説明

IPファクシミリ装置

【課題】通信先のファクシミリ装置の通信方式を効率よく記憶でき、当該通信方式を用いて回線網ファクシミリ装置に比して利便性が向上された手動送信を実行可能なIPファクシミリ装置を提供する。
【解決手段】ファクシミリ通信の通信速度が予め定められた速度閾値よりも高速である場合はIPファクシミリ装置を示す通信方式情報と、一方、速度閾値よりも低速である場合は回線網ファクシミリ装置を示す通信方式情報と、当該通信先の宛先情報とを対応付けて記憶する。IP電話機による音声通信中にファクシミリ通信の開始指示が受け付けられた場合に、過去のファクシミリ通信時に記憶された当該通信先の宛先情報に対応する通信方式情報が、回線網ファクシミリ装置を示すときは当該音声通信の終了後ファクシミリ通信させ、IPファクシミリ装置を示すときは当該音声通信を継続してファクシミリ通信させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPネットワークを介してファクシミリ通信及び音声通信可能なIPファクシミリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に示すように、ITU−T勧告T.30に準拠して電話回線網を介してファクシミリ通信を行う、例えばG3(Group3)ファクシミリ装置等の回線網ファクシミリ装置は、電話回線網を介した音声通信中(通話中)に、当該通信先(通話先)に対するファクシミリ送信の開始指示を入力し、当該音声通信後(通話後)に当該入力されていた開始指示に従ってファクシミリ通信を開始する手動送信機能を有している。
【0003】
これと同様にして、ITU−T勧告T.38に準拠してIP(Internet Protocol)ネットワークを介してファクシミリ通信を行うIPファクシミリ通信装置においても、相手先との通話中に、IPネットワークを介したファクシミリ通信の開始指示を入力し、当該通話後に当該入力されていた開始指示に従ってファクシミリ通信を開始する手動送信機能が提案されている。
【0004】
また、IPファクシミリ装置では、当該IPファクシミリ装置に備えられたIP電話機によって通話しながら、つまり、IPネットワークを介して音声信号を示すデータパケットを送受信することによって音声通信しながら、IPネットワークを介して画像データを示すデータパケットを送受信するファクシミリ通信を行うことが可能であるため、回線網ファクシミリ装置における手動送信機能に比して、音声通信とファクシミリ通信とを同時に実行できる点で利便性が向上された手動送信機能を有することが可能である。
【0005】
ただし、IPファクシミリ装置において回線網ファクシミリ装置に備えられた電話機との間で通話している場合に、当該通話先の回線網ファクシミリ装置に画像データを示すデータパケットを送信する手動送信を行うときは、当該通話先の回線網ファクシミリ装置において当該通話のために電話回線網が利用されているため、IPファクシミリ装置から画像データを示すデータパケットを送信したとしても、当該回線網ファクシミリ装置は、IPネットワークに接続された電話回線網を介して当該送信されたデータパケットを受信することはできなかった。
【0006】
つまり、回線網ファクシミリ装置との間でIPファクシミリ装置における手動送信を行う場合には、当該回線網ファクシミリ装置に対する通話を終了した後に、ファクシミリ通信を行う必要があった。
【0007】
そこで、通信先のファクシミリ装置の宛先情報に対応付けて当該ファクシミリ装置がIPファクシミリ装置及び回線網ファクシミリ装置のうちの何れのファクシミリ装置であるかを示す通信方式情報をユーザーが予め記憶部に記憶しておき、IPファクシミリ装置において手動送信を行う場合に、当該記憶部に記憶されている通信先のファクシミリ装置の宛先情報に対応付けられた通信方式情報がIPファクシミリ装置又は回線網ファクシミリ装置の何れを示すものであるかに応じて、手動送信する際の通話を継続するか終了するかを即座に決定することが考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−336161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の場合、通信先のファクシミリ装置の宛先情報と対応付けて、当該ファクシミリ装置がIPファクシミリ装置及び回線網ファクシミリ装置のうちの何れのファクシミリ装置であるかを示す通信方式情報をユーザーが予め記憶部に記憶するための手間が必要であった。
【0010】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、通信先のファクシミリ装置の通信方式情報を効率よく記憶することができ、当該記憶された通信方式情報を用いて回線網ファクシミリ装置における手動送信に比して利便性が向上された手動送信を実行することができるIPファクシミリ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、IPネットワークを介してファクシミリ通信するIPファクシミリ通信部と、
前記IPファクシミリ通信部によるファクシミリ通信の通信先としてファクシミリ装置の宛先情報の入力を受け付ける宛先情報受付部と、
前記ファクシミリ装置に備えられた電話機との間でIPネットワークを介して音声通信するIP電話機と、
前記宛先情報受付部で受け付けられた宛先情報が示すファクシミリ装置との間での前記IPファクシミリ通信部によるファクシミリ通信の開始指示を受け付ける開始指示受付部と、
前記IPファクシミリ通信部によるファクシミリ通信の通信速度を計測する通信速度計測部と、
通信先のファクシミリ装置の宛先情報と、当該通信先のファクシミリ装置が電話回線網を介してファクシミリ通信する回線網ファクシミリ装置及びIPネットワークを介してファクシミリ通信するIPファクシミリ装置のうちの何れのファクシミリ装置であるかを示す通信方式情報と、を対応付けて記憶する通信方式記憶部と、
前記通信速度計測部で計測されたファクシミリ通信の通信速度が予め定められた速度閾値よりも高速である場合は、当該通信先のファクシミリ装置の宛先情報とIPファクシミリ装置であることを示す通信方式情報とを対応付けて前記通信方式記憶部に記憶し、前記通信速度計測部で計測されたファクシミリ通信の通信速度が前記速度閾値よりも低速である場合は、当該通信先のファクシミリ装置の宛先情報と回線網ファクシミリ装置であることを示す通信方式情報とを対応付けて前記通信方式記憶部に記憶する通信方式記憶制御部と、
前記IP電話機による音声通信中に、前記開始指示受付部によってファクシミリ通信の開始指示が受け付けられた場合に、過去のファクシミリ通信時に前記通信方式記憶制御部によって前記通信方式記憶部に記憶された、当該ファクシミリ通信の通信先の宛先情報に対応する通信方式情報が回線網ファクシミリ装置を示すときは、当該音声通信の終了後、前記IPファクシミリ通信部にファクシミリ通信させ、
通信方式記憶部に記憶されている、当該ファクシミリ通信の通信先の宛先情報に対応する通信方式情報がIPファクシミリ装置を示すときは、当該音声通信を継続し、前記IPファクシミリ通信部にファクシミリ通信させる手動送信制御部と、
を備えるIPファクシミリ装置である。
【0012】
この発明では、IP電話機による音声通信中にファクシミリ通信の開始指示が受け付けられた場合に、過去のファクシミリ通信時に通信方式記憶制御部によって通信方式記憶部に記憶された通信先の宛先情報に対応する通信方式情報に基づいて、通信先が回線網ファクシミリ装置であるときは、当該音声通信の終了後にIPファクシミリ通信部によってファクシミリ通信が行われるが、通信先がIPファクシミリ装置であるときは、当該音声通信を継続したまま、IPファクシミリ通信部によってファクシミリ通信が行われる。
【0013】
つまり、過去のファクシミリ通信時に通信方式記憶制御部によって通信先の宛先情報に対応する通信方式情報が通信方式記憶部に記憶されるため、通信先のファクシミリ装置の宛先情報と、当該通信先のファクシミリ装置が回線網ファクシミリ装置及びIPファクシミリ装置のうちの何れのファクシミリ装置であるかを示す通信方式情報とを、ユーザーが予め通信方式記憶部に記憶する手間を回避することができ、効率よく通信先の宛先情報に対応する通信方式情報を記憶することができる。
【0014】
また、IP電話機による音声通信中にファクシミリ通信の開始指示が受け付けられた場合に、通信方式記憶制御部によって通信方式記憶部に記憶された、通信先の宛先情報に対応する通信方式情報を用いて、通信先がIPファクシミリ装置であると判断されたときには、音声通信を継続したままファクシミリ通信を行うことができるため、回線網ファクシミリ装置における手動送信に比して、音声通信とファクシミリ通信とを同時に実行できる点で利便性が向上された手動送信を実行することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のIPファクシミリ装置であって、前記開始指示受付部は、更に、前記宛先情報受付部で宛先情報が受け付けられることがないまま、前記IPファクシミリ通信部によるファクシミリ通信の開始指示を受け付け、
前記手動送信制御部は、前記IP電話機による音声通信中に、前記宛先情報受付部で宛先情報が受け付けられることがないまま、前記開始指示受付部によってファクシミリ通信の開始指示が受け付けられた場合は、当該音声通信先の電話機を備えたファクシミリ装置の宛先情報を、当該ファクシミリ通信の通信先の宛先情報として設定する。
【0016】
この発明では、手動送信制御部は、IP電話機による音声通信中に、宛先情報受付部で宛先情報が受け付けられることがないまま、開始指示受付部によってファクシミリ通信の開始指示が受け付けられた場合には、当該音声通信先の電話機を備えたファクシミリ装置の宛先情報をファクシミリ通信の通信先の宛先情報として設定する。
【0017】
このため、当該IPファクシミリ装置で手動送信を行う場合であって、音声通信先の電話機を備えたファクシミリ装置をファクシミリ通信の通信先とするときは、当該ファクシミリ装置の宛先情報を入力する手間を軽減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、通信先のファクシミリ装置の通信方式情報を効率よく記憶することができ、当該記憶された通信方式情報を用いて回線網ファクシミリ装置における手動送信に比して利便性が向上された手動送信を実行することができるIPファクシミリ装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るIPファクシミリ装置を含むネットワーク通信システムの構成図である。
【図2】IPファクシミリ装置の内部構成の概略を示すブロック図である。
【図3】IPファクシミリ装置における手動送信の前半の動作を示すフローチャートである。
【図4】IPファクシミリ装置における手動送信の後半の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、ネットワーク通信システム9は、IP(Internet Protocol)ネットワーク3にIPファクシミリ装置1が接続され、また、中継装置5を介してIPネットワーク3に接続された電話回線網4に、本発明に係る回線網ファクシミリ装置としてのG3(Group3)ファクシミリ装置2が接続されて構成されている。
【0021】
ネットワーク通信システム9において、IPファクシミリ装置1と当該IPファクシミリ装置1とは異なるIPファクシミリ装置1との間では、IPネットワーク3を介してITU−T勧告T.38に準拠したファクシミリ通信が行われ、IPファクシミリ装置1とG3ファクシミリ装置2との間では、IPネットワーク3と中継装置5と電話回線網4とを介してITU−T勧告T.30に準拠したファクシミリ通信が行われる。尚、中継装置5では、IPネットワーク3で送受信されるデータパケットと電話回線網4で送受信される音声信号とが相互に変換される。
【0022】
また、IPファクシミリ装置1に備えられた電話機と当該IPファクシミリ装置1とは異なるIPファクシミリ装置1に備えられた電話機との間では、IPネットワーク3を介して通話中の音声を示すデータパケットを送受信することによって音声通信(通話)が行われ、IPファクシミリ装置1に備えられた電話機とG3ファクシミリ装置2に備えられた電話機との間では、中継装置5においてIPネットワーク3で送受信される音声データを示すデータパケットと電話回線網4で送受信される音声信号とが相互に変換され、IPネットワーク3と中継装置5と電話回線網4とを介して音声通信が行われる。
【0023】
IPファクシミリ装置1は、図2に示すように、画像読取部11と、画像形成部12と、入力操作部13と、画像メモリー14と、ネットワークインターフェイス(以下、ネットワークI/F)15と、IPファクシミリ通信部16と、IP電話機17と、制御部10と、を備えている。
【0024】
画像読取部11は、図略の装置本体の上面と対向する位置に、当該上面に沿って移動可能に配設されたCCD(Charge Coupled Device)ラインセンサや露光ランプ等を有する光学系ユニット(図示せず)を備えている。CCDラインセンサは、図略の駆動部によって移動可能に構成されており、装置本体の上面に載置された原稿を読み取るとき、その上面に対向する位置で当該上面に沿って移動し、原稿画像を走査しつつ取得した画像データを制御部10へ出力する。
【0025】
画像形成部12は、IPネットワーク3を介して他のIPファクシミリ装置1から受信した画像データ、又は、IPネットワーク3と中継装置5と電話回線網4とを介して、G3ファクシミリ装置2から受信した画像データに基づいて、記録紙に画像を形成するものである。
【0026】
具体的には、画像形成部12は、感光体ドラム、感光体ドラムの周面に対向して配設された帯電部、帯電部の下流側であって感光体ドラムの周面に対向して配設された露光部、露光部の下流側であって感光体ドラムの周面に対向して配設された現像部、現像部の下流側であって感光体ドラムの周面に対向して配設されたクリーニング部等を備えた周知の構成を有する。
【0027】
入力操作部13は、記録紙サイズ、倍率、濃度、複写部数などの画像形成条件を入力又は表示するための液晶表示部やテンキー、ファクシミリ通信等の機能の実行開始を指示するためのスタートボタン等を有する。
【0028】
画像メモリー14は、RAMやフラッシュメモリー等のメモリーで構成され、画像読取部11により読み取られた画像データを一時的に記憶したり、IPネットワーク3を介して他のIPファクシミリ装置1から受信した画像データ、又は、IPネットワーク3と中継装置5と電話回線網4とを介して、G3ファクシミリ装置2から受信した画像データを一時的に記憶したりするものである。
【0029】
ネットワークI/F15は、IPネットワーク3に接続され、100/1000Base−T等の通信規格に従ってIPネットワーク3に接続されたパソコン等の外部装置との間でデータパケットの送受信を実行するための通信インターフェイス回路である。
【0030】
IPファクシミリ通信部16は、ネットワークI/F15を用いて、ITU−T勧告T.38に準拠してIPネットワーク3を介して画像データを示すデータパケットを送受信することによって、他のIPファクシミリ装置1との間でファクシミリ通信を行うものである。
【0031】
また、IPファクシミリ通信部16は、ネットワークI/F15を用いて、ITU−T勧告T.30に準拠してIPネットワーク3を介して画像データを示すデータパケットを中継装置5との間で送受信し、当該中継装置5においてIPネットワーク3で送受信される画像データを示すデータパケットと電話回線網4で送受信される音声信号とが相互に変換され、当該中継装置5と電話回線網4を介して接続されたG3ファクシミリ装置2との間で画像データを示す音声信号が送受信されることによって、つまり、IPネットワーク3と中継装置5と電話回線網4とを介して、G3ファクシミリ装置2との間でもファクシミリ通信を行う。
【0032】
IP電話機17は、ネットワークI/F15を用いて、IPネットワーク3を介して通話中の音声を示すデータパケットを送受信することによって、他のIPファクシミリ装置1に備えられたIP電話機17との間で音声通信(通話)を行うものである。
【0033】
また、IP電話機17は、ネットワークI/F15を用いて、IPネットワーク3を介して通話中の音声を示すデータパケットを中継装置5との間で送受信し、当該中継装置5においてIPネットワーク3で送受信される音声データを示すデータパケットと電話回線網4で送受信される音声信号とが相互に変換され、当該中継装置5と電話回線網4を介して接続されたG3ファクシミリ装置2に備えられた電話機との間で音声信号が送受信されることによって、つまり、IPネットワーク3と中継装置5と電話回線網4とを介して、G3ファクシミリ装置2に備えられた電話機との間でも音声通信を行う。
【0034】
制御部10は、制御プログラムやIPファクシミリ装置1の各種設定情報を記憶するためのフラッシュメモリー等の不揮発性メモリーや一時的にデータを記憶するためのRAM(Random Access Memory)等のメモリーや、制御プログラムをメモリーから読み出して実行するCPU等が内蔵されたマイクロコンピュータからなり、CPUによって制御プログラムを実行することによって、IPファクシミリ装置1全体の動作制御を司る。
【0035】
以下では、制御部10が、宛先情報受付部101と、開始指示受付部102と、通信速度計測部103と、通信方式記憶部104と、通信方式記憶制御部105と、手動送信制御部106として動作する態様について詳述する。
【0036】
宛先情報受付部101は、例えば、入力操作部13を介してユーザーから入力された、IPファクシミリ通信部16によるファクシミリ通信の通信先としてファクシミリ装置の宛先情報(例えば、電話番号やIPアドレス等)を受け付ける。
【0037】
尚、宛先情報の入力方法は、これに限定する趣旨ではなく、例えば、ネットワークI/F15を介してIPネットワーク3に接続されたパソコン等の外部装置から送信された宛先情報を示すデータパケットを受信することによって、宛先情報を入力する構成であってもよい。
【0038】
開始指示受付部102は、例えば、入力操作部13を介してユーザーから入力された、宛先情報受付部101で受け付けられた宛先情報が示すファクシミリ装置との間でのIPファクシミリ通信部16によるファクシミリ通信の開始指示を受け付ける。
【0039】
尚、ファクシミリ通信の開始指示の入力方法は、これに限定する趣旨ではなく、例えば、ネットワークI/F15を介してIPネットワーク3に接続されたパソコン等の外部装置から送信されたファクシミリ通信の開始指示を示すデータパケットを受信することによって、ファクシミリ通信の開始指示を入力する構成であってもよい。
【0040】
通信速度計測部103は、IPファクシミリ通信部16によるファクシミリ通信の通信速度を計測する。具体的には、通信速度計測部103は、宛先情報受付部101で受け付けられた宛先情報が示すファクシミリ装置との間でのファクシミリ通信の開始指示が開始指示受付部102によって受け付けられた時点から、IPファクシミリ通信部16によって例えばITU−T勧告T.38又はITU−T勧告T.30に準拠して画像データの送信が完了する時点までの経過時間を計測し、当該送信した画像データのデータ量を当該計測した経過時間で除算することによって、単位時間当たりに通信可能な画像データ量を算出し、これを通信速度とする。
【0041】
尚、通信速度の計測方法は、これに限定する趣旨ではなく、例えば、通信速度計測部103は、IPファクシミリ通信部16によって、ITU−T勧告T.30又はITU−T勧告T.38に準拠して、画像データを送受信する前に、受信側のファクシミリ装置から送信される受信側のファクシミリ装置の伝送能力を通知するためのDIS信号と、送信側のファクシミリ装置から送信される当該受信側のファクシミリ装置から受信した伝送能力を示すDIS信号に基づいて決定した通信速度を通知するためのDCS信号と、のやり取りによって決定された通信速度をRAMに記憶し、これを通信速度とするように構成してもよい。
【0042】
通信方式記憶部104は、フラッシュメモリー等の不揮発性メモリーで構成され、通信先のファクシミリ装置の宛先情報と、当該通信先のファクシミリ装置がG3ファクシミリ装置2及びIPファクシミリ装置1のうちの何れのファクシミリ装置であるかを示す通信方式情報と、を対応付けて記憶する。
【0043】
通信方式記憶制御部105は、IPファクシミリ通信部16によってファクシミリ通信が実行される場合に、通信速度計測部103で計測されたファクシミリ通信の通信速度が予め定められた速度閾値よりも高速である場合は、当該通信先のファクシミリ装置の宛先情報とIPファクシミリ装置1であることを示す通信方式情報とを対応付けて通信方式記憶部104に記憶する。
【0044】
一方、通信方式記憶制御部105は、通信速度計測部103で計測されたファクシミリ通信の通信速度が上記の予め定められた速度閾値よりも低速である場合は、当該通信先のファクシミリ装置の宛先情報とG3ファクシミリ装置2であることを示す通信方式情報とを対応付けて通信方式記憶部104に記憶する。
【0045】
尚、予め定められた速度閾値は、IPファクシミリ装置1の製品出荷前の試験運転等による実験値に基づいて予め定められ、フラッシュメモリー等の不揮発性メモリーに予め記憶されている。
【0046】
また、通信方式記憶制御部105は、IPファクシミリ通信部16によってファクシミリ通信が実行される場合に、既に通信方式記憶部104に当該ファクシミリ通信の通信先のファクシミリ装置の宛先情報に対応するデータが記憶されているときは、例えば、当該通信先のファクシミリ装置が機種変更されて通信方式が切り替わった場合等、入力操作部13を介してユーザーから強制的に当該記憶されているデータを更新する指示が入力されない限り、上記の通信方式情報を通信方式記憶部104に記憶しないように構成して、無駄に通信方式情報を更新することを回避してもよい。
【0047】
手動送信制御部106は、IP電話機17による音声通信中に、開始指示受付部102によってファクシミリ通信の開始指示が受け付けられた場合に、過去のファクシミリ通信時に通信方式記憶制御部105によって通信方式記憶部104に記憶された、当該ファクシミリ通信の通信先の宛先情報に対応する通信方式情報がG3ファクシミリ装置2を示すときは、当該音声通信の終了後、IPファクシミリ通信部16にファクシミリ通信させる。
【0048】
一方、手動送信制御部106は、IP電話機17による音声通信中に、開始指示受付部102によってファクシミリ通信の開始指示が受け付けられた場合に、通信方式記憶部104に記憶されている、当該ファクシミリ通信の通信先の宛先情報に対応する通信方式情報がIPファクシミリ装置1を示すときは、当該音声通話を継続し、IPファクシミリ通信部16にファクシミリ通信させる。
【0049】
以下では、図3及び図4を用いて、IPファクシミリ装置1における手動送信の動作について説明する。尚、IPファクシミリ装置1における手動送信とは、IP電話機17による通話中に、IPファクシミリ通信部16によるファクシミリ通信の開始指示を入力し、当該通話終了後に当該入力されていた開始指示に従ってファクシミリ通信を実行させる、又は、当該通話を継続したまま、当該入力された開始指示に従ってファクシミリ通信を実行させる機能を示す。
【0050】
ユーザーによって、IP電話機17による通話が開始された後に(S1)、原稿が装置本体の上面に載置され(S2)、そして、宛先情報受付部101によってファクシミリ通信先のファクシミリ装置の宛先情報の入力が受け付けられた後(S3)、開始指示受付部102によってファクシミリ通信の開始指示が受け付けられると(S4;YES)、手動送信制御部106は、当該開始指示が受け付けられた時点を示す時刻をRAMに記憶し(S5)、ステップS2で載置された原稿を読み取る指示を画像読取部11に送出する。
【0051】
当該指示の下、画像読取部11によって原稿が読み取られて生成された画像データが制御部10に出力されると(S6)、手動送信制御部106は、当該制御部10に入力された画像データを画像メモリー14に記憶した後(S7)、ステップS3で受け付けられた宛先情報に対応付けられた通信方式情報が通信方式記憶部104に記憶されているか否かを判断する(S8)。
【0052】
ここで、手動送信制御部106は、ステップS3で受け付けられた宛先情報に対応付けられた通信方式情報が通信方式記憶部104に記憶されていないものと判断すると(S8;NO)、通話を終了する指示をIP電話機17に送出して、当該指示によって強制的にIP電話機17による音声通信を終了させる、又は、例えば、IP電話機17の通話終了ボタンが押下される、若しくは、受話器が置かれる等のユーザーによるIP電話機17の操作によって通話が終了されるまで待機する。
【0053】
IP電話機17による通話が終了すると(S9)、手動送信制御部106は、ステップS7で画像メモリー14に記憶した画像データをステップS3で受け付けられた宛先情報が示すファクシミリ装置に送信する指示をIPファクシミリ通信部16に送出する。
【0054】
当該指示の下、IPファクシミリ通信部16によってファクシミリ通信が実行されると(S10)、手動送信制御部106は、当該ファクシミリ通信の通信速度を計測する指示を通信速度計測部103に送出し、当該指示の下、通信速度計測部103は、ステップS5でRAMに記憶された当該ファクシミリ通信の開始時点を示す時刻を読み出して、当該読み出した時刻からIPファクシミリ通信部16による画像データの送信が完了する時点までの経過時間を計測し、ステップS7で画像メモリー14に記憶された画像データのデータ量を当該計測した経過時間で除算することによって、単位時間当たりに通信可能な画像データ量を算出し、これを通信速度としてRAMに記憶する(S11)。
【0055】
次に、手動送信制御部106は、ステップS3で受け付けられた宛先情報と対応付けて通信方式情報を記憶する指示を通信方式記憶制御部105に送出し、当該指示の下、通信方式記憶制御部105は、フラッシュメモリー等の不揮発性メモリーに予め記憶されている速度閾値を読み出し、ステップS11でRAMに記憶されたファクシミリ通信の通信速度が当該速度閾値よりも高速である場合は、ステップS3で受け付けられた宛先情報とIPファクシミリ装置1であることを示す通信方式情報とを対応付けて通信方式記憶部104に記憶する(S12)。
【0056】
一方、通信方式記憶制御部105は、ステップS11でRAMに記憶されたファクシミリ通信の通信速度が当該速度閾値よりも低速である場合は、ステップS3で受け付けられた宛先情報とG3ファクシミリ装置2であることを示す通信方式情報とを対応付けて通信方式記憶部104に記憶する(S12)。そして、手動送信制御部106は、IPファクシミリ通信部16によるファクシミリ通信が終了すると処理を終了させる。
【0057】
一方、ステップS8において、手動送信制御部106は、ステップS3で受け付けられた宛先情報に対応付けられた通信方式情報が通信方式記憶部104に記憶されているものと判断した場合に(S8;YES)、通信方式記憶部104に記憶されているステップS3で受け付けられた宛先情報に対応付けられた通信方式情報がG3ファクシミリ装置2を示すときは(S13;YES)、通話を終了する指示をIP電話機17に送出して、当該指示によって強制的にIP電話機17による音声通信を終了させる、又は、例えば、IP電話機17の通話終了ボタンが押下される、若しくは、受話器が置かれる等のユーザーによるIP電話機17の操作によって通話が終了されるまで待機する。
【0058】
そして、IP電話機17による通話が終了すると(S14)、手動送信制御部106は、ステップS7で画像メモリー14に記憶した画像データをステップS3で受け付けられた宛先情報が示すファクシミリ装置に送信する指示をIPファクシミリ通信部16に送出し、当該指示の下、IPファクシミリ通信部16はファクシミリ通信を実行する(S15)。そして、手動送信制御部106は、IPファクシミリ通信部16によるファクシミリ通信が終了すると処理を終了させる。
【0059】
尚、ステップS13において、通信方式記憶部104に記憶されているステップS3で受け付けられた宛先情報に対応付けられた通信方式情報がIPファクシミリ装置1を示すときは(S13;NO)、IP電話機17による通話を継続したまま、ステップS7で画像メモリー14に記憶した画像データをステップS3で受け付けられた宛先情報が示すファクシミリ装置に送信する指示をIPファクシミリ通信部16に送出し、当該指示の下、IPファクシミリ通信部16はファクシミリ通信を実行する(S16)。そして、手動送信制御部106は、IPファクシミリ通信部16によるファクシミリ通信の終了後、IP電話機17による通話が終了されるまで待機し(S17)、ユーザーによるIP電話機17の操作によって通話が終了されると(S17;YES)、処理を終了させる。
【0060】
このように、本構成によれば、IP電話機17による音声通信中にファクシミリ通信の開始指示が受け付けられた場合に、過去のファクシミリ通信時に通信方式記憶制御部105によって通信方式記憶部104に記憶された通信先の宛先情報に対応する通信方式情報に基づいて、通信先がG3ファクシミリ装置2であるときは、当該音声通信の終了後にIPファクシミリ通信部16によってファクシミリ通信が行われるが、通信先がIPファクシミリ装置1であるときは、当該音声通信を継続したまま、IPファクシミリ通信部16によってファクシミリ通信が行われる。
【0061】
つまり、過去のファクシミリ通信時に通信方式記憶制御部105によって通信先の宛先情報に対応する通信方式情報が通信方式記憶部104に記憶されるため、通信先のファクシミリ装置の宛先情報と、当該通信先のファクシミリ装置がG3ファクシミリ装置2及びIPファクシミリ装置1のうちの何れのファクシミリ装置であるかを示す通信方式情報とを、ユーザーが予め通信方式記憶部104に記憶する手間を回避することができ、効率よく通信先の宛先情報に対応する通信方式情報を記憶することができる。
【0062】
また、IP電話機17による音声通信中にファクシミリ通信の開始指示が受け付けられた場合に、通信方式記憶制御部105によって通信方式記憶部104に記憶された、通信先の宛先情報に対応する通信方式情報を用いて、通信先がIPファクシミリ装置1であると判断されたときには、音声通信を継続したままファクシミリ通信を行うことができるため、G3ファクシミリ装置2における手動送信に比して、音声通信とファクシミリ通信とを同時に実行できる点で利便性が向上された手動送信を実行することができる。
【0063】
尚、開始指示受付部102は、更に宛先情報受付部101で宛先情報が受け付けられることがないまま、IPファクシミリ通信部16によるファクシミリ通信の開始指示を受け付けるように構成してもよい。
【0064】
これに合わせて、手動送信制御部106は、ステップS1でIP電話機17による音声通信中に、ステップS3で宛先情報受付部101で宛先情報が受け付けられることがないまま、当該開始指示受付部102によってファクシミリ通信の開始指示が受け付けられた場合は、当該音声通信先の電話機を備えたファクシミリ装置の宛先情報を、当該ファクシミリ通信の通信先の宛先情報として設定して、ステップS5以降の処理を実行するように構成してもよい。
【0065】
本構成によれば、手動送信を行う場合であって、音声通信先の電話機を備えたファクシミリ装置をファクシミリ通信の通信先とするときは、当該ファクシミリ装置の宛先情報を入力する手間を軽減することができる。
【0066】
尚、本発明は、上述の実施形態の構成に限られず種々の変形が可能である。図1乃至図4に示した構成及び処理は、本発明に係る実施形態の例示に過ぎず、本発明を前記実施形態に限定する趣旨ではない。
【0067】
例えば、本発明に係る回線網ファクシミリ装置は、G3ファクシミリ装置2に限らず、ITU−T勧告T.30に準拠して、電話回線網を介してファクシミリ通信可能な、G1(Group1)ファクシミリ装置又はG2(Group2)ファクシミリ装置によって構成してもよい。
【0068】
また、手動送信制御部106は、ステップS7の実行後であってステップS8の実行前に、当該ステップS3で受け付けられた宛先情報がステップS1におけるIP電話機17による通話先の電話機を備えたファクシミリ装置の宛先情報と異なるか否かを判断するように構成してもよい。
【0069】
そして、手動送信制御部106は、当該受け付けられた宛先情報がIP電話機17による通話先の電話機を備えたファクシミリ装置の宛先情報と異なる宛先情報であると判断した場合は、ステップS3で受け付けられた宛先情報が示すファクシミリ装置がIPファクシミリ装置1又はG3ファクシミリ装置2の何れであっても、IPネットワーク3を介してIP電話機17による音声通信とIPファクシミリ通信部16によるファクシミリ通信とを同時に実行可能であるため、ステップS8及びステップS13における判断処理を省略して、ステップS16の処理に移行させ、音声通信を継続したまま当該受け付けられていた宛先情報が示すファクシミリ装置との間でIPファクシミリ通信部16にファクシミリ通信させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 IPファクシミリ装置
2 G3ファクシミリ装置(回線網ファクシミリ装置)
3 IPネットワーク
4 電話回線網
5 中継装置
9 ネットワーク通信システム
16 IPファクシミリ通信部
17 IP電話機
101 宛先情報受付部
102 開始指示受付部
103 通信速度計測部
104 通信方式記憶部
105 通信方式記憶制御部
106 手動送信制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPネットワークを介してファクシミリ通信するIPファクシミリ通信部と、
前記IPファクシミリ通信部によるファクシミリ通信の通信先としてファクシミリ装置の宛先情報の入力を受け付ける宛先情報受付部と、
前記ファクシミリ装置に備えられた電話機との間でIPネットワークを介して音声通信するIP電話機と、
前記宛先情報受付部で受け付けられた宛先情報が示すファクシミリ装置との間での前記IPファクシミリ通信部によるファクシミリ通信の開始指示を受け付ける開始指示受付部と、
前記IPファクシミリ通信部によるファクシミリ通信の通信速度を計測する通信速度計測部と、
通信先のファクシミリ装置の宛先情報と、当該通信先のファクシミリ装置が電話回線網を介してファクシミリ通信する回線網ファクシミリ装置及びIPネットワークを介してファクシミリ通信するIPファクシミリ装置のうちの何れのファクシミリ装置であるかを示す通信方式情報と、を対応付けて記憶する通信方式記憶部と、
前記通信速度計測部で計測されたファクシミリ通信の通信速度が予め定められた速度閾値よりも高速である場合は、当該通信先のファクシミリ装置の宛先情報とIPファクシミリ装置であることを示す通信方式情報とを対応付けて前記通信方式記憶部に記憶し、前記通信速度計測部で計測されたファクシミリ通信の通信速度が前記速度閾値よりも低速である場合は、当該通信先のファクシミリ装置の宛先情報と回線網ファクシミリ装置であることを示す通信方式情報とを対応付けて前記通信方式記憶部に記憶する通信方式記憶制御部と、
前記IP電話機による音声通信中に、前記開始指示受付部によってファクシミリ通信の開始指示が受け付けられた場合に、過去のファクシミリ通信時に前記通信方式記憶制御部によって前記通信方式記憶部に記憶された、当該ファクシミリ通信の通信先の宛先情報に対応する通信方式情報が回線網ファクシミリ装置を示すときは、当該音声通信の終了後、前記IPファクシミリ通信部にファクシミリ通信させ、
通信方式記憶部に記憶されている、当該ファクシミリ通信の通信先の宛先情報に対応する通信方式情報がIPファクシミリ装置を示すときは、当該音声通信を継続し、前記IPファクシミリ通信部にファクシミリ通信させる手動送信制御部と、
を備えるIPファクシミリ装置。
【請求項2】
前記開始指示受付部は、更に、前記宛先情報受付部で宛先情報が受け付けられることがないまま、前記IPファクシミリ通信部によるファクシミリ通信の開始指示を受け付け、
前記手動送信制御部は、前記IP電話機による音声通信中に、前記宛先情報受付部で宛先情報が受け付けられることがないまま、前記開始指示受付部によってファクシミリ通信の開始指示が受け付けられた場合は、当該音声通信先の電話機を備えたファクシミリ装置の宛先情報を、当該ファクシミリ通信の通信先の宛先情報として設定する請求項1に記載のIPファクシミリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−209842(P2012−209842A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75194(P2011−75194)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】