説明

IL−31に特異的なヒト化抗体分子

本発明は、IL−31に結合することができ、従ってIL−31の炎症促進作用又は掻痒症促進作用を中和、阻害、制限、又は低減することができる、ヒト化マウス抗ヒトIL−31抗体と抗体フラグメントを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
新たに同定されたサイトカインであるIL−31は、マウスで過剰発現されると皮膚炎様症状を引き起こすことがわかっている。Dillon, et al., Nature Immunol. 5:752-760, 2004を参照。これらの症状は、IL−31の活性を阻止、阻害、低減、拮抗、又は中和1するアンタゴニスト(抗IL−31抗体を含む)の使用により緩和することができる。また、2003年1月21日に出願された米国特許出願第10/352,554号(米国特許公報第2003−0224487号)、現在は米国特許第7,064,18号、7,425,325号、及び7,459,293号を参照。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体技術は、疾患を特定し治療するのに使用される膨大な治療薬や診断薬を提供してきた。げっ歯類の抗原結合部位を含む多くの組換え又は生合成分子が記載されている。特に、ヒト免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖ドメインに、全可変ドメインではなく、げっ歯類結合部位のみを移植することによりヒト抗体上に直接作成されたげっ歯類抗原結合部位を有する分子が、記載されている。例えば、Riechmann et al. (1988) Nature 332:323-327及びVerhoeyen et al. (1988) Science 239:1534-1536を参照。可変ドメインの相補性決定領域(CDR)の少なくとも1つがマウスモノクローナル抗体由来である抗原結合部位と、分子の残りの免疫グロブリン由来部分とを含む分子が、英国特許公報第GB2,276,169号(1994年9月21日公開)に記載されている。多くの1本鎖抗原結合部位ポリペプチドや1本鎖Fv(sFv)分子も記載されている。例えば米国特許第5,132,405号及び5,091,513号(Hustonら);及び米国特許第4,946,778号(Ladnerら)を参照。
【0003】
マウス抗ヒトIL−31モノクローナル抗体は、すでに2006年5月8日出願の米国特許出願第11/430,066号(米国特許公報第2006−02752960号)に記載されており、これは、ヒトIL−31を認識しキメラ抗体を作成するのに使用できるマウスモノクローナル抗体を記載している。しかしキメラ抗体は、免疫原性を引き起こすことがあり、ヒト化マウス抗ヒトIL−31抗体が好ましい。ヒト化抗体は一般に、マウス又はある場合にはキメラ抗体に対して、ヒトの治療で使用するための少なくとも3つの利点を有する:(1)エフェクター部分がヒト由来であるため、ヒト免疫系の他の部分とより良く相互作用する可能性がある(例えば、補体依存性細胞障害(CDC)、又は抗体依存性細胞障害(ADCC)により細胞をより効率的に破壊する);(2)ヒト免疫系は、ヒト化抗体のフレームワーク又は定常領域を異物として認識はしないはずであり、従ってかかる注入抗体に対する抗体応答は、完全に異物であるマウス抗体又は部分的に異物のキメラ抗体に対する応答よりは小さいはずである;及び(3)注入されたマウス抗体は、ヒト循環流中では、通常の抗体の半減期よりはるかに短い半減期を有すると報告されている(D. Shaw et al., J. Immunol., 134, 4534-4538 (1987))。注入されたヒト化抗体は、おそらく天然に存在するヒト抗体により近い半減期を有し、少量で低頻度の投与を可能にするであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
すなわち、IL−31媒介性の炎症を治療するため、マウス抗ヒトIL−31抗体にヒト化可変領域アミノ酸配列を提供する分子に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある態様において本発明は、a)それぞれ配列番号1、2、及び3のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号1、4、及び3のアミノ酸配列からなるCDRを含むヒト化重鎖可変ドメインと;b)配列番号5、6、及び7のアミノ酸配列からなるCDRを含むヒト化軽鎖可変ドメインとを含んでなる、ヒトIL−31に結合する単離された抗体に関する。別の態様において本発明は、本明細書に記載の抗体であって、a)該ヒト化重鎖可変ドメインは、1)それぞれ配列番号8(FR1)、9(FR2)、10(FR3)、及び11(FR4)のアミノ酸配列;2)それぞれ配列番号12(FR1)、13(FR2)、14(FR3)、及び15(FR4)のアミノ酸配列;3)それぞれ配列番号12(FR1)、13(FR2)、16(FR3)、及び15(FR4)のアミノ酸配列、よりなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR1、FR2、FR3、及びFR4を含み、b)該ヒト化軽鎖可変ドメインは、1)それぞれ配列番号17(FR5)、18(FR6)、19(FR7)、及び20(FR8)のアミノ酸配列;2)それぞれ配列番号17(FR5)、18(FR6)、21(FR7)、及び20(FR8)のアミノ酸配列、よりなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR5、FR6、FR7、及びFR8を含む、抗体に関する。ある実施態様においてこの同一性は少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%である。
【0006】
別の態様において本発明は、本明細書に記載の単離された抗体であって、重鎖のFR1の29位のアミノ酸はロイシンであり、重鎖のFR3の32位のアミノ酸はフェニルアラニンである抗体に関する。別の態様において本発明は、本明細書に記載の単離された抗体であって、重鎖のFR3の8位のアミノ酸はリジンであり、軽鎖のFR7の15位のアミノ酸はチロシンである抗体に関する。
【0007】
さらなる態様において本発明は、ヒトIL−31に結合する単離された抗体であって、a)それぞれ配列番号1と3のアミノ酸配列を有するCDR1とCDR3と、AIYPGDGDTRYSXaa1Xaa2FXaa3G(配列番号22)(ここでXaa1はグルタミン又はプロリンであり、Xaa2はセリン又はリジンであり、Xaa3はグルタミン又はリジンである)のアミノ酸配列を有するCDR2とを、含んでなるヒト化重鎖可変ドメイン(該ヒト化重鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号8、9、10、及び11、又はそれぞれ配列番号12、13、14、及び15、又はそれぞれ配列番号12、13、16、及び15のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR1、FR2、FR3、及びFR4を含むが、FR1の29位のアミノ酸はリジンであり、FR3の32位のアミノ酸はフェニルアラニンである)と、b)配列番号5、6、及び7のアミノ酸配列からなるCDRを含んでなるヒト化軽鎖可変ドメイン(該ヒト化軽鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号17、18、19、及び20のアミノ酸配列と少なくとも90%同一の、又はそれぞれ配列番号17、18、21、及び20のアミノ酸配列と少なくとも90%同一の、アミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR5、FR6、FR7、及びFR8を含む)とを、含んでなる抗体に関する。本発明のある態様においてこの同一性は少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%である。別の態様において本発明は、重鎖のFR3の8位のアミノ酸はリジンであり、軽鎖のFR7の15位のアミノ酸はチロシンである、本明細書に記載の単離された抗体に関する。別の態様において本発明は、本明細書に記載の単離された抗体であって、アミノ酸Xaa1がグルタミンであり、Xaa2がリジンであり、Xaa3がリジンであるか;アミノ酸Xaa1がプロリンであり、Xaa2がセリンであり、Xaa3がグルタミンであるか;アミノ酸Xaa1がグルタミンであり、Xaa2がリジンであり、Xaa3がグルタミンである抗体に関する。
【0008】
別の態様において本発明は、本明細書に記載の単離された抗体であって、重鎖可変ドメインのCDRがそれぞれ配列番号1、4、及び3からなり、軽鎖可変ドメインのCDRがそれぞれ配列番号5、6、及び7からなり、重鎖可変ドメインのフレームワーク領域がそれぞれ配列番号8、9、10、及び11からなり、軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域がそれぞれ配列番号17、18、19、及び20からなる抗体に関する。
【0009】
別の態様において本発明は、本明細書に記載の単離された抗体であって、重鎖可変ドメインのCDRがそれぞれ配列番号1、2、及び3からなり、軽鎖可変ドメインのCDRがそれぞれ配列番号5、6、及び7からなり、重鎖可変ドメインのフレームワーク領域がそれぞれ配列番号12、13、14、及び15からなり、軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域がそれぞれ配列番号17、18、19、及び20からなる抗体に関する。
【0010】
別の態様において本発明は、本明細書に記載の単離された抗体であって、重鎖可変ドメインのCDRがそれぞれ配列番号1、2、及び3からなり、軽鎖可変ドメインのCDRがそれぞれ配列番号5、6、及び7からなり、重鎖可変ドメインのフレームワーク領域がそれぞれ配列番号12、13、16、及び15からなり、軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域がそれぞれ配列番号17、18、21、及び20からなる抗体に関する。
【0011】
本明細書の実施例と教示から明らかなように、本明細書に記載のヒト化抗体のFR1の29位のロイシンとFR3の32位のフェニルアラニンの両方の存在は、該抗体の親和性と力価において正の影響を有する。例えばビアコア(Biacore)アッセイで示されるように、FR1の29位のロイシンとFR3の32位のフェニルアラニンの両方を有するヒト化抗体の結合親和性は、これらの位置に別のアミノ酸を有するヒト化抗体と比較して優れている(例えば、実施例3の表2のクローン番号7、10、13、及び14と比較)。親和性と力価について、重鎖のFR1の29位とFR3の94位のこれらのアミノ酸の正の影響は、2つの他の生物学的試験でも確認されている(実施例4と5を参照)。
【0012】
本発明の実施態様において本明細書に開示の抗体は、α、γ、μ、δ、又はεヒト免疫グロブリン重鎖の定常領域よりなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。本発明のある実施態様において本明細書に開示の抗体は、ヒトIgG1定常ドメイン、ヒトIgG2定常ドメイン、ヒトIgG3定常ドメイン、ヒトIgG4定常ドメイン、ヒトIgM定常ドメイン、ヒトIgE定常ドメイン、及びヒトIgA定常ドメインよりなる群から選択される、重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。ある実施態様においてヒトIgG4定常ドメインは、溶液中で安定でほとんどまたは全く補体活性化作用の無い変異型である。ある実施態様において重鎖免疫グロブリン定常領域ドメインは、241位(カバト(Kabat)の番号付け)にSerからProへの変異を有するヒトIgG4定常ドメインである。
【0013】
ある実施態様において免疫グロブリン軽鎖定常領域ドメインは、κ又はλヒト免疫グロブリン軽鎖の定常領域よりなる群から選択される。好ましくは免疫グロブリン軽鎖定常領域ドメインは、κヒト免疫グロブリン軽鎖の定常領域である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
(原文に記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を詳細に説明する前に、以下の用語を定義することが本発明の理解に有用であろう。
【0016】
本明細書において用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、親和性精製ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、及び抗原結合フラグメント、例えばF(ab’)2、Fabタンパク質分解性フラグメント、及び1本鎖可変領域フラグメント(scFv)を含む。遺伝子工学により作成された完全な抗体又はフラグメント、例えばキメラ抗体、Fvフラグメント、1本鎖抗体など、ならびに合成抗原結合ペプチド及びポリペプチドもまた含まれる。非ヒト抗体は、ヒトフレームワーク領域及び定常領域に非ヒトCDRを移植するか、又は全非ヒト可変ドメインを取り込むことによりヒト化される(場合により、露出した残基の置換によりヒト様表面でこれらを「おおい隠し(cloaking)」、その結果は「ベニヤ(veneered)」抗体である)。ある例では、ヒト化抗体は、可変領域フレームワークドメイン内に非ヒト残基を保持して、正しい結合特性を増強する。抗体をヒト化することにより、生物学的半減期は上昇し、ヒトへの投与による有害免疫応答の可能性が低下する。
【0017】
用語「キメラ抗体」は、その軽鎖及び重鎖が、典型的には遺伝子工学により、異なる種に属する免疫グロブリン可変領域遺伝子及び定常領域遺伝子から構築されている抗体を意味する。例えば、マウスモノクローナル抗体の遺伝子の可変部はヒト定常部(例えば、ガンマ1及びガンマ3)に結合される。従って典型的な治療用キメラ抗体は、マウス抗体の可変もしくは抗原結合ドメインと、ヒト抗体の定常ドメインとからなるハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種も用いることができる。
【0018】
本明細書において用語「免疫グロブリン」は、実質的に免疫グロブリン遺伝子によりコードされる1つ又はそれ以上のポリペプチドからなるタンパク質を意味する。免疫グロブリンの1つの型は、抗体の基本的構造単位を構成する。この型はテトラマーであり、各対が1つの軽鎖と1つの重鎖を有する免疫グロブリン鎖の2つの同一の対からなる。各対において軽鎖及び重鎖可変領域は一緒に抗原への結合に関与し、定常領域は抗体エフェクター機能に関与する。
【0019】
完全長の免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kd又は214アミノ酸)は、NH2末端(約110アミノ酸)の可変領域遺伝子と、COOH末端のカッパ又はラムダ定常領域遺伝子とにコードされる。完全長の免疫グロブリン「重鎖」(約50Kd又は446アミノ酸)は同様に、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)と他の上記定常領域遺伝子の1つ(約330アミノ酸)とにコードされる。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロンとして分類され、抗体のイソタイプをIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEとして規定する。軽鎖と重鎖内で可変領域と定常領域は、約12アミノ酸以上の「J」領域により連結され、重鎖はまた約10アミノ酸以上の「D」領域を含む(一般的には、Fundamental Immunology (Paul, W., ed., 第2版. Raven Press, N.Y., 1989), Ch. 7を参照(抗体及び抗体フラグメントの産生についての開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる))。
【0020】
免疫グロブリン軽鎖または重鎖の可変領域は、3つの超可変領域が割り込んだ「フレームワーク」領域からなる。すなわち用語「超可変領域」は、抗原結合を引き起こす抗体のアミノ酸残基を示す。超可変領域は、「相補性決定領域」すなわち「CDR」からのアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、及び89〜97(L3)、及び重鎖可変ドメイン中の31〜35(H1)、50〜65(H2)、及び95〜102(H3)[Kabatet al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版、公衆衛生局(Public Health Service)、国立衛生研究所(National Institutes of Health)、ベセスダ、メリーランド州(1991)]、及び/または「超可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、及び91〜96(L3)、及び重鎖可変ドメイン中の26〜32(H1)、53〜55(H2)、及び96〜101(H3);ChothiaとLesk, 1987, J. Mol. Biol. 196:901-917)(これらの両方とも参照することにより本明細書に組み込まれる))を含む。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書で定義した超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。すなわち「ヒトフレームワーク領域」は、天然に存在するヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域と実質的に同一(約85%またはそれ以上、通常90〜95%またはそれ以上)のフレームワーク領域である。構成軽鎖と重鎖が一緒になったフレームワーク領域である抗体のフレームワーク領域は、CDRを配置させ整列させるように作用する。CDRは主に、抗原のエピトープへの結合を引き起こす。
【0021】
従って用語「ヒト化」免疫グロブリンは、ヒトフレームワーク領域と非ヒト(通常マウスまたはラット)免疫グロブリンからの1つまたはそれ以上のCDRとを含む免疫グロブリンを示す。CDRを与える非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを与えるヒト免疫グロブリンは「アクセプター」と呼ばれる。定常領域は存在しなくてもよいが、存在する場合はこれらはヒト免疫グロブリン定常領域と、実質的にすなわち少なくとも約85〜90%、好ましくは約95%またはそれ以上同一でなければならない。すなわちヒト化免疫グロブリンのすべての部分(おそらくCDR以外)は、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖とヒト化重鎖免疫グロブリンとを含む抗体である。例えばキメラ抗体の全可変領域は非ヒトであるため、ヒト化抗体は上記で定義したような典型的なキメラ抗体は含まないであろう。
【0022】
用語「組換え抗体」は、アミノ酸配列が天然の抗体の配列から変化している抗体を示す。抗体の生成における組換えDNA技術の適切性のため、天然の抗体に存在するアミノ酸の配列に制限される必要は無く、所望の特性を得るために抗体を再設計することができる。可能な変化は多くあり、例えば1つまたは数個のアミノ酸の変化から、可変領域または定常領域の完全な再設計まである。定常領域の変化は一般に、特性を改良または改変するために行われ、例えば補体結合、膜との相互作用、及び他のエフェクター機能がある。可変領域の変化は、抗原結合特性を改良するために行われる。
【0023】
抗体以外に、免疫グロブリンは種々の他の型[例えば1本鎖またはFv、Fab、及びF(ab’)2、ならびにダイアボディ、線状抗体、多価または多特異性ハイブリッド抗体(上記、及び詳細には、Lanzaveccia et al., Eur. J. Immunol. 17,105 (1987))]、及び1本鎖[例えば、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 5879-5883 (1988)及びBird et al. Science, 242, 423-426 (1988)、これは参照することにより本明細書に組み込まれる]で存在してもよい[一般的には、Hood et al., "Immunology", Benjamin, N.Y., 第2版 (1984)、及びHunkapiller and Hood, Nature 323, 15-16 (1986)を参照のこと、これは参照することにより本明細書に組み込まれる]。
【0024】
本明細書中で用いる場合、用語「1本鎖Fv」、「1本鎖抗体」、「Fv」、または「scFv」は、重鎖と軽鎖の両方からの可変領域を含むが、定常領域が欠如している、単一のポリペプチド鎖内にある抗体フラグメントを示す。一般に1本鎖抗体は、VHとVLドメイン間のポリペプチドリンカーをさらに含み、これは抗体結合を可能にする所望の構造を取ることを可能にする。1本鎖抗体はPluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、RosenburgとMoore編、Springer-Verlag、ニューヨーク、269〜315頁(1994)に詳細に記載され、また国際特許出願公報WO88/01649号、及び米国特許第4,946,778号と5,260,203号も参照(これらの開示内容は参照することにより本明細書に組み込まれる)。具体的な実施態様において1本鎖抗体はまた、二重特異的及び/またはヒト化されていてもよい。
【0025】
「Fabフラグメント」は、1つの軽鎖と、1つの重鎖のCH1と可変領域を具備する。Fab分子の重鎖は、他の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0026】
「Fab’フラグメント」は、1つの軽鎖と、CH1ドメインとCH2ドメインの間により多くの定常領域を含有する1つの重鎖とを含有し、その結果2つの重鎖間で鎖間ジスルフィド結合が形成されてF(ab’)2分子を生成することができる。
【0027】
「F(ab’)2フラグメント」は、2つの軽鎖と、CH1ドメインとCH2ドメインの間の定常領域の一部を含有する2つの重鎖とを含有し、その結果鎖間ジスルフィド結合が2つの重鎖の間で形成される。
【0028】
不正確な分析法(例えば、ゲル電気泳動)により決定されるポリマーの分子量と長さは、近似値であることは理解されるであろう。かかる値が「約」Xまたは「ほぼ」Xとして表現される時、記載されたXの値は±10%まで正確であると理解される。
【0029】
本明細書で引用されたすべての文献は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0030】
本発明は、抗体のヒト化マウス抗ヒトIL−31可変領域配列の発見に基づく。IL−31のアンタゴニストとしてのこれらの抗体の使用は、一般に炎症、具体的には皮膚炎や掻痒症の症状を抑制する。本発明は、IL−31ポリペプチドを認識、結合、及び/又は中和する抗体のヒト化軽鎖と重鎖領域の使用を提供する。かかるヒト化軽鎖及び重鎖領域は、免疫グロブリン定常領域(例えば、IgG4又はIgG1)と融合され、種々の宿主細胞中で発現される。本明細書に記載のヒト化抗IL−31可変領域配列は、すでに米国特許出願第11/430,066号(2006年5月8日出願)(米国特許公報第2006−02752960号)(参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されているモノクローナル抗体のマウス抗ヒトIL−31軽鎖と重鎖可変領域のアミノ酸配列を使用して、作成された。
【0031】
抗体は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含む抗体もしくは抗体フラグメントを含み、その受容体上のIL−31の作用を中和、阻害、低減、予防、又は最小にする、キメラ、ヒト化、又は抗体フラグメントでもよい。抗体又は抗体フラグメントの臨床転帰は、炎症や自己免疫疾患(例えば、皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎、及び掻痒症やクローン病(本明細書で詳述される))の低下でもよい。ある実施態様において皮膚炎はアトピー性皮膚炎である。別の実施態様において皮膚炎は結節性痒疹である。別の実施態様において皮膚炎は湿疹である。低減は、痒み、引掻き、又は抜け毛の低減でもよい。
【0032】
IL−31は、新たに発見されたT細胞サイトカインであり、これはマウスで過剰発現されると皮膚炎様症状を引き起こす。例えば、Dillon, et al, Nature Immunol. 5:752-760, 2004を参照。IL−31は、米国特許出願第10/352,554号(2003年1月21日出願)(米国特許公報第2003−0224487号、現在米国特許出願第7,064,186号、Sprecher, Cindy et al., 2003、参照することにより本明細書に組み込まれる)中でZcyto17rligとして既に記載されているサイトカインのHUGO名である。Dillon et al., Nature Immunol.(前述)も参照。IL−31のアミノ酸配列は配列番号24に示される。組織解析は、マウスIL−31の発現が、睾丸、脳、CD90+細胞、前立腺細胞、唾液腺、及び皮膚で見られることを証明した。
【0033】
IL−31のヘテロダイマー受容体は、米国特許公報第20030224487に、オンコスタチンエム(OncostatinM)受容体ベータ(OSMRベータ)とヘテロダイマーを形成するzcytor17(HUGO名、IL−31RA)として記載された。IL−31は、活性化ヒト末梢血細胞(hPBC)から作成されたcDNAライブラリーから単離され、これはCD3について選択された。CD3は、リンパ系起源の細胞(特にT細胞)にユニークな細胞表面マーカーである。
【0034】
ヒト化マウス抗ヒト軽鎖可変ドメイン及び/又は脾臓マウス抗ヒト重鎖可変ドメインを含む分子(本明細書において「IL−31抗原結合分子」又は「IL−31抗」と呼ぶ)によるシグナル伝達の阻害、中和、阻止は、当業者に公知の多くの方法により測定することができる。例えば増殖低下を測定する測定法には、アラマーブルー(AlamarBlue)(登録商標)(AccuMed International, Inc., Westlake, Ohio)、臭化3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(Mosman, J. Immunol. Meth. 65:55-63, 1983);3,(4,5ジメチルチアゾール−2−イル)−5−3−カルボキシメトキシフェニル−2H−テトラゾリウム;水酸化2,3−ビス(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−5−[(フェニルアミノ)カルボニル]−2H−テトラゾリウム;及び塩化シアノジトリル−テトラゾリウム(これらは、Polysciences, Inc., Warrington, PAから市販されている)のような色素の減少の測定法;有糸分裂誘発測定法、例えば3H−チミジン取り込みの測定;例えばナフタレンブラックまたはトリパンブルーを使用する色素排除測定法;ジアセチルフルオレセインを使用する色素取り込み;及びクロム放出がある。一般的には、Freshney, Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique,3rd ed., Wiley-Liss, 1994を参照(これは参照することにより本明細書に組み込まれる)。上記以外に、IL−31RAと完全長OSMRベータを発現するBaF3細胞の例については、公表された米国特許公報第20030224487号(Sprecher, Cindy et al., 2003)を参照するか、又は本明細書に記載の活性例に示される。
【0035】
本明細書に記載の抗体をコードするポリヌクレオチド(DNAとRNAとを含む)の調製法は当該分野で公知である。イソチオシアン酸グアニジウム抽出を使用して総RNAを調製し、次にCsCl勾配で遠心分離して単離することができる(Chirgwin et al., Biochemistry 18:52-94, 1979)。総RNAからAvivとLederの方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:1408-12, 1972)を使用して、ポリ(A)+RNAが調製される。ポリ(A)+RNAから公知の方法を使用して相補的DNA(cDNA)が調製される。あるいはゲノムDNAを単離してもよい。次に、IL−31抗体をコードするポリヌクレオチドが同定され、例えばハイブリダイゼーションまたはPCRにより単離される。
【0036】
本発明はまた、IL−31ポリペプチドの機能性フラグメントに結合する抗体、及びかかる機能性フラグメントをコードする核酸分子を含む。本明細書に定義される「機能性」IL−31またはそのフラグメントは、その増殖もしくは分化活性、特殊な細胞機能を誘導もしくは阻害する能力により、または抗IL−31抗体もしくはIL−31RAまたはこれらの受容体の抗体もしくはIL−31RA/OSMRベータヘテロダイマー(可溶性または固定化)に特異的に結合する能力により特徴付けられる。すなわち本発明は、1つ又はそれ以上のIL−31機能性フラグメントを含むポリペプチド分子に結合するヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを提供する。
【0037】
本発明はまた、IL−31ポリペプチドのエピトープ担持部分、又は免疫原性エピトープもしくは抗原性エピトープを含むポリペプチドフラグメントまたはペプチドに結合するヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを提供する。これらのエピトープへの抗体の結合は、その同族の受容体へのIL−31のシグナル伝達の阻害、阻止、中和、及び/または低下を引き起こす。
【0038】
マウス抗ヒトIL−31モノクローナル抗体は、すでに2006年5月8日出願の同時係属米国特許出願第11/430,066号(米国特許公報第2006−02752960号)に記載されている。同時係属米国特許出願第11/850,006号(2007年9月4日出願)と本出願人のPCT出願US07/77555号(2007年9月4日出願)(これらのいずれも、可変領域配列と抗体産生法について、参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されたマウス抗ヒトIL−31抗体の可変領域のアミノ酸配列。これらのアミノ酸配列は、本明細書に記載のヒト化配列のための出発物質として使用した。具体的にはマウス抗ヒトIL−31抗体配列は、クローン番号292.12.3.1のハイブリドーマ由来であった。
【0039】
本明細書に記載の抗体の活性は、IL−31RA受容体を発現する細胞の増殖及び/またはそこへの結合を測定する種々のアッセイを使用して、増殖を阻害または低下させる能力により測定することができる。特に関係するのはIL−31依存性細胞の変化である。IL−31依存性になるように設計された適当な細胞株には、IL−3依存性BaF3細胞株(Palacios and Steinmetz, Cell 41:727-734, 1985;Mathey-Prevot et al., Mol. Cell. Biol. 6:4133-4135, 1986)、FDC−P1(Hapel et al.、Blood 64:786-790, 1984)、及びMO7e(Kiss et al., Leukemia 7:235-240, 1993)がある。公表された方法(例えば、Greenberger et al., Leukemia Res. 8:363-375, 1984;Dexter et al., Baum et al.編、Experimental Hematology Today, 8th Ann. Mtg. Int. Soc. Exp. Hematol. 1979, 145-156, 1980)に従って、成長因子依存性細胞株を樹立することができる。ヒト化抗IL−31抗体又はアンタゴニストの活性はまた、本明細書に記載のBaF3増殖アッセイ、ビアコア(Biacore)アッセイ、又はNHKアッセイで測定することができる。
【0040】
ある実施態様において免疫グロブリン重鎖定常領域ドメインは、α、γ、μ、δ、又はεヒト免疫グロブリン重鎖の定常領域よりなる群から選択される。該定常領域は、γ1、γ2、γ3、又はγ4ヒト免疫グロブリン重鎖の定常領域でもよい。
【0041】
別の実施態様において免疫グロブリン軽鎖定常領域ドメインは、κ又はλヒト免疫グロブリン軽鎖の定常領域よりなる群から選択される。
【0042】
別の実施態様において重定常鎖はヒトγ4であり、これは溶液中で安定であり、ほとんどまたは全く補体活性化作用が無い。別の実施態様において重定常鎖は、ヒトγ1である。
【0043】
免疫グロブリンは、主要なクラスの任意の免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMを含む)、及び任意のサブクラス又はイソタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4;IgA−1とIgA−2から選択される。
【0044】
IL−31活性の阻害は、多くのアッセイ法により測定することができる。本明細書に開示したアッセイ以外に、受容体結合、IL−31依存性細胞応答の刺激/阻害、またはIL−31RA受容体発現細胞の増殖を測定するように設計された種々のアッセイ内で、IL−31活性の阻害について試料を試験することができる。
【0045】
IL−31結合ポリペプチド(IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを含む)はまた、リガンドの精製に使用することができる。ポリペプチドは、固体支持体、例えばアガロースのビーズ、架橋アガロース、ガラス、セルロース性樹脂、シリカベースの樹脂、ポリスチレン、架橋ポリアクリルアミド、または使用条件下で安定な同様の物質上に固定される。固体支持体にポリペプチドを結合する方法は当該分野で公知であり、アミン化学、臭化シアン活性化、N−ヒドロキシスクシンイミド活性化、エポキシド活性化、スルフヒドリル活性化、及びヒドラジド活性化がある。得られる媒体は一般にカラムの形で作製され、リガンドを含有する液体は1回またはそれ以上カラムを通過させてリガンドを受容体ポリペプチドに結合させる。次に塩濃度、カオトロピック物質(塩酸グアニジン)、またはpHの変化を使用してリガンド−受容体結合を破壊させて、リガンドが溶出される。
【0046】
ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、以下の場合に特異的に結合していると考えられる:1)これらが閾値レベルの結合活性を示す場合、及び2)これらが関連ポリペプチド分子と顕著な交差反応をしない場合。閾値レベルの結合は、本明細書の抗IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストが対照(非IL−31)ポリペプチドに対する結合親和性より少なくとも10倍大きい親和性で、IL−31ポリペプチド、ペプチド、またはエピトープに結合する場合に測定される。抗体は、106-1またはそれ以上、好ましくは107-1またはそれ以上、さらに好ましくは108-1またはそれ以上、さらに最も好ましくは109-1またはそれ以上の結合親和性(Ka)を示すことが好ましい。ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストの結合親和性は、例えばスキャチャード(Scatchard)解析(Scatchard, G., Ann. NY Acad. Sci. 51:660-672, 1949)により当業者が容易に測定することができる。
【0047】
IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストが関連ポリペプチド分子と顕著に交差反応するかどうかは、例えばIL−31ポリペプチドを検出するが既知の関連ポリペプチドは検出しないIL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストにより、標準物質ウェスタンブロット解析(Ausubel et al., 本明細書に記載)を使用して証明される。非ヒトIL−31及びIL−31変異ポリペプチドを使用してスクリーニングを行うこともできる。さらにIL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを既知の関連ポリペプチド「に対してスクリーニング」して、IL−31ポリペプチドに特異的に結合する集団を単離することができる。例えば、IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは不溶性マトリックスに接着された関連ポリペプチドに吸着され、IL−31に特異的なIL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは適切な緩衝条件下でマトリックス中を通過する。(Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane(編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988; Current Protocols in Immunology, Cooligan et al.(編)、国立衛生研究所(National Institutes of Health)、John Wily and Sons,Inc., 1995)。
【0048】
ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、精製された組換えタンパク質ヒトIL−31の存在下で増殖させた時に受容体結合を阻止、阻害、防止するかまたは低下させる能力について解析される。例えばヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、区分け(binning)(すなわち、各抗体が他の結合の結合を阻害するかどうかを調べる)、相対的親和性、及び中和を含む多くの方法で解析することができる。
【0049】
本発明のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを、以下の表1と図1に示す。
【0050】
以下の表1において、「12VH1」の名称を有するクローンについて(すなわち、クローン7、9、10、13〜18、及び26〜36):用語「fback」は、LC(back)+HC(fback)を意味する;用語「LC(back)」は、LC(G66R、G68E、D70Q、F71Y、T72S)を意味する;及び、用語「HC(back)」は、HC(F29L、M69L、R71A、T73K、V78A、R94F)を意味する。同様に、以下の表1において、「12VH5」の名称を有するクローンについて(すなわち、クローン8、11、及び21〜24):用語「fback」は、LC(back)+HC(fback)を意味する;用語「LC(back)」は、LC(G66R、G68E、D70Q、F71Y、T72S)を意味する;及び、用語「HC(back)」は、HC(G24A、S28T、F29L、I69L、S70T、R94F)を意味する。
【表1】

【0051】
本明細書に開示の抗体は、それ自体公知の任意の方法、例えば組換え法、化学合成、クローニング、結合、又はこれらの組合せにより産生される。ある実施態様において本発明の抗体は、組換え法で、例えば適切な宿主細胞中で対応する核酸を発現することにより産生される。産生されるポリペプチドは、使用される宿主細胞のタイプにより、グリコシル化されてもグリコシル化されていなくても、又は他の翻訳後修飾を含んでも含まなくてもよい。多くの書物や総説が、ベクターや原核生物もしくは真核生物宿主細胞を使用して組換えタンパク質をクローン化し産生する方法を教示しており、例えばOxford University Press発行のシリーズ"A Practical Approach"("DNA Cloning 2: Expression Systems", 1995; "DNA Cloning 4: Mammalian Systems", 1996; "Protein Expression", 1999; "Protein Purification Techniques", 2001)がある。
【0052】
従って本発明のさらなる目的は、前述もしくは後述の任意の抗体、その相補鎖もしくは縮重配列をコードする単離された核酸分子である。この点で用語「核酸分子」は、特に限定されないが、デオキシリボ核酸(例えば、DNA、cDNA、gDNA、合成DNAなど)、リボ核酸(例えば、RNA、mRNAなど)、及びペプチド核酸(PNA)を含む、すべての異なるタイプの核酸を包含する。好適な実施態様において核酸分子はDNA分子、例えば2本鎖DNA分子又はcDNA分子である。用語「単離された」は、同定され、天然起源で通常結合している少なくとも1つの混入核酸分子から分離されていることを意味する。単離された核酸分子は、天然に存在する型又は状況とは異なる。従って単離された核酸分子は、天然の細胞に存在する特異的な核酸分子とは区別される。縮重配列は、参照ヌクレオチド配列と同じアミノ酸配列をコードするが、遺伝コードの縮重性のために異なるヌクレオチド配列を含む、参照ヌクレオチド配列と同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を意味する。
【0053】
本発明のさらなる目的は、前述もしくは後述の任意の抗体をコードするDNAを含むベクターである。ベクターは、任意の原核細胞もしくは真核細胞で組み込み性又は自律複製性で機能性の任意のクローニングベクターもしくは発現ベクターである。特にベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ、エピソーム、人工染色体などでもよい。ベクターは、重鎖と軽鎖の両方のコード配列、又は軽鎖と重鎖コード配列のいずれかを含んでよい。ベクターが重鎖と軽鎖の両方のコード配列を含む場合、重鎖と軽鎖はそれぞれプロモーターに機能できる形で結合している。プロモーターは、重鎖と軽鎖について同じかまたは異なってもよい。重鎖と軽鎖はまた1つのプロモーターに機能できる形で結合してもよく、この場合重鎖と軽鎖のコード配列は好ましくは内部リボゾーム侵入部位(IRES)により分離される。真核生物の遺伝子発現の適切なプロモーターは、例えばウイルス遺伝子から得られるプロモーター、例えばマウスもしくはヒトのサイトメガロウイルス(CMV)もしくはラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターであり、これらは当業者に公知である。ベクターは、制御要素、例えばプロモーター、ターミネーター、エンハンサー、選択マーカー、複製開始点などを含んでよい。かかるベクターの具体例には、原核生物プラスミド、例えばpBR、pUCもしくはpcDNAプラスミド、ウイルスベクター(レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又はAAVベクターを含む);バクテリオファージ;バキュロウイルス;BAC又はYACなど(後述される)がある。適切な核酸配列が種々の方法によりベクター中に挿入される。一般にDNAは、当該分野で公知の方法を使用して適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。これらの成分の1つ又はそれ以上を含む適切なベクターの構築は、当業者に公知の標準的結合法を使用する。
【0054】
本発明のさらなる態様は組換え宿主細胞であり、ここで該細胞は、上記の核酸分子又はベクターを含む。宿主細胞は原核細胞でも真核細胞でもよい。原核細胞の例には、細菌(例えば大腸菌(E. coli))がある。真核細胞の例は、酵母細胞、植物細胞、哺乳動物細胞、及び昆虫細胞があり、任意の初代細胞培養物又は樹立細胞株がある(例えば、3T3、Vero、HEK293、TN5など)。グリコシル化タンパク質の発現のための適切な宿主細胞は、多細胞生物から得られる。無脊椎動物細胞の例には、昆虫細胞(例えば、キイロショウジョウバエ(Drosophila)S2、及びスポドプテラ(Spodoptera)Sf9)ならびに植物細胞がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の例には、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞及びCOS細胞がある。より具体的な例には、SV40で形質転換されたサル腎CV1(COS−7、ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(懸濁培養でサブクローン化された293又は293細胞、Graham et al., J. Gen Virol., 36:59 (1977);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−CHFR(CHO、Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod., 23:243-351 (1980));ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL51)がある。本発明の特に好適な哺乳動物細胞はCHO細胞である。本発明の抗体の発現に適したさらに特に好適な哺乳動物細胞は、マウス細胞、例えばマウス骨髄腫(NS0)細胞である。
【0055】
上記で開示したように、本発明の抗体はそれ自体公知の任意の方法(例えば、組換え法、化学合成、クローニング、結合、又はこれらの組合せ)により産生される。好適な実施態様において、組換え法、例えば適切な宿主細胞中で対応する核酸を発現することにより、可溶性受容体が産生される。従って本発明の別の目的は本発明の抗体を産生する方法であって、核酸分子の発現を可能にする条件下で本発明の組換え宿主細胞を培養し、産生されたポリペプチドを回収することを含んでなる方法である。本発明の産生法はさらに、ポリペプチドを医薬組成物に製剤化する工程を含んでよい。産生されるポリペプチドは、使用される宿主細胞のタイプにより、グリコシル化されてもグリコシル化されていなくても、又は他の翻訳後修飾を含んでも含まなくてもよい。多くの書物や総説が、ベクターや原核生物もしくは真核生物宿主細胞を使用して組換えタンパク質をクローン化し産生する方法を教示しており、例えばOxford University Press発行のシリーズ"A Practical Approach"("DNA Cloning 2: Expression Systems", 1995; "DNA Cloning 4: Mammalian Systems", 1996; "Protein Expression", 1999; "Protein Purification Techniques", 2001)がある。
【0056】
本発明の抗体の生産法で使用されるベクターは、エピソーム性又は非/相同的組み込みベクターでもよく、これは適切な手段(形質転換、トランスフェクション、結合、プロトプラスト融合、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、直接微量注入法など)により適切な宿主細胞中に導入される。具体的なプラスミド、ウイルスベクター、又はレトロウイルスベクターの選択において重要な要因は、ベクターを含有する受容細胞が認識され、ベクターを含まない受容細胞から選択される容易さ;具体的な宿主で所望のベクターのコピー数;及び、異なる種の宿主細胞間でベクターを「シャトル」できることが好ましいかどうかである。ベクターは、細胞中で構成性に活性であるか又は誘導性であるように選択される、適切な転写開始/終止制御配列の条件下で、原核生物もしくは真核生物宿主細胞中で本発明のポリペプチド又は融合タンパク質の発現を可能にする。かかる細胞中で実質的に濃縮される細胞は、次に単離して安定な細胞株を提供することができる。
【0057】
宿主細胞は、タンパク質産生のための本明細書に記載の発現ベクター又はクローニングベクターでトランスフェクト又は形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適した通常の栄養培地中で培養される。培養条件(例えば、場、温度、pHなど)は、過度に実験することなく当業者が決定することができる。一般に、細胞培養物の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実際の方法は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M. Butler編 (IRL Press, 1991)、及びSambrook et al.(前述)に記載されている。
【0058】
真核生物宿主細胞(例えば、酵母、昆虫、又は哺乳動物細胞)のために、宿主の性質により、異なる転写及び翻訳制御配列が使用される。これらは、ウイルス起源(例えば、アデノウイルス、パピローマウイルス、シミアンウイルスなど)から得られ、ここで制御シグナルは、高レベル発現を有する遺伝子に関連している。例は、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、SV40早期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーターなどである。抑制と活性化を可能にする転写開始制御シグナルが選択されて、その結果遺伝子の発現を調節することができる。導入されたDNAにより安定に形質転換されている細胞は、発現ベクターを含有する宿主細胞の選択を可能にする1つ又はそれ以上のマーカーを導入することによっても選択することができる。マーカーはまた、栄養要求性宿主に原栄養性、殺生物剤抵抗性(例えば、抗生物質)、又は重金属(例えば銅)などを与える。選択マーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接結合している(例えば、同じベクター上)か、又は同時トランスフェクションにより同じ細胞中に導入することができる。本発明のタンパク質の最適な合成のために追加の要素も必要かも知れない。
【0059】
適切な原核細胞には、組換えバクテリオファージ、プラスミド、又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)又は大腸菌(E. coli))がある。かかる細胞は典型的には、N末端メチオニン残基を含むタンパク質を産生する。本発明で使用される好適な細胞は、真核生物宿主細胞であり、例えばヒト、サル、マウス、及びチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞のような哺乳動物細胞であり、これは、これらがタンパク質分子に翻訳後修飾(正しい折り畳み、又は正しい部位でのグリコシル化)を与えるためである。適切な哺乳動物宿主細胞の例には、アフリカミドリザル腎細胞(Vera; ATCC CRL 1587)、ヒト胚腎細胞(293−HEK; ATCC CRL 1573)、ベビーハムスター腎細胞(BHK−21,BHK−570;ATCC CRL 8544,ATCC CRL 10314)、イヌ腎細胞(MDCK;ATCC CCL 34)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−Kl;ATCC CCL61;CHO DG44 (Chasin et al, Som. Cell. Molec. Genet. 12:555, 1986))、ラット下垂体細胞(GHl;ATCC CCL82)、HeLa S3細胞(ATCC CCL 2.2)、ラットヘパトーマ細胞(H−4−II−E;ATCC CRL 1548)、SV40形質転換サル腎細胞(COS−1;ATCC CRL 1650)、ボーズ黒色腫、及びヒト肝細胞癌(例えば、Hep G2)、マウス胚細胞(NIH−3T3;ATCC CRL 1658)、及び多くの他の細胞株がある。別の真核生物宿主細胞は、酵母発現ベクターで形質転換された酵母(サッカロミセス(Saccharomyces)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)など)である。また酵母細胞はグリコシル化を含む翻訳後ペプチド修飾を行うことができる。酵母で所望のタンパク質を産生するために使用できる、強いプロモーター配列と高コピー数のプラスミドを利用する多くの組換えDNA法が存在する。酵母細胞は、クローン化哺乳動物遺伝子産物中のリーダー配列を認識し、リーダー配列を有するポリペプチド(すなわちプレペプチド)を分泌する。
【0060】
組換えポリペプチドの長期の高収率産生のために、安定な発現が好ましい。例えば目的のポリペプチドを安定に発現する細胞株は、同じか又は異なるベクター上にウイルス複製開始点、及び/又は内因性発現要素、及び選択マーカーを含む発現ベクターを使用して、形質転換される。ベクターの誘導後、細胞は濃縮培地で1〜2日間増殖された後、選択培地に変更される。選択マーカーの目的は、選択に対する抵抗性を付与することであり、その存在は、導入された配列をうまく発現する細胞の増殖と回収とを可能にする。安定に形質転換された細胞の耐性クローンは、細胞タイプに適した組織培養法を使用して増殖される。かかる細胞で実質的に濃縮された細胞株は、次に単離して安定な細胞株を与えることができる。
【0061】
本発明の組換えポリペプチドの高収率産生の特に好適な方法は、DHFR欠損CHO細胞中のジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)増幅の使用、US4,889,803号に記載されているメソトレキセートレベルの連続的上昇の使用による。得られるポリペプチドは、グリコシル化型でもよい。
【0062】
本明細書に開示の抗体はまた、他の真核細胞(例えば、鳥、真菌、昆虫、酵母、又は植物細胞)で発現することができる。バキュロウイルス系は、昆虫細胞中にクローン化細胞を導入する効率的方法を提供する。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための材料は、特にInvitrogenからキット型で販売されている。
【0063】
組換えDNA技術以外に、本発明の抗体は化学合成法により調製してもよい。化学合成法の例は、固相合成法と液相合成法である。例えば固相合成法として、合成されるポリペプチドのカルボキシ末端に対応するアミノ酸が、有機溶媒中で不溶性の支持体に結合され、交互に反応(例えば、アミノ基を有するアミノ酸と、適切な保護基では後された側鎖官能基の連続的縮合)することにより、ポリペプチド鎖は伸長される。固相合成法は、使用される保護基の種類によりtBoc法とFmoc法により大きく分類され。完全な合成タンパク質は、文献に開示されている(Brown A. et al., 1996)。
【0064】
本発明の抗体は、所望の使用及び/又は産生法に従って好適となる他の型で、産生、調製、投与、又は遺伝的に使用される。本発明のタンパク質は、例えばグリコシル化により翻訳後修飾を行うことができる。本発明のポリペプチド又はタンパク質は、単離された(又は精製された)生理活性型で、又はその前駆体、誘導体、及び/又は塩として提供することができる。
【0065】
薬剤送達効率の点で薬剤を改良するために、また有用な結合体又は複合体を作成することができる。このために本発明に記載の抗体は、ポリエチレングリコールや他の天然又は合成ポリマーのような分子との活性結合体又は複合体の形でもよい(Harris JM and Chess RB, 2003; Greenwald RB et al, 2003; Pillai O and Panchagnula R, 2001)。この点で本発明は、抗体がポリマーと結合している本明細書に開示の化学修飾抗体を企図する。結合体が水性環境(例えば生物学的環境)で沈殿しないように、典型的にはポリマーは水溶性である。適切なポリマーの例は、単一の反応性基(例えば、アシル化のための活性エステル、又はアルキル化のためのアルデヒド)を有するように修飾されているものである。この方法で、重合の程度を制御することができる。反応性アルデヒドの例は、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、ormono−(C1−C10)アルコキシ、又はそのアリールオキシ誘導体である(例えば、Harrisら、米国特許第5,252,714号を参照)。ポリマーは分岐していても分岐していなくてもよい。さらに、結合体を製造するために、ポリマー混合物を使用することができる。治療に使用される結合体は、医薬的に許容し得る水溶性ポリマー成分を含んでよい。適切な水溶性ポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−PEG、モノ−(C1−C10)アルコキシ−PEG、アリールオキシ−PEG、ポリ−(N−ビニルピロリドン)PEG、トレシルモノメトキシPEG、PEGプロピオンアルデヒド、ビス−スクシニミジルカーボネートPEG、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、デキストラン、セルロース、又は他の炭水化物ベースのポリマーがある。適切なPEGは、約600〜約60,000の分子量を有し、例えば5,000、12,000、20,000、及び25,000でもよい。結合体はまた、かかる水溶性ポリマーの混合物を含んでよい。
【0066】
結合体の例は、上記で開示した任意の抗体、及び該された受容体のN末端に結合したポリアルキル成分を含む。PEGは1つの適切なポリアルキルオキシドである。例として、本明細書に開示の任意の抗原をPEGで修飾することができる(「PEG化」として知られている方法)。PEG化は当該分野で公知の任意のPEG化反応により行うことができる(例えば、EP0154316, Delgado et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 9: 249 (1992), Duncan and Spreafico, Clin. Pharmacokinet. 27: 290 (1994), 及び Francis et al, Int J Hematol 68: 1 (1998)を参照)。例えばPEG化は、反応性ポリエチレングリコール分子とのアシル化反応又はアルキル化反応により行われる。別のアプローチでは結合体は、活性化PEG(ここで、PEGの末端ヒドロキシ又はアミノ基は活性化リンカーで置換されている)を縮合することにより生成される(例えば、Karasiewicz et al., 米国特許第5,382,657号参照)。好ましくはすべてのこれらの修飾は、ヒトIL−31に結合する抗体の能力に大きな影響を与えない。
【0067】
本明細書に記載の抗体は、追加のN末端アミノ酸残基(好ましくはメチオニン)を含んでよい。実際、発現系と条件に依存して、ポリペプチドは出発メチオニンを用いて組換え宿主細胞中で発現してもよい。この追加のアミノ酸は次に、得られる組換えタンパク質中に維持されるか、又はエキソペプチダーゼ(例えば、メチオニンアミノペプチダーゼ)を用いて文献に開示された方法(Van Valkenburgh HA and Kahn RA, Methods Enzymol. (2002) 344:186-93; Ben-Bassat A, Bioprocess Technol. (1991) 12:147-59)に従って排除される。
【0068】
本文書の実施例部分に示されるように、マウス抗ヒト抗IL−31抗体は、その可変ドメイン中にグリコシル化部位候補を含んでよい。例えばクローン292.12.3.1は、重鎖可変ドメインのフレームワーク領域FR1中にグリコシル化部位を有する。本発明の発明者は、ヒトIL−31に対する良好な結合親和性を維持するのに、該グリコシル化部位は必要ではないことを見いだした。さらにこのグリコシル化部位を無くす(例えば、変異により)ことは、抗体の熱安定性に対して正の影響を有する。従って本発明のある実施態様において、本明細書に開示の抗体は、その可変ドメイン中にグリコシル化部位を持たない。
【0069】
本明細書に記載の方法により作成されるIL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、種々の方法により中和について試験することができる。例えば米国特許出願(公報第20030224487号、Sprecher, Cindy et al., 2003を参照)に記載のようなルシフェラーゼアッセイを使用することができる。さらに中和は、リガンドとモノクローナル抗体の存在下でケラチン細胞培養物からの炎症促進性ケモカイン(例えばTARC及びMDC)の産生の低下を測定して、試験することができる。中和はまた、本明細書に記載のインビボ及びインビトロアッセイにより測定することもできる。
【0070】
本明細書に記載のヒト化抗IL−31抗体及びアンタゴニストに応答したTARCとMDCの低下は、以下のようにADマウスモデルで測定することができる。
【0071】
方法I)6週齢のオスNC/Ngaマウス(CRL Japan)を、50μgのイエダニ抽出物(ヤケヒョウヒダニ(D. peteronyssius)、Indoor Biotechnologies)で週に3回背中に感作し、AD様病変についてスコアを付ける。5週間の感作後、マウスを安楽死させ、右耳を切除し、RPMI+2%FBS(GIBCO Invitrogen)を補足した48ウェル培養皿(Corning)の1つのウェルに入れた。プレートを5%CO2過失制御インキュベーターに入れた。24時間後上清を採取し、さらに解析するまで−20℃で凍結する。
【0072】
方法II)12週齢のメスNC/Ngaマウス(CRL Japan)に、10μgのSEB(Toxin Technology)を耳と背中に週に3回感作する。AD様病変についてスコアを付けた。5週間の感作後、マウスを安楽死させ、各マウスの注射した耳から6mmの生検パンチを取り、RPMI+2%FBSを補足した48ウェル培養皿の1つのウェルに入れた。プレートを5%CO2過失制御インキュベーターに入れた。24時間後上清を採取し、さらに解析するまで−20℃で凍結する。
【0073】
両方の試験のマウス群をヒト化IL−31抗原結合分子又はヒト化IL−31抗体もしくはアンタゴニストで、感作の1〜2週間後から出発して毎週2回、腹腔内処理する。24時間上清試料のTARCとMDC濃度を、通常のELISA(R & D Systems)により測定する。
【0074】
ある実施態様において、本発明のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストには、特に限定されないが、Fab、Fab’、及びF(ab’)2、Fd、1本鎖Fv(scFv)、1本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、及びVLもしくはVHドメインを含むフラグメントがある。抗原結合抗体フラグメント(1本鎖抗体を含む)は、可変領域(すなわち配列番号25〜45)のみを含むか、または以下のすべてもしくは一部と一緒でもよい:ヒンジ領域、CH1、CH2、及びCH3ドメイン。また本発明には、可変領域とヒンジ領域、CH1、CH2、及びCH3ドメインとの任意の組合せを含む抗原結合フラグメントも含まれる。別の実施態様において、配列番号25、27、29、30、31、35、36、38、39、40、41、42、43、44、及び45のいずれかの重鎖可変領域は、配列番号26、28、32、33、34、及び37のいずれかの軽鎖可変領域と組合せることができる。
【0075】
別の実施態様において本発明は、ヒト化重鎖可変ドメインとヒト化軽鎖可変ドメインとを含む、ヒトIL−31に結合する単離された抗体又は抗体フラグメントを提供し、ここでヒト化重鎖可変ドメインとヒト化軽鎖可変ドメインは以下よりなる群から選択される:a)配列番号25のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;b)配列番号27のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;c)配列番号25のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号28のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;d)配列番号29のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;e)配列番号27のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号28のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;f)配列番号30のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;g)配列番号31のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;h)配列番号25のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号32のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;i)配列番号25のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号33のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;j)配列番号25のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号34のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;k)配列番号35のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;l)配列番号27のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号32のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;m)配列番号27のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号33のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;n)配列番号27のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号34のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;o)配列番号36のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;p)配列番号25のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;q)配列番号38のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;r)配列番号39のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;s)配列番号40のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;t)配列番号41のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;u)配列番号42のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;v)配列番号43のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;w)配列番号44のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;x)配列番号36のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号28のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;y)配列番号36のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号28のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;z)配列番号45のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン。
【0076】
別の実施態様において本発明は、ヒト化重鎖可変ドメインとヒト化軽鎖可変ドメインとを含む、ヒトIL−31に結合する単離された抗体又は抗体フラグメントを提供し、ここでヒト化重鎖可変ドメインとヒト化軽鎖可変ドメインは以下よりなる群から選択される:a)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;b)配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;c)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;d)配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;e)配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;f)配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;g)配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;h)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;i)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;j)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;k)配列番号35のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;l)配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;m)配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;n)配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;o)配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;p)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;q)配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;r)配列番号39のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;s)配列番号40のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;t)配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;u)配列番号42のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;v)配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;w)配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;x)配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;y)配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;z)配列番号45のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン。
【0077】
1つの態様において本発明は、以下よりなる群から選択される単離された抗体を提供する:a)配列番号46のアミノ酸配列からなる軽鎖と、配列番号47のアミノ酸配列からなる重鎖とを含む抗体;b)配列番号48のアミノ酸配列からなる軽鎖と、配列番号49のアミノ酸配列からなる重鎖とを含む抗体;及び、c)配列番号50のアミノ酸配列からなる軽鎖と、配列番号51のアミノ酸配列からなる重鎖とを含む抗体。
【0078】
本発明はまた、上記と機能的に同等な組換えヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを含む。改良された安定性及び/または治療効果を与える組換えヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストも含まれる。修飾抗体の例には、アミノ酸残基の保存的置換を有するもの、抗原結合有用性に大きな悪影響を与えないアミノ酸の1つまたはそれ以上の欠失もしくは付加を有するものがある。置換は、治療的有用性が維持される限りは、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を変化または修飾することから、ある領域を完全に再設計することまでにわたる。本発明のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、翻訳後修飾(例えばアセチル化及びリン酸化)するか、または合成的に修飾(例えば標識基の結合)することができる。本方法により設計されるヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、抗原結合機能又は他の免疫学的機能に実質的に何の影響も与えない追加の保存的アミノ酸配列置換を有してもよい。
【0079】
本発明のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストには、修飾された誘導体、例えば特に限定されないが、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞リガンドもしくは他のタンパク質への結合などにより修飾されたヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを含む誘導体がある。多くの化学的修飾が任意の方法により行われ、特に限定されないが、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む公知の方法により行われる。さらに誘導体は1つまたはそれ以上の非古典的アミノ酸を含有してもよい。
【0080】
ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、マウスドナー免疫グロブリンのCDRと、ヒトアクセプター免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖フレームワークとを含む。ヒト化抗体の作製法は、米国特許第5,301,101号;5,585,089号;5,693,762号;及び6,180,370号(それぞれ参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている。これらの抗体のCDRは次に、選択されたヒトフレームワーク(これらは当該分野で公知である)に移植されて所望のヒト化抗体を生成する。
【0081】
本発明はまた、ヒトIL−31への本明細書に記載のモノクローナル抗体の結合を競合的に阻害するヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを提供する。競合的阻害は当該分野で公知の方法により、例えば本明細書に記載の競合的結合アッセイを使用して測定することができる。好適な実施態様において抗体は、本発明のモノクローナル抗体のポリペプチドへの結合を少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%競合的に阻害する。
【0082】
本発明はまた、競合的結合を測定するための当該分野で任意の公知の方法(例えば本明細書に記載のイムノアッセイ)により測定される本発明のエピトープに対する抗体の結合を競合的に阻害するヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを提供する。好適な実施態様において抗体は、エピトープへの結合を少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%競合的に阻害する。
【0083】
ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストのインビボの半減期は、FcドメインとFcRn受容体(例えば国際特許公報WO97/34631及びWO02/060919を参照、これらは参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)との相互作用に関与することが確定しているアミノ酸残基を修飾(例えば、置換、欠失、または付加)、又は高分子量ポリエチレングリコール(PEG)のようなポリマー分子を結合することにより延長することができる。PEGは、多官能性リンカー有りまたは無しで、当該抗体または抗体フラグメントのN末端もしくはC末端へのPEGの部位特異的結合により、またはリジン残基上に存在するイプシロンアミノ基を介して結合することができる。生物活性の喪失が最小である直鎖または分岐鎖のポリマー誘導体化が使用される。結合の程度はSDS−PAGE及び質量スペクトル法により詳しく監視され、抗体へのPEG分子の適切な結合が確保される。未反応のPEGは、例えばサイズ排除クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーにより抗体−PEG結合体から分離することができる。
【0084】
本発明は、ヒト化免疫グロブリン鎖を含む抗体の親和性を上昇させるために、アクセプターではなくドナー中のそれらの位置のアミノ酸と同じになるように、ヒト化免疫グロブリン鎖のフレームワーク内の限定された数のアミノ酸が選択される基準を含む。
【0085】
本明細書に具体的に記載されるヒト化免疫グロブリン以外に、天然の配列に対して他の「実質的に相同的な」修飾免疫グロブリンを、当業者に公知の種々の組換えDNA技術を使用して容易に設計し製造することができる。本発明のヒト化免疫グロブリンの基礎として、種々の異なるヒトフレームワーク領域を単一でまたは組合せで使用できる。一般に遺伝子の修飾は、種々の公知の方法、例えば部位特異的突然変異誘発(Gillman and Smith,Gene 8, 81-97 (1979) 及びS.Roberts et al., Nature 328, 731-734 (1987)を参照、両方とも参照することにより本明細書に組み込まれる)を使用して容易に達成される。
【0086】
本発明のヒト化抗体はフラグメント及び完全な抗体を含む。典型的にはこれらのフラグメントは、これらが得られた完全な抗体と、抗原結合について競合する。フラグメントは典型的には、少なくとも107-1、より典型的には108または109-1(すなわち、完全な抗体と同じ範囲内)の親和性で結合する。ヒト化抗体フラグメントには別々の重鎖、軽鎖Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvがある。フラグメントは組換えDNA技術または完全な免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的分離により産生される。
【0087】
ヒト化抗体のさらなる詳細については、ヨーロッパ特許EP239,400号、EP592,106号、及びEP519,596号;国際特許公報WO91/09967及びWO93/17105;米国特許第5,225,539号、5,530,101号、5,565,332号、5,585,089号、5,766,886号、及び6,407,213号;及びPadlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489 498; Studnicka et al., 1994, Protein Engineering 7(6):805 814; Roguska et al., 1994, PNAS 91:969 973; Tan et al., 2002, J. Immunol. 169:1119 25; Caldas et al., 2000, Protein Eng. 13:353 60; Morea et al., 2000, Methods 20:267 79; Baca et al., 1997, J. Biol. Chem. 272:10678 84; Roguska et al., 1996, Protein Eng. 9:895 904; Couto et al., 1995, Cancer Res. 55(23増刊):5973s 5977s; Couto et al., 1995, Cancer Res. 55:1717 22; Sandhu, 1994, Gene 150:409 10; Pedersen et al., 1994, J. Mol. Biol. 235:959 73; Jones et al., 1986, Nature 321:522-525; Reichmann et al., 1988, Nature 332:323-329; 及びPresta, 1992, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596を参照。
【0088】
抗体フラグメントの産生のために種々の技術が開発されている。これらのフラグメントは、完全な抗体のタンパク質分解的消化(例えば、Morimoto et al., Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)、及びBrennan et al., Science, 229:81 (1985)を参照)により得られるか、又は組換え宿主細胞から直接産生することができる。例えば抗体フラグメントは上記の抗体ファージライブラリーから単離することができる。あるいはFab’−SHフラグメントを大腸菌(E.coli)から直接回収し、化学的に結合してF(ab’)2フラグメントを生成することができる(Carter et al., Bio/Technology 10:163-167 (1992))。他のアプローチではF(ab’)2フラグメントは組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。抗体フラグメントの産生のための他の方法は熟練者には明らかであろう。さらに1本鎖Fvや抗体を産生するのに使用できる方法の例には、米国特許第4,946,778号及び5,258,498号; Huston et al., Methods in Enzymology 203:46-88 (1991); Shu et al., PNAS 90:7995-7999 (1993);及びSkerra et al., Science 240:1038-1040 (1988)に記載されているものがある。
【0089】
本発明は、融合タンパク質を作製するために本発明のポリペプチド(またはその部分、好ましくは少なくとも10、20、または50アミノ酸のポリペプチド)に組換え融合または化学結合(共有結合及び非共有結合の両方を含む)した抗体を包含する。すなわち本発明はまた、例えば化学療法剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素活性のある毒素、またはこれらのフラグメント)、またはラジオアイソトープ(すなわち放射結合体)のような細胞毒性剤に結合した、本明細書に記載の抗体を含む免疫結合体に関する。
【0090】
本発明はさらに、異種ポリペプチド配列(例えば可変領域以外の抗体ドメイン)に融合もしくは結合した本発明のポリペプチド(例えば免疫原性または抗原性エピトープを含むもの)を含む組成物を含む。例えば本発明のポリペプチドは、抗体Fc領域またはその部分に融合または結合される。例えば本発明のポリペプチド(そのフラグメントまたは変種を含む)は、免疫グロブリン(IgA、IgE、IgG、IgM)の定常ドメイン、またはその部分(CH1、CH2、CH3、またはこれらの任意の組合せ及びその部分)と融合されてキメラポリペプチドを与える。本発明のポリペプチドに融合した抗体部分は、定常領域、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメイン、または全ドメインもしくはその部分の任意の組合せを含む。ポリペプチドはまた、上記抗体部分に融合または結合されてマルチマーを形成してもよい。例えば本発明のポリペプチドに融合したFc部分は、Fc部分間のジスルフィド結合によりダイマーを形成することができる。ポリペプチドをIgA及びIgMの部分に融合することにより、より高次のマルチマー型を作製することができる。本発明のポリペプチドを抗体部分に融合または結合させる方法は当該分野で公知である。例えば米国特許第5,336,603号;5,622,929号;5,359,046号;5,349,053号;5,447,851号;5,112,946号;EP307,434号;EP367,166号;PCT公報WO96/04388号;WO91/06570号;Ashkenazi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10535-10539 (1991); Zheng et al., J.Immunol. 154:5590-5600 (1995);及びVil et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337-11341 (1992)を参照(これらの文献は参照することにより本明細書に組み込まれる)。他の非限定例として、本発明のポリペプチド及び/または抗体(これらのフラグメントまたは変種を含む)は、アルブミン[特に限定されないが、組換えヒト血清アルブミンまたはそのフラグメントもしくは変種を含む(例えば1999年3月2日発行の米国特許第5,876,969号、EP特許0413622号、及び1998年6月16日発行の米国特許第5,766,883号を参照、これらは参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)]に融合してもよい。本発明のポリペプチド及び/または抗体(そのフラグメントまたは変種を含む)は、異種タンパク質(例えば免疫グロブリンFcポリペプチドまたはヒト血清アルブミンポリペプチド)のN末端またはC末端に融合してもよい。本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた本発明に包含される。
【0091】
上記したように本発明のポリペプチドは、ポリペプチドのインビボ半減期を延長するためにまたはイムノアッセイで使用するために、当該分野で公知の方法を使用して上記抗体部分に融合または結合される。さらに本発明のポリペプチドは、精製を促進するために上記抗体部分に融合または結合される。1つの報告された例は、ヒトCD4ポリペプチドの最初の2つのドメインと哺乳動物免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常領域の種々のドメインからなるキメラタンパク質を記載している(例えば、EP394,827号;Traunecker et al. Nature 331:84-86 (1988)を参照)。IgGまたはFcフラグメントのようなFcRn結合パートナーに結合した抗原(例えばインスリン)について、免疫系への上皮バリアを通過する抗原の送達の増大が証明されている(例えばPCT公報WO96/22024号及びWO99/04813号を参照)。ジスルフィド結合したダイマー構造(IgGによる)を有する抗体に融合または結合した本発明のポリペプチドもまた、他の分子を結合及び中和するのに、モノマー性の分泌タンパク質もしくはタンパク質フラグメント単独より効率的である(Fountoulakis et al., J. Biochem. 270:3958-3964 (1995))。多くの場合融合タンパク質中のFc部分は治療と診断に有効であり、従って例えば改良された薬物動態的性質を与えることができる(EPA232,262号)。あるいは融合タンパク質が発現、検出、及び精製された後にFc部分を欠失させることが好ましいであろう。例えば融合タンパク質を免疫の抗原として使用する場合、Fc部分は治療や診断を妨害することがある。例えば薬物発見において、ヒトタンパク質(例えばhIL−5)は、hIL−5のアンタゴニストを同定するための高処理能力スクリーニングアッセイのためにFc部分に融合されている(D. Bennett et al., J. Molecular Recognition 8:52-58 (1995); K. Johanson et al., J. Biol. Chem. 270:9459-9471 (1995)を参照)。このような方法にはまた、特に限定されないが2官能性結合物質の使用がある(例えば米国特許第5,756,065号;5,714,631号;5,696,239号;5,652,361号;5,505,931号;5,489,425号;5,435,990号;5,428,139号;5,342,604号;5,274,119号;4,994,560号;及び5,808,003号を参照;これらのそれぞれの内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0092】
さらに本発明のポリペプチド(例えば抗体またはそのフラグメント)は、その精製を促進するために、ペプチドのようなマーカー配列に融合することができる。さらなる実施態様において本発明のポリペプチドをコードする核酸(特に限定されないが、免疫原性及び/または抗原性エピトープをコードする核酸を含む)も、エピトープタグ(例えば血球凝集素タグ(「HA」またはフラグタグ)として目的の遺伝子と組換えを行って、発現されたポリペプチドの検出及び精製を助けることができる。好適な実施態様においてマーカーアミノ酸配列はヘキサ−ヒスチジンペプチド、例えば特にpQEベクター(Qiagen, Inc.、9259 Eton Avenue, Chatsworth, Calif., 91311)で提供されるタグであり、これらの多くは市販されている。例えばGentz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824 (1989)に記載のように、ヘキサ−ヒスチジンは融合タンパク質の便利な精製を与える。精製に有用な他のペプチドタグには、特に限定されないが「HA」タグ[これはインフルエンザ血球凝集素タンパク質(Wilson et al., Cell 37:767 (1984))から得られるエピトープに対応する]、及び「フラッグ(flag)」タグがある。
【0093】
本発明はさらに、診断薬または治療薬に結合したヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを包含する。IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは診断的に、例えばある治療、診断、検出、及び/または予防法の効力を測定するための臨床検査法の一部として、掻痒症の発生または進行を監視するために診断的に使用することができる。抗体を検出可能な物質に結合することにより検出を促進することができる。検出可能な物質の例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射活性物質、陽電子放射断層撮影法で使用する陽電子放射金属、及び非放射活性常磁性金属イオンがある。例えば本発明の診断薬として使用される抗体に結合できる金属イオンについては米国特許出願第4,741,900号を参照。適当な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼがあり;適当な補欠分子族の例には、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンがあり;適当な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンがあり;発光物質の例にはルミノールがあり;生物発光物質の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンがあり;そして適当な放射活性物質の例には、125I、131I、111Inまたは99Tcがある。
【0094】
さらにヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、治療用成分、例えば細胞毒(例えば細胞増殖抑制薬または細胞破壊薬)、治療薬または放射活性金属イオンに結合される。細胞毒または細胞毒性剤には細胞に有害な物質がある。例としては、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びプロマイシン、及びこれらの類似体または相同体がある。治療薬には、特に限定されないが、代謝拮抗剤(例えば、メソトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロルエタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びcis−ジクロロジアミンプラチナム(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン類(例えばダウノルビシン(正式にはダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(正式にはアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC)、及び有糸分裂阻害薬(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)がある。
【0095】
本発明の結合体は、ある生物学的応答を修飾するために使用することができ、治療薬または薬物成分は古典的化学的治療薬に限定されるものではない。例えば薬物成分は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドでもよい。かかるタンパク質には、例えば毒素、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素;タンパク質、例えば腫瘍壊死因子、アルファ−インターフェロン、ベータ−インターフェロン、神経増殖因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベータ、血栓剤または抗血管形成剤、例えばアンギオスタチンもしくはエンドスタチン;または生物学的応答調節物質、例えばリンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、または他の増殖因子がある。
【0096】
ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストはまた固体支持体に結合され、これらはイムノアッセイまたは標的抗原の精製に特に有用である。かかる固体支持体には、特に限定されないがガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンがある。
【0097】
かかる治療用成分を抗体に結合させる方法は公知であり、例えば"Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy", Reisfeldら(編)、243-56頁(Alan R. Liss, Inc. 1985)中のArnon et al., "癌治療における薬物の免疫ターゲティングのためのモノクローナル抗体"; "Controlled Drug Delivery"(第2版)、Robinsonら(編)、623-53頁(Marcel Dekker Inc.1987)中のHellstrom et al., "薬剤送達のための抗体";"Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications", Pincheraら(編)、475-506頁(1985)中のThorpe、"癌治療における細胞毒性剤の抗体担体:総説";"Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy", Baldwinら(編)、303-16頁(Academic Press 1985)中の"癌治療における放射能標識抗体の治療的使用の解析、結果、及び将来展望", 及びThorpe et al., "抗体-毒素結合体の調製と細胞毒性", Immunol.Rev. 62:119-58(1982)を参照。
【0098】
あるいは、ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、米国特許第4,676,980号(Segal)に記載されるように、第2抗体と結合して抗体異種結合体を形成することができる。
【0099】
治療用成分が結合しているか又は結合していないヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、単独で、又は細胞障害因子及び/又はサイトカインと組合せて投与して、治療薬として使用することができる。
【0100】
IL−31に対する抗体は、IL−31を発現する細胞にタグ付けをするために;親和性精製によりIL−31を単離するために;IL−31ポリペプチドの循環レベルを測定する診断測定法のために;基礎病理または疾患のマーカーとして可溶性IL−31を検出または定量するために;FACSを使用する分析法において;発現ライブラリーをスクリーニングするために;抗イディオタイプ抗体を作製するために;及びインビトロ及びインビボでIL−31抗体を阻止するための中和抗体またはアンタゴニストとして、使用される。適当な直接タグまたは標識物には、放射性核種、酵素、基質、補助因子、インヒビター、蛍光マーカー、化学発光マーカー、磁性粒子などがあり;間接タグまたは標識物には、ビオチン−アビジンまたは中間体としての他の補体/抗補体対の使用がある。本明細書の抗体はまた、薬物、毒素、放射性核種などに直接または間接に結合され、これらの結合体はインビボ診断または治療用途で使用される。さらにIL−31に対する抗体またはそのフラグメントは、例えばウェスタンブロットまたは他の当該分野で公知のアッセイで、変性IL−31またはそのフラグメントを検出するためにインビトロで使用される。
【0101】
適当な検出可能な分子は直接または間接にポリペプチドまたは抗体に結合され、放射性核種、酵素、基質、補助因子、インヒビター、蛍光マーカー、化学発光マーカー、磁性粒子などがある。適当な細胞毒性分子は直接または間接にポリペプチドまたは抗体に結合され、細菌もしくは植物毒素(例えば、ジフテリア毒素、サポニン、シュードモナス外毒素、リリン、アブリンなど)、ならびに治療用放射性核種、例えばヨード−131,レニウム−188またはイットリウム−90がある(直接ポリペプチドまたは抗体に結合されるか、または間接にキレート成分を介して結合される)。ポリペプチドまたは抗体はまた、アドリアマイシンのような細胞毒性剤に結合してもよい。検出可能なまたは細胞毒性分子の間接的結合のために、検出可能なまたは細胞毒性分子は相補的/抗相補的対のメンバーに結合することができ、ここで他のメンバーはポリペプチドまたは抗体部分に結合される。これらの目的のために、ビオチン/ストレプトアビジンは相補的/抗相補的対の例である。
【0102】
本発明のIL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、当該分野で公知の及び本明細書に記載の種々のインビボモデル(特に限定されないが、NC/Ngaモデル、Ova皮膚モデル、慢性過敏症モデル、及び慢性ハプテンモデルがある)により測定されるように、IL−31リガンドを阻害、阻止、または中和する能力について測定することができる。
【0103】
皮膚ホーミングT細胞と表皮ケラチン細胞の両方とも、ヒトの皮膚疾患の病理に関与するとされている。IL−31 mRNAとタンパク質発現は、ヒトの皮膚ホーミングCLA+T細胞集団に限定される。2006年2月14日出願の米国特許出願第11/353,427号(米国特許公報第2006−0188499号)及び2006年2月14日出願の米国特許出願第11/353,454号(米国特許公報第2006−0188500号)(いずれも参照することにより本明細書に組み込まれる)を参照。従ってIL−31に対するアンタゴニスト(抗体または受容体アンタゴニストを含む)は、CLA+T細胞の発現を有する皮膚及び表皮疾患を治療するのに有用であろう。かかる疾患には、例えばアトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、薬物誘導性アレルギー反応、皮膚向性ウイルス及びウイルス関連掻痒症、白斑、皮膚T細胞リンパ腫、円形脱毛症、酒さ性ざ瘡、尋常性座瘡、結節性痒疹、及び水疱性類天疱瘡がある。TARCやMDCのようなケモカインマーカーは、IL−31に対する中和モノクローナル抗体の作用を測定するのに有用である。本明細書に記載のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを用いる治療の阻害作用は、TARCとMDCのレベルを追跡することにより測定される。
【0104】
接触皮膚炎
アレルギー性接触皮膚炎は、皮膚と接触する抗原に対するT細胞性免疫応答として定義される。アレルゲン依存性T細胞応答は主に細胞のCLA+T集団に限定されるため、皮膚炎の開始にはCLA+T細胞集団が関与していると考えられる(Santamaria-Babi, L. F. et al., J. Exp. Med.:181,1935 (1995)を参照)。最近のデータは、一般的な接触過敏症アレルゲンであるニッケルに応答して、記憶(CD45RO+)CD4+CLA+細胞のみ(CD8+T細胞ではない)が増殖し、1型(IFN−)及び2型(IL−5)サイトカインを産生することを見いだした。さらにニッケル特異的刺激後には、CD4、CD45RO(記憶)またはCD69とともにCLAを発現する細胞が増加し、ケモカイン受容体CXCR3、CCR4、CCR10を発現しCCR6は発現しない。Moed H. et al., Br. J. Dermatol. 51,32 (2004)を参照。
【0105】
動物モデルでは、アレルギー性接触皮膚炎はT細胞依存性であり、アレルギー応答性T細胞はアレルゲン適用部位に遊走することが証明されている。一般的には、Engeman T.M.ら、J. Immunol. 164, 5207 (2000); Ferguson T.A. and Kupper T.S.、J. Immunol. 150, 1172 (1993);及びGorbachev A.V. and Fairchild R.L.、Crit. Rev. Immunol. 21, 451 (2001)を参照。CLA+T細胞はIL−31を産生し、皮膚ケラチン細胞のIL−31刺激は炎症促進性ケモカイン(例えばTARC及びMDC)を誘導できるため、接触皮膚炎の病態生理にIL−31が関与しているかも知れない。接触過敏症のマウスモデルで中和IL−31抗体を使用して。
【0106】
すなわち、炎症及び/または疾患に付随する引掻きを阻害、低減、中和、予防または阻止することにより接触過敏症の臨床転帰を改善するために、本明細書に記載のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストによるIL−31の中和が使用される。
【0107】
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎(AD)は慢性の再発する炎症性皮膚疾患であり、発症数が過去10年間に劇的に増加した。臨床的にはADは、慢性の再発経過を示す非常にかゆみ性で、しばしばはく離班と丘疹により特徴付けられる。ADの診断は、主に大きな臨床的知見と小さな臨床的知見に基づく。Hanifin J.M.、Arch. Dermatol. 135, 1551 (1999)を参照。組織病理検査は、海綿状態、作用病変の過度の局所的錯角化症を示すが、過度の錯角化症を有する顕著な表皮肥厚、アカントーシス/顆粒層肥厚、及びリンパ球と豊富な肥満細胞による皮膚の血管周囲浸潤が、慢性病変の特徴である。
【0108】
T細胞は組織の局所的免疫応答の開始で中心的役割を果たし、特に皮膚の脱制御された免疫応答の開始と維持において重要な役割を果たすことをデータが示唆する。皮膚炎症性部位の浸潤性T細胞の約90%が皮膚リンパ球関連Ag(CLA+)を発現し、これは、内皮細胞上の誘導性接着分子であるE−セレクチンに結合する(Santamaria-Babi, L.F.ら、Eur. J. Dermatol. 14,13 (2004)の総説がある)。対照のヒトと比較してAD患者中の循環CLA+T細胞の顕著な増加が記録されている(Teraki Y.ら、Br. J. Dermatol. 143, 373 (2000)を参照)が、他の研究者は、AD患者の記憶CLA+T細胞がCLA−集団と比較して、アレルゲン抽出物に優先的に応答することを証明した(Santamaria-Babi, L.F.ら、J. Exp. Med. 181, 1935 (1995)を参照)。ヒトでは皮膚のアトピー性障害の病理発生が、IL−5やIL−13、9、10のようなTh−2型サイトカインの増加レベルを発現するCLA+T細胞の増加に関連している。Akdis M.ら、Eur. J. Immunol. 30, 3533 (2000); 及びHamid Qら、J. Allergy Clin. Immunol. 98, 225 (1996)を参照。
【0109】
NC/Ngaマウスは6〜8週齢の頃に非特定病原体未感染(非SPF)状態に収容すると、多くの点でヒトADに似たAD様病変(臨床経過と症状、組織病理、及び免疫病理を含む)を自然発症する。これに対してSPF条件下で飼育したNC/Ngaマウスは皮膚病変を発症しない。しかし自発的皮膚病変及び掻痒行動の発症は、粗イエダニ抗原の毎週の皮内注射により、SPF施設に収容したNC/Ngaマウスで同期させることができる。Matsuoka H.ら、Allergy 58, 139 (2003)を参照。従ってNC/NgaにおけるADの出現は、ADの治療のための新規治療薬の評価のために有用なモデルである。
【0110】
自発性ADのNC/Ngaモデル以外に、OVAを使用するマウスの皮膚感作もまた、感作マウスの皮膚において単球浸潤を有する抗原依存性上皮及び皮膚肥厚を誘導するためのモデルとして使用することができる。これは通常総IgE及び特異的IgEの血清レベルの増大に一致するが、このモデルでは皮膚バリア機能不全または掻痒症は通常発生しない。Spergel J.M.ら、J. Clin. Invest. 101:1614 (1998)を参照。このプロトコールは、OVAを用いてDO11.10 OVA TCRトランスジェニックマウスを感作することにより皮膚バリア脱制御と掻痒症を誘導するために修飾することができる。感作抗原を認識する抗原特異的T細胞の数を増やすと、皮膚の炎症レベルが増大して、目に見える引っ掻き行動や皮膚の苔癬化/はく離を誘導する。
【0111】
NC/Nga自発性ADモデルとOVA皮膚DO11.10モデルの両方とも、IL−31の作用を阻害、低減、または中和する本明細書に記載のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストの能力を評価するのに使用される。ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストの投与が、引っ掻きの低減を引き起こし、これは、引っ掻きを止めると皮膚炎の進行(この進行は引っ掻きに依存する)が停止するため、掻痒性の疾患(特に限定されないが、アトピー性皮膚炎、結節性痒疹、及び湿疹を含む)を治療するのに有用となり得る。
【0112】
本明細書に記載のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストの阻害作用を測定するための追加のモデルが、Umeuchi, Hら、European Journal of Pharmacology 518:133-139, 2005、及びYoo, J.ら、Experimental Medicine 202:541-549, 2005に記載されている。
【0113】
すなわち、炎症及び/または疾患に付随する引掻きを阻害、低減、予防または阻止して皮膚炎及び掻痒性の疾患(アトピー性皮膚炎、結節性痒疹、及び湿疹を含む)の臨床的転帰を改善するために、本明細書に記載のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストによるIL−31の中和が使用される。
【0114】
痒み応答を阻害、低減、又は中和するヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストの能力を測定する方法には、以下のアッセイとモデルがある:
I)IL−31治療マウスのカプサイシン処理
【0115】
10週齢のBALB/c動物(CRL)を麻酔し、長期作用性鎮痛薬である0.1mg/kgの塩酸ブプラノルフィンを皮下注射し、次に食塩水中の10%エタノール+10%ツイーン80中の4mg/mlの0.25mlのカプサイシン溶液を首筋に皮下注射する。神経毒処理後、動物を少なくとも30分麻酔する。48時間後、20μg/日のIL−31の14日間連続投与のために、14日間浸透圧ポンプを皮下移植する。以下の基準を使用してマウスを脱毛症と掻痒症について6日間追跡する:0=引っ掻き無し、動物は正常に見える、1=小さい領域の外皮が薄くなる、引っ掻きが認められる、2=わずかな脱毛(小さいパッチ)、引っ掻き、3=中程度の脱毛、引っ掻き、そして4=重症の脱毛、過剰の引っ掻き。
【0116】
ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストによるIL−31の中和、阻害、又は低下は、痒みを含む皮膚障害の患者において、痒み従って皮膚炎の頻度と強度を低下させる可能性がある。
【0117】
II)Tac1遺伝子発現
Tac1遺伝子にホモ接合性のヌル(null)であるマウスは、検出可能なサブスタンスPまたはニューロキニンAを発現しない。これらのマウスは中程度〜強い刺激に対して侵害受容の疼痛応答が低下しており、従って疼痛/痒み処理及び炎症性疾患状態へのタキキニンペプチドの寄与を研究するための有用な手段である。12週齢のTac1ノックアウトマウスに、1μg/日のIL−31タンパク質を送達する14日間浸透圧ポンプを移植し、毎日脱毛症と掻痒症について、以下の基準を使用して追跡した:0=引っ掻き無し、動物は正常に見える、1=小さい領域の外皮が薄くなる、引っ掻きが認められる、2=わずかな脱毛(小さいパッチ)、引っ掻き、3=中程度の脱毛、引っ掻き、そして4=重症の脱毛、過剰の引っ掻き。
【0118】
この試験の結果は、Tac1欠損マウスが野生型対照マウスと比較して、IL−31誘導引っ掻き/脱毛に対して感受性が低いことを示す。野生型マウスの100%(10/10)がIL−31処理の6日目までに引っ掻きと脱毛の証拠を示したが、同じ時点でわずかに33.3%(2/6)のTac1欠損マウスが引っ掻きと脱毛の兆候を示した。従って、ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストによるIL−31の中和、阻害、低下が、皮膚炎における引っ掻きの頻度と強度を低下させることを示す。
【0119】
III)IL−31中和抗体の投与
約8〜12週齢の正常なメスのBALB/cマウス(CRL)に、1μg/日のmIL−31を送達する14日間浸透圧ポンプ(アルゼット(Alzet)、#2002)を皮下移植した。IL−31投与の前に、マウス群にラット抗マウスIL−31モノクローナル抗体10mg/kg(200μg/マウス)を1週目から出発して週に2回腹腔内(i.p.)注射した。対照群のマウスに同じ投与スケジュールでビヒクル(PBS/0.1%BSA)の腹腔内注射を行った。以下の基準を使用してマウスを脱毛症と掻痒症について毎日スコアを付けた:0=引っ掻き無し、動物は正常に見える、1=小さい領域の外皮が薄くなる、引っ掻きが認められる、2=わずかな脱毛(小さいパッチ)、引っ掻き、3=中程度の脱毛、引っ掻き、そして4=重症の脱毛、過剰の引っ掻き。
【0120】
IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストによるIL−31の中和、低下、又は阻害は、IL−31に誘導される引っかき/脱毛応答の発症を遅延させる可能性がある。
【0121】
ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストの作用は、引っかき、痒み、皮膚炎の阻害、ケラチン細胞中のIL−31RA発現の低下、及び/又は脱毛症と掻痒症のスコアの低下により測定される。
【0122】
薬物誘導性遅延型皮膚アレルギー反応
薬物誘導性遅延型皮膚アレルギー反応は非常に不均質であり、多くの病理生物学的事象を反映する。Brockow et al., Allergy 57, 45 (2002)を参照。これらの反応に関与する免疫学的機構は抗体性または細胞性であることが証明されている。即時型薬物アレルギーでは、陽性の皮刺試験及び/または20分後の皮内試験によりIgE介在抗体応答を証明することができ、薬剤に対する非即時型反応は、最後の薬物摂取の1時間以上後に発生し、しばしばT細胞介在性である。非即時型T細胞介在遅延型反応は、例えばペニシリンに対する医薬品副作用を有する患者に発生する。ペニシリンに対する増殖性T細胞応答は、ペニシリンアレルギー患者からのT細胞の記憶(CD45RO+)CLA+亜集団に限定されており、CD45RO+CLA−サブセットは増殖性応答を示さないことが証明されている。Blanca M.、Leyva L.ら、Blood Cells Mol Dis 31, 75 (2003)を参照。遅延型過敏症(DTH)反応はマウスで人工的に再現することができ、DTH応答の開始と持続に関与する因子の評価を可能にする。ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、遅延型過敏症反応を制限、低減、阻害するのに有効であろう。
【0123】
中毒性表皮壊死症(TEN)は、広範な水疱を有する表皮の広範なアポトーシスを特徴とする、非常にまれであるが極めて重症の薬物反応である。水疱に浸潤するリンパ球がCLA+T細胞であり、表皮ケラチン細胞に対して細胞毒性を示すことが、研究により証明されている。Leyva L. et al., J Allergy Clin Immunol 105,157 (2000)、及びNassif A.、Bensussan A. et al., J Allergy Clin Immunol 114,1209 (2004)を参照。TENの動物モデルを樹立するために、マウスの表皮と毛包ケラチン細胞中のケラチン−5(K5)プロモーターの制御下でOVAが発現されるトランスジェニックマウス系が作製されている。OVA特異的CD8+T細胞は、K5−OVAマウス中に養子的(adoptively)に輸送されると、皮膚ドレイニングリンパ節中で活性化と増殖を受け、K5−OVAマウスの皮膚を標的にし、TENを思わせる皮膚病変が出現する。Azukizawa H. et al., Eur. J. Immunol. 33, 1879 (2003)を参照。
【0124】
すなわち炎症及び/または疾患に付随する引掻きを阻害、低減、予防または阻止することによりTENの臨床的転帰を改善するために、本明細書に記載のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストによるIL−31の中和が使用される。
【0125】
水疱性類天疱瘡
水疱性類天疱瘡は、好中球や好酸球の皮膚浸潤を有する表皮下水疱として現れる表皮下障害である。診断は、表皮と真皮−表皮ジャンクションの特異的接着タンパク質に対する抗原特異的抗体の存在を特徴とする。Jordon R.E. et al., JAMA 200, 751(1967)を参照。PBLと皮膚水泡T細胞の分析により水疱性類天疱瘡の病理発生におけるT細胞の役割を分析する研究により、IL−4やIL−13のようなTh2様サイトカインの発現レベルが増大したCLA+T細胞が優勢であることがわかった。Teraki Y. et al., J. Invest. Dermatol. 117, 1097 (2001)を参照。全身性コルチコステロイドによる治療後の水疱性類天疱瘡患者では、CLA+(CLA−ではない)IL−13産生細胞の頻度が大幅に低下している。コルチコステロイド治療後のCLA+細胞の減少は、臨床的改善により引き起こされる。Teraki(同節中)を参照。
【0126】
すなわち炎症及び/または疾患に付随する引掻きを阻害、低減、予防または阻止することにより水疱性類天疱瘡の臨床的転帰を改善するために、本明細書に記載のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストによるIL−31の中和が使用される。
【0127】
円形脱毛症
円形脱毛症(AA)は、リンパ球浸潤活性が継続しているため毛包活性が停止した毛包の組織限定自己免疫疾患と見なされる。AAは体中のいたるところで完全に脱毛した部分ができ(実際の毛包の喪失は起きないが)、無毛状態さえ起きる。炎症の臨床的症状は存在しないが、疾患の活性部位からの皮膚生検試料はCD8+毛包内浸潤とともに主のCD4+細胞の毛包周囲リンパ球浸潤を示す。Kalish R.S. and Gilhar A. J. Investig. Dermatol. Symp. Proc. 8, 164 (2003)を参照。
【0128】
頭皮浸潤性CD4+またはCD8+リンパ球はCLAを発現し、AA患者の末梢血ではCLA+CD4+またはCD8+リンパ球の割合が正常対照の割合よりはるかに高いことが研究により証明されている。さらに重症のまたは進行性AA患者は、疾患から回復している患者と比較してはるかに高いCLA陽性率を示し、CLA+細胞の割合の低下は良好な臨床経過と一致している。Yano S. et al., Acta Derm. Venereol. 82, 82 (2002)を参照。従ってこれらの研究は、CLA+リンパ球がAAにおいて重要な役割を果たすことを示唆する。異種移植モデルは、AAの病理発生において活性化T細胞が役割を果たす可能性のあることを示した。AA患者の病変頭皮をヌードマウスに移植すると、移植片からの浸潤性リンパ球の喪失に一致して毛が再増殖し、活性化病変T細胞をSCIDマウスに移植するとSCIDマウス上のヒト頭皮外植片に毛の喪失が移る。Kalish R.S. and Gilhar A. J. Investig. Dermatol. Symp. Proc. 8, 164 (2003)を参照。
【0129】
種々の免疫調節療法がこの疾患の通常治療の一部であるが、これらの治療法のいずれもその効果が一定しない。Tang L. et al., J. Invest. Dermatol. 129, 400 (2003); Tang L.ら (2004); 及びTang L. et al., J. Am. Acad. Dermatol. 48, 1013 (2003)を参照。しかし妥当な動物モデルでのこれらの使用は、治療効果の分子的機構を解析する手段を与える。Shapiro J. et al., J. Investig. Dermatol. Symp. Proc. 4, 239 (1999)を;Tang L. et al., 「新しいビンに古いワイン:げっ歯動物モデルを使用して円形脱毛症の古い治療法を復活させる」(2003);及びVerm D.D. et al., Eur. J. Dermatol. 14, 332 (2004)を参照。
【0130】
すなわち炎症及び/または疾患に付随する引掻きを阻害、低減、予防または阻止することにより円形脱毛症の臨床的転帰を改善するために、本明細書に記載のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストによるIL−31の中和が使用される。
【0131】
酒さ性ざ瘡/尋常性ざ瘡
毛包脂腺の障害である尋常性ざ瘡は青年期の最も一般的な皮膚の問題である。毛包の角質化の異常がざ瘡病変を引き起こすと考えられている。酒さ性ざ瘡は、丘疹、膿疱、嚢胞、及び広範な毛細血管拡張症の存在により尋常性ざ瘡とは区別されるが、面皰(稗粒腫)は存在しない。皮脂腺からの皮脂分泌の増加が、尋常性ざ瘡の病態生理の主要な原因である。他の皮脂腺機能もまたざ瘡の発生を引き起こし、これらには、皮脂性炎症促進性脂質;局所的に産生される異なるサイトカイン;腺周囲ペプチドと神経ペプチド、例えばコルチコトロピン放出ホルモン(これは皮脂細胞により産生される);及びサブスタンスP(これはざ瘡患者の健康に見える腺の近傍の神経末端で発現される)がある。Zouboulis C.C. Clin. Dermatol. 22, 360 (2004)を参照。
【0132】
尋常性ざ瘡と酒さ性ざ瘡の病態生理はまだ不明であるが、臨床的観察と組織病理的研究は、酒さ性ざ瘡と尋常性ざ瘡の病理発生において毛包脂腺毛包の炎症が中心的であることを示唆する。酒さ性ざ瘡病変に浸潤するT細胞サブセットの分析についての初期の研究は、ほとんどのT細胞がCD4を発現することを示した。Rufli T. and Buchner S. A. Dermatologica 169, 1 (1984)を参照。
【0133】
CD4+T細胞はIL−31を産生し、IL−31発現についての皮膚のIHC分析は、IL−31が皮脂腺と汗腺で発現されることを示唆する。表皮ケラチン細胞のIL−31刺激は、細胞浸潤を引き起こす可能性のあるケモカインの発現を誘導し、これはIL−31が皮膚の炎症促進応答に寄与していることを示唆する。Dillon S.R. et al., Nat.Immunol. 5, 752 (2004)を参照。従ってIL−31は酒さ性ざ瘡と尋常性ざ瘡の病態生理に寄与している可能性がある。
【0134】
すなわち炎症及び/または疾患に付随する引掻きを阻害、低減、予防または阻止することにより尋常性ざ瘡の臨床的転帰を改善するために、本明細書に記載のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストによるIL−31の中和が使用される。
【0135】
結節性痒疹
結節性痒疹は、治療の困難な難治性掻痒症により引き起こされる苔癬化または擦過結節の破裂である。慢性にこすっていると苔癬化し、引っ掻いていると線状擦過を引き起こすが、かゆくひりひりする皮膚をつまんだり穴を空けたりする人は、顕著に厚くなった丘疹(結節性痒疹として知られている)を生成し易い。結節性痒疹はアトピー性皮膚炎に特異的ではないが、この結節を有する多くの患者はまたアトピー性反応を有し、これはアレルギー性鼻炎、喘息、または食物アレルギーとして現れる。T細胞は痒疹病変の浸潤細胞の大部分を占め、これらの病変はしばしばアトピー患者の最もかゆい皮膚病変である。
【0136】
カプサイシン(小感覚皮膚神経中のサブスタンスPのような神経ペプチドの枯渇による心因性掻痒症や疼痛の知覚を妨害する抗掻痒症アルカロイド)による結節性痒疹の局所的治療は、皮膚病変の清澄化を引き起こす有効で安全な処方であることが証明された。Stander S. et al., J. Am. Acad. Dermatol. 44, 471 (2001)を参照。カプサイシン治療を使用するNC/Ngaマウスの痒み応答の研究は、皮膚炎病変の自発的発生がほとんど完全に予防されることを示した。さらに血清IgEレベルの増大は大きく抑制され、カプサイシン治療されたマウスの病変皮膚中の浸潤好酸球や肥満細胞数が低下した。Mihara K. et al., Br. J. Dermatol. 151, 335 (2004)を参照。この群からの観察は、引っ掻きは種々の免疫学的応答を増強することにより皮膚炎の進展に寄与し、従って痒み感覚及び/または痒み関連引っ掻き挙動の予防がADの有効な治療法である可能性を示唆する。Mihara K. et al., Br. J. Dermatol. 151, 335 (2004)を参照。すなわち本明細書に記載されたヒト化抗IL−31抗体は、NC/Ngaマウスの引っ掻き量を低下させることが証明されているため、これらはAD、結節性痒疹、及び他の掻痒性疾患の作用を最小にするのに有用であろう。
【0137】
マウスにIL−31を慢性に与えると、掻痒症と脱毛症を誘導し次に皮膚病変が出現して、IL−31がかゆみを誘導することを示唆する。Dillon S.R. et al., Nat. Immunol. 5, 752 (2004)を参照。痒み応答の誘導におけるIL−31の関与を2つの方法で測定することができる:(i)IL−31処理したマウスのカプサイシン処理、及び(ii)Tac1ノックアウトマウスのIL−31処理、これは、神経ペプチド発現の欠如のために、傷害受容痛が大幅に低下している。さらヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストによるIL−31処理マウスにおけるIL−31の中和が、掻痒症と脱毛症を予防できるかどうかを、これらのモデルで試験することができる。
【0138】
すなわち炎症及び/または疾患に付随する引掻きを阻害、低減、予防または阻止することにより結節性痒疹の臨床的転帰を改善するために、本明細書に記載のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストによるIL−31の中和が使用される。
【0139】
皮膚指向性ウイルスとウイルス関連掻痒症
末梢血中の単純ヘルペスウイルス(HSV)特異的CD8+T細胞及びヘルペス病変から回収したHSV特異的CD8+T細胞は高レベルのCLAを発現するが、非皮膚指向性ヘルペスウイルス特異的CD8+T細胞はCLAを発現しない。Koelle D.M. et al., J. Clin. Invest. 110, 537 (2002)を参照。HSV−2反応性CD4+Tリンパ球もまたCLAを発現するが、そのレベルはCD8+Tリンパ球についてすでに観察されたものより低い。Gonzalez J. C. et al., J. Infect. Dis. 191, 243 (2005)を参照。掻痒症もまたヘルペスウイルス感染に関連している(Hung K.Y. et al., Blood Purif. 16, 147 (1998)を参照)が、HIVのような他のウイルス疾患もまた掻痒症皮膚病変に関連している。重症の難治性の掻痒症(しばしば紅斑丘疹皮膚病変や高好酸球症に関連している)は、ある非アトピー性HIV感染患者にしばしば観察される症状である。Singh F. and Rudikoff D.、Am. J. Clin. Dermatol. 4, 177 (2003)、及びMilazzo F.、Piconi S. et al., Allergy 54, 266 (1999)を参照。
【0140】
皮膚指向性ウイルスと掻痒症及びCLA+T細胞との関連は、IL−31産生T細胞がウイルス感染症の病態生理に関与していることを示唆する。
【0141】
すなわち炎症及び/または疾患に付随する引掻きを阻害、低減、予防または阻止することにより皮膚指向性ウイルスに関連した掻痒症の臨床的転帰を改善するために、本明細書に記載のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストによるIL−31の中和が使用される。
【0142】
さらに炎症は、侵入する物質から防衛する生物による防御応答である。炎症は、多くの細胞及び体液性メディエーターが関与するカスケード事象である。一方では炎症応答の抑制は宿主を免疫無防備状態にするが、そのままにすると炎症が慢性炎症性疾患(例えば、リウマチ様関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患などを含む)、敗血症ショック、及び多臓器不全を含む重症の合併症に至ることがある。重要なことは、これらの多用な疾患が共通の炎症メディエーターを有することである。炎症を特徴とする疾患集団は、ヒトの罹患率と死亡率に大きな影響を与える。従って抗炎症性抗体及び結合ポリペプチド(例えば本明細書に記載の抗IL−31抗体及び結合ポリペプチド)が、膨大なヒト及び動物の疾患(喘息やアレルギーから自己免疫及び敗血症ショックまで)について決定的に重要な治療的可能性を有することは明らかである。従って本明細書に記載の抗炎症性抗IL−31抗体や結合ポリペプチドは、本明細書に記載のIL−31アンタゴニストとして、特に関節炎、内毒素血症、炎症性腸疾患、乾癬、関連疾患などにおいて使用することができる。
【0143】
1.関節炎
骨関節炎、リウマチ様関節炎、損傷の結果としての関節炎関節などを含む関節炎は、抗炎症性抗体や結合ポリペプチド(例えば本発明の抗IL−31抗体及び結合ポリペプチド)の治療的使用が有効な一般的な炎症症状である。例えばリウマチ様関節炎(RA)は、全身に影響を与える全身性疾患であり、関節炎の最も一般的な型の1つである。これは、関節の内側の膜の炎症(これは疼痛、こわばり、暖かさ、発赤及び腫張を引き起こす)が特徴である。炎症性細胞は、骨や軟骨を消化する酵素を放出する。リウマチ様関節炎の結果として、腫張した関節裏層である滑膜は骨や軟骨に侵入して傷害させ、生理学的作用の中でも特に関節破壊と重い疼痛を引き起こす。関与する関節はその形とアラインメントを失い、疼痛と運動の喪失を引き起こす。
【0144】
リウマチ様関節炎(RA)は特に炎症と以後の組織傷害を特徴とする免疫性の疾患であり、重症の障害と高い死亡率に至る。リウマチの関節では種々のサイトカインが局所的に産生される。2つのプロトタイプの炎症促進性サイトカインであるIL−1とTNFアルファが滑膜炎症と進行性関節破壊に関与する機構において重要な役割を果たすことを多くの研究が証明している。実際RA患者にTNFアルファとIL−1インヒビターを投与すると、臨床的及び生物学的炎症症状の劇的な改善と骨侵食と軟骨破壊の放射線的兆候の低下があった。しかしこれらの有望な結果にもかかわらず、相当の割合の患者はこれらの薬物に応答せず、関節炎の病態生理に他のメディエーターも関与していることを示唆する(Gabay, Expert. Opin. Biol.Ther. 2 (2):135-149, 2002を参照)。これらのメディエーターの1つはIL−31であり、従ってIL−31に結合またはこれを阻害する分子(例えばIL−31抗体または結合パートナー)は、リウマチ様関節炎及び他の関節炎疾患の炎症を低減するための有用な治療薬となる可能性がある。
【0145】
当該分野においてリウマチ様関節炎のいくつかの動物モデルが知られている。例えばコラーゲン誘導性関節炎(CIA)モデルでは、マウスはヒトリウマチ様関節炎によく似た慢性炎症性関節炎を発症する。CIAはRAと同様の免疫学的及び病理的特徴を有するため、これはヒト抗炎症性化合物候補をスクリーニングするための理想的なモデルである。CIAモデルは、発症するのに免疫応答と炎症応答の両方に依存することがよく知られているマウスのモデルである。免疫応答は、抗原としてコラーゲンに応答したB細胞とCD4+T細胞の相互作用を含み、抗コラーゲン抗体の産生を引き起こす。炎症期は、これらの抗体がマウスの未変性のコラーゲンと交差反応して補体カスケードを活性化した結果としての炎症のメディエーターからの組織応答の結果である。CIAモデルを使用する利点は、病理発生の基本的機構がわかっていることである。II型コラーゲン上の関連するT細胞とB細胞エピトープが同定されており、免疫性関節炎に関連する種々の免疫学的(例えば、遅延型過敏症及び抗コラーゲン抗体)及び炎症性(例えば、サイトカイン、ケモカイン、及びマトリックス分解性酵素)パラメータが測定されており、従ってCIAモデルで試験化合物の効力を評価するのに使用することができる(Wooley, Corr. Opin. Rheum. 3:407-1999; Williams et al., Immunol. 89:9784-788、1992; Myers et al., Life Sci. 61:1861-78, 1997; 及びWang et al. , Immunol. 92:8955-959, 1995)。
【0146】
免疫応答及び炎症応答を調節する分子としてIL−31はSAA(リウマチ様関節炎の病理発生に関与する)の産生を誘導する。ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、インビトロとインビボでSAA活性を低下させ、IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストの全身性または局所的投与は、RAの炎症性応答を抑制する可能性がある。
【0147】
2.内毒素血症
内毒素血症は、感染性物質(例えば、細菌、及び他の感染症物質)、敗血症、毒素ショック症候群に起因するか、または日和見感染した免疫無防備状態患者などで一般的に発症する重症の症状である。抗炎症性抗体及び結合ポリペプチド(例えば本発明の抗IL−31抗体及び結合ポリペプチド)の治療的使用は、ヒトや動物の内毒素血症の予防と治療を助けるであろう。他の治療薬候補には、本発明のIL−31RAポリペプチドである可溶性ヘテロダイマーとマルチマー受容体ポリペプチド、またはIL−31抗体もしくは結合パートナーなどがあり、内毒素血症の炎症や病原性作用を低減する有用な治療薬となるであろう。
【0148】
リポ多糖(LPS)誘導性内毒素血症は、感染症の病理作用を引き起こす多くの炎症促進メディエーターが関与し、げっ歯動物のLPS誘導性内毒素血症は、炎症促進剤または免疫調節剤候補の薬剤学的作用を研究するための広く使用され受け入れられているモデルである。グラム陰性菌中で産生されるLPSは敗血症ショックの病理発生の主要な原因物質である(Glausner et al., Lancet 338:732, 1991)。実際、LPSを動物に一回注射することにより実験的にショック様状態を誘導することができる。LPSに応答する細胞により産生される分子は、直接または間接に病原体を標的とすることができる。これらの生物学的応答は侵入する病原体に対して宿主を防御するが、これらが有害なこともある。すなわち重症のグラム陰性菌感染症の結果として発生する本来の免疫を大きく刺激するとサイトカインや他の分子が過剰に産生され、致死的な症状である敗血症ショック症候群(これは、発熱、高血圧、播種性血管内凝固、及び多臓器不全が特徴である)になる(Dumitru et al., Cell 103:1071-1083, 2000)。
【0149】
LPSのこれらの毒性作用は主にマクロファージ活性化に関連し、多くの炎症性メディエーターを放出させる。中和抗TNF抗体の投与によるLPS毒性の防止により示されるように、これらのメディエーターのうちでTNFが決定的に重要な役割を果たしているようである(Beutler et al., Science 229:869, 1985)。1μgの大腸菌(E. coli)LPSをC57Bl/6マウスに注射すると、注射の約2時間後に循環IL−6、TNFアルファ、IL−1、及び急性期タンパク質(例えばSAA)が大幅に増加する。これらのメディエーターに対する受動免疫により死亡率を低下させることができるため、LPSの毒性はこれらのサイトカインにより仲介されるようである(Beutler et al., Science 229:869, 1985)。敗血症ショックの予防及び/または治療のための可能な免疫介入法には、抗TNFモノクローナル抗体、IL−1受容体アンタゴニスト、LIF、IL−10、及びG−CSFがある。LPSは、内毒素血症の病理に寄与する可能性のある炎症促進因子の産生を誘導するため、IL−31活性、SAAまたは他の炎症促進因子を拮抗性IL−31ポリペプチドにより中和することは、内毒素血症ショックで見られるような内毒素血症症状を低減するのに使用することができる。他の治療薬候補には、ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストなどがある。
【0150】
3.炎症性腸疾患(IBD)
炎症性腸疾患(IBD)は結腸、直腸(潰瘍性結腸炎)または両方、小腸及び大腸(クローン病)を冒す。これらの疾患の病理発生は不明であるが、患部組織の慢性炎症がある。治療薬候補には、本発明のIL−31RAポリペプチドである可溶性ヘテロダイマーとマルチマー受容体ポリペプチド、または抗IL−31抗体もしくは結合パートナーなどがあり、IBDや関連疾患の炎症や病原性作用を低減するための有用な治療薬となるであろう。
【0151】
クローン病の慢性炎症と潰瘍は、通常小腸閉塞又は急性盲腸炎に似た腹痛で始まり、他の症状はその合併症に関連する。疾患経過は慢性であり、治療にもかかわらず悪化と緩解がある。発症は通常成人期初期であり、全症例の約半分は20才〜30才の間で開始し、90%は10才〜40才で開始する。女性よりわずかに多く男性が罹患する。
【0152】
顕微鏡はおよその外観を反映する。炎症関与は不連続である:これは巣状かとぎれとぎれである。リンパ球と形質細胞の集団が主に粘膜と粘膜下組織中に存在するが、通常はすべての層に影響を与える(経壁炎症)。クローン病の古典的な顕微鏡的特徴は、リンパ球のカフで囲まれた顆粒細胞の存在である。突発性炎症性腸疾患の頻度は、大きな地域的変動を示す。これらの疾患は、ヨーロッパや米国では、アフリカ、南アメリカ、そしてアジアの国々よりはるかに高頻度であるが、都市化と繁栄により南ヨーロッパや日本での頻度が上昇している(General and Systematic Pathology, Churchill Livingstone, 第3版、2000, JCE Underwood, Ed.)。
【0153】
クローン病は臨床的に2つの大きなグループがあり、第1は、発症後3年以内に疾患が最後の緩解に入り、第2は、3年を超えて疾患が持続する患者である。
【0154】
病因に関係なく、クローン病には持続性で不適切なT細胞とマクロファージ活性化があり、炎症促進性サイトカイン、特にインターロイキン(IL)1、2、6、及び8、インターフェロン(IFN)、及び腫瘍壊死因子(TNF)の産生上昇の証拠がある。クローン病は、繊維症を伴う持続性(慢性)炎症が特徴である。繊維芽細胞増殖とコラーゲン沈着プロセスはトランスフォーミング増殖因子(これは、いくつかの抗炎症作用、すなわち繊維芽細胞動員、マトリックス合成、及び炎症細胞のダウンレギュレーションがある)に仲介されるが、他の多くのメディエーターが関与している可能性がある。
【0155】
潰瘍性結腸炎(UC)は、大腸(一般的には結腸と呼ばれる)の炎症性疾患であり、結腸の粘膜または最も内側の裏層の炎症と潰瘍を特徴とする。この炎症はしばしば結腸を空にさせ下痢が起きる。症状は、緩い便、関連する腹部けいれん、発熱、及び体重減少である。UCの正確な原因は不明であるが、最近の研究は、体が異物と考える体内のタンパク質に対する体の自然の防御(「自己免疫反応」)が働いていることを示唆している。これらのタンパク質はおそらく消化管中の細菌タンパク質に似ており、これらが炎症性プロセスを扇動または刺激して結腸の裏層の破壊を開始するのであろう。結腸の裏層が破壊されると、潰瘍が生成して粘液、膿、及び血液を放出する。この疾患は通常直腸部位から始まり、最終的に大腸全体に拡大する。炎症が繰り返されて小腸壁が肥厚し、直腸が傷組織になる。結腸組織の死滅または敗血症は重症の疾患で発症する。潰瘍性結腸炎の症状は重症度が変化し、その発症はゆるやかまたは急速である。多くの要因(呼吸感染症またはストレスを含む)により発作が誘引される。
【0156】
現在UCのために利用できる治療法は無いが、治療は結腸裏層の異常炎症プロセスの抑制に集中している。この疾患を治療するのにコルチコステロイド免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、メルカプトプリン、及びメソトレキセート)及びアミノサリチル酸塩を含む治療法が利用できる。しかしコルチコステロイドやアザチオプリンのような免疫抑制剤の長期使用は、重大な副作用(骨の非薄化、白内障、感染、及び肝臓と骨髄への影響を含む)を引き起こすことがある。現在の治療法がうまくいかない患者では手術が選択肢になる。手術は、結腸全体及び直腸の除去を含む。
【0157】
慢性潰瘍性結腸炎を部分的に模倣できるいくつかの動物モデルがある。最も広く使用されているモデルは2,4,6−トリニトロベンスルホン酸/エタノール(TNBS)誘導結腸炎モデルであり、結腸の慢性炎症と潰瘍を誘導する。直腸内点滴注入によりTNBSを感受性のマウスの結腸に導入すると、結腸粘膜でT細胞性免疫応答が誘導され、この場合結腸の壁全体へのT細胞とマクロファージの濃い浸潤を特徴とする大きな粘膜炎症を引き起こす。さらにこの組織病理像は、進行性の体重減少(衰弱)、血性下痢、直腸脱、及び大腸壁肥厚の臨床像を伴う(Neurath et al., Intern. Rev. Immunol. 19:51-62, 2000)。
【0158】
他の結腸炎モデルはデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を使用し、これは血性下痢、体重減少、結腸の短縮、及び好中球浸潤を有する粘膜潰瘍として現れる急性結腸炎を誘導する。DSS誘導性結腸炎は、組織学的には粘膜固有層への炎症性細胞の浸潤が特徴であり、リンパ球肥厚、局所的陰窩傷害、及び上皮潰瘍を有する。これらの変化は、上皮へのDSSの毒性作用、粘膜固有層細胞の食作用、及びTNFアルファとIFNガンマの産生により現れると考えられる。DSSの一般的使用にもかかわらず、ヒト疾患との関連におけるDSSの機構についてのいくつかの問題は未解決のままである。DSSはSCIDマウスのようなT細胞欠損動物で観察されるため、T細胞非依存性モデルと見なされる。
【0159】
これらのTNBSまたはDSSモデルへのヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストの投与は、消化管疾患の症状を軽減しその経過を変化させるためのIL−31アンタゴニストの使用を評価するのに使用することができる。IL−31は結腸炎の炎症性応答において役割を果たし、ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを投与することによるIL−31活性の中和は、IBDの治療アプローチ候補である。
【0160】
4.乾癬
乾癬は、700万人以上のアメリカ人が罹っている慢性の皮膚症状である。乾癬は、新しい皮膚細胞が異常に増殖して、皮膚の炎症、腫張、及びうろこ状の斑を生成させて、ここで古い皮膚が急速に剥がれる時に起きる。最も一般的な型である斑状乾癬は、銀白色のうろこがかぶさった炎症皮膚班(病変)が特徴である。乾癬は数個の班に限定されるかまたは皮膚の中程度から広範な部位まで関与し、最も一般的には頭皮、膝、肘、及び胴体に現れる。これは肉眼でよく見えるが、乾癬は感染症ではない。この疾患の病理発生は患部組織の慢性炎症を含む。ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、乾癬、他の炎症性皮膚疾患、皮膚や粘膜アレルギー、及び関連疾患の、炎症や病原性作用を低減するための有用な治療薬となり得る。
【0161】
乾癬は、大きな不快感を引き起こす皮膚のT細胞性炎症性疾患である。これは治療法が無く、すべての年齢の人が罹る疾患である。乾癬はヨーロッパと北アメリカの人口の約2パーセントが罹っている。軽い乾癬患者はしばしば局所治療薬でその疾患を調節しているが、世界中で100万人を超える患者は紫外線療法または免疫抑制療法を必要とする。残念ながら紫外線照射の危険性や多くの治療法の毒性が、これらの長期使用を制限している。さらに患者は通常乾癬が再発する。
【0162】
IL−31は、重要な免疫学的機能を有することが知られており免疫系において役割を果たす細胞を含有する組織から単離された。IL−31はCD3+選択された活性化末梢血細胞で発現され、T細胞活性化後にIL−31発現が増大することが証明されている。さらにヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストが、単球/マクロファージ、T細胞、B細胞、NK細胞の増殖/拡張、及び/または単球/マクロファージ、T細胞、B細胞、NK細胞の前駆体の分化状態に影響を与えることがある。造血前駆体の増殖を刺激しかつ成熟細胞を活性化する因子が一般に知られているが、増殖と活性化にはまた追加の成長因子が必要である。例えばNK前駆体のコロニー形成にはIL−7とスチール因子(Steel Factor)(c−kitリガンド)が必要であることが証明された。IL−15+IL−2をIL−7及びスチール因子(Steel Factor)と組合せるとより有効であった(Mrozek et al., Blood 87:2632-2640, 1996)。しかしNK細胞及び/またはNK前駆体の特異的サブセットの増殖には、未同定のサイトカインが必要であるかも知れない(Robertson et al., Blood 76:2451-2438, 1990)。同様にIL−31は単独でまたは他のサイトカインと協同してもしくは相乗的に作用して、単球/マクロファージ、T細胞、B細胞またはNK細胞の成長、増殖、拡張、及び分化の修飾を増強させる。
【0163】
本発明は、炎症性及び免疫疾患または症状、例えばアトピー性皮膚炎、掻痒症、膵臓炎、I型糖尿病(IDDM)、膵臓癌、膵臓炎、グレーブス病、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、結腸及び小腸癌、憩室症、自己免疫疾患、敗血症、臓器移植もしくは骨髄移植;外傷、手術または感染による炎症;アミロイドーシス;脾腫;移植片対宿主反応病;及び炎症の阻害、免疫抑制、造血細胞、免疫細胞、炎症細胞もしくはリンパ系細胞、マクロファージ、T細胞(Th1細胞とTh2細胞、CD4+とCD8+細胞を含む)の増殖の低下、病原体もしくは抗原に対する免疫応答の抑制、におけるアンタゴニストとしてのヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストの使用に関する。さらに活性化免疫細胞(例えば活性化CD4+細胞及びCD19+細胞)におけるIL−31RA発現の存在は、IL−31RA受容体が、外来侵入者(例えば微生物及び細胞破片)に対する体の免疫防御反応に関与し、炎症と癌生成中の免疫応答において役割を果たすことを示した。従ってIL−31RA受容体機能に対して作用性または拮抗性の本発明の抗体及び結合パートナー(例えばIL−31)は、免疫応答及び炎症を修飾するのに使用することができる。
【0164】
ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストもまた、IL−31の循環レベルを検出するための診断系内で使用することができる。関連する実施態様において、抗体またはIL−31ポリペプチドに特異的に結合する他の物質を、循環IL−31ポリペプチドを検出するのに使用することができる。リガンドであるポリペプチドレベルの上昇または低下は、癌を含む疾患の病状を示すものである。IL−31ポリペプチドは病理プロセスに寄与し、基礎疾患の間接的マーカーになることがある。
【0165】
アテローム性動脈硬化症病変において、最初の異常の1つは単球/マクロファージの内皮細胞への局在化である。これらの病変は、IL−31のアンタゴニストを使用して予防することができる。ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、アテローム性動脈硬化症病変においてIL−31のアンタゴニストとして使用することができる。さらに単芽球性白血病は、マクロファージの生物学的生成物の放出を反映する種々の臨床的異常(例えば血清や尿中の高レベルのリゾチーム及び高熱を含む)に関連している。さらにこのような白血病は、単球細胞の異常な増大を示す。これらの作用はおそらく、例えば本明細書に記載のようなIL−31のアンタゴニストにより防止される。さらにヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、白血病単球細胞の死滅を指令するために本明細書に記載の分子(例えば毒性成分やサイトカイン)に結合することができる。
【0166】
IL−31は活性化単核細胞中で発現されることが証明されており、炎症の制御に関与する。従って炎症を修飾する能力について本発明のポリペプチドを測定し使用するか、または炎症のマーカーとして使用することができる。IL−31の炎症促進性及び抗炎症性を測定する方法は当該分野で公知であり、本明細書に記載されている。さらにこれは、急性期反応物(例えば、血清アミロイドA(SAA)、α1−アンチトリプシン、及びハプトグロビン)の産生をアップレギュレートするのに関与し、IL−31RA受容体リガンドの発現は、炎症応答に関与するリポ多糖(LPS)のインビボ注射により増加する(Dumoutier, L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:10144-10149, 2000)。SAAのような急性期タンパク質の産生は、炎症が有効である短期生存機構と見なされるが、急性期タンパク質の長期間の維持が慢性炎症になり、ヒトの健康に有害となる。総説については、Uhlar, CM and Whitehead, AS, Eur. J. Biochem. 265:501-523, 1999とBaumann H. and Gauldie, J. Immunology Today 15:74-80、1994を参照。さらに急性期タンパク質SAAは、いくつかの慢性炎症性疾患の病理発生に関与し、アテローム性動脈硬化症やリウマチ様関節炎に関与し、アミロイドーシスで沈着するアミロイドAタンパク質の前駆体である(Uhlar, CM and Whitehead、前述)。すなわちIL−31のようなリガンドが炎症促進分子として作用しSAAの産生を誘導する場合、炎症性疾患及びリガンドにより誘導される急性期応答タンパク質が引き起こす他の疾患を治療するのにヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストが有用であろう。例えば炎症を低減する方法は、炎症又はかゆみを有する哺乳動物に炎症又はかゆみを低減するのに充分な量のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストの組成物を投与することを含む。さらに炎症を有する哺乳動物の炎症応答を抑制する方法は:(1)血清アミロイドAタンパク質のレベルを測定し;(2)本明細書に記載のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを許容される薬剤担体中に含む組成物を投与し;(3)血清アミロイドAタンパク質の投与後のレベルを測定し;(4)工程(1)の血清アミロイドAタンパク質のレベルを工程(3)の血清アミロイドAタンパク質のレベルと比較する方法を含み、ここで血清アミロイドAタンパク質レベルの増加の欠如または低下は炎症応答の抑制を示す。
【0167】
IL−31RA受容体cDNAに対応するmRNAの組織分布は、mRNAレベルが単核細胞と前立腺細胞中で最も高く、活性化単球、活性化CD4+、活性化CD8+、及び活性化CD3+細胞中で増大していることを示した。従ってIL−31RA受容体はまた、炎症応答及び免疫応答を誘導するのに関与している。すなわち本発明の具体例は、膵臓炎、I型糖尿病(IDDM)、膵臓癌、膵臓炎、グレーブス病、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、結腸及び小腸癌、憩室症、自己免疫疾患、敗血症、臓器移植もしくは骨髄移植;外傷、手術または感染による炎症;アミロイドーシス;脾腫;移植片対宿主反応病;及び炎症の阻害、免疫抑制、造血細胞、免疫細胞、炎症細胞もしくはリンパ系細胞、マクロファージ、T細胞(Th1細胞とTh2細胞、CD4+とCD8+細胞を含む)の増殖の低下、病原体もしくは抗原に対する免疫応答の抑制、におけるヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストの使用に関する。さらに活性化免疫細胞(例えば活性化CD3+、単球、CD4+及びCD19+細胞)におけるIL−31RA受容体の存在とIL−31発現は、IL−31RA受容体が、外来侵入者(例えば微生物及び細胞破片)に対する体の免疫防御反応に関与し、炎症と癌生成中の免疫応答において役割を果たすことを示した。従ってIL−31RA受容体機能に対して作用性または拮抗性の本発明のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、免疫応答及び炎症を修飾するのに使用することができる。
【0168】
ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストは、以下をするのに有用である。
【0169】
1)急性炎症、外傷の結果としての炎症、組織損傷、手術、敗血症または感染、及び炎症性疾患、例えば喘息、炎症性腸疾患(IBD)、慢性結腸炎、脾腫、リウマチ様関節炎、再発性急性炎症エピソード(例えば結核)の治療、及びアミロイドーシス及びアテローム性動脈硬化症、キャッスルマン病、喘息、及び急性期応答の誘導が関連する他の疾患の治療において、IL−31RA含有受容体を介するシグナル伝達を拮抗または阻止する、
【0170】
2)免疫細胞(例えば、リンパ球、単球、白血球)中のシグナル伝達を防止または阻止するために、自己免疫疾患、例えばIDDM、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、リウマチ様関節炎、及びIBDの治療において、IL−31RA受容体を介するシグナル伝達を拮抗または阻止する(Huges C et al., J. Immunol. 153:3319-3325, 1994)。あるいは不要な免疫細胞を枯渇させて自己免疫疾患を治療するために、IL−31に対する抗体、例えばモノクローナル抗体(MAb)をアンタゴニストとして使用することもできる。喘息、アレルギー及び他のアトピー性疾患は、免疫応答を阻害するためにまたは邪魔な細胞を枯渇させるため、例えば抗IL−31抗体、可溶性IL−31RA受容体可溶性受容体、またはIL−31RA/CRF2−4ヘテロダイマーに対するモノクローナル抗体を用いて治療される。本発明のポリペプチド及び抗体を使用してIL−31RAを介するシグナル伝達を阻止または阻害することは、膵臓、腎臓、下垂体、及び神経細胞の疾患に有利である。IDDM、NIDDM、膵臓炎、及び膵臓癌に有利である。IL−31RAは癌のモノクローナル抗体療法の標的として作用し、拮抗性のモノクローナル抗体が癌増殖を阻害し免疫性死滅を標的とする(Hollinger P and Hoogenboom, H:Nature Biotech. 16:1015-1016, 1998)。可溶性IL−31RA受容体モノマー、ホモダイマー、ヘテロダイマー、及びマルチマーに対するモノクローナル抗体もまた、神経障害、例えば糸球体硬化症、膜性神経症、アミロイドーシス(これは特に腎臓を冒す)、腎性動脈硬化症、種々の起源の糸球体腎炎、腎臓の繊維増殖性疾患、ならびにSLE、IDDM、II型糖尿病(NIDDM)、腎腫瘍及び他の疾患が引き起こす腎機能不全を治療するのに有用である。
【0171】
一般に投与されるヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストの量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身の健康状態、及び過去の病歴に依存して変動する。典型的には約1pg/kg〜10mg/kg(薬剤の量/患者の体重)の範囲の用量のIL−31ポリペプチドを受容者に与えることが好ましいが、状況によりそれより少ない量または多い量が投与される。当業者は、かかる投与量及びその調整を当該分野で公知の方法を使用して容易に決定することができる。
【0172】
被験体へのヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストの投与は、局所的、吸入、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸内、くも膜下、局所的カテーテルによる潅流、または直接病変内注入でもよい。注入により治療用タンパク質を投与する時は、投与は連続注入または単回もしくは多回大型丸薬投与でもよい。
【0173】
追加の投与経路には、経口、粘膜、肺、及び経皮がある。経口投与は、ポリエステル微小球、ゼイン微小球、プロテイノイド微小球、ポリシアノアクリレート微小球、及び脂質ベースの系に適している(例えば、"Protein Delivery:Physical Systems"、Sanders and Hendren(編)、255〜288頁(Plenum Press、1997)中のDiBase and Morrel、「マイクロカプセル化タンパク質の経口投与」を参照)。鼻内投与の実行性はインスリン投与のような方法により例示される(例えば、Hinchcliffe and Illum、Adv. Drug Deliv. Rev. 35:199 (1999)を参照)。IL−31を含有する乾燥または液体粒子を調製し、乾燥粉末分散器、液体エアゾル発生器、またはネブライザーを使用して吸入することができる(例えば、Petit and Gombotz, TIBTECH 16:343 (1998); Patton et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 35:235 (1999))。このアプローチは、AERX糖尿病管理システムに(これはエアゾル化インスリンを肺に送るハンディ―タイプの電子吸入器である)より例示される。低周波数超音波を使用して48,000kDaという大きなタンパク質が皮膚を通して治療濃度で投与されることが研究で証明されており、これは経皮投与の実効性を例示する(Mitragotri et al., Science 269:850 (1995))。電気穿孔法を使用する経皮投与は、IL−31結合活性を有する分子を投与するための別の手段となる(Potts et al., Pharm. Biotechnol. 10:213 (1997))。
【0174】
IL−31結合活性を有するヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを含む医薬組成物は公知の方法により製剤化して、薬剤として有用な組成物を調製することができ、ここで治療用タンパク質は医薬として許容される担体と混合される。受容患者により投与が許容される場合、組成物は「医薬として許容される担体」と言われる。無菌のリン酸緩衝化生理食塩水は医薬として許容される担体の1つの例である。他の適当な担体は当業者に公知である。例えば、Gennaro(編)、Remington's Pharmaceutical Sciences、第19版 (Mack Publishing Company、1995)を参照。
【0175】
治療目的に、IL−31結合活性を有する分子と医薬として許容される担体が治療的有効量で患者に投与される。IL−31結合活性を有するタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドと医薬として許容される担体との組合せは、投与される量が生理学的に意味がある場合「治療的有効量」で投与されると言われる。ある物質の存在が受容患者の生理に検知可能な変化を引き起こす場合、生理学的意味がある。例えば炎症を治療するのに使用される物質は、その存在が炎症応答の少なくとも一部を緩和する場合、生理学的に意味がある。
【0176】
ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストを含む医薬組成物は、液体型、エアゾル型、または固体型で提供することができる。液体型は、注射溶液、エアゾル剤、液滴、トポロジカル溶液、及び経口懸濁液により例示される。固体型の例には、カプセル剤、錠剤、及び制御放出型がある。後者の型は、ミニ浸透圧ポンプ及びインプラントにより例示される(Bremer et al., Pharm. Biotechnol. 10:239 (1997); Ranade and Hollinger(編)、「Drug Delivery Systems」、95〜123頁(シーアールシー・プレス(CRC Press)、1995)中のRanade、「薬剤送達におけるインプラント」;"Protein Delivery:Physical Systems"、Sanders and Hendren(編)、239〜254頁(Plenum Press、1997中のBremer et al., 「注入ポンプによるタンパク質送達」;"Protein Delivery:Physical Systems"、Sanders and Hendren(編)、93〜117頁(Plenum Press、1997中のYewey et al., 「制御放出注入可能インプラントからのタンパク質の送達」)。他の固体型には、クリーム剤、ペースト剤、他のトポロジカル投与剤などがある。
【0177】
本明細書に開示のヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストはまた免疫リポソームとして調製される。抗体を含有するリポソームは当該分野で公知の方法により調製され、例えばEpstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688 (1985);Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030 (1980);及び米国特許第4,485,045号と4,544,545号に記載されている。循環時間が延長されたリポソームは米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0178】
リポソームは、静脈内、腹腔内、くも膜下、筋肉内、皮下、または経口投与、吸入、または鼻内投与により、被験体に治療用ポリペプチドを投与する1つの手段を与える。リポソームは、水性コンパートメントを囲む1つまたはそれ以上の脂質二重層からなる微小胞である(一般的には、Bakker-Woundenberg et al., Eur. J. Clin. Microbiol. Infect. Dis. 12(増刊1):S61(1993)、Kin,Drugs 46:618(1993)、及びRanade and Hollinger(編)、「Drug Delivery Systems」、3〜24頁(シーアールシー・プレス(CRC Press)、1995)中のRanade、「リポソームを担体として使用する部位特異的薬剤送達」を参照)。リポソームは組成が細胞膜に似ており、その結果リポソームは安全に投与され生体分解性である。調製法に依存して、リポソームはユニラメラまたはマルチラメラであり、直径が0.02μm〜10μm以上の大きさで変動する。リポソーム中に種々の物質を封入することができる:疎水性物質は二重層中で分配され、親水性物質は内部の水性スペース内で分配される(例えば、Machyら、"Liposomes In Cell Biology And Pharmacology" (John Libbey、1987)、及びOstro et al., American J. Hosp. Pharm. 46:1576 (1989)を参照)。さらに、リポソームの大きさ、二重層の数、脂質組成、ならびにリポソームの荷電と表面特性を変化させることにより、封入された物質の治療的利用可能性を制御することができる。
【0179】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法により作製することができる。リポソームは規定の孔径のフィルターから抽出されて、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体のFab’フラグメントを、Martin et al., J. Biol.Chem. 257:286-288 (1982)に記載のようにジスルフィド交換反応によりリポソームに結合することができる。リポソーム内に化学療法剤(例えばドキソルビシン)を随時含有させてもよい。Gabizon et al., J. Natl.Cancer Inst. 81 (19)1484 (1989)を参照。
【0180】
ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニストの治療用調製物は、所望の程度の純度を有する抗体に随時の生理学的に許容される担体、賦形剤または安定剤(Remington's Ph'armaceutical Sciences、Osol, A.編 (1980))を混合することにより、凍結乾燥調製物または水溶液の形で保存用に調製される。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投与量と濃度で受容者に非毒性なものであり、例えばリン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸の緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン;単糖、二糖、及びグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;糖、例えばショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩生成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えば、Zu−タンパク質錯体);及び/または非イオン性界面活性剤、例えばツイーン(登録商標)、プルロニックス(Pluronics)(登録商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)がある。
【0181】
本明細書の調製物はまた、治療される具体的な適応症の必要に応じて2つ以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的活性を有するものを含有してもよい。例えば、IL−31に結合する抗体をある調製物中にさらに与えることが好ましい。あるいは組成物はさらに、化学療法剤またはサイトカインを含有してもよい。このような分子は、目的に有効な量で混合物中に適切に存在する。
【0182】
IL−31結合活性を有するポリペプチドは、標準的タンパク質マイクロカプセル化法を使用してリポソーム内に封入することができる(例えば、Anderson et al., Infect. Immun. 31:1099 (1981)、Anderson et al., Cancer Res. 50:1853 (1990)、及びCohen et al., Biochim. Biophys. Acta 1063:95 (1991)、「Liposome Technology」、第2版、第III巻、Gregoriadis(編)、317頁(CRC Press)、1993)中のAlving et al., 「免疫学的研究におけるリポソームの調製と使用」、Wassef et al., Meth. Enzymol. 149:124 (1987)を参照)。上記したように治療的に有用なリポソームは種々の化合物を含有する。例えばリポソームはポリ(エチレングリコール)の脂質誘導体を含有してもよい(Allen et al., Biochim. Biophys. Acta 1150:9 (1993))。
【0183】
インビボ投与のために使用される製剤は無菌でなければならない。これは、無菌ろ過膜でろ過することにより容易に達成される。
【0184】
持続放出調製物を調製してもよい。持続放出調製物の適当な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスがあり、このマトリックスは成型物、例えばフィルムまたはマイクロカプセルでもよい。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とガンマエチル−L−グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸グリコール酸共重合体、例えばルプロンデポ(Lupron Depot)(登録商標)(乳酸−グリコール酸共重合体と酢酸ロイプロリドからなる注射用微小球)、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸がある。エチレン−酢酸ビニル及び乳酸−グリコール酸のようなポリマーは100日以上にわたる分子の放出を可能にするが、いくつかのヒドロゲルはより短い期間タンパク質を放出する。封入された抗体は長期間体内に留まるが、これらは37℃で水分に暴露されるため変性または凝集し、生物活性が喪失し免疫原性が変化する可能性がある。関与する機構に応じて、安定化のための合理的な方法を工夫することができる。例えば凝集機構がチオ−ジスルフィド結合交換による分子内S−S結合形成によることがわかれば、安定化はスルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液を凍結乾燥し、水分含量を調節し、適切な添加物を使用し、そして具体的なポリマーマトリックス組成物を開発することにより行われる。
【0185】
他の剤形も当業者により工夫され、例えばAnsel and Popovich、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第5版(Lea and Febiger 1990)、Gennaro(編)、Remington's Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack publishing Company、1995)、及びRanade and Hollinger、Drug Delivery Systems(CRC Press、1996)に記載されている。
【0186】
例えば医薬組成物は、ヒト化IL−31抗原結合分子又はIL−31アンタゴニスト(例えばIL−31ポリペプチドに結合する抗体または抗体フラグメント)を含有する容器を含むキットとして供給される。治療用ポリペプチドは、単回または多回投与用の注射溶液の形で、または注射前に復元される無菌粉末の形で提供される。あるいはこのようなキットは、治療用ポリペプチドの投与のための乾燥粉末分散器、液体エアゾル剤発生器、またはネブライザーを含んでよい。
【0187】
本発明を、以下の非限定例によりさらに説明する。
【実施例】
【0188】
ヒト化可変領域配列の測定
マウス抗ヒトIL−31モノクローナル抗体は、2006年5月8日出願の同時係属米国特許出願第11/430,066号(米国特許公報第2006−02752960号)に記載されている。マウス抗ヒトIL−31モノクローナル抗体の可変領域のアミノ酸配列は、2007年9月4日出願の同時係属米国特許出願第11/850,006号、及び本出願人のPCT出願US07/77555号(2007年9月4日出願)に記載されている。これらのアミノ酸を、本明細書に記載のヒト化配列の出発物質として使用した。具体的にはマウス抗ヒトIL−31抗体配列は、クローン番号292.12.3.1のハイブリドーマ由来である。
【0189】
マウスCDR領域を有するヒトIgGフレームワークからなるキメラ抗体が作成されるように、クローン292.12.3.1のCDR領域をコードするヌクレオチドを、ヒトIgGをコードするcDNAベクター中にクローン化した。キメラ抗体中の個々のアミノ酸を最適化して、高品質のモノクローナル抗体の特徴(結合親和性、安定性、及び均一性)を得た。各抗体の3次元モデルを作成し、ヒト化可変領域とCDR領域を測定した。
【0190】
ヒト化マウス抗ヒトIL−31重鎖及び軽鎖可変領域を含有する構築体を、半抗体の生成を阻害するように241位(カバト(Kabat)番号付け)にSerからProへの変異を有するヒトIgG4定常領域に融合させた。構築体をHEK2923細胞中で発現させ、プロテインAカラムで精製した後、緩衝液をPBSに交換した。結合親和性をビアコア(Biacore)により測定した。力価はBAF増殖アッセイとNHKstat3リン酸化アッセイにより測定した。生物物理的特性(例えば、均一性、凝集、及び折り畳み安定性)を評価した。
【0191】
HEK293細胞中でのヒトaIL−31抗原結合分子の発現
すべての実験法は、製造業者の説明書に従って行った。抗IL−31抗体cDNAをGeneart(http://www.Geneart.com)に注文し、発現プラスミドpTT5中にサブクローン化した。抗体軽鎖(LC)と重鎖(HC)を独立したプラスミドで維持した。pTT5はYves Durocher(Biotechnology Research Institute, National Research Council Canada)から使用許可を得た。pTT5プラスミドは以下の文献で性状解析されている:Durocher et al. NAR 2002; 及びPham et al. Biotechn. Bioeng. 2003。
【0192】
HEK293−6Eトランスフェクション用のプラスミドを得るために、抗IL−31抗体をコードするプラスミドを、TOP10 大腸菌(E. coli)細胞(カタログ番号C4040−06、Invitrogen, Taastrup, Denmark)中に化学的に形質転換し、プラスミド精製カラム(カタログ番号27144、Qiagen, Ballerup, Denmark)により単離した。DNA technology(http://www.DNA-technology.dk)からのプライマーとDpn1消化物(カタログ番号200518、Clontech via Medinova Scientific A/S, Glostrup, Denmark)を用いてPCRにより、部位特異的アミノ酸交換を行った。MWG-biotech(http://www.mwg-biotech.com/html/all/index.ph)でプラスミドを配列決定した。
【0193】
HEK293−6E細胞を、293Fectinプロトコール(カタログ番号12347019、Invitrogen, Taastrup, Denmark)に記載されたようにトランスフェクトした。簡単に説明すると、15μgのLCと15μgのHCプラスミドとを1mlのOpti−MEM(カタログ番号31985−062、Gibco/Invitrogen, Taastrup, Denmark)で希釈し、1mlのOpti−MEMで希釈した40μlの293Fectinと混合した。標準的トランスフェクションのために、3000万個のHEK293−6E細胞をペレット化し、28mlのFreestyle培地(カタログ番号12338、Gibco/Invitrogen, Taastrup, Denmark)に再懸濁し、次に2mlのプラスミドミックスを加えた。次に細胞を37℃、8%CO2で攪拌(125rpm)しながら6日間インキュベートし、次にペレット化し、上清をサンプリングした。
【0194】
ビアコア(Biacore)で測定したヒト化IL−31抗原結合分子の結合親和性
序論
表面プラズモン共鳴(SPR)分析を使用してリアルタイムに、タンパク質相互作用を追跡することができる。この試験では我々は、組換えヒトIL−31(hIL−31)に対する親和性について抗IL−31モノクローナル抗体を性状解析するために、ビアコア(Biacore)3000とビアコア(Biacore)T100装置でSRP分析を行った。
【0195】
センサーチップ表面上のカルボキシメチル化デキストラン膜(CM5)に遊離アミン基を介して共有結合したモノクローナル抗体を用いて、直接結合法を使用して親和性試験を行った。組換えhIL−31を種々の濃度で注入し、次にセンサーチップ表面に一定流の緩衝液で解離時間とした。この実験デザインを使用して、固定化モノクローナル抗体へのhIL−31の結合は1:1結合と見なされ、1つのhIL−31分子が1つの抗体結合部位に結合する。相互作用の動力学パラメータは、1:1相互作用ラングミュア(langmuir)フィッティングモデルを使用して計算することができる。
【0196】
方法
精製したモノクローナル抗体を、CM5型センサーチップ上の個々のフローセルに固定化した。固定化は、標準的アミン結合法を使用して、500共鳴単位(Resonance Units)(RU)の固定化レベルを目指して行った。抗体を10mM NaAc(pH4.5)で1〜5μg/mlに希釈した。
【0197】
HPS−EP(pH7.4)(10mMヘペス、150mM NaCl、3mM EDTA、及び0.005%ポリソルベートP20)を、ランニング緩衝液、及び組換えhIL−31(hIL−31、BHK産生、A1277F、zcytor17lig CEE)の希釈液として使用した。hIL−31を3倍希釈シリーズで、333.3nM〜1.4nMで試験した。結合(注入)は4分で、次に20分の解離(洗浄)時間。流速は50μl/分である。実験を25℃で行った。流速30μl/分で10mMグリシン−塩酸(pH1.8)又は1M蟻酸の30秒パルスの注入により、表面の再生を行った。フローセル#1固定化抗体を含まず、バックグランドとバルクを引くために使用した。すべての実験は三重測定で行った。
【0198】
得られる動力学パラメータの内部標準化のために、すべての実験で「親」マウスモノクローナル抗体を含めた。
【0199】
動力学パラメータは、1:1ラングミュアフィッティングモデルを使用して、データの全体的フィッティングにより計算した。データを物質移動限界について調べた後、動力学パラメータを計算した。いくつかの実験でRmaxを局所的にフィッティングし、RI定数は0であった。
【0200】
実験はビアコア(Biacore)3000とT100装置で行った。データは、Biaeval 4.1とビアコア(Biacore)T100評価ソフトウェアを使用して評価した。データは後述の表2に示す。このアッセイでいくつかのクローンは、親株と同様の親和性を示した。
【表2】

【0201】
BAF増殖アッセイにより測定したヒト化IL−31抗原結合分子の力価
A.培地と緩衝液
培養培地:グルタマックス(Glutamax)(SKN, NN)、10%熱不活性化FBS、1%P/S(BioWhitaker、カタログ番号DE17−602E)、0.5mg/ml ジェネティシン(Geneticin)(GIBCO、カタログ番号10131−019)、100μg/ml ゼオシン(Zeocin)(Invitrogen 45−0430)、1ng/ml IL3(TriChem ApS、カタログ番号213−13)、2μg/ml ピューロマイシン(Puromycin)(Sigma-Aldrich、P7255)を有するRPMI1640。
【0202】
アッセイ培地:グルタマックス(Glutamax)(SKN, NN)、10%熱不活性化FBS、1%P/S(BioWhitaker、カタログ番号DE17−602E)、0.5mg/ml ジェネティシン(Geneticin)(GIBCO、カタログ番号10131−019)、100μg/ml ゼオシン(Zeocin)(Invitrogen 45−0430)、2μg/mlピューロマイシン(Puromycin)(Sigma-Aldrich、P7255)を有するRPMI1640。
【0203】
アラマーブルー(alamarBlue)色素(BioScource, Dal1100)を、増殖を評価するのに使用する。
【0204】
B.抗体、細胞、及びサイトカイン
ヒト抗IL−31モノクローナル抗体をNovo Nordiskで製造し、Novo Nordisk(Copenhagen, Denmark)で精製した。hIL−31RαとhOSMRBの遺伝子でトランスフェクトしたKZS134−BAF3細胞株として、BAF−3(hIL−31R)細胞をZymoGenetics, Inc.(Seattle, WA)から受け取った。組換えヒトIL−31(C108S、米国特許公報第2006−0228329号に記載されている)、ZymoGenetics, Inc.により大腸菌(E. coli)で産生。MW 18kDa。
【0205】
C.増殖アッセイ
1.刺激アッセイ
BAF−3(hIL−31R)細胞をアッセイ培地で完全に洗浄して、残存IL3を除去した。次に細胞を96ウェルマイクロタイタープレート(平ウェルビュープレート、Packard cat.S00190)に104細胞/ウェルで接種する。hIL−31の連続希釈物(10-9M〜10-15M)をウェルに加え、細胞を含むがhIL−31を含まない追加のウェルを陰性対照とする。細胞を5%CO2で37℃で3日間培養する。培養期間の最後に6時間に、10μlのアラマーブルーを各ウェルに加える。分光蛍光光度計(bmg POLARstar+ Galaxy)で励起555−12nmと蛍光590nmで、細胞の蛍光強度を測定する。阻害分析のために、一定濃度のhIL−31を使用して細胞を刺激する。この濃度は、増殖アッセイの最大刺激の約90%(これは、我々のところでは10-10M hIL20を意味する)に基づいて選択する。
【0206】
2.阻害アッセイ
洗浄BAF−3(hIL−31R)細胞の10×104細胞/ウェルをマイクロタイターウェル中のアッセイ培地に接種する。10−10M(最終濃度)のhIL−31を各ウェルに加える(ただし、陰性対照として使用するいくつかのウェルは細胞のみを有する)。抗体の連続希釈物(すなわち、100μgと2倍)を、すでに細胞とサイトカインとを含むウェルに加える(ただし、陽性対照として使用するいくつかのウェルは細胞+hIL−31のみを有する)。細胞、サイトカイン、及び抗体の混合物を100μl/wで5%CO2で37℃で72時間インキュベートする。最後の6時間のインキュベーションは、10μl/wのアラマーブルーを含む。分光蛍光光度計(bmg POLARstar+ Galaxy)で励起555−15nmと蛍光590nmで、プレートの蛍光強度を測定する。曲線を引き、力価(IC50)をPrism4(GraphPad PRISM software Inc.)を使用して計算する。データを以下の表3に示す。このアッセイでいくつかのクローンは、親株と同様の親和性を示した。
【表3】

【0207】
NHKstat3リン酸化アッセイにより測定したヒト化IL−31抗原結合分子の力価
正常なヒトケラチン細胞の培養とSTAT3リン酸化アッセイ:
腹部の皮膚からの正常なヒトケラチン細胞(NHK)をBiopredic Int.(Rennes, France)から得て、Cascade Biologics(Portland, OR)のHKGSキットを補足したEpilife培地で増殖させた。HBSS、トリプシン−EDTA、及びトリプシン中和試薬を含有するDetach Kitを細胞を採取するために使用し、Promocell(Heidelberg, Germany)から得た。平底96ウェルプレート(Nunc, Roskilde, Denmark)中の組換えヒトIL−31でNHKを15分間刺激して、STAT3リン酸化をして、サイトカインのEC50を決定した。NHK溶解物を、Cell Signaling Technology(Danvers, MA)からのPathScan Phospho-STAT3サンドイッチELISAキットで、製造業者の説明書に従って測定した。次に抗体の連続希釈物をNHKに加えた後、組換えヒトIL−31のEC80で15分間刺激することにより、各中和抗体のIC50を測定した。マウスIgG1(R & D Systems, Minneapolis, MN)とヒトIgG4(Sigma-Aldrich, Saint Louis, MO)をイソタイプ対照抗体として使用した。
【0208】
ヒトIL−31に対する抗体の力価
【0209】
ヒトIL−31に対する各抗体について、IC50値(nM)を表4に示す。各実験について、XL Fitソフトウェアで測定されるZ’因子を示す。組換えヒトIL−31のEC80で得られた刺激指数を示す。いくつかのクローンは、このアッセイで親の力価又は許容される力価と同様の力価を示した。
【表4】

【0210】
以上より、例示目的で本発明の具体例を記載したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく種々の修飾が可能であることは理解されるであろう。すなわち本発明は、添付の特許請求の範囲以外によっては限定されない。
【図1a】

【図1b】

【図1c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL−31に結合する単離された抗体又は抗体フラグメントであって、
a)それぞれ配列番号1、2、及び3のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号1、4、及び3のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2、及びCDR3を含むヒト化重鎖可変ドメインと;
b)それぞれ配列番号5、6、及び7のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2、及びCDR3を含むヒト化軽鎖可変ドメイン
とを含んでなる、前記抗体又は抗体フラグメント。
【請求項2】
a)前記ヒト化重鎖可変ドメインが、
i)それぞれ配列番号8(FR1)、9(FR2)、10(FR3)、及び11(FR4)のアミノ酸配列;
ii)それぞれ配列番号12(FR1)、13(FR2)、14(FR3)、及び15(FR4)のアミノ酸配列;
iii)それぞれ配列番号12(FR1)、13(FR2)、16(FR3)、及び15(FR4)のアミノ酸配列
よりなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR1、FR2、FR3、及びFR4を含み、かつ
b)前記ヒト化軽鎖可変ドメインが、
i)それぞれ配列番号17(FR5)、18(FR6)、19(FR7)、及び20(FR8)のアミノ酸配列;
ii)それぞれ配列番号17(FR5)、18(FR6)、21(FR7)、及び20(FR8)のアミノ酸配列
よりなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR5、FR6、FR7、及びFR8を含む、請求項1に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項3】
前記ヒト化重鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号8(FR1)、9(FR2)、10(FR3)、及び11(FR4)のアミノ酸配列からなるフレームワーク領域FR1、FR2、FR3、及びFR4を含み、かつ前記ヒト化軽鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号17(FR5)、18(FR6)、19(FR7)、及び20(FR8)のアミノ酸配列からなるフレームワーク領域FR5、FR6、FR7、及びFR8を含む、請求項2に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項4】
前記ヒト化重鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号12(FR1)、13(FR2)、14(FR3)、及び15(FR4)のアミノ酸配列からなるフレームワーク領域FR1、FR2、FR3、及びFR4を含み、かつ前記ヒト化軽鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号17(FR5)、18(FR6)、19(FR7)、及び20(FR8)のアミノ酸配列からなるフレームワーク領域FR5、FR6、FR7、及びFR8を含む、請求項2に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項5】
前記ヒト化重鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号12(FR1)、13(FR2)、14(FR3)、及び15(FR4)のアミノ酸配列からなるフレームワーク領域FR1、FR2、FR3、及びFR4を含み、かつ前記ヒト化軽鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号17(FR5)、18(FR6)、21(FR7)、及び20(FR8)のアミノ酸配列からなるフレームワーク領域FR5、FR6、FR7、及びFR8を含む、請求項2に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項6】
前記FR1(配列番号8又は配列番号12)の29位のアミノ酸がロイシンであり、かつ前記FR3(配列番号14又は配列番号16)の32位のアミノ酸がフェニルアラニンである、請求項2〜5のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項7】
前記FR7(配列番号19又は配列番号21)の15位のアミノ酸がチロシンである、請求項6に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項8】
前記FR3(配列番号14又は配列番号16)の8位のアミノ酸がリジンである、請求項7に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項9】
前記FR3(配列番号14又は配列番号16)の8位のアミノ酸がリジンである、請求項6に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項10】
前記抗体が、以下の:
a)ヒトIgG1定常ドメイン;
b)ヒトIgG2定常ドメイン;
c)ヒトIgG3定常ドメイン;
d)ヒトIgG4定常ドメイン;
e)ヒトIgM定常ドメイン;
f)ヒトIgE定常ドメイン;及び
g)ヒトIgA定常ドメイン;
よりなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項11】
前記フラグメントが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント;ダイアボディ;線状抗体;1本鎖抗体分子;モノボディ;及び抗体フラグメントから形成される多重特異的抗体よりなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の抗体フラグメント。
【請求項12】
前記抗体又は抗体フラグメントがPEGを含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメントを含んでなる医薬組成物。
【請求項14】
以下の:
a)配列番号46のアミノ酸配列からなる軽鎖と、配列番号47のアミノ酸配列からなる重鎖とを含む抗体;
b)配列番号48のアミノ酸配列からなる軽鎖と、配列番号49のアミノ酸配列からなる重鎖とを含む抗体;及び、
c)配列番号50のアミノ酸配列からなる軽鎖と、配列番号51のアミノ酸配列からなる重鎖とを含む抗体
からなる群から選択される単離された抗体。
【請求項15】
ヒトIL−31に結合する単離された抗体又は抗体フラグメントであって、以下の:
a)それぞれ配列番号1と3のアミノ酸配列を有するCDR1とCDR3、並びにAIYPGDGDTRYSXaa1Xaa2FXaa3G(配列番号22)(ここでXaa1はグルタミン又はプロリンであり、Xaa2はセリン又はリジンであり、そしてXaa3はグルタミン又はリジンである)のアミノ酸配列を有するCDR2を、含んでなるヒト化重鎖可変ドメイン[ここで、当該ヒト化重鎖可変ドメインは、
1)それぞれ配列番号8(FR1)、9(FR2)、10(FR3)、及び11(FR4)のアミノ酸配列;
2)それぞれ配列番号12(FR1)、13(FR2)、14(FR3)、及び15(FR4)のアミノ酸配列;
3)それぞれ配列番号12(FR1)、13(FR2)、16(FR3)、及び15(FR4)のアミノ酸配列;
よりなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR1、FR2、FR3、及びFR4を含み、そしてここで、FR1(配列番号8又は配列番号12)の29位のアミノ酸はリジンであり、FR3(配列番号14又は配列番号16)の32位のアミノ酸はフェニルアラニンである]と、
b)それぞれ配列番号5(CDR1)、6(CDR2)、及び7(CDR3)のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2、及びCDR3を含んでなるヒト化軽鎖可変ドメイン[ここで、当該ヒト化軽鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号17、18、19、及び20のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるか、又はそれぞれ配列番号17、18、21、及び20のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR5、FR6、FR7、及びFR8を含み、ここでFR7(配列番号19又は配列番号21)の15位のアミノ酸はチロシンである]
とを、含んでなる、前記抗体又は抗体フラグメント。
【請求項16】
配列番号22のXaa1、Xaa2、及びXaa3が、以下の:
a)Xaa1がグルタミンであり、Xaa2がリジンであり、Xaa3がリジンである;
b)Xaa1がプロリンであり、Xaa2がセリンであり、Xaa3がグルタミンである;及び
c)Xaa1がグルタミンであり、Xaa2がリジンであり、Xaa3がグルタミンである
よりなる群から選択される、請求項15に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項17】
FR3(配列番号14又は配列番号16)の8位のアミノ酸がロイシンである、請求項15に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項18】
前記抗体が、
a)ヒトIgG1定常ドメイン;
b)ヒトIgG2定常ドメイン;
c)ヒトIgG3定常ドメイン;
d)ヒトIgG4定常ドメイン;
e)ヒトIgM定常ドメイン;
f)ヒトIgE定常ドメイン;及び
g)ヒトIgA定常ドメイン;
よりなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項15〜17ののいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項19】
前記フラグメントが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント;ダイアボディ;線状抗体;1本鎖抗体分子;モノボディ;及び抗体フラグメントから形成される多重特異的抗体よりなる群から選択される、請求項15〜18のいずれか一項に記載の抗体フラグメント。
【請求項20】
前記抗体又は抗体フラグメントがPEGを含んでなる、請求項15〜19のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメントを含んでなる医薬組成物。
【請求項22】
哺乳動物の炎症を治療する方法であって、ヒトIL−31に結合する抗体又は抗体フラグメントを投与することを含み、ここで当該抗体又は抗体フラグメントが、以下の:
a)それぞれ配列番号1、2、及び3のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号1、4、及び3のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2、及びCDR3を含むヒト化重鎖可変ドメインと;
b)配列番号5、6、及び7のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2、及びCDR3を含むヒト化軽鎖可変ドメイン、
を含んでなる、前記方法。
【請求項23】
哺乳動物の掻痒症を治療する方法であって、ヒトIL−31に結合する抗体又は抗体フラグメントを投与することを含み、ここで当該抗体又は抗体フラグメントが、以下の:
a)それぞれ配列番号1、2、及び3のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号1、4、及び3のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2、及びCDR3を含むヒト化重鎖可変ドメインと;
b)それぞれ配列番号5、6、及び7のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2、及びCDR3を含むヒト化軽鎖可変ドメイン、
を含んでなる方法。
【請求項24】
ヒトIL−31に結合する単離された抗体又は抗体フラグメントであって、以下の:
a)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
b)配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
c)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
d)配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
e)配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
f)配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
g)配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
h)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
i)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
j)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
k)配列番号35のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
l)配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
m)配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
n)配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
o)配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
p)配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
q)配列番号38のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;
r)配列番号39のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変ドメイン;
s)配列番号40のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
t)配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
u)配列番号42のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
v)配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
w)配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
x)配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
y)配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン;
z)配列番号45のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化重鎖可変ドメインと、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するヒト化軽鎖可変ドメイン
よりなる群から選択されるヒト化重鎖可変ドメインとヒト化軽鎖可変ドメインとを含んでなる、前記単離された抗体又は抗体フラグメント。
【請求項25】
前記抗体が、以下の:
a)ヒトIgG1定常ドメイン;
b)ヒトIgG2定常ドメイン;
c)ヒトIgG3定常ドメイン;
d)ヒトIgG4定常ドメイン;
e)ヒトIgM定常ドメイン;
f)ヒトIgE定常ドメイン;及び
g)ヒトIgA定常ドメイン;
よりなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項24に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項26】
前記フラグメントが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント;ダイアボディ;線状抗体;1本鎖抗体分子;モノボディ;及び抗体フラグメントから形成される多重特異的抗体よりなる群から選択される、請求項24又は25に記載の抗体フラグメント。
【請求項27】
前記抗体又は抗体フラグメントがPEGを含んでなる、請求項24〜26のいずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項28】
哺乳動物の炎症を治療するための薬剤の製造におけるヒトIL−31に結合する抗体又は抗体フラグメントの使用であって、前記抗体又は抗体フラグメントが、以下の:
a)それぞれ配列番号1、2、及び3のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号1、4、及び3のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2、及びCDR3を含むヒト化重鎖可変ドメインと;
b)配列番号5、6、及び7のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2、及びCDR3を含むヒト化軽鎖可変ドメイン、
を含んでなる、前記使用。
【請求項29】
哺乳動物の掻痒症を治療するための薬剤の製造におけるヒトIL−31に結合する抗体又は抗体フラグメントの使用であって、前記抗体又は抗体フラグメントが、以下の:
a)それぞれ配列番号1、2、及び3のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号1、4、及び3のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2、及びCDR3を含むヒト化重鎖可変ドメインと;
b)配列番号5、6、及び7のアミノ酸配列からなるCDR1、CDR2、及びCDR3を含むヒト化軽鎖可変ドメイン、
を含んでなる、前記使用。

【公表番号】特表2011−506302(P2011−506302A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536489(P2010−536489)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067024
【国際公開番号】WO2009/071696
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(505222646)ザイモジェネティクス, インコーポレイテッド (72)
【Fターム(参考)】