IL−17産生の阻害
本発明は、インターロイキン23(IL−23)のアンタゴニストを用いた、炎症誘発性サイトカインであるインターロイキン17(IL−17)のT細胞による産生の抑制に関係する。さらに本発明は、IL−17濃度の上昇がみられることを特徴とする炎症性疾患の治療において、IL−23アンタゴニストを使用することに関係する。IL−23アンタゴニストには、サブユニットあるいはIL−17あるいはIL−17受容体に特異的に結合する抗体が含まれるがこれらに限定されない。さらに本発明はIL−23アゴニストを用いることによるIL−17産生に関係する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、インターロイキン23(IL−23)のアンタゴニストを用いた、炎症誘発性サイトカインであるインターロイキン17(IL−17)のT細胞による産生の抑制に関係する。さらに本発明は、IL−17濃度の上昇がみられることを特徴とする炎症性疾患の治療において、IL−23アンタゴニストを使用することに関係する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
IL−17はT細胞由来の炎症誘発分子であり、上皮細胞及び内皮細胞、線維芽細胞性細胞を刺激して、IL−6、IL−8、G−CSF、MCP−1等他の炎症性サイトカイン及びケモカインを産出させる(S.Aggarwal,A.L.Gurney,J Leukoc Biol 71,1(2002);Z.Yao et al.,Immunity 3,811(1995);J.Kennedy et al.,J Interferon Cytokine Res 16,611(1996);F.Fossiea et al.,J Exp Med 183,2593(1996);A.Linden,H.Hoshino,M.Laan,Eur Respir J 15,973(2000);X.Y.Cai,C.P.Gommoll,Jr.,L.Justice,S.K.Narula,J.S.Fine,Immunol Lett 62,51(1998);D.V.Jovanovic et al.,J Immunol 160,3513(1998);M.Laan et al.,J Immunol 162,2347(1999))。
【0003】
またIL−17は、TNF−α及びIL−1βを含む他のサイトカインと共同して作用し、さらにケモカインの発現を誘導する(上記Jovanovic et al.,M.Chabaud,F.Fossiez,J.L.Taupin,P.Miossec,J Immunol 161,409(1998))。慢性関節リウマチ−(RA)の滑膜(S.Kotake et al.,J Clin Invest 103,1345(1999)及びM.Chabaud et al.,Arthritis Rheum 42,963(1999))並びに同種異系移植拒絶反応中(M.A.Antonysamy et al.,Transplant Proc 31(1999);M.A.Antonysamy et al.,J Immunol 162,577(1999);C.C.Loong,C.Y.Lin,W.Y.Lui,Transplant Proc 32(2000);H.G.Hsieh,C.C.Loong,W.Y.Lui,A.Chen,C.Y.Lin,Transpl Int 14,287(2001))、多発性硬化症を含む他の慢性炎症疾患(K.Kurasawa et al.,Arthritis Rheum 43,2455(2000))、乾癬(C.Albanesi et al.,J Invest Dermatol 115,81(2000)及びB.Homey et al.,J Immunol 164,6621(2000))で、IL−17の濃度が著しく上昇することが認められている。活性化T細胞によって産出されることは明らかであるが、これまでの報告類ではTh1並びにTh2偏向サイトカインプロファイルの範例内におけるIL−17の明確な分類は提供されていない。
【0004】
IL−23はヘテロ二量体のサイトカインであり、インターロイキン12(IL−12)と共通するp40と名付けられているサブユニットがp19という独自のサブユニットと結合している(B.Oppmann et al.,Immunity 13,715(2000))。IL−23はT細胞、特に記憶T細胞の増殖を促進することが報告されている(D.M.Frucht,Sci STKE 2002 Jan 8;2002(114):PE1)。最近p19形質転換マウスが深部全身性炎症及び好中球増加症を示すと報告されている(M.T.Wiekowski et al.,J Immunol 166,7563(2001))。
【0005】
IL−17並びにIL−23サイトカインの発現と生物学的役割との関連性はこれまでのところ確立されていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
一側面では、本発明はT細胞によるインターロイキン17(IL−17)産生を抑制する方法に関するものであり、この方法にはインターロイキン23(IL−23)のアンタゴニストでT細胞を処理することが含まれる。
【0007】
別の側面では本発明は、哺乳類被験体における、インターロイキン(IL−17)の発現の上昇を特徴とする炎症性疾患の治療のための方法に関するものであり、この方法にはインターロイキン23(IL−23)のアンタゴニストを有効量哺乳類被験体に投与することが含まれる。
【0008】
また別の側面では、本発明は以下の過程から成る抗炎症剤同定のための方法に関するものである:
(a)T細胞にIL−23を加え、候補薬の有る無しで培養する;
(b)培養物中のIL−17濃度を追跡測定する;
(c)当該候補薬分子が存在しない場合よりも存在する場合の方がIL−17の濃度が低ければ、候補薬分子が抗炎症剤であると確認される。
【0009】
さらに別の側面で本発明は、哺乳類被験体内でIL−17産生を誘導するための方法に関するものであり、この方法には前記被験体にIL−23アンタゴニストを投与することが含まれる。
【0010】
すべての側面において、望ましいアンタゴニストあるいはアゴニストは抗IL−23抗体もしくは抗IL−23受容体抗体であり、これには抗体フラグメントが含まれる。望ましい炎症性疾患は、例えばリウマチ様関節炎(RA)、異系移植拒絶反応を引き起こす恐れのある移植片対宿主反応、多発性硬化症(MS)、乾癬等の慢性炎症状態である。IL−17産生の誘導は一般的に、例えばMycobacterium tuberculosisの感染等、細菌感染を被った被験体に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(好ましい実施形態の詳細)
(A.定義)
他に定義されていない限り、ここで使用されている科学技術用語は、本発明が属する分野の普通の技術者によって一般に理解されているものと同じ意味を持つ。例えば、Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY 1994);Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,NY 1989)を参照する。本発明の目的のため以下の用語を下記に定義する。
【0012】
「アンタゴニスト」はこの明細書では最も広い意味で使用されている。IL−23「アンタゴニスト」は分子であり、作用の基となるメカニズムを問わず、部分的にあるいは完全にIL−23の生物学的活性を遮断あるいは抑制、中和、防御、干渉するものである。本発明の目的のため、生物学的活性とは望ましくは活性化T細胞においてIL−17産生を誘導する活性である。例えばIL−23アンタゴニストは、活性化T細胞(例えば記憶T細胞)集団において、IL−23を介するIL−17産生を抑制あるいは遮断、転換する活性に基づいて同定される。例えば、培養活性化T細胞にIL−23を加えて試験化合物の有る無しで培養し、細胞培養物上清のIL−17濃度を、例えばELISAによって、追跡測定することができる。試験化合物が無い場合よりも有る場合の方がIL−17濃度が低ければ、その試験化合物はIL−23アンタゴニストである。他の方法として、試験化合物による処理前後にリアルタイムRT−PCRを用いて組織中のIL−17mRNAの発現並びにIL−23mRNAの発現を測定することもできる。試験化合物存在下でIL−17mRNAが減少すれば、その化合物はIL−23アンタゴニストである。IL−23アンタゴニストの例には天然シーケンスのIL−23ポリペプチドサブユニット(例えばp40サブユニット)に対する中和抗体、免疫グロブリン定常部シーケンスと融合するIL−23サブユニットから成る免疫付着因子、小分子、天然シーケンスのIL−23ポリペプチドのサブユニットをコードする遺伝子の翻訳と転写の両方あるいは一方を抑制する作用のあるアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えばIL−23遺伝子の遺伝的おとり等のおとり、その他が含まれるがこれらに限定されない。同様にIL−23アンタゴニストには例えばIL−12Rβ1あるいはIL−23R等の天然IL−23受容体のサブユニットに対する中和抗体、免疫グロブリン定常部シーケンスと融合するIL−23受容体サブユニットから成る免疫付着因子、小分子、天然シーケンスのIL−23受容体ポリペプチドのサブユニットをコードする遺伝子の翻訳と転写の両方あるいは一方を抑制することのできるアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えばIL−23受容体遺伝子の遺伝的おとり等のおとり、その他が含まれるがこれらに限定されない。
【0013】
「アゴニスト」は、この明細書では最も広い意味で使用されている。IL−23アゴニストは、作用の基となるメカニズムを問わず、あらゆる天然シーケンスのIL−23が仲介する生物学的活性と類似する作用を持つ分子である。本発明の目的のため、生物学的活性とは、望ましくは活性化T細胞においてIL−17産生を誘導する作用である。IL−23アゴニストの例には、例えばIL−12Rβ1あるいはIL−23Rサブユニット等天然IL−23受容体のサブユニットに対する作動性の抗体並びにペプチド、小有機分子その他が含まれるがこれらに限定されない。
【0014】
「アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド」あるいは「アンチセンスオリゴヌクレオチド」(これらの用語は交換して使用することができる。)は、シーケンス特異的な方法でターゲット遺伝子の転写あるいは翻訳、もしくはその両方を抑制することができる核酸分子と定義される。「アンチセンス」という用語は、その核酸がターゲット遺伝子のコーディング(「センス」)遺伝子配列に対して相補的であることを指す。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ワトソン−クリック塩基結合によって逆平行方向に新生mRNAとハイブリダイズする。ターゲットmRNA鋳型と結合することによって、アンチセンスオリゴヌクレオチドはコードされているタンパク質の翻訳の達成を阻害する。この用語には特に「リボザイム」と呼ばれるアンチセンス薬剤が含まれ、これは自然自己スプライシング活性を持つシーケンスを加えることによってターゲットRNAの触媒切断を誘導する(Warzocha and Wotowiec,「Antisense strategy:biological utility and prospects in the treatment of hematological malignancies.」,Leuk.Lymphoma 24:267−281 [1997])。
【0015】
「抗体」とい用語は最も広い意味で使用されており、特にモノクローナル抗体(アンタゴニストを含む。例えば中和抗体並びに作動性抗体。)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントが含まれる。目的とする生物学的活性を示す限り、モノククローナル抗体には当該抗体のフラグメントに加えて特に「キメラ」抗体が含まれる。このキメラ抗体は、重鎖あるいは軽鎖もしくはその両方の部分が、特定の種由来の抗体、あるいは特定の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応するシーケンスと同一であるもしくは類似しており、残りの鎖は別の種由来の抗体、あるいは別の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応するシーケンスと同一であるもしくは類似しているものである(米国特許第4,816,567号;Morrison et al.,Proc Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855 [1984])。さらにモノクローナル抗体には、非ヒト免疫グロブリン由来の最小シーケンスを含む、「ヒト化」抗体あるいはそのフラグメント(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、その他抗体の抗原結合シーケンス)が含まれる。大半の場合ヒト化抗体は、受容者のCDR由来の残基が、目的とする特異性、親和性、作用を持つ非ヒト種(供与体抗体)のCDR由来の残基に置き換わっているヒト免疫グロブリン(受容者抗体)である。非ヒト種の例には、マウスもしくはラット、ウサギ等がある。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFv FR残基は、非ヒトの対応する残基に置換されている。さらに、ヒト化抗体は受容者抗体にも導入されたCDRもしくはフレームワークシーケンスにもみられない残基から成ることもできる。抗体の性能を向上させ最大にする目的でこれらの修飾が行われる。一般に、ヒト化抗体は実質的にあらゆる、1つ以上、典型的には2つの可変領域から成ることとなり、全てのもしくは実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に相当し、且つ全ての、もしくは実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリンシーケンスのFR領域である。また最適なヒト化抗体は免疫グロブリン定常部(Fc)の1つ以上の部分から成ることとなり、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常部から成る。詳細についてはJones et al.,Nature,321:522−525(1986);及びReichmann et al.,Nature,332:323−329(1998)を参照する。ヒト化抗体にはPRIMATIZED(R)抗体が含まれ、この抗体の抗原結合領域は、目的とする抗原でマカークザルを免疫して作られた抗体から得られたものである。
【0016】
「抗体フラグメント」は完全抗体の一部分から成り、望ましくは完全抗体の抗原結合領域あるいは可変領域から成る。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント並びに直鎖抗体(Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057−1062(1995))、ダイアボディ、一本鎖抗体分子、抗体フラグメントから作られる多重特異性抗体が含まれる。
【0017】
この明細書で使用されている「炎症性疾患」あるいは「炎症性疾病」という用語は、炎症を引き起こす病理学的状態を指し、この状態は典型的には好中球の化学走性によって引き起こされる。当該疾患の例には、乾癬並びに皮膚炎を含む炎症性皮膚疾患、汎発性強皮症及び全身性硬化症、炎症性腸炎(IBD)に伴う反応(クローン病並びに潰瘍性大腸炎等)、外科的組織再潅流による損傷並びに心筋梗塞、心停止、心臓手術後の再潅流、経皮経管冠動脈形成手術後の狭窄等の心筋虚血状態、並びに卒中並びに腹部大動脈瘤を含む虚血性再潅流疾患、卒中に続発する脳水腫、頭蓋外傷、血液量減少ショック、仮死、成人呼吸窮迫症候群 急性肺損傷、ベーチェット病、皮膚筋炎、多発性筋炎、多発性硬化症(MS)、皮膚炎、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、変形性関節炎、ループス腎炎、リウマチ様関節炎(RA)等の自己免疫疾患、シェーグレン症候群(Sjorgen’s syndrome)、血管炎、白血球の血管外漏出を伴う疾患、中枢神経系(CNS)炎症疾患、敗血症あるいは外傷に続発する多臓器損傷症候群、アルコール性肝炎、細菌性肺炎、腎炎を含む抗原抗体複合体媒介疾患、敗血症、サルコイドーシス、組織・臓器移植に対する免疫異常反応、並びに胸膜炎並びに肺胞炎、脈管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、特発性肺線維症(IPF)、嚢胞性線維症を含む肺の炎症、その他が含まれる。望ましい適用には、慢性炎症、自己免疫性糖尿病、リウマチ様関節炎(RA)、リウマチ性脊椎炎、痛風性関節炎等の関節炎症状態、多発性硬化症(MS)、喘息、全身性エリテマトーデス(systhemic lupus erythrenatisys)、成人呼吸窮迫症候群、ベーチェット病、乾癬、慢性肺炎症性疾患、対宿主性移植片疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患(IBD)、アルツハイマー病、発熱が含まれ、さらに炎症が関係するあらゆる疾患・疾病および関連する異常状態が含まれるがこれらに限定されない。
【0018】
「治療する」あるいは「治療」という用語は、治療処置と予防策の両方を指し、その目的は望ましくない生理学的変化あるいは異常を予防する、もしくは遅らせる(軽減する)ことである。本発明の目的のため、有益なあるいは望ましい臨床結果には、検出可能か否かに係わらず、症状の緩和並びに疾患の範囲の縮小、疾患状態の安定化(例えば悪化しない。)、疾患の進行の遅延あるいは減速、疾患状態の改善あるいは一時的緩和、緩解(部分的あるいは全体的)が含まれるがこれらに限定されない。「治療」は、治療を受けない場合に見込まれる生存期間と比較した生存期間の延長も意味することができる。治療を必要とするものには、当該状態あるいは疾患をすでに有するものに加えて、当該状態あるいは疾患を被りやすいもの、あるいは当該状態あるいは疾患を予防すべきものが含まれる。
【0019】
「慢性」投与は、急性治療とは反対に継続して薬剤を投与することを指し、長期間に渡って望ましい効果を維持する目的で行う。
【0020】
「間欠」投与は、中断しないが連続して行われない治療であり、即ち周期的な治療である。
【0021】
一つ以上の別の治療薬剤「と併用する」投与には、あらゆる順序の同時(併用)投与及び連続投与が含まれる。
【0022】
「被験体」は脊椎動物であり、望ましくは哺乳類、より望ましくはヒトである。
【0023】
「哺乳類」はこの明細書では哺乳類に分類されるあらゆる動物を指すために使用され、ヒト、あるいはヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等の飼育動物・家畜動物並びに動物園あるいはスポーツあるいはペット動物が含まれるが、これらに限定されない。この明細書で望ましい哺乳類はヒトである。
【0024】
「有効量」とは、有益なあるいは望ましい治療(予防を含む。)結果に効果のある十分な量である。
【0025】
(B.発明を実施するための形態)
本発明を実施するには、他に指定のない限り、分子生物学(組換え技術を含む。)、微生物学及び細胞生物学、生化学、免疫学の通常の手法を使用することとなり、これらは当分野の技術の範囲内である。当該手法は、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,2nd edition(Sambrook et al.,1989);並びに「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait,ed.,1984);「Animal Cell Culture」(R.I.Freshney,ed.,1987);「Methods in Enzymology」(Academic Press,Inc.);「Handbook of Experimental Immunology」,4th edition(D.M.Weir & C.C.Blackwell,eds.,Blackwell Science Inc.,1987);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(J.M.Miller & M.P.Calos,eds.,1987);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987);「PCR:The Polymerase Chain Reaction」,(Mullis et al.,eds.,1994);「Current Protocols in Immunology」(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)等の文献において詳細に説明されている。
【0026】
前記で議論したとおり、本発明は活性化T細胞、特に記憶T細胞において、IL−23がIL−17を産生し、IL−23アンタゴニストがこの過程を抑制するこができるという認識に基づくものである。従って、IL−23アンタゴニストはIL−17濃度の上昇を特徴とする炎症状態を治療するための有望な候補薬である。逆にIL−23アゴニストは、例えばMycobacterium tuberculosis(M.tuberculosis)感染等のマイコバクテリア感染を含む多様な感染に対する防御免疫反応を誘導するのに有用である。
【0027】
(1.IL−23のアンタゴニストあるいはアゴニストを同定するためのスクリーニングアッセイ)
本発明はIL−23のアンタゴニストを同定するためのスクリーニングアッセイを含み、このアッセイではIL−17濃度の上昇がみられることを特徴とする炎症状態の治療における有効性を確認する。さらに本発明はIL−23アゴニストを同定するためのスクリーニングアッセイを含み、このアッセイではMycobacterium tuberculosis による感染等感染に対する防御免疫反応の促進における有効性を確認する。
【0028】
候補アンタゴニストに対するスクリーニングアッセイは、IL−23(これのサブユニットあるいはフラグメントを含む。)もしくはIL−23受容体(これのサブユニットあるいはフラグメントを含む。)と結合するもしくは化合する、さもなくはIL−23と他の細胞性タンパク質との相互作用を干渉し、これによってIL−23の産生あるいは機能を干渉する化合物同定を目的として立案することができる。この明細書で提供されるスクリーニングアッセイには、化学薬品ライブラリーのハイスループットスクリーニングに基づいたアッセイが含まれ、これによってアッセイが特に小分子候補薬の同定に適するようになる。一般には結合分析と活性分析とが提供される。
【0029】
このアッセイは、当分野でよく特性を与えられている、タンパク質−タンパク質結合分析、生化学スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ、細胞ベースアッセイを含む、多様な様式で行うことができるが、これらに限定されない。
【0030】
アンタゴニスト並びにアゴニストに対するあらゆるアッセイは、候補薬にIL−23ポリペプチドあるいはIL−23受容体ポリペプチドあるいは当該ポリペプチド(特にIL−23及びIL−23受容体のサブユニットを含む。)のフラグメントに、二つの成分が相互作用することができる条件下で十分な時間接触することを必要とする点で共通している。例えばヒトIL−23p19サブユニットはアミノ酸189個のポリペプチドであり、そのアミノ酸配列はAccession Number(受け入れ番号)AF301620(NCBI 605580;GenBank AF301620;上記Oppman et al.,)でEMBLデータベースから知ることができる。IL−23ポリペプチドであるp40サブユニットのアミノ酸配列も判明している(IL−12p40サブユニットとしても知られる。)。IL−23が結合するIL−12Rβ1のアミノ酸配列はAccession Number NCBI 601604で知ることができる。抗体あるいは当該ポリペプチドに結合する小分子の作製は、当業者の通常技術の範囲に十分収まる。
【0031】
結合性分析において相互作用とは結合することであり、形成される複合体は単離することができる、もしくは反応混合物中で検出することができる。ある実施例では、IL−23ポリペプチドあるいはIL−23受容体ポリペプチドあるいは候補薬を、例えばマイクロタイタープレート等の固相上で、共有結合もしくは非共有結合によって固定化する。非共有結合は一般に、固体表面をIL−23あるいはIL−23受容体ポリペプチドの溶液で被覆し、乾燥することによって達成される。他の方法として、固定化しようとするIL−23あるいはIL−23受容体ポリペプチドに特異的な固定化した抗体(例えばモノクローナル抗体)を使用してそのIL−23ポリペプチドあるいはIL−23受容体ポリペプチドを固体表面に繋ぎとめることができる。このアッセイは、検出用標識によって標識することができる非固定化成分を固定化成分(例えば固着された成分を含む被覆された表面)に加えることによって行われる。反応完了後に、反応しなかった成分を除去し(例えば洗浄によって)、固体表面に固着している複合体を検出する。固定化されていない成分がもとより検出用標識を有している場合は、固体表面で固定されている標識を検出することで、複合体ができていることが示される。固定化されなかった細胞がもとより標識を有していない場合、複合体は、例えば固定化された複合体に特異的に結合する標識抗体を用いる等して複合体を検出することができる。
【0032】
候補化合物がIL−23あるいはIL−23受容体と相互作用するが結合しないポリペプチドである場合、それぞれのポリペプチドとの相互作用はタンパク質−タンパク質相互作用を検出するためのよく知られた方法によって検出することができる。当該アッセイには、例えば架橋形成並びに免疫共沈降、密度勾配カラムあるいはクロマトグラフカラムによる共精製等の伝統的な手法が含まれる。さらにタンパク質−タンパク質相互作用は、Chevray and Nathans,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5789−5793(1991)で公開されているように、Fieldsらによって記載されている酵母ベースの遺伝システムを用いて測定することができる(Fields and Song,Nature(London),340:245−246(1989);Chien et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:9578−9582(1991)。酵母GAL4等多数の転写活性化物質は、2つの物理的に別個の調節ドメインから構成され、1つはDNA結合ドメインとして作用し、他方は転写活性化ドメインとして機能する。先述の文献に記載されている酵母発現システム(一般に「ツーハイブリッドシステム」と呼ばれている。)はこの特性を利用して、二つのハイブリッドタンパク質が用いられており、その一つのタンパク質ではターゲットタンパク質がGAL4のDNA結合ドメインと融合し、他方では候補活性化タンパク質が活性化ドメインと融合する。GAL1−lacZ1受容体遺伝子の発現は、GAL4活性化プロモーターを制御した状態で、タンパク質−タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構築に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、βガラクトシダーゼに対する発色基質を用いて検出される。二つの特定のタンパク質間のタンパク質−タンパク質相互作用を、ツーハイブリッド法を用いて同定するための完全キット(MATCHMAKERTM)がClonetechから市販されている。またこのシステムを拡張し、特定のタンパク質相互作用に係わるタンパク質ドメインの位置を決定することが可能であり、さらにこれらの相互作用に必須の役割を持つアミノ酸残基を特定することができる。
【0033】
IL−23と他の細胞内並びに細胞外成分、特にIL−17との相互作用を干渉する化合物は、以下のように試験することができる。通常、IL−23と細胞内もしくは細胞外成分(例えばIL−17)とを含む反応混合物を、これらの二つの物が相互作用できる条件下で十分な時間調製する。候補化合物がIL−23とIL−17との相互作用を抑制する作用を調べるために、試験候補化合物の存在が有る無しで、反応を進める。加えて、第三の混合物に儀薬を加えて陽性コントロールとすることもできる。IL−23はIL−17産生を誘導することが示されており、試験化合物がIL−23とIL−17との相互作用を抑制する作用は、例えば、試験化合物の有る無しでIL−17量を測定することによって試験される。IL−17の量が、候補化合物が無い場合の方が有る場合よりも少なければ、本発明の定義によりその候補化合物はIL−23のアンタゴニストである。
【0034】
IL−23によるIL−17産生誘導を抑制する作用に基づいて同定されたIL−23アンタゴニストは、IL−17濃度の上昇がみられることを特徴とする炎症状態の治療のための候補薬である。
【0035】
IL−23によるIl−17産生誘導を促進する作用に基づいて同定されたIL−23アゴニストは、Mycrobacterium tuberculosisによる感染等感染に対する防御免疫反応を誘発するあるいは支援するための候補薬であり、結果として結核等の感染症の治療のための候補薬となる。
【0036】
この明細書で特に議論されているスクリーニングアッセイは、説明のみを目的としていることを強調する。スクリーニングするアンタゴニスト(例えばポリペプチド、ペプチド、非ペプチド小有機分子、核酸、その他)の種類に応じて選択することが可能な多様な他のアッセイは、当分野の技術者によってよく知られたものであり、同等に本発明の目的に適する。
【0037】
(2.抗IL−23抗体と抗IL−23受容体抗体)
特定の実施例において、IL−23アンタゴニストあるいはアゴニストはIL−23(例えばIL−23のサブユニット)に対するモノクローナル抗体であり、これには抗体フラグメントが含まれる。別の特定の実施例では、IL−23アンタゴニスト並びにアゴニストにはIL−23受容体(例えばIL−23受容体のサブユニット)に対するモノクローナル抗体が含まれる。そのサブユニットを含め、IL−23についてはこの明細の前記に記述している。IL−23受容体はIL−12Rβ1及び、最近発見されたIL−23Rと名付けられたサブユニット(Parham et al.,J.Immunol.168:5699−5798(2002))の、2つのサブユニットから構成される。いずれのサブユニットに対する抗体も、本発明の範囲に明確に収まる。アンタゴニストの場合、IL−23Rに特異的に結合する抗体はIL−23が介する生物学的活性を特異的に遮断するため、IL−23Rに特異的に結合する抗体が特に望ましい。
【0038】
モノクローナル抗体を作製する方法は、当分野でよく知られている。例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)に記載されている方法等のハイブリドーマ法を用いてモニクローナル抗体を調製することができる。ハイブリドーマ法では、一般的にマウス、ハムスターその他の適当な宿主動物を免疫薬剤で免疫し、その免疫薬剤に特異的に結合することになる抗体を産生するあるいは抗体を産生することができるリンパ球を誘出させる。他の方法として、インビトロでリンパ球を免疫することもできる。
【0039】
免疫薬剤は典型的にはIL−23もしくはIL−23受容体ポリペプチド、あるいはそれらの融合タンパク質を含むこととなる。一般に、ヒト由来の細胞を求める場合、末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、非ヒト哺乳類源を求める場合には脾細胞あるいはリンパ節細胞が使用される。次にポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を固定された細胞系と融合し、ハイブリドーマ細胞を作る(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−103)。固定された細胞は普通、形質転換させた哺乳類細胞であり、特にげっ歯類、ウシ、ヒト由来の骨髄腫細胞である。通常はラットあるいはマウスの骨髄腫細胞が使用される。このハイブリドーマ細胞は、望ましくは融合していない固定された細胞の増殖あるいは生存を抑制する1つ以上の物質を含む適当な培地で培養することができる。例えば、宿主細胞がヒポキサンチン−グアニン−ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTあるいはHPRT)という酵素を欠損している場合、典型的にはこのハイブリドーマのための培地にはヒポキサンチン及びアミノプロテイン、チミジンが含まれることとなり(「HAT培地」)、これらの物質はHGPRT欠損細胞の増殖を妨げる。
【0040】
不死化される細胞系で望ましいのは、効率よく融合するもので、且つ選択された抗体産生細胞が安定して高濃度に抗体を発現することを助け、HAT培地等の培地に対する感受性があるものである。不死化される細胞系でさらに望ましいものは、マウス骨髄腫細胞系であり、例えばこれはStalk Institute Cell Distribution Center,San Diego,California並びにAmerican Type Culture Collection,Manassas,Virginiaから入手することができる。また、ヒトモノクローナル抗体作製に関しては、ヒト骨髄腫細胞系並びにマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系が記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987) pp.51−63)。
【0041】
次に、IL−23もしくはIL−23受容体に対するモノクローナル抗体の存在に関して、ハイブリドーマ細胞を培養する培地を分析することができる。望ましくはハイブリドーマ細胞が産生したモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降もしくは、ラジオイムノアッセイあるいは酸素結合免疫吸着測定(ELISA)等のインビトロ結合分析によって判定する。当該技術並びに分析法は当分野で知られているものである。例えばモノクローナル抗体の結合親和性は、Munson and Pollard,Anal.Biochem.,107:220(1980)のスキャッチャード分析によって判定される。
【0042】
目的とするハイブリドーマ細胞を同定後、そのクローンを限界稀釈法によってサブクローン化し、標準法(上記Goding)によって培養する。この目的のために適した培地には、例えばDulbecco’s Modified Eagle’s培地並びにRPMI−1640培地が含まれる。他の方法として、ハイブリドーマ細胞を哺乳類の腹水としてインビボで増殖させることもできる。
【0043】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインAセファロースあるいはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、アフィニティークロマトグラフィー等、一般的な免疫グロブリン精製法によって、培地あるいは腹水から単離して精製することができる。
【0044】
また、米国特許第4,816,567号に記載されている方法等、組換えDNA法によってモノクローナル抗体を作製することもできる。一般的な手法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖並びに軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドのプローブを用いる方法によって)、本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAを容易に単離してシーケンスを決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞は当該DNAの望ましい供給源として役立つ。単離後、DNAを発現ベクターに加えることができ、次にこのベクターを類人猿コス細胞あるいはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、他の免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞等の宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体を生成させる。例えばヒト重鎖並びに軽鎖の定常部をコードするシーケンスをマウスの同種シーケンスに置換することによって、あるいは免疫グロブリンをコードするシーケンスを、非免疫グロブリンポリペプチドをコードするシーケンスの全部もしくは一部に共有結合させることによって、DNAを改変することもできる(米国特許第4,816,567号;上記Morrison et al.)。当該非免疫グロブリンポリペプチドを本発明の抗体の定常部と置換することができる、もしくは本発明の抗体の抗原結合部位である可変領域と置換してキメラ二価抗体を作製することもできる。
【0045】
抗体は一価抗体であることができる。一価抗体を作製する方法は当分野でよく知られている。例えば、ある方法では免疫グロブリン軽鎖と改変重鎖の組換え発現を伴う。一般には重鎖をFc領域の任意の部位で切断して、重鎖の架橋形成を防ぐ。他の方法として、関係するシステイン残基を他のアミノ酸残基と置換する、もしくはこれを除去して架橋形成を防ぐ。またインビトロの方法も一価抗体の作製に適する。
【0046】
さらに本発明の抗IL−23抗体並びに抗IL−23受容体抗体はヒト化抗体あるいはヒト抗体であることができる。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形態はキメラ免疫グロブリン、もしくはこれの免疫グロブリン鎖、あるいはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、その他の抗原結合サブシーケンス等)であり、これらは非ヒト免疫グロブリン由来の最小のシーケンスを含む。ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(受容者抗体)を含み、受容者抗体の相補性決定部(CDR)由来の残基が、目的とする特異性及び親和性、活性を有する、マウスあるいはラット、ウサギ等非ヒト種(供与者抗体)のCDR由来の残基に置換されている。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は非ヒトの相当する残基によって置換されている。またヒト化抗体は、受容者抗体にも、移入されるCDRもしくはフレームワークシーケンスにもない残基から成ることもできる。一般的に、ヒト化抗体は事実上全ての1つ以上、典型的には2つの可変領域から成ることになり、ここで全てのあるいは実質的に全てのCDR領域は非ヒト免疫グロブリンのCDRに相当し、且つ全てのあるいは実質的に全てのFR領域は非ヒト免疫グロブリンコンセンサスシーケンスのFR領域である。最適なヒト化抗体は、免疫グロブリン定常部(Fc)の少なくとも一部分から成ることとなり、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常部である(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323−329(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992))。
【0047】
非ヒト抗体をヒト化する方法は当分野においてよく知られている。一般的には、ヒト化抗体は非ヒト供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば「導入」残基と呼ばれ、典型的には「導入」可変領域から得られる。ヒト化は基本的にWinterらの方法(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988))に従って行われ、げっ歯類CDRシーケンスをヒト抗体の相当するシーケンスに置換する。従って、当該「ヒト化」抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,186,567号)、本質的に完全ヒト可変部が非ヒト種由来の相当するシーケンスで置換されたわけではない。実際には、典型的なヒト化抗体は、CDR領域の一部とおそらくはFR残基の一部がげっ歯類抗体の相同する残基で置換されているヒト抗体である。
【0048】
またヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ(Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991))を含め、当分野で知られている多様な手法を用いて作製することができる。また、Coleらの手法並びにBoernerらの手法もヒトモノクローナル抗体の調製に有用である(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)並びにBoerner et al.,J.Immunol.,147(1):86−95(1991))。同様に、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内生免疫グロブリン遺伝子の一部または全部を不活性化した、マウス等の形質転換動物に導入することによって作ることができる。免疫チャレンジ後にヒト抗体の産生が観察され、遺伝子転位、集合体形成、抗体レパートリーを含め、全ての点でヒトにみられるものと非常に似ている。この手法は例えばU.S.Patent Nos.5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,661,016 及び以下の科学文献に記載されている:Marks et al,Bio/Technology 10,779−783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368:812−813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14:845−851(1996);Neuberger,Nature Biotechnology 14,826(1996);Longberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)。
【0049】
Mendezら(Nature Genetics 15:146−156(1997))はこの手法をさらに改良して「ゼノマウスII」と称する形質転換マウス系を作り出した。「ゼノマウスII」は抗原でチャレンジされると親和性の高い完全ヒト抗体を作る。これは上記のように、メガベースのヒト重鎖遺伝子座及び軽鎖遺伝子座を、内生JHセグメントを欠損させたマウスに移入する生殖細胞系統合によって作製された。ゼノマウスIIは、約66のVH遺伝子と完全DH領域、JH領域、3種の定常部(μ、δ、χ)を含む1,020 kbのヒト重鎖遺伝子座を有し、さらに32のVκ遺伝子とJκセグメント、Cκ遺伝子を含む800 kbのヒトκ遺伝子座を有する。これらのマウスによって産生された抗体は、遺伝子転位並びに集合体形成、抗体レパートリーを含め、全ての点でヒトにみられるものと非常によく似ている。マウス遺伝子座の遺伝子転位を妨げる内生JHセグメントを欠失しているため、このヒト抗体は内生抗体に優先して発現する。
【0050】
他の方法として、ファージディスプレイ法(McCafferty et atl.,Nature 348:552−553(1990))を用いて免疫されていない供与者由来の免疫グロブリン可変(V)領域遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体並びに抗体フラグメントを作ることができる。この方法に従うと、抗体V領域遺伝子は、M13あるいはfd等の繊維状バクテリオファージのメジャーコートあるいはマイナーコートタンパク質遺伝子にインフレームクローニングされ、ファージ粒子表面上に機能性抗体フラグメントとしてディスプレイされる。この繊維状粒子にはファージゲノムの一本鎖DNAコピーが含まれているため、抗体の機能特性に基づいて選択することで、これらの特性を呈する抗体をコードする遺伝子を選択することとなる。つまり、ファージはB細胞の一部の特性を模倣する。ファージディスプレイは様々な方法で行うことができ、それらの論評については、例えばJohnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3,564−571(1993)を参照する。いくつかのV遺伝子源をファージディスプレイに使用することができる。Clackson et al.,Nature 352,624−628(1991)は、免疫したマウスの脾臓由来のV遺伝子の、ランダムな組み合わせの少数ライブラリーから様々な系列の抗オキサゾロン抗体を単離した。免疫していないヒト供与者のV遺伝子のレパートリーを構築することができ、基本的にMarks et al.,J.Mol.Biol.222,581−597(1991)あるいはGriffin et al.,EMBO J.12,725−734(1993)で記載されている方法に従って、多様な系列の抗体(自己抗原を含む。)を単離することができる。自然状態での免疫反応では、抗体遺伝子は高率で突然変異を蓄積する(体細胞高頻度突然変異)。誘発された変化の一部によって高い親和性が得られ、高親和性表面免疫グロブリンをディスプレイするB細胞は優先して複製されてその後の抗原チャレンジの間に分化する。この自然状態での過程を、「チェーンシャッフリング(chain shuffling)」(Marks et al.,Bio/Technol.10,779−783(1992))として知られている手法を採用することによって模擬することができる。この方法では、重鎖及び軽鎖V領域遺伝子を、免疫していない供与者から得たV領域遺伝子の自然発生異体(レパートリー)のレパートリーに順次置換することによって、ファージディスプレイによって得られた「一次」ヒト抗体の親和性を向上させることができる。この手法によって、nM範囲内で親和性を持つ抗体及び抗体フラグメントの産生が可能となる。非常に大きなファージ抗体レパートリーを作製する方法は、Waterhouse et al.,Nucl.Acids Res.21,2265−2266(1993)に記載されている。
【0051】
様々な抗体フラグメント作製の手法が開発されている。従来は完全抗体をタンパク質分解することを介して抗体フラグメントを得ていた(例えばMorimoto et al.,J.Biochem.Biophys.Methods 24:107−117(1992)並びにBrennan et al.,Science 229:81(1985)を参照する。)。しかし現在では、抗体フラグメントは組換え宿主細胞から直接作ることができる。例えばFab’−SHフラグメントはE.coliから直接回収することができ、化学結合してF(ab’)2フラグメントを形成する(Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992))。別の実施例では、F(ab’)2分子構築を促進するためにロイシンジッパー GCN4を用いてF(ab’)2を作る。別の方法によると、FvあるいはFab、F(ab’)2フラグメントは、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。抗体フラグメントを作製するその他の手法は当分野の技術者がよく知るものである。
【0052】
共有結合した2つの抗体から成るヘテロ結合抗体も、本発明の範囲に入る。当該抗体は、例えば、免疫システム細胞を不要細胞へ標的化させるために提唱されており(米国特許第4,676,980号)、またHIV感染に対する治療のために提唱されている(PCT出願公開番号WO 91/00360及びWO 92/200373)。ヘテロ結合抗体は、よく知られている市販されている架橋剤を使用し、あらゆる共有結合架橋法を用いて作ることもできる。
【0053】
モノクローナル抗体の作製に関するより詳細な情報については、Goding,J.W.,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,3rd Edition,Academic Press,Inc.,London,San Diego,1996;Liddell and Weeks:Antibody Technology:A Comprehensive Overview,Bios Scientific Publishers:Oxford,UK,1995;Breitling and Dubel:Recombinant Antibodies,John Wiley & Sons,New York,1999;Phage Display:A Laboratory Mannual,Barbas et al.,editors,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,2001を参照する。
【0054】
(3.標的となる疾患)
IL−17はリウマチ様関節炎(RA)を含む様々な炎症性疾患に関係している。RAの基本的な特徴の一つは、関節周囲の骨の侵食である。骨吸収では破骨細胞が鍵となる役割を果たしているが、破骨細胞が前駆細胞から形成されるメカニズムは完全には理解されていない。最近Kotake et al.,(J.Clin.Invest.103:1345(1999))は、マウス造血細胞と1次骨芽細胞との共培養物において、インターロイキン17(IL−17)が破骨細胞様の細胞の形成を誘導する可能性がみられたことを報告している。このIL−17に誘導される破骨細胞形成は、シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)の選択的阻害剤であるインドメタシンによって抑制されることが示されている。RA患者の滑液には、変形性関節症患者と比較して著しく高濃度のIL−17が含まれることが認められている。さらに免疫染色を用いて、RA患者の滑液膜組織にてIL−1陽性単核細胞が検出されたが、OA患者の組織からは検出されなかった。これらの結果は、RA患者ではIL−17が骨侵食と関節の損傷に寄与している可能性があり、抑制のための標的となり得ることを示唆すると解釈されている。
【0055】
また、ベーチェット病患者でも健康な被験者と比較して、IL−17の血清濃度の著しい上昇がみられる。Hamzaoui et al.,Scand.J.Rheumatol.31(4):205−210(2002)。
【0056】
IL−17濃度の上昇は喘息患者気道内でも見受けられ、これはIL−17がアルファ−ケモカイン等他の炎症誘発性化学伝達物質の放出を通じて炎症反応を増幅している可能性のあることを示唆している。Motel et al.,J.Alleregy Clin.Immunol.108(3):430−438(2001);並びにWong et al.,Clin.Exp.Immunol.125(2):177−183(2001)。
【0057】
IL−17濃度の上昇は、全身性エリテマトーデス患者で報告されている。Wong et al.,Lupus 9(8):589−593(2000)。
【0058】
IL−17は乾癬に関係していると記載されている。Homey et al.,J.Immunol.164(12):6621−6632(2000)。
【0059】
多発性硬化症において血液及びCSF単核細胞で、IL−17mRNAが増加していることが報告されている。Matusevicius et la.,Mult.Scler.5(2):101−104(1999)。
【0060】
これらの報告及び多数の同様の報告に基づくと、IL−23がIL−17を産生する作用を抑制してその結果IL−17濃度を減少させるIL−23アンタゴニストは、様々な(慢性)炎症状態並びに炎症疾患の治療の有益な候補である。当該状態並びに疾患には、慢性炎症、自己免疫糖尿病、リウマチ様関節炎(RA)、リウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎並びに他の関節炎状態、多発性硬化症(MS)、喘息、全身性紅斑性狼瘡(systhemic lupus erythrematosus)、成人呼吸窮迫症候群、ベーチェット病、乾癬、慢性肺炎症疾患、移植片対宿主反応、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患(IBD)、アルツハイマー病、発熱が含まれるがこれらに限定されない。
【0061】
IL−17は、結核等ある種の感染疾患に対する防御反応が生じる際に重要な役割を果たしていることが知られており、IFN−γ生成を促して細胞性免疫反応を誘導することがわかっている。従って作動性抗体を含めIL−23アゴニストは、Mycobacterium tuberculosisによって引き起こされる結核等様々な感染症に対する細胞性免疫反応の誘導において有用性が認められており、毎年世界中で300万人以上の人々が死亡する原因となっているこうした感染性疾患を治療するための有望な候補薬である。
【0062】
(4.薬学的組成物)
IL−23あるいはIL−23受容体に特異的に結合する抗体は、この明細の前記で記載されているスクリーニングアッセイによって同定された他のIL−23アンタゴニスト分子あるいはアゴニスト分子も同様に、特に炎症性疾患あるいは細胞性免疫反応の誘導による疾患等様々な疾患の治療のために薬学的組成物の形態で投与することができる。
【0063】
抗体フラグメントを使用する場合は、標的タンパク質の結合部位に特異的に結合する最小の大きさの阻害性フラグメントが望ましい。例えば、抗体の可変領域シーケンスに基づいて、標的タンパク質のシーケンスに結合する性質を有するペプチド分子を立案することができる。当該ペプチドは化学的に合成するか、もしくは組換えDNA法によって合成することができ、もしくは両方の方法で合成することができる。Marasco st al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7889−7893(1993)を参照する。
【0064】
活性成分は、コロイド剤輸送系(例えばリポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル)もしくはマイクロエマルジョン中で、例えばコアセルベーション法あるいは界面重合によって調製したマイクロカプセルに取り入れることもできる。例えば各々ヒドロキシメチルセルロース、あるいはゼラチンマイクロカプセル並びにポリ(メチルメタシレート)マイクロカプセルがある。当該手法はRemington’s Pharmaceutial Sciences(上記)に記載されている。
【0065】
インビボ投与に使用する製剤は滅菌されていなければならない。これは滅菌濾過メンブレンを用いた濾過によって容易に行われる。
【0066】
持続放出性製剤を調整することもできる。持続放出性製剤の適当な例には、抗体を内包する、疎水性固形ポリマーの半透過性基質が含まれ、この基質は、例えばフィルム、マイクロカプセル等成形物の形態をとる。持続放出性製剤の例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(メタクリ酸2ヒドロキシエチル)あるいはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(U.S.Pat.No.3,773,919)、L−グルタミン酸とγL−グルタミン酸エステルとの共重合物、非分解性酢酸エチレンビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸とグリコール酸との共重合体と酢酸ロイプロライドから構成される注入用小球形)等の分解性酪酸グリコール酸共重合体、ポリD(−)3ヒドロキシ酪酸が含まれる。酢酸エチレンビニル並びに乳酸−グリコール酸等のポリマーは100日間に渡って分子を放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短い期間しかタンパク質を放出することができない。カプセルに入れた抗体が長期間体内に留まる場合、水分と37℃という温度にさらされる結果変成したり、凝集したりすることもある。この結果生物学的活性が失われ、免疫原性が変性する可能性がある。関係するメカニズムに基づいた、安定化のための合理的な方法を考案することができる。例えばその凝集メカニズムがチオ二硫化物の置換による分子間S−S結合の形成によるものであると判明したならば、SH基の修飾、並びに酸性溶液の凍結乾燥、水分量の制御、適切な添加剤の使用、特別なポリマー基質組成の開発によって安定化を達成することができる。
【0067】
またこの処方物には、治療の対象となる特定の適用のために必要な活性化合物を一つ以上含むことができ、望ましくは互いに有害作用を与えない相補的活性を持つ化合物である。当該分子は意図する目的に対して効果が得られる量で組み合わされた形で適切に存在するか、もしくは独立して処方されて、同時にあるいはあらゆる順序で順次投与される。
【0068】
例えば、本発明のIL−23アンタゴニストを抗炎症剤並びに、標的とする疾患並びに状態の治療のため目下使用されている他の活性化合物と併用して投与することができる。当該化合物にはコルチコステロイド、アスピリンやイブプロフェン並びに例えばCelebrex(登録商標)及びVioxx(登録商標)等のCOX−2、等の抑制剤等の非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、メトトレキセートやレフルノミド、スルファサラジン、アザチオプリン、シクロスポリン、ヒドロキシクロロキン、Dペニシラミン等の疾患変性性抗リウマチ薬剤(DMARD)、TNF並びにIL−1抑制剤等の生体応答調節剤(BRM)が含まれる。
【0069】
以下の例は説明の目的のためにのみ提供するものであって、あらゆる面で、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0070】
この明細書で記載されている全ての特許並びに参考文献は、参考のためこの明細にその全体を添付する。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
インターロイキン23(IL−23)は、インターロイキン17(IL−17)の産生を特徴とする、第三のCD4 T細胞活性化状態を促進する。
【0072】
活性化T細胞によって産生することは明らかであるが、従来の報告ではTh1並びにTh2偏向サイトカインプロファイルの例証内でIL−17の明確な分類は提供されていない。この実施例にて記載される最初の実験の目的は、IL−17がTh1あるいはTh2応答に伴うシグナルとは異なるシグナルに応答して発現している可能性を調べることであった。
【0073】
(実験方法)
細胞培養 − 脾臓単個細胞懸濁液はC57/BL−6マウスから調製し、密度勾配遠心によって懸濁脾細胞から単核細胞を単離した。2x106細胞/mlにIL−2を添加し、様々な刺激の有る無しで培養した(図の説明で示している。)。その後に細胞を回収してELISA(R&D Systems,Minneapolis,MN)を用いてIL−17について分析した。マクロファージ(脾細胞懸濁液から接着性集団として得た)をrGM−CSF(2ng/ml)とrIL−4(1000 units/ml)で4日間処理し、洗浄してLPS(0.5μg/ml)で再活性化することによってマクロファージから樹状細胞を得た。マウス脾細胞の単個細胞懸濁液から単離した単核細胞をCyC−CD4 + PE−CD44あるいはCyC−CD4 + PE−CD62Lで染色し、記憶表現型についてはCD44高/CD62L低、未刺激表現型についてはCD44低/CD62L高であるCD4+細胞を選別することによって、記憶T細胞及び未刺激T細胞を分離した。
【0074】
インビトロT細胞分化誘導 − CD4+細胞は、抗CD4磁気ビーズ(Miltenyi Biotech)を使用して、野生型C57/BL6マウスの脾臓から精製した。精製したT細胞(2 x 106細胞/ml)を5μg/mlの抗CD3抗体及び1 g/mlの抗CD28抗体をコートしたプレート上に置き、3日間活性化した。培養物にIL−2を添加してIL−12(20 mM)+ 抗IL−4(0.5μg/ml)(Th1分化用)もしくはIL−23(10 nM)(IL−17産生用)で処理した。初回活性化後に細胞培養物を十分に洗浄し、抗CD3(1μg/ml)でさらに24時間刺激した。その後、ELISAを使用して分泌された様々なサイトカインについて細胞上清を分析した。
【0075】
IL−12p40抗体によるIL−17産生抑制 − 抗IL−12抗体(R&D Systems,cat.no.AF−419−NA)もしくは無関係のコントロール抗体(抗FGF−8G(R&D Systems,cat.no.AF−423−NA))にIL−23(100ng/ml)、あるいはLPS刺激済み樹状細胞(10% v/v)の馴化培地を加えて37℃で1時間プレインキュベートした。次にマウス脾臓から単離した単核細胞(2 x 106細胞/ml)を加えてさらに5〜6日間培養した。上清を集めIL−17濃度をELISAを用いて測定した。
【0076】
IL−23の精製−マウスIL−23 − IL−23構成成分を、ヒト胚性腎細胞(細胞数293)内でC末端His標識p19とFLAG0標識p40とを共発現させることによって作製し、分泌されたタンパク質をニッケルアフィニティ樹脂によって精製した。内毒素濃度は1μg当たり0.2エンドトキシンユニットを下回っており、検出できる濃度ではなかった。
【0077】
(結果)
最初に、様々な微生物産生物のIL−17産生促進作用を調べた。スピロヘータB.Burgdorferiが引き起こすライム病患者由来の微生物性リポペプチドに応答してIL−17が上昇することが、Infante−Duarte et al.,J Immuno 165,6107(2000)によって認められている。LPS(グラム陰性細菌)あるいはLTA(グラム陽性細菌)、LBP(細菌性リポペプチド)を含む様々な微生物性ペプチドを加えた脾細胞培養物で、IL−17が産生された(図1)。精製T細胞単独、あるいは精製マクロファージ自体はIL−17を産生しなかった。プレート結合抗CD3を用いて受容体架橋形成をした精製T細胞、及び活性化マクロファージあるいは活性化樹状細胞の上清で処理した精製T細胞ではIL−17の産生が上昇した。このことは、T細胞に作用してIL−17の産生を促進する未同定の因子を、これらの細胞が放出していることを示唆している。
【0078】
このIL−17促進作用に関係していると考えられる候補分子の発現をプロファイルしたところ、リアルタイムRT−PCRを用いて、L−23の構成成分であるp19及びp40のmRNA発現量(B.Oppmann et al.,Immunity 13,715(2000))が100〜1000倍増加することが活性化樹状細胞で観察された(データは示していない)。つまり、IL−23の効果が確認された。
【0079】
マウスIL−23構成成分は、ヒト胚性腎細胞(細胞数293)中でC末端His標識p19とFlag標識p40と共発現させて作製し、分泌されたタンパク質をニッケルアフィニティ樹脂を使用して精製した。内毒素は0.2 EU/μg以下であり、検出されなかった。培養脾細胞にIL−2(100U/ml)とConA(2.5μg/ml)を加え、Th1誘導条件(IL−12 + 抗IL−4)下、あるいはTh2誘導条件(IL−4 + 抗IFN−γ)下、あるいは精製IL−23(100ng/ml)存在下で3〜4日間培養した。その後培養物を洗浄し、ConAでさらに24時間再刺激した。様々なサイトカイン濃度をELISAを使用して測定した。ELISAの標準曲線範囲の最低稀釈に満たない濃度は、「検出不能(N.D.)」と記録した。以下は、別々に実施した3回の実験結果の典型例である。
【0080】
IL−12刺激Th1誘導条件下で培養した脾細胞によるIL−17産生は明確なものではなかった。一方Th2誘導条件下では、コントロールと比較してIL−17の増加はなかった。結果は以下にある表1に示す。
【0081】
【表1】
IL−23を加えた培養物では、投与量に応じて高濃度のIL−17産生がみられた(図2)。またIL−23では、Th1誘導条件下で観察されたものよりも高い濃度のGM−CSFがみられた。対照的に、IFN−γ濃度は、Th1誘導条件下で観察されたものよりも著しく低かった。TNF−α濃度はTh1条件と同程度であった。IL−12p40単独ではIL−17産生がみられなかった(データは示していない。)。IL−23はIL−17mRNA濃度の上昇を促進した(図2B)。IL−17mRNA濃度はIL−23を暴露した6時間のあいだに数百倍増加し、IL−23が存在し続けると高い濃度が維持された。この効果は抗IL−17抗体の存在によって抑制されなかった。これは、IL−17自体はこのプロセスに関与していないことを示唆している(データは示していない。)。さらに、最近IL−17群の一員と同定されたIL−17FのmRNAも、IL−23に応答して上方制御されたことが認められた(図2C)。
【0082】
IL−23は、記憶T細胞の増殖を促進するが未刺激T細胞の増殖は促進しないことが報告されている(上記D.M.Frucht)。よって、未刺激T細胞と記憶T細胞とを比較して、IL−23のIL−17産生に対する影響を調べた。蛍光発色セルソーター(FACS)を使用して脾細胞から精製CD4+T細胞を単離した。記憶細胞集団をCD4+CD44高もしくはCD4+CD62L低で選別し、未刺激細胞集団をCD4+CD44低もしくはCD4+CD62L高で選別した。図3にみられるように、IL−23は記憶細胞集団(CD44高とCD62L低)でのみIL−17産生を刺激し、未刺激細胞(CD44低とCD62L高)では刺激しなかった。
【0083】
IL−23が介在するIL−17産生は、IL−23と共通するp40と相互作用する、IL−12の中和抗体の存在によって完全に遮断された(図4A左側)。無関係の抗体存在下でIL−17産生が変化しなかったことから、この効果は抗体提示細胞上のFc受容体が連結したことが原因ではない。また、この抗体は、LPS活性化樹状細胞の馴化培地に応答して観察されるIL−17の産生を50%以上抑制した(図4A右側)。IL−12p40欠損マウス(系:B6.129S1−IL12btmlJm)の培養脾細胞で、野生型マウスあるいはIL−12p35欠損マウス(系:B6.129S1−IL12atmlJm)と比較して、ConA刺激に応答するIL−17産生の著しい減少が見られた(図4B)。但し、全くなくなったわけではない。
【0084】
IL−17産生におけるIL−12の役割を調べるために、漸増する濃度(0.001〜1 mM)のマウスIL−12をIL−23(1 nM)を含む培養物に加えた。図5Aで示したように、IL−12は投与量に応じてIL−17濃度を減少させた。
【0085】
さらに、IL−12受容体特異性成分である(A.O.Chua,V.L.Wilkinson,D.H.Presky,U.Gubler,J Immunol 155.4286(1995))IL−12受容体ベータ鎖2(IL−12Rβ2)(Wu,et al.,J Immunol 165,6221(2000))を欠損するマウスの脾細胞を、精製したIL−23で処理した。IL−12Rβ2−/−マウスの脾細胞はIL−23刺激に応答し、IFN−γ濃度に影響を与えることなく、刺激を与えていないコントロールに比べてIL−17産生を増加させた。驚くべきことに、これらのマウスのバックグラウンドL−17濃度は野生型マウスの10倍を超えており、これはIL−23が誘導するIL−17産生が、IL−12によって負方向に制御されている可能性のあることを示唆している。しかしながら、IL−12Rβ2ノックアウトマウスとは対照的に、IL−23p35ノックアウトマウス由来の培養脾細胞では、IL−17の上昇は確認されなかった。この違いが生じた理由は不明であるが、p35欠損状態でIL−12p40の機能が変性していることが関係している、もしくは遺伝的バックグラウンドあるいは病原体暴露の違いによるとも考えられる。
【0086】
(考察)
まとめると、これらのデータはエフェクターサイトカインとしてIL−17を発現する、第三のT細胞活性化状態の促進におけるIL−23の役割を示唆している。Th1及びTh2系は体液性免疫反応に対して細胞性免疫を促進するものとして記載されている。これらの反応によって、それぞれ細胞内外の病原体に対する重要な防御が提供され、これらの反応のうちの一方でも欠損すると特定の病原体に対する感染性が上昇する。対照的にIL−23は、本質的に先天性免疫反応の媒介体として機能すると考えられている細胞に大きく依存することを特徴とする病原体に対する適応免疫反応を促進する。IL−17はこの反応の主要なエフェクターサイトカインとして、ケモカイン産生を誘導して単球及び好中球のより迅速な動員を促進することができる。さらに、IL−23に応答して高濃度のGM−CSFが観察されたことは、骨髄細胞が増産されたことを支持する。これはさらにIL−17刺激間質細胞からG−CSFが産生することによって増強される。しかしながら、IL−17がIL−17によるICAM誘導を促進し、その結果続いて起こるT細胞応答の重要な共同誘導を提供することがわかっていることから、この適応反応の特性は骨髄系反応の食細胞に排他的に依存するものではない。
【0087】
近年いくつかの研究によって、p35欠損マウスとp40欠損マウスとの間の著しい差異が指摘されている(Decken et al.,Infect Immun.66:4994−5000(2002);Cooper et al.,J.Immunol.168:1322−1327(2002);Elkins et al.,Infection & Immunity 70:1936−1948;Holscher et al.,J.Immunol.167:6957−6966(2001))。これらの研究は、様々なモデル生物体内で免疫が介在する異物排除において、一般的にp40の欠損がp35欠損よりも有害であることがみられた点で共通している。
【0088】
多数の重篤な炎症性疾患にIL−17の発現が伴うことは、当該疾患の治療においてIL−23アンタゴニストが有望な候補薬と成りうることを示唆している。
【0089】
(実施例2)
(インターロイキン23(IL−23)欠損マウス)
インビボでIL−23とIL−17の関係をさらに調べるため、IL−23欠損マウス表現型をIL−17欠損マウスの表現型と比較した。
【0090】
(実験方法)
マウス:全てのマウスは病原体の存在しない状態で特別に飼育した。IL−12p40−/−マウスはJackson laboratory(Bar Harbor,MA)から、C57BL/6マウスはCharles River laboratories(San Diego,CA)から入手した。
【0091】
試薬:他に記載のない限り、試薬は以下の業者から購入した:抗体及びELISA試薬はBD Pharmingen(San Diego,CA)、サイトカインはR&D systems(Minneapolis,MN)、TNP結合抗原はBiosearch Technologies(Novato,CA)、組織培養試薬はInvitrogen(Carlsbad,CA)、から入手した。
【0092】
IL23p19欠損マウスの作製:マウスIL23p19遺伝子座を取り囲むゲノムDNAを、Genome Systems(Incyte Genomics,Palo Aloto,CA)のゲノムBACライブラリーのクローン198a3から単離した。IL23p19コーディング領域全体をEGFPレポーター遺伝子で置換するために立案されたターゲティングベクターを、標準的な分子クローニング技術を使用して以下のDNA断片から構築した:チミジンキナーゼ選択カセット;各々が遠心端並びに近位端上にある内生SacII及びBglII部位によって限定される、5403ベースペアから成る5’相同アーム;BamHI(5’末端)及びAflIII(3’末端)を用いてpEGFP−1(BD Clontech,Palo Alto,CA)から切除したEGFP発現カセット;PGK−neo耐性カセット;近位端の内生XhoI部位と遠心端の5’−GCTTGGTGGCCCACCTATGAT−3’(配列番号1)プライマーとによって限定される1203 bpショートアーム(図6A)。この構築物を電気穿孔法によって129/SvEv胚性幹(ES)細胞に導入すると、600のクローンのうち9つで相同組換えが発生し、G418及びガンシクロビル(Gancyclovir)で選抜した。遺伝子座ターゲティングの正確さを検証するために、ES細胞とマウスのゲノムDNAをサザンブロットによって分析した。BamHIで切断し、次いでプローブ1(オリゴヌクレオチド、5’−AGACCCTCAAAGTTCATGAC−3’(センス)(配列番号2)と5’−CTGACGGCGTTTCTCTACC−3’(アンチセンス)(配列番号3)を用いたPCRによって得られた831 bpゲノムDNAフラグメント)でメンブレンをハイブリダイゼーションし、野生型対立遺伝子に対する7027 bpのフラグメント及び正確にターゲッティングされた変異型対立遺伝子に対する11788 bpのフラグメントを得た。同様に、ゲノムDNAをEcoRIで切断し、次いでプローブ2(オリゴヌクレオチド、5’−TTTTGCCAGTGGGATACACC−3’(センス)(配列番号4)と5’−AACTGCTGGGGCTGTTACAC−3’(アンチセンス)(配列番号5)を用いたPCRによって得られた390 bpゲノムDNAフラグメント)でメンブレンをハイブリダイゼーションし、野生型対立遺伝子に対する9197 bpのフラグメント及び正確にターゲッティングされた変異型対立遺伝子に対する6211 bpのフラグメントを得た。2種のES細胞クローン(1c5並びに3h6)を未分化胚芽細胞に注入し、生殖細胞系に変異型対立遺伝子を移入させたキメラ動物を得た。日常的に行われる遺伝子型判定のため、我々は一般的なアンチセンスプライマー(5’−GCCTGGGCTCACTTTTTCTG−3’)(配列番号6)及び野生型特異的センスプライマー(5’−GCGTGAAGGGCAAGGACACC−3’)(配列番号7)、ノックアウト特異的センスプライマー(5’−AGGGGGAGGATTGGGAAGAC−3’)(配列番号8)を使用するPCRを基本とする方法を用いた。この3つ組のプライマーは野生型対立遺伝子の210 bpフラグメントと変異型対立遺伝子の289 bpフラグメントとを増幅する。PCRはRobocycler(Stratagene,La Jolla,CA)で実行し、以下の条件を用いた:94℃60秒で1サイクル、94℃30秒、58℃30秒、72℃60秒で35サイクル、72℃7秒で1サイクル。
【0093】
血液細胞サブ集団のFACS分析:脾臓及び胸腺、リンパ節を6〜8週のマウスから分離し、標準方法によって単個細胞懸濁液を調製した。末梢血液を心臓穿刺によって得、EDTAで処理して凝固を防いだ。赤血球はACK溶解緩衝液(Biosource,Camarillo,CA)を用いて溶解した。全細胞を、30分間氷上にて、2%不活性化仔ウシ心臓血清−ハンクス溶液(HBSS)でインキュベートした。次に、フィコエリスリンあるいはビオチン、Cychrome(TM)と結合させた様々な抗体を、100万細胞当たり1μg加えた同じ緩衝液で細胞を染色した。ビオチン化抗体を使用したものには、検出のためストレプトアビジン結合PE−TR複合体(Caltag,Burlingame,CA)を使用した。同じ緩衝液で2回の洗浄後、Epix−XL フローサイトメトリーシステム(Beckman Coulter Inc.,Fullerton,CA)を使用して蛍光を測定した。
【0094】
アロタイプT細胞の刺激:CD4とCD62Lの二重陽性T細胞を、ツーステップ単離法によって6〜8週のbalb/cマウス脾臓から単離した。最初に、陰性磁気細胞分離(Miltenyi,Auburn,CA)によって他の細胞種からT細胞を分離した。次にこれらの細胞をCD4とCD62Lの抗体で標識し、MoFoソーター(DakoCytomation,Fort Collins,CO)でFACS選別した。共にC57BL/6バックグラウンドにある、野生型あるいはIL−23p19−/−マウスの樹状細胞も、ツーステップ単離法によって単離した。磁気細胞分離(Militernyi,Auburn,CA)によってCD11c陽性脾細胞を陽性選別し、次いでCD11c並びにMHCクラスII、CD8に対する抗体で標識した。次に、CD11c+/MHC−II+/CD8−細胞をMoFoソーターを使用して再びFACSで選別した。実験に使用した細胞集団は全て98%以上の精製度であった。アロ刺激反応を除去するため、104の樹状細胞と105のT細胞を、それぞれペニシリン−ストレプトマイシン及び10%不活性化仔ウシ心臓血清(Hyclone,Loga,UT)を添加した計200μlのIMDMで培養した。一部の実験では、100ng/mlの細菌性リポペプチドを加えて、樹上細胞によるサイトカイン産生を誘導した。培養5日後に、ELISAによるサイトカイン測定のために120μlの上清を取り除き、代わりに各ウェル当たり1μCiの3H−チミジンを含む新たな培地を加えた。16時間後にトップカウントシンチレーションカウンターを製造者による使用説明書に従って使用し(Packard Instruments,Meriden,CT)、チミジンの取り込みを測定した。
【0095】
インビボT細胞分化:1グループにつき4個体のオスと4個体のめすマウスを免疫した。30μlのCFA(BD Biosceiences,San Diego,CA)乳剤とPBSとの1:1溶液に加えた、75μgのキーホールリンペットヘモシニアン(KLH)(Sigma,St.Louis,MO)をマウス左後方足に注入した。5日後に流入領域鼠径リンパ節及び膝窩リンパ節を摘出し、ペニシリン−ストレプトマイシン及び10%不活性化仔ウシ心臓血清(Hyclone,Logan,UT)と25μg/mlのKLHを加えたIMDMで再刺激した。増殖分析のため、96ウェルプレートに、5x105の細胞を200μlずつ3通りに播種し、培養期間の最後の18時間には各ウェル当たり1μCiの3H−チミジンを加えて112時間増殖させた。トップカウントシンチレーションカウンターを製造者による使用説明書に従って使用し(Packard Instruments,Meriden,CT)、チミジンの取り込みを測定した。サイトカイン分泌については、2.5x106個の細胞を含む1mlを48ウェルプレートで培養し、72時間後に上清を集めた。サイトカイン分泌はELISAによって判定した。提示しているデータは全部で3回行った実験のうちの一代表例である。
【0096】
遅延型アレルギー反応:200μgのメチル化ウシ血清アルブミン(mBSA)(Sigma,St.Louis,MO)をCFA(BD Biosciences,San Diego,CA)乳剤とPBSとの1:1溶液に加えて計200μlとし、これを一グループ当たり6個体のマウス腹部の3箇所に皮下注射した。免疫後8日目に、20μlの5 mg/ml mBSA−PBS溶液を後ろ足の一つに注射することよってこのマウスをチャレンジし、他方の後ろ足には20μlのPBSを注射した。7つバネ式キャリパーセット(Mitutoyo,City of Industry,CA)を使用して、チャレンジから18、42、66時間後に足甲の腫張を計測した。DTH反応の程度は、抗原を注射した足とPBSを注射した足の足甲厚みの差異から測定した。
【0097】
T細胞依存体液性反応と免疫グロブリン分析:全免疫グロブリン合計濃度を測定するために、各遺伝子型の免疫していないマウスで6〜9週目のオス8個体とメス8個体から血清を得た。全免疫グロブリンアイソタイプの合計濃度をルミネックスビーズ分析(上記Lake Placid,NY)によって測定した。OVA得意的体液性免疫反応の分析のため、各遺伝子型につき7匹のマウス(オス4とメス3)をCFAに加えたOVAで0日目に免疫し、21日目と42日目に不完全フロイントアジュバント(IFA)(Sigma,St.Louis,MO)に加えた同じ抗原でブースター免疫した。血清分析のため、免疫する前と免疫後14日目、28日目、49日目に眼窩後方の出液から血液を得た。OVA特異的免疫グロブリンアイソタイプは、OVAを捕捉剤として、また検出用にアイソタイプ特異的2次抗体を使用して、ELISAによって検出した。ELISAの直線範囲に入るよう、血清サンプルは以下のように稀釈した:IgGは1:3125000、IgG2aは1:25000、IgG2bは1:625000、IgG3及びIgM、IgA、IgEは1:1000。純粋なOVA特異的アイソタイプは市販されていないため、以前の実験でOVA免疫マウスから得た血清の稀釈シリーズを標準として使用した。結果は任意の単位として表し、最後に採取した血液で野生型グループの平均値を100とした。記憶T細胞の体液性免疫反応への寄与を調べるため、遺伝子型ごとに5〜6個体のマウスからなるグループを、0日目にCFAに加えたOVAで免疫し、21日目にIFAに加えたTNP11−OVAでブースター免疫した。血清分析のため、免疫前と免疫後14日目及び28日目に眼窩後方の出液から血液を得た。捕捉剤としてTNP28−BSAを、また検出用にアイソタイプ特異的2次抗体を使用して、ELISAによってTNP特異的免疫グロブリンアイソタイプを検出した。TNP特異的IgG1については、市販されている標準を使用した。TNP特異的IgG2aについては、以前の実験でTNP免疫マウスから得た血清の稀釈シリーズを使用し、結果は上記に記載したとおりに算出した。試料の稀釈率は、IgG1用では1:31250、IgG2a用では1:1250であった。
【0098】
T細胞非依存体液性反応:各遺伝子型につき6個体から成るグループを、PBSに加えた50μgのTNP1−LPSあるいは100μgのTNP20−AECM−Ficollで腹膜内に免疫した。10日後に血清を採取し、捕捉剤としてTNP28−BSAを、また検出用にIgM特異的2次抗体を使用して、TNP特異的IgMをELISAによって分析した。TNP特異的IgM抗体はELISAの標準物として使用した。試料の稀釈率は、Ficoll用では1:1280、LPS用では1:5120であった。
【0099】
(結果)
IL−23p19遺伝子欠損:IL−23のインビボ非重複的影響を調べるため、IL−23を欠損するがIL−12を産生する成分を残したマウスを作製した。4つのエキソンから構成される、p19の全コーディング領域を、強化GFP(eGFP)レポーター遺伝子とネオマイシン耐性カセットで置換したターゲティングベクターを構築した(図6)。1c5と3h6の二つの正確にターゲットされたES細胞クローンによって生殖細胞系伝播を行い、変異は、1染色体当たり3つのマーカーを用いたスピードコンジェニック法によってC57BL/6バックグラウンドへ戻し交雑した。この分析に基づき、実験のため、129バックグラウンドからの遺伝的混入が5%未満のマウスを選別した。eGFPの発現パターンは内生p19mRNAの発現パターンに相当した(データは示していない。)。
【0100】
IL−23p19−/−マウスは顕性表現型を持たない。IL−23/IL−12二重欠損となるIL−12p40−/−の表現型から予測されたとおり、IL−23p19−/−動物は顕性表現型を示さず、メンデルの法則に従った頻度で生まれる。組織病理学的な試験上、臓器・器官に異常は見られず、さらに臨床化学的数値並びに血液学的数値の試験でも、野生型とノックアツト型の間に差異は見られなかった。さらに、IL−23p19−/−マウスの体の大きさ並びに体重は標準であり、オスメス共に完全に成熟した。様々な細胞表面のマーカーを用いて胸腺細胞及び脾細胞、末梢血液白血球をフローサイトメトリー分析したところ、野生型マウスとIL−23p19−/−マウスの間に主だった差異は見られなかった(表2)。IL−23は記憶T細胞に作用することが知られているため、各サブグループについて記憶細胞(CD44高/CD62L−)と未刺激細胞(CD62L+)の比を調べたが、野生型マウスとIL−23p19−/−マウスの間に差異は見られなかった。分析全体でこの二つの遺伝子型間で見られた唯一の注目すべき差異は、樹状細胞集団がわずかにCD8+表現型へ傾いている点にある。この影響は小さなものであるが、データが厳しいものであるために統計的に有意となり、IL−23が抗原提示細胞に影響を与えているという最近の観察結果に矛盾しないと考えられる。まとめると、IL−23は通常の発生に必要とされるものではないもようであり、eGFPカセットの導入によって実験に用いたどの細胞も影響を受けない。
【0101】
【表2】
IL−23p19−/−マウスの体液性免疫反応。体液性免疫反応の発生におけるIL−23の役割を調べるため、最初に、各遺伝子型16個体のマウスの血清で、免疫グロブリンの全アイソタイプの合計濃度を測定した。野生型マウスとIL−23p19−/−マウスの間に統計的に有意な差異は見られず(図7)、このことはIL−23が通常の免疫グロブリン濃度の維持に決定的に必要なものではないことを示している。次に我々は、佐剤に加えて導入されるタンパク質抗原に対するT細胞依存性体液性免疫反応の発生に、IL−23が関係しているか否かを調べた。この目的のため、1グループ7個体のマウスを其々卵白アルブミン(OVA)で免疫した。免疫前血清のOVA特異的免疫グロブリンアイソタイプを分析し(全て陰性、データは示していない。)、2回の免疫後にその都度分析を行った(図8)。初回免疫後、OVA特異的IgG1及びIgG2b、IgG3、IgEについては有意な差はどのグループ間にもなかった。しかし、IL−23p19−/−及びIL−12p40−/−マウスで、初回免疫後OVA特異的IgG2a及びIgAの有意な減少が観察された。予測のとおり、2度目の免疫後には全アイソタイプの濃度が劇的に増加した。この時点でIL−23p19−/−及びIL−12p40−/−の両マウスとも試験したアイソタイプ量は有意に少なかった。これら二つの遺伝子型の差異は通常有意なものではなく、内生IL−12はIL−23欠損状態で体液性免疫反応に主要な役割を果たしてはいないことを示している。
【0102】
体液性免疫反応はB細胞及びT細胞の両方が正しく機能することに依存しているため、我々は次に、どのようなメカニズムによってIL−23がその誘発効果を発揮するのかを試験しようと努めた。IL−23の欠損が直接B細胞の機能に影響を与えているか否かを試験するために、IL−23欠損マウスでT細胞非依存性(TI)抗原に対するB細胞応答を上昇させる能力を調べた。TI−1抗原、トリニトロフェル(TNP)LPSはCD14及びTLR4を介してB細胞の活性化を導き、TI−2抗原、TNP−フィコールはB細胞表面受容体のクラスター形成を介してB細胞を活性化する。IL−23p19−/−マウスは、双方のタイプの抗原に対する通常のB細胞応答を上昇させた(図9)。これはIL−23がT細胞非依存性B細胞応答に関与していないことを示している。さらに、IL−23p19−/−マウス由来のB細胞は、インビトロでLPS並びに抗IgM、抗CD40に反応して普通に増殖し、IL−4に応答する正常なアイソタイプスイッチがみられた(データは示していない。)。B細胞のIL−23刺激は、増殖の増加あるいはアイソタイプスイッチを導くものではなく(データは示していない。)、即ちIL−23は直接B細胞の機能に影響しないと、我々は結論付けた。
【0103】
体液性免疫反応は主に2次免疫の段階で損なわれ、またIL−23p19−/−マウスのB細胞の機能は正常であるもようであるため、抗原特異的ヘルパーT細胞を無意味に再活性化するとこうした表現型が現れるという仮説を立てた。この問題により直接的に対応するため、我々は5〜6個体のマウスのグループを0日目にOVAで免疫し、次いで14日目にTNP接合OVAで2次免疫した。この免疫方法を用いるとOVAに特異的な記憶T細胞が2次免疫によって再活性化されるが、TNPに対して特異性を持つ新規のB細胞群は二度目の免疫時にのみ活性化される。つまり、OVA特異的記憶B細胞小群はTNP特異的な免疫グロブリンの形成に関与しない。再活性化後7日目に、我々は血清中のTNP特異的IgG1及びIgG2aについて試験し、IL−23p19−/−マウスではどちらのアイソタイプも著しく減少していることがわかった(図10A,B)。さらにこの結果は、T細胞依存的B細胞応答におけるIL−23の重要性を強調するものである。
【0104】
IL−23p19−/−マウスにおける遅延型アレルギー反応(DTH) IL−23p19−/−マウスにおける記憶CD4+細胞の機能の詳細を調べるため、このマウスのDTH反応を上昇させる性質について評価した。DTH反応はT細胞に強く依存しており、IL−12p40−/−マウスでこの反応は欠損し、IL−12p35欠損マウスでは正常のようである。このことはDTH反応がIL−23によって仲介されている可能性のあることを示唆している。この問題に対応するため、野生型及びIL−23p19−/−、IL−12p40−/−マウス6個体のグループを、完全フロイントアジュバント(CFA)に加えたメチル化BSA(mBSA)で感作し、7日後にmBSAを足に注射してDTH反応を誘発した。非特異的な腫張のためのコントロールとして、感作していない野生型マウスのグループにも免疫チャレンジした。チャレンジから18、42、66時間後に特異的な足甲腫張を測定したところ、IL−12p40−/−とL−23p19−/−の双方とも同程度に、野生型マウスに比べて抑制されていた(図11)。反応曲線もIL−12p40−/−とIL−23p19−/−で類似しており、42時間目と66時間目で腫張は非常に抑制されていたが、18時間目では抑制されていなかった。つまり、IL−23はDTH反応の本質的な仲介物であり、IL−23が欠損していると記憶CD4+T細胞による反応効果が無効となる。
【0105】
IL−23p19−/−樹状細胞がT細胞を刺激する能力。IL−23p19−/−マウスにみられる異常がIL−23欠損抗原提示細胞による有効性のないT細胞初回抗原刺激によるものである可能性を除外するため、我々は次にIL−23p19−/−DCがbalb/cマウスの脾臓から単離したアロタイプ未刺激CD4+T細胞を刺激する能力を調べた。DCがない状態で、これらのT細胞は増殖せず、検出できる量のサイトカインの分泌もなかった(図12A)。それぞれの遺伝子型にDCを加えると、両遺伝子型とも強健に増殖し、IL−17を産生した。これまでにIL−23がIL−17の強力な誘導物質であることを示したので、我々は次に、強力なトール様受容体2アゴニストでありIL−23産生誘導物質である細菌性リポペプチドを用いてDCによるIL−23産生を誘導した。これらの条件下でwtDCはT細胞によるIL−17産生を強力に誘導し(図12A下)、IL−23p19−/−DCで刺激されたT細胞によるIL−17産生量は著しく少なかった。これらの実験結果をより生理学的な条件下で確認するために、我々は次に8個体のマウスからなるグループを完全フロイントアジュバント(CFA)に加えたキーホール リンペットヘモシニアン(KLH)で免疫し、インビボでT細胞反応を誘発させた。5日後に流入領域リンパ節(LNC)を採取してインビトロにてKLHで再刺激した。これもまた、IL−23p19−/−マウスから採取したLNCによるIL−17産生量は著しく少ないことが認められた(図12B下)。LNC増殖は双方の遺伝子型で同程度であり(図12B下)、これはwtマウスとIL−23p19−/−マウスの双方とも抗原に対する強健なT細胞応答を上昇させていることを示している。要するに、IL−23欠損によって樹状細胞の誘発的能力が著しく損なわれているのではなく、T細胞によるIL−17産生が減衰している。
【0106】
(考察)
IL−23p19欠損マウスを用いて、IL−23のインビボでの非重複性機能を分析し、IL−23の欠損が、体液性免疫反応やDTH反応等のT細胞依存的免疫反応を減衰することを見出した。
【0107】
体液性免疫反応の著しい減衰がIL−23p19−/−マウスでみられ、全ての免疫グロブリンアイソタイプに影響を与えていた。同時にIL−12p40−/−マウスの反応も、同程度かあるいはやや高い程度に抑制された。これらの結果はIL−23が有効な体液性免疫反応に絶対的に必要であるという結論を支持するものであるが、一方、IL−12p35−/−マウスを使用してIL−12が存在しない状態での正常な体液反応にIL−23が必要十分なものであるか否かは、今後判定すべきで点である。
【0108】
まとめると、IL−23p19−/−マウスでは、DHTの抑制及び体液性免疫反応で生じる、インビボT細胞応答が減衰しており、表現型的にはIL−17欠損マウスと類似する。我々の結果は、IL−23もしくはそのアゴニストの臨床的投与が、免疫処方において、並びに免疫無防備状態にある患者において、T細胞機能を支えるのに有益である可能性を示している。
【0109】
本発明は具体的な実施例と考える参考文献と共に記載されているが、本発明は当該実施例に限定されないことを理解すべきである。反対に本発明は、附属する請求事項の本質と範囲の内に含まれる多様な変法と類似法を包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】種々の細胞におけるIL−17の産生(A):C57/BL−6マウスから脾臓の単個細胞懸濁液を調製し、密度勾配遠心によって懸濁脾細胞から単核細胞を分離した。2x106細胞/mlの細胞懸濁液を微生物由来リポペプチドLBP(100ng/ml)もしくはLPS(100ng/ml)、LTA(100ng/ml)の有る無しで3日間培養した。その後細胞を回収し、ELISA(酵素免疫吸着法)を用いてIL−17の分析を行った。(B):CD90標識細胞をFACSで陽性選別することで、マウス脾細胞から精製したT細胞を得た。この細胞をプレート結合抗CD3抗体もしくは活性化樹状細胞(LPSで処理)の上清の有る無しで3日間培養し(1x106細胞/ml)、培養物上清を回収してELISAキットを用いてIL−17濃度を測定した。マクロファージをrmGM−CSF(2ng/ml)とrmIL−4(1000U/ml)で4日間処理し、洗浄してLPS(0.5μg/ml)で再活性化させることによって、樹状細胞をマクロファージ(脾細胞懸濁液から接着細胞集団として得た。)から得た。3回の独立した実験による代表的な結果を示す。
【図2A】IL−23がIL−17の産生を刺激する。A.脾細胞から単離した単核細胞を100U/mlの組換えIL−2と共に培養し(2x106細胞/ml)、様々な濃度のIL−23(0.1〜1000ng/ml)の有る無しで6日間培養した。培養物上清に集まったIL−17濃度をELISAを用いて測定した。
【図2B】IL−23がIL−17の産生を刺激する。B.IL−23処理によるIL−17mRNA量の変化を定量RT−PCRによって測定した。PCR反応のCt(サイクル閾値)の相対的変化をプロットした。各サンプルのデータを各サンプル中に存在するグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素mRNA量に対して標準化し、次に刺激前状態の時間ゼロに存在するIL−17mRNA量に対して再びサンプル間で標準化した。各Ct値は1回のPCRサイクルに対応しているので、1CtはmRNA量2倍の変化にほぼ等しい。5Ct変化量および10Ct変化量に対するmRNA倍数のおよその差を括弧内に記している。実験は4個体のマウス由来の脾細胞を用いて行い、個々のデータポイントをxで表し、平均Ct変化量を棒グラフで示した。
【図2C】IL−23がIL−17の産生を刺激する。C.IL−23処理に応答した、IL−17群に属するIL−17FのmRNA量の変化を図2Bの説明のように定量RT−PCRによって測定した。
【図3】IL−23は記憶T細胞に作用してIL−17産生を誘導する。マウス脾細胞の単個細胞懸濁液から単離した単核細胞を(a)CyC−CD4 + PE−CD44もしくは(b)CyC−CD4 + PE−CD62Lで染色し、記憶表現型についてCD44高/CD62L低、あるいは未刺激表現型についてCD44低/CD62高であるCD4+細胞を選別した。選別した細胞は100U/mlの組換えIL−2を加えて、IL−23並びにプレート結合抗CD3(5μg/ml)、抗CD28(1μg/ml)の有る無しで5日間培養して洗浄し、抗CD3抗体でさらに24時間再刺激した。上清を集め、ELISAを用いてL−17濃度を測定した。
【図4A】IL12p40抗体はIL−23依存的IL−17産生を阻害する:(A)漸増する濃度のp40抗体もしくはアイソタイプが一致するが無関係のコントロール抗体にIL−23(100ng/ml)を加えて37℃で1時間、プレインキュベートした。次にマウス脾細胞から単離した単核細胞(2x106細胞/ml)を加え、組換えIL−2の有る無しでさらに5〜6日間インキュベートした。上清を集め、ELISAを用いてL−17濃度を測定した(左側)。最適濃度のIL−12p40抗体もしくはアイソタイプが一致するが無関係のコントロール抗体は、LPSで刺激した樹状細胞(10% v/v)の馴化培地を加えて37℃で1時間、プレインキュベートし、次にマウス脾臓から単離した単核細胞を加えてIL−2存在下でさらに5日間インキュベートした。上清を集め、ELISAを用いてL−17濃度を測定した(右側)。
【図4B】IL12p40抗体はIL−23依存的IL−17産生を阻害する:(B)野生型マウス(C57/BL6)もしくはIL−12の一構成成分を欠いたマウス[例えばIL12a−/−(p35ノックアウト)あるいはIL12b−/−(p40ノックアウト)]の脾細胞から単離した単核細胞を、ConA存在下で3日間培養し、上清のIL−17濃度をELISAを用いて測定した。
【図5A】IL−17産生に対するIL−12の影響:(A)脾細胞培養物から単離した単核細胞を、精製したIL−23(1 nM)並びに表示濃度のIL−12存在下で5日間培養し、次に洗浄してConAでさらに24時間刺激した。細胞上清のIL−17濃度をELISAキットを用いて測定した。
【図5B】IL−17産生に対するIL−12の影響:(B)野生型もしくはIL−12Rβ2欠乏マウス(IL−12Rβ2−/−ko)由来の脾細胞培養物から単離した単核細胞を、精製したIL−23(1 nM)の有る無しで5日間培養し、次に洗浄してConAでさらに24時間刺激した。細胞上清のIL−17濃度及びIFN−γ濃度をELISAキットを用いて測定した。
【図6】IL−23p19遺伝子座のターゲティング。A:天然IL−23p19遺伝子座(上)、ターゲット構造(中)、正確にターゲットされた遺伝子座(下)を、二重斜線で示した部分を除き一定の比例で描いた。白四角部分はコーディングエキソン、あや目四角部分はそのメッセンジャーRNA(mRNA)の5’及び3’非転写部位をコードしているエキソンを表している。p19遺伝子の4つのコーディングエキソンに番号を振った。矢じりのある四角部分はネオマイシン(neo)及びチミジンキナーゼ(tK)選択カセットのプロモーター部位を示している。EGFPとある四角部分は強化緑色蛍光タンパク質レポーター遺伝子の部位を示している。クローニングとアームの分析に用いた制限部位は以下のように表示してある。B、BamHI;S、SacII;E、Eco RI;Bg、Bgl II;X、Xho I。ショートアームを増幅するために使用したアンチセンスプライマーの位置は、文字Pと矢印で示している。Bam HI及びEco RIで切断してできた制限フラグメントのサイズは、野生型(WT)及び変異型(MUT)部位に表示しており、これらのフラグメントをサザンブロットで検出するために用いた2つのプローブの部位を太線で示している。B及びC:各々プローブ1で釣り上げられたBam HI切断物とプローブIIで釣り上げられたEco RI切断物とのサザンブロット分析。DNAは野生型(WT)胚性幹(ES)細胞及びESクローン1c5、野生型マウス、ヘテロ接合性(HET)マウス、ノックアウト(KO)マウスから抽出した。バンドの同定をブロットの左側に示し、分子量は右側に示している。
【図7】IL−23p19−/−マウスの全血清免疫グロブリン濃度。16の野生型マウス(黒丸)及びIL−23p19−/−マウス(白丸)について、免疫グロブリンアイソタイプの血清濃度をアイソタイプ特異的ELISAによって測定した。免疫グロブリンアイソタイプはグラフの下側に表示している。
【図8】L−23p19−/−マウスにおける体液性免疫反応。A−G:初回及び二度目の卵白アルブミン(OVA)による免疫後の、IgG1(A)並びにIgG2a(B)、IgG2b(C)、IgG3(D)、IgE(E)、IgA(F)のOVA特異的濃度。黒丸は野生型マウス、白丸はL−23p19−/−マウス、灰色丸はIL−12p40−/−マウス。任意に使用する単位は方法と材料にて記載のとおりに計算したものである。各グループの平均は、黒横線で示しており、数値はグラフの下側に示している。星印はP値が0.05未満で統計的に有意であることを示す。
【図9】L−23p19−/−マウスにおいてT細胞非依存性B細胞の反応は正常である。TNP−LPS(タイプI、左側)あるいはTNP−Ficoll(タイプII、右側)で免疫したマウスについて、TNP特異的IgMの血清濃度をELISAによって測定した。
【図10】記憶T細胞の機能。野生型(黒丸)及びL−23p19−/−マウス(白丸)を0日目に卵白アルブミンで免疫し、21日目にTNP−OVAでチャレンジした。0日目、14日目、26日目に血清を採取してTNP特異的IgG1(A)及びIgG2a(B)の存在をELISAによって調べた。IgG1については市販されている標準品を使用した。IgG2については、任意の単位を方法と材料にて記載のとおりに計算した。
【図11】遅延型アレルギー(DTH)反応。抗原特異的腫脹は、抗原チャレンジ直前に測定した値に対する足甲厚みの増加率として計算した。結果はグループごとに計6匹のマウスの平均を取り、誤差棒線は標準偏差を表している。抗原のみによって引き起こされる腫脹に対するコントロールとして、感作させなかった別の野生型グループを用いた。内側の星印は、対応するグループと野生型との差異が統計的に有意である(p<0.05)ことを示している。WT、野生型;p19ko、IL−23p19−/−マウス;p40ko、L−12p40−/−マウス。
【図12】一方正常T細胞の初回抗原刺激によって、IL−23p19−/−抗原提示細胞によって産生されるIL−17濃度が減少した。A:野生型(黒柱)あるいはIL−23p19−/−(白柱)樹状細胞との組み合わせにおける、balb/c T細胞のインビトロアロ刺激実験。未刺激CD4+ T細胞とCD8−/CD11c+/MHC−II+細胞をFACSによって選別し、微生物性リポペプチド(BLP)の有る無しで培養した。培養5日後に増殖と上清中のサイトカイン濃度を測定した。APC、抗原提示細胞。B:インビトロT細胞反応。KLHで免疫した野生型(黒柱)あるいはIL−23p19−/−(白柱)マウス由来のリンパ節細胞懸濁液を単離し、インビトロにて25μg/ml KLHで再刺激した。培養5日後に増殖とIL−17濃度を測定した。
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、インターロイキン23(IL−23)のアンタゴニストを用いた、炎症誘発性サイトカインであるインターロイキン17(IL−17)のT細胞による産生の抑制に関係する。さらに本発明は、IL−17濃度の上昇がみられることを特徴とする炎症性疾患の治療において、IL−23アンタゴニストを使用することに関係する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
IL−17はT細胞由来の炎症誘発分子であり、上皮細胞及び内皮細胞、線維芽細胞性細胞を刺激して、IL−6、IL−8、G−CSF、MCP−1等他の炎症性サイトカイン及びケモカインを産出させる(S.Aggarwal,A.L.Gurney,J Leukoc Biol 71,1(2002);Z.Yao et al.,Immunity 3,811(1995);J.Kennedy et al.,J Interferon Cytokine Res 16,611(1996);F.Fossiea et al.,J Exp Med 183,2593(1996);A.Linden,H.Hoshino,M.Laan,Eur Respir J 15,973(2000);X.Y.Cai,C.P.Gommoll,Jr.,L.Justice,S.K.Narula,J.S.Fine,Immunol Lett 62,51(1998);D.V.Jovanovic et al.,J Immunol 160,3513(1998);M.Laan et al.,J Immunol 162,2347(1999))。
【0003】
またIL−17は、TNF−α及びIL−1βを含む他のサイトカインと共同して作用し、さらにケモカインの発現を誘導する(上記Jovanovic et al.,M.Chabaud,F.Fossiez,J.L.Taupin,P.Miossec,J Immunol 161,409(1998))。慢性関節リウマチ−(RA)の滑膜(S.Kotake et al.,J Clin Invest 103,1345(1999)及びM.Chabaud et al.,Arthritis Rheum 42,963(1999))並びに同種異系移植拒絶反応中(M.A.Antonysamy et al.,Transplant Proc 31(1999);M.A.Antonysamy et al.,J Immunol 162,577(1999);C.C.Loong,C.Y.Lin,W.Y.Lui,Transplant Proc 32(2000);H.G.Hsieh,C.C.Loong,W.Y.Lui,A.Chen,C.Y.Lin,Transpl Int 14,287(2001))、多発性硬化症を含む他の慢性炎症疾患(K.Kurasawa et al.,Arthritis Rheum 43,2455(2000))、乾癬(C.Albanesi et al.,J Invest Dermatol 115,81(2000)及びB.Homey et al.,J Immunol 164,6621(2000))で、IL−17の濃度が著しく上昇することが認められている。活性化T細胞によって産出されることは明らかであるが、これまでの報告類ではTh1並びにTh2偏向サイトカインプロファイルの範例内におけるIL−17の明確な分類は提供されていない。
【0004】
IL−23はヘテロ二量体のサイトカインであり、インターロイキン12(IL−12)と共通するp40と名付けられているサブユニットがp19という独自のサブユニットと結合している(B.Oppmann et al.,Immunity 13,715(2000))。IL−23はT細胞、特に記憶T細胞の増殖を促進することが報告されている(D.M.Frucht,Sci STKE 2002 Jan 8;2002(114):PE1)。最近p19形質転換マウスが深部全身性炎症及び好中球増加症を示すと報告されている(M.T.Wiekowski et al.,J Immunol 166,7563(2001))。
【0005】
IL−17並びにIL−23サイトカインの発現と生物学的役割との関連性はこれまでのところ確立されていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
一側面では、本発明はT細胞によるインターロイキン17(IL−17)産生を抑制する方法に関するものであり、この方法にはインターロイキン23(IL−23)のアンタゴニストでT細胞を処理することが含まれる。
【0007】
別の側面では本発明は、哺乳類被験体における、インターロイキン(IL−17)の発現の上昇を特徴とする炎症性疾患の治療のための方法に関するものであり、この方法にはインターロイキン23(IL−23)のアンタゴニストを有効量哺乳類被験体に投与することが含まれる。
【0008】
また別の側面では、本発明は以下の過程から成る抗炎症剤同定のための方法に関するものである:
(a)T細胞にIL−23を加え、候補薬の有る無しで培養する;
(b)培養物中のIL−17濃度を追跡測定する;
(c)当該候補薬分子が存在しない場合よりも存在する場合の方がIL−17の濃度が低ければ、候補薬分子が抗炎症剤であると確認される。
【0009】
さらに別の側面で本発明は、哺乳類被験体内でIL−17産生を誘導するための方法に関するものであり、この方法には前記被験体にIL−23アンタゴニストを投与することが含まれる。
【0010】
すべての側面において、望ましいアンタゴニストあるいはアゴニストは抗IL−23抗体もしくは抗IL−23受容体抗体であり、これには抗体フラグメントが含まれる。望ましい炎症性疾患は、例えばリウマチ様関節炎(RA)、異系移植拒絶反応を引き起こす恐れのある移植片対宿主反応、多発性硬化症(MS)、乾癬等の慢性炎症状態である。IL−17産生の誘導は一般的に、例えばMycobacterium tuberculosisの感染等、細菌感染を被った被験体に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(好ましい実施形態の詳細)
(A.定義)
他に定義されていない限り、ここで使用されている科学技術用語は、本発明が属する分野の普通の技術者によって一般に理解されているものと同じ意味を持つ。例えば、Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY 1994);Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,NY 1989)を参照する。本発明の目的のため以下の用語を下記に定義する。
【0012】
「アンタゴニスト」はこの明細書では最も広い意味で使用されている。IL−23「アンタゴニスト」は分子であり、作用の基となるメカニズムを問わず、部分的にあるいは完全にIL−23の生物学的活性を遮断あるいは抑制、中和、防御、干渉するものである。本発明の目的のため、生物学的活性とは望ましくは活性化T細胞においてIL−17産生を誘導する活性である。例えばIL−23アンタゴニストは、活性化T細胞(例えば記憶T細胞)集団において、IL−23を介するIL−17産生を抑制あるいは遮断、転換する活性に基づいて同定される。例えば、培養活性化T細胞にIL−23を加えて試験化合物の有る無しで培養し、細胞培養物上清のIL−17濃度を、例えばELISAによって、追跡測定することができる。試験化合物が無い場合よりも有る場合の方がIL−17濃度が低ければ、その試験化合物はIL−23アンタゴニストである。他の方法として、試験化合物による処理前後にリアルタイムRT−PCRを用いて組織中のIL−17mRNAの発現並びにIL−23mRNAの発現を測定することもできる。試験化合物存在下でIL−17mRNAが減少すれば、その化合物はIL−23アンタゴニストである。IL−23アンタゴニストの例には天然シーケンスのIL−23ポリペプチドサブユニット(例えばp40サブユニット)に対する中和抗体、免疫グロブリン定常部シーケンスと融合するIL−23サブユニットから成る免疫付着因子、小分子、天然シーケンスのIL−23ポリペプチドのサブユニットをコードする遺伝子の翻訳と転写の両方あるいは一方を抑制する作用のあるアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えばIL−23遺伝子の遺伝的おとり等のおとり、その他が含まれるがこれらに限定されない。同様にIL−23アンタゴニストには例えばIL−12Rβ1あるいはIL−23R等の天然IL−23受容体のサブユニットに対する中和抗体、免疫グロブリン定常部シーケンスと融合するIL−23受容体サブユニットから成る免疫付着因子、小分子、天然シーケンスのIL−23受容体ポリペプチドのサブユニットをコードする遺伝子の翻訳と転写の両方あるいは一方を抑制することのできるアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えばIL−23受容体遺伝子の遺伝的おとり等のおとり、その他が含まれるがこれらに限定されない。
【0013】
「アゴニスト」は、この明細書では最も広い意味で使用されている。IL−23アゴニストは、作用の基となるメカニズムを問わず、あらゆる天然シーケンスのIL−23が仲介する生物学的活性と類似する作用を持つ分子である。本発明の目的のため、生物学的活性とは、望ましくは活性化T細胞においてIL−17産生を誘導する作用である。IL−23アゴニストの例には、例えばIL−12Rβ1あるいはIL−23Rサブユニット等天然IL−23受容体のサブユニットに対する作動性の抗体並びにペプチド、小有機分子その他が含まれるがこれらに限定されない。
【0014】
「アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド」あるいは「アンチセンスオリゴヌクレオチド」(これらの用語は交換して使用することができる。)は、シーケンス特異的な方法でターゲット遺伝子の転写あるいは翻訳、もしくはその両方を抑制することができる核酸分子と定義される。「アンチセンス」という用語は、その核酸がターゲット遺伝子のコーディング(「センス」)遺伝子配列に対して相補的であることを指す。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ワトソン−クリック塩基結合によって逆平行方向に新生mRNAとハイブリダイズする。ターゲットmRNA鋳型と結合することによって、アンチセンスオリゴヌクレオチドはコードされているタンパク質の翻訳の達成を阻害する。この用語には特に「リボザイム」と呼ばれるアンチセンス薬剤が含まれ、これは自然自己スプライシング活性を持つシーケンスを加えることによってターゲットRNAの触媒切断を誘導する(Warzocha and Wotowiec,「Antisense strategy:biological utility and prospects in the treatment of hematological malignancies.」,Leuk.Lymphoma 24:267−281 [1997])。
【0015】
「抗体」とい用語は最も広い意味で使用されており、特にモノクローナル抗体(アンタゴニストを含む。例えば中和抗体並びに作動性抗体。)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントが含まれる。目的とする生物学的活性を示す限り、モノククローナル抗体には当該抗体のフラグメントに加えて特に「キメラ」抗体が含まれる。このキメラ抗体は、重鎖あるいは軽鎖もしくはその両方の部分が、特定の種由来の抗体、あるいは特定の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応するシーケンスと同一であるもしくは類似しており、残りの鎖は別の種由来の抗体、あるいは別の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応するシーケンスと同一であるもしくは類似しているものである(米国特許第4,816,567号;Morrison et al.,Proc Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855 [1984])。さらにモノクローナル抗体には、非ヒト免疫グロブリン由来の最小シーケンスを含む、「ヒト化」抗体あるいはそのフラグメント(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、その他抗体の抗原結合シーケンス)が含まれる。大半の場合ヒト化抗体は、受容者のCDR由来の残基が、目的とする特異性、親和性、作用を持つ非ヒト種(供与体抗体)のCDR由来の残基に置き換わっているヒト免疫グロブリン(受容者抗体)である。非ヒト種の例には、マウスもしくはラット、ウサギ等がある。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFv FR残基は、非ヒトの対応する残基に置換されている。さらに、ヒト化抗体は受容者抗体にも導入されたCDRもしくはフレームワークシーケンスにもみられない残基から成ることもできる。抗体の性能を向上させ最大にする目的でこれらの修飾が行われる。一般に、ヒト化抗体は実質的にあらゆる、1つ以上、典型的には2つの可変領域から成ることとなり、全てのもしくは実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に相当し、且つ全ての、もしくは実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリンシーケンスのFR領域である。また最適なヒト化抗体は免疫グロブリン定常部(Fc)の1つ以上の部分から成ることとなり、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常部から成る。詳細についてはJones et al.,Nature,321:522−525(1986);及びReichmann et al.,Nature,332:323−329(1998)を参照する。ヒト化抗体にはPRIMATIZED(R)抗体が含まれ、この抗体の抗原結合領域は、目的とする抗原でマカークザルを免疫して作られた抗体から得られたものである。
【0016】
「抗体フラグメント」は完全抗体の一部分から成り、望ましくは完全抗体の抗原結合領域あるいは可変領域から成る。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント並びに直鎖抗体(Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057−1062(1995))、ダイアボディ、一本鎖抗体分子、抗体フラグメントから作られる多重特異性抗体が含まれる。
【0017】
この明細書で使用されている「炎症性疾患」あるいは「炎症性疾病」という用語は、炎症を引き起こす病理学的状態を指し、この状態は典型的には好中球の化学走性によって引き起こされる。当該疾患の例には、乾癬並びに皮膚炎を含む炎症性皮膚疾患、汎発性強皮症及び全身性硬化症、炎症性腸炎(IBD)に伴う反応(クローン病並びに潰瘍性大腸炎等)、外科的組織再潅流による損傷並びに心筋梗塞、心停止、心臓手術後の再潅流、経皮経管冠動脈形成手術後の狭窄等の心筋虚血状態、並びに卒中並びに腹部大動脈瘤を含む虚血性再潅流疾患、卒中に続発する脳水腫、頭蓋外傷、血液量減少ショック、仮死、成人呼吸窮迫症候群 急性肺損傷、ベーチェット病、皮膚筋炎、多発性筋炎、多発性硬化症(MS)、皮膚炎、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、変形性関節炎、ループス腎炎、リウマチ様関節炎(RA)等の自己免疫疾患、シェーグレン症候群(Sjorgen’s syndrome)、血管炎、白血球の血管外漏出を伴う疾患、中枢神経系(CNS)炎症疾患、敗血症あるいは外傷に続発する多臓器損傷症候群、アルコール性肝炎、細菌性肺炎、腎炎を含む抗原抗体複合体媒介疾患、敗血症、サルコイドーシス、組織・臓器移植に対する免疫異常反応、並びに胸膜炎並びに肺胞炎、脈管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、特発性肺線維症(IPF)、嚢胞性線維症を含む肺の炎症、その他が含まれる。望ましい適用には、慢性炎症、自己免疫性糖尿病、リウマチ様関節炎(RA)、リウマチ性脊椎炎、痛風性関節炎等の関節炎症状態、多発性硬化症(MS)、喘息、全身性エリテマトーデス(systhemic lupus erythrenatisys)、成人呼吸窮迫症候群、ベーチェット病、乾癬、慢性肺炎症性疾患、対宿主性移植片疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患(IBD)、アルツハイマー病、発熱が含まれ、さらに炎症が関係するあらゆる疾患・疾病および関連する異常状態が含まれるがこれらに限定されない。
【0018】
「治療する」あるいは「治療」という用語は、治療処置と予防策の両方を指し、その目的は望ましくない生理学的変化あるいは異常を予防する、もしくは遅らせる(軽減する)ことである。本発明の目的のため、有益なあるいは望ましい臨床結果には、検出可能か否かに係わらず、症状の緩和並びに疾患の範囲の縮小、疾患状態の安定化(例えば悪化しない。)、疾患の進行の遅延あるいは減速、疾患状態の改善あるいは一時的緩和、緩解(部分的あるいは全体的)が含まれるがこれらに限定されない。「治療」は、治療を受けない場合に見込まれる生存期間と比較した生存期間の延長も意味することができる。治療を必要とするものには、当該状態あるいは疾患をすでに有するものに加えて、当該状態あるいは疾患を被りやすいもの、あるいは当該状態あるいは疾患を予防すべきものが含まれる。
【0019】
「慢性」投与は、急性治療とは反対に継続して薬剤を投与することを指し、長期間に渡って望ましい効果を維持する目的で行う。
【0020】
「間欠」投与は、中断しないが連続して行われない治療であり、即ち周期的な治療である。
【0021】
一つ以上の別の治療薬剤「と併用する」投与には、あらゆる順序の同時(併用)投与及び連続投与が含まれる。
【0022】
「被験体」は脊椎動物であり、望ましくは哺乳類、より望ましくはヒトである。
【0023】
「哺乳類」はこの明細書では哺乳類に分類されるあらゆる動物を指すために使用され、ヒト、あるいはヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等の飼育動物・家畜動物並びに動物園あるいはスポーツあるいはペット動物が含まれるが、これらに限定されない。この明細書で望ましい哺乳類はヒトである。
【0024】
「有効量」とは、有益なあるいは望ましい治療(予防を含む。)結果に効果のある十分な量である。
【0025】
(B.発明を実施するための形態)
本発明を実施するには、他に指定のない限り、分子生物学(組換え技術を含む。)、微生物学及び細胞生物学、生化学、免疫学の通常の手法を使用することとなり、これらは当分野の技術の範囲内である。当該手法は、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,2nd edition(Sambrook et al.,1989);並びに「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait,ed.,1984);「Animal Cell Culture」(R.I.Freshney,ed.,1987);「Methods in Enzymology」(Academic Press,Inc.);「Handbook of Experimental Immunology」,4th edition(D.M.Weir & C.C.Blackwell,eds.,Blackwell Science Inc.,1987);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(J.M.Miller & M.P.Calos,eds.,1987);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987);「PCR:The Polymerase Chain Reaction」,(Mullis et al.,eds.,1994);「Current Protocols in Immunology」(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)等の文献において詳細に説明されている。
【0026】
前記で議論したとおり、本発明は活性化T細胞、特に記憶T細胞において、IL−23がIL−17を産生し、IL−23アンタゴニストがこの過程を抑制するこができるという認識に基づくものである。従って、IL−23アンタゴニストはIL−17濃度の上昇を特徴とする炎症状態を治療するための有望な候補薬である。逆にIL−23アゴニストは、例えばMycobacterium tuberculosis(M.tuberculosis)感染等のマイコバクテリア感染を含む多様な感染に対する防御免疫反応を誘導するのに有用である。
【0027】
(1.IL−23のアンタゴニストあるいはアゴニストを同定するためのスクリーニングアッセイ)
本発明はIL−23のアンタゴニストを同定するためのスクリーニングアッセイを含み、このアッセイではIL−17濃度の上昇がみられることを特徴とする炎症状態の治療における有効性を確認する。さらに本発明はIL−23アゴニストを同定するためのスクリーニングアッセイを含み、このアッセイではMycobacterium tuberculosis による感染等感染に対する防御免疫反応の促進における有効性を確認する。
【0028】
候補アンタゴニストに対するスクリーニングアッセイは、IL−23(これのサブユニットあるいはフラグメントを含む。)もしくはIL−23受容体(これのサブユニットあるいはフラグメントを含む。)と結合するもしくは化合する、さもなくはIL−23と他の細胞性タンパク質との相互作用を干渉し、これによってIL−23の産生あるいは機能を干渉する化合物同定を目的として立案することができる。この明細書で提供されるスクリーニングアッセイには、化学薬品ライブラリーのハイスループットスクリーニングに基づいたアッセイが含まれ、これによってアッセイが特に小分子候補薬の同定に適するようになる。一般には結合分析と活性分析とが提供される。
【0029】
このアッセイは、当分野でよく特性を与えられている、タンパク質−タンパク質結合分析、生化学スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ、細胞ベースアッセイを含む、多様な様式で行うことができるが、これらに限定されない。
【0030】
アンタゴニスト並びにアゴニストに対するあらゆるアッセイは、候補薬にIL−23ポリペプチドあるいはIL−23受容体ポリペプチドあるいは当該ポリペプチド(特にIL−23及びIL−23受容体のサブユニットを含む。)のフラグメントに、二つの成分が相互作用することができる条件下で十分な時間接触することを必要とする点で共通している。例えばヒトIL−23p19サブユニットはアミノ酸189個のポリペプチドであり、そのアミノ酸配列はAccession Number(受け入れ番号)AF301620(NCBI 605580;GenBank AF301620;上記Oppman et al.,)でEMBLデータベースから知ることができる。IL−23ポリペプチドであるp40サブユニットのアミノ酸配列も判明している(IL−12p40サブユニットとしても知られる。)。IL−23が結合するIL−12Rβ1のアミノ酸配列はAccession Number NCBI 601604で知ることができる。抗体あるいは当該ポリペプチドに結合する小分子の作製は、当業者の通常技術の範囲に十分収まる。
【0031】
結合性分析において相互作用とは結合することであり、形成される複合体は単離することができる、もしくは反応混合物中で検出することができる。ある実施例では、IL−23ポリペプチドあるいはIL−23受容体ポリペプチドあるいは候補薬を、例えばマイクロタイタープレート等の固相上で、共有結合もしくは非共有結合によって固定化する。非共有結合は一般に、固体表面をIL−23あるいはIL−23受容体ポリペプチドの溶液で被覆し、乾燥することによって達成される。他の方法として、固定化しようとするIL−23あるいはIL−23受容体ポリペプチドに特異的な固定化した抗体(例えばモノクローナル抗体)を使用してそのIL−23ポリペプチドあるいはIL−23受容体ポリペプチドを固体表面に繋ぎとめることができる。このアッセイは、検出用標識によって標識することができる非固定化成分を固定化成分(例えば固着された成分を含む被覆された表面)に加えることによって行われる。反応完了後に、反応しなかった成分を除去し(例えば洗浄によって)、固体表面に固着している複合体を検出する。固定化されていない成分がもとより検出用標識を有している場合は、固体表面で固定されている標識を検出することで、複合体ができていることが示される。固定化されなかった細胞がもとより標識を有していない場合、複合体は、例えば固定化された複合体に特異的に結合する標識抗体を用いる等して複合体を検出することができる。
【0032】
候補化合物がIL−23あるいはIL−23受容体と相互作用するが結合しないポリペプチドである場合、それぞれのポリペプチドとの相互作用はタンパク質−タンパク質相互作用を検出するためのよく知られた方法によって検出することができる。当該アッセイには、例えば架橋形成並びに免疫共沈降、密度勾配カラムあるいはクロマトグラフカラムによる共精製等の伝統的な手法が含まれる。さらにタンパク質−タンパク質相互作用は、Chevray and Nathans,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5789−5793(1991)で公開されているように、Fieldsらによって記載されている酵母ベースの遺伝システムを用いて測定することができる(Fields and Song,Nature(London),340:245−246(1989);Chien et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:9578−9582(1991)。酵母GAL4等多数の転写活性化物質は、2つの物理的に別個の調節ドメインから構成され、1つはDNA結合ドメインとして作用し、他方は転写活性化ドメインとして機能する。先述の文献に記載されている酵母発現システム(一般に「ツーハイブリッドシステム」と呼ばれている。)はこの特性を利用して、二つのハイブリッドタンパク質が用いられており、その一つのタンパク質ではターゲットタンパク質がGAL4のDNA結合ドメインと融合し、他方では候補活性化タンパク質が活性化ドメインと融合する。GAL1−lacZ1受容体遺伝子の発現は、GAL4活性化プロモーターを制御した状態で、タンパク質−タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構築に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、βガラクトシダーゼに対する発色基質を用いて検出される。二つの特定のタンパク質間のタンパク質−タンパク質相互作用を、ツーハイブリッド法を用いて同定するための完全キット(MATCHMAKERTM)がClonetechから市販されている。またこのシステムを拡張し、特定のタンパク質相互作用に係わるタンパク質ドメインの位置を決定することが可能であり、さらにこれらの相互作用に必須の役割を持つアミノ酸残基を特定することができる。
【0033】
IL−23と他の細胞内並びに細胞外成分、特にIL−17との相互作用を干渉する化合物は、以下のように試験することができる。通常、IL−23と細胞内もしくは細胞外成分(例えばIL−17)とを含む反応混合物を、これらの二つの物が相互作用できる条件下で十分な時間調製する。候補化合物がIL−23とIL−17との相互作用を抑制する作用を調べるために、試験候補化合物の存在が有る無しで、反応を進める。加えて、第三の混合物に儀薬を加えて陽性コントロールとすることもできる。IL−23はIL−17産生を誘導することが示されており、試験化合物がIL−23とIL−17との相互作用を抑制する作用は、例えば、試験化合物の有る無しでIL−17量を測定することによって試験される。IL−17の量が、候補化合物が無い場合の方が有る場合よりも少なければ、本発明の定義によりその候補化合物はIL−23のアンタゴニストである。
【0034】
IL−23によるIL−17産生誘導を抑制する作用に基づいて同定されたIL−23アンタゴニストは、IL−17濃度の上昇がみられることを特徴とする炎症状態の治療のための候補薬である。
【0035】
IL−23によるIl−17産生誘導を促進する作用に基づいて同定されたIL−23アゴニストは、Mycrobacterium tuberculosisによる感染等感染に対する防御免疫反応を誘発するあるいは支援するための候補薬であり、結果として結核等の感染症の治療のための候補薬となる。
【0036】
この明細書で特に議論されているスクリーニングアッセイは、説明のみを目的としていることを強調する。スクリーニングするアンタゴニスト(例えばポリペプチド、ペプチド、非ペプチド小有機分子、核酸、その他)の種類に応じて選択することが可能な多様な他のアッセイは、当分野の技術者によってよく知られたものであり、同等に本発明の目的に適する。
【0037】
(2.抗IL−23抗体と抗IL−23受容体抗体)
特定の実施例において、IL−23アンタゴニストあるいはアゴニストはIL−23(例えばIL−23のサブユニット)に対するモノクローナル抗体であり、これには抗体フラグメントが含まれる。別の特定の実施例では、IL−23アンタゴニスト並びにアゴニストにはIL−23受容体(例えばIL−23受容体のサブユニット)に対するモノクローナル抗体が含まれる。そのサブユニットを含め、IL−23についてはこの明細の前記に記述している。IL−23受容体はIL−12Rβ1及び、最近発見されたIL−23Rと名付けられたサブユニット(Parham et al.,J.Immunol.168:5699−5798(2002))の、2つのサブユニットから構成される。いずれのサブユニットに対する抗体も、本発明の範囲に明確に収まる。アンタゴニストの場合、IL−23Rに特異的に結合する抗体はIL−23が介する生物学的活性を特異的に遮断するため、IL−23Rに特異的に結合する抗体が特に望ましい。
【0038】
モノクローナル抗体を作製する方法は、当分野でよく知られている。例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)に記載されている方法等のハイブリドーマ法を用いてモニクローナル抗体を調製することができる。ハイブリドーマ法では、一般的にマウス、ハムスターその他の適当な宿主動物を免疫薬剤で免疫し、その免疫薬剤に特異的に結合することになる抗体を産生するあるいは抗体を産生することができるリンパ球を誘出させる。他の方法として、インビトロでリンパ球を免疫することもできる。
【0039】
免疫薬剤は典型的にはIL−23もしくはIL−23受容体ポリペプチド、あるいはそれらの融合タンパク質を含むこととなる。一般に、ヒト由来の細胞を求める場合、末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、非ヒト哺乳類源を求める場合には脾細胞あるいはリンパ節細胞が使用される。次にポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を固定された細胞系と融合し、ハイブリドーマ細胞を作る(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−103)。固定された細胞は普通、形質転換させた哺乳類細胞であり、特にげっ歯類、ウシ、ヒト由来の骨髄腫細胞である。通常はラットあるいはマウスの骨髄腫細胞が使用される。このハイブリドーマ細胞は、望ましくは融合していない固定された細胞の増殖あるいは生存を抑制する1つ以上の物質を含む適当な培地で培養することができる。例えば、宿主細胞がヒポキサンチン−グアニン−ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTあるいはHPRT)という酵素を欠損している場合、典型的にはこのハイブリドーマのための培地にはヒポキサンチン及びアミノプロテイン、チミジンが含まれることとなり(「HAT培地」)、これらの物質はHGPRT欠損細胞の増殖を妨げる。
【0040】
不死化される細胞系で望ましいのは、効率よく融合するもので、且つ選択された抗体産生細胞が安定して高濃度に抗体を発現することを助け、HAT培地等の培地に対する感受性があるものである。不死化される細胞系でさらに望ましいものは、マウス骨髄腫細胞系であり、例えばこれはStalk Institute Cell Distribution Center,San Diego,California並びにAmerican Type Culture Collection,Manassas,Virginiaから入手することができる。また、ヒトモノクローナル抗体作製に関しては、ヒト骨髄腫細胞系並びにマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系が記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987) pp.51−63)。
【0041】
次に、IL−23もしくはIL−23受容体に対するモノクローナル抗体の存在に関して、ハイブリドーマ細胞を培養する培地を分析することができる。望ましくはハイブリドーマ細胞が産生したモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降もしくは、ラジオイムノアッセイあるいは酸素結合免疫吸着測定(ELISA)等のインビトロ結合分析によって判定する。当該技術並びに分析法は当分野で知られているものである。例えばモノクローナル抗体の結合親和性は、Munson and Pollard,Anal.Biochem.,107:220(1980)のスキャッチャード分析によって判定される。
【0042】
目的とするハイブリドーマ細胞を同定後、そのクローンを限界稀釈法によってサブクローン化し、標準法(上記Goding)によって培養する。この目的のために適した培地には、例えばDulbecco’s Modified Eagle’s培地並びにRPMI−1640培地が含まれる。他の方法として、ハイブリドーマ細胞を哺乳類の腹水としてインビボで増殖させることもできる。
【0043】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインAセファロースあるいはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、アフィニティークロマトグラフィー等、一般的な免疫グロブリン精製法によって、培地あるいは腹水から単離して精製することができる。
【0044】
また、米国特許第4,816,567号に記載されている方法等、組換えDNA法によってモノクローナル抗体を作製することもできる。一般的な手法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖並びに軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドのプローブを用いる方法によって)、本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAを容易に単離してシーケンスを決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞は当該DNAの望ましい供給源として役立つ。単離後、DNAを発現ベクターに加えることができ、次にこのベクターを類人猿コス細胞あるいはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、他の免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞等の宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体を生成させる。例えばヒト重鎖並びに軽鎖の定常部をコードするシーケンスをマウスの同種シーケンスに置換することによって、あるいは免疫グロブリンをコードするシーケンスを、非免疫グロブリンポリペプチドをコードするシーケンスの全部もしくは一部に共有結合させることによって、DNAを改変することもできる(米国特許第4,816,567号;上記Morrison et al.)。当該非免疫グロブリンポリペプチドを本発明の抗体の定常部と置換することができる、もしくは本発明の抗体の抗原結合部位である可変領域と置換してキメラ二価抗体を作製することもできる。
【0045】
抗体は一価抗体であることができる。一価抗体を作製する方法は当分野でよく知られている。例えば、ある方法では免疫グロブリン軽鎖と改変重鎖の組換え発現を伴う。一般には重鎖をFc領域の任意の部位で切断して、重鎖の架橋形成を防ぐ。他の方法として、関係するシステイン残基を他のアミノ酸残基と置換する、もしくはこれを除去して架橋形成を防ぐ。またインビトロの方法も一価抗体の作製に適する。
【0046】
さらに本発明の抗IL−23抗体並びに抗IL−23受容体抗体はヒト化抗体あるいはヒト抗体であることができる。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形態はキメラ免疫グロブリン、もしくはこれの免疫グロブリン鎖、あるいはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、その他の抗原結合サブシーケンス等)であり、これらは非ヒト免疫グロブリン由来の最小のシーケンスを含む。ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(受容者抗体)を含み、受容者抗体の相補性決定部(CDR)由来の残基が、目的とする特異性及び親和性、活性を有する、マウスあるいはラット、ウサギ等非ヒト種(供与者抗体)のCDR由来の残基に置換されている。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は非ヒトの相当する残基によって置換されている。またヒト化抗体は、受容者抗体にも、移入されるCDRもしくはフレームワークシーケンスにもない残基から成ることもできる。一般的に、ヒト化抗体は事実上全ての1つ以上、典型的には2つの可変領域から成ることになり、ここで全てのあるいは実質的に全てのCDR領域は非ヒト免疫グロブリンのCDRに相当し、且つ全てのあるいは実質的に全てのFR領域は非ヒト免疫グロブリンコンセンサスシーケンスのFR領域である。最適なヒト化抗体は、免疫グロブリン定常部(Fc)の少なくとも一部分から成ることとなり、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常部である(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323−329(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992))。
【0047】
非ヒト抗体をヒト化する方法は当分野においてよく知られている。一般的には、ヒト化抗体は非ヒト供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば「導入」残基と呼ばれ、典型的には「導入」可変領域から得られる。ヒト化は基本的にWinterらの方法(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988))に従って行われ、げっ歯類CDRシーケンスをヒト抗体の相当するシーケンスに置換する。従って、当該「ヒト化」抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,186,567号)、本質的に完全ヒト可変部が非ヒト種由来の相当するシーケンスで置換されたわけではない。実際には、典型的なヒト化抗体は、CDR領域の一部とおそらくはFR残基の一部がげっ歯類抗体の相同する残基で置換されているヒト抗体である。
【0048】
またヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ(Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991))を含め、当分野で知られている多様な手法を用いて作製することができる。また、Coleらの手法並びにBoernerらの手法もヒトモノクローナル抗体の調製に有用である(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)並びにBoerner et al.,J.Immunol.,147(1):86−95(1991))。同様に、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内生免疫グロブリン遺伝子の一部または全部を不活性化した、マウス等の形質転換動物に導入することによって作ることができる。免疫チャレンジ後にヒト抗体の産生が観察され、遺伝子転位、集合体形成、抗体レパートリーを含め、全ての点でヒトにみられるものと非常に似ている。この手法は例えばU.S.Patent Nos.5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,661,016 及び以下の科学文献に記載されている:Marks et al,Bio/Technology 10,779−783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368:812−813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14:845−851(1996);Neuberger,Nature Biotechnology 14,826(1996);Longberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)。
【0049】
Mendezら(Nature Genetics 15:146−156(1997))はこの手法をさらに改良して「ゼノマウスII」と称する形質転換マウス系を作り出した。「ゼノマウスII」は抗原でチャレンジされると親和性の高い完全ヒト抗体を作る。これは上記のように、メガベースのヒト重鎖遺伝子座及び軽鎖遺伝子座を、内生JHセグメントを欠損させたマウスに移入する生殖細胞系統合によって作製された。ゼノマウスIIは、約66のVH遺伝子と完全DH領域、JH領域、3種の定常部(μ、δ、χ)を含む1,020 kbのヒト重鎖遺伝子座を有し、さらに32のVκ遺伝子とJκセグメント、Cκ遺伝子を含む800 kbのヒトκ遺伝子座を有する。これらのマウスによって産生された抗体は、遺伝子転位並びに集合体形成、抗体レパートリーを含め、全ての点でヒトにみられるものと非常によく似ている。マウス遺伝子座の遺伝子転位を妨げる内生JHセグメントを欠失しているため、このヒト抗体は内生抗体に優先して発現する。
【0050】
他の方法として、ファージディスプレイ法(McCafferty et atl.,Nature 348:552−553(1990))を用いて免疫されていない供与者由来の免疫グロブリン可変(V)領域遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体並びに抗体フラグメントを作ることができる。この方法に従うと、抗体V領域遺伝子は、M13あるいはfd等の繊維状バクテリオファージのメジャーコートあるいはマイナーコートタンパク質遺伝子にインフレームクローニングされ、ファージ粒子表面上に機能性抗体フラグメントとしてディスプレイされる。この繊維状粒子にはファージゲノムの一本鎖DNAコピーが含まれているため、抗体の機能特性に基づいて選択することで、これらの特性を呈する抗体をコードする遺伝子を選択することとなる。つまり、ファージはB細胞の一部の特性を模倣する。ファージディスプレイは様々な方法で行うことができ、それらの論評については、例えばJohnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3,564−571(1993)を参照する。いくつかのV遺伝子源をファージディスプレイに使用することができる。Clackson et al.,Nature 352,624−628(1991)は、免疫したマウスの脾臓由来のV遺伝子の、ランダムな組み合わせの少数ライブラリーから様々な系列の抗オキサゾロン抗体を単離した。免疫していないヒト供与者のV遺伝子のレパートリーを構築することができ、基本的にMarks et al.,J.Mol.Biol.222,581−597(1991)あるいはGriffin et al.,EMBO J.12,725−734(1993)で記載されている方法に従って、多様な系列の抗体(自己抗原を含む。)を単離することができる。自然状態での免疫反応では、抗体遺伝子は高率で突然変異を蓄積する(体細胞高頻度突然変異)。誘発された変化の一部によって高い親和性が得られ、高親和性表面免疫グロブリンをディスプレイするB細胞は優先して複製されてその後の抗原チャレンジの間に分化する。この自然状態での過程を、「チェーンシャッフリング(chain shuffling)」(Marks et al.,Bio/Technol.10,779−783(1992))として知られている手法を採用することによって模擬することができる。この方法では、重鎖及び軽鎖V領域遺伝子を、免疫していない供与者から得たV領域遺伝子の自然発生異体(レパートリー)のレパートリーに順次置換することによって、ファージディスプレイによって得られた「一次」ヒト抗体の親和性を向上させることができる。この手法によって、nM範囲内で親和性を持つ抗体及び抗体フラグメントの産生が可能となる。非常に大きなファージ抗体レパートリーを作製する方法は、Waterhouse et al.,Nucl.Acids Res.21,2265−2266(1993)に記載されている。
【0051】
様々な抗体フラグメント作製の手法が開発されている。従来は完全抗体をタンパク質分解することを介して抗体フラグメントを得ていた(例えばMorimoto et al.,J.Biochem.Biophys.Methods 24:107−117(1992)並びにBrennan et al.,Science 229:81(1985)を参照する。)。しかし現在では、抗体フラグメントは組換え宿主細胞から直接作ることができる。例えばFab’−SHフラグメントはE.coliから直接回収することができ、化学結合してF(ab’)2フラグメントを形成する(Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992))。別の実施例では、F(ab’)2分子構築を促進するためにロイシンジッパー GCN4を用いてF(ab’)2を作る。別の方法によると、FvあるいはFab、F(ab’)2フラグメントは、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。抗体フラグメントを作製するその他の手法は当分野の技術者がよく知るものである。
【0052】
共有結合した2つの抗体から成るヘテロ結合抗体も、本発明の範囲に入る。当該抗体は、例えば、免疫システム細胞を不要細胞へ標的化させるために提唱されており(米国特許第4,676,980号)、またHIV感染に対する治療のために提唱されている(PCT出願公開番号WO 91/00360及びWO 92/200373)。ヘテロ結合抗体は、よく知られている市販されている架橋剤を使用し、あらゆる共有結合架橋法を用いて作ることもできる。
【0053】
モノクローナル抗体の作製に関するより詳細な情報については、Goding,J.W.,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,3rd Edition,Academic Press,Inc.,London,San Diego,1996;Liddell and Weeks:Antibody Technology:A Comprehensive Overview,Bios Scientific Publishers:Oxford,UK,1995;Breitling and Dubel:Recombinant Antibodies,John Wiley & Sons,New York,1999;Phage Display:A Laboratory Mannual,Barbas et al.,editors,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,2001を参照する。
【0054】
(3.標的となる疾患)
IL−17はリウマチ様関節炎(RA)を含む様々な炎症性疾患に関係している。RAの基本的な特徴の一つは、関節周囲の骨の侵食である。骨吸収では破骨細胞が鍵となる役割を果たしているが、破骨細胞が前駆細胞から形成されるメカニズムは完全には理解されていない。最近Kotake et al.,(J.Clin.Invest.103:1345(1999))は、マウス造血細胞と1次骨芽細胞との共培養物において、インターロイキン17(IL−17)が破骨細胞様の細胞の形成を誘導する可能性がみられたことを報告している。このIL−17に誘導される破骨細胞形成は、シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)の選択的阻害剤であるインドメタシンによって抑制されることが示されている。RA患者の滑液には、変形性関節症患者と比較して著しく高濃度のIL−17が含まれることが認められている。さらに免疫染色を用いて、RA患者の滑液膜組織にてIL−1陽性単核細胞が検出されたが、OA患者の組織からは検出されなかった。これらの結果は、RA患者ではIL−17が骨侵食と関節の損傷に寄与している可能性があり、抑制のための標的となり得ることを示唆すると解釈されている。
【0055】
また、ベーチェット病患者でも健康な被験者と比較して、IL−17の血清濃度の著しい上昇がみられる。Hamzaoui et al.,Scand.J.Rheumatol.31(4):205−210(2002)。
【0056】
IL−17濃度の上昇は喘息患者気道内でも見受けられ、これはIL−17がアルファ−ケモカイン等他の炎症誘発性化学伝達物質の放出を通じて炎症反応を増幅している可能性のあることを示唆している。Motel et al.,J.Alleregy Clin.Immunol.108(3):430−438(2001);並びにWong et al.,Clin.Exp.Immunol.125(2):177−183(2001)。
【0057】
IL−17濃度の上昇は、全身性エリテマトーデス患者で報告されている。Wong et al.,Lupus 9(8):589−593(2000)。
【0058】
IL−17は乾癬に関係していると記載されている。Homey et al.,J.Immunol.164(12):6621−6632(2000)。
【0059】
多発性硬化症において血液及びCSF単核細胞で、IL−17mRNAが増加していることが報告されている。Matusevicius et la.,Mult.Scler.5(2):101−104(1999)。
【0060】
これらの報告及び多数の同様の報告に基づくと、IL−23がIL−17を産生する作用を抑制してその結果IL−17濃度を減少させるIL−23アンタゴニストは、様々な(慢性)炎症状態並びに炎症疾患の治療の有益な候補である。当該状態並びに疾患には、慢性炎症、自己免疫糖尿病、リウマチ様関節炎(RA)、リウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎並びに他の関節炎状態、多発性硬化症(MS)、喘息、全身性紅斑性狼瘡(systhemic lupus erythrematosus)、成人呼吸窮迫症候群、ベーチェット病、乾癬、慢性肺炎症疾患、移植片対宿主反応、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患(IBD)、アルツハイマー病、発熱が含まれるがこれらに限定されない。
【0061】
IL−17は、結核等ある種の感染疾患に対する防御反応が生じる際に重要な役割を果たしていることが知られており、IFN−γ生成を促して細胞性免疫反応を誘導することがわかっている。従って作動性抗体を含めIL−23アゴニストは、Mycobacterium tuberculosisによって引き起こされる結核等様々な感染症に対する細胞性免疫反応の誘導において有用性が認められており、毎年世界中で300万人以上の人々が死亡する原因となっているこうした感染性疾患を治療するための有望な候補薬である。
【0062】
(4.薬学的組成物)
IL−23あるいはIL−23受容体に特異的に結合する抗体は、この明細の前記で記載されているスクリーニングアッセイによって同定された他のIL−23アンタゴニスト分子あるいはアゴニスト分子も同様に、特に炎症性疾患あるいは細胞性免疫反応の誘導による疾患等様々な疾患の治療のために薬学的組成物の形態で投与することができる。
【0063】
抗体フラグメントを使用する場合は、標的タンパク質の結合部位に特異的に結合する最小の大きさの阻害性フラグメントが望ましい。例えば、抗体の可変領域シーケンスに基づいて、標的タンパク質のシーケンスに結合する性質を有するペプチド分子を立案することができる。当該ペプチドは化学的に合成するか、もしくは組換えDNA法によって合成することができ、もしくは両方の方法で合成することができる。Marasco st al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7889−7893(1993)を参照する。
【0064】
活性成分は、コロイド剤輸送系(例えばリポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル)もしくはマイクロエマルジョン中で、例えばコアセルベーション法あるいは界面重合によって調製したマイクロカプセルに取り入れることもできる。例えば各々ヒドロキシメチルセルロース、あるいはゼラチンマイクロカプセル並びにポリ(メチルメタシレート)マイクロカプセルがある。当該手法はRemington’s Pharmaceutial Sciences(上記)に記載されている。
【0065】
インビボ投与に使用する製剤は滅菌されていなければならない。これは滅菌濾過メンブレンを用いた濾過によって容易に行われる。
【0066】
持続放出性製剤を調整することもできる。持続放出性製剤の適当な例には、抗体を内包する、疎水性固形ポリマーの半透過性基質が含まれ、この基質は、例えばフィルム、マイクロカプセル等成形物の形態をとる。持続放出性製剤の例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(メタクリ酸2ヒドロキシエチル)あるいはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(U.S.Pat.No.3,773,919)、L−グルタミン酸とγL−グルタミン酸エステルとの共重合物、非分解性酢酸エチレンビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸とグリコール酸との共重合体と酢酸ロイプロライドから構成される注入用小球形)等の分解性酪酸グリコール酸共重合体、ポリD(−)3ヒドロキシ酪酸が含まれる。酢酸エチレンビニル並びに乳酸−グリコール酸等のポリマーは100日間に渡って分子を放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短い期間しかタンパク質を放出することができない。カプセルに入れた抗体が長期間体内に留まる場合、水分と37℃という温度にさらされる結果変成したり、凝集したりすることもある。この結果生物学的活性が失われ、免疫原性が変性する可能性がある。関係するメカニズムに基づいた、安定化のための合理的な方法を考案することができる。例えばその凝集メカニズムがチオ二硫化物の置換による分子間S−S結合の形成によるものであると判明したならば、SH基の修飾、並びに酸性溶液の凍結乾燥、水分量の制御、適切な添加剤の使用、特別なポリマー基質組成の開発によって安定化を達成することができる。
【0067】
またこの処方物には、治療の対象となる特定の適用のために必要な活性化合物を一つ以上含むことができ、望ましくは互いに有害作用を与えない相補的活性を持つ化合物である。当該分子は意図する目的に対して効果が得られる量で組み合わされた形で適切に存在するか、もしくは独立して処方されて、同時にあるいはあらゆる順序で順次投与される。
【0068】
例えば、本発明のIL−23アンタゴニストを抗炎症剤並びに、標的とする疾患並びに状態の治療のため目下使用されている他の活性化合物と併用して投与することができる。当該化合物にはコルチコステロイド、アスピリンやイブプロフェン並びに例えばCelebrex(登録商標)及びVioxx(登録商標)等のCOX−2、等の抑制剤等の非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、メトトレキセートやレフルノミド、スルファサラジン、アザチオプリン、シクロスポリン、ヒドロキシクロロキン、Dペニシラミン等の疾患変性性抗リウマチ薬剤(DMARD)、TNF並びにIL−1抑制剤等の生体応答調節剤(BRM)が含まれる。
【0069】
以下の例は説明の目的のためにのみ提供するものであって、あらゆる面で、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0070】
この明細書で記載されている全ての特許並びに参考文献は、参考のためこの明細にその全体を添付する。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
インターロイキン23(IL−23)は、インターロイキン17(IL−17)の産生を特徴とする、第三のCD4 T細胞活性化状態を促進する。
【0072】
活性化T細胞によって産生することは明らかであるが、従来の報告ではTh1並びにTh2偏向サイトカインプロファイルの例証内でIL−17の明確な分類は提供されていない。この実施例にて記載される最初の実験の目的は、IL−17がTh1あるいはTh2応答に伴うシグナルとは異なるシグナルに応答して発現している可能性を調べることであった。
【0073】
(実験方法)
細胞培養 − 脾臓単個細胞懸濁液はC57/BL−6マウスから調製し、密度勾配遠心によって懸濁脾細胞から単核細胞を単離した。2x106細胞/mlにIL−2を添加し、様々な刺激の有る無しで培養した(図の説明で示している。)。その後に細胞を回収してELISA(R&D Systems,Minneapolis,MN)を用いてIL−17について分析した。マクロファージ(脾細胞懸濁液から接着性集団として得た)をrGM−CSF(2ng/ml)とrIL−4(1000 units/ml)で4日間処理し、洗浄してLPS(0.5μg/ml)で再活性化することによってマクロファージから樹状細胞を得た。マウス脾細胞の単個細胞懸濁液から単離した単核細胞をCyC−CD4 + PE−CD44あるいはCyC−CD4 + PE−CD62Lで染色し、記憶表現型についてはCD44高/CD62L低、未刺激表現型についてはCD44低/CD62L高であるCD4+細胞を選別することによって、記憶T細胞及び未刺激T細胞を分離した。
【0074】
インビトロT細胞分化誘導 − CD4+細胞は、抗CD4磁気ビーズ(Miltenyi Biotech)を使用して、野生型C57/BL6マウスの脾臓から精製した。精製したT細胞(2 x 106細胞/ml)を5μg/mlの抗CD3抗体及び1 g/mlの抗CD28抗体をコートしたプレート上に置き、3日間活性化した。培養物にIL−2を添加してIL−12(20 mM)+ 抗IL−4(0.5μg/ml)(Th1分化用)もしくはIL−23(10 nM)(IL−17産生用)で処理した。初回活性化後に細胞培養物を十分に洗浄し、抗CD3(1μg/ml)でさらに24時間刺激した。その後、ELISAを使用して分泌された様々なサイトカインについて細胞上清を分析した。
【0075】
IL−12p40抗体によるIL−17産生抑制 − 抗IL−12抗体(R&D Systems,cat.no.AF−419−NA)もしくは無関係のコントロール抗体(抗FGF−8G(R&D Systems,cat.no.AF−423−NA))にIL−23(100ng/ml)、あるいはLPS刺激済み樹状細胞(10% v/v)の馴化培地を加えて37℃で1時間プレインキュベートした。次にマウス脾臓から単離した単核細胞(2 x 106細胞/ml)を加えてさらに5〜6日間培養した。上清を集めIL−17濃度をELISAを用いて測定した。
【0076】
IL−23の精製−マウスIL−23 − IL−23構成成分を、ヒト胚性腎細胞(細胞数293)内でC末端His標識p19とFLAG0標識p40とを共発現させることによって作製し、分泌されたタンパク質をニッケルアフィニティ樹脂によって精製した。内毒素濃度は1μg当たり0.2エンドトキシンユニットを下回っており、検出できる濃度ではなかった。
【0077】
(結果)
最初に、様々な微生物産生物のIL−17産生促進作用を調べた。スピロヘータB.Burgdorferiが引き起こすライム病患者由来の微生物性リポペプチドに応答してIL−17が上昇することが、Infante−Duarte et al.,J Immuno 165,6107(2000)によって認められている。LPS(グラム陰性細菌)あるいはLTA(グラム陽性細菌)、LBP(細菌性リポペプチド)を含む様々な微生物性ペプチドを加えた脾細胞培養物で、IL−17が産生された(図1)。精製T細胞単独、あるいは精製マクロファージ自体はIL−17を産生しなかった。プレート結合抗CD3を用いて受容体架橋形成をした精製T細胞、及び活性化マクロファージあるいは活性化樹状細胞の上清で処理した精製T細胞ではIL−17の産生が上昇した。このことは、T細胞に作用してIL−17の産生を促進する未同定の因子を、これらの細胞が放出していることを示唆している。
【0078】
このIL−17促進作用に関係していると考えられる候補分子の発現をプロファイルしたところ、リアルタイムRT−PCRを用いて、L−23の構成成分であるp19及びp40のmRNA発現量(B.Oppmann et al.,Immunity 13,715(2000))が100〜1000倍増加することが活性化樹状細胞で観察された(データは示していない)。つまり、IL−23の効果が確認された。
【0079】
マウスIL−23構成成分は、ヒト胚性腎細胞(細胞数293)中でC末端His標識p19とFlag標識p40と共発現させて作製し、分泌されたタンパク質をニッケルアフィニティ樹脂を使用して精製した。内毒素は0.2 EU/μg以下であり、検出されなかった。培養脾細胞にIL−2(100U/ml)とConA(2.5μg/ml)を加え、Th1誘導条件(IL−12 + 抗IL−4)下、あるいはTh2誘導条件(IL−4 + 抗IFN−γ)下、あるいは精製IL−23(100ng/ml)存在下で3〜4日間培養した。その後培養物を洗浄し、ConAでさらに24時間再刺激した。様々なサイトカイン濃度をELISAを使用して測定した。ELISAの標準曲線範囲の最低稀釈に満たない濃度は、「検出不能(N.D.)」と記録した。以下は、別々に実施した3回の実験結果の典型例である。
【0080】
IL−12刺激Th1誘導条件下で培養した脾細胞によるIL−17産生は明確なものではなかった。一方Th2誘導条件下では、コントロールと比較してIL−17の増加はなかった。結果は以下にある表1に示す。
【0081】
【表1】
IL−23を加えた培養物では、投与量に応じて高濃度のIL−17産生がみられた(図2)。またIL−23では、Th1誘導条件下で観察されたものよりも高い濃度のGM−CSFがみられた。対照的に、IFN−γ濃度は、Th1誘導条件下で観察されたものよりも著しく低かった。TNF−α濃度はTh1条件と同程度であった。IL−12p40単独ではIL−17産生がみられなかった(データは示していない。)。IL−23はIL−17mRNA濃度の上昇を促進した(図2B)。IL−17mRNA濃度はIL−23を暴露した6時間のあいだに数百倍増加し、IL−23が存在し続けると高い濃度が維持された。この効果は抗IL−17抗体の存在によって抑制されなかった。これは、IL−17自体はこのプロセスに関与していないことを示唆している(データは示していない。)。さらに、最近IL−17群の一員と同定されたIL−17FのmRNAも、IL−23に応答して上方制御されたことが認められた(図2C)。
【0082】
IL−23は、記憶T細胞の増殖を促進するが未刺激T細胞の増殖は促進しないことが報告されている(上記D.M.Frucht)。よって、未刺激T細胞と記憶T細胞とを比較して、IL−23のIL−17産生に対する影響を調べた。蛍光発色セルソーター(FACS)を使用して脾細胞から精製CD4+T細胞を単離した。記憶細胞集団をCD4+CD44高もしくはCD4+CD62L低で選別し、未刺激細胞集団をCD4+CD44低もしくはCD4+CD62L高で選別した。図3にみられるように、IL−23は記憶細胞集団(CD44高とCD62L低)でのみIL−17産生を刺激し、未刺激細胞(CD44低とCD62L高)では刺激しなかった。
【0083】
IL−23が介在するIL−17産生は、IL−23と共通するp40と相互作用する、IL−12の中和抗体の存在によって完全に遮断された(図4A左側)。無関係の抗体存在下でIL−17産生が変化しなかったことから、この効果は抗体提示細胞上のFc受容体が連結したことが原因ではない。また、この抗体は、LPS活性化樹状細胞の馴化培地に応答して観察されるIL−17の産生を50%以上抑制した(図4A右側)。IL−12p40欠損マウス(系:B6.129S1−IL12btmlJm)の培養脾細胞で、野生型マウスあるいはIL−12p35欠損マウス(系:B6.129S1−IL12atmlJm)と比較して、ConA刺激に応答するIL−17産生の著しい減少が見られた(図4B)。但し、全くなくなったわけではない。
【0084】
IL−17産生におけるIL−12の役割を調べるために、漸増する濃度(0.001〜1 mM)のマウスIL−12をIL−23(1 nM)を含む培養物に加えた。図5Aで示したように、IL−12は投与量に応じてIL−17濃度を減少させた。
【0085】
さらに、IL−12受容体特異性成分である(A.O.Chua,V.L.Wilkinson,D.H.Presky,U.Gubler,J Immunol 155.4286(1995))IL−12受容体ベータ鎖2(IL−12Rβ2)(Wu,et al.,J Immunol 165,6221(2000))を欠損するマウスの脾細胞を、精製したIL−23で処理した。IL−12Rβ2−/−マウスの脾細胞はIL−23刺激に応答し、IFN−γ濃度に影響を与えることなく、刺激を与えていないコントロールに比べてIL−17産生を増加させた。驚くべきことに、これらのマウスのバックグラウンドL−17濃度は野生型マウスの10倍を超えており、これはIL−23が誘導するIL−17産生が、IL−12によって負方向に制御されている可能性のあることを示唆している。しかしながら、IL−12Rβ2ノックアウトマウスとは対照的に、IL−23p35ノックアウトマウス由来の培養脾細胞では、IL−17の上昇は確認されなかった。この違いが生じた理由は不明であるが、p35欠損状態でIL−12p40の機能が変性していることが関係している、もしくは遺伝的バックグラウンドあるいは病原体暴露の違いによるとも考えられる。
【0086】
(考察)
まとめると、これらのデータはエフェクターサイトカインとしてIL−17を発現する、第三のT細胞活性化状態の促進におけるIL−23の役割を示唆している。Th1及びTh2系は体液性免疫反応に対して細胞性免疫を促進するものとして記載されている。これらの反応によって、それぞれ細胞内外の病原体に対する重要な防御が提供され、これらの反応のうちの一方でも欠損すると特定の病原体に対する感染性が上昇する。対照的にIL−23は、本質的に先天性免疫反応の媒介体として機能すると考えられている細胞に大きく依存することを特徴とする病原体に対する適応免疫反応を促進する。IL−17はこの反応の主要なエフェクターサイトカインとして、ケモカイン産生を誘導して単球及び好中球のより迅速な動員を促進することができる。さらに、IL−23に応答して高濃度のGM−CSFが観察されたことは、骨髄細胞が増産されたことを支持する。これはさらにIL−17刺激間質細胞からG−CSFが産生することによって増強される。しかしながら、IL−17がIL−17によるICAM誘導を促進し、その結果続いて起こるT細胞応答の重要な共同誘導を提供することがわかっていることから、この適応反応の特性は骨髄系反応の食細胞に排他的に依存するものではない。
【0087】
近年いくつかの研究によって、p35欠損マウスとp40欠損マウスとの間の著しい差異が指摘されている(Decken et al.,Infect Immun.66:4994−5000(2002);Cooper et al.,J.Immunol.168:1322−1327(2002);Elkins et al.,Infection & Immunity 70:1936−1948;Holscher et al.,J.Immunol.167:6957−6966(2001))。これらの研究は、様々なモデル生物体内で免疫が介在する異物排除において、一般的にp40の欠損がp35欠損よりも有害であることがみられた点で共通している。
【0088】
多数の重篤な炎症性疾患にIL−17の発現が伴うことは、当該疾患の治療においてIL−23アンタゴニストが有望な候補薬と成りうることを示唆している。
【0089】
(実施例2)
(インターロイキン23(IL−23)欠損マウス)
インビボでIL−23とIL−17の関係をさらに調べるため、IL−23欠損マウス表現型をIL−17欠損マウスの表現型と比較した。
【0090】
(実験方法)
マウス:全てのマウスは病原体の存在しない状態で特別に飼育した。IL−12p40−/−マウスはJackson laboratory(Bar Harbor,MA)から、C57BL/6マウスはCharles River laboratories(San Diego,CA)から入手した。
【0091】
試薬:他に記載のない限り、試薬は以下の業者から購入した:抗体及びELISA試薬はBD Pharmingen(San Diego,CA)、サイトカインはR&D systems(Minneapolis,MN)、TNP結合抗原はBiosearch Technologies(Novato,CA)、組織培養試薬はInvitrogen(Carlsbad,CA)、から入手した。
【0092】
IL23p19欠損マウスの作製:マウスIL23p19遺伝子座を取り囲むゲノムDNAを、Genome Systems(Incyte Genomics,Palo Aloto,CA)のゲノムBACライブラリーのクローン198a3から単離した。IL23p19コーディング領域全体をEGFPレポーター遺伝子で置換するために立案されたターゲティングベクターを、標準的な分子クローニング技術を使用して以下のDNA断片から構築した:チミジンキナーゼ選択カセット;各々が遠心端並びに近位端上にある内生SacII及びBglII部位によって限定される、5403ベースペアから成る5’相同アーム;BamHI(5’末端)及びAflIII(3’末端)を用いてpEGFP−1(BD Clontech,Palo Alto,CA)から切除したEGFP発現カセット;PGK−neo耐性カセット;近位端の内生XhoI部位と遠心端の5’−GCTTGGTGGCCCACCTATGAT−3’(配列番号1)プライマーとによって限定される1203 bpショートアーム(図6A)。この構築物を電気穿孔法によって129/SvEv胚性幹(ES)細胞に導入すると、600のクローンのうち9つで相同組換えが発生し、G418及びガンシクロビル(Gancyclovir)で選抜した。遺伝子座ターゲティングの正確さを検証するために、ES細胞とマウスのゲノムDNAをサザンブロットによって分析した。BamHIで切断し、次いでプローブ1(オリゴヌクレオチド、5’−AGACCCTCAAAGTTCATGAC−3’(センス)(配列番号2)と5’−CTGACGGCGTTTCTCTACC−3’(アンチセンス)(配列番号3)を用いたPCRによって得られた831 bpゲノムDNAフラグメント)でメンブレンをハイブリダイゼーションし、野生型対立遺伝子に対する7027 bpのフラグメント及び正確にターゲッティングされた変異型対立遺伝子に対する11788 bpのフラグメントを得た。同様に、ゲノムDNAをEcoRIで切断し、次いでプローブ2(オリゴヌクレオチド、5’−TTTTGCCAGTGGGATACACC−3’(センス)(配列番号4)と5’−AACTGCTGGGGCTGTTACAC−3’(アンチセンス)(配列番号5)を用いたPCRによって得られた390 bpゲノムDNAフラグメント)でメンブレンをハイブリダイゼーションし、野生型対立遺伝子に対する9197 bpのフラグメント及び正確にターゲッティングされた変異型対立遺伝子に対する6211 bpのフラグメントを得た。2種のES細胞クローン(1c5並びに3h6)を未分化胚芽細胞に注入し、生殖細胞系に変異型対立遺伝子を移入させたキメラ動物を得た。日常的に行われる遺伝子型判定のため、我々は一般的なアンチセンスプライマー(5’−GCCTGGGCTCACTTTTTCTG−3’)(配列番号6)及び野生型特異的センスプライマー(5’−GCGTGAAGGGCAAGGACACC−3’)(配列番号7)、ノックアウト特異的センスプライマー(5’−AGGGGGAGGATTGGGAAGAC−3’)(配列番号8)を使用するPCRを基本とする方法を用いた。この3つ組のプライマーは野生型対立遺伝子の210 bpフラグメントと変異型対立遺伝子の289 bpフラグメントとを増幅する。PCRはRobocycler(Stratagene,La Jolla,CA)で実行し、以下の条件を用いた:94℃60秒で1サイクル、94℃30秒、58℃30秒、72℃60秒で35サイクル、72℃7秒で1サイクル。
【0093】
血液細胞サブ集団のFACS分析:脾臓及び胸腺、リンパ節を6〜8週のマウスから分離し、標準方法によって単個細胞懸濁液を調製した。末梢血液を心臓穿刺によって得、EDTAで処理して凝固を防いだ。赤血球はACK溶解緩衝液(Biosource,Camarillo,CA)を用いて溶解した。全細胞を、30分間氷上にて、2%不活性化仔ウシ心臓血清−ハンクス溶液(HBSS)でインキュベートした。次に、フィコエリスリンあるいはビオチン、Cychrome(TM)と結合させた様々な抗体を、100万細胞当たり1μg加えた同じ緩衝液で細胞を染色した。ビオチン化抗体を使用したものには、検出のためストレプトアビジン結合PE−TR複合体(Caltag,Burlingame,CA)を使用した。同じ緩衝液で2回の洗浄後、Epix−XL フローサイトメトリーシステム(Beckman Coulter Inc.,Fullerton,CA)を使用して蛍光を測定した。
【0094】
アロタイプT細胞の刺激:CD4とCD62Lの二重陽性T細胞を、ツーステップ単離法によって6〜8週のbalb/cマウス脾臓から単離した。最初に、陰性磁気細胞分離(Miltenyi,Auburn,CA)によって他の細胞種からT細胞を分離した。次にこれらの細胞をCD4とCD62Lの抗体で標識し、MoFoソーター(DakoCytomation,Fort Collins,CO)でFACS選別した。共にC57BL/6バックグラウンドにある、野生型あるいはIL−23p19−/−マウスの樹状細胞も、ツーステップ単離法によって単離した。磁気細胞分離(Militernyi,Auburn,CA)によってCD11c陽性脾細胞を陽性選別し、次いでCD11c並びにMHCクラスII、CD8に対する抗体で標識した。次に、CD11c+/MHC−II+/CD8−細胞をMoFoソーターを使用して再びFACSで選別した。実験に使用した細胞集団は全て98%以上の精製度であった。アロ刺激反応を除去するため、104の樹状細胞と105のT細胞を、それぞれペニシリン−ストレプトマイシン及び10%不活性化仔ウシ心臓血清(Hyclone,Loga,UT)を添加した計200μlのIMDMで培養した。一部の実験では、100ng/mlの細菌性リポペプチドを加えて、樹上細胞によるサイトカイン産生を誘導した。培養5日後に、ELISAによるサイトカイン測定のために120μlの上清を取り除き、代わりに各ウェル当たり1μCiの3H−チミジンを含む新たな培地を加えた。16時間後にトップカウントシンチレーションカウンターを製造者による使用説明書に従って使用し(Packard Instruments,Meriden,CT)、チミジンの取り込みを測定した。
【0095】
インビボT細胞分化:1グループにつき4個体のオスと4個体のめすマウスを免疫した。30μlのCFA(BD Biosceiences,San Diego,CA)乳剤とPBSとの1:1溶液に加えた、75μgのキーホールリンペットヘモシニアン(KLH)(Sigma,St.Louis,MO)をマウス左後方足に注入した。5日後に流入領域鼠径リンパ節及び膝窩リンパ節を摘出し、ペニシリン−ストレプトマイシン及び10%不活性化仔ウシ心臓血清(Hyclone,Logan,UT)と25μg/mlのKLHを加えたIMDMで再刺激した。増殖分析のため、96ウェルプレートに、5x105の細胞を200μlずつ3通りに播種し、培養期間の最後の18時間には各ウェル当たり1μCiの3H−チミジンを加えて112時間増殖させた。トップカウントシンチレーションカウンターを製造者による使用説明書に従って使用し(Packard Instruments,Meriden,CT)、チミジンの取り込みを測定した。サイトカイン分泌については、2.5x106個の細胞を含む1mlを48ウェルプレートで培養し、72時間後に上清を集めた。サイトカイン分泌はELISAによって判定した。提示しているデータは全部で3回行った実験のうちの一代表例である。
【0096】
遅延型アレルギー反応:200μgのメチル化ウシ血清アルブミン(mBSA)(Sigma,St.Louis,MO)をCFA(BD Biosciences,San Diego,CA)乳剤とPBSとの1:1溶液に加えて計200μlとし、これを一グループ当たり6個体のマウス腹部の3箇所に皮下注射した。免疫後8日目に、20μlの5 mg/ml mBSA−PBS溶液を後ろ足の一つに注射することよってこのマウスをチャレンジし、他方の後ろ足には20μlのPBSを注射した。7つバネ式キャリパーセット(Mitutoyo,City of Industry,CA)を使用して、チャレンジから18、42、66時間後に足甲の腫張を計測した。DTH反応の程度は、抗原を注射した足とPBSを注射した足の足甲厚みの差異から測定した。
【0097】
T細胞依存体液性反応と免疫グロブリン分析:全免疫グロブリン合計濃度を測定するために、各遺伝子型の免疫していないマウスで6〜9週目のオス8個体とメス8個体から血清を得た。全免疫グロブリンアイソタイプの合計濃度をルミネックスビーズ分析(上記Lake Placid,NY)によって測定した。OVA得意的体液性免疫反応の分析のため、各遺伝子型につき7匹のマウス(オス4とメス3)をCFAに加えたOVAで0日目に免疫し、21日目と42日目に不完全フロイントアジュバント(IFA)(Sigma,St.Louis,MO)に加えた同じ抗原でブースター免疫した。血清分析のため、免疫する前と免疫後14日目、28日目、49日目に眼窩後方の出液から血液を得た。OVA特異的免疫グロブリンアイソタイプは、OVAを捕捉剤として、また検出用にアイソタイプ特異的2次抗体を使用して、ELISAによって検出した。ELISAの直線範囲に入るよう、血清サンプルは以下のように稀釈した:IgGは1:3125000、IgG2aは1:25000、IgG2bは1:625000、IgG3及びIgM、IgA、IgEは1:1000。純粋なOVA特異的アイソタイプは市販されていないため、以前の実験でOVA免疫マウスから得た血清の稀釈シリーズを標準として使用した。結果は任意の単位として表し、最後に採取した血液で野生型グループの平均値を100とした。記憶T細胞の体液性免疫反応への寄与を調べるため、遺伝子型ごとに5〜6個体のマウスからなるグループを、0日目にCFAに加えたOVAで免疫し、21日目にIFAに加えたTNP11−OVAでブースター免疫した。血清分析のため、免疫前と免疫後14日目及び28日目に眼窩後方の出液から血液を得た。捕捉剤としてTNP28−BSAを、また検出用にアイソタイプ特異的2次抗体を使用して、ELISAによってTNP特異的免疫グロブリンアイソタイプを検出した。TNP特異的IgG1については、市販されている標準を使用した。TNP特異的IgG2aについては、以前の実験でTNP免疫マウスから得た血清の稀釈シリーズを使用し、結果は上記に記載したとおりに算出した。試料の稀釈率は、IgG1用では1:31250、IgG2a用では1:1250であった。
【0098】
T細胞非依存体液性反応:各遺伝子型につき6個体から成るグループを、PBSに加えた50μgのTNP1−LPSあるいは100μgのTNP20−AECM−Ficollで腹膜内に免疫した。10日後に血清を採取し、捕捉剤としてTNP28−BSAを、また検出用にIgM特異的2次抗体を使用して、TNP特異的IgMをELISAによって分析した。TNP特異的IgM抗体はELISAの標準物として使用した。試料の稀釈率は、Ficoll用では1:1280、LPS用では1:5120であった。
【0099】
(結果)
IL−23p19遺伝子欠損:IL−23のインビボ非重複的影響を調べるため、IL−23を欠損するがIL−12を産生する成分を残したマウスを作製した。4つのエキソンから構成される、p19の全コーディング領域を、強化GFP(eGFP)レポーター遺伝子とネオマイシン耐性カセットで置換したターゲティングベクターを構築した(図6)。1c5と3h6の二つの正確にターゲットされたES細胞クローンによって生殖細胞系伝播を行い、変異は、1染色体当たり3つのマーカーを用いたスピードコンジェニック法によってC57BL/6バックグラウンドへ戻し交雑した。この分析に基づき、実験のため、129バックグラウンドからの遺伝的混入が5%未満のマウスを選別した。eGFPの発現パターンは内生p19mRNAの発現パターンに相当した(データは示していない。)。
【0100】
IL−23p19−/−マウスは顕性表現型を持たない。IL−23/IL−12二重欠損となるIL−12p40−/−の表現型から予測されたとおり、IL−23p19−/−動物は顕性表現型を示さず、メンデルの法則に従った頻度で生まれる。組織病理学的な試験上、臓器・器官に異常は見られず、さらに臨床化学的数値並びに血液学的数値の試験でも、野生型とノックアツト型の間に差異は見られなかった。さらに、IL−23p19−/−マウスの体の大きさ並びに体重は標準であり、オスメス共に完全に成熟した。様々な細胞表面のマーカーを用いて胸腺細胞及び脾細胞、末梢血液白血球をフローサイトメトリー分析したところ、野生型マウスとIL−23p19−/−マウスの間に主だった差異は見られなかった(表2)。IL−23は記憶T細胞に作用することが知られているため、各サブグループについて記憶細胞(CD44高/CD62L−)と未刺激細胞(CD62L+)の比を調べたが、野生型マウスとIL−23p19−/−マウスの間に差異は見られなかった。分析全体でこの二つの遺伝子型間で見られた唯一の注目すべき差異は、樹状細胞集団がわずかにCD8+表現型へ傾いている点にある。この影響は小さなものであるが、データが厳しいものであるために統計的に有意となり、IL−23が抗原提示細胞に影響を与えているという最近の観察結果に矛盾しないと考えられる。まとめると、IL−23は通常の発生に必要とされるものではないもようであり、eGFPカセットの導入によって実験に用いたどの細胞も影響を受けない。
【0101】
【表2】
IL−23p19−/−マウスの体液性免疫反応。体液性免疫反応の発生におけるIL−23の役割を調べるため、最初に、各遺伝子型16個体のマウスの血清で、免疫グロブリンの全アイソタイプの合計濃度を測定した。野生型マウスとIL−23p19−/−マウスの間に統計的に有意な差異は見られず(図7)、このことはIL−23が通常の免疫グロブリン濃度の維持に決定的に必要なものではないことを示している。次に我々は、佐剤に加えて導入されるタンパク質抗原に対するT細胞依存性体液性免疫反応の発生に、IL−23が関係しているか否かを調べた。この目的のため、1グループ7個体のマウスを其々卵白アルブミン(OVA)で免疫した。免疫前血清のOVA特異的免疫グロブリンアイソタイプを分析し(全て陰性、データは示していない。)、2回の免疫後にその都度分析を行った(図8)。初回免疫後、OVA特異的IgG1及びIgG2b、IgG3、IgEについては有意な差はどのグループ間にもなかった。しかし、IL−23p19−/−及びIL−12p40−/−マウスで、初回免疫後OVA特異的IgG2a及びIgAの有意な減少が観察された。予測のとおり、2度目の免疫後には全アイソタイプの濃度が劇的に増加した。この時点でIL−23p19−/−及びIL−12p40−/−の両マウスとも試験したアイソタイプ量は有意に少なかった。これら二つの遺伝子型の差異は通常有意なものではなく、内生IL−12はIL−23欠損状態で体液性免疫反応に主要な役割を果たしてはいないことを示している。
【0102】
体液性免疫反応はB細胞及びT細胞の両方が正しく機能することに依存しているため、我々は次に、どのようなメカニズムによってIL−23がその誘発効果を発揮するのかを試験しようと努めた。IL−23の欠損が直接B細胞の機能に影響を与えているか否かを試験するために、IL−23欠損マウスでT細胞非依存性(TI)抗原に対するB細胞応答を上昇させる能力を調べた。TI−1抗原、トリニトロフェル(TNP)LPSはCD14及びTLR4を介してB細胞の活性化を導き、TI−2抗原、TNP−フィコールはB細胞表面受容体のクラスター形成を介してB細胞を活性化する。IL−23p19−/−マウスは、双方のタイプの抗原に対する通常のB細胞応答を上昇させた(図9)。これはIL−23がT細胞非依存性B細胞応答に関与していないことを示している。さらに、IL−23p19−/−マウス由来のB細胞は、インビトロでLPS並びに抗IgM、抗CD40に反応して普通に増殖し、IL−4に応答する正常なアイソタイプスイッチがみられた(データは示していない。)。B細胞のIL−23刺激は、増殖の増加あるいはアイソタイプスイッチを導くものではなく(データは示していない。)、即ちIL−23は直接B細胞の機能に影響しないと、我々は結論付けた。
【0103】
体液性免疫反応は主に2次免疫の段階で損なわれ、またIL−23p19−/−マウスのB細胞の機能は正常であるもようであるため、抗原特異的ヘルパーT細胞を無意味に再活性化するとこうした表現型が現れるという仮説を立てた。この問題により直接的に対応するため、我々は5〜6個体のマウスのグループを0日目にOVAで免疫し、次いで14日目にTNP接合OVAで2次免疫した。この免疫方法を用いるとOVAに特異的な記憶T細胞が2次免疫によって再活性化されるが、TNPに対して特異性を持つ新規のB細胞群は二度目の免疫時にのみ活性化される。つまり、OVA特異的記憶B細胞小群はTNP特異的な免疫グロブリンの形成に関与しない。再活性化後7日目に、我々は血清中のTNP特異的IgG1及びIgG2aについて試験し、IL−23p19−/−マウスではどちらのアイソタイプも著しく減少していることがわかった(図10A,B)。さらにこの結果は、T細胞依存的B細胞応答におけるIL−23の重要性を強調するものである。
【0104】
IL−23p19−/−マウスにおける遅延型アレルギー反応(DTH) IL−23p19−/−マウスにおける記憶CD4+細胞の機能の詳細を調べるため、このマウスのDTH反応を上昇させる性質について評価した。DTH反応はT細胞に強く依存しており、IL−12p40−/−マウスでこの反応は欠損し、IL−12p35欠損マウスでは正常のようである。このことはDTH反応がIL−23によって仲介されている可能性のあることを示唆している。この問題に対応するため、野生型及びIL−23p19−/−、IL−12p40−/−マウス6個体のグループを、完全フロイントアジュバント(CFA)に加えたメチル化BSA(mBSA)で感作し、7日後にmBSAを足に注射してDTH反応を誘発した。非特異的な腫張のためのコントロールとして、感作していない野生型マウスのグループにも免疫チャレンジした。チャレンジから18、42、66時間後に特異的な足甲腫張を測定したところ、IL−12p40−/−とL−23p19−/−の双方とも同程度に、野生型マウスに比べて抑制されていた(図11)。反応曲線もIL−12p40−/−とIL−23p19−/−で類似しており、42時間目と66時間目で腫張は非常に抑制されていたが、18時間目では抑制されていなかった。つまり、IL−23はDTH反応の本質的な仲介物であり、IL−23が欠損していると記憶CD4+T細胞による反応効果が無効となる。
【0105】
IL−23p19−/−樹状細胞がT細胞を刺激する能力。IL−23p19−/−マウスにみられる異常がIL−23欠損抗原提示細胞による有効性のないT細胞初回抗原刺激によるものである可能性を除外するため、我々は次にIL−23p19−/−DCがbalb/cマウスの脾臓から単離したアロタイプ未刺激CD4+T細胞を刺激する能力を調べた。DCがない状態で、これらのT細胞は増殖せず、検出できる量のサイトカインの分泌もなかった(図12A)。それぞれの遺伝子型にDCを加えると、両遺伝子型とも強健に増殖し、IL−17を産生した。これまでにIL−23がIL−17の強力な誘導物質であることを示したので、我々は次に、強力なトール様受容体2アゴニストでありIL−23産生誘導物質である細菌性リポペプチドを用いてDCによるIL−23産生を誘導した。これらの条件下でwtDCはT細胞によるIL−17産生を強力に誘導し(図12A下)、IL−23p19−/−DCで刺激されたT細胞によるIL−17産生量は著しく少なかった。これらの実験結果をより生理学的な条件下で確認するために、我々は次に8個体のマウスからなるグループを完全フロイントアジュバント(CFA)に加えたキーホール リンペットヘモシニアン(KLH)で免疫し、インビボでT細胞反応を誘発させた。5日後に流入領域リンパ節(LNC)を採取してインビトロにてKLHで再刺激した。これもまた、IL−23p19−/−マウスから採取したLNCによるIL−17産生量は著しく少ないことが認められた(図12B下)。LNC増殖は双方の遺伝子型で同程度であり(図12B下)、これはwtマウスとIL−23p19−/−マウスの双方とも抗原に対する強健なT細胞応答を上昇させていることを示している。要するに、IL−23欠損によって樹状細胞の誘発的能力が著しく損なわれているのではなく、T細胞によるIL−17産生が減衰している。
【0106】
(考察)
IL−23p19欠損マウスを用いて、IL−23のインビボでの非重複性機能を分析し、IL−23の欠損が、体液性免疫反応やDTH反応等のT細胞依存的免疫反応を減衰することを見出した。
【0107】
体液性免疫反応の著しい減衰がIL−23p19−/−マウスでみられ、全ての免疫グロブリンアイソタイプに影響を与えていた。同時にIL−12p40−/−マウスの反応も、同程度かあるいはやや高い程度に抑制された。これらの結果はIL−23が有効な体液性免疫反応に絶対的に必要であるという結論を支持するものであるが、一方、IL−12p35−/−マウスを使用してIL−12が存在しない状態での正常な体液反応にIL−23が必要十分なものであるか否かは、今後判定すべきで点である。
【0108】
まとめると、IL−23p19−/−マウスでは、DHTの抑制及び体液性免疫反応で生じる、インビボT細胞応答が減衰しており、表現型的にはIL−17欠損マウスと類似する。我々の結果は、IL−23もしくはそのアゴニストの臨床的投与が、免疫処方において、並びに免疫無防備状態にある患者において、T細胞機能を支えるのに有益である可能性を示している。
【0109】
本発明は具体的な実施例と考える参考文献と共に記載されているが、本発明は当該実施例に限定されないことを理解すべきである。反対に本発明は、附属する請求事項の本質と範囲の内に含まれる多様な変法と類似法を包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】種々の細胞におけるIL−17の産生(A):C57/BL−6マウスから脾臓の単個細胞懸濁液を調製し、密度勾配遠心によって懸濁脾細胞から単核細胞を分離した。2x106細胞/mlの細胞懸濁液を微生物由来リポペプチドLBP(100ng/ml)もしくはLPS(100ng/ml)、LTA(100ng/ml)の有る無しで3日間培養した。その後細胞を回収し、ELISA(酵素免疫吸着法)を用いてIL−17の分析を行った。(B):CD90標識細胞をFACSで陽性選別することで、マウス脾細胞から精製したT細胞を得た。この細胞をプレート結合抗CD3抗体もしくは活性化樹状細胞(LPSで処理)の上清の有る無しで3日間培養し(1x106細胞/ml)、培養物上清を回収してELISAキットを用いてIL−17濃度を測定した。マクロファージをrmGM−CSF(2ng/ml)とrmIL−4(1000U/ml)で4日間処理し、洗浄してLPS(0.5μg/ml)で再活性化させることによって、樹状細胞をマクロファージ(脾細胞懸濁液から接着細胞集団として得た。)から得た。3回の独立した実験による代表的な結果を示す。
【図2A】IL−23がIL−17の産生を刺激する。A.脾細胞から単離した単核細胞を100U/mlの組換えIL−2と共に培養し(2x106細胞/ml)、様々な濃度のIL−23(0.1〜1000ng/ml)の有る無しで6日間培養した。培養物上清に集まったIL−17濃度をELISAを用いて測定した。
【図2B】IL−23がIL−17の産生を刺激する。B.IL−23処理によるIL−17mRNA量の変化を定量RT−PCRによって測定した。PCR反応のCt(サイクル閾値)の相対的変化をプロットした。各サンプルのデータを各サンプル中に存在するグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素mRNA量に対して標準化し、次に刺激前状態の時間ゼロに存在するIL−17mRNA量に対して再びサンプル間で標準化した。各Ct値は1回のPCRサイクルに対応しているので、1CtはmRNA量2倍の変化にほぼ等しい。5Ct変化量および10Ct変化量に対するmRNA倍数のおよその差を括弧内に記している。実験は4個体のマウス由来の脾細胞を用いて行い、個々のデータポイントをxで表し、平均Ct変化量を棒グラフで示した。
【図2C】IL−23がIL−17の産生を刺激する。C.IL−23処理に応答した、IL−17群に属するIL−17FのmRNA量の変化を図2Bの説明のように定量RT−PCRによって測定した。
【図3】IL−23は記憶T細胞に作用してIL−17産生を誘導する。マウス脾細胞の単個細胞懸濁液から単離した単核細胞を(a)CyC−CD4 + PE−CD44もしくは(b)CyC−CD4 + PE−CD62Lで染色し、記憶表現型についてCD44高/CD62L低、あるいは未刺激表現型についてCD44低/CD62高であるCD4+細胞を選別した。選別した細胞は100U/mlの組換えIL−2を加えて、IL−23並びにプレート結合抗CD3(5μg/ml)、抗CD28(1μg/ml)の有る無しで5日間培養して洗浄し、抗CD3抗体でさらに24時間再刺激した。上清を集め、ELISAを用いてL−17濃度を測定した。
【図4A】IL12p40抗体はIL−23依存的IL−17産生を阻害する:(A)漸増する濃度のp40抗体もしくはアイソタイプが一致するが無関係のコントロール抗体にIL−23(100ng/ml)を加えて37℃で1時間、プレインキュベートした。次にマウス脾細胞から単離した単核細胞(2x106細胞/ml)を加え、組換えIL−2の有る無しでさらに5〜6日間インキュベートした。上清を集め、ELISAを用いてL−17濃度を測定した(左側)。最適濃度のIL−12p40抗体もしくはアイソタイプが一致するが無関係のコントロール抗体は、LPSで刺激した樹状細胞(10% v/v)の馴化培地を加えて37℃で1時間、プレインキュベートし、次にマウス脾臓から単離した単核細胞を加えてIL−2存在下でさらに5日間インキュベートした。上清を集め、ELISAを用いてL−17濃度を測定した(右側)。
【図4B】IL12p40抗体はIL−23依存的IL−17産生を阻害する:(B)野生型マウス(C57/BL6)もしくはIL−12の一構成成分を欠いたマウス[例えばIL12a−/−(p35ノックアウト)あるいはIL12b−/−(p40ノックアウト)]の脾細胞から単離した単核細胞を、ConA存在下で3日間培養し、上清のIL−17濃度をELISAを用いて測定した。
【図5A】IL−17産生に対するIL−12の影響:(A)脾細胞培養物から単離した単核細胞を、精製したIL−23(1 nM)並びに表示濃度のIL−12存在下で5日間培養し、次に洗浄してConAでさらに24時間刺激した。細胞上清のIL−17濃度をELISAキットを用いて測定した。
【図5B】IL−17産生に対するIL−12の影響:(B)野生型もしくはIL−12Rβ2欠乏マウス(IL−12Rβ2−/−ko)由来の脾細胞培養物から単離した単核細胞を、精製したIL−23(1 nM)の有る無しで5日間培養し、次に洗浄してConAでさらに24時間刺激した。細胞上清のIL−17濃度及びIFN−γ濃度をELISAキットを用いて測定した。
【図6】IL−23p19遺伝子座のターゲティング。A:天然IL−23p19遺伝子座(上)、ターゲット構造(中)、正確にターゲットされた遺伝子座(下)を、二重斜線で示した部分を除き一定の比例で描いた。白四角部分はコーディングエキソン、あや目四角部分はそのメッセンジャーRNA(mRNA)の5’及び3’非転写部位をコードしているエキソンを表している。p19遺伝子の4つのコーディングエキソンに番号を振った。矢じりのある四角部分はネオマイシン(neo)及びチミジンキナーゼ(tK)選択カセットのプロモーター部位を示している。EGFPとある四角部分は強化緑色蛍光タンパク質レポーター遺伝子の部位を示している。クローニングとアームの分析に用いた制限部位は以下のように表示してある。B、BamHI;S、SacII;E、Eco RI;Bg、Bgl II;X、Xho I。ショートアームを増幅するために使用したアンチセンスプライマーの位置は、文字Pと矢印で示している。Bam HI及びEco RIで切断してできた制限フラグメントのサイズは、野生型(WT)及び変異型(MUT)部位に表示しており、これらのフラグメントをサザンブロットで検出するために用いた2つのプローブの部位を太線で示している。B及びC:各々プローブ1で釣り上げられたBam HI切断物とプローブIIで釣り上げられたEco RI切断物とのサザンブロット分析。DNAは野生型(WT)胚性幹(ES)細胞及びESクローン1c5、野生型マウス、ヘテロ接合性(HET)マウス、ノックアウト(KO)マウスから抽出した。バンドの同定をブロットの左側に示し、分子量は右側に示している。
【図7】IL−23p19−/−マウスの全血清免疫グロブリン濃度。16の野生型マウス(黒丸)及びIL−23p19−/−マウス(白丸)について、免疫グロブリンアイソタイプの血清濃度をアイソタイプ特異的ELISAによって測定した。免疫グロブリンアイソタイプはグラフの下側に表示している。
【図8】L−23p19−/−マウスにおける体液性免疫反応。A−G:初回及び二度目の卵白アルブミン(OVA)による免疫後の、IgG1(A)並びにIgG2a(B)、IgG2b(C)、IgG3(D)、IgE(E)、IgA(F)のOVA特異的濃度。黒丸は野生型マウス、白丸はL−23p19−/−マウス、灰色丸はIL−12p40−/−マウス。任意に使用する単位は方法と材料にて記載のとおりに計算したものである。各グループの平均は、黒横線で示しており、数値はグラフの下側に示している。星印はP値が0.05未満で統計的に有意であることを示す。
【図9】L−23p19−/−マウスにおいてT細胞非依存性B細胞の反応は正常である。TNP−LPS(タイプI、左側)あるいはTNP−Ficoll(タイプII、右側)で免疫したマウスについて、TNP特異的IgMの血清濃度をELISAによって測定した。
【図10】記憶T細胞の機能。野生型(黒丸)及びL−23p19−/−マウス(白丸)を0日目に卵白アルブミンで免疫し、21日目にTNP−OVAでチャレンジした。0日目、14日目、26日目に血清を採取してTNP特異的IgG1(A)及びIgG2a(B)の存在をELISAによって調べた。IgG1については市販されている標準品を使用した。IgG2については、任意の単位を方法と材料にて記載のとおりに計算した。
【図11】遅延型アレルギー(DTH)反応。抗原特異的腫脹は、抗原チャレンジ直前に測定した値に対する足甲厚みの増加率として計算した。結果はグループごとに計6匹のマウスの平均を取り、誤差棒線は標準偏差を表している。抗原のみによって引き起こされる腫脹に対するコントロールとして、感作させなかった別の野生型グループを用いた。内側の星印は、対応するグループと野生型との差異が統計的に有意である(p<0.05)ことを示している。WT、野生型;p19ko、IL−23p19−/−マウス;p40ko、L−12p40−/−マウス。
【図12】一方正常T細胞の初回抗原刺激によって、IL−23p19−/−抗原提示細胞によって産生されるIL−17濃度が減少した。A:野生型(黒柱)あるいはIL−23p19−/−(白柱)樹状細胞との組み合わせにおける、balb/c T細胞のインビトロアロ刺激実験。未刺激CD4+ T細胞とCD8−/CD11c+/MHC−II+細胞をFACSによって選別し、微生物性リポペプチド(BLP)の有る無しで培養した。培養5日後に増殖と上清中のサイトカイン濃度を測定した。APC、抗原提示細胞。B:インビトロT細胞反応。KLHで免疫した野生型(黒柱)あるいはIL−23p19−/−(白柱)マウス由来のリンパ節細胞懸濁液を単離し、インビトロにて25μg/ml KLHで再刺激した。培養5日後に増殖とIL−17濃度を測定した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞によるインターロイキン−17(IL−17)産生を阻害するための方法であって、該T細胞を、インターロイキン−23(IL−23)のアンタゴニストで処理する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記T細胞が、活性化T細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記T細胞が、記憶細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記処理が、インビボで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記処理が、哺乳動物被験体中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記哺乳動物被験体が、ヒトである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アンタゴニストが、抗IL−23または抗IL−23レセプター抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、抗体フラグメントである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体フラグメントが、Fv、Fab、Fab’、およびF(ab’)2からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が、全長抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が、キメラ抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物被験体中のインターロイキン17(IL−17)の上昇した発現によって特徴付けられる炎症疾患の処置のための方法であって、有効量のインターロイキン−23(IL−23)のアンタゴニストを該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項15】
前記哺乳動物被験体が、ヒトである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記炎症疾患が、慢性炎症、自己免疫性糖尿病、慢性関節リウマチ(RA)、リウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎および他の関節炎状態、多発性硬化症(MS)、喘息、全身性エリテマトーデス、成人呼吸窮迫症候群、ベーチェット病、乾癬、慢性肺炎症疾患、対宿主性移植片反応、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患(IBD)、アルツハイマー病、ならびに発熱から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記炎症疾患が、慢性炎症疾患である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記慢性炎症疾患が、慢性関節リウマチ(RA)、対宿主性移植片反応、多発性硬化症(MS)、および乾癬からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アンタゴニストが、抗IL−23または抗IL−23レセプター抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、抗体フラグメントである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体フラグメントが、Fv、Fab、Fab’、およびF(ab’)2からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、全長抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が、キメラ抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記アンタゴニストが、さらなる治療薬剤と組み合わせて投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記さらなる治療薬剤が、抗炎症分子である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗炎症分子が、コルチコステロイドおよび非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
抗炎症薬剤を同定するための方法であって、以下の工程:
(a)T細胞の培養物を、IL−23とともに、候補分子の存在下および不存在下でインキュベートする工程;
(b)該培養物中でのIL−17のレベルをモニタリングする工程;および
(c)該候補分子の存在下でのIL−17のレベルが、該候補分子の不存在下においてよりも低い場合に、該候補分子を抗炎症薬剤として同定する工程
を包含する、方法。
【請求項30】
前記候補分子が、非ペプチド性有機低分子である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記候補分子が、ペプチドである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記候補分子が、ポリペプチドである、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記候補分子が、抗体である、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記T細胞が、活性化T細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記T細胞が、記憶細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
IL−17のレベルが、ELISAによってモニタリングされる、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
請求項29に記載の方法によって同定された、抗炎症薬剤。
【請求項38】
哺乳動物被験体中でのIL−17産生を誘導するための方法であって、IL−23アゴニストを該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項39】
前記哺乳動物被験体が、ヒトである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ヒト被験体が、細菌感染に曝露されている、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ヒト被験体が、Mycobacterium tuberculosisによる感染に曝露されている、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記IL−23アゴニストが、抗体である、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記抗体が、抗IL−23または抗IL−23レセプター抗体である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記抗体が、抗体フラグメントである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記抗体フラグメントが、Fv、Fab、Fab’、およびF(ab’)2からなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記抗体が、全長抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記抗体が、キメラ抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項1】
T細胞によるインターロイキン−17(IL−17)産生を阻害するための方法であって、該T細胞を、インターロイキン−23(IL−23)のアンタゴニストで処理する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記T細胞が、活性化T細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記T細胞が、記憶細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記処理が、インビボで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記処理が、哺乳動物被験体中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記哺乳動物被験体が、ヒトである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アンタゴニストが、抗IL−23または抗IL−23レセプター抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、抗体フラグメントである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体フラグメントが、Fv、Fab、Fab’、およびF(ab’)2からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が、全長抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が、キメラ抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物被験体中のインターロイキン17(IL−17)の上昇した発現によって特徴付けられる炎症疾患の処置のための方法であって、有効量のインターロイキン−23(IL−23)のアンタゴニストを該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項15】
前記哺乳動物被験体が、ヒトである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記炎症疾患が、慢性炎症、自己免疫性糖尿病、慢性関節リウマチ(RA)、リウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎および他の関節炎状態、多発性硬化症(MS)、喘息、全身性エリテマトーデス、成人呼吸窮迫症候群、ベーチェット病、乾癬、慢性肺炎症疾患、対宿主性移植片反応、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患(IBD)、アルツハイマー病、ならびに発熱から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記炎症疾患が、慢性炎症疾患である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記慢性炎症疾患が、慢性関節リウマチ(RA)、対宿主性移植片反応、多発性硬化症(MS)、および乾癬からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アンタゴニストが、抗IL−23または抗IL−23レセプター抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、抗体フラグメントである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体フラグメントが、Fv、Fab、Fab’、およびF(ab’)2からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、全長抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が、キメラ抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記アンタゴニストが、さらなる治療薬剤と組み合わせて投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記さらなる治療薬剤が、抗炎症分子である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗炎症分子が、コルチコステロイドおよび非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
抗炎症薬剤を同定するための方法であって、以下の工程:
(a)T細胞の培養物を、IL−23とともに、候補分子の存在下および不存在下でインキュベートする工程;
(b)該培養物中でのIL−17のレベルをモニタリングする工程;および
(c)該候補分子の存在下でのIL−17のレベルが、該候補分子の不存在下においてよりも低い場合に、該候補分子を抗炎症薬剤として同定する工程
を包含する、方法。
【請求項30】
前記候補分子が、非ペプチド性有機低分子である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記候補分子が、ペプチドである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記候補分子が、ポリペプチドである、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記候補分子が、抗体である、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記T細胞が、活性化T細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記T細胞が、記憶細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
IL−17のレベルが、ELISAによってモニタリングされる、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
請求項29に記載の方法によって同定された、抗炎症薬剤。
【請求項38】
哺乳動物被験体中でのIL−17産生を誘導するための方法であって、IL−23アゴニストを該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項39】
前記哺乳動物被験体が、ヒトである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ヒト被験体が、細菌感染に曝露されている、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ヒト被験体が、Mycobacterium tuberculosisによる感染に曝露されている、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記IL−23アゴニストが、抗体である、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記抗体が、抗IL−23または抗IL−23レセプター抗体である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記抗体が、抗体フラグメントである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記抗体フラグメントが、Fv、Fab、Fab’、およびF(ab’)2からなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記抗体が、全長抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記抗体が、キメラ抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項43に記載の方法。
【図1】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−514004(P2006−514004A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550229(P2004−550229)
【出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/034429
【国際公開番号】WO2004/042009
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/034429
【国際公開番号】WO2004/042009
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]