説明

K及びMgの回収方法及び装置

【課題】濃縮海水から効率よく、高回収率にてK及びMgを回収する方法及び装置を提供すること。
【解決手段】1)濃縮海水を、イオン交換膜を装着した電気透析装置にて処理してKを濃縮した画分とMg2+を濃縮した画分を得る工程、該Kを濃縮した画分を晶析処理にてKClを得る工程を有する、K及びMgの回収方法。2)濃縮海水をアルカリ溶液にて反応晶析を行い、Mg(OH)と分離液Aに固液分離する工程、該分離液Aを炭酸塩又は二酸化炭素にて反応晶析を行い、CaCOと分離液Bに固液分離する工程、該分離液Bを晶析処理にてKClを得る工程を有する、K及びMgの回収方法。3)濃縮海水を、Kを濃縮した画分とMg2+を濃縮した画分を得るための、イオン交換膜を装着した電気透析装置を含む、K及びMgの回収装置。4)濃縮海水をアルカリ溶液にて反応晶析を行い、Mg(OH)と分離液Aに固液分離する装置、該分離液Aを炭酸塩又は二酸化炭素にて反応晶析を行い、CaCOと分離液Bに固液分離する装置、該分離液Bを晶析処理にてKClを得る装置を有する、K及びMgの回収装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、K及びMgの回収方法及び装置に関するものである。詳しくは、排出される濃縮海水に溶存するマグネシウム(Mg)とカリウム(K)を高効率に分離、濃縮後、高純度の塩化カリウム(KCl)と塩化マグネシウム(MgCl)溶液、または高純度のKClと水酸化マグネシウム(Mg(OH))を製造するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換膜法の製塩プラントでは海水中の塩分の約30%を回収しており、そこから食用塩を製造した残りの濃縮海水(1工場あたり約230m/日)は、一部を除いて希釈して排出している。
RO膜法の淡水化プラントでは海水の約40%の水を回収するが、水が除かれた濃縮海水(取水量の60%)は、製塩プラントと同様に希釈して排出している。これら濃縮海水は有用資源が濃縮しており、特にMgとKは高濃度となっている。
なお、特許文献1及び2には、RO膜、NF膜を用いて海水やかん水から淡水とともに塩を回収する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0163471号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0024354号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、濃縮海水を原料とし、そこに溶存する資源を効率的に回収するシステムについては未だ確立されていなく、改善の余地が多分にある。
本発明は、濃縮海水から効率よく、高回収率にてK及びMgを回収する方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下のとおりである。
1)濃縮海水を、イオン交換膜を装着した電気透析装置にて処理してKを濃縮した画分とMg2+を濃縮した画分を得る工程、該Kを濃縮した画分を晶析処理にてKClを得る工程を有する、K及びMgの回収方法。
2)濃縮海水をアルカリ溶液にて反応晶析を行い、Mg(OH)と分離液Aに固液分離する工程、該分離液Aを炭酸塩又は二酸化炭素にて反応晶析を行い、CaCOと分離液Bに固液分離する工程、該分離液Bを晶析処理にてKClを得る工程を有する、K及びMgの回収方法。
3)濃縮海水を、Kを濃縮した画分とMg2+を濃縮した画分を得るための、イオン交換膜を装着した電気透析装置を含む、K及びMgの回収装置。
4)濃縮海水をアルカリ溶液にて反応晶析を行い、Mg(OH)と分離液Aに固液分離する装置、該分離液Aを炭酸塩又は二酸化炭素にて反応晶析を行い、CaCOと分離液Bに固液分離する装置、該分離液Bを晶析処理にてKClを得る装置を有する、K及びMgの回収装置。
本発明1)及び3)は、濃縮海水(好ましくは、全塩分濃度が5〜20質量%)から効率的にK及びMgを回収するには、イオン交換膜を装着した電気透析装置、更には晶析装置、電解装置、脱臭素装置等を用いれば、効率的にK及びMgを回収できることを見出したものである。
本発明2)及び4)は、濃縮海水(好ましくは、全塩分濃度が20質量%以上)から効率的にK及びMgを回収するには、反応晶析装置、晶析装置、電解装置、脱臭素装置等を用いれば、効率的にK及びMgを回収できることを見出したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、通常用いられている製塩用電気透析装置等を用いて、濃縮海水、例えば、にがり等から効率よく、高回収率にてK及びMgを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の方法を説明するための模式図である。
【図2】本発明の態様を説明するためのフロー図である。
【図3】本発明の態様を説明するためのフロー図である。
【図4】本発明の態様を説明するためのフロー図である。
【図5】本発明の態様を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を説明する。
なお、以下、「イオン交換膜を装着した電気透析装置」を「ED装置」、「Kを濃縮した画分」を「K画分」、「Mg2+を濃縮した画分」を「Mg画分」、と各々、略す場合がある。
【0009】
本発明において、濃縮海水とは、全塩分濃度が5質量%以上である水溶液を意味し、ゴミ等の不溶物は含まれない。ここで、塩分とは、蒸発乾固したときの金属塩を意味する。
濃縮海水は、金属としてK及びMgのみを含むものであってよいが、通常、K及びMg以外に任意の金属が含まれる。
本発明は、濃縮海水をED装置にて処理して、K画分とMg画分を得る工程を有する。
本発明に用いられるED装置は、電気透析の作用とイオン交換膜の交換基の作用により、K画分とMg画分を得る機能を有する装置であれば、特に制限はない。イオン交換膜としては、陽イオン交換膜(以下、C膜とも記す)及び陰イオン交換膜(以下、A膜とも記す)を交互に配置可能な平膜構造が好ましく、C膜及びA膜の構造(支持体の有機高分子構造、支持体に結合させたイオン交換基の種類等)も特に上記機能を有するものであれば、特に制限はない。
【0010】
また、本発明は、ED装置として、例えば、電気透析の作用とC膜交換基の作用により、KのC膜での透過性をMg2+より大きく、かつ電気透析の作用とA膜交換基の作用により、K及びMg2+のA膜での透過を阻止することにより、C膜とA膜との間に形成される別個の空間(以下、膜空間ともいう)内にKが濃縮されたK画分とMg2+が濃縮されたMg画分とを有する空間を形成できるものが挙げられる。このようなED装置はC膜とA膜を各々複数有することができる。
【0011】
本発明において、濃縮海水、K画分、Mg画分等は、適宜、管、バルブ、ポンプ、コンプレッサー並びにそれらの制御装置等が用いられことにより、自身のED装置を含む目的の装置へ移送することができる。
濃縮海水は、通常、ろ過によりED装置に支障となる不純物が除去される。また、ろ過されたものは、そのままED装置へ移送してもよいが、浸透圧調整が必要な場合には、これを行ってもよい。濃縮海水、ろ過、浸透圧調整、ED装置への注入は、この順に連続して行うことができる。
ED装置を直列又は並列にして、Mg画分をED装置間で移送し、かつ最終的にMg画分のみを集めるために、あるいはK画分のみを集めるために、膜空間と連絡した管、バルブ、ポンプ、コンプレッサー等並びにそれらの制御装置等が用いられる。
【0012】
以下、図を参照して、EDを用いる本発明の実施態様の一例を説明する。
図1は、本発明の方法が適用されるED装置の構成を模式的に示したものである。1は、ED装置であり、ED装置1には、A膜(A)とC膜(C)で囲まれる膜空間5、6、及び7(他の膜は不図示)が形成され、初めに濃縮海水は、これら全膜空間に注入され、電界と膜の作用により、膜を介してイオンが移動し、膜空間5及び7等にはMg画分が、膜空間6等にはK画分が生成される。図1(a)は、透析の状態を模式的に示している。●は、Kを含むカチオンであり、■はMgであり、○はアニオンであり、矢印方向は、移動方向を示す。カチオン(2)及び(3)は、C膜を透過するが、A膜は透過できず、アニオン(4)はA膜を透過するが、C膜は透過できない。図中、8は、ガスの発生を防ぐための循環される電極液であり、9は、電極液を保持する電流透過性の膜である。
図1(b)は、図1(a)のイオンの移動の結果を模式的に示したものであり、膜空間5及び7等にMg画分が、膜空間6等にK画分が生成されることを示している。Mg画分とK画分の各々の膜空間は、交互に配列されている。このMg画分には、製塩用のC膜(MgよりKが非常に透過しやすい膜)を装着したED装置を用いた場合、C膜を透過し難いMgイオン等が濃縮される。
濃縮海水をED装置の膜空間5、6、7等に注入する方法は、K及びMgを濃縮することができるのであれば、特に制限はなく、濃縮海水のみを用いてもよいし、濃縮海水と他の任意の水、例えば、任意のかん水、海水、純水等を併用してもよい。濃縮海水以外の水を併用する場合は、濃縮海水を注入する膜空間と同じでも別でもよい。また、濃縮海水をED装置に注入し、処理する方式は、バッチ式でも連続式でもよい。
【0013】
本発明では、例えば、K画分とMg画分を形成する工程は、第1番目のED装置にて濃縮海水を処理して得られたK画分を同装置から回収するとともに第1番目の同装置にて処理して得られたMg画分を第2番目のED装置に移送して、同第2番目のED装置にて処理して得られたK画分を同装置から回収するとともに第2番目の同装置にて処理して得られたMg画分を第3番目以降の電気透析装置に移送して前記処理を繰り返すことにより、Kの回収率を向上させることができる。ここで、各ED装置に注入されるK画分は、K画分単独でも他の水との併用でもよく、上記濃縮海水のED装置への注入方法を適用することができる。また、ED装置は、好ましくは、装置数3〜15、直列に用いることが好ましい。一方、Mg画分は、後段に移行する従って濃縮されるように処理される。
本発明に適用できるED装置としては、例えば、造水技術ハンドブック、2004年11月25日、造水技術ハンドブック編集企画委員会編、財団法人 造水促進センター発行、113頁図基I−13.24に記載のもの等が挙げられる。
【0014】
本発明におけるED装置における処理以降の本発明の態様の一例を図2及び3に沿って説明する。
上記ED装置にて得られるK画分は、Kの金属イオン総量に対する割合が、通常、6.0〜65質量%、好ましくは、18〜65質量%に濃縮される。
上記ED装置にて得られるMg画分は、Mgの金属イオン総量に対する割合が、通常、10〜60質量%、好ましくは、30〜60質量%に濃縮される。
本発明では、このMg画分は、MgCl溶液を主体とするものが得られることが好ましく、所望によりMg画分を晶析装置に移送し、同装置にて晶析処理等を施して、Mgを精製してもよい。
【0015】
本発明は、K画分に含有される臭素を塩素により置換する工程が実施されることが好ましい。K画分は、通常、陰イオンとして塩素以外の臭素等のハロゲンイオンを含んでいる。本発明は、塩素をK画分が移送される脱臭素装置に注入することにより塩素を臭素と置換するとともに臭素ガスを排出乃至回収し、得られたK画分を蒸発晶析、加熱冷却晶析等の晶析装置に移送し、晶析することにより、KClを結晶として得ることができる。
上記蒸発晶析、及び加熱冷却晶析の方法としては、特に制限はなく従来公知の方法が適用できる。例えば、実施例に記載のように低純度KCl回収後の母液の一部乃至全部を、粗製KClの溶解に、又、高純度KCl回収後の母液の一部乃至全部を、低純度KClの溶解に循環利用すること等が挙げられる。
また、図3に示したように、同時に晶析されたNaClを溶液として、電解装置に移送し、電解処理し、NaOHと塩素を生成することができる。該塩素を脱臭素装置に注入して、K画分に含まれる臭素を塩素に置換するとともに臭素をガス化して回収乃至排出するとともに、Mg画分を反応晶析装置(RC装置とも記す)に移送し、該NaOHをRC装置に注入して、脱炭酸環境にてMg画分と接触させることにより、反応晶析によりMg(OH)を生成することができる。上記K画分の脱臭素装置、晶析装置への移送、NaCl溶液の電解装置への移送、Mg画分の晶析装置又はRC装置への移送等は、適宜、管、バルブ、ポンプ、コンプレッサー並びにそれらの制御装置等が用いられことにより目的の装置へ移送することができる。
【0016】
上記図2及び3の態様では、Kの回収率は60〜70%程度となる。また、MgCl溶液はNa、Kなどの不純物が少なく、高純度のMgCl、Mg(OH)、またはMgO製造の原料ソースに好適である。図2の態様では、Kの回収率は60〜70%程度となる。また、Mg(OH)は99%以上の高純度の製品が得られる。
上記本発明の態様は、濃縮海水の全塩分濃度が5〜20質量%である場合に好適である。
【0017】
以下に説明する本発明の態様の一例は、濃縮海水の全塩分濃度が20質量%以上である場合に好適であるものである(図4及び5参照)。この場合は、基本的にED装置を用いないで、反応晶析を適用する点を除けば上記態様と同様な処理が適用できる。
具体的には、濃縮海水をアルカリ溶液にて反応晶析を行い、Mg(OH)と分離液Aに固液分離する工程、該分離液Aを炭酸塩又は二酸化炭素にて反応晶析を行い、CaCOと分離液Bに固液分離する工程、該分離液Bを晶析処理にてKClを得る工程を有する、K及びMgの回収方法である。
上記アルカリ溶液としては、上記機能が発揮されれば特に制限はなく、水酸化カルシウム(Ca(OH))溶液、NaOH溶液、水酸化カリウム(KOH)溶液が挙げられるがこの限りではない。
また、炭酸塩液としては、上記機能が発揮されれば特に制限はなく、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)が挙げられるがこの限りではない。
前記分離液Bは、含有される臭素を塩素により置換する工程が実施されることが好ましい。
また、分離液Bを蒸発晶析、加熱冷却晶析等の晶析操作にてKClを得る工程にて、NaClを晶析し、このNaClを電解処理し、NaOHと塩素を生成し、該塩素を分離液Bに含まれる臭素、あるいは所望により点線で示したように精製において含まれる臭素と置換するために用いることができる。
以上の本発明の態様を図4及び5に示した。図4及び5において、Mg(OH)と分離液Aに固液分離する工程に用いる反応晶析は、脱炭酸条件下で行うことが好ましい。
【0018】
次に、図4及び5に示した装置構成について説明する。
濃縮海水をアルカリ溶液にて反応晶析を行い、Mg(OH)と分離液Aに固液分離する装置は、RC装置が用いられ、濃縮海水とアルカリ溶液はRC装置に移送され、同装置にて反応晶析を行うとともにMg(OH)と分離液Aに固液分離される。また、同様に、分離液Aを炭酸塩又は二酸化炭素にて反応晶析を行い、CaCOと分離液Bに固液分離する装置は、上記とは別のRC装置が用いられ、該分離液Aを同装置に移送するとともに同装置に炭酸塩又は二酸化炭素を注入することにより、反応晶析を行い、CaCOと分離液Bに固液分離する機能を有する。該分離液Bを晶析処理にてKClを得る装置は、水分を蒸発させて結晶を得る蒸発晶析装置や、温度による溶解度差を利用する加熱冷却晶析装置が挙げられ、同装置に分離液Bを移送することにより晶析処理が実施され、KClとNaClが分離される。
また、同時に晶析されたNaClを溶液として、電解装置に移送し、電解処理し、NaOHと塩素を生成し、該塩素を臭素置換のための脱臭素装置に回し、該NaOHを濃縮海水の反応晶析に用いるアルカリ溶液として回すことができる。
上記濃縮海水のRC装置への移送、分離液Aの順次、脱臭素装置、RC装置、分離液B、晶析装置への移送は、NaCl溶液の電解装置への移送等は、適宜、管、バルブ、ポンプ、コンプレッサー並びにそれらの制御装置等が用いられことにより目的の装置へ移送することができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0020】
[実施例1]
原料の濃縮海水として、イオン交換膜法の製塩プラントにて生成する苦汁をそのまま用いた(以下、製塩苦汁と記す)。以下の実施例、比較例についても原料の濃縮海水には製塩苦汁を用いた。
製塩苦汁を水で希釈し、浸透圧を調整した後、直列に連結した製塩用EDにて処理した。つまり、第1番目のEDにて処理して得られたK画分を同装置から回収するとともに第1番目の同装置にて処理して得られたMg画分を第2番目のEDに移送処理する操作を繰り返し、K画分、Mg画分を得た。
得られたK画分は蒸発晶析装置に供給し、沸点70℃の減圧下にてK画分の水分を蒸発させた。なお、水分が蒸発する過程では、NaClに次いでKClが析出するため、KClが析出以降の析出物は全量回収し、これらを少量のK画分にて結晶表面を洗浄し、付着されているMg、Ca等を除去することで、粗製KClを得た。洗浄に用いたK画分は、上記蒸発晶析装置に送った。
次に、35℃にてKCl、及びNaClの濃度が飽和濃度であるかん水(下記低純度KClと分離した母液)を75℃に昇温し、そこに該粗製KClを母液量の5質量%程度の溶け残りが生じるまで溶解後、減圧ろ過にて固液分離した。分離した母液は35℃へと冷却し、KClを主体とする析出物(以下、低純度KClと記す)を回収した。さらに、35℃にてKClが飽和濃度であるかん水(下記高純度KClと分離した母液)を75℃に昇温し、このかん水に上記低純度KClを全量溶解後、35℃へと冷却し、高純度KClを回収した。
なお、低純度KCl回収後の母液は粗製KClの溶解に、高純度KCl回収後の母液は低純度KClの溶解に全量を循環利用した。
【0021】
[実施例2]
実施例2は、図4に示した方法に準じて実施した。
製塩苦汁と20%のNaOH溶液を良好な攪拌状態にあるRC装置に連続的に供給し、反応晶析を実施後、固液分離により、Mg(OH)と分離液Aを得た。なお、本実験では製塩苦汁のMgのうち、99%以上をMg(OH)として分離した。次に、分離液Aに炭酸ガスを20%NaOH溶液と共に分離液Aに添加し、CaCOを生成させた.前記反応晶析後、固液分離によりCaCOと分離液Bを得た。なお、本実験では分離液AのCaのうち、99%以上をCaCOとして分離した。
分離液Bについては、実施例1に示したK画分と同様の処理を実施し、高純度KClを回収した.
【0022】
[比較例1]
製塩苦汁を65℃にて飽和濃度となるまで濃縮し、その後35℃まで冷却することで析出する粗製KClを全量回収した。
粗製KClからの高純度KClの回収は実施例1と同様の手法にて行った。
【0023】
製塩苦汁、および上記で回収した高純度KClのドライベースでの組成と回収率を比較した結果を表1、表2に示す。なお、高純度KClの回収率は各操作でのK基準での回収率を掛けあわせることにより算出したが、粗製KClの精製では循環する母液のK量も考慮して算出した。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
比較例1では34%であった高純度KClの回収率が、実施例1では65%、実施例2では68%へと向上した。また、実施例1、2のいずれにおいても回収した高純度KClの純度についても99.5%以上と比較例1と同程度の高い水準であった。
これより、本発明は、製塩プラントから排出される濃縮海水から、効率的にK、Mgを回収できることが分かる.
【符号の説明】
【0027】
1…ED装置、2、3…カチオン、4…アニオン、5、6、7…膜空間、8…電極液、9…膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮海水を、イオン交換膜を装着した電気透析装置にて処理してKを濃縮した画分とMg2+を濃縮した画分を得る工程、該Kを濃縮した画分を晶析処理にてKClを得る工程を有する、カリウム(K)及びマグネシウム(Mg)の回収方法。
【請求項2】
前記Mg2+を濃縮した画分は、MgCl溶液を主体とする、請求項1のK及びMgの回収方法。
【請求項3】
前記Kを濃縮した画分は、含有される臭素を塩素により置換する工程が実施される、請求項1又は2のK及びMgの回収方法。
【請求項4】
前記Kを濃縮した画分を晶析処理にてKClを得る工程にて、NaClが晶析され、このNaClは電解処理され、NaOHと塩素が生成され、該塩素は請求項3の置換に用いられる、請求項1〜3のいずれか1項のK及びMgの回収方法。
【請求項5】
前記Mg2+を濃縮した画分は、請求項4のNaOHを用いた反応晶析が行われ、Mg(OH)が生成される、請求項1〜4のいずれか1項のK及びMgの回収方法。
【請求項6】
前記濃縮海水は、全塩分濃度が5〜20質量%である、請求項1〜5のいずれか1項のK及びMgの回収方法。
【請求項7】
濃縮海水をアルカリ溶液にて反応晶析を行い、Mg(OH)と分離液Aに固液分離する工程、該分離液Aを炭酸塩又は二酸化炭素にて反応晶析を行い、CaCOと分離液Bに固液分離する工程、該分離液Bを晶析処理にてKClを得る工程を有する、K及びMgの回収方法。
【請求項8】
前記分離液Bは、含有される臭素を塩素により置換する工程が実施される、請求項7のK及びMgの回収方法。
【請求項9】
前記分離液Bを晶析処理にてKClを得る工程にて、NaClが晶析され、このNaClは電解処理され、NaOHと塩素が生成され、該NaOHは請求項7のアルカリ溶液に用いられ、該塩素は請求項8の置換に用いられる、請求項7又は8のK及びMgの回収方法。
【請求項10】
前記濃縮海水は、全塩分濃度が20質量%以上である、請求項7〜9のいずれか1項のK及びMgの回収方法。
【請求項11】
濃縮海水を、Kを濃縮した画分とMg2+を濃縮した画分を得るための、イオン交換膜を装着した電気透析装置、及びKを濃縮した画分の晶析を実施するための晶析装置を含む、K及びMgの回収装置。
【請求項12】
請求項3の置換を実施するための脱臭素装置及び請求項4の電解を実施するための電解装置を含む、請求項11のK及びMgの回収装置。
【請求項13】
濃縮海水をアルカリ溶液にて反応晶析を行い、Mg(OH)と分離液Aに固液分離する装置、該分離液Aを炭酸塩又は二酸化炭素にて反応晶析を行い、CaCOと分離液Bに固液分離する装置、該分離液Bを晶析処理にてKClを得る装置を有する、K及びMgの回収装置。
【請求項14】
請求項8の置換を実施するための脱臭素装置及び請求項9の電解を実施するための電解装置を含む、請求項13のK及びMgの回収装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−213767(P2012−213767A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−77344(P2012−77344)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(396021483)財団法人塩事業センター (18)
【Fターム(参考)】