説明

IPネットワークシステムとその通信先変更方法

【課題】簡単な処理によりメディアフローの変更を行えるようにする。
【解決手段】音声ガイダンスメッセージの送信終了後に、ガイダンスサーバ301から発信側の端末101へ、トークンXXXを付加したセッション終了要求を送信し、しかるのち同一のトークンXXXを付加した新たなセッション確立要求を送信する。発信側の端末101は、上記トークンXXXを付加したセッション終了要求を受信すると、トークンXXXを保存すると共に、同一のトークンXXXが付加されたセッション確立要求が受信されるまで音声通信を保留する。そして、同一のトークンXXX付きのセッション確立要求が受信されると、上記保留状態を解除すると共にセッション確立応答をガイダンスサーバ301に向け返送する。ガイダンスサーバ301は、上記セッション確立応答を受信すると、着信側の端末102との間でセッション確立手順を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、SIP(Session Initiation Protocol)等のセッション制御プロトコルを用いて音声通信サービスを実現するIP(Internet Protocol)ネットワークと、このシステムで使用される通信先変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TISPAN等の標準化団体ではNGN(Next Generation Network)等の管理型のIPネットワークを用いた音声通信サービスが規定されている。管理型IPネットワーク(パケット網)において、従来の回線交換型と同様の音声通信サービスを実現するには、SIP等のセッション制御プロトコルを用いて通信品質の確保(帯域制御等)や端末間のメディアフローの設定が行われる。
【0003】
ところで、このような管理型のIPネットワークを用いた音声通信サービスにおいても、回線交換型の音声通信と同様に、音声案内を伴う付加サービスの実現が求められている。この種の付加サービスは、例えば、先ず発信側の通信端末に音声ガイダンスを送信して通信料金等に関する情報を発信者に通知し、発信者がこの情報を確認した後に、発信側の通信端末と着信側の通信端末との間を接続して両端末間で音声通信を可能とするものである。
【0004】
この種の付加サービスを実現するために従来提案されている方法は、例えば、先ず発信側の通信端末からのセッション確率要求に応じて、当該発信側の通信端末とガイダンスサーバとの間にセッションを確立することにより音声通信のためのメディアフローを設定する。次に、上記セッションを発信側の通信端末と着信側の通信端末との間に変更し、以後両通信端末間での音声通信を可能とするものとなっている(例えば、非特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ETSI ES 282 003 V3.3.1 (2009-03): Telecommunications and Internet converged Services and Protocols for Advanced Networking (TISPAN); Resource and Admission Control Sub-System (RACS): Functional Architecture
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来提案されている方法では、セッションを維持したまま通信の宛先を変更しようとすると、セッション制御サーバでメディアの情報や状態を保持したり、通信先を変更できなかった場合に変更前のメディアフローに戻す、いわゆるロールバックの仕組みを構築する等、複雑な処理が必要となる。
【0007】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、簡単な処理によりメディアフローの変更を行えるようにしたIPネットワークシステムとその通信先変更方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためにこの発明の一観点は、以下のような構成要素を備える。すなわち、ガイダンス装置から発信側の通信端末へ第1のセッションを使用して音声ガイダンス情報を送信した後、上記発信側の通信端末の通信先を上記ガイダンス装置から着信側の通信端末へ変更する際に、上記ガイダンス装置は、上記ガイダンス情報の送信終了後に、トークンを付加した上記第1のセッションの終了要求を上記発信側の通信端末に向け送信し、上記第1のセッションの終了要求に付加されるトークンと同一のトークンを付加した第2のセッションの確立要求を上記発信側の通信端末に向け送信する。これに対し、上記発信側の通信端末は、上記第1のセッションの終了要求を受信した場合に当該第1のセッションの終了要求に付加されたトークンと同一のトークンが付加された上記第2のセッションの確立要求を受信するまで、上記第1のセッションによる音声通信状態を保留する。そして、上記第1のセッションの終了要求に付加されたトークンと同一のトークンが付加された第2のセッションの確立要求を受信した場合に、上記保留の状態を解除すると共に、当該第2のセッションの確立応答を上記ガイダンス装置に向け返送する。また、上記ガイダンス装置は、上記発信側の通信端末から返送された上記第2のセッションの確立応答を受信した場合に、当該第2のセッションと関連付けされた第3のセッションの確立要求を着信側の通信端末に向け送信するようにしたものである。
【0009】
したがって、発信側の通信端末の通信先をガイダンス装置から着信側の通信端末へ変更する際に、ガイダンス情報の送信に使用した第1のセッションは一旦終了され、新たに第2のセッションが確立されて端末間の音声通信に使用される。このため、同一のセッションを維持したまま通信先を変更する場合に必要とされた、IPネットワーク上のセッション制御サーバでメディアの情報や状態を保持したり、通信先を変更できなかった場合に変更前のメディアフローに戻すいわゆるロールバックの仕組みを構築する等の複雑な処理が不要となる。
【0010】
しかも、第1のセッションの終了時にトークンが発行され、このトークンが新規の第2のセッション確立要求に付加されて送信されるので、発信側の通信端末では上記トークンにより旧い第1のセッションと新たな第2のセッションとを関連づけることができ、これにより音声通信の保留状態をどの新規セッションで解除したらよいかを正確に判断することが可能となる。すなわち、セッション間の引き継ぎを正確に行うことが可能となる。
【0011】
また、この発明の一観点は以下のような実施態様を備えることを特徴とする。
第1の実施態様は、ガイダンス情報の送信終了後に、先ずトークンが付加された第1のセッションの終了要求を発信側の通信端末に向け送信し、IPネットワークにより上記第1のセッションが解放された後に、上記第1のセッションの終了要求に付加されたトークンと同一のトークンが付加された第2のセッションの確立要求を、上記発信側の通信端末に向け送信するものである。
このようにすると、IPネットワークでは、第1のセッションが解放された後に、新たに第2のセッションが確立される。このため、音声ガイダンス用のメディアストリームの通信帯域と、通話用のメディアストリームの通信帯域がIPネットワーク上に同時に確保される状況は回避される。したがって、IPネットワークの通信帯域に制約がある場合でも、通信リソースを確保することが可能となる。
【0012】
第2の実施態様は、ガイダンス装置がトークンを発行する際に、IPネットワーク内においてユニークなトークンを発行するものである。
このようにすると、発信側の通信端末は旧い第1のセッションと新たな第2のセッションとを常に確実に関連づけることが可能となる。
【0013】
第3の実施態様は、IPネットワークに設置された制御サーバにおいて、第1のセッションの終了要求に付加されたトークンと同一のトークンが付加された第2のセッション確立要求を受信した場合に、第1のセッションによる通信と第2のセッションによる通信とを同一のセッションによる通信と見なして課金処理を実行するものである。
このようにすると、制御サーバでは新たな第2のセッションによる通信を新規通信と誤解釈しないようになり、これにより誤った課金処理が実行されないようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
すなわちこの発明によれば、簡単な処理により通信先の変更を可能にしたIPネットワークシステムとその通信先変更方法を提供することを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態に係わるIPネットワークシステムの概略構成図である。
【図2】図1に示したシステムで使用されるガイダンスサーバの機能構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示したシステムで使用される通信端末の機能構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示したシステムにおける通信先変更処理の手順と処理内容を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係わるIPネットワークシステムの概略構成図である。このシステムは、NGN等の管理型のIPネットワークNWに、制御サーバ401を接続すると共に、転送ノード202を介してガイダンスサーバ301を接続している。そして、上記制御サーバ401によるセッション制御の下で、端末101,102間にメディアフローを構築し、これにより上記端末101,102に対し音声案内を伴う音声通信サービスを提供するようにしたものである。端末101,102は、それぞれ転送ノード201,203を介してIPネットワークNWに接続される。なお、図1では説明の便宜上、転送ノード201〜203をIPネットワークNWとは独立する構成要素として記載したが、転送ノード201〜203はIPネットワークNWに含まれるものとしてもよい。
【0017】
制御サーバ401は、SIP等のセッション制御プロトコルに従いネットワーク制御や課金制御等を行う。ネットワーク制御には、セッションの確立とその切断処理、転送ノード201〜203に対する必要通信帯域の確保とその解放処理が含まれる。転送ノード201〜203は例えばルータやスイッチ、ゲートウエイにより構成される。
【0018】
ところで、上記ガイダンスサーバ301は以下のように構成される。図2はその機能構成を示すブロック図である。
すなわち、ガイダンスサーバ301は、主制御部3011と、通信インタフェース部3012と、セッション制御部3013と、ガイダンス音声送信部3014と、記憶部3015と、トークン発行部3016を備えている。なお、これらのブロックのうち記憶部3015を除く各ブロックの機能は、いずれも中央処理部(CPU;Central Processing Unit)にプログラムを実行させることにより実現される。
【0019】
通信インタフェース部3012は、セッション制御に係わる制御データの送受信と、音声ガイダンスメッセージの送信を行う。セッション制御部3013は、主制御部3011の制御の下で、セッション制御プロトコルに従いセッション確立要求及びセッション終了要求の送受信と、セッション確立応答及びセッション終了応答の送受信を制御する。
【0020】
記憶部3015には、音声案内サービスの種類に対応する音声ガイダンスメッセージが予め記憶されている。例えば、フリーダイヤルやナビダイヤルに対する音声ガイダンスメッセージが記憶されている。ガイダンス音声送信部3014は、主制御部3011の制御の下で、要求された音声案内サービスに対応する音声ガイダンスメッセージを上記記憶部3015から選択的に読み出し、この読み出された音声ガイダンスメッセージを上記通信インタフェース部3012から発信側の端末に向け送信させる。
トークン発行部3016は、主制御部3011の指示に従いトークンを発行する。このトークンはIPネットワークNWにおいてユニークとなるようにコードが設定される。
【0021】
主制御部3011は、この発明に係わる制御機能として以下の機能を有する。
(1) 発信側の端末からのセッション確立要求に応じて当該発信側の端末との間にメディアフローが設定された状態で、上記ガイダンス音声送信部3014から音声ガイダンスメッセージを送信させる機能。
(2) 上記音声ガイダンスメッセージの送信終了後に、トークン発行部3016からトークンを発行させ、このトークンを付加したセッション終了要求を上記セッション制御部3013から発信側の端末に向けて送信させる機能。
(3) 上記セッション終了要求の送信後に、当該セッション終了要求に付加したトークンと同じトークンを付加した新たなセッション確立要求を上記セッション制御部3013から発信側の端末に向けて送信させる機能。
(4) 上記新たなセッション確立要求に対するセッション確立応答が上記セッション制御部3013で受信された場合に、上記新たなセッション確立要求で使用したセッションIDと同一のセッションIDを使用するセッション確立要求を、上記セッション制御部3013から着信側の端末に向けて送信させる機能。
【0022】
一方、端末101,102は、SIP機能を有する固定電話機又は携帯電話機からなり、以下のように構成される。図3はその機能構成を示すブロック図である。なお、端末101,102の構成は同一なので、ここでは端末101について説明する。
すなわち、端末101は主制御部1011と、通信インタフェース部1012と、セッション制御部1013と、音声送信受信部1014と、保留制御部1015と、トークン照合部1016を備え、さらに入出力インタフェース部1017と、音声インタフェース部1010を備えている。
【0023】
通信インタフェース部1012は、IPネットワークNWとの間でセッション制御に係わる制御データの送受信と、音声通話データの送信を行う。セッション制御部1013は、主制御部1011の制御の下で、セッション制御プロトコルに従いセッション確立要求及びセッション終了要求の送受信と、セッション確立応答及びセッション終了応答の送受信を制御する。音声送信受信部1014は、例えば音声コーデックを有し、音声通話データの符号復号化処理を行う。
【0024】
トークン照合部1016は、トークンが付加されたセッション終了要求が受信された場合に、当該セッション終了要求に付加されたトークンを保存する。そして、トークンが付加された新たなセッション確立要求が受信された場合に、当該新たなセッション確立要求に付加されているトークンを上記保存されたトークンと照合し、その照合結果を主制御部1011に通知する。保留制御部1015は、主制御部1011の制御の指示に従い、音声通信を保留する。
【0025】
入出力インタフェース部1017には、入力デバイス1018及び表示デバイス1019が接続される。入力デバイスは、キーボード又はダイヤルキーパッドからなる。表示デバイス1019は、液晶ディスプレイからなる。入出力インタフェース部1017は、上記入力デバイス1018により入力された操作データを取り込んで主制御部1011に通知すると共に、主制御部1011から出力された表示データを表示デバイス1019に表示させる。音声インタフェース部1010はマイクロホンとスピーカを有し、ユーザの送話音声の入力と、受話音声の出力を行う。
【0026】
主制御部1011は、この発明に係わる制御機能として以下の機能を有する。
(1) 上記入力デバイス1018において発信操作が行われたことが上記入出力インタフェース部1017から通知された場合に、上記セッション制御部1013からセッション確立要求を送信させる機能。
(2) 上記セッション確立要求の送信に対し、ガイダンスサーバ301との間にメディアフローが設定されると、上記音声送信受信部1014と音声インタフェース部1010との間を接続して音声ガイダンスメッセージの受信再生動作を行わせる機能。
(3) 上記トークン照合部1016によるトークンの照合結果に基づいて、トークンが付加されたセッション終了要求を受信してから、当該トークンと同一のトークンが付加されたセッション確立要求が受信されるまでの間、上記保留制御部1015により音声通信を保留させる機能。
【0027】
次に、以上のように構成されたシステムの動作を説明する。図4はその動作シーケンスを示す図である。
なお、ここでは端末101を発信側、端末102着信側とし、先ず発信側の端末101にガイダンスサーバ301に接続して音声ガイダンスメッセージを送信したのち、通信先を着信側の端末102に変更して端末101,102間の音声通話を可能とする場合を例にとって説明する。
【0028】
(1)音声案内サービスのためのセッション確立手順の実行
端末101は、端末102への通信接続サービスに対してセッションID(SID)を1に設定したセッション確立要求を送信する。このとき、宛先アドレスには、音声案内サービスを利用する場合の端末102のアドレスを指定する。例えば、電話番号であれば通常の電話番号ではなくフリーダイヤルやナビダイヤルの番号を指定する。なお、SIPの場合、宛先アドレスはINVITEメッセージにおけるToヘッダのSIP URIに挿入される。上記セッション確立要求は、図4に示すように制御サーバ401を経由してガイダンスサーバ301に転送される。このとき制御サーバ401は、転送ノード201,202に対して通信帯域の予約を行い、これにより通信リソースを確保する。
【0029】
上記セッション確立要求を受信するとガイダンスサーバ301は、発信側の端末101に対するメディアフローを構築し、セッション確立応答(SID=1)を制御サーバ401に返送する。制御サーバ401は、転送ノード201,202に対して先に確保した通信リソースを用いて、発信側の端末101とガイダンスサーバ301との間のメディアフローを設定する。そして、発信側の端末101へ上記セッション確立応答(SID=1)を転送する。
【0030】
かくして、発信側の端末101からガイダンスサーバ301までのメディアフローが完成し、以後ガイダンスサーバ301から発信側の端末101へ音声ガイダンスメッセージが送られる。音声ガイダンスメッセージとしては、例えばナビダイヤルの場合、「ナビダイヤルでおつなぎします。この通話は○秒ごとに、おおよそXX円の通話料金でご利用になれます。」が用いられる。
【0031】
(2)音声案内用セッションの終了手順の実行
ガイダンスサーバ301は、予め設定されたガイダンスメッセージの送信を終了し、かつそれに伴う必要な課金処理等が終了すると、上記音声案内用のセッションの終了手順を以下のように実行する。
すなわち、ガイダンスサーバ301は図4に示すように、先ずトークンXXXを発行する。このとき、トークンXXXはIPネットワークNWにおいてユニークなものに設定される。ガイダンスサーバ301は、上記トークンXXXを付加したセッション終了要求(SID=1)を生成し、このトークンXXXが付加されたセッション終了要求(SID=1)を上記発信側の端末101に向け送信する。このセッション終了要求(SID=1)は、制御サーバ401を経由して発信側の端末101に転送される。このとき制御サーバ401は、上記セッション終了要求(SID=1)を受信すると、転送サーバ201,202に対する当該セッションに関するメディアフローを切断し、通信帯域の予約を破棄して通信リソースを解放する。
【0032】
発信側の端末101は、上記トークンXXXが付加されたセッション終了要求(SID=1)を受信すると、当該セッション終了要求に付加されたトークンXXXをトークン照合部1016で抽出して保存し、かつ当該トークンXXXと同一のトークンXXXが付加されたセッション確立要求を受信するまでの間、保留制御部1015において音声通話状態を保留する。
【0033】
(3)発信側の端末101との間における新たなセッション確立手順の実行
上記セッション終了要求(SID=1)の送信を終了するとガイダンスサーバ301は、続いて図4に示すように新たなセッション確立要求(セッションID=2)を生成し、発信側の端末101に向け送信する。このとき、当該新たなセッション確立要求(SID=2)には、上記セッション終了要求に付加したトークンXXXと同一のトークンXXXが付加される。このトークンXXXが付加された新たなセッション確立要求(SID=2)は、制御サーバ401を経由して発信側の端末101へ転送される。このとき制御サーバ401では、転送ノード201に対し通信帯域の予約を行って通信リソースを確保するためのネットワーク制御が実行される。
【0034】
端末101は、上記トークンXXXが付加された新たなセッション確立要求(SID=2)を受信すると、先ずトークン照合部1016により、いま受信した新たなセッション確立要求(SID=2)に付加されたトークンXXXを、先に受信したセッション終了要求に付加されていたトークンXXXと照合する。そして、この照合の結果、両トークンXXXが一致すると、保留制御部1015による音声通信の保留を解除する。また、それと共に転送ノード201へのメディアフローを構築し、セッション確立応答(SID=2)を制御サーバ401へ返送する。
【0035】
制御サーバ401は、上記セッション確立応答(SID=2)を受信すると、転送ノード201に対して先に確保した通信リソースを用いて、発信側の端末101と転送ノード201との間に新たなメディアフローを設定する。そして、上記セッション確立応答(SID=2)をガイダンスサーバ301へ転送する。
【0036】
(4)着側の端末102との間のセッション確立手順の実行
上記発信側の端末101から返送されたセッション確立応答(SID=2)を受信すると、ガイダンスサーバ301は図4に示すように着信側の端末102に向けてセッション確立要求を送信する。このとき、セッションIDとしては、上記(3)で述べた発信側の端末101との間に新たなセッションを確立するために送信したセッション確立要求で用いたセッションID=2を使用する。なお、セッションIDとして、他のセッションIDを使用してもよいが、この場合には上記発信側の端末101へ送信したセッション確立要求で用いたセッションID=2と、着信側の端末102へ送信したセッション確立要求で用いたセッション(例えばID=3)とを互いに関連づけて保持しておく。上記セッション確立要求(SID=2)は、制御サーバ401を経由して着信側の端末102に転送される。このとき制御サーバ401では、転送ノード203に対して通信帯域の予約を行って通信リソースを確保するためのネットワーク制御が実行される。
【0037】
着信側の端末102は、上記セッション確立要求(SID=2)を受信すると、転送ノード203へのメディアフローを構築し、セッション確立応答(SID=2)を制御サーバ401へ返送する。上記セッション確立応答(SID=2)が返送されると制御サーバ401では、転送ノード203に対して先に確保した通信リソースを用いて、端末102と転送ノード203との間にメディアフローを設定するためのネットワーク制御が実行される。このネットワーク制御が終了すると、制御サーバ401からガイダンスサーバ301へ上記セッション確立応答(SID=2)が転送される。
【0038】
かくして、上記発信側の端末101と着信側の端末102との間にメディアフローが構築され、以後このメディアフローを介して発信側の端末101と着信側の端末102との間で音声通信が可能となる。
【0039】
なお、制御サーバ401は、音声案内用のセッション終了要求に付加されたトークンXXXと同一のトークンXXXが付加された新たなセッション確立要求を受信した場合に、上記音声案内用のセッションによる通信と上記新たなセッションによる通信とを同一のセッションによる通信と見なして課金処理を行う。
【0040】
以上詳述したようにこの実施形態では、次のような手順により通信先の変更を行っている。すなわち、音声ガイダンスメッセージの送信終了後に、ガイダンスサーバ301から発信側の端末101へ、先ずトークンXXXを付加したセッション終了要求(SID=1)を送信し、しかるのち上記セッション終了要求に付加されたトークンXXXと同一のトークンXXXを付加した新たなセッション確立要求(SID=2)を送信する。これに対し発信側の端末101は、上記トークンXXXを付加したセッション終了要求(SID=1)を受信すると、このセッション終了要求(SID=1)に付加されたトークンXXXを保存すると共に、当該トークンXXXと同一のトークンXXXが付加された新たなセッション確立要求(SID=2)が受信されるまで音声通信状態を保留する。そして、上記同一のトークンXXXが付加された新たなセッション確立要求(SID=2)が受信されると、上記保留状態を解除すると共に、セッション確立応答(SID=2)をガイダンスサーバ301に向け返送する。ガイダンスサーバ301は、発信側の端末101から返送されたセッション確立応答(SID=2)を受信すると、当該セッション確立応答(SID=2)と同じセッションIDを持つセッション確立要求(SID=2)を着信側の端末102に向け送信し、着信側の端末102との間にメディアフローを設定するようにしている。
【0041】
したがって、発信側の端末101の通信先をガイダンスサーバ301から着信側の端末102へ変更する際に、音声ガイダンスメッセージの送信に使用したセッションは一旦終了され、代わって新たなセッションが確立される。このため、制御サーバ401において、メディアの情報や状態を保持したり、通信先を変更できなかった場合に変更前のメディアフローに戻すいわゆるロールバックの仕組みを構築する等の複雑な処理を行う必要がなくなる。
【0042】
しかも、セッション終了時にトークンXXXが発行され、このトークンXXXがセッション終了要求に付加された発信側の端末101に通知されると共に、新規のセッション確立要求にも付加されて発信側の端末101へ送信されるので、発信側の端末101では上記トークンXXXにより旧いセッションと新たなセッションとを確実に関連づけることができ、これにより音声通信の保留状態をどの新規セッションで解除したらよいかを正確に判断することが可能となる。
【0043】
また、ガイダンスサーバ301から発信側の端末101へは、先ずセッション終了要求が送信され、しかるのち新たなセッション確立要求が送信されるので、制御サーバ401では音声案内用のセッションが切断された後に、新たなセッションが確立される。このため、音声案内用のメディアストリームの通信帯域と、端末間の音声通話用メディアストリームの通信帯域がIPネットワーク上に同時に確保される状況は回避される。したがって、IPネットワークの通信帯域に制約がある場合でも、通信リソースを確保することが可能となる。
【0044】
さらに、ガイダンスサーバ301は、トークンを発行する際にIPネットワーク内においてユニークなトークンを発行するようにしたので、発信側の端末101は旧いセッションと新たなセッションとをより確実に関連づけることが可能となる。
【0045】
さらに、制御サーバ401では、音声案内用のセッションによる通信と新たなセッションによる通信とを同一のセッションによる通信と見なして課金処理を行うことができるので、新たなセッションによる通信を新規通信と誤解釈しないようになり、これにより誤った課金処理が実行されないようにすることができる。
【0046】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、ガイダンスサーバ301は、音声ガイダンスメッセージの送信終了後、先ずセッション終了要求を送信し、しかるのち新たなセッション確立要求を送信するようにした。すなわち、旧いセッション終了手順を先に実行し、その後で新たなセッション確立手順を実行するようにした。しかし、これに限定されるものではなく、例えば新たなセッション確立手順を実行した後、旧いセッション終了手順を実行することも可能である。さらに、着信側の端末102との間にセッションを確立する手順を先に実行し、続いて上記発信側の端末101との間のセッション終了手順及びセッション確立手順を実行するようにしてもよい。
【0047】
また、前記実施形態では発信側の端末101と着信側の端末102との間に直接メディアフローを設定したが、発信側の端末101と着信側の端末102との間にガイダンスサーバ301を経由してメディアフローを設定するようにしてもよい。このようにすると、発信側の端末101と着信側の端末102との間で伝送される通話音声データ及び画像データをガイダンスサーバ301において記録することができる。そして、この記録された通話音声データ及び画像データを、後に端末からガイダンスサーバ301に対しアクセスすることにより再生することが可能となる。
【0048】
その他、ガイダンスサーバ及び各端末の種類やその構成、制御手順等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0049】
NW…ネットワーク、101,102…端末、201,202,203…転送サーバ、301…ガイダンスサーバ、401…制御サーバ、1011…端末の主制御部、1012…端末の通信インタフェース部、1013…端末のセッション制御部、1014…音声送信受信部、1015…保留制御部、1016…トークン照合部、1017…入出力インタフェース部、1018…入力デバイス、1019…表示デバイス、1010…音声インタフェース部、3011…ガイダンスサーバの主制御部、3012…ガイダンスサーバの通信インタフェース部、3013…ガイダンスサーバのセッション制御部、3014…ガイダンス音声送信部、3015…記憶部、3016…トークン発行部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPネットワークを使用してセッション制御プロトコルによる音声通信サービスを実行するIPネットワークシステムであって、
前記IPネットワークに接続可能な複数の通信端末と、
前記IPネットワークに接続されるガイダンス装置と
を具備し、
前記ガイダンス装置は、
前記複数の通信端末のうち発信側となる通信端末との間に前記IPネットワークによる第1のセッションが確立された状態で、当該発信側の通信端末へ音声ガイダンス情報を送信する手段と、
前記ガイダンス情報の送信終了後にトークンを発行する手段と、
前記第1のセッションの終了要求を、前記発行されたトークンを付加した状態で前記発信側の通信端末に向け送信する手段と、
第2のセッションの確立要求を、前記発行されたトークンを付加した状態で前記発信側の通信端末に向け送信する手段と、
前記第2のセッションと関連付けされた第3のセッションの確立要求を、前記複数の通信端末のうち着信側となる通信端末に向け送信する手段と
を備え、
前記発信側の通信端末は、
前記第1のセッションの終了要求を受信した場合に、当該第1のセッションの終了要求に付加されたトークンと同一のトークンが付加された前記第2のセッションの確立要求を受信するまで、前記第1のセッションによる音声通信状態を保留する手段と、
前記第1のセッションの終了要求に付加されたトークンと同一のトークンが付加された第2のセッションの確立要求を受信した場合に、前記保留の状態を解除すると共に、当該第2のセッションの確立応答を前記ガイダンス装置に向け返送する手段と
を備えることを特徴とするIPネットワークシステム。
【請求項2】
前記ガイダンス装置は、前記ガイダンス情報の送信終了後、先ず前記トークンが付加された第1のセッションの終了要求を前記発信側の通信端末に向け送信し、前記IPネットワークにより前記第1のセッションが解放された後に、前記第1のセッションの終了要求に付加されたトークンと同一のトークンが付加された第2のセッションの確立要求を、前記発信側の通信端末に向け送信することを特徴とする請求項1記載のIPネットワークシステム。
【請求項3】
前記トークンを発行する手段は、前記IPネットワーク内においてユニークなトークンを発行することを特徴とする請求項1又は2記載のIPネットワークシステム。
【請求項4】
前記IPネットワークは、前記第1、第2及び第3のセッションを確立及び終了する制御を実行する制御サーバを備え、当該制御サーバは、前記第1のセッションの終了要求に付加されたトークンと同一のトークンが付加された第2のセッション確立要求を受信した場合に、前記第1のセッションによる通信と前記第2のセッションによる通信とを同一のセッションによる通信と見なして課金処理を実行することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のIPネットワークシステム。
【請求項5】
IPネットワークを使用してセッション制御プロトコルによる音声通信サービスを実行するIPネットワークシステムで使用される通信先変更方法であって、
ガイダンス装置が、発信側の通信端末との間に前記IPネットワークによる第1のセッションが確立された状態で、当該発信側の通信端末へ音声ガイダンス情報を送信する過程と、
前記ガイダンス装置が、前記ガイダンス情報の送信終了後に、トークンを付加した前記第1のセッションの終了要求を、前記発信側の通信端末に向け送信する過程と、
前記ガイダンス装置が、前記第1のセッションの終了要求に付加されるトークンと同一のトークンを付加した第2のセッションの確立要求を、前記発信側の通信端末に向け送信する過程と、
前記発信側の通信端末が、前記第1のセッションの終了要求を受信した場合に、当該第1のセッションの終了要求に付加されたトークンと同一のトークンが付加された前記第2のセッションの確立要求を受信するまで、前記第1のセッションによる音声通信状態を保留する過程と、
前記発信側の通信端末が、前記第1のセッションの終了要求に付加されたトークンと同一のトークンが付加された第2のセッションの確立要求を受信した場合に、前記保留の状態を解除すると共に、当該第2のセッションの確立応答を前記ガイダンス装置に向け返送する過程と、
前記ガイダンス装置が、前記発信側の通信端末から返送された前記第2のセッションの確立応答を受信した場合に、当該第2のセッションと関連付けされた第3のセッションの確立要求を着信側の通信端末に向け送信する過程と
を具備することを特徴とするIPネットワークシステムの通信先変更方法。
【請求項6】
前記ガイダンス装置が、前記ガイダンス情報の送信終了後、先ず前記トークンが付加された第1のセッションの終了要求を前記発信側の通信端末に向け送信し、前記IPネットワークにより前記第1のセッションが解放された後に、前記第1のセッションの終了要求に付加されたトークンと同一のトークンが付加された第2のセッションの確立要求を、前記発信側の通信端末に向け送信することを特徴とする請求項5記載のIPネットワークシステムの通信先変更方法。
【請求項7】
前記ガイダンス装置は、前記IPネットワーク内においてユニークなトークンを発行することを特徴とする請求項5又は6記載のIPネットワークシステムの通信先変更方法。
【請求項8】
前記IPネットワークが、前記第1のセッションの終了要求に付加されたトークンと同一のトークンが付加された第2のセッション確立要求を受信した場合に、前記第1のセッションによる通信と前記第2のセッションによる通信とを同一のセッションによる通信と見なして課金処理を実行する過程を、備えることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載のIPネットワークシステムの通信先変更方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−288217(P2010−288217A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142485(P2009−142485)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】