説明

LED表示器の制御回路

【課題】誘導電圧によるLED表示器の誤点灯対策を低価格/小スペースで確実、容易に実現する。
【解決手段】表示側のLED表示器11、12と制御側の接点31、32を信号線で接続し、電源ラインL1、L2を電源ケーブルで接続し、接点のb接点を共通に接続した共通接続線L3で接続し、各LED表示器の一括テスト用ボタンスイッチを設けたLED表示器の制御回路において、LED表示器の電源ラインと共通接続線との間に抵抗回路5を接続し、電源ケーブルや信号線の静電容量による誘導電流でLEDが誤って点灯または点滅するのを防止する。
抵抗回路は、抵抗器とコンデンサの直列回路とし、コンデンサにより比較的高い周波数の誘導電流のみを吸収する構成、各LED表示器が複数グループに分けられる場合、共通接続線および抵抗回路もグループ別に設けた構成を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示側に複数のLED表示器を設け、これらに電源ケーブルおよび各信号線で接続される制御側の接点切り替えでLED表示器を個別に点灯/消灯制御する制御回路に係り、特にケーブルや信号線の静電容量による誘導電流でLEDが誤って点灯(点滅)するのを防止する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(発光ダイオード)は、各種の電子制御装置やシステムの動作状態を表示する表示器として多用されている。例えば、監視制御システムにおける監視対象の状態をセンサで検出し、この検出状態変化を基に監視盤パネルのLED表示器を点灯/消灯駆動する。また、鉄道の信号機の光源に信号電球に代えて多数のLEDを用い、電車位置検出器等のセンシング信号または制御信号によって信号機の表示色を切り替える。
【0003】
このようなLED表示器の制御は、制御信号発生源(センサやその信号中継器、増幅器、機器室のLED駆動信号発生器など)からLED表示器までを長い信号線および電源ケーブルで接続する場合が多い。これら信号線およびケーブルは、線長さに比例して芯線相互間の静電容量が増加し、芯線間の静電結合によって誘導電圧が発生し、この誘導電圧でLEDを誤点灯させることがある。特に、最近のLEDは、省電力化(微小電流駆動)が進み、信号線や電源ケーブルの静電容量に因る誘導電圧で誤点灯することが多くなっている。
【0004】
静電誘導によるLEDの誤点灯防止方法には、以下のような方法がある。
【0005】
(1)LEDの電源回路などにトランスを介在させ、信号線や電源ケーブル回線側からみたLED表示側のインピーダンスを下げて誘導電圧を低く抑える。
【0006】
(2)LEDの駆動電源を直流とし、信号線や電源ケーブルからの誘導電圧侵入をパスコンで吸収する。
【0007】
(3)LEDを静電容量対策タイプのものに交換する。
【0008】
(4)LEDの点灯しようとする時間だけ電源を活性にする(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
(5)LEDに並列に低インピーダンスの抵抗を設け、信号線の誘導電圧を抵抗で吸収する。この回路例を図3に示し、表示側の各LED表示器11、12、…に並列にそれぞれ抵抗21、22、…を設け、制御側の交流電源ACや信号線に誘導電圧が発生した場合にも抵抗21、22、…により誘導電圧を吸収し、それに並列のLED表示器11、12、…が誤点灯しないようにする。なお、31、32、…はLED表示器の点灯/消灯を制御する接点、4はLED表示器の点灯を一括テストするためのボタンスイッチである。
【特許文献1】特開2003−170829
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記の(1)の方法は、LED表示器毎にトランスを必要として、高価になる。(2)の方法は、既設のものに直流電源がない場合には電源増設を必要とする。(3)の方法は、静電容量対策タイプのLEDは高価になる。(4)の方法は、LED表示器毎に電源制御装置が必要となり、高価になるし、回路が複雑化してLED表示器としての信頼性を低下させる。(5)の方法は、LED表示器毎に並列抵抗を設ける必要があり、コスト・スペースの面で問題がある。
【0011】
本発明の目的は、誘導電圧によるLED表示器の誤点灯対策を低価格/小スペースで確実、容易に実現できるLED表示器の制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、従来のLED表示器の制御回路では、表示側のボタンスイッチによりLED表示器の点灯/消灯の一括テストを可能とするため、各LED表示器の点灯/消灯制御用接点のうちb接点を共通接続して表示側に接続されていることを利用し、表示側の接点共通接続線と各LED表示器の電源ライン間を誘導電圧抑制用抵抗器で終端接続することで前記の課題を解決するもので、以下の構成を特徴とする。
【0013】
(1)表示側は複数のLED表示器を設け、制御側は各LED表示器別に点灯/消灯の駆動信号を発生する接点回路および各LED表示器を交流駆動する電源を有し、表示側と制御側は各接点回路とLED表示器を個別に接続する信号線および電源ケーブルで接続し、表示側と制御側は各接点回路のb接点を共通に接続した共通接続線で接続し、表示側で前記接続線と電源ライン間に各LED表示器の一括テスト用ボタンスイッチを設けたLED表示器の制御回路において、
表示側で、前記LED表示器の電源ラインと前記共通接続線との間に抵抗回路を接続し、この抵抗回路は、前記電源ケーブルや信号線の静電容量による誘導電流でLED表示器が誤って点灯または点滅するのを防止できる抵抗値にしたことを特徴とする。
【0014】
(2)前記抵抗回路は、抵抗器とコンデンサの直列回路とし、コンデンサにより比較的高い周波数の誘導電流のみを吸収する構成としたことを特徴とする。
【0015】
(3)前記各LED表示器が複数グループに分けられる場合、前記共通接続線もグループ別に設け、前記抵抗回路もグループ別に設けた構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、本発明によれば、表示側の接点共通接続線と各LED表示器の電源ライン間を誘導電圧抑制用抵抗器で終端接続するようにしたため、誘導電圧によるLED表示器の誤点灯対策を低価格/小スペースで確実、容易に実現できる。具体的には以下の効果がある。
【0017】
(1)誘導電圧抑制用のLED表示器毎のトランスが不要になる。
【0018】
(2)LED表示器の駆動電源が交流電源のものにそのまま適用できる。
【0019】
(3)静電容量対策タイプの高価なLED表示器に交換する必要がない。
【0020】
(4)LED表示器毎の電源制御装置が不要となる。
【0021】
(5)LED表示器毎に並列抵抗を設ける必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態を示すLED表示器の制御回路図である。同図が図3と異なる部分は、LED表示器11、12、…に並列に設けている抵抗21、22、…を省き、これに代えてテスト用のボタンスイッチ4と接点31、32、…のb接点とを共通接続するb接点共通接続線と、LED表示器の電源ラインとの間に回路に共通の1つの抵抗回路5を表示器側で設けた点にある。
【0023】
この回路構成において、制御側で、LED表示器の駆動電源になる交流電源ラインL1,L2間に誘導電圧が発生し、この誘導電圧が表示側のLED表示器の電源ラインL2に現れようとするとき、接点31、32、…の少なくとも1つがb接点側にあるため、表示側の接点共通接続線L3と電源ラインL2間が抵抗回路5の抵抗値Rで終端されており、表示側での誘導電圧が抵抗回路5で吸収することができる。
【0024】
また、表示側の信号線に誘導電圧が現れようとするとき、接点31、32、…の少なくとも1つがb接点側にあり、接点共通接続線L3との間が抵抗回路5の抵抗値Rで終端されており、表示側での誘導電圧が抵抗回路5で吸収することができる。
【0025】
また、交流電源ラインL1,L2間の誘導電圧がボタンスイッチ4を通して表示側に現れたときも抵抗回路5によって吸収することができる。
【0026】
なお、抵抗回路5の抵抗値Rは、電源ケーブルや信号線の単位長当たりの静電容量、長さ等によって適宜調整することができるが、例えば、図2に信号線での等価回路で示すように、LED表示器とその動作接点との間を多芯信号線で接続した場合、下記の表に示す信号線長さKに応じた抵抗値を推奨値として求めることができる。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
また、抵抗回路5は、抵抗のみで構成するに限らず、抵抗とコンデンサの直列回路とすることができる。この場合、コンデンサにより比較的高い周波数の誘導電流のみを吸収し、抵抗による電力損失を軽減できる。
【0030】
また、実施形態では、共通接続線は、1本とする場合を示すが、電車の信号機用LED表示器など、各LED表示器が色別に複数グループに分けられる場合などでは、共通接続線もグループ別に設け、抵抗回路もグループ別に設けた構成として同等の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態を示すLED表示器の制御回路図。
【図2】実施形態における抵抗回路の抵抗値算出のための等価回路図。
【図3】従来のLED表示器の制御回路図。
【符号の説明】
【0032】
1、12 LED表示器
1、32 LED表示器駆動用接点
4 ランプテスト用ボタンスイッチ
5 誘導電圧吸収用の抵抗回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示側は複数のLED表示器を設け、制御側は各LED表示器別に点灯/消灯の駆動信号を発生する接点回路および各LED表示器を交流駆動する電源を有し、表示側と制御側は各接点回路とLED表示器を個別に接続する信号線および電源ケーブルで接続し、表示側と制御側は各接点回路のb接点を共通に接続した共通接続線で接続し、表示側で前記接続線と電源ライン間に各LED表示器の一括テスト用ボタンスイッチを設けたLED表示器の制御回路において、
表示側で、前記LED表示器の電源ラインと前記共通接続線との間に抵抗回路を接続し、この抵抗回路は、前記電源ケーブルや信号線の静電容量による誘導電流でLED表示器が誤って点灯または点滅するのを防止できる抵抗値にしたことを特徴とするLED表示器の制御回路。
【請求項2】
前記抵抗回路は、抵抗器とコンデンサの直列回路とし、コンデンサにより比較的高い周波数の誘導電流のみを吸収する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のLED表示器の制御回路。
【請求項3】
前記各LED表示器が複数グループに分けられる場合、前記共通接続線もグループ別に設け、前記抵抗回路もグループ別に設けた構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載のLED表示器の制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−20583(P2008−20583A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191161(P2006−191161)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】