説明

LDL酸化抑制組成物

【課題】
LDL酸化抑制効果を期待する商品には充分量のビタミンCを添加したいところであるが、ビタミンCには酸味があり、また物質の褐変を促進する場合もあるので、商品設計上添加できる量には制約が生じることがある。そこでビタミンCのLDL酸化抑制力を補うことによって、ビタミンCの添加量を抑えても、よりLDL酸化抑制力を高められる組成物を提供することを課題とした。
【解決手段】
ビタミンCとカカオ抽出成分を含有した、LDL酸化抑制力の増強された組成物
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLDL酸化抑制力のある組成物に関し、より詳しくはビタミンCとカカオ抽出成分を含有した、LDL酸化抑制力の増強された組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内における活性酸素による低密度リポ蛋白質(以下LDLと記す)の酸化が、動脈硬化の発生に重要な役割を演じていることが知られている。そしてLDLの酸化が心筋梗塞、脳卒中等の循環器疾患の原因となっている。従ってLDLの酸化を抑制することが循環器疾患の予防に役立つ。
【0003】
ビタミンCにはLDL酸化抑制力があることが知られている(例えば、非特許文献1,2参照。)。
【0004】
また非特許文献3には、ココアの摂取により、血漿中のLDL酸化抑制力が高められることが示されている。しかしながらビタミンCとの相乗効果についてはいずれの文献においても言及されていない。
【0005】
非特許文献4には、カカオ豆からのポリフェノールを含むカカオ成分の抽出方法及び、該抽出成分の組成が示されている。
【非特許文献1】Proc.Natl.Acad.Sci. Vol.93,p3704-3709
【非特許文献2】Proc.Natl.Acad.Sci. Vol.98(17),p9842-9846
【非特許文献3】Free Rad.Res, Vol.34,p93-99
【非特許文献4】Biosci.Biotechnol.Biochem. Vol.64(12),p2581-2587
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の理由から、LDL酸化抑制効果を期待する商品には充分量のビタミンCを添加したいところであるが、ビタミンCには酸味があり、また物質の褐変を促進する場合もあるので、商品設計上添加できる量には制約が生じることがある。そこでビタミンCのLDL酸化抑制力を補うことによって、ビタミンCの添加量を抑えても、よりLDL酸化抑制力を高められる組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ビタミンCとカカオ抽出成分が共存することにより、それぞれ単独でのLDL酸化抑制力の和を上回る相乗効果を有することを見いだし、この効果を飲食物に応用して本発明を完成した。すなわち本発明は、ビタミンCとカカオ抽出成分を含有した、LDL酸化抑制力の増強された組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物により、ビタミンC含有量を増やさないでもLDL酸化抑制力を相乗的に高めることが可能となり、LDL酸化抑制効果を期待する商品の設計が容易となるので、酸化LDLに起因する疾病の予防に役立つことが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の組成物は、ビタミンC及びカカオ抽出成分を含有するものであり、その形態としてはビタミンC及びカカオ抽出成分が添加されていてもよく、あるいは、チョコレート、ココアといったカカオ抽出成分を含有する組成物にビタミンCを添加していてもよい。本発明においてカカオ抽出成分とは、カカオマスから油脂を圧搾や抽出により除去した部分、またはそれからさらに抽出された成分を指し、ポリフェノールを含んでいる。本発明においてカカオ抽出成分を用いるにあたっては、カカオ抽出成分を含むものであれば油脂等のカカオ抽出成分以外の成分が共存していてもよく、ココアパウダー、調製ココア、カカオマス、チョコレート等も使用できる。ビタミンCとしては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン2−グルコシドがあげられる。また、アセロラ、ゴーヤ、レモンといったビタミンCを含む組成物とカカオ抽出成分を含む組成物を組み合わせても構わない。中でもココアパウダーとビタミンCを含むココアは摂取しやすいので好適である。ビタミンCの量はココア1杯(約115g)当たり12〜500mgが好ましい。栄養機能食品の規格基準によればビタミンCは、1日当たり35〜1000mgの摂取が好ましいとされている。なお表2で後述するようにココアの場合には一杯(約115g)あたりのビタミンC含有量が500mgを越えると嗜好面で好ましくない。
試験例1
【0010】
カカオ抽出成分を、次の方法により調製した。すなわち、エクアドル産カカオ豆由来のカカオマスを5倍容量のn―ヘキサンに30分間室温下で分散させ、ほとんどの油脂を除去した。次に、この脱脂されたカカオマスを70%(V/V)アセトン水で抽出し、続いてアセトンを減圧下で蒸留により除去した。得られた水性溶液を9倍容量のn−ブタノールで抽出した。減圧濃縮したn−ブタノール層をダイアイオン(Diaion)HP−2MGカラム(三菱化学製、15cm×10cmI.D.)にかけ、カラムを0.1%のトリフルオロ酢酸を含む15%(V/V)エタノール水溶液で洗浄した。続いてカラムから80%(V/V)メタノール水溶液でプロシアニジンを多く含んだ画分を溶出した。これを乾燥、粉末化したものをカカオ抽出成分とした。該カカオ抽出成分は72重量%のポリフェノールを含んでいた。
【0011】
LDL画分の調製及びLDL酸化抑制力の測定は、次の方法で行った。すなわち、健常な成人男女29名(平均年齢39才)の血漿を得た後、血漿からのLDLの分離をシングルスピン密度勾配遠心分離(417,000×g,40分,4℃)にて行った。得られた画分を2000倍容量の10mmol/Lリン酸塩緩衝液に対して4℃で一夜透析した。蛋白質濃度はシンコニン酸法によって決定した。
LDL酸化抑制力の測定は、蛋白質濃度100μg/mlのLDL画分にビタミンC(L−アスコルビン酸)またはカカオ抽出成分を添加した後、酸化開始剤として200μMのV−70(2−2´−アゾビス(4−メトキシ―2,4−ジメチルバレロニトリル);2−2´−azobis(4−methoxy―2,4−dimethylvaleronitrile))を混合して37℃で反応を行った。V−70添加時から波長234nmにおける吸光度が上昇を開始するまでの時間(ラグタイム)を測定し、LDL画分のみのサンプルのラグタイムを1とした時の各サンプルのラグタイムから1を減じた値を酸化遅延率としてLDL酸化抑制力の指標とした。結果を表1に示す。
【0012】
【表1】

上記試験例1の試験区7〜11では、同濃度のビタミンC又はカカオ抽出成分単独よりも酸化遅延率が増加し、しかも同濃度のビタミンCおよびカカオ抽出成分それぞれ単独での酸化遅延率の和よりも酸化遅延率が増しており、ビタミンCとカカオ抽出成分のLDL酸化抑制に対する相乗効果が認められた。
実施例および比較例
【0013】
ココアパウダー(油分22重量%)5g、砂糖10gを温めた牛乳100mlによく溶かしてココアを作成した。これにビタミンC(L−アスコルビン酸)を添加して、10名の専門評価者によって味の評価を行った。結果を表2に示す。
【0014】
【表2】

この結果から、1杯(115g)当たりのビタミンC含有量が500mg以下であれば、風味上ココアとして許容できるものといえる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は経口摂取する組成物全般に利用できるが、なかでも飲食物としてのカカオ豆加工品への利用に適し、特に摂取のし易さからココアが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンCとカカオ抽出成分を含有した、LDL酸化抑制力の増強された組成物。
【請求項2】
酸化抑制作用を有するものであることを特徴とし、健康維持を助けるものである旨の表示を付した請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物がココアである請求項1または2の何れか一項に記載の組成物。
【請求項4】
ココア115g当たり12〜500mgのビタミンCを含む請求項3に記載のココア。

【公開番号】特開2006−87352(P2006−87352A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277149(P2004−277149)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】