説明

LED照明の反射フィルムとして用いられる熱可塑性樹脂フィルム

【課題】LED光源の性能を十分に生かし、反射部材を含むLED照明全体としての照度を向上させる、LED照明の反射フィルムとして用いられる熱可塑性樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】微細なボイドおよび蛍光体を含有する熱可塑性樹脂フィルムであって、該フィルムは1層または2層以上の層からなり、蛍光体を含有する層の重量を基準とする蛍光体の含有量が4〜40重量%であり、LEDを光源として用いる照明の反射フィルムとして用いられることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDを光源として用いる照明(以下、単位「LED照明」という)の反射フィルムとして用いられる熱可塑性樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード、すなわちLED(Light Emitting Diode)は、順方向に電圧を加えた際に発光する半導体素子であり、発光原理にエレクトロルミネセンスを利用して発光する半導体素子である。LEDの長寿命化と発光効率を向上する技術の発達に伴い、LEDを光源として用いる照明が、次世代の省エネルギー照明として位置付けられ、注目されている。
【0003】
LEDの寿命は、従来の白熱電球に比べて長く、素子そのものは半永久的に使用できる。LEDが使用不能になる場合のほとんどは、LED電極部分の金属の酸化や劣化、過熱や衝撃により内部の金属部材が破損したり配線が断線することによるものである。このため、LEDは、省エネルギー光源として非常に有望である。また、LEDの発光色は用いる材料によって異なり、赤外線領域から可視光域、紫外線領域で発光するものまで可能であり、様々な色の照明に対応することができる。
【0004】
しかし、LED照明に対応する反射部材については、これまで、金属板の上に白色顔料等を塗布した反射板、鏡面仕上げした金属反射板、一体成形による白色プラスチックの反射部材が用いられているが、研究開発は十分になされていない。このため、LED照明の全体としての性能(照度)は、反射部材の改良によって、さらに向上する余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3498290号公報
【特許文献2】特許第4096927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、LED光源の性能を十分に生かし、反射部材を含むLED照明全体としての照度を向上させることのできる、LED照明の反射フィルムとして用いられる熱可塑性樹脂フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、微細なボイドおよび蛍光体を含有する熱可塑性樹脂フィルムであって、該フィルムは1層または2層以上の層からなり、蛍光体を含有する層の重量を基準とする蛍光体の含有量が4〜40重量%であり、LEDを光源として用いる照明の反射フィルムとして用いられることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、LED光源の性能を十分に生かし、反射部材を含むLED照明全体としての照度を向上させることのできる、LED照明の反射フィルムとして用いられる熱可塑性樹脂フィルムを提供することができる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、経時的な変色が抑制されており、建築物の屋内または屋外照明用の照明の反射フィルムとして特に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
[熱可塑性樹脂フィルム]
本発明のLED照明の反射フィルムとして用いられる熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂からなる単層のフィルムであるか、二層以上の層からなる積層フィルムである。
単層のフィルムである場合、微細なボイドと蛍光体は同一の層に含有される。
二層以上の層からなる場合、微細なボイドと蛍光体は、それぞれ異なる層に含有されることが好ましいが、同一の層に含有されていてもよい。
【0011】
いずれの場合も、熱可塑性樹脂フィルムにおいて、微細なボイドを含む層のボイド体積率は、好ましくは30〜80%、さらに好ましくは35〜75%、特に好ましくは38〜70%である。この範囲のボイド体積率であることで、高い光反射率を得ることができる。熱可塑性樹脂フィルムの光反射率としては、好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上である。
【0012】
熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂および該熱可塑性樹脂と非相溶な物質の組成物からなる未延伸フィルムを延伸して、両者を界面で剥離させて微細なボイドを形成したものであるか、熱可塑性樹脂に発泡性の物質を配合した組成物をシート状に形成して、発泡させることによってボイドを形成したものであることが好ましい。
【0013】
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂フィルムに用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィンを用いることができる。なかでも、高熱や高湿度での形状安定性、製膜のしやすさの点から、ポリエステル、特に、熱可塑性芳香族ポリエステルが好ましい。
【0014】
熱可塑性芳香族ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートを挙げることができる。これらのポリエステルには、共重合成分が共重合されていてもよい。共重合成分の割合は、例えば20モル%以下である。
【0015】
[非相溶な物質]
ボイドを形成するために用いる非相溶な物質としては、例えば、フィルムの熱可塑性樹脂に非相溶な樹脂、有機粒子、無機粒子を用いることができる。
【0016】
[非相溶樹脂]
ボイドを形成するために用いる非相溶樹脂は、熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂により異なる。熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂として、ポリエステルを用いる場合、非相溶樹脂としては、例えばポリオレフィン、ポリスチレン、具体的には例えばポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニル−t−ブタン、1,4−トランス−ポリ−2,3−ジメチルブタジエン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、ポリフルオロスチレン、セルロースアセテートセルロースプロピオネート、ポリクロロトリフルオロエチレンを用いることができる。特に好ましいものは、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンである。これらポリプロピレン、ポリメチルペンテンは樹脂自体が高透明であるため、光の吸収を抑えて反射率を向上させることができ最適である。
【0017】
非相溶樹脂は、ボイドを形成する熱可塑性樹脂の層の樹脂組成物100重量%あたり、例えば5〜30重量%、好ましくは8〜25重量%、特に好ましくは10〜20重量%用いる。この範囲で用いることで、十分な量の微細なボイドをフィルム中に形成しながら安定して製膜することができる。
【0018】
[無機粒子・有機粒子]
無機粒子としては、無機物質の粒子を用いることができ、白色顔料または無機蛍光体の粒子を用いる。高い反射性能を得る観点から、白色顔料を用いることが好ましい。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素の粒子、好ましくは硫酸バリウムの粒子を用いる。硫酸バリウムの粒子は、板状、球状の形状を取り得るが、いずれの形状の粒子であってもよい。硫酸バリウム粒子を用いることで、特に良好な光反射性能を得ることができる。
有機粒子としては、ポリマーの粒子を用いることができ、例えば、アクリル、架橋ポリスチレン、ポリオレフィン、特にポリメチルペンテンの粒子を用いることができる。
【0019】
ボイドを形成するための非相溶な物質として、有機粒子または無機粒子を用いる場合、好ましくは0.3〜10μm、さらに好ましくは0.4〜8μm、特に好ましくは0.5〜5μmの平均粒径のものを用いる。この範囲の平均粒径の粒子を用いることで、凝集が生じ難く、微細なボイドが形成され、破断せずに製膜することのでき好ましい。
【0020】
無機粒子または有機粒子を用いる場合、ボイドを形成する層の樹脂組成物100重量%あたり、好ましくは31〜60重量%、さらに好ましくは35〜55重量%、特に好ましくは37〜50重量%用いる。この範囲で含有させることで、反射率が高く、紫外線に因る劣化が少ないフィルムを、安定した製膜で得ることができる。
【0021】
[蛍光体]
本発明における熱可塑性樹脂フィルムは蛍光体を含有する。蛍光体は、微細なボイドを含有する層に含有されてもよく、また、微細なボイドを含有する層とは異なる層に含有されてもよい。その層は、微細なボイドを有する層に共押出で積層されていてもよく、微細なボイドを有する層に塗布されていもよい。なお、微細なボイドを有する層と、蛍光体を含有する層は、直接接して積層されていてもよく、または他の層を介して積層されていてもよい。この「他の層」として、例えば、微細なボイドを含有する層を支持するために設けられる、ボイドを含まないかボイド体積率の低い支持層が挙げられる。
【0022】
本発明における蛍光体は、無機物質からなる無機蛍光体、有機物質からなる有機蛍光体のいずれも用いることができる。塗布層に用いた場合に紫外線で分解されにくいことから無機蛍光体が好ましい。
蛍光体は、発光波長が380〜780nmにあり、励起波長が350〜650nmにあるものが好ましい。この範囲に発光波長および励起波長があることで、高い照度を得ることがきる。
【0023】
無機蛍光体では、上記の励起波長および発光波長についての要件を満足する蛍光体として、岩塩型結晶構造をもつアルカリ土類金属硫化物、例えば硫化亜鉛(ZnS)、硫化ストロンチウム(SrS)、酸化イットリウム(Y)を母体とし、賦活剤としてユウロピウム(Eu)や銅(Cu)を含有する蛍光体を用いることができる。また、バリウム・マグネシウム・アルミニウム複合酸化物(BaMgAl1017)を母体とし、賦活剤としてユウロピウム(Eu)やマンガン(Mn)を含有する蛍光体を用いることができる。また、リン酸ランタン(LaPO)を母体として、賦活剤としてCe、Tbを含有する蛍光体を用いることができる。
【0024】
無機蛍光体は粒子状のものを用い、例えば0.3〜10μm、好ましくは0.4〜8μm、さらに好ましくは0.5〜5μmの平均粒径のものを用いる。この範囲の平均粒径の粒子を用いることで、凝集が生じ難く、塗布層に用いる場合には均一な塗膜を得ることができ、フィルム中に用いる場合には微細なボイドが形成され、破断せずに製膜することのでき好ましい。
【0025】
これらの無機蛍光体は市販されており、例えば、緑色発光無機蛍光体2210(化成オプトロニクス社製 ZnSを母体として、Cuを賦活物質としてなる)、赤色無機蛍光体D1110(根本特殊化学(株)製、Yを母体として、Euを賦活物質としてなる)、青色無機蛍光体D1230(根本特殊化学(株)製、SrSを母体として、Euを賦活物質としてなる)、緑色無機蛍光体KX732A(化成オプトロニクス社製、バリウム・マグネシウム・アルミニウム複合酸化物(BaMgAl1017)を母体として、EuおよびMnを賦活物質としてなる)、緑色無機蛍光体LP−G2(根本特殊化学(株)製、リン酸ランタン(LaPO)を母体として、Ce、Tbを賦活物質としてなる)を市場で入手して用いることができる。
【0026】
有機蛍光体では、上記の励起波長および発光波長についての要件を満足する蛍光体として、スチルベン系、ジスチルベン系、ベンゾオキサゾール系、スチリル・オキサゾール系、ピレン・オキサゾール系、クマリン系、イミダゾール系、ベンゾイミダゾール系、ピラゾリン系、アミノクマリン系、ジスチリル−ビフェニル系、ナフタルイミド系などの化合物を用いることができる。なかでも、比較的高い耐久性と輝度を得る観点から、イーストブライト OB−1(イーストマン社製:ベンゾオキサゾール系)、Uvitex−OB(チバガイギー社製:スチリル・オキサゾール系)、ルモゲングリーン850(BASF社製:ナフタルイミド系)が好ましい。
【0027】
蛍光体は、塗布層に配合することもできるし、ボイドを含有する光反射層に配合することもできる。いずれの場合も、蛍光体を含有する層の重量を基準とする蛍光体の含有量は4〜40重量%、好ましくは5〜35重量%である。4重量%未満であると高い照度を維持することができない。他方、40重量%を越えると層中の粒子分散が困難となり、均一な塗布層を得ることができず、蛍光体の分散性が悪いためフィルム製膜の際の延伸性も悪くることがある。
【0028】
蛍光体をボイドを含有する光反射層に配合する場合、蛍光体として無機蛍光体の粒子を用いると、熱可塑性樹脂にボイドを形成するために用いる無機粒子としても作用する。すなわち、熱可塑性樹脂フィルムの延伸により無機蛍光体の粒子と熱可塑性樹脂との界面が剥離するので、微細なボイドを形成することができる。
【0029】
[紫外線吸収剤]
本発明における熱可塑性樹脂フィルムには、紫外線吸収剤を配合してもよい。紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系、サリチル酸系、ベンゾエート系、蓚酸アニリド系、ゾルゲルなどの無機系の紫外線吸収剤を挙げることができる。さらに、ヒンダードアミン系の光安定剤を併用することがより効果的である。紫外線吸収剤は、光反射層に配合してもよく、蛍光体を含有する塗布層に配合してもよい。
【0030】
[製造方法]
以下、本発明のLED照明の反射フィルムとして用いられる熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法の一例を説明する。ここでは、硫酸バリウムを含有する熱可塑性芳香族ポリエステルの層を延伸することで形成された微細なボイドを含む光反射層とこれに接する熱可塑性芳香族ポリエステルの支持層からなる積層フィルムのうえに、塗布により蛍光体含有層を設けた構成を例にとり説明する。
【0031】
[微細なボイド含有するフィルムの製造]
硫酸バリウム粒子のポリエステル組成物への配合は、ポリエステルの重合時に行ってもよく、重合後に行ってもよい。重合時に行う場合、エステル交換反応もしくはエステル化反応終了前に配合してもよく、重縮合反応開始前に配合してもよい。重合後に行う場合、重合後のポリエステルに添加し溶融混練すればよい。この場合、硫酸バリウム粒子を比較的高濃度で含有するマスターペレットを製造し、これを硫酸バリウム粒子を含有しないポリエステルペレットに配合することで所望の含有率で硫酸バリウム粒子を含有するポリエステル組成物を得ることができる。
【0032】
フィルムの製膜時のフィルターとして、線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10〜100μm、好ましくは平均目開き20〜50μmの不織布型フィルターを用い、ポリエステル組成物を濾過することが好ましい。この濾過を行うことにより、一般的には凝集して粗大凝集粒子となりやすい粒子の凝集を抑えて、粗大異物の少ないフィルムを得ることができる。
【0033】
ダイから溶融したポリエステル組成物を、フィードブロックを用いた同時多層押出し法により、未延伸シートを製造する。すなわち光反射層を構成するポリエステル組成物の溶融物と、支持層を構成するポリエステル組成物の溶融物とを、フィードブロックを用いて光反射層/支持層となるように積層し、ダイに展開して押出しを実施する。この時、フィードブロックで積層されたポリエステル組成物は、積層された形態を維持している。
【0034】
ダイより押出された未延伸シートを、キャスティングドラムで冷却固化し、未延伸フィルムを得る。塗布層の塗設に用いる塗液は、この未延伸フィルムに対して、もしくは、この後の縦延伸を経た縦延伸フィルムに対して、塗布することが好ましい。
【0035】
未延伸フィルムを、ロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度はポリエステルのガラス転移点(Tg)以上の温度、さらにはTg〜70℃高い温度とするのが好ましい。延伸倍率は、用途の要求特性にもよるが、縦方向、縦方向と直交する方向(以降、横方向と呼ぶ)ともに、好ましくは2.2〜4.0倍、さらに好ましくは2.3〜3.9倍である。2.2倍未満とするとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.0倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。
【0036】
縦延伸フィルムは、続いて、横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸の処理はポリエステルのガラス転移点(Tg)より高い温度から始める。そしてTgより(5〜70)℃高い温度まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。2.5倍未満であるとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.5倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる。
【0037】
横延伸後のフィルムは、両端を把持したまま、(Tm−20℃)〜(Tm−80℃)で定幅または10%以下の幅減少下で熱固定して熱収縮率を低下させるのがよい。熱固定温度がこれより高いとフィルムの平面性が悪くなり、厚み斑が大きくなり好ましくない。これより低いと熱収縮率が大きくなることがあり好ましくない。熱固定後フィルム温度を常温に戻す過程で、把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩させることができる。
【0038】
弛緩させる手段としてはテンター出側のロール群の速度を調整する。弛緩させる割合として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、好ましくは0.1〜1.5%、さらに好ましくは0.2〜1.2%、特に好ましくは0.3〜1.0%の速度ダウンを実施してフィルムを弛緩(この値を「弛緩率」という)して、弛緩率をコントロールすることによって縦方向の熱収縮率を調整する。また、フィルム横方向は両端を切り落すまでの過程で幅減少させて、所望の熱収縮率を得ることもできる。
ここでは、逐次二軸延伸法によって延伸する場合を例に詳細に説明したが、本発明の積層フィルムは逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法のいずれの方法で延伸してもよい。
【0039】
[蛍光体を含有する塗布層の塗設]
蛍光体を含有する塗布層は、微細なボイドを含有するフィルムに直接に塗設してもよいが、接着性が不足する場合には、微細なボイドを含有するフィルムに表面に、コロナ放電処理や下引き処理を行い、そのうえに塗設することが好ましい。下引き処理は、白色フィルム製造工程内で設ける方法(インラインコーティング法)でもよいし、フィルムを製造後、別途塗布でもよい。下引き処理に適用する材料は適宜選択すればよいが、好適なものとしては共重合ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、各種カップリング剤などが適用できる。
【0040】
蛍光体を含有する塗布層は任意の方法で塗布することができる。例えばグラビア、ロール、スピン、リバース、バー、スクリーン、ディッピング等の方法を用いることができる。塗布後の塗膜の硬化方法は、公知の方法をとることができる。例えば熱硬化、紫外線、電子線、放射線などの活性線を用いる方法など、およびこれらの組み合わせによる方法などが適用できる。塗布は、延伸の完了していないフィルムに塗布(インラインコーティング)してもよいし、結晶配向完了後のフィルムに塗布(オフラインコーティング)してもよい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
(1)フィルム厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルム厚みとした。
【0042】
(2)各層の厚み
フィルムサンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を薄膜切片にした後、光学顕微鏡を用いて観察撮影し、写真から各層の厚み比を測定し、フィルム全体の厚みから計算して、各層の厚みを求めた。
【0043】
(3)反射率
分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)に積分球を取り付け、BaSO白板を100%としたときの反射率を400〜700nmにわたって測定し、得られたチャートより2nm間隔で反射率を読み取った。この測定では、蛍光体を含有する層の側から測定した。
【0044】
(4)延伸性
延伸倍率を縦方向2.8倍、横方向3.3倍としたときに、フィルムが安定に製膜できるか観察した。下記基準で評価した。
○: 1時間以上安定に製膜できる。
×: 1時間経過する前に切断が発生し、安定な製膜ができない。
【0045】
(5)経時的な黄変
高圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング製 「トスキュア401」:ガラスフィルタ付き)照射にて照射時間50時間にて前後の色変化をみた。このときの放射照度は約18mW/cmであった。フィルムへの照射は蛍光体を含む層側からの照射して測定を行った。
初期のフィルム色相(L、a、b)と、照射後のフィルム色相(L、a、b)とを、色差計(日本電色工業製SZS−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEM)にて測定し、下記式で表される色相変化dE*を算出し、下記の基準で評価した。
dE={(L−L+(a−a+(b−b1/2
◎: dE ≦ 5
○: 5 < dE ≦ 10
△: 10 < dE ≦ 15
×: 15 < dE
【0046】
(6)相対照度
三菱電機社製LED照明AKLD1000WNを25℃、50%RHに整えられた室内で点灯させ、光源から50cm離れた位置にて真正面の照度をSanwa電気計器社製照度計LX2にて測定した。この際の照度は75lxであった。以下これを「オリジナルの照度」という。次に本体、枠(アルミ板+白色塗装)とプラスチック反射板の部分をフィルムサンプルで全て置き換えて同様の測定で照度を測定し、下記の式でフィルムサンプルの相対照度を求めた。
相対照度=100×(フィルムサンプルでの照度)/(オリジナル照度)
【0047】
(7)色度差
色度(x、y)について相対照度と同様にして、輝度計(トプコン社BM−7)を用いて測定した。測定した色度を用いて、下記の式を用いて基準色との差異(色度差)を算出した。
Δx=基準座標(x=0.300)−測定座標(x)
Δy=基準座標(y=0.310)−測定座標(y)
Δxy=(Δx+Δy1/2
【0048】
(8)ボイド体積率
微細なボイドを含有するフィルム層のみを単離後、アントンパール社製振動式デジタル密度計DMA4500にて密度を求めた後、反射層Aのフィルムを溶融して密度を求め、下記式にて算出した。
ボイド体積率(%)=100−100×(溶融前の密度)/(溶融後の密度)
【0049】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル132重量部、イソフタル酸ジメチル18重量部(ポリエステルの酸成分に対して12モル%)、エチレングリコール96重量部、ジエチレングリコール3.0重量部、酢酸マンガン0.05重量部、酢酸リチウム0.012重量部を精留塔、留出コンデンサを備えたフラスコに仕込み、撹拌しながら150〜235℃に加熱しメタノールを留出させエステル交換反応を行った。メタノールが留出した後、リン酸トリメチル0.03重量部、二酸化ゲルマニウム0.04重量部を添加し、反応物を反応器に移した。ついで撹拌しながら反応器内を徐々に0.5mmHgまで減圧するとともに290℃まで昇温し重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステルのジエチレングリコール成分量は2.5重量%、ゲルマニウム元素量は50ppm、リチウム元素量は5ppmであった。このポリマーを層Aに用い、平均粒子径1.0μmの硫酸バリウムを無機粒子として48重量%添加したマスターバッチを用意した。
【0050】
また、上述の48重量%の硫酸バリウムを含有するマスターバッチと、硫酸バリウムを添加する前のポリマーとを用い、硫酸バリウムが5重量%となるように希釈して層Bに用いた。それぞれ275℃に加熱された2台の押出機に供給し、層Aポリマー(硫酸バリウム濃度48重量%)、層Bポリマー(硫酸バリウム濃度5重量%)を層Aと層BがA/Bとなるような2層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままダイスよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを83℃にて加熱し長手方向(縦方向)に2.8倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながら、テンターに導き115℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.3倍延伸した。その後テンター内で195℃にて熱固定を行い、室温まで冷やして二軸延伸フィルムを得た。この二軸延伸フィルムは、微細なボイドを含有する。
【0051】
得られた二軸延伸フィルム上の層A側に、バインダーとして“ユータブル”S2740(日本触媒製)、イソシアネート系架橋剤として“コロネートHL”(日本ポリウレタン製)と酢酸ブチル溶液の中に蛍光物質として蛍光材料“2210”(三菱化学社製)を固形分比で4重量%となるように添加した塗料を、乾燥後の厚みが5μmになるように塗布した。なお、乾燥後の固形分重量比はバインダー/イソシアネート架橋剤/蛍光体=85/11/4であり、塗液固形分濃度は45重量%である。乾燥条件は、120℃で2分間熱風乾燥とした。
得られたフィルムについて測定した相対照度は、108%であった。
【0052】
[実施例2〜8]
バインダーとイソシアネート架橋剤との固形分重量比を実施例1の割合(85/11)を保ちつつ、塗布層における蛍光体の種類および含有率を表1に示すとおり変更した以外は実施例1と同様にして、塗工フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果は表1に示すとおりであり、いずれも照度の向上が確認された。
【0053】
[実施例9および10]
表1に示すとおり、層Aにおける硫酸バリウム粒子の含有率が48重量%、蛍光体の含有率が10重量%となるように、蛍光体を層Aの押出機のフィード口から添加し、層A/層Bからなる2層フィルムを作成した。得られたフィルムの評価結果は表1に示すとおりであり、いずれも照度の向上が確認された。
【0054】
[実施例11]
表1に示すとおり、層Aの押出機のフィード口に蛍光体を添加し、層A/層Bからなる2層フィルムを作成し、層Aの表面に実施例1と同様の塗剤を実施例1と同様に塗布した。
得られたフィルムの評価結果は表1に示すとおりである。
【0055】
[実施例12]
表1に示すとおり、有機系蛍光体を層Aの押出機のフィード口から添加し層A/層Bからなる2層フィルムを作成した。得られたフィルムの評価結果は表中に示すとおりである。
【0056】
[実施例13]
表1に示す通り、実施例1で得られた層A/層Bの2層フィルムの層Aの表層に有機系蛍光体を実施例1に倣って塗布しフィルムを作成した。得られたフィルムの評価結果は表中に示すとおりである。
【0057】
[比較例1〜10]
塗布層および層A中の蛍光体の種類および含有率を表1に記載のように調整した以外は実施例1と同様にしてフィルムを作成した。比較例10は延伸性が悪くサンプル採取ができなかった。サンプルが採取できたフィルムは、いずれも照度に劣るものであった。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のLED照明の反射フィルムとして用いられる熱可塑性樹脂フィルムは、建築物の屋内または屋外照明用の照明の反射フィルムとして特に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細なボイドおよび蛍光体を含有する熱可塑性樹脂フィルムであって、該フィルムは1層または2層以上の層からなり、蛍光体を含有する層の重量を基準とする蛍光体の含有量が4〜40重量%であり、LEDを光源として用いる照明の反射フィルムとして用いられることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項2】
熱可塑性樹脂フィルムが、微細なボイドを含有する熱可塑性樹脂の組成物からなる光反射層、および光反射層のうえに塗布により設けられた蛍光体含有塗布層からなる、請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
熱可塑性樹脂フィルムが、微細なボイドを含有する熱可塑性樹脂の組成物からなる光反射層を含み、光反射層は光反射層の重量を基準として4〜40重量%の蛍光体を含有する、請求項1記載のフィルム。
【請求項4】
光反射層が、熱可塑性樹脂および該樹脂と非相溶な物質からなる、請求項2または3記載のフィルム。
【請求項5】
非相溶な物質が無機粒子である、請求項4記載のフィルム。
【請求項6】
無機粒子が蛍光体である、請求項5記載のフィルム。
【請求項7】
LEDを光源として用いる照明が、建築物の屋内または屋外照明用の照明である、請求項1記載のフィルム。

【公開番号】特開2011−6540(P2011−6540A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149782(P2009−149782)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】