説明

LEDパッケージの製造方法

【課題】LEDパッケージ基板底面では放熱体との十分な接続面積及び上端部では十分な電気接続部面積を確保すると共に、材料費を低減して低コストにする。
【解決手段】LEDパッケージ基板を、LEDチップ装着部及びLEDチップの接続部を上面に形成するだけの十分な面積を有する平板状底部と、該底部端の両側から立ち上がる一対の壁部先端を互いに外方向に折り曲げるように絞り加工した一定板厚の金属プレートの上に、樹脂層からなる絶縁層を挟んで金属層を接合した積層構成とする。金属プレートの平板状底部と、該底部から壁部が立ち上がるコーナー部の曲がり半径をR1とし、かつ、壁部と外方向に伸びる上端部との間のコーナー部の曲がり半径をR2として、R1>R2の関係とする。壁部先端を互いに外方向に折り曲げた先端側上面に一対の接続電極を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDチップのためのLEDパッケージ基板を、一定板厚の金属プレートを加工して構成したLEDパッケージの製造方法、及び該製造方法により製造されたLEDパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)は、消費電力が低く二酸化炭素削減、高耐久性という環境と省エネを兼ね備えた素子として普及している。このようなLEDチップを搭載したパッケージは、配線基板上に装着して、大型ディスプレイ、携帯電話やデジタルビデオカメラ、PDAなどの電子機器のバックライト、道路照明や一般照明などに用いられている。LEDはそれ自体が発光素子であり、熱を放出するので、LEDパッケージは基本的に冷却のための放熱装置を含んでいる。
【0003】
LEDパッケージ基板としてセラミック基板又はシリコン基板を使用した方法では、セラミックやシリコンの熱伝導が銅などの金属よりも悪いためうまく放熱できないこと、高価なこと、加工が困難などの問題がある。このような放熱問題を解決するために、LEDパッケージ基板として、それ自体が熱伝導性の良い金属板を加工することにより構成することが知られている。
【0004】
図15は、特許文献1に開示のLEDパッケージを示し、(A)はパッケージの中央部における断面図、(B)はその平面図である。図示のLEDパッケージは、LEDチップと、LEDチップを搭載するCu基板と、LEDチップの各電極とCu基板上に設けられるCu配線層とを電気的に接続するワイヤと、Cu基板の素子搭載部分を封止する封止樹脂とを有している。
【0005】
Cu基板は、LEDチップを搭載する凹状の窪みをプレス加工によって成形された形状を有して、その表面にSiOからなる絶縁層を接着材として薄膜状のCu配線層を一体的に有する。しかし、Cu基板材に対して、LEDチップを搭載する凹状の窪みをプレス加工によって成形することは、次のような課題を持っていると言える。一般に金属の厚板をプレスで窪みを形成する場合は薄板を折り曲げ加工で形成する場合に比べ、大きな力を必要とするため、窪みの大きさに制約を受けることや、SiOは固くプレス加工時に破断し易く大きな力のプレス加工には不向きであること等が挙げられる。このためより薄い一定板厚の金属板を用いることにより、材料を節約して可能な限りサイズを小型化して、低コストで製造可能な方法が求められる。
【0006】
図16は、特許文献2に開示のLED照明器具を示す図であり、(A)は上面図を示し、(B)は部分断面図を示している。図示のように、一定板厚の絶縁金属基板は、絞り加工により設けたLEDチップ設置用の凹所を有する。絶縁金属基板は、金属基板層,絶縁材料層からなる電気絶縁層,導電性金属からなる電極パターンと、リードパターンとからなっている。隣接するLEDチップ同士は電極パターンを介してボンディングワイヤによって電気的に接続されている。
【0007】
しかし、特許文献2は、一枚の絶縁金属基板に複数のLEDチップを搭載しているモジュールについて開示している。特許文献2には、LEDチップ毎に切り分けて個片化した個別パッケージ、及びこの個別パッケージを配線基板及び放熱体に装着することについての開示は無い。それ故に、個別パッケージの配線基板への接続、及び放熱についての検討がなされていない。
【0008】
なお、特許文献3には、インクジェット印刷法を利用した金属皮膜形成方法が、特許文献4には、スクリーン印刷法を利用した金属皮膜形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-245032号公報
【特許文献2】特開平1-309201号公報
【特許文献3】特許第3774638号公報
【特許文献4】特許第3764349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
LEDチップ毎に切り分けて個片化した個別パッケージを配線基板及び放熱体に装着するに際しては、放熱体に接続するLEDパッケージ基板裏面から離して、LEDパッケージ基板の上端部に配線基板との電気接続部を設けることにより、LEDパッケージ基板と配線基板との電気的接続を簡易に行うと同時に、放熱と電気接続のそれぞれのコストパフォーマンスの最適化を図って、総合して安価で高効率な排熱を実現することができる。このため、個々のLEDパッケージ基板については可能な限り小型化を図って材料費を低減しつつも、平板状底部に大きな面積を確保して、この大きな面積を介して放熱体に伝熱するだけでなく、基板上端部では、配線基板との電気接続部に十分な面積を確保する必要がある。また、一定板厚の薄い金属板を絞り加工すると、絞りの歪がLEDパッケージ基板周辺部に現れるために、特に、小型化した個々のLEDパッケージ基板を形成することは困難となる。
【0011】
本発明は、係る問題点を解決して、一定板厚の金属プレートを絞り加工して形成したLEDパッケージ基板を構成するに際して、LEDパッケージ基板形状及びその製造方法を工夫して、底面では放熱体との十分な接続面積及び上端部では十分な電気接続部面積を確保すると共に、材料費を低減して低コストで高信頼度なLEDパッケージを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のLEDパッケージの製造方法、及び該製造方法により製造されたLEDパッケージは、LEDチップのためのLEDパッケージ基板を、一定板厚の金属プレートを加工して構成する。一定板厚の金属プレートの上に、少なくとも樹脂層からなる絶縁層を接合した積層体を構成する。LEDパッケージ基板領域の周辺において、打ち抜きによって積層体を貫通する開口部を形成する。開口部を形成した後、積層体の絞り加工を行って、LEDチップ装着部及び該LEDチップの一対の接続電極を接続するための一対の接続部を上面に形成するだけの十分な面積を有する平板状底部と、該底部端の少なくとも両側からそれぞれ立ち上がる一対の壁部先端を互いに外方向に折り曲げるように構成する。絞り加工のために用いたパンチよりコーナー角度を小さくした成型用パンチを用いて、接続電極部の幅を広くする電極部角度成型を行なう。即ち、絞りによる一定板厚の金属プレートの平板状底部と、該底部から壁部が立ち上がるコーナー部の曲がり半径R1と、角度成型用のパンチによる壁部と外方向に伸びる壁部先端との間のコーナー部の曲がり半径R2との関係をR1>R2とするように成型する。LEDパッケージ基板上の絶縁層の上に形成した配線層の上あるいは絶縁層上に、LEDチップを装着すると共に、該LEDチップの一対の電極を、平板状底部上面の両側に絶縁分離された金属層にそれぞれ接続し、かつ、壁部先端を互いに外方向に折り曲げた先端側上面に形成した金属層を一対の接続電極として構成する。平板状底部と壁部に挟まれた凹所に透明樹脂を充填する。
【0013】
また積層体は、金属プレートの上に接合した絶縁層の上にさらに金属層を接合して構成しても良い。この場合、積層体を貫通する開口部を形成する前に、絶縁層上の金属層の加工を行って、少なくとも開口部に相当する位置の金属層を除去する。この金属層を配線層として活用する。そして金属層の上には、反射材として機能する銀表面処理を施しても良い。
【0014】
あるいは配線層は、電極部角度成型を行った後、反射性を有する導電性金属インクを用いて塗布し、焼成することによって形成し、接続電極は該配線層よりも厚膜の一対の接続電極を構成するために、導電性金属インクを用いてスクリーン印刷法で導電性金属膜の塗布をし、焼成を行なうことによって形成しても良い。
【0015】
絶縁層を構成する樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、あるいはオレフィン系樹脂である。また、絶縁層を、樹脂層と接着材層との2層により構成しても良い。
【0016】
積層体を貫通する開口部の形成は、絶縁層側から金属プレートに対して該樹脂層を押し付けるようにして打ち抜いて貫通させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、LEDパッケージ基板に加工性及び熱伝導性の良好な金属プレートを用い、かつ、そこに装着されるLEDチップ接続配線との絶縁性を確保する絶縁層を用いつつも、LEDパッケージ基板形状を工夫して、可能な限り小型化を図って材料費を低減しつつも、平板状底部に大きな面積を確保して、この大きな面積を介して放熱体に伝熱するように構成したことによりLEDチップから放熱体への熱伝導性を向上させることができるだけでなく、配線基板との電気接続部に十分な面積を確保することができる。
【0018】
また、本発明によれば、LEDパッケージ基板の配線基板との電気接続部を、LEDパッケージ基板を装着する放熱体から分離することにより、LEDパッケージ基板と配線基板との電気的接続を簡易に行うと同時に、放熱と電気接続のそれぞれのコストパフォーマンスの最適化を図って、総合して安価で高効率な排熱を実現することができる。
【0019】
また、本発明によれば、LEDパッケージ基板形状を工夫したことにより、高価なLEDチップ封止樹脂を、必要とする箇所のみに限定的に注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を具体化するLEDパッケージの第1の例を示す側面断面図である。
【図2】金属プレートと、絶縁層(ポリイミド)と、金属層(例えば、銅箔)の積層体を例示する図である。
【図3】図2とは異なる別の例の積層体を例示する図である。
【図4】金属層除去工程を説明する図であり、(A)は(B)中に示すX−X’ラインで切断した積層体の断面図を、(B)は平面図を示している。
【図5】開口部の打ち抜き工程を説明する図であり、(A)は(B)中に示すX−X’ラインで切断した積層体の断面図を、(B)は平面図を示している。
【図6】(A)は、図5に示した開口部打ち抜き工程をさらに説明するための断面図であり、(B)は(A)中に示す円内の詳細断面図であり、(C)は逆方向から打ち抜きした場合の不都合を説明する図である。
【図7】(A)及び(B)はそれぞれ、絞り加工工程例を説明する図である。
【図8】電極部角度成型工程を説明する図である。
【図9】(A)は、金属表面処理をしたLEDパッケージ基板を(B)中のX−X’ラインで切断した断面図であり、(B)はその平面図である。
【図10】図1に例示のLEDパッケージの第1の例を用いて構成したLEDモジュール装置を例示する断面図である。
【図11】図2及び図3とは異なる別の例の積層体を例示する図である。
【図12】薄膜配線層の形成工程を説明する図である。
【図13】厚膜配線層の形成工程を説明する図であり、(A)は(B)中のラインX−X’で切断したLEDパッケージ基板の断面図を、また(B)は平面図をそれぞれ示している。
【図14】完成したLEDパッケージの第2の例を示す断面図である。
【図15】特許文献1に開示のLEDパッケージを示し、(A)はパッケージの中央部における断面図、(B)はその平面図である。
【図16】特許文献2に開示のLED照明器具を示す図であり、(A)は上面図を示し、(B)は部分断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、例示に基づき本発明を説明する。図1は、本発明を具体化するLEDパッケージの第1の例を示す側面断面図である。図示のLEDパッケージは、LEDパッケージ基板の上に構成される。LEDパッケージ基板は、詳細は後述するように、金属プレートの上に絶縁層を挟んで金属層(例えば、銅箔)を接合した積層体を所定形状に絞り加工することにより、LEDチップ装着部及びその一対の電極を接続するための接続部を、平板状底面の上に形成している。金属層の上には、反射材として機能する銀メッキを施している。一対の接続電極(金属層の両端側)は、互いに絶縁分離する必要がある。このために、図1に例示のLEDパッケージの第1の例においては、接続配線として機能する金属層(及び銀メッキ)を、左右両側に絶縁分離するためのスリットが開口してある。
【0022】
LEDパッケージ基板の平板状底部おもて面の銀メッキした金属層あるいは絶縁層の上に、LEDチップを、接着材を用いて固定する。このLEDチップは、LED発光面を上面に有している。なお、LEDチップは、1つの凹所に1個のみ搭載した形態を例示したが、1つの凹所に複数チップを搭載することもできる。LEDチップには、接続配線として機能する金属層との間でワイヤボンド接続が行われる。LEDチップをLEDパッケージ基板の底部金属層の上に固着した後、金属層上の一対の接続電極のそれぞれの接続部と、LEDチップの一対の接続電極間を、ボンディングワイヤによりワイヤボンド接続する。上述したように、金属層の上には、反射材として銀メッキが形成されているので、この銀メッキをワイヤボンディング性向上にも機能させることができる。
【0023】
LEDチップが装着され、電気的に接続配線された後、透明樹脂を充填して、LEDパッケージが構成されている。透明樹脂(材質は、例えばエポキシ系やシリコーン系)を用いて樹脂封止(トランスファーモールドあるいはポッティング)する。樹脂封止はディスペンサーやスクリーン印刷でも行なうことができる。封止樹脂の高さは、接続電極として機能する反射材上面と同平面まで注入する。以下、図2〜図9を参照して、さらに、その製造法について詳述する。
【0024】
図2は、金属プレートと、絶縁層(例えば、ポリイミド)と、金属層(例えば、銅箔)の積層体を例示する図である。この積層体が、後の金型を用いたプレス加工により絞り加工されることになる。絶縁層としては、ポリイミド樹脂以外にも、ポリアミドイミド樹脂を用いることができる。ポリアミドイミドはポリイミドに比べ溶媒に可溶性の性質を持っており、場合によっては使い易い材料である。あるいはオレフィン系樹脂を用いても良い。いずれの樹脂も柔軟性があり、後のプレス加工によって損傷することはない。
【0025】
金属プレートの上に、絶縁層として、例えば、ポリイミド樹脂を接合する場合は、熱可塑性ポリイミドを含むポリイミド樹脂を溶媒に溶解した溶液をまず金属層(又は金属プレート)に塗り、乾燥させて金属プレート(又は金属層)に熱圧着させる。通常は金属プレートと金属層の平坦性を考慮し、一定の絶縁耐圧を確保しようとすれば、最低5μmの膜厚のポリイミド樹脂を塗らなければならない。ポリイミド樹脂の厚さは、放熱特性の観点からは、薄いほうが望ましいが、耐電圧と引き裂き強度の観点からは、ある程度の厚さが要求される。ポリイミド樹脂層を絶縁層として使用する場合は、LED搭載に要求される絶縁膜の耐電圧は一般的には2.5〜5kVであり、ポリイミド樹脂の耐電圧は構造によっても異なるが数百〜500V/μmなので、最低5μmの厚さが必要である。一方、放熱効果を上げるためには、ポリイミド樹脂層を厚くすることはできず、その厚さは40μm以下、好ましくは20μm以下が望ましい。
【0026】
図3は、図2とは異なる別の例の積層体を例示する図である。図示の積層体は、金属プレートと金属層に挟まれた絶縁層を、樹脂層(上述したポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、或いはオレフィン系樹脂)と接着材層との2層により構成している。樹脂層が電気絶縁を受け持ち、接着材が接着力を受け持つので、夫々最適化が可能となり、結果的に熱伝導特性が改善されることになる。この積層体を製造するために、金属プレートの上に、樹脂付き金属層からなる積層膜(例えば、ポリイミド膜を貼り付けた銅箔)のポリイミド膜側を、接着材を用いて貼り付ける。樹脂層の厚さを接着材層より薄い構成にすることにより、コスト的にも放熱的にも有利となる。この接着材には、熱伝導性フィラーを充填することが望ましい。これによって、樹脂層と接着材層からなる2層の絶縁層を、金属プレートと金属層で挟んだ積層構成となる。樹脂層及び接着材層により、LEDチップの一対の接続電極間の絶縁を行うだけでなく、銅箔をLEDチップの接続配線として利用することができる。また、銅箔に限らず、アルミのような高熱伝導性の金属層(金属箔)を用いることができる。また、樹脂層があることで、上面の銅箔のエッチング加工が容易になる。エッチング時に接着材層がエッチ液に侵食される心配が無い。
【0027】
図4は、金属層除去工程を説明する図であり、(A)は(B)中に示すX−X’ラインで切断した積層体の断面図を、(B)は平面図を示している。図示の例では、複数個(4個として例示)のLEDパッケージ基板を、1枚の金属プレートの上に同時作成するものとして例示している。後の工程で、LEDパッケージ基板上にLEDチップを装着して樹脂封止した後、個々のパッケージに切り分ける個片化が行われる。図示のように、絶縁層上の金属層の加工を行って、スリット(図1参照)及び開口部(図5参照)に相当する位置の金属層を除去する(金属層除去部として図示)。例えば、この加工のために、ホトリソグラフィ技術を用いる。金属層(銅箔)の上にレジストを塗布し、パターンを露光、現像してさらにエッチングを行い、レジストを除去して、スリット及び金属層除去部を完成させる。樹脂層があることで、上面の金属層のエッチング加工が容易になる。スリット部は、LEDチップからの発光の反射材として機能しないので、狭い方が望ましいが、スリット両側の金属層を絶縁分離するために20μm〜100μm程度が望ましい。
【0028】
図5は、開口部の打ち抜き工程を説明する図であり、(A)は(B)中に示すX−X’ラインで切断した積層体の断面図を、(B)は平面図を示している。図示のように、個々のLEDパッケージ基板の左右前後のパッケージ基板領域の周辺において、各辺に沿って打ち抜きによって、積層体を貫通する開口部を形成する。但し、後のメッキのための電極として金属層を用いることができるように、パッケージ基板領域の周囲に設けた結合部を介して、一枚の金属プレート上の金属層はすべて一体に電気的に連結されている。この打ち抜き開口部を設けたことによって、積層体の絞り加工時の歪を周辺部に及ぼさないようにすることができる。これによって、薄い金属プレートを絞り加工して、可能な限り小型化を図って材料費を低減しつつも、平板状底部に大きな面積を確保したLEDパッケージ基板を作成することが可能になる。
【0029】
図6(A)は、図5に示した開口部打ち抜き工程をさらに説明するための断面図であり、(B)は(A)中に示す円内の詳細断面図であり、(C)は逆方向から打ち抜きした場合の不都合を説明する図である。図示のように、打ち抜き用ダイの上に、積層体を載置して、金属層除去部よりも狭い幅の打ち抜き刃を開口部に位置合わせして、打ち抜く。このとき、(A)中の円内の詳細を示す(B)に示すように、打ち抜き刃は、樹脂層(絶縁層)側から金属プレートに対して樹脂層を押し付けるようにして打ち抜いて貫通させる。これとは、逆に、(C)に示すように、金属プレート側から打ち抜き刃を入れると樹脂層を剥すように力が加わることになる。
【0030】
図7(A)及び(B)はそれぞれ、絞り加工工程例を説明する図である。図5に示す開口部打ち抜き工程で開口部を形成した後の積層体を、図7(A)に示すように、所望形状の絞り加工ダイとパンチの間に載置して、プレス加工によって絞り加工を行う。或いは、図7(B)に示すように、ノックアウト(ストリッパ)を絞り加工パンチとは別構成にして、このノックアウトにより、LEDパッケージ基板端部(接続電極部)を押さえつつ、絞り加工パンチにより絞り加工する。この絞り加工は、LEDチップを搭載するための凹所、及び上部を外方向に折り曲げた接続電極部を形成するように行う(図9参照)。但し、これによって絞り加工した後のLEDパッケージ基板は、未だ、電極部の幅tは不十分である。
【0031】
図8は、電極部角度成型工程を説明する図である。絞り加工した後のLEDパッケージ基板を角度成型用ダイの上に載置して、成型用パンチを用いて、電極部角度成型を行う。ここで用いる成型用パンチは、上記の絞り加工用パンチよりコーナー角度を小さくしている。これによって、上記絞り加工後の電極部の幅tよりも広い幅Tとなる。
【0032】
図9(A)は、金属表面処理をしたLEDパッケージ基板を(B)中のX−X’ラインで切断した断面図であり、(B)はその平面図である。図7に示したように、絞り加工することにより形成された金属プレートの平板状底部と、該底部から左右及び前後の壁部が立ち上がるコーナー部の曲がり半径、いわゆるアールをR1とする。また、図8に示したように、電極部角度成型を行った後、左右壁部の上端部は、平板状底部と平行かつ外方向に伸びるが、この左右壁部と外方向に伸びる上端部との間のコーナー部のアールを、R2とする。また、図示のように、W:パッケージ幅、A:凹所(キャビティ)幅、T:接続電極幅として、例示のLEDパッケージ基板は、パッケージ幅Wに対して十分な凹所幅Aを確保しつつ、接続電極Tの幅を出来るだけ広く確保するために、コーナー部のアールR1とR2の関係を、R1>R2としたものである。図中に示す電極端部は、接続電極を配線基板に対して半田付けした際に、半田が接続電極と金属プレートを電気的にショートさせるのを防ぐために、図4に示した金属層除去工程で、接続電極先端側を部分的に除去することにより形成したものである。即ち、接続電極端部は、金属プレート端より内側に配置している。
【0033】
このように絞り加工をし、かつ、電極部角度成型を行った後のLEDパッケージ基板に対して、その金属層の上面の全てに、LEDチップからの発光の反射材として機能する金属(例えば、銀)メッキ(金属表面処理)を施す。メッキ処理のためのメッキ電極として金属層を用いることにより、スリット及び銅箔除去部を除いて、金属層の上面のみにメッキすることが可能になる。または、金属メッキに代えて、金属表面処理の必要な箇所に銀インクを用いてインクジェット塗布し、焼成することによって光沢面(反射材)を形成することも可能である。
【0034】
なお、積層体のプレス加工(図7に示した金属プレートの絞り加工工程、及び図8に示した電極部角度成型工程)後に、金属反射処理を行うものとして説明したが、プレス加工前に、金属反射処理を行うことも可能である。この場合、積層体のプレス加工は、少なくとも金属反射処理面の上を保護テープで覆った状態で行い、その後に保護テープを剥離する。
【0035】
このように、図示のLEDパッケージ基板は、平板状の底部と、この底部の左右前後に位置して底部端から折曲して立ち上がる方向に、LEDチップの発光方向と同じ側に伸びる左右壁部、及びこの左右壁部に連結しかつ直交する前後壁部を備えている。この左右前後の壁部は、平板状の底部に搭載したLEDチップを封止する透明樹脂を左右前後から閉じこめる機能を果たしている。左右壁部上面の金属層(及びその上の銀メッキ)は、一対の接続電極として機能する。上述のように、電極部角度成型を行ったことにより、接続電極部のために十分な幅Tが確保される。また、平板状底部は、その上面にLEDチップを装着して、その一対の接続電極を接続する接続部を形成するに十分な面積を有している。この平板状底部の下面に接して放熱体が装着されるために、LEDチップからの放熱は効率よく放熱体に伝熱されることになる。
【0036】
なお、左右だけでなく前後に壁部を設けたことにより、後の樹脂封止が容易になるが、前後の壁部は必ずしも必要ではない。凹所の左右側のみに壁部を設けた場合の樹脂封止は、LEDパッケージ基板上にLEDチップを装着した後、金型内で樹脂封止する際に、図中の左右方向に流れる樹脂は左右壁部によって規制される一方、前後方向に流れる樹脂は、パッケージ基板のエッジ部処理、例えばエッジ部のみ壁部を設けることによって規制することができる。
【0037】
この後、図1を参照して上述したように、スリットにより2分割した底部金属層の一方の上にLEDチップを装着して一方のワイヤボンド接続をする一方、2分割底部金属層の他方には他方のワイヤボンド接続をする。その後、樹脂封止する。
【0038】
図10は、図1に例示のLEDパッケージの第1の例を用いて構成したLEDモジュール装置を例示する断面図である。図示のLEDモジュール装置は、上述した構成を有するLEDパッケージと、LEDパッケージを装着するための開口を有する配線基板と、LEDパッケージ裏面に固着された放熱板によって構成されている。配線基板の開口部へのLEDパッケージの装着は、配線基板下面の配線に対して、LEDパッケージの一対の接続電極を半田付け等により接続することにより行う。LEDチップ発光面は、図中の上面側に向けられていて、配線基板に遮られること無く上面に向けて発光する。配線基板を装着したLEDパッケージの裏面は、放熱板の上に半田接続により固着される。或いは、この半田接続に代えて、高熱伝導性の接着材を用いて接着することも可能である。
【0039】
このように、本発明のLEDパッケージ基板は、LEDチップを装着して、その一対の接続電極を接続する接続部を形成するに十分な面積の平板状底部を有しており、この大きな面積を有する平板状底部の下面に放熱体が装着されるために、LEDチップからの放熱は効率よく放熱体に伝熱されることになる。さらに、上端面には、配線基板と接続するのに十分な幅の接続電極幅Tが確保される。
【0040】
次に、図11〜図14を参照して、本発明を具体化するLEDパッケージの第2の例を説明する。図11は、図2及び図3とは異なる別の例の積層体を例示する図である。図示の積層体は、金属プレートと絶縁層のみから構成した点で、金属層(銅箔)を有する図2及び図3に示した例とは異なっている。図示のように、板状部材(金属プレート)の上に、絶縁層(上述したポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、或いはオレフィン系樹脂)を接合する。図中の右側には、それぞれ詳細断面図を示し、(a)は、金属プレートの上に接着材を用いずに絶縁層を接合した例を示し、(b)は、金属プレートの上に接着材を用いて絶縁層を貼り付けた例を示している。
【0041】
(a)に示すように、樹脂からなる絶縁層を用いることにより、LEDチップで発生した熱を、金属プレートを介してその下面に装着される放熱体に対して絶縁を図りつつ十分に放熱することができる。或いは、(b)に示すように、絶縁層を、樹脂膜と接着材層からなる絶縁層2層により構成する。この場合は、樹脂膜が絶縁耐性を受け持つので、接着材層は熱伝導を簡単に上げることができる。
【0042】
この金属プレートと絶縁層からなる積層体に対して、LEDパッケージの第1の例の製造における打ち抜き工程(図5参照)と同様にして形成した開口部により、次工程の絞り加工時の歪みを除去することができる。その後、図7に示した金属プレートの絞り加工工程、及び図8に示した電極部角度成型工程を順次行う。
【0043】
図12は、薄膜配線層の形成工程を説明する図である。上述のように、絞り加工をし、かつ、電極部角度成型を行った後のLEDパッケージ基板に対して、図12に示すように、反射性を有する導電性金属(銀)インク(金属微粒子を分散溶液中に分散した導電性金属ペースト)を用いてインクジェット法などにより塗布し、焼成することによって、銀薄膜配線層を形成する(インクジェット法については、例えば特許文献3参照)。この銀薄膜配線層によって、絶縁層の上に、少なくともスリットを除いて光沢面(反射材)を兼ねた配線を形成する(上面図は、図13(B)参照)。スリット開口は、LEDチップの一対の配線層を絶縁分離するためのものである。
【0044】
或いは、上記したインクジェット法と同じ反射性を有する導電性金属インクを使って、フレキソ印刷やグラビア印刷によって塗布することもできる。但し、フレキソ印刷やグラビア印刷によって塗布する場合は、図7に示した金属プレートの絞り加工の前に行う。尚、フレキソ印刷やグラビア印刷は平坦面であれば、ファインパターンを高スループットで処理可能である。インクジェット法あるいはフレキソ印刷やグラビア印刷で塗布後、焼成して金属化させる。但し、この場合も配線厚さは薄いので、次工程のスクリーン印刷法による金属厚膜の塗布は必要である。
【0045】
図13は、厚膜配線層の形成工程を説明する図であり、(A)は(B)中のラインX−X’で切断したLEDパッケージ基板の断面図を、また(B)は平面図をそれぞれ示している。図示のように、銅などの導電性金属インクを用いてスクリーン印刷法で、導電性金属厚膜の塗布を行なった後、焼成を行なう(スクリーン印刷法については、例えば特許文献4参照)。この導電性金属厚膜の塗布は、金属プレートを外方向に折り曲げた両側上端部において絶縁層の上で行って、薄膜配線層と一体化して電気的に接続して、配線基板に接続する接続電極として機能させる。なお、薄膜配線層と厚膜配線層は、図示のように、電気的に接続するように隣接していれば十分であるが、両端の接続電極形成部においても薄膜配線層を形成して、その上に厚膜配線層を重ねることにより一体化しても良い。インクジェット法で形成した薄膜配線層だけでは、配線基板(図10参照)との接続信頼性に問題が生じ得るので、この対策として接続電極部は配線を厚くするために、スクリーン印刷法で配線する。これによって、LEDパッケージ基板が完成する。
【0046】
図14は、完成したLEDパッケージの第2の例を示す断面図である。図示のように、LEDパッケージ基板は、LEDチップが搭載されることになる平板状の底部と、この底部の左右前後に位置して底部端から折曲して立ち上がる方向に、LEDチップの発光方向と同じ側に伸びる壁部を、少なくとも左右両側に備えている。この一対の左右の壁部先端面を互いに外方向に折り曲げて、その上面先端側に形成した厚膜配線層が、一対の接続電極として機能する。また、一対の接続電極を電気的に分離するためのスリットが、薄膜配線層に形成されている。スリットにより分割されたいずれか一方の薄膜配線層の上に、LEDチップを装着して一方のワイヤボンド接続をする一方、2分割底部薄膜配線層の他方には他方のワイヤボンド接続をする。
【0047】
図14に例示のLEDパッケージの第2の例においても、図9を参照して上述したLEDパッケージ基板と同様に、パッケージ幅Wに対して十分な凹所幅Aを確保しつつ、接続電極Tの幅を出来るだけ広く確保するために、コーナー部のアールR1とR2の関係を、R1>R2としている。これによって、上述したLEDパッケージの第1の例と同様に、LEDパッケージ基板は、LEDチップを装着して、その一対の接続電極を接続する接続部を形成するに十分な面積の平板状底部を有しており、この大きな面積を有する平板状底部の下面に放熱体が装着されるために、LEDチップからの放熱は効率よく放熱体に伝熱されるだけでなく、上端面には、配線基板と接続するのに十分な幅の接続電極幅Tが確保される。
【0048】
以上、本開示にて幾つかの実施の形態を単に例示として詳細に説明したが、本発明の新規な教示及び有利な効果から実質的に逸脱せずに、その実施の形態には多くの改変例が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDチップのためのLEDパッケージ基板を、一定板厚の金属プレートを加工して構成したLEDパッケージの製造方法において、
一定板厚の金属プレートの上に、少なくとも樹脂層からなる絶縁層を接合した積層体を構成し、
前記LEDパッケージ基板領域の周辺において、打ち抜きによって積層体を貫通する開口部を形成し、
前記開口部を形成した後、積層体の絞り加工を行って、LEDチップ装着部及び該LEDチップの一対の接続電極を接続するための一対の接続部を形成するだけの十分な面積を有する平板状底部と、該底部端の少なくとも両側からそれぞれ立ち上がる一対の壁部先端を互いに外方向に折り曲げるように構成し、
前記絞り加工のために用いたパンチよりコーナー角度を小さくした成型用パンチを用いて、外部接続電極部の幅を広くする電極部角度成型を行なうことによって、前記一定板厚の金属プレートの平板状底部と該底部から立ち上がる前記壁部との間のコーナー部の曲がり半径R1と、角度成型用のパンチによる前記壁部と外方向に伸びる壁部先端との間のコーナー部の曲がり半径R2との関係をR1>R2とし、
LEDパッケージ基板上にLEDチップを装着すると共に、該LEDチップの一対の電極を、前記平板状底部上面の両側に絶縁分離された金属層にそれぞれ接続し、かつ、壁部先端を互いに外方向に折り曲げた先端側上面に形成した金属層を一対の外部接続電極として構成し、
前記平板状底部と前記壁部に挟まれた凹所に透明樹脂を充填したことから成るLEDパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記積層体は、前記金属プレートの上に接合した前記絶縁層の上にさらに金属層を接合して構成し、前記積層体を貫通する前記開口部を形成する前に、前記絶縁層上の前記金属層の加工を行って、少なくとも前記開口部に相当する位置の金属層を除去する請求項1に記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記配線層は、前記電極部角度成型を行った後、反射性を有する導電性金属インクを用いて塗布し、焼成することによって形成し、かつ、該配線層よりも厚膜の前記一対の外部接続電極を構成するために、導電性金属インクを用いてスクリーン印刷法で導電性金属膜を塗布し、焼成を行なう請求項1に記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項4】
前記金属層の上には、反射材として機能する銀表面処理を施した請求項1に記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項5】
前記絶縁層を構成する樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、あるいはオレフィン系樹脂である請求項1に記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記絶縁層を、樹脂層と接着材層との2層により構成した請求項1に記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項7】
前記積層体を貫通する前記開口部の形成は、前記絶縁層側から前記金属プレートに対して該樹脂層を押し付けるようにして打ち抜いて貫通させる請求項1に記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項8】
LEDチップのためのLEDパッケージ基板を、一定板厚の金属プレートを加工して構成したLEDパッケージにおいて、
前記LEDパッケージ基板は、LEDチップ装着部及びLEDチップの一対の接続電極を接続するための一対の接続部を形成するだけの十分な面積を有する平板状底部と、該底部端の少なくとも両側からそれぞれ立ち上がる一対の壁部先端を互いに外方向に折り曲げるように絞り加工した一定板厚の金属プレートの上に、樹脂層からなる絶縁層を挟んで金属層を接合した積層構成とし、
前記金属プレートの平板状底部と、該底部から前記壁部が立ち上がるコーナー部の曲がり半径をR1とし、かつ、前記壁部と外方向に伸びる上端部との間のコーナー部の曲がり半径をR2として、R1>R2の関係とし、
前記壁部先端を互いに外方向に折り曲げた先端側上面に一対の外部接続電極を形成し、
前記LEDパッケージ基板の平板状底部上面に、LEDチップを装着して、透明樹脂を前記平板状底部と前記壁部に挟まれた凹所に充填したことから成るLEDパッケージ。
【請求項9】
前記壁部先端側上面の金属層を一対の外部接続電極として機能させるように、前記平板状底部上面の金属層にスリット開口し、該LEDチップの一対の電極をそれぞれ、前記スリットにより分離された前記平板状底部上面に設けた一対の接続部に接続した請求項8に記載のLEDパッケージ。
【請求項10】
前記金属層の上には、反射材として機能する銀表面処理を施した請求項8に記載のLEDパッケージ。
【請求項11】
前記絶縁層を構成する樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、あるいはオレフィン系樹脂である請求項8に記載のLEDパッケージ。
【請求項12】
前記絶縁層を、樹脂層と接着材層との2層により構成した請求項8に記載のLEDパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−222228(P2012−222228A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88238(P2011−88238)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【特許番号】特許第4887529号(P4887529)
【特許公報発行日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【出願人】(000146179)エムテックスマツムラ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】