担体および任意でその他の成分とともに、本発明のワクチンを含むことができる。
【0176】
好適な形態は、例えば、経口、経皮、吸入、または注射など、その使用または進入経路に一部基づく。そのような形態は、標的細胞が多細胞ホスト中または培地のどちらに存在するにしても、薬剤または組成を標的細胞に到達させる必要がある。例えば、血流に注入される薬剤または医薬組成は、溶解性を有する必要がある。その他の要素は、当該技術分野において知られており、毒性および薬剤または組成の効果を妨げる形態などの考慮事項を含む。
【0177】
担体または賦形剤を使用し、化合物の投与を促進することもできる。担体および賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース、グルコース、またはスクロースなどの様々な糖類、またはスターチ類、セルロース派生物、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコールおよび生理的に互換性のある溶媒を含む。組成または医薬組成は、異なる経路により投与できる。それには、経口、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、鼻腔内、または肺内経路が含まれるが、それらに限定されない。組成の望ましい等張性は、塩化ナトリウムまたは他の薬学的に許容しうる薬剤、例えば、D形グルコース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、ポリオール(マンニトールおよびソルビトールなど)、または他の無機または有機溶質を使用して実現できる。
【0178】
全身投与の場合、例えば、皮内、皮下、筋肉内、静脈内などの注射を使用してもよい。注射の場合、発明の化合物は、Hank溶液またはRinger溶液などの生理的に互換性のある緩衝液などの溶液で形成される。代わりに、本発明の化合物は、一般にUSP基準の定義によって安全であると認められる1つまたは複数の賦形剤(例えば、プロピレングリコール)で形成される。好ましくは、例えば、ゴマ油、ピーナッツ油、オリーブ油、または他の許容しうる担体を含む植物油などの不活性油に懸濁できる。
【0179】
それらは、水溶性担体、例えばpHが約5.6〜7.4の等浸透圧緩衝液に懸濁される。これらの組成は、従来の殺菌技術により殺菌するか、またはろ過により滅菌できる。組成は、生理的状態に近づけるため必要とされる場合は、pH緩衝剤などの薬学的に許容しうる補助剤を含むことができる。有用な緩衝剤は、例えば、酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液を含む。容器または「デポ」徐放製剤の形態を使用し、治療上有効な量の製剤が、経皮的注射または送達後、多くの時間または日数をかけて血流に送達されるようにできる。さらに、化合物を固形に形成し、使用直前に再溶解または懸濁することができる。凍結乾燥形も含まれる。
【0180】
代わりに、本発明に基づいて同定される特定の分子は、経口投与が可能である。経口投与の場合、化合物はカプセル、錠剤、および炭酸水などの従来の経口投薬の形状で形成される。
【0181】
全身投与は、経粘膜的または経皮的によるものであってもよい。経粘膜的または経皮的投与の場合、浸透するバリアに適切な浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、当該技術分野において一般に知られており、例えば、経粘膜的投与の場合は、胆汁塩およびフシジン酸派生物を含む。さらに、洗浄剤を使用して浸透を促進できる。経粘膜的投与は、例えば、鼻腔用スプレーまたは坐薬を使用して行うことができる。
【0182】
本発明の化合物を投与する一経路は、鼻腔内および/または肺内送達のための吸入であってもよい。吸入による投与の場合、通常、吸入可能な乾燥粉末組成またはエアロゾル組成が使用される。ここで、粉末または液滴のサイズは、例えば、喉、上気道、または肺などの呼吸路の望ましい部分に活性成分が確実に沈着するよう選択される。吸入可能な組成および投与のための装置は、当該技術分野においてよく知られている。例えば、エアロゾル薬剤を吸入により送達する装置が知られている。そのような装置の一例は、装置の作動によって同容量の薬物が患者に送達される定量吸入器である。定量吸入器は、一般に、加圧下で薬物および推進剤の容器を含むキャニスタ、および固定量の定量室を含む。キャニスタは、薬物を患者に送達するためのマウスピースまたはノズルを有する本体またはベースのレセプタクルに挿入される。患者は、手でキャニスタを本体に押し入れ、充てん弁を閉じて室内の定量の薬物を捕捉し、放出弁を開けて用量室内で捕捉された定量の薬物をエアロゾルミストとして大気に放出することにより装置を使用する。同時に、患者は、マウスピースを通じて吸入し、ミストを気道に引き込む。次に、患者はキャニスタを解放し、放出弁を閉じ、充てん弁を開けて用量室を充てんして次の薬物投与に備える。例えば、米国特許番号第4,896,832号、およびAerosol Sheathed Actuator and Capとして知られる3M Healthcareから入手可能な製品を参照されたい。
【0183】
別の装置は、患者の呼吸努力に応えて自動的に定量を提供するよう機能する、息で作動する定量吸入器である。息で作動する装置の一形式は、呼吸努力が機械レバーを動かし放出弁を作動させると、投与量を放出する。別の形式は、熱線風量計により検出された検出流量が事前設定された閾値を上回ると、投与量を放出する。例えば、米国特許番号第3,187,748号、第3,565,070号、第3,814,297号、第3,826,413号、第4,592,348号、第4,648,393号、第4,803,978号を参照されたい。
【0184】
乾燥した粉末薬を患者の気道に送達する(例えば、米国特許番号第4,527,769号を参照)、および固形前駆物質を加熱することによりエアロゾルを送達する(例えば、米国特許番号第4,922,901号を参照)装置が存在する。これらの装置は、通常、患者の呼吸量に応じて薬物を容器から気道に引き入れることにより、患者の呼吸の初期段階の間に薬物を送達するか、または加熱要素を作動させて固形エアロゾル前駆物質を揮発させる働きをする。
【0185】
エアロゾルの粒子の大きさを制御する装置も知られている。例えば、米国特許番号第4,790,305号、第4,926,852号、第4,677,975号、および第3,658,059号を参照されたい。
【0186】
局所投与の場合、発明の化合物は、当該技術分野において一般に知られている、オイントメント、軟膏、ゲルまたはクリーム状に形成される。
【0187】
望ましい場合、上述の組成の液体は、メチルセルロースなどの増粘剤で粘度をつけることができる。それらは、油中に水または水中に油を入れた乳液状に調製することができる。例えば、アカシア粉末、非イオン性界面活性剤(Tweenなど)、またはイオン性界面活性剤(アルカリポリエーテルアルコール硫酸またはTritonなどのスルフォン酸など)幅広い薬学的に許容しうる乳化剤のいずれをも採用することができる。
【0188】
本発明における有用な組成物は、一般的に許容される手順に従い、材料を混合して調製される。例えば、選択した構成要素をブレンダまたはその他の標準的装置で混合するだけで濃縮混合物を生成することができ、次に、水または増粘剤、場合によってはpHを制御する緩衝液を添加することにより最終濃度および粘度を調節するか、または溶質を追加することにより張度を制御できる。
【0189】
本発明の方法で使用する様々な化合物の投与量は、標準的な手順により決定できる。一般に、治療上有効な量は、患者の年齢および体格、その患者に関連する疾患または障害に基づいて約100mg/kg〜10-12mg/kgの間の量である。一般に、治療対象の個人に対して約0.05〜50mg/kg、または約1.0〜10mg/kgの量である。実際の投与量の決定は、通常の医師の技量の範囲である。
【0190】
本発明の化合物は、1つまたは複数のさらなるIgE媒介のアレルギー性疾患または状態の治療用薬剤と合わせて投与してもよい。
【0191】
そのようなさらなる治療薬は、コルチコステロイド、β拮抗薬、テオフィリン、ロイコトリエン抑制剤、アレルゲンワクチン、および溶解性組み換えヒトIL‐4レセプタ(Immunogen)およびToll様レセプタを標的とする治療薬などの生物学的反応修飾因子を含むが、それらに限定されない(例えば、Barnes,The New England Journal of Medicine341:2006-2008(1999)を参照)。したがって、本発明の化合物を使用し、吸入または経口コルチコステロイドを用いて行われるコルチコステロイド療法などの従来のアレルギー治療を補足することができる。
【0192】
7.製品
本発明は、本明細書に記載のワクチンを含む製品も提供する。製品とは、容器および容器上のラベルまたは添付文書、あるいは容器に関連するラベルまたは添付文書を含む。好適な容器は、例えば、ボトル、ガラスビン、シリンジなどを含む。容器は、ガラスまたはプラスチックなど様々な材料から形成されてもよい。容器は、状態の治療に有効な組成を保持し、殺菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は静脈注射用溶液の袋または皮下注射針で穿孔できる栓のついたガラスビンであってもよい)。また容器は、上述されたような吸入装置であってもよい。組成中の活性成分の少なくとも1つは、本発明のワクチンである。ラベルまたは添付文書は、例えば、喘息または上記のIgE媒介アレルギーを含むアレルギー状態などの治療に組成を使用することを示す。製品は、注射(BWFI)用静菌性の水、リン酸緩衝生理食塩水、Ringer溶液およびD形グルコース溶液などの薬学的に許容しうる緩衝液を含む容器をさらに含んでもよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、およびシリンジを含む、商業的およびユーザの見地から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0193】
本発明に関するさらなる詳細は、以下の非限定的な例に従って説明する。
【0194】
本明細書に記載の特許および公開物は、当該技術分野における一般的な技術について記載し、参照することにより全体が、また、それぞれが特異的および個別に組み込まれるかのように本明細書に組み込まれる。参照文献と本明細書との間に矛盾が生じる場合は、本明細書が優先される。
【実施例】
【0195】
実施例
実施例1.IgE媒介の遺伝子送達ワクチンの構成および発現
ヒトFcεRIα鎖遺伝子組み換えマウス
マウスAPC(例えば、マクロファージ、単球、およびDC)は、FcεRIを発現しないため、FcεRI発現DCに対するIgE媒介のアレルゲン遺伝子送達という概念は、従来のマウスでは試験できない。ヒトFcεRIα鎖のトランス遺伝子をを担持するマウス、例えば、hFcεRIα Tgマウス(マウス内生FcεRIα鎖は、シグナル伝達の際に競合しないよう排除した)は、ヒトFc FcεRIの細胞特異的発現のヒトパターンを非常に良く示す(Dombrowicz,D.ら、1996.J.Immunol.157:1645、Dombrowicz,D.ら、1998.Immunity.8:517)。そのため、hFcεRIα Tgマウスは、ヒトIgEの機能的FcεRIαを、マスト細胞、好塩基球、好酸球上だけでなく単球、ランゲルハンス細胞、および、DCなどのAPC上で発現し、αβγ2レセプタ複合体をマスト細胞および好塩基球上でで、αγ2レセプタ複合体をAPC上で発現する(Dombrowicz,D.ら、1996.J.Immunol.157:1645、Dombrowicz,D.ら、1998.Immunity.8:517)。hFcεRIα Tgマウスは、マウスFcεRIα鎖を欠くため、マウスIgEを生成するが、それを介して反応性はない。しかし、全身および局所アレルギー反応を誘導しうるIgG1を生成する。このマウス株は、Dr.Jean‐Pierre Kinet(Harvard Medical School,Boston,MA)から厚意で提供され、マウスは、他の目的で数年間飼育している。我々は、hFcεRIα TgマウスからのCD11cDCsは、eBioscience(San Diego,CA 92121,USA.)の抗ヒトFcεRIα抗体による測定で、ヒトFcεRIαを細胞表面に発現することを確認した。
【0196】
ヒトIgE
大量の組み換えヒトIgEおよびIgEイソフォームを発現および精製した(Lyczak,J.,B.ら、1996.J.Biol.Chem.271:3428)。大量のIgEをIgE骨髄腫患者PSの血清から精製した(Dr.McIntyreおよびDr.Ishizakaから提供)。
【0197】
Fascin プロモータベクター
マウスFascinプロモータの制御による発現ベクターは、2.6KbマウスFascinプロモータをクローン化し、PCRにより構成した(Sudowe,S.,Lら、2006.J Allergy Clin Immunol.117:196-203)。pCMV‐EGFPベクターにおけるCMVプロモータ、またはpcDNA3.1‐Fel d1は、従来のクローン化法により分離されたFasceinプロモータで置換された。
【0198】
Fel d1遺伝子
Fel d1抗原の両鎖を発現する工学的遺伝子、ネコからの優位アレルゲンは、Dr.Paul GuyreおよびDr.Amanda Sun(Dartmouth College)から取得した(Vailes,L.D.ら、2002)。J.Allergy Clin.Immunol.110:757)。
【0199】
DCにおいて特異的に活性される発現ベクターの構成
FcεRI担持細胞の標的は、ヒトIgEおよびDNAポリプレックスの使用により行われる。FcεRI担持DCにおいて、伝達された遺伝子を効率的かつ選択的に発現するため、アクチン束化タンパク質Fascinプロモータの制御による緑色蛍光タンパク質(GFP)発現構成をモデル伝達遺伝子構成として使用する。成熟途中および成熟したDC、および濾胞期DCは、Fascinを発現する唯一の造血細胞であるため(Ross,R.ら、1998.J Immunol.160:3776、Ross,R.ら、2000.J Invest Dermatol.115:658、Mosialos,G.ら、1996.Am J Pathol.148:593、Mosialos,G.ら、1994.J Virol.68:7320、Pinkus,G.S.ら、1997.Am J Pathol.150:543、Bros,M.ら、2003.J Immunol.171:1825、Ross,R.ら、2003.Gene Ther.10:1035)、Fascinプロモータは、トランス遺伝子の選択的DC特異的発現を保証する必要がある。これを、不規則な細胞発現を示すことが予想されるCMV直接的早期プロモータ(pCMV)構成の伝達と比較する。pCMVは、IgE‐FcεRI依存性遺伝子伝達により媒介される全種類の細胞、例えば、APC、マスト細胞および好塩基球においてGFP発現を引き起こすことが予想されるが、Fascinプロモータは、マスト細胞および/または好塩基球ではなく、DCにおいてのみ機能するため、DCにおける細胞型特異的遺伝子発現様式を提供する必要がある。(Ross,R.ら、1998.J Immunol.160:3776、Ross,R.ら、2000.J Invest Dermatol.115:658、Mosialos,G.ら、1996.Am J Pathol 148:593、Mosialos,G.ら、1994.J Virol.68:7320、Pinkus,G.S.ら、1997.Am J Pathol.150:543、Bros,M.ら、2003.J Immunol.171:1825、Ross,R.ら、2003.Gene Ther.10:1035)。
【0200】
モデルCMV直接早期プロモータ(pCMV)の制御による、およびFascinプロモータの制御による緑色蛍光タンパク質(GFP)プラスミドを構成し、それらを使用して標的した遺伝子送達および発現の有効性を特定する。これは、細胞型に特異的な遺伝子発現を証明する。
【0201】
主要アレルゲン遺伝子cDNA[ピーナッツアレルゲンAra h1およびAra h2(Univ. of Arkansas、Dr.BurksおよびDr.G.Bannonから厚意で提供された)(Shin DSら、J Biol Chem.73:13753,1998)、卵アレルゲンオボムコイド(Gal d1)または牛乳アレルゲンαカゼイン(Mt.Sinai Medical CenterのH.Sampsonから厚意で提供された)]を含む特定のプラスミドは、マウスDC特異的Fascinプロモータの転写調節下で構成し、ピーナッツ、卵、または牛乳アレルギー免疫療法のアレルゲン遺伝子ワクチンとして使用する(図6)。
【0202】
ピーナッツアレルゲンAra h1を含むプラスミドをCMV直接早期プロモータ(pCMV)の転写調節下で構成した。Ara h1 cDNA含有プラスミド(Univ. of Arkansas、Dr.BurksおよびDr.G.Bannonから厚意で提供されたpbluescript−Ara h1)をNot IおよびApa Iを用いて消化し、2.0Kb断片を放出し、またこの断片をNot I‐Apa I部位におけるpcDNA3.1ベクターに挿入した。
【0203】
使用されるプラスミドは、pCDNA3.1背景にあり、空の(対応する遺伝子配列を持たない)ベクターは、特に指定のない限り、模擬対照として含まれる。すべてのプラスミド構成は、内毒素が含まれていないプラスミド調製キットを用いて調製し、内毒素の残余量レベルは、Limulusアッセイにより特定する。
【0204】
発現したタンパク質を細胞外に分泌させるリード配列は、DNAワクチンへの細胞免疫反応の誘発を容易にする場合がある(Jiang C ら、Infect Immunol 70:3539,2002)。プラスミドにおけるリード配列は、一部のアレルゲンDNAワクチン接種において、抗原特異的IgE生成を著しく増加することが見出されたため、当アレルゲンワクチン接種の目的において、リーダー配列を含めないこととした(Tan LKら、Vaccine.24:5762,2006)。さらに、APCによってアレルゲンタンパク質またはその断片を分泌させることに特別な関心はない。実際に、分泌された任意の発現抗原(したがってアレルゲン)は、少なくとも局部的なアレルギー反応を誘発する可能性がある。
【0205】
IgE‐PLLの調製:
ポリカチオン試薬の一種であるポリ‐L‐リジン(PLL)は、遺伝子送達のためのタンパク質‐DNAベクター複合体形成に広く使用されている(Cristiano R.J.1998.Front Biosci.3:d1 161)。この方法は、タンパク質とDNA発現ベクターの間に、化学的共有交差結合ではなく、損傷を与えないイオン電荷を利用するためである(Cristiano R.J.1998.Front Biosci.3:d1 161)。PLLは抗原性を持たないため、PLL複合DNAを繰り返し投与できる。
【0206】
PLLは、IgEに対して化学的に交差結合されている(以下を参照)。IgE‐PLL複合体をCMV‐またはFascin‐プロモータの制御によるGFP発現ベクターと混合し、IgE媒介の遺伝子送達のためのIgE‐PLL:DNAベクターポリプレックスをイオン的に形成できうる。
【0207】
PLLをタンパク質と交差結合するために複数の方法を使用できる(Cristiano R.J.1998.Front Biosci.3:d1 161)。しかし、所定の遺伝子を特定タイプの細胞に標的する相対的効率は比較されていない。そこで、遺伝子送達および発現の効率に関して3つの方法を比較する。エチル‐3(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(ED)連結法(Wu,G.Y.&Wu,C.H.1987.J Biol Chem.262:4429),3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸N‐ヒドロキシスクシニンミドエステル(SPDP)法(Wagner,E,et al.,1990.Proc Natl Acad Sci USA.87:341049)およびビオチン‐ストレプトアビジン法(Cotten, M.,et al.,1992.Proc Natl Acad Sci USA.89:6094)を使用してIgEをPLLに連結する。
【0208】
IgE‐PLLの交差結合は、指向性交差結合プロトコルを用いて行った(Wu,G.Y.&Wu,C.H. 1987.J Biol Chem.262:4429)。IgEがそれ自身にではなく、PLLにのみ交差結合することを意図した。2つ以上のIgEが1つのPLLに同時に交差結合する(複数のIgE含有複合体を形成する)可能性は、IgEとPLLのモル比を1:1に調節することにより制限できる。遺伝子送達のためのIgE‐PLL複合体を調製する化学的交差結合法は、望ましくないIgE交差結合の副作用を起こす可能性があり、アレルギー反応を誘発しうる非モノマーIgE分子が生じる。さらに、交差結合されたIgE‐PLL複合体のサイズおよび程度は、化学反応の性質上、この方法で制御することは困難である。そのため、バッチ間で製品が著しく異なる可能性がある。
【0209】
これらの問題を解決するため、組み換えDNA技術を使用し、60の反復リジン(IgE‐PLL)の180bp合成DNAコード化と連結されたヒトIgE重鎖(CH2‐CH3‐CH4)の融合遺伝子を構成および発現することにより、IgE‐PLLを生成した(図4Aに示す)。この構成は、Fcエプシロン‐ポリリジンタンパク質または「EPL」と呼ばれる。ヒトIgE重鎖(CH2‐CH3‐CH4)をリジンおよびアルギニンの交互反復をコードする180bp合成DNA連結する組み換えDNA技術を使用し、IgE‐PRL DNAを構成した。構成図については、図3を参照されたい。図3において、クローン化を目的とする制限部位は下線表示されている。このアプローチは、各IgE分子が一様にPLLまたはPRLに関連することにより、考えられるIgE交差結合が起こらないようにし、異なる時期に行われたすべての実験において、生成物の品質が同一となるようにする。
【0210】
使用に先立ち、いかなる残余量の多重結合IgE‐PLL複合体も、FPLCにより除去される(Cristiano R.J.1998.Front Biosci.3:d1 161)。
【0211】
哺乳類(NSO)細胞において発現されるEPLタンパク質は、親和性の抗IgEコラムで精製され、溶出したタンパク質は、Coomassie青色染色およびウェスタンブロット法により分析された。Coomassie青色染色は、発現したEPL融合タンパク質が、天然(非還元)条件下では主として120Kdの分子量で移動するが、還元条件下では主として60Kdの塊として存在することを示した。これは、EPLが主に予想される二量体(図5B)として組み立てられることを示す。2つのエプシロン鎖二量体が、単一のFcεRIに対して極めて高いFcεの親和性をうることが必要とされるため、二量体としてのEPLのこの発現は、非常に重要である。(Garman SC,Wurzburg BA,Tarchevskaya SS,Kinet JP and Jardetzky TS.“Structure of the Fc fragment of human IgE bound to its high‐affinity receptor FcεRIα.” Nature 406:259,2000)。
【0212】
融合タンパク質の発現
電気穿孔法により、EPLプラスミドを2-4×107Ns0/1骨髄腫細胞に核酸導入した。DNAを含まない対照に対して2×106細胞を含む細胞を1000rpmで5分間回転させ、0.5mlの冷却PBSに再懸濁し、0.4cmの電気穿孔キュベット(BioRad,Hercules,CA)に置いた。PBS中50μlの線形化したプラスミドDNAをキュベットに添加し、氷上で10分間培養した。200V、960μFで細胞をパルスした後、氷上で10分間配置した。10mlのIscoves修正Dulbecco培地(IMDM,Irvine Scientific,Santa Ana,CA)+5%補足仔牛血清(CS,Hyclone,Logan,UT)で細胞を洗浄し、IMDM+10%仔牛血清中2x106細胞/プレートに置いた。2日後、細胞にIMDM+10%CS+1mg/mlジェネティシン(Invitrogen)を含む選択培地を与えた。3日後に選択培地を補充した。コロニーを含むウェルをELISAにより試験した。タンパク質生成細胞をローラボトル中で成長させ、クエン酸pH4.5およびグリシンpH2.5を使用し、酸溶離によって抗IgE親和性コラム(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)上でタンパク質を精製した。1mlの少量タンパク質を2M Tris,pH8.0で中和し、PBSに対して透析した。
【0213】
SDS‐PAGE:
1xサンプル緩衝液(25mM Tris,pH6.7,2% SDS,10%グリセロール、0.008%ブロモフェノールブルー)中で2分間沸騰させることにより精製したタンパク質を変性させ、非還元サンプルを150mAmpでSDS‐PAGEにより分離した。また変性したサンプルを、1%βメルカプトエタノールを用いて2分間沸騰させて還元し、SDS‐PAGEにより分離した。
【0214】
フローサイトメトリ:
EPL融合タンパク質とFcεRIの結合は、3D10およびKu812上のフローサイトメトリにより評価した。細胞は、Iscoveの変性Dulbecco培地(IMDM、Irvine Scientific,Santa Ana,CA)に+10%胎仔血清を加えて成長させた。各サンプルに関して、106細胞を1mlのPBS中、pH7.4、2000rpmで5分間回転させて洗浄し、上澄みを除去した。EPLおよびIgEタンパク質と共に、あるいは、それを含めずに、100μlのIMDMおよび10%FCS中、いくつかの濃度で細胞を再度懸濁し、4℃で1時間培養した。1mlのPBSで細胞を2回洗浄した後、37℃で培養し、100μl10μg/ml FITC標識ヤギ抗ヒトエプシロン鎖(Sigma)を用いて4℃で30分間培養した。細胞を1mlのPBS中で3回洗浄し、500μlの2%パラホルムアルデヒドのPBS溶液に再度懸濁した。サンプルをFACSフローサイトメータ(Becton Dickinson Immunocytometry Systems,San Jose,CA)で分析し、死細胞および残骸を排除する。
【0215】
細胞摂取および発現を強化するためのIgE‐PLL修飾
実験では、特定の標的(IgE‐FcεRI)および発現(Fascinプロモータ)機序をアレルゲンワクチンアプローチにおける基本的重要要素として利用する。修飾を行い、プラスミドDNAの細胞浸透を促進、および/またはDNAワクチンを長期発現するため、プラスミドDNAを核に配向することが可能である。そのような修飾は、HIV tat ペプチド配列(GRKKRRQRRR)および/または核局在化シグナル(NLS)ペプチド(PKKKRKV)をEPL(図7)の骨格に組み込むステップを含む。このHIV tat ペプチド配列は、細胞質に大型の薬物およびDNAを含む様々な分子の輸送を著しく促進し(Brooks H ら、Adv Drug Deli Rev 57:559,2005)、その一方、核に到達したプラスミドの一部がAPCにおいてアレルゲンを長期発現するためホスト染色体に統合されるため、NLSは、プラスミドを核に配向することができ、標的遺伝子の発現をより効率的にする(Talsma SSら、J Control Release 112:271,2006)。これらの修飾により、IgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチン接種の有効性が著しく強化されることが期待される。
【0216】
IgE‐PLL:DNAポリプレックスの調整
IgE‐PLLおよびpCMV‐ara h1プラスミドのポリプレックスは、注射の前に、適量のEPLおよびプラスミドDNAをPBS中、30分間25℃で混合することのみによって組み立てられた。IgE‐PLLおよびその他のプラスミドのポリプレックスは、同一の手順を使用して組み立てることができる。
【0217】
IgE単体ではなく、発現したEPL、ならびにPLLは、ゲル遅延分析(図4C)において、EPLタンパク質濃度依存的(図4D)およびプラスミドDNA濃度依存的(図4E)にプラスミドDNA(pCMV‐GFP)に結合できることを示した。EPL‐DNAポリプレックスは、FACS分析により、3D10細胞(ヒトFcεRIα鎖を発現するCHO細胞)およびKu812細胞、FcεRIレセプタ複合体(図4G)を発現するヒトマスト細胞様株上で発現されたFcεRIと結合すること示した(図4F)。ヒトFcεRIα遺伝子組み換えマウスを用いた受動的皮膚アナフィラキシアッセイにおいて、組み立てられたEPL:DNAポリプレックスは、局所アレルギー性皮膚反応を誘発しなかったことを示した(図4H)。これは、EPL:DNAポリプレックスが、Fcεと交差結合しなかった、またはマスト細胞の脱顆粒を誘発しなかったことを示す。受動的皮膚アナフィラキシ(PCA)は、以下のように行った。ヒトアレルギー抗体に対するヒトレセプタを担持するよう遺伝学的に設計され、そのようなヒトアレルギー抗体に反応できるマウスをPCAに使用した。これらの実験は、キメラヒトIgタンパク質がこれら動物の皮膚において従来の受動的皮膚アナフィラキシ反応を抑えるかどうかを試験する。マウスの背部皮膚の各部位に、50μl量を4〜6回注射した。これらの注射は、それらの領域を「アレルギー性」にすることができるヒトアレルギー抗体を含む。また、それら同一の場所においてアレルギー反応の進行を止めるよう設計されたキメラタンパク質をその場所の一部に投与する。4〜6時間後、尾静脈注射によって、ヒトアレルギー抗体と反応する対応アレルゲンを200□l量の1%Evan青色色素とともに、マウスに静脈投与する。20〜30分後、マウスを安楽死させ、各部位における反応の大きさ(ブルーイング)を評価する。
【0218】
体外IgE‐DNAポリプレックス摂取および発現の試験
正常APC αγ2 FcεRI複合体を発現するヒトAPC様細胞株U937、またはヒトマスト様細胞株LAD2におけるGFP発現を評価することにより、調製されたIgE‐PLL:GFPポリプレックス(pCMV制御済)のIgE媒介ベクターDNA移入の効率を試験する。LAD2細胞株は、機能的FcεRIを発現し(Jensen BMら、2005.Int Arch Allergy Immunol.137:9351)、FcεRI結合IgEを内在化できる。遺伝子伝達および発現効率の対照は、DNAポリプレックスおよび対応する対照を用いて細胞を培養することにより、PLL:GFP、IgE+GFPベクター、およびGFPベクター単体を含む。DCにおけるfascinプロモータに促進されるGFP発現を試験するため、MACS細胞分類により(Williamson Eら、2002 J.Immunol.169:3606)、IgE媒介のGFPベクター移動および発現用のhFcεRIα+Tgマウスからはっきりと選択したDCのCD11cを使用する。FcεRIα陰性の同腹子からのDCは、対照となる。様々なポリプレックスとともに細胞を2〜5日間培養し、結果として生じるGFP発現を蛍光顕微鏡検査法またはフローサイトメトリにより評価する。体外培養系において最高のGFP発現レベルを生じるポリプレックス調製法を使用し、生体内遺伝子送達試験のためのEPL:GFPベクターポリプレックスを調製する。
【0219】
送達された遺伝子発現に関する重要事項の1つは、エンドソームをリソソームと融合する前に、少なくとも摂取DNAベクターの少部分をエンドソームからシトソルまたは核分室のいずれかに放出する必要があることである。ここで、DNAベクターは劣化しやすい。IgEおよびFcεRIレセプタは、FcεRI媒介のエンドサイトーシスのプロセスにおいて、どちらも細胞表面にリサイクルされるため(Furuichi Kら、1986.J Immunol.136:1015、Borkowski,T.Aら、2001.J Immunol.167:1290)、FcεRI媒介のエンドサイトーシスを介するFcεRI結合DNAベクターがリソソームの劣化を受けにくいことを示唆する。そのため、適量のIgE媒介アレルゲンDNA摂取がDCにおいて放出および発現される高い可能性がある。適切な発現が見られない場合は、PLLが線形のポリカチオン試薬であるためであると考えられる。そのため、後のDNA分解によるリソソームへの融合前に、エンドソーム膜の分裂およびDNA放出を効率的に媒介しない場合がある。これが問題となる場合、分岐鎖ポリカチオン試薬ポリエチレンイミン(PEI)をPLLの代わりに使用できる。PEIは非常に分岐し、リソソーム融合前に効率よくエンドソーム膜を分裂させる(Boussif,O.ら、1995.Proc Natl Acad Sci USA.92:7297)。これにより、DNAベクターが発現可能なシトソルへのDNAベクターの放出が増加し、このようにして遺伝子発現が4〜5倍強化されることを示されている(Cristiano R.J.1998.Front Biosci.3:d1 161、Boussif,O.ら、1995.Proc Natl Acad Sci USA.92:7297)。
【0220】
ヒトIgEに誘発されるピーナッツアレルギー反応を機能的に検出するためのPCAアッセイの確立
抗ピーナッツIgE抗体は、ヒトにおけるピーナッツアレルギーの全身性アナフィラキシに関与するが、IgEおよびIgG1は、双方、マウスモデルにおけるピーナッツアレルギーにおいて重要である。hFcγRIα 我々は、前に、Tgマウスモデルにおける生体内アレルギー反応を機能的に評価するPCAアッセイを確立したが、これはピーナッツアレルギーを対象としない(Zhu Dら、Nat Med 8:518,2002.Kepley CL,Zhang K,Zhu D,and Saxon A.Clin.Immunol 108:89-94,2003)。我々は、ここで、hFcεRIα Tgマウスにおけるピーナッツアレルギー反応に関する同様のPCAアッセイを確立した。ピーナッツアレルギー患者の血清(Dr.Hugh Sampsonから厚意で提供された)を連続的に希釈し、FcεRIα Tgマウスの背部皮膚に注射した。24時間後、マウスを、精製したAra h1抗原で惹起した。図5Aに示されるように、ピーナッツアレルギー患者の血清に対して、用量依存のPCA反応が見られたが(5a〜5f)、健康なドナーの血清(5g)または生理食塩水(5h)に対しては、反応はなかった。このアッセイを使用し、商業用ソース(Plasma Lab、WA)から得た複数バッチのピーナッツアレルギー患者の血清(図5B)を審査した。ピーナッツアレルゲンに特異的なIgEを精製するため、強く肯定的な血清(サンプル5bおよび5c)を大量に購入した。これらの結果は、1)FcεRIα Tgマウスが、ピーナッツ患者の血清による生体内惹起に対し、IgEに対する皮膚反応性を発現すること(受動的に伝達されたヒトIgEであるにもかかわらず)、および2)積極的に感作したFcεRIα Tgマウスにおいて、アレルゲン特異的な段階的皮膚検査を行う能力を示す。
【0221】
モデルIgE‐DNAポリプレックスの生体内発現試験
生体内IgE媒介遺伝子送達ベクターの効率を評価するため、EPL:pFascin‐GFPポリプレックスをFcεRIα+tgマウスに注射する。様々な用量のポリプレックスを尾静脈注射により静脈(i.v.)投与する。後の検査のために、ワクチンをすべての重要な組織に広めることができるため、i.v.経路を意図的に使用する。FcεRIα+tgマウスのリンパ器官(脾臓、リンパ節、および内臓関連のリンパ組織、Peyerのパッチおよび胸腺)の組織学的部分においてGFPを発現するDCの解剖学的局在化を、免疫蛍光法により3〜5日目に検査する。これらの結果は、IgE媒介の遺伝子伝達の効率および局在性についての直接生体内の試験を提供する。IgEを含まないPLL:pFascin‐GFPの組み合わせは、DCにおけるDNA送達および発現の効率についての、更なる対照として機能する。また、皮内投与(i.d.)を試験する。それは、皮内投与が、ヒトにおいて容易に行われ、一般に遺伝子ワクチン接種アプローチにおいて使用され、それにより、遺伝子発現用の局所組織を検査できるためである。局所皮膚およびリンパ節について、DNAワクチン接種後2〜5日のGFP発現を検査する。IgE集中が生じないFcεRIα‐tgマウスは、背景対照として機能する。
【0222】
IgE‐Fel d1遺伝子ポリプレックスの生体内発現試験
hFcεRIα Tgマウスにおいて上記の発現実験を繰り返すが、IgE‐PLL:Fel d1遺伝子発現系を使用する。免疫組織化学的方法を使用し、発現したFel d1の存在および局在化を検出する。用量およびタイミング実験を行い、DCにおける最適Fel d1発現をもたらすパラメータを確立する。
【0223】
EPL:アレルゲン遺伝子(Ara h1、Ara h2、Ara h3、およびGal d1)ポリプレックスの生体内発現試験
EPL:アレルゲン遺伝子(制御されたFascinプロモータ)ポリプレックスを使用し、hFcεRIαtgにおいて上記の生体内発現実験を繰り返す。免疫組織化学的方法を使用し、入手可能なアレルゲン特異的単クローン抗体を用いて、発現したAra hおよびGal d1タンパク質の存在および局在性を検出する。これらの実験は、ベクターの生体内発現を実現したこと、アレルゲンワクチンの生体内発現を最適に検出する技術が改善されたことを立証する。ここでも、hFcεRIα‐tg同腹子は、比較用の負の対照として機能する。
【0224】
実施例2.FcεRIα TgマウスにおけるFel d1アレルギー反応の誘発におけるIgE媒介のFel d1遺伝子ワクチン接種の効果の決定
Fel d1の誘発によるアレルギー反応を予防するIgE媒介性Fel d1遺伝子ワクチン接種の効果を決定するため、図2Aに示されるように実験を行う。hFcεRIα Tgマウスの群(一群につき8匹のマウス)は、−21日目に、(a)IgE‐PLL:Fel d1含有DNAベクターポリプレックス、(b)対照PLL:Fel d1含有DNAベクターの組み合わせ、および(c)Fel d1含有DNAベクターのみをワクチン接種する。3週間後、(0日目)ミョウバン中の10μgのFel d1を用いてマウスを腹腔内的(i.p.)に感作し、14日目にFel d1抗原を用い、全身アレルギー反応および気道過敏症を誘発することが知られる、確立されたプロトコルの1つを使用して促進する(Zhu Cら、2005.Nat.Med.11:446、Terada,T.ら、2006.Clin Immunol.120:45,2006)。21日目に、動物を気管内Fel d1(1μg)で惹起し、その2日後(23日目)に表1に示される設計された実験パラメータを試験する(図2)。生理学的計測は、中心体温の変化を含み、好塩基球脱顆粒を反映する全身反応を測定する(Zhu Cら、2005.Nat.Med.11:446、Terada,T.ら、2006.Clin Immunol.120:45,2006)。気道過敏性(AHR)におけるIgE媒介のFel d1遺伝子ワクチン接種の効果を決定するため、コンピュータ制御の小動物呼吸‐脈振動測定システム(Flexi‐vent(登録商標))を使用して、メタコリン惹起に対する気道の抵抗を評価する(Zhu Cら、2005.Nat.Med.11:446、Terada,T.ら、2006.Clin Immunol.120:45,2006)。
【0225】
安楽死させた後、肺を個別に結紮し、1つの肺からBAL液を採取して、表2に示されるようなキーとなる調整および分極化サイトカインおよびケモカインのレベルを測定し、またBAL液の細胞構成要素を測定して気道アレルギー応答および肺炎症の状態を評価する。また、肺をコラゲナーゼDで消化することにより、肺に浸透した細胞の組成およびサイトカイン生成プロファイルを分析する。結果として生じる細胞について、T細胞小集団(CD4/CD8比)の組成、Th1またはTh2型をそれぞれIFN‐γおよびIL‐4の細胞染色により、フローサイトメトリを用いて分析する。洗浄していない肺について、アレルギー反応性の変化を組織学的に評価する。脾臓細胞を調製し、メモリT細胞応答およびTh1/Th2応答プロファイルを表すキーサイトカイン(IL4、IL‐5、IFN‐γ)の自然、および、Fel d1よる誘発による生成を試験する。
【0226】
Fel d1特異的IgE、総IgG、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgAおよびIgM抗体は、従来のELISAを使用してアッセイする。ワクチン接種により、気道内惹起の直前(21日目)に反応が生じる可能性があるため、これらはワクチン接種前(−21日目)、免疫付与時(0日目)、および実験の最後(23日目)に測定する。実験群間の上記実験パラメータにおける統計的有意性を比較する。抗ヒトIgE反応を−21日目、0日目、および23日目にチェックし、抗ヒトIgE応答のレベルを特定する。この一連の実験によって、アレルゲン遺伝子ワクチン接種が、予防的措置のモデルとして、続いて誘導されるFel d1特異的アレルギー反応をアレルゲン遺伝子ワクチン接種が改変できるかどうかを判定するとともに、Th1/Th2バランスに関するワクチン接種の効果、およびIgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチン接種がアレルゲン特異的なアレルギー性全身反応および気道の過敏性における免疫療法効果を引き出す可能な機序を特定することができる。
【0227】
ワクチン接種の経路:i.v.ワクチン接種を付与する。これは、最も有効な送達経路であると予測される。実験は、筋肉内(i.m.)または皮下(s.q.)注射を用いて後で行うことができる。明らかにi.v.投与が有効である場合は、必要な注射回数が少なく、i.v.経路が実用的であるため、ヒトにおいてこの経路を使用してもよい。
【0228】
用量:使用される用量は、DCにおいて最適な遺伝子発現を生じる。
【0229】
ワクチン接種のタイミング:予防的アレルゲン遺伝子ワクチン接種の当実験モデルにおいて、ワクチン接種は、一般にアレルゲン感作の21〜35日前(例えば、図に示されるスケジュールでは35日目と21日目の間)に行う。
【0230】
ワクチン接種の回数:いくつかの理由から、ワクチン接種は1回とし、このプロトコルにおいて複数の遺伝子ワクチン接種を行う前に、用量およびタイミングを修正することとする。上記のように、IgEを標的とする遺伝子送達は、1回以上のワクチン接種を必要とすることが多いこれまでの方法よりもはるかに効果的であると思われる。さらに反復遺伝子ワクチン接種は、一般に1週間以上離して行われるため、マウスがヒトIgEタンパク質の反復投与に反応する可能性があり、それによって結果の解釈が複雑になる。免疫原性の可能性を克服するための代案がある。
【0231】
表2.マウスにおける評価項目アセスメント
【0232】
【表2−9】
実施例3.hFcεRIα Tgマウスに対する確立されたFel d1のアレルギー応答におけるIgE媒介のFel d1遺伝子ワクチン接種の効果
我々が提案するIgE媒介のFel d1遺伝子ワクチンが、既に確立されたアレルギー反応を改変できるかを見出すため、Fel d1により誘発されるアレルギー反応は、アレルゲンDNAワクチン接種に先立って確立し、アレルギー性動物は、図2Bで概説されるスケジュールに従って処理する。hFcεRIα Tgマウスは、0日目にFel d1+ミョウバンのi.p.注射により感作し、14日目にFel d1単独のi.p.増進剤により感作する。21日目に、マウスはIgE‐PLL:Fel d1遺伝子発現ベクターとPLL:Fel d1遺伝子発現ベクター、および実験対照としてFel d1遺伝子発現ベクター単体を用いてi.v.治療を受ける。21日後(42日目)に、マウスはFel d1により気管内で惹起し、以前に確立されたプロトコルを使用して、全身応答および気道過敏症を誘導する(Zhu Cら、2005.A Novel Fcγ‐Fel d1 Protein for Cat‐induced Allergy.Nat.Med.11:446、Terada,T.ら、2006.A chimeric human‐cat Fcγ‐Fel d1 fusion protein inhibits systemic and pulmonary allergic reactivity to intratracheal challenge in mice sensitized to the major cat allergen Fel d1.Clin Immunol.2006 July,120(1):45-56)。表2に示されるように、設計した実験パラメータを44日目に試験する。Fel d1特異的IgE、総IgG、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgAおよびIgM抗体は、感作前(0日目)、遺伝子ワクチン接種時(21日目)、および気管内惹起(42日目)の直前に測定する。抗ヒトIgE反応は、21日目および44日目にチェックし、同様に抗ヒトIgE反応が提示されるかどうかを検査する。実験群間の上述の実験パラメータにおける統計的有意性を決定および比較する。この一連の実験は、非IgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチン接種と比較して、IgE媒介アレルゲン遺伝子ワクチン接種の相対効率を判定し、継続的アレルギー喘息における治療のモデル、およびアレルゲン遺伝子ワクチン接種免疫療法の可能な機序として、気道が関与する確立されたFel d1特異的なアレルギー反応を生理学的および免疫学的に改変する。
【0233】
設計事項:さらに、反復ワクチン接種に関する事項は、確立されたアレルギー反応を治療するために設計される実験において重要となる場合がある。そのため、21日目の単一ワクチン接種が失敗した場合、用量の修正に加えて、28日目および35日目(図2Bにおいて点線矢印で示される)において追加の増進剤ワクチン接種を行い、アレルゲン遺伝子ワクチン接種の効果を高めることを提案する。ヒトIgEはマウスに対して外来タンパク質であるため、ヒトIgEに対するマウス抗体の発生は、最初の投与に続いて起こる可能性が高く、例えば、hFcεRIα結合を阻害し、DNAワクチンのクリアランスを変えることによって、後のワクチン接種の有効性を妨げる可能性がある。したがって、遺伝子ワクチン接種を1回以上行うプロトコルを採用する場合は、2つの代替アプローチのうちの1つを使用して、この考えられる欠陥を回避する。1日目および3日目にヒトIgEを新生マウスにi.p.注射する、という単純かつ有効な新生児耐性誘導プロトコルによって、hFcεRIαマウスにおけるヒトIgEに対する新生児耐性を誘発できる(Wekerle T.,and Sykes,M.2001.Mixed chimerism and transplantation torerance.Annual Review of Medicine.52:35358)。結果として生じるヒトIgE耐性マウスを、1つ以上のIgE媒介Fel d1遺伝子ワクチン接種を採用する実験に使用することができる。代わりに、ノックインされたヒトIgEを有するhFcεRIα Tgマウスを使用する場合もある。それは、ヒトIgEはこれらの動物に対して「自分自身」であるためである。IgE媒介の遺伝子送達を妨げるヒトIgEに対する可能な抗体は、マウス実験に特異的な問題であり、ヒトIgEが「自分自身」であるヒトでは生じない。
【0234】
実施例4.IgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチン接種の生体内免疫賦活および治療効果
アレルギー性疾患の治療としてのIgE媒介遺伝子ワクチン接種を試験するための理想的なマウス系である、ヒトIgEをノックインした、hFcεRIα tg マウス(hIgE+‐hFcεRIα+tg マウス):
アレルゲン遺伝子をIgE‐hFcεRI相互作用を通じてAPCに標的するため、ヒトhFcεRIαを発現するマウスを採用する。しかし、これらのマウスには、ヒトIgEタンパク質‐アレルゲン遺伝子ポリプレックスの完全な生体内試験を行うにあたり2つの短所がある。第1に、EPLのFcε部分は、動物における抗原として機能するため、ワクチン接種を繰り返すと、マウスの抗ヒトエプシロン反応が問題になる。hFcεRIα tgに関する第2の問題は、感作プロトコルの一部として生成された任意のマウスIgEは、マウスhFcεRIαがノックアウトされ、マウスIgEがヒトhFcεRIαにしっかり結合していないため、生体内で機能しないことである。hIgE+‐hFcεRIα+tg マウスなどのマウス内生エプシロン遺伝子の代わりに、ノックインされたヒトIgエプシロン遺伝子を有することにより修正されたhFcεRIα+tgマウスを採用することにより、これらの双方の問題を解決する。hIgE+‐hFcεRIα+tgマウスにおいて、感作はヒトIgE生成と同様に、マウスIgGおよびその他の非IgEイソタイプを引き起こす。これらのマウスにおいて、ヒトIgEは、ヒトIgE‐hFcεRIα相互作用を介して機能する。遺伝子ワクチン接種の一部としてのEPLの反復投与は、ヒトの場合と同様に、EPLのヒトエプシロン部分に対する免疫反応を誘発してはならない。これらの動物は、ヒトエプシロンを「自分自身」としてに発現する。さらなる利点は、ヒトIgEがFcεRIの発現レベルを高める可能性が高いことである。それは、これが、よく説明されている、正のフィードバック効果であるからである(Kinet JP.Annu Rev Immunol 17:931,1999)。これらの動物は、Dr.J‐P Kinetにより生成および提供されている。
【0235】
アレルゲン遺伝子ワクチン接種は、一般に、Th1優位反応の補助として機能するプラスミド骨格に存在するCpGヌクレオチド配列のため、アレルゲンタンパク質により引き起こされるTh2型ではなく、Th1型反応を誘発することが示されている(Roman Mら、Nat Med 3:849,1997、Chatel J Mら、Allergy 58:641,2003)。アレルゲン遺伝子をDCに標的する方法は、従来のアレルゲン遺伝子ワクチン接種よりもさらに強力なTh1優位の免疫反応を誘発すると予想する。ワクチンは、アレルゲンを認識させる上で、プラセボよりも活性であること、またアレルゲン特異的反応の誘発において、対照ワクチン(例えば、同一容量における裸のDNAワクチン)とは異なることが予測される。
【0236】
Aha h1およびGal d1に対してIgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチン接種により誘発される免疫反応プロファイルを特定する(図8実施例3を参照)。
【0237】
hIgE+‐hFcεRIα+tg マウス(4〜6週齢)は、EPL:pCMVの制御によるarahl遺伝子ポリプレックスを用いてi.d.ワクチン接種した。最初に、単一ワクチン接種を付与した。第2および第3ワクチン接種は、2週間の間隔で付与する。
【0238】
hIgE+‐hFcεRIα+tg マウス(4〜6週齢)に、EPL:pFascinの制御によるアレルゲン遺伝子ポリプレックスをi.d.ワクチン接種する(図9の第1および第4群)。最初に、単一のワクチン接種を付与して反応を生じさせ、次に第2および第3ワクチン接種を2週間の間隔で付与する。遺伝子ワクチン接種は、毎週またはそれより頻繁に行う場合が多いが、ここでは特に2週間間隔を選択し、次を付与する前に各ワクチン接種に対する反応を試験できるようにした。「裸のDNA」ワクチン接種(それぞれAra h1およびGal d1の第2および第5群)は、ワクチン対照となる。EPL:Ara h1プラスミドワクチン接種(第3群)は、Gal d1遺伝子ワクチン接種においてアレルゲン特異的対照および背景プラスミド対照となり、逆も同様である(第6群)。空のプラスミド対照群は不要である。マウス1匹に対し、10μgのプラスミドDNAにおけるAra h1およびGal d1ワクチンを、これらの実験においてプロトタイプとして使用するが、これは修正される可能性がある。実験は、すべてのマウスがともにシーケンスを開始し、0、14、28、および42日目に死亡するように設定して、ベースライン、第1、第2、および第3ワクチン摂取の効果をそれぞれ表すものとする。所定の時期に死亡させない動物から血清を採取し、各動物群に関する一連のサンプルを終了まで所持するようにする。
【0239】
抗体反応:
血清を収集し(0、14、28、42および63日目)、ELISAによりAra h1、またはGal d1特異的ヒトIgEおよびAra h1、またはGal dl特異的マウスIgG、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgAおよびIgM抗体すべてを測定する。0日目血清の抗体滴定量を背景対照とすると、14日目は一次反応を反映し、28日目および42日目のレベルは、増進した動物における二次抗体反応を反映する。63日目に抗体反応を観察し、進行した抗体反応が比較的長期に渡って軽減するかどうかを判断する。これらの実験は、各アレルゲンワクチンが液性応答を誘導する能力を定義し、同時にそのレベルおよびイソタイププロファイルを定量する。マウス抗ヒトエプシロンは、結果の解読を複雑にする可能性があるため、標準ELISAによりネズミの抗ヒトエプシロン反応をチェックし、抗ヒトエプシロン反応が、予想どおりhIgE+‐hFcεRIα tgマウスにおいて欠損していることを確認する。IgEではなく、強力なアレルゲン特異的IgG2a(アセスメントとしてIgG2a/IgG1比を使用する)反応は、裸のDNAの場合と比較して、EPL:DNAポリプレックスを使用する群において誘発される。IgG1反応を監視する。Ara h2(23)を接種されたマウスのC3H/HeJ株において生じるように、ワクチン接種により誘発された強力なIgEおよび/またはIgG1反応が予想外に観察された場合、図9に図示されるように、ワクチン接種したマウスにAra h1タンパク質またはGal d1タンパク質により惹起することにより、ワクチン接種が感作プロセスとして作用するかどうかを判定し、実施例5に記載の方法で全身性アナフィラキシ反応を測定する。
【0240】
T細胞反応
EPL:アレルゲン遺伝子ワクチン接種プロトコルによってT細胞反応が誘発されるかを見出すためため、特徴的なTh1/Th2およびT調整応答を反映するキーサイトカイン生成を評価する。図示のとおり、0、14、28および42日目に動物を死亡させ、脾臓およびリンパ節から細胞を採取する。培養した細胞を精製したAra h1またはGal d1タンパク質(10μg/ml)で48時間パルスし、サイトカイン特異的ELISAアッセイおよび定量的実時間RT‐PCRによるサイトカインmRNA発現プロファイルにより測定される、メモリT細胞サイトカイン生成を誘発する(IL‐4、IL‐5、IL‐10、IL‐12、IL‐13、TGF‐βおよびIFN‐γ)。また、ElispotアッセイによりIL‐4(Th2応答指標として)およびIFN‐γ(Th1応答指標として)を生成する細胞の頻度を測定する。これは、サイトカインの総レベルではなく、細胞頻度を提供するためである。
【0241】
実施例5.EPL:アレルゲン遺伝子ワクチンは、アレルゲンに特異的なアレルギー反応の誘導を有効に抑制できる。
【0242】
経口および全身惹起に対する反応性を生じる経口投与による感作
幸いなことに、食物に対するアレルギー反応を見るため、適度に特性化されたいくつかの動物モデルを開発されている。プロトコル1は、LiおよびSampsonの研究に基づく(Li XMら、J Allergy Clin Immunol 106:150,2000)。設計したアレルゲン[ピーナッツアレルギーのための粗ピーナッツ抽出物(CPE)、卵白アレルギーのためのGal d1、および牛乳アレルギーのためのαカゼイン]+コレラ毒素(CT)をアジュバントとして用いて、マウスを胃内(i.g.)感作する。コレラ毒素は、マウスにおいて、粘膜免疫系に関連するアレルギー反応を誘発するため特に有力なアジュバントであることが示されている。また、このプロトコルは、アレルギー抗体だけでなく、経口および全身性惹起に対して、ヒトにおける食物アレルギー反応に類似する臨床反応性を誘発することが示されている。動物をi.g.惹起し、全身性アナフィラキシを誘発する(Li XMら、J Allergy Clin Immunol 106:150,2000、Li XMら、J Allergy Clin Immunol 103:206,1999)。
【0243】
我々は、研究者たちが一般にピーナッツアレルギーに関するこの種の実験にC3H/HeJマウスを使用していることを承知しているが、使用した遺伝子組み換えマウスは、Balb/c背景である。Balb/cマウスは、強いアレルギー抗体反応をもたらすことが知られており、我々は、アレルゲン惹起に対して気道の過敏性および全身アレルギー反応性を有することを示した。しかし、経口感作/惹起プロトコルに困難が生じた場合は、以下の標準的腹腔内(i.p.)感作プロトコル(プロトコル2)を使用することができる。これは、Balb/cマウスにおける全身性惹起に対して感作および反応を誘導することがわかっている(Adel‐Patient Kら、Allergy 60:658,2005、Rebecca J.Dearman and Ian Kimber.Methods 41:91-98.2007)。代わりに、C3H/HeJ株上に戻し交配し、経口惹起に対する反応性を提供することもできる。
【0244】
プロトコル2:全身性惹起に対する反応性を生じるミョウバンを用いたアレルゲンのi.p.投与による卵、牛乳、およびピーナッツ感作
この代替プロトコルは、ミョウバンをアジュバントとして用いるi.p.感作を採用する。これは、ピーナッツアレルギーモデルを含む食物アレルギーに採用されているBalb/cマウスにおける標準的感作プロトコルである(Adel‐Patient Kら、Allergy 60:658,2005、Rebecca J.Dearman and Ian Kimber.Methods 41:91-98.2007)。0日目に、ヒトIgE+‐hFcεRIα+tgマウスを卵、牛乳、またはピーナッツタンパク質で感作し、7日目および14日目にi.p.を増進する。最終アレルゲン治療後、14日目にアレルゲン惹起を行う。一部の実験において、後に動物にアレルゲン増進剤を付与し、アレルギー反応を延長させて、非治療対照におけるアレルギー反応を自然消失することなく、数週間に渡る治療の効果を評価できるようにする。重要なことに、このプロトコルによりネコアレルゲンに感作したマウスは感作状態を維持し、アレルゲン増進剤による惹起が提供されると、アレルゲンに対して臨床的に反応することがわかっている(Terada Tら、Clin Immunol 120:45,2006)。これにより、アレルギー反応を維持する動物におけるIgE媒介のDNAワクチン接種療法の効果を試験するために十分な時間が与えられる。
【0245】
実験計画および方法
i)手順
ヒトIgE+‐hFcεRIα+tgマウス(4〜6週齢、一群につき8匹のマウス)は図10に示されるように4つの群に分けられ、3回のi.d.ワクチン接種を0日目、7日目、および14日目に受ける。図10に示されるEPL:pFascin‐アレルゲン融合Ara hをピーナッツアレルギーの例として、または対照EPL:pFascin‐cDNA3遺伝子ポリプレックス(10μgプラスミドDNA/マウス)として用いる。同一の群設計を卵アレルギーのGal d1、および牛乳アレルギーのαカゼインに適用する。ピーナッツアレルギーの場合、28日目および35日目に、動物および対照をCPE(1mg/マウス)+CT(10μg/マウス)を2回に分けて投与してi.g.感作し、次に第1惹起として、49日目に10mgCPEを2回に分けて経口惹起する。全身アナフィラキシの兆候は、1回目の惹起から約15分後に現れると考えられ、臨床的指標を第2惹起の30分後に評価する。この第1惹起を生き延びたマウスを63日目に再惹起する(図10)。第1i.g.惹起は、増進剤感作として機能するため、63日目における再惹起は、通常、さらに強力な全身性アナフィラキシおよびアレルギー反応を誘発するはずである。ワクチン接種、感作、および惹起(ならびに再惹起)に続き、図10に示されるスケジュールに従って血液サンプルを収集し、アレルゲン特異的体液および細胞免疫/アレルギー反応を評価することにより、アレルゲン特異的免疫/アレルギー応答に対するIgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチン接種の効果を対照との比較で定義する。0日目のサンプルはベースラインであり、28日目のサンプルは、アレルゲン感作前のAra h遺伝子ワクチン接種により誘発された免疫反応を表す。35日目のサンプルは、DNAワクチン接種による一次免疫/アレルギー反応の調節を反映し、49日目および63日目のサンプルは、DNAワクチン接種による二次(または増進された)免疫/アレルギー反応の調節を反映する。第1群から得た実験結果を第2群から得た実験結果と比較し、IgE媒介のアレルゲンワクチン接種の効果を判定し、第3群(擬似ワクチン接種および感作)、および第4群(ワクチン接種および擬似感作)から得た結果は、対照とする。
【0246】
ii)単一Ara h遺伝子ワクチン接種によるピーナッツアレルギー応答の調節
図10に示される第1実験群において、アレルゲン特異的免疫/アレルギー反応に関する単一アレルゲン遺伝子(Ara h1およびGal d1をそれぞれピーナッツアレルギーおよび卵アレルギーのプロトタイプとして使用する)ワクチン接種の効果を試験する。このAra h1遺伝子ワクチン接種は、Ara h1特異的免疫および/またはアレルギー反応を単に調節することが予想されるため、CPEに誘発されたピーナッツアレルギーの全身性アナフィラキシおよびアレルギー反応の臨床的指標は、単一のAra h1遺伝子ワクチン接種により著しく調節されるとは考えられない。そのため、アレルゲン特異的免疫反応反映するパラメータ、特にIgE、IgG1およびIgG2aレベル、および、IL‐4、IL‐5、IL‐10、IL‐13、IFN‐βおよびTGF‐γなどのサイトカイン発現プロファイルを評価する。これらは、Th1/Th2応答を反映する。これらおよびその後の実験では、一般に、特異的な遺伝子製品Ara hまたはGal d1タンパク質ではなく、ピーナッツ抽出(CPE)または卵白タンパク質などの食物を用いて感作する。そうすることにより、いくつかの利点がある。精製タンパク質、例えばAra h1(およびその他のAra h)タンパク質自体は、ピーナッツアレルギー感作自身は、ピーナッツアレルギー感作を誘発するための免疫/アレルゲンとしてCPEほど有力でない場合が多い(Van wijk F,Nierkens Sら、Toxicol Sci 86:333,200580)。次に、食物におけるいくつかのアレルゲン、例えばCPEにおけるAra hタンパク質に対する免疫/アレルギー反応の導入は、特定のアレルゲン遺伝子治療に対する内部抗原特異的制御を提供する。結果として、IgE媒介のAra h1遺伝子ワクチン接種によりもたらされるアレルゲン特異的免疫調節を、評価、および、Ara h2、Ara h3またはAra h6応答に関する予測される効果の欠如と比較できる。さらに、個別のアレルゲンとの臨床反応性について動物を惹起し、アレルゲン特異性を再度示すことができる。Gal d1についても同様であり、この場合、オボアルブミン(Gal d2)を対照とする。
【0247】
iii)複合Ara h遺伝子ワクチン接種によるピーナッツアレルギー応答の調節
図10に示される同一スケジュールに従って、動物に複数のアレルゲン遺伝子(複合Ara h1、Ara h2、Ara h3、およびAra h6)ポリプレックスを3回ワクチン接種し、CPE感作およびCPE惹起する。複合Ara h1、Ara h2、Ara h3、およびAra h6アレルゲンは、ピーナッツにおけるすべてのアレルゲンのうちの大部分(90%以上)を占めるため、この一連の実験により、アレルゲン抗体/サイトカイン応答の調節だけでなく、全身性アナフィラキシの臨床症状を特定することができる。そのため、この実験は、生理的保護のレベルが複合Ara h遺伝子ワクチン接種により達成できるかどうかを試験する。
【0248】
次の実験期間に渡って、関連するアレルゲンに対するヒトIgEおよびマウスIgG1が少なくなり、アレルゲンに応じたTh2偏向のサイトカインプロファイルの生成も減少することから明らかなように、感作が減少することがわかる。各プロトコルに十分な数のマウスを使用し、それらを死亡させて、感作の最後、および2、4週間後のT細胞応答を研究できるようにする。任意の時点で死亡させないマウスからは血清を採取し、個別のマウスに関する一連の連続的抗体測定値を所持するようにする。追加の対照は、EPL:Ara h1を用いたhIgE‐hFcεRIα陰性の同腹子のワクチン接種により得られる。類似対照は、Gal d1実験に使用する。
【0249】
ワクチン接種プロトコルの可能な修正
図10に示されるように、標準的な遺伝子ワクチン接種として、まず10μgプラスミドDNA/マウスi.d.ワクチン接種を1週間の間隔で3回使用する。しかし、感作が完全に撤廃されない限り、キーパラメータである(i)ワクチン用量(1-50μgプラスミドDNA)、(ii)ワクチン接種のタイミング、および(iii)その後の実験におけるワクチン接種の回数を修正し、最大の治療効果を定義する。筋肉内(i.m.)、皮内(i.d.)、または腹腔内(i.p.)注射、経口投与、または遺伝子銃を含むいくつかの経路がDNAワクチン接種に使用されている。計画されたi.d.投与に加えて、i.m.およびi.v.投与経路も特に関心がある。前者は、ヒトワクチン接種および遺伝子治療モデルにおける標準経路であり、後者のi.v.経路はまだ調査されていないが、全身的なワクチン接種を高速で提供できると考えられる。すべての3つの経路はヒトにおいて許容できる。
【0250】
i)血清ヒスタミンレベルおよび中心体温変化を全身性アナフィラキシのパラメータとして使用する。前述のとおり、血清ヒスタミンレベルは、ELISAキットにより測定し、中心体温は、デジタル体温計に連結された肛門プローブを用いて測定する(Zhu Cら、Nat Med 11:446,2005;Terada T,et al.,Clin Immunol 120:45,2006)。
【0251】
ii)全身性アナフィラキシアセスメント:Liらにより説明される評価システムを使用し、アナフィラキシ臨床的指標(症状)を第2惹起投与の30〜40分後に評価した(J Allergy Clin Immunol 106:150,2000):0‐症状なし、1‐鼻および頭部周辺を掻くおよびこする、2‐目および口の腫れ、下痢、毛の誘起、活性低下、および/または呼吸数の増加を伴う活性低下、3‐喘鳴、努力性呼吸、口および尾部周辺のチアノーゼ、4‐刺激後の非活性または震えおよび痙攣、および5‐死亡。症状の評価は盲目法で行う。
【0252】
iii)アレルギー性血管漏洩:2回目の胃内ピーナッツ惹起の直前に、各郡のマウスは、100μL0.5%のEvan青色染色の尾静脈注射を受けた。マウスの足蹠について、上記の染色/抗原投与から30〜40分後の血管漏洩(可視的青色)の兆候を審査した(Liら、J Allergy Clin Immunol 106:150,2000)。
【0253】
iv)PCAアッセイを使用し、IgE依存のアレルギー反応を反映するアレルギー反応(60、61、69、81)を機能的に特定する。Ara h遺伝子をワクチン接種したマウスの血清を連続的に希釈し、背部皮膚への皮内注射(50μl)で感作した。24時間後、200μl食塩溶液における1%のEvan青色染色の存在中、10μgの精製Ara h1タンパク質の尾静脈注射によりマウスを惹起する。アレルゲン惹起の30分後、PCAを皮膚の青色染色部として目視評価する。実験群間の統計的分析のため、青色の点の直径を測定および記録する。血清中のその他の構成要素(例えば、IgG1)ではなく、PCAアッセイにおいてIgEがアレルギー反応に関与することを示すため、血清を56℃で2時間加熱処理し、PCA試験に先立ってIgEの活性を非活性にする(Lyczak JBら、J Biol Chem 271:3428,1996、Zhang Kら、J Allergy Clin Immunol 114:321,2004)。
【0254】
v)マスト細胞脱顆粒:全身性アナフィラキシ中のマスト細胞脱顆粒を耳組織の全身審査により評価する(Lyczak JBら、J Biol Chem 271:3428,1996)。アナフィラキシ関連死の直後に採取したサンプルまたは惹起の40分後、生き延びたマウスから採取したサンプルを固定し、3μmパラフィンまたはグリコールメタクリル樹脂、トルイジンブルー染色部において処理する。脱顆粒マスト細胞は、5つ以上の明らかな染色顆粒を完全に細胞の外に有するトルイジン陽性細胞として定義される。合計200-400のマスト細胞を各耳サンプルに分類する。
【0255】
Ara h1またはGal d1遺伝子ワクチン接種に応答する抗体結果
図10に予定されるように、血清を収集し、抗体レベルを測定する。ピーナッツ(Ara h)または卵アレルゲンGal d1およびGal d2(オボアルブミン)特異的ヒトIgEおよびマウスIgG1、IgG2a、およびIgA抗体をELISAにより測定する。特異的IgEレベルは、遺伝子ワクチン接種の結果を評価するためのキーパラメータであるため、特に注意を払ってAra hおよびGal d1特異的ヒトIgEのレベルを評価する。高レベルのマウスIgGは、ELISA様式でアレルゲンのIgEと競合しうるという事実から、IgE抗Ara h(またはGal d1)アッセイの感度および特異性を改善する必要がある場合、タンパク質G樹脂(Lehrer SBら、J.Immunol.Methods 284:1,2004)またはマウス抗体試薬を用いて血清サンプルを吸収することによりマウスIgGを除去する。上記実験パラメータの統計的有意性を比較する。
【0256】
ワクチン接種プロセスにおいて残留しうる生体内EPLは、hIgE‐hFcεRIαtgマウスの生体内で生成されたアレルゲン特異的IgEの増加測定を障害しない。これはEPLのヒトIgE Fc部分が、抗原(アレルゲン)特異性を持たず、よってコートされたアレルゲンとの結合は予想されないため、またELISAアッセイにおいてアレルゲン特異的ヒトIgE検出を妨げないためである。アレルゲン特異的ヒトIgEの増加測定をさらに保証するため、IgEのCh1ドメインに対する抗ヒトIgE単クローン抗体(Mae 1)(Yamada,T.ら、J Biol Chem 278:32818-24,2003,カリフォルニア州Genentech Inc.のDr.Paul Jardieuから厚意で寄贈)をELISAにおいて検出試薬として採用し、結果を与える。EPLのFcεがCH1ではなく、エプシロンCH2‐CH3‐CH4のみを含むためである(図4)。さらに、PCAアッセイを使用し、IgE滴定量を機能的与え、IgE測定値をELISAからのそれを用いて確認する(上記のPCAアッセイを参照)。
【0257】
Ara hおよびGal d1遺伝子ワクチン接種に対するT細胞結果
(従来あるいは別の)特異的ITによりもたらされるアレルゲン特異的T細胞変化は、アレルギー「耐性」を誘発および維持するために重要な機序であると考えられる。特徴的Th1/Th2応答およびT規制応答を反映するキーサイトカインの生成を評価する。
【0258】
Ara hまたはGal d1遺伝子ワクチン接種で事前処理された動物における臨床結果
アナフィラキシ臨床的指標を使用する標準化された全身性アナフィラキシアセスメントは、臨床反応性の全体評価を提供する。血清ヒスタミンレベルおよび中心体温変化を全身アレルギー反応性の客観的パラメータとして使用する。アレルゲン惹起に続く全身反応性に起因する血管の漏れは、足蹠のEvans青色染色により評価する。全身アナフィラキシ中のマスト細胞脱顆粒は、上記の方法に記載されるように、耳組織の組織学的検査により評価する。
【0259】
実施例6.IgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチンは、確立されたアレルギー性疾患を治療できる。
【0260】
i)単一のAra h遺伝子ワクチン接種による確立されたアレルギー反応の調節
IgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチンが確立されたアレルギー性疾患を治療する能力を試験するため、hIgE‐hFcεRIαtgマウスを食物アレルゲンで感作する(同一のプロトコルは、ピーナッツ、卵、または牛乳アレルギー試験に適用する)。図11に示されるように、第1の実験群において、単一のアレルゲン遺伝子ワクチン接種プロトコル、例えば、Ara h1を採用し、そのアレルゲンとの後の惹起に対する反応性が調節されるかどうかを判定する。図11の下方パネルにリストされる4つのマウス群は、実施例5で使用されるものと同一のプロトコルを使用し、CPE+CTで2回、0日目と7日目にi.g.感作される。2週間後(21日目)、動物は、EPL:pFascin Ara h1ポリプレックス(10μg/マウス)のi.d.ワクチン接種を毎週1回、計3回受ける。図2Bに記載されるものと同一のプロトコルを使用し、マウスはAra h1を用いて49日目に最初のi.g.惹起、63日目に再惹起される。全身性アナフィラキシ臨床症状は、実施例5に記載の方法で記録する。Aha h1抗体およびT応答の効果を評価する。0日目のサンプルをベースラインとして、21日目のサンプルは、Ara h1ワクチン接種に先立って、CEP感作(CTを補助とする)により誘発された免疫/アレルギー反応を表す。28、35、および49日目の血液サンプルは、CPE感作に誘発された免疫/アレルギー反応における第1、第2、および第3のAra h1ワクチン接種それぞれの調節効果を測定する。また、63日目の血液サンプルは、DNAワクチン接種による免疫/アレルギー反応の比較的長期(最終ワクチン接種から1ヶ月)の調節効果を測定する。49日目のi.g.惹起プロセスは、63日目のサンプル測定に対する増進感作としても機能する。第1群の実験結果は、従来の裸のDNAワクチン接種(例えば、第2群)と比較したIgE媒介のアレルゲンワクチン接種の効果を特定し、第3群は、(CPE感作および偽のワクチン接種)ベクター対照、第4群は非感作(偽の感作およびAra h1ワクチン接種)対照である。
【0261】
ii)複合Ara h遺伝子ワクチン接種による確立されたピーナッツアレルギー反応の調節
複合ワクチン接種プロトコルを採用することにより、第2の実験群を行う。例えば、複合Ara h1、Ara h2、Ara h3、およびAra h6遺伝子ワクチン接種を使用し、図12に示されるように、ピーナッツアレルギーを治療する。実生活において、対象は一般に1つ以上のアレルゲンに対して感作されるため、最も関連のあるピーナッツアレルギー遺伝子のプロファイルを使用し、遺伝子ワクチン接種を行って(Ara hl、Ara h2、Ara h3、およびAra h6)(82)、ヒトの場合に最も類似する疾患を修正できるかどうかを判断する。これを行うため、ワクチン接種のためのEPL:Ara Ara h1、Ara h2、Ara h3、およびAra h6ポリプレックスを調製する。この遺伝子療法アプローチの利点の1つは、これらの混合ポリプレックスを容易に組み立てられることである。そのため、4つの個別のpFastin Ara h1、Ara h2、Ara h3、およびAra h6プラスミドを調製し、それらを均等な割合でEPLと混合して複合ワクチン接種ポリプレックスを組み立てさえすればよい。図12の下方パネルに挙げられる4つのマウス群は、実施例5と同一のプロトコルを使用し、CPE+CTを用いて0日目および7日目に2度i.g.感作する。マウスは、EPLと複合されたAra h1、Ara h2、Ara h3、およびAra h6遺伝子を3回、21、28、および35日目にi.d.ワクチン接種し、実施例5に記載の方法で49日目(第1惹起)および63日目(再惹起)にCPE惹起する。免疫/アレルギー反応、および全身ピーナッツアナフィラキシの臨床症状は、実施例5に記載の方法で特定する。ピーナッツ抽出物全体における複数のアレルゲンに感作された動物は、単一アレルゲン遺伝子を受ける動物と比較して、混合したAha hポリプレックスを用いた複合遺伝子ワクチン接種により、全体ピーナッツ惹起から保護される可能性がある。
【0262】
Ara hタンパク質を用いた実験に類似する実験は、優位アレルゲンがGal d1である卵アレルギーを罹患したhIgE+‐hFcεRIα+tgマウスにおいて、EPL:Gal d1遺伝子ワクチンを使用して行うことができる。
【0263】
本発明は、本明細書に図示および記載される実施形態に照らして説明されたが、本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく、その他の特定の方法またはその他の特定の形態において実施されてもよい。したがって、記載の実施形態は、すべての点において、単なる実例であり、制限的でないと考える。よって本発明の範囲は、前述の説明ではなく添付の請求項によって示され、請求項に相当する意味および範囲内に入るすべての変更は、請求の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0264】
(図面の簡単な説明)
【図1】図1は、FcεRI発現抗原提示細胞(APC)に対するIgE媒介の遺伝子標的の図を示す。
【図2】図2Aは、実施例2の実験スケジュールを示す図である。図2Bは、実施例3の実験スケジュールを示す図である。
【図3】図3は、IgE‐PLLおよびIgE‐PRL融合遺伝子の構成を示す図である。PLL DNA(配列番号2)は、60の反復するリジンをコード化し、PRL DNA(配列番号3)は、60の交代するリジンおよびアルギニンをコード化する。下線の配列は、クローン化に使用される制限部位である。
【図4】図4は、EPL融合タンパク質の構成、発現、および特性化を示す図である。図4Aは、EPL融合タンパク質の構成を示す図である。図4Bは、天然(非還元)および還元状態におけるEPL融合タンパク質のウェスタンブロットを示す図である。図4Cは、プラスミドに対する様々なタンパク質のゲル遅延分析を示す写真である。図4Dは、EPLによるプラスミドの結合におけるタンパク質濃度の影響に関するゲル遅延分析である。図4Eは、EPLによるプラスミドの結合における核酸濃度の影響に関するゲル遅延分析である。図4Fは、3D10細胞上で発現されたFcεRIとEPL‐DNAとの結合に関するFACS分析のグラフである。図4Gは、Ku812細胞上で発現したFcεRIへのEPL‐DNAの結合に関するFACS分析のグラフである。図4Hは、EPL:DNA複合体を用いた受身皮膚アナフィラキシ試験後の遺伝子組み換えマウスの皮膚の写真である。
【図5】図5Aは、ピーナッツアレルギーのヒト患者から得た血清をマウスに投与し、精製したAra h1抗原で誘発した後の遺伝子組み換えマウスの皮膚の写真である。図5Bは、ピーナッツアレルギーであるヒト患者の市販の血清をマウスに投与し、精製したAra h1 抗原で誘発した後の遺伝子組み換えマウスの皮膚の写真である。
【図6】図6は、Ara h1を例として使用するアレルゲン遺伝子ワクチン接種プラスミドの構造を示す図である。
【図7】図7は、tat(配列番号4)、NLSペプチド(配列番号5)またはtat‐NLSペプチド(配列同定番号6)配列が組み込まれた修飾EPL構造の図である。
【図8】図8は、EPL:アレルゲンDNAプラスミドポリプレックスの生体内での効果を試験するための実験計画の略図である。
【図9】図9は、実施例4のプロトコルの略図である。
【図10】図10は、実施例5のプロトコルの略図である。
【図11】図11は、実施例6のプロトコルの略図である。
【図12】図12は、実施例6に記載される複合Ara h1遺伝子ワクチン接種のプロトコルの略図である。
【図13】図13は、ヒトIgE重鎖定常領域をコード化するアミノ酸配列を示す(配列番号1)。
【図14】図14は、ヒトIgE重鎖定常領域のヌクレオチド配列を示す(配列識別番号7)。
【図15】図15は、ヒトIgE重鎖定常領域のCH2‐CH3‐CH4部分のアミノ酸配列を示す(配列番号8)。
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究または開発に関する明細書
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与された助成金No.AI15251の下、政府の支援を受けて行われた。当政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
技術分野
本発明は、抗原提示細胞(APC)上のIgEレセプタ(FcεR)を標的とし、APCに特異的な調整要素を提供してDNAの発現を促進することによって媒介されるAPCにおいて、DNAワクチンを集中および発現する新規アプローチを対象とする。そのような改良DNAワクチンは、IgE媒介のアレルギー性疾患およびその他の疾患、例えば、自己免疫疾患、ウイルス性疾患などの感染症、およびDNAワクチン接種が有益な効果を持つことが予想される癌の管理において有用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
免疫グロブリンレセプタ(Fcレセプタとも呼ばれる)は、免疫グロブリンの定常領域を結合する細胞表面レセプタであり、抗原結合以外の様々な免疫グロブリン機能を媒介する。IgE分子のFcレセプタは、多くの細胞型の免疫系で見られる(非特許文献1)。現在、IgEに対して2つの異なるレセプタが知られている。IgEは、抗体として複数鎖高親和性レセプタFcεRI、および低親和性レセプタFcεRIIを通じて、その生物学的反応を媒介する。マスト細胞、好塩基球、樹状細胞、単球、マクロファージ、およびランゲルハンス細胞の表面に発現する高親和性レセプタFcεRIは、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリに属し、マスト細胞および好塩基球においてα鎖、β鎖、および2つのジスルフィド結合γ鎖(αβγ2)、また、樹状細胞、単球、マクロファージ、およびランゲルハンス細胞においてαγ2構造から成る四量体構造を有する(非特許文献2)。これらは、レセプタ発現およびシグナル伝達に必要である(非特許文献3)。レセプタのα鎖は、IgE重鎖の第3定常領域の遠位と相互作用する。ヒトFcεRIとの結合に関与するヒトIgEの特異的アミノ酸は、Arg‐408、Ser‐411、Lys‐415、Glu‐452、Arg‐465、およびMet‐469を含むことが確認されている(Presta らJ.Biol.Chem.269:26368‐73(1994))。相互作用は、約1010M−1の結合定数をもって、極めて特異的である。
【0004】
好酸球、白血球、Bリンパ球、および血小板を含む炎症細胞の表面に現れる、低親和性FcεRIIレセプタ(CD23)は、免疫グロブリンスーパーファミリから生じていないが、いくつかの動物レクチンとの、かなりの相同性を有し(Yodoi ら、Ciba Found.Symp.,147:133‐148(1989))、細胞質内NH2末端を持つ膜貫通鎖で構成されている。現在、FcεRIIは2つの形態(FcεRIIaおよびFcεRIIb)を有することが知られており、それらは、双方とも、クローン化および配列決定されている。それらは、N末端細胞質領域のみが異なり、細胞外領域は同一である。サイトカインIL‐4による誘導の際に、FcεRIIaは、通常、B細胞上で発現するが、FcεRIIbは、T細胞、B細胞、単球、および好酸球上で発現する。
【0005】
高親和性IgEレセプタFcεRIを通じ、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、重度の食物アレルギー、慢性蕁麻疹および血管性浮腫を含む一連の急性および慢性アレルギー反応、およびハチ刺されまたはペニシリンアレルギーなどに起因するアナフィラキシー・ショックの重篤な生理的状態において、IgEは重要な役割を果たす。マスト細胞および好塩基球の表面上でFcεRIに特異的に結合した抗原に対する多価抗原(アレルゲン)の結合は、複雑な一連のシグナル伝達事象を促し、結果的に急性および晩期アレルギー反応に寄与するホスト血管作用性および前炎症性メディエータを放出する(Metcalfeら、Physiol.Rev.77:1033‐1079(1997))。
【0006】
Bリンパ球の表面で見られる低親和性IgEレセプタFcεRIIの機能は、FcεRIの機能に比べ、十分に確立されていない。重合状態において、FcεRIIはIgEを結合し、この結合は、B細胞により生成される抗体の型(クラス)を制御する働きをしている可能性がある。
【0007】
マクロファージ/単球、血液樹状細胞(DC)、濾胞DC(FDC)、ランゲルハンス細胞(LC)、マスト細胞、および活性化B細胞を含む、ヒト抗原提示細胞(APC)は、FcεRIおよび/またはFcεRIIを特異的に発現する。IgE Dependent Antigen Focusing(IgE‐DAF:IgE依存性の抗原集中)経路を介してAPCにより効率的に抗原を補足し、B細胞に直接提示するか、または抗原を処理およびT細胞に提示して高い免疫反応を引き出すことができることが証明されている。
【0008】
FcεRIを含む末梢血樹状細胞に対する抗原‐IgE複合体の標的は、IgEの存在なしに抗原に対する樹状細胞の暴露後に引き起こされる反応よりもはるかに強力な抗原特異的T細胞反応を生じることが示されている(Maurerら、1995 J.Immunol.154:6258、Maurerら、1998,J.Immunol.161:2731)。FcεRIを介して樹状細胞によって摂取された抗原は、MHC含有区分に効率よく取り込まれる。そこで抗原は処理され、カテプシンS依存性経路を通じてMHC上に取り込まれる(Maurerら、1998 J.Immunol.161:2731)。またFDC、表皮ランゲルハンス細胞、皮膚DCといった他の種のDCは、FcεRIを発現し、これらの種のAPC上に発現したFcεRIは、IgE‐DAFおよび特定の環境および特別な位置における提示によって重要な働きをすると考えられている(Mudde、1990 Immunol Today 11:440)。例えば、FDCにおける抗原のIgE媒介による捕捉および提示は、抗原をその表面上に長期間維持するFDCの能力によって、長期に渡る免疫反応、および特殊な局在化およびリンパ様組織の胚中心におけるT細胞との相互作用を提供する可能性がある機序である(Muddeら、1990 Immunol Today 11:440)。そのようなIgE‐DAF機序は、所定の抗原の濃度が、従来の抗原捕捉および提示経路を通じて効果的に提示されうる濃度よりも低い場合に特に重要である。大部分のリガンド‐レセプタ相互作用より2〜3ログ高い、IgEのFc領域に対するFcεRIの極めて高い親和性(10−10〜10−11L/M範囲のKd)が、この相互作用が抗原提示の強化において特別な位置を占める理由のようである。
【0009】
またFcεRII(CD23)B細胞により媒介されるIgE‐DAFの研究も、IgE媒介の抗原捕捉と、それに続く処理および提示が、抗原に特異的なIgEがない場合より2〜3ログも効果的であることを示す(Muddeら、1990 Immunol Today 11:440、Kehryら、1989 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7556、Pirronら、1990 Eur.J.Immunol 20:1547)。抗原に特異的なIgGが同様の効果を示さず、IgE‐DAFがバイスタンダー抗原を提示しなかったため、そのようなIgE媒介による抗原提示活性の強化は、IgE依存およびIgE特異的であることが示された(Saxonら、2001 The Allergic Response in Host Defense(Clinical Immunology、Rich R.R.ら編、第2版内、 pp451))。FDCなど一部の種類のAPCは、両種のFcεRを発現するため、FcεRIおよびFcεRIIの両方を通じて抗原を捕捉および提示できるようである(Muddeら、1990 Immunol Today 11:440、Saxonら、2001 The Allergic Response in Host Defense(Clinical Immunology、 Rich R.R.ら編、第2版内、pp451))。
【0010】
アレルギー反応を制御する細胞および分子機序、および改善された治療に関する理解の進展にも関わらず、アレルギー性疾患、特に喘息および重度の食物アレルギーの発生率は、開発国および発展途上国の両方において近年劇的に増加している(Beasleyら、J.Allergy Clin.Immunol.105:466‐472(2000)、Peat and Li,J.Allergy Clin.Immunol.103:1‐10(1999)、Maら、J Allergy Clin Immunol.112:784‐8(2003))。
【0011】
高親和性IgEレセプタFcεRIを通じて、IgEは免疫反応において重要な役割を果たす。抗原に特異的なIgE/FcεRI経路を介した抗原(つまりアレルゲン)によるマスト細胞および好塩基球の活性によって、アレルギー反応に寄与するホスト血管作用性および前炎症性メディエータ(つまり脱顆粒)が放出される(Oliverら、Immunopharmacology 48:269‐281(2000)、Metcalfeら、Physiol:Rev.,77:1033‐1079(1997))。これらおよびその他の生化学的事象は、ヒスタミンなどの炎症性メディエータの高速分泌につながり、結果として局所的組織炎症、血管拡張、血管および粘膜透過性の増加、および追加の好塩基球およびマスト細胞を含む他の免疫系細胞の局所的回復などの生理反応を生じる。これらの反応は、適度であれば寄生虫およびその他の微生物に対する免疫において有益に働く。しかし、過剰な場合、この生理反応によってI型過敏性としても知られるアレルギーの多様な病理状態が生じる。
【0012】
アレルギーは、幅広い一連の状態および関連症状を呈し、それらは軽度、慢性、急性、および/または命にかかわる可能性がある。これらの様々な病状は、例えば、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、重度の食物アレルギー、慢性蕁麻疹および血管性浮腫、ならびに重篤なアナフィラキシー・ショックの生理状態である。多種多様な抗原は、アレルゲンとして作用することが知られており、アレルゲンへの暴露がこれらのアレルギー性病状をもたらす。一般的なアレルゲンは、ハチ刺され、ペニシリン、様々な食物アレルギー、花粉、動物タンパク質(特にイエダニ、ネコ、イヌ、およびゴキブリ)、および真菌アレルゲンを含むが、それらに限定されない。アレルゲンに対する最も重い反応は、気道狭窄およびアナフィラキシー・ショックに至る可能性があり、どちらも致死的状態となる可能性がある。アレルギー反応を制御する細胞および分子機構に関する理解の進歩、および改善された治療にも関わらず、アレルギー性疾患、特にアレルギー性喘息の発生率は、開発国および発展途上国のいずれにおいても近年劇的に増加している(Beasleyら、J.Allergy Clin.Immunol.105:466‐472(2000)、Peat and Li,J.Allergy Clin.Immunol.103:1‐10(1999))。そのため、アレルギー性疾患の治療法を開発する強い必要性がある。
【0013】
アレルギー性喘息は、遍在する環境アレルゲンへの暴露によってもたらされる状態であり、過敏な個人において炎症反応および上気道の狭窄を生じる。通常、軽度の喘息は、大部分の患者において、比較的少量の吸入コルチコステロイド剤によって制御することができるが、中度の喘息は、長時間作用する吸入β拮抗剤またはロイコトリエン阻害剤の追加投与によって管理される。重度の喘息の治療は、依然として重大な医療上の問題である。さらに、アレルギーの治療に現在使用されている治療薬の多くは、深刻な副作用をもたらす。現在臨床で使用されている抗IgE抗体(rhuMAb‐E25,Genentech,Inc.)および他の実験的治療(例えば、IL‐4拮抗薬)は、有望な結果を示しているが、喘息、重度の食物アレルギー、慢性蕁麻疹および血管性浮腫などのアレルギー性疾患を管理する追加の治療法および薬剤を開発する必要がある。
【0014】
アレルギー性疾患は、例えばアレルゲンをベースとするワクチン接種により治療できる。ここでは漸増用量のアレルゲンが注射によって何年も投与される。このアプローチは、費用と時間がかかり、多くのアレルギー症状において効果に乏しいか、または効果がなく、深刻な副作用をもたらし、死亡に至る場合もある。アレルギー性疾患の治療に対するアプローチの1つは、アレルゲンをベースとした免疫療法の使用によるものである。この方法は、抗原全体を「アレルギーワクチン」として使用し、相対的なアレルギー耐性の状態を誘導することが評価されている。このアレルギー治療法は、しばしば「脱感作」または「減感作」療法と呼ばれる。この方法では、一般に注射によって、漸増用量のアレルゲンを長期(しばしば、数ヶ月または数年)に渡り対象に投与する。この治療法の作用機序は、IgG抑制抗体の誘導、マスト細胞/好塩基球反応性の抑制、T細胞反応の抑制、T細胞アネルギーの促進、および/またはクローン除去を含み、長期的にアレルゲンに特異的なIgEのレベルを減少すると考えられる。しかし、このアプローチの使用は、多くの場合、有効性の乏しさ、および全身性および命にかかわる可能性があるアナフィラキシ反応を誘発する(ここでは、アレルゲンの臨床投与は、抑制を必要とする重度のアレルギー反応を誘導する)リスクを含む、深刻な副作用により妨げられる。(TePasら、Curr.Opin.Pediatrics 12:574‐578[2000])。
【0015】
この方法の改良版では、少量のアレルゲン分子を使用する。ここで、少量(つまりペプチド)は、アレルギー反応を調節するT細胞の免疫優勢エピトープを含むと推定される。これらのアレルゲン部分を使用する免疫耐性療法は、ペプチド療法とも呼ばれ、一般に注射によって、漸増用量のアレルゲンペプチドを対象に投与する。この治療の作用機序は、T細胞応答の抑制、T細胞アネルギーの促進、および/またはクローン削除を含むと考えられる。ペプチドは、アレルギー性(IgE)抗体にではなく、T細胞にのみ結合するよう設計されるため、このアプローチを使用することにより、治療に対するアレルギー反応を誘発しないことが望まれた。残念なことに、これらのペプチド療法の試行は失敗に終わっており、治療に対応してアレルギー反応がしばしば見られる。これらのペプチド療法の開発は、概ね中断されている。
【0016】
アレルギー反応は、Th2型免疫反応と強く関連する。歪んだTh2反応をバランスの取れた反応に調整することが、喘息を含むアレルゲン免疫療法疾患の主な目的である。この目的を達成するため、タンパク質をベースとしたアレルゲン免疫療法が広く臨床で使用されている。しかし、そのようなアレルゲン免疫療法の有効性は変化しやすく、長期(数年)の治療が必要である。さらに重要なことは、アレルゲン免疫療法が局所および全身性のアレルギー反応を予期せず引き起こす場合がある。アレルゲン免疫療法がアレルギー反応を引き起こすかどうかを予測する確実な方法はなく、免疫療法は、重度のアレルギー性喘息、およびその他の命にかかわるアレルギー症状において特に危険となる可能性がある。
【0017】
患者へのアレルゲン遺伝子の投与は、アレルギー免疫療法に対する有効なアプローチであることが示されている(Raz,E.ら、1996.,Proc Natl Acad Sci USA.93:5141、Hsu,C.Hら、(1996)Nat Med.2:540、Hsu,C.H.ら、(1996)Int Immunol.8:1405、Lee,D.L.ら、(1997)Int Arch Allergy Immunol.113:227、Slater,J.E.ら(1998),J Allergy Clin Immunol.102:469.、Li,X.ら(1999),J Immunol.162:3045;Toda,M.ら(2000).Immunology.99:179、Maecker,H.T.ら(2001).J Immunol.166:959、Jilek,S.ら(2001)J Immunol.166:3612:Hochreiter,R.ら(2001),Int Arch Allergy Immunol.124:406、Adel−Patient,K.ら(2001),Int Arch Allergy Immunol.126:59、Peng,H.J.ら(2002),Vaccine.20:1761、Bauer,R.ら(2003)Allergy.58:1003、Wolfowicz,C.B.ら(2003)Vaccine.21:1195、Jacquet,Aら(2003)Clin Exp Allergy.33:218、Chatel,J.M.ら(2003)Allergy.58:641、Sudowe,S.ら(2003)Mol Ther.8:567、Toda,M.ら(2002)Eur J Immunol.32:1631、Hochreiter,R.ら(2003)Eur J Immunol.33:1667、Roy,K.,ら、1999.Nat Med.5:387、Chew,J Cら、2003.Vaccine.21:2720、Sudowe,S.ら、2002.Gene Ther.9:147、Ludwig−Portugall,Iら、2004.J Allergy Clin Immunol.114:951、Sudowe,S.ら、2006.J Allergy Clin Immunol.117:196‐203)。
【0018】
アレルゲン遺伝子ワクチン接種は、安全かつ有効にアレルゲン特異的IgEの生成を抑制し、Th2反応を抑え、Th1反応を相互に強化することが示されているため、安全上の懸念および有効性の観点から、アレルゲン特異的免疫療法のタンパク質をベースとした免疫療法プロトコルに対する有望な代替となる。有効な場合、アレルゲンワクチン接種によって、Th2反応およびIgE生成の抑制、およびIFN‐γ、IgG2aおよびTh1反応の強化を含むバランスの取れたTh2/Th1反応が得られている(Darcan,Yら、Vaccine 23:4203)。さらに、アレルゲン遺伝子をベースとするワクチン接種は、肺などのアレルギー性炎症部位におけるマスト細胞の数を低減させることができた(Masuda K.(2005).Vet Immunol Immunopathol.108:185)。アレルゲン遺伝子は、裸のプラスミドDNAとして、筋肉内または皮内注射、遺伝子銃によるバイオリスティックトランスフェクション、またはプラスミドDNA‐ポリマー複合体として経口投与を含む様々な経路で投与されている。注射によるDNA免疫付与は、特定のIgE生成の進行を抑制する効果があることが報告されている。反対に、アレルゲンをコード化するベクターを用いたDNAワクチン接種が、既に確立されているIgE免疫反応を抑える能力については議論の余地がある。有効なアレルゲン遺伝子療法の主な障害は、アレルギー性疾患モデルにおけるDNA組み換えおよび発現の効率が乏しいことである。
【0019】
自己免疫疾患
米国人口の20%程が何らかの自己免疫疾患を有すると推定される。自己免疫疾患は、女性において不均衡な発現を呈し、自己免疫疾患の罹患者の75%程が女性であると推定される。自己免疫疾患の一部形態は個々には稀だが、関節リウマチおよび自己免疫性甲状腺炎などの一部疾患は、人口において著しい罹患率を占める(Rose and MacKay(Eds.),The Autoimmune Diseases,Third Edition,Academic Press[1998])。
【0020】
自己免疫疾患は、体が自己反応性T細胞およびB細胞を免疫レパートリーから排除できないことにより生じ、結果として、対象自身の生理機能に起因する分子に対する免疫反応を識別および誘導できるB細胞生成物(すなわち自己反応性抗体)、ならびにT細胞を循環させる。特定の自己免疫疾患は、一般に器官特異的(すなわち細胞型特異的)または全身性(すなわち非器官特異的)として分類できるが、一部の疾患は、この一連の分類の両端の側面を示す。器官特異的疾患は、例えば、Hashimoto甲状腺炎(甲状腺)およびインシュリン依存性糖尿病(膵臓)を含む。全身性疾患の例は、関節リウマチおよび全身性エリテマトーデスを含む。自己免疫反応は、体の任意の器官または組織に対して生成されうるため、自己免疫疾患は、多くの兆候と症状を示す。さらに、血管が、自己免疫性血管炎に見られるような自己免疫発作の標的である場合、すべての器官が関与する可能性がある。自己免疫疾患は、軽度から命にかかわるもの、急性から慢性、および再発するものまで幅広い重篤度を示す(Rose and MacKay(編),The Autoimmune Diseases,Third Edition,Academic Press[1998]、およびDavidson and Diamond,N.Engl.J.Med.,345(5):340‐350[2001])。
【0021】
一部の自己反応性抗原(すなわち自己抗原)の分子識別は、すべてではないが、一部の自己免疫疾患において既知である。自己免疫疾患の患者は、複数種の自己反応性抗体を有する場合と、逆に複数の自己免疫疾患状態において単一種の自己反応性抗体が観察される場合があり、このような疾患の不規則な性質によって、自己免疫疾患の診断および研究は困難になる(Mocciら、Curr.Opin.Immunol.,12:725‐730[2000]、およびDavidson and Diamond,N.Engl.J.Med.,345(5):340‐350[2001])。さらに、自己反応性抗体またはT細胞は、個人において提示される可能性があるが、疾患またはその他の病理の兆候をまったく示さない。そのため、多くの自己抗原の分子識別が知られているが、それらの自己抗原の正確な病因的役割は、一般に不明のままである(明確な例外は、例えば、重症筋無力症、自己免疫甲状腺疾患、多発性硬化症、および糖尿病)。
【0022】
自己免疫疾患の治療は存在するが、各方法にはそれぞれ特定の短所がある。自己免疫疾患の既存の治療は、一般に2つの群に分類できる。最初の、最も重要であル群は、一般に患者に欠けているホルモンまたはその他の成分を置換することによって、生理学的欠陥を補う治療である。例えば、自己免疫性糖尿病は、インシュリンの投与によって治療することができ、自己免疫性甲状腺疾患は、甲状腺ホルモンを付与することによって治療される。他の疾患の治療は、免疫性血小板減少における血小板などの様々な血液成分の置換、または薬物(例えば、エリスロポエチン)の使用を含み、免疫性貧血における赤血球の生成を促す。一部の場合、例えばループス腎炎および慢性関節リウマチにおいて、組織移植または機械的代用が可能な治療オプションとなる。あいにく、これらの種類の治療は、疾患症状を単に緩和させるだけで、根本的な自己免疫性病状、および様々な疾患に関連する合併症の進行を是正しないため最適ではない。根本的な自己免疫活性は依然として存在するため、罹患組織、組織移植、または置換タンパク質は、同様の免疫変性に陥りやすい。
【0023】
プロフェッショナルAPCとしてのDCは、すべてのDNA送達方法において、トランス遺伝子に特異的な免疫反応の開始に重要である(Takashima A.and Morita,A.(1999)J Leukoc Biol.66:350)。しかし、アレルゲン遺伝子ワクチン接種に関する現在の遺伝子導入方法のうち、DCに対するDNA遺伝子を特異的に標的とするものはない。結果としての、これらのアプローチの低い効率性は、ワクチン遺伝子のDCへの送達効率に関連していると思われる。
【0024】
一側面において、本発明は、DCに対してアレルゲン遺伝子を特異的に標的とするたの、アレルゲン遺伝子ワクチン接種の効率を高めるより良い方法を対象とする。IgEとFcεRIとの間の極めて高い親和性相互作用は、そのような効率の良いアレルゲンIT用アレルゲン遺伝子送達プラットフォームの開発に利用できる固有の特徴を提供する。そのような可能性は、アレルギー患者のAPC、とりわけDCおよびランゲルハンス細胞において、非アレルギー性個人のFcεRIよりはるかに高いレベルのFcεRIを発現するため、アトピー患者に対するアレルゲン遺伝子ベースのITに特に好適である(Mudde,G.C,Hansel,T.T.,and van Reijsen,F.C.(1990).Immunol Today.11:440、Haas,N.ら(1992).Acta Derm Venereol.72:271、Grabbe,J.ら(1993).Br J Dermatol.129:120、Haas,N.ら(1993)Exp Dermatol.2:157、Maurer,D.ら、(1994)J.Exp Med.179:745、Allam,J.P.ら(2003)J.Allergy.Clin.Immunol.112:141、Bieber Tら(1992)J Exp Med.175:1285)。この固有の特徴により、アレルギー患者におけるアレルゲンワクチン接種に対して、DCを特異的に標的とするIgE媒介のアレルゲン遺伝子導入をはるかに効率よく実現できることを保証する。そのため、現在の提案は、ヒトにおけるアレルゲン遺伝子ワクチン接種の成功利用に対する主要な障害を克服するように意図されている。
【0025】
本発明の目的は、抗原提示細胞(APC)上のIgEレセプタ(FcεR)を標的とし、APCに特異的な調整要素を提供してDNAの発現を促進することによって媒介されるAPCにおいて、DNAワクチンを集中および発現する改良ワクチンを提供することである。そのような改良DNAワクチンは、IgE媒介のアレルギー性疾患およびその他の疾患、例えば、自己免疫疾患、ウイルス性疾患などの感染症、およびDNAワクチン接種が有益な効果を持つことが予想される癌の管理において有用である。
【非特許文献1】Fridman,W.,FASEB J,5(12):2684‐90(1991)
【非特許文献2】Adamczewski,M.,and Kinet,J.P.,Chemical Immun.,59:173‐190(1994)
【非特許文献3】Tunon de Lara,Rev.Mal.Respir.,13(1):27‐36(1996)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0026】
発明の要約
本発明は、抗原提示細胞(APC)上のIgEレセプタ(FcεRs)を標的とし、APCに特異的な調整要素を提供してDNAの発現を促進することによって媒介されるAPCにおいてDNAを集中および発現するための新規ワクチン、およびそのような化合物、組成、およびそれらを含む製品を使用する方法を提供する。また本発明は、免疫媒介性疾患の予防または治療に好適な組成および方法を提供する。
【0027】
本発明の一側面は、核酸結合剤と機能的に連結される天然IgEレセプタに結合可能なIgEペプチドを含む、DNAワクチンを樹状細胞に送達するための組成に関する。
【0028】
本発明の別の側面は、DNAワクチンに直接または間接的に連結される核酸結合剤に機能的に連結されるIgEレセプタに結合可能なIgEペプチドを含む組成を対象とする。
【0029】
本発明の別の側面は、天然Fceレセプタを結合可能なIgE断片に機能的に接続されるアレルゲンをコード化する核酸を含むワクチンに関する。一実施形態において、核酸はIgE断片に間接的かつ機能的に接続される。
【0030】
別の実施形態において、IgE断片またはペプチド配列は、好ましくは、配列番号1のCH2‐CH3‐CH4ドメインアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、さらに好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態において、IgE断片またはペプチド配列は、天然ヒトIgE定常領域のCH2およびCH3ドメインの少なくとも一部を含む。代替的には、IgE断片またはペプチド配列は、厳しい条件下で、配列番号1のIgE重鎖定常領域ヌクレオチド配列の相補体の少なくとも一部に対して交配する核酸によりコード化されるアミノ酸配列を含む。
【0031】
本発明の一側面において、核酸は、核酸結合剤によりIgE断片に接続される。一実施形態において、核酸結合剤は、反復リジン、反復リジンおよびアルギニン、スペルミンまたはスペルミジン、あるいはポリエチルイミンポリマーから成る群から選択される。別の側面において、核酸結合剤はポリ‐I‐リジンを含む。別の側面において、核酸結合剤はポリ‐1‐リジン‐アルギニンを含む。本発明の別の側面において、IgE断片は、共有結合、ジスルフィド結合、またはアビジン/ストレプタビジン結合から成る群から選択される結合によって前記核酸結合剤に付加される。
【0032】
別の側面において、IgE断片またはペプチドは、IgEのCH2‐CH3‐CH4ドメイン、またはIgEのCH1‐CH2‐CH3‐CH4ドメインを含む。一実施形態において、IgE断片またはペプチドはヒト型である。
【0033】
すべての側面において、DNAワクチンまたはアレルゲンをコード化する核酸は、樹状細胞プロモータに操作可能に連結されてもよい。樹状細胞プロモータは、ファシンプロモータであってもよい。一実施形態において、核酸はベクターを含む。
【0034】
別の実施形態において、アレルゲンDNA配列は、表1に記載のアレルゲン群から選択されるアレルゲンをコード化する。一実施形態において、アレルゲンDNAはFel d1である。別の実施形態において、アレルゲンDNAは、ピーナッツのAra h1に対するアレルゲンDNAである。その他の実施形態において、DNAは主要なピーナッツアレルゲン(Ara h1‐6)をコード化するDNAの混合物を含む。
【0035】
その他の好ましい実施形態において、抗原核酸配列は、抗原核酸配列の少なくとも一部と少なくとも90%の同一配列を含む。さらに別の好ましい実施形態において、抗原核酸配列は、抗原をコード化する核酸分子の相補体の少なくとも一部に対し、厳しい条件下で交配する核酸配列を含む。
【0036】
別の実施形態において、DNA配列は、感染性因子に由来する免疫原のDNA配列である。別の実施形態において、DNA配列は、癌細胞に由来する免疫原のDNA配列である。別の実施形態において、DNA配列は、自己抗原などの自己アンチゲンである免疫原である。
【0037】
別の実施形態において、自己抗原DNA配列は、表2に記載の自己抗原群から選択される自己アンチゲンをコード化する。一部の好適な実施形態において、自己抗原DNA配列は、関節リウマチ自己抗原、多発性硬化症自己抗原、または自己免疫性I型糖尿病自己抗原、およびその一部から成る群から選択される自己抗原配列をコード化する。その他の好適な実施形態において、自己抗原DNA配列は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、αβ‐クリスタリン、ミエリン関連糖タンパク質、Po糖タンパク質、PMP22、2’,3’‐環状ヌクレオチド3’‐リン酸ヒドラーゼ(CNPase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インシュリン、64kD島細胞抗原(IA‐2、ICA512とも呼ばれる)、フォグリン(IA‐2β)、II型コラーゲン、ヒト軟骨gp39(HCgp39)、gp130‐RAPS、およびその一部から成る群から選択される自己抗原をコード化する。
【0038】
その他の好適な実施形態において、自己抗原核酸配列は、自己抗原核酸配列の少なくとも一部との少なくとも90%の同一配列を含む。さらに別の好適な実施形態において、自己抗原核酸配列は、自己抗原をコード化する核酸分子の相補体の少なくとも一部に対して厳しい条件下で交配する核酸配列を含む。
【0039】
本発明の別の側面は、本発明のワクチンを薬学的に許容しうる材料との混合で含む薬物組成である。
【0040】
本発明の別の側面は、容器、容器内の本発明のワクチン、および容器上のラベルまたは添付文書、あるいは容器に関連するラベルまたは添付文書を含む製品である。一実施形態において、ラベルまたは添付文書は、IgE媒介の生物学的反応の治療に関する説明書を含む。一実施形態において、生物学的反応はIgE媒介の過敏反応である。一実施形態において、ラベルまたは添付文書は、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、重度の食物アレルギー、慢性蕁麻疹、血管浮腫、およびアナフィラキシー・ショックから成る群から選択される状態の治療に関する説明書を含む。
【0041】
本発明の別の側面は、IgE媒介の生物学的反応に関連する状態を予防または治療する方法であり、本発明のワクチンの有効量を必要とする対象に投与するステップを含む。一実施形態において、対象はヒト患者である。一実施形態において、状態はIgE媒介の過敏反応である。一実施形態において、状態は、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、重度の食物アレルギー、慢性蕁麻疹、血管浮腫、およびアナフィラキシー・ショックから成る群から選択される状態である。
【0042】
別の側面において、本発明は、本発明の少なくとも1つのワクチンを対象に投与するステップを含む、対象におけるI型過敏反応に起因する症状を治療または予防する方法を提供する。別の実施形態において、I型過敏反応は、アナフィラキシ反応である。本方法の別の実施形態において、予防されるI型過敏症状は、アナフィラキシ反応を含む。
【0043】
本方法の様々な実施形態において、ワクチンは、生物学的反応の開始前、または生物学的反応中に対象に投与される。
【0044】
本発明のワクチンは、その他のワクチンまたは生物学的反応修飾因子の局所または全身使用などの治療とともに投与されてもよいことを意図している。
【0045】
本発明のこれらおよびその他の側面は、以下の詳細記述および添付の図面を参照することによりさらに明らかとなる。しかし、当然のことながら、本明細書に開示される特定の実施形態に対して、その本質的な精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更、修正、および置換を行ってもよい。また図面は、本発明の典型的な実施形態の例示および象徴を意図し、その他の例示されない実施形態も本発明の範囲内であると理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
発明の詳細な説明
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術的および科学的用語は、本発明が属する当該技術分野に精通する者によって一般に理解される意味と同意である。
【0047】
当外技術分野に精通する者は、本明細書に記載の方法および材料に類似または相当し、本発明の実施に使用可能な多くの方法および材料を認識するであろう。実際に、本発明は決して本明細書に記載の方法および材料に限定されない。本発明の目的で、以下の用語が定義される。
【0048】
定義
「機能的に接続される」という用語は、本明細書に記載のワクチンに含まれる核酸およびIgE断片に関連する場合、核酸が転写される能力を保持し、IgE断片がそのレセプタに結合する能力を保持することを示すために使用される。そのため、核酸配列に接続された後、IgE断片は天然の高親和性IgEレセプタ、例えば、天然ヒトFcεRI、または天然の低親和性IgEレセプタ、例えば、CD23としても知られるFcεRIIに特異的に結合する能力を保持する。
【0049】
例えば、ある分子の、IgGまたはIgEレセプタなどの結合標的用分子への結合親和性が、その他の知られている任意の天然ポリペプチドに対するその分子の結合親和性より著しく高い(少なくとも約2倍、少なくとも約4倍、または少なくとも約6倍高い)場合、結合は「特異的」である。
【0050】
「天然」または「天然配列」という用語は、自然に生じる核酸配列またはポリペプチドと同一の核酸配列またはアミノ酸配列を有する核酸配列またはポリペプチドを意味する。核酸またはポリペプチドは、その調製様式に関係なく、本発明に基づいて「天然」であるとされる。そのため、そのような天然配列核酸またはポリペプチドは、天然で分離するか、または組み換えおよび/または合成手段によって生成することができる。「天然」および「天然配列」という用語は、特に自然に存在する切断型または分泌型(例えば、細胞外ドメイン配列)、自然に存在する異型(例えば、選択的にスプライスされた型)、および自然に存在するポリペプチドのアレルギー性異型を包含する。
【0051】
「天然FcεRI」、「天然配列FcεRI」、「天然の高親和性IgEレセプタFcεRI」、および「天然配列の高親和性IgEレセプタFcεRI」という用語は同義的に使用され、任意の哺乳類を含む任意の種の自然に生じるFcεRIレセプタを意味する。FcεRIは、固有の酵素活性を欠くが、細胞質チロシンキナーゼとの関連を通じて細胞内シグナルを変換する、細胞表面レセプタの複数サブユニット免疫反応レセプタ(MIRR)族の一員である。さらなる詳細については、例えば、Kinet,J.P.,Annu.Rev.Immunol.17:931‐972(1999)、およびOtt and Cambier,J.Allergy Clin.Immunol.,106:429‐440(2000)を参照されたい。
【0052】
「天然FcεRII」、「天然配列FcεRII」、「天然の低親和性IgEレセプタFcεRII」、「天然配列の低親和性IgEレセプタFcεRII」、および「CD23」という用語は同義的に使用され、任意の哺乳類を含む任意の種の自然に生じるFcεRIIレセプタを意味する。複数のグループが、様々な種の低親和性IgEレセプタをクローン化および発現している。ヒト低親和性IgEレセプタのクローン化および発現は、例えば、Kikutaniら、Cell 47:657‐665(1986)、およびLudinら、EMBO J.6:109‐114(1987)により報告されている。対応するマウスレセプタのクローン化および発現は、例えば、Gollnickら、J.Immunol.144:1974‐82(1990)、およびKondoら、Int.Arch.Allergy Immunol.105:38‐48(1994)により開示されている。ウマおよびウシのCD23の分子クローン化および配列決定は、近年、Watsonら、Vet.Immunol.Immunopathol.73:323‐9(2000)により報告されている。低親和性IgEレセプタに関する以前の検討については、Delespesseら、Immunol.Rev.125:77‐97(1992)も参照されたい。
【0053】
「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、血清のグロブリンタンパク質の免疫付与部分、および天然に生じないが、同一の機能的特性を有する可能性のあるその他の糖タンパク質という意味で使用される。「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、特に「抗体」(Abs)を含む。抗体は、特定の抗原に対する結合特異性を示すが、免疫グロブリンは、抗体、および、他の抗原特異性を欠く他の抗体様分子の双方を含む。天然免疫グロブリンは、プラズマ細胞と呼ばれる個別のB細胞により分泌され、任意の周知の抗原特異性を持たない免疫グロブリンは、免疫系により低レベルで生成され、骨髄腫により高レベルで生成される。本明細書では、「免疫グロブリン」、「Ig」という用語、およびその文法的変型は、抗体、および周知の抗原特異性または抗原結合領域を持たないIg分子を含んで使用される。
【0054】
天然免疫グロブリンは、通常2つの同一軽(L)鎖および2つの同一重(H)鎖から成る約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に連結されるが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンイソタイプの重鎖間で変わる。各重鎖および軽鎖は、規則的間隔の鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、多くの定常領域が続く可変領域(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端(VL)に可変領域を有し、もう一端に定常領域を有する。軽鎖の定常領域は重鎖の第1定常領域と連携し、軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域と連携する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖可変領域間にインターフェースを形成すると考えられている。
【0055】
血清中で検出される主な哺乳類Igイソタイプ(クラス)、および対応するIg重鎖(括弧内にで示される)を、以下に挙げる。
【0056】
IgG(γ鎖):血清中の主なIgであって、抗原に応じて高まる主な抗体であり、4つの主なサブタイプを有し、その一部は胎盤を通過する。
【0057】
IgE(ε鎖):このIgは、マスト細胞および好塩基球にしっかりと結合し、抗原に追加結合されると、ヒスタミンおよび即時型アレルギーの他のメディエータを放出させ、花粉症、喘息およびアナフィラキシを含むアレルギー反応において主要な役割を果たし、寄生虫に対する保護的役割を果たし、抗原提示において重要な働きをする場合がある。
【0058】
IgA(α鎖):このIgは、血清中に存在し、唾液、涙、粘膜、および初乳などの外分泌物に特に多く含まれる。
【0059】
IgM(μ鎖):抗原に応答して最初に誘発されるIgである。後に生成される抗体よりも低い親和性を有し、五量体であって主として循環系に局在する。
【0060】
IgD(δ鎖):このIgは、臍帯血において比較的高い濃度で検出され、主に抗原の初期細胞レセプタとして働き、また主にリンパ球表面分子として機能する。
【0061】
IgG、IgE、IgA、IgM、およびIgDイソタイプの抗体は、それらの重鎖の定常領域において異なるが、同一可変領域、すなわち、同一抗原結合空洞を有してもよい。例えば、抗体などの免疫グロブリンの定常領域は、抗原に対する抗体の結合に直接関与しないが、補体活性化、または好塩基球、マスト細胞、リンパ球、単球、および顆粒球上で発現される1つまたは複数の抗体Fcレセプタとの結合などの、抗体により媒介される異なるエフェクタ機能と相関する。
【0062】
主なヒト抗体イソタイプ(クラス)の一部は、さらなるサブクラスに分類される。IgGは、4つの周知のサブクラス、IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、およびIgG4(γ4)を有し、IgAは2つの周知のサブクラス、IgA1(α1)およびIgA2(α2)を有する。
【0063】
Ig分子の軽鎖は、κ鎖またはλ鎖のいずれかである。
【0064】
免疫グロブリン重鎖の定常領域は、重鎖定常領域と呼ばれる球形の構造上分離した領域にさらに分割される。例えば、IgE免疫グロブリン重鎖は、4つの定常領域CH1、CH2、CH3、およびCH4を含み、ヒンジ領域を持たない。
【0065】
免疫グロブリン重鎖定常領域の配列を含む免疫グロブリン配列は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest第五版、Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)において開示されている。ヒトIgG1重鎖定常領域(γ1)に関する論考は、Ellisonら、Nucl.Acid Res.10:4071‐4079(1982)およびTakahashiら、Cell 29:671‐679(1982)を参照されたい。ヒトIgE重鎖定常領域(ε)に関する論考は、Maxら、Cell 29:691‐699(1982)を参照されたい。IgEイソ型は、Saxonら、J.Immunol.147:4000(1991)、Pengら、J.Immunol.148:129‐136(1992)、Zhangら、J.Exp.Med.176:233‐243(1992)およびHellman,Eur.J.Immunol.23:159‐167(1992)に記載されている。
【0066】
「天然IgE」および「天然配列IgE」という用語は同義で使用され、自然の生じる、任意の哺乳類を含む任意の種のIgE配列を意味する。一実施形態において、動物はヒトである。
【0067】
別の実施形態において、IgE断片は、天然IgEのCH2‐CH3‐CH4ドメインアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む。代替的に、IgE断片は、機能的CH1領域がない場合、天然ヒトIgE重鎖定常領域のCH2、CH3、およびCH4ドメインの少なくとも一部を含む。IgE配列は、天然FcεRIおよび/またはFcεRIIレセプタに結合する能力を含むがそれに限定されないIgEの生物活性を保持するIgE配列の変型を含む。一実施形態において、IgEの定常領域のアミノ酸配列は、図13の配列である(配列番号1)。
【0068】
単数形または複数形の「ペプチド」、「ポリペプチド」、または「タンパク質」という用語は、本明細書において、ペプチド結合により直鎖において互いに結合された2つ以上のアミノ酸を含む、任意のペプチドまたはタンパク質の意味で使用される。本明細書では、この用語は、一般に当該技術分野においてペプチド、オリゴペプチド、およびオリゴマーとも呼ばれる短鎖、および一般に当該技術分野においてタンパク質と呼ばれる長鎖の両方を意味する。本明細書で定義されるポリペプチドは、20の自然発生するアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよく、修飾されたアミノ酸を含んでもよい。修飾は、ポリペプチド分子内の任意の場所、例えば、末端アミノ酸において行うことができ、処理およびその他の翻訳後の修飾などの自然過程によって、または当該技術分野においてよく知られている化学および/または酵素修飾技術から生じる場合がある。周知の修飾は、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド派生物の共有結合、脂質または脂質派生物の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、交差結合、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル反応、共有交差結合の形成、シスチンの形成、パイログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ‐カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイレーション、硫酸化、アルギニル化などの転移RNAに媒介されるタンパク質へのアミノ酸付加、およびユビキチン化を含むが、それらに限定されない。そのような修飾は、当業者に周知であり、例えば、Creighton,T.E.,Proteins-Structure And Molecular Properties,第二版、W.H.Freeman and Company,New York(1993)、Wold,F.,“Posttranslational Protein Modifications:Perspectives and Prospects,”in Posttranslational Covalent Modification of Proteins,Johnson,B.C編,Academic Press,New York(1983),pp.1‐12、Seifterら、Meth.Enzymol.182:626‐646(1990)、およびRattanら、Ann.N.Y Acad.Sci.663:48−62(1992)などの科学文献において詳細に記載されている。
【0069】
修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノまたはカルボキシル末端を含むポリペプチドの任意の場所で生じうる。実際、共有修飾によるポリペプチドにおけるアミノまたはカルボキシル基の閉塞、またはその両方は、自然発生するポリペプチドおよび合成ポリペプチドにおいて共通し、そのような修飾は、本発明のポリペプチドにおいて同様に存在する可能性がある。例えば、E.coliにおいて形成されるポリペプチドのアミノ末端残基は、タンパク質分解処理に先立って、ほぼ不変にN‐ホルミルメチオニンとなる。したがって、グリコシル化が望ましい場合、ポリペプチドはグリコシル化ホスト、一般に真核ホスト細胞において発現される。昆虫細胞は、しばしば哺乳類細胞と同一の翻訳後グリコシル化を実行する。このため、昆虫細胞の発現系は、天然パターンのグリコシル化を有する哺乳類タンパク質を効率よく発現するように開発されている。
【0070】
当然のことながら、ポリペプチドは常に全体が直線であるとは限らない。例えば、ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分岐されてもよく、分岐の有無にかかわらず、一般に翻訳後事象の結果として環状であってもよく、自然過程、およびヒトの操作により生じる自然発生しない事象を含む。環状、分岐、および環状分岐ポリペプチドは、非翻訳自然過程、および完全な合成方法により同様に合成されてもよい。そのような構造は、本明細書において定義される、ポリペプチドの範囲内である。
【0071】
アミノ酸は、当該技術分野において一般に実施されるように、共通の1または3文字のコード化により表される。したがって、20の自然発生するアミノ酸は、以下のとおり指定される。アラニン=Ala(A)、アルギニン=Arg(R)、アスパラギン酸=Asp(D)、アスパラギン=Asn(N)、システイン=Cys(C)、グルタミン酸=Glu(E)、グルタミン=Gln(O)、グリシン=Gly(G)、ヒスチジン=His(H)、イソロイシン=Ile(I)、ロイシン=Leu(L)、リジン=Lys(K)、メチオニン=Met(M)、フェニルアラニン=Phe(F)、プロリン=Pro(P)、セリン=Ser(S)、トレオニン=Thr(T)、トリプトファン=Trp(W)、チロシン=Tyr(Y)、バリン=Val(V)。本明細書に記載のポリペプチドは、Lアミノ酸すべて、Dアミノ酸すべて、またはそれらの混合を含んでもよい。Dアミノ酸のみで構成されたポリペプチドは、ヒト体内で自然に検出されるプロテアーゼに耐性であることが期待されるという点で有利であり、長い半減期を有する場合がある。
【0072】
「アミノ酸配列変化」という用語は、参照(例えば、天然配列)ポリペプチドと比較して、そのアミノ酸配列に一部の相違を有する分子を意味する。アミノ酸の改変は、天然アミノ酸配列における置換、挿入、削除、またはそのような変化の任意の望ましい組み合わせであってもよい。
【0073】
置換変異型は、除去された天然配列における少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、同一の位置に異なるアミノ酸が挿入されたものである。置換は単一であってもよく、その場合は分子中ただ1つのアミノ酸が置換され、または複数であってもよく、その場合は2つ以上のアミノ酸が同一分子において置換される。
【0074】
挿入変異型は、天然アミノ酸配列において、特定の位置でアミノ酸に直接隣接して1つ以上のアミノ酸が挿入されるものである。アミノ酸に直接隣接するとは、αカルボキシまたはアミノ酸のαアミノ官能基のいずれかに接続されることを意味する。
【0075】
削除変異型は、天然アミノ酸配列において、1つ以上のアミノ酸が削除されたものである。通常、削除変異型は、分子の特定領域において少なくとも1つのアミノ酸が削除されている。
【0076】
「断片」、「部分」、および「一部」という用語は、本明細書において同義的に使用され、それが派生する物質の組成全体より小さい任意の物質組成を意味する。例えば、ポリペプチドの一部は、2つのアミノ酸残基から、1つのアミノ酸をアミノ酸配列全体から引いた大きさまでであってよい。しかし、ほとんどの場合、「部分」または「断片」は、その意図された使用に不可欠な活性または性質を保持することが望ましい。例えば、抗原の有効部分は、エピトープ決定因子を保持する部分である。
【0077】
本明細書において使用される「少なくとも一部」という用語は、物質組成の一部、およびその全体を包含することが意図される。
【0078】
「配列同一性」は、必要に応じて配列および導入ギャップを連携させて最大パーセントの配列同定を実現した後、参照ポリペプチド配列(例えば、天然ポリペプチド配列)におけるアミノ酸残基と同一の候補配列におけるアミノ酸残基のパーセントとして定義されるが、任意の同類置換は配列同一性の一部として考慮しない。%同一配列%値は、Altschulら(1997),“Gapped BLAST and PSI‐BLAST:a new generation of protein database search programs”,Nucleic Acids Res.,25:3389‐3402により定義されるように、NCBI BLAST2.0ソフトウェアによって生成される。パラメータは、ミスマッチのペナルティ(−1に設定)を例外として、デフォルト値に設定される。
【0079】
本明細書では「配列類似性」という用語は、上述のように核酸配列同一性の測定値であり、さらに保存アミノ酸置換が組み込まれる。
【0080】
交配反応の「厳しさ」は、当該技術分野において通常の技術を有する者が容易に決定でき、一般に、プローブ長、洗浄温度、および塩分濃度に依存する、経験に基づく計算値である。一般に、プローブが長いほど、適切なアニーリングに高い温度を必要とし、短いほど低い温度を必要とする。交配は、一般に、相補鎖がその溶解温度より低い環境で存在する場合に、変性したDNAが再アニールする能力に依存する。プローブと交配可能な配列間の望ましい相同の程度が高いほど、使用できる相対温度が高い。その結果、相対温度が高いほど反応条件がより厳しくなり、低いほど緩くなる傾向がある。交配反応の厳しさに関するさらなる詳細および説明については、Ausubel ら、Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers 1995)を参照されたい。
【0081】
「厳しい」交配条件は配列依存であり、環境パラメータ(例えば、塩分濃度および有機物の存在)により異なる。一般に、厳しい条件は、定義されたイオン強度およびpHにおける特定の核酸配列の熱融解点(Tm)より低い約5℃〜20℃に選択される。厳しい条件は、完全に相補的な核酸に結合される特定の核酸の熱融解点より低い約5℃〜10℃である。Tmは、核酸の50%(例えば、タグ核酸)が完全に合致するプローブに対して(定義されたイオン強度およびpHにおいて)交配する温度である。「厳しい」洗浄条件は、通常、対応するプローブ配列に対してタグの各セットを交配するため経験的に決定される。最初に配列は交配され(一般に厳しい交配条件下)、順次、より低濃度の塩または、より高濃度の洗剤を含む緩衝液で洗浄、または温度を順次高くし、それを、非特異的交配に固有のノイズ比に対するシグナルが、特定の交配の検出を促進するために十分高くなるまで行なう。厳しい温度条件は、通常約30℃を上回る温度、より一般に約37℃を上回る温度、場合によっては約45℃を上回る温度を含む。厳しい塩条件は、通常約1000mM未満であり、一般に約500mM未満、より一般に約400mM未満、典型的に約300mM未満、約200mM未満、または約150mM未満である。しかし、パラメータの組み合わせは、いかなる単一パラメータの測定値よりも重要である。例えば、Wetmurら、J.Mol.Biol.31:349‐70(1966)およびWetmur,Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology 26(34):227−59(1991)を参照されたい。
【0082】
一実施形態において、本明細書において定義される、「厳しい条件」または「厳しさが高い条件」は、50%ホルムアミド、6X SSC(0.75M NaCl,0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5X Denhardt溶液、超音波で分解したサケの精子DNA(100μg/ml)、0.5% SDS、および10%硫酸デキストランにおいて42℃で交配し、2X SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中42℃、0.1% SDS中55℃で洗浄した後、0.1% SDSを含む0.2X SSC中42℃での、厳しさの高い洗浄とすることができる。
【0083】
本明細書において使用される「相補体」、「相補性」、または「相補的」という用語は、逆平行の塩基対合の規則によって関連付けられる単鎖ポリヌクレオチドを説明するために使用される。例えば、配列5’‐CTAGT‐3’は、配列5’‐ACTAG‐3’に対して完全に相補的である。相補性は「部分的」であってもよく、ここで塩基対合は、100%未満であり、または、「完全」または「全体」であってもよく、それは、2つのポリヌクレオチド間の逆平行相補が完全に100%であることを意味する。当該技術分野における慣例により、単鎖核酸分子は、左端に5’、右端に3’をつけて記載される。
【0084】
「DNAワクチン」という用語は、ペプチドをコード化するDNA配列を意味する。哺乳類細胞に進入する際、DNA配列はペプチドに翻訳される。DNAワクチンは、アレルゲンの断片または部分、自己抗原の断片または部分、またはウイルスの断片または部分をコード化するDNAを含んでもよいことを意図している。
【0085】
「ウイルス」という用語は、哺乳類細胞に感染する病原体を意味する。ウイルスの例は、HIVウイルス、ヘルペスウイルス、乳頭腫ウイルス、肝炎ウイルス、水痘ウイルス、サイトメガロウイルス、パラミクソウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、風疹ウイルス、肺炎ウイルス、ライノウイルスなどを含むが、それらに限定されない。
【0086】
「アレルゲン」という用語、およびその文法的変型は、IgE媒介のアレルギーを誘導可能な特別抗原の意味で使用される。アレルゲンは、抗原として作用し、IgE媒介のアレルギー反応を促進するものであれば、ほとんど何であってもよい。一般的なアレルゲンは、例えば、食物、花粉、カビ、ダニならびに家で飼うペットの鱗屑を含む可能性のあるハウスダスト、ハナバチ、カリバチ、蚊などの昆虫の毒に見出される。一般的なアレルゲンを表1に挙げる。一実施形態において、アレルゲンはFel d1である。別の実施形態において、そのアレルゲンはピーナッツアレルゲンのAra hまたはラッカセイ(Arachis hypogea)または卵アレルゲンのオボムコイド(Gal d1)または牛乳アレルゲンのαカゼインである。
【0087】
本明細書では、「抗原」という用語は、抗体により認識される任意の作用物質を意味し、「免疫原」という用語は、対象において免疫応答を引き出すことができる任意の作用物質を意味する。「抗原」および「免疫原」という用語は、どちらもポリペプチドを包含するが、それに限定されない。すべてではないが、大部分の場合において、抗原は免疫原でもある。
【0088】
「自己アンチゲン(autoantigen)」および「自己抗原(self antigen)」という用語、ならびに文法的に相当する用語は、本明細書では、個人の免疫系の細胞成分(T細胞レセプタ)または体液成分(抗体)のいずれかにより認識される、その個人の生理機能に内生の抗原を意味する。自己抗原、および結果として生じる自己抗体および/または自己反応性T細胞の存在は、必ずしもそうではないが、病状に関連する場合が多い。自己抗体は、病気でない個人から検出される場合がある。自己抗原は、必ずしもそうではないが、ポリペプチドである場合が多い。自己抗体の認識の基礎となる機序、正常な自己認識、または自己免疫を誘発する機序の理解は、本発明の形成または使用には必要でない。
【0089】
「自己抗体」という用語は、本明細書では、上記で定義した自己抗原に対して特異的に結合するホスト有機体により生成される任意の抗体を意味する。自己抗体および/または自己反応性T細胞の存在は、本明細書において「自己免疫」と呼ばれる。対象における自己抗体または自己反応性T細胞の存在は、必ずしもそうではないが、病気(すなわち自己免疫疾患)に関連する場合が多い。
【0090】
「エピトープ」または「抗原決定因子」という用語は、本明細書では、特定の抗体可変領域と反応する領域を形成することにより、抗原/抗体結合に対して特異性を付与する抗原の一部を意味する。単一の抗原は、1つ以上のエピトープを有してもよい。免疫優勢エピトープは、抗原に対する抗体によって選択的に認識される抗原上のエピトープである。抗原がタンパク質である一部の場合において、エピトープを「マップ」することができ、「抗原ペプチド」は、抗体/抗原特異性に関与するタンパク質におけるアミノ酸にほぼ対応して生成される。そのような「抗原ペプチド」は、ペプチド免疫療法で用いられる。
【0091】
「自己免疫疾患」、「自己免疫状態」または「自己免疫障害」という用語は、本明細書において同義的に使用され、発現した自己免疫レパートリーの質的および/または量的欠陥により現れる変性免疫ホメオスタシスに関連する一連の持続性器官特異的または全身性臨床症状および兆候を意味する。自己免疫疾患の病因は、自己免疫反応により誘発された構造的損傷または機能的損傷のいずれかとして現れる。自己免疫疾患は、自己抗原のエピトープに対する体液(例えば、抗体媒介性)、細胞(例えば、細胞毒のTリンパ球媒介性)、またはそれらの組み合わせにより特性化される。罹患した個人の免疫系は、特異的な自己抗原を示す細胞および組織に向けて炎症カスケードを引き起こす。抗原、組織、細胞型、または攻撃を受けた器官の破壊により、疾患の症状が生じる。自己抗原は、すべてではないが、一部の自己免疫疾患において知られている。
【0092】
「免疫療法」、「脱感作療法」、「減感作療法」、「耐性療法」などの用語は、本明細書では、様々な過敏性疾患を治療する方法を説明する。ここで、アレルゲンまたは自己抗原を回避することは不可能であるか、または実践的でない。本明細書では、これらの用語は、概ね同義的に使用される。これらの方法は、一般に、抗原材料を制御された方法で対象に送達し、抗原に対する耐性を誘発し、および/または抗原に対する環境暴露により生じる免疫反応を下方制御するステップを含む。これらの治療は、一般に、長期間(数ヶ月または数年)に渡って、徐々に用量を増加させながら抗原(例えば、アレルゲンまたは自己抗原)を注射するステップを含む。免疫療法に使用される抗原は、一般に、ペプチドであるが、それに限らない。例えば、花粉症の脱感作療法は、空気中に浮遊する花粉に対するアレルギー応答を下方制御する。ここでは、対象に花粉抽出物を注射する。臨床的観点から、注射は不快で不便な場合が多いため、これらの治療は最適でない。さらに、治療中に命にかかわるアナフィラキシ応答を生じる著しい危険がある。免疫療法技術を様々な自己免疫疾患の治療に適用することが提案されている。ここで、自己抗原に対する耐性を誘導することを期待して自己抗原を対象に投与し、それによって、内生自己抗原または自己抗原組織の免疫破壊をなくす。例えば、自己免疫性I型糖尿病および多発性硬化症をそれぞれ下方制御する目的でインシュリンおよびミエリンベースのタンパク質が、動物モデルおよびヒトに送達されている。
【0093】
「ペプチド療法」および「ペプチド免疫療法」などの用語は、本明細書では、免疫療法の方法を表し、対象に送達される抗原(例えば、アレルゲンまたは自己抗原)は、短いポリペプチド(すなわち、1つのペプチド)である。さらに、ペプチド療法中に送達されるペプチドは、免疫不全エピトープ(例えば、ミエリンベースのタンパク質エピトープ(MBP)を定義するアミノ酸のみを含んでもよい。
【0094】
「ワクチン療法」、「ワクチン接種」、および「ワクチン接種療法」という用語は、本明細書において同義的に使用され、一般に免疫予防をもたらす任意の方法を意味する。一側面において、ワクチン療法は、特定の抗原に対する免疫反応、よって長期間効果のある免疫を誘導する。これらの方法は、一般に免疫材料を対象に送達して免疫を誘発するステップを伴う。別の側面において、「ワクチン療法」は、特定の抗原に対する免疫能力を下方制御する(例えば、アレルギー応答を抑制する)方法を意味する。この種のワクチン療法は、「耐性療法」とも呼ばれる。
【0095】
「I型」アレルギー反応または「即時型アレルギー」あるいは「アトピー性アレルギー」は、体内に進入した抗原が、マスト細胞または好塩基球上の高親和性レセプタFcεRIに付加されているIgEにより感作されたマスト細胞または好塩基球に遭遇すると起こる。アレルゲンは、感作されたマスト細胞または好塩基球に到達すると、表面結合されたIgEを交差結合し、ヒスタミンおよびプロテアーゼなどの予備形成されたメディエータ、ならびにロイコトリエンおよびプロスタグランジンなどの新規に合成された脂質由来のメディエータの放出を誘発する細胞内カルシウム(Ca2+)を増加させる。これらのオータコイドは、アレルギーの臨床症状をもたらす。さらに、IL‐4、TNF‐αなどのサイトカインは、好塩基球およびマスト細胞を脱顆粒化することにより放出され、IgE反応を伴う炎症反応を増大する働きをする(例えば、Immunology、第五版、Roittら編、1998,pp.302‐317を参照)。
【0096】
I型過敏反応に関連する症状および兆候は、関与しうる組織および器官が幅広いため非常に多様である。これらの症状および兆候は、皮膚、目、および喉の痒み、皮膚の腫れおよび発疹(血管性浮腫および皮膚の掻痒/蕁麻疹)、声帯領域の腫れによる声のかすれおよび呼吸困難、体の任意の場所に起こりうる持続性の凸凹した赤い発疹、息切れおよび喘鳴(気道における筋肉の締め付け、および気道の閉塞、すなわち気管支収縮による)、さらに、粘膜および液体生成の増加、気道筋肉の収縮による胸の締め付けおよび痛み、吐き気、嘔吐、下痢、低血圧による目眩および失神、頻拍または不整脈、気道および/または心臓障害の結果として死亡をも含むが、それらに限定されない。
【0097】
アレルギー反応に起因し、過敏症状および/または兆候を表す病状の例は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー[外因性]喘息、蕁麻疹および血管性浮腫の一部症例、食物アレルギー、および全身性反応を呈し、および命にかかわる可能性のある血圧喪失を含むアナフィラキシー・ショックであるが、それらに限定されない。
【0098】
「アナフィラキシ」、「アナフィラキシ応答」、「アナフィラキシ反応」、「アナフィラキシー・ショック」などの、本明細書において同義的に使用される用語は、以前に感作した対象が感作抗原を受けると発生する急性、多くの場合において爆発的なIgE媒介の全身性生理反応を表す。アナフィラキシは、以前の感作抗原が循環系に到達すると生じる。抗原が好塩基球およびマスト細胞上でIgEと反応すると、ヒスタミン、ロイコトリエン、および他の炎症メディエータが放出される。これらのメディエータは、アナフィラキシの特徴である平滑筋収縮(喘鳴および胃腸症状に関与する)および血管拡張(低血圧に関与する)を引き起こす。血管拡張および組織へ血漿が逃げることによって蕁麻疹および血管性浮腫が生じ、その結果、有効な血漿量が減少してショックの主な原因となる。液体が肺胞に入ると、肺水腫を引き起こす可能性もある。上気道の閉塞性血管性浮腫が生じる場合もある。反応が長期に渡ると、不整脈および心臓性ショックを来たす可能性がある。「アナフィラキシ様反応」という用語は、アナフィラキシ反応の特徴を示す生理反応を意味する。
【0099】
アナフィラキシ反応の症状は、患者間で著しく異なる。一般に、約1〜15分の間に(稀に2時間という長時間の後)、興奮および顔面紅潮、動機、錯感覚、痒み、耳の拍動、咳、くしゃみ、蕁麻疹および血管性浮腫、血管拡張、および喉頭水腫または気管支痙攣に起因する呼吸困難などの症状を含む。吐き気、嘔吐、腹痛、および下痢が見られる場合もある。さらに1分または2分以内にショックが生じる可能性があり、患者は激しい体の震え、失禁、無反応および心停止による死亡、巨大な血管性浮腫、血液量減少、重度の低血圧および血管運動虚脱、ならびに初期の心血管虚脱を起こす場合がある。拮抗薬であるエピネフリンがすぐに入手できない場合は、その時点で死亡が確実になる可能性もある。軽度のアナフィラキシ反応は、全身の痒み、蕁麻疹、血管性浮腫、軽い喘鳴、吐き気、および嘔吐を含む様々な症状を生じる。アナフィラキシのリスクが最も高い患者は、特定の薬物または抗原に対して以前に反応したことのある患者である。
【0100】
「核酸結合剤」という用語は、核酸に結合する作用物質を意味する。そのような物質は、レトロウイルスコート、アデノウイルスコート、別のウイルスまたはウイルス様形態(単純ヘルペス、およびアデノ関連ウイルス(AAV)コート)、リポソーム、ポリ‐リジン、ポリ‐1‐リジン(PLL)、ポリ‐アルギニン‐リジン、ポリ‐1‐アルギニン‐リジン(PRL)、合成ポリカチオン性分子、ポリエチレングリコール(PEG)、スペルミンまたはスペルミジンを含む。
【0101】
「ベクター」、「ポリヌクレオチドベクター」、「構成」、および「ポリヌクレオチド構成」という用語は、本明細書において同義的に使用される。本発明のポリヌクレオチドベクターは、RNA、DNAを含むがそれらに限定されない形態のうちのいずれかであってもよい。一実施形態において、ポリヌクレオチドはDNAである。本明細書では、「DNA」は、塩基A、T、C、およびGを含むだけでなく、メチル化ヌクレオチド、非荷電連結およびチオエートなどの核間修飾、糖類似体、およびポリアミドなどの修飾および/または代替骨格構造など、これら塩基の類似体または修飾形のいずれをも含む。
【0102】
「ホスト細胞」は、本発明の任意のベクターの受容体となりうる、または受容体となっている個別の細胞または細胞培養を含む。ホスト細胞は、単一ホスト細胞の子孫を含み、その子孫は、自然、偶然、または意図的な突然変異および/または変化のため、元の親細胞に対し(形態学または総DNA相補において)、完全に同一である必要はない。ホスト細胞は、本発明の核酸を含むベクターを有する、生体内で核酸導入または感染された細胞を含む。
【0103】
「プロモータ」という用語は、標的のDNA配列に操作可能に連結された場合に、そのDNA配列の転写を促進するヌクレオチド配列を意味する。プロモータは、「樹状細胞プロモータ」であるように意図され、プロモータが樹状細胞において活性であることを意味する。さらに、「樹状細胞プロモータ」は、IgEレセプタを発現する他の細胞において活性が低減するか、または非活性であることを意図している。「樹状細胞プロモータ」は、Fascinプロモータであることを意図している(Sudowe,S.ら、2006.“Prophylactic and therapeutic intervention in IgE responses by biolistic DNA vaccination primarily targeting dendritic cells”.J Allergy Clin Immunol 117:196‐203)。
【0104】
核酸は、別の核酸配列との機能的関係に置かれると、「操作可能に連結される」。例えば、先行連鎖または分泌リーダーのDNAが、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合に、ポリペプチドのDNAに操作可能に連結されるか、プロモータまたはエンハンサが、配列の転写に影響する場合に、コード化配列に操作可能に連結されるか、またはリボソーム結合部位が、翻訳を促進するよう配置される場合に、コード化配列に操作可能に連結される。一般に、「操作可能に連結される」とは、連結されるDNA配列が隣接しており、分泌リーダーの場合は、隣接してリーディングフェーズにある。しかし、エンハンサは隣接する必要がない。連結は、都合の良い制限部位における連結反応により行われる。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプタまたはリンカーは、従来の方法に合わせて使用される。
【0105】
「IgE媒介の生物学的反応」という用語は、高親和性IgEレセプタFcεRIおよび低親和性IgEレセプタRcεRIIを含む、IgEレセプタを通じたシグナル変換を特徴とする状態または疾病の意味で使用される。当該定義は、制限なく、アナフィラキシ過敏症、および例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、慢性蕁麻疹、および血管性浮腫などのアトピー性アレルギーに関連する状態、および通常、ハチ刺されまたはペニシリンなどの投薬によって引き起こされるアナフィラキシー・ショックの深刻な生理的状態を含む。
【0106】
「治療する」または「治療」という用語は、治療上の処置および予防措置の両方を意味する。ここでの目的は、好ましくない生理的変化または疾患を予防または減速(緩和)することである。この発明の目的のため、有益または望ましい臨床結果は、感出可能かどうかにかかわらず、症状の緩和、疾患の範囲の縮小、疾病の安定(すなわち、悪化しない)状態、疾病進行の遅延または減速、病状の改善または軽減、および鎮静(部分的または全体的)を含むがそれらに限定されない。治療を必要とする者は、既に状態または疾患を有する者、および状態または疾患を有する傾向がある者、または状態または疾患を予防すべき者を含む。
【0107】
「長期的」投与は、薬剤の望ましい効果またはレベルを長期間維持するため、急性モードとは反対に、連続モードによって薬剤を投与することを意味する。
【0108】
「断続的」投与は、中断なく連続的には行われず、定期的な形態で行われる治療である。
【0109】
1つまたは複数のさらなる治療薬「〜と組み合わせて」投与することは、同時(併用)および任意の順序による連続投与を含む。
【0110】
「有効量」は、有益または望ましい治療(予防を含む)結果をもたらすために十分な量である。有効量は、1つまたは複数の投与で投与される。
【0111】
「担体」または「薬学的にに許容しうる成分」という用語は、本明細書では、採用される容量および濃度において暴露される細胞または哺乳動物に対して毒性のない生理的に許容しうる担体、賦形剤、または安定剤を含む。多くの場合、生理的に許容しうる材料は水性pH緩衝液である。生理的に許容しうる担体の例は、リン酸、クエン酸、およびその他の有機酸などの緩衝液、アスコルビン酸を含む酸化防止剤、低分子量(約10未満の残基)のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸、グルコース、マンノース、デキストリンを含む単糖、二糖、および他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール、ナトリウムなどの塩形成対イオン、および/またはTWEENTMなどの非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICSTMを含む。
【0112】
「哺乳動物」または「哺乳類」という用語は、哺乳動物として分類される任意の動物を意味し、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどの家庭用動物および家畜、および動物園、運動競技用、またはペット用動物、またマウスおよびネズミなどの齧歯類を含む。一実施形態において、哺乳類はヒトである。
【0113】
本明細書において、「対象」または「患者」という用語は、同義的に使用され、任意の動物、および一実施形態において、検査、治療、分析、試験、または診断の対象である哺乳類を意味する。一実施形態では、ヒトが対象である。対象または患者は、疾患またはその他の病状を有しても有しなくてもよい。
【0114】
「疾患」、「障害」、および「状態」という用語は、本明細書において同義的に使用され、正常な身体機能の途絶、またはいずれの種の病状の出現をも意味する。正常な生理機能の途絶を引き起こす病因は、明らかである、または不明である場合がある。さらに、2人の患者が同一の疾患を診断されたとしても、個人が示す特定の症状は同一であるか、または同一でない場合がある。
【0115】
II.詳細な説明
本発明は、APC上のIgEレセプタ(FcεRs)を標的とし、APCに特異的な調整要素を提供してDNAの発現を促進することによって媒介される抗原提示細胞(APC)において、DNAワクチンを集中および発現する新規アプローチに関する。そのような改良DNAワクチンは、IgE媒介のアレルギー性疾患およびその他の疾患、例えば、自己免疫疾患、ウイルス性疾患などの感染症、およびDNAワクチンの接種が有益な効果を持つことが予想される癌の管理において有効である。
【0116】
大部分の喘息症例、特に幼児、子供、および若者に見られる症例は、環境アレルゲンに対するアレルギー反応に関連する。これは、ヒトアレルギー性喘息において長期回復(アレルギー耐性)を導くよう設計された、新規形式の遺伝子導入診療の開発を対象とする。ワクチンは、ヒトIgEおよび高いヒト関連アレルゲン、ネコFel d1を含む。ネコアレルゲンは、ヒトの主要なアレルゲンであり、そのサイズと高い浮遊性のため広く分散し、学校など公共の建物で検出されるものを含む。実際に、住宅地においてネコのいない住居のほぼ半数は、ネコアレルギーの対象において症状を引き起こすために十分なネコアレルゲンを有する(Arbes SJ Jr,Cohn RD,Yin M,Muilenberg ML,Friedman W,Zeldin DC.(2004).J Allergy Clin Immunol.114:111)。喘息の短期および長期治療に関する様々な新規および重要な薬物治療が開発されているが(例えば、優れた局所ステロイド、ロイコトリエン抑制剤、および抗IgE)、喘息の治療は依然として問題があり、さらに多くの重度の喘息症例が世界的に蔓延し続けている。ここで提案するような長期疾患回復を目的とする新規治療は、積極的な調査に値する。
【0117】
アレルゲン遺伝子ワクチン接種は、アレルギー性喘息およびその他のアレルギー状態を治療するアレルゲン特異的免疫療法に対するタンパク質ベースの免疫療法アプローチに対する有望な代替となる。このアプローチは、アレルゲン特異的IgE生成を効率的に抑制し、Th2反応を抑え、Th1反応を相互に強化することが示されている。しかし、アレルゲンDNAワクチンの開発は、DNAを専門の抗原提示細胞(APC)、および特に、樹状細胞(DC)に送達する遺伝子送達方法の効率が悪いことにより制限されている。ヒトAPC、特にDCおよびランゲルハンス細胞(LC)は、IgEの高親和性レセプタ(FcεR1)を発現することにより、「ポリプレックス」と呼ばれるDNA‐ヒトIgE分子複合体をコード化する結合アレルゲンを生成および投与して、標的の遺伝子をこれら細胞上に集中させるという事実を利用する。このポリプレックスは、10−10〜10−11L/MのKdとの極めて高い親和性、すなわち、大部分の生理的リガンド‐レセプタ(抗原‐抗体)相互作用よりも2〜3ログ高い親和性を有するIgE‐FcεRIを通じてAPCに送達される。この新規アプローチは、アレルゲン免疫療法において、APCを発現するFcεRIに高性能のIgE媒介のDNAワクチンを送達する。
【0118】
この高親和性IgE‐FcεRI相互作用を利用し、DCおよびLCを発現するヒトFcεRI(h FcεRI)に対して標的の遺伝子を特異的に標的とすることにより、アレルゲン遺伝子ワクチン接種を促進できる。アレルギー患者のAPCによる高レベルのFcεRI発現をモデルとするヒトFcεRIα鎖のトランス遺伝子(Tg)を担持するマウスが、有効なアレルゲンDNAワクチン接種のモデルシステム標的として使用され、アレルゲン特異的反応を調節し、アレルギー性喘息を含むアレルギー性疾患の治療を可能にする。例えば、マスト細胞および好塩基球などの他のFcεRI含有細胞ではなく、DCを発現する標的FcεRIにおけるアレルゲン遺伝子の発現は、他のFcεRI細胞ではなく、DCにおいて特異的に活性化されるため、アクチン束化タンパク質fascin遺伝子プロモータを構成に採用することにより行われる。IgE‐FcεRI相互作用の親和性が非常に高く、IgE媒介のアレルゲン遺伝子導入の有効性が予想されるため、当アプローチを使用する有効な免疫療法に必要なDNAワクチンの容量および頻度は、その他の免疫プロトコルと比べて著しく低いはずであり、考えられる副作用/毒性も同様に低いことが期待される。
【0119】
IgE断片は、天然高親和性IgEレセプタ(例えば、FcεRI)または天然低親和性IgEレセプタ(FcεRII、CD23)などの対応する天然レセプタに結合する能力を保持する必要がある。天然IgE重鎖定常領域配列内のレセプタ結合領域が確認されている。FcεRI結合研究に基づいて、Prestaら、J.Biol.Chem.269:26368‐26373(1994)は、3つのループC‐D、E‐F、およびF‐Gに配置され、ヒトIgE重鎖CH3ドメインの最も暴露した側に外部突起を形成するよう計算された6つのアミノ酸残基(Arg‐408、Ser‐411、Lys‐415、Glu‐452、Arg‐465、およびMet‐469)が、ほとんどの場合、静電相互作用によって、高親和性レセプタFcεRIとの結合に関与することを提案した。Helmら、J.Cell Biol.271(13):7494‐7500(1996)は、IgE分子における高親和性レセプタ結合部位が、IgE重鎖のCH3ドメイン内にPro343‐Ser353ペプチド配列を含むが、レセプタ結合構造を維持するための構造上足場を提供するには、このコアペプチドに対する配列NまたはC末端も必要であることを報告した。特に、彼らは、ε鎖のC末端領域において、Hisを含む残基がIgEとFcεRIとの相互作用の高親和性の維持に重要な貢献していることを発見した。Fcεポリペプチド配列は、そのような結合領域内の残基と結合するよう設計される。
【0120】
この知識に基づいて、アミノ酸配列の変形を、レセプタ結合に必須の天然アミノ酸残基を保持するか、またはそのような残基において保存的なアミノ酸改変(例えば、置換)のみを行うよう設計することができる。
【0121】
対応する天然配列の必要な結合特性を保持するアミノ酸配列変異型の生成において、アミノ酸の水治療指標を考慮してもよい。例えば、特定のアミノ酸を、生物活性の著しい変化なしに、同様の水治療指標またはスコアを持つ他のアミノ酸の代用とすることができることが知られている。そのため、水治療指標+4.5のイソロイチンは、一般に、バリン(+4.2)またはロイシン(+3.8)の代用とすることができ、置換が行われるポリペプチドの生物活性に著しく影響しない。同様に、リジン(−3.9)は一般にアルギニン(−4.5)の代用とすることができ、基礎となるポリペプチドの生物学的特性における著しい変化は予想されない。
【0122】
アミノ酸置換を選択するためのその他の考慮事項は、例えば、サイズ、親電子的特徴、様々なアミノ酸における電荷などの側鎖置換の類似点を含む。一般に、アラニン、グリシンおよびセリン、アルギニンおよびリジン、グルタミン酸およびアスパラギン酸、セリンおよびトレオニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは相互交換することができ、生物学的特性における著しい変化は予想されない。そのような置換は、一般に保存アミノ酸置換と呼ばれ、上記のように、本発明のポリペプチド内における置換の一種である。
【0123】
代替または追加として、アミノ酸改変は、本発明のIgE分子のレセプタ結合特性を強化する働きをする場合がある。改良されたレセプタ結合を持つ変型、およびその結果として得られる優れた生物学的特性は、アラニン走査突然変異誘発、PCR突然変異誘発、または他の突然変異誘発などの標準的な突然変異誘発技術を使用して、以下の記載または例において説明されるレセプタ結合アッセイと組み合わせて、容易に設計することができる、。
【0124】
レセプタ結合は、競合する結合アッセイ、直接および間接サンドウィッチアッセイなどの任意の知られたアッセイ方法を使用して試験できる。そのため、本明細書に含まれる高親和性または低親和性IgEレセプタへのIgEポリペプチドの結合は、RIAおよびELISAを含む競合する結合アッセイなどの従来の結合アッセイを使用して試験できる。リガンド/レセプタ複合体は、ろ過、遠心分離、フローサイトメトリなどの従来の分離方法を使用して識別でき、結合アッセイの結果は、Scatchard分析などの結合データの任意の従来のグラフィック表示を使用して分析できる。アッセイは、例えば、精製レセプタまたはレセプタを発現する無傷細胞を使用して実施してもよい。結合パートナーの1つまたは両方は、固定および/またはラベル表示されてもよい。特定の細胞をベースとした結合アッセイは、以下の例に記載される。
【0125】
ポリプレックスは、IgE分子複合体に付加されたDNAをコード化する結合アレルゲンを含む。一実施形態において、IgE分子複合体は、核酸結合剤に付加されるIgE断片を含む。核酸結合剤は、例えば、ポリ‐リジンまたはポリアルギニン‐リジンなどのアミノ酸鎖を含んでもよい。一実施形態において、ポリ‐リジンは、ポリ‐1‐リジン(PLL)である。ポリ‐1‐リジンは、少なくとも約10のリジン残基、少なくとも約20のリジン残基、少なくとも約30のリジン残基、少なくとも約60のリジン残基を含んでもよいと意図される。別の実施形態において、ポリ‐アルギニン‐リジンは、アルギニンおよびリジン残基を交互に含むポリ‐1‐アルギニンリジン(PRL)である。ポリ‐1‐アルギニン‐リジンは、少なくとも約10のアミノ酸残基、少なくとも約20の残基、少なくとも約30の残基、少なくとも約60の残基、少なくとも約80の残基を含んでもよいことを意図している。さらに、アルギニンおよびリジン残基は、交互でなくてもよく、ARG‐ARG‐ARG‐LYS‐LYS‐ARGなどのランダムな順番であってもよいことを意図している。
【0126】
別の実施形態において、IgEおよび核酸結合剤は、ポリペプチドリンカーにより接続されてもよい。ポリペプチドリンカーは、「スペーサ」として機能する。ポリペプチドリンカーは、通常約1〜約25の残基または約2〜約25の残基を含む。ポリペプチドリンカーは、少なくとも約10、または少なくとも約15のアミノ酸を含んでもよい。ポリペプチドリンカーは、アミノ酸残基で構成されてもよく、それがともに、親水性の比較的構造化されていない領域を提供する。ほとんど、あるいは全く二次構造を有さない連結アミノ酸配列は良好に作用する。スペーサにおける特定のアミノ酸は様々であるが、システインは避けるべきである。適切なポリペプチドリンカーは、例えば、WO88/09344(1988年12月1日公開)において、そのようなリンカーを含む多機能タンパク質を生成する方法として開示されている。
【0127】
IgE断片および核酸結合剤のポリプレックスが、細胞摂取配列をさらに含んでもよいことが意図されている。そのような細胞摂取配列は、ポリプレックスの細胞摂取およびアレルゲンワクチンの発現を強化する。一実施形態において、細胞摂取配列は、HIV tat ペプチド配列および/または核内保留シグナル(NLS)ペプチド配列であってもよい。細胞摂取配列は、IgE断片とPLLペプチド配列との間に配置されてもよい。HIV tat ペプチド配列は、GRKKRRQRRR(配列番号4)であってもよい。NLSペプチド配列は、PKKKRKV(配列番号5)であってもよい。
【0128】
組み換えDNA技術を使用し、IgE配列および核酸結合剤アミノ酸配列を生成してもよいことが意図されている。核酸結合剤アミノ酸配列をコード化するDNAに連結されるヒトIgE重鎖(CHε2‐CHε3‐CHε4)のDNA配列を含む融合遺伝子が生成される。このアプローチは、各IgE分子が核酸結合剤と関連し、異なる時点で行われるすべての実験において製品の質が同一となることを保証する。一実施形態において、核酸結合剤は、60反復リジンの180bpDNAコードによりコード化される。
【0129】
IgE配列および核酸結合剤は、非ポリペプチドリンカーにより接続されてもよい。そのようなリンカーは、例えば、レセプタ(抗体)の結合機能を損なうことなく2つの配列を連結できる残基であってもよい。共有二官能価架橋試薬は、アミノ、メルカプト基、グアニジン、インドール、カルボキシル特異基などの官能基の特異性に基づいて分割できる。これらのうち、遊離アミノ基に向けられた試薬は、それらの商業的入手性、合成の容易性、および適用できる反応条件が軽いことから特に普及している。ヘテロ二官能価架橋試薬の大部分は、1級アミン反応基およびチオール反応基を含む(検討のため、Ji,T.H.“Bifunctional Reagents” in:Meth.Enzymol.91:580‐609(1983)を参照されたい)。
【0130】
本発明のワクチンは、FcεR媒介の生物学的反応の抑制に使用できる。そのような生物学的反応は、FcエプシロンRを介する、アレルギー反応、または自己免疫反応の媒介であり、IgE媒介の反応に関連する状態、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、慢性蕁麻疹および血管性浮腫、ハチ(例えば、ミツバチおよびアシナガバチ)刺され、またはペニシリンなどの薬物に対するアレルギー反応(アナフィラキシー・ショックの重篤な生理反応まで)を含むが、それらに限定されない。
【0131】
一実施形態において、アレルゲンDNA配列は、以下の表1に挙げるアレルゲン配列から選択されるアレルゲンをコード化する。
【0132】
表1
【0133】
【表1−1】
【0134】
【表1−2】
【0135】
【表1−3】
【0136】
【表1−4】
【0137】
【表1−5】
【0138】
【表1−6】
【0139】
【表1−7】
【0140】
【表1−8】
【0141】
【表1−9】
【0142】
【表1−10】
【0143】
【表1−11】
【0144】
【表1−12】
【0145】
【表1−13】
他の実施形態において、融合分子の第2ポリペプチドのアミノ酸配列は、自己抗原配列を参照して定義される。自己抗原配列の例は、以下の表2に挙げる。表2に挙げられる自己抗原の部分は、融合ポリペプチドでの使用にも好適である。ここで、その部分は、少なくとも1つの自己抗原エピトープを保持し、自己抗体または自己反応性T細胞レセプタを特異的に結合する能力を保持する。例えば、多発性硬化症自己抗原ミエリンベースのタンパク質(アミノ酸83‐99)、プロテオリピドタンパク質(アミノ酸139‐151)、およびミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(アミノ酸92‐106)の有用な部分が知られている。ここで、その部分は、少なくとも1つの自己抗原エピトープを保持する。
【0146】
表2
【0147】
【表2−1】
【0148】
【表2−2】
【0149】
【表2−3】
【0150】
【表2−4】
【0151】
【表2−5】
【0152】
【表2−6】
【0153】
【表2−7】
【0154】
【表2−8】
追加の自己抗原を識別する方法は、当該技術分野において、例えばSEREX技術(serological identification of antigens by recombinant expression cloning:組み換え発現クローン化による抗原の血清学的識別)として既知であるため、有効な自己抗原配列を表2に提供される配列に限定することを意図しない。ここで、発現ライブラリは、自己免疫血清プローブを使用して審査される(Bachmannら、Cell 60:85-93[1990]、およびPietromonacoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1811-1815[1990]、Folgoriら、EMBO J.,13:2236-2243[1994])。同様に、自己免疫病因を有する追加の疾患が将来的に判明すると考えられるため、本発明の組成および方法を使用して治療できる自己免疫疾患は、表2にリストされる疾患に限定することを意図しない。
【0155】
2.ワクチンの調製
好適なベクターを、標準的な組み換えDNA技術を使用して調製し、それらは、例えば、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,2nd edition(Sambrookら、1989)、“Oligonucleotide Synthesis”(M.J.Gait編、1984)、“Animal Cell Culture”(R.I.Freshney編、1987)、“Methods in Enzymology”(Academic Press,Inc.)、“Handbook of Experimental Immunology”,第4版(D.M.Weir & C.C.Blackwell編、Blackwell Science Inc.,1987)、“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells”(J.M.Miller & M.P.Calos編、1987)、“Current Protocols in Molecular Biology”(F.M.Ausubelら編、1987)、“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullisら編、1994)、および“Current Protocols in Immunology”(J.E.Coliganら編、1991)に記載されている。分離されたプラスミドおよびDNA断片は、特定の順序で分割、調整、および結紮され、望ましいベクターを生成する。結紮後、発現する遺伝子を含むベクターは、好適なホスト細胞に変換される。
【0156】
ホスト細胞は、異種タンパク質の発現で知られる任意の真核または原核ホストである可能性がある。したがって、本発明のポリペプチドは、真核ホスト、例えば、真核細菌(イースト)または多細胞生物(哺乳類細胞培養)、植物および昆虫細胞から分離された細胞において発現しうる。異種ポリペプチドの発現に好適な哺乳類細胞株の例は、SV40(COS‐7,ATCC CRL 1651)により形質転換されたサル腎CVI細胞株、ヒト胎児腎細胞株293S(Grahamら、J.Gen.Virol.36:59[1977])、新生ハムスターの腎細胞(BHK,ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞(Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216[1980]、サル腎細胞(CVI‐VI‐76,ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル細胞(VERO‐76,ATCC CRL‐1587)、ヒト頚癌細胞(HELA,ATCC CCL 2)、イヌ科腎細胞(MDCK,ATCC CCL 34)、ヒト肺細胞(W 138,ATCC CCL 75)、およびヒト肝細胞(Hep G2,HB 8065)を含む。一般的な骨髄腫細胞において、特に、任意の内生抗体、例えば、骨髄腫細胞株SP2/0を生成する非免疫グロブリンを生成しないものを本明細書に記載の抗体の生成に使用してもよい。
【0157】
昆虫細胞ホストを採用する真核細胞発現系は、プラスミド発現系またはバキュロウイルス発現系のいずれかに依存することができる。典型的な昆虫ホスト細胞は、秋アワヨトウの幼虫(Spodoptera frugiperda)に由来する。異種タンパク質の発現のため、これらの細胞は、ウイルスポリへドリンプロモータの制御下で発現される標的の遺伝子を有する組み換え型のバキュロウイルスAutographa californica核多角体病ウイルスに感染させられる。このウイルスに感染した他の昆虫は、商業上「High 5」(Invitrogen)として知られるキャベツシャクトリムシ(Trichoplusia ni)に由来する細胞株を含む。しばしば使用される別のバキュロウイルスは、カイコ(Bombyx mori)に感染するBombyx mori核多角体病ウイルスである。多くのバキュロウイルス発現系は、例えば、Invitrogen(Bac‐N‐BlueTM)、Clontech(BacPAKTM Baculovirus Expression System)、Life Technologies(BAC‐TO‐BACTM)、Novagen(Bac Vector SystemTM)、Pharmingen and Quantum Biotechnologies)などから商業的に入手可能である。別の昆虫細胞ホストは、一般的なショウジョウバエである、キイロショウジョウバエであり、一時的または安定したプラスミドベースのトランスフェクションキットは、Invitrogen(The DESTM System)により商業的に提供される。
【0158】
Saccharomyces cerevisiaeは、下位の真核ホストの間で最も一般に使用される。しかし、Pichia pastoris(EP 183,070;Sreekrishnaら、J.Basic Microbiol.28:165-278(1988))などのその他多くの属、種、および株も使用可能であり、本明細書において有効である。イースト発現系は市販されており、例えば、Invitrogen(San Diego,Calif.)から購入できる。二官能価タンパク質発現に好適なその他のイーストは、Kluyveromycesホスト(米国特許番号第4,943,529号)、例えば、Kluyveromyces lactis;Schizosaccharomyces pombe(Beach and Nurse,Nature 290:140(1981);Aspergillusホスト、例えば、A.niger(Kelly and Hynes,EMBO J.4:475-479(1985))およびA.nidulans(Ballance et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.112:284-289(1983))、およびHansenulaホスト、例えば、Hansenula polymorphaを含むが、それらに限定されない。イーストは、安価な(最小の)培地上で急速に成長し、組み換えは、相補性により容易に選択でき、発現されたタンパク質は、細胞質の局在性または細胞外輸送のために特異的に設計できる。また、それらは大規模な発酵に好適である。
【0159】
原核生物は、初期クローン化ステップ用のホストであってもよく、大量のDNAの高速生成、部位特異的突然変異誘発に使用される単一鎖DNAテンプレートの生成、多くの突然変異体の同時審査、および生成された突然変異のDNA配列決定に役立つ。本発明のペプチドの生成に好適なE.coli株は、例えば、誘導可能なT7 RNAポリメラーゼ遺伝子を担持するBL21を含む(Studierら、Methods Enzymol.185:60-98(1990))、AD494(DE3)、EB105、およびCB(E.coli B)およびそれらの生物、K12株214(ATCC 31,446)、W3110(ATCC 27,325)、X1776(ATCC 31,537)、HB101(ATCC 33,694)、JM101(ATCC 33,876)、NM522(ATCC 47,000)、NM538(ATCC 35,638)、NM539(ATCC 35,639)などを含む。その他多くの種および属の原核生物を同様に使用してもよい。実際に、本発明のペプチドは、バクテリアにおける組み換えタンパク質発現を利用して、容易に大量生成することが可能であり、ここでペプチドは、親和性精製に使用される開裂可能なリガンドに融合される。
【0160】
様々なホスト細胞における発現に好適なプロモータ、ベクター、およびその他の構成要素は、当該技術分野において周知であり、例えば、上記のテキストに記載されている。
【0161】
特定の細胞または細胞株が、機能的活性型での生成に好適であるかどうかは、実験的分析によって特定される。例えば、望ましい分子のコード化配列を含む発現構成を使用して、候補細胞株に核酸導入してもよい。次に核酸導入した細胞を培地で成長させ、媒体を収集し、分泌されたポリペプチドの存在を試験する。次に、ELISAなどの当該技術分野で既知の方法により、生成物を定量する。
【0162】
代わりに、固相ペプチド合成などの化学合成によって全体分子を生成してもよい。そのような方法は、当該技術分野において熟練する者には周知である。一般に、これらの方法は、基本テキスト、例えば、固相ペプチド合成技術に関しては、J.M.Stewart and J.D.Young,Solid Phase Peptide Synthesis、第二版、Pierce Chemical Co.,Rockford,III.(1984)およびG.Barany and R.B.Merrifield,The Peptide:Analysis Synthesis,Biology,editors E.Gross and J.Meienhofer,Vol.2,Academic Press,New York,(1980),pp.3-254、伝統的な溶液合成に関しては、M.Bodansky,Principles of Peptide Synthesis,Springer‐Verlag,Berlin(1984)およびE.Gross and J.Meienhofer編、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,(上記)Vol.1などに記載される固相合成方法または液相合成方法のいずれかを採用する。
【0163】
本発明の分子は、アミノ酸配列の変異型を含んでもよい。そのようなアミノ酸配列変異型は、基礎となるDNA配列を好適な組み換えホスト細胞において発現するか、または上述のように、望ましいポリペプチドの体外合成によって生成できる。ポリペプチド変異型をコード化する核酸配列は、対応する天然(例えば、ヒト)ポリペプチドをコード化する核酸配列の部位特異的変異誘発により生成されてもよい。ポリメラーゼ鎖反応(PCR)増幅を使用する部位特異的変異誘発を使用してもよい。(例えば、1987年7月28日発行の米国特許番号第4,683,195号、およびCurrent Protocols In Molecular Biology,Chapter 15(Ausubelら編、1991)を参照されたい。その他の部位特異的変異誘発技術は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、以下の発行物に記載されている。Current Protocols In Molecular Biology(上記)第8章、Molecular Cloning:A Laboratory Manual.,2nd edition(Sambrookら、1989)、Zollerら、Methods Enzymol.100:468-500(1983)、Zoller & Smith,DNA 3:479-488(1984)、Zollerら、Nucl.Acids Res.,10:6487(1987)、Brakeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:4642-4646(1984);Botsteinら、Science 229:1193(1985)、Kunkelら、Methods Enzymol.154:367-82(1987),Adelmanら、DNA 2:183(1983)、およびCarter et al.,Nucl.Acids Res.,13:4331(1986)。カセット式変異誘発(Wellsら、Gene 34:315[1985])、および制限選択変異誘発(Wellsら、Philos.Trans.R.Soc.London SerA,317:415[1986])を使用してもよい。
【0164】
1つ以上のアミノ酸置換によるアミノ酸配列変異型は、いくつかの方法のうちの1つで生成されてもよい。アミノ酸がポリペプチド鎖において互いに近接して配置される場合、それらは、すべての望ましいアミノ酸置換をコード化する1つのオリゴヌクレオチドを使用して同時に変異することができる。しかし、アミノ酸が互いに離れて(例えば、10アミノ酸より多く離れて)配置される場合、すべての望ましい変化をコード化する単一のオリゴヌクレオチドを生成することは、より困難である。代わりに、2つの代替方法のうちの1つを採用してもよい。第1の方法では、置換される各アミノ酸に対して個別のオリゴヌクレオチドを生成する。次に、オリゴヌクレオチドを単一鎖のテンプレートDNAに同時にアニールし、テンプレートから合成されるDNAの第2鎖は、すべての望ましいアミノ酸置換をコード化する。代替方法は、2つ以上の一連の変異誘発を伴い、望ましい変異体を生成する。
【0165】
本発明のポリペプチドは、例えば、国際特許出願公開PCT WO92/09300において開示される連結ペプチドライブラリ法によって調製することもできる。この方法は、特定の事前定義された配列の変型である複数の分子を調製および分析するため特に好適であり、よって改善された生物学的特性を持ち、当該技術において知られている任意の技術、例えば、組み換えDNA技術および/または化学合成によって生成できるポリペプチドの識別において特に有効である。
【0166】
3.本発明のワクチンの治療上の使用
本発明は、特にIgE媒介の、いわゆる即時型アレルギー疾患を予防および治療するための新規の治療用DNAワクチン法を提供する。特に本発明は、Th2偏極性反応およびアレルギー性炎症の誘導が見られるアレルギー性疾患の予防および治療に使用する化合物を提供する。
【0167】
4.標的疾患の性質
Gell and Coombs Classificationに基づき、アレルギー反応は、誘発される免疫反応、および抗原に対する反応性の結果として進行する組織損傷の種類により分類される。I型反応(即時型アレルギー)は、体内に進入した抗原(この場合はアレルゲンと呼ぶ)が、マスト細胞または好塩基球に接触して起こり、マスト細胞または好塩基球は、その抗原に対するIgEが、その高親和性レセプタFcεRIに付加されることにより感作される。アレルゲンは、感作されたマスト細胞に到達すると、FcεRIに結合されたIgEと交差結合し、細胞内カルシウム(Ca2+)を増加させ、ヒスタミンおよびプロテアーゼ、およびロイコトリエン、プロスタグランジンといった新規に合成された脂質由来のメディエータなどを含む予備形成されたメディエータを放出させる。これらのオータコイドは、アレルギーの急性臨床症状を生じる。また刺激を受けた好塩基球およびマスト細胞は、アレルギー反応の急性期および遅延期に関与する炎症誘発メディエータを生成および放出する。免疫系の他の部分、例えば、T細胞およびNKT細胞が、全体的な直接過敏性反応において積極的役割を果たすことも現在明らかになっている。
【0168】
前述のように、これまで様々なアレルゲンが識別されており、実際に新規アレルゲンが毎週のように確認され、クローン化され、配列決定されている。
【0169】
アレルゲンを摂取すると、胃腸および全身にアレルギー反応を引き起こす。最も一般的に関与する食物アレルゲンは、ピーナッツ、甲殻類、牛乳、魚、大豆、小麦、卵およびくるみなどの木の実である。影響を受けやすい人において、これらの食物は、吐き気、嘔吐、下痢、蕁麻疹、血管性浮腫、喘息、および本格的なアナフィラキシを含む様々なアレルギー症状を引き起こす可能性がある。空気中に浮遊するアレルゲンを吸入すると、アレルギー性鼻炎およびアレルギー性喘息を引き起こす。これらは、暴露の性質によって急性または慢性となりうる。目が空気中に浮遊するアレルゲンに曝されると、アレルギー性結膜炎を生じる。一般に、空気中に浮遊するアレルゲンは、花粉、カビ胞子、チリダニ、および、他の昆虫タンパク質を含み、および季節的花粉症およびアレルギー性喘息の最多原因である。
【0170】
ラテックスグローブに見られるような天然ゴムラテックスタンパク質などのアレルゲンに皮膚暴露すると、アレルゲンに接触した場所に蕁麻疹などの局所アレルギー反応、および全身反応を示すこともある。
【0171】
アレルゲンへの全身暴露、例えば、ハチ刺され、ペニシリン注射、または手術中の患者体内における天然ゴムラテックス(NRL)グローブの使用によって生じる全身暴露は、気道閉塞および本格的なアナフィラキシまでを含む皮膚、胃腸、および呼吸器の反応を引き起こす場合がある。膜翅目は、刺されると一般にアレルギー反応を引き起こす昆虫であり、アナフィラキシー・ショックに至る場合も多い。例えば、ミツバチ、スズメバチ、カリバチ、およびクマンバチなどの様々なハチを含む。ヒアリ(Solenopsis invicta)として知られるある種のアリが米国内での生息範囲を拡大するにつれて、アレルギーの原因となるケースが増えている。NRLグローブ中のタンパク質は、医療従事者および患者にとって高まる懸念事項となっており、現時点において、この問題に対する有効な治療形態は、接触を避けること以外にない。
【0172】
5.標的疾病に対する化合物の使用
本明細書に開示の化合物を使用し、主要な環境および職業アレルゲンに対するIgE媒介の反応を急性的または長期的に抑制することができ、特にアレルギーワクチン接種(免疫療法)における保護の提供に使用し、特定のアレルゲンに対する治療中に非アレルギー反応性(いわゆる「アレルギー耐性」)の状態を誘発できる。また、リスクの高い個人(例えば、喘息の遺伝リスクがある者および職場で職業アレルゲンに曝される者)に投与された場合、環境および職業アレルゲンに対するアレルギー感作を回避することにより、アレルギー性疾患に対する予防効果を持つこともできる。
【0173】
6.本発明の組成および製剤
予防を含む治療に使用する場合、本発明の化合物を薬学的に許容しうる担体または希釈剤と混合し、医薬組成として形成できる。医薬組成の形成方法は、当該技術分野においてよく知られている。
【0174】
技術および処方は、一般にRemington’s Pharmaceutical Sciences,第18版、Mack Publishing Co.,Easton,Pa.1990に記載されている。また、Wang and Hanson “Parenteral Formulations of Proteins and Peptides: Stability and Stabilizers”,Journal of Parenteral Science and Technology,Technical Report No.10,Supp.42-2S(1988)も参照されたい。最適な投与形式は、各患者の担当医により決定される。
【0175】
本発明の医薬組成は、従来の担体および任意でその他の成分とともに、本発明のワクチンを含むことができる。
【0176】
好適な形態は、例えば、経口、経皮、吸入、または注射など、その使用または進入経路に一部基づく。そのような形態は、標的細胞が多細胞ホスト中または培地のどちらに存在するにしても、薬剤または組成を標的細胞に到達させる必要がある。例えば、血流に注入される薬剤または医薬組成は、溶解性を有する必要がある。その他の要素は、当該技術分野において知られており、毒性および薬剤または組成の効果を妨げる形態などの考慮事項を含む。
【0177】
担体または賦形剤を使用し、化合物の投与を促進することもできる。担体および賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース、グルコース、またはスクロースなどの様々な糖類、またはスターチ類、セルロース派生物、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコールおよび生理的に互換性のある溶媒を含む。組成または医薬組成は、異なる経路により投与できる。それには、経口、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、鼻腔内、または肺内経路が含まれるが、それらに限定されない。組成の望ましい等張性は、塩化ナトリウムまたは他の薬学的に許容しうる薬剤、例えば、D形グルコース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、ポリオール(マンニトールおよびソルビトールなど)、または他の無機または有機溶質を使用して実現できる。
【0178】
全身投与の場合、例えば、皮内、皮下、筋肉内、静脈内などの注射を使用してもよい。注射の場合、発明の化合物は、Hank溶液またはRinger溶液などの生理的に互換性のある緩衝液などの溶液で形成される。代わりに、本発明の化合物は、一般にUSP基準の定義によって安全であると認められる1つまたは複数の賦形剤(例えば、プロピレングリコール)で形成される。好ましくは、例えば、ゴマ油、ピーナッツ油、オリーブ油、または他の許容しうる担体を含む植物油などの不活性油に懸濁できる。
【0179】
それらは、水溶性担体、例えばpHが約5.6〜7.4の等浸透圧緩衝液に懸濁される。これらの組成は、従来の殺菌技術により殺菌するか、またはろ過により滅菌できる。組成は、生理的状態に近づけるため必要とされる場合は、pH緩衝剤などの薬学的に許容しうる補助剤を含むことができる。有用な緩衝剤は、例えば、酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液を含む。容器または「デポ」徐放製剤の形態を使用し、治療上有効な量の製剤が、経皮的注射または送達後、多くの時間または日数をかけて血流に送達されるようにできる。さらに、化合物を固形に形成し、使用直前に再溶解または懸濁することができる。凍結乾燥形も含まれる。
【0180】
代わりに、本発明に基づいて同定される特定の分子は、経口投与が可能である。経口投与の場合、化合物はカプセル、錠剤、および炭酸水などの従来の経口投薬の形状で形成される。
【0181】
全身投与は、経粘膜的または経皮的によるものであってもよい。経粘膜的または経皮的投与の場合、浸透するバリアに適切な浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、当該技術分野において一般に知られており、例えば、経粘膜的投与の場合は、胆汁塩およびフシジン酸派生物を含む。さらに、洗浄剤を使用して浸透を促進できる。経粘膜的投与は、例えば、鼻腔用スプレーまたは坐薬を使用して行うことができる。
【0182】
本発明の化合物を投与する一経路は、鼻腔内および/または肺内送達のための吸入であってもよい。吸入による投与の場合、通常、吸入可能な乾燥粉末組成またはエアロゾル組成が使用される。ここで、粉末または液滴のサイズは、例えば、喉、上気道、または肺などの呼吸路の望ましい部分に活性成分が確実に沈着するよう選択される。吸入可能な組成および投与のための装置は、当該技術分野においてよく知られている。例えば、エアロゾル薬剤を吸入により送達する装置が知られている。そのような装置の一例は、装置の作動によって同容量の薬物が患者に送達される定量吸入器である。定量吸入器は、一般に、加圧下で薬物および推進剤の容器を含むキャニスタ、および固定量の定量室を含む。キャニスタは、薬物を患者に送達するためのマウスピースまたはノズルを有する本体またはベースのレセプタクルに挿入される。患者は、手でキャニスタを本体に押し入れ、充てん弁を閉じて室内の定量の薬物を捕捉し、放出弁を開けて用量室内で捕捉された定量の薬物をエアロゾルミストとして大気に放出することにより装置を使用する。同時に、患者は、マウスピースを通じて吸入し、ミストを気道に引き込む。次に、患者はキャニスタを解放し、放出弁を閉じ、充てん弁を開けて用量室を充てんして次の薬物投与に備える。例えば、米国特許番号第4,896,832号、およびAerosol Sheathed Actuator and Capとして知られる3M Healthcareから入手可能な製品を参照されたい。
【0183】
別の装置は、患者の呼吸努力に応えて自動的に定量を提供するよう機能する、息で作動する定量吸入器である。息で作動する装置の一形式は、呼吸努力が機械レバーを動かし放出弁を作動させると、投与量を放出する。別の形式は、熱線風量計により検出された検出流量が事前設定された閾値を上回ると、投与量を放出する。例えば、米国特許番号第3,187,748号、第3,565,070号、第3,814,297号、第3,826,413号、第4,592,348号、第4,648,393号、第4,803,978号を参照されたい。
【0184】
乾燥した粉末薬を患者の気道に送達する(例えば、米国特許番号第4,527,769号を参照)、および固形前駆物質を加熱することによりエアロゾルを送達する(例えば、米国特許番号第4,922,901号を参照)装置が存在する。これらの装置は、通常、患者の呼吸量に応じて薬物を容器から気道に引き入れることにより、患者の呼吸の初期段階の間に薬物を送達するか、または加熱要素を作動させて固形エアロゾル前駆物質を揮発させる働きをする。
【0185】
エアロゾルの粒子の大きさを制御する装置も知られている。例えば、米国特許番号第4,790,305号、第4,926,852号、第4,677,975号、および第3,658,059号を参照されたい。
【0186】
局所投与の場合、発明の化合物は、当該技術分野において一般に知られている、オイントメント、軟膏、ゲルまたはクリーム状に形成される。
【0187】
望ましい場合、上述の組成の液体は、メチルセルロースなどの増粘剤で粘度をつけることができる。それらは、油中に水または水中に油を入れた乳液状に調製することができる。例えば、アカシア粉末、非イオン性界面活性剤(Tweenなど)、またはイオン性界面活性剤(アルカリポリエーテルアルコール硫酸またはTritonなどのスルフォン酸など)幅広い薬学的に許容しうる乳化剤のいずれをも採用することができる。
【0188】
本発明における有用な組成物は、一般的に許容される手順に従い、材料を混合して調製される。例えば、選択した構成要素をブレンダまたはその他の標準的装置で混合するだけで濃縮混合物を生成することができ、次に、水または増粘剤、場合によってはpHを制御する緩衝液を添加することにより最終濃度および粘度を調節するか、または溶質を追加することにより張度を制御できる。
【0189】
本発明の方法で使用する様々な化合物の投与量は、標準的な手順により決定できる。一般に、治療上有効な量は、患者の年齢および体格、その患者に関連する疾患または障害に基づいて約100mg/kg〜10-12mg/kgの間の量である。一般に、治療対象の個人に対して約0.05〜50mg/kg、または約1.0〜10mg/kgの量である。実際の投与量の決定は、通常の医師の技量の範囲である。
【0190】
本発明の化合物は、1つまたは複数のさらなるIgE媒介のアレルギー性疾患または状態の治療用薬剤と合わせて投与してもよい。
【0191】
そのようなさらなる治療薬は、コルチコステロイド、β拮抗薬、テオフィリン、ロイコトリエン抑制剤、アレルゲンワクチン、および溶解性組み換えヒトIL‐4レセプタ(Immunogen)およびToll様レセプタを標的とする治療薬などの生物学的反応修飾因子を含むが、それらに限定されない(例えば、Barnes,The New England Journal of Medicine341:2006-2008(1999)を参照)。したがって、本発明の化合物を使用し、吸入または経口コルチコステロイドを用いて行われるコルチコステロイド療法などの従来のアレルギー治療を補足することができる。
【0192】
7.製品
本発明は、本明細書に記載のワクチンを含む製品も提供する。製品とは、容器および容器上のラベルまたは添付文書、あるいは容器に関連するラベルまたは添付文書を含む。好適な容器は、例えば、ボトル、ガラスビン、シリンジなどを含む。容器は、ガラスまたはプラスチックなど様々な材料から形成されてもよい。容器は、状態の治療に有効な組成を保持し、殺菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は静脈注射用溶液の袋または皮下注射針で穿孔できる栓のついたガラスビンであってもよい)。また容器は、上述されたような吸入装置であってもよい。組成中の活性成分の少なくとも1つは、本発明のワクチンである。ラベルまたは添付文書は、例えば、喘息または上記のIgE媒介アレルギーを含むアレルギー状態などの治療に組成を使用することを示す。製品は、注射(BWFI)用静菌性の水、リン酸緩衝生理食塩水、Ringer溶液およびD形グルコース溶液などの薬学的に許容しうる緩衝液を含む容器をさらに含んでもよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、およびシリンジを含む、商業的およびユーザの見地から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0193】
本発明に関するさらなる詳細は、以下の非限定的な例に従って説明する。
【0194】
本明細書に記載の特許および公開物は、当該技術分野における一般的な技術について記載し、参照することにより全体が、また、それぞれが特異的および個別に組み込まれるかのように本明細書に組み込まれる。参照文献と本明細書との間に矛盾が生じる場合は、本明細書が優先される。
【実施例】
【0195】
実施例
実施例1.IgE媒介の遺伝子送達ワクチンの構成および発現
ヒトFcεRIα鎖遺伝子組み換えマウス
マウスAPC(例えば、マクロファージ、単球、およびDC)は、FcεRIを発現しないため、FcεRI発現DCに対するIgE媒介のアレルゲン遺伝子送達という概念は、従来のマウスでは試験できない。ヒトFcεRIα鎖のトランス遺伝子をを担持するマウス、例えば、hFcεRIα Tgマウス(マウス内生FcεRIα鎖は、シグナル伝達の際に競合しないよう排除した)は、ヒトFc FcεRIの細胞特異的発現のヒトパターンを非常に良く示す(Dombrowicz,D.ら、1996.J.Immunol.157:1645、Dombrowicz,D.ら、1998.Immunity.8:517)。そのため、hFcεRIα Tgマウスは、ヒトIgEの機能的FcεRIαを、マスト細胞、好塩基球、好酸球上だけでなく単球、ランゲルハンス細胞、および、DCなどのAPC上で発現し、αβγ2レセプタ複合体をマスト細胞および好塩基球上でで、αγ2レセプタ複合体をAPC上で発現する(Dombrowicz,D.ら、1996.J.Immunol.157:1645、Dombrowicz,D.ら、1998.Immunity.8:517)。hFcεRIα Tgマウスは、マウスFcεRIα鎖を欠くため、マウスIgEを生成するが、それを介して反応性はない。しかし、全身および局所アレルギー反応を誘導しうるIgG1を生成する。このマウス株は、Dr.Jean‐Pierre Kinet(Harvard Medical School,Boston,MA)から厚意で提供され、マウスは、他の目的で数年間飼育している。我々は、hFcεRIα TgマウスからのCD11cDCsは、eBioscience(San Diego,CA 92121,USA.)の抗ヒトFcεRIα抗体による測定で、ヒトFcεRIαを細胞表面に発現することを確認した。
【0196】
ヒトIgE
大量の組み換えヒトIgEおよびIgEイソフォームを発現および精製した(Lyczak,J.,B.ら、1996.J.Biol.Chem.271:3428)。大量のIgEをIgE骨髄腫患者PSの血清から精製した(Dr.McIntyreおよびDr.Ishizakaから提供)。
【0197】
Fascin プロモータベクター
マウスFascinプロモータの制御による発現ベクターは、2.6KbマウスFascinプロモータをクローン化し、PCRにより構成した(Sudowe,S.,Lら、2006.J Allergy Clin Immunol.117:196-203)。pCMV‐EGFPベクターにおけるCMVプロモータ、またはpcDNA3.1‐Fel d1は、従来のクローン化法により分離されたFasceinプロモータで置換された。
【0198】
Fel d1遺伝子
Fel d1抗原の両鎖を発現する工学的遺伝子、ネコからの優位アレルゲンは、Dr.Paul GuyreおよびDr.Amanda Sun(Dartmouth College)から取得した(Vailes,L.D.ら、2002)。J.Allergy Clin.Immunol.110:757)。
【0199】
DCにおいて特異的に活性される発現ベクターの構成
FcεRI担持細胞の標的は、ヒトIgEおよびDNAポリプレックスの使用により行われる。FcεRI担持DCにおいて、伝達された遺伝子を効率的かつ選択的に発現するため、アクチン束化タンパク質Fascinプロモータの制御による緑色蛍光タンパク質(GFP)発現構成をモデル伝達遺伝子構成として使用する。成熟途中および成熟したDC、および濾胞期DCは、Fascinを発現する唯一の造血細胞であるため(Ross,R.ら、1998.J Immunol.160:3776、Ross,R.ら、2000.J Invest Dermatol.115:658、Mosialos,G.ら、1996.Am J Pathol.148:593、Mosialos,G.ら、1994.J Virol.68:7320、Pinkus,G.S.ら、1997.Am J Pathol.150:543、Bros,M.ら、2003.J Immunol.171:1825、Ross,R.ら、2003.Gene Ther.10:1035)、Fascinプロモータは、トランス遺伝子の選択的DC特異的発現を保証する必要がある。これを、不規則な細胞発現を示すことが予想されるCMV直接的早期プロモータ(pCMV)構成の伝達と比較する。pCMVは、IgE‐FcεRI依存性遺伝子伝達により媒介される全種類の細胞、例えば、APC、マスト細胞および好塩基球においてGFP発現を引き起こすことが予想されるが、Fascinプロモータは、マスト細胞および/または好塩基球ではなく、DCにおいてのみ機能するため、DCにおける細胞型特異的遺伝子発現様式を提供する必要がある。(Ross,R.ら、1998.J Immunol.160:3776、Ross,R.ら、2000.J Invest Dermatol.115:658、Mosialos,G.ら、1996.Am J Pathol 148:593、Mosialos,G.ら、1994.J Virol.68:7320、Pinkus,G.S.ら、1997.Am J Pathol.150:543、Bros,M.ら、2003.J Immunol.171:1825、Ross,R.ら、2003.Gene Ther.10:1035)。
【0200】
モデルCMV直接早期プロモータ(pCMV)の制御による、およびFascinプロモータの制御による緑色蛍光タンパク質(GFP)プラスミドを構成し、それらを使用して標的した遺伝子送達および発現の有効性を特定する。これは、細胞型に特異的な遺伝子発現を証明する。
【0201】
主要アレルゲン遺伝子cDNA[ピーナッツアレルゲンAra h1およびAra h2(Univ. of Arkansas、Dr.BurksおよびDr.G.Bannonから厚意で提供された)(Shin DSら、J Biol Chem.73:13753,1998)、卵アレルゲンオボムコイド(Gal d1)または牛乳アレルゲンαカゼイン(Mt.Sinai Medical CenterのH.Sampsonから厚意で提供された)]を含む特定のプラスミドは、マウスDC特異的Fascinプロモータの転写調節下で構成し、ピーナッツ、卵、または牛乳アレルギー免疫療法のアレルゲン遺伝子ワクチンとして使用する(図6)。
【0202】
ピーナッツアレルゲンAra h1を含むプラスミドをCMV直接早期プロモータ(pCMV)の転写調節下で構成した。Ara h1 cDNA含有プラスミド(Univ. of Arkansas、Dr.BurksおよびDr.G.Bannonから厚意で提供されたpbluescript−Ara h1)をNot IおよびApa Iを用いて消化し、2.0Kb断片を放出し、またこの断片をNot I‐Apa I部位におけるpcDNA3.1ベクターに挿入した。
【0203】
使用されるプラスミドは、pCDNA3.1背景にあり、空の(対応する遺伝子配列を持たない)ベクターは、特に指定のない限り、模擬対照として含まれる。すべてのプラスミド構成は、内毒素が含まれていないプラスミド調製キットを用いて調製し、内毒素の残余量レベルは、Limulusアッセイにより特定する。
【0204】
発現したタンパク質を細胞外に分泌させるリード配列は、DNAワクチンへの細胞免疫反応の誘発を容易にする場合がある(Jiang C ら、Infect Immunol 70:3539,2002)。プラスミドにおけるリード配列は、一部のアレルゲンDNAワクチン接種において、抗原特異的IgE生成を著しく増加することが見出されたため、当アレルゲンワクチン接種の目的において、リーダー配列を含めないこととした(Tan LKら、Vaccine.24:5762,2006)。さらに、APCによってアレルゲンタンパク質またはその断片を分泌させることに特別な関心はない。実際に、分泌された任意の発現抗原(したがってアレルゲン)は、少なくとも局部的なアレルギー反応を誘発する可能性がある。
【0205】
IgE‐PLLの調製:
ポリカチオン試薬の一種であるポリ‐L‐リジン(PLL)は、遺伝子送達のためのタンパク質‐DNAベクター複合体形成に広く使用されている(Cristiano R.J.1998.Front Biosci.3:d1 161)。この方法は、タンパク質とDNA発現ベクターの間に、化学的共有交差結合ではなく、損傷を与えないイオン電荷を利用するためである(Cristiano R.J.1998.Front Biosci.3:d1 161)。PLLは抗原性を持たないため、PLL複合DNAを繰り返し投与できる。
【0206】
PLLは、IgEに対して化学的に交差結合されている(以下を参照)。IgE‐PLL複合体をCMV‐またはFascin‐プロモータの制御によるGFP発現ベクターと混合し、IgE媒介の遺伝子送達のためのIgE‐PLL:DNAベクターポリプレックスをイオン的に形成できうる。
【0207】
PLLをタンパク質と交差結合するために複数の方法を使用できる(Cristiano R.J.1998.Front Biosci.3:d1 161)。しかし、所定の遺伝子を特定タイプの細胞に標的する相対的効率は比較されていない。そこで、遺伝子送達および発現の効率に関して3つの方法を比較する。エチル‐3(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(ED)連結法(Wu,G.Y.&Wu,C.H.1987.J Biol Chem.262:4429),3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸N‐ヒドロキシスクシニンミドエステル(SPDP)法(Wagner,E,et al.,1990.Proc Natl Acad Sci USA.87:341049)およびビオチン‐ストレプトアビジン法(Cotten, M.,et al.,1992.Proc Natl Acad Sci USA.89:6094)を使用してIgEをPLLに連結する。
【0208】
IgE‐PLLの交差結合は、指向性交差結合プロトコルを用いて行った(Wu,G.Y.&Wu,C.H. 1987.J Biol Chem.262:4429)。IgEがそれ自身にではなく、PLLにのみ交差結合することを意図した。2つ以上のIgEが1つのPLLに同時に交差結合する(複数のIgE含有複合体を形成する)可能性は、IgEとPLLのモル比を1:1に調節することにより制限できる。遺伝子送達のためのIgE‐PLL複合体を調製する化学的交差結合法は、望ましくないIgE交差結合の副作用を起こす可能性があり、アレルギー反応を誘発しうる非モノマーIgE分子が生じる。さらに、交差結合されたIgE‐PLL複合体のサイズおよび程度は、化学反応の性質上、この方法で制御することは困難である。そのため、バッチ間で製品が著しく異なる可能性がある。
【0209】
これらの問題を解決するため、組み換えDNA技術を使用し、60の反復リジン(IgE‐PLL)の180bp合成DNAコード化と連結されたヒトIgE重鎖(CH2‐CH3‐CH4)の融合遺伝子を構成および発現することにより、IgE‐PLLを生成した(図4Aに示す)。この構成は、Fcエプシロン‐ポリリジンタンパク質または「EPL」と呼ばれる。ヒトIgE重鎖(CH2‐CH3‐CH4)をリジンおよびアルギニンの交互反復をコードする180bp合成DNA連結する組み換えDNA技術を使用し、IgE‐PRL DNAを構成した。構成図については、図3を参照されたい。図3において、クローン化を目的とする制限部位は下線表示されている。このアプローチは、各IgE分子が一様にPLLまたはPRLに関連することにより、考えられるIgE交差結合が起こらないようにし、異なる時期に行われたすべての実験において、生成物の品質が同一となるようにする。
【0210】
使用に先立ち、いかなる残余量の多重結合IgE‐PLL複合体も、FPLCにより除去される(Cristiano R.J.1998.Front Biosci.3:d1 161)。
【0211】
哺乳類(NSO)細胞において発現されるEPLタンパク質は、親和性の抗IgEコラムで精製され、溶出したタンパク質は、Coomassie青色染色およびウェスタンブロット法により分析された。Coomassie青色染色は、発現したEPL融合タンパク質が、天然(非還元)条件下では主として120Kdの分子量で移動するが、還元条件下では主として60Kdの塊として存在することを示した。これは、EPLが主に予想される二量体(図5B)として組み立てられることを示す。2つのエプシロン鎖二量体が、単一のFcεRIに対して極めて高いFcεの親和性をうることが必要とされるため、二量体としてのEPLのこの発現は、非常に重要である。(Garman SC,Wurzburg BA,Tarchevskaya SS,Kinet JP and Jardetzky TS.“Structure of the Fc fragment of human IgE bound to its high‐affinity receptor FcεRIα.” Nature 406:259,2000)。
【0212】
融合タンパク質の発現
電気穿孔法により、EPLプラスミドを2-4×107Ns0/1骨髄腫細胞に核酸導入した。DNAを含まない対照に対して2×106細胞を含む細胞を1000rpmで5分間回転させ、0.5mlの冷却PBSに再懸濁し、0.4cmの電気穿孔キュベット(BioRad,Hercules,CA)に置いた。PBS中50μlの線形化したプラスミドDNAをキュベットに添加し、氷上で10分間培養した。200V、960μFで細胞をパルスした後、氷上で10分間配置した。10mlのIscoves修正Dulbecco培地(IMDM,Irvine Scientific,Santa Ana,CA)+5%補足仔牛血清(CS,Hyclone,Logan,UT)で細胞を洗浄し、IMDM+10%仔牛血清中2x106細胞/プレートに置いた。2日後、細胞にIMDM+10%CS+1mg/mlジェネティシン(Invitrogen)を含む選択培地を与えた。3日後に選択培地を補充した。コロニーを含むウェルをELISAにより試験した。タンパク質生成細胞をローラボトル中で成長させ、クエン酸pH4.5およびグリシンpH2.5を使用し、酸溶離によって抗IgE親和性コラム(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)上でタンパク質を精製した。1mlの少量タンパク質を2M Tris,pH8.0で中和し、PBSに対して透析した。
【0213】
SDS‐PAGE:
1xサンプル緩衝液(25mM Tris,pH6.7,2% SDS,10%グリセロール、0.008%ブロモフェノールブルー)中で2分間沸騰させることにより精製したタンパク質を変性させ、非還元サンプルを150mAmpでSDS‐PAGEにより分離した。また変性したサンプルを、1%βメルカプトエタノールを用いて2分間沸騰させて還元し、SDS‐PAGEにより分離した。
【0214】
フローサイトメトリ:
EPL融合タンパク質とFcεRIの結合は、3D10およびKu812上のフローサイトメトリにより評価した。細胞は、Iscoveの変性Dulbecco培地(IMDM、Irvine Scientific,Santa Ana,CA)に+10%胎仔血清を加えて成長させた。各サンプルに関して、106細胞を1mlのPBS中、pH7.4、2000rpmで5分間回転させて洗浄し、上澄みを除去した。EPLおよびIgEタンパク質と共に、あるいは、それを含めずに、100μlのIMDMおよび10%FCS中、いくつかの濃度で細胞を再度懸濁し、4℃で1時間培養した。1mlのPBSで細胞を2回洗浄した後、37℃で培養し、100μl10μg/ml FITC標識ヤギ抗ヒトエプシロン鎖(Sigma)を用いて4℃で30分間培養した。細胞を1mlのPBS中で3回洗浄し、500μlの2%パラホルムアルデヒドのPBS溶液に再度懸濁した。サンプルをFACSフローサイトメータ(Becton Dickinson Immunocytometry Systems,San Jose,CA)で分析し、死細胞および残骸を排除する。
【0215】
細胞摂取および発現を強化するためのIgE‐PLL修飾
実験では、特定の標的(IgE‐FcεRI)および発現(Fascinプロモータ)機序をアレルゲンワクチンアプローチにおける基本的重要要素として利用する。修飾を行い、プラスミドDNAの細胞浸透を促進、および/またはDNAワクチンを長期発現するため、プラスミドDNAを核に配向することが可能である。そのような修飾は、HIV tat ペプチド配列(GRKKRRQRRR)および/または核局在化シグナル(NLS)ペプチド(PKKKRKV)をEPL(図7)の骨格に組み込むステップを含む。このHIV tat ペプチド配列は、細胞質に大型の薬物およびDNAを含む様々な分子の輸送を著しく促進し(Brooks H ら、Adv Drug Deli Rev 57:559,2005)、その一方、核に到達したプラスミドの一部がAPCにおいてアレルゲンを長期発現するためホスト染色体に統合されるため、NLSは、プラスミドを核に配向することができ、標的遺伝子の発現をより効率的にする(Talsma SSら、J Control Release 112:271,2006)。これらの修飾により、IgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチン接種の有効性が著しく強化されることが期待される。
【0216】
IgE‐PLL:DNAポリプレックスの調整
IgE‐PLLおよびpCMV‐ara h1プラスミドのポリプレックスは、注射の前に、適量のEPLおよびプラスミドDNAをPBS中、30分間25℃で混合することのみによって組み立てられた。IgE‐PLLおよびその他のプラスミドのポリプレックスは、同一の手順を使用して組み立てることができる。
【0217】
IgE単体ではなく、発現したEPL、ならびにPLLは、ゲル遅延分析(図4C)において、EPLタンパク質濃度依存的(図4D)およびプラスミドDNA濃度依存的(図4E)にプラスミドDNA(pCMV‐GFP)に結合できることを示した。EPL‐DNAポリプレックスは、FACS分析により、3D10細胞(ヒトFcεRIα鎖を発現するCHO細胞)およびKu812細胞、FcεRIレセプタ複合体(図4G)を発現するヒトマスト細胞様株上で発現されたFcεRIと結合すること示した(図4F)。ヒトFcεRIα遺伝子組み換えマウスを用いた受動的皮膚アナフィラキシアッセイにおいて、組み立てられたEPL:DNAポリプレックスは、局所アレルギー性皮膚反応を誘発しなかったことを示した(図4H)。これは、EPL:DNAポリプレックスが、Fcεと交差結合しなかった、またはマスト細胞の脱顆粒を誘発しなかったことを示す。受動的皮膚アナフィラキシ(PCA)は、以下のように行った。ヒトアレルギー抗体に対するヒトレセプタを担持するよう遺伝学的に設計され、そのようなヒトアレルギー抗体に反応できるマウスをPCAに使用した。これらの実験は、キメラヒトIgタンパク質がこれら動物の皮膚において従来の受動的皮膚アナフィラキシ反応を抑えるかどうかを試験する。マウスの背部皮膚の各部位に、50μl量を4〜6回注射した。これらの注射は、それらの領域を「アレルギー性」にすることができるヒトアレルギー抗体を含む。また、それら同一の場所においてアレルギー反応の進行を止めるよう設計されたキメラタンパク質をその場所の一部に投与する。4〜6時間後、尾静脈注射によって、ヒトアレルギー抗体と反応する対応アレルゲンを200□l量の1%Evan青色色素とともに、マウスに静脈投与する。20〜30分後、マウスを安楽死させ、各部位における反応の大きさ(ブルーイング)を評価する。
【0218】
体外IgE‐DNAポリプレックス摂取および発現の試験
正常APC αγ2 FcεRI複合体を発現するヒトAPC様細胞株U937、またはヒトマスト様細胞株LAD2におけるGFP発現を評価することにより、調製されたIgE‐PLL:GFPポリプレックス(pCMV制御済)のIgE媒介ベクターDNA移入の効率を試験する。LAD2細胞株は、機能的FcεRIを発現し(Jensen BMら、2005.Int Arch Allergy Immunol.137:9351)、FcεRI結合IgEを内在化できる。遺伝子伝達および発現効率の対照は、DNAポリプレックスおよび対応する対照を用いて細胞を培養することにより、PLL:GFP、IgE+GFPベクター、およびGFPベクター単体を含む。DCにおけるfascinプロモータに促進されるGFP発現を試験するため、MACS細胞分類により(Williamson Eら、2002 J.Immunol.169:3606)、IgE媒介のGFPベクター移動および発現用のhFcεRIα+Tgマウスからはっきりと選択したDCのCD11cを使用する。FcεRIα陰性の同腹子からのDCは、対照となる。様々なポリプレックスとともに細胞を2〜5日間培養し、結果として生じるGFP発現を蛍光顕微鏡検査法またはフローサイトメトリにより評価する。体外培養系において最高のGFP発現レベルを生じるポリプレックス調製法を使用し、生体内遺伝子送達試験のためのEPL:GFPベクターポリプレックスを調製する。
【0219】
送達された遺伝子発現に関する重要事項の1つは、エンドソームをリソソームと融合する前に、少なくとも摂取DNAベクターの少部分をエンドソームからシトソルまたは核分室のいずれかに放出する必要があることである。ここで、DNAベクターは劣化しやすい。IgEおよびFcεRIレセプタは、FcεRI媒介のエンドサイトーシスのプロセスにおいて、どちらも細胞表面にリサイクルされるため(Furuichi Kら、1986.J Immunol.136:1015、Borkowski,T.Aら、2001.J Immunol.167:1290)、FcεRI媒介のエンドサイトーシスを介するFcεRI結合DNAベクターがリソソームの劣化を受けにくいことを示唆する。そのため、適量のIgE媒介アレルゲンDNA摂取がDCにおいて放出および発現される高い可能性がある。適切な発現が見られない場合は、PLLが線形のポリカチオン試薬であるためであると考えられる。そのため、後のDNA分解によるリソソームへの融合前に、エンドソーム膜の分裂およびDNA放出を効率的に媒介しない場合がある。これが問題となる場合、分岐鎖ポリカチオン試薬ポリエチレンイミン(PEI)をPLLの代わりに使用できる。PEIは非常に分岐し、リソソーム融合前に効率よくエンドソーム膜を分裂させる(Boussif,O.ら、1995.Proc Natl Acad Sci USA.92:7297)。これにより、DNAベクターが発現可能なシトソルへのDNAベクターの放出が増加し、このようにして遺伝子発現が4〜5倍強化されることを示されている(Cristiano R.J.1998.Front Biosci.3:d1 161、Boussif,O.ら、1995.Proc Natl Acad Sci USA.92:7297)。
【0220】
ヒトIgEに誘発されるピーナッツアレルギー反応を機能的に検出するためのPCAアッセイの確立
抗ピーナッツIgE抗体は、ヒトにおけるピーナッツアレルギーの全身性アナフィラキシに関与するが、IgEおよびIgG1は、双方、マウスモデルにおけるピーナッツアレルギーにおいて重要である。hFcγRIα 我々は、前に、Tgマウスモデルにおける生体内アレルギー反応を機能的に評価するPCAアッセイを確立したが、これはピーナッツアレルギーを対象としない(Zhu Dら、Nat Med 8:518,2002.Kepley CL,Zhang K,Zhu D,and Saxon A.Clin.Immunol 108:89-94,2003)。我々は、ここで、hFcεRIα Tgマウスにおけるピーナッツアレルギー反応に関する同様のPCAアッセイを確立した。ピーナッツアレルギー患者の血清(Dr.Hugh Sampsonから厚意で提供された)を連続的に希釈し、FcεRIα Tgマウスの背部皮膚に注射した。24時間後、マウスを、精製したAra h1抗原で惹起した。図5Aに示されるように、ピーナッツアレルギー患者の血清に対して、用量依存のPCA反応が見られたが(5a〜5f)、健康なドナーの血清(5g)または生理食塩水(5h)に対しては、反応はなかった。このアッセイを使用し、商業用ソース(Plasma Lab、WA)から得た複数バッチのピーナッツアレルギー患者の血清(図5B)を審査した。ピーナッツアレルゲンに特異的なIgEを精製するため、強く肯定的な血清(サンプル5bおよび5c)を大量に購入した。これらの結果は、1)FcεRIα Tgマウスが、ピーナッツ患者の血清による生体内惹起に対し、IgEに対する皮膚反応性を発現すること(受動的に伝達されたヒトIgEであるにもかかわらず)、および2)積極的に感作したFcεRIα Tgマウスにおいて、アレルゲン特異的な段階的皮膚検査を行う能力を示す。
【0221】
モデルIgE‐DNAポリプレックスの生体内発現試験
生体内IgE媒介遺伝子送達ベクターの効率を評価するため、EPL:pFascin‐GFPポリプレックスをFcεRIα+tgマウスに注射する。様々な用量のポリプレックスを尾静脈注射により静脈(i.v.)投与する。後の検査のために、ワクチンをすべての重要な組織に広めることができるため、i.v.経路を意図的に使用する。FcεRIα+tgマウスのリンパ器官(脾臓、リンパ節、および内臓関連のリンパ組織、Peyerのパッチおよび胸腺)の組織学的部分においてGFPを発現するDCの解剖学的局在化を、免疫蛍光法により3〜5日目に検査する。これらの結果は、IgE媒介の遺伝子伝達の効率および局在性についての直接生体内の試験を提供する。IgEを含まないPLL:pFascin‐GFPの組み合わせは、DCにおけるDNA送達および発現の効率についての、更なる対照として機能する。また、皮内投与(i.d.)を試験する。それは、皮内投与が、ヒトにおいて容易に行われ、一般に遺伝子ワクチン接種アプローチにおいて使用され、それにより、遺伝子発現用の局所組織を検査できるためである。局所皮膚およびリンパ節について、DNAワクチン接種後2〜5日のGFP発現を検査する。IgE集中が生じないFcεRIα‐tgマウスは、背景対照として機能する。
【0222】
IgE‐Fel d1遺伝子ポリプレックスの生体内発現試験
hFcεRIα Tgマウスにおいて上記の発現実験を繰り返すが、IgE‐PLL:Fel d1遺伝子発現系を使用する。免疫組織化学的方法を使用し、発現したFel d1の存在および局在化を検出する。用量およびタイミング実験を行い、DCにおける最適Fel d1発現をもたらすパラメータを確立する。
【0223】
EPL:アレルゲン遺伝子(Ara h1、Ara h2、Ara h3、およびGal d1)ポリプレックスの生体内発現試験
EPL:アレルゲン遺伝子(制御されたFascinプロモータ)ポリプレックスを使用し、hFcεRIαtgにおいて上記の生体内発現実験を繰り返す。免疫組織化学的方法を使用し、入手可能なアレルゲン特異的単クローン抗体を用いて、発現したAra hおよびGal d1タンパク質の存在および局在性を検出する。これらの実験は、ベクターの生体内発現を実現したこと、アレルゲンワクチンの生体内発現を最適に検出する技術が改善されたことを立証する。ここでも、hFcεRIα‐tg同腹子は、比較用の負の対照として機能する。
【0224】
実施例2.FcεRIα TgマウスにおけるFel d1アレルギー反応の誘発におけるIgE媒介のFel d1遺伝子ワクチン接種の効果の決定
Fel d1の誘発によるアレルギー反応を予防するIgE媒介性Fel d1遺伝子ワクチン接種の効果を決定するため、図2Aに示されるように実験を行う。hFcεRIα Tgマウスの群(一群につき8匹のマウス)は、−21日目に、(a)IgE‐PLL:Fel d1含有DNAベクターポリプレックス、(b)対照PLL:Fel d1含有DNAベクターの組み合わせ、および(c)Fel d1含有DNAベクターのみをワクチン接種する。3週間後、(0日目)ミョウバン中の10μgのFel d1を用いてマウスを腹腔内的(i.p.)に感作し、14日目にFel d1抗原を用い、全身アレルギー反応および気道過敏症を誘発することが知られる、確立されたプロトコルの1つを使用して促進する(Zhu Cら、2005.Nat.Med.11:446、Terada,T.ら、2006.Clin Immunol.120:45,2006)。21日目に、動物を気管内Fel d1(1μg)で惹起し、その2日後(23日目)に表1に示される設計された実験パラメータを試験する(図2)。生理学的計測は、中心体温の変化を含み、好塩基球脱顆粒を反映する全身反応を測定する(Zhu Cら、2005.Nat.Med.11:446、Terada,T.ら、2006.Clin Immunol.120:45,2006)。気道過敏性(AHR)におけるIgE媒介のFel d1遺伝子ワクチン接種の効果を決定するため、コンピュータ制御の小動物呼吸‐脈振動測定システム(Flexi‐vent(登録商標))を使用して、メタコリン惹起に対する気道の抵抗を評価する(Zhu Cら、2005.Nat.Med.11:446、Terada,T.ら、2006.Clin Immunol.120:45,2006)。
【0225】
安楽死させた後、肺を個別に結紮し、1つの肺からBAL液を採取して、表2に示されるようなキーとなる調整および分極化サイトカインおよびケモカインのレベルを測定し、またBAL液の細胞構成要素を測定して気道アレルギー応答および肺炎症の状態を評価する。また、肺をコラゲナーゼDで消化することにより、肺に浸透した細胞の組成およびサイトカイン生成プロファイルを分析する。結果として生じる細胞について、T細胞小集団(CD4/CD8比)の組成、Th1またはTh2型をそれぞれIFN‐γおよびIL‐4の細胞染色により、フローサイトメトリを用いて分析する。洗浄していない肺について、アレルギー反応性の変化を組織学的に評価する。脾臓細胞を調製し、メモリT細胞応答およびTh1/Th2応答プロファイルを表すキーサイトカイン(IL4、IL‐5、IFN‐γ)の自然、および、Fel d1よる誘発による生成を試験する。
【0226】
Fel d1特異的IgE、総IgG、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgAおよびIgM抗体は、従来のELISAを使用してアッセイする。ワクチン接種により、気道内惹起の直前(21日目)に反応が生じる可能性があるため、これらはワクチン接種前(−21日目)、免疫付与時(0日目)、および実験の最後(23日目)に測定する。実験群間の上記実験パラメータにおける統計的有意性を比較する。抗ヒトIgE反応を−21日目、0日目、および23日目にチェックし、抗ヒトIgE応答のレベルを特定する。この一連の実験によって、アレルゲン遺伝子ワクチン接種が、予防的措置のモデルとして、続いて誘導されるFel d1特異的アレルギー反応をアレルゲン遺伝子ワクチン接種が改変できるかどうかを判定するとともに、Th1/Th2バランスに関するワクチン接種の効果、およびIgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチン接種がアレルゲン特異的なアレルギー性全身反応および気道の過敏性における免疫療法効果を引き出す可能な機序を特定することができる。
【0227】
ワクチン接種の経路:i.v.ワクチン接種を付与する。これは、最も有効な送達経路であると予測される。実験は、筋肉内(i.m.)または皮下(s.q.)注射を用いて後で行うことができる。明らかにi.v.投与が有効である場合は、必要な注射回数が少なく、i.v.経路が実用的であるため、ヒトにおいてこの経路を使用してもよい。
【0228】
用量:使用される用量は、DCにおいて最適な遺伝子発現を生じる。
【0229】
ワクチン接種のタイミング:予防的アレルゲン遺伝子ワクチン接種の当実験モデルにおいて、ワクチン接種は、一般にアレルゲン感作の21〜35日前(例えば、図に示されるスケジュールでは35日目と21日目の間)に行う。
【0230】
ワクチン接種の回数:いくつかの理由から、ワクチン接種は1回とし、このプロトコルにおいて複数の遺伝子ワクチン接種を行う前に、用量およびタイミングを修正することとする。上記のように、IgEを標的とする遺伝子送達は、1回以上のワクチン接種を必要とすることが多いこれまでの方法よりもはるかに効果的であると思われる。さらに反復遺伝子ワクチン接種は、一般に1週間以上離して行われるため、マウスがヒトIgEタンパク質の反復投与に反応する可能性があり、それによって結果の解釈が複雑になる。免疫原性の可能性を克服するための代案がある。
【0231】
表2.マウスにおける評価項目アセスメント
【0232】
【表2−9】
実施例3.hFcεRIα Tgマウスに対する確立されたFel d1のアレルギー応答におけるIgE媒介のFel d1遺伝子ワクチン接種の効果
我々が提案するIgE媒介のFel d1遺伝子ワクチンが、既に確立されたアレルギー反応を改変できるかを見出すため、Fel d1により誘発されるアレルギー反応は、アレルゲンDNAワクチン接種に先立って確立し、アレルギー性動物は、図2Bで概説されるスケジュールに従って処理する。hFcεRIα Tgマウスは、0日目にFel d1+ミョウバンのi.p.注射により感作し、14日目にFel d1単独のi.p.増進剤により感作する。21日目に、マウスはIgE‐PLL:Fel d1遺伝子発現ベクターとPLL:Fel d1遺伝子発現ベクター、および実験対照としてFel d1遺伝子発現ベクター単体を用いてi.v.治療を受ける。21日後(42日目)に、マウスはFel d1により気管内で惹起し、以前に確立されたプロトコルを使用して、全身応答および気道過敏症を誘導する(Zhu Cら、2005.A Novel Fcγ‐Fel d1 Protein for Cat‐induced Allergy.Nat.Med.11:446、Terada,T.ら、2006.A chimeric human‐cat Fcγ‐Fel d1 fusion protein inhibits systemic and pulmonary allergic reactivity to intratracheal challenge in mice sensitized to the major cat allergen Fel d1.Clin Immunol.2006 July,120(1):45-56)。表2に示されるように、設計した実験パラメータを44日目に試験する。Fel d1特異的IgE、総IgG、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgAおよびIgM抗体は、感作前(0日目)、遺伝子ワクチン接種時(21日目)、および気管内惹起(42日目)の直前に測定する。抗ヒトIgE反応は、21日目および44日目にチェックし、同様に抗ヒトIgE反応が提示されるかどうかを検査する。実験群間の上述の実験パラメータにおける統計的有意性を決定および比較する。この一連の実験は、非IgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチン接種と比較して、IgE媒介アレルゲン遺伝子ワクチン接種の相対効率を判定し、継続的アレルギー喘息における治療のモデル、およびアレルゲン遺伝子ワクチン接種免疫療法の可能な機序として、気道が関与する確立されたFel d1特異的なアレルギー反応を生理学的および免疫学的に改変する。
【0233】
設計事項:さらに、反復ワクチン接種に関する事項は、確立されたアレルギー反応を治療するために設計される実験において重要となる場合がある。そのため、21日目の単一ワクチン接種が失敗した場合、用量の修正に加えて、28日目および35日目(図2Bにおいて点線矢印で示される)において追加の増進剤ワクチン接種を行い、アレルゲン遺伝子ワクチン接種の効果を高めることを提案する。ヒトIgEはマウスに対して外来タンパク質であるため、ヒトIgEに対するマウス抗体の発生は、最初の投与に続いて起こる可能性が高く、例えば、hFcεRIα結合を阻害し、DNAワクチンのクリアランスを変えることによって、後のワクチン接種の有効性を妨げる可能性がある。したがって、遺伝子ワクチン接種を1回以上行うプロトコルを採用する場合は、2つの代替アプローチのうちの1つを使用して、この考えられる欠陥を回避する。1日目および3日目にヒトIgEを新生マウスにi.p.注射する、という単純かつ有効な新生児耐性誘導プロトコルによって、hFcεRIαマウスにおけるヒトIgEに対する新生児耐性を誘発できる(Wekerle T.,and Sykes,M.2001.Mixed chimerism and transplantation torerance.Annual Review of Medicine.52:35358)。結果として生じるヒトIgE耐性マウスを、1つ以上のIgE媒介Fel d1遺伝子ワクチン接種を採用する実験に使用することができる。代わりに、ノックインされたヒトIgEを有するhFcεRIα Tgマウスを使用する場合もある。それは、ヒトIgEはこれらの動物に対して「自分自身」であるためである。IgE媒介の遺伝子送達を妨げるヒトIgEに対する可能な抗体は、マウス実験に特異的な問題であり、ヒトIgEが「自分自身」であるヒトでは生じない。
【0234】
実施例4.IgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチン接種の生体内免疫賦活および治療効果
アレルギー性疾患の治療としてのIgE媒介遺伝子ワクチン接種を試験するための理想的なマウス系である、ヒトIgEをノックインした、hFcεRIα tg マウス(hIgE+‐hFcεRIα+tg マウス):
アレルゲン遺伝子をIgE‐hFcεRI相互作用を通じてAPCに標的するため、ヒトhFcεRIαを発現するマウスを採用する。しかし、これらのマウスには、ヒトIgEタンパク質‐アレルゲン遺伝子ポリプレックスの完全な生体内試験を行うにあたり2つの短所がある。第1に、EPLのFcε部分は、動物における抗原として機能するため、ワクチン接種を繰り返すと、マウスの抗ヒトエプシロン反応が問題になる。hFcεRIα tgに関する第2の問題は、感作プロトコルの一部として生成された任意のマウスIgEは、マウスhFcεRIαがノックアウトされ、マウスIgEがヒトhFcεRIαにしっかり結合していないため、生体内で機能しないことである。hIgE+‐hFcεRIα+tg マウスなどのマウス内生エプシロン遺伝子の代わりに、ノックインされたヒトIgエプシロン遺伝子を有することにより修正されたhFcεRIα+tgマウスを採用することにより、これらの双方の問題を解決する。hIgE+‐hFcεRIα+tgマウスにおいて、感作はヒトIgE生成と同様に、マウスIgGおよびその他の非IgEイソタイプを引き起こす。これらのマウスにおいて、ヒトIgEは、ヒトIgE‐hFcεRIα相互作用を介して機能する。遺伝子ワクチン接種の一部としてのEPLの反復投与は、ヒトの場合と同様に、EPLのヒトエプシロン部分に対する免疫反応を誘発してはならない。これらの動物は、ヒトエプシロンを「自分自身」としてに発現する。さらなる利点は、ヒトIgEがFcεRIの発現レベルを高める可能性が高いことである。それは、これが、よく説明されている、正のフィードバック効果であるからである(Kinet JP.Annu Rev Immunol 17:931,1999)。これらの動物は、Dr.J‐P Kinetにより生成および提供されている。
【0235】
アレルゲン遺伝子ワクチン接種は、一般に、Th1優位反応の補助として機能するプラスミド骨格に存在するCpGヌクレオチド配列のため、アレルゲンタンパク質により引き起こされるTh2型ではなく、Th1型反応を誘発することが示されている(Roman Mら、Nat Med 3:849,1997、Chatel J Mら、Allergy 58:641,2003)。アレルゲン遺伝子をDCに標的する方法は、従来のアレルゲン遺伝子ワクチン接種よりもさらに強力なTh1優位の免疫反応を誘発すると予想する。ワクチンは、アレルゲンを認識させる上で、プラセボよりも活性であること、またアレルゲン特異的反応の誘発において、対照ワクチン(例えば、同一容量における裸のDNAワクチン)とは異なることが予測される。
【0236】
Aha h1およびGal d1に対してIgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチン接種により誘発される免疫反応プロファイルを特定する(図8実施例3を参照)。
【0237】
hIgE+‐hFcεRIα+tg マウス(4〜6週齢)は、EPL:pCMVの制御によるarahl遺伝子ポリプレックスを用いてi.d.ワクチン接種した。最初に、単一ワクチン接種を付与した。第2および第3ワクチン接種は、2週間の間隔で付与する。
【0238】
hIgE+‐hFcεRIα+tg マウス(4〜6週齢)に、EPL:pFascinの制御によるアレルゲン遺伝子ポリプレックスをi.d.ワクチン接種する(図9の第1および第4群)。最初に、単一のワクチン接種を付与して反応を生じさせ、次に第2および第3ワクチン接種を2週間の間隔で付与する。遺伝子ワクチン接種は、毎週またはそれより頻繁に行う場合が多いが、ここでは特に2週間間隔を選択し、次を付与する前に各ワクチン接種に対する反応を試験できるようにした。「裸のDNA」ワクチン接種(それぞれAra h1およびGal d1の第2および第5群)は、ワクチン対照となる。EPL:Ara h1プラスミドワクチン接種(第3群)は、Gal d1遺伝子ワクチン接種においてアレルゲン特異的対照および背景プラスミド対照となり、逆も同様である(第6群)。空のプラスミド対照群は不要である。マウス1匹に対し、10μgのプラスミドDNAにおけるAra h1およびGal d1ワクチンを、これらの実験においてプロトタイプとして使用するが、これは修正される可能性がある。実験は、すべてのマウスがともにシーケンスを開始し、0、14、28、および42日目に死亡するように設定して、ベースライン、第1、第2、および第3ワクチン摂取の効果をそれぞれ表すものとする。所定の時期に死亡させない動物から血清を採取し、各動物群に関する一連のサンプルを終了まで所持するようにする。
【0239】
抗体反応:
血清を収集し(0、14、28、42および63日目)、ELISAによりAra h1、またはGal d1特異的ヒトIgEおよびAra h1、またはGal dl特異的マウスIgG、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgAおよびIgM抗体すべてを測定する。0日目血清の抗体滴定量を背景対照とすると、14日目は一次反応を反映し、28日目および42日目のレベルは、増進した動物における二次抗体反応を反映する。63日目に抗体反応を観察し、進行した抗体反応が比較的長期に渡って軽減するかどうかを判断する。これらの実験は、各アレルゲンワクチンが液性応答を誘導する能力を定義し、同時にそのレベルおよびイソタイププロファイルを定量する。マウス抗ヒトエプシロンは、結果の解読を複雑にする可能性があるため、標準ELISAによりネズミの抗ヒトエプシロン反応をチェックし、抗ヒトエプシロン反応が、予想どおりhIgE+‐hFcεRIα tgマウスにおいて欠損していることを確認する。IgEではなく、強力なアレルゲン特異的IgG2a(アセスメントとしてIgG2a/IgG1比を使用する)反応は、裸のDNAの場合と比較して、EPL:DNAポリプレックスを使用する群において誘発される。IgG1反応を監視する。Ara h2(23)を接種されたマウスのC3H/HeJ株において生じるように、ワクチン接種により誘発された強力なIgEおよび/またはIgG1反応が予想外に観察された場合、図9に図示されるように、ワクチン接種したマウスにAra h1タンパク質またはGal d1タンパク質により惹起することにより、ワクチン接種が感作プロセスとして作用するかどうかを判定し、実施例5に記載の方法で全身性アナフィラキシ反応を測定する。
【0240】
T細胞反応
EPL:アレルゲン遺伝子ワクチン接種プロトコルによってT細胞反応が誘発されるかを見出すためため、特徴的なTh1/Th2およびT調整応答を反映するキーサイトカイン生成を評価する。図示のとおり、0、14、28および42日目に動物を死亡させ、脾臓およびリンパ節から細胞を採取する。培養した細胞を精製したAra h1またはGal d1タンパク質(10μg/ml)で48時間パルスし、サイトカイン特異的ELISAアッセイおよび定量的実時間RT‐PCRによるサイトカインmRNA発現プロファイルにより測定される、メモリT細胞サイトカイン生成を誘発する(IL‐4、IL‐5、IL‐10、IL‐12、IL‐13、TGF‐βおよびIFN‐γ)。また、ElispotアッセイによりIL‐4(Th2応答指標として)およびIFN‐γ(Th1応答指標として)を生成する細胞の頻度を測定する。これは、サイトカインの総レベルではなく、細胞頻度を提供するためである。
【0241】
実施例5.EPL:アレルゲン遺伝子ワクチンは、アレルゲンに特異的なアレルギー反応の誘導を有効に抑制できる。
【0242】
経口および全身惹起に対する反応性を生じる経口投与による感作
幸いなことに、食物に対するアレルギー反応を見るため、適度に特性化されたいくつかの動物モデルを開発されている。プロトコル1は、LiおよびSampsonの研究に基づく(Li XMら、J Allergy Clin Immunol 106:150,2000)。設計したアレルゲン[ピーナッツアレルギーのための粗ピーナッツ抽出物(CPE)、卵白アレルギーのためのGal d1、および牛乳アレルギーのためのαカゼイン]+コレラ毒素(CT)をアジュバントとして用いて、マウスを胃内(i.g.)感作する。コレラ毒素は、マウスにおいて、粘膜免疫系に関連するアレルギー反応を誘発するため特に有力なアジュバントであることが示されている。また、このプロトコルは、アレルギー抗体だけでなく、経口および全身性惹起に対して、ヒトにおける食物アレルギー反応に類似する臨床反応性を誘発することが示されている。動物をi.g.惹起し、全身性アナフィラキシを誘発する(Li XMら、J Allergy Clin Immunol 106:150,2000、Li XMら、J Allergy Clin Immunol 103:206,1999)。
【0243】
我々は、研究者たちが一般にピーナッツアレルギーに関するこの種の実験にC3H/HeJマウスを使用していることを承知しているが、使用した遺伝子組み換えマウスは、Balb/c背景である。Balb/cマウスは、強いアレルギー抗体反応をもたらすことが知られており、我々は、アレルゲン惹起に対して気道の過敏性および全身アレルギー反応性を有することを示した。しかし、経口感作/惹起プロトコルに困難が生じた場合は、以下の標準的腹腔内(i.p.)感作プロトコル(プロトコル2)を使用することができる。これは、Balb/cマウスにおける全身性惹起に対して感作および反応を誘導することがわかっている(Adel‐Patient Kら、Allergy 60:658,2005、Rebecca J.Dearman and Ian Kimber.Methods 41:91-98.2007)。代わりに、C3H/HeJ株上に戻し交配し、経口惹起に対する反応性を提供することもできる。
【0244】
プロトコル2:全身性惹起に対する反応性を生じるミョウバンを用いたアレルゲンのi.p.投与による卵、牛乳、およびピーナッツ感作
この代替プロトコルは、ミョウバンをアジュバントとして用いるi.p.感作を採用する。これは、ピーナッツアレルギーモデルを含む食物アレルギーに採用されているBalb/cマウスにおける標準的感作プロトコルである(Adel‐Patient Kら、Allergy 60:658,2005、Rebecca J.Dearman and Ian Kimber.Methods 41:91-98.2007)。0日目に、ヒトIgE+‐hFcεRIα+tgマウスを卵、牛乳、またはピーナッツタンパク質で感作し、7日目および14日目にi.p.を増進する。最終アレルゲン治療後、14日目にアレルゲン惹起を行う。一部の実験において、後に動物にアレルゲン増進剤を付与し、アレルギー反応を延長させて、非治療対照におけるアレルギー反応を自然消失することなく、数週間に渡る治療の効果を評価できるようにする。重要なことに、このプロトコルによりネコアレルゲンに感作したマウスは感作状態を維持し、アレルゲン増進剤による惹起が提供されると、アレルゲンに対して臨床的に反応することがわかっている(Terada Tら、Clin Immunol 120:45,2006)。これにより、アレルギー反応を維持する動物におけるIgE媒介のDNAワクチン接種療法の効果を試験するために十分な時間が与えられる。
【0245】
実験計画および方法
i)手順
ヒトIgE+‐hFcεRIα+tgマウス(4〜6週齢、一群につき8匹のマウス)は図10に示されるように4つの群に分けられ、3回のi.d.ワクチン接種を0日目、7日目、および14日目に受ける。図10に示されるEPL:pFascin‐アレルゲン融合Ara hをピーナッツアレルギーの例として、または対照EPL:pFascin‐cDNA3遺伝子ポリプレックス(10μgプラスミドDNA/マウス)として用いる。同一の群設計を卵アレルギーのGal d1、および牛乳アレルギーのαカゼインに適用する。ピーナッツアレルギーの場合、28日目および35日目に、動物および対照をCPE(1mg/マウス)+CT(10μg/マウス)を2回に分けて投与してi.g.感作し、次に第1惹起として、49日目に10mgCPEを2回に分けて経口惹起する。全身アナフィラキシの兆候は、1回目の惹起から約15分後に現れると考えられ、臨床的指標を第2惹起の30分後に評価する。この第1惹起を生き延びたマウスを63日目に再惹起する(図10)。第1i.g.惹起は、増進剤感作として機能するため、63日目における再惹起は、通常、さらに強力な全身性アナフィラキシおよびアレルギー反応を誘発するはずである。ワクチン接種、感作、および惹起(ならびに再惹起)に続き、図10に示されるスケジュールに従って血液サンプルを収集し、アレルゲン特異的体液および細胞免疫/アレルギー反応を評価することにより、アレルゲン特異的免疫/アレルギー応答に対するIgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチン接種の効果を対照との比較で定義する。0日目のサンプルはベースラインであり、28日目のサンプルは、アレルゲン感作前のAra h遺伝子ワクチン接種により誘発された免疫反応を表す。35日目のサンプルは、DNAワクチン接種による一次免疫/アレルギー反応の調節を反映し、49日目および63日目のサンプルは、DNAワクチン接種による二次(または増進された)免疫/アレルギー反応の調節を反映する。第1群から得た実験結果を第2群から得た実験結果と比較し、IgE媒介のアレルゲンワクチン接種の効果を判定し、第3群(擬似ワクチン接種および感作)、および第4群(ワクチン接種および擬似感作)から得た結果は、対照とする。
【0246】
ii)単一Ara h遺伝子ワクチン接種によるピーナッツアレルギー応答の調節
図10に示される第1実験群において、アレルゲン特異的免疫/アレルギー反応に関する単一アレルゲン遺伝子(Ara h1およびGal d1をそれぞれピーナッツアレルギーおよび卵アレルギーのプロトタイプとして使用する)ワクチン接種の効果を試験する。このAra h1遺伝子ワクチン接種は、Ara h1特異的免疫および/またはアレルギー反応を単に調節することが予想されるため、CPEに誘発されたピーナッツアレルギーの全身性アナフィラキシおよびアレルギー反応の臨床的指標は、単一のAra h1遺伝子ワクチン接種により著しく調節されるとは考えられない。そのため、アレルゲン特異的免疫反応反映するパラメータ、特にIgE、IgG1およびIgG2aレベル、および、IL‐4、IL‐5、IL‐10、IL‐13、IFN‐βおよびTGF‐γなどのサイトカイン発現プロファイルを評価する。これらは、Th1/Th2応答を反映する。これらおよびその後の実験では、一般に、特異的な遺伝子製品Ara hまたはGal d1タンパク質ではなく、ピーナッツ抽出(CPE)または卵白タンパク質などの食物を用いて感作する。そうすることにより、いくつかの利点がある。精製タンパク質、例えばAra h1(およびその他のAra h)タンパク質自体は、ピーナッツアレルギー感作自身は、ピーナッツアレルギー感作を誘発するための免疫/アレルゲンとしてCPEほど有力でない場合が多い(Van wijk F,Nierkens Sら、Toxicol Sci 86:333,200580)。次に、食物におけるいくつかのアレルゲン、例えばCPEにおけるAra hタンパク質に対する免疫/アレルギー反応の導入は、特定のアレルゲン遺伝子治療に対する内部抗原特異的制御を提供する。結果として、IgE媒介のAra h1遺伝子ワクチン接種によりもたらされるアレルゲン特異的免疫調節を、評価、および、Ara h2、Ara h3またはAra h6応答に関する予測される効果の欠如と比較できる。さらに、個別のアレルゲンとの臨床反応性について動物を惹起し、アレルゲン特異性を再度示すことができる。Gal d1についても同様であり、この場合、オボアルブミン(Gal d2)を対照とする。
【0247】
iii)複合Ara h遺伝子ワクチン接種によるピーナッツアレルギー応答の調節
図10に示される同一スケジュールに従って、動物に複数のアレルゲン遺伝子(複合Ara h1、Ara h2、Ara h3、およびAra h6)ポリプレックスを3回ワクチン接種し、CPE感作およびCPE惹起する。複合Ara h1、Ara h2、Ara h3、およびAra h6アレルゲンは、ピーナッツにおけるすべてのアレルゲンのうちの大部分(90%以上)を占めるため、この一連の実験により、アレルゲン抗体/サイトカイン応答の調節だけでなく、全身性アナフィラキシの臨床症状を特定することができる。そのため、この実験は、生理的保護のレベルが複合Ara h遺伝子ワクチン接種により達成できるかどうかを試験する。
【0248】
次の実験期間に渡って、関連するアレルゲンに対するヒトIgEおよびマウスIgG1が少なくなり、アレルゲンに応じたTh2偏向のサイトカインプロファイルの生成も減少することから明らかなように、感作が減少することがわかる。各プロトコルに十分な数のマウスを使用し、それらを死亡させて、感作の最後、および2、4週間後のT細胞応答を研究できるようにする。任意の時点で死亡させないマウスからは血清を採取し、個別のマウスに関する一連の連続的抗体測定値を所持するようにする。追加の対照は、EPL:Ara h1を用いたhIgE‐hFcεRIα陰性の同腹子のワクチン接種により得られる。類似対照は、Gal d1実験に使用する。
【0249】
ワクチン接種プロトコルの可能な修正
図10に示されるように、標準的な遺伝子ワクチン接種として、まず10μgプラスミドDNA/マウスi.d.ワクチン接種を1週間の間隔で3回使用する。しかし、感作が完全に撤廃されない限り、キーパラメータである(i)ワクチン用量(1-50μgプラスミドDNA)、(ii)ワクチン接種のタイミング、および(iii)その後の実験におけるワクチン接種の回数を修正し、最大の治療効果を定義する。筋肉内(i.m.)、皮内(i.d.)、または腹腔内(i.p.)注射、経口投与、または遺伝子銃を含むいくつかの経路がDNAワクチン接種に使用されている。計画されたi.d.投与に加えて、i.m.およびi.v.投与経路も特に関心がある。前者は、ヒトワクチン接種および遺伝子治療モデルにおける標準経路であり、後者のi.v.経路はまだ調査されていないが、全身的なワクチン接種を高速で提供できると考えられる。すべての3つの経路はヒトにおいて許容できる。
【0250】
i)血清ヒスタミンレベルおよび中心体温変化を全身性アナフィラキシのパラメータとして使用する。前述のとおり、血清ヒスタミンレベルは、ELISAキットにより測定し、中心体温は、デジタル体温計に連結された肛門プローブを用いて測定する(Zhu Cら、Nat Med 11:446,2005;Terada T,et al.,Clin Immunol 120:45,2006)。
【0251】
ii)全身性アナフィラキシアセスメント:Liらにより説明される評価システムを使用し、アナフィラキシ臨床的指標(症状)を第2惹起投与の30〜40分後に評価した(J Allergy Clin Immunol 106:150,2000):0‐症状なし、1‐鼻および頭部周辺を掻くおよびこする、2‐目および口の腫れ、下痢、毛の誘起、活性低下、および/または呼吸数の増加を伴う活性低下、3‐喘鳴、努力性呼吸、口および尾部周辺のチアノーゼ、4‐刺激後の非活性または震えおよび痙攣、および5‐死亡。症状の評価は盲目法で行う。
【0252】
iii)アレルギー性血管漏洩:2回目の胃内ピーナッツ惹起の直前に、各郡のマウスは、100μL0.5%のEvan青色染色の尾静脈注射を受けた。マウスの足蹠について、上記の染色/抗原投与から30〜40分後の血管漏洩(可視的青色)の兆候を審査した(Liら、J Allergy Clin Immunol 106:150,2000)。
【0253】
iv)PCAアッセイを使用し、IgE依存のアレルギー反応を反映するアレルギー反応(60、61、69、81)を機能的に特定する。Ara h遺伝子をワクチン接種したマウスの血清を連続的に希釈し、背部皮膚への皮内注射(50μl)で感作した。24時間後、200μl食塩溶液における1%のEvan青色染色の存在中、10μgの精製Ara h1タンパク質の尾静脈注射によりマウスを惹起する。アレルゲン惹起の30分後、PCAを皮膚の青色染色部として目視評価する。実験群間の統計的分析のため、青色の点の直径を測定および記録する。血清中のその他の構成要素(例えば、IgG1)ではなく、PCAアッセイにおいてIgEがアレルギー反応に関与することを示すため、血清を56℃で2時間加熱処理し、PCA試験に先立ってIgEの活性を非活性にする(Lyczak JBら、J Biol Chem 271:3428,1996、Zhang Kら、J Allergy Clin Immunol 114:321,2004)。
【0254】
v)マスト細胞脱顆粒:全身性アナフィラキシ中のマスト細胞脱顆粒を耳組織の全身審査により評価する(Lyczak JBら、J Biol Chem 271:3428,1996)。アナフィラキシ関連死の直後に採取したサンプルまたは惹起の40分後、生き延びたマウスから採取したサンプルを固定し、3μmパラフィンまたはグリコールメタクリル樹脂、トルイジンブルー染色部において処理する。脱顆粒マスト細胞は、5つ以上の明らかな染色顆粒を完全に細胞の外に有するトルイジン陽性細胞として定義される。合計200-400のマスト細胞を各耳サンプルに分類する。
【0255】
Ara h1またはGal d1遺伝子ワクチン接種に応答する抗体結果
図10に予定されるように、血清を収集し、抗体レベルを測定する。ピーナッツ(Ara h)または卵アレルゲンGal d1およびGal d2(オボアルブミン)特異的ヒトIgEおよびマウスIgG1、IgG2a、およびIgA抗体をELISAにより測定する。特異的IgEレベルは、遺伝子ワクチン接種の結果を評価するためのキーパラメータであるため、特に注意を払ってAra hおよびGal d1特異的ヒトIgEのレベルを評価する。高レベルのマウスIgGは、ELISA様式でアレルゲンのIgEと競合しうるという事実から、IgE抗Ara h(またはGal d1)アッセイの感度および特異性を改善する必要がある場合、タンパク質G樹脂(Lehrer SBら、J.Immunol.Methods 284:1,2004)またはマウス抗体試薬を用いて血清サンプルを吸収することによりマウスIgGを除去する。上記実験パラメータの統計的有意性を比較する。
【0256】
ワクチン接種プロセスにおいて残留しうる生体内EPLは、hIgE‐hFcεRIαtgマウスの生体内で生成されたアレルゲン特異的IgEの増加測定を障害しない。これはEPLのヒトIgE Fc部分が、抗原(アレルゲン)特異性を持たず、よってコートされたアレルゲンとの結合は予想されないため、またELISAアッセイにおいてアレルゲン特異的ヒトIgE検出を妨げないためである。アレルゲン特異的ヒトIgEの増加測定をさらに保証するため、IgEのCh1ドメインに対する抗ヒトIgE単クローン抗体(Mae 1)(Yamada,T.ら、J Biol Chem 278:32818-24,2003,カリフォルニア州Genentech Inc.のDr.Paul Jardieuから厚意で寄贈)をELISAにおいて検出試薬として採用し、結果を与える。EPLのFcεがCH1ではなく、エプシロンCH2‐CH3‐CH4のみを含むためである(図4)。さらに、PCAアッセイを使用し、IgE滴定量を機能的与え、IgE測定値をELISAからのそれを用いて確認する(上記のPCAアッセイを参照)。
【0257】
Ara hおよびGal d1遺伝子ワクチン接種に対するT細胞結果
(従来あるいは別の)特異的ITによりもたらされるアレルゲン特異的T細胞変化は、アレルギー「耐性」を誘発および維持するために重要な機序であると考えられる。特徴的Th1/Th2応答およびT規制応答を反映するキーサイトカインの生成を評価する。
【0258】
Ara hまたはGal d1遺伝子ワクチン接種で事前処理された動物における臨床結果
アナフィラキシ臨床的指標を使用する標準化された全身性アナフィラキシアセスメントは、臨床反応性の全体評価を提供する。血清ヒスタミンレベルおよび中心体温変化を全身アレルギー反応性の客観的パラメータとして使用する。アレルゲン惹起に続く全身反応性に起因する血管の漏れは、足蹠のEvans青色染色により評価する。全身アナフィラキシ中のマスト細胞脱顆粒は、上記の方法に記載されるように、耳組織の組織学的検査により評価する。
【0259】
実施例6.IgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチンは、確立されたアレルギー性疾患を治療できる。
【0260】
i)単一のAra h遺伝子ワクチン接種による確立されたアレルギー反応の調節
IgE媒介のアレルゲン遺伝子ワクチンが確立されたアレルギー性疾患を治療する能力を試験するため、hIgE‐hFcεRIαtgマウスを食物アレルゲンで感作する(同一のプロトコルは、ピーナッツ、卵、または牛乳アレルギー試験に適用する)。図11に示されるように、第1の実験群において、単一のアレルゲン遺伝子ワクチン接種プロトコル、例えば、Ara h1を採用し、そのアレルゲンとの後の惹起に対する反応性が調節されるかどうかを判定する。図11の下方パネルにリストされる4つのマウス群は、実施例5で使用されるものと同一のプロトコルを使用し、CPE+CTで2回、0日目と7日目にi.g.感作される。2週間後(21日目)、動物は、EPL:pFascin Ara h1ポリプレックス(10μg/マウス)のi.d.ワクチン接種を毎週1回、計3回受ける。図2Bに記載されるものと同一のプロトコルを使用し、マウスはAra h1を用いて49日目に最初のi.g.惹起、63日目に再惹起される。全身性アナフィラキシ臨床症状は、実施例5に記載の方法で記録する。Aha h1抗体およびT応答の効果を評価する。0日目のサンプルをベースラインとして、21日目のサンプルは、Ara h1ワクチン接種に先立って、CEP感作(CTを補助とする)により誘発された免疫/アレルギー反応を表す。28、35、および49日目の血液サンプルは、CPE感作に誘発された免疫/アレルギー反応における第1、第2、および第3のAra h1ワクチン接種それぞれの調節効果を測定する。また、63日目の血液サンプルは、DNAワクチン接種による免疫/アレルギー反応の比較的長期(最終ワクチン接種から1ヶ月)の調節効果を測定する。49日目のi.g.惹起プロセスは、63日目のサンプル測定に対する増進感作としても機能する。第1群の実験結果は、従来の裸のDNAワクチン接種(例えば、第2群)と比較したIgE媒介のアレルゲンワクチン接種の効果を特定し、第3群は、(CPE感作および偽のワクチン接種)ベクター対照、第4群は非感作(偽の感作およびAra h1ワクチン接種)対照である。
【0261】
ii)複合Ara h遺伝子ワクチン接種による確立されたピーナッツアレルギー反応の調節
複合ワクチン接種プロトコルを採用することにより、第2の実験群を行う。例えば、複合Ara h1、Ara h2、Ara h3、およびAra h6遺伝子ワクチン接種を使用し、図12に示されるように、ピーナッツアレルギーを治療する。実生活において、対象は一般に1つ以上のアレルゲンに対して感作されるため、最も関連のあるピーナッツアレルギー遺伝子のプロファイルを使用し、遺伝子ワクチン接種を行って(Ara hl、Ara h2、Ara h3、およびAra h6)(82)、ヒトの場合に最も類似する疾患を修正できるかどうかを判断する。これを行うため、ワクチン接種のためのEPL:Ara Ara h1、Ara h2、Ara h3、およびAra h6ポリプレックスを調製する。この遺伝子療法アプローチの利点の1つは、これらの混合ポリプレックスを容易に組み立てられることである。そのため、4つの個別のpFastin Ara h1、Ara h2、Ara h3、およびAra h6プラスミドを調製し、それらを均等な割合でEPLと混合して複合ワクチン接種ポリプレックスを組み立てさえすればよい。図12の下方パネルに挙げられる4つのマウス群は、実施例5と同一のプロトコルを使用し、CPE+CTを用いて0日目および7日目に2度i.g.感作する。マウスは、EPLと複合されたAra h1、Ara h2、Ara h3、およびAra h6遺伝子を3回、21、28、および35日目にi.d.ワクチン接種し、実施例5に記載の方法で49日目(第1惹起)および63日目(再惹起)にCPE惹起する。免疫/アレルギー反応、および全身ピーナッツアナフィラキシの臨床症状は、実施例5に記載の方法で特定する。ピーナッツ抽出物全体における複数のアレルゲンに感作された動物は、単一アレルゲン遺伝子を受ける動物と比較して、混合したAha hポリプレックスを用いた複合遺伝子ワクチン接種により、全体ピーナッツ惹起から保護される可能性がある。
【0262】
Ara hタンパク質を用いた実験に類似する実験は、優位アレルゲンがGal d1である卵アレルギーを罹患したhIgE+‐hFcεRIα+tgマウスにおいて、EPL:Gal d1遺伝子ワクチンを使用して行うことができる。
【0263】
本発明は、本明細書に図示および記載される実施形態に照らして説明されたが、本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく、その他の特定の方法またはその他の特定の形態において実施されてもよい。したがって、記載の実施形態は、すべての点において、単なる実例であり、制限的でないと考える。よって本発明の範囲は、前述の説明ではなく添付の請求項によって示され、請求項に相当する意味および範囲内に入るすべての変更は、請求の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0264】
(図面の簡単な説明)
【図1】図1は、FcεRI発現抗原提示細胞(APC)に対するIgE媒介の遺伝子標的の図を示す。
【図2】図2Aは、実施例2の実験スケジュールを示す図である。図2Bは、実施例3の実験スケジュールを示す図である。
【図3】図3は、IgE‐PLLおよびIgE‐PRL融合遺伝子の構成を示す図である。PLL DNA(配列番号2)は、60の反復するリジンをコード化し、PRL DNA(配列番号3)は、60の交代するリジンおよびアルギニンをコード化する。下線の配列は、クローン化に使用される制限部位である。
【図4】図4は、EPL融合タンパク質の構成、発現、および特性化を示す図である。図4Aは、EPL融合タンパク質の構成を示す図である。図4Bは、天然(非還元)および還元状態におけるEPL融合タンパク質のウェスタンブロットを示す図である。図4Cは、プラスミドに対する様々なタンパク質のゲル遅延分析を示す写真である。図4Dは、EPLによるプラスミドの結合におけるタンパク質濃度の影響に関するゲル遅延分析である。図4Eは、EPLによるプラスミドの結合における核酸濃度の影響に関するゲル遅延分析である。図4Fは、3D10細胞上で発現されたFcεRIとEPL‐DNAとの結合に関するFACS分析のグラフである。図4Gは、Ku812細胞上で発現したFcεRIへのEPL‐DNAの結合に関するFACS分析のグラフである。図4Hは、EPL:DNA複合体を用いた受身皮膚アナフィラキシ試験後の遺伝子組み換えマウスの皮膚の写真である。
【図5】図5Aは、ピーナッツアレルギーのヒト患者から得た血清をマウスに投与し、精製したAra h1抗原で誘発した後の遺伝子組み換えマウスの皮膚の写真である。図5Bは、ピーナッツアレルギーであるヒト患者の市販の血清をマウスに投与し、精製したAra h1 抗原で誘発した後の遺伝子組み換えマウスの皮膚の写真である。
【図6】図6は、Ara h1を例として使用するアレルゲン遺伝子ワクチン接種プラスミドの構造を示す図である。
【図7】図7は、tat(配列番号4)、NLSペプチド(配列番号5)またはtat‐NLSペプチド(配列同定番号6)配列が組み込まれた修飾EPL構造の図である。
【図8】図8は、EPL:アレルゲンDNAプラスミドポリプレックスの生体内での効果を試験するための実験計画の略図である。
【図9】図9は、実施例4のプロトコルの略図である。
【図10】図10は、実施例5のプロトコルの略図である。
【図11】図11は、実施例6のプロトコルの略図である。
【図12】図12は、実施例6に記載される複合Ara h1遺伝子ワクチン接種のプロトコルの略図である。
【図13】図13は、ヒトIgE重鎖定常領域をコード化するアミノ酸配列を示す(配列番号1)。
【図14】図14は、ヒトIgE重鎖定常領域のヌクレオチド配列を示す(配列識別番号7)。
【図15】図15は、ヒトIgE重鎖定常領域のCH2‐CH3‐CH4部分のアミノ酸配列を示す(配列番号8)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然Fceレセプタを結合できるIgE断片に機能的に接続されたアレルゲンをコード化する核酸を含むワクチン。
【請求項2】
前記核酸は前記IgE断片に間接的かつ機能的に接続される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
核酸は核酸結合剤によって前記IgE断片に接続される、請求項2に記載のワクチン。
【請求項4】
前記核酸結合剤は、ポリ‐L‐リジン、ポリ‐L‐アルギニン‐リジン、スペルミン、スペルミジン、およびポリエチルイミンポリマーから成る群から選択される、請求項3に記載のワクチン。
【請求項5】
前記IgE断片は、共有結合、ジスルフィド結合、およびアビジン/ストレプタビジン結合から成る群から選択される結合によって、前記核酸結合剤に付加される、請求項3に記載のワクチン。
【請求項6】
前記IgE断片は、共有結合によって前記核酸結合剤に付加される、請求項5に記載のワクチン。
【請求項7】
前記核酸結合剤はポリ‐1‐リジンである、請求項4に記載のワクチン。
【請求項8】
前記IgE断片は、IgEのCH2‐CH3‐CH4ドメインを含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項9】
前記IgE断片は、IgEのCH1‐CH2‐CH3‐CH4ドメインを含む、請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
前記IgE断片はヒト型である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項11】
前記アレルゲンをコード化する前記核酸は、樹木状細胞プロモータに操作可能に連結される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項12】
前記樹木状細胞プロモータは、fascinプロモータである、請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
前記核酸はベクターを含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項14】
前記アレルゲンは表1の群から選択される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項15】
前記アレルゲンはFel d1である、請求項14に記載のワクチン。
【請求項16】
薬学的に許容しうる材料との混合物に請求項1に記載のワクチンを含む、医薬組成物。
【請求項17】
容器、前記容器内の請求項1に記載のワクチン、および前記容器上のラベルまたは添付文書、あるいは前記容器上に、あるいは、それに伴うラベルまたは添付文書を含む、製品。
【請求項18】
前記ラベルまたは添付文書は、IgE媒介の生物学的反応の治療に関する説明書を含む、請求項17に記載の製品。
【請求項19】
前記生物学的反応は、IgE媒介の過敏反応である、請求項18に記載の製品。
【請求項20】
前記ラベルまたは添付文書は、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、重度の食物アレルギー、慢性蕁麻疹、血管浮腫、およびアナフィラキシー・ショックから成る群から選択されるIgE媒介の過敏反応の治療に関する説明書を含む、請求項19に記載の製品。
【請求項21】
前記ラベルまたは添付文書は、感染症の治療に関する説明書を含む、請求項17に記載の製品。
【請求項22】
前記感染症はウイルス感染である、請求項18に記載の製品。
【請求項23】
前記ラベルまたは添付文書は、自己免疫疾患の治療に関する説明書を含む、請求項17に記載の製品。
【請求項24】
前記ラベルまたは添付文書は、癌の治療に関する説明書を含む、請求項17に記載の製品。
【請求項25】
請求項1に記載のワクチンの有効量を必要とする対象に投与するステップを含む、IgE媒介の生物学的反応に関連する状態の予防または治療方法。
【請求項26】
前記対象はヒト患者である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記状態はIgE媒介の過敏反応である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記状態は、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、重度の食物アレルギー、慢性蕁麻疹、血管浮腫、およびアナフィラキシー・ショックから成る群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記投与は、前記生物学的反応の開始に先立って行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
請求項1に記載のワクチンの有効量を必要とする対象に投与するステップを含む、感染症の予防または治療方法。
【請求項31】
前記感染症はウイルス感染である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記対象はヒト患者である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載のワクチンの有効量を必要とする対象に投与するステップを含む、自己免疫疾患の予防または治療方法。
【請求項34】
前記対象はヒト患者である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1に記載のワクチンの有効量を必要とする対象に投与するステップを含む、癌の予防または治療方法。
【請求項36】
前記対象はヒト患者である、請求項35に記載の方法。
【請求項1】
天然Fceレセプタを結合できるIgE断片に機能的に接続されたアレルゲンをコード化する核酸を含むワクチン。
【請求項2】
前記核酸は前記IgE断片に間接的かつ機能的に接続される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
核酸は核酸結合剤によって前記IgE断片に接続される、請求項2に記載のワクチン。
【請求項4】
前記核酸結合剤は、ポリ‐L‐リジン、ポリ‐L‐アルギニン‐リジン、スペルミン、スペルミジン、およびポリエチルイミンポリマーから成る群から選択される、請求項3に記載のワクチン。
【請求項5】
前記IgE断片は、共有結合、ジスルフィド結合、およびアビジン/ストレプタビジン結合から成る群から選択される結合によって、前記核酸結合剤に付加される、請求項3に記載のワクチン。
【請求項6】
前記IgE断片は、共有結合によって前記核酸結合剤に付加される、請求項5に記載のワクチン。
【請求項7】
前記核酸結合剤はポリ‐1‐リジンである、請求項4に記載のワクチン。
【請求項8】
前記IgE断片は、IgEのCH2‐CH3‐CH4ドメインを含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項9】
前記IgE断片は、IgEのCH1‐CH2‐CH3‐CH4ドメインを含む、請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
前記IgE断片はヒト型である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項11】
前記アレルゲンをコード化する前記核酸は、樹木状細胞プロモータに操作可能に連結される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項12】
前記樹木状細胞プロモータは、fascinプロモータである、請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
前記核酸はベクターを含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項14】
前記アレルゲンは表1の群から選択される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項15】
前記アレルゲンはFel d1である、請求項14に記載のワクチン。
【請求項16】
薬学的に許容しうる材料との混合物に請求項1に記載のワクチンを含む、医薬組成物。
【請求項17】
容器、前記容器内の請求項1に記載のワクチン、および前記容器上のラベルまたは添付文書、あるいは前記容器上に、あるいは、それに伴うラベルまたは添付文書を含む、製品。
【請求項18】
前記ラベルまたは添付文書は、IgE媒介の生物学的反応の治療に関する説明書を含む、請求項17に記載の製品。
【請求項19】
前記生物学的反応は、IgE媒介の過敏反応である、請求項18に記載の製品。
【請求項20】
前記ラベルまたは添付文書は、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、重度の食物アレルギー、慢性蕁麻疹、血管浮腫、およびアナフィラキシー・ショックから成る群から選択されるIgE媒介の過敏反応の治療に関する説明書を含む、請求項19に記載の製品。
【請求項21】
前記ラベルまたは添付文書は、感染症の治療に関する説明書を含む、請求項17に記載の製品。
【請求項22】
前記感染症はウイルス感染である、請求項18に記載の製品。
【請求項23】
前記ラベルまたは添付文書は、自己免疫疾患の治療に関する説明書を含む、請求項17に記載の製品。
【請求項24】
前記ラベルまたは添付文書は、癌の治療に関する説明書を含む、請求項17に記載の製品。
【請求項25】
請求項1に記載のワクチンの有効量を必要とする対象に投与するステップを含む、IgE媒介の生物学的反応に関連する状態の予防または治療方法。
【請求項26】
前記対象はヒト患者である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記状態はIgE媒介の過敏反応である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記状態は、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、重度の食物アレルギー、慢性蕁麻疹、血管浮腫、およびアナフィラキシー・ショックから成る群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記投与は、前記生物学的反応の開始に先立って行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
請求項1に記載のワクチンの有効量を必要とする対象に投与するステップを含む、感染症の予防または治療方法。
【請求項31】
前記感染症はウイルス感染である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記対象はヒト患者である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載のワクチンの有効量を必要とする対象に投与するステップを含む、自己免疫疾患の予防または治療方法。
【請求項34】
前記対象はヒト患者である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1に記載のワクチンの有効量を必要とする対象に投与するステップを含む、癌の予防または治療方法。
【請求項36】
前記対象はヒト患者である、請求項35に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2009−532361(P2009−532361A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503053(P2009−503053)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/008028
【国際公開番号】WO2007/123771
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(508292246)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/008028
【国際公開番号】WO2007/123771
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(508292246)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (1)
【Fターム(参考)】
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