説明

IP通信装置及びそのデータ送信方法

【課題】IP通信装置間において、音声、テキスト、画像、及び映像等のメディアデータのファイルを、SIPを利用して容易に転送可能とする。
【解決手段】IP通信装置2,3が、相手装置との間で呼接続用サーバを介してSIPメッセージの送受信を行う呼制御部13と、SIPメッセージの送受信により相手装置がファイル転送機能を有すると判断した場合に、相手装置に対してメディアデータのファイルを転送するファイル転送部19とを備えた構成とし、メディアデータをファイルとして容易に転送可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP(Internet Protocol)ネットワークを介して通信を行なうIP通信装置及びそのデータ送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インターネット等のネットワークを介したファクシミリ通信方式として、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)に基づき画像データを電子メールの添付ファイルとして送信する方式(ITU−T T.37方式)、G3ファクシミリのモデム信号をパケット変換してリアルタイム伝送する方式(ITU−T T.38方式)、G3ファクシミリのモデム信号を音声として伝送する方式(みなし音声方式)等が知られている。しかしながら、T.37方式は、通信の高い信頼性を確保できる一方、リアルタイム性に欠けるという課題があった。また、T.38方式は、リアルタイム性に優れる一方、ITU−T T.30の手順を踏まえているため処理が複雑であるという課題があった。また、みなし音声方式は、モデム信号をそのまま音声信号とみなして扱うので汎用性が高い一方、パケットロスや遅延等の影響によって通信が不安定となる等の課題があった。
【0003】
近年、IP電話やテレビ電話等では、シグナリングプロトコルとしてSIP(Session Initiation Protocol)が用いられており、これにより、リアルタイム性を確保しながら比較的簡易な処理で音声、画像、及び映像等の送受信が実現可能となっている。この種の技術として、例えば、呼制御処理において、通信を行う2つの装置が、相手装置に送信するSIPメッセージに自身の能力情報(動作可能なコーデック等の情報)を付加して相互に能力交換を行った後、通信処理として音声、画像等の転送を行うデータ転送装置が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−150830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のような従来技術による通信では、RTP(Real-time Transport Protocol)に基づきリアルタイム性を優先してデータの送受信を行うので、通信の安定性に劣り、また、受信側で受信データをファイルとして取り扱いたいというような要望に応えることはできなかった。特に、画像データを送受信する場合、従来のG3ファクシミリ等のように所定枚数のファクシミリ画像を確実に送信して受信側で出力させることは困難であった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、メディアデータ(音声、テキスト、画像、及び映像等)のファイルを、SIPを利用して容易に転送可能とするIP通信装置及びそのデータ送信方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のIP通信装置は、IP網を介して相手装置と通信を行うIP通信装置であって、前記相手装置との間で呼接続用サーバを介してSIPメッセージの送受信を行う呼制御部と、前記SIPメッセージの送受信により前記相手装置がファイル転送機能を有すると判断した場合に、前記相手装置に対してメディアデータのファイルを転送するファイル転送部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように本発明によれば、IP通信装置間において、音声、テキスト、画像、及び映像等のメディアデータのファイルを、SIPを利用して容易に転送可能にするという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、IP網を介して相手装置と通信を行うIP通信装置であって、前記相手装置との間で呼接続用サーバを介してSIPメッセージの送受信を行う呼制御部と、前記SIPメッセージの送受信により前記相手装置がファイル転送機能を有すると判断した場合に、前記相手装置に対してメディアデータのファイルを転送するファイル転送部とを備えた構成とする。
【0009】
これによると、IP通信装置間において、メディアデータ(音声、テキスト、画像、及び映像等)のファイルを、SIPを利用して容易に転送可能となる。
【0010】
上記課題を解決するためになされた第2の発明は、前記メディアデータのファイルの転送を管理するファイル転送管理部を更に備え、当該ファイル転送管理部は、前記ファイルの転送能力の情報を付加したINVITEメッセージを前記SIPメッセージとして前記呼制御部により相手装置に送信させる構成とすることができる。
【0011】
これによると、自装置のファイルの転送能力の情報を相手装置に容易に認識させることができる。この場合、INVITEメッセージに対する相手装置の応答(200OK)にファイルの受信能力の情報を付加させることで、相手装置の能力を認識可能となる。
【0012】
上記課題を解決するためになされた第3の発明は、前記ファイル転送管理部は、前記ファイル転送部が転送するファイルの情報を付加したre−INVITEメッセージを前記SIPメッセージとして前記呼制御部により相手装置に送信させる構成とすることができる。
【0013】
これによると、転送するファイルの情報を相手装置に容易に認識させることができる。この場合、re−INVITEメッセージに対する相手装置の応答(200OK)に当該ファイルを受信可能か否かの情報を付加させることで、IP通信装置が相手装置に対するファイル転送の可否を判断可能となる。
【0014】
上記課題を解決するためになされた第4の発明は、前記ファイルの情報には、送信するファイル名及びファイルサイズを含む構成とすることができる。
【0015】
上記課題を解決するためになされた第5の発明は、前記メディアデータが画像データであり、前記ファイル転送部は前記画像データのファイルを1頁単位で転送する構成とすることができる。
【0016】
これによると、相手装置は従来のG3ファクシミリ装置と同様の要領で1頁単位の画像データを受信して印刷や保存を実行することが可能となり、ユーザの利便性を向上させることができる。また、相手装置は、受信した画像データを印刷等の前に一時的に保存するメモリの容量を比較的小さくすることができ、装置の低コスト化を実現できるという利点もある。
【0017】
上記課題を解決するためになされた第6の発明は、IP網を介して相手装置と通信を行うIP通信装置であって、前記相手装置との間で呼接続用サーバを介してSIPメッセージの送受信を行う呼制御部と、前記SIPメッセージの送受信によりセッションを確立した後に、前記相手装置に対してメディアデータのファイルを転送するファイル転送部と、前記メディアデータのファイルの転送を管理するファイル転送管理部とを備え、前記ファイル転送管理部は、前記ファイルの転送能力の情報を付加したINVITEメッセージを前記SIPメッセージとして前記呼制御部により前記相手装置に送信し、前記相手装置からファイルの転送能力を保有する旨を応答したとき前記ファイル転送部が転送するファイルの情報を付加したre−INVITEメッセージを前記SIPメッセージとして前記呼制御部により前記相手装置に送信し、前記re−INVITEメッセージの応答として前記相手装置から受信可能を示す情報を受信したとき前記ファイル転送部によりファイルの転送を行う構成とする。
【0018】
上記課題を解決するためになされた第7の発明は、前記相手装置から待機を指示する情報を受信した場合、前記ファイルの転送を一時的に中断する構成とすることができる。
【0019】
上記課題を解決するためになされた第8の発明は、IP網を介して相手装置と通信を行うIP通信装置のデータ送信方法であって、前記相手装置との間で呼接続用サーバを介してSIPメッセージの送受信を行う呼制御ステップと、前記呼制御ステップにより送受信したSIPメッセージに基づいて前記相手装置がファイル転送機能を有すると判断した場合、前記相手装置に対してメディアデータのファイルを転送するファイル転送ステップとを有する構成とする。
【0020】
上記課題を解決するためになされた第9の発明は、IP網を介して相手装置と通信を行うIP通信装置のデータ送信方法であって、メディアデータのファイルの転送能力の情報を付加したINVITEメッセージをSIPメッセージとして前記相手装置に送信し、前記相手装置からファイルの転送能力を保有する旨を応答したとき前記ファイルの情報を付加したre−INVITEメッセージをSIPメッセージとして前記相手装置に送信し、前記re−INVITEメッセージの応答として前記相手装置から受信可能を示す情報を受信したとき前記ファイルの転送を行う構成とする。
【0021】
上記課題を解決するためになされた第10の発明は、前記相手装置から待機を指示する情報を受信した場合、前記ファイルの転送を一時的に中断する構成とすることができる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本願発明に係るIP通信装置を備えたIP通信システムの構成図である。このIP通信システム1は、複数のIP通信装置2,3及びSIPサーバ(呼接続用サーバ)4がインターネット(IP網)5を介してそれぞれ接続された構成を有する。
【0024】
IP通信装置2,3は、SIP(Session Initiation Protocol)のUAC(User Agent Client)として機能する。IP通信装置2,3は、呼制御処理においてSIPサーバ4を介して互いにSIPメッセージの送受信を行ってセッションを確立し、その後の通信処理においてメディアデータ(音声、テキスト、画像、及び映像等)の転送を実行する。後述するように、このメディアデータを転送する機能(以下、「ファイル転送機能」という。)は、SIPのセッションにおいてメディアデータがファイル単位で確実に送受信される点に特徴を有しており、これにより、メディアデータのファイルを、SIPを利用して容易に転送することが可能となる。
【0025】
SIPサーバ4は、SIPのUAS(User Agent Server)として機能する。SIPサーバ4は、IP通信装置2,3からのリクエストに応じて、それら装置間の呼接続のためのSIPメッセージの中継を行うプロキシサーバ機能、及びIP通信装置2,3に関するグローバルアドレス、ポート番号、NAT種別等の情報を管理(ロケーションサーバへの登録、更新、削除処理等を実行)するレジストラ機能等を有する。
【0026】
図2は、図1に示したIP通信装置の機能ブロック図である。ここでは、IP通信装置2,3がメディアデータとして画像データを送受信する場合の構成を示す。
【0027】
IP通信装置2,3は、音声処理部11、音声入出力部12、呼制御部13、ダイヤル操作部14、画像ファイル生成部15、画像読取部16、記録画像生成部17、画像記録部18、ファイル送受信部(ファイル転送部)19、及び通信管理部(ファイル転送管理部)20を備える。
【0028】
音声処理部11は、VoIP(voice over internet protocol)に基づき相手装置との間で実行される通話に関する処理を実行する。音声処理部11は、送信データ及び受信データのA/D及びD/A変換機能と、所定の音声符号化方式(例えば、ITU−T勧告G.711、G.729等)に基づく音声コーデック機能とを有しており、送受話器からなる音声入出力部12から入力されるアナログ信号をA/D変換及び符号化して送信データとする一方、符号化された受信データを復号化及びD/A変換して生成したアナログ信号を音声入出力部12に出力する。
【0029】
呼制御部13は、ユーザによるダイヤル操作部14の操作に応じて、相手装置との間でSIPサーバ4を介してSIPメッセージを交換しながらセッションを確立するためのシグナリング処理を行う。
【0030】
画像ファイル生成部15は、画像読取部16が原稿画像を光学的に読み取り走査した画像データから送信用のファイルを生成する。このファイルは、原稿が複数頁に渡る場合には原稿の1頁単位で複数生成される。記録画像生成部17は、相手装置から受信したファイル(画像データ)から記録用の記録画像データを生成する。画像記録部18は、その記録画像データに基づき記録紙上に画像形成を行う。
【0031】
ファイル送受信部19は、ファイルとして生成されたメディアデータをパケット化して送受信する処理を実行する。このファイル送受信部19の通信処理では、TCP(Transmission Control Protocol)に基づきデータ到着、重複及び抜けなどの確認を行い、従来のG3ファクシミリ装置による通信と同様の高い信頼性を確保する。
【0032】
通信管理部20は、メディアデータのファイルの転送を管理する。後述するように、通信管理部20は、ファイル転送機能に関する能力情報(例えば、ファイル転送機能の有無、処理可能なファイルの最大サイズ、パケットサイズ)、及び転送するファイルの情報(例えば、ファイル名、ファイル形式、ファイルサイズ)をSIPメッセージ上のSDP(Session Description Protocol)記述文書を利用して相手装置と交換する。また、通信管理部20は、自装置におけるメディアデータの受信及びその処理状況に応じて相手装置を待機(通信を一時的に中断)させるための待機指示を行う。この待機指示の情報(例えば、待機時間)は、上述と同様にSIPメッセージ上のSDP記述文書を利用して相手装置と交換する。通信管理部20は、逆に相手装置からの待機指示に応じて自装置が待機するための処理も行う。
【0033】
ネットワークI/F部21は、所定の通信プロトコルに従って相手装置との間でSIPメッセージ及びメディアデータのパケットを送受信すべく、図示しないLAN等を介してインターネット5に接続される。
【0034】
上記構成により、IP通信装置2,3は、周知のIP電話機と同様の音声通話機能に加え、従来のG3ファクシミリ装置と同様に、画像データのファイル(例えば、JPEG、TIFF、BMP等)を送信側の装置から受信側の装置に対してSIPを利用して転送するファイル転送機能を実現する。以下、IP通信装置2を、ファイルを送信する装置(送信側装置)とし、IP通信装置3を、ファイルを受信する装置(受信側装置)として、これらのファイル転送機能の詳細について説明する。
【0035】
図3は、IP通信装置が相手装置に対してファイルを送信する動作を示すフロー図である。
【0036】
まず、ユーザがダイヤル操作部14により相手装置(受信側装置)の宛先番号を入力する(ST101)。そのダイヤル操作が適切に完了すると(ST102:YES)、通信管理部20により、自装置のファイル転送機能に関する能力情報をSIPメッセージに付加し、呼制御部13により、その能力情報が付加されたSIPメッセージを相手装置に対して送信する。このような通信管理部20によるSIPメッセージに対する各種情報の付加は、SIPメッセージのメッセージボディにSDP記述文書として必要な情報を記載することにより行われる。IP通信装置2は、そのSIPメッセージに対する応答を受信すると(ST104)、当該応答メッセージのメッセージボディに含まれる情報に基づき相手装置がファイル転送機能を有するか否かを判定する(ST105)。
【0037】
相手装置がファイル転送機能を有していない場合、IP通信装置2は呼切断を行う(ST118)。一方、相手装置がファイル転送機能を有する場合、通信管理部20により、転送するファイルの情報をSIPメッセージに付加し、呼制御部13により、そのファイル情報が付加されたSIPメッセージを相手装置に対して送信する(ST106)。続いて、IP通信装置2は、そのSIPメッセージに対する応答を受信すると(ST107)、そのメッセージボディに待機指示の情報が含まれているか否かを判定する(ST108)。このとき、待機指示の情報が含まれている場合には、IP通信装置2は、指定された時間だけ通信を中断し(ST109)、再びST106に戻る。なお、相手装置は、ST107の応答メッセージにファイル転送を受け付けるか否かの情報を付加することができる。相手装置のファイル転送の拒否は、例えば、送信されるファイルのサイズに対して相手装置のメモリ容量(または残量)が小さく当該ファイルを受信することができない場合に行われる。
【0038】
次に、IP通信装置2は、ST107の応答メッセージに基づきファイルを送信可能な状態にあると判定すると(ST110:YES)、ファイル送受信部19によりファイルデータの送信を開始する(ST111)。そこで、1つのファイルの送信が完了すると(ST112:YES)、全てのファイルの送信が完了したか否かを判定し(ST113)、未送信のファイルが残っている場合(ST113:NO)には、再びST106に戻る。
【0039】
全てのファイルを送信済みの場合(ST113:YES)は、通信管理部20により、ファイルの情報として「送信完了」を付加したSIPメッセージを相手装置に送信する(ST114)。IP通信装置2は、このSIPメッセージに対する応答を受信すると(ST115)、そのメッセージボディに待機指示の情報が含まれているか否かを判定する(ST116)。このとき、待機指示の情報が含まれている場合には、IP通信装置2は、ST109と同様に指定された時間だけ通信を中断し(ST117)、再びST114により「送信完了」を付加したSIPメッセージを相手装置に送信する。
【0040】
なお、ファイルデータの送信ではなく「送信完了」の情報の送信であっても、相手装置が画像記録部18の記録処理能力の不足により前のファイルデータの記録出力を完了していない場合は待機指示が応答される。
【0041】
ST116において、待機指示がなかったときは、呼切断を行って(ST118)、ファイル送信動作が終了する。
【0042】
なお、IP通信装置2は、ST105において相手装置がファイル転送機能を有していないと判定した場合、或いは、ST110においてファイルを送信可能な状態にないと判定した場合には、ST118の呼切断を実行する代わりに、音声通話に切り替える処理を実行することができる。
【0043】
図4は、IP通信装置が相手装置からファイルを受信する動作を示すフロー図である。
【0044】
IP通信装置3は、相手装置(送信側装置)からの着信を受けると(ST201:YES)、通信管理部20により、受信したSIPメッセージに付加された情報に基づき相手装置がファイル転送機能を有するか否かを判定する(ST202)。相手装置がファイル転送機能を有していない場合、IP通信装置3は呼切断を行う(ST214)。一方、相手装置がファイル転送機能を有する場合、通信管理部20により、自装置のファイル転送機能に関する能力情報(ファイルの受信を承諾する旨の情報を含む)をSIPメッセージに付加し、呼制御部13により、その能力情報が付加されたSIPメッセージを相手装置に対して送信する(ST203)。
【0045】
続いて、IP通信装置3は、転送されるファイルの情報が付加されたSIPメッセージを受信すると(ST204)、通信管理部20は、取得したファイルの情報に基づき相手装置を待機させる必要があるか否か(例えば、画像記録部18の記録処理能力の不足により通信を中断する必要があるか否か)を判定する(ST205)。相手装置を待機させる必要がある場合、通信管理部20は待機時間を設定し、呼制御部13がその待機時間の情報を含む待機指示の情報を付加したSIPメッセージを相手装置に対して送信し(ST206)、再びST204に戻る。なお、取得したファイルの情報が、全てのファイルの送信が完了したことを示す「送信完了」である場合も、画像記録部18の記録処理の状態によってST204において待機指示が必要と判定されることがある。
【0046】
待機指示が必要なく(ST205:NO)、ST204で受信したファイルの情報が全てのファイルの送信が完了したことを示す「送信完了」であった場合(ST207:YES)、IP通信装置3は、受信を終了する旨の情報を付加したSIPメッセージを相手装置に対して送信し(ST208)、呼切断を行って(ST213)、ファイルの受信動作を終了する。
【0047】
ファイルの情報が「送信完了」でない場合(ST207:NO)、通信管理部20により、当該SIPメッセージの情報に基づきファイルを受信可能な状態にあるか否かを判定する(ST209)。このとき、ファイルを受信可能な状態にない場合には呼切断を行う(ST213)。一方、ファイルを受信可能な状態にある場合、IP通信装置3は、ファイルを受信可能である旨の情報を付加したSIPメッセージを相手装置に対して送信し(ST210)、ファイルデータの受信を開始する(ST211)。
【0048】
IP通信装置3は、1つのファイルの受信が完了すると(ST212:YES)、ST204に戻って相手装置から次のファイルの情報が付加されたSIPメッセージを受信する。
【0049】
なお、IP通信装置3は、ST202において相手装置がファイル転送機能を有していないと判定した場合、或いは、ST209においてファイルを受信可能な状態にないと判定した場合には、ST213の呼切断を実行する代わりに、音声通話に切り替える処理を実行することができる。
【0050】
図5〜図7は、図1に示したIP通信システムにおける通信処理を示すシーケンス図である。図5は1つ目のファイルの転送が完了するまでの処理を示し、図6は2つ目のファイルファイルの転送が完了するまでの処理を示し、図7はファイル転送を完了した後に通信を終了する処理を示しており、これらは一連の処理である。図5〜図7の処理において転送される各SIPメッセージの詳細については図8〜図12にそれぞれ示す。なお、図9〜図12のSIPメッセージついては、開始行及びヘッダ部を省略してメッセージボディのみを示してある。
【0051】
図5において、まず、送信側装置は受信側装置の宛先番号をダイヤルして発呼する(ST301)。このとき、送信側装置は、セッション開始のINVITEメッセージM801を送信し、SIPサーバを介して受信側装置との間で一連のSIPメッセージの交換を実行する(ST302)。ここでは図示しないが、送信側装置及び受信側装置は、予めSIPサーバに対する登録処理(REGISTERメッセージの送信等)を行うものとする。
【0052】
図8(a)に示すように、INVITEメッセージM801のメッセージボディ31には、メディア種別「audio(音声)」に関連する属性情報32と、メディア種別「file(ファイル)」に関連する属性情報33が記載されている。受信側装置は、INVITEメッセージのメッセージボディ31における「m=file」の記載を確認することで、送信側装置がファイル転送機能を有することを認識することができる。属性情報33には、ファイルの転送能力の情報が含まれており、「a=FileMaxSize:32000」は送信可能なファイルの最大サイズが32000バイトであることを示し、「TransferPacketSize:1540」は送信するパケットサイズが1540バイトであることを示す。なお、この属性情報33については、あくまで本発明のファイル転送機能を実現するための一例として示すものであり、標準的な技術仕様(RFC2327等の規定)に従うものではない。
【0053】
また、図8(b)に示すように、200 OKメッセージM802のメッセージボディ34にはINVITEメッセージM801の属性情報33と同様の属性情報35が記載されており、これにより、送信側装置は受信側装置がファイル転送機能を有することを認識することができる。ここで、「a=FileMaxSize:16000」は受信可能なファイルの最大サイズが16000バイトであることを示し、この情報を取得した送信側装置は、送信するファイルの最大サイズを16000バイトに設定する(後述する図9(a)の属性情報42を参照)。
【0054】
次に、送信側装置は、セッション変更のre-INVITEメッセージM901を送信し、SIPサーバを介して受信側装置との間で一連のSIPメッセージの交換を実行する(ST303)。
【0055】
図9(a)に示すように、re-INVITEメッセージM901のメッセージボディ41には属性情報42が記載されている。この属性情報42には、送信するファイルの情報が含まれており「a=filename:page1.tif」は送信するファイル名(拡張子を含む)が「page1.tif」であることを示し、「a=filesize:2300」は送信するファイルのサイズが2300バイトであることを示し、「a=condition:sendenable」は、送信側装置がファイルを送信可能な状態にあることを示す。受信側装置は、re-INVITEメッセージM901を受信することで、送信側装置が送信するファイルの属性を認識することができる。
【0056】
また、図9(b)に示すように、200 OKメッセージM902のメッセージボディ43には属性情報44が記載されている。この属性情報44には、re-INVITEメッセージM901における属性情報42と同一のファイルの情報が含まれている。送信側装置は、200 OKメッセージM902を受信することで、ファイルの転送の申し入れ(re-INVITEメッセージM901)が受信側装置に受諾されたことを認識する。
【0057】
上記通信によりセッションが確立されると、送信側装置は、原稿画像を読み取って送信用の画像ファイルを生成する処理を行い、1つめの画像ファイルの転送を実行する(ST304)。このとき、受信側装置は、受信した1つめのファイル(1頁単位の画像データを含む)から記録用の記録画像データを生成し、記録紙上に画像形成を行う。
【0058】
1つめの画像ファイルの転送が終了すると、続いて、図6に示すように、送信側装置は、セッション変更のre-INVITEメッセージM1001を送信し、SIPサーバを介して受信側装置との間で一連のSIPメッセージの交換を実行する(ST305)。
【0059】
図10(a)に示すように、re-INVITEメッセージM1001のメッセージボディ51には属性情報52が記載されている。この属性情報52は、re-INVITEメッセージM901の属性情報42と同様であり、次に送信するファイル(2つ目のファイル)の情報が含まれている。ここでは、ファイル名が「page2.tif」であり、ファイルのサイズが2100バイトであることを示している。受信側装置は、re-INVITEメッセージM1001を受信することで、送信側装置が次に送信するファイルの内容を認識することができる。
【0060】
また、図10(b)に示すように、200 OKメッセージM1002のメッセージボディ53には属性情報54が記載されている。この属性情報54には、re-INVITEメッセージM1001における属性情報52と概ね同一のファイルの情報を含まれるが、待機指示情報「a=condition:wait2000」が設定されている点において異なる。この待機指示情報は、受信側装置が現在ファイルを受信可能な状態になく、送信装置の2秒間の待機が必要であることを示す。送信側装置は、200 OKメッセージM1002を受信することで、受信側装置が指定した2秒間だけ通信を中断する。
【0061】
待機時間が経過すると、送信側装置は、再び図10(a)のre-INVITEメッセージM1001と同一のre-INVITEメッセージM1003を送信し、SIPサーバを介して受信側装置との間で一連のSIPメッセージの交換を実行する(ST306)。この場合、200 OKメッセージM1004の属性情報には、re-INVITEメッセージM1001における属性情報52と同一のファイルの情報が含まれている(即ち、「a=condition:sendenable」)。送信側装置は、200 OKメッセージM1004を受信することで、ファイルの転送の申し入れが受信側装置に受諾されたことを認識する。
【0062】
上記通信によりセッションが確立されると、送信側装置は2つめの画像ファイルの転送を実行する(ST307)。このとき、受信側装置は、受信した2つめのファイルから記録用の記録画像データを生成し、記録紙上に画像形成を行う。
【0063】
2つめの画像ファイルの転送が終了すると、続いて、図7に示すように、送信側装置は、セッション変更のre-INVITEメッセージM1101(この例では「送信完了」を示すものとする)を送信し、SIPサーバを介して受信側装置との間で一連のSIPメッセージの交換を実行する(ST308)。
【0064】
図11(a)に示すように、re-INVITEメッセージM1101のメッセージボディ61には属性情報62が記載されている。この属性情報62には、re-INVITEメッセージM1001における属性情報52と同様に次に送信するファイルの情報が含まれる。ただし、ここでは、ファイル名が設定されず(「a=filename:」)、ファイルのサイズがゼロに設定され(「a=filesize:0」)、送信側装置がファイル送信を完了した状態にあることが設定されている(「a=condition:sendclose」)。これにより、re-INVITEメッセージM1101を取得した受信側装置は、全てのファイルの転送が完了したことを認識する。
【0065】
また、図11(b)に示すように、200 OKメッセージM1102のメッセージボディ63には属性情報64が記載されている。この属性情報64には、上述の200 OKメッセージM1002における属性情報54と同様に、待機指示情報「a=condition:wait2000」が設定されており、200 OKメッセージM1102を受信した送信側装置は2秒間だけ通信を中断する。
【0066】
待機時間が経過すると、送信側装置は、再び図11(a)のre-INVITEメッセージM1101と同一のre-INVITEメッセージM1103を送信し、SIPサーバを介して受信側装置との間で一連のSIPメッセージの交換を実行する(ST309)。この場合、200 OKメッセージM1104の属性情報には、re-INVITEメッセージM1101における属性情報62と同一のファイルの情報が含まれている(即ち、「a=condition:sendclose」)。送信側装置は、200 OKメッセージM1104を受信することで、ファイルの転送の申し入れが受信側装置に受諾されたことを認識する。
【0067】
最終的に全てのファイルの転送が完了すると、セッションを終了するための通信が実行される(ST310)。
【0068】
このように、画像ファイルを1頁単位で転送することで、受信側装置は、記録処理前に一時的に保存するメモリの容量を比較的小さくすることができ、装置の低コスト化を実現できる。なお、ここでは、2つのファイルを転送する場合を示したが、転送するファイル数は適宜変更可能である。
【0069】
図12は、図2に示したIP通信装置の変更例を示す機能ブロック図である。ここでは、IP通信装置102がメディアデータとして映像データを送受信する場合の構成を示す。図12において、図2のIP通信装置2,3と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
IP通信装置102において、映像ファイル生成部115は、ビデオカメラ機能を有する映像入力部116が生成した映像データから送信用のファイルを生成する。映像生成部117は、相手装置から受信したファイル(映像データ)から表示用の映像データを生成する。映像表示部118は、その映像データに基づきモニタ画面等に映像を表示する処理を行う。このような構成により、映像データのファイル(例えば、MPEG、AVI等)を送信側の装置から受信側の装置に対してSIPを利用して転送するファイル転送機能を実現することが可能となる。なお、このIP通信装置102によるファイルの転送動作については、図3〜図7に示した上述のIP通信装置2,3の場合と同様である。
【0071】
本発明を特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、ファイル転送機能を用いて転送可能なメディアデータは、上述の画像及び映像に限定されず、音声ファイル(例えば、PCM、MP3等)やPCで使用するファイル(例えば、テキスト、PDF等)も含まれるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係るIP通信装置及びそのデータ送信方法は、IP通信装置間において、メディアデータ(音声、テキスト、画像、及び映像等)のファイルを、SIPを利用して容易に転送可能とするので、IPネットワークを介して通信を行なうIP通信装置及びそのデータ送信方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本願発明に係るIP通信装置を備えたIP通信システムの構成図
【図2】IP通信装置の機能ブロック図
【図3】IP通信装置がファイルを送信する動作を示すフロー図
【図4】IP通信装置がファイルを受信する動作を示すフロー図
【図5】IP通信システムにおける通信処理を示すシーケンス図
【図6】IP通信システムにおける通信処理を示すシーケンス図
【図7】IP通信システムにおける通信処理を示すシーケンス図
【図8】SIPメッセージの詳細を示す図
【図9】SIPメッセージの詳細を示す図
【図10】SIPメッセージの詳細を示す図
【図11】SIPメッセージの詳細を示す図
【図12】図2のIP通信装置の変更例を示す機能ブロック図
【符号の説明】
【0074】
1 IP通信システム
2,3 IP通信装置
4 SIPサーバ(呼接続用サーバ)
5 インターネット
13 呼制御部
19 ファイル送受信部(ファイル転送部)
20 通信管理部(ファイル転送管理部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP網を介して相手装置と通信を行うIP通信装置であって、
前記相手装置との間で呼接続用サーバを介してSIPメッセージの送受信を行う呼制御部と、
前記SIPメッセージの送受信により前記相手装置がファイル転送機能を有すると判断した場合に、前記相手装置に対してメディアデータのファイルを転送するファイル転送部と
を備えたことを特徴とするIP通信装置。
【請求項2】
前記メディアデータのファイルの転送を管理するファイル転送管理部を更に備え、当該ファイル転送管理部は、前記ファイルの転送能力の情報を付加したINVITEメッセージを前記SIPメッセージとして前記呼制御部により相手装置に送信させることを特徴とする請求項1に記載のIP通信装置。
【請求項3】
前記ファイル転送管理部は、前記ファイル転送部が転送するファイルの情報を付加したre−INVITEメッセージを前記SIPメッセージとして前記呼制御部により相手装置に送信させることを特徴とする請求項2に記載のIP通信装置。
【請求項4】
前記ファイルの情報には、送信するファイル名及びファイルサイズを含むことを特徴とする請求項3に記載のIP通信装置。
【請求項5】
前記メディアデータが画像データであり、前記ファイル転送部は前記画像データのファイルを1頁単位で転送することを特徴とする請求項1に記載のIP通信装置。
【請求項6】
IP網を介して相手装置と通信を行うIP通信装置であって、
前記相手装置との間で呼接続用サーバを介してSIPメッセージの送受信を行う呼制御部と、
前記SIPメッセージの送受信によりセッションを確立した後に、前記相手装置に対してメディアデータのファイルを転送するファイル転送部と、
前記メディアデータのファイルの転送を管理するファイル転送管理部とを備え、
前記ファイル転送管理部は、前記ファイルの転送能力の情報を付加したINVITEメッセージを前記SIPメッセージとして前記呼制御部により前記相手装置に送信し、前記相手装置からファイルの転送能力を保有する旨を応答したとき前記ファイル転送部が転送するファイルの情報を付加したre−INVITEメッセージを前記SIPメッセージとして前記呼制御部により前記相手装置に送信し、前記re−INVITEメッセージの応答として前記相手装置から受信可能を示す情報を受信したとき前記ファイル転送部によりファイルの転送を行うことを特徴とするIP通信装置。
【請求項7】
前記相手装置から待機を指示する情報を受信した場合、前記ファイルの転送を一時的に中断することを特徴とする請求項1または請求項5または請求項6に記載のIP通信装置。
【請求項8】
IP網を介して相手装置と通信を行うIP通信装置のデータ送信方法であって、
前記相手装置との間で呼接続用サーバを介してSIPメッセージの送受信を行う呼制御ステップと、
前記呼制御ステップにより送受信したSIPメッセージに基づいて前記相手装置がファイル転送機能を有すると判断した場合、前記相手装置に対してメディアデータのファイルを転送するファイル転送ステップと
を有することを特徴とするデータ送信方法。
【請求項9】
IP網を介して相手装置と通信を行うIP通信装置のデータ送信方法であって、
メディアデータのファイルの転送能力の情報を付加したINVITEメッセージをSIPメッセージとして前記相手装置に送信し、前記相手装置からファイルの転送能力を保有する旨を応答したとき前記ファイルの情報を付加したre−INVITEメッセージをSIPメッセージとして前記相手装置に送信し、前記re−INVITEメッセージの応答として前記相手装置から受信可能を示す情報を受信したとき前記ファイルの転送を行うことを特徴とするデータ送信方法。
【請求項10】
前記相手装置から待機を指示する情報を受信した場合、前記ファイルの転送を一時的に中断することを特徴とする請求項8または請求項9に記載のデータ送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−283611(P2008−283611A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127798(P2007−127798)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】