説明

IKK−ベータセリン−スレオニンプロテインキナーゼの阻害剤

シクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}ペンタ-4-エノエート;シクロペンチル 5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}-L-ノルバリネート;シクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-5-メチルフェニル}ペンタ-4-エノエート;シクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-{5-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-2-メチルフェニル}ペンタ-4-エノエート;シクロペンチル O-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}-L-ホモセリネート;シクロペンチル O-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}-L-ホモセリネート;シクロペンチル N-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]ベンジル}-L-アラニネート;およびtert-ブチル N-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]ベンジル}-L-アラニネートは、細胞内カルボキシルエステラーゼにより対応するカルボン酸に加水分解され、IKKβ活性の阻害のために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分子内におけるアミノ酸エステル基の存在により特徴づけられるチオフェンカルボキサミド類、それらを含む組成物、それらの製造方法、ならびに慢性閉塞性肺疾患、喘息、リウマチ性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、糖尿病、アトピー性皮膚炎、移植対宿主疾患、全身性狼瘡紅斑を含む自己免疫性疾患および炎症性疾患の治療のためのIKK阻害剤としての医薬におけるそれらの使用に関する。
これらの化合物は、癌のような増殖性病状の治療においても有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くの炎症誘発性遺伝子の発現は、転写活性化核内因子−kB(NF−kB)により制御されている。これらの転写因子は、それらの発見以来、それらが慢性および急性の炎症性疾患において中心的な役割を果たしているのではないかと推測されている。現在、NF−kBの異常な制御は、自己免疫疾患および異なったタイプの癌の根底にもあるようである。
【0003】
NF−kBの活性化に依存する遺伝子の例は、サイトカイン腫瘍壊死因子TNF−α、インターロイキン(IL)−6、IL−8およびIL−1β;接着分子E−セレクチン、細胞間接着分子(ICAM)−1および血管細胞接着分子(VCAM)−1;ならびに酵素 一酸化窒素合成酵素(NOS)およびシクロオキシゲナーゼ(COX)−2を含む。
【0004】
NF−kBは通常、IkB阻害プロテインファミリーの一つとの不活性な複合体として非刺激細胞の細胞質中に存在する。しかしながら、細胞の活性化に伴って、IkBはIkBキナーゼ(IKK)によりリン酸化されて、続いて分解される。遊離のNF−kBは、次いで核へ移動して炎症誘発性遺伝子の発現を媒介する。
【0005】
三つの古典的なIkB:IkBα、IkBβおよびIkBεがあり;これらはすべてそれらが分解され得る前に二つのキーとなるセリン残基のリン酸化を必要とする。二つの主な酵素IKK−αおよびIKK−βは、IkBリン酸化に関与するようである。
【0006】
これらの酵素のいずれのドミナント−ネガティブ(DN)バージョンも(そこではATP結合がキーとなるキナーゼドメイン残基の変異により無能化される)、TNF−α、IL−1βおよびLPSによるNF−kBの活性化を抑制するのが分かった。特に、IKK−βDNはIKK−αDNよりはるかに強力な阻害剤であることが分かった(Zandi, E Cell, 1997, 91, 243)。
【0007】
さらに、IKK−αおよびIKK−β欠乏マウス生成は、炎症誘発性刺激によるNF−kBの活性化のためのIKK−βの必要性を立証し、示唆されたIKK−βの支配的な役割を生化学的なデータにより増強した。
実際、これらの刺激によるNF−kB活性化にとってIKK−αが必ずしも必要でないことが実証された(タナカ、M.; Immunity 1999, 10, 421)。
かくして、IKKβの阻害は、免疫機能の調節、したがって自己免疫疾患の治療用医薬開発のために、潜在的に魅力のある標的であることを示している。
【0008】
我々の同時継続国際特許出願番号:PCT/GB2007/004117は、式(IA)もしくは(IB)のIKKβ阻害剤、またはその塩、N−オキサイド、水和物もしくは溶媒和物に関する:
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、
R7は水素または任意に置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり;
環Aは、任意に置換されていてもよい、5〜13の環原子を有する、アリールもしくはヘテロアリール環であり;
Z は、式:R-L1-Y1-(CH2)z-の基であり、ここで
R は、式 (X) または(Y) の基であり、
【0011】
【化2】

【0012】
ここで、R1 はカルボン酸基(-COOH)、または一以上の細胞内エステラーゼ酵素によりカルボン酸基に加水分解され得るエステル基であり、
R6 は水素、または任意に置換されていてもよいC1-C6 アルキル、C3-C7 シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリール、あるいは-(C=O)R3、 -(C=O)OR3もしくは-(C=O)NR3 、ここで、R3 は水素または任意に置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
【0013】
Y1 は、結合手、-(C=O)-、-S(O2)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-(C=O)NR3-、-NR3(C=O)-、-S(O2)NR3-、-NR3S(O2)-または-NR3(C=O)NR4-であり、ここで R3 および R4 は独立して水素または任意に置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
L1 は式-(Alk1)m(Q)n(Alk2)p-の2価の基であり、ここで
m、n および p は独立して0または1であり、
Q は、(i) 任意に置換されていてもよい、5〜13の環原子を有する、2価の単環もしくは2環の炭素環式基または複素環式基であるか、あるいは
(ii) p が0のとき、式-Q1-X2-の2価の基であり、ここでX2 は-O-、-S-または NRA-であり、ここでRA は水素または任意に置換されていてもよいC1-C3 アルキルであり、Q1 は5〜13の環原子を有し、任意に置換されていてもよい、2価の単環もしくは2環の炭素環式基または複素環式基であり、
Alk1 およびAlk2 は、独立して、任意に置換されていてもよい2価のC3-C7 シクロアルキル基、または任意に置換されていてもよい直鎖状もしくは分枝鎖状の、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)もしくはアミノ(-NRA-)結合(ここで、RA は水素または任意に置換されていてもよいC1-C3 アルキルである)を任意に含んでいるかもしくは末端に有している、C1-C6 アルキレン、C2-C6 アルケニレンもしくはC2-C6 アルキニレン基を表し、
z は0または1である)。
【0014】
上記の化合物(IA)および(IB)は、結合基-L1-Y1-(CH2)z-によって主の分子テンプレートにアルファ炭素を通して結合した、アルファアミノ酸またはアルファアミノ酸エステルモチーフ(motif)Rを有する。C-結合したアミノ酸エステルモチーフは、細胞膜を横切って、細胞内エステラーゼがエステルをその元の酸へ加水分解する細胞内への輸送を促進する。この荷電種は、細胞膜を横切っての逆の輸送はされにくく、それが細胞内でのIKKβ阻害剤の活性の蓄積に導く。
【0015】
我々の同時継続国際特許出願番号:PCT/GB2007/004114は、式(IA1)もしくは(IB1)のIKKβ阻害剤、またはその塩、N−オキサイド、水和物もしくは溶媒和物に関する:
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、
R7は水素または任意に置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり;
環Aは、任意に置換されていてもよい、5〜13の環原子を有する、アリールもしくはヘテロアリール環であり;
Z は (a)式R1R2CHNH-Y-L1-X1-(CH2)z-であり、ここで、
R1 はカルボン酸基(-COOH)、または一以上の細胞内エステラーゼ酵素によりカルボン酸基に加水分解され得るエステル基であり;
R2 は天然もしくは非天然のα−アミノ酸の側鎖であり;
Y は結合手、-C(=O)-、-S(=O)2-、-C(=O)O-、-C(=O)NR3-、-C(=S)-NR3 、-C(=NH)-NR3 または-S(=O)2NR3-であり、ここでR3 は水素または任意に置換されていてもよいC1-C6 アルキルであり、
L1 は式-(Alk1)m(Q)n(Alk2)p-の2価の基であり、ここで
m、n および p は独立して0または1であり、
Q は、(i) 任意に置換されていてもよい、5〜13の環原子を有する、2価の単環もしくは2環の炭素環式基または複素環式基であるか、あるいは(ii) p が0のとき、式-Q1-X2-の2価の基であり、ここでX2 は-O-、-S-または NRA-であり、ここで RA は水素または任意に置換されていてもよいC1-C3 アルキルであり、Q1 は5〜13の環原子を有し、任意に置換されていてもよい、2価の単環もしくは2環の炭素環式基または複素環式基であり、
【0018】
Alk1 およびAlk2 は、独立して、任意に置換されていてもよい2価のC3-C7 シクロアルキル基、または任意に置換されていてもよい直鎖状もしくは分枝鎖状の、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)もしくはアミノ(-NRA-)結合(ここで、RA は水素または任意に置換されていてもよいC1-C3 アルキルである)を任意に含んでいるか、もしくは末端に有している、C1-C6 アルキレン、C2-C6 アルケニレンもしくはC2-C6 アルキニレン基を表し、
X1 は結合手、-C(=O)-;または-S(=O)2-;-NR4C(=O)-、-C(=O)NR4-、-NR4C(=O)-NR5-、-NR4S(=O)2-もしくは-S(=O)2NR4-であり、ここでR4およびR5は独立して、水素または任意に置換されていてもよいC1-C6 アルキルであり、
z は0または1である)。
【0019】
上記の化合物(IA1)および(IB1)は、結合基-Y-L1-Y1-(CH2)z-によって主の分子テンプレートに今度はアルファアミノ基を通して結合した、アルファアミノ酸またはアルファアミノ酸エステルモチーフR1R2CHNH-を有する。そのC-結合した対応物と同様に、N-結合したアミノ酸エステルモチーフも、細胞膜を横切って、細胞内エステラーゼがエステルをその元の酸へ加水分解する細胞内への輸送を促進する。この荷電種は、細胞膜を横切っての逆の輸送はされにくく、それが細胞内でのIKKβ阻害剤の活性の蓄積に導く。
【0020】
国際特許出願番号:PCT/GB2007/004114も、関連し、アルファアミノ酸エステルモチーフを有する多くの化合物がマクロファージ中でIKK活性を選択的に蓄積することを開示している。マクロファージは、特定のTNFαおよびIL-1中のサイトカインの放出により炎症疾患において重要な役割を果たすことが知られている(van Roonら, Arthritis and Rheumatism, 2003, 1229-1238)。リウマチ性関節炎において、それらが関節の炎症および関節の破壊の持続に対する大きな一因である。マクロファージは腫瘍の増殖および進展にも関与する(Naldini and Carraro, Curr Drug Targets Inflamm Allergy, 2005, 3-8)。それゆえ、選択的にマクロファージ細胞増殖を標的とする薬剤は、癌および自己免疫疾患の治療において価値があるだろう。特定の細胞のタイプを標的することは、副作用の低減に導くことが期待されるであろう。エステラーゼモチーフが主なIKKβ阻害剤テンプレートに結合する様式が、それが加水分解されるかどうかを決定し、それゆえ、異なる細胞のタイプにそれが蓄積するかどうかを決定する。
【0021】
特に、マクロファージは、他の細胞タイプが含んでいない、ヒトカルボキシルエステラーゼhCE-1を含んでいる。PCT/GB2007/004114の式(IA1)および(IB1)において、エステラーゼモチーフ R1CH(R2)NH-の窒素がカルボニル(-C(=O)-)に直接結合していない、すなわち、Yが-C(=O)、-C(=O)O-または-C(=O)NR3-基でないとき、エステルは、細胞内カルボキシルエステラーゼhCE-2およびhCE-3によってではなく、細胞内カルボキシルエステラーゼ hCE-1によってのみで加水分解されるであろう。単球/マクロファージ系統の細胞のみが、hCE-1を含んでいることが見出されているので、それらの構造的要件に合うPCT/GB2007/004114の阻害剤が、マクロファージにおいてのみ蓄積するであろう。本明細書中で、「単球」と特定しない限り、マクロファージの用語は、マクロファージ(腫瘍関連マクロファージを含む)および/または単球のことをいうために用いられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明の概要
本発明は、PCT/GB2007/004117およびPCT/GB2007/004114の一般的開示の範囲内に含まれるが、それらの明細書中で具体的に特定されていないかまたは実例がない、特定の化合物のグループに関する。本発明は、それらの出願に開示された有用性を有し、特に、上記段落で言及された構造的要件に合うPCT/GB2007/004114のクラスの範囲内に含まれる化合物は、前記のマクロファージ選択特性を示す。
【0023】
発明の詳細な説明
本発明によれば、次のグループから選択される化合物:
*シクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5 (カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}ペンタ-4-エノエート;
シクロペンチル 5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}-L-ノルバリネート;
シクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-5-メチルフェニル}ペンタ-4-エノエート;
シクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-{5-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-2-メチルフェニル}ペンタ-4-エノエート;
*シクロペンチル O-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}-L-ホモセリネート;
*シクロペンチル N-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]ベンジル}-L-アラニネート;
【0024】
*tert-ブチル N-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]ベンジル}-L-アラニネート;
(2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}ペンタ-4-エン酸;
5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}-L-ノルバリン;
(2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-5-メチルフェニル}ペンタ-4-エン酸;
(2S,4E)-2-アミノ-5-{5-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-2-メチルフェニル}ペンタ-4-エン酸;
O-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}-L-ホモセリン;
N-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]ベンジル}-L-アラニン
およびそれらの医薬的に許容される塩を提供する。
【0025】
本明細書で用いる場合、用語「塩」は、塩基付加塩、酸付加塩および第4級塩を含む。酸性である本発明の化合物は、医薬的に許容される塩を含む塩を、例えばアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムおよびカリウム;アルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化カルシウム、バリウムおよびマグネシウムのような塩基と;例えばN-メチル-D-グルカミン、コリントリス(ヒドロキシメチル)アミノ-メタン、L-アルギニン、L-リジン、N-エチルピペリジン、ジベンジルアミンなどのような有機塩基とともに形成できる。塩基性であるこれらの化合物(I)は、医薬的に許容される塩を含む塩を、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸または臭化水素酸、硫酸、硝酸またはリン酸などの無機酸と、および酢酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、サリチル酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、グルタミン酸、乳酸およびマンデル酸などの有機酸とともに形成できる。適切な塩の総説のために、StahlおよびWermuthによるHandbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use (Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)を参照されたい。
【0026】
医薬品化学で普通であるように、本発明の化合物は、種々の水和または溶媒和された形態および異なった晶相で単離され得る。用語「溶媒和物」は、ここでは、本発明の化合物と1以上の医薬的に許容される溶媒分子、例えばエタノールの化学量論的な量とを含む分子複合体を記述するのに用いられる。用語「水和物」は、上記の溶媒が水であるときに用いられる。
【0027】
本明細書で用いる場合、用語「本発明の化合物」は、前記のリストに載せられた13化合物を意味し、それらの医薬的に許容される塩、水和物および溶媒和物を含む。
本発明の化合物の中で、前記のリストでアスタリスクを付けた化合物が、現在のところ好ましい。
【0028】
もう一つの広い観点において、本発明は、IKK、特にIKK-βの活性を阻害するため、ならびにNF-kBカスケードによって調節される疾患のための組成物の製造における、本発明の化合物の使用を提供する。本発明の化合物は、インビトロまたはインビボでのIKK、特にIKK-βの活性の阻害のために用いられ得る。
一以上の医薬的に許容される担体および/または賦形剤と共に本発明の化合物を含む医薬組成物も、本発明の一部を形成する。
【0029】
上記のように、本発明に関する化合物は、IKK、特にIKK-βキナーゼ活性の阻害剤であり、したがってIKK活性およびNF-kBカスケードにより調節される疾患の治療において有用である。そのような疾患は、腫瘍性/増殖性、免疫性および炎症性疾患を含む。特に、本発明の化合物の使用は、肝細胞の(hepatocellular)癌またはメラノーマのような癌だけでなく、腸癌、 卵巣癌、頭頚部癌および子宮頚部の扁平上皮癌、胃もしくは肺の癌、未分化希突起グリオーマ、多形性膠芽腫もしくは髄芽腫のような癌の治療;ならびにリウマチ性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息、多発性硬化症、糖尿病、アトピー性皮膚炎、移植対宿主病もしくは全身性狼瘡紅斑の治療を含む。その他の適応症は、II型糖尿病ような代謝性疾患およびアルツハイマー病のような神経系疾患を含む。
【0030】
本発明に関する化合物は、それらの薬物動態的性質に適った経路により投与するために製剤化され得る。経口投与可能な組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、ロゼンジ、経口用、局所用もしくは非経口用の無菌の溶液もしくは懸濁液のような液剤またはゲル製剤の形態であり得る。
【0031】
経口投与用の錠剤およびカプセル剤は、単回投与の形態であってよく、結合剤、例えばシロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガントもしくはポリビニルピロリドン;充填剤、例えばラクトース、砂糖、とうもろこし澱粉、リン酸カルシウム、ソルビトールもしくはグリシン;打錠用滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールもしくはシリカ;崩壊剤、例えばジャガイモ澱粉、またはラウリル硫酸ナトリウムのような許容される湿潤剤のごとき通常の賦形剤を含むことができる。錠剤は、通常の医薬分野で周知の方法に従って、コーティングされていてもよい。
【0032】
経口用の液体製剤は、例えば水性もしくは油性の懸濁液、溶液、乳液、シロップもしくはエリキシルの形態であってもよく、あるいは使用前に水またはその他の適当な媒体で再構成される乾燥製品としても提供され得る。そのような液体製剤は、懸濁化剤、例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、水素添加食用油脂;乳化剤、例えばレシチン、ソルビタンモノオレエートまたはアカシア;(食用油脂を含み得る)非水性媒体、例えばアーモンド油、分別ココナッツ油、グリセリン、プロピレングリコールのような油性エステル、またはエチルアルコール;保存剤、例えばメチルもしくはプロピルp-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸、ならびに所望により通常の香料または着色剤のような通常の添加剤を含んでいてもよい。
【0033】
皮膚への局所投与のために、医薬はクリーム、ローションまたは軟膏に製剤化され得る。医薬に用いられるクリームまたは軟膏は、当該分野で周知の通常の製剤、例えば英国薬局方のような標準的な医薬教科書に記載されているような製剤である。
【0034】
本発明の化合物は、吸入剤の形態で投与され得る。エアロゾルの生成は、例えば加圧式噴霧器または超音波噴霧器を用いて行うことができ、噴射剤式定量エアロゾル、または噴射剤なしで例えば吸入カプセルもしくはその他の乾燥粉末送達システムからの微細化された活性化合物を投与するのが好ましい。
【0035】
活性化合物は、用いられる吸入システムに記載されているような量で投与される。活性化合物に加えて、投与形態は、例えば噴射剤(定量エアロゾルの場合、例えばフリゲン(Frigen))、界面活性物質、乳化剤、安定化剤、保存剤、香料、充填剤(粉末吸入の場合、例えばラクトース)のような賦形剤、あるいは適当ならば他の活性化合物をさらに含んでいてもよい。
【0036】
吸入目的のために、患者に適した吸入技術を用いて、最適粒子径のエアロゾルが生成され、投与され得る多くのシステムが入手可能である。定量エアロゾル用には、アダプター(スペーサー、エクスパンダー)および洋梨型のコンテナー(例えば、Nebulator(商標)、Volumatic(商標))ならびに噴射スプレーを噴出する自動器具 (Autohaler(商標)) の使用に加えて、特に粉末吸入の場合には、多くの技術的な解決方法 (例えば、Diskhaler(商標)、Rotadisk(商標)、Turbohaler(商標)またはEP-A-0505321に記載のインヘイラー) が利用可能である。
【0037】
眼への局所適用のために、適当な無菌の水性もしくは非水性の媒体中の溶液または懸濁液に製剤化され得る。添加剤、例えばメタビサルファイトナトリウムまたはエデト酸2ナトリウムのような緩衝剤;フェニル酢酸水銀もしくはナイトレート、塩化ベンザルコニウムまたはクロルヘキシジンのような殺菌剤を含む保存剤、およびヒプロメロースのような濃稠化剤も含まれ得る。
【0038】
活性成分は、無菌媒体中で非経口的にも投与され得る。用いられる媒体および濃度により、医薬は媒体中に懸濁または溶解され得る。有利には、局所麻酔剤、保存剤および緩衝剤のようなアジュバントが媒体中に溶解され得る。
【0039】
本発明の化合物は、多くの医薬的に活性な公知の物質と組み合わせて用いられ得る。例えば、本発明の化合物は、細胞障害物質、HDAC阻害剤、キナーゼ阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、bcl-2 アンタゴニスト、mTorの阻害剤およびモノクロナル抗体(例えば成長因子レセプタに向けられたもの)とともに用いられ得る。好ましい細胞障害物質は、例えばタキサン類、プラチン類、5-フルオラシルのような抗代謝剤、トポイソメラーゼ阻害剤などを含む。
【0040】
式(IA)、(IB)、(IA1)または(IB1)のアミノ酸誘導体、その互変異性体またはそれらの医薬的に許容される塩、N-オキサイド、水和物もしくは溶媒和物を含む本発明の医薬は、したがって典型的には細胞障害物質、HDAC阻害剤、キナーゼ阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤および/またはモノクロナル抗体をさらに含む。
【0041】
さらに、本発明は、次のものを含む医薬組成物を提供する:
(a) 本発明の化合物;
(b) 細胞障害剤、HDAC阻害剤、キナーゼ阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、bcl-2 アンタゴニスト、mTorの阻害剤および/またはモノクロナル抗体;ならびに
(c) 医薬的に許容される担体または希釈剤。
【0042】
また、次のものを含む、ヒトまたは動物の治療において、別々に、同時にもしくは連続して用いられるための製品も提供される:
(a) 本発明の化合物;ならびに
(b) 細胞障害剤、HDAC阻害剤、キナーゼ阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、bcl-2 アンタゴニスト、mTorの阻害剤および/またはモノクロナル抗体。
【実施例】
【0043】
本発明の化合物の製造は、いま記載される:
略語
MeOH = メタノール
EtOH = エタノール
IPA = イソプロピルアルコール
EtOAc = 酢酸エチル
DCM = ジクロロメタン
DMF = ジメチルホルムアミド
DME = 1,2-ジメトキシエタン
DMSO = ジメチルスルホキサイド
DMAP = 4-ジメチルアミノピリジン
TFA = トリフルオロ酢酸
THF = テトラヒドロフラン
【0044】
FMOC = 9-フルオレニルメトキシカルボニル
Na2CO3 = 炭酸ナトリウム
DIPEA = ジイソプロピルエチルアミン
MP-CNBH3 = 多孔質トリエチルアンモニウムメチルポリスチレンシアノボロハイドライド
BEMP = 2-tブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチル-パーヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン
NaH = 水素化ナトリウム
NaOH = 水酸化ナトリウム
NaHCO3 = 炭酸水素ナトリウム
HCl = 塩酸
Pd/C = パラジウム炭素
PdCl2(dppf) = [1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン] ジクロロパラジウム(II)
【0045】
EDCI = 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
KOAc = 酢酸カリウム
TBAI = テトラブチルアンモニウムヨーダイド
ml = ミリリットル
g = グラム
mg = ミリグラム
mol = モル
mmol = ミリモル
Sat = 飽和
LCMS = 高性能液体クロマトグラフィ/質量分析
NMR = 核磁気共鳴吸収
RT = 室温
【0046】
市販の反応試剤および溶媒 (HPLC グレード) は、さらに精製することなく用いられた。溶媒はBuchiロータリーエバポレーターを用いて除去された。 マイクロ波照射は、CEM Discovery モデルを用い、300Wにセットして行われた。フラッシュクロマトグラフィカラムによる化合物の精製は、Fluorochem から得られた粒子径40〜63μm (230〜400メッシュ)のシリカゲルを用いて行われた。
【0047】
分取HPLCによる化合物の精製は、逆相Agilent prep-C18カラム(5μm, 50×21.2 mm)を用いてAgilent prep システムで、次の条件下に行われた。勾配0-100% B (A = 水/ 0.1% アンモニアまたは0.1%ギ酸およびB = アセトニトリル/ 0.1%アンモニアまたは0.1%ギ酸)10分かけて、流量= 28 ml/分、UV検出254 nm。
【0048】
1H NMR スペクトルは重水素化溶媒中、Bruker 400または300 MHz AV スペクトロメーターで記録された。ケミカルシフト(δ)は、ppmである。薄層クロマトグラフィ(TLC)分析は、Kieselgel 60 F254 (Merck)プレートで、UV光を用い可視化して行われた。
【0049】
分析HPLC/MSは次のようにして得られた:Agilent Prep-C18 Scalarカラム、 5 μm (4.6×50 mm、流速2.5 ml/min)、7分かけて、0.1% v/vギ酸含有H2O-MeCN勾配で溶出、254 nmでUV検出。
【0050】
勾配情報:0.0-0.5 分:95% H2O-5% MeCN; 0.5 -5.0分; 95% H2O-5% MeCNから 5% H2O-95% MeCNに勾配をつける; 5.0-5.5分: 5% H2O-95% MeCNでホールド; 5.5-5.6 分: 5% H2O-95% MeCNでホールド、流速3.5 ml/分まで上げる; 5.6-6.6分: 5% H2O-95% MeCNでホールド、流速3.5 ml/分; 6.6-6.75分:95% H2O-5% MeCNにリターン、流速 3.5 ml/分; 6.75-6.9 分:95% H2O-5% MeCNでホールド、流速3.5 ml/分; 6.9-7.0分:95% H2O-5% MeCNでホールド、流速2.5 ml/分まで下げる。マススペクトルは、ポジティブ(APCI + ESI+)またはネガティブ(APCI + ESI-) モードのいずれかで、Agilent マルチモードソースを用いて得られた。
【0051】
一般式(IA)、(IB)、(IA1)および(IB1)の化合物の合成に採用され得る方法の実施例が以下に記載されるが、以下のスキーム1-7に示される反応に限定されない。
スキーム1は、関連のボロネートエステル(中間体2)を中央のチオフェン骨格(中間体1)とカップリングさせる典型的なスズキ反応を用いる、以下に記載の実施例の製造のための一般的な合成経路を示す。
【0052】
【化4】

【0053】
スキーム2は中間体2への合成を示す。
【化5】

【0054】
スキーム3および4は、中間体5および6への合成を示す。
【化6】

【0055】
スキーム5は中間体7への合成を示す。
【化7】

【0056】
スキーム6は、関連のボロネート酸(中間体10a-10b)を中央のチオフェン骨格(中間体 1)とカップリングさせる典型的なスズキ反応を用いる、実施例11〜13の製造のための一般的な合成経路を示す。
【化8】

【0057】
中間体
中間体1:5-ブロモ-2-(カルバモイルアミノ)チオフェン-3-カルボキサミド
【化9】

工程1〜4(スキーム1)に示す中間体1の合成は、WO03104218に詳細に記載されている。
【0058】
中間体2:シクロペンチル (2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペンタ-4-エノエート
【化10】

【0059】
中間体2の合成は、スキーム2に詳細に記載されており、完全な実験の詳細を以下に示す。
工程1:シクロペンチル (2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペンタ-4-エノエート
DCM (20 ml)中の(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペンタ-4-エン酸 (2.00 g, 9.29 mmol)の溶液に、0℃でシクロペンタノール (942 μl, 11.15 mmol)およびDMAP (113 mg, 0.93 mmol)を加えた。混合物を15分間撹拌し、EDCI (1.99 g, 10.22 mmol)を加え、反応混合物を0℃で3時間撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、H2O、食塩水で洗浄し、乾燥 (MgSO4)し、真空下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン中3-5% EtOAc)で精製し、油状物として標記の化合物 (2.15g, 収率82%)を得た。LCMS: m/z 284 [M+H]+.
【0060】
工程2- シクロペンチル (2S,4E)-5-(3-ブロモフェニル)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペンタ-4-エノエート
アセトニトリル (15 ml)中のシクロペンチル (2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペンタ-4-エノエート (2g, 7.06 mmol)、3-ブロモ-ヨードベンゼン (1.35 ml, 10.59 mmol)、NaHCO3 (1.78 g, 21.18 mmol)、TBAI (2.87 g, 7.77 mmol)の混合物にPd(OAc)2 (159 mg, 0.71 mmol)を加えた。混合物をN2でパージし(purged)、77℃で24時間加熱した。さらに、3-ブロモ-ヨードベンゼン (800μl, 5.3 mmol)およびPd(OAc)2 (159 mg, 0.71 mmol)を加え、混合物を77℃で24時間加熱した。混合物を冷却し、EtOAcで希釈し、セライト(商標)で濾過し、H2O、食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、真空下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー (ヘプタン中4-10% EtOAc)で精製し、少量のシクロペンチル (2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペンタ-4-エノエートおよび未知の不純物と共に標記の化合物を含む油状物(1.38 g)を得た。粗生成物をさらに精製することなく用いた。LCMS: m/z 460. [M+H]+.
【0061】
工程3- シクロペンチル (2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペンタ-4-エノエート
DMSO (7.8 ml)中のシクロペンチル (2S,4E)-5-(3-ブロモフェニル)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペンタ-4-エノエート (1.38 g, 3.15 mmol)、KOAc (402 mg, 4.10 mmol)および 4,4,4',4',5,5,5',5'-オクタメチル-2,2'-ビ-1,3,2-ジオキサボロラン (1.48 g, 6.29 mmol)の混合物にPdCl2(dppf) (257 mg, 0.32 mmol)を加え、混合物をN2でパージした。反応混合物をN2下、65℃で22時間加熱し、冷却し、Et2O/H2Oの間で分配した。水性部をEt2Oで抽出し、合わせた有機物をH2O、食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー (ヘプタン中7-10% EtOAc)で精製し、標記の化合物(1.09 g, 収率71%)を得た。
【0062】
LCMS: m/z 508.2 [M+Na+H]+. 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 7.80 (1H, s), 7.68 (1H, d, J=7.5Hz), 7.44 (1H, d, J=7.5Hz), 7.36-7.30 (1H, m), 6.47 (1H, d, J=15.9Hz), 6.20-6.07 (1H, m), 5.27-5.21 (1H, m), 5.15-5.07 (1H, m), 4.45-4.36 (1H, m), 2.75-2.56 (1H, m), 1.95-1.62 (8H, m), 1.45 (9H, s), 1.37 (12H, s).
【0063】
中間体3:シクロペンチル (2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[2-メチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペンタ-4-エノエート
【化11】

【0064】
スキーム2の工程2で中間体6を用いて、中間体2と類似の方法で合成した。
LCMS: m/z 500 [M+H]+. 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 7.84 (1H, s), 7.62-7.58 (1H, m), 7.19-7.12 (1H, m), 6.66 (1H, d, J=16.8Hz), 6.12-5.99 (1H, m), 5.28-5.20 (1H, m), 5.17-5.09 (1H, m), 4.64-4.37 (1H, m), 2.82-2.59 (2H, m), 1.94-1.66 (8H, m), 1.64 (9H, s), 1.36 (12H, s).
【0065】
中間体4:シクロペンチル (2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[3-メチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペンタ-4-エノエート
【化12】

【0066】
スキーム2の工程2で中間体5を用いて、中間体2と類似の方法で合成した。
LCMS: m/z 500 [M+H]+. 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 7.60 (1H, s), 7.52 (1H, s), 7.26 (1H, s), 6.45 (1H, d, J=15.9Hz), 6.17-6.05 (1H, m), 5.27-5.20 (1H, m), 5.13-5.07 (1H, m), 4.44-4.35 (1H, m), 2.72-2.61 (2H, m), 1.93-1.64 (8H, m), 1.46 (9H, s), 1.37 (12H, s).
【0067】
中間体5:1-ブロモ-3-ヨード-5-メチルベンゼン
【化13】

【0068】
中間体5の合成は、スキーム3に詳細に記載されており、完全な実験の詳細を以下に示す。
工程1- 4-ブロモ-2-ヨード-6-メチルアニリン
EtOH (33 ml)中の4-ブロモ-2-メチルアニリン (1.86 g, 9.97mmol)の溶液に、ヨウ素 (2.54 g, 10 mmol)およびAg2SO4 (3.11 g, 10 mmol)を加えた。混合物をRTで3時間撹拌し、濾過し、溶媒を減圧下に除去した。残渣をDCM中に溶解し、1M NaOH (5×20 ml)および水で洗浄した。有機抽出物を合わせ、乾燥(MgSO4)し、真空下に濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン中5% EtOAc)で精製し、ベージュ色の固体として標記の生成物(2.47 g, 収率79%)を得た。
LCMS: m/z 312 [M+H]+. 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 7.64 (1H, s), 7.16 (1H, s), 4.10 (2H, br s), 2.20 (3H, s).
【0069】
工程2- 1-ブロモ-3-ヨード-5-メチルベンゼン
トルエン/EtOHの1:3混液(15 ml)中の4-ブロモ-2-ヨード-6-メチルアニリン (2.45 g, 7.85 mmol)の溶液に、0℃で濃H2SO4および亜硝酸ナトリウム (1.16 g, 17.28 mmol)を加えた。反応混合物をRTで45分間撹拌し、次いで1.5時間加熱還流した。反応混合物をRTに冷却し、水で希釈し、Et2Oで抽出した。有機層を分離し、水、食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空下に濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン中10% EtOAc)で精製し、澄明な油状物として所期の生成物(1.06g, 収率45%)を得た。
LCMS: m/z 297 [M+H]+. 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 7.68 (1H, s), 7.49 (1H, s), 7.31 (1H, s), 2.31 (3H, s).
【0070】
中間体6:4-ブロモ-2-ヨード-1-メチルベンゼン
【化14】

【0071】
中間体6の合成は、スキーム4に示されており、完全な実験の詳細を以下に示す。
工程1- 4-ブロモ-2-ヨード-1-メチルベンゼン
ジ-ヨードメタン (3.4 ml)中の2-メチル-5-ブロモアニリン (1.5 g, 8.06 mmol)の溶液に、0℃でゆっくりとtert-ブチル ナイトライト (1.6 ml, 12.1 mmol)を加えた。氷浴を取り去り、反応混合物をRTで撹拌し、次いで80℃で30分間加熱した。溶媒を減圧下に除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー (EtOAc/ヘプタン)で精製し、標記の化合物(1.6 g, 収率67%)を得た。
LCMS: m/z 297 [M+H]+. 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 7.96 (1H, s), 7.42-7.35 (1H, m), 7.12 (1H, d, J=8.1Hz), 2.40 (3H, s).
【0072】
中間体7:シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-L-ホモセリン
【化15】

【0073】
中間体7の合成は、スキーム5に詳細に記載されており、完全な実験の詳細を以下に示す。
【0074】
工程1- O-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]-L-ホモセリン
アセトニトリル(10 ml)中のL-ホモセリン(1 g, 8.4 mmol)の懸濁物に、0℃で1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(1.32 ml, 8.8 mmol)を加えた。塩化tert-ブチル-ジメチルシリル(1.33 g, 8.8 mmol)を、次いで、5分間かけて少しずつ加え、反応混合物を室温まで温めて16時間撹拌した。白色の沈殿物が形成され、これを濾別して、アセトニトリルで洗浄した後に、真空下で乾燥させた。標記化合物を、白色固体として単離した(1.8 g, 収率92%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO), δ: 7.5 (1H, br s), 3.7 (1 H, m), 3.35 (4H, bm), 1.95 (1H, m), 1.70 (1H, m), 0.9 (9 H, s), 0.1 (6H, s).
【0075】
工程2- N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]-L-ホモセリン
DCM (100 ml)中のO-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]-L-ホモセリン (1.8 g, 7.7 mmol)の懸濁物を、0℃でトリエチルアミン(2.15 ml, 15.4 mmol)およびジ-tert-ブチル ジカーボネート(1.77 g, 8.1 mmol)で処理した。反応混合物を室温で反応の完了のために16時間撹拌した。DCMを減圧下で除去し、混合物を酢酸エチル/食塩水で処理した。酢酸エチル層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下に蒸発させた。粗生成物を、さらなる精製を行わずに、次に用いた(2.53 g, 収率99%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 7.5 (1H, br s), 5.85 (1H, d, J=6.5Hz), 4.3 (1H, m), 3.75 (2H, m), 1.95 (2H, m), 1.40 (9H, s), 0.85 (9H, s), 0.1 (6H, s).
【0076】
工程3- シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]-L-ホモセリネート
DCM (50 ml)中のN-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]-L-ホモセリン(2.53 g, 7.6 mmol)の溶液に、0℃でシクロペンタノール(1.39 ml, 15.3 ml)、EDCI (1.61 g, 8.4 mmol)およびDMAP (0.093 g, 0.76 mmol)を加えた。反応混合物を、室温で16時間撹拌した後に、減圧下に蒸発させた。粗残渣を酢酸エチル(100 ml)に溶解し、1M HCl、1M Na2CO3および食塩水で洗浄した。有機層を、次いで、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下に蒸発させた。生成物を、酢酸エチル/ヘプタン(1:4)を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製して、2.24 g、収率73%の標記化合物を得た。
LCMS:m/z 402.5 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 5.2 (1H, d, J=6.3Hz), 5.15 (1H, m), 4.2 (1H, m), 3.6 (2H, m), 2.0 (1H, m), 1.95-1.55 (9H, bm), 1.4 (9H, s), 0.85 (9H, s), 0.1 (6H, s).
【0077】
工程4- シクロペンチル (2S)-4-ヒドロキシ-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート
シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]-L-ホモセリネート(1.57 g, 3.9 mmol)を、酢酸:THF:水(3:1:1, 100 ml)に溶解した。反応混合物を、30℃で反応の完了のために16時間撹拌した。酢酸エチル(200 ml)を加え、1M Na2CO3、1M HClおよび食塩水で洗浄した。酢酸エチル抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下に蒸発させて、放置していたら結晶化する澄明な油状物として生成物を得た(1.0 g, 収率95%)。
LCMS:m/z 310.3 [M+Na]+, 1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 5.4 (1H, d, J=6.5Hz), 5.2 (1H, m), 4.4 (1H, m), 3.65 (2H, m), 2.15 (1H, m), 1.9-1.55 (9H, bm), 1.45 (9H, s).
【0078】
工程5- シクロペンチル (2S)-4-ブロモ-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート
DCM (16.2 ml)中のN-ブロモスクシンイミド(1.86 g, 10.4 mmol)のスラリーに、DCM (7.2 ml)中のトリフェニルホスフィン(2.56 g, 9.74 mmol)の溶液を加えた。溶液を、添加の後にさらに5分間撹拌した。ピリジン(338μl, 4.18 mmol)、次いでDCM (8.8 ml)中のシクロペンチル (2S)-4-ヒドロキシ-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート(1.0 g, 3.48 mmol)の溶液を加えた。溶液を18時間撹拌し、真空濃縮し、残存溶媒を、トルエン(3×16 ml)と共沸させた。残渣を、ジエチルエーテル(10 ml)および酢酸エチル:ヘプタン(1:9, 2×10 ml)で摩砕した。合わせたエーテルおよびヘプタン溶液をシリカ上で濃縮し、ヘプタン中10〜20%酢酸エチルを用いるカラムクロマトグラフィーで精製して、1.02 g (収率84%)の標記化合物を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 5.3-5.05(2 H, m), 4.45-4.3(1H, m), 3.45 (2H, t, J=7.3Hz), 2.50-2.30 (1H, m), 2.25-2.10 (1H, m), 1.95-1.60 (8H, b m), 1.47 (9H, s).
【0079】
工程6- シクロペンチル O-(4-ブロモフェニル)-L-ホモセリネート
DMF (5 ml)中の3-ブロモフェノール(0.593 g, 3.43 mmol)の溶液を、氷浴で0℃まで冷却し、NaH (0.137 g, 3.43 mmol)を一度に加えた。反応混合物を室温まで温め、短く超音波処理し、0℃まで再び冷却した。THF (10 ml)中のシクロペンチル (2S)-4-ブロモ-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート(1.2 g, 3.43 mmol)の溶液を、次いで滴下し、反応混合物を室温まで温めた。1時間後に、反応混合物を50℃まで加熱し、TLCにより反応の完了をモニターした。4時間後に、反応は完了したようであり、これを室温まで冷却して、EtOAcおよび飽和NaHCO3の混液に注いだ。有機層を回収し、水で3回と、食塩水で洗浄し、次いで、乾燥 (MgSO4)させ、濾過し、真空蒸発させた。残渣は、少量の4-ブロモフェノールをまだ含有しており、これを、DCM (7 ml)中のMP-カーボネート(2 g)を用いて捕捉することにより除去し、濾液を蒸発させて、生成物を白色固体として得た(1.2 g, 収率79%)。LCMS:m/z 443 [M+H]+.
【0080】
工程7- シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-L-ホモセリネート
DMSO中のシクロペンチル O-(4-ブロモフェニル)-L-ホモセリネート(1.2 g, 2.71 mmol)、KOAc (0.346 g, 3.53 mmol)、ビス[ピナコラート]ジボロン(1.378 g, 5.43 mmol)およびPdCl2(dppf) (0.198 g, 0.271 mmol)の混合物を、窒素雰囲気下に65℃で加熱し、生成物の形成をLCMSによりモニターした。1時間後に反応が完了したので、反応混合物を室温まで冷却し、EtOAcおよび1M HClの混液に注いだ。層を分離し、有機層を水および食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下に蒸発させた。残渣を、ヘキサン中の5%〜10% EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーで精製した(0.65 g, 収率49%)。LCMS:m/z 490 [M+H]+.
【0081】
中間体8:シクロペンチル (2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}ペンタ-4-エノエート
【化16】

【0082】
中間体8の合成は、スキーム1に示した合成ルートに従う。
工程5- シクロペンチル (2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}ペンタ-4-エノエート(中間体8)
DME (6 ml)中のシクロペンチル (2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペンタ-4-エノエート (中間体2) (1.00, 2.06 mmol)、中間体1 (1.09 g, 4.12mmol)の混合物に、Pd(Ph3P)4 および飽和NaHCO3 (3ml)を加えた。該混合物をN2 でパージし、75℃で22時間加熱した。反応混合物をRTに冷却し、EtOAcで希釈し、H2Oで洗浄し、混合物をセライト(商標)で濾過し、食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(2〜3.5% MeOH/DCM)で精製し、次いで分取HPLCで精製し、固体として標記の化合物(220 mg, 収率18%)を得た。
【0083】
LCMS: m/z 565.0 [M+Na+H]+. 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 11.16 (1H, br s), 7.43 (1H, br s), 7.36-7.30 (1H, m), 7.26-7.08 (3H, m), 6.41 (1H d, J=15.9Hz), 6.24-6.05 (1H, m), 5.84-5.60 (2H, m), 5.47 (1H, d, J=8.1Hz), 5.26-5.18 (1H, m), 4.48-4.37 (1H, m), 2.77-2.54 (2H, m), 1.93-1.52 (8H, m), 1.44 (9H, s).
【0084】
中間体:9a-9b
【化17】

【0085】
工程1- (2S)-1-(シクロペンチルオキシ)-1-オキソプロパン-2-アミニウム 4-メチルベンゼンスルホネート (中間体9a)
【化18】

【0086】
シクロヘキサン (150 ml)中の (S)-アラニン (5 g, 55.5 mmol)のスラリーに、シクロペンタノール (50 ml, 555 mmol)およびp-トルエンスルホン酸 (11.5 g, 55.5 mmol)を加えた。反応にディーン-スターク受液器を取り付け、完全に溶解するまで135℃で加熱した。12時間後、反応混合物をRTに冷却し、白色固体の沈殿が得られた。該固体を濾過し、EtOAcで洗浄した後、減圧下に乾燥し、白色の粉末として所期の生成物 (7.45 g, 収率85%)を得た。
LCMS: m/z 159 [M+H]+.
【0087】
中間体9bは商業的に入手可能である。
【化19】

【0088】
中間体10a:シクロペンチル N-[3-(ジヒドロキシボリル)ベンジル]-L-アラニネート
【化20】

【0089】
中間体10aの合成は、スキーム6に示した合成ルートに従う。
DCM (10 ml)中の中間体9a (500 mg, 1.51 mmol)および(3-ホルミルフェニル)ボロン酸 (387 mg, 2.58 mmol)の溶液に、NaBH(OAc)3 (1.63 mg, 7.69 mmol)を少しずつ20分かけて加えた。反応混合物をRTで2時間撹拌し、その後、反応混合物を1M HCl (50 ml)に注ぎ、DCM (50 ml)で洗浄した。水相をNaHCO3でpH 7に中和し、DCM (2×50 ml)で抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を除去した。生成物(650 mg, 2.23 mmol, 収率86%)を単離し、直接用いた。
LCMS: m/z 292 [M+H]+.
【0090】
中間体10b:tert-ブチル N-[3-(ジヒドロキシボリル)ベンジル]-L-アラニネート
【化21】

中間体10bは、中間体9bからスキーム6に記載した方法に従って製造された。
【0091】
実施例1:シクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}ペンタ-4-エノエート
【化22】

実施例1の合成は、スキーム1に詳細に記載されている。
【0092】
工程6- シクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}ペンタ-4-エノエート
THF (2 ml) 中のシクロペンチル (2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}ペンタ-4-エノエート (中間体8) (0.22 g, 0.41 mmol)の溶液を0℃に冷却した。ジオキサン中の4M HCl (2.195 ml, 8.78 mmol)を加え、溶液を撹拌下に室温まで温めた。10分後、さらなるジオキサン中の当量のHCl (2.2 ml, 8.78 mmol)を加えた。反応は2時間後に終了し、溶媒を減圧下に蒸発し、残渣をTHF (10 ml)で摩砕した。固体を回収し、大量のジエチルエーテルで洗浄し、真空下に一晩乾燥した (150 mg, 収率85%)。
【0093】
LCMS: m/z 443.0 [M+H]+. 1H NMR (300 MHz, DMSO) δ: 11.01 (1H, s), 7.76 (1H, s), 7.71 (1H, br s), 7.50 (1H, s), 7.40-7.30 (3H, m), 7.24 (1H, d, J=7.2Hz), 7.01 (2H, br s), 6.47 (1H, d, J=15.9Hz), 6.37-6.25 (1H, m), 5.10-5.04 (1H, m), 3.44 (1H, t, J=6.5Hz), 2.48-2.41 (2H, m), 1.85- 1.40 (8H, m).
【0094】
実施例2の合成はスキーム1に記載されており、実験手順を以下に示す。
実施例2:シクロペンチル 5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}-L-ノルバリネート
【化23】

【0095】
工程8- シクロペンチル 5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}-L-ノルバリネート
1% 酢酸/MeOH (49 ml)中のシクロペンチル (2S, 4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}ペンタ-4-エノエート (110 mg, 0.25 mmol)の溶液を、1ml/分で10% Pd/Cを用いるH-キューブ(cube)上で水素化した。溶液を真空下に濃縮し、白色の固体として標記の化合物 (110 mg, 収率90%)を得た。
LCMS: m/z 445.1 [M+H]+. 1H NMR (300 MHz, DMSO) δ: 11.01 (1H, s), 7.71 (2H, s), 7.36-6.90 (7H, m), 5.09-5.01 (1H, m), 3.33-3.25 (1H, m), 2.66-2.53 (2H, m), 1.91 (3H, s), 1.85-1.70 (2H, m), 1.68-1.39 (10H, m).
【0096】
次の実施例は、中間体1および適当なボロン酸エステルを用い、スキーム1に示したルートに従って、実施例1と同様の方法で製造された。
【化24】

【0097】
【表1】

【0098】
実施例6: (2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}ペンタ-4-エン酸
【化25】

【0099】
実施例6への合成ルートは、実施例1を用いるスキーム1に詳細に記載されている。
工程7- (2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}ペンタ-4-エン酸
THF中のシクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}ペンタ-4-エノエート (実施例1) (0.05 g, 0.113 mmol)の溶液に、1 mlの水中の水酸化リチウム (25 mg, 1.035 mmol)を加えた。溶液を室温で撹拌し続け、生成物の形成をLCMSでモニターした。2時間後、反応は完了した。THFを真空下に除去し、水性部をさらなる水 (2 ml)で希釈した。pHが酸性になるまで、酢酸を滴下し、形成された沈殿物を濾過により集め、水 (3 ml)、エタノール (5 ml)およびジエチルエーテル (10 ml)で洗浄した。生成物をオフホワイト色の固体として単離した(29 mg, 収率69%)。
【0100】
次の実施例は、実施例6と同様の方法で製造された。
【化26】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3−1】

【0103】
【表3−2】

【0104】
実施例11:シクロペンチル N-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]ベンジル}-L-アラニネート
【化27】

【0105】
実施例11〜13の合成はスキーム6に記載されており、完全な実験の詳細を以下に示す。
トルエン/エタノール (1:1, 4 ml)中の5-ブロモ-2-(カルバモイルアミノ)チオフェン-3-カルボキサミド (中間体1) (66 mg, 0.25 mmol)の溶液に、KOAc (50 mg, 0.5 mmol)、Pd(PPh4)3 (15 mg, 0.013 mmol)およびシクロペンチル N-[3-(ジヒドロキシボリル)ベンジル]-L-アラニネート (中間体10a) (87 mg, 0.30 mmol)を加えた。反応バイアルを密封し、90℃で一晩加熱した。反応混合物をRTになるままにし、溶媒を減圧下に除去し、残渣を分取HPLCで精製し、続いてSCX 2樹脂 (NH3/MeOH)でさらに精製して、標記の化合物 (5 mg, 収率5%)を得た。
LCMS: m/z 431 [M+H]+. 1H NMR (300MHz, d6-DMSO) δ: 11.01 (1H, s), 7.74 (2H, br s), 7.49 (1H, s), 7.42 (1H, d, J=7.8Hz), 7.37-7.31 (2H, m), 7.18 (1H, d, J=7.8Hz), 7.01 (2H, br s), 5.16-5.06 (1H, m), 3.85-3.60 (2H, m),1.90-1.45 (8H, m), 1.23 (3H, d, J=6.9Hz).
【0106】
実施例12:tert-ブチル N-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]ベンジル}-L-アラニネート
【化28】

【0107】
中間体1および中間体10bから、実施例11と同様の方法で。
LCMS: m/z 419 [M+H]+. 1H NMR (300MHz, d6-DMSO) δ: 11.01 (1H, s), 7.73 (2H, br s), 7.47 (1H, s), 7.40 (1H, d, J=7.8Hz), 7.37-7.30 (2H, m), 7.17 (1H, d, J=7.2Hz), 7.00 (2H, br s), 3.75 (1H, d, J=13.5Hz), 3.60 (1H, d, J=13.5Hz), 3.20-3.10 (2H, m), 1.43 (9H, s), 1.18 (3H, d, J=6.9Hz).
【0108】
実施例13:N-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]ベンジル}-L-アラニン
【化29】

【0109】
工程3:N-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]ベンジル}-L-アラニン
DCM/TFA (1:1, 5 ml)中のtert-ブチル N-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]ベンジル}-L-アラニネート (実施例12) (100 mg, 0.24 mmol)の溶液を、RTで一晩撹拌した。溶媒を真空下に除去し、標記の化合物 (64mg, 収率73%)を得た。
LCMS: m/z 363 [M+H]+. 1H NMR (300MHz, d6-DMSO) δ: 11.04 (1H, s), 7.81-7.70 (2H, m), 7.66 (1H, s), 7.60 (1H, d, J=7.9Hz), 7.45 (1H, t,J=7.7), 7.37 (1H, br s), 7.31 (1H, d, J=7.8Hz), 7.24 (1H, d, J=7.2Hz), 7.19-7.10 (1H, m), 7.04 (2H, br s), 4.11 (2H,s), 3.80-3.69 (1H, m), 1.43 (3H, d, J=7.2Hz).
【0110】
生物学的活性の測定
IKKβ酵素アッセイ
化合物のIKKβ キナーゼ活性阻害作用を、Invitrogen (Paisley, UK)により行われたッセイにおいて測定した。Z´-LYTE(商標)生化学的アッセイは、蛍光ベースの共役酵素フォーマットを用い、蛋白質分解開裂に対する、リン酸化および非リン酸化ペプチドのディファレンシャル感受性に基づいている。ペプチドの基質は、FRETペアを作る2つの発蛍光団−各末端におけるもの−でラベルされている。
【0111】
最初の反応において、キナーゼはATPのガンマ−ホスフェートを、合成FRET-ペプチドにおける単一のセリンまたはスレオニン残基へ移す。第2の反応において、部位−特異的プロテアーゼは、非リン酸化FRET-ペプチドを認識し、開裂する。FRET-ペプチドのリン酸化は、Development Reagentによる開裂を抑制する。開裂は、FRET-ペプチドのドナー(すなわち、クマリン)発蛍光団とアクセプター(すなわち、フルオレセイン) 発蛍光団との間でFRETを分裂させる。一方、開裂しないリン酸化されたFRET-ペプチドはFRETを維持する。ドナー発蛍光団の400nmにおける励起後のアクセプター発光に対するドナー発光の割合(エミッション比)を計算する放射分析法は、反応の進展を定量化するのに用いられる。
【0112】
最終の10μL キナーゼ反応は、0.9-8.0ng IKBKB (IKKβ)、50mM HEPES pH 7.5中の2μMSer/Thr 05 ペプチドおよびATP、0.01% BRIJ-35、10mM MgCl2、1mM EGTAからなっている。アッセイは、Km またはKmに近いATP濃度で行われる。室温での60 分間のキナーゼ反応インキュベーションの後、5μL の 1:128 希釈のDevelopment Reagentを加える。アッセイプレートを室温でさらに60分間インキュベートし、蛍光プレートリーダーで読み取る。
【0113】
2つのデータポイントを、DMSO中の試験化合物のストック溶液の1/3 log 希釈シリーズから描く。10μMの最高濃度から9段階の希釈を行い、無化合物のブランクを含む。データを集め、IDBS からのXLfit ソフトウェアを用いて、分析した。用量−応答曲線は、モデル番号205 (sigmoidal 用量−応答モデル)に合致する曲線である。描かれた曲線から、50%阻害を与える濃度を決定し、報告する。
【0114】
THP-1 細胞のLPS-刺激
THP-1 細胞を、V-ボトムの 96 ウェル組織培養処理プレートに4×104 細胞/ウェルの密度で100μl置き、5% CO2 中、37℃で16時間インキュベートした。組織培養媒体100μl中に阻害化合物を添加して2時間後、細胞を最終濃度1μg/mlで、 LPS (E coli 005:B5 株, Sigma)で刺激し、5% CO2 中、37℃で6時間インキュベートした。サンドウィッチELISA (R&D Systems #QTA00B)により、TNF-α レベルを細胞非含有上澄液から測定した。
【0115】
ヒト全血のLPS-刺激
ヘパリン処理された吸引器(Becton Dickinson)を用いて、静脈穿刺により採血し、等量のRPMI1640 組織培養媒体(Sigma)中に希釈した。100μlをV-ボトムの96 ウェル組織培養処理プレートに入れた。100μlの RPMI1640 媒体中の阻害剤を添加して2時間後、最終濃度100ng/mlで、血液をLPS (E coli 005:B5 株, Sigma)で刺激し、5% CO2 中、37℃で6時間インキュベートした。サンドウィッチ ELISA (R&D Systems #QTA00B)により、TNF-α レベルを細胞非含有上澄液から測定した。
【0116】
次のようにして、IC50 値を3つの範囲の1つに配分した。
範囲 A: IC50 < 500nM
範囲 B: 500nM < IC50 <1000nM
範囲 C: IC50 >1000nM
【0117】
結果の表
【表4】

【0118】
「NT」は、化合物が問題のアッセイで今のところ試験されていないことを示す。
「NR」は「無関連」を示す。実施例6〜10、13は、細胞内で開裂されるアミノ酸エステルの合成カルボン酸類似化合物である。これらのカルボン酸が細胞と接触するとき、それらは細胞の中へ突き抜けず、それゆえ、このアッセイでTNF-αを阻害しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}ペンタ-4-エノエート;
シクロペンチル 5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}-L-ノルバリネート;
シクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-5-メチルフェニル}ペンタ-4-エノエート;
シクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-{5-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-2-メチルフェニル}ペンタ-4-エノエート;
シクロペンチル O-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}-L-ホモセリネート;
シクロペンチル N-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]ベンジル}-L-アラニネート;
tert-ブチル N-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]ベンジル}-L-アラニネート;
(2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}ペンタ-4-エン酸;
5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}-L-ノルバリン;
(2S,4E)-2-アミノ-5-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-5-メチルフェニル}ペンタ-4-エン酸;
(2S,4E)-2-アミノ-5-{5-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-2-メチルフェニル}ペンタ-4-エン酸;
O-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル}-L-ホモセリン;
N-{3-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]ベンジル}-L-アラニン
からなる群から選択される化合物およびそれらの医薬的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物を、一つ以上の医薬的に許容される担体および/または賦形剤とともに含む医薬組成物。
【請求項3】
IKK 酵素の活性を阻害する組成物の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項4】
エクスビボまたはインビボでIKKβ活性を阻害するための、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
腫瘍性/増殖性、免疫性または炎症性疾患の治療用組成物の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項6】
IKK 酵素を、該酵素の活性を阻害するのに有効な量の請求項1に記載の化合物と接触させることを含む、IKK 酵素の活性を阻害する方法。
【請求項7】
エクスビボまたはインビボでIKKβの活性を阻害するための、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
腫瘍性/増殖性、免疫性または炎症性疾患の患者に、請求項1に記載の化合物の有効量を投与することを含む、腫瘍性/増殖性、免疫性または炎症性疾患の治療方法。
【請求項9】
癌細胞の増殖を治療するための、請求項3に記載の使用、または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
肝細胞の癌またはメラノーマを治療するための、請求項3に記載の使用、または請求項8に記載の方法。
【請求項11】
腸癌、 卵巣癌、頭頚部癌および子宮頚部の扁平上皮癌、胃もしくは肺の癌、未分化希突起グリオーマ、多形性膠芽腫もしくは髄芽腫を治療するための、請求項3に記載の使用、または請求項8に記載の方法。
【請求項12】
リウマチ性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息、多発性硬化症、糖尿病、アトピー性皮膚炎、移植対宿主疾患または全身性狼瘡紅斑を治療するための、請求項3に記載の使用、または請求項8に記載の方法。
【請求項13】
代謝性または神経系の疾患を治療するための、請求項3に記載の使用、または請求項8に記載の方法。
【請求項14】
II型糖尿病またはアルツハイマー病を治療するための、請求項3に記載の使用、または請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2011−518814(P2011−518814A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505577(P2011−505577)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001434
【国際公開番号】WO2009/130434
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(507288718)クロマ セラピューティクス リミテッド (18)
【氏名又は名称原語表記】CHROMA THERAPEUTICS LTD
【住所又は居所原語表記】93 Milton Park,Abingdon,Oxfordshire OX14 4RY,UNITED KINGDOM
【Fターム(参考)】