説明

IL−15による、発毛を刺激および活性化する方法

本発明は、発毛を促進するための、または脱毛を治療、予防、および/もしくは改善するための組成物を調製するための、IL-15ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはIL-15ポリペプチドを特異的に認識する抗体に結合するか、もしくはIL-15レセプターのα鎖に特異的に結合する化合物の使用に関する。さらに、本発明は、IL-15ポリヌクレオチドを含むトランスジェニック非ヒト動物を包含する。本発明はまた、非ヒト動物において発毛を刺激する方法、および獣毛を生産する方法に関する。最後に、本発明は、脱毛を有する対象を治療、予防、および/または改善する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発毛を刺激するための、または脱毛を治療、予防、および/もしくは改善するための組成物を調製するための、IL-15ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはIL-15ポリペプチドを特異的に認識する抗体に結合するか、もしくはIL-15レセプターのα鎖に特異的に結合する化合物の使用に関する。さらに本発明は、IL-15ポリヌクレオチドを含むトランスジェニック非ヒト動物を含む。本発明はまた、非ヒト動物における発毛を刺激する方法、および獣毛を生産する方法に関する。最後に、本発明は、脱毛を有する対象を治療、予防、および/または改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脱毛は、医学的および美容的観点から、ヒトにおいては深刻な問題である。脱毛には、生来ののまたは後天性の疾患状態、および化学療法のような薬物療法の結果の状態、または環境の影響に起因する状態などを含む、ヒトにおいてさまざまな要因がある。ヒトにおいて、毛髪疾患の群を抜いて最も一般的な原因は、円形脱毛症または男性ホルモン性脱毛症のような発毛制御における欠陥である。ヒト以外にも、脱毛または発毛遅延は、さまざまな動物、特にヒツジ、ウマ、ラマ、またはラクダのように毛を生産するために使用される動物にとっても問題である。毛は、通常これらの動物から剃毛よって採取される。動物の剃毛後、毛の再生が誘導されて、再び動物の毛を剃ることができるようになるには一定の期間を要する。その期間は、動物を利用した毛の生産における重要な律速段階である。
【0003】
発毛は、皮膚に存在する毛包によって左右される。この毛包は、上皮細胞の異なる層から成る複雑な円筒型の構造をしている。外側の区画は毛根鞘である。この区画は、表皮とつながっており、ここで細胞増殖が起こる(29)。毛包は極めて動的であり、これらは一生を通じ、成長(増殖期)、退行(中間期)、および休止(休止期)という周期で、自分自身を繰り返し再構築する。中間期では、増殖が起こり、毛包の下方部分において、広範なアポトーシスが観察できる(30)。
【0004】
いくつかのサイトカイン、中でもTNF-α、IL-1-β、およびIFN-γは、中間期の間、毛球ケラチノサイトにおいてアポトーシスの制御および促進に関与することが示唆されている(33)。IL-15が、毛包ケラチノサイトにおいて、シクロホスファミド誘導によるアポトーシスを妨害することが示された(34)。IL-15は、末梢の免疫機能だけでなく、免疫細胞のホメオスタシスにとっても重要な多面的サイトカインである(1-4)。多くのインビトロおよびインビボの研究によって、NK細胞系統の発生および生存におけるIL-15の重要な役割が証明されている(5,6)。マウスでの別の研究では、IL-15は、CD4+T細胞よりむしろCD8+T細胞、および上皮内リンパ球のサブセットに対する選択的増殖因子であることが示されている(7-10)。したがって、IL-15-/-およびIL-15Rα-/-マウスでは、リンパ球が減少し、具体的にはNK細胞、NKT細胞、腸管由来の上皮内リンパ球のサブセット、および活性化されたCD8+T細胞が欠乏する(5, 11)。MHCクラスIプロモーター制御下にあるIL-15の普遍的なトランスジェニック過剰発現は、NK細胞および記憶表現型CD8+T細胞を初期に増大させ、その後、致命的な白血病の発病をもたらし、その結果、これらの突然変異マウスの早期の死を招いた。このため、長期にわたるIL-15のインビボ効果を調査することは困難である(6)。その上、IL-15は、筋肉細胞の同化経路に関与し、肥満細胞の増殖因子として作用し、かつ、T細胞、B細胞、および線維芽細胞におけるアポトーシスの一般的なインヒビターとして作用する(12-15)。これらの研究は、多くの細胞型および組織におけるIL-15の広範な発現と一致する。このように、いくつかの報告は、多数の組織および細胞型においてIL-15 mRNA転写物が豊富に存在することを明らかにしている(3, 16)。しかしながら、IL-15の発現は、転写、翻訳、および細胞内輸送のレベルで厳重に制御されている(17-19)。特に、IL-15タンパク質は、例えば、翻訳を妨げる5'UTR中の12個のAUG、2つの不十分なシグナルペプチド、および前駆タンパク質のC末端にある負の調節因子など、いくつかの制御因子により転写後に調節されている。そのため、IL-15のインビボ機能に関する調査には大きな障害が生じる。皮膚の内部において、IL-15の主な細胞供給源はケラチノサイトである。ケラチノサイトはIL-15 mRNAを発現するが、紫外線または外傷のような刺激を受けた時、および乾癬病巣においてのみIL-15タンパク質を産生する(15, 20, 21)。IL-15の転写物はまた、新しく分離したばかりのヒトのランゲルハンス細胞(LC)においても検出されている。IL-15はさらに、単球からのヒトLCのインビトロ生成に関与しているとの報告もあった。IL-15は、mRNAレベルでは、活性化された単球、樹状細胞、破骨細胞、および線維芽細胞を含む、多数の組織および多様な細胞型で発現される14-15 kDaタンパク質である(1, 3)。ヘテロ三量体のIL-15レセプター(IL-15R)は、IL-2Rのβ鎖およびγ鎖、それとともにIL-15との高親和性結合を担うユニークなα鎖(IL-15Rα)から成る。IL-2Rαは、活性化T細胞上で主に発現するのに対し、IL-15RαのmRNAは、多様な組織および細胞において同定されている。IL-2のように、IL-15Rαβγ複合体は、JAK1/3およびSTAT3/5の経路を通じてシグナルを伝達する(3, 28)。IL-15は、CD8+記憶T細胞の増殖および維持に必須であるとすでに記載されており、高用量で汎T細胞および肥満細胞増殖因子として作用する(2, 26, 27)。
【0005】
しかしながら、発毛の促進、ならびに本明細書上記の疾患の治療、予防、および/または改善のための効果的な方法は、依然として得られていないが、それでもなお強く求められている。
【0006】
したがって、本発明の基礎にある技術的課題は、発毛を効果的に促進し、ならびに疾患が原因で、または疾患に付随して起こる脱毛を治療、予防、および/または改善する方法を提供することであると理解されなければならない。この技術的課題は、特許請求の範囲にその特徴が記述されている態様によって解決されている。
【発明の開示】
【0007】
したがって、本発明は、発毛を刺激するための組成物を調製するための、以下の使用に関する。
(i)以下を含むポリヌクレオチド:
(a)配列番号:1もしくは3に示す核酸配列、
(b)配列番号:2もしくは4に示すアミノ酸配列をコードする核酸配列、
(c)改変されたシグナルペプチド、改変されたN末端、および/もしくは改変されたC末端を有する、配列番号:2または4に示すアミノ酸配列をコードする核酸配列、もしくは
(d)ストリンジェントな条件下で(a)から(c)のいずれか一つとハイブリダイズする核酸配列;
(ii)(a)から(d)のいずれか一つに定義された核酸によってコードされるポリペプチド;または
(iii)(ii)で定義されたポリペプチドを特異的に認識する抗体に結合するか、もしくはIL-15レセプターのα鎖に特異的に結合する化合物。
【0008】
「ポリヌクレオチド」という用語は、インターロイキン15(IL-15)の生物活性または抗原活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。多様なIL-15ポリペプチドの構造が当技術分野において記述されており、典型的なIL-15ポリペプチドが、配列番号:2(ヒトIL-15、アクセッション番号:BC018149; gi34783292)、および配列番号:4(マウスIL-15、アクセッション番号:BC023698; gi23271448)に示されている。IL-15のいくつかの生物学的機能は、当技術分野においても報告されており、本明細書において既に検討されている。IL-15の本質的な生物学的活性は、(マウスIL-15 Rαに対するアクセッション番号:BC022705、およびヒトIL-15 Rαに対するアクセッション番号:AY316538(2, Lodolce, Immunity 1998,9: 669-676))の下に寄託されているような、IL-15レセプターのα鎖に特異的に結合するその能力である。他の十分に特徴づけられた生物活性は、そのNK-/NKT細胞および記憶T細胞を刺激する能力(Flamand, J. Clin. Invest, 1996,97: 1373-81; Kv, Science 2000, 288 : 675- 678)、およびリンパ球様細胞または間葉細胞に対するその増殖作用、ならびにアポトーシス物質による誘導後のアポトーシスを阻止する能力を含む(14)。好ましくは、該生物活性は、添付の実施例で実証されているように、発毛およびケラチノサイトの刺激である。本質的な抗原性活性は、Shinozcki, J. Clin. Invest, 2002, 109: 951-960に開示されているように、特異的な、すなわち非交差反応性のIL-15抗体によって特異的に認識されるその能力である。このようなIL-15抗体は、日常的な方法によっても得ることができる。好ましくは、この抗体はモノクローナル抗体である。これらの活性は、当技術分野において周知の日常的な方法により試験することが可能であり、上記の引用文献に詳しく説明されている。最も好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:1(ヒトIL-15)、または配列番号:3(マウスIL-15)に示されるような核酸配列を有する。
【0009】
好ましくは、IL-15ポリヌクレオチドはまた、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号:1または配列番号:3に示されるポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができる変異ポリヌクレオチドも含む。より好ましくは、該条件は、Ausubel, 2001, Current protocols in molecular biologyに開示されている。該ポリヌクレオチドは、最も好ましくは、配列番号:1または配列番号:3と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。
【0010】
本発明の変異ポリヌクレオチドは、改変されたシグナルペプチドまたはリーダー配列、すなわち、配列番号:2の1位から48位のアミノ酸、配列番号:4の1位から48位のアミノ酸、およびこれらのポリペプチド変異体中のこれらに相当するアミノ酸を含み得る。ここで意味する改変とは、細胞からのIL-15の分泌を増加させる改変である。改変が該分泌物を増加させるか否かを試験する生物学的アッセイ法は、当技術分野において周知であり、(5)および(6)に記載されている。最も好ましくは、シグナルペプチドは、CD33ポリペプチド(アクセッション番号:NM 02 1293)のシグナルペプチドとの置換により改変される。さらに、配列番号:2、または配列番号:4に記載された成熟ポリペプチドのN末端またはC末端のアミノ酸、またはポリペプチド変異体中のそれらに相当するアミノ酸を、前記成熟ポリペプチドの安定性が増すように改変することができる。成熟IL-15ポリペプチドの安定性は、日常的な方法である(5)および(6)によって試験することが可能である。好ましい改変は、成熟IL-15のN末端またはC末端のアミノ酸にFLAGエピトープ標識を挿入することである。FLAGエピトープの代わりに、HAエピトープまたはmycエピトープを使用することができる。
【0011】
また、配列番号:1、配列番号:3に示されたポリヌクレオチド、または前記で特定されたそれらの変異体の生物活性断片もまた、本発明に関連して言及されたポリヌクレオチドに含まれる。該断片は、それぞれの核酸配列の1つまたは複数のヌクレオチドを欠失させることにより得ることができる。この断片は、当業者に周知の標準的な方法によって作製することができる。
【0012】
本明細書において使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、本明細書上記に特定されているポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドであって、前述の抗原活性または生物活性のうち少なくとも1つ、および好ましくはすべてを有するポリペプチドを含む。
【0013】
「化合物」という用語は、本発明のIL-15ポリペプチドを特異的に認識する抗体に結合するか、または上記のIL-15レセプターのα鎖に特異的に結合する化学物質のすべての種類を含む。所定の化合物が、これらの性質を示すか否かを、上記の方法を含む日常的方法によって試験することができる。本発明に従って使用される化学物質の好ましい種類は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、ヒト抗体もしくはヒト化抗体、霊長類化(primatized)抗体、キメラ化(chimerized)抗体、またはこれらの断片などの抗体である。さらに、二重特異性抗体、合成抗体、例えばFab、Fv、もしくはscFv断片などの抗体断片、または任意のこれらの抗体の化学修飾誘導体も含まれる。さらに、本発明の使用に含まれる化合物は、ペプチド、タンパク質、核酸、抗体、低分子有機化合物、リガンド、ペプチド模倣薬、PNAなどを含む。本発明に従って使用される化合物は、好ましくはIL-15のアゴニストとして作用する。化学的誘導体および類似体を調製する方法は、当業者に周知であり、例えば、Beilstein, Handbook of Organic Chemistry, Springer edition, New York Inc., 175 Fifth Avenue, New York, N. Y. 10010 U.S.A.、およびOrganic Synthesis, Wiley, New York, USAに記載されている。さらに、該誘導体および類似体は、記載のように、当技術分野において公知の方法に従って、それらの効果を試験することができる。さらに、ペプチド模倣薬、および/またはコンピュータを利用して設計された適切な薬物誘導体および類似体を使用することができる。適切なコンピュータプログラムを、類似の構造モチーフに関するコンピュータ支援検索により、IL-15の推定アゴニストの相互作用部位を同定するために使用することができる。さらに、タンパク質およびペプチドをコンピュータを利用して設計をするのに適したコンピュータシステムは、例えば、Berry, Biochem. Soc. Trans. 22 (1994), 1033-1036; Wodak, Ann. N. Y. Acad. Sci. 501 (1987), 1-13; Pabo, Biochemistry 25 (1986), 5987-5991などの先行技術文献に記載されている。上記のコンピュータ解析から得られる結果は、例えば、公知のインヒビター、類似体、アンタゴニスト、またはアゴニストを最適化するために、本発明の方法と組み合わせて使用することができる。適切なペプチド模倣薬および他のインヒビターもまた、例えば、本明細書に記載されている方法により、化学修飾と得られた化合物の試験を連続して行って、ペプチド模倣薬のコンビナトリアルライブラリーを合成することにより同定することが可能である。ペプチド模倣薬のコンビナトリアルライブラリーの作成法および使用法は、例えば、Ostresh, Methods in Enzymology 267 (1996), 220-234、およびDorner, Bioorg. Med. Chem. 4 (1996), 709-715などの先行技術文献に記載されている。さらに、本発明の該化合物およびポリペプチドの3次元構造および/または結晶構造を、ペプチド模倣薬を設計するために利用することができる。該化合物を、例えば、化学的または生化学的な標準的な方法によって得る方法は極めて周知である。本発明に従って使用される化合物を同定するのに適したアッセイ法は、好ましくは、(a)IL-15と反応することが知られている細胞、好ましくはケラチノサイト、NK細胞もしくはNKT細胞、記憶T細胞およびエフェクターT細胞もしくは制御性T細胞、またはリンパ球様細胞もしくは間葉細胞を接触させる工程、ならびに(b)化合物の投与に対する該細胞の反応を測定し、それにより、IL-15により誘導された反応と同等の反応が本発明の化合物の指標となる工程を含む。測定される好ましい反応は、ケラチノサイト、T細胞サブセット、NK細胞もしくはNKT細胞の場合には増殖の刺激であり、または、リンパ球様細胞もしくは間葉細胞の場合にはアポトーシス刺激により誘発されるプログラムされた細胞死の防止である。このようなアッセイ法の実施方法は、当技術分野において周知である(5, 6, 11, 12, 14, 20, 21)。あるいは、本発明に従って使用される化合物は、(a)特異的なIL-15抗体またはIL-15レセプターのα鎖を、IL-15および候補化合物と接触させる工程、ならびに(b)抗体またはレセプターへの結合について、IL-15と該化合物との間の競合を決定する工程を含むアッセイ法によって決定することができる。この競合の決定に際し、前記化合物またはIL-15のどちらか一方が、放射性同位体または色素産生性化学物質のような検出用標識と結合していることが好ましい。さらに、本発明の化合物は、(a)IL-15レセプターのα鎖を候補化合物と接触させる工程、および(b)該レセプターの活性化または反応を測定し、それにより、IL-15によって誘導された反応または活性化と同等の反応または活性化が、本発明に従って使用される化合物の指標となる工程によって決定することができる。このようなアッセイ法の実施方法は、当技術分野において周知である(5, 6, 11, 12, 14, 20, 21)。
【0014】
「組成物」という用語は、固体、液体、または気体の形状に処方された任意の組成物を意味し、とりわけ、粉末、錠剤、液剤、またはエアロゾルの形態にしてもよい。該組成物は、IL-15ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または本発明の化合物を、任意で、適切な希釈剤、賦形剤、および/もしくは担体とともに含む。適切な希釈剤および/または担体は、組成物が使用される目的、および他の成分によって決まる。当業者は、さらなる面倒もなく、そのような適切な希釈剤、賦形剤、および/または担体を決定することができる。適切な担体、賦形剤、および/または希釈剤の例は、当技術分野において周知であり、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、油/水エマルジョンなどの乳剤、各種湿潤剤、滅菌溶液などを含む。このような担体を含む組成物は、周知の在来法により処方することができる。これらの組成物は、適切な用量で対象に投与することができる。本組成物の投与は、種々の方法、例えば局所、皮下、皮内、または静脈内への投与によって行うことができる。該投与は、発毛を刺激すべき領域への送達により実施されることが特に好ましい。これは、好ましくは、例えば溶液もしくはエアロゾルの形態で、または、核酸用にはリポソームのような媒体、もしくはフラーレンのような高分子のかご形分子(cage molecules)により、皮下もしくは表皮への注射、または局所適用によって行うことが可能である。さらに、本発明の核酸を投与する場合には、従来の遺伝子治療法を利用することが可能である。遺伝子治療は、治療遺伝子をエクスビボまたはインビボの手法により細胞内に導入することに基づいており、遺伝子導入法の最も重要な応用法の一つである。神経増殖因子に対する中和抗体を発現するトランスジェニックマウスが、「神経抗体(neuroantibody)」技術を用いて作製されている;Capsoni, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 (2000), 6826-6831、および Biocca, Embo J. 9 (1990), 101-108。インビトロまたはインビボでの遺伝子治療のために適したベクター、方法、または遺伝子送達系は、文献に記載されており、当業者に公知である;例えば、Giordano, Nature Medicine 2 (1996), 534-539; Schaper, Circ. Res. 79 (1996), 911-919; Anderson, Science 256 (1992), 808-813, Isner, Lancet 348 (1996), 370-374; Muhlhauser, Circ. Res. 77 (1995), 1077-1086; Onodua, Blood 91(1998), 30-36; Verzeletti, Hum. Gene Ther. 9 (1998), 2243-2251; Verma, Nature 389 (1997), 239-242; Anderson, Nature 392 (Supp. 1998), 25-30; Wang, Gene Therapy 4 (1997), 393-400; Wang, Nature Medicine 2 (1996), 714-716; 国際公開公報第94/29469号; 国際公開公報第97/00957号; 米国特許第5,580,859号; 米国特許第5,589,466号; 米国特許第4,394,448号、またはSchaper, Current Opinion in Biotechnology 7 (1996), 635-640、およびそれらにおける引用文献を参照されたい。本発明の核酸分子およびベクターは、直接導入のため、またはリポソーム、ウイルスベクター(例えばアデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター)、エレクトロポレーション、衝撃(例えば遺伝子銃)、または細胞への他の運搬システムによる導入のために設計することができる。さらに、バキュロウイルス系は、本発明の核酸分子のための真核生物発現系として使用することができる。この導入法および遺伝子治療法は、好ましくは、本発明の機能的なIL-15ポリペプチドの発現をもたらし、それによって発現されたポリペプチドは、対象における発毛を刺激するのに特に役立つ。投与計画は、担当医および臨床学的要素によって決定される。医療技術分野において周知であるように、任意の患者に対する用量は、患者の身長、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与される期間および経路、全般的な健康状態、ならびに同時に投与される他の薬物などを含む、多様な要素によって決まる。タンパク性の薬学的活性物質は、1回用量につき体重1kg当たり1 ngから10 mgの量で存在し得る。しかしながら、特に前述の要素を考慮すると、この例示的な範囲よりも少ないかまたは多い用量も想定される。投薬計画が持続注入である場合、毎分体重1キログラム当たり1μgから10 mg単位の範囲にもなるはずである。
【0015】
経過は、定期的な評価によって測定することができる。本発明の組成物は、局所的に、または全身に投与してもよい。非経口投与用調製物は、滅菌した水溶液または非水溶液、懸濁液、およびエマルジョンを含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物性油脂、およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。水性の担体は、水、アルコール/水溶液、エマルジョン、または懸濁液を含み、生理食塩水および緩衝培地が含まれる。非経口の媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース(Ringer's dextrose)、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル(lactated Riger's)、または固定油が含まれる。静脈注射の媒体には、液体および栄養補充薬(nutrient replenisher)、電解質補給液(electrolyte replenisher)(リンゲルデキストロースに基づくものなど)などが含まれる。保存剤および他の添加剤、例えば、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、および不活性ガスなどが含まれていてもよい。本発明の組成物は、組成物の意図された使用目的に応じて、さらなる薬剤を含んでもよい。該薬剤は、本明細書において後述される薬剤を含む、発毛に作用する薬物でもよい。
【0016】
「発毛刺激」という用語は、発毛が望まれる皮膚、頭皮、もしくは任意の表面上で発毛を有意に誘導、および/または増進させることを意味する。誘導または増進は、処置していない皮膚(対照皮膚)と比較して測定することができる。誘導または増進が有意か否かは、スチューデントのt検定、カイ二乗検定、またはMannおよびWhitneyのU検定のような統計的検定法によって判定することができる。発毛刺激は、本明細書において詳細に記載されている、さまざまな病状を治療または改善するのに必要である。さらに、発毛の刺激は、美容の観点から重要であり必要とされ得る。衣服、毛布、家具などの品物を製造するための毛の生産のため、発毛の刺激は、動物の剃毛から剃毛までの期間を最小限にし、それによって毛の収量を増やすため、健常な皮膚においても必要である。したがって、発毛の刺激は、健常な皮膚または頭皮においても必要である。
【0017】
IL-15は多面的サイトカインであり、これは、そのインビトロでの活性に基づいて、インビボにおいて免疫細胞のホメオスタシスおよび末梢免疫機能にとって重要である。インビボでの効果をよりよく理解するため、本発明の基礎となる研究において、IL-15が表皮中で過剰発現されるトランスジェニック(tg)マウスモデルが作製された。導入遺伝子は、以下の理由で皮膚において発現した。すなわち、MHCクラスIプロモーターによる制御下における普遍的なIL-15導入遺伝子の過剰発現が、致命的な白血病の発症を引き起こし、これらのtg動物の早期の死をもたらした(6)。そのため、このモデルでは、IL-15の長期にわたるインビボでの効果を調査することができない。さらに、ケラチノサイトがIL-15の天然の供給源として機能することができること、およびこれらの細胞によるIL-15の分泌が誘導可能であることが実証されていることから、皮膚を選択した。その上、その多面的な発現のため、IL-15は、多数の細胞型の制御に重要であると考えられる。そのため、このサイトカインが、皮膚細胞の刺激、活性化、または増殖を促進し得るという仮説が立てられた。
【0018】
驚いたことに、本発明の基礎となる研究において、tg動物におけるケラチノサイト由来のIL-15が、毛包毛根鞘細胞の増殖および/または分化を刺激することによって、発毛および毛髪の発達を増進できることが示された。毛包は、極めて動的であり、これらは一生を通じ、成長(増殖期)、退行(中間期)、および休止(休止期)という周期で、自分自身を繰り返し再構築する。中間期では、増殖が起こり、および毛包の下方部分において、広範なアポトーシスが観察できる(30)。上記のように、IL-15は、多様な細胞型の増殖を増進させる。本発明の基礎となる研究の結果によれば、IL-15は、毛包細胞の増殖を促進することもできるようである。剃毛および脱毛されたtg動物はまた、組織学的分析および臨床的所見によって検出したところ、毛包の新規の発達を示した。したがって、IL-15は、脱毛後も真皮に残存している乳頭細胞または毛幹細胞の増殖にも影響を与える可能性がある。これらの結果は、IL-15が、新しい発毛周期の開始にも必要である可能性を示唆している。また、IL-15は、T細胞およびB細胞ならびに線維芽細胞におけるアポトーシスの一般的なインヒビターである(12-15)。おそらく、このサイトカインは、毛包の基底細胞におけるアポトーシスを阻害することもでき、したがって本発明者らが、動物を剃毛および脱毛することによって示すことができたように、IL-15は、共にIL-15 tgマウスの各毛包の寿命の延長、およびより高い活性をもたらす、毛包細胞の増殖刺激、および毛包下部におけるアポトーシスの阻害によって発毛を増進するものと考えられる。毛包周期を制御しているシグナルは、まだ完全には理解されていない。しかしながら、主要なシグナル伝達経路の多くが、周期的成長に関与している。例えば、中間期は、トランスフォーミング増殖因子(TGF)αおよびβの発現によって開始されるが、一方、増殖期(成長期)においては、他の2つの因子、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ならびに転写因子(STAT3; 29, 31, 32)のシグナルトランスデューサーおよび活性化因子が主に活性を有する。既述のIL-15のように、STAT経路を経由するシグナル(そのレセプターと結合後)は、このサイトカインがさらに毛の成長期に直接的な影響を及ぼすことを示唆している。なぜなら、IL-15は、成長期を開始するのに重要なシグナル経路を妨げるからである。ヒトにおいて、毛髪疾患の群を抜いて一般的な原因は、円形脱毛症または男性ホルモン性脱毛症のような、発毛制御における欠陥である。その増殖能力および刺激能力のため、IL-15を利用して、毛包を再刺激および再活性化することが考えられる。それにより、化学療法による脱毛を予防することも可能であると考えられる。さらに、IL-15は、例えば、このサイトカインを、剃毛したヒツジまたはウサギの皮膚に適用することにより、メリノ羊毛またはアンゴラ毛の生産を増進するのに有益であると考えられる。有利なことに、本発明の基礎となる研究において、IL-15がインビボにおける発毛の重要な調節因子であると同定されたため、制御された効率的な方法で発毛を刺激することが可能になった。このようなことから、IL-15は、単にアポトーシスを防ぐだけでなく、細胞の成長を刺激および促進するということが強調されるべきである。
【0019】
本明細書の以上および以下でなされる用語の解釈および説明は、本明細書において記載されているすべての態様に必要な変更を加えて適用される。
【0020】
上述のことに鑑みて、本発明は、上記に定義されたようなポリヌクレオチド、ポリペプチド、または化合物の、脱毛を治療、予防、および/または改善するための組成物を調製するための使用に関する。
【0021】
本明細書において「治療」という用語は、疾病状態に伴って起こるすべての臨床症状が、治療後になくなることを意味する。「予防」という用語は、疾患の臨床症状が確定できなくなることを意味する。「改善」という用語は、疾患の症状が有意に軽減されることを意味する。治療、予防、または改善は、好ましくは、組成物が投与された有意な数の個体において起こるものとする。
【0022】
上記のように、脱毛は、ヒトにおける顕著な疾病状態である。本発明の使用により、有利なことに、発症の初期段階で脱毛を予防することが可能となり、かつ、剃毛された皮膚上で、または化学療法後に毛が失われた後、新しい発毛を刺激することが可能になった。
【0023】
本発明の使用の好ましい態様において、組成物はさらに、第2の発毛刺激剤を含む。「第2の発毛刺激剤」という用語は、有意に発毛を刺激することもできる薬剤に関する。ある薬剤が発毛を刺激することが可能であるか否かを、上記のようにして判定することが可能である。
【0024】
より好ましくは、第2の発毛刺激剤は、カルボン酸の亜鉛塩、サポニン、トリテルペン、好ましくはオレアノール酸またはウルソール酸、クラテゴール酸(crataegolic acid)、セラストロール(celastrol)、アシアチン酸(asiatic acid)、5-α-レダクターゼのインヒビター、好ましくはプロゲステロン、1,4-メチル-4-アザステロイド(azasteroid)、好ましくは17-β-N,N-ジエチルカルバモイル-4-メチル-4-アザ-5-α-アンドロスタン-3-オン、アンドロゲンレセプターアンタゴニスト、好ましくは酢酸シプロテロン、Minoxidil(登録商標)、アゼライン酸、およびその誘導体、シクロスポリン、トリヨードチロニン、ジアゾキシド、カリウムチャンネル開口薬、好ましくはクロマカリム、フェニトイン、およびそれらの混合物、ならびにエストロゲンの誘導体、好ましくはエストラジオールバレレートからなる群より選択される。これらの薬剤の構造は、その開示内容が参照により本明細書に組み入れられるUS2003114526に詳細に記載されている。
【0025】
さらに、上記されているように、本発明の使用の別の好ましい態様において、組成物はさらに、薬学的に許容されるか、または化粧品用に許容される担体を含む。薬学的に許容されるか、または化粧品用に許容される適切な担体は、本明細書の上記または下記において詳細に開示されている。さらに、そのような担体は、その開示内容が参照により本明細書に組み入れられるUS2003114526に開示されている。
【0026】
本発明の使用のさらに好ましい態様において、組成物は、薬学的組成物である。
【0027】
本明細書において使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、本発明の物質、および任意で1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む。本発明の物質は、薬学的に許容される塩として処方してもよい。許容される塩は、アセテート、メチルエステル、HCl、サルフェート、塩化物などを含む。薬学的組成物は、薬物投与に適宜使用される任意の経路によって、例えば局所に、適宜投与することができる。この物質は、従来の手順に従って、薬物を標準的な薬学的担体と組み合わせて調製された従来の剤形で投与することができる。これらの手順は、所望の調製物に適した成分を混合する工程、整粒する工程、および圧縮する工程、または溶解する工程を含み得る。薬学的に許容される担体または希釈剤の形状および特徴は、それが組み合わされる活性成分の量、投与経路、およびその他周知の変数によって決定されることが認識されると考えられる。担体は、製剤の他の成分と適合性があり、レシピエントに有害でないという意味で「許容され」なければならない。使用される薬学的担体は、例えば、固体または液体のいずれであってもよい。固体担体の例は、乳糖、白土、ショ糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。液体担体の例は、リン酸緩衝生理食塩水、シロップ、ピーナッツ油およびオリーブ油のような油、水、エマルジョン、各種湿潤剤、滅菌溶液、および上記のなどである。同様に、担体または希釈剤は、単独の、またはワックスと混合されたモノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンのような、当技術分野に周知の時間遅延物質(time delay material)を含み得る。本発明による薬学的組成物は、所望の効果を達成するため、多様な様式で投与することが可能である。該薬学的組成物は、単独で投与すること、または、経口、局所、もしくは非経口のいずれかで処置される対象に対する薬学的調製物として処方して投与することが可能である。さらに、この物質は他の物質と組み合わせて、共通の薬学的組成物にして、または別々の薬学的組成物としてのいずれか投与することができる。希釈剤は、この組み合わせの生物活性に影響を及ぼさないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、およびハンクス溶液である。さらに、薬学的組成物または製剤はまた、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤などを含み得る。治療的な有効量とは、症状または病状を改善できる本発明の物質の量を意味する。このような化合物の治療上の有効性および毒性は、例えば、ED50(集団の50%に治療効果のある量)およびLD50(集団の50%に致死的な量)など、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的方法によって判定することが可能である。治療効果と毒性効果との間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50という比率で表すことができる。投与計画は、上記したように、臨床的因子に基づいて担当医によって決定されると考えられる。医療技術分野において周知であるように、任意の1人の患者に対する用量は、患者の身長、体表面積、年齢、投与される具体的化合物、性別、投与の期間および経路、全般的な健康状態、ならびに同時に投与される他の薬物などを含む、多様な因子によって決定される。経過は、定期的な評価によってモニターすることができる。
【0028】
典型的な用量は上に記した。本明細書に記載された薬学的組成物および製剤は、本発明の使用に従って少なくとも1回投与される。しかしながら、該薬学的組成物および製剤は、1回よりも多く、例えば、最大無期限の日数にわたって1日に1回から4回投与することができる。本発明による具体的な製剤は、薬学的技術分野において周知の様式で調製され、通常、薬学的に許容される担体、またはその希釈剤と混合されているかまたはば結合している、本明細書上記の活性物質を少なくとも1つ含む。これらの製剤を製造するために、活性物質を、通常は担体と混合するか、または希釈剤により希釈するか、またはカプセル、サシェ、カシェ剤、紙、もしくはその他適切な容器または媒体に封入するかもしくは被包する。担体は、活性成分の媒体、賦形剤、または培地として利用される固体、半固体、ゲルベースの物質、または液状の物質であり得る。該適切な担体は、上記の担体、および当技術分野において周知の他の担体を含む。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照されたい。製剤は、タブレット、カプセル、坐剤、液剤、懸濁液などの形状を含む投与方式に適合させることが可能である。間違った薬物を間違った患者に間違った用量で処方することを防ぐ情報を有する製品ラベルに投薬の推奨は表示されると考えられ、処方者による、考慮される患者群に応じた用量の調整の予測を可能にする。
【0029】
組成物が化粧品用の組成物である本発明の使用もまた好ましい。
【0030】
「化粧品用の組成物」という用語は、薬学的組成物組成物に関して上記のように処方することができる組成物に関する。しかしながら、薬学的に許容される製剤、担体、希釈剤よりむしろ、担体、希釈液、および賦形剤は、化粧品用に許容されるものでなければならない。さらに、化粧品用組成物は、好ましくは局所に適用される。
【0031】
本発明の使用のさらに好ましい態様において、組成物は、ヘアトニック、増毛用組成物、シャンプー、パウダー、ゼリー、ヘアリンス、軟膏、ヘアローション、ペースト、ヘアクリーム、ヘアスプレー、および/またはヘアエアロゾルとして処方される。
【0032】
さらに好ましくは、組成物は、対象の皮膚または頭皮に局所的に投与される。
【0033】
局所的投与は、その開示内容が、参照により本明細書に組み入れられるUS2003114526に詳細に記載されている。
【0034】
本発明の使用のより好ましい態様において、対象は哺乳動物である。最も好ましくは、哺乳動物は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ラクダ、マウス、ラット、アルパカ、ビクーナ、グアナコ、またはラマである。
【0035】
本発明の使用のより好ましい態様において、対象は、遺伝的に決定されたおよび/または後天型の脱毛を有している。
【0036】
最も好ましくは、遺伝的に決定されたまたは後天型の脱毛は、円形脱毛症、部分的脱毛症(alopecia subtotalis)、完全脱毛症、抜毛癖、または薬物誘導性の脱毛症である。
【0037】
これらの疾患に伴う症状は、医師には周知であり、StedmanまたはPschyrembelなどの医学の標準的な教科書に詳細に記載されている。
【0038】
本発明はまた、IL-15ポリペプチドをコードする上記で定義された核酸であって、毛球のケラチノサイト、ランゲルハンス細胞、メラニン細胞、樹枝状表皮性T細胞、肥満細胞、皮神経線維、または線維芽細胞において特異的に発現される核酸を含むトランスジェニック非ヒト動物に関する。「トランスジェニック非ヒト動物」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、およびこのような動物の細胞であって、前述の核酸を少なくとも1つ(好ましくはそのゲノム中に安定に組み込まれる)含む細胞に関する。該核酸は、好ましくは前述の組織における特異的な発現を可能にする適切な調節因子に結合している。これは、IL-15核酸、および調節配列をコードする核酸を含む導入遺伝子をゲノムの中に導入するか、または該動物に存在する内因性調節因子の下流にIL-15核酸を特異的に導入することにより(「ノックイン」動物)達成することができる。調節配列を含む導入遺伝子を挿入する場合、好ましくは、導入遺伝子は宿主動物のゲノム中に安定して組み込まれる。この導入遺伝子またはノックイン構築物は、IL-15核酸によりコードされるIL-15ポリペプチドを十分に発現させることができるよう設計される。適切な調節因子は、好ましくは、ランゲルハンス細胞に特異的なランゲリンプロモーター(Valladeau, Immunity 2000, 12(1): 71-81)、メラニン細胞に特異的なチロシナーゼプロモーター(langerin-promoter)(Kelsall, Cancer Res.1998, 58 : 4061-65)、または線維芽細胞に発現を誘導するコラーゲン-1のα2-プロモーター(Hibbard, Cancer Res. 2000, 60(17): 4862-4872)である。トランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスを作製する方法は、IL-15核酸または標的ベクターを、生殖細胞、胚細胞、幹細胞、もしくは卵子、またはそれらに由来する細胞の中に導入することを含む。トランスジェニック胚の作製、およびそれらのスクリーニングは、例えばA. L. Joyner Ed., Gene Targeting, A Practical Approach (1993), Oxford University Pressに記載されているようにして実施することが可能である。胚の胚膜のDNAは、例えば適切なプローブを用いたサザンブロット法を利用して解析することが可能である;前記参照。トランスジェニック非ヒト動物を作製する一般的な方法が、当技術分野において記述されている。例えば国際公開公報第94/24274号を参照されたい。相同的組換えにより得られた非ヒト動物を含むトランスジェニック非ヒト生物を作製するには、胚性幹細胞(ES細胞)が好ましい。実質的に記載しているように(Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach. E. J. Robertson, ed. (Oxford: IRL Press), p. 71-112、Robertson, E. J. (1987) )、有糸分裂的に不活性なSNL76/7細胞支持細胞層(McMahon and Bradley, Cell 62: 1073-1085 (1990))上で増殖させたAB-1株などのネズミES細胞を、相同遺伝子の標的化に使用してもよい。その他適切なES株は、E14株(Hooper et al., Nature 326: 292-295 (1987))、D3株(Doetschman et al., J. Embryol. Exp. Morph. 87: 27-45 (1985))、CCE株(Robertson et al., Nature 323: 445-448 (1986))、AK-7株(参照により本明細書に組み入れられるZhuang et al., Cell 77: 875-884 (1994))などを含むが、これらに限定されない。特異的な標的突然変異を有するES細胞からのマウス系統作製の成功は、ES細胞の多分化能、すなわち、1度胚盤胞または桑実胚のような胚が発生中の宿主に注入されると、胚形成に関与し、生じた動物の生殖細胞の一翼を担う能力に依存する。この導入されたES細胞を含む胚盤胞は、偽妊娠した非ヒト雌の子宮で成長させることができ、キメラマウスとして誕生する。この結果として得られたトランスジェニックマウスは、リコンビナーゼ遺伝子座またはレポーター遺伝子座のどちらか一方を有する細胞についてキメラであり、リコンビナーゼ遺伝子座またはレポーター遺伝子座のどちらか一方について異種接合性のトランスジェニックマウスを同定するため、戻し交配して、子孫の尾部の生検DNAのPCRまたはサザンブロット解析法により、正しく標的化された導入遺伝子の存在についてスクリーニングする。IL-15トランスジェニック非ヒト動物を作製する方法が、添付の実施例に詳細に記載されている。
【0039】
本発明のトランスジェニック動物は、工業製品として使用される毛の生産に有利に利用することができる。そのため、トランスジェニック動物の適切な候補は、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ラクダ、マウス、ラット、アルパカ、ビクーナ、グアナコ、またはラマである。
【0040】
したがって、本発明はまた、以下の工程を含む、非ヒト動物における発毛を刺激する方法にも関する:
(a)動物を請求項1に定義された核酸で形質転換する工程;および
(b)該核酸によってコードされたIL-15ポリペプチドを発現させる工程。
【0041】
本明細書において使用される場合、「形質転換」という用語は、以前に開示された、導入遺伝子を動物中に導入するすべての技術に関する。さらに、該用語は、局所的に、例えば皮膚または頭皮上で発現させる核酸を導入する方法を含む。これは、上記に開示されている遺伝子治療的なアプローチを使用することによって達成することができる。
【0042】
「IL-15ポリペプチドを発現させる」という用語は、刺激、誘導などのような、動物においてIL-15ポリペプチドの産生を可能にするのに必要なすべての手段を包含する。核酸の発現を制御するために用いられる調節因子に応じて、発現が永続的に生じるか、または誘導もしくは刺激が必要であり得る。このような刺激は、UV照射であるかもしれない。さらに、遺伝子発現を支配するいくつかの誘導性調節因子は、当技術分野において周知である。これらの因子は、例えば熱ショック、デキサメタゾン、または金属イオンによって誘導することが可能である。好ましい調節因子が、以下に詳細に開示されている。
【0043】
さらに、本発明は、以下の工程を含む獣毛を生産する方法を含む:
(a)動物を請求項1に定義された核酸で形質転換する工程;および
(b)該核酸によりコードされたIL-15ポリペプチドを発現させる工程。
【0044】
本明細書において使用される場合、「生産」という用語は、上記記載の工程を有する方法に加えて、毛の生産に必要であることが公知のさらなる工程を含み得る方法を含むと理解されるべきである。
【0045】
本発明の方法の好ましい態様において、IL-15ポリペプチドは、調節因子の制御下で発現する。
【0046】
本明細書において使用される場合、「調節因子」という用語は、DNA分子の発現またはRNA分子の翻訳のいずれかを制御する核酸配列を意味する。このような調節因子は、通常、遺伝子の天然の調節因子に由来する。遺伝子が、アミノ酸配列をコードする構造因子および遺伝子の発現の調節に関与する調節因子を含むことは、当技術分野において周知である。構造因子は、アミノ酸配列をコードすることができるか、または、アミノ酸配列はコードしないが、それにもかかわらず、例えば、RNAの安定性もしくはRNAの核外輸送を調節することによって、RNAの機能に関与するRNAはコードすることができるエクソンによって代表される。遺伝子の調節因子は、その両方が遺伝子発現の転写制御に関与し得るプロモーター要素またはエンハンサー要素を含むことができる。プロモーターが、遺伝子の構造因子の上流に見られることは、当技術分野において極めて周知である。しかしながら、エンハンサー要素のような調節因子は、遺伝子の遺伝子座全体にわたって分布しているのが見られることがある。該因子は、例えば、遺伝子のエクソンを分離するゲノムDNA領域であるイントロンにも存在し得る。プロモーター要素またはエンハンサー要素は、プロモーター要素またはエンハンサー要素を含む遺伝子の調節に関与するポリペプチドを誘引または結合することができるポリヌクレオチド断片に相当する。例えば、遺伝子の調節に関与するポリペプチドには、いわゆる転写因子が含まれる。イントロンは、適切な遺伝子発現に必要とされるさらなる調節因子を含んでもよい。イントロンは、通常、遺伝子のエクソンと共に転写され、エクソン配列およびイントロン配列の両方を含む新生RNA転写物を生じる。イントロンにコードされたRNA配列は、通常、RNAスプライシングとして知られるプロセスによって除去される。しかしながら、該プロセスはまた、RNA転写物上に存在する調節配列を必要とし、該調節配列は、イントロンによってコードされ得る。さらに、転写制御、および適切なRNAのプロセシングおよび/または安定性の制御におけるそれらの機能以外に、遺伝子の調節因子は、遺伝子座の遺伝的安定性の制御にも関与し得る。該因子は、例えば組換え現象を制御し、または染色体中でDNAの一定の構造もしくはDNAの配置を維持する働きをする。
【0047】
より好ましくは、該調節因子は、毛球のケラチノサイト、ランゲルハンス細胞、メラニン細胞、樹枝状表皮性T細胞、肥満細胞、皮神経線維、または線維芽細胞における特異的発現を可能にする。
【0048】
このような特異的発現は、適切な調節因子の制御下で本発明のIL-15ポリペプチドを発現させることによって達成することができる。このような因子は、好ましくは、ランゲルハンス細胞に特異的なランゲリンプロモーター、メラニン細胞に特異的なチロシナーゼプロモーター、または線維芽細胞に発現を誘導するコラーゲン-1のα2-プロモーターである。
【0049】
本発明の方法のより好ましくは別の態様において、該方法はさらに、非ヒト動物の皮膚および/または頭皮に、上記された本発明の組成物を投与する工程を含む。
【0050】
本発明はまた、非ヒト動物の皮膚および/または頭皮に、本明細書上記で定義されたような本発明の組成物を投与する工程を含む、獣毛を生産する方法も含む。
【0051】
本発明の方法のさらに好ましい態様において、方法はさらに、動物の毛を入手する工程を含む。
【0052】
本明細書において使用される場合、「入手」という用語は、毛を動物から分離する方法を意味する。これは、例えば剃毛により動物の皮膚または頭皮から毛を分離するか、または動物からの毛を含む皮膚もしくは頭皮を分離するかのいずれかにより達成することができる。毛が使用される目的および動物に応じて、当業者は、さらなる面倒もなく、適切な方法を選択すると考えられる。
【0053】
最も好ましくは、本明細書上記の動物は、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ラクダ、マウス、ラット、アルパカ、ビクーナ、グアナコ、またはラマである。
【0054】
本発明は、さらに、本明細書上記のようなIL-15のインヒビターを製造する方法であって、IL-15ポリペプチドの生物活性の少なくとも一つの、または好ましくはすべてのインヒビターを決定する工程を含む方法を包含する。このようなインヒビターの決定は、IL-15インヒビターを決定するためのアッセイ法であって、以下の工程を含むアッセイ法を用いて実行することができる:(a)IL-15と反応することが知られている細胞、好ましくはケラチノサイト、NK細胞もしくはNKT細胞、T細胞、抗原提示細胞、またはリンパ球様細胞もしくは間葉細胞を、IL-15ポリペプチドおよび可能性のあるインヒビターと接触させる工程、ならびに(b)可能性のあるインヒビターを投与であって、インヒビターが、IL-15によって誘導される生物学的反応を防止する投与における、該細胞の反応を決定する工程。決定される好ましい反応は、ケラチノサイト、T細胞、NK細胞、もしくはNKT細胞の場合には増殖の刺激であり、または、リンパ球様細胞もしくは間葉細胞の場合にはアポトーシス刺激により誘発されるプログラムされた細胞死の防止、もしくは抗原提示機能の活性化である。反応は、細胞にIL-15ポリペプチドのみを投与することによって決定することが可能である。このようなアッセイ法の詳細は、本明細書の他の箇所に開示されている。または、インヒビターは、以下の工程を含むアッセイ法によって決定することができる:(a)特異的なIL-15抗体またはIL-15レセプターのα鎖を、IL-15および可能性のあるものと接触させる工程、ならびに(b)抗体またはレセプターへの結合について、IL-15とインヒビターとの間の競合を決定する工程。該アッセイ法によって同定されるインヒビターは、IL-15活性を有していてはならない。好ましくは、このインヒビターは、IL-15ポリペプチドに対し阻害/競合する以外、生物活性を有さない。この競合の決定に際し、可能性のあるインヒビターまたはIL-15のどちらか一方が、放射性同位体または色素産生性化学物質などの検出用標識と結合していることが好ましい。本明細書上記のスクリーニングアッセイ法において使用することができる適切な分子は、好ましくは、本発明の候補化合物についてスクリーニングされる化学物質分子である。さらに、インヒビターを製造する方法は、好ましくは、上記の通りに決定されたインヒビターを化学的または生物学的に処方する、さらなる工程を含む。この処方の方法は、同定されたインヒビターの化学的性質による。例えば、有機低分子または短鎖ペプチドのような化学物質は、生化学または化学の標準的な教科書に記載されている周知の技術によって合成することができる。ポリペプチド、抗体などの生体分子(biological molecule)は、標準的な分子生物学的技術によって製造することができる。この処方は、適正製造規準(GMP)または類似の基準のような、必要な基準に従って、薬学的または化粧品用の処方のさらなる工程もまた含み得る。
【0055】
したがって、本発明はまた、上記のようなIL-15ポリペプチドインヒビターを決定および製造する工程、および該インヒビターを、任意で本明細書の他の箇所に記載されているような薬学的または化粧品用の担体と共に薬学的または化粧品用に許容される形状に処方する工程を含む、薬学的組成物または美容的組成物の製造方法に関する。
【0056】
本発明に包含されるのは、発毛を阻害するための薬学的組成物を調製するための、このようなIL-15インヒビターの使用である。このような発毛は、病状に苦しむ対象の皮膚においてIL-15の過剰発現をもたらす病状に起因し得る。発毛を阻害するために使用されるIL-15のインヒビターは、さらに、本明細書の他の箇所に定義されている種類の抗体を含む抗体であって、IL-15ポリペプチド、アンチセンスRNA分子、または低分子干渉RNA分子(RNAi)を特異的に認識することが可能である抗体を含む。
【0057】
最後に、本発明は、本明細書上記に定義されているような本発明の組成物を有効用量で対象に投与する工程を含む、脱毛を有する対象を治療、予防、および/または改善する方法に関する。
【0058】
本発明の使用に関連して明記されたすべての態様を、必要な変更を加えて、該方法に適用する。
【0059】
いくつかの文献が、本明細書全体を通じて、文献名、または括弧に入れた参照のいずれかにより引用されている。完全な文献引用を下記に記載する。任意の生産者の明細書、使用説明書などを含む、本明細書で引用された各文献の関連がある開示内容は、参照により本書に組み入れられる。
【0060】
ここで、以下の生物学的実施例を参照して本発明を説明するが、実施例は、単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものとして作成されていない。
【0061】
実施例1:基本的方法
IL-15トランスジェニックマウスの作製
以下の標準的方法を用いて、ネズミIL-15遺伝子をヒトK14プロモーターの制御下に配置した:使用されたK14発現カセットは、K14プロモーター、ウサギβ-グロビンイントロン、BamHIクローニング部位、およびK14ポリアデニル化部位を含んでいた(22, 23)。BamHIクローニング部位を、この部位にポリリンカーをライゲーションして改変し、制限酵素部位SalI、BglII、BamHI、およびXbaIを含む多重クローニング部位を生じさせ、プラスミドpAMM11とした。CD33 IL-15 FLAGの約500bpのBglII/XbaI断片を、pAMM11のBglII/XbaI部位にクローニングして、pAMM77を作製した。
【0062】
マイクロインジェクションに使用されるプラスミドDNAを、まず、CsCl勾配遠心分離によって精製した。IL-15遺伝子を含む発現カセットは、プラスミドから切り離し、0.7%アガロースゲル電気泳動によって精製した後、SphIおよびSmaIで消化し、ゲルから抽出して(PCR精製キット; Roche, Mannheim, Germany)、TE*緩衝液(10 mM Tris pH 7.4/0. 1 mM EDTA)に再懸濁し、2 ng/μlの濃度でマウスC57BL/6/C3H/HeN F1 x C57BL/6、およびFVB/N卵母細胞にマイクロインジェクションするために使用した。類似の導入遺伝子発現を有する2つの創始系統(founder line)を、PCR

;周期プロフィール: 95℃で3分間;[95℃で1分間;54℃で1分間;72℃で1分間を35回;72℃で5分間])、またはサザンブロット法のいずれかによって同定した。実験は、C57BL/6/C3H/HeNというバックグランドをもつtgマウスで行われた。マウスは、特定病原体未感染(spf)条件下で飼育され、施設規則にしたがって実験を実施した。
【0063】
脱毛および剃毛
IL-15トランスジェニック(IL-15 tg)マウスおよび野生型対照を、 1%ケタミンで麻酔し(体重1g当たり1.5μl; Merck, Darmstadt, Germany)、その後、背中を、電動動物用シェーバーを用いて剃毛した。脱毛には、ピンセットで毛を引き抜いた。マウスは、毎日発毛について観察し、結果をデジタル写真撮影によって記録した。すべてのマウスは、8〜12週齢のものを使用した。
【0064】
組織病理学的解析
光学顕微鏡検査のため、マウス皮膚のパンチ生検(直径8mm)を、10%中性緩衝ホルマリンに浸して固定した。続いて、組織をエタノールで脱水し、キシレンに移し、標準的な組織学的方法を用いてパラフィンに包埋し、5μmの切片を切り出し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。組織切片は、スライド上に載せ、Olympus BX61顕微鏡およびMetaMorphソフトウエア(Visitron Systems, Puchheim, Germany)を使用して解析した。
【0065】
免疫組織学
標準的方法に従ってアセトンで固定した耳切片(6-8μm)のクリオスタット切片上で、免疫組織化学を行った(24, 25)。切片を、PBS中0.5%ウシ血清アルブミン(Sigma, Taufkirchen, Germany)でブロックし、次にモノクローナル抗体またはアイソタイプ対照の適切な希釈液中でインキュベートし、その後西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を結合した2次抗体とインキュベートした。ペルオキシダーゼ活性を、3-アミノ-9-エチル-カルバゾールを色原体として使用して可視化した。組織は、マイヤーのヘマラウン溶液(Merck, Darmstadt, Germany)で対比染色した。ビオチン化マウス抗FLAGは、Sigmaから入手した。切片は、Olympus BX61顕微鏡およびMetaMorphソフトウエアを使用して検査した。
【0066】
ウエスタンブロット分析
IL-15 tg マウスおよび野生型対照の血清、ならびに皮膚および胸腺の溶解物を、15%ポリアクリルアミドゲル上に直接ロードした。組換えmIL-15タンパク質を、陽性対照として使用した。タンパク質を変性状態下で電気泳動し、ニトロセルロース膜(Amersham Biosciences Europe, Freiburg, Germany)に150mAで1時間電気ブロットした。膜を、TBS中5%脱脂粉乳に0.5%Tween 20を加えたもの(TBST)で2時間ブロックし、引き続き、TBSTに1%脱脂粉乳を加えたもので1:500に希釈した適切な抗体(抗マウスIL-15, クローン M49、Genmab, Utrecht, The Netherlandsの厚意により贈られたもの)と一晩インキュベートした。この膜をTBSTで洗浄し、TBST中1:1000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合2次抗体とともに2時間インキュベートした。タンパク質は、強化した化学発光試薬(Amersham Pharmacia Biosciences, Europe)を用いて検出した。
【0067】
実施例2: IL-15 tg マウスの表現型
ケラチノサイト由来IL-15のインビボにおける役割を調べるため、図1に示したK14発現カセットを使用して、IL-15発現を表皮に標的化した。IL-15の翻訳および分泌を制御する転写後調節機序がいくつか同定されている(17, 19)。そのため、内因性IL-15産生を制御する転写後のチェックポイントを欠いた、改変されたマウスIL-15 cDNAをクローニングして、最適なIL-15の過剰発現および分泌を得た。導入遺伝子構築物の改変を図1に示すが、これは翻訳を阻害する上流AUGを除去すること、不十分に翻訳および分泌される内因性IL-15シグナルペプチドをCD33シグナルペプチドで置換すること、およびIL-15タンパク質のCOOH末端をFLAGエピトープ標識で安定化させることを含んでいた。
【0068】
このFLAGエピトープ標識はまた、皮膚における内因性IL-15発現とtg IL-15発現との間の差別化を可能にした。K14プロモーターは、表皮を含む層状の扁平上皮の最も基底にある細胞の遺伝子発現を促進する。導入遺伝子の正確な発現を示すために、抗FLAG Abおよび抗IL-15 Abを使用してtg皮膚組織上で免疫組織化学分析およびウエスタンブロット解析を行った。図2Aで実証されているように、強力かつ均一なIL-15/FLAGの発現が、tg動物の表皮で検出された。IL-15タンパク質は、抗IL-15 Abを使用してトランスジェニックマウスの血清中で検出することができる(図2B)。導入遺伝子発現は、別の組織において期待されたパターンに従ったが、但し、K14発現が以前いくつかの遺伝子導入系統において記録されている胸腺では、IL-15の発現が検出できなかった(22)。導入遺伝子を挿入する遺伝子座、またはおそらく導入遺伝子のコピー数が、胸腺におけるIL-15発現が欠如した主な原因であり得る。ホモ接合型tgマウスは良好に繁殖し、15ヶ月の観察期間を超えても健康である。
【0069】
実施例3: 剃毛および脱毛後のtgマウスにおける発毛促進
IL-15が、細胞生存を仲介し、肥満細胞の増殖因子として作用すると報告されているため(26, 27)、本発明者らは、tgマウスにおけるケラチノサイト由来のIL-15が、毛包に対し促進効果も有し得るという仮説を立てた。皮膚のIL-15過剰発現が、インビボでの発毛を誘導するか否かを評価するために、同腹仔動物群およびtg動物群の背中を剃毛して、2週間毎日発毛を観察した。同腹仔対照とは対照的に、IL-15 tgマウスは、6日以内に有意な発毛促進を示した(図3)。これは、tgマウスにおいて効率的に分泌されたIL-15が、毛包細胞の活性化をもたらし、その結果として発毛が改善したことを示している。
【0070】
本発明者らは、次に、何房かの髪を引き抜いて毛幹を完全に除去することもまた、IL-15 tgマウスにおいて発毛を増加させる結果となるか否かに注意を向けた。このために、野生型マウスおよびIL-15 tg マウスを麻酔して、ピンセットを用いて脱毛した。両動物群について、毎日発毛を観察した。図4Aで実証されているように、IL-15 tg マウスは、対照とは対照的に、脱毛後14日ですでに完全に再生した毛で覆われていることを示した。すでに示された結果に加え(図3)、これは、tgマウスにおいて分泌されたIL-15は、影響を受けていない毛包の活性化に関与しているだけでなく、インビボでの新規発生にもおそらく必要であることを示している。この仮定を証明するために、本発明者らは、脱毛14日後に、IL-15 tg マウスおよび野生型マウスの脱毛された皮膚領域から8mmのパンチ生検を調製した。このパラフィン包埋したヘマトキシリン-エオシン染色皮膚切片の病理組織学的分析によって、野生型の皮膚において毛包は完全には回復していないのに対し、IL-15 tg 表皮には、多数の形態学的には無傷の毛包があることが明らかにされた(図4B)。これらの発見は、IL-15が、毛包細胞を活性化して発毛促進をもたらすことに非常に大きな効果を有し、毛包の新規合成に不可欠でもあることを示している。
【0071】
参考文献




【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】IL-15 tg マウスの作製。ヒトK14プロモーター(白四角)、ウサギβ-グロビンイントロン(グレー四角)、CD33シグナルペプチドおよびFLAGエピトープ標識と融合させたmIL-15 cDNA(黒四角)、ならびにK14ポリアデニル化部位(ポリA、斜線の四角)を有するK14-IL-15発現カセットをマイクロインジェクションに使用した。
【図2】(A)抗FLAG Abを用いた耳介皮膚の免疫組織化学染色は、基底ケラチノサイトにおける導入遺伝子発現を示した(黒い矢印で示されている)。(B)IL-15に対する皮膚、血清、および胸腺の免疫ブロット。等量の総タンパク量をロードし、抗ネズミIL-15 Abを用いて解析した。
【図3】tgマウスにおける発毛の増加。同腹仔対照(左)およびIL-15 tgマウス(右)の背中を剃り、6日後、デジタル写真撮影によって発毛を記録した。
【図4】IL-15 tgマウスにおいて改善された毛包の新規発生。同腹仔対照(左)およびIL-15 tg マウス(右)の背中を脱毛し、14日後、デジタル写真撮影によって発毛を記録した(A)。脱毛14日後に野生型およびIL-15 tgマウスのヘマトキシリン・エオジン染色した組織学切片によってtgマウスにおける毛包分化(黒矢印で示されている)が実証された(B)。
【図5】改変されたmIL-15の核酸配列(配列番号:7)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発毛を刺激するための組成物を調製するための、以下の使用:
(i)以下を含むポリヌクレオチド:
(a)配列番号:1もしくは3に示す核酸配列、
(b)配列番号:2もしくは4に示すアミノ酸配列をコードする核酸配列、
(c)改変されたシグナルペプチド、改変されたN末端、および/もしくは改変されたC末端を有する、配列番号:2もしくは4に示すアミノ酸配列をコードする核酸配列、もしくは
(d)ストリンジェントな条件下で(a)から(c)のいずれか一つとハイブリダイズする核酸配列;
(ii)(a)から(c)のいずれか一つに定義された核酸によってコードされるポリペプチド、または
(iii)(ii)に定義されるポリペプチドを特異的に認識する抗体に結合するか、もしくはIL-15レセプターのα鎖に特異的に結合する化合物。
【請求項2】
脱毛を治療、予防、および/または改善するための組成物を調製するための、請求項1に定義されるポリヌクレオチド、ポリペプチド、または化合物の使用。
【請求項3】
組成物が、第2の発毛刺激剤をさらに含む、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
第2の発毛刺激剤が、カルボン酸の亜鉛塩、サポニン、トリテルペン、好ましくはオレアノール酸またはウルソール酸、クラテゴール酸(crataegolic acid)、セラストロール(celastrol)、アシアチン酸(asiatic acid)、5-α-レダクターゼのインヒビター、好ましくはプロゲステロン、1,4-メチル-4-アザステロイド(azasteroid)、好ましくは17-β-N,N-ジエチルカルバモイル-4-メチル-4-アザ-5-α-アンドロスタン-3-オン、アンドロゲンレセプターアンタゴニスト、好ましくは酢酸シプロテロン、Minoxidil(登録商標)、アゼライン酸、およびこれらの誘導体、シクロスポリン、トリヨードチロニン、ジアゾキシド、カリウムチャンネル開口薬、好ましくはクロマカリム、フェニトイン、およびそれらの混合物、ならびにエストロゲンの誘導体、好ましくはエストラジオールバレレートからなる群より選択される、請求項3記載の使用。
【請求項5】
組成物が、薬学的または化粧品用に許容される担体をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項記載の使用。
【請求項6】
組成物は薬学的組成物である、請求項1から5のいずれか一項記載の使用。
【請求項7】
組成物が化粧品用組成物である、請求項1から5のいずれか一項記載の使用。
【請求項8】
組成物が、ヘアトニック、増毛用組成物、シャンプー、パウダー、ゼリー、ヘアリンス、軟膏、ヘアローション、ペースト、ヘアクリーム、ヘアスプレー、および/またはヘアエアロゾルとして処方される、請求項1から7のいずれか一項記載の使用。
【請求項9】
組成物が、対象の皮膚または頭皮に対して局所的に投与される、請求項1から8のいずれか一項記載の使用。
【請求項10】
対象が哺乳動物である、請求項9記載の使用。
【請求項11】
哺乳動物が、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ラクダ、マウス、ラット、アルパカ、ビクーナ、グアナコ、またはラマである、請求項10記載の使用。
【請求項12】
対象が、遺伝的に決定されたおよび/または後天型の脱毛を患っている、請求項9から11のいずれか一項記載の使用。
【請求項13】
遺伝的に決定されたまたは後天型の脱毛が、円形脱毛症、部分的脱毛症(alopecia subtotalis)、完全脱毛症、抜毛癖、または薬物誘導性脱毛症である、請求項12記載の使用。
【請求項14】
請求項1に定義された核酸を含むトランスジェニック非ヒト動物であって、該核酸が、毛球のケラチノサイトにおいて、ランゲルハンス細胞において、メラニン細胞において、樹枝状表皮性T細胞において、肥満細胞において、皮神経線維において、または線維芽細胞において特異的に発現される、トランスジェニック非ヒト動物。
【請求項15】
非ヒト動物において発毛を刺激する方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)該動物を請求項1に定義された核酸で形質転換する工程;および
(b)該核酸によってコードされたポリペプチドを発現させる工程。
【請求項16】
獣毛を生産する方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)動物を請求項1に定義された核酸で形質転換する工程; および
(b)該核酸によってコードされたポリペプチドを発現させる工程。
【請求項17】
IL-15ポリペプチドが調節因子の制御下で発現する、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
調節因子が、毛球のケラチノサイトにおいて、ランゲルハンス細胞において、メラニン細胞において、樹枝状表皮性T細胞において、肥満細胞において、皮神経線維において、または線維芽細胞において特異的な発現を可能にする、請求項17記載の方法。
【請求項19】
非ヒト動物の皮膚および/または頭皮に、請求項1に定義される組成物を投与する工程をさらに含む、請求項16から18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
非ヒト動物の皮膚および/または頭皮に、請求項1に定義される組成物を投与する工程を含む、獣毛を生産する方法。
【請求項21】
動物の毛を入手する工程をさらに含む、請求項16から20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
動物が、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ラクダ、マウス、ラット、アルパカ、ビクーナ、グアナコ、またはラマである、請求項14記載のトランスジェニック非ヒト動物、または請求項15から21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
請求項1に定義される組成物を有効量で対象に投与する工程を含む、脱毛を有する対象を治療、予防、および/または改善する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−516987(P2007−516987A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545970(P2006−545970)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013907
【国際公開番号】WO2005/063279
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(506224517)ユニバーシタットスクリニクム マンスター (1)
【Fターム(参考)】