説明

LED点灯用電源装置

【課題】従来、車両用灯具の光源として、電源電圧よりも高くなる数のLEDの点灯が必要とされるときには、LEDを直・並列接続などを行い点灯させ、電源電圧との整合を図るものであったので、消費電力が増加し、配線も煩雑化する問題があった。
【解決手段】本発明により、デュアル出力タイプDC−DCコンバータ制御IC2を使用し、一方の出力で昇圧回路3を構成し、他方の出力で極性反転昇圧回路4を構成し、昇圧回路の正極と極性反転昇圧回路の負極との間に、両極間の電圧に見合う数のLED8を直列接続して点灯させるLED点灯用電源装置1であり、昇圧回路の側には電流検出回路4と電圧検出回路5と、電圧検出回路の側にLEDを含む負荷の断線が検出されたときには電源を遮断するシャットダウン回路7が設けられているLED点灯用電源装置とすることで課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLEDを点灯するための電源装置に関するものであり、例えば、車両用のテール/ストップランプのように発光面積が大きく、全面を均一に光輝させるためには多数のLEDが必要とされ、全てのLEDを直列の一回路として接続したときには、車両の電源電圧を超える場合などに用いられる電源装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、複数個が直列に接続されたLED80を、それよりも低い出力電圧の電池などで点灯させるときの電源回路90としては、図2に示すように制御回路91により制御される昇圧回路92とチャージポンプ型の反転電圧発生回路93とを駆動し、昇圧回路92の正極側と反転電圧発生回路93の負極側との間に規定電圧が得られるようにし、この間で所望の数のLED80の点灯を行うものがあった。
【0003】
この場合、電圧が上昇しすぎないように、前記昇圧回路92の出力には抵抗器94、95で分割された電圧が制御回路91にフィードバックされ、出力電圧の制御が行われている。また、前記LED80とは直列に図3に回路図として示すような定電流部96が挿入され、前記LED80が安定した明るさで発光するように制御されている。
【特許文献1】特開2005−136157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の電源装置では、負側の電源は構成の単純化のためチャージポンプ型などが一般的に採用されているため、例えば、車両のヘッドライト用など高電力、高出力のLEDに対しては対応することが困難であり、例えば、定電流部96に使用されているFET96a、抵抗器96bには数百mA〜数Aが流れるものとなり、大型化、或いは、発熱などの問題を生じるものとなる。
【0005】
よって、従来の構成の電源装置を用いて車両のヘッドライト用など大電力用のLEDを駆動するときには、例えば、中型で複数の電源装置を用意しておき、これら複数の電源装置のそれぞれにLEDを分担させて受け持たせ、総合として必要数のLEDの点灯を行うなどの手段が必要となり、配線の煩雑化、メンテナンスの煩雑化などの問題を生じると共に、コストアップの問題も避けられないものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記した従来の電源装置に生じる問題を解決するための具体的手段として、デュアル出力タイプDC−DCコンバータ制御ICを使用し、前記デュアル出力タイプDC−DCコンバータ制御ICの一方の出力で昇圧回路を構成し、他方の出力で極性反転昇圧回路を構成し、前記昇圧回路の正極と前記極性反転昇圧回路の負極との間に、両極間の電圧に見合う数のLEDを直列接続して点灯させるLED点灯用電源装置であり、前記昇圧回路の側には電流検出回路と電圧検出回路とが設けられていて、前記電流検出回路と前記電圧検出回路とで前記極性反転昇圧回路の電圧と電流との制御が行われており、且つ、前記電流検出回路の側に前記LEDを含む負荷の短絡が検出されたとき、及び、前記電圧検出回路の側に前記LEDを含む負荷の断線が検出されたときには、このLED点灯用電源装置に印加されている電源を遮断するシャットダウン回路が設けられていることを特徴とするLED点灯用電源装置を提供することで課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、デュアル出力タイプDC−DCコンバータ制御ICを使用して、正の昇圧側も、負の昇圧側もDC−DCコンバータで行い、正の昇圧側の正極と、負の昇圧側の負極との間にLEDを接続した構成としたことで、電源電圧よりも高い点灯電圧に対しても必要充分な電圧と電力との供給を可能とし、小型化、コストダウンを共に可能とする優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1に符号1で示すものは本発明に係るLED点灯用電源装置であり、このLED点灯用電源装置1は、デュアル出力タイプDC−DCコンバータ制御IC2(以下、デュアル出力コンバータIC2と略称する。例えば、TI社製TL1451A)を利用し、定電流制御部と定電圧制御部を形成した一対の出力として、LED8に配線することにより、従来よりもシンプルな制御回路及び保護回路を形成し、且つ、部品の電圧定格を不要に高めることなく、車両などの電源電圧以上の数が直列に接続されたLED8の点灯、制御を可能とするものである。
【0009】
ここで、前記デュアル出力コンバータIC2について簡単に説明を行うと、このデュアル出力コンバータIC2は、2チャンネル分の出力と、その制御機能を内蔵し、それぞれの出力は独立してフィードバックされ、それぞれ個別に負帰還のかかった内蔵の誤差増幅器およびコンパレータなどでPWM制御され、その結果、出力も独立して安定するように動作する。
【0010】
前記デュアル出力コンバータIC2の一方のチャンネル2aで制御されるコイル3a、FET3b、ダイオード3c、コンデンサ3dで構成される昇圧型のDC−DCコンバータ3は従来のものと同じ動作原理のDC−DCコンバータを構成している。
【0011】
前記DC−DCコンバータ3の出力は、電流検出回路4の電流検出抵抗4aにより検出され、デュアル出力コンバータIC2の帰還端子2cに帰還が従来と同様に行われて、その両端の電圧降下が一定となるように、LED8の順方向電流が定電流になるように制御されている。また、前記電流検出抵抗4aは従来と同様に、出力短絡検出にも使用される。
【0012】
また、電圧検出器5は抵抗器5aと抵抗器5bとで電圧を適宜な比率で分割し、前記デュアル出力コンバータIC2の帰還端子2dに帰還が行われて出力電圧を制御すると同時に、例えば、出力がオープンとなったときに、出力電圧が急上昇しないように保護信号を出力する。
【0013】
そして、前記電流検出回路4から出力短絡信号が出力されたとき、或いは、電圧検出回路から出力オープン信号が出力されたときには、シャットダウン回路7のFET7aにより、このLED点灯用電源装置1に印加されている電源がシャットダウンされるものとなり、保護される。
【0014】
前記デュアル出力コンバータIC2の他方のチャンネル2bには、このチャンネル2bにより制御されるFET6a、コイル6b、ダイオード6c、コンデンサ6dは、極性反転型DC−DCコンバータ6を構成する。前記FET6aがオンしているとき、電流はダイオード6cが逆バイアスであることから、コイル6bを通じてGNDに流れ、この時コイル6bにエネルギーが蓄えられる。
【0015】
つぎに、FET6aがオフしたとき、コイル6bは電流を維持しようと、そのエネルギー分の逆起電力が発生してダイオード6cが導通し、コンデンサ6dが充電される。このときコンデンサ6dに充電される極性は、流れる電流の向きからGND側がプラス、ダイオード6cのアノード側がマイナスになるので、ダイオード6cのアノード側を直流出力として取り出せば、電源電圧に対して極性が反転したDC−DCコンバータとなる。
【0016】
そして、負荷であるLED8の接続方法は、LED8のアノード側を前記DC−DCコンバータ3の正極側出力に接続し、カソード側をマイナス電位にバイアスされた極性反転型DC−DCコンバータ6の負極側出力に接続すれば、電位差としては前記DC−DCコンバータ3の略2倍の電位を有する高電圧に接続できるものとなる。尚、この場合、前記LED8に印加されている順方向電流は、図1からも明確なようにDC−DCコンバータ3側の電圧を調整することで一定化されている。
【0017】
本発明により、以上に説明したように構成したことで、従来のものと比較して電流検出及びショート保護部は1箇所に設けるのみで良く部品点数は半減する。これは、LED8の使用数の全てが直列に接続されているからである。また、本発明の回路ではGNDを基準にしてプラス側とマイナス側の電圧が案分されているので、FET(3b、6a)、ダイオード(3c、6c)、コンデンサ(3d、6d)などにも、従来例のDC−DCコンバータと比べて特に高圧が印加されることがなく、定格も高いものを必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るLED点灯用電源装置の実施例を示す回路図である。
【図2】従来例を示す回路図である。
【図3】従来例の要部を示す回路図である。
【符号の説明】
【0019】
1…LED点灯用電源装置
2…デュアル出力タイプDC−DCコンバータ制御IC
2a…一方の出力端子
2b…他方の出力端子
2c…帰還端子
2d…帰還端子
3…DC−DCコンバータ
3a…コイル
3b…FET
3c…ダイオード
3d…コンデンサ
4…電流検出回路
4a…電流検出抵抗
5…電圧検出回路
5a、5b…抵抗器
6…極性反転型DC−DCコンバータ
6a…FET
6b…コイル
6c…ダイオード
6d…コンデンサ
7…シャットダウン回路
7a…FET
7b…NANDゲート
8…LED
9…電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアル出力タイプDC−DCコンバータ制御ICを使用し、前記デュアル出力タイプDC−DCコンバータ制御ICの一方の出力で昇圧回路を構成し、他方の出力で極性反転昇圧回路を構成し、前記昇圧回路の正極と前記極性反転昇圧回路の負極との間に、両極間の電圧に見合う数のLEDを直列接続して点灯させるLED点灯用電源装置であり、前記昇圧回路の側には電流検出回路と電圧検出回路とが設けられていて、前記電流検出回路と前記電圧検出回路とで前記極性反転昇圧回路の電圧と電流との制御が行われており、且つ、前記電流検出回路の側に前記LEDを含む負荷の短絡が検出されたとき、及び、前記電圧検出回路の側に前記LEDを含む負荷の断線が検出されたときには、このLED点灯用電源装置に印加されている電源を遮断するシャットダウン回路が設けられていることを特徴とするLED点灯用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−318881(P2007−318881A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144411(P2006−144411)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】