LED基板の製造方法およびLED基板
【課題】本発明は、LED基板を簡便かつ効率的に製造するための方法を提供するものである。
【解決手段】本発明に係るLED基板の製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムに線状導電材を熱圧着する工程;および、線状導電材に、少なくとも2個のLEDを搭載する工程;を含むことを特徴とする。
【解決手段】本発明に係るLED基板の製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムに線状導電材を熱圧着する工程;および、線状導電材に、少なくとも2個のLEDを搭載する工程;を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED基板を製造するための方法、および当該方法により製造されるLED基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)などの発光デバイスは、消費電力が低く長寿命である上に、小型化や薄型化が可能である。よって、携帯電話や電光板、信号などに使用されている。特に最近では、液晶ディスプレイのバックライトとしての利用が期待されている。
【0003】
即ち、現段階では、液晶ディスプレイのバックライトとしては主に冷陰極管が用いられている。しかし近年、液晶ディスプレイの薄型化や省エネルギー化、高機能化により、LEDが冷陰極管に取って代わり得る地位にある。一部では、LEDがバックライトとして既に用いられている。
【0004】
従来、LEDが搭載された基板は、ガラスエポキシ基板の表面に金属層を形成し、この金属層をエッチングして回路とし、当該回路上にLEDをハンダ付けすることにより製造されていた。しかしガラスエポキシ基板は、その構造上厚くならざるを得ないので、回路の裏面に放熱層を設けても十分な放熱性は確保できない。そこで放熱性を高めるために、薄い基板を用いたLED基板が検討されている。
【0005】
例えば特許文献1には、熱硬化性のエポキシ樹脂などからなる絶縁層に金属箔層を固着させ、LEDを搭載するための回路を形成し、さらに絶縁層と放熱基板とを固着するに当たり、絶縁層を必要箇所にのみ設けることによりコストを低減する技術が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1の技術ではエッチングにより回路を形成しており、到底効率的に低コストで実施できるものではない。即ち、エッチングによる回路形成工程では、金属層の脱脂洗浄、レジスト感光膜の形成、露光、現像、エッチング、剥離という複雑な処理が必要である。また、エッチングにより除去される金属層は無駄となる。よって、エッチングにより回路を形成すると、エッチングによるコストは基板自体のコストの数倍にも及ぶ。さらに、エッチングでは一般的に塩化第二鉄が用いられるが、これを含む廃液は容易に廃棄できない。また、熱硬化性樹脂からなる絶縁層に放熱板を接着する場合には熱硬化性接着剤を用いなくてはならない。そのために、熱硬化させるための加熱加圧に時間や設備、多くのエネルギーが必要であり、コストの低減が難しいという事情もある。また、接着剤層の分だけ基板が厚くなる上に、その接着剤により熱伝導性が低下するというデメリットも有する。
【0007】
一方、特許文献2には、平板状に圧延した複数の導線を柔軟性の絶縁樹脂で一体的に被覆してフレキシブルな平行線を製造する技術が開示されている。しかし、かかる平行線は基板間または回路間を接続するためのものであり、デバイスを搭載するためのものではない。実際、平行線の被覆は絶縁樹脂にディップすることにより行われており、当該平行線を端部以外で露出させてデバイスを搭載することは容易ではない。また、特許文献2では導線を被覆する絶縁樹脂の種類は特定されていない。
【特許文献1】特開2007−220925号公報
【特許文献2】特開昭57−115714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した様に、フレキシブルなLED基板は知られていた。しかしエッチングが必要であるなどその製造工程は複雑であり、決して容易に製造できるものではなかった。
【0009】
そこで本発明が解決すべき課題は、LED基板を簡便かつ効率的に製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた。その結果、基板として液晶ポリマーフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルムを用い、この基板に線状の回路を熱圧着すれば、液晶ディスプレイのバックライトなどとして利用可能な、LEDが連続的に搭載された基板を極めて簡便かつ効率的に製造できることを見出して、本発明を完成した。
【0011】
本発明に係るLED基板の製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムに線状導電材を熱圧着する工程;および、線状導電材に、少なくとも2個のLEDを搭載する工程;を含むことを特徴とする。なお、線状導電材にLEDを搭載する態様には、線状導電材を回路として基板上にLEDを搭載するあらゆる態様が含まれる。例えば、1本の線状導電材の断線部分または2本の線状導電材の間に表面実装型LEDの本体を配置して各電極を線状導電材にハンダ付けする態様や;LEDベアチップを1本の線状導電材における一方の断線端部または2本の線状導電材の一方にダイボンドして、他方の断線端部または他方の線状導電材にワイアボンドする態様が考えられる。
【0012】
上記方法においては、線状導電材を熱圧着する際に線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入することが好ましい。例えば、エッチングにより回路を形成した場合や接着剤で回路を基板に貼り付ける場合には、基板表面に対して回路が厚みの分盛り上がることになり平滑な回路は得られない。その結果、図1に示すように、基板とLEDとの間に回路厚みの分の空間が生じる。その結果、特にダイ・ヒートシンク付の表面実装型LEDを搭載する場合には、かかる空間へハンダや銀ペーストなどの高熱伝導性接着剤が入り込み、電極が短絡するという不良が発生する可能性がある。また、LEDベアチップを透明樹脂により封止する場合、図2に示すように回路と基板との間に段差が存在すると、図3のように樹脂が回路に沿って過剰に広がる場合がある。その結果、透明封止樹脂による形成物に光学的に歪みが生じ、光放散の均一性を損ねる原因となり得るばかりでなく、ベアチップの封止が不十分になる原因ともなり得る。また、その際にたとえダム材を使っても、基板とダム材との空間から透明樹脂が流れ出ることがある。しかし、回路となる線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入すれば、図4のとおり基板とダイ・ヒートシンク付表面実装型LEDとの間に隙間は生じ難い。また、図5のとおり線状導電材と熱可塑性樹脂フィルムとの間に段差が無ければ、図6に示すように線状導電材の長さ方向への封止樹脂の過剰な広がりを抑制でき、光学的な歪み形成のリスク低減が可能になる。
【0013】
さらに回路を設けた基板が平滑であれば、クリームハンダやレジスト剤などを印刷する場合、その精度が向上する。また、後述するようにLED基板では放熱性を高めるためや回路を断線するために穴を開けることがある。この際、生産方法によっては複数の基板を重ねて穴を形成すると効率が高いが、回路面と基板面とに段差がなければ穴を開けるときに基板がずれにくく、安定した穴開けが可能になる。なお、熱可塑性フィルムを絶縁層とする回路基板の場合、当該フィルム上の銅箔をエッチングして回路を形成した後に、当該回路を加熱によりフィルム中に圧入することも考えられる。しかし本発明では、シンプルな線状導電材を回路とするため、当該回路の圧着と圧入を同時に実施することができ、非常に効率的である。
【0014】
上記方法においては、さらに、2本の線状導電材の間に搭載したLEDを直列につなぐために、搭載されているLED間またはLEDが搭載されるべき部分の間を交互に断線する工程を実施することが好ましい。図7に示すように複数のLEDを並列につなぐと、LEDの個体差により明るさに不均一が生じるおそれがある。しかし複数のLEDを直列につなげば、均一な明るさが得られるという利点がある。また、2本の線状導電材の間に複数のLEDを搭載した場合、図8に示すように回路をLED搭載部間で交互に断線することにより極めて容易にLEDを直列につなぐ回路の形成が可能になる。
【0015】
さらに、少なくとも3本の線状導電材を熱圧着し、LEDを直列につないだ部分をさらに並列につなぐ工程を実施することが好ましい。上記のようにLEDを直列につなげば均一な明るさが得られるが、一つでもLEDに不良が生じると直列につながれた全てのLEDが点灯しなくなってしまう。そこで、図9や図10に示すように直列につながれたLED同士を並列につなげば、一部の直列LEDに不良が生じても、他の直列LEDは点灯するので、全体が点灯しなくなるということはない。かかるLEDの配列は、LED搭載部で断線することにより容易に形成することができる。
【0016】
本発明方法においては、さらに、図11に示すように、熱可塑性樹脂フィルムの線状導電材上を熱圧着した側の面において、LEDを搭載した部分以外または搭載すべき部分以外を多孔質樹脂膜により被覆する工程を行うことが好適である。従来、透明または半透明の基板にLEDを搭載する場合には、光反射効率を高めるために基板に酸化チタンなどを混ぜて透明性を低減したり白色化することが行われていた。しかし、酸化チタンなどの無機物を大量に混入すると基板の強度が低下するなどの問題がある。一方、多孔質樹脂膜で基板を被覆することにより反射率を高めれば、上述したような従来技術の問題は起こらない。また、後述するようにLEDベアチップを透明樹脂により封止する場合には、透明樹脂が必要部分外にまで流れ出ないように、多孔質樹脂膜をダム材として利用することもできる。さらに多孔質樹脂膜は、多孔質ゆえに光を極めて高効率に乱反射させることができる。また、多孔質樹脂膜は、熱可塑性樹脂フィルムと貼り合せてもフレキシブル性を損なわないという利点もある。
【0017】
さらに本発明方法においては、LEDベアチップを用いる場合、LEDを透明樹脂により封止する工程を含むことが好ましい。特に、LEDベアチップを用いる場合では、封止は重要である。また、上述したように多孔質樹脂膜で回路面を被覆する場合には、封止樹脂と親和性の低い樹脂からなる多孔質膜を選択することにより、多孔質樹脂膜の凹部体積をやや超える量の封止樹脂を注入しても封止樹脂は多孔質樹脂膜上で広がることはなく、図11に示すように凸レンズ状となる。かかる凸レンズ状の封止樹脂の光取り出し効果は高い。また、LEDベアチップから発せられた光のうち平面方向の光は、多孔質樹脂膜の側面で乱反射を起こす。その結果、従来は有効利用できなかった光の利用が可能になる。
【0018】
熱可塑性樹脂フィルムの線状導電材上を熱圧着した側または熱圧着すべき側と反対の面には、放熱層を設けることが好ましい。LED基板においては、発光により生じる熱を低減することが重要である。
【0019】
また、熱可塑性樹脂フィルム、線状導電材および放熱層には、放熱用の貫通穴を設けることが好ましい。かかる貫通穴を設けることによって、発光による熱をより一層効率的に基板外部へ放出することが可能になる。また、かかる貫通穴は、線状導電材の断線手段としても利用可能である。
【0020】
本発明のLED基板は、上記本発明方法により製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明方法によれば、複数のLEDが搭載された基板を極めて容易かつ効率的に製造できる。より具体的には、絶縁層として液晶ポリマーフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルムを用いることによって、エッチングをすることなく、直線状の導電材を熱圧着により貼り付けるのみで回路の形成が可能になる。よって本発明は、近年需要が高まっている、優れた特性を有するLED基板を簡単かつ効率的に製造する技術として、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係るLED基板の製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムに、線状導電材を平行または略平行に熱圧着する工程;および、線状導電材に、少なくとも2個のLEDを搭載する工程;を含むことを特徴とする。以下、本発明の実施条件につき説明する。
【0023】
(1) 線状導電材の熱圧着工程
本発明では、熱可塑性樹脂フィルムに、線状導電材を平行または略平行に熱圧着する。
【0024】
本発明で絶縁層を構成する熱可塑性樹脂は、線状導電材の熱圧着に要する熱に対する耐性が高いものであれば使用目的に合わせて広く選ぶことができ、特に制限されない。例えば、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、これらのうち2種以上の混合樹脂、およびこれら樹脂を主成分として含むポリマーアロイなどを用いることができる。ここで「主成分」とは、ポリマーアロイに対して50質量%以上含むことを意味し、好適には70質量%以上、より好適には80質量%以上含むことを意味する。
【0025】
絶縁層を構成する熱可塑性樹脂としては、液晶ポリマーが好適である。液晶ポリマーは耐熱性に優れ、LEDより発せられる熱のみならず線状導電材の熱圧着に要する熱への耐性も高い。また、線状導電材を構成する金属、例えば代表的な導電素材として多く使用されている銅との線膨張率の近い液晶ポリマーも販売されており、かかる液晶ポリマーを用いれば、熱加工時における応力を低減できる。
【0026】
液晶ポリマーは耐熱性の熱可塑性樹脂であり、溶融状態で液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマーと溶液状態で液晶性を示すリオトロピック液晶ポリマーとがある。本発明で用いる液晶ポリマーとしてはサーモトロピック液晶ポリマーが好適であり、より具体的にはサーモトロピック液晶ポリエステルやサーモトロピック液晶ポリエステルアミドが好ましい。
【0027】
本発明で絶縁層とする熱可塑性樹脂フィルムの厚さとしては、10μm以上、2000μm以下程度が好ましい。薄過ぎると強度が不足する可能性がある一方で、厚過ぎるとフィルム化が困難となり得る。なお、熱可塑性樹脂フィルムの平面形状や大きさは、完成したLED基板を適用する機器の大きさなどに応じて適宜決定すればよい。
【0028】
上記液晶ポリマーフィルムでは、線膨張係数の調整が可能である。かかる線膨張係数は、フィルム平面に平行な方向で30ppm/℃以下に調整されていることが好ましい。より好ましくは25ppm/℃以下である。なお、液晶ポリマーフィルムの線膨張係数は、分子配向を制御することにより調節することができる。また、フィラーの添加などにより調節してもよい。但しフィラーは液晶ポリマーフィルムの表面平滑性に悪影響を与える場合があるので、線膨張係数は好適には延伸条件により調整する。
【0029】
ダイ・ヒートシンク付表面実装型LEDを搭載する場合には、ダイ・ヒートシンクと放熱層とを熱伝導性接着剤で接合するために、熱可塑性樹脂フィルムに穴を開けておくことが好ましい。かかる穴の大きさは、LEDの大きさに合わせて調節すればよい。
【0030】
本発明において熱可塑性樹脂フィルムに熱圧着する線状導電材の材質は、回路基板の回路に用いられるものであれば特に制限されない。例えば、銅、銀、金、アルミニウム、鉄、ニッケル、およびこれらを含む合金、さらには炭素繊維などの導電性カーボン素材などを例示することができ、好適には電子回路素材として広く使われている銅または銅合金を用いる。さらに線状導電材は、熱可塑性樹脂フィルムに貼り合わせる前または貼りあわせた後のいずれかに金属メッキ処理したものであってもよい。
【0031】
線状導電材は、本発明のLED基板において回路の役割を有する。よって、直径が20μm以上、5mm以下程度の線でもよいが、好適にはLEDを搭載し易くするために平板状とする。また、LEDの搭載部分を平板状とした線であってもよい。例えば、断面形状が幅0.05〜50mm、厚さ1〜500μm程度の線状金属箔とすることが好ましい。
【0032】
本発明においては、線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムに熱圧着する。熱圧着すべき線状導電材の数は特に制限されないが、好適には2本以上とする。1本のみでは複数のLEDを直列につながざるを得ず、並列につなぐことはできない。また、2本の線状導電材を用いれば、LEDを並列につなぐことができるし、後述するように直列につなぐこともできる。3本以上の線状導電材を用いれば、部分的に直列につないだLED群を、さらに並列につなぐことも可能となる。その結果、直列につながれた各LEDはその品質によらずほぼ均等に発光することができる上に、さらに並列につなぐことによって、一部のLEDに不良が生じた場合にそのLEDを含む直列部分は発光しなくなるが、他の直列部分は発光することができるので、全体的な発光量は低下するが、全消灯のリスクを低減することができる。
【0033】
2本以上の線状導電材を熱圧着する場合には、互いに平行または略平行に並べることが好ましい。2本の線状導電材の間にLEDを搭載することがあり、その場合に線上導電材間の間隔が不均一であると製造の自動化が難しくなることがあり、また、LEDを搭載できなくなる場合があり得る。2本以上の線状導電材を熱圧着する場合における線状導電材間の距離は、搭載するLEDの種類や大きさにもよるが、通常は10μm以上、50mm以下程度とし、より好ましくは20μm以上、5mm以下とする。
【0034】
なお、比較的幅の広い線状導電材を1本貼り合わせた後、その中央部を直線状に切り取ることにより2本以上の線状導電材を形成してもよい。
【0035】
線状導電材を液晶ポリマーフィルムに熱圧着する条件は、予備実験などにより適宜決定すればよい。例えば、熱圧着すべき線状導電材を液晶ポリマーフィルム上に配置し、その上下に多孔質PTFEシートなどの離型シートを挿入し、温度:200〜400℃、圧力:0.5〜10MPa、熱圧着時間:3秒〜5分間で熱圧着する。通常、熱硬化性樹脂の硬化には数時間の加熱を要することと比べれば、本発明方法がいかにスピーディーでエネルギー的にも設備拘束時間の点でも有利であるかがうかがえる。
【0036】
線状導電材を熱圧着する際には、線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入することが好ましい。線状導電材と熱可塑性樹脂フィルムとの間に段差がなければ、図4〜6のとおり、ダイ・ヒートシンク付表面実装型LEDをハンダ付けする時における不良や、LEDベアチップを封止する際における樹脂の過剰な広がりをより確実に抑制できる。また、回路を設けた基板が平滑であれば、クリームハンダやレジスト剤などを印刷する場合、その精度が向上する。線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入するには、熱圧着条件を調整すればよい。例えば、熱圧着時の温度や圧力をより高め、熱圧着時間を長くすればよい。
【0037】
なお、本発明においては、熱可塑性樹脂フィルムの両面に線状導電材を熱圧着し、スルーホールや導電接合法などにより両面の回路を結合することも可能である。
【0038】
(2) 線状導電材の断線工程
本発明では、必要に応じて、熱可塑性樹脂フィルムに熱圧着した線状導電材を断線する。例えば図7に示すように2本の線状導電材の間にLEDを並列に搭載する場合には、線状導電材を断線する必要はない。しかし、1本の線状導電材の上に複数のLEDを直列に搭載する場合には、LEDを搭載すべき部分を断線する必要がある。
【0039】
また、図8に示すように、2本の線状導電材の間に複数のLEDを搭載し、これらLEDを直列につなぐには、LEDが搭載されるべき部分の間を交互に断線すればよい。
【0040】
少なくとも3本の線状導電材を熱圧着した場合、LEDを直列につないだ部分を必要に応じてさらに並列につないでもよい。即ち、1本の線状導電材の上に複数のLEDを直列に搭載する場合には、その線状導電材をLEDの間またはLEDを搭載すべき部分の間で適宜断線し、両端が断線した部分を、それを挟むように配置した2本の線状導電材と結合させればよい。また、2本の線状導電材の間にLEDを直列に搭載する場合には、図9や図10に示すように、LEDと断線部分との間で、その2本の線状導電材を挟むように配置した2本の線状導電材と結合させればよい。
【0041】
線状導電材の断線は、その場所にLEDを搭載する場合にはLEDの大きさにある程度合わせる必要がある。一方、断線箇所にLEDを搭載しない場合には、断線部分の大きさは特に制限されない。例えば、線状導電材と共に熱可塑性樹脂フィルム、さらにはこれらに加えて放熱層を打ち抜く或いは切り抜くなどの手法で、断線と放熱用穴の形成を同時に行ってもよい。
【0042】
複数の線状導電材をつなぐには、LEDを用いるほか、必要に応じて抵抗器など他のデバイスを用いてもよいし、単なる電線を用いてもよい。
【0043】
なお、線状導電材の断線は、LEDを搭載する前に行ってもよいし、搭載後に行ってもよい。また、線状導電材の断線は、放熱層を設ける前に行ってもよいし、放熱層の形成後に行ってもよい。
【0044】
以上のとおり、線状の導電材を平行に熱圧着すれば、容易に直列または並列、或いは直列・並列併用のLED基板を製造することが可能になる。
【0045】
(3) 放熱層の形成工程
熱可塑性樹脂フィルムの線状導電材を熱圧着した側または熱圧着すべき側と反対の面には、放熱層を設けることが好ましい。LED基板においては、発光により生じる熱を低減することが重要である。
【0046】
放熱層を形成するための材質は、熱伝導性に優れるものであれば特に制限されないが、例えば銅、銀、金、アルミニウム、鉄、ニッケル、コバルト、およびこれらを含む合金、さらにこれらを亜鉛などによりメッキしたもの、その他にアルミナなどのセラミックスなどを用いることができる。
【0047】
放熱層の厚さは特に制限されないが、例えば5μm以上程度とすることができる。放熱層が薄過ぎるとフィルム強度が低下して貼り合わせ作業が困難になる場合があり得る。その一方で、厚さの上限は特に制限されない。また、放熱層はLEDを搭載した部分または搭載すべき部分の反対側にのみ形成することもできるが、工程が複雑になることから、熱可塑性樹脂フィルムの裏面全部に形成することが好ましい。また、必要に応じてLED搭載面の光取り出しを妨げない部分にも放熱層を貼り合わせることも可能であり、さらに、放熱層を熱可塑性樹脂フィルムよりも大きくしてもよい。
【0048】
放熱層は、接着剤を用いて熱可塑性樹脂フィルムに貼り付けてもよい。但し、接着剤の厚さの分だけ放熱効果が低下することや、接着剤の塗布や乾燥などが必要となるという不利な点がある。よって放熱層は、熱可塑性フィルムの特性を活かして熱圧着することが好ましい。なお、放熱層の熱圧着条件は、線状導電材の熱圧着条件と同様とすることができる。
【0049】
放熱層は線状導電材の熱圧着の前に形成してもよいし、熱圧着後に形成してもよい。或いは、線状導電材の熱圧着と同時に行ってもよい。但しLEDの保護の観点から、少なくともLEDの搭載前に放熱層を形成することが好ましい。
【0050】
なお、放熱層が設計上の理由から放熱に要する面積を十分に確保することができない場合には、熱可塑性フィルムに貼り合わせた放熱層を一次放熱層とし、それをさらに別の放熱用部材に結合させることで、放熱能力の補完が可能となる。例えば、一次放熱層に放熱フィンを貼り合わせたり、或いはLED付装置であれば、一次放熱層に熱伝導性の良い構成部材を結合させることによって、LED付装置全体を放熱材として利用するなどの手法を用いることができる。
【0051】
(4) LEDの搭載工程
本発明では、少なくとも2個のLEDを搭載する。回路上に1個のLEDを搭載するのみでは複雑な工程は必要ないが、本発明では、複数のLEDが搭載された基板を簡便かつ効率的に製造することを目的としている。
【0052】
LEDの搭載方法は、従来公知の方法を用いればよい。即ち、ダイ・ヒートシンク付表面実装型LEDの場合、熱可塑性樹脂フィルムに設けた穴にダイ・ヒートシンクを位置させて、裏面の放熱層とダイ・ヒートシンクをハンダなどの高熱伝導性材料により接合し、電極はそれぞれ線状導電材にハンダ付けする。LEDベアチップの場合は、例えばチップを2本の線状導電材の一方にダイボンドし、チップともう一方の線状導電材とを金線などによりワイアボンドする。但し、LEDを搭載する向きは目的に合わせて選択する。
【0053】
(5) 絶縁工程
本発明においては、熱可塑性樹脂に線状導電材を熱圧着し且つLEDを搭載した後には、回路面を外部から保護するために絶縁することが好ましい。かかる絶縁は、一般的な絶縁塗料や光反射性の高い保護レジストを塗布するなどにより行うことができる。もちろん、その他にも一般的に知られている絶縁方法を用いることも可能である。また、回路面にさらに熱可塑性樹脂フィルムを熱圧着してもよい。
【0054】
(6) 光反射層の形成工程
本発明においては、熱可塑性樹脂フィルムの線状導電材を熱圧着した側の面において、その最外面に光反射層を形成することが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムには、光透過性の低いものも存在するが、一般的には透明または半透明である。よって、LEDから発せられた光はある程度反射するものの、一部は熱可塑性樹脂フィルムを透過しまたは吸収されてしまう。しかし光反射層を形成すれば、LEDから発せられた光を有効に使うことができる。
【0055】
光反射層の形成手段は特に制限されず、従来技術を適用すればよいが、好適にはLEDを搭載した部分以外または搭載すべき部分以外を多孔質樹脂膜により被覆することにより行う。多孔質の樹脂膜で被覆すれば、光を効果的に乱反射させることが可能になる。また、樹脂膜は軽量で且つフレキシブルであるという長所もある。
【0056】
多孔質樹脂膜の材質としては、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などを挙げることができる。また、多孔質樹脂膜の孔径は特に制限されないが、直径の平均値で10μm以下程度とすることができる。本発明の光反射層としては、特に多孔質PTFEフィルムが好適である。PTFEは抜群の耐光性を示す上に、光劣化にも強い。
【0057】
被覆する多孔質PTFEは、PTFE粉末をシートに成形してさらに一軸方向または二軸方向に延伸して多孔質にするなどすることにより製造できる。また、多孔質PETフィルムや多孔質PPフィルムは、光反射材として市販されているものがあるので、それを使用すればよい。
【0058】
多孔質樹脂膜の厚さは適宜調整すればよいが、10μm以上、2000μm以下程度とすることが好ましい。10μm未満であると光反射効率が低下するおそれがある一方で、2000μmを超えるとコストが高くなる場合がある。
【0059】
多孔質樹脂膜による被覆の手段は特に制限されず、従来技術を用いることができる。例えば、多孔質樹脂膜の中には熱圧着のみでは熱可塑性樹脂フィルムに接着し難いものがあるので、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、BT樹脂からなる接着剤を用いて熱可塑性樹脂フィルムに貼り付ければよい。また、粘着剤を用いて貼り付けることも可能である。その他、別途多孔質樹脂膜に上記接着剤を含浸させた接着シートを用い、反射層である多孔質樹脂膜と熱可塑性樹脂フィルムを接着してもよい。かかる接着剤付き光反射フィルムとしては、ジャパンゴアテックス社のFLEXIBOND白色光反射フィルムなど市販されているものがある。かかる接着剤付きフィルムを用いれば、多孔質樹脂膜と熱可塑性樹脂フィルムとを容易に接着することができる。
【0060】
光反射層の形成は、線状導電材の熱圧着後であれば特に制限なく行うことができる。放熱用穴の形成の前に光反射層を形成すると、光反射層を除いて放熱用穴を形成することが難しく、また、放熱用穴を反射層にまで設けると反射効率が低下する場合がある。但し、放熱効率を高めるために、反射層にも積極的に放熱用穴を開ける場合もある。
【0061】
(7) 放熱用貫通穴の形成工程
本発明のLED基板には、熱可塑性樹脂フィルム、線状導電材および放熱層に放熱用の貫通穴を設けることが好ましい。LEDは発光により熱を発し、かかる熱により発光機能が低下する。近年ではLEDの高輝度化やハイパワー化がより一層進み、LED基板の放熱性が重要になってきている。また、基板の長寿命化のためにも放熱効率を高めることが望ましい。
【0062】
放熱用の穴は、熱可塑性樹脂フィルム、線状導電材および放熱層を貫通するものであることが好ましい。通気性を良好にしてLEDの発熱により生じた熱を外部へ放散するためである。また、穴の位置は、LEDからの熱を効率的に放散するために、LED近辺に設けることが好ましい。
【0063】
また、ダイ・ヒートシンク付表面実装型LEDの場合には、熱可塑性樹脂フィルムのみに穴を開け、ダイ・ヒートシンクと放熱層とを高熱伝導性材料により接合することが好ましい。かかる態様によって、放熱効率がより一層高まる。
【0064】
放熱用貫通穴の大きさや形状は特に制限されないが、直径でいえば50μm以上、50mm以下とすることが好ましい。但し、貫通穴の数や大きさは、適宜調整する必要がある。貫通穴の数が多過ぎたり大き過ぎたりすると、基板強度が低下するばかりでなく、放熱効果が低下するおそれがあり得るので、LEDの種類や数も考慮して貫通穴の大きさや数、位置などを決定する。また、放熱用穴が線状導電材の断線手段を兼ねる場合には、放熱用穴の大きさを線状導電材の幅以上とする必要がある。一方、放熱用穴を線状導電材の断線箇所以外に設ける場合には、放熱用穴の大きさは断線のおそれがない程度にしなければならない。
【0065】
(8) LEDの封止工程
LEDベアチップを用いる場合には、線状導電材に搭載した後、透明樹脂により封止することが好ましい。LEDベアチップを用いた場合には、封止は重要である。
【0066】
LEDの封止手段は特に制限されず、従来技術を適用すればよい。例えば、封止用の樹脂としては、エポキシ樹脂やシリコン樹脂からなる透明または半透明の液状封止樹脂から適宜選択して用いることができる。
【0067】
従来、平面状の基板を液状樹脂で封止する場合には、樹脂の粘度や揺変性を調整したり、ダム材を用いるといった手法により、封止箇所からの樹脂の広がりを抑えていた。しかし樹脂の粘度を高くすると、封止樹脂中に気泡が残り易くなるなど封止作業が難しくなる。また、ダム材を用いても、加熱硬化する際に透明樹脂の粘度が低下して基板と回路との段差から樹脂が流れ出てしまう場合がある。よって本発明では、線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入することが好ましい。線状導電材と熱可塑性樹脂フィルムとの段差を無くすことにより、封止樹脂の過剰な広がりを抑制することができる(図3と図6を参照)。
【0068】
また、反射層として被覆した多孔質樹脂膜をそのままダム材として用いることが好ましい。多孔質樹脂膜は優れた光反射率を有するので、本発明に係るLED基板の発光効率が高まる。また、封止樹脂との親和性が低く封止樹脂をはじくような多孔質樹脂膜を選択することにより、図11に示すように凸レンズ状の透明樹脂形状が得ることも可能になる。なお、ダム材の高さや封止樹脂量を調整することによって、目的に応じて凸レンズ状以外の形状を形成することも可能である。
【0069】
通常、LED基板を作製する場合には、LEDを別途作製した後に回路上に搭載するので、比較的効率が悪い。しかし本発明でLEDベアチップを搭載する場合、線状導電材上にLEDベアチップを直接ダイボンドし、さらにワイアボンドした後にLEDを封止することが可能である。即ち、本発明によれば、回路の形成からLEDの搭載といった一連の作業により効率良くLED基板を連続的に作製することができる。
【0070】
本発明方法によれば、複数のLEDが配列された基板を、エッチング工程なしで、簡便かつ連続的に製造することができる。現在のところ、LED照明やLEDバックライトが一般に普及しきれないのは、基板の製造コストが高いことに一因がある。それに対して本発明によれば、エッチング工程なしで、例えば、ロール状の液晶ポリマーフィルムにロール状の導電性線材を連続的に貼り合わせ、製品であるLED用回路基板もロール状で得ることが可能になる。かかる態様は、一般的にロールtoロールといわれ、効率が高いため生産コストを大幅に低減できる、大量生産に適する連続製造方法である。もちろん、本発明方法にロールtoロールを適用しない場合であっても、本発明方法は十分に高効率で低コストである。よって本発明は、発光効率に優れ長寿命であり、環境に優しい光源であるLEDの大幅な普及に寄与できるものと思われる。
【0071】
また、本発明方法の好ましい態様により製造されたLED基板は、発光効率や放熱効率に優れ、高輝度で長寿命である。よって本発明に係るLED基板は、液晶ディスプレイのバックライト、広告宣伝などに用いるパネル用バックライト、住宅照明、自動車における各種照明、機器照明、アミューズメント装置用光源、航空機や宇宙開発や鉄道関連の照明、サインボードや街灯などにも広く利用できるものと期待できる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0073】
実施例1 本発明に係るLED基板の製造
(1) 線状導電材の熱圧着
25mm×300mm、厚さ60μmの液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス社製,製品名「BIAC BC060W−NT」)上に、幅2mm、厚さ18μmの線状銅箔(古河サーキットフォイル社製,製品名「GTS−MP−18」)を2本、4mm間隔で平行に並べた。その上下に離型シートとして多孔質PTFEシートを配置し、小型真空プレス機(井本製作所社製)を使って、温度300℃、圧力1Mpaで3分間加圧加熱し、線状銅箔を液晶ポリマーフィルムの面まで圧入した。線状銅箔を熱圧着した液晶ポリマーフィルムは、冷却した後に取り出した。
【0074】
2本の線状銅箔の間に、幅2.5mm、長さ6mmの穴を30mm間隔で9個開けた。
【0075】
(2) 放熱層の形成
液晶ポリマーフィルムの裏側全面に、厚さ1.2mmの溶融亜鉛メッキ鋼板を上記(1)の条件と同様に熱圧着した。
【0076】
(3) LEDの搭載
上記(1)で空けた穴の部分にダイ・ヒートシンクがくる様な位置関係で、白色チップタイプLED(日亜化学社製,製品名「NS6W083AT」)のアノードとカソードを各線状銅箔にハンダ付けし、また、放熱層である溶融亜鉛メッキ鋼板とダイ・ヒートシンクとを先に開けておいたフィルム穴を通してハンダ付けした。
【0077】
(4) 絶縁
線状銅箔の露出部分とハンダ付け部分とにプリント基板用絶縁塗料(日本曹達社製、製品名「BC1000」)を塗布することにより環境絶縁した。
【0078】
以上の結果、軽量且つ放熱性の極めて良好な連続LED基板を、エッチング工程無しで生産性よく得られることが確認できた。
【0079】
実施例2 本発明に係るLED基板の製造
(1) 線状導電材の熱圧着
幅10mm×長さ120mm、厚さ60μmの液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス株式会社製、「BIAC BC060W−NT」)の片面に、幅1.0mm、厚さ18μmの線状銅箔(古川サーキットフォイル社製、「GTS−MP−18」)を2本、100μm間隔で平行に並べた。その上下に離型シートとして多孔質PTFEを配置し、小型真空プレス機(井本製作所社製)を使って温度300℃、圧力1Mpaで3分間加圧加熱し、線状銅箔を液晶ポリマーフィルムの面まで圧入し、冷却後取り出した。線状銅箔の表面には、さらに厚さ1μmの電解銀メッキを施した。
【0080】
(2) 放熱層の形成
上記(1)の液晶ポリマーフィルムと同様のフィルムにおいて、上記2本の線状銅箔上に相当する位置に、LEDベアチップ搭載予定位置として、30mm間隔で直径3mmの穴を3箇所開けた。当該液晶ポリマーフィルムを、上記(1)の線状銅箔を圧着した面に重ね、さらにその裏面に同サイズの厚さ3mmのアルミニウム板を重ね、上記(1)と同様の条件で加熱加圧することにより一度に貼り合わせた。
【0081】
(3) 光反射層兼ダム材
接着層付き多孔質PTFEシート(ジャパンゴアテックス社製、FLEXIBOND白色光反射フィルム)において、LED搭載箇所に相当する位置に直径3mmの穴を開け、この穴を線状銅箔上の穴に合わせて上記(2)のフィルムと貼り合わせた。
【0082】
(4) LEDの搭載
上記多孔質PTFEシートの穴内に位置する2本の線状銅箔の一方に、LEDベアチップ(クリー社製,C527−MB−290)を各穴に一つずつ銀ペーストでダイボンドし、各ベアチップから他方の線状銅箔上に金線でワイアボンドした。
【0083】
(5) LEDの封止
LEDベアチップが搭載された多孔質PTFEシート穴部に、透明エポキシ樹脂(稲畑産業社製,「主剤:HL2000A、硬化剤:HL2000B2」)を多孔質PTFEシート表面からやや盛り上がるまで流し込み、水平に保ちながら120℃で60分間、次いで150℃で4時間加熱硬化させた。その結果得られた封止形状は、凸レンズ状のバランスの良いものであった。
【0084】
以上のとおり、幅10mmで帯状の回路基板上に30mm間隔でLEDが並列に搭載され、裏面に放熱層が形成され、凸レンズ状の透明樹脂で封止されたLED基板が容易に製造できた。
【0085】
実施例3 本発明に係るLED基板の製造
(1) 線状導電材の熱圧着
25mm×300mm、厚さ60μmの液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス社製,製品名「BIAC BC060W−NT」)上に、幅1.0mm、厚さ18μmの線状銅箔を2本、1.0mm間隔で平行に並べた。その上下に離型シートとして多孔質PTFEを配置し、小型真空プレス機(井本製作所社製)を使って、温度300℃、圧力1Mpaで1分間加圧加熱し、線状銅箔を熱圧着した液晶ポリマーフィルムは、常温まで冷却した後に取り出した。
【0086】
(2) 直列構造の形成
2本の線状銅箔を、60mm間隔で直径1.1mmの穴を基板ごと開けることにより断線した。2本の線状銅箔の断線位置は、互いに30mmずつずらした。
【0087】
(3) LEDの搭載
図8に示す回路図と同様に、上記(2)で空けた穴によって断線された平行線回路を直列につなぐように、表面実装型タイプのLED素子(日亜化学工業社製、製品名「NSSR426CT」)を半田付けした。LEDの方向は、直列に配列することを前提とした。
【0088】
(4)絶縁
線状銅箔の露出部分とハンダ付け部分とにプリント基板用絶縁塗料(日本曹達社製、製品名「BC1000」)を塗布することにより絶縁した。
【0089】
以上の結果、軽量且つフレキシブル性のある連続テープ状のLED基板を、エッチング工程無しで得ることができた。かかる結果から、本発明方法によれば、ロール状の熱可塑性樹脂フィルムからロール状のLED基板を連続的に効率良く生産できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入しなかった基板にダイ・ヒートシンク付表面実装型LEDを搭載した場合を示す模式図である。
【図2】線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入しなかった基板にLEDベアチップを搭載した場合を示す模式図である。
【図3】図2を90°回転させた場合、即ち線状導電材の長さ方向におけるLED基板の、線状導電材に沿って樹脂が広がった部分の断面の模式図である。
【図4】線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入した基板にダイ・ヒートシンク付表面実装型LEDを搭載した場合を示す模式図である。
【図5】線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入した基板にLEDベアチップを搭載した場合を示す模式図である。
【図6】図5を90°回転させた場合、即ち線状導電材の長さ方向におけるLED基板の断面の模式図である。
【図7】2本の線状導電材間にLEDを並列につないだ回路の図である。
【図8】2本の線状導電材間にLEDを直列につないだ回路の図である。
【図9】4本の線状導電材を用い、直列につないだLED群をさらに並列につないだ回路の図である。
【図10】4本の線状導電材を用い、直列につないだLED群をさらに並列につないだ回路を有するLED基板の鳥瞰図である。
【図11】LEDベアチップを3列平行に搭載し、その部分以外を多孔質樹脂膜により被覆し、且つLEDベアチップを封止した基板を示す模式図である。
【符号の説明】
【0091】
1:熱可塑性樹脂フィルム、 2:線状導電材、 3:ダイ・ヒートシンク付LED、 4:ダイ・ヒートシンク、 5:高熱伝導性接着剤、 6:電極、 7:放熱層、 8:基板とLEDとの間の隙間、 9:LEDベアチップ、 10:ワイア、 11:封止樹脂、 12:LED、 13:線状導電材の断線箇所、 14:抵抗器、 15:多孔質PTFEシート
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED基板を製造するための方法、および当該方法により製造されるLED基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)などの発光デバイスは、消費電力が低く長寿命である上に、小型化や薄型化が可能である。よって、携帯電話や電光板、信号などに使用されている。特に最近では、液晶ディスプレイのバックライトとしての利用が期待されている。
【0003】
即ち、現段階では、液晶ディスプレイのバックライトとしては主に冷陰極管が用いられている。しかし近年、液晶ディスプレイの薄型化や省エネルギー化、高機能化により、LEDが冷陰極管に取って代わり得る地位にある。一部では、LEDがバックライトとして既に用いられている。
【0004】
従来、LEDが搭載された基板は、ガラスエポキシ基板の表面に金属層を形成し、この金属層をエッチングして回路とし、当該回路上にLEDをハンダ付けすることにより製造されていた。しかしガラスエポキシ基板は、その構造上厚くならざるを得ないので、回路の裏面に放熱層を設けても十分な放熱性は確保できない。そこで放熱性を高めるために、薄い基板を用いたLED基板が検討されている。
【0005】
例えば特許文献1には、熱硬化性のエポキシ樹脂などからなる絶縁層に金属箔層を固着させ、LEDを搭載するための回路を形成し、さらに絶縁層と放熱基板とを固着するに当たり、絶縁層を必要箇所にのみ設けることによりコストを低減する技術が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1の技術ではエッチングにより回路を形成しており、到底効率的に低コストで実施できるものではない。即ち、エッチングによる回路形成工程では、金属層の脱脂洗浄、レジスト感光膜の形成、露光、現像、エッチング、剥離という複雑な処理が必要である。また、エッチングにより除去される金属層は無駄となる。よって、エッチングにより回路を形成すると、エッチングによるコストは基板自体のコストの数倍にも及ぶ。さらに、エッチングでは一般的に塩化第二鉄が用いられるが、これを含む廃液は容易に廃棄できない。また、熱硬化性樹脂からなる絶縁層に放熱板を接着する場合には熱硬化性接着剤を用いなくてはならない。そのために、熱硬化させるための加熱加圧に時間や設備、多くのエネルギーが必要であり、コストの低減が難しいという事情もある。また、接着剤層の分だけ基板が厚くなる上に、その接着剤により熱伝導性が低下するというデメリットも有する。
【0007】
一方、特許文献2には、平板状に圧延した複数の導線を柔軟性の絶縁樹脂で一体的に被覆してフレキシブルな平行線を製造する技術が開示されている。しかし、かかる平行線は基板間または回路間を接続するためのものであり、デバイスを搭載するためのものではない。実際、平行線の被覆は絶縁樹脂にディップすることにより行われており、当該平行線を端部以外で露出させてデバイスを搭載することは容易ではない。また、特許文献2では導線を被覆する絶縁樹脂の種類は特定されていない。
【特許文献1】特開2007−220925号公報
【特許文献2】特開昭57−115714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した様に、フレキシブルなLED基板は知られていた。しかしエッチングが必要であるなどその製造工程は複雑であり、決して容易に製造できるものではなかった。
【0009】
そこで本発明が解決すべき課題は、LED基板を簡便かつ効率的に製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた。その結果、基板として液晶ポリマーフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルムを用い、この基板に線状の回路を熱圧着すれば、液晶ディスプレイのバックライトなどとして利用可能な、LEDが連続的に搭載された基板を極めて簡便かつ効率的に製造できることを見出して、本発明を完成した。
【0011】
本発明に係るLED基板の製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムに線状導電材を熱圧着する工程;および、線状導電材に、少なくとも2個のLEDを搭載する工程;を含むことを特徴とする。なお、線状導電材にLEDを搭載する態様には、線状導電材を回路として基板上にLEDを搭載するあらゆる態様が含まれる。例えば、1本の線状導電材の断線部分または2本の線状導電材の間に表面実装型LEDの本体を配置して各電極を線状導電材にハンダ付けする態様や;LEDベアチップを1本の線状導電材における一方の断線端部または2本の線状導電材の一方にダイボンドして、他方の断線端部または他方の線状導電材にワイアボンドする態様が考えられる。
【0012】
上記方法においては、線状導電材を熱圧着する際に線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入することが好ましい。例えば、エッチングにより回路を形成した場合や接着剤で回路を基板に貼り付ける場合には、基板表面に対して回路が厚みの分盛り上がることになり平滑な回路は得られない。その結果、図1に示すように、基板とLEDとの間に回路厚みの分の空間が生じる。その結果、特にダイ・ヒートシンク付の表面実装型LEDを搭載する場合には、かかる空間へハンダや銀ペーストなどの高熱伝導性接着剤が入り込み、電極が短絡するという不良が発生する可能性がある。また、LEDベアチップを透明樹脂により封止する場合、図2に示すように回路と基板との間に段差が存在すると、図3のように樹脂が回路に沿って過剰に広がる場合がある。その結果、透明封止樹脂による形成物に光学的に歪みが生じ、光放散の均一性を損ねる原因となり得るばかりでなく、ベアチップの封止が不十分になる原因ともなり得る。また、その際にたとえダム材を使っても、基板とダム材との空間から透明樹脂が流れ出ることがある。しかし、回路となる線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入すれば、図4のとおり基板とダイ・ヒートシンク付表面実装型LEDとの間に隙間は生じ難い。また、図5のとおり線状導電材と熱可塑性樹脂フィルムとの間に段差が無ければ、図6に示すように線状導電材の長さ方向への封止樹脂の過剰な広がりを抑制でき、光学的な歪み形成のリスク低減が可能になる。
【0013】
さらに回路を設けた基板が平滑であれば、クリームハンダやレジスト剤などを印刷する場合、その精度が向上する。また、後述するようにLED基板では放熱性を高めるためや回路を断線するために穴を開けることがある。この際、生産方法によっては複数の基板を重ねて穴を形成すると効率が高いが、回路面と基板面とに段差がなければ穴を開けるときに基板がずれにくく、安定した穴開けが可能になる。なお、熱可塑性フィルムを絶縁層とする回路基板の場合、当該フィルム上の銅箔をエッチングして回路を形成した後に、当該回路を加熱によりフィルム中に圧入することも考えられる。しかし本発明では、シンプルな線状導電材を回路とするため、当該回路の圧着と圧入を同時に実施することができ、非常に効率的である。
【0014】
上記方法においては、さらに、2本の線状導電材の間に搭載したLEDを直列につなぐために、搭載されているLED間またはLEDが搭載されるべき部分の間を交互に断線する工程を実施することが好ましい。図7に示すように複数のLEDを並列につなぐと、LEDの個体差により明るさに不均一が生じるおそれがある。しかし複数のLEDを直列につなげば、均一な明るさが得られるという利点がある。また、2本の線状導電材の間に複数のLEDを搭載した場合、図8に示すように回路をLED搭載部間で交互に断線することにより極めて容易にLEDを直列につなぐ回路の形成が可能になる。
【0015】
さらに、少なくとも3本の線状導電材を熱圧着し、LEDを直列につないだ部分をさらに並列につなぐ工程を実施することが好ましい。上記のようにLEDを直列につなげば均一な明るさが得られるが、一つでもLEDに不良が生じると直列につながれた全てのLEDが点灯しなくなってしまう。そこで、図9や図10に示すように直列につながれたLED同士を並列につなげば、一部の直列LEDに不良が生じても、他の直列LEDは点灯するので、全体が点灯しなくなるということはない。かかるLEDの配列は、LED搭載部で断線することにより容易に形成することができる。
【0016】
本発明方法においては、さらに、図11に示すように、熱可塑性樹脂フィルムの線状導電材上を熱圧着した側の面において、LEDを搭載した部分以外または搭載すべき部分以外を多孔質樹脂膜により被覆する工程を行うことが好適である。従来、透明または半透明の基板にLEDを搭載する場合には、光反射効率を高めるために基板に酸化チタンなどを混ぜて透明性を低減したり白色化することが行われていた。しかし、酸化チタンなどの無機物を大量に混入すると基板の強度が低下するなどの問題がある。一方、多孔質樹脂膜で基板を被覆することにより反射率を高めれば、上述したような従来技術の問題は起こらない。また、後述するようにLEDベアチップを透明樹脂により封止する場合には、透明樹脂が必要部分外にまで流れ出ないように、多孔質樹脂膜をダム材として利用することもできる。さらに多孔質樹脂膜は、多孔質ゆえに光を極めて高効率に乱反射させることができる。また、多孔質樹脂膜は、熱可塑性樹脂フィルムと貼り合せてもフレキシブル性を損なわないという利点もある。
【0017】
さらに本発明方法においては、LEDベアチップを用いる場合、LEDを透明樹脂により封止する工程を含むことが好ましい。特に、LEDベアチップを用いる場合では、封止は重要である。また、上述したように多孔質樹脂膜で回路面を被覆する場合には、封止樹脂と親和性の低い樹脂からなる多孔質膜を選択することにより、多孔質樹脂膜の凹部体積をやや超える量の封止樹脂を注入しても封止樹脂は多孔質樹脂膜上で広がることはなく、図11に示すように凸レンズ状となる。かかる凸レンズ状の封止樹脂の光取り出し効果は高い。また、LEDベアチップから発せられた光のうち平面方向の光は、多孔質樹脂膜の側面で乱反射を起こす。その結果、従来は有効利用できなかった光の利用が可能になる。
【0018】
熱可塑性樹脂フィルムの線状導電材上を熱圧着した側または熱圧着すべき側と反対の面には、放熱層を設けることが好ましい。LED基板においては、発光により生じる熱を低減することが重要である。
【0019】
また、熱可塑性樹脂フィルム、線状導電材および放熱層には、放熱用の貫通穴を設けることが好ましい。かかる貫通穴を設けることによって、発光による熱をより一層効率的に基板外部へ放出することが可能になる。また、かかる貫通穴は、線状導電材の断線手段としても利用可能である。
【0020】
本発明のLED基板は、上記本発明方法により製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明方法によれば、複数のLEDが搭載された基板を極めて容易かつ効率的に製造できる。より具体的には、絶縁層として液晶ポリマーフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルムを用いることによって、エッチングをすることなく、直線状の導電材を熱圧着により貼り付けるのみで回路の形成が可能になる。よって本発明は、近年需要が高まっている、優れた特性を有するLED基板を簡単かつ効率的に製造する技術として、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係るLED基板の製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムに、線状導電材を平行または略平行に熱圧着する工程;および、線状導電材に、少なくとも2個のLEDを搭載する工程;を含むことを特徴とする。以下、本発明の実施条件につき説明する。
【0023】
(1) 線状導電材の熱圧着工程
本発明では、熱可塑性樹脂フィルムに、線状導電材を平行または略平行に熱圧着する。
【0024】
本発明で絶縁層を構成する熱可塑性樹脂は、線状導電材の熱圧着に要する熱に対する耐性が高いものであれば使用目的に合わせて広く選ぶことができ、特に制限されない。例えば、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、これらのうち2種以上の混合樹脂、およびこれら樹脂を主成分として含むポリマーアロイなどを用いることができる。ここで「主成分」とは、ポリマーアロイに対して50質量%以上含むことを意味し、好適には70質量%以上、より好適には80質量%以上含むことを意味する。
【0025】
絶縁層を構成する熱可塑性樹脂としては、液晶ポリマーが好適である。液晶ポリマーは耐熱性に優れ、LEDより発せられる熱のみならず線状導電材の熱圧着に要する熱への耐性も高い。また、線状導電材を構成する金属、例えば代表的な導電素材として多く使用されている銅との線膨張率の近い液晶ポリマーも販売されており、かかる液晶ポリマーを用いれば、熱加工時における応力を低減できる。
【0026】
液晶ポリマーは耐熱性の熱可塑性樹脂であり、溶融状態で液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマーと溶液状態で液晶性を示すリオトロピック液晶ポリマーとがある。本発明で用いる液晶ポリマーとしてはサーモトロピック液晶ポリマーが好適であり、より具体的にはサーモトロピック液晶ポリエステルやサーモトロピック液晶ポリエステルアミドが好ましい。
【0027】
本発明で絶縁層とする熱可塑性樹脂フィルムの厚さとしては、10μm以上、2000μm以下程度が好ましい。薄過ぎると強度が不足する可能性がある一方で、厚過ぎるとフィルム化が困難となり得る。なお、熱可塑性樹脂フィルムの平面形状や大きさは、完成したLED基板を適用する機器の大きさなどに応じて適宜決定すればよい。
【0028】
上記液晶ポリマーフィルムでは、線膨張係数の調整が可能である。かかる線膨張係数は、フィルム平面に平行な方向で30ppm/℃以下に調整されていることが好ましい。より好ましくは25ppm/℃以下である。なお、液晶ポリマーフィルムの線膨張係数は、分子配向を制御することにより調節することができる。また、フィラーの添加などにより調節してもよい。但しフィラーは液晶ポリマーフィルムの表面平滑性に悪影響を与える場合があるので、線膨張係数は好適には延伸条件により調整する。
【0029】
ダイ・ヒートシンク付表面実装型LEDを搭載する場合には、ダイ・ヒートシンクと放熱層とを熱伝導性接着剤で接合するために、熱可塑性樹脂フィルムに穴を開けておくことが好ましい。かかる穴の大きさは、LEDの大きさに合わせて調節すればよい。
【0030】
本発明において熱可塑性樹脂フィルムに熱圧着する線状導電材の材質は、回路基板の回路に用いられるものであれば特に制限されない。例えば、銅、銀、金、アルミニウム、鉄、ニッケル、およびこれらを含む合金、さらには炭素繊維などの導電性カーボン素材などを例示することができ、好適には電子回路素材として広く使われている銅または銅合金を用いる。さらに線状導電材は、熱可塑性樹脂フィルムに貼り合わせる前または貼りあわせた後のいずれかに金属メッキ処理したものであってもよい。
【0031】
線状導電材は、本発明のLED基板において回路の役割を有する。よって、直径が20μm以上、5mm以下程度の線でもよいが、好適にはLEDを搭載し易くするために平板状とする。また、LEDの搭載部分を平板状とした線であってもよい。例えば、断面形状が幅0.05〜50mm、厚さ1〜500μm程度の線状金属箔とすることが好ましい。
【0032】
本発明においては、線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムに熱圧着する。熱圧着すべき線状導電材の数は特に制限されないが、好適には2本以上とする。1本のみでは複数のLEDを直列につながざるを得ず、並列につなぐことはできない。また、2本の線状導電材を用いれば、LEDを並列につなぐことができるし、後述するように直列につなぐこともできる。3本以上の線状導電材を用いれば、部分的に直列につないだLED群を、さらに並列につなぐことも可能となる。その結果、直列につながれた各LEDはその品質によらずほぼ均等に発光することができる上に、さらに並列につなぐことによって、一部のLEDに不良が生じた場合にそのLEDを含む直列部分は発光しなくなるが、他の直列部分は発光することができるので、全体的な発光量は低下するが、全消灯のリスクを低減することができる。
【0033】
2本以上の線状導電材を熱圧着する場合には、互いに平行または略平行に並べることが好ましい。2本の線状導電材の間にLEDを搭載することがあり、その場合に線上導電材間の間隔が不均一であると製造の自動化が難しくなることがあり、また、LEDを搭載できなくなる場合があり得る。2本以上の線状導電材を熱圧着する場合における線状導電材間の距離は、搭載するLEDの種類や大きさにもよるが、通常は10μm以上、50mm以下程度とし、より好ましくは20μm以上、5mm以下とする。
【0034】
なお、比較的幅の広い線状導電材を1本貼り合わせた後、その中央部を直線状に切り取ることにより2本以上の線状導電材を形成してもよい。
【0035】
線状導電材を液晶ポリマーフィルムに熱圧着する条件は、予備実験などにより適宜決定すればよい。例えば、熱圧着すべき線状導電材を液晶ポリマーフィルム上に配置し、その上下に多孔質PTFEシートなどの離型シートを挿入し、温度:200〜400℃、圧力:0.5〜10MPa、熱圧着時間:3秒〜5分間で熱圧着する。通常、熱硬化性樹脂の硬化には数時間の加熱を要することと比べれば、本発明方法がいかにスピーディーでエネルギー的にも設備拘束時間の点でも有利であるかがうかがえる。
【0036】
線状導電材を熱圧着する際には、線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入することが好ましい。線状導電材と熱可塑性樹脂フィルムとの間に段差がなければ、図4〜6のとおり、ダイ・ヒートシンク付表面実装型LEDをハンダ付けする時における不良や、LEDベアチップを封止する際における樹脂の過剰な広がりをより確実に抑制できる。また、回路を設けた基板が平滑であれば、クリームハンダやレジスト剤などを印刷する場合、その精度が向上する。線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入するには、熱圧着条件を調整すればよい。例えば、熱圧着時の温度や圧力をより高め、熱圧着時間を長くすればよい。
【0037】
なお、本発明においては、熱可塑性樹脂フィルムの両面に線状導電材を熱圧着し、スルーホールや導電接合法などにより両面の回路を結合することも可能である。
【0038】
(2) 線状導電材の断線工程
本発明では、必要に応じて、熱可塑性樹脂フィルムに熱圧着した線状導電材を断線する。例えば図7に示すように2本の線状導電材の間にLEDを並列に搭載する場合には、線状導電材を断線する必要はない。しかし、1本の線状導電材の上に複数のLEDを直列に搭載する場合には、LEDを搭載すべき部分を断線する必要がある。
【0039】
また、図8に示すように、2本の線状導電材の間に複数のLEDを搭載し、これらLEDを直列につなぐには、LEDが搭載されるべき部分の間を交互に断線すればよい。
【0040】
少なくとも3本の線状導電材を熱圧着した場合、LEDを直列につないだ部分を必要に応じてさらに並列につないでもよい。即ち、1本の線状導電材の上に複数のLEDを直列に搭載する場合には、その線状導電材をLEDの間またはLEDを搭載すべき部分の間で適宜断線し、両端が断線した部分を、それを挟むように配置した2本の線状導電材と結合させればよい。また、2本の線状導電材の間にLEDを直列に搭載する場合には、図9や図10に示すように、LEDと断線部分との間で、その2本の線状導電材を挟むように配置した2本の線状導電材と結合させればよい。
【0041】
線状導電材の断線は、その場所にLEDを搭載する場合にはLEDの大きさにある程度合わせる必要がある。一方、断線箇所にLEDを搭載しない場合には、断線部分の大きさは特に制限されない。例えば、線状導電材と共に熱可塑性樹脂フィルム、さらにはこれらに加えて放熱層を打ち抜く或いは切り抜くなどの手法で、断線と放熱用穴の形成を同時に行ってもよい。
【0042】
複数の線状導電材をつなぐには、LEDを用いるほか、必要に応じて抵抗器など他のデバイスを用いてもよいし、単なる電線を用いてもよい。
【0043】
なお、線状導電材の断線は、LEDを搭載する前に行ってもよいし、搭載後に行ってもよい。また、線状導電材の断線は、放熱層を設ける前に行ってもよいし、放熱層の形成後に行ってもよい。
【0044】
以上のとおり、線状の導電材を平行に熱圧着すれば、容易に直列または並列、或いは直列・並列併用のLED基板を製造することが可能になる。
【0045】
(3) 放熱層の形成工程
熱可塑性樹脂フィルムの線状導電材を熱圧着した側または熱圧着すべき側と反対の面には、放熱層を設けることが好ましい。LED基板においては、発光により生じる熱を低減することが重要である。
【0046】
放熱層を形成するための材質は、熱伝導性に優れるものであれば特に制限されないが、例えば銅、銀、金、アルミニウム、鉄、ニッケル、コバルト、およびこれらを含む合金、さらにこれらを亜鉛などによりメッキしたもの、その他にアルミナなどのセラミックスなどを用いることができる。
【0047】
放熱層の厚さは特に制限されないが、例えば5μm以上程度とすることができる。放熱層が薄過ぎるとフィルム強度が低下して貼り合わせ作業が困難になる場合があり得る。その一方で、厚さの上限は特に制限されない。また、放熱層はLEDを搭載した部分または搭載すべき部分の反対側にのみ形成することもできるが、工程が複雑になることから、熱可塑性樹脂フィルムの裏面全部に形成することが好ましい。また、必要に応じてLED搭載面の光取り出しを妨げない部分にも放熱層を貼り合わせることも可能であり、さらに、放熱層を熱可塑性樹脂フィルムよりも大きくしてもよい。
【0048】
放熱層は、接着剤を用いて熱可塑性樹脂フィルムに貼り付けてもよい。但し、接着剤の厚さの分だけ放熱効果が低下することや、接着剤の塗布や乾燥などが必要となるという不利な点がある。よって放熱層は、熱可塑性フィルムの特性を活かして熱圧着することが好ましい。なお、放熱層の熱圧着条件は、線状導電材の熱圧着条件と同様とすることができる。
【0049】
放熱層は線状導電材の熱圧着の前に形成してもよいし、熱圧着後に形成してもよい。或いは、線状導電材の熱圧着と同時に行ってもよい。但しLEDの保護の観点から、少なくともLEDの搭載前に放熱層を形成することが好ましい。
【0050】
なお、放熱層が設計上の理由から放熱に要する面積を十分に確保することができない場合には、熱可塑性フィルムに貼り合わせた放熱層を一次放熱層とし、それをさらに別の放熱用部材に結合させることで、放熱能力の補完が可能となる。例えば、一次放熱層に放熱フィンを貼り合わせたり、或いはLED付装置であれば、一次放熱層に熱伝導性の良い構成部材を結合させることによって、LED付装置全体を放熱材として利用するなどの手法を用いることができる。
【0051】
(4) LEDの搭載工程
本発明では、少なくとも2個のLEDを搭載する。回路上に1個のLEDを搭載するのみでは複雑な工程は必要ないが、本発明では、複数のLEDが搭載された基板を簡便かつ効率的に製造することを目的としている。
【0052】
LEDの搭載方法は、従来公知の方法を用いればよい。即ち、ダイ・ヒートシンク付表面実装型LEDの場合、熱可塑性樹脂フィルムに設けた穴にダイ・ヒートシンクを位置させて、裏面の放熱層とダイ・ヒートシンクをハンダなどの高熱伝導性材料により接合し、電極はそれぞれ線状導電材にハンダ付けする。LEDベアチップの場合は、例えばチップを2本の線状導電材の一方にダイボンドし、チップともう一方の線状導電材とを金線などによりワイアボンドする。但し、LEDを搭載する向きは目的に合わせて選択する。
【0053】
(5) 絶縁工程
本発明においては、熱可塑性樹脂に線状導電材を熱圧着し且つLEDを搭載した後には、回路面を外部から保護するために絶縁することが好ましい。かかる絶縁は、一般的な絶縁塗料や光反射性の高い保護レジストを塗布するなどにより行うことができる。もちろん、その他にも一般的に知られている絶縁方法を用いることも可能である。また、回路面にさらに熱可塑性樹脂フィルムを熱圧着してもよい。
【0054】
(6) 光反射層の形成工程
本発明においては、熱可塑性樹脂フィルムの線状導電材を熱圧着した側の面において、その最外面に光反射層を形成することが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムには、光透過性の低いものも存在するが、一般的には透明または半透明である。よって、LEDから発せられた光はある程度反射するものの、一部は熱可塑性樹脂フィルムを透過しまたは吸収されてしまう。しかし光反射層を形成すれば、LEDから発せられた光を有効に使うことができる。
【0055】
光反射層の形成手段は特に制限されず、従来技術を適用すればよいが、好適にはLEDを搭載した部分以外または搭載すべき部分以外を多孔質樹脂膜により被覆することにより行う。多孔質の樹脂膜で被覆すれば、光を効果的に乱反射させることが可能になる。また、樹脂膜は軽量で且つフレキシブルであるという長所もある。
【0056】
多孔質樹脂膜の材質としては、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などを挙げることができる。また、多孔質樹脂膜の孔径は特に制限されないが、直径の平均値で10μm以下程度とすることができる。本発明の光反射層としては、特に多孔質PTFEフィルムが好適である。PTFEは抜群の耐光性を示す上に、光劣化にも強い。
【0057】
被覆する多孔質PTFEは、PTFE粉末をシートに成形してさらに一軸方向または二軸方向に延伸して多孔質にするなどすることにより製造できる。また、多孔質PETフィルムや多孔質PPフィルムは、光反射材として市販されているものがあるので、それを使用すればよい。
【0058】
多孔質樹脂膜の厚さは適宜調整すればよいが、10μm以上、2000μm以下程度とすることが好ましい。10μm未満であると光反射効率が低下するおそれがある一方で、2000μmを超えるとコストが高くなる場合がある。
【0059】
多孔質樹脂膜による被覆の手段は特に制限されず、従来技術を用いることができる。例えば、多孔質樹脂膜の中には熱圧着のみでは熱可塑性樹脂フィルムに接着し難いものがあるので、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、BT樹脂からなる接着剤を用いて熱可塑性樹脂フィルムに貼り付ければよい。また、粘着剤を用いて貼り付けることも可能である。その他、別途多孔質樹脂膜に上記接着剤を含浸させた接着シートを用い、反射層である多孔質樹脂膜と熱可塑性樹脂フィルムを接着してもよい。かかる接着剤付き光反射フィルムとしては、ジャパンゴアテックス社のFLEXIBOND白色光反射フィルムなど市販されているものがある。かかる接着剤付きフィルムを用いれば、多孔質樹脂膜と熱可塑性樹脂フィルムとを容易に接着することができる。
【0060】
光反射層の形成は、線状導電材の熱圧着後であれば特に制限なく行うことができる。放熱用穴の形成の前に光反射層を形成すると、光反射層を除いて放熱用穴を形成することが難しく、また、放熱用穴を反射層にまで設けると反射効率が低下する場合がある。但し、放熱効率を高めるために、反射層にも積極的に放熱用穴を開ける場合もある。
【0061】
(7) 放熱用貫通穴の形成工程
本発明のLED基板には、熱可塑性樹脂フィルム、線状導電材および放熱層に放熱用の貫通穴を設けることが好ましい。LEDは発光により熱を発し、かかる熱により発光機能が低下する。近年ではLEDの高輝度化やハイパワー化がより一層進み、LED基板の放熱性が重要になってきている。また、基板の長寿命化のためにも放熱効率を高めることが望ましい。
【0062】
放熱用の穴は、熱可塑性樹脂フィルム、線状導電材および放熱層を貫通するものであることが好ましい。通気性を良好にしてLEDの発熱により生じた熱を外部へ放散するためである。また、穴の位置は、LEDからの熱を効率的に放散するために、LED近辺に設けることが好ましい。
【0063】
また、ダイ・ヒートシンク付表面実装型LEDの場合には、熱可塑性樹脂フィルムのみに穴を開け、ダイ・ヒートシンクと放熱層とを高熱伝導性材料により接合することが好ましい。かかる態様によって、放熱効率がより一層高まる。
【0064】
放熱用貫通穴の大きさや形状は特に制限されないが、直径でいえば50μm以上、50mm以下とすることが好ましい。但し、貫通穴の数や大きさは、適宜調整する必要がある。貫通穴の数が多過ぎたり大き過ぎたりすると、基板強度が低下するばかりでなく、放熱効果が低下するおそれがあり得るので、LEDの種類や数も考慮して貫通穴の大きさや数、位置などを決定する。また、放熱用穴が線状導電材の断線手段を兼ねる場合には、放熱用穴の大きさを線状導電材の幅以上とする必要がある。一方、放熱用穴を線状導電材の断線箇所以外に設ける場合には、放熱用穴の大きさは断線のおそれがない程度にしなければならない。
【0065】
(8) LEDの封止工程
LEDベアチップを用いる場合には、線状導電材に搭載した後、透明樹脂により封止することが好ましい。LEDベアチップを用いた場合には、封止は重要である。
【0066】
LEDの封止手段は特に制限されず、従来技術を適用すればよい。例えば、封止用の樹脂としては、エポキシ樹脂やシリコン樹脂からなる透明または半透明の液状封止樹脂から適宜選択して用いることができる。
【0067】
従来、平面状の基板を液状樹脂で封止する場合には、樹脂の粘度や揺変性を調整したり、ダム材を用いるといった手法により、封止箇所からの樹脂の広がりを抑えていた。しかし樹脂の粘度を高くすると、封止樹脂中に気泡が残り易くなるなど封止作業が難しくなる。また、ダム材を用いても、加熱硬化する際に透明樹脂の粘度が低下して基板と回路との段差から樹脂が流れ出てしまう場合がある。よって本発明では、線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入することが好ましい。線状導電材と熱可塑性樹脂フィルムとの段差を無くすことにより、封止樹脂の過剰な広がりを抑制することができる(図3と図6を参照)。
【0068】
また、反射層として被覆した多孔質樹脂膜をそのままダム材として用いることが好ましい。多孔質樹脂膜は優れた光反射率を有するので、本発明に係るLED基板の発光効率が高まる。また、封止樹脂との親和性が低く封止樹脂をはじくような多孔質樹脂膜を選択することにより、図11に示すように凸レンズ状の透明樹脂形状が得ることも可能になる。なお、ダム材の高さや封止樹脂量を調整することによって、目的に応じて凸レンズ状以外の形状を形成することも可能である。
【0069】
通常、LED基板を作製する場合には、LEDを別途作製した後に回路上に搭載するので、比較的効率が悪い。しかし本発明でLEDベアチップを搭載する場合、線状導電材上にLEDベアチップを直接ダイボンドし、さらにワイアボンドした後にLEDを封止することが可能である。即ち、本発明によれば、回路の形成からLEDの搭載といった一連の作業により効率良くLED基板を連続的に作製することができる。
【0070】
本発明方法によれば、複数のLEDが配列された基板を、エッチング工程なしで、簡便かつ連続的に製造することができる。現在のところ、LED照明やLEDバックライトが一般に普及しきれないのは、基板の製造コストが高いことに一因がある。それに対して本発明によれば、エッチング工程なしで、例えば、ロール状の液晶ポリマーフィルムにロール状の導電性線材を連続的に貼り合わせ、製品であるLED用回路基板もロール状で得ることが可能になる。かかる態様は、一般的にロールtoロールといわれ、効率が高いため生産コストを大幅に低減できる、大量生産に適する連続製造方法である。もちろん、本発明方法にロールtoロールを適用しない場合であっても、本発明方法は十分に高効率で低コストである。よって本発明は、発光効率に優れ長寿命であり、環境に優しい光源であるLEDの大幅な普及に寄与できるものと思われる。
【0071】
また、本発明方法の好ましい態様により製造されたLED基板は、発光効率や放熱効率に優れ、高輝度で長寿命である。よって本発明に係るLED基板は、液晶ディスプレイのバックライト、広告宣伝などに用いるパネル用バックライト、住宅照明、自動車における各種照明、機器照明、アミューズメント装置用光源、航空機や宇宙開発や鉄道関連の照明、サインボードや街灯などにも広く利用できるものと期待できる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0073】
実施例1 本発明に係るLED基板の製造
(1) 線状導電材の熱圧着
25mm×300mm、厚さ60μmの液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス社製,製品名「BIAC BC060W−NT」)上に、幅2mm、厚さ18μmの線状銅箔(古河サーキットフォイル社製,製品名「GTS−MP−18」)を2本、4mm間隔で平行に並べた。その上下に離型シートとして多孔質PTFEシートを配置し、小型真空プレス機(井本製作所社製)を使って、温度300℃、圧力1Mpaで3分間加圧加熱し、線状銅箔を液晶ポリマーフィルムの面まで圧入した。線状銅箔を熱圧着した液晶ポリマーフィルムは、冷却した後に取り出した。
【0074】
2本の線状銅箔の間に、幅2.5mm、長さ6mmの穴を30mm間隔で9個開けた。
【0075】
(2) 放熱層の形成
液晶ポリマーフィルムの裏側全面に、厚さ1.2mmの溶融亜鉛メッキ鋼板を上記(1)の条件と同様に熱圧着した。
【0076】
(3) LEDの搭載
上記(1)で空けた穴の部分にダイ・ヒートシンクがくる様な位置関係で、白色チップタイプLED(日亜化学社製,製品名「NS6W083AT」)のアノードとカソードを各線状銅箔にハンダ付けし、また、放熱層である溶融亜鉛メッキ鋼板とダイ・ヒートシンクとを先に開けておいたフィルム穴を通してハンダ付けした。
【0077】
(4) 絶縁
線状銅箔の露出部分とハンダ付け部分とにプリント基板用絶縁塗料(日本曹達社製、製品名「BC1000」)を塗布することにより環境絶縁した。
【0078】
以上の結果、軽量且つ放熱性の極めて良好な連続LED基板を、エッチング工程無しで生産性よく得られることが確認できた。
【0079】
実施例2 本発明に係るLED基板の製造
(1) 線状導電材の熱圧着
幅10mm×長さ120mm、厚さ60μmの液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス株式会社製、「BIAC BC060W−NT」)の片面に、幅1.0mm、厚さ18μmの線状銅箔(古川サーキットフォイル社製、「GTS−MP−18」)を2本、100μm間隔で平行に並べた。その上下に離型シートとして多孔質PTFEを配置し、小型真空プレス機(井本製作所社製)を使って温度300℃、圧力1Mpaで3分間加圧加熱し、線状銅箔を液晶ポリマーフィルムの面まで圧入し、冷却後取り出した。線状銅箔の表面には、さらに厚さ1μmの電解銀メッキを施した。
【0080】
(2) 放熱層の形成
上記(1)の液晶ポリマーフィルムと同様のフィルムにおいて、上記2本の線状銅箔上に相当する位置に、LEDベアチップ搭載予定位置として、30mm間隔で直径3mmの穴を3箇所開けた。当該液晶ポリマーフィルムを、上記(1)の線状銅箔を圧着した面に重ね、さらにその裏面に同サイズの厚さ3mmのアルミニウム板を重ね、上記(1)と同様の条件で加熱加圧することにより一度に貼り合わせた。
【0081】
(3) 光反射層兼ダム材
接着層付き多孔質PTFEシート(ジャパンゴアテックス社製、FLEXIBOND白色光反射フィルム)において、LED搭載箇所に相当する位置に直径3mmの穴を開け、この穴を線状銅箔上の穴に合わせて上記(2)のフィルムと貼り合わせた。
【0082】
(4) LEDの搭載
上記多孔質PTFEシートの穴内に位置する2本の線状銅箔の一方に、LEDベアチップ(クリー社製,C527−MB−290)を各穴に一つずつ銀ペーストでダイボンドし、各ベアチップから他方の線状銅箔上に金線でワイアボンドした。
【0083】
(5) LEDの封止
LEDベアチップが搭載された多孔質PTFEシート穴部に、透明エポキシ樹脂(稲畑産業社製,「主剤:HL2000A、硬化剤:HL2000B2」)を多孔質PTFEシート表面からやや盛り上がるまで流し込み、水平に保ちながら120℃で60分間、次いで150℃で4時間加熱硬化させた。その結果得られた封止形状は、凸レンズ状のバランスの良いものであった。
【0084】
以上のとおり、幅10mmで帯状の回路基板上に30mm間隔でLEDが並列に搭載され、裏面に放熱層が形成され、凸レンズ状の透明樹脂で封止されたLED基板が容易に製造できた。
【0085】
実施例3 本発明に係るLED基板の製造
(1) 線状導電材の熱圧着
25mm×300mm、厚さ60μmの液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス社製,製品名「BIAC BC060W−NT」)上に、幅1.0mm、厚さ18μmの線状銅箔を2本、1.0mm間隔で平行に並べた。その上下に離型シートとして多孔質PTFEを配置し、小型真空プレス機(井本製作所社製)を使って、温度300℃、圧力1Mpaで1分間加圧加熱し、線状銅箔を熱圧着した液晶ポリマーフィルムは、常温まで冷却した後に取り出した。
【0086】
(2) 直列構造の形成
2本の線状銅箔を、60mm間隔で直径1.1mmの穴を基板ごと開けることにより断線した。2本の線状銅箔の断線位置は、互いに30mmずつずらした。
【0087】
(3) LEDの搭載
図8に示す回路図と同様に、上記(2)で空けた穴によって断線された平行線回路を直列につなぐように、表面実装型タイプのLED素子(日亜化学工業社製、製品名「NSSR426CT」)を半田付けした。LEDの方向は、直列に配列することを前提とした。
【0088】
(4)絶縁
線状銅箔の露出部分とハンダ付け部分とにプリント基板用絶縁塗料(日本曹達社製、製品名「BC1000」)を塗布することにより絶縁した。
【0089】
以上の結果、軽量且つフレキシブル性のある連続テープ状のLED基板を、エッチング工程無しで得ることができた。かかる結果から、本発明方法によれば、ロール状の熱可塑性樹脂フィルムからロール状のLED基板を連続的に効率良く生産できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入しなかった基板にダイ・ヒートシンク付表面実装型LEDを搭載した場合を示す模式図である。
【図2】線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入しなかった基板にLEDベアチップを搭載した場合を示す模式図である。
【図3】図2を90°回転させた場合、即ち線状導電材の長さ方向におけるLED基板の、線状導電材に沿って樹脂が広がった部分の断面の模式図である。
【図4】線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入した基板にダイ・ヒートシンク付表面実装型LEDを搭載した場合を示す模式図である。
【図5】線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入した基板にLEDベアチップを搭載した場合を示す模式図である。
【図6】図5を90°回転させた場合、即ち線状導電材の長さ方向におけるLED基板の断面の模式図である。
【図7】2本の線状導電材間にLEDを並列につないだ回路の図である。
【図8】2本の線状導電材間にLEDを直列につないだ回路の図である。
【図9】4本の線状導電材を用い、直列につないだLED群をさらに並列につないだ回路の図である。
【図10】4本の線状導電材を用い、直列につないだLED群をさらに並列につないだ回路を有するLED基板の鳥瞰図である。
【図11】LEDベアチップを3列平行に搭載し、その部分以外を多孔質樹脂膜により被覆し、且つLEDベアチップを封止した基板を示す模式図である。
【符号の説明】
【0091】
1:熱可塑性樹脂フィルム、 2:線状導電材、 3:ダイ・ヒートシンク付LED、 4:ダイ・ヒートシンク、 5:高熱伝導性接着剤、 6:電極、 7:放熱層、 8:基板とLEDとの間の隙間、 9:LEDベアチップ、 10:ワイア、 11:封止樹脂、 12:LED、 13:線状導電材の断線箇所、 14:抵抗器、 15:多孔質PTFEシート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムに線状導電材を熱圧着する工程;および
線状導電材に、少なくとも2個のLEDを搭載する工程;
を含むことを特徴とするLED基板の製造方法。
【請求項2】
線状導電材を熱圧着する際、線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
2本の線状導電材の間に搭載したLEDを直列につなぐために、搭載されているLED間またはLEDが搭載されるべき部分の間を交互に断線する工程を含む請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
少なくとも3本の線状導電材を熱圧着し、LEDを直列につないだ部分をさらに並列につなぐ工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂フィルムの線状導電材上を熱圧着した側の面において、LEDを搭載した部分以外または搭載すべき部分以外を多孔質樹脂膜により被覆する工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
LEDベアチップを用いた場合、当該LEDベアチップを透明樹脂により封止する工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂フィルムの線状導電材を熱圧着した側または熱圧着すべき側と反対の面に、放熱層を設ける工程を含む請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
熱可塑性樹脂フィルム、線状導電材および放熱層に、放熱用の貫通穴を設ける工程を含む請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とするLED基板。
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムに線状導電材を熱圧着する工程;および
線状導電材に、少なくとも2個のLEDを搭載する工程;
を含むことを特徴とするLED基板の製造方法。
【請求項2】
線状導電材を熱圧着する際、線状導電材を熱可塑性樹脂フィルムの面まで圧入する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
2本の線状導電材の間に搭載したLEDを直列につなぐために、搭載されているLED間またはLEDが搭載されるべき部分の間を交互に断線する工程を含む請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
少なくとも3本の線状導電材を熱圧着し、LEDを直列につないだ部分をさらに並列につなぐ工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂フィルムの線状導電材上を熱圧着した側の面において、LEDを搭載した部分以外または搭載すべき部分以外を多孔質樹脂膜により被覆する工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
LEDベアチップを用いた場合、当該LEDベアチップを透明樹脂により封止する工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂フィルムの線状導電材を熱圧着した側または熱圧着すべき側と反対の面に、放熱層を設ける工程を含む請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
熱可塑性樹脂フィルム、線状導電材および放熱層に、放熱用の貫通穴を設ける工程を含む請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とするLED基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図10】
【公開番号】特開2009−231584(P2009−231584A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75929(P2008−75929)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】
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