説明

LED照明装置

【課題】 小型化を図りつつ、照射むらが少なく均一な配光特性とすること。
【解決手段】 複数のLED素子21を有し、水平方向の全周に光を放射するLEDユニット12を備えたLED照明装置において、LEDユニット12が、フレキシブル回路基板23の長手方向に沿って複数のLED素子21を密に並べて配置し、フレキシブル回路基板23を円筒形状の固定金具22の板材31の周面31Dに巻き付けて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向の全周に光を放射するLEDユニットを備えたLED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、剛性のある基板にLED素子を配置したLED照明装置が一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のLED照明装置を、例えば船舶用閃光灯や航空障害灯等に適用する場合、水平方向の360°全周に光を放射するように、上記LED素子を配置した基板を、灯具内に多角筒状に複数配置するのが一般的である。
【特許文献1】特開2003−124528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記構成のLED照明装置では、同一基板上において、各LED素子を密にして配置させることは可能であるが、基板上にLED素子を実装する関係上、基板の幅を、LED素子の幅よりも大きくしなければならず、基板同士のLED素子間に大きな隙間ができてしまうため、LED照明装置の小型化を図った場合に、水平方向の全周に放射される光にむらが生じてしまうという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、小型化を図りつつ、照射むらが少なく均一な配光特性となるLED照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、複数のLED素子を有し、水平方向の全周に光を放射するLEDユニットを備えたLED照明装置において、前記LEDユニットが、フレキシブル回路基板の長手方向に沿って前記複数のLED素子を密に並べて配置し、前記フレキシブル回路基板を円筒形状の固定具の周面に巻き付けて構成されていることを特徴とするものである。
【0006】
また、前記LED照明装置において、前記LEDユニットを上下に複数備え、LEDユニット同士を周方向にずらして配置したことを特徴とするものである。
【0007】
また、前記LED照明装置において、同一のLEDユニットにおける隣り合うLED素子同士の光軸間の角度をLEDユニットの数で除算した所定角度だけ、LEDユニット同士をずらして配置したことを特徴とするものである。
【0008】
また、前記LED照明装置において、前記固定具が金属製であり、前記固定具と前記フレキシブル回路基板との間に、熱伝導性の良好な部材を充填させたことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記LED照明装置において、前記LED素子は、発光部の光を反射鏡で反射させて平行光を放射する反射型であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、LEDユニットが、複数のLED素子を密に配置したフレキシブル回路基板を円筒形状の固定具の周面に巻き付けて構成されるので、小型化を実現することができ、照射むらが少なく均一な配光特性とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[1]第1実施形態
図1は、本第1実施形態に係るLED照明装置の一例としての閃光灯10を示す斜視図である。また、図2は、LEDユニットの側面図である。
【0012】
この閃光灯10は、例えば、船舶等に使用され、水平方向の全周に光を放射するものである。この閃光灯10は、周面が透明体であるガラスで形成された略円筒形状の灯具11を備え、この灯具11内に、1つのLEDユニット12と、このLEDユニット12を駆動する駆動装置13とが上下に配置されて構成されている。この駆動装置13は、電源線14を介してLEDユニット12に電力を供給すると共に、LEDユニット12の点滅を制御する。LEDユニット12は、図2に示すように、駆動装置13の上部に複数のスペーサ15を介して固定され、図1に示す灯具11のガラスに対応する部分に配置されている。このLEDユニット12は、円筒形状に形成されている。
【0013】
図3は、図2の矢印X方向から見たLEDユニット12の外観を示す正面図である。この図3に示すように、LEDユニット12は、複数(本第1実施形態では、36個)のLED素子21を備えている。このLEDユニット12は、これら36個のLED素子21により、水平360°方向全周に放射状に光を放射させる。
【0014】
これらLED素子21は、図4に示すように、発光面から光を発する発光部21Aと、この発光部21Aの発光面に対向し、発光部21Aの光を反射させて平行光にして放射する双曲面形状に湾曲した反射鏡21Bとを備える反射型LED素子である。このように、LED素子21として反射型LED素子を用いることにより、砲弾型のLED素子に比して光の拡散を抑制することができ、高輝度を実現することができる。
【0015】
本第1実施形態では、図3に示すように、隣接するLED素子21の光軸A1,A2間の角度が、360°をLED素子21の数(本第1実施形態では36)で除算した一定角度θ1(本第1実施形態では10°)となるように、各LED素子21が、円筒形状のLEDユニット12の周面に沿って設けられている。ここで、LED素子21の光軸A1,A2は、LED素子21により放射される光の放射強度の最も強い方向であり、LEDユニット12の周面に対して垂直な方向である。
【0016】
LEDユニット12のLED素子21は、反射型であるので、各LED素子21より放射される光は平行光であり、一定角度θ1は、閃光灯10から所定距離(例えば、2海里)離れたいずれの場所においても、閃光灯10より放射される光を視認できるように設定するのが好ましい。
【0017】
ここで、仮に各LED素子21を剛性のある複数の基板にそれぞれ実装して多角筒形状に並べたのでは、各LED素子21同士の間隔が大きくなってしまうため、均一な配光特性を得るには、隣接するLED素子21の光軸間の角度を所定角度θ1よりも更に小さくしてLED素子21を増やす必要があり、閃光灯が大型化してしまう。
【0018】
そこで、本第1実施形態では、LEDユニット12は、円筒形状の固定金具22を備え、この固定金具22の周面に、36個のLED素子21を実装したフレキシブル回路基板23が巻き付けられ、このフレキシブル回路基板23が、図2に示すように、複数のねじ24で固定されて構成される。
【0019】
図5は、複数のLED素子21が実装されるフレキシブル回路基板23の展開図である。フレキシブル回路基板23の材料は、折り曲げ可能な程度に柔軟な材料として、例えば、ポリイミド等が用いられる。このフレキシブル回路基板23は、横長の帯形状に形成されており、フレキシブル回路基板23には、当該フレキシブル回路基板23の長手方向に沿って36個のLED素子21が一列にほとんど隙間なく密に並べて実装されている。ここで、LED素子21はほとんど隙間なく密に並べられているが、LED素子21同士が接触しない程度の僅かな隙間は存在する。これら複数のLED素子21は、隣接するLED素子21同士の間隔が全て同一となるように配置されている。
【0020】
このフレキシブル回路基板23において、LED素子21を避けた長辺側の両端部23A,23Bには、当該フレキシブル回路基板23を固定金具22にねじ24を用いて固定する際にねじ24を貫通させるねじ孔25A〜25Dが、それぞれ複数(4つ)設けられている。各端部23A,23Bにおけるねじ孔25A〜25Dのうち、1つ(ねじ孔25A)は、短辺側の一端部23Cに形成され、1つ(ねじ孔25D)は、短辺側の他端部23Dに形成されている。そして、短辺側の一端部23Cには、フレキシブル回路基板23を固定金具22に巻き付け、当該一端部23Cのねじ孔25Aが他端部23Dのねじ孔25Dに対向させた際に、短辺側の他端部23D近傍に実装されたLED素子21に重なるのを避ける切り欠き部26が形成されている。
【0021】
図6は、固定金具22の分解斜視図である。
この固定金具22は、アルミニウム等の金属で形成された肉厚の円盤形状の2枚の板材31を備えており、これら板材31の板面が対向して形成されている。これら板材31間には、これら板材31の間隔をフレキシブル回路基板23の幅と略同じ間隔に保つ柱状のスペーサ32が複数(3つ)設けられている。各板材31のスペーサ32に対向する位置には、ねじ33を貫通させるねじ孔31Aが形成されており、また、スペーサ32の両端には、ねじ33を螺合させるねじ穴が形成されている。そして、ねじ33を各板材31の外側からねじ孔31Aを介し内側に配置したスペーサ32に螺合させて、固定金具22が形成されている。
【0022】
各板材31には、板面の略中央に大口径の1つの貫通孔31Bが形成されており、フレキシブル回路基板23より導出されるケーブル(不図示)を上記駆動装置13に接続する際に、作業者の手を貫通孔31Bに入れて配線作業をすることができるようになっている。
【0023】
更に、各板材31には、板面に複数の通風孔31Cが形成されており、板材31に伝導したLED素子21の熱を、これら通風孔31Cにより効果的に放熱することができる。
【0024】
固定金具22における各板材31の周面31Dには、フレキシブル回路基板23を固定する際に用いられるねじ24(図2参照)を螺合させるねじ孔34が複数(3つ)設けられている。なお、図6では、それぞれ1つのねじ孔34が図示されている。
【0025】
図7は、フレキシブル回路基板23を固定金具22に固定する際の説明図である。この図7に示すように、フレキシブル回路基板23は、LED素子21が外側に向くように、固定金具22の板材31の周面31Dに巻き付けられ、ねじ24を用いて取り付けられる。
【0026】
また、フレキシブル回路基板23の短辺側の一端部23Cには、切り欠き部26が設けられているので、フレキシブル回路基板23の短辺側の一端部23Cのねじ孔25Aを、他端部23Dのねじ孔25Dに対向させて共にねじ24で固定した際、フレキシブル回路基板23の端部23C、23D近傍に設けられたLED素子21同士が干渉することがない。
【0027】
ここで、板材31の周面31Dには、熱伝導性の良好な部材としてシリコングリース35が塗り付けられており、フレキシブル回路基板23を固定金具22に固定した際に、この固定金具22の板材31の周面31Dと、フレキシブル回路基板23との間に、シリコングリース35が充填されたこととなる。つまり、フレキシブル回路基板23に伝導したLED素子21の熱が、シリコングリース35を介して板材31に伝導しやすくなり、より効果的にLED素子21の熱を放熱することができる。
【0028】
このように、複数のLED素子21を実装した1つのフレキシブル回路基板23を、単に円筒形状の固定金具22に巻き付けてねじ24で固定するだけでよいので、基板を複数多角筒状に並べる場合に比して、製造が簡単であり、更に、隣り合うLED素子21の隙間を小さくできるので、閃光灯10の小型化を実現することができるとともに、閃光灯10から所定距離(例えば、2海里)離れたいずれの場所においても、均一な配光特性を得ることができる。
【0029】
[2]第2実施形態
上記第1実施形態では、LEDユニットが一つの場合について説明したが、本第2実施形態では、LEDユニットが複数ある場合について説明する。ここで、上記第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0030】
図8は、LEDユニットの側面図である。本第2実施形態における閃光灯は、図8に示すように、上記第1実施形態のLEDユニット12と同様の構成の複数(本第2実施形態では、2つ)のLEDユニット112A、112Bを備えている。これらLEDユニット112A、112Bは、LEDユニット112A、112B同士の固定金具22の板材31の板面が対向するように上下に近接して配置され、スペーサ115を介して固定されている。つまり、LEDユニットを2段に備えることで、1段のLEDユニットの2倍の光度となるものである。以下、上段のLEDユニットを、第1LEDユニット112Aといい、下段のLEDユニットを第2LEDユニット112Bというものとする。
【0031】
各LEDユニット112A,112Bは、それぞれ36個のLED素子21により、水平360°方向に放射状に光を放射する。ここで、LEDユニット112A,112Bを上下に配置しているが、遠方から閃光灯10より放射される光を見た場合、第1LEDユニット112Aと第2LEDユニット112Bとの間隔は無視できるほどに小さく、ほぼ点光源としてみなすことができる。
【0032】
図9は、図8の矢印X方向から見たLEDユニットの外観を示す正面図である。
本第2実施形態では、第1LEDユニット112AのLED素子21の光軸A1(A2)と、第2LEDユニット112BのLED素子21の光軸B1(B2)とが、水平方向において所定角度θ2だけずれるように、LEDユニット112A、112B同士を周方向にずらして配置している。この所定角度θ2は、同一のLEDユニット112A(或いは112B)における隣り合うLED素子21同士の光軸A1、A2間(或いは、光軸B1、B2間)の角度θ1(10°)を、LEDユニット112A、112Bの数(本第2実施形態では、2)で除算した角度(5°)である。
【0033】
このように、LEDユニット112A、112B同士を周方向にずらして配置することで、図8に示す矢印X方向からLEDユニット112A、112Bを見た場合、図9に示すように、第1LEDユニット112Aの2つのLED素子21の間に第2LEDユニット112Bの1つのLED素子21が配置されたことと同じとなる。つまり、上下のLEDユニット112A、112BのLED素子21同士が垂直に並ばないようにずらして配置されることとなる。
【0034】
従って、第1LEDユニット112AのLED素子21において水平方向に放射される光の放射方向と、第2LEDユニット112AのLED素子21において水平方向に放射される光の放射方向とが重ならないように、LEDユニット112A、112B同士を周方向にずらして配置することにより、上下のLEDユニット112A、112BのLED素子21同士が上下に並ぶように配置される場合よりも、配光特性が均一となる。
【0035】
特に、第1LEDユニット112AのLED素子21の光軸A1と、第2LEDユニット112BのLED素子21の光軸B1とが、水平方向において所定角度θ2だけずれるように、LEDユニット112A、112B同士を周方向にずらして配置したことにより、所定角度θ2で等間隔にLED素子21を周方向に配置したことと同じであるので、より配光特性が均一となるものである。
【0036】
以上、一実施形態に基いて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、LED照明装置として閃光灯10の場合について説明したが、これに限るものではなく、航空障害灯等の各種警報灯に適用することが可能である。
【0037】
また、上記第2実施形態では、2つのLEDユニット112A、112Bを上下に備える場合について説明したが、3つ以上のLEDユニットを上下に備える場合であってもよい。つまり、LEDユニットの数は、必要とする光度に応じて適宜設定されるものである。この場合、各LEDユニットのLED素子の光軸を所定角度ずつずれるように、LEDユニット同士を周方向にずらして配置するのがよい。例えば、3つのLEDユニットを備え、同一のLEDユニットにおけるLED素子同士の光軸間の角度θ1を10°とした場合、各LEDユニットのLED素子の光軸を、約3.3°ずつずらして配置すればよい。このようにLEDユニットを配置することで、配光特性がより均一になるものである。
【0038】
また、上記第2実施形態では、LEDユニット同士を所定角度だけ周方向にずらす場合について説明したが、これに限るものではなく、上下のLEDユニットのLED素子同士が垂直に並ばなければよく、LEDユニット同士が周方向に任意の角度だけずれている場合であってもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、LEDユニットが36個のLED素子を備えるものであったが、これに限らず、LED素子の数は、必要とする光度に応じて適宜設定されるものである。
【0040】
また、上記実施形態では、LED素子が反射型である場合について説明したが、砲弾型であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本第1実施形態に係るLED照明装置の一例としての閃光灯を示す斜視図である。
【図2】LEDユニットの側面図である。
【図3】図2の矢印X方向から見たLEDユニットの外観を示す正面図である。
【図4】LED素子の構成を示す構成図である。
【図5】複数のLED素子が実装されるフレキシブル回路基板の展開図である。
【図6】固定具の分解斜視図である。
【図7】フレキシブル回路基板を固定具に固定する際の説明図である。
【図8】本第2実施形態に係るLED照明装置のLEDユニットの側面図である。
【図9】図8の矢印X方向から見たLEDユニットの外観を示す正面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 閃光灯(LED照明装置)
12 LEDユニット
21 LED素子
22 固定金具(固定具)
23 フレキシブル回路基板
31 板材
31D 周面
35 シリコングリース
112A LEDユニット
112B LEDユニット
θ2 所定角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLED素子を有し、水平方向の全周に光を放射するLEDユニットを備えたLED照明装置において、前記LEDユニットが、フレキシブル回路基板の長手方向に沿って前記複数のLED素子を密に並べて配置し、前記フレキシブル回路基板を円筒形状の固定具の周面に巻き付けて構成されていることを特徴とするLED照明装置。
【請求項2】
前記LEDユニットを上下に複数備え、LEDユニット同士を周方向にずらして配置したことを特徴とする請求項1に記載のLED照明装置。
【請求項3】
同一のLEDユニットにおける隣り合うLED素子同士の光軸間の角度をLEDユニットの数で除算した所定角度だけ、LEDユニット同士をずらして配置したことを特徴とする請求項2に記載のLED照明装置。
【請求項4】
前記固定具が金属製であり、前記固定具と前記フレキシブル回路基板との間に、熱伝導性の良好な部材を充填させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のLED照明装置。
【請求項5】
前記LED素子は、発光部の光を反射鏡で反射させて平行光を放射する反射型であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のLED照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−147324(P2006−147324A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335336(P2004−335336)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】