説明

InN/TiO2光感作電極およびその製造方法

【課題】日光を吸収することができ、分離の電子-正孔対を生成することができ、また、優れた耐薬品性を持つInN/TiO光感作電極およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板と、二酸化チタン薄膜層と、窒化インジウム光感作薄膜とから構成されるInN/TiO光感作電極であって、その製作方法は、まず、二酸化チタン薄膜層を基板に塗布し、二酸化チタン薄膜層を有する基板を反応チャンバーに入れ込み、In元素とN元素を含有する原料を導入し、紫外光で励起し、二酸化チタン薄膜層の上に窒化インジウム光感作薄膜が形成される。本光感作電極は、電池要素に適用されると、素子が吸収できる日光のバンド幅は390乃至800nmの範囲になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、InN/TiO光感作電極およびその製造方法に関し、特に、電池要素や電気光学素子及び水素製造素子に適用され、より良い耐薬品性と日光吸収バンド幅を有する窒化インジウム光感作薄膜から形成される光感作電極およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感型ソーラーセルは、近年、ナノクリスタロイド薄膜技術において、急激な発展が見られ、材料が安いのが有利で、光電変換効率が向上し、ソーラーセルのコストが現在の1/5〜1/10まで低減する可能性がある。早期の色素増感型ソーラーセルは、主として、平滑電極であり、染料分子層(例えば、Ru配位子膜シリーズやシアニン(cyanine)、葉緑素及びその派生物染料である一般の染料分子)は、半導体の近くにある単層だけが、有効的に電荷移動できる。平滑電極の染料単層の吸着面積が小さいため、吸収できる太陽エネルギーが少なく、光電変換効率が良くない(1%以下)。近年、多孔性ナノ構造電極技術により、上記の技術問題が解消された。電極の触媒の表面積が平滑電極の千倍になり、そのため、光電変換効率が大幅に向上される。ミカエル グラッツエル(Michael
Graetzel)の研究によれば、色素増感型ソーラーセルの光電変換効率が1%以下から8%まで向上される。
【0003】
色素増感型ソーラーセルの効率は、明らかに、ナノ二酸化チタン電極の構造に関係するため、二酸化チタンの工程において、ナノクリスタロイド形状やクリスタロイド配向及びクリスタロイドのインターフェース性質を制御することが必要で、二酸化チタンの内部の表面積により染料の吸着量が決められ、アパーチャの大小分布が酸化還元対の拡散に影響を与え、粒径の分布が光学性質に影響を与え、電子の流動が粒子間の連繋によって決められる。既存の二酸化チタン電極の電子伝送速度が約10-4cm/sであるため、電子が容易に染料と再結合する。
【0004】
グラッツエル(Graetzel)らは、最も理想の染料を用いて、最適の実験条件で、10%の太陽エネルギー変換効率を実現し、その変換効率がアモルファスシリコンシステムの9-10%に相当するが、多結晶シリコンシステムの>15%より悪い。注意しなければならないのは、有機染料/二酸化チタン及び多結晶シリコンシステムのコストが高いから、経済利益が、例えば、石油や天然ガスのような化石燃料と比較するものではない。
【0005】
中華民国特許公報公告第I239657号の「ソーラーセル単元とそのモジュール」に記載されるのは、上表面と下表面とがある光電変換層と、当該光電変換層の上表面に形成され、当該光電変換層の縁から延伸する陽極導通部を含有する陽極層と、当該光電変換層の下表面に形成され、当該光電変換層の縁から延伸する陰極導通部を有する陰極層と、当該光電変換層を封止するように、当該光電変換層の縁に設置される一つ以上のスペーサと、が含有され、当該陽極導通部と当該陰極導通部とが、それぞれ、当該スペーサより突出し、当該光電変換層に、染料光感作層と電解質とがあり、当該染料光感作層が、当該陽極層の上に設置され、当該電解質が、当該染料光感作層と当該陰極層との間に充填される。
【0006】
上記の色素増感型電池は光電変換効率を向上できるが、コストが高く、工程が複雜で、二酸化チタンの工程を制御することが必要である問題があり、また、「ソーラーセル単元とそのモジュール」から分かるように、当該特許発明には、染料が長期的に日光によって照射すると、当該材料の定性的変化が発生して、光感作の機能が失ってしまうため、態様寿命が悪い欠点がある。そのため、一般の、従来のものは実用的とは言えない。
【特許文献1】中華民国特許公報公告第I239657号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、電池要素に適用され、光吸収効率が向上される、コストが低くて耐用寿命が長い光感作電極およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも、基板と二酸化チタン薄膜層と窒化インジウム光感作薄膜とから構成される光感作電極およびこれを製造するための方法であって、当該二酸化チタン薄膜層が被覆されている基板を、反応チャンバーに入れ込んで、アンモニアガスとインジウムを含有する化合物を導入し、そして、紫外光で励起して、当該窒化インジウム光感作薄膜を当該二酸化チタン薄膜層の上に被覆するInN/TiO光感作電極の製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の基本構造の概念図である。本発明は、図のように、InN/TiO光感作電極であり、当該光感作電極1は、少なくとも、基板11と、二酸化チタン薄膜層12と、窒化インジウム光感作薄膜13とから構成される。
【0010】
当該基板11は、ITOガラスとFTOガラス及び他の透明導電基板からなるグループから選ばれた一つである。
【0011】
当該二酸化チタン薄膜層12は、ナノ微粒子の構造で、基板11に被覆され、当該ナノ微粒子の構造は、複数のナノ微粒子が当該二酸化チタン薄膜層12に均一に分布することを指し、当該ナノ微粒子の直径は7ナノ乃至50ナノの範囲にあり、当該二酸化チタン薄膜層12の厚度は100ナノ乃至100000ナノの範囲にある。当該二酸化チタン薄膜層12の材料は高エネルギーギャップである金属▲さん▼化物でもよい。
【0012】
当該窒化インジウム光感作薄膜13は、物理や化学蒸着技術或いは類似する成膜方法により、当該窒化インジウム光感作薄膜13を当該二酸化チタン薄膜層12の上に被覆し、また、当該窒化インジウム光感作薄膜13の厚度は1ナノ乃至10000ナノの範囲にある。上記の構造により、新規の光感作電極が構成される。
【0013】
本発明に係わる光感作電極1は、光が当該基板11を介して当該窒化インジウム光感作薄膜13に着き、電子が当該窒化インジウム光感作薄膜13から当該二酸化チタン薄膜層12に注入され、そして、電力が当該基板11から外部回路へ導出され、また、当該窒化インジウム光感作薄膜13の吸収光は、スペクトル範囲が390ナノ乃至800ナノの波長範囲にある連続スペクトルでる。
【0014】
図2、2A、2B、2C及び2Dは、それぞれ、本発明に係わる光感作電極の製造流れの概念図、本発明に係わる光感作電極の製造工程aの概念図、本発明に係わる光感作電極の製造工程bの概念図、本発明に係わる光感作電極の製造工程cの概念図及び本発明に係わる光感作電極の製造工程dの概念図である。
【0015】
本発明は、図のように、InN/TiO光感作電極を製造する方法であって、少なくとも、次の工程がある。
【0016】
工程a:二酸化チタン薄膜層12が被覆されている基板11を反応チャンバー2に入れ込み、当該二酸化チタン薄膜層12が物理的や化学的方法により当該基板11に塗布される。
【0017】
工程b:アンモニアガス31とインジウムを含有する化合物32を、当該反応チャンバー2に導入し、当該アンモニアガス31とインジウムを含有する化合物32の比率は1乃至10の範囲にあり、当該インジウムを含有する化合物32は、トリメチルインジウムとトリエチルインジウム、インジウムを含有する有機金属の先駆体或いはインジウムを含有する有機金属の化合物である。本発明において、アンモニアガス31とインジウムを含有する化合物32を、反応原料とし、当該アンモニアガス31の代わりに窒素を含有する化合物を使用しても良い。
【0018】
工程c:紫外光4で当該二酸化チタン薄膜層12を励起し、当該紫外光4は、連続の紫外光光源ランプとエキシマーレーザー、半導体レーザー、ガスレーザー、固体レーザー、液体レーザー、化学レーザー及び自由電子レーザーからなるグループから選ばれたものにより生成され、当該二酸化チタン薄膜層12は600度乃至900度の範囲の温度が耐えられる。
【0019】
工程d:当該二酸化チタン薄膜層12の上に窒化インジウム光感作薄膜13が形成され、上記の工程を介して窒化インジウム光感作薄膜13が形成される時間は1時間乃至8時間の範囲にある。
【0020】
図3は、本発明の使用状態の概念図である。本発明に係わる光感作電極1は、図のように、白金対電極51に合わせて電池要素5が形成され、その内部に電解液52が注入される。本発明は、ソーラーセル要素や光起電力効果素子、水素製造素子及び光電子発射素子にも適用される。
【0021】
以上のように、本発明に係わるInN/TiO光感作電極は、色素増感型ソーラーセルの染料の寿命を増加でき、光吸収効率が向上され、工程が簡単で、製造コストの低減が実現されるため、有効的に従来の様々の欠点を解消でき、そして、より実用的なものであり、そのため、法に従って、特許請求を出願する。
【0022】
以上は、ただ、本発明の実施例であり、本発明は、それによって制限されず、本発明の特許請求の範囲や明細書の内容に従って、等価の変更や修正ができ、当該変更や修正は、全てが、本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の基本構造の概念図
【図2】本発明に係わる光感作電極の製造流れの概念図
【図2A】本発明に係わる光感作電極の製造工程aの概念図
【図2B】本発明に係わる光感作電極の製造工程bの概念図
【図2C】本発明に係わる光感作電極の製造工程cの概念図
【図2D】本発明に係わる光感作電極の製造工程dの概念図
【図3】本発明の使用状態の概念図
【符号の説明】
【0024】
1 光感作電極
11 基板
12 二酸化チタン薄膜層
13 窒化インジウム光感作薄膜
2 反応チャンバー
31 アンモニアガス
32 インジウムを含有する化合物
4 紫外光
5 電池要素
51 白金対電極
52 電解液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
基板と、
当該基板に被覆される二酸化チタン薄膜層と、
当該二酸化チタン薄膜層に被覆される窒化インジウム光感作薄膜と、
が含有される、
ことを特徴とするInN/TiO光感作電極。
【請求項2】
当該基板は、ITOガラスとFTOガラス及び他の透明導電基板からなるグループから選ばれた一つであることを特徴とする請求項1に記載のInN/TiO光感作電極。
【請求項3】
当該二酸化チタン薄膜層はナノ微粒子の構造であることを特徴とする請求項1に記載のInN/TiO光感作電極。
【請求項4】
当該ナノ微粒子の直径は7ナノ乃至50ナノの範囲にあることを特徴とする請求項3に記載のInN/TiO光感作電極。
【請求項5】
当該二酸化チタン薄膜層の厚度は100ナノ乃至100000ナノの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のInN/TiO光感作電極。
【請求項6】
当該窒化インジウム光感作薄膜の厚度は1ナノ乃至10000ナノの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のInN/TiO光感作電極。
【請求項7】
当該窒化インジウム光感作薄膜の吸収スペクトル範囲は波長範囲が390ナノ乃至800ナノの範囲にある連続スペクトルであることを特徴とする請求項1に記載のInN/TiO光感作電極。
【請求項8】
請求項1に記載のInN/TiO光感作電極を製造するInN/TiO光感作電極の製造方法であって、少なくとも、
a、二酸化チタン薄膜層が被覆されている基板を、反応チャンバーに入れ込むステップと、
b、アンモニアガスとインジウムを含有する化合物を、当該反応チャンバー内へ導入するステップと、
c、紫外光で、当該二酸化チタン薄膜層を励起するステップと、
d、当該二酸化チタン薄膜層に、窒化インジウム光感作薄膜が形成されるステップと、
が含有される、
ことを特徴とするInN/TiO光感作電極の製造方法。
【請求項9】
当該インジウムを含有する化合物は、トリメチルインジウムとトリエチルインジウム、インジウムを含有する有機金属の先駆体或いはインジウムを含有する有機金属の化合物であることを特徴とする請求項8に記載のInN/TiO光感作電極の製造方法。
【請求項10】
当該アンモニアガスは窒素を含有する化合物であることを特徴とする請求項8に記載のInN/TiO光感作電極の製造方法。
【請求項11】
当該アンモニアガスとインジウムを含有する化合物の比率は1乃至10の範囲にあることを特徴とする請求項8に記載のInN/TiO光感作電極の製造方法。
【請求項12】
当該二酸化チタン薄膜層は600度乃至900度の範囲の温度が耐えられることを特徴とする請求項8に記載のInN/TiO光感作電極の製造方法。
【請求項13】
窒化インジウム光感作薄膜が形成するための時間は1時間乃至8時間の範囲にあることを特徴とする請求項8に記載のInN/TiO光感作電極の製造方法。
【請求項14】
当該紫外光は、連続の紫外光光源ランプとエキシマーレーザー、半導体レーザー、ガスレーザー、固体レーザー、液体レーザー、化学レーザー及び自由電子レーザーからなるグループから選ばれたものにより生成されたものであることを特徴とする請求項8に記載のInN/TiO光感作電極の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−234569(P2007−234569A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164510(P2006−164510)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(595165656)行政院原子能委員会核能研究所 (51)
【Fターム(参考)】