説明

IL−21受容体アンタゴニスト

ヘテロ二量体受容体であるIL-21/IL-2Rに対するモノクローナル抗体を含む、IL-21受容体およびIL-21受容体を含む多量体複合体に対するモノクローナル抗体が調製された。本発明はまた、前記抗体を作製する方法も説明する。かつ、本発明はまた、免疫応答を抑制するために前記抗体を使用する段階を含む治療方法も説明する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
サイトカインは、一般に、造血系統の細胞の増殖もしくは分化を刺激するか、または、身体の免疫応答メカニズムおよび炎症応答メカニズムに関与する。インターロイキンは、免疫学的応答を媒介するサイトカインのファミリーである。多数のサイトカインを産生し、かつ抗原に対する適応免疫を提供するT細胞が、免疫応答の中心である。T細胞によって産生されるサイトカインは、1型および2型に分類されている(Kelso, A. Immun. Cell Biol. 76:300-317, 1998(非特許文献1))。1型サイトカインには、IL-2、IFN-γ、LT-αが含まれ、炎症応答、ウイルス免疫、細胞内寄生虫免疫、および同種移植拒絶に関与している。2型サイトカインには、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、およびIL-13が含まれ、体液性応答、蠕虫免疫(helminth immunity)、およびアレルギー応答に関与している。1型および2型に共通のサイトカインには、IL-3、GM-CSF、およびTNF-αが含まれる。1型および2型を産生するT細胞集団が、様々なタイプの炎症組織に優先的に遊走することを示唆する証拠がいくらか存在する。
【0002】
サイトカインに結合する受容体は、典型的には、高い親和力でサイトカインに結合し、かつ、特定の受容体サブユニットの細胞質内部分を介して、この結合事象を細胞に伝達する、1つまたは複数の内在性膜タンパク質から構成される。サイトカイン受容体は、細胞外のリガンド結合ドメインの類似性に基づいて、いくつかのクラスにグループ分けされている。例えば、インターフェロンの結合および/または作用の伝達を担っている受容体鎖は、特徴的な200残基の細胞外ドメインに基づき、クラスIIサイトカイン受容体ファミリーのメンバーである。
【0003】
免疫系は、病原体、すなわち、細菌、ウイルス、真菌などによって引き起こされる疾患、ならびに、身体自身の細胞および組織の異常増殖によって引き起こされる疾患(すなわち癌性腫瘍)に対抗する、身体の一次防御である。通常、免疫系は、身体の正常細胞または「自己」と外来病原体もしくは異常細胞または「非自己」とを区別することができる。免疫系が自分自身の身体に反応しないようにするプロセスは、トレランスと呼ばれる。時折、免疫系は、「自己」を正常と認識する能力を失い、組織または細胞を対象とするその後の応答はトレランスを失い、自己免疫の状態となる。自己免疫に起因する病態は、重篤な臨床転帰をしばしば有し、かつ、世界中、特に先進国における主要な健康問題の1つである。
【0004】
これらのサイトカインおよびそれらの受容体のインビボでの活性が実証されたことから、サイトカインアンタゴニストの並外れた臨床的可能性およびそれらに対する要求が示される。本発明は、新しいサイトカインアンタゴニストまたは結合相手、造血サイトカイン受容体に対する抗体、ならびに関連する組成物および方法を提供することによって、この要求に対処する。
【0005】
本発明は、本明細書における教示から当業者に当然明らかであるこれらの用途および他の用途のために、このような抗体を提供する。
【0006】
【非特許文献1】Kelso, A. Immun. Cell Biol. 76:300-317, 1998
【発明の開示】
【0007】
発明の簡単な概要
1つの局面において、本発明は、IL-21R、すなわちIL-21受容体(「SEQ ID NO:2」もしくは「zalpha11」)を含む受容体または多量体もしくはヘテロ二量体の受容体複合体に特異的に結合する、抗体、モノクローナル抗体、および抗体断片を提供する。例示的な抗体には、中和抗体が含まれ、かつ、マウスモノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体に由来するヒト化抗体、およびヒトモノクローナル抗体であってよい。例示的な抗体断片には、F(ab')2、F(ab)2、Fab'、Fab、Fv、scFv、および最小限の認識単位が含まれる。中和抗体は、好ましくは、IL-21受容体またはIL-21受容体を含む受容体複合体に結合し、その結果、IL-21受容体または受容体複合体へのIL-21の結合が妨害、阻害、減少、拮抗、または相殺される。
【0008】
別の局面において、本発明はまた、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその断片に特異的に結合する抗体または抗体断片に特異的に結合する、抗イディオタイプ抗体または抗イディオタイプ抗体断片も提供する。例示的な抗イディオタイプ抗体は、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:4からなるヘテロ二量体受容体に特異的に結合する抗体に結合する。
【0009】
別の局面において、本発明は、以下からなる群より選択される抗原受容体複合体に結合するモノクローナル抗体を提供する:(a)SEQ ID NO:2を含むホモ二量体受容体複合体;(b)SEQ ID NO:2とクラスIサイトカイン受容体ポリペプチドとを含む、ヘテロ二量体または多量体の受容体複合体;(c)SEQ ID NO:2とSEQ ID NO:4を含むIL-2Rγ受容体ポリペプチドとを含む、ヘテロ二量体または多量体の受容体複合体。
【0010】
別の局面において、本発明は、以下からなる群より選択される抗原受容体複合体のエピトープに結合するモノクローナル抗体を提供する:(a)SEQ ID NO:2を含むホモ二量体受容体複合体;(b)SEQ ID NO:2とクラスIサイトカイン受容体ポリペプチドとを含む、ヘテロ二量体または多量体の受容体複合体;(c)SEQ ID NO:2とSEQ ID NO:4を含むIL-2Rγ受容体ポリペプチドとを含む、ヘテロ二量体または多量体の受容体複合体。
【0011】
別の局面において、本発明は、以下の段階を含む、受容体ポリペプチドに対する抗体を作製する方法を提供する:以下からなる群より選択される受容体ポリペプチド複合体を動物に接種する段階:(a)SEQ ID NO:2を含むホモ二量体受容体複合体を含むポリペプチド;(b)SEQ ID NO:2を含むヘテロ二量体受容体または多量体の受容体複合体を含むポリペプチド;(c)SEQ ID NO:2を含み、かつ、クラスIサイトカイン受容体ポリペプチドをさらに含むヘテロ二量体受容体または多量体の受容体複合体を含むポリペプチド;および(d)SEQ ID NO:2を含み、かつ、IL-2Rγ受容体ポリペプチド(SEQ ID NO:4)をさらに含むヘテロ二量体受容体または多量体の受容体複合体を含むポリペプチド;(ここで、ポリペプチド複合体は、動物の免疫応答を誘発して、抗体を産生させる);ならびに、動物から抗体を単離する段階。
【0012】
別の局面において、本発明は、上記に開示した方法によって作製される抗体であって、SEQ ID NO:2を含む受容体ポリペプチドを含む、ホモ二量体、ヘテロ二量体、または多量体の受容体複合体に特異的に結合する抗体を提供する。1つの態様において、上記に開示される抗体は、モノクローナル抗体である。
【0013】
別の局面において、本発明は、上記に開示した、ホモ二量体、ヘテロ二量体、または多量体の受容体複合体に特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマを提供する。
【0014】
別の局面において、本発明は、炎症性疾患の治療的処置において有用である、IL-21受容体またはIL-21受容体を含む複合体のIL-21リガンドへの結合に対するアンタゴニスト、例えば抗IL-21R抗体または抗IL-21受容体/IL-2Rγ抗体などを提供する。例えば、抗IL-21受容体抗体または抗IL-21受容体/IL-2Rγ抗体は、膵炎、I型糖尿病(IDDM)、グレーブス病、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、多発性硬化症、関節リウマチ、憩室症、全身性エリテマトーデス、乾癬、強直性脊椎炎、強皮症、乾癬性関節炎、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病(GVHD)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、IgA腎症、移植片対宿主病、宿主対移植片病、アトピー性皮膚炎、潰瘍性結腸炎、および喘息なる群より選択される自己免疫疾患の治療において有用である。
【0015】
本発明のこれらの局面および他の局面は、以下の本発明の詳細な説明を参照すると、明らかになると考えられる。
【0016】
以下の定義は、本明細書において説明する本発明の理解を容易にするために提供される。
【0017】
「抗体」または「抗体ペプチド」という用語は、完全な抗体、または特異的結合について完全な抗体と競合するその結合断片を意味し、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全なヒト抗体、および二重特異性抗体が含まれる。特定の態様において、結合断片は、組換えDNA技術によって作製される。さらなる態様において、結合断片は、完全な抗体の酵素的切断または化学的切断によって作製される。結合断片には、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、および単鎖抗体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0018】
「単離された抗体」という用語は、その天然環境の構成要素から、同定および分離され、かつ/または回収された抗体を意味する。その天然環境の混入物構成要素は、抗体の診断的使用および治療的使用を妨げると思われる材料であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク性溶質または非タンパク性溶質が含まれ得る。好ましい態様において、抗体は、(1)ローリー法によって決定した場合に、抗体の95重量%を上回るまで、および最も好ましくは99重量%を上回るまで、(2)スピニングカップ配列決定装置の使用によってN末端もしくは内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または、(3)クーマシーブルー染色、もしくは好ましくは銀染色を用いる、還元条件もしくは非還元条件下でのSDS-PAGEによって、均質になるまで、精製される。単離された抗体には、組換え細胞内部のインサイチューの抗体が含まれ、これは、抗体の天然環境の少なくとも1種の構成要素が存在しないと考えられるためである。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製段階によって調製される。
【0019】
「変種」抗IL-21受容体抗体とは、本明細書において、「親」抗体配列中の1つまたは複数のアミノ酸残基の付加、欠失、および/または置換によって、親抗IL-21受容体抗体アミノ酸配列とアミノ酸配列が異なる分子を意味する。好ましい態様において、変種は、親抗体の1つまたは複数の超可変領域中に1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。例えば、変種は、親抗体の1つまたは複数の超可変領域中に、少なくとも1個、例えば、約1個〜約10個、および好ましくは、約2個〜約5個の置換を含んでよい。通常、変種は、親抗体の重鎖可変ドメイン配列または軽鎖可変ドメイン配列とのアミノ酸配列同一性が少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%であるアミノ酸配列を有する。この配列に関する同一性または相同性は、本明細書において、配列を整列化し、必要な場合には、最大の配列同一性パーセントを実現するためにギャップを導入した後の、親抗体残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。抗体配列に対するN末端、C末端、または内部の伸長、欠失、または挿入のいずれも、配列の同一性または相同性に影響を及ぼすものとして解釈されない。変種は、ヒトIL-21受容体に結合する能力を保持し、かつ、好ましくは、親抗体の特性より優れた特性を有する。例えば、変種は、より強力な結合親和力を有し、IL-21受容体によって誘導される免疫細胞の刺激を阻害する能力が増強されている場合がある。抗IL-21受容体抗体の形態が、本明細書において開示する生物活性アッセイ法におけるその活性に影響を与えることが見出されているため、このような特性を解析するには、例えば、Fab型の変種をFab型の親抗体と比較するか、または、完全長型の変種を完全長型の親抗体と比較するべきである。本明細書において特に関心の対象とする変種抗体は、親抗体と比べた場合に、生物活性の少なくとも約10倍、好ましくは少なくとも約20倍、および最も好ましくは少なくとも約50倍の増大を示すものである。
【0020】
本明細書において使用される「親抗体」という用語は、変種の調製のために使用されるアミノ酸配列にコードされている抗体を意味する。好ましくは、親抗体は、ヒトフレームワーク領域を有し、かつ、存在する場合には、ヒト抗体定常領域を有する。例えば、親抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体であってよい。
【0021】
「受容体」という用語は、生物活性分子(「リガンド」)に結合し、かつ細胞上でのリガンドの作用を媒介する、細胞に関連したタンパク質、またはそのようなタンパク質のポリペプチドサブユニットを示すために、本明細書において使用される。「受容体ポリペプチド」という用語は、単離された機能的ドメイン(例えばリガンド結合ドメイン)を含む、完全な受容体ポリペプチド鎖およびその一部分を示すために使用される。
【0022】
「アゴニスト」という用語は、別の分子の活性、活性化、または機能を増大させる、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、抗体断片、大分子、または小分子(10kD未満)を含む、任意の化合物を意味する。例えば、IL-21受容体アゴニストは、NK細胞、樹状細胞、T細胞サブセット、およびB細胞サブセットを含む細胞の刺激を引き起こす。
【0023】
「アンタゴニスト」という用語は、別の分子の活性、活性化、または機能を低減させる、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、抗体断片、大分子、または小分子(10kD未満)を含む、任意の化合物を意味する。例えば、IL-21受容体アンタゴニストは、NK細胞、樹状細胞、T細胞サブセット、およびB細胞サブセットを含む細胞の免疫機能の低下を引き起こす。
【0024】
「多重特異性」抗体または「多機能性」抗体以外の「二価抗体」は、特定の態様において、同一の抗原特異性を有する結合部位を含むと理解される。
【0025】
「二重特異性」抗体または「二機能性」抗体は、2種の異なる重鎖/軽鎖ペアおよび2種の異なる結合部位を有するハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、限定されるわけではないが、ハイブリドーマの融合またはFab'断片の連結を含む様々な方法によって、作製され得る。例えば、SongsivilaiおよびLachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315-321:(1990)、Kostelny et al., J. Immunol. 148:1547-1553 (1992)を参照されたい。
【0026】
「キメラ抗体(chimeric antibody)」または「キメラ抗体(chimeric antibodies)」という用語は、その軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子が、典型的には遺伝子工学によって、異なる種に属する免疫グロブリン可変領域遺伝子および定常領域遺伝子から構築されている抗体を意味する。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変セグメントが、γ1およびγ3などのヒト定常セグメントに連結され得る。したがって、典型的な治療用キメラ抗体は、マウス抗体由来の可変ドメインまたは抗原結合ドメインおよびヒト抗体由来の定常ドメインから構成されるハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種を使用してもよい。
【0027】
本明細書において使用される「有効な中和力価」という用語は、(ヒトにおいて)臨床的に効果的であるか、または、例えば、コットンラットにおいてウイルスを99%減少させることが示されている、動物(ヒトまたはコットンラット)の血清中に存在する量に対応する抗体の量を意味する。99%の減少は、例えば、103pfu、104pfu、105pfu、106pfu、107pfu、108pfu、または109pfuのRSVの個々の攻撃接種によって定義される。
【0028】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープの決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、かつ、通常、特定の三次元構造特徴、ならびに特定の電荷特性を有する。より具体的には、本明細書において使用される「IL-21Rエピトープ」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、および最も好ましくはマウスまたはヒトにおいて抗原活性または免疫原活性を有するIL-21Rポリペプチドの一部分を意味する。免疫原活性を有するエピトープは、動物における抗体応答を誘発する、IL-21Rポリペプチドの一部分である。抗原活性を有するエピトープは、当技術分野において周知である任意の方法によって、例えばイムノアッセイ法によって決定されるように、抗体が免疫特異的に結合する、IL-21Rポリペプチドの一部分である。抗原エピトープは、必ずしも免疫原性である必要はない。
【0029】
「エピトープタグ付き」という用語は、本明細書において使用される場合、「エピトープタグ」に融合された抗IL-21抗体を意味する。エピトープタグポリペプチドは、それに対して抗体が産生され得るエピトープを提供するのに十分な残基を有するが、IL-21抗体の活性を妨げない程度に短い。エピトープタグは、好ましくは、十分に特有であり、したがって、それに対する抗体は他のエピトープと実質的に交差反応しない。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6個のアミノ酸残基を有し、かつ、通常、約8個〜50個の間のアミノ酸残基(好ましくは約9個〜30個の間の残基)を有する。例には、flu HAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5(Field et al. Mol. Cell. Biol. 8:2159-2165(1988));c-mycタグならびにそれに対する8F9抗体、3C7抗体、6E10抗体、G4抗体、B7抗体、および9E10抗体(Evan et al., Mol. Cell. Biol. 5(12):3610-3616(1985));ならびに単純ヘルペス(Herpes Simplex)ウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体(Paborsky et al., Protein Engineering 3(6):547-553(1990))が含まれる。特定の態様において、エピトープタグは、「サルベージ(salvage)受容体結合エピトープ」である。本明細書において使用される場合、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボでの血清半減期の延長に関与している、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを意味する。
【0030】
本明細書において使用される「断片」という用語は、IL-21ポリペプチドまたはIL-21ポリペプチドに免疫特異的に結合する抗体のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続したアミノ酸残基、少なくとも10個の連続したアミノ酸残基、少なくとも15個の連続したアミノ酸残基、少なくとも20個の連続したアミノ酸残基、少なくとも25個の連続したアミノ酸残基、少なくとも40個の連続したアミノ酸残基、少なくとも50個の連続したアミノ酸残基、少なくとも60個の連続したアミノ酸残基、少なくとも70個の連続したアミノ酸残基、少なくとも80個の連続したアミノ酸残基、少なくとも90個の連続したアミノ酸残基、少なくとも100個の連続したアミノ酸残基、少なくとも125の連続したアミノ酸残基、少なくとも150個の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドを意味する。
【0031】
本明細書において使用される場合、「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされている1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質を意味する。1つの型の免疫グロブリンは、抗体の基本構造単位を構成する。この型はテトラマーであり、免疫グロブリン鎖の2つの同一なペアからなり、各ペアは1つの軽鎖および1つの重鎖を有する。各ペアにおいて、軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原への結合を一緒に担っており、かつ、定常領域は、抗体エフェクター機能を担っている。
【0032】
完全長免疫グロブリンの「軽鎖」(約25Kdまたは214アミノ酸)は、NH2末端を可変領域遺伝子にコードされ(約110アミノ酸)、かつ、COOH末端をκまたはλ定常領域遺伝子にコードされている。完全長免疫グロブリンの「重鎖」(約50Kdまたは446アミノ酸)は、同様に、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)および前述の他の定常領域遺伝子のうち1つ(約330アミノ酸)にコードされている。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεに分類され、それぞれ、抗体のアイソタイプをIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEと定義する。軽鎖および重鎖内部で、可変領域および定常領域は、約12個またはそれ以上のアミノ酸からなる「J」領域によって連結されており、重鎖は、約10個またはそれ以上のアミノ酸からなる「D」領域も含む(一般に、Fundamental Immunology(Paul, W.編、第2版、Raven Press, N.Y., 1989)、7章(参照によりその全体が組み入れられる)を参照されたい)。
【0033】
免疫グロブリンの軽鎖または重鎖の可変領域は、3つの超可変領域が割り込んだ「フレームワーク」領域からなる。したがって、「超可変領域」という用語は、抗原結合を担っている、抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」に由来するアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、および89〜97(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン中の残基31〜35(H1)、50〜65(H2)、および95〜102(H3))(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1991))、ならびに/または、「超可変ループ」に由来する残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン中の残基26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3); ChothiaおよびLesk, 1987, J.Mol.Biol. 196:901-917))を含む(いずれの文献も、参照により本明細書に組み入れられる)。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書において定義する超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内では比較的保存されている。したがって、「ヒトフレームワーク領域」は、天然のヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域と実質的に(約85%またはそれ以上、通常90%〜95%またはそれ以上)同一であるフレームワーク領域である。構成要素である軽鎖および重鎖の組み合わされたフレームワーク領域である、抗体のフレームワーク領域は、CDRを配置し、かつ整列させるのに役立つ。CDRは、主として、抗原のエピトープへの結合を担っている。
【0034】
したがって、「ヒト化」免疫グロブリンという用語は、ヒトフレームワーク領域および非ヒト(通常、マウスまたはラット)免疫グロブリン由来の1つまたは複数のCDRを含む免疫グロブリンを意味する。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは、「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と呼ばれる。定常領域は存在する必要がないが、存在する場合には、それらは、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち、少なくとも約85%〜90%、好ましくは約95%またはそれ以上同一でなければならない。したがって、ヒト化免疫グロブリンの部分はすべて、おそらくはCDRを除いて、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖免疫グロブリンおよびヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。例えば、ヒト化抗体は、例えば、キメラ抗体の可変領域全体が非ヒトであるため、上記に定義した典型的なキメラ抗体を包含しないと思われる。
【0035】
本明細書において使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、かつ、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または、例えば、米国特許第5,939,598号においてKucherlapatiらによって説明されているように、1種または複数種のヒト免疫グロブリンに関してトランスジェニックであり、かつ、内因性免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体を含む。
【0036】
「遺伝的に改変された抗体」という用語は、アミノ酸配列がネイティブ抗体の配列から変更されている抗体を意味する。抗体を作製する際に組換えDNA技術が関連するため、天然抗体中に存在するアミノ酸の配列に限定される必要はない。所望の特徴を得るように抗体を再設計することができる。可能な変異は多数あり、かつ、ただ1つのアミノ酸または少数のアミノ酸の変更から、例えば、可変領域または定常領域の完全な再設計まで及ぶ。定常領域中の変更は、一般に、補体結合、膜との相互作用、および他のエフェクター機能などの特徴を改善または改変するために行われる。可変領域中の変更は、抗原結合特性を改善するために行われる。
【0037】
抗体の他に、免疫グロブリンは、例えば、単鎖またはFv、Fab、および(Fab')2、ならびにダイアボディ(diabody)、直鎖状抗体、多価性または多重特異性のハイブリッド抗体(前記およびLanzavecchia et al., Eur. J. Immunol. 17. 105(1987)に詳細に説明されている)を含む、様々な他の形態で、かつ、単鎖で(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85 5879-5883(1988)およびBird et al., Science, 242:423-426(1988))、存在し得る(一般に、参照により本明細書に組み入れられる、Hood et al., 「Immunology」、Benjamin, N.Y.,第2版(1984)ならびにHunkapillerおよびHood, Nature, 323:15-16(1986)を参照されたい)。
【0038】
本明細書において使用される場合、「単鎖Fv」、「単鎖抗体」、「Fv」、または「scFv」という用語は、単一のポリペプチド鎖内に、重鎖および軽鎖の両方に由来する可変領域を含むが、定常領域を欠いている抗体断片を意味する。一般に、単鎖抗体は、抗原結合を可能にすると思われる所望の構造を形成するのを可能にする、VHドメインとVLドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。単鎖抗体は、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer-Verlag, New York、269〜315頁(1994)においてPluckthunによって詳細に考察されている。同様に、開示内容が任意の目的のために参照により組み入れられる、国際特許出願公開WO 88/01649および米国特許第4,946,778号および同第5,260,203号を参照されたい。特定の態様において、単鎖抗体はまた、二重特異性であるか、かつ/またはヒト化されていてよい。
【0039】
「Fab断片」は、1本の軽鎖、ならびに1本の重鎖のCH1領域および可変領域から構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とのジスルフィド結合を形成できない。
【0040】
「Fab'断片」は、1本の軽鎖、ならびに、鎖間のジスルフィド結合が2つの重鎖間で形成されて、F(ab')2分子を形成できるように、CH1ドメインおよびCH2ドメイン間の定常領域のより多くの部分を含む1本の重鎖を含む。
【0041】
「F(ab')2断片」は、2本の軽鎖、ならびに、鎖間のジスルフィド結合が2つの重鎖間で形成されるようにCH1ドメインおよびCH2ドメイン間の定常領域の一部分を含む2本の重鎖を含む。
【0042】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小型の抗体断片を意味し、この断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)中に軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間でのペア形成を起こさせないくらい短いリンカーを用いることによって、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインとペアになり、かつ、2つの抗原結合部位を作り出すことを余儀なくされる。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO93/11161、およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448(1993)において、より十分に説明されている。
【0043】
「直鎖状抗体」という用語は、Zapata et al. Protein Eng. 8(10):1057-1062(1995)において説明されている抗体を意味する。手短に言えば、これらの抗体は、一対の抗原結合領域を形成する、一対の直列型Fdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性または単一特異性であってよい。
【0044】
本明細書において使用される「免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片」という用語は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変ドメインを少なくとも含むポリペプチド断片を意味する。本発明の免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片は、リガンドに結合すること、受容体へのリガンドの結合を防止すること、受容体へのリガンド結合に起因する生物学的応答を妨害すること、またはそれらの任意の組合せを行うことができる。好ましくは、本発明の免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片は、IL-21に特異的に結合する。
【0045】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術によって作製される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、任意の真核生物クローン、原核生物クローン、またはファージクローンを含む、単一のクローンに由来する抗体を意味し、それを作製する方法を意味しない。
【0046】
本発明はまた、前述の抗体に機能的に等価である、遺伝的に改変された抗体も含む。改善された安定性および/または治療的有効性を提供する修飾抗体が好ましい。修飾抗体の例には、アミノ酸残基の保存的置換、および、抗原結合の有用性を著しく改悪しない、アミノ酸の1つまたは複数の欠失または付加を含むものが含まれる。置換は、治療的有用性が維持される限り、1つまたは複数のアミノ酸残基の変更または修飾から、ある領域の完全な再設計まで及んでよい。本発明の抗体は、翻訳後に修飾されてよく(例えば、アセチル化およびリン酸化)、または、合成的に修飾されてもよい(例えば、標識基の結合)。
【0047】
遺伝的に改変された抗体には、抗IL-21受容体抗体に由来するキメラ抗体も含まれる。好ましくは、キメラ抗体は、マウスまたはラットに由来する可変領域およびヒトに由来する定常領域を含み、したがって、キメラ抗体は、ヒト対象に投与された場合に、より長い半減期を有し、かつ、免疫原性はより少ない。キメラ抗体を作製する方法は、当技術分野において公知である。これらの抗体の可変領域をヒトIgGの定常領域と結合させて、所望のキメラ抗体を形成させることができる。
【0048】
好ましくは、本発明において使用される遺伝的に改変された抗IL-21受容体抗体には、本明細書において説明する抗体のヒト化型が含まれる。特定の態様において、ヒト化抗体は、マウスドナー免疫グロブリンのCDR、ならびに、ヒトアクセプター免疫グロブリンの重鎖および軽鎖のフレームワークを含む。ヒト化抗体を作製する方法は、米国特許第5,301,101号、同第5,585,089号、同第5,693,762号、および同第6,180,370号において開示されている(それぞれ、その全体が参照により組み入れられる)。次いで、これらの抗体のCDRを、当技術分野において公知である任意の選択されたヒトフレームワークにグラフティングして、所望のヒト抗体を作製することができる。
【0049】
本発明の抗体は、それらが認識するか、または特異的に結合する本発明のポリペプチドのエピトープまたは部分の観点から説明または特定することができる。エピトープまたはポリペプチド部分は、本明細書において説明されるように、例えば、N末端位置およびC末端位置によって、または、連続したアミノ酸残基のサイズによって、特定することができる。本発明の抗体はまた、交差反応性の観点から説明または特定することもできる。本発明のポリペプチドの他のいかなる類似体、オルソログ、またはホモログにも結合しない抗体が含まれる。
【0050】
エピトープビニング(binning)とは、IL-21受容体タンパク質またはIL-21受容体タンパク質複合体に同時に結合できるか、または結合できない抗体のペアを同定し、それによって、該タンパク質上の同じエピトープまたは共通部分のあるエピトープに結合する抗体を同定するための競合的結合アッセイ法の使用を意味する。次いで、同じ結合特異性を有する抗体のファミリー(またはビン)を用いて、IL-21受容体タンパク質上またはIL-21受容体タンパク質複合体上の特異的なエピトープを定義することができる。エピトープビニング実験により、抗原的に異なるエピトープが存在するという証拠が提供される。しかしながら、それらは、それら自体によっては、IL-21受容体タンパク質分子またはIL-21受容体タンパク質複合体分子上の特定のアミノ酸配列または位置を確認することも、エピトープをそれらに「位置づける」こともしない。
【0051】
結合の際の競合は、任意のペアの抗体または断片に関して評価することができる。例えば、適切な検出試薬を用いて、任意の種/供給源に由来する抗体または結合断片の結合特異性を、本明細書において開示するモノクローナル抗体の結合特異性と比較することができる。エピトープビニングは、「単離された抗体」または細胞培養上清を用いて実施することができる。しばしば、ビニングは、その後に開発しようとするクローンの選択を導くために、最初の回のクローン上清を用いて実施される。比較しようとする抗体は、実質的に同種の抗原結合ドメインを有しているべきである。「二重特異性」抗体または「二機能性」抗体の場合、2種の異なる結合部位の結合特異性は、独立に評価またはビニングする必要がある。
【0052】
本発明は、受容体特異的な抗体およびリガンド特異的な抗体の両方を特徴とする。抗体の競合的結合の他に、エピトープビニングはまた、リガンドおよびその受容体のビニングを競合的に妨げる受容体またはリガンドのいずれかに対する抗体を同定するのに使用することもできる。しばしば、抗体のファミリー(またはビン)の有利な特性は、エピトープビンによって定義される特異的エピトープへの結合と関係付けることができる。
【0053】
競合的結合実験は、結合親和力を直接的に測定しないが、試験される抗体は、競合相手として作用するのに十分に強く結合しなければならない。一般に、実験条件は、結合親和力の差異の影響を最小化するように設計される。
【0054】
抗IL-21受容体抗体または抗IL-21受容体複合体抗体はまた、IL-21受容体タンパク質または抗IL-21受容体複合体タンパク質の診断的アッセイ法、例えば、特定の細胞、組織、または血清におけるそれらの発現の検出においても有用であり得る。異なるビンに割り当てられ、かつ、IL-21受容体またはIL-21受容体複合体の異なる免疫原性部分またはエピトープに結合できる抗体は、サンドイッチアッセイ法のための反応物として使用することができる。サンドイッチアッセイ法において、試験試料分析物は、固体支持体上に固定化された第1の抗体によって捕捉され、その後、その分析物に同様に結合する第2の抗体によって検出され、その結果、3部分からなる不溶性の複合体を形成する。例えば、米国特許第4,376,110号を参照されたい。二次抗体は、検出可能な部分でそれ自体を標識してよく(直接的サンドイッチアッセイ法)、または、検出可能な部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を用いて測定してよい(間接的サンドイッチアッセイ法)。例えば、1つのタイプのサンドイッチアッセイ法はELISAアッセイ法であり、この場合、検出可能部分は酵素である。
【0055】
本発明の抗体は、当技術分野において公知である任意の方法によって、特異的結合に関して分析することができる。多くの異なる競合的結合アッセイ形式をエピトープビニングのために使用することができる。使用され得るイムノアッセイ法には、ほんの数例を挙げれば、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ法、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ法、免疫沈降アッセイ法、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ法、凝集アッセイ法、補体結合アッセイ法、イムノラジオメトリックアッセイ法、蛍光イムノアッセイ法、プロテインAイムノアッセイ法などの技術を用いた競合的アッセイ系および非競合的アッセイ系が含まれるが、それらに限定されるわけではない。このようなアッセイ法は日常的であり、かつ、当技術分野において周知である(例えば、Ausubel et al.編、1994, Current Protocols in Molecular Biology.第1巻、John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照されたい)。例示的なイムノアッセイ法は、下記に手短に説明する(ただし、限定するためのものではない)。さらに、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed HarlowおよびDavid Lane(1988)に記載されているもののような日常的な交差ブロッキングアッセイ法も実施することができる。
【0056】
Biacoreは、モノクローナル抗体のパネルをエピトープビニングするのに日常的に使用される様々なアッセイ形式のうちの1つにすぎない。多くの参考文献(例えば、The Epitope Mapping Protocols, Methods in Molecular Biology. 第6.6巻 Glenn E.Morris編)では、抗体をビニングするのに使用できると考えられ、かつ、IL-21受容体タンパク質またはIL-21受容体複合体タンパク質に対する抗体の結合特異性に関する同一の情報を提供すると予想される代替の方法を説明している。Biacoreシステムを使用する場合、エピトープビニング実験は、ネイティブな抗原を用いて実施する。エピトープビニング研究は、Biacore 1000(登録商標)システム(Biacore, Uppsalla Sweden)を用いて実施することができる。BIAlogue(登録商標)バージョン1.2ソフトウェアを、試験方法をプログラムするために使用することができる。IL-21に対して産生させたマウスモノクローナル抗体をビニングするためにBiacoreを使用する例の場合、ポリクローナルヤギ抗マウスIgG Fc抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)をBiacore(登録商標)CM5センサーチップに共有結合的に固定化し、かつ、試験系列のモノクローナル一次抗体をそのチップに結合(捕捉)するのに使用することができる。次いで、ポリクローナルIgG Fc断片(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)を用いて、チップ上の空いているFc結合部位をブロックする。続いて、IL-21受容体タンパク質またはIL-21受容体複合体タンパク質を注入し、捕捉されたモノクローナル一次抗体に特異的に結合させる。Biacore機器は、センサーチップに結合されたタンパク質の質量を測定し、かつ、一次抗体およびIL-21受容体抗原またはIL-21受容体複合体抗原の両方の結合を各サイクルに関して確認することができる。一次抗体および抗原がチップに結合した後、可溶性の二次抗体を注入し、予め結合された抗原に結合させる。モノクローナル二次抗体がモノクローナル一次抗体と同時にIL-21受容体抗原またはIL-21受容体複合体抗原に結合できる場合、その結合は、Biacoreによって検出される。しかしながら、モノクローナル二次抗体がモノクローナル一次抗体と同時にIL-21抗原に結合できない場合、さらなる結合は検出されない。各モノクローナル抗体を、陰性対照としてそれ自身に対して試験して、バックグラウンド(結合無し)シグナルのレベルを確かめる。
【0057】
非標識競合ELISA形式(LFC-ELISA)もまた、抗体をビニングするのに使用することができる。この方法は、Nagata et al., J. Immuno Methods 292:141-155, 2004によって説明される。エピトープビニングのためのこの方法では、ビオチン標識したIL-21受容体またはIL-21受容体複合体を使用する。IL-21受容体またはIL-21受容体複合体に対して産生させたマウスモノクローナル抗体をビニングする例の場合、ELISA B(PBS, 0.1% Tween 20, 1% BSA)中で希釈した1μg/mLヤギ抗マウスIgG Fc-γ特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)で、100μL/ウェルでマイクロタイタープレートをコーティングする。周囲温度で3時間、このコーティング抗体を結合させた後、mAbを含む各馴化培地をELISA B中で希釈してmAb濃度を約0.5μg/mLにし、かつ、4℃で一晩、ヤギ抗マウスIgGでコーティングしたプレートに結合させる(一次抗体)。平行して、馴化培地の第2のセット(二次抗体)をポリスチレン試験管中で希釈してELISA B中約0.5μg/mLのmAbとし、50ng/mLのビオチン標識IL-21受容体抗原またはIL-21受容体複合体抗原と混合し、かつ、4℃で一晩インキュベートする。一次抗体をコーティング抗体と共にインキュベーションした後、無関係の抗体でプレートをブロックして、プレート上の空いている結合部位を占有する。二次抗体-ビオチン-IL-21混合物をプレートに添加し、結合させる。アッセイ法における(非競合)の対照として、50ng/mLのビオチン標識IL-21受容体またはIL-21受容体複合体を、(二次抗体とのプレインキュベーションを実施せずに)直接、固定化した一次抗体を含むウェルに添加する。ビオチン標識IL-21受容体またはIL-21受容体複合体の二次抗体複合体と共にインキュベーションした後、ストレプトアビジン-HRP(Pierce, Rockford, IL)を0.5μg/mLでプレートに添加する。TMB基質(BioFX Laboratories, Owings Mills, MD)を用いてこれらのプレートを発色させ、かつ、個々のウェルの450nmでの吸光度を、プレートリーダー(Molecular Devices SpectraMax(登録商標)340, Sunnyvale, CA)を用いて測定する。一次抗体が二次抗体とは異なるエピトープに結合する場合、ビオチン-IL-21受容体またはIL-21受容体複合体の二次抗体複合体はプレートに結合して、吸光度の測定値は高くなると考えられる。一次抗体が二次抗体と同じエピトープに結合する場合、ビオチン-IL-21受容体またはIL-21受容体複合体の二次抗体複合体はプレートに結合せず、吸光度の測定値は低くなると考えられる。
【0058】
本発明の抗体は、IL-21受容体またはIL-21受容体複合体のアンタゴニストとして作用する。例えば、本発明は、IL-21受容体またはIL-21受容体複合体の受容体/リガンド相互作用を部分的または完全に混乱させる抗体を含む。本発明は、受容体特異的な抗体を特徴とし、かつ本発明は、リガンド結合を防がないが、受容体の活性化を防ぐ受容体特異的な抗体をさらに特徴とする。受容体活性化(すなわち、シグナル伝達)は、本明細書において説明するか、またはそうでなければ、当技術分野において公知の技術によって決定することができる。例えば、受容体活性化は、免疫沈降法とそれに続くウェスタンブロット解析(例えば、前記に説明したような)により、受容体またはその基質のリン酸化(例えば、チロシンまたはセリン/トレオニン)を検出することによって決定することができる。特定の態様において、抗体の不在下での活性の少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%、リガンドまたは受容体活性を阻害する抗体が提供される。
【0059】
本発明はまた、リガンド結合および受容体活性化の両方を妨げる受容体特異的抗体、ならびに受容体-リガンド複合体を認識する抗体も特徴とする。また、未結合の受容体も未結合のリガンドも特異的に認識しない受容体特異的抗体も含まれる。同様に、リガンドに結合し、かつ受容体へのリガンドの結合を妨げる中和抗体、ならびに、リガンドに結合し、それによって受容体の活性化を妨げるが、リガンドが受容体に結合するのを妨げはしない抗体も、本発明に含まれる。さらに、受容体を活性化する抗体も、本発明に含まれる。これらの抗体は、受容体アゴニストとして作用し得る、すなわち、リガンドに媒介される受容体活性化の生物活性のすべてまたは一部のいずれかを増強または活性化し得る。これらの抗体は、本明細書において開示する本発明のペプチドの特異的生物活性を含む生物活性に対するアゴニスト、アンタゴニスト、またはインバースアゴニストとして指定され得る。
【0060】
発明の詳細な説明
抗IL-21R抗体の作製
IL-21受容体、またはIL-21受容体/IL-2RγポリペプチドのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドは、抗原内に含まれるエピトープ、ペプチド、またはポリペプチドに結合する抗体を調製するのに使用され得る。特に有用な抗IL-21R抗体は、IL-21Rと「特異的に結合する」。抗体は、以下の2つの特性のうち少なくとも1つを示す場合、特異的に結合するとみなされる:(1)それらが、閾値レベルの結合活性を示す、および(2)それらが、関連するポリペプチド分子と有意に交差反応しない。
【0061】
第1の特徴に関しては、結合の閾値レベルは、抗IL-21R抗体、または抗IL-21R/IL-2Rγ抗体のような抗IL-21Rヘテロ二量体抗体が、IL-21RまたはIL-21R/IL-2RγポリペプチドのようなIL-21Rヘテロ二量体ポリペプチド、ペプチド、またはエピトープと、対照ペプチドに対する結合親和力より少なくとも10倍大きな親和力で結合する場合に、決定される。これらの抗体が、106M-1またはそれ以上、好ましくは、107M-1またはそれ以上、より好ましくは108M-1またはそれ以上、および最も好ましくは109M-1またはそれ以上の結合親和力(Ka)を示すことが好ましい。抗体の結合親和力は、例えば、スキャッチャード解析(Scatchard, G., Ann.NY Acad. Sci. 51:660-672, 1949)によって、当業者が容易に決定することができる。
【0062】
第2の特徴に関して、例えば、標準的なウェスタンブロット解析によって、抗体が、IL-21RまたはIL-21R/IL-21RγポリペプチドのようなIL-21Rヘテロ二量体ポリペプチドを検出できるが、他の現在公知の関連ポリペプチドを検出できない場合、抗体は、関連ポリペプチド分子と有意に交差反応しない。公知の関連ポリペプチドの例には、公知のオルソログおよびパラログ、ならびにタンパク質ファミリーの類似した公知のメンバーなど、先行技術において開示されているものが含まれる。スクリーニングはまた、非ヒトIL-21受容体またはIL-21受容体/IL-2RγのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチド、および、IL-21受容体またはIL-21受容体/IL-2Rγ変異体ポリペプチドのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドを用いて実施することもできる。さらに、抗体は、公知の関連ポリペプチド「に対してスクリーニング」して、IL-21受容体またはIL-21受容体/IL-2RγポリペプチドのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドに特異的に結合する集団を単離することができる。例えば、IL-21受容体またはIL-21受容体/IL-2RγのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドに対して産生させた抗体は、不溶性マトリックスに接着された関連ポリペプチドに吸着される。IL-21受容体またはIL-21受容体/IL-2RγのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドに特異的な抗体は、適切な緩衝液条件下でマトリックスを通過すると考えられる。スクリーニングにより、公知の密接に関連したポリペプチドに交差反応しないポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の単離が可能になる(Antibodies:A Laboratory Manual, HarlowおよびLane(編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988; Current Protocols in Immunology, Cooligan, et al.(編)、National Institutes of Health, John Wiley and Sons, Inc., 1995)。特異的抗体のスクリーニングおよび単離は、当技術分野において周知である。Fundamental Immunology, Paul(編)、Raven Press, 1993; Getzoff et al., Adv. in Immunol. 43:1-98, 1988; Monoclonal Antibodies:Principles and Practice, Goding, J.W.(編)、Academic Press Ltd., 1996; Benjamin et al., Ann. Rev. Immunol. 2:67-101, 1984を参照されたい。特異的に結合する抗IL-21受容体抗体、または抗IL-21受容体/IL-2Rγ抗体のような抗IL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチド抗体は、当技術分野のものでありかつ下記に開示するいくつかの方法によって検出することができる。
【0063】
抗IL-21R抗体、およびヘテロ二量体ポリペプチドIL-21R/IL-2RγのようなIL-21Rを含む抗原に対する抗体は、IL-21R、またはIL-21R/IL-2Rγに類似したIL-21Rヘテロ二量体ポリペプチドなど抗原性のペプチドおよびポリペプチドを用いて作製することができる。これは、IL-21R、またはIL-21R/IL-2Rγに類似したIL-21Rヘテロ二量体ポリペプチドを抗原(免疫原)として使用して、動物に接種し、かつ、その動物から免疫応答を誘発することによって実施する。当業者は、抗原性のエピトープを有するポリペプチドが、IL-21RまたはIL-21R/IL-2RγポリペプチドのようなIL-21Rヘテロ二量体ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:10)の少なくとも6個、好ましくは少なくとも9個、およびより好ましくは少なくとも15個〜約30個の連続したアミノ酸残基の配列を含むことを認識すると思われる。IL-21受容体ポリペプチドまたはIL-21受容体/IL-2RγポリペプチドのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドのより多くの部分を含むポリペプチド、すなわち、30〜100残基から最大でアミノ酸配列の全長を含むポリペプチドが含まれる。抗原または免疫原性エピトープは、本明細書において説明するように、結合されたタグ、アジュバント、および担体も含んでよい。適切な抗原は、SEQ ID NO:2によってコードされるIL-21受容体ポリペプチドのアミノ酸番号20(Cys)〜アミノ酸番号237(His)(SEQ ID NO:6)、またはその連続した9〜218 AAアミノ酸断片を含む。抗原として使用するのに好ましいペプチドは、本明細書において開示するサイトカイン結合ドメイン、および、疎水性プロットから当業者が予測するもののようなIL-21受容体親水性ペプチドであり、これは、例えば、6残基のスライディングウィンドウに基づくHopp/Woods親水性プロフィールから、埋もれたG残基、S残基、およびT残基ならびに露出したH残基、Y残基、およびW残基は無視して、決定される。例えば、IL-21受容体親水性ペプチドには、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチドが含まれる:(1)SEQ ID NO:2のアミノ酸番号51(Trp)〜アミノ酸番号61(Glu);(2)SEQ ID NO:2のアミノ酸番号136(Ile)〜アミノ酸番号143(Glu);(3)SEQ ID NO:2のアミノ酸番号187(Pro)〜アミノ酸番号195(Ser);および(4)SEQ ID NO:2のアミノ酸番号223(Phe)〜アミノ酸番号232(Glu)。SEQ ID NO:2に関連した対応する親水性領域は、SEQ ID NO:2の上記のアミノ酸残基を相互参照して作製することができる。さらに、例えば、DNASTAR Proteanプログラム(DNASTAR, Inc., Madison, WI)を用いてJameson-Wolfプロットによって予測される抗原性エピトープを有するポリペプチドは、適切な抗原である。さらに、保存されているモチーフ、およびIL-21受容体の保存されているモチーフ間の可変領域は、適切な抗原である。適切な抗原には、IL-21受容体/IL-2RγのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドを形成するもののような、別のクラスIサイトカイン細胞外ドメインと組み合わせた、上記に開示したIL-21受容体ポリペプチドも含まれる。さらに、マウスIL-21受容体ポリペプチドの対応する領域(20番残基(Cys)〜237番残基(His)(SEQ ID NO:8)を用いて、マウスIL-21受容体に対する抗体を作製することもできる。さらに、この免疫応答から生成させた抗体を、本明細書において説明するように単離し、かつ精製することもできる。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を調製および単離するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Current Protocols in Immunology, Cooligan, et al.(編)、National Institutes of Health, John Wiley and Sons, Inc., 1995; Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor, NY, 1989、およびHurrell, J. G. R.編、Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications, CRC Press, Inc., Boca Raton, FL, 1982.を参照されたい。
【0064】
組換えIL-21Rタンパク質を含むポリペプチドまたは天然供給源から単離されたIL-21Rを含むポリペプチドに対するポリクローナル抗体は、当業者に周知の方法を用いて調製することができる。例えば、Green et al.、「Production of Polyclonal Antisera」、Immunochemical Protocols(Manson編)、1〜5頁(Humana Press 1992)、およびWilliams et al.、「Expression of foreign proteins in E. coli using plasmid vectors and purification of specific polyclonal antibodies」、DNA Cloning 2:Expression Systems、第2版、Glover et al.(編)、15頁(Oxford University Press、1995)を参照されたい。IL-21Rポリペプチドの免疫原性は、ミョウバン(水酸化アルミニウム)またはフロイント完全アジュバントもしくはフロイント不完全アジュバントのようなアジュバントを用いて増大させることができる。免疫化のために有用なポリペプチドには、IL-21Rまたはその一部分と、免疫グロブリンポリペプチドまたはマルトース結合タンパク質との融合物のような融合ポリペプチドも含まれる。ポリペプチド免疫原は、完全長分子またはその一部分であってよい。ポリペプチド部分が「ハプテン様」である場合、そのような部分は、免疫化のために、巨大分子担体(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、または破傷風トキソイドなど)に結合または連結させることが有利な場合がある。
【0065】
ポリクローナル抗体は、典型的には、ウマ、雌ウシ、イヌ、ニワトリ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ヤギ、またはヒツジなどの動物において産生させるが、本発明の抗IL-21R抗体は、類人霊長類抗体に由来してもよい。診断的および治療的に有用な抗体をヒヒにおいて産生させるための一般的な技術は、例えば、Goldenbergらによる国際特許公報WO 91/11465およびLosman et al., Int. J. Cancer 46:310(1990)において見出すことができる。
【0066】
あるいは、抗IL-21Rモノクローナル抗体を作製することもできる。特定の抗原に対するげっ歯動物モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法によって得ることができる(例えば、Kohler et al., Nature 256:495(1975)、Coligan et al.(編)、Current Protocols in Immunology、第1巻、2.5.1〜2.6.7頁(John Wiley&Sons 1991)[“Coligan”]、Picksley et al.、「Production of monoclonal antibodies against proteins expressed in E. coli.」、DNA Cloning 2:Expression Systems、第2版、Glover et al.(編)、93頁(Oxford University Press、1995)を参照されたい)。
【0067】
手短に言えば、モノクローナル抗体は、IL-21R遺伝子産物を含む組成物をマウスに注射し、血清試料を採取することによって抗体産生の存在を確認し、脾臓を摘出してBリンパ球を得、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを作製し、それらのハイブリドーマをクローン化し、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、かつ、ハイブリドーマ培養物から抗体を単離することによって、得ることができる。
【0068】
さらに、本発明の抗IL-21R抗体または抗IL-21Rヘテロ二量体抗体は、ヒトモノクローナル抗体に由来してもよい。ヒトモノクローナル抗体は、抗原攻撃接種に応答して特異的なヒト抗体を産生するように操作されたトランスジェニックマウスから得られる。この技術では、ヒト重鎖およびヒト軽鎖の遺伝子座のエレメントが、内因性の重鎖および軽鎖の遺伝子座の標的化された破壊を含む胚性幹細胞株に由来するマウスの系統に導入される。トランスジェニックマウスは、ヒト抗原に対して特異的なヒト抗体を合成することができ、かつ、これらのマウスを用いて、ヒト抗体を分泌するハイブリドーマを作製することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、例えば、Green et al., Nature Genet. 7:13(1994)、Lonberg et al., Nature 368:856(1994)、およびTaylor et al., Int. Immun. 6:579(1994)によって説明されている。
【0069】
モノクローナル抗体は、十分に確立された様々な技術によってハイブリドーマ培養物から単離および精製することができる。このような単離技術には、プロテイン-Aセファロースを用いたアフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが含まれる(例えば、Coligan、2.7.1〜2.7.12頁、および2.9.1〜2.9.3頁;Baines et al., 「Purification of Immunoglobulin G(IgG)」、Methods in Molecular Biology、第10巻、79〜104頁(The Humana Press, Inc. 1992)を参照されたい)。
【0070】
特定の用途の場合、抗IL-21抗体の断片を調製することが望ましい場合がある。このような抗体断片は、例えば、抗体のタンパク分解性の加水分解によって得ることができる。抗体断片は、従来の方法による全抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。例として、抗体断片は、F(ab')2と表される5S断片を提供するように、ペプシンで抗体を酵素的に切断することによって作製することができる。この断片をチオール還元剤によってさらに切断して、一価の3.5S Fab'断片を作製することができる。任意で、ジスルフィド結合の切断に起因するスルフヒドリル基に対するブロック基を用いて、切断反応を実施してよい。代替の方法として、ペプシンを用いた酵素的切断では、一価のFab断片2つおよびFc断片1つが直接生じる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,331,647号;Nisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 89:230, 1960; Porter, Biochem. J. 73:119, 1959; Edelman et al., Methods in Enzymology第1巻、422頁(Academic Press 1967);Coligan、2.8.1〜2.8.10頁および2.10〜2.10.4頁に記載されている。
【0071】
一価の軽鎖-重鎖断片を形成するための重鎖の分離、断片のさらなる切断、または他の酵素的、化学的、もしくは遺伝的技術など抗体を切断する他の方法も、それらの断片が、完全な抗体によって認識される抗原に結合する限りにおいて、使用してよい。
【0072】
例えば、Fv断片は、VH鎖およびVL鎖の結合を含む。この結合は、Inbar et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 69:2659, 1972によって説明されているように、非共有結合性であってよい。あるいは、これらの可変鎖は、分子間のジスルフィド結合によって連結され得るか、またはグルタルアルデヒドなどの化学物質によって架橋され得る(例えば、Sandhu, Crit. Rev. Biotech. 12:437, 1992を参照されたい)。
【0073】
Fv断片は、ペプチドリンカーによって連結されたVH鎖およびVL鎖を含んでよい。これら単鎖の抗原結合タンパク質(scFv)は、オリゴヌクレオチドによって連結されたVHドメインおよびVLドメインをコードするDNAを含む構造遺伝子を構築することによって調製される。構造遺伝子は、発現ベクター中に挿入され、続いて、このベクターは、大腸菌のような宿主細胞中に導入される。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを有する単一のポリペプチド鎖を合成する。scFvを作製するための方法は、例えば、Whitlow et al., Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:97(1991)によって説明されている(同様に、Bird et al., Science 242:423(1988)、Ladner et al.、米国特許第4,946,778号、Pack et al., Bio/Technology 11:1271(1993)、およびSandhu、前記も参照されたい)。
【0074】
例として、scFVは、リンパ球をIL-21RまたはIL-21R/IL-2RγなどのIL-21Rヘテロ二量体のポリペプチドにインビトロで曝露させ、かつ、(例えば、固定化または標識したIL-22RAタンパク質またはIL-22RAペプチドの使用によって)ファージベクターまたは同様のベクター中の抗体ディスプレイライブラリーを選択することによって得ることができる。潜在的なIL-21RまたはIL-21Rヘテロ二量体結合ドメインを有するポリペプチドをコードする遺伝子は、ファージ上(ファージディスプレイ)または大腸菌のような細菌上にディスプレイされたランダムペプチドライブラリーをスクリーニングすることによって得ることができる。これらのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ランダム変異誘発およびランダムポリヌクレオチド合成によるなど、いくつかの方法で得ることができる。これらのランダムペプチドディスプレイライブラリーを使用して、タンパク質またはポリペプチド、例えば、リガンドもしくは受容体、生物学的巨大分子もしくは合成巨大分子、または有機物質もしくは無機物質などであり得る、公知の標的と相互作用するペプチドをスクリーニングすることができる。このようなランダムペプチドディスプレイライブラリーを作製およびスクリーニングするための技術は、当技術分野において公知であり(Ladner et al.、米国特許第5,223,409号、Ladner et al.、米国特許第4,946,778号、Ladner et al.、米国特許第5,403,484号、Ladner et al.、米国特許第5,571,698号、およびKay et al., Phage Display of Peptides and Proteins(Academic Press, Inc. 1996))、かつ、このようなライブラリーをスクリーニングするためのランダムペプチドディスプレイライブラリーおよびキットは、例えば、CLONTECH Laboratories, Inc. (Palo Alto, CA)、Invitrogen Inc. (San Diego, CA、New England Biolabs, Inc. (Beverly, MA)、およびPharmacia LKB Biotechnology Inc. (Piscataway, NJ)から市販されている。本明細書において開示するIL-21Rポリペプチドを含む配列を用いてランダムペプチドディスプレイライブラリーをスクリーニングして、IL-22RまたはIL-21Rヘテロ二量体に結合するタンパク質を同定することができる。
【0075】
抗体断片の別の形態は、1つの相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、関心対象の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。このような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法を用いて、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することによって、調製する(例えば、Larrick et al., Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106(1991)、Courtenay-Luck, 「Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies」、Monoclonal Antibodies:Production, Engineering and Clinical Application, Ritter et al.(編)、166頁(Cambridge University Press 1995)、およびWard et al., 「Genetic Manipulation and Expression of Antibodies」、Monoclonal Antibodies:Principles and Applications, Birch et al.(編)、137頁(Wiley-Liss, Inc. 1995)を参照されたい)。
【0076】
あるいは、抗IL-21R抗体または抗IL-21Rヘテロ二量体抗体は、「ヒト化」モノクローナル抗体に由来してもよい。ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変鎖に由来するマウスの相補性決定領域をヒト可変ドメイン中に導入することによって作製される。次いで、ヒト抗体の典型的な残基でマウス対応物のフレームワーク領域を置換する。ヒト化モノクローナル抗体に由来する抗体構成要素を使用することにより、マウスの定常領域の免疫原性に関連する潜在的な問題が回避される。マウスの免疫グロブリン可変ドメインをクローニングするための一般的技術は、例えば、Orlandi et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:3833(1989)によって説明されている。ヒト化モノクローナル抗体を作製するための技術は、例えば、Jones et al., Nature 321:522(1986); Carter et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:4285(1992); Sandhu, Crit. Rev. Biotech. 12:437(1992); Singer et al., J.Immun. 150:2844(1993); Sudhir(編)、Antibody Engineering Protocols(Humana Press, Inc. 1995)、Kelley, 「Engineering Therapeutic Antibodies」、Protein Engineering:Principles and Practice, Cleland et al.(編)、399〜434頁(John Wiley & Sons, Inc. 1996)およびQueen et al.、米国特許第5,693,762号(1997)によって説明されている。
【0077】
さらに、本発明の抗IL-21R抗体もしくは抗IL-21Rヘテロ二量体抗体または抗体断片は、当技術分野のものであり、かつ本明細書において説明する方法を用いて、PEG化することもできる。
【0078】
抗イディオタイプポリクローナル抗体は、標準的な技術を用いて、抗IL-21R抗体もしくは抗IL-21Rヘテロ二量体抗体または抗体断片で動物を免疫化することによって調製することができる。例えば、Green et al.、「Production of Polyclonal Antisera」、Methods In Molecular Biology:Immunochemical Protocols, Manson(編)、1〜12頁(Humana Press 1992)を参照されたい。Coligan、2.4.1〜2.4.7頁も参照されたい。あるいは、抗イディオタイプモノクローナル抗体は、前述の技術により、抗IL-22RA抗体または抗体断片を免疫原として用いて調製することもできる。別の代替法として、抗イディオタイプヒト化抗体または抗イディオタイプ類人霊長類抗体を前述の技術を用いて調製することもできる。抗イディオタイプ抗体を作製するための方法は、例えば、Irieの米国特許第5,208,146号、Greeneらの米国特許第5,637,677号、ならびに、VarthakaviおよびMinocha、J. Gen. Virol. 77:1875(1996)によって説明されている。
【0079】
本発明の抗体には、修飾された、すなわち、抗体がIL-21受容体またはIL-21受容体/IL-2RγなどのIL-21受容体へテロ二量体に結合するのも受容体活性化を防ぐのも共有結合が妨げないように、任意のタイプの分子を抗体に共有結合させることによる、誘導体が含まれる。例えば、限定されるわけではないが、抗体誘導体には、例えば、公知の保護基/ブロック基、タンパク質分解切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質への連結などによるグリコシル化、アセチル化、ペグ化、ホスフィル化(phosphylation)、アミド化、誘導体化によって修飾された抗体が含まれる。限定されるわけではないが、特異的化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含む公知の技術によって、多数の化学修飾のいずれかを実施することができる。さらに、誘導体は、1つまたは複数の非古典的なアミノ酸を含んでよい。
【0080】
抗IL-21R抗体または抗IL-21Rヘテロ二量体抗体を検出可能な標識と結合させて、抗IL-21R免疫複合体または抗IL-21Rヘテロ二量体免疫複合体を形成させることができる。適切な検出可能標識には、例えば、放射性同位体、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、生物発光標識、またはコロイド金が含まれる。このような検出可能となるように標識された免疫複合体を作製および検出する方法は当業者に周知であり、かつ、下記においてより詳細に説明する。
【0081】
検出可能な標識は、オートラジオグラフィーによって検出される放射性同位体であってよい。本発明の目的のために特に有用である同位体は、3H、125I、131I、35S、および14Cである。
【0082】
抗IL-21免疫複合体または抗IL-21Rヘテロ二量体免疫複合体はまた、蛍光性化合物で標識することもできる。蛍光標識した抗体の存在は、適切な波長の光にその免疫複合体を曝露させ、かつ、結果として生じる蛍光を検出することによって決定される。蛍光標識化合物には、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、フィコエリテリン(phycoerytherin)、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタアルデヒド(phthaldehyde)、およびフルオレスカミンが含まれる。
【0083】
あるいは、抗体構成要素を化学発光化合物に結合させることによって抗IL-21R免疫複合体または抗IL-21Rヘテロ二量体免疫複合体を検出可能となるように標識できる。化学発光タグ付き免疫複合体の存在は、化学反応の過程を通じて生じる発光の存在を検出することによって決定される。化学発光標識化合物の例には、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸エステルが含まれる。
【0084】
同様に、生物発光化合物を使用して、本発明の抗IL-21R免疫複合体または抗IL-21Rヘテロ二量体免疫複合体を標識することもできる。生物発光は、触媒的タンパク質によって化学発光反応の効率が高められる生物学的系において見出される、あるタイプの化学発光である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識するのに有用な生物発光化合物には、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリンが含まれる。
【0085】
あるいは、抗IL-21R免疫複合体または抗IL-21Rヘテロ二量体免疫複合体は、抗IL-21R抗体構成要素または抗IL-21Rヘテロ二量体抗体構成要素を酵素に結合させることによって、検出可能に標識することもできる。抗IL-21R酵素結合体または抗IL-21Rヘテロ二量体酵素結合体を適切な基質の存在下でインキュベートすると、酵素部分は基質と反応して、例えば、分光光度的手段、蛍光定量的手段、または視覚的手段によって検出できる化学的部分を生成する。多特異性の免疫複合体を検出可能に標識するのに使用できる酵素の例には、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、およびアルカリホスファターゼが含まれる。
【0086】
当業者は、本発明に従って使用できる他の適切な標識について知っていると考えられる。抗IL-21R抗体または抗IL-21Rヘテロ二量体抗体へのマーカー部分の結合は、当技術分野において公知である標準的な技術を用いて実施することができる。この点に関する典型的な方法論は、Kennedy et al., Clin. Chim. Acta 70:1(1976); Schurs et al., Clin. Chim. Acta 81:1(1977); Shih et al., Int'l J. Cancer 46:1101(1990); Stein et al., Cancer Res. 50:1330(1990);およびColigan、前記によって説明されている。
【0087】
さらに、免疫化学的検出の利便性および汎用性は、アビジン、ストレプトアビジン、およびビオチンと結合させた抗IL-21R抗体または抗IL-21Rヘテロ二量体抗体を用いることによって高めることができる(例えば、Wilchek et al.(編)、「Avidin-Biotin Technology」、Methods In Enzymology、第184巻(Academic Press 1990)、および Bayer et al., 「Immunochemical Applications of Avidin-Biotin Technology」、Methods In Molecular Biology、第10巻、Manson(編)、149〜162頁(The Humana Press, Inc.1992を参照されたい)。
【0088】
イムノアッセイ法を実施するための方法は、十分に確立されている。例えば、CookおよびSelf、「Monoclonal Antibodies in Diagnostic Immunoassays」、Monoclonal Antibodies:Production, Engineering, and Clinical Application、RitterおよびLadyman(編)、180〜208頁(Cambridge University Press, 1995)、Perry、「The Role of Monoclonal Antibodies in the Advancement of Immunoassay Technology」、Monoclonal Antibodies:Principles and Applications、BirchおよびLennox(編)、107〜120頁(Wiley-Liss, Inc. 1995)、ならびにDiamandis, Immunoassay(Academic Press, Inc. 1996)を参照されたい。
【0089】
薬学的組成物
本発明はさらに、薬学的に許容される担体、および本明細書において説明するポリペプチドまたは抗体を含む薬学的組成物も含む。薬学的組成物は、限定されるわけではないが、細胞障害性物質、サイトトキシン、例えば、細胞増殖抑制物質もしくは細胞破壊物質、治療物質、または放射性金属イオンを含む、付加的な治療物質を含んでよい。サイトトキシンまたは細胞障害性物質には、細胞に有害である任意の作用物質が含まれる。例には、パクリタキソール(paclitaxol)、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそれらの類似体またはホモログが含まれる。治療物質には、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分裂物質(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、薬学的組成物は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドを含んでよい。このようなタンパク質には、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナスエキソトキシン、もしくはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、血栓性物質、もしくは抗血管新生物質、例えば、アンギオスタチンもしくはエンドスタチンなどのタンパク質;または、例えば、リンフォカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、もしくは他の増殖因子などの生体応答調節物質が含まれ得る。
【0090】
治療を目的として、抗IL-21受容体抗体分子および薬学的に許容される担体は、治療的有効量で患者に投与される。本発明の治療的分子と薬学的に許容される担体との組合せは、投与される量が生理学的に有意である場合、「治療的有効量」で投与されると言われる。作用物質は、その存在により、受容者である患者の生理機能に検出可能な変化がもたらされる場合、生理学的に有意である。例えば、炎症を治療するのに使用される作用物質は、その存在により、炎症応答が軽減される場合、生理学的に有意である。
【0091】
抗IL-21受容体抗体を含む薬学的組成物は、液状形態で、エアロゾルで、または固形形態で提供され得る。液状形態の例は、注射液剤および経口懸濁剤である。例示的な固形形態には、カプセル剤、錠剤、および制御放出形態が含まれる。後者の形態の例は、ミニ浸透圧ポンプおよび埋め込み剤である(Bremer et al., Pharm. Biotechnol. 10:239(1997); Ranade、「Implants in Drug Delivery」、Drug Delivery Systems、RanadeおよびHollinger(編)、95〜123頁(CRC Press 1995); Bremer et al.、「Protein Delivery with Infusion Pumps」、Protein Delivery:Physical Systems、SandersおよびHendren(編)、239〜254頁(Plenum Press 1997); Yewey et al.、「Delivery of Proteins from a Controlled Release Injectable Implant」、Protein Delivery:Physical Systems、SandersおよびHendren(編)、93〜117頁(Plenum Press 1997))。
【0092】
リポソームは、静脈内に、腹腔内に、くも膜下腔内に、筋肉内に、皮下に、または、経口投与、吸入、もしくは鼻腔内投与を介して、対象に治療的ポリペプチドを送達するための1つの手段を提供する。リポソームは、水溶性の区画を取り囲む1つまたは複数の脂質二重層からなる顕微鏡的小胞である(一般に、Bakker-Woudenberg et al., Eur. J. Clin. Microbiol. Infect. Dis. 12(補遺1):S61(1993)、Kim, Drugs 46:618(1993)、およびRanade、「Site-Specific Drug Delivery Using Liposomes as Carriers」、Drug Delivery Systems、RanadeおよびHollinger(編)、3〜24頁(CRC Press 1995)を参照されたい)。リポソームは、組成が細胞膜に類似しており、結果として、リポソームは安全に投与することができ、かつ生分解性である。調製方法によって、リポソームは、単層または多重層でよく、かつ、リポソームのサイズは様々でよく、直径は0.02μm〜10μm超の範囲である。様々な作用物質をリポソーム中に封入することができる。疎水性作用物質は二重層に分配し、親水性作用物質は内側の水溶性空間内に分配する(例えば、Machy et al., Liposomes In Cell Biology And Pharmacology (John Libbey 1987)、およびOstro et al., American J. Hosp. Pharm. 46:1576(1989)を参照されたい)。さらに、リポソームサイズ、二重層の数、脂質組成、ならびにリポソームの電荷および表面の特徴を変更することによって、封入された作用物質の治療的有効性を制御することも可能である。
【0093】
あるいは、抗体、抗体断片、炭水化物、ビタミン、および輸送タンパク質など様々なターゲティングリガンドをリポソームの表面に結合させることもできる。例えば、リポソームを分枝型のガラクトシル脂質誘導体で修飾して、肝臓細胞表面で専ら発現される、アシアロ糖タンパク質(ガラクトース)受容体を標的にさせることができる(KatoおよびSugiyama, Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 14:287, 1997、Murahashi et al., Biol. Pharm. Bull. 20:259, 1997)。同様に、Wu et al., Hepatology 27:772, 1998では、アシアロフェツインでリポソームを標識すると、リポソームの血漿半減期が短縮され、かつ、アシアロフェツイン標識リポソームの肝細胞による取込みが大幅に増強されたことが示された。一方で、分枝型ガラクトシル脂質誘導体を含むリポソームの肝臓蓄積は、アシアロフェツインを前もって注射することにより阻害され得る(Murahashi et al., Biol. Pharm. Bull. 20:259(1997))。ポリアコニチル化ヒト血清アルブミンリポソームは、肝臓細胞にリポソームをターゲティングするための別のアプローチを提供する(Kamps et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 94:11681(1997))。さらに、Gehoらの米国特許第4,603,044号では、肝臓の特殊な代謝細胞に関連した肝胆道受容体に対する特異性を有する、肝細胞を対象とするリポソーム小胞送達系を記載している。
【0094】
組織ターゲティングに対するより一般的なアプローチでは、標的細胞は、標的細胞によって発現されるリガンドに特異的なビオチン化抗体で前標識される(Harasym et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 32:99(1998))。遊離抗体を血漿から除去した後、ストレプトアビジンを結合させたリポソームが投与される。別のアプローチでは、ターゲティング抗体がリポソームに直接結合される(Harasym et al., 同書(1998))。
【0095】
ポリペプチドおよび抗体は、タンパク質マイクロカプセル化の標準的技術を用いて、リポソーム内に封入され得る(例えば、Anderson et al., Infect. Immun. 31:1099(1981)、Anderson et al., Cancer Res. 50:1853(1990)、およびCohen et al., Biochim. Biophys. Acta 1063:95(1991)、Alving et al. 「Preparation and Use of Liposomes in Immunological Studies」、 Liposome Technology、第2版、第3巻、Gregoriadis(編)、317頁(CRC Press 1993)、Wassef et al., Meth. Enzymol. 149:124(1987)を参照されたい)。上記のように、治療的に有用なリポソームは、様々な構成要素を含んでよい。例えば、リポソームは、ポリ(エチレングリコール)の脂質誘導体を含んでよい(Allen et al., Biochim. Biophys. Acta 1150:9(1993))。
【0096】
分解性ポリマーマイクロスフェアは、治療タンパク質の高い全身レベルを維持するために設計された。マイクロスフェアは、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、非生分解性酢酸エチルビニルポリマーなどの分解性ポリマーから調製され、その際、タンパク質はポリマー中に閉じ込められる(GombotzおよびPettit, Bioconjugate Chem. 6:332, 1995; Ranade、「Role of Polymers in Drug Delivery」、Drug Delivery Systems, RanadeおよびHollinger(編)、51〜93頁(CRC Press 1995);RoskosおよびMaskiewicz、「Degradable Controlled Release Systems Useful for Protein Delivery」、Protein Delivery:Physical Systems、SandersおよびHendren (編)、45〜92 頁(Plenum Press 1997);Bartus et al., Science 281:1161, 1998;PutneyおよびBurke、Nature Biotechnology 16:153, 1998;Putney, Curr. Opin. Chem. Biol. 2:548, 1998)。ポリエチレングリコール(PEG)でコーティングされたナノスフェアもまた、治療用タンパク質の静脈内投与のための担体を提供し得る(例えば、Gref et al., Pharm. Biotechnol. 10:167, 1997を参照されたい)。
【0097】
他の剤形は、例えば、AnselおよびPopovich、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第5版(Lea&Febiger 1990)、Gennaro(編)、Remington's Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Company 1995)により、かつ、RanadeおよびHollinger、Drug Delivery Systems(CRC Press 1996)により示されているように、当業者によって考案され得る。
【0098】
薬学的組成物は、中和性抗IL-21受容体抗体または抗IL-21R受容体複合体抗体を含む容器を含むキットして供給され得る。治療的ポリペプチドは、単回投与もしくは複数回投与用の注射液剤の形態で、または、注射前に溶解される滅菌粉末として、提供され得る。あるいは、このようなキットは、治療的ポリペプチドを投与するための乾燥粉末分散装置、液体エアロゾル発生装置、またはネブライザーも含んでよい。このようなキットは、薬学的組成物の適応症および使用法に関する書面情報をさらに含んでよい。
【0099】
抗IL-21受容体抗体を含む薬学的組成物は、液状形態で、エアロゾルで、または固形形態で提供され得る。液状形態の例は、注射液剤、エアロゾル、液滴、トポロジー(topological)液剤、および経口懸濁剤である。例示的な固形形態には、カプセル剤、錠剤、および制御放出形態が含まれる。後者の形態の例は、ミニ浸透圧ポンプおよび埋め込み剤である(Bremer et al., Pharm.Biotechnol. 10:239, 1997; Ranade、「Implants in Drug Delivery」、Drug Delivery Systems、RanadeおよびHollinger(編)、95〜123頁(CRC Press 1995); Bremer et al.、「Protein Delivery with Infusion Pumps」、Protein Delivery:Physical Systems、SandersおよびHendren(編)、239〜254頁(Plenum Press 1997); Yewey et al.、「Delivery of Proteins from a Controlled Release Injectable Implant」、Protein Delivery:Physical Systems、SandersおよびHendren (編)、93〜117頁(Plenum Press 1997))。他の固形形態には、クリーム剤、ペースト剤、および他のトポロジー適用などが含まれる。
【0100】
抗IL-21受容体抗体の治療的用途
抗IL-21受容体、または抗IL-21受容体/IL-2Rγ結合ポリペプチドのような抗IL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドは、IL-21活性ならびに受容体活性またはタンパク質結合を阻害するのに有用であると考えられる。本発明のヘテロ二量体または多量体組合せ物に対して産生させた抗体は、サブユニット1つだけに対して産生させた抗体よりも、IL-21に対してより特異的に、またはより強力に作用し得るため、好ましい態様である。さらに、本発明の抗体のアンタゴニスト活性および結合活性は、IL-21増殖アッセイ法および本明細書において説明する他の生物学的アッセイ法において分析することもできる。
【0101】
IL-21受容体またはIL-21受容体/IL-2RγのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドに対する抗体は、IL-21受容体またはIL-21受容体/IL-2RγのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドを発現する細胞をタグ化するために;アフィニティー精製によって、IL-21受容体またはIL-21受容体/IL-2RγポリペプチドのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドを発現する細胞を単離するために;IL-21受容体またはIL-21受容体/IL-2RγポリペプチドのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドを発現する細胞の循環レベルを決定する診断的アッセイ法のために;根源的な病理または疾患のマーカーとして、IL-21受容体またはIL-21受容体/IL-2RγのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドを発現する細胞を検出または定量するために;FACSを使用する分析方法において;発現ライブラリーをスクリーニングするために;抗イディオタイプ抗体を作製するために;ならびに、中和抗体として、または、IL-21受容体もしくはIL-21受容体/IL-2RγのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチド、またはIL-21活性をインビトロおよびインビボで妨害するためのアンタゴニストとして、使用することができる。適切な直接的タグまたは標識には、放射性核種、酵素、基質、補助因子、阻害物質、蛍光マーカー、化学発光マーカー、および磁性粒子などが含まれる。間接的なタグまたは標識は、ビオチン-アビジンまたは他の相補物/抗相補物ペアを中間物として使用することを特徴とし得る。本明細書における抗体は、薬物、毒素、および放射性核種などに直接的または間接的に結合させてよく、かつ、これらの結合体は、インビボでの診断的適用または治療的適用のために使用される。さらに、IL-21受容体もしくはIL-21受容体/IL-2RγのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドまたはそれらの断片に対する抗体は、アッセイ法、例えば、ウェスタンブロットまたは当技術分野において公知である他のアッセイ法において、変性または非変性のIL-21受容体もしくはIL-21受容体/IL-2RγのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドまたはそれらの断片を検出するためにインビトロで使用することもできる。
【0102】
IL-21受容体もしくはIL-21受容体/IL-2RγのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドに対する抗体は、対応する受容体を発現する細胞をタグ化するため、およびそれらの発現レベルを分析するために、アフィニティー精製のために、受容体ポリペプチドの循環レベルを決定するための診断的アッセイ法において、蛍光活性化細胞選別を用いた分析方法のために、有用である。さらに、二価の抗体、および抗イディオタイプ抗体は、IL-21の作用を模倣するアゴニストとして使用され得る。
【0103】
適切な検出可能分子が、IL-21受容体/IL-2Rγ抗体のような、IL-21受容体もしくはIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドに結合するポリペプチド、またはそれらの生物活性断片もしくは部分に、直接的または間接的に結合され得る。適切な検出可能分子には、放射性核種、酵素、基質、補助因子、阻害物質、蛍光マーカー、化学発光マーカー、および磁気粒子などが含まれる。適切な細胞障害性分子は、ポリペプチドまたは抗体に直接的または間接的に結合され得、これらには、細菌毒素または植物毒素(例えば、ジフテリア毒素、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、リシン、およびアブリンなど)、ならびに治療的放射性核種、例えば、ヨウ素-131、レニウム-188、またはイットリウム-90など(ポリペプチドもしくは抗体に直接結合されるか、または、例えばキレート化部分を介して間接的に結合される)が含まれる。結合ポリペプチドまたは抗体は、アドリアマイシンのような細胞障害性薬物と結合させてもよい。検出可能分子または細胞障害性分子に間接的に結合させる場合、検出可能分子または細胞障害性分子を、相補物/抗相補物ペアの1つのメンバーに結合させることができ、その際、もう一方のメンバーが、結合ポリペプチドまたは抗体部分に結合しているる。これらの目的において、ビオチン/ストレプトアビジンは、例示的な相補物/抗相補物ペアである。
【0104】
別の態様において、抗体-毒素融合タンパク質は、標的化された細胞または組織の阻害または除去のために(例えば、癌細胞または癌組織を治療するために)使用され得る。または、結合ポリペプチドが多機能ドメインを有する場合(すなわち、活性化ドメインまたはリガンド結合ドメイン、およびターゲティングドメイン)、ターゲティングドメインのみを含む融合タンパク質は、検出可能な分子、細胞障害性分子、または相補的分子を対象となる細胞または組織タイプに向けるために適している可能性がある。単一のドメインのみを含む融合タンパク質が相補的分子を含む場合、抗相補的分子を検出可能な分子または細胞障害性分子に結合させることができる。したがって、このようなドメイン-相補的分子融合タンパク質は、一般的な抗相補的分子-検出可能/細胞障害性分子結合体の細胞/組織特異的送達のための一般的なターゲティング媒体となる。
【0105】
別の態様において、IL-21受容体またはIL-21受容体/IL-2RγのようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドに対する抗体は、結合ポリペプチド-サイトカインまたは抗IL-21受容体抗体もしくは抗IL-21受容体/IL-2Rγ抗体のような抗IL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチド抗体が過剰増殖性細胞を標的とする場合、標的組織(例えば、血液、リンパ系、結腸、および骨髄癌)のインビボでの死滅化を増強するために使用することができる(一般的に、Hornick et al., Blood 89:4437-47, 1997を参照されたい)。記述される融合タンパク質は、所望の作用部位へのサイトカインのターゲティングを可能にし、それによってサイトカインの局所濃度の上昇を提供する。適切な抗IL-21受容体ホモ二量体抗体および抗IL-21受容体ヘテロ二量体抗体は、望ましくない細胞または組織(すなわち、腫瘍または白血病)を標的とし、融合されたサイトカインの媒介により、エフェクター細胞による標的細胞の溶解が改善した。この目的に適したサイトカインには、例えば、インターロイキン2および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が含まれる。
【0106】
あるいは、IL-21受容体またはIL-21受容体/IL-2Rγ受容体のようなIL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドに対する抗体を含むIL-21アンタゴニストは、他のサイトカインと協同して、IL-21、または感染症に対する免疫を増強するのに、HIV+患者のような免疫不全患者を治療するのに、もしくはワクチンを改善するのに重要であると思われる他のサイトカインと協同する免疫系の選択的な活性化、亢進、または選択的な抑制を可能にし得る。特に、抗IL-21受容体または抗IL-21受容体/IL-2Rγのような抗IL-21受容体ヘテロ二量体ポリペプチドを含むIL-21受容体アンタゴニストは、他のサイトカインによって誘導される前駆体(例えばT細胞)の増殖を可能にしつつ、IL-21を使用する免疫系の一部(例えば、NK細胞および成熟B細胞)の増殖を防ぐことができ、かつ、ウイルス感染症および他の感染症の治療において治療的価値を提供すると考えられる。例えば、デング出血熱/デングショック症候群(DHF/DSS)を引き起こすデングウイルス感染症の場合、重度のDHF/DSSは、「免疫亢進」、すなわち、別の血清型に対する既存の抗体の存在下でのウイルス複製の増大の結果として発生すると考えられている。異なるデングウイルス血清型による第2の感染症において、免疫系は、そのウイルスと交差反応するが中和はせず、かつ、マクロファージへの移行を潜在的に促進する、第1のウイルスに対する抗体を産生する。したがって、第2または第3のデング感染症の間に抗体免疫応答またはB細胞応答を抑制することは、第1の血清型感染に由来する「亢進」抗体を抑制し、その結果として重度のDHF/DSSを回避することにより、免疫系が第2の感染症において適切に反応してウイルスを中和するのに寄与し得る。総説については、White, D. O.およびFenner F.J.(編)Medical Virology, 第3版、Academic Press, Orlando F1, 1986、479〜508頁を参照されたい。同様に、本発明の受容体による胎児性抗原に対する母性抗体応答の抑制は、先天性異常および自然流産を防ぐのに役立ち得る。さらに、このような用途において、本発明の受容体を他のサイトカインと組み合わせて使用して、例えば、本明細書において説明し、かつ当技術分野において公知である他のサイトカインの存在下で、一部の免疫系活性(例えば、受容体を使用するB細胞増殖)を抑制し、しかしながら他の免疫系活性は増大させることができる。
【0107】
抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体の治療的有効量とは、対象に投与された場合に、疾患または障害に関連した症状または生物活性を予防、遅延、軽減、または阻害するのに有効である抗体の量を意味する。投与は、単回投与または複数回投与からなってよく、かつ、他の薬学的組成物と組み合わせて与えてもよい。
【0108】
本発明は、膵炎、I型糖尿病(IDDM)、グレーブス病、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、多発性硬化症、関節リウマチ、憩室症、全身性エリテマトーデス、乾癬、強直性脊椎炎、強皮症、乾癬性関節炎、変形関節炎、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病(GVHD)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、IgA腎症、移植片対宿主病、宿主対移植片病、アトピー性皮膚、潰瘍性結腸炎、および喘息などの炎症性および免疫性の疾患または状態においてIL-21RアンタゴニストまたはIL-21R複合体アンタゴニストを使用するための組成物および方法を提供する。
【0109】
接触性皮膚炎
アレルギー性接触性皮膚炎は、皮膚と接触する抗原に対するT細胞性免疫反応と定義される。アレルゲン依存性のT細胞応答が、CLA+細胞集団にほとんど限局されているため、CLA+T細胞集団は、皮膚炎の開始に関与していると考えられている(Santamaria-Babi, L.F., et al., J Exp Med 181:1935,(1995)を参照されたい)。最近のデータでは、一般的な接触過敏症アレルゲンであるニッケルに応答して増殖し、かつ1型(IFN-γ)サイトカインおよび2型(IL-5)サイトカインの両方を産生するのは、記憶(CD45RO+)CD4+CLA+T細胞のみであり、CD8+T細胞は該当しないことが判明した。さらに、CD4、CD45RO(記憶)、またはCD69と組み合わせてCLAを発現する細胞は、ニッケル特異的な刺激の後に増加し、かつ、ケモカイン受容体CXCR3、CCR4、CCR10を発現するが、CCR6は発現しない。Moed H., et al., Br J Dermatol 51:32,(2004)を参照されたい。
【0110】
動物モデルにおいて、アレルギー性接触性皮膚炎がT細胞依存性であること、およびアレルギー応答性T細胞が、アレルゲン適用部位に遊走することが実証された。一般に、Engeman T.M., et al., J Immunol 164:5207, (2000); Ferguson T.A.およびKupper T.S. J Immunol 150:1172,(1993);ならびにGorbachev A.V.およびFairchild R.L. Crit Rev Immunol. 21:451(2001)を参照されたい。
【0111】
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎(AD)は、この10年間の間に、発病率が劇的に増加した、慢性的に再発する炎症性皮膚疾患である。臨床的に、ADは、慢性的な再発性経過を示す、著しくそう痒性でしばしば擦りむけた斑および丘疹を特徴とする。ADの診断は、主として、主要な臨床所見および軽微な臨床所見に基づく。Hanifin J.M., Arch Dermatol 135: 1551(1999)を参照されたい。組織病理学により、急性病変における海綿状態、過錯角化、および限局的な錯角化が明らかになるのに対し、過錯角化および錯角化、アカントシス/顆粒層肥厚、ならびにリンパ球および大量の肥満細胞による真皮の血管周囲浸潤を伴う著しい表皮過形成は、慢性病変の特徴である。
【0112】
T細胞は、組織における局所的免疫応答開始の中心的役割を果たし、かつ、証拠により、特に、皮膚浸潤性のT細胞が、皮膚における調節されていない免疫応答の開始および維持において重要な役割を果たし得ることが示唆されている。皮膚炎症部位中の浸潤性T細胞の約90%は、Eセレクチン、すなわち内皮上の誘導性接着分子に結合する、皮膚リンパ球関連Agを発現する(CLA+)(Santamaria-Babi L.F., et al., Eur J Dermatol 14:13,(2004)に総説がある)。対照個体と比較して有意な、AD患者における循環血中CLA+ T細胞の増加が実証されているのに対し(Teraki Y., et al., Br J Dermatol 143:373(2000)を参照されたい)、他の研究者らは、AD患者由来のCLA+記憶T細胞が、CLA-集団と比較してアレルゲン抽出物に優先的に応答することを実証した(Santamaria-Babi, L.F., et al., J Exp Med. 181:1935,(1995)を参照されたい)。ヒトにおいて、皮膚のアトピー性障害の病因は、IL-5 およびIL-13に類似したTh-2型サイトカインを高いレベルで発現するCLA+ T細胞の増加に関連付けられている。Akdis M., et al., Eur J Immunol 30:3533(2000)およびHamid Q., et al., J Allergy Clin Immunol 98:225(1996)を参照されたい。
【0113】
NC/Ngaマウスは、約6週齢〜8週齢で、指定された病原体を有する(非SPF)条件で飼育した場合、臨床経過および臨床徴候、組織病理学および免疫病理学を含む多くの局面でヒトADに類似しているAD様病変を自然発症的に発症する。一方、SPF条件下で飼育されたNC/Ngaマウスは、皮膚病変を発症しない。しかしながら、自然発症的皮膚病変の発症および引っ掻き行動は、天然のままのチリダニ抗原を毎週皮内注射することによって、SPF施設で飼育されたNC/Ngaマウスにおいて同時発生させることができる。Matsuoka H., et al., Allergy 58:139(2003)を参照されたい。したがって、NC/NgaにおけるADの発症は、AD治療用の新規な治療物質を評価するための有用なモデルである。
【0114】
自然発症的ADのNC/Ngaモデルの他に、OVAを用いたマウス皮膚感作もまた、感作マウスの皮膚における単核浸潤物による抗原依存性の表皮肥厚および真皮肥厚を誘導するモデルとして使用することができる。これは、通常、全IgEおよび特定のIgEの血清レベルの上昇と同時に発生するが、皮膚バリアの機能不全もそう痒症も、このモデルにおいて普通は発生しない。Spergel J.M., et al., J Clin Invest, 101 :1614,(1998)を参照されたい。DO 11.10 OVA TCRトランスジェニックマウスをOVAで感作することにより、皮膚バリアの調節不全およびそう痒症を誘導するために、このプロトコールを改良することができる。感作抗原を認識できる抗原特異的T細胞の数を増加させると、皮膚の炎症レベルが上昇して、可視的な引っ掻き行動および皮膚の苔癬化/落屑が誘導され得る。
【0115】
関節炎
変形関節炎、関節リウマチ、および傷害が原因で関節炎を起こした関節などを含む関節炎は、抗炎症性の抗体および結合ポリペプチドの治療的使用から利益を受けると思われる一般的な炎症性状態である。例えば、関節リウマチ(RA)は、身体全体に影響を及ぼす全身性疾患であり、関節炎の最も一般的な形態の1つである。これは、疼痛、こわばり、熱感、発赤、および腫脹を引き起こす、関節の内側を覆う膜の炎症を特徴とする。炎症細胞は、硬骨および軟骨を消化し得る酵素を放出する。関節リウマチの結果として、炎症を起こした関節の内層、すなわち滑膜は、硬骨および軟骨に侵入し、かつそれらを損傷して、他の生理的作用に混じって関節の劣化および重度の疼痛をもたらし得る。巻き込まれた関節は、その形状および配列を失って、疼痛および動作低下をもたらし得る。
【0116】
関節リウマチ(RA)は、重度の障害および死亡率の上昇を招く、炎症およびそれに続く組織損傷を特に特徴とする免疫介在性疾患である。様々なサイトカインが、リウマチ関節において局所的に産生される。多数の研究により、2種のプロトタイプの炎症誘発性サイトカインであるIL-1およびTNF-αが、滑膜炎症および進行性の関節破壊に関与するメカニズムにおいて重要な役割を果たしていることが実証された。実際、TNF-αおよびIL-1の阻害物質をRA患者に投与すると、炎症の臨床徴候および生物学的徴候が劇的に改善し、かつ、骨びらんおよび軟骨破壊の放射線医学的徴候が減少した。しかしながら、これらの有望な結果にもかかわらず、大きな比率の患者がこれらの作用物質に応答しないことから、他のメディエーターも関節炎の病態生理に関与していることが示唆されている(Gabay, Expert. Opin. Biol. Ther. 2(2):135-149, 2002)。
【0117】
当技術分野において公知である、いくつかの関節リウマチ動物モデルがある。例えば、コラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルでは、マウスは、ヒト関節リウマチによく似ている慢性の炎症性関節炎を発症する。CIAは、RAと同様の免疫学的特徴および病理学的特徴を有するため、これは、潜在的なヒト抗炎症性化合物をスクリーニングするための理想的なモデルになる。CIAモデルは、存在するために、免疫応答および炎症応答の両方に依存する、周知のマウスモデルである。免疫応答は、抗原として与えられるコラーゲンに応答したB細胞およびCD4+T細胞の相互作用を含み、かつ、抗コラーゲン抗体の産生をもたらす。炎症期は、これらの抗体の一部がマウス固有のコラーゲンに交差反応し、かつ補体カスケードを活性化した結果としての、炎症メディエーターに由来する組織応答の結果である。CIAモデルを使用する利点は、病因の基本的メカニズムが公知であるということである。II型コラーゲン上のT細胞およびB細胞関連エピトープが同定されており、かつ、免疫介在性関節炎に関係する様々な免疫学的パラメーター(例えば、遅延型過敏症および抗コラーゲン抗体)ならびに炎症性パラメーター(例えば、サイトカイン、ケモカイン、およびマトリックス分解酵素)が決定されており、したがって、CIAモデルにおける試験化合物の有効性を評価するのに使用することができる(Wooley, Curr. Opin. Rheum. 3:407-20, 1999; Williams et al., Immunol. 89:9784-788, 1992; Myers et al., Life Sci. 61:1861-78, 1997;およびWang et al., Immunol. 92:8955-959, 1995)。
【0118】
これらのCIAモデルマウスに対する抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体の投与は、抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体を使用することにより、症状が改善され、かつ疾患の経過が変化するかを評価するために使用される。
【0119】
炎症性腸疾患 IBD
アメリカ合衆国では、約500,000人の人々が炎症性腸疾患(IBD)に罹患しており、この疾患は、結腸および直腸(潰瘍性結腸炎)、または小腸および大腸の両方(クローン病)のいずれかを冒し得る。これらの疾患の病因は不明であるが、これらは罹患組織の慢性的な炎症を伴う。潰瘍性結腸炎(UC)は、一般に結腸と呼ばれる大腸の炎症性疾患であり、結腸の粘膜または最も内側の壁の炎症および潰瘍を特徴とする。この炎症は、結腸の頻繁な排便を引き起こし、結果として下痢を生じる。症状には、ゆるい大便、ならびに付随する腹部の有痛性痙攣、発熱、および体重減少が含まれる。UCの正確な原因は不明であるが、最近の研究により、身体の天然の防御が、身体が異物であると考える身体中のタンパク質に対抗して作用すると示唆されている(「自己免疫反応」)。おそらく、これらのタンパク質が腸中の細菌タンパク質に似ているため、それらは、結腸の内壁を破壊し始める炎症プロセスを扇動または刺激する可能性がある。結腸の内壁が破壊される間に、潰瘍が形成して、粘液、膿、および血液を放出する。この疾患は、通常、直腸領域で始まり、最終的には大腸全体に拡大し得る。炎症のエピソードが繰り返されると、瘢痕組織によって腸および直腸の壁が肥厚する。結腸組織の死滅または敗血症が、重度の疾患と共に発生し得る。潰瘍性結腸炎の症状の重症度は様々であり、かつ、それらの発症は漸進的または急激であり得る。呼吸器感染症またはストレスを含む多くの因子によって、発病が引き起こされ得る。
【0120】
UCの有効な治療法は現在は無いが、治療は、結腸内壁における異常な炎症プロセスを抑制することに焦点を合わせられている。コルチコステロイド免疫抑制薬(例えば、アザチオプリン、メルカプトプリン、およびメトトレキサート)ならびにアミノサリチル酸を含む治療薬が、この疾患を治療するために利用可能である。しかしながら、コルチコステロイドおよびアザチオプリンなどの免疫抑制薬を長期間使用すると、骨の菲薄化、白内障、感染症、ならびに肝臓および骨髄に対する作用を含む、深刻な副作用をもたらし得る。現在の療法が成功していない患者においては、外科手術が選択肢である。外科手術は、結腸全体および直腸の除去を含む。
【0121】
慢性の潰瘍性結腸炎を部分的に再現することができるいくつかの動物モデルがある。最も広く使用されているモデルは、結腸中に慢性の炎症および潰瘍を誘発する2,4,6-トリニトロベンスルホン酸(trinitrobenesulfonic acid)/エタノール(TNBS)誘発性結腸炎モデルである。直腸内への点滴注入によって感受性の高いマウスの結腸中にTNBSを導入すると、結腸の粘膜においてT細胞性免疫応答が誘導され、この場合、大腸壁全体にわたるT細胞およびマクロファージの密な浸潤を特徴とする広範囲の粘膜炎症が生じる。さらに、この組織病理学的な病像は、進行性の体重減少(衰弱)、血性下痢、直腸脱、および大腸壁肥厚の臨床像を伴う(Neurath et al. Intern. Rev. Immunol. 19:51-62, 2000)。
【0122】
別の結腸炎モデルは、血性下痢、体重減少、結腸の短縮、および好中球浸潤を伴う粘膜潰瘍を発症する急性結腸炎を誘導するデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を使用する。DSS誘発性結腸炎は、組織学的には、リンパ様過形成、限局的な陰窩損傷、および上皮潰瘍と共に、固有層中への炎症細胞の浸潤を特徴とする。これらの変化は、上皮に対するDSSの毒性作用に起因し、かつ、固有層細胞の食作用ならびにTNF-αおよびIFN-γの産生によって起こると考えられている。一般的に使用されているものの、ヒト疾患との関連性に関するDSSのメカニズムについてのいくつかの問題は、依然として解明されていない。SCIDマウスのようなT細胞欠損動物において観察されるため、DSSは、T細胞に依存しないモデルとみなされている。
【0123】
これらのTNBSモデル、DSSモデル、またはCD4導入モデルに対する抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体の投与は、IL-21アンタゴニストの使用により、胃腸疾患の症状が改善され、かつそれらの経過が変化するかを評価するために使用することができる。IL-21は、結腸炎での炎症応答においてある役割を果たしている可能性があり、IL-21アンタゴニスト(例えば抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体)の投与によるIL-21活性の中和は、IBDに対する潜在的な治療アプローチである。
【0124】
乾癬
乾癬は、700万人を超えるアメリカ人に発症する慢性皮膚病態である。乾癬は、新しい皮膚細胞が異常に増殖した結果、古い皮膚が十分な速さで剥がれ落ちていない、炎症を起こし、隆起し、かつ鱗屑を有する皮膚部分を生じる場合に発生する。最も一般的な型である尋常性乾癬は、銀白の鱗屑で覆われた、皮膚の炎症部分(「病変」)を特徴とする。乾癬は、少数のプラークに限定されるか、または中程度から広範囲の皮膚領域を含む場合があり、頭皮、膝、肘、および胴に最も一般的に現れる。極めて目立つが、乾癬は、接触感染性疾患ではない。これらの疾患の病因は、罹患組織の慢性的な炎症に関係する。本発明の抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体は、乾癬、他の炎症性皮膚疾患、皮膚アレルギーおよび粘膜アレルギー、ならびに関連した疾患における炎症および病理学的作用を減少させる有益な治療物質としての機能を果たす可能性がある。
【0125】
乾癬は、多大な不快感を引き起こし得る、皮膚のT細胞性炎症性障害である。これは、治療法が無く、かつあらゆる年齢の人々に発症する疾患である。乾癬は、ヨーロッパ人および北米人の人口の約2%に発症する。軽度の乾癬に罹患している個体は、しばしば、局所剤を用いて疾患を制御することができるが、世界中の100万人を超える患者は、紫外線療法または全身的免疫抑制療法を必要とする。残念ながら、紫外線放射は不便でリスクがあり、かつ、多くの治療法は毒性があるため、長期の使用には制限がある。さらに、患者は、通常、乾癬を再発し、症例によっては、免疫抑制療法の中止後すぐに、元に戻る。抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体は、最近開発された、CD4+CD45RB導入モデルに基づく乾癬モデルを用いて試験することができる(Davenport et al., Internat. Immunopharmacol., 2:653-672, 2002)。
【0126】
本明細書において説明する他の疾患モデルに加えて、ヒト乾癬病変に由来する炎症組織に対する抗IL-21抗体の活性は、重症複合免疫不全(SCID)マウスモデルを用いてインビボで測定することができる。ヒト細胞が免疫不全マウスに移植された、いくつかのマウスモデルが開発されている(まとめて、異種移植モデルと呼ばれる)。例えば、Cattan AR, Douglas E, Leuk. Res. 18:513-22, 1994、およびFlavell, DJ, Hematological Oncology 14:67-82, 1996を参照されたい。乾癬のインビボ異種移植モデルとして、ヒト乾癬皮膚組織をSCID マウス モデルに移植し、かつ、適切なアンタゴニストを攻撃接種する。さらに、当技術分野における他の乾癬動物モデルも、IL-21アンタゴニストを評価するのに使用することができ、例えば、AGR129マウスモデルにヒト乾癬皮膚移植片を移植し、かつ、適切なアンタゴニストを攻撃接種する(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Boyman, O. et al., J. Exp. Med.オンライン出版番号20031482, 2004を参照されたい)。同様に、ヒト結腸炎、IBD、関節炎、または他の炎症性病変由来の組織または細胞をSCIDモデルにおいて使用して、本明細書において説明する抗IL-21抗体の抗炎症特性を評価することができる。
【0127】
治療の有効性は、当技術分野において周知の方法を用いて、処置集団における抗炎症作用の経時的な増大として測定され、かつ統計学的に評価される。いくつかの例示的な方法には、例えば、乾癬モデルにおいて、表皮の厚さ、真皮上層中の炎症細胞の数、および錯角化のグレードを測定することが含まれるが、それに限定されるわけではない。このような方法は当技術分野において公知であり、かつ本明細書において説明する。例えば、Zeigler, M. et al. Lab Invest 81:1253, 2001; Zollner, T.M. et al. J. Clin. Invest. 109:671, 2002; Yamanaka, N. et al. Microbio.l Immunol. 45:507, 2001; Raychaudhuri, S.P. et al. Br. J. Dermatol. 144:931, 2001; Boehncke, W. H et al. Arch. Dermatol. Res. 291:104, 1999; Boehncke, W. H et al., J. Invest. Dermatol. 116:596, 2001; Nickoloff, B. J. et al. Am.J.Pathol. 146:580, 1995; Boehncke, W.H et al. J.Cutan. Pathol. 24:1, 1997; Sugai, J., M. et al. J. Dermatol. Sci. 17:85, 1998;およびVilladsen L.S. et al. J. Clin. Invest. 112:1571, 2003を参照されたい。また、フローサイトメトリー(またはPCR)のような周知の方法を用いて経時的に炎症をモニターして、試料中に存在する炎症細胞または損傷細胞の数、IBDに関するスコア(体重減少、下痢、直腸出血、結腸の長さ)、CIA RAモデルの足疾患スコアおよび炎症スコアを定量することもできる。
【0128】
全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデス(SLE)は、遍在する自己抗原を対象とする慢性的なIgG抗体(例えば抗dsDNA)産生を特徴とする、免疫複合体に関連した障害である。SLEの作用は、特定の器官に限局されるのではなく、全身性である。多数の染色体座位がこの疾患に関係付けられており、かつ、抗dsDNA抗体および糸球体腎炎など、疾患の様々な局面をもたらしている可能性がある。CD4+T細胞は、SLEのマウスモデルにおいて活動的な役割を果たすことが示されている(Horwitz, Lupus 10:319-320, 2001; YellinおよびThienel, Curr. Rheumatol. Rep., 2:24-37, 2000)。CD8+T細胞の役割は、明瞭に定義されていないが、狼瘡患者において「サプレッサー」CD8+T細胞機能が障害されていることを示唆する証拠がある(Filaci et al., J. Immunol., 166:6452-6457, 2001; Sakane et al, J. Immunol., 137:3809-3813, 1986)。
【0129】
IL-21は、B細胞に直接的に作用することによって抗体応答を調節することが示されている(Mehta et al., J. Immunol., 170:4111-4118, 2003; Ozaki et al., Science, 298:1630-1634, 2002; Suto et al., Blood, 100:4565-4573, 2002)。例えば、Ozakiら(J. Immunol. 173:5361, 2004)は、SLEモデルであるBXSB-Yaaマウスにおいて、IL-21レベルが上昇していることを実証した。さらに、IL-21はCD8T細胞の活性を増強するため、抗IL-21抗体を投与することにより、T細胞サプレッサー機能が損なわれている狼瘡患者において、より強いT細胞サプレッサー機能が提供されると考えられる。
【0130】
抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体は、IFNα、IFNγ、NOVANTRONE(登録商標)、ENBREL(登録商標)、REMICADE(登録商標)、LEUKINE(登録商標)、およびIL-2などの免疫調節物質を含む、自己免疫において既に使用されている他の作用物質と組み合わせて投与することができる。最適用量レベルの確立および抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体のスケジュール決定は、抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体の薬物動態および薬力学の研究、動物モデルにおける有効量の決定、ならびに抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体の毒性評価を含む、様々な手段によって実施される。次いで、霊長類および臨床試験において実施される直接的な薬物動態学的測定を用いて、患者において生物学的応答を実現するのに十分な大きさおよび持続期間の、血漿中の抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体レベルを実現する、患者における理論的投与量を予測することができる。
【0131】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに例示される。
【0132】
実施例
実施例1
IL-21の作製
IL-21タンパク質を、その全体が本明細書に組み入れられる米国特許出願第2006-0134754号およびWO 04/055168において説明されているようにして作製した。手短に言えば、IL-21ヌクレオチド配列を最適化し、ATCCアクセッション番号PTA-4853として寄託されている大腸菌発現ベクター中に挿入した。この発現ベクターを、大腸菌株W3110(ATCCアクセッション番号27325中に導入した。
【0133】
振とうフラスコ培養により、適切な培地中でIL-21を発現する大腸菌株を適切な培地中で増殖させることによって宿主細胞を発酵させた。フルクトース、グルコース、ガラクトース、ラクトース、およびグリセロールなどの炭水化物を添加してよい。イソプロピルチオガラクトピラノシド(IPTG)を、濃度0.1mM〜2.0mMまで培養物に添加してよい。
【0134】
発酵後、これらの細胞を遠心分離によって回収し、ホモジナイゼーション緩衝液中に再懸濁し、かつホモジナイズする。ホモジネートを採取した後、グアニジンを含む溶液にこれを再懸濁し、かつ、可溶性IL-21を含む上清をデカントし、確保した。可溶性画分中のIL-21の濃度を逆相HPLCによって決定した。還元剤を含むグアニジン溶液中で封入体を可溶化および変性させた後、次いで、制御された復元段階で、還元されたIL-21を酸化した。この段階は、塩酸アルギニン、塩、およびオキシドシャッフリング(oxido-shuffling)系を含むリフォールディング緩衝液中での希釈を含んだ。
【0135】
IL-21タンパク質の精製は、疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いたIL-21の精製を含んでよい。IL-21は、高速陽イオン交換クロマトグラフィーによってさらに精製することができる。IL-21精製のための方法は、タンパク質を濃縮する段階およびタンパク質のバッファー交換を実施する段階を含んでよい。この段階は、高速陽イオン交換カラム溶出液を濃縮し、かつ、それを調合緩衝液に交換するように設計されている。最終のカラム溶出液プールを濃縮して、IL-21の濃度を高める。残存する不純物および汚染物質を除去するためにIL-21をさらに精製することが望ましい場合がある。例えば、陰イオン交換カラムを用いて、エンドトキシンレベルを低下させることができる。
【0136】
実施例2
組換えIL-21およびIL-21受容体タンパク質の作製
A. IL-21受容体(zalpha11またはIL-21rとも呼ばれる)ヘテロ二量体タンパク質は、その全体が本明細書に組み入れられる米国特許出願第2002-0137677号に記載されているようにして作製することができる。手短に言えば、分泌性のヒトhzalpha11/hIL2Rγヘテロ二量体を発現するベクターを構築する。この構築物では、hzalpha11の細胞外ドメインをIgG γ1のCH1ドメインに融合する。CH1ドメインを哺乳動物の発現ベクター中にクローニングする。ヒトκ軽鎖のCL1ドメインを哺乳動物発現ベクターにクローニングする。
【0137】
CH1ドメインに融合されたヒトzalpha11を有する構築物を作製し、かつ、ベクターを配列決定して、融合が正確であることを確認する。CL1に融合されたhIL2Rγを有する単独の構築物を構築することもできる。結果として生じるベクターを配列決定して、ヒトIL-2Rγ/CL1融合が正確であることを確認する。
【0138】
ヒトzalpha11(IL-21r)およびヒトIL-2Rγの受容体融合物を、同時発現させる。当業者に公知の方法によって、各発現ベクターを哺乳動物宿主細胞中に同時トランスフェクトする。トランスフェクトされた細胞をメトトレキサート(MTX)中で10日間、およびG418(Gibco/BRL)中で10日間、選択する。結果として生じるトランスフェクタントのプールを、MTXおよびG418中で10日間、再び選択する。
【0139】
結果として生じる、二重に選択した細胞のプールを用いて、タンパク質を得る。このプールを含むFactories(Nunc, Denmark)を用いて、馴化培地を作製する。この無血清馴化培地は、プロテインAカラムを通過させ、画分中に溶出させる。最高濃度を有することが見出された画分を集め、かつPBSに対して透析する(カットオフ分子量10kD)。最後に、透析した材料をアミノ酸解析(AAA)にかける。精製した可溶性ヒトzalpha11受容体/IL-2Rγ受容体は、BaF3増殖アッセイ法において、ヒトzalpha11リガンドの結合に際して競合する能力を評価するのに使用することができる。
【0140】
B.カルボキシル末端にGluGluタグ(Grussenmeyer et al., Proc. Natl. Acad. Sci.USA 82:7952-4, 198))を有するFc9(ヒトγ1のFc領域(Kabatの番号付け221-447; Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Dept. Health and Human Serv., Bethesa, MD, 1991))に融合されたヒトzalpha11の細胞外ドメインを、オーバーラップPCRによって作製した。酵母での組換えによって、pZMP31 (米国特許出願第2003/023414号に記載されている。サイトメガロウイルスエンハンサーおよび骨髄増殖性肉腫ウイルスプロモーターを有するハイブリッドベクター)にcDNAを挿入した。ヒトIL2受容体に共通のγ鎖の細胞外ドメインを、Fc9のカルボキシル末端に6XHisタグを有するFc9に融合させた。zalpha11 Fc9CEEに関して説明したのと同じ方法を用いて、酵母組換えにより、この構築物をpZMP21z中に挿入した。結果として生じる構築物を配列決定して、挿入が正確であることを確認した。両方のプラスミドを、無血清に順応させたCHO細胞懸濁液にエレクトロポレーションによってトランスフェクトし、かつ、ヒポキサンチンおよびチミジンを含まず、200ng/mLゼオマイシンを添加した無タンパク質PFCHO培地(BioWhittaker)中で選択した。次いで、これらの細胞を、1uMメトトレキサートおよび200ng/mLゼオマイシンの両方に細胞が耐性になるまで濃度を漸増させてメトトレキサートを加えた同じ培地中で選択した。EEおよびhisタグの両方の存在に関するウェスタンブロット解析により、これらの細胞を、ヘテロ二量体IL21受容体の産生に関して試験した。
【0141】
zcytor26f2の設計(ヒトIL2受容体に共通のγ鎖の細胞外ドメインを、6XHisタグを有するFc9に融合させた)は、3種類のタグ(GluGlu、His、およびFc)が精製のために利用できるようにし、このうち2種類が、2種のホモ二量体混在物からヘテロ二量体を最も上手く区別するのに利用される。Fcドメインを含む全分子(ホモ二量体混在物および標的のヘテロ二量体)を捕捉し、かつ、宿主細胞の構成要素および関連する培地産生物から精製した。全種類を含むプールを濃縮し、かつ、凝集体を除去するために適切なサイズ排除カラム(Superdex 200)に注入した。3種すべて(2種のホモ二量体および1種のヘテロ二量体)を含むSECプールを、識別力の高い負荷条件および溶出条件下でNi対イオンを使用する、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)に供した。IMAC溶出プールは、高純度のヘテロ二量体を含み、残存するホモ二量体の混入はわずかであった。残存する任意の凝集生成物を同様に除去するサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200)を用いて、IMACプール緩衝液を調合緩衝液に交換した。抗体の中和活性を試験する場合、このIL-21ヘテロ二量体タンパク質を比較測定器として使用した。
【0142】
実施例3
IL-21モノクローナル抗体の調製
ラットモノクローナル抗体は、雌のスプラーグドーリーラット(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)4匹を精製組換えIL-21受容体タンパク質で免疫化することによって調製する。細胞外ドメインはエピトープドメインであるため、本明細書において説明する方法を用いて、可溶性IL-21Rタンパク質ならびに不溶性IL-21Rタンパク質に対する抗体を作製できることを、当業者は容易に理解すると考えられる。したがって、本実施例および以下のすべての実施例は、可溶性IL-21受容体だけでなく、不溶性IL-21受容体(SEQ ID NO:2)を含む受容体複合体に対する抗体に関する裏付けを提供する。これらのラットにそれぞれ、完全フロイントアジュバント(Pierce, Rockford, IL)中の精製組換えタンパク質25μgを最初に腹腔内(IP)注射し、続いて、不完全フロイントアジュバント中の精製組換えタンパク質10μgを2週間毎に腹腔内注射して追加免疫を行う。2回目の追加免疫注射の実施後7日目に、動物から採血し、血清を採取する。
【0143】
IL-21特異的ラット血清試料を、1ug/mlの精製組換えIL-21受容体タンパク質を特異的抗体標的として使用するELISAによって特徴付けする。
【0144】
脾細胞を1匹の高力価ラットから採取し、かつ、単一の融合手順でPEG1500を用いて、SP2/0(マウス)骨髄腫細胞と融合させる(脾細胞と骨髄腫細胞の融合比4:1、「Antibodies: A Laboratory Manual」、E. HarlowおよびD. Lane, Cold Spring Harbor Press)。融合後9日間増殖させた後、特異的な抗体産生ハイブリドーマのプールを、特異的抗体標的として125ヨウ素標識組換えIL-21Rタンパク質を使用する放射性免疫沈降法(RIP)によって、および特異的抗体標的として500ng/mlの組換えIL-21タンパク質を使用するELISAによって、同定する。いずれのアッセイプロトコルにおいても、陽性のハイブリドーマプールを、IL-21受容体配列を発現するBaF3細胞に対する精製組換えIL-21タンパク質の細胞増殖活性を妨害する能力に関してさらに解析する(「中和アッセイ法」)。
【0145】
RIPのみによって、またはRIPおよび「中和アッセイ法」によって、陽性の結果を生じるハイブリドーマプールを、限界希釈によって少なくとも2回クローニングする。
【0146】
クローンによって産生されるモノクローナル抗体を、ビニング(すなわち、各抗体が、IL-21、IL-21R、IL-21R/IL-2Rγといった、目的とする阻害タンパク質の結合以外の任意のタンパク質の結合を阻害し得るかを決定すること)、相対的親和性、および中和を含むいくつかの方法で特徴付ける。組織培養培地から精製されるモノクローナル抗体を、受容体配列を発現するBaf3細胞に対する精製組換えIL-21Rの細胞増殖活性を妨害する能力に関して特徴付ける(「中和アッセイ法」)。「中和性」モノクローナル抗体は、このようにして同定する。
【0147】
試料を採取し、かつ、中和アッセイ法および直接滴定ELISAの両方を用いて分析した。このアッセイ法では、どのクローンが最も高いOD測定値を維持し得るかを調べるために、4倍段階希釈物を用いて、試料を滴定した。中和アッセイ法および滴定アッセイ法の両方の結果を用いて、最初の大元の各ウェルから特定のクローンを、先に進めるために選択した。もう1度中和スクリーニングを実施して、これらの試料すべてを同じアッセイ法で試験し、かつ、この時点で、細胞株の数を上位4つの精選物に絞りこんだ。これらをさらにもう1回のクローニングに供して、培養物の均質性を徹底し、かつ、直接ELISAによってスクリーニングした。もう1回、滴定アッセイ法を実施した後、2種の最終IL-21クローンを選択し、268.5.1.11.42.1.4.3.9(ATCCアクセッション番号PTA-7143)および272.21.1.3.4.2(ATCCアクセッション番号PTA-7142)に指定した。抗IL-21受容体モノクローナル抗体もまた選択され、285.134.3.22(ATCCアクセッション番号PTA-7141)の指定のもとで析出された。これらのハイブリドーマクローンによって産生されるモノクローナル抗体は、2mM L-グルタミン、100μg/mLペニシリン、および100μg/mL硫酸ストレプトマイシン、および10% Fetal Clone I Serum(Hyclone Laboratories)を含む90%イスコフ改変ダルベッコ培地からなる増殖培地で培養することができる。これらのクローンは、2×105細胞/mlで培養を開始し、かつ、37℃、5%〜6%CO、1×105細胞/ml〜5×105細胞/mlの間で維持することによって、増殖させることができる。その後の移動の際に、細胞を無血清条件に順応させることができる。凍結した細胞を、90%血清、10%DMSO中で保存し、かつ、液体窒素冷凍器の気相中で保存する。
【0148】
さらに、BALB/cマウスおよびIL-21ノックアウトマウスは、モノクローナル抗体を作製するために、IL-21またはIL-21受容体タンパク質で免疫される。
【0149】
実施例4
モノクローナル抗体の血清スクリーニング
抗IL-21抗体の活性は、細胞ベースの力価バイオアッセイ法を用いて測定する。このバイオアッセイ法は、IL-21R cDNAを用いた安定なトランスフェクションによってIL-21受容体(IL-21R)を発現するように操作されたBaF3受容体細胞株を使用する。IL-21R/BaF3をトランスフェクトされた細胞は、その増殖をIL-3に著しく依存しており、これらの不在下では、増殖することができず、24時間以内にアポトーシスを起こす。細胞ベースのバイオアッセイ法では、IL-21R/BaF3をトランスフェクトされた細胞を、10〜20ng/mlのIL-21の存在下で様々な濃度の抗IL-21抗体含有血清と共にインキュベートし、かつ、その後の細胞増殖を測定する。
【0150】
実施例5
抗体の特徴付け
エピトープビニング
Biacore1000(商標)システム(Biacore, Uppsalla Sweden)を用いてエピトープビニング研究を実施する。方法は、方法定義言語(Method Definition Language)(MDL)を用いてプログラムし、かつ、Biacore Control Software、1.2バージョンを用いて実行する。ポリクローナルヤギ抗マウスIgG Fc抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)を、Biacore CM5センサーチップに共有結合的に固定化し、かつ、試験系列のモノクローナル一次抗体をそのチップに結合(捕捉)するのに使用する。次いで、ポリクローナルIgG Fc断片(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)を用いて、チップ上の空いているFc結合部位をブロックする。続いて、IL-21Rを注入し、捕捉されたモノクローナル一次抗体に特異的に結合させる。Biacore機器は、センサーチップ表面に結合されたタンパク質の質量を測定し、したがって、一次抗体およびIL-21R抗原の両方の結合を各サイクルに関して確認する。一次抗体および抗原がチップに結合した後、試験系列のモノクローナル抗体を二次抗体として注入し、予め結合された抗原に結合させる。モノクローナル二次抗体がモノクローナル一次抗体と同時にIL-21R抗原に結合できる場合、チップ表面での質量または結合の増加が検出される。しかしながら、モノクローナル二次抗体がモノクローナル一次抗体と同時にIL-21R抗原に結合できない場合、付加的な質量も結合も検出されない。それ自体に対して試験された各モノクローナル抗体を陰性対照として使用して、バックグラウンド(結合無し)シグナルのレベルを確かめる。BioEvaluation 3.2 RCIソフトウェアを用いてデータをまとめ、次いで、データ処理のためにExcel(商標)にロードする。
【0151】
ウェスタンブロット法
クローン由来のモノクローナル中和抗体が、変性したIL-21Rポリペプチドおよび還元/変性されたIL-21Rポリペプチドを2種の供給源から検出する能力を、ウェスタンブロット形式によって評価する。ウェスタンブロット形式においてIL-21RまたはIL-21R/IL/2rγなどのIL-21R複合体を検出することが公知であるウサギポリクローナル抗体を陽性対照として使用する。
【0152】
IL-21Rタンパク質を、分子量標準物質(SeeBlue; Invitrogen)と共に、非還元性試料緩衝液または還元性試料緩衝液(Invitrogen)のいずれかに溶かした4%〜12%NuPAGE Bis-Trisゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)上に添加し、かつ、電気泳動を実施する。電気泳動後、タンパク質をゲルから転写し、ニトロセルロースブロットを一晩ブロックし、かつ、各抗体に曝露させる。次いで、これらのブロットを、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合させた二次抗体でプローブする。二次抗体は、モノクローナル抗体に対してはヒツジ抗マウスIgG-HRP(Amersham:Piscataway, NJ)であり、ポリクローナル抗体に対してはロバ抗ウサギIg-HRP(Amersham)である。結合された抗体を、化学発光試薬(Lumi-Light Plus Reagent:Roche, Mannheim, Germany)を用いて検出し、かつ、ブロットの画像をLumi-Imager(Mannheim-Boehringer)で記録した。
【0153】
実施例6
DTHマウスモデル
DTH応答は、CD4+T細胞によって開始され、かつ、T細胞、好中球、およびマクロファージによって媒介される古典的な免疫応答である。DTH応答は、CD4+T細胞によって媒介される応答の好適な指標である。2種類のアジュバント、すなわちRIBIまたはCFAのいずれかに溶かしたニワトリ卵白アルブミン(OVA)を皮下投与して、マウスを免疫化する。この段階は、感作期(0日目〜6日目)と呼ぶ。7日後に耳測定値を測定する。次いで、マウスの耳に対照のPBS(左耳)またはOVA(右耳)を注射する。この段階は、攻撃接種期(7日目〜8日目)と呼ぶ。OVAに対して生じさせた免疫応答により、耳に炎症が誘導され、結果として、OVAで処置した耳は24時間で耳の厚さが増すが、PBSで処置した耳では耳の厚みは増えない。これは、カリパスを用いて測定する。
【0154】
総体積200μlのRIBIアジュバント(Corixa, Seattle, WA)中で乳化させたニワトリ卵白アルブミン(OVA)100μgをC57BL/6マウス(n=8/群)の背中に投与して免疫化する。RIBIを入れた1つのバイアルに0.5mg/ml卵白アルブミンを添加し、2分間勢いよくボルテックスして、マウスに注射するのに使用する乳濁液を作る。免疫化後7日目に、マウスの左耳にPBS 10μl(対照)を、右耳に体積10μlのPBS中OVA 10μgを注射する。マウスの耳に注射する前に、すべてのマウスの耳の厚さを測定する(0時点測定値)。攻撃接種後24時間目に、耳の厚さを測定する。耳の厚さの0時点測定値と24時間目の測定値の差を計算し、耳の炎症を示す。0日目〜6日目(感作期)または7日目〜8日目(攻撃接種期)から、PBSまたは様々な濃度の抗IL-21抗体をマウス群に腹腔内注射する。7日目および8日目の注射は、0時点および24時間時点に耳の厚さを測定する2時間前に実施する。24時間の期間の最後に、耳の厚さを測定した後、耳を切断し、かつ組織学的分析のためにホルマリン中に入れる。
【0155】
実施例7
多発性硬化症のマウスモデル
IL-21RまたはIL-21R複合体が多発性硬化症に影響を及ぼすかどうかを試験するために、抗IL-21R抗体が実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を抑制する能力に関して、MSのマウスモデルを試験する。十分に特徴付けられているC57BL/6マウスのミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)35-55ペプチド免疫化モデルを使用する。この実験は、抗IL-21抗体が、DCを介した抗原提示を阻害することによって、またはCD8 T細胞応答を増強することによってEAEの疾患スコアを遅延および/または抑制し得るかを決定するために実施する。このモデルにおいて効率的なCD8 T細胞応答が無いと、EAEが悪化する(Malipiero et. al., Eur. J. Immunol., 27:3151-3160, 1997)。EAEモデルの疾患の発症が用量依存的な様式で遅延することから、抗IL-21抗体の使用がMSにおいて有益であり得ることが示唆される。
【0156】
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、MSのマウスモデルである。このような1つのモデルにおいて、RIBIアジュバント中に乳化させたMOGペプチド(MOG35-55)100μgまたは組換えMOGタンパク質100μgでC57BL/6マウスを免疫化する。RIBIを入れたバイアルに、PBS中0.5mg/mlのMOG35-55調製物2mlを添加し、かつ、勢いよくボルテックスして溶液を乳化させるか、または、1:1の比率のDFA中組換えMOGを調製する。マウスの背中を剪毛し、かつ、マウスの背中にMOG/RIBI 100μgを皮下注射する。免疫化の2日前および免疫後毎日、マウスの体重を測定する。次いで、2日目に、最終濃度が200ng/マウスとなるように百日咳毒素(PT)200μlをマウスに静脈注射する。マウスの臨床スコアを毎日モニターする。0日目〜20日目、または1週3回で3週間、体積200μlのPBS200μl、BSA100μg、抗IL-21抗体10μg〜200μgをマウス群に腹腔内注射する。マウスの体重、臨床スコア、および発病率を評価し、解析のためにプロットする。
【0157】
実施例8
CD4+CD45RBhi(CD25-)結腸炎および乾癬のマウスモデル
CD4+ CD45RBhi T細胞またはCD4+CD25- T細胞を同系のSCIDマウスに移入すると、マウスにおいて結腸炎が生じる。制御性T細胞(CD4+CD25+またはCD4+CD45RBlo)を同時移入すると、この結腸炎が抑制される。CD4+CD25- T細胞をマウスに移入した後、マウスにブドウ球菌腸毒素B(SEB)をさらに注射した場合、マウスは結腸炎だけでなく、乾癬も発症する。細胞移入後0日目〜21日目に抗IL-21抗体を投与し、かつ、結腸炎および乾癬の症状をモニターする。乾癬スコアまたは結腸炎(組織像)が抑制されることから、抗IL-21抗体がこれらの自己免疫疾患を抑制し得ることが示される。
【0158】
脾臓および鼠径リンパ節をB10.D2マウスから切り離す。単細胞懸濁液を作製し、計数する。Miltenyi Beadシステムを用いて、ポジティブ選択によってCD25+細胞を選別する。希釈率1:100のCD25-PE(BD Pharmingen)で細胞を染色し、かつ15分間インキュベートする。過剰な抗体を洗い流し、かつ、抗PEビーズ10ul/106細胞と共に20分間、細胞をインキュベートする。細胞をPBSで洗浄し、かつ、LSカラム(Miltenyi Biotech)を通過させる。カラムを通過する細胞(CD25-)をさらなる解析のために確保する。CD4濃縮カクテル(Stem Cell technologies)をこれらのCD25-細胞に添加し(1:100)、かつ、15分間インキュベートする。細胞をPBSで洗浄する。抗ビオチンテトラマーの1:10希釈物をこれらの細胞に15分間添加し、続いて、磁性コロイド(60ul/106細胞)を15分間添加する(すべてStem Cell Technologies社製)。細胞をネガティブ選択カラムに通す(0.5秒、Stem cell Technologies)。通過する細胞は、CD4+CD25-細胞である。フローサイトメトリーを用いて純度を解析する。0.4×106個の細胞をナイーブなCB-17 SCIDマウスに総体積200μlで静脈注射する。翌日(1日目)、マウスにSEB 10μgを腹腔内注射する。乾癬および結腸炎の症状を2週間〜5週間追跡する。1日目〜20日目、または1週3回で3週間、PBS、BSA 100μg、またはIL-21RもしくはIL-21R複合体 10μg〜200μgをマウス群に腹腔内注射する。
【0159】
抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体で処置したマウスにおいて乾癬および結腸炎の症状が抑制されることから、抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体が乾癬および結腸炎のこのモデルにおいて自己免疫性の症状を抑制し得ることが示される。
【0160】
実施例9
接触過敏症マウスモデル
接触過敏症は、ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)およびオキサゾロンを含む様々な接触アレルゲンを用いて、マウスにおいて誘発することができる。アセトンおよびオリーブ油からなるビヒクル中のアレルゲンでマウスを局所的に感作し、次いで、オリーブ油のみに溶かしたアレルゲンを耳に攻撃接種する。耳の厚さの変化は、アレルゲンに対する免疫応答の尺度である。感作期(0日目〜5日目)に、または攻撃接種期(5日目〜6日目)の間に抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体を投与する。IL-21RまたはIL-21R複合体によって耳の厚さが抑制されることから、接触過敏症を抑制する際のIL-21Rポリペプチドの役割が示唆される。
【0161】
0日目に、アセトン:オリーブ油(4:1)中0.5% DNFBまたはアセトン:オリーブ油のみをC57B1/6マウスの背中に塗る。5日目に、カリパスを用いてマウスの耳の厚さを測定し、かつ、溶液25μlを耳に滴下することによって、オリーブ油のみ(対照)またはオリーブ油中0.25%DNFBをマウスの耳に攻撃接種する。耳の厚さの変化を6日目に測定し、かつ、5日目と6日目の耳の厚さの差として、炎症を算出する。0日目〜5日目または5日目〜6日目のいずれかに、PBSまたは抗IL-21抗体10μg〜100μgをマウス群に腹腔内注射する。
【0162】
抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体によって耳の厚さが抑制されることから、抗IL-21R抗体または抗IL-21R複合体抗体が、接触過敏症を抑制する際に有用であり得ることが実証される。
【0163】
実施例10
IL-21中和を検出するためのリン酸化STAT3アッセイ法
以前に誘導されたBaf3/ヒトIL21受容体(hIL-21R)トランスフェクタントを使用した(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,307,024号および同第6,686,178号を参照されたい)。RPMI、1×グルタマックス(Glutamax)、10%ウシ胎児血清、50uM β-メルカプトエタノール、200ug/mL ゼオシン(Zeocin)、1mg/mL G418(すべてInvitrogen Corporation(Carlsbad, CA)社製)からなるBaf3バイオアッセイ法用培地中で細胞を3回洗浄した。3回目の洗浄の後、標準的な方法(血球計数器)を用いて細胞を計数し、かつ、バイオアッセイ法用培地中に1mL当たり6×105細胞の濃度で再懸濁した。次いで、ウェル当たり細胞30,000個で、96ウェルの丸底組織培養プレートに細胞を播種した。次いで、このプレートを37℃の組織培養インキュベーターに移し、一方、他のアッセイ用プレートを準備した。
【0164】
次いで、試料用プレートを、2.0ng/mLヒトIL-21 30uLおよび以下のうちの1種 30uLを用いて準備した:希釈したマウス血清(最終濃度1:10、1:50、もしくは1:100)、培地、抗IL-21中和抗体(様々なロットおよび濃度)、可溶性hIL-21R(実施例2)、または無関係な対照。次いで、このプレートを37℃のインキュベーターに移した。30分〜40分後、細胞プレートおよび試料プレートの両方をインキュベーターから取り出し、かつ、試料プレート中の各ウェルの50uLを細胞プレートに移し、混合した。次いで、これらのプレートを37℃インキュベーターに厳密に8分間戻した。この時点で、プレートを氷上に置き、かつ、氷冷BioPlex Cell Wash Buffer(BioRad Laboratories, Hercules, CA)150 uLを添加することによって反応を停止させた。このプレートを、1500RPMおよび4℃で5分間、遠心分離した。遠心分離後、上清を流しに廃棄し、かつ、Factor1、Factor2、およびPMSFを含むBioPlex Cell Lysis Buffer(すべてBioRad社製)60uL中に細胞を溶解した。溶解した細胞をピペッティングして、塊をばらばらにし、次いで、4℃、600 RPMで20分間、振とうした。次いで、このプレートを、3000 RPM、4℃で20分間、再び遠心分離した。遠心分離後、溶解物55uLを取り出し、Phosphoprotein Testing Assay Buffer(BioRad)55uLと混合した。
【0165】
この時点で、フィルタープレートをリンタンパク質洗浄緩衝液(PWB)50uLで前もって湿らせて吸引し、リン酸STAT3結合ビーズ(BioRad)50uLを播いた。次いで、これらのビーズを吸引し、かつ、プレートをPWB 75uLで3回洗浄した。最後の吸引の後、希釈した溶解物50uLをプレートに移し、次いで、そのプレートに蓋をし、室温で一晩振とうした。翌朝、プレートをPWBで3回洗浄し、次いで、ビオチン化リン酸STAT3検出抗体(BioRad)を室温で20分間添加した。プレートをPWB中でさらに3回洗浄し、次いで、ストレプトアビジン-PEを10分間添加した。最後に、プレートをリンタンパク質再懸濁緩衝液(PRB)で3回洗浄し、これらのビーズをPRB 125uL中に再懸濁した。
【0166】
製造業者(Luminex Inc., Austin, TX)によって推奨されているように、標準的なLuminex 100データ収集プロトコールに従うことにより各ウェル中のリン酸化STAT3総量を測定した。次いで、データを解析し、培地のみの場合と比較したリン酸化STAT3の誘導倍率として表現した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群より選択される抗原受容体複合体に結合するモノクローナル抗体:
(a)SEQ ID NO:2を含むホモ二量体受容体複合体;
(b)SEQ ID NO:2とクラスIサイトカイン受容体ポリペプチドとを含む、ヘテロ二量体または多量体の受容体複合体;ならびに
(c)SEQ ID NO:2と、SEQ ID NO:4を含むIL-2Rγ受容体ポリペプチドとを含む、ヘテロ二量体または多量体の受容体複合体。
【請求項2】
請求項1記載のモノクローナル抗体と競合することができるビン。
【請求項3】
以下からなる群より選択される抗原受容体複合体のエピトープに結合するモノクローナル抗体:
(a)SEQ ID NO:2を含むホモ二量体受容体複合体;
(b)SEQ ID NO:2とクラスIサイトカイン受容体ポリペプチドとを含む、ヘテロ二量体または多量体の受容体複合体;ならびに
(c)SEQ ID NO:2と、SEQ ID NO:4を含むIL-2Rγ受容体ポリペプチドとを含む、ヘテロ二量体または多量体の受容体複合体。
【請求項4】
検出可能なマーカーで標識された、請求項1または請求項3記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
検出可能なマーカーが、放射性同位元素、酵素、色素、またはビオチンである、請求項4記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
請求項1記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞。
【請求項7】
請求項3記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞。
【請求項8】
以下の段階を含む、請求項1記載のモノクローナル抗体を作製する方法:
(a)該モノクローナル抗体を産生することができるハイブリドーマを提供する段階;および
(b)該ハイブリドーマによるモノクローナル抗体の産生を提供する条件下で該ハイブリドーマを培養する段階。
【請求項9】
以下の段階を含む、請求項3記載のモノクローナル抗体を作製する方法:
(a)該モノクローナル抗体を産生することができるハイブリドーマを提供する段階;および
(b)該ハイブリドーマによるモノクローナル抗体の産生を提供する条件下で該ハイブリドーマを培養する段階。
【請求項10】
請求項1または3のいずれか一項記載の抗IL-21受容体モノクローナル抗体の治療的有効量を患者に投与する段階を含む、自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項11】
自己免疫疾患が、膵炎、I型糖尿病(IDDM)、グレーブス病、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、多発性硬化症、関節リウマチ、憩室症、全身性エリテマトーデス、乾癬、強直性脊椎炎、強皮症、乾癬性関節炎、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病(GVHD)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、IgA腎症、移植片対宿主病、宿主対移植片病、アトピー性皮膚炎、潰瘍性結腸炎、および喘息からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
対象においてIL-21受容体複合体に媒介される生物活性を阻害または減少させるのに十分な量の請求項1、2、または3記載の抗IL-21受容体複合体モノクローナル抗体を投与する段階を含む、IL-21受容体複合体に媒介される障害を抑制または軽減する方法。
【請求項13】
ATCCアクセッション番号PTA-7141に指定されるハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体。

【公表番号】特表2009−517406(P2009−517406A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542538(P2008−542538)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/061285
【国際公開番号】WO2007/114861
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(505222646)ザイモジェネティクス, インコーポレイテッド (72)
【Fターム(参考)】