説明

Li2O−Al2O3−SiO2系結晶性ガラス及び結晶化ガラス並びにLi2O−Al2O3−SiO2系結晶化ガラスの製造方法。

【課題】 Li2O−Al23−SiO2系結晶性ガラス、前記結晶性ガラスにおいて核形成をした後、比較的低い温度範囲で結晶化することにより製造可能であり、優れた熱的特性及び機械的強度を有する結晶化ガラスの提供。
【解決手段】質量百分率でSiO2;58.0〜66.0%、Al23;18.0〜26.0%、Li2O;3.5〜5.5%、TiO2;0.5〜4.0%、ZrO2;0.5〜3.0%、P25;0.5〜3.0%、F;0.1〜1.0%、B23;0〜2.5%、Na2O;0〜2.0%、K2O;0〜2.0%、MgO;0〜1.0%、ZnO;0.5〜3.0%、BaO;0〜2.5%、SrO;0.3〜3.0%、As23;0.4〜1.5%、Sb23;0〜1.5%の組成を有するLi2O−Al23−SiO2系結晶性ガラス及び結晶化ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLi2O−Al23−SiO2系結晶性ガラス、透明結晶化ガラス、不透明結晶化ガラスに関し、詳しくはLi2O−Al23−SiO2系結晶性ガラス、、該結晶性ガラスにおいて、核形成後、比較的低温で結晶化することにより製造可能であり、優れた熱的特性を有する透明結晶化ガラス及び不透明結晶化ガラス、並びに該結晶化ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Li2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスは、カラーフィルター、或いはイメージセンサー用基板等のハイテク製品用基板、電子部品焼成用セッター、電磁調理用トッププレート、光部品、電子レンジ用棚板、バーベキュー用トッププレート、防火戸用窓ガラス、石油ストーブ、薪ストーブの前面窓等の材料として、広く使用されている。
【0003】
前記Li2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスとしては、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7等において、
β−石英固溶体(Li2O−Al23−nSiO2 n≧2)、あるいはβ−スポジュメン固溶体(Li2O−Al23−nSiO2 n≧4)を主結晶として析出してなるLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスが開示されている。
【0004】
前記Li2O−Al23−SiO2系結晶性ガラスは、熱膨張係数が低く、また機械的強度も高いことから、優れた熱的特性を有している。
また、前記Li2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスの原料を溶融し成形した後、得られた結晶性ガラスを結晶化する工程において、熱処理条件を変更することにより、析出してくる結晶の種類を変更することができるため、同一組成のガラス原料から透明な結晶化ガラス(β−石英固溶体が析出する場合)と白色不透明な結晶化ガラス(β−スポジュメン固溶体が析出する場合)の両方を製造することができ、用途に応じて使い分けが可能という利点を有する。
【0005】
また、白色不透明な結晶化ガラス(β−スポジュメン固溶体が析出する場合)を製造する際には、ガラス原料を溶融、成形して結晶性ガラスを得て、該結晶性ガラスにおいて核形成をした後、熱処理により結晶を成長させ結晶化を行うが、該結晶成長温度としては、1000℃〜1300℃程度の高温に設定する必要があった。
【0006】
【特許文献1】特公昭39−21049号公報
【特許文献2】特公昭40−20182号公報
【特許文献3】特開平1−308845号公報
【特許文献4】特開平6−329439号公報
【特許文献5】特開平9−188538号公報
【特許文献6】特開2001−48582号公報
【特許文献7】特開2001−48583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明の第一の目的は、下記のLi2O−Al23−SiO2系透明結晶化ガラスの製造原料として好適なLi2O−Al23−SiO2系結晶性ガラスを提供することにある。
本発明の第二の目的は、前記結晶性ガラスにおいて核形成をした後、比較的低温で結晶化することにより製造可能であり、優れた熱的特性及び機械的強度を有するLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスを提供することにある。
本発明の第三の目的は、結晶性ガラスにおいて核形成をした後、比較的低温で結晶化することにより製造可能であり、優れた熱的特性及び機械的強度を有するLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するためのLi2O−Al23−SiO2系結晶性ガラス及び結晶化ガラス並びにLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスの製造方法は、以下の通りである。
<1> 質量百分率でSiO2;58.0〜66.0%、Al23;18.0〜26.0%、Li2O;3.5〜5.5%、TiO2;0.5〜4.0%、ZrO2;0.5〜3.0%、P25;0.5〜3.0%、F;0.1〜1.0%、B23;0〜2.5%、Na2O;0〜2.0%、K2O;0〜2.0%、MgO;0〜1.0%、ZnO;0.5〜3.0%、BaO;0〜2.5%、SrO;0.3〜3.0%、As23;0.4〜1.5%、Sb23;0〜1.5%の組成を有することを特徴とするLi2O−Al23−SiO2系結晶性ガラス。
<2> 質量百分率でSiO2;58.0〜66.0%、Al23;18.0〜26.0%、Li2O;3.5〜5.5%、TiO2;0.5〜4.0%、ZrO2;0.5〜3.0%、P25;0.5〜3.0%、F;0.1〜1.0%、B23;0〜2.5%、Na2O;0〜2.0%、K2O;0〜2.0%、MgO;0〜1.0%、ZnO;0.5〜3.0%、BaO;0〜2.5%、SrO;0.3〜3.0%、As23;0.4〜1.5%、Sb23;0〜1.5%の組成を有することを特徴とするLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラス。
<3> β−石英固溶体(Li2O−Al23−nSiO2 n≧2)を主結晶として析出してなることを特徴とする<2>に記載の透明なLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラス。
<4> <2>に示すLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラスは、β−スポジュメン固溶体(Li2O−Al23−nSiO2 n≧4)を主結晶として析出してなるLi2O−Al23−SiO2系不透明結晶化ガラスである。
<5> 遷移元素酸化物の一種又は二種以上が添加されてなることを特徴とする<2>〜<4>に記載のLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラス。
<6> <1>に示す結晶性ガラスを結晶成長温度800℃〜950℃で結晶化することを特徴とするLi2O−Al23−SiO2系不透明結晶化ガラスの製造方法。
<7> <1>に示す結晶性ガラスを結晶成長時間30分〜3時間で結晶化することを特徴とする<6>に記載のLi2O−Al23−SiO2系不透明結晶化ガラスの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、第一に結晶性ガラスにおいて核形成をした後、比較的低い温度範囲で結晶化することにより製造可能であり、優れた熱的特性及び機械的強度を有する透明及び不透明結晶化ガラス及びその製造方法を提供することができ、第二に前記結晶化ガラスを製造するのに好適な結晶性ガラスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のLi2O−Al23−SiO2系結晶性ガラス、及びLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラス及びその製造方法について説明する。
【0011】
本発明の結晶化ガラスは、前記結晶性ガラスを結晶化処理をして、β−石英固溶体(Li2O−Al23−nSiO2 n≧2)を主結晶として析出してなるLi2O−Al23−SiO2系透明結晶化ガラスとすることができる。また、前記結晶性ガラスを結晶化処理を行う時に、結晶化処理温度を変更して、比較的低い温度で結晶化処理を行うことによって、β−スポジュメン固溶体(Li2O−Al23−nSiO2 n≧4)を主結晶として析出してなるLi2O−Al23−SiO2系不透明結晶化ガラスとすることができる。
【0012】
前記結晶性ガラス原料中に遷移元素酸化物の一種又は二種以上を添加した後、溶融、成形して、結晶性ガラスとすることができる。遷移元素酸化物としては、TiO2、V25、Cr23,MnO2、Fe23,Co34、NiO、CuO等を挙げることができ、得られた結晶性ガラスを結晶化処理をして、β−石英固溶体は(Li2O−Al23−nSiO2 n≧2)を主結晶として析出してなるLi2O−Al23−SiO2系着色透明結晶化ガラスとすることができる。また、前記遷移元素酸化物の一種又は二種以上を添加した結晶性ガラスを結晶化処理を行う時に、結晶化処理温度を変更して、比較的低い温度で結晶化処理を行うことによって、β−スポジュメン固溶体(Li2O−Al23−nSiO2 n≧4)を主結晶として析出してなるLi2O−Al23−SiO2系着色不透明結晶化ガラスとすることができる。
【0013】
上に述べたように、ガラス原料を溶融、成形することによって結晶性ガラスを得た後、結晶化処理条件の変更によって析出結晶の種類を変更する。従って、同一組成のガラス原料を使って、前述透明結晶化ガラス及び不透明結晶化ガラスを製造することが可能になる。
【0014】
上記の製造方法により得られた、本発明の透明結晶化ガラス及び不透明結晶化ガラスは、切断、研磨、曲げ加工等の後加工を施したり、表面に絵付け等を施すことにより、種々の用途に供される。
【0015】
本発明の結晶性ガラス及び結晶化ガラスにおいて、前記好適な組成について以下説明する。以下に記載する「%」は、「質量%」を意味する。
【0016】
前記SiO2は、ガラスの骨格を形成するとともに結晶を構成する主成分である。本発明において、該SiO2の含有量としては、58.0〜66.0%、好ましくは63.0
〜65.0%である。該SiO2の含有量が58.0%より少ないと、これをもとに製造された結晶化ガラスの熱膨張係数が大きくなってしまう。一方、含有量が66.0%より多いと、ガラス原料を溶融する際の温度が高くなる。
【0017】
前記Al23は、ガラスの骨格を形成するとともに結晶を構成する主成分である。本発明において、該Al23の含有量としては、18.0〜26.0%、好ましくは21.0〜23.0%である。該Al23の含有量が18.0%より少ないと、得られた結晶性ガラス及び結晶化ガラスの化学的耐久性が低下し、また、ガラスが失透し易くなる。一方、該Al23の含有量が26.0%より多いと、ガラスの粘度が大きくなりガラス原料を溶融する際の温度が高くなる。
【0018】
前記Li2Oは、結晶を構成する主成分であり、ガラスの結晶性に大きな影響を与えるとともに、ガラスの粘性を低下させる働きを有する。本発明において、該Li2Oの含有量としては、3.5〜5.5%、好ましくは3.7〜4.2%である。該Li2Oの含有量が3.5%より少ないと、ガラスの結晶性が弱くなり、得られた結晶化ガラスの熱膨張係数が大きくなってしまう。一方、該Li2Oの含有量が5.5%より多いと、ガラスの結晶性が強くなりすぎてガラスが失透し易くなり、透明結晶化ガラスを得ることが困難となる。
【0019】
前記TiO2は、核形成剤の働きを有する成分である。本発明において、該TiO2の含有量としては、0.5〜4.0%、好ましくは2.3〜3.5%である。該TiO2の含有量が0.5%より少ないと核形成速度が遅くなり、一方、該TiO2の含有量が4.0%ょり多いと、ガラスの結晶性が強くなり過ぎてガラスが失透し易くなるとともに、不純物着色が発生し易くなる。透明結晶化ガラスを得ることが困難となる。
【0020】
前記ZrO2は、核形成剤の働きを有する成分である。本発明において、該ZrO2の含有量としては、0.5〜3.0%、好ましくは1.5〜2.5%である。該ZrO2の含有量が0.5%より少ないと核形成速度が遅くなり、一方、該ZrO2の含有量が3.0%より多いと、ガラス原料の溶融温度が高くなるとともに、ガラスが失透し易くなる。
【0021】
前記P25は、ZrO2の溶融性を向上させる働きを有する成分であるとともに、成形時の失透を防止する成分である。そして、結晶制御剤としての働きを有する成分であり、β−石英固溶体(Li2O−Al23−nSiO2 n≧2)を主結晶として析出させ、Li2O−Al23−SiO2系透明結晶化ガラスを比較的製造され易くなる。本発明において、該P25の含有量としては0.5〜3.0%であり、0.8〜1.5%であることが好ましい。該P25の含有量が0.5%より少ないと前記の結晶制御効果がなくなる。一方、該P25の含有量が3.0%より多いと、熱膨張係数が大きくなるとともに、ガラスが失透し易くなる。
【0022】
前記Fは、結晶制御剤としての働きを有する成分であり、β−スポジュメン固溶体(Li2O−Al23−nSiO2 n≧4)を主結晶として析出させ、Li2O−Al23−SiO2系不透明結晶化ガラスを比較的製造され易くなる。本発明において、該Fの含有量としては0.1〜1.0%であり、0.3〜0.6%であることが好ましい。Fを添加しない場合、不透明結晶化ガラスを製造する工程中、β−スポジュメン固溶体(Li2O−Al23−nSiO2 n≧4)を主結晶として析出させるため、結晶化処理温度を1000℃以上の高温域に設定する必要がある。Fを0.1%以上の量を添加する場合、不透明結晶化ガラスを製造する工程中、β−スポジュメン固溶体(Li2O−Al23−nSiO2 n≧4)を主結晶として析出させるため、結晶化処理温度を860℃以上の温度に設定すればよい。一方、Fの含有量が1.0%より多いと、透明結晶化ガラスを得ることが困難となる。
【0023】
前記B23は、ガラス原料の溶融性を向上させ、溶融温度及び成形温度を低下させる働きを有する成分である。本発明において、該B23の含有量としては0〜2.5%である、該B23の含有量が2.5%より多いと、透明結晶化ガラスを得ることが困難となる。
【0024】
前記Na2Oは、ガラスの溶融性を向上させる働きを有する成分である。本発明において、該Na2Oの含有量としては0〜2.0%である、該Na2Oの含有量が2.0%より多いと、熱膨張係数が大きくなってしまう。
【0025】
前記K2Oは、ガラスの溶融性を向上させる働きを有する成分である。本発明において、該K2Oの含有量としては0〜2.0%である、該K2Oの含有量が2.0%より多いと、熱膨張係数が大きくなってしまう。
【0026】
前記MgOは、ガラスの溶融性を向上させ、泡欠陥の発生を防止する働きを有する成分である。本発明において、該MgOの含有量としては0〜1.0%である。該MgOの含有量が1.0%より多いと、熱膨張係数が大きくなり、熱的特性が低下する。
また、透明結晶化ガラスを製造する場合、前記TiO2の存在によってガラスが僅かに着色することがあるが、該MgOの含有量が上記範囲を超えるとこの着色が濃くなり、透明性が損なわれる。
【0027】
前記ZnOは、前記MgOと同様にガラスの溶融性を向上させ、泡欠陥の発生を防止する働きを有する成分である。本発明において、該ZnOの含有量としては、0.5〜3.0%である。該ZnOの含有量が0.5%より少ないと泡欠陥の発生を防止する効果が弱くなり、泡が発生し易くなる。一方、該ZnOの含有量が3.0%より多いと、製造される結晶化ガラスの誘電損失が大きくなり、電子レンジ用途等に使用するとホットスポットが発生してしまう。
また、透明結晶化ガラスを製造する場合、前記MgOの場合と同様に、該ZnOの含有量が上記範囲を超えると、TiO2に起因する着色が濃くなり、透明性が損なわれる。
【0028】
前記BaOは、前記MgO及びZnOと同様に、ガラスの溶融性を向上させ、泡欠陥の発生を防止する働きを有する成分である。本発明において、該BaOの含有量としては、0〜2.5%である。該BaOの含有量が2.5%より多いと、製造される結晶化ガラスの誘電損失が大きくなる。
【0029】
前記SrOは、前記MgO及びZnOと同様に、ガラスの溶融性を向上させ、泡欠陥の発生を防止する働きを有する成分である。本発明において、該SrOの含有量としては、0.3〜3.0%である。該SrOの含有量が0.3%より少ないと泡欠陥の発生を防止する効果が弱くなり、泡が発生し易くなる。一方、該SrOの含有量が3.0%より多いと、製造される結晶化ガラスの熱膨張係数が大きくなり熱的特性が低下するとともに、誘電損失が大きくなる。
【0030】
前記As23は、清澄剤としての働きを有する。即ち、高温溶融時に酸素ガスを発生させてガラス中の泡等を除去する働きを有する成分である。その一方で、該As23は毒性が強く、ガラスの製造工程や廃ガラスの処理時等に環境を汚染する可能性があり、使用量をできるだけ押さえるという観点から、本発明において、該As23の含有量としては0.4〜1.5%である。該As23の含有量が0.4%より少量であると、前記清澄剤としての効果が不十分となるが、1.5%を超えると、毒性の点から望ましくない。
【0031】
前記Sb23は、As23と同様に清澄剤としての働きを有する。即ち、高温溶融時に酸素ガスを発生させてガラス中の泡等を除去する働きを有する成分である。また、ガラスの結晶化促進効果も有する成分である。その一方で、該Sb23は、As23よりも不純物着色を起こし易いため、使用量をできるだけ押さえるという観点から、本発明において、該Sb23の含有量としては0〜1.5%である。
【0032】
本発明において、結晶性ガラスの製造方法としては、結晶性ガラスの組成となるように各原料を調合し、均一に混合した後、ガラス原料を所定の炉等で、1550℃〜1650℃、好ましくは1580℃〜1620℃で、8〜24時間、好ましくは12〜18時間の条件で溶融した後、所定の形態に成形することによって得られる。
本発明において、結晶化ガラスの製造方法としては、前記の方法で得られた結晶性ガラスを結晶成長温度800℃〜950℃、好ましくは850℃〜900℃の温度で結晶成長時間30分〜3時間、好ましくは1時間〜1.5時間の間で結晶化することによって比較的の低温度、かつ短時間で所望の結晶化ガラスが得ることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を、実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
表1に示されているのは、比較用結晶化ガラス配合組成及びその主結晶相、結晶成長温度、結晶成長時間、結晶化ガラス外観、結晶化ガラスの膨張係数等である。試料番号が1〜8である。
【0035】
表1に示されている試料1〜8を以下の方法により作製した。
まず、下記表1に記載の組成を有するガラスとなるように、各原料を酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、或いは硝酸塩等の形態で調合し、均一に混合した後、該ガラス原料を、白金坩堝を用いて電気炉で1650℃において8〜20時間溶融した。
次いで、溶融したガラスをカーボン定盤上に流し出し、ステンレスローラーを用いて5mmの厚さに成形し、さらに徐冷炉を用いて室温まで冷却した。
こうして得られた結晶性ガラス成形体を電気炉に入れ、各試料ごとに、以下の異なる条件において熱処理を行って結晶化した後、炉冷した。
【0036】
(試料1)核形成温度/時間:780℃/2hr 結晶成長温度/時間:900℃/3hr
(試料2)核形成温度/時間:780℃/2hr 結晶成長温度/時間:900℃/3hr
(試料3)核形成温度/時間:780℃/2hr 結晶成長温度/時間:900℃/3hr
(試料4)核形成温度/時間:730℃/2hr 結晶成長温度/時間:845℃/2hr
(試料5)核形成温度/時間:780℃/2hr 結晶成長温度/時間:1160℃/1hr
(試料6)核形成温度/時間:780℃/2hr 結晶成長温度/時間:1160℃/1hr
(試料7)核形成温度/時間:780℃/2hr 結晶成長温度/時間:1160℃/1hr
(試料8)核形成温度/幹聞:730℃/2hr 結晶成長温度/時間:1100℃/2hr
【0037】
尚、昇温速度は、室温から核形成温度までを300℃/hrとし、核形成温度から結晶成長温度までを100〜200℃/hrとした。30〜600℃温度範囲で熱膨張係数を測定した。
【0038】
【表1】

【0039】
表2に示されているのは、本発明の結晶化ガラス配合組成及びその主結晶相、結晶成長温度、結晶成長時間、結晶化ガラス外観、結晶化ガラスの膨張係数等である。試料番号が9〜16である。
【0040】
表2に示されている試料9〜16を以下の方法により作製した。
まず、下記表2に記載の組成を有するガラスとなるように、各原料を酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、あるいは硝酸塩等の形態で調合し、均一に混合した後、該ガラス原料を、白金坩堝を用いて電気炉で1600℃において8〜15時間溶融した。
【0041】
【表2】

【0042】
次いで、溶融したガラスをカーボン定盤上に流し出し、ステンレスローラーを用いて5mmの厚さに成形し、さらに徐冷炉を用いて室温まで冷却した。
こうして得られた結晶性ガラス成形体を電気炉に入れ、各試料ごとに、以下の異なる条件において熱処理を行って結晶化した後、炉冷した。
【0043】
(試料9) 核形成温度/時間:700℃/2hr 結晶成長温度/時間:820℃/1hr
(試料10)核形成温度/時間:700℃/2hr 結晶成長温度/時間:800℃/1hr
(試料11)核形成温度/時間:700℃/2hr 結晶成長温度/時間:820℃/1hr
(試料12)核形成温度/時間:700℃/2hr 結晶成長温度/時間:860℃/1hr
(試料13)核形成温度/時間:700℃/2hr 結晶成長温度/時間:870℃/1hr
(試料14)核形成温度/時間:700℃/2hr 結晶成長温度/時間:900℃/1hr
(試料15)核形成温度/時間:700℃/2hr 結晶成長温度/時間:820℃/1hr
(試料16)核形成温度/時間:700℃/2hr 結晶成長温度/時間:880℃/1hr
【0044】
尚、昇温速度は、室温から核形成温度までを300℃/hrとし、核形成温度から結晶成長温度までを100〜200℃/hrとした。30〜600℃温度範囲で熱膨張係数を測定した。
【0045】
[比較例1〜8及び実施例9〜16の評価]
比較例1〜8及び実施例9〜16において、得られた各試料について、主結晶の種類、外観、及び熱膨張係数を調べた。なお、表1及び表2において、β−Qはβ−石英固溶体を、β−Sはβ−スポジュメン固溶体をそれぞれ意味する。
【0046】
表1より、比較例1〜4(比較用試料1〜4)においては、845℃〜900℃の温度範囲で結晶成長させることにより、主結晶としてβ−石英固溶体を析出し、無色透明の外観を呈する透明結晶化ガラスを得た。
【0047】
一方、表2より、実施例9〜11及び15(試料9〜11及び15)においては、800℃〜820℃の温度範囲で結晶成長させることにより、主結晶としてβ−石英固溶体を析出し、無色透明及び紫色透明の外観を呈する透明結晶化ガラスを得た。また、試料9〜11及び15の熱膨張係数は、比較例1〜4の試料とほぼ同等であり、優れた熱的特性を有することが分かった。さらにこの結果から、本発明においては、比較例1〜4の場合より、低い結晶成長温度で、無色及び着色透明結晶化ガラスの製造が可能であることが確認された。
【0048】
表1より、比較例5〜8(比較用試料5〜8)においては、1100℃〜1160℃の温度範囲で結晶成長させることにより、主結晶としてβ−スポジュメン固溶体を析出し、白色不透明の外観を呈する不透明結晶化ガラスを得た。
【0049】
一方、表2より、実施例12〜14及び16(試料12〜14及び16)においては、860℃〜900℃の温度範囲で結晶成長させることにより、主結晶としてβ−スポジュメン固溶体を析出し、白色不透明及び紫色不透明の外観を呈する不透明結晶化ガラスを得た。また、試料12〜14及び16の熱膨張係数は、比較例5〜8の試料とほぼ同等であり、優れた熱的特性を有することが分かった。さらにこの結果から、本発明においては、比較例5〜8の場合より、低い結晶成長温度で、白色及び着色不透明結晶化ガラスの製造が可能であることが確認された。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量百分率でSiO2;58.0〜66.0%、Al23;18.0〜26.0%、Li2O;3.5〜5.5%、TiO2;0.5〜4.0%、ZrO2;0.5〜3.0%、P25;0.5〜3.0%、F;0.1〜1.0%、B23;0〜2.5%、Na2O;0〜2.0%、K2O;0〜2.0%、MgO;0〜1.0%、ZnO;0.5〜3.0%、BaO;0〜2.5%、SrO;0.3〜3.0%、As23;0.4〜1.5%、Sb23;0〜1.5%の組成を有することを特徴とするLi2O−Al23−SiO2系結晶性ガラス。
【請求項2】
質量百分率でSiO2;58.0〜66.0%、Al23;18.0〜26.0%、Li2O;3.5〜5.5%、TiO2;0.5〜4.0%、ZrO2;0.5〜3.0%、P25;0.5〜3.0%、F;0.1〜1.0%、B23;0〜2.5%、Na2O;0〜2.0%、K2O;0〜2.0%、MgO;0〜1.0%、ZnO;0.5〜3.0%、BaO;0〜2.5%、SrO;0.3〜3.0%、As23;0.4〜1.5%、Sb23;0〜1.5%の組成を有することを特徴とするLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラス。
【請求項3】
β−石英固溶体(Li2O−Al23−nSiO2 n≧2)を主結晶として析出してなることを特徴とする請求項2に記載の透明なLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラス。
【請求項4】
β−スポジュメン固溶体(Li2O−Al23−nSiO2 n≧4)を主結晶として析出してなることを特徴とする請求項2に記載の不透明なLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラス。
【請求項5】
遷移元素酸化物の一種又は二種以上が添加されてなることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のLi2O−Al23−SiO2系結晶化ガラス。
【請求項6】
請求項1に示す結晶性ガラスを結晶成長温度800℃〜950℃の温度で結晶化することを特徴とするLi2O−Al23−SiO2系不透明結晶化ガラスの製造方法。
【請求項7】
請求項1に示す結晶性ガラスを結晶成長時間30分〜3時間で結晶化することを特徴とする請求項6に記載のLi2O−Al23−SiO2系不透明結晶化ガラスの製造方法。



【公開番号】特開2006−199538(P2006−199538A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13077(P2005−13077)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(502295490)湖州大享玻璃制品有限公司 (6)
【Fターム(参考)】