説明

IPネットワークの経路障害監視システム及び経路障害監視方法並びに経路障害監視ホスト及びそのプログラム

【課題】障害等の何らかの理由により監視ホストが送信した監視対象ホストへの監視パケットに対する応答パケットが返却されない場合に往路と復路のどちらの経路が通信断となっているかを特定する。
【解決手段】監視対象ホストと第1の経路及び第2の経路で接続され、前記監視対象ホストとの経路障害を監視する監視ホストが、前記監視対象ホストに対して、前記第1の経路を往路及び復路とするマルチキャスト通信を行うマルチキャスト監視パケットを送信し、前記第2の経路に障害が発生していた場合であっても監視パケットの応答を受信可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPネットワークにおける死活監視による障害経路の特定に関する。
【背景技術】
【0002】
IPネットワークで監視ホストと監視対象ホストの間の経路が正常であることを確認するための方法として、ICMP(Internet Control Message Protocol)に準拠したパケットを監視対象のホストへユニキャストで送信し、監視対象ホストがユニキャストで応答することによって経路が正常であることを確認する、という方法が一般的である。
【0003】
以下に、ユニキャストによるパケット転送の仕組みについて詳細に説明する。
【0004】
IPネットワークでのパケット転送では、経路上に存在するルータが自装置内のユニキャストの経路情報からIPパケットのヘッダ情報に記載されている宛先IPアドレスと一致する経路を検索し、転送先のルータを特定する。
【0005】
ここで、ユニキャストとはパケットの宛先IPアドレスにネットワーク内で単一のアドレスを指定し、特定のホストに宛ててパケットを送信することを指す。
【0006】
また、ICMPはIP通信において、通信に関する情報の通知のためなどに一般的に使用されているプロトコルであり、ネットワークの疎通確認のためにICMP ECHO及びICMP ECHO REPLYが利用されている。なお、ICMPに関しては、技術の標準化を行う組織であるIETF(Internet Engineering Task Force)によってRFC(Request For Comment)792、“Internet Control Message Protocol“として詳細に公開されている。
【0007】
監視対象ホストがICMPの機能を有している場合、監視対象ホストに対してICMP ECHOを送信すると、ICMP ECHOを受信した監視対象ホストは送信元のホストに対してICMP ECHO REPLYを送り返す。
【0008】
送信元のホストは、監視対象ホストからのICMP ECHO REPLYを受信することにより、監視ホストと監視対象ホスト間の通信経路が正常であることを確認する。
【0009】
このような技術の一例が特許文献1及び特許文献2に規定されている。
【0010】
特許文献1には、設定変更に柔軟に対応するために所定の条件下で、監視パケットの送出を一時中止するという技術が記載されている。これにより管理者の負担を軽減することが可能となる。
【0011】
また、特許文献2には、主信号経路の状態監視を、ネットワークとのフレーム受け渡しを行う複数のルーティング部に分散して、同時並行して複数の主信号経路の状態監視を行えるようにし、主信号の処理性能への影響を抑制した効率的な主信号経路監視方法に関する記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−176268号公報
【特許文献2】特開2005−136678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したようにユニキャストによるパケット転送を行うことにより監視ホストと監視対象ホストの間の経路が正常であることを確認することが可能となる。もっとも、ユニキャストによる経路障害監視には以下のような問題があった。
【0014】
ユニキャストによる通信の場合、経路上に存在する各ルータが自装置内のユニキャスト経路情報と転送パケットの宛先IPアドレスから送信先を決定し、パケット転送を行う。よって、往路と復路が必ずしも同一の経路とならない仕組みとなっている。このため、往路及び復路の経路上のいずれかのルータが故障又は設定ミスにより通信断となった場合に応答パケットが返却されなくなり、障害の原因となるルータの特定が困難であるという問題があった。
【0015】
この問題に対応するために、経路の障害を特定する目的で転送ホップ数を限定してユニキャストパケットを送信し、応答が返却されないルータを特定し、障害箇所を特定するtracerouteが使用されることがある。しかし、tracerouteも往路・復路がユニキャストの通信であるため、復路側で障害となった場合は応答が返却されなくなり、障害箇所が特定できなくなるという問題があった。
【0016】
そこで、本発明は障害等の何らかの理由により監視ホストが送信した監視対象ホストへの監視パケットに対する応答パケットが返却されない場合に往路と復路のどちらの経路が通信断となっているかを特定することが可能な、IPネットワークの経路障害監視システム及び経路障害監視方法並びに経路障害監視ホスト及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の観点によれば、監視対象ホストと第1の経路及び第2の経路で接続され、前記監視対象ホストとの経路障害を監視する監視ホストにおいて、前記監視対象ホストに対して、前記第1の経路を往路及び復路とするマルチキャスト通信を行うマルチキャスト監視パケットを送信し、前記第2の経路に障害が発生していた場合であっても監視パケットの応答を受信可能にすることを特徴とする監視ホストが提供される。
【0018】
本発明の第2の観点によれば、監視対象ホストと、前記監視対象ホストを監視する監視ホストと、を有し、前記監視対象ホスト及び前記監視対象ホストを、第1の経路及び第2の経路で接続する経路障害監視システムにおいて、前記監視ホストが上記本発明の第1の観点により提供される監視ホストであり、前記監視対象ホストが、前記監視パケットを受信した場合、当該監視パケットの宛先アドレスと送信元アドレスを入れ替えて応答パケットを生成する、ことを特徴とする経路障害監視システムが提供される。
【0019】
本発明の第3の観点によれば、監視対象ホストと、前記監視対象ホストを監視する監視ホストと、を有し、前記監視対象ホスト及び前記監視対象ホストを、第1の経路及び第2の経路で接続する経路障害監視システムが行う経路障害監視方法において、前記監視ホストが、前記監視対象ホストに対して、前記第1の経路を往路及び復路とするマルチキャスト通信を行うマルチキャスト監視パケットを送信し、前記監視対象ホストが、前記マルチキャスト監視パケットを受信した場合、当該マルチキャスト監視パケットの宛先アドレスと送信元アドレスを入れ替えて応答パケットを生成し、前記第2の経路に障害が発生していた場合であっても監視パケットの応答を受信可能にすることを特徴とする経路障害監視方法が提供される。
【0020】
本発明の第4の観点によれば、監視対象ホストと第1の経路及び第2の経路で接続され、前記監視対象ホストとの経路障害を監視する監視ホストに組み込まれる監視プログラムにおいて、前記監視対象ホストに対して、前記第1の経路を往路及び復路とするマルチキャスト通信を行うマルチキャスト監視パケットを送信し、前記第2の経路に障害が発生していた場合であっても監視パケットの応答を受信可能にする監視ホストとしてコンピュータを機能させることを特徴とする監視プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、往路及び復路が同一となるようなマルチキャスト監視パケットを送信することから、障害等の何らかの理由により監視ホストが送信した監視対象ホストへの監視パケットに対する応答パケットが返却されない場合に往路と復路のどちらの経路が通信断となっているかを特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る監視ホスト及び監視対象ホストが適用されるネットワークシステムの基本的構成を表す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る監視ホストの基本的構成を表す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る監視対象ホストの基本的構成を表す図である。
【図4】本発明の実施形態におけるユニキャスト監視パケットの通信経路を表す図である。
【図5】本発明の実施形態におけるマルチキャスト監視パケットの通信経路を表す図である。
【図6】本発明の実施形態における復路マルチキャスト監視パケットの通信経路を表す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る経路障害の判定動作について表すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態において復路障害が発生している場合の監視パケットの通信可否を表す図である。
【図9】本発明の実施形態において往路障害が発生している場合の監視パケットの通信可否を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
まず、本発明の実施形態の概略を説明する。本発明の実施形態は、概略、ルータ装置等で構成されるIPネットワークにおいて、監視対象の死活監視を行う場合にPIM−SSMを使用して監視対象装置間の往路上にマルチキャスト通信経路を構築し、往路にユニキャスト通信・復路にマルチキャスト通信を使用した死活監視により、障害経路を特定する
というものである。
【0024】
以下、図1を参照し、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るネットワークの概略構成を表すブロック図である。
【0026】
図1を参照すると本実施形態は、監視ホスト100、第1のルータ200、監視対象ホスト300及び第2のルータ400を含む。各ホストは各ルータを介して相互に接続されている。また、各ホスト間は、各ルータを含んでIPネットワークとして実現されている。
【0027】
監視ホスト100は、経路障害を監視するホストである。一方、監視対象ホスト300は、監視ホスト100により監視対象とされるホストである。
【0028】
図2を参照すると、監視ホスト100は、パケット生成部101、通信部102及び分析部103を含む。
【0029】
パケット生成部は監視パケットを生成する。生成された監視パケットは通信部102を介して監視対象ホスト300に宛てて送信される。また、監視パケットを生成及び送信した旨は分析部103にも通知される。なお、監視パケットの具体的な内容については後述する。
【0030】
分析部103は、パケット生成部101から監視パケットを送信した旨を通知されると、この監視パケットに対する応答パケットを待つ。そして、通信部102を介して監視対象ホスト300からの監視パケットに対する応答パケットを受信する。また、受信結果に応じて障害の発生している経路が、何れの経路であるのかを分析する。
【0031】
次に、図3を参照すると、監視対象ホスト300は、パケット解析部301、通信部302及び要求応答部303を含む。
【0032】
パケット解析部301は、通信部302を介して監視ホスト100からの監視パケットを受信し、その内容を解析する。解析結果は要求応答部303に通知される。
【0033】
要求応答部303は、通知された解析結果に応じるための応答パケットを生成する。生成された応答パケットは通信部302を介して監視ホスト100に宛てて送信される。
【0034】
なお、上述した監視ホスト100及び監視対象ホスト300は、具体的にはどのような機器により実現されてもよい。汎用のサーバ装置や、PCにより実現されてもよく、本実施形態専用の装置により実現されてもよい。
【0035】
また、本発明の実施形態である監視ホスト100及び監視対象ホスト300は、ハードウェアにより実現することもできるが、コンピュータをその監視ホスト100及び監視対象ホスト300として機能させるためのプログラムをコンピュータがコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み込んで実行することによっても実現することができる。
【0036】
また、本発明の実施形態による経路障害監視方法は、ハードウェアにより実現することもできるが、コンピュータにその方法を実行させるためのプログラムをコンピュータがコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み込んで実行することによっても実現することができる。
【0037】
すなわち、汎用のサーバ装置等に本実施形態特有のプログラムを組み込み、演算処理装置がこのプログラムに従った演算処理によりハードウェアを制御することにより各部を実現することができる。
【0038】
第1のルータ200は監視ホスト100・監視対象ホスト300間の往路上の中間ルータであり、第2のルータ400は監視ホスト100・監視対象ホスト300間の復路上の中間ルータである。なお各ルータの構成は当業者によってよく知られているため詳細な説明を省略する。なお、今回は第1のルータ200及び第2のルータ400のみを図示しているが、これはあくまで説明の便宜のためである。本実施形態においてルータの台数は任意であり、台数に特に制限はない。また、IPネットワーク上にはルータ以外の構成要素が含まれていてもよい。また、IPネットワークは有線接続により実現されてもよいが、その一部又は全部が無線接続であってもよい。
【0039】
続いて、本実施形態の各経路においてやり取りされるパケットに関して説明する。
【0040】
ユニキャストに関しては、背景技術として説明したが、ユニキャストと異なるパケット転送方式としてマルチキャストによるパケット転送方式が存在する。ここで、マルチキャストとはパケットの宛先IPアドレスにマルチキャストアドレスを指定することで特定のグループに属する複数のホストに宛ててパケットを送信することを指す。例えば、PIM−SSM(Protocol Independent Multicast source-specific mode)は、マルチキャストの経路情報をユニキャストの経路情報を利用して構築するルーティングプロトコルである。なお、PIM−SSMに関してはIETFによりRFC4601”Protocol Independent Multicast-Sparse Mode (PIM-SM): Protocol Specification” として詳細に公開されている。また、SSMに関してはIETFによりRFC3569“An Overview of Source-Specific Multicast (SSM)” として詳細に公開されている。
【0041】
PIM−SSMに準拠する場合は、ユニキャストと同様に、経路上に存在するルータが自装置内のマルチキャストの経路情報からIPパケットのヘッダ情報に記載されている宛先IPアドレスと一致する経路を検索し、転送先のルータを特定する。
【0042】
そして、本実施形態では死活監視を行う場合に、一般的な宛先IPアドレスと送信元IPアドレスの両方にユニキャストIPアドレスを使用する監視パケット(以下、「ユニキャスト監視パケット」とする。)による疎通確認の他に、上記の課題を解決するための手段として、ユニキャスト通信に用いる往路のみを通信経路とする死活監視方式を使用することを特徴とする。
【0043】
具体的には、パケット生成部101がユニキャスト監視パケットを生成し、監視対象ホスト300へ宛てて送信する。この、ユニキャスト監視パケットに対する応答パケットが返信されてこない場合は、分析部103が返信されてこない旨をパケット生成部101に通知する。
【0044】
この場合にパケット生成部101は、往路のみを通信経路とするために、送信元IPアドレスをマルチキャストアドレスにしたICMP ECHOパケット(以下、「復路マルチキャスト監視パケット」とする。)を生成し、監視対象ホスト300に対してこの復路マルチキャスト監視パケットを送信する。
【0045】
一般的にICMP機能を有している装置では、ICMP ECHOパケットを受信した場合、その応答パケットであるICMP ECHO REPLYパケットを生成する際に宛先IPアドレスと送信元IPアドレスを入れ替えることによって、送信元へ応答を返却する。このため、復路マルチキャスト監視パケットは、往路ではユニキャスト通信の経路により監視対象ホストへ到達し、復路はマルチキャスト通信の経路により監視ホストへ返却されることを特徴とする。
【0046】
一般的にマルチキャスト通信は特定のグループに属する複数のホストにパケットを送信することを目的として用いられる。そのため、マルチキャスト通信を実現するための経路情報はユニキャスト通信に用いられる経路とは異なる情報として、各ルータ上で管理されている。本発明の実施形態では、マルチキャスト通信がユニキャスト通信と異なる経路により通信を行うという特徴を利用し、死活監視の通信経路のユニキャスト通信時での往路上に、復路マルチキャストパケットの復路としてマルチキャスト通信経路を構築する。
【0047】
本発明の実施形態に係る監視ホスト100・監視対象ホスト300間のマルチキャスト通信経路はPIM−SSMにより構築する。監視ホストはマルチキャスト受信要求を監視対象ホストに向かってユニキャスト経路上に隣接するルータに対して送信する。マルチキャスト受信要求を受信したルータは、PIM−SSMの動作規定に従い、各ルータのユニキャスト経路から監視対象ホストに向かって隣接するルータに対してPIM Joinと呼ばれるマルチキャスト受信要求を送信する。これにより、死活監視のユニキャスト通信時での往路上に監視対象ホストから監視ホストへのマルチキャスト通信経路を構築する。
【0048】
本発明の実施形態では、通常時は往路及び復路の疎通確認を行うために、一般的な技術と同様のユニキャストのみによる死活監視を監視100・監視対象ホスト300間で実施する。次に、ユニキャストによる死活監視において、監視対象ホストからユニキャストによるICMP ECHOの応答が受信できない場合は、往路及び復路上で障害が発生していると考えられる。そのため、監視ホスト100は送信するICMP ECHOの送信元IPアドレスをマルチキャストアドレスに変更し、復路マルチキャスト監視パケットによる監視に切り替える。すなわち、監視ホスト100・監視対象ホスト300間では、PIM−SSMにより、ユニキャスト通信の往路上にマルチキャスト経路を構築することで、復路がマルチキャストパケットとなるICMP ECHOの応答パケットの通信経路を、復路がユニキャストであるICMP ECHOの往路に限定する。
【0049】
そして、監視ホスト100が監視対象ホスト300から復路マルチキャスト監視パケットの応答を受信できる場合は、往路上に障害が発生していないことから復路上に障害が発生していると判断する。監視ホストが監視対象ホストから復路マルチキャスト監視パケットの応答を受信できない場合は、往路上に障害が発生していると判断することを特徴とする。
【0050】
次に、図4を参照して本実施形態のユニキャストの経路情報を説明する。今回の説明では、監視ホスト100の監視対象ホスト300に向かうネクストホップ(転送先)は第1のルータ200であり、監視対象ホスト300の監視ホスト100に向かうネクストホップは第2のルータ400である。
【0051】
よって、ユニキャストによる監視パケットは、監視ホスト100−第1のルータ200−監視対象ホスト300の経路で監視対象ホスト300に到達し、監視パケットの応答は監視対象ホスト300−第2のルータ400−監視ホスト100の経路で監視ホスト100に返却される。
【0052】
次に、図5を参照して本実施形態のマルチキャストの経路情報を説明する。
【0053】
マルチキャストの経路は、PIM−SSMを動作させることでユニキャストの経路情報から自動的に生成することができる。
【0054】
本監視に使用するマルチキャストグループを「G」とし、監視対象ホスト300のIPアドレスを「S」とした場合、監視ホスト100をマルチキャストグループ(S,G)の受信端末となるように設定する。
【0055】
監視ホスト100が(S,G)の受信端末となる場合、監視ホスト100の監視対象ホスト300に向かうユニキャストのネクストホップは第1のルータ200であるため、監視ホスト100は第1のルータ200に対して(S,G)のマルチキャスト受信要求を送信する。
【0056】
第1のルータ200は監視ホスト100からマルチキャスト受信要求を受信すると、監視対象ホスト300に対して(S,G)のマルチキャスト受信要求を転送する。これにより、監視対象ホスト300における(S,G)の転送先は第1のルータ200、第1のルータ200における(S,G)の転送先は監視ホスト100となり、監視対象ホスト300からG宛のマルチキャストパケットは監視対象ホスト300−第1のルータ200−100の経路で転送されるようになる。この様子を表す図が図5である。
【0057】
以上から、監視ホスト100から監視対象ホスト300への復路マルチキャスト監視パケットは100−第1のルータ200−監視対象ホスト300の経路で監視対象ホスト300に到達し、監視パケットの応答は監視対象ホスト300−第1のルータ200−100の経路で監視ホスト100に返却される。この様子を表す図が図6である。
【0058】
通常、監視ホスト100はユニキャストの監視パケットを監視対象ホスト300に送信する。経路100−第1のルータ200−監視対象ホスト300及び経路監視対象ホスト300−第2のルータ400−100が正常に通信可能である場合は、監視ホスト100に応答パケットが返却されるため、100−監視対象ホスト300間の往路及び復路の経路の正常性を確認できる。
【0059】
監視ホスト100に応答パケットが返却されない場合、監視ホスト100から送信元IPアドレスが監視用マルチキャストグループGに設定された復路マルチキャスト監視パケットを監視対象ホスト300に送信することにより、障害経路が往路もしくは復路であるかを特定する。
【0060】
図7のフローチャートを参照して、復路マルチキャスト監視パケットの応答の有無による障害経路の判断時の動作について説明する。
【0061】
まず、ユニキャスト監視が成功したかを判断する(ステップS11)。監視ホスト100がユニキャスト監視パケットの応答を受信可能な場合は、ユニキャスト監視が成功した判断できる(ステップS11においてYes)。この場合は往路及び復路の何れもが正常であると判断できる(ステップS12)。
【0062】
一方、ユニキャスト監視が成功しなかった場合は(ステップS11においてNo)、復路マルチキャスト監視が成功したかを判断する(ステップS13)。
【0063】
監視ホスト100が復路マルチキャスト監視パケットの応答を受信可能な場合は(ステップS13においてYes)、ユニキャスト監視パケットでの往路である、監視ホスト100−第1のルータ200−監視対象ホスト300に障害はないと判断することが可能となる。したがって、障害が発生したのはユニキャスト監視パケットでの復路である、監視対象ホスト300−第2のルータ400−100監視ホストであると判断する(ステップS14)。すなわち、図8に表されている状態であると判断できる。
【0064】
一方、監視ホスト100が復路マルチキャスト監視パケットの応答を受信できない場合は(ステップS13においてNo)、ユニキャスト監視パケットでの往路である、監視ホスト100−第1のルータ200−監視対象ホスト300に障害があると判断する(ステップS15)。すなわち、図9に表されている状態であると判断できる。
【0065】
以上説明した本実施形態は、ユニキャスト及びマルチキャストの通信が可能なIPネットワークにおいて、ホスト間の経路で障害が発生した場合に、往路と復路のどちらで障害が発生したのかを判断することが可能となる、という効果を奏する。
【0066】
また、上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0067】
更に、上記実施形態では、プログラムが、監視ホスト100及び監視対象ホスト300に予め記憶されているものとして説明した。しかし、コンピュータを、監視ホスト100及び監視対象ホスト300の全部又は一部として動作させ、あるいは、上述の処理を実行させるためのプログラムを、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto Optical Disk(Disc))BD(Blu-ray Disc)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、これを別のコンピュータにインストールし、上述の手段として動作させ、あるいは、上述の工程を実行させてもよい。
【0068】
さらに、インターネット上のサーバ装置が有するディスク装置等にプログラムを格納しておき、例えば、搬送波にプログラムを重畳させて、コンピュータにダウンロード等してプログラムを実行してもよい。
【0069】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0070】
(付記1) 監視対象ホストと第1の経路及び第2の経路で接続され、前記監視対象ホストとの経路障害を監視する監視ホストにおいて、
前記監視対象ホストに対して、前記第1の経路を往路及び復路とするマルチキャスト通信を行うマルチキャスト監視パケットを送信し、
前記第2の経路に障害が発生していた場合であっても監視パケットの応答を受信可能にすることを特徴とする監視ホスト。
【0071】
(付記2) 付記1に記載の監視ホストにおいて、
前記第1の経路を往路、前記第2の経路を復路としてユニキャスト通信を行うユニキャスト監視パケットを前記監視対象ホストに宛てて送信し、
前記ユニキャスト監視パケットに対する応答パケットが返信されてこない場合に、前記第1の経路を往路及び復路とするマルチキャスト通信を行うマルチキャスト監視パケットを前記監視対象ホストに宛てて送信し、
前記マルチキャスト監視パケットに対する応答パケットが受信できた場合は前記第2の経路に障害が発生していると判断し、前記マルチキャスト監視パケットに対する応答パケットが受信できなかった場合は前記第1の経路に障害が発生していると判断することを特徴とする監視ホスト。
【0072】
(付記3) 付記1又は2に記載の監視ホストにおいて、
前記マルチキャスト監視パケットは、送信元IPアドレスにマルチキャストアドレスを設定した監視パケットであり、
マルチキャスト通信の経路情報をユニキャスト通信の経路情報を利用して構築するルーティングプロトコルを用いてユニキャスト通信の往路上に構築した監視用のマルチキャスト経路を復路にすることを特徴とする監視ホスト。
【0073】
(付記4) 付記1乃至3の何れか1に記載の監視ホストにおいて、
当該監視ホストが監視に使用するマルチキャストグループを「G」とし、前記監視対象ホストのIPアドレスを「S」とした場合、当該監視ホストをマルチキャストグループ(S,G)の受信端末となるように設定したパケットを前記マルチキャスト監視パケットとして送信することを特徴とする監視ホスト。
【0074】
(付記5) 付記2乃至4の何れか1に記載の監視ホストにおいて、
前記ユニキャスト監視パケットに対する応答パケットが返信されてきた場合は前記第1の経路及び前記第2の経路の何れにも障害が発生していないと判断することを特徴とする監視ホスト。
【0075】
(付記6) 監視対象ホストと、前記監視対象ホストを監視する監視ホストと、を有し、前記監視対象ホスト及び前記監視対象ホストを、第1の経路及び第2の経路で接続する経路障害監視システムにおいて、
前記監視ホストが付記1乃至5の何れか1に記載の監視ホストであり、
前記監視対象ホストが、前記監視パケットを受信した場合、当該監視パケットの宛先アドレスと送信元アドレスを入れ替えて応答パケットを生成する、
ことを特徴とする経路障害監視システム。
【0076】
(付記7) 監視対象ホストと、前記監視対象ホストを監視する監視ホストと、を有し、前記監視対象ホスト及び前記監視対象ホストを、第1の経路及び第2の経路で接続する経路障害監視システムが行う経路障害監視方法において、
前記監視ホストが、前記監視対象ホストに対して、前記第1の経路を往路及び復路とするマルチキャスト通信を行うマルチキャスト監視パケットを送信し、
前記監視対象ホストが、前記マルチキャスト監視パケットを受信した場合、当該マルチキャスト監視パケットの宛先アドレスと送信元アドレスを入れ替えて応答パケットを生成し、
前記第2の経路に障害が発生していた場合であっても監視パケットの応答を受信可能にすることを特徴とする経路障害監視方法。
【0077】
(付記8) 監視対象ホストと第1の経路及び第2の経路で接続され、前記監視対象ホストとの経路障害を監視する監視ホストに組み込まれる監視プログラムにおいて、
前記監視対象ホストに対して、前記第1の経路を往路及び復路とするマルチキャスト通信を行うマルチキャスト監視パケットを送信し、
前記第2の経路に障害が発生していた場合であっても監視パケットの応答を受信可能にする監視ホストとしてコンピュータを機能させることを特徴とする監視プログラム。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、中・大規模なIPネットワークにおいて、通信断が発生した場合に障害発生箇所を絞り込むための障害監視プログラムといった用途に好適である。
【符号の説明】
【0079】
100 監視ホスト
101 パケット生成部
102 通信部
103 分析部
200 第1のルータ
300 監視対象ホスト
301 パケット解析部
302 通信部
303 要求応答部
400 第2のルータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象ホストと第1の経路及び第2の経路で接続され、前記監視対象ホストとの経路障害を監視する監視ホストにおいて、
前記監視対象ホストに対して、前記第1の経路を往路及び復路とするマルチキャスト通信を行うマルチキャスト監視パケットを送信し、
前記第2の経路に障害が発生していた場合であっても監視パケットの応答を受信可能にすることを特徴とする監視ホスト。
【請求項2】
請求項1に記載の監視ホストにおいて、
前記第1の経路を往路、前記第2の経路を復路としてユニキャスト通信を行うユニキャスト監視パケットを前記監視対象ホストに宛てて送信し、
前記ユニキャスト監視パケットに対する応答パケットが返信されてこない場合に、前記第1の経路を往路及び復路とするマルチキャスト通信を行うマルチキャスト監視パケットを前記監視対象ホストに宛てて送信し、
前記マルチキャスト監視パケットに対する応答パケットが受信できた場合は前記第2の経路に障害が発生していると判断し、前記マルチキャスト監視パケットに対する応答パケットが受信できなかった場合は前記第1の経路に障害が発生していると判断することを特徴とする監視ホスト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の監視ホストにおいて、
前記マルチキャスト監視パケットは、送信元IPアドレスにマルチキャストアドレスを設定した監視パケットであり、
マルチキャスト通信の経路情報をユニキャスト通信の経路情報を利用して構築するルーティングプロトコルを用いてユニキャスト通信の往路上に構築した監視用のマルチキャスト経路を復路にすることを特徴とする監視ホスト。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の監視ホストにおいて、
当該監視ホストが監視に使用するマルチキャストグループを「G」とし、前記監視対象ホストのIPアドレスを「S」とした場合、当該監視ホストをマルチキャストグループ(S,G)の受信端末となるように設定したパケットを前記マルチキャスト監視パケットとして送信することを特徴とする監視ホスト。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか1項に記載の監視ホストにおいて、
前記ユニキャスト監視パケットに対する応答パケットが返信されてきた場合は前記第1の経路及び前記第2の経路の何れにも障害が発生していないと判断することを特徴とする監視ホスト。
【請求項6】
監視対象ホストと、前記監視対象ホストを監視する監視ホストと、を有し、前記監視対象ホスト及び前記監視対象ホストを、第1の経路及び第2の経路で接続する経路障害監視システムにおいて、
前記監視ホストが請求項1乃至5の何れか1項に記載の監視ホストであり、
前記監視対象ホストが、前記監視パケットを受信した場合、当該監視パケットの宛先アドレスと送信元アドレスを入れ替えて応答パケットを生成する、
ことを特徴とする経路障害監視システム。
【請求項7】
監視対象ホストと、前記監視対象ホストを監視する監視ホストと、を有し、前記監視対象ホスト及び前記監視対象ホストを、第1の経路及び第2の経路で接続する経路障害監視システムが行う経路障害監視方法において、
前記監視ホストが、前記監視対象ホストに対して、前記第1の経路を往路及び復路とするマルチキャスト通信を行うマルチキャスト監視パケットを送信し、
前記監視対象ホストが、前記マルチキャスト監視パケットを受信した場合、当該マルチキャスト監視パケットの宛先アドレスと送信元アドレスを入れ替えて応答パケットを生成し、
前記第2の経路に障害が発生していた場合であっても監視パケットの応答を受信可能にすることを特徴とする経路障害監視方法。
【請求項8】
監視対象ホストと第1の経路及び第2の経路で接続され、前記監視対象ホストとの経路障害を監視する監視ホストに組み込まれる監視プログラムにおいて、
前記監視対象ホストに対して、前記第1の経路を往路及び復路とするマルチキャスト通信を行うマルチキャスト監視パケットを送信し、
前記第2の経路に障害が発生していた場合であっても監視パケットの応答を受信可能にする監視ホストとしてコンピュータを機能させることを特徴とする監視プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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