説明

MCM6モノクローナル抗体およびMCM7モノクローナル抗体ならびに子宮頚部疾患の検出におけるそれらの使用のための方法

患者の試料における高悪性度子宮頚部疾患を診断するための組成物および方法が提供される。この組成物は、MCM6またはMCM7に特異的に結合する、新規モノクローナル抗体ならびにその変異体および断片を含む。本発明のMCM6抗体またはMCM7抗体の結合特性を有するモノクローナル抗体がさらに提供される。本発明のMCM6モノクローナル抗体またはMCM7モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株も本明細書に開示される。この組成物は、患者由来の子宮頚部試料中のMCM6、MCM7、またはMCM6とMCM7との両方の過剰発現を検出することを含む高悪性度子宮頚部疾患を診断する方法の実行において有用性を見出す。本発明の方法を実行するためのキットがさらに提供される。MCM6またはMCM7のエピトープのアミノ酸配列を含むポリペプチドおよび抗体生成でのこれらのポリペプチドの使用方法も本発明によって包含される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、MCM6またはMCM7に結合できる抗体およびこれら抗体の使用方法、特に子宮頚部疾患の診断における使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
子宮頚部の癌腫は、女性における2番目に多い一般的新生物であり、女性の全癌の約12%の割合を占め、毎年約25万人の死亡を引き起こしている。非特許文献1。集団スクリーニングプログラムが利用可能でない多くの発展途上国では、臨床に関する問題は、より深刻である。これらの国では、子宮頚癌は、女性における癌による死亡の第1位の原因である。
【0003】
子宮頸癌の症例は、腺癌も見られるが、その大多数は、扁平上皮細胞癌を示す。子宮頚癌は、詳細に明らかにされた非侵襲性の上皮内段階を経て進行し、この上皮内段階は形態的に識別することが可能であるので、集団スクリーニングによって防止され得る。非特許文献2。正常な細胞がどのように癌化するかは、理解されていないが、正常な重層上皮から子宮頚部上皮内新生物(CIN)を経て浸潤癌へと連続範囲で病理組織学的に変化するという概念が何年もの間広く受け入れられている。子宮頚癌の前駆病変は異形成であり、当該技術分野では、CINまたは扁平上皮内病変(SIL)として知られている。扁平上皮内異常は、3層(CIN)または2層(ベセスダ)システムを用いて分類され得る。ベセスダシステムに基づいて、CINIおよびHPV感染に対応する軽度の扁平上皮内病変(LSIL)は、通常、侵襲性疾患への進行のリスクが比較的低い増殖性HPV感染を表す。3層システムのCINIIおよびCINIIIに対応する高悪性度扁平上皮内病変(HSIL)は、LSILよりも子宮頚癌への進行のリスクがより高いが、LSILおよびHSILは両方とも悪性疾患の潜在的な前駆病変と見られる。患者試料も、このシステムに基づいてASCUS(意義不明な異型扁平上皮細胞)またはAGUS(意義不明な異型腺細胞)に分類され得る。
【0004】
子宮頚癌と高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)(例えば、16型、18型、および31型)による感染との強い関連が確立されている。実際に、疫学的証拠および分子生物学的な証拠の大部分は、子宮頚癌の原因因子としてHPV感染を確立した。さらに、HPVは、高悪性度子宮頚部疾患の症例の85%以上で発見される。しかし、HPV感染は極めて一般的であり、30歳を超える女性の5〜15%で起きている可能性があるが、高悪性度子宮頚部疾患または癌をこれまでに発症しているHPV陽性女性はほとんどいない。HPV単独での存在は感染を示すだけであって、高悪性度子宮頚部疾患を示さず、従って、HPV感染単独についての検査は、数多い偽陽性をもたらす。例えば、非特許文献3を参照。
【0005】
HPVが子宮頚部の下層組織内の基底幹細胞に感染することを最近の文献は示唆している。重層子宮頚上皮への細胞の遊走を結果として生じる、成熟ケラチノサイトへの幹細胞の分化は、HPVウイルスの複製および細胞の再感染と関連する。このウイルスの複製プロセスの間に、細胞周期の調節解除、活発な増殖、DNA複製、転写活性化、およびゲノム不安定性を含む多くの細胞変化が起こる(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。
【0006】
大部分のHPV感染は、ウイルス感染が12ヵ月の期間内にそれ自体で消散する、実在して一過性のものである。1つ以上の発癌性サブタイプのHPVによる持続感染を発症する個体にとっては、非HPV感染患者と比較して新生物を発症するリスクがある。子宮頚部新生物の発症におけるHPVの重要性を考えると、HPVの臨床検出は、子宮頚部新生物発症のリスクのある患者の同定における重要な診断ツールとなった。HPVをベースにした子宮頚部疾患スクリーニングの臨床的有用性は、その陰性を予測する価値にある。通常のパップスメアの履歴と組み合わせたHPV陰性の結果は、疾患のない状態およびその後の1〜3年間の間の子宮頚部新生物発症の低リスクを示す、優れた指標である。しかしながら、HPV陽性結果は、子宮頚部疾患の診断ではなく、むしろそれは感染の表示である。大部分のHPV感染は一過性のものであり、12ヵ月間の期間内に自然と消滅するが、高リスクのサブタイプのHPVウイルスによる持続感染は、子宮頚部新生物の発症のより高いリスクを示す。HPVテストを補充するために、子宮頚部新生物と関連する分子マーカーの同定は、子宮頚部疾患の診断の臨床特異性を改善することが期待される。
【0007】
パパニコロー染色での子宮頚部スメア(パップスメア)の細胞診は、現在、子宮頚癌の検出のための選り抜きの方法である。パップテストは、実質的に60年間変わることなく残っている主観的方法である。しかしながら、その性能についていくつかの懸念がある。単回のパップテストの報告される感度(検査で陽性と出る疾患陽性の比率)は低く、かつ広範なバリエーションを示す(30〜87%)。単回のパップテストの特異性(検査で陰性と出る疾患陰性の比率)は、スクリーニング集団では86%まで低い場合もあり得、そして根底にある高悪性度疾患を決定するためのASCUS PLUS集団ではさらにかなり低いことがある。非特許文献1参照。LSILまたはCINIとして特徴付けられるパップスメアの有意なパーセンテージは、高悪性度病変に対して実際に陽性である。さらに、パップスメアの10%までは、ASCUS(意義不明な異型扁平上皮細胞)として分類され、すなわち、正常、中程度もしくは重度の病変または腫瘍として明白に分類することが可能でない。しかしながら、このASCUS集団の10%までは、高悪性度病変を有し、結果的に見過ごされることを経験では示している。例えば、非特許文献7を参照。従って、高悪性度子宮頚部疾患で選択的に過剰発現される分子バイオマーカーおよびこれらのバイオマーカーを検出するための組成物は、高悪性度子宮頚部疾患を診断するための信頼できる方法を実行するのに必要である。
【0008】
ミニ染色体維持(MCM)タンパク質は、真核性DNA複製の不可欠な部分で役割を果たしている。ミニ染色体維持(MCM)タンパク質は、重複したDNA鎖のデノボ合成中に、DNA上に前複製複合体をのせ、二重鎖DNAをほどく手助けをするためのヘリカーゼとして機能することによりDNA複製の初期段階に機能する。MCMタンパク質の各々は、それらの高度に保存された中心ドメインにDNA依存ATPaseモチーフを有する。MCMタンパク質のレベルは、通常、細胞周期のG0期からG1/S期へと正常細胞が進行するにつれて変化する形で増加する。G0期では、MCM2タンパク質およびMCM5タンパク質は、MCM7タンパク質およびMCM3タンパク質よりもずっと少ない。MCM6は、MCM2、MCM4、およびMCM7と複合体を形成して、ヒストンH3に結合する。さらに、MCM4、MCM6、およびMCM7の部分複合体は、ヘリカーゼ活性を有しており、その活性は、MCM6のATP結合活性およびMCM4のDNA結合活性によって媒介される。例えば、非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10を参照。それらすべては、それら全体が本明細書に参考として援用される。
【0009】
MCMタンパク質および特にMCM5が、子宮頚部疾患(非特許文献2)ならびに他の癌(非特許文献8)の検出に有用であると初期の刊行物は示している。発表された文献は、MCM5に対する抗体が子宮頚新生物細胞を検出できることを示している。高悪性度子宮頚部疾患の検出に対する特異性は、MCM5に対しては実証されていない(非特許文献2)。MCM5発現の検出は、高悪性度子宮頚部疾患に限定されるだけでなく、高リスクHVPによる感染の後に細胞周期に再度入った同定された低悪性度の異形成および増殖細胞においても検出される。MCM5に対する抗体による子宮頚新生物の検出は、図4に示される。MCM5に加えて、MCM2およびMCM7を含むMCMファミリーの他のメンバーは、組織試料において子宮頚腫瘍を検出するための潜在的に有用なマーカーであることが示されている(非特許文献8;非特許文献11)。MCM7が、免疫化学形式を使用する高悪性度子宮頚部疾患の検出のための特異的なマーカーであるように思われると最近の結果は示している(非特許文献11;非特許文献12)。
【非特許文献1】Baldwin et al.(2003) Nature Reviews Cancer 3:1〜10
【非特許文献2】Williams et al.(1998)Proc. Natl. Acad Sci. USA 95:14932〜14937
【非特許文献3】Wright et al.(2004)Obstet.Gynecol.103:304〜309
【非特許文献4】Crum(2000)Modern Pathology 13:243〜251
【非特許文献5】Middleton et al.(2003)J. Virol. 77:10186〜10201
【非特許文献6】Pett et al.(2004)Cancer Res. 64:1359〜1368
【非特許文献7】Manos et al.(1999)JAMA 281:1605〜1610
【非特許文献8】Freeman et al.(1999)Clin. Cancer Res. 5:2121〜2132
【非特許文献9】Lei et al.(2001)J. Cell Sci. 114:1447〜1454
【非特許文献10】Ishimi et al.(2003)Eur.J. Biochem. 270:1089〜1101
【非特許文献11】Brake et al.(2003)Cancer Res. 63:8173〜8180
【非特許文献12】Malinowski et al.(2004)Acta Cytol. 43:696
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、高悪性度子宮頚部疾患において選択的に過剰発現されるバイオマーカーの発現を検出できる抗体が当該技術分野では必要である。そのような抗体は、初期のHPV感染および軽度の異形成等の臨床疾患とは考えられない状態と高悪性度疾患とを区別するための方法で使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
高悪性度子宮頚部疾患を診断するための組成物および方法が提供される。組成物は、本発明の核バイオマーカータンパク質、詳細にはMCMタンパク質、より詳細にはMCM6およびMCM7へと結合し得るモノクローナル抗体を含む。これらのモノクローナル抗体の抗原結合断片および変異体、これらの抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞株、および本発明のモノクローナル抗体を含むキットも本明細書に包含される。
【0012】
本発明の組成物は、高悪性度子宮頚部疾患を診断するための方法における有用性を見出す。これらの方法は、核バイオマーカーの過剰発現が高悪性度子宮頚部疾患を示す、少なくとも1つの核バイオマーカーの発現を検出することを含む。特に、これらの方法は、子宮頚部試料におけるMCM6またはMCM7の過剰発現を検出するために本発明の抗体を用いることを含む。
【0013】
本発明の組成物は、さらに、MCM6モノクローナル抗体またはMCM7モノクローナル抗体を結合することができるエピトープを含む単離されたポリペプチドを含む。これらのポリペプチドは、MCM6抗体またはMCM7抗体を産生するための方法における有用性を見出す。MCM6またはMCM7のエピトープのアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子もまた提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
高悪性度子宮頚部疾患を診断するための組成物および方法が提供される。組成物は、高悪性度子宮頚部疾患で選択的に過剰発現される核バイオマーカータンパク質、詳細にはMCMタンパク質、より詳細にはMCM6およびMCM7に結合できるモノクローナル抗体を含む。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株もまた開示される。本明細書に記述するモノクローナル抗体を含むキットが、さらに提供される。本組成物は、患者の高悪性度子宮頚部疾患を診断するための方法における有用性を見出す。
【0015】
本発明の組成物は、MCM6もしくはMCM7に、またはその変異体もしくは断片に特異的に結合するモノクローナル抗体を含む。MCM6のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、配列番号3(受入番号NP_005906)および配列番号4(受入番号NM_005915)にそれぞれ示される。MCM7のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、配列番号1(受入番号NP_005907)および配列番号2(受入番号NM_005916)にそれぞれ示される。特定の実施形態では、9D4.3と命名されたMCM6モノクローナル抗体および2E6.2と命名されたMCM7モノクローナル抗体が提供される。MCM7モノクローナル抗体2E6.2を産生するハイブリドーマ細胞株は、2005年4月14日にアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(Manassas, Virginia, 20110−2209)の特許寄託機関に寄託され、特許寄託番号PTA−6669が割り当てられた。MCM6モノクローナル抗体9D4.3を産生するハイブリドーマ細胞株は、2005年8月9日にアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(Manassas, Virginia, 20110−2209)の特許寄託機関に寄託され、特許寄託番号PTA−6911が割り当てられた。これらの寄託物は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項に基づいて維持される。この寄託は、単に当業者の便宜のために行なわれたものであり、寄託が米国特許法112条によって必要とされることを承認するわけではない。
【0016】
モノクローナル抗体9D4.3および2E6.2の結合特性を有する抗体も本明細書で開示される。そのような抗体としては、競合結合アッセイでこれらの抗体と競合する抗体、ならびにモノクローナル抗体9D4.3もしくは2E6.2に結合できるエピトープに結合する抗体が挙げられるがこれらに限定されない。MCM6もしくはMCM7にそれぞれ特異的に結合する能力を保持するモノクローナル抗体9D4.3および2E6.2の変異体および断片も提供される。組成物は、さらに、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株および本明細書で開示される少なくとも1つのモノクローナル抗体を含むキットを含む。
【0017】
「抗体」および「免疫グロブリン」(Ig)は、同一の構造特性を有する糖タンパク質である。抗体が抗原に対する結合特異性を示すのに対して、免疫グロブリンは、抗体および抗原特異性を欠如する他の抗体様分子の両方を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系によって低レベルで、および骨髄腫によって増加したレベルで産生される。
【0018】
用語「抗体」および「複数の抗体」は、天然に存在する形態の抗体および組換え抗体(単鎖抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体、および多特異性抗体、ならびに前述のものすべてのものの断片および誘導体等)を広く包含する。それらの断片および誘導体は、少なくとも1つの抗原結合部位を有する。抗体誘導体は、その抗体に結合されたタンパク質または化学部分を含み得る。用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、完全に組み立てられた抗体、抗原(例えば、Fab’、F(ab’)2、Fv,単鎖抗体、二重特異性抗体)に結合し得る抗体断片、および前述のものを含む組換えペプチドを包含する。本明細書で使用される場合、「MCM6抗体」または「MCM7抗体」は、MCM6(配列番号3)もしくはMCM7(配列番号1)、またはそれらの変異体もしくは断片に特異的に結合する任意の抗体を指し、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、および親抗体の抗原結合機能を保持するそれらの断片を包含する。
【0019】
本発明のMCM6抗体およびMCM7抗体は、最適には、モノクローナル抗体である。本明細書に使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団(すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在し得る自然に発生する可能性のある変異を除いて同じである)から得られる抗体を指す。
【0020】
「ネイティブ抗体」および「ネイティブ免疫グロブリン」は、通常、2本の同一の軽(L)鎖および2本の同一の重(H)鎖から構成されている約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。ジスルフィド結合の数が、異なる免疫グロブリンのアイソタイプの重鎖の間では変化する一方、各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合される。各重鎖および軽鎖は、また、鎖内のジスルフィド架橋を一定の間隔であけている。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)、続いて多数の定常ドメインを有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を、他端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間の界面を形成すると考えられている。
【0021】
用語「可変の」は、可変ドメインの特定の部分の配列が抗体間で広範に異なり、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性で使用される事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体を通して均等には分布されていない。それは、軽鎖および重鎖の両方の可変ドメインにおいて、相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)領域と呼ばれる。ネイティブな重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々、大体はpシート立体配置の形をとり、pシート構造を結合するループを形成する3つのCDR(および場合によってはpシート構造の部分を形成する15のCDR)によって結合される4つのFR領域を含む。抗体の各鎖のCDRは、FR領域によっておよび他の鎖からのCDRを用いてごく接近して共に保持され、抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,NIH Publ. No.91−3242,Vol. I,647〜669頁(1991)参照)。
【0022】
定常ドメインは、抗体を抗原に結合する際に直接的に関与しないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与等の様々なエフェクター機能を示す。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「超可変領域」は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」すなわち「CDR」からのアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン内の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、および89〜97(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン内の31〜35(H1)、50〜65(H2)、および95〜102(H3);Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service, National Institute of Health, 25 Bethesda, MD.[1991])および/または「超可変ループ」からのアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン内の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン内の26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3);ClothiaおよびLesk、J. Mol. Biol.、196:901〜917[1987])を含む。「フレームワーク」すなわち「FR」残基は、本明細書で見なされる場合の超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0024】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部、好ましくは、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、およびFv断片、二重特異性抗体、直鎖状抗体(Zapata et al.(1995)Protein Eng. 8(10):1057〜1062)、単鎖抗体分子、および抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化は、2つの同じ抗原結合断片(それぞれが1つの抗原結合部位を有するいわゆる「Fab」断片および残りの「Fc」断片(その名称は、容易に結晶化するその能力を反映する))を生成する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有しかつ依然として抗原を架橋結合できる1つのF(ab’)断片をもたらす。
【0025】
「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含む最小限の抗体断片である。二本鎖のFv種では、この領域は、強く非共有結合した1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv種では、軽鎖および重鎖が二本鎖Fv種におけるそれに類似した「二量体」構造で結合できるように、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインが可動性のペプチドリンカーによって共有結合され得る。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してV−V二量体の表面で抗原結合部位を画定するするのは、この立体配置内である。まとめると、6つのCDRが抗体に対する抗原結合特異性を与える。しかしながら、結合部位全体よりは低い親和性ではあるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRだけを含むFvの半分)でも抗原を認識し結合する能力を有する。
【0026】
Fab断片も、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(C1)を含む。Fab断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖C1ドメインのカルボキシ末端に少数の残基が添加されることによってFab’断片と異なる。Fab’−SHは、本明細書では、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’の名称である。F(ab’)抗体断片は、最初は、その間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成された。
【0027】
MCM6抗体およびMCM7抗体の断片は、全長抗体の所望の親和性を保持する限り、本発明によって包含される。従って、例えば、MCM6抗体の断片は、MCM6抗原に結合する能力を保持する。同様に、MCM7抗体の断片は、MCM7抗原に結合する能力を保持する。そのような断片は、対応する全長抗体と類似する特性(すなわち、それらの断片はMCM6またはMCM7に特異的に結合する)によって特徴付けられる。そのような断片は、本明細書では「抗原結合」断片といわれる。
【0028】
抗体の適切な抗原結合断片は、全長抗体の一部(通常、その抗原結合領域または可変領域)を含む。抗体断片の例としては、Fab断片、F(ab’)断片、およびFv断片、ならびに単鎖抗体分子が挙げられるが、これらに限定されない。「Fab」によって、軽鎖と重鎖の一部とから構成される免疫グロブリンの一価の抗原結合断片を意図する。F(ab’)によって、両軽鎖と両重鎖の一部とを含む免疫グロブリンの二価の抗原結合断片を意図する。「単鎖Fv」抗体断片または「sFv」抗体断片によって、VドメインおよびVドメインが一本鎖ポリペプチドに存在する、抗体のこれらのドメインを含む断片を意図する。例えば、米国特許第4,946,778号、第5,260,203号、第5,455,030号、および第5,856,456号を参照。これらは、本明細書中に参考として援用される。通常、Fvポリペプチドは、さらに、VドメインとVドメインとの間にポリペプチドリンカーを含み、このことにより、sFvが抗原結合に対する所望の構造を形成することを可能にする。sFvの概説に関しては、Pluckthun(1994)(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、Vol. 113,ed.Rosenburg and Moore(Springer−Verlag, New York),269〜315頁)を参照。
【0029】
抗体または抗体の断片は、例えば、McCafferty et al.(1990)Nature 348:552〜554(1990)および米国特許第5,514,548号に記述されている技法を使用して生成された抗体ファージライブラリーから単離され得る。Clackson et al.(1991)Nature 352:624〜628およびMarks et al.(1991)J. Mol. Biol.222:581〜597には、ファージライブラリーを使用したマウス抗体およびヒト抗体それぞれの単離が記述されている。その後の刊行物には、鎖シャッフリング法による高親和性(nMの範囲)ヒト抗体の産生(Marks et al.(1992)Bio/Technology 10:779〜783)、ならびに非常に大きいファージライブラリーを構築するための戦略として、コンビナトリアル感染およびインビボでの組換え(Waterhouse et al.(1993)Nucleic. Acids Res. 21:2265〜2266)が記述されている。このように、これらの技法は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技法に対する実行可能な別の手段である。
【0030】
種々の技法が、抗体断片の産生のために開発されてきた。伝統的に、こうした断片は、インタクトな抗体のタンパク質消化から誘導された(例えば、Morimoto et al.(1992)Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107〜117(1992)およびBrennan et al.(1985)Science 229:81を参照)。しかしながら、これらの断片は、今や組換え宿主細胞によって直接生成され得る。例えば、抗体断片は、上述した抗体ファージライブラリーから単離され得る。あるいは、Fab’−SH断片は、大腸菌(E.coli)から直接回収され、化学的に結合されて、F(ab’)断片を形成し得る(Carter et al.(1992)Bio/Technology 10:163〜167)。別のアプローチに従って、F(ab’)断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離され得る。抗体断片を産生するための他の技法は、熟練した実施者にとって明らかである。
【0031】
好ましくは、本発明の抗体は、事実上モノクローナルである。上述のように、「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団(すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在し得る自然に発生する可能性のある変異を除いて同一である)から採取される抗体を意図する。この用語は、抗体の種または供給源に関して限定されない。この用語は、免疫グロブリン全体、ならびに断片(例えば、Fab、F(ab’)、Fvおよび抗体の抗原結合機能を保持する他の断片)を包含する。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、本明細書の以下で定義するとおりの単一の抗原性部位(すなわち、MCM6タンパク質またはMCM7タンパク質内の特定のエピトープ)に対して指向される。さらに、通常は、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定要因に対して向けられる。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されないものとする。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler et al.(1975)Nature 256:495によって記述されたハイブリドーマ法によって生成されることが可能であり、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)によって生成され得る。「モノクローナル抗体」は、また、例えば、Clackson et al.(1991)Nature 352:624〜628;Marks et al.(1991)J. Mol. Biol. 222:581〜597;および米国特許第5,514,548号に記述されている技法を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0032】
モノクローナル抗体は、Kohler et al.(1975)Nature 256:495〜496の方法、またはその改変法を使用して調製されることが可能である。通常、マウスが抗原を含む溶液によって免疫される。免疫は、生理食塩水に、好ましくはフロイント完全アジュバント等のアジュバントに抗原を含む溶液を混合または乳化させ、その混合液または乳濁液を非経口的に注入することによって実行され得る。当該技術分野で公知のいかなる免疫方法も、本発明のモノクローナル抗体を得るために使用され得る。動物を免疫した後、脾臓(および必要に応じて、いくつかの大きなリンパ節)を摘出し、解離して単一の細胞にする。脾臓細胞は、目的の抗原を被覆したプレートまたはウェルに細胞懸濁液を塗布することによってスクリーニングされ得る。抗原に対して特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB細胞(すなわち抗体産生細胞)は、プレートに結合し、洗い流されない。結果として生じるB細胞、または解離したすべての脾臓細胞は、次いで、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを形成するために、骨髄腫細胞と融合するよう誘導され、選択培地で培養される。結果として生じる細胞は、段階希釈によってプレーティングされ、目的の抗原に特異的に結合する(かつ無関連の抗原には結合しない)抗体の産生に関してアッセイされる。選択されたモノクローナル抗体(mAb)を分泌するハイブリドーマは、次いで、インビトロで(例えば、組織培養瓶または中空糸型リアクター内で)、またはインビボでの(マウス内の腹水として)のいずれかで培養される。モノクローナル抗体は、また、反復免疫多重部位技術(RIMMS)を使用して産生され得る。例えば、Kilpatrick et al.(1997)Hybridoma 16(4):381〜389;Wring et al.(1999)J. Pharm. Biomed. Anal. 19(5):695〜707;およびBynum et al.(1999)Hybridoma 18(5):407〜411を参照。これらすべては、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0033】
ハイブリドーマの使用の別の方法として、米国特許第5,545,403号;同第5,545,405号;および同第5,998,144号(これらは、参照することによって本明細書に援用される)に開示されるように、CHO細胞株等の細胞株で産生され得る。手短に言えば、細胞株は、軽鎖および重鎖をそれぞれ発現することができるベクターをトランスフェクトされる。2つのタンパク質を別々のベクター上にトランスフェクトすることによって、キメラ抗体が産生され得る。別の利点は、抗体の正確な糖鎖付加である。モノクローナル抗体は、また、それによってバイオマーカータンパク質を結合する免疫グロブリンライブラリーのメンバーを単離するために、バイオマーカータンパク質を用いて組換え組み合わせ免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングすることによって同定および単離されることが可能である。ファージディスプレイライブラリーを生成しスクリーニングするためのキットは、市販されている(例えば、PharmaciaのRecombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01;およびStratageneのSurfZAP θ Phage Display Kit、カタログ番号240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリーの生成およびスクリーニングで使用するために特に受け入れられる方法と試薬の例は、例えば、以下で見られ得る:米国特許第5,223,409号;PCT公報 国際公開第92/18619号;国際公開第91/17271号;国際公開第92/20791号;国際公開第92/15679号;国際公開第93/01288号;国際公開第92/01047号;同第92/09690号;および同第90/02809号;Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370〜1372;Hay et al.(1992)Hum. Antibod. Hybridomas 3:81〜85;Huse et al.(1989)Science 246:1275〜1281;Griffiths et al.(1993)EMBO J. 12:725〜734。
【0034】
本発明の一部の態様では、抗体は、組織学的試料よりはむしろ細胞学的な所望の染色に基づいて選択され得る。すなわち、特定の実施形態では、抗体は、最終試料の型(例えば、細胞学的調製物)を考慮し、そして結合特異性に関して選択される。MCM6またはMCM7等の目的の特異的なバイオマーカーに対する抗体は、多段階スクリーニングのプロセスによって選択および精製される。抗体選択のためのそのような方法は、係属中の米国特許出願第11/087,227号、表題「Methods and Compositions for the Detection of Cervical Disease」、出願日2005年3月23日(その全体が本明細書中に参考として援用される)に記述されている。
【0035】
本発明のモノクローナル抗体の結合特性を有する抗体もまた提供される。抗体に関連して使用されるとき、「結合特性」または「結合特異性」とは、比較抗体と同一または同様の抗原エピトープを抗体が認識することを意味する。そのような抗体の例としては、例えば、競合結合アッセイで本発明のモノクローナル抗体と競合する抗体が挙げられる。当業者は、抗体が、標準的な方法を使用して別の抗体に競合的に干渉するかどうかを決定することができ得る。
【0036】
「エピトープ」によって、それに対して抗体が産生され、抗体が結合する、抗原分子の一部分を意図する。「MCM6エピトープ」は、MCM6モノクローナル抗体が結合する、MCM6タンパク質の一部分を含む。「MCM7エピトープ」は、MCM7モノクローナル抗体が結合する、MCM7タンパク質の一部分を含む。エピトープは、直鎖状アミノ酸残基(すなわち、エピトープ内の残基が直鎖状の様式で次々に連続して配置される)、非直鎖状アミノ酸残基(本明細書では「非直鎖状エピトープ」と呼ばれる;これらのエピトープは、連続して配置されない)、または直鎖状と非直鎖状の両アミノ酸残基を含み得る。一般的に、エピトープは、短いアミノ酸配列(例えば約5アミノ酸長)である。エピトープを同定するための体系的な技法は、当該技術分野では周知であり、例えば、米国特許第4,708,871号および以下に示す例に記述されている。手短に言えば、1つの方法では、抗原由来の一組の重なり合ったオリゴペプチドが合成され、各ピンに独特のオリゴペプチドで、ピンの固相アレイに結合され得る。ピンのアレイは、96穴マイクロタイタープレートを含み得、96オリゴペプチドのすべてを(例えば、バイオマーカーに特異的なモノクローナル抗体に対する結合に関して)同時にアッセイすることが可能である。あるいは、ファージディスプレイペプチドライブラリーキット(ニューイングランドバイオラブス(New England BioLabs))が、現在、エピトープマッピング用に市販されている。これらの方法を用いて、所定の抗体が結合するエピトープを同定するために、連続したアミノ酸の可能なすべてのサブセットに対する結合親和性が、決定され得る。抗体を採取する動物を免疫するためにエピトープの長さのペプチド配列が使用される場合、エピトープは、また、推論によって同定され得る。
【0037】
本発明はまた、MCM6モノクローナル抗体またはMCM7モノクローナル抗体を結合するためのエピトープを含む単離されたポリペプチドを包含する。これらのポリペプチドは、モノクローナル抗体に結合する抗原(すなわち、MCM6またはMCM7)の一部に対応する。そのようなポリペプチドは、MCM6またはMCM7に選択的に結合する抗体を産生するための方法における有用性を見出す。抗体の産生で使用されるポリペプチドの能力は、本明細書では「抗原活性」と呼ばれる。例えば、配列番号5に示すアミノ酸配列(配列番号3に示すMCM6アミノ酸配列の残基760〜772に対応する)は、MCM6モノクローナル抗体、より詳細にはモノクローナル抗体9D4.3によって認識されるエピトープを含む。配列番号6に示すアミノ酸配列(配列番号1に示すMCM7アミノ酸配列の残基127〜138に対応する)は、MCM7モノクローナル抗体、より詳細にはモノクローナル抗体2E6.2によって認識されるエピトープを含む。元々のポリペプチドの抗原活性を保持する、配列番号5および配列番号6に示すMCM6およびMCM7のエピトープ配列の変異体および断片も提供される。本発明は、さらに、MCM6またはMCM7のエピトープ、ならびにその変異体および断片を含むポリペプチドをコードする単離された核酸分子を含む。
【0038】
MCM6またはMCM7のエピトープを含む本発明のポリペプチドは、本明細書で上述したように、MCM6またはMCM7に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するための方法で使用され得る。そのようなポリペプチドは、また、ポリクローナルMCM6抗体またはポリクローナルMCM7抗体の産生で使用され得る。例えば、ポリクローナル抗体は、MCM6またはMCM7のエピトープ(すなわち免疫原)を含むポリペプチドを用いて適切な被験体(例えば、ウサギ、ヤギ、マウス、または他の哺乳類)を免疫することによって調製され得る。免疫された被験体の抗体力価は、固定化されたバイオマーカータンパク質を使用する酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いる等の標準的技法によって長期にわたりモニターされることが可能である。免疫後の適切な時期に、例えば、抗体力価が最も高いときに、抗体産生細胞を被験体から採取し、KohlerおよびMilstein(1975)(Nature 256:495〜497)によって最初に記述されたハイブリドーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor et al.(1983)Immunol. Today 4:72)、EBVハイブリドーマ技法(Cole et al.(1985)in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,ed.Reisfeld and Sell(Alan R. Liss, Inc., New York, NY),77〜96頁)、またはトリオーマ技法等の標準的技法によってモノクローナル抗体を調製するために使用することが可能である。ハイブリドーマを生成する技術は周知である(一般に、Coligan et al.,eds.(1994)Current Protocols in Immunology (John Wiley & Sons, Inc., New York, NY);Galfre et al.(1977)Nature 266:550〜52;Kenneth(1980)in Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses (Plenum Publishing Corp., NY; and Lerner(1981)Yale J. Biol. Med, 54:387〜402を参照)。
【0039】
本明細書で記述されるMCM6もしくはMCM7のエピトープを含むモノクローナル抗体またはポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、また、本発明によって包含される。変異体は、目的の抗体をコードするクローン化DNA配列における変異によって調製され得る。変異誘発およびヌクレオチド配列変化のための方法は、当該技術分野では周知である。例えば、Walker and Gaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology (MacMillan Publishing Company, New York);Kunkel(1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488〜492;Kunkel et al.(1987)Methods Enzymol. 154:367〜382;Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor, New York);米国特許第4,873,192号、およびそれに記載される参考文献を参照。これらは、本明細書中に参考として援用される。目的のポリペプチドの生物活性に影響を与えない適切なアミノ酸置換についてのガイダンスは、Dayhoff et al.(1978)(Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.)のモデルに見ることができ、本明細書中に参考として援用される。1つのアミノ酸を同様の特性を有する別のアミノ酸と交換する等の保存的置換が好適であり得る。保存的置換の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔Gln、およびPhe⇔Trp⇔Tyr。
【0040】
目的のポリペプチドの変異体を構築する際に、変異体が所望の活性(すなわち、バイオマーカーへの同様の結合親和性)を持ち続けるように、改変はなされる。言うまでもなく、変異体ポリペプチドをコードするDNAでなされたいかなる変異もその配列を読み枠から外してはならず、好ましくは、二次mRNA構造を生成することができる相補領域を作成しない。欧州特許出願公開第75,444号を参照。
【0041】
好ましくは、参照ポリペプチドの変異体は、参照抗体分子のアミノ酸配列に対して、または参照抗体分子のより短い部分に対して、少なくとも70%もしくは75%の配列同一性を、好ましくは少なくとも80%もしくは85%の配列同一性を、より好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、もしくは95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。より好ましくは、それらの分子は、少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を共有する。本発明の目的で、パーセント配列同一性は、12のギャップオープンペナルティーおよび2のギャップエクステンションペナルティー、62のBLOSUMマトリックスによるアフィンギャップ検索を用いるSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムを使用して決定される。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、SmithおよびWaterman(1981)Adv. Appl. Math. 2:482〜489に教示されている。変異体は、例えば、参照抗体とわずか1〜15アミノ酸残基、わずか1〜10アミノ酸残基、例えば6〜10、わずか5、わずか4、3、2、もしくは1つのアミノ酸残基が異なる可能性がある。
【0042】
2つのアミノ酸配列の最適な整列に関して、変異体アミノ酸配列の隣接セグメントは、参照アミノ酸配列に対して追加のアミノ酸残基または欠失アミノ酸残基を有する可能性がある。参照アミノ酸配列との比較のために使用される隣接セグメントは、少なくとも20の隣接アミノ酸残基を含み、そして30、40、50、もしくはそれより多くのアミノ酸残基であり得る。保存的残基置換またはギャップに関連する配列同一性の補正は、なされることが可能である(Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムを参照)。
【0043】
本発明のMCM6およびMCM7のモノクローナル抗体は、試料中のバイオマーカータンパク質の検出を促進するために、以下に記述する検出可能な物質によって標識され得る。そのような抗体は、本発明の方法の実行における有用性を見出す。本発明の抗体および抗体断片は、抗体結合の検出を促進するために、検出可能な物質にカップリングされ得る。本明細書で使用されるとき、用語「標識」は、「標識された」抗体を生成するために、抗体に直接的にまたは間接的に結合される検出可能な化合物または組成物を指す。標識は、それ自体(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)で検出可能であり得るか、または酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物または組成物の化学的変化を触媒し得る。抗体を標識する目的のための検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質が挙げられる。適切な酵素の例としては、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる。適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリトリンが挙げられる。発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ、生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられる。適切な放射性物質の例としては、125I、131I、35S,またはHが挙げられる。
【0044】
本発明の少なくとも1つのMCM6または1つのMCM7のモノクローナル抗体を含むキットがさらに提供される。「キット」によって、MCM6またはMCM7の発現を特異的に検出するための少なくとも1つの試薬(すなわち、抗体)を含む任意の製造物(例えば、パッケージまたは容器)が意図される。キットは、本発明の方法を実行するためのユニットとして、販売促進、配布、または販売され得る。さらに、キットは、キットおよびその使用方法を記述する添付文書を含み得る。
【0045】
本発明のキットは,通常、MCM6またはMCM7に対する少なくとも1つのモノクローナル抗体、抗体結合の検出のための化学物質、対比染料、および必要に応じて、陽性染色細胞の同定を促進するための青味剤を含む。抗原−抗体結合を検出するいかなる化学物質でも、本発明のキットで使用され得る。一部の実施形態では、検出化学物質は、二次抗体に結合された標識ポリマーを含む。例えば、抗原−抗体結合部位で色素原の沈着を触媒する酵素に結合される二次抗体が、提供され得る。抗体結合の検出で使用するためのそのような酵素および技法は、当該技術分野では周知である。一実施形態では、キットは、HRP標識ポリマーに結合された二次抗体を含む。結合した酵素に適合する色素原(例えば、HRP標識二次抗体の場合は、DAB)、および非特異的染色をブロックするための過酸化水素等の溶液が、さらに提供され得る。別の実施形態では、バイオマーカータンパク質に結合する抗体は、モノクローナル抗体に結合するマウスプローブ試薬の使用、それに続くマウスプローブ試薬に結合するHRPと結合させたデキストランポリマーの添加によって検出される。そのような検出試薬は、例えば、バイオケアメディカル(Biocare Medical)から市販されている。
【0046】
本発明のキットは、さらに、ペルオキシダーゼブロッキング試薬(例えば、過酸化水素)、タンパク質ブロッキング試薬(例えば、精製カゼイン)、および対比染料(例えば、ヘマトキシリン)を含み得る。青味剤(例えば、Tween 20およびアジ化ナトリウムを用いる水酸化アンモニウムまたはTBS、pH7.4)は、さらに、陽性染色細胞の検出を促進するためのキットで提供され得る。キットは、また、品質管理目的のために陽性および陰性のコントロール試料を含み得る。
【0047】
別の実施形態では、本発明のキットは、少なくとも2つのモノクローナル抗体を含む。本発明のいくつかの態様では、キットは、MCM6およびMCM7抗体、より詳細には、MCM6モノクローナル抗体9D4.3およびMCM7抗体2E6.2を含む。複数の抗体がキット内に存在するとき、各抗体は、個々の試薬として、または、すべての目的の抗体を含む抗体カクテルとして提供され得る。さらに、任意のまたはすべてのキット試薬は、シールされた容器等の外部環境から試薬を保護する容器内に提供され得る。本発明のキットは、高悪性度子宮頚部疾患の診断において有用であり、さらにパップ染色のための試薬(例えば、EA50およびオレンジG)を含み得る。
【0048】
本発明の組成物は、2005年3月23日に出願した係属中の米国出願第11/087,227号、表題「Methods and Compositions for the Detection of Cervical Disease」(その全体が本明細書中に参考として援用される)に開示される方法等、患者における高悪性度子宮頚部疾患の診断のための方法における有用性を見出す。「高悪性度子宮頚部疾患を診断する」は、例えば、子宮頚部疾患を診断するかもしくは子宮頚部疾患の存在を検出し、この疾患の進行をモニターし、そして高悪性度子宮頚部疾患を示す細胞または試料を同定するもしくは検出することを含むことを意図する。用語「高悪性度子宮頚部疾患を診断する、検出する、および同定する」は、本明細書では交換可能に使われる。「高悪性度子宮頚部疾患」によって、コルポスコピーによって前癌病態、悪性病態、中程度から重度の異形成、および子宮頚癌と分類される状態を意図する。根本的な高悪性度子宮頚部疾患は、CINII、CINIII、HSIL、上皮内癌、腺癌、および癌(FIGO病期I〜IV)の組織学的同定を含む。
【0049】
本発明の方法は、高悪性度子宮頚部疾患において選択的に過剰発現される少なくとも1つの核バイオマーカーの過剰発現を検出することを含む。「核バイオマーカー」によって、細胞の核内で主に発現されるタンパク質の任意の遺伝子を意図する。核バイオマーカーは、細胞の他の部分ではより少ない程度で発現され得る。「高悪性度子宮頚部疾患において選択的に過剰発現される」によって、目的の核バイオマーカーは、高悪性度子宮頚部疾患において過剰発現されるが、何ら異形成の存在しない、LSIL、CINI、HPV感染試料として分類される状態、未熟化生細胞、および臨床疾患であると思われない他の状態では過剰発現されないことを意図する。従って、本発明の核バイオマーカーの検出は、良性増殖、初期HPV感染、または軽度の異形成を示す試料から、根本的な高悪性度子宮頚部疾患を示す試料を区別することを可能にする。特定の目的の核バイオマーカーとしては、MCMタンパク質、詳細にはMCM6およびMCM7が挙げられる。
【0050】
本発明の特定の態様では、方法は、患者から子宮頚部の試料を採取すること、その試料を本発明の少なくとも1つのMCM6またはMCM7のモノクローナル抗体と接触させること、およびMCMタンパク質への抗体の結合を検出することを含む。別の実施形態では、試料を、少なくとも2つのモノクローナル抗体(MCM6に特異的に結合する第1の抗体(特にモノクローナル抗体9D4.3)、MCM7に特異的に結合する第2の抗体(特にモノクローナル抗体2E6.2))と接触させる。抗体結合を検出するための技法は、当該技術分野では周知である。目的のバイオマーカーへの抗体結合は、抗体結合のレベルに対応し、従ってバイオマーカータンパク質発現のレベルに対応する検出可能なシグナルを生成する化学試薬の使用によって検出され得る。抗体−抗原結合を検出するための任意の方法が本発明の方法を実行するために使用され得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、「子宮頚部試料」は、バイオマーカーの発現を検出できる、子宮頚部からの細胞、組織、または体液のあらゆるサンプリングを指す。そのような身体試料の例としては、婦人科学的液体、バイオプシー、およびスメアが挙げられるが、これらに限定されない。子宮頚部試料は、例えば、領域をかきとるかもしくは綿球で採取すること、または針を使用して体液を吸引することを含む様々な技法によって患者から採取され得る。子宮頚部試料を収集するための方法は、当該技術分野で周知である。特定の実施形態では、子宮頚部試料は、子宮頚部細胞、詳細には、液体ベースの調製物中の子宮頚部細胞を含む。一実施形態では、子宮頚部試料は、例えば、SurePath(登録商標)(TriPath Imaging,Inc.)またはThinPrep(登録商標)調製物(CYTYC,Inc.)等の液体ベースの細胞診標本調製のガイドラインに従って収集される。子宮頚部試料は、拡大下で検査するためにスライドガラスに移され得る。固定液および染色液は、標本を保存するため、および検査を容易にするために、スライドガラスの上の細胞に適用され得る。一実施形態では、子宮頚部試料は、米国特許第5,346,831号(本明細書中に参考として援用される)に記述されるように単層試料を提供するために収集および処理される。
【0052】
当業者は、本発明の方法における任意のまたはすべてのステップが手動または自動化方法で技術者によって実行され得ることを認識する。従って、子宮頚部試料の調製、抗体、および抗体結合の検出のステップは、自動化され得る。本発明の方法は、また、高悪性度子宮頚部疾患のより正確な診断を可能にするために、従来のパップ染色技法と組み合わせることも可能である。
【0053】
以下の実施例は、制限の目的ではなく例証の目的で提示される。
【実施例】
【0054】
実験
実施例1:MCM7に対するマウスモノクローナル抗体の生成
MCM7に特異的なマウスモノクローナル抗体を生成した。抗原(免疫原性ポリペプチド)は、MCM7タンパク質の組換えヘキサヒスチジンタグ付きN末端断片であった。Tni細胞中でバキュロウイルス発現系を用いて、抗原を発現させた。具体的には、ヘキサヒスチジンタグ付きMCM7 N末端断片のコード配列(配列番号7)を、Tni細胞での発現のためのpFastBac1プラスミド(インビトロゲン(Invitrogen))にクローン化した。バキュロウイルス発現系を用いて組換えタンパク質を生成するための方法は、当該技術分野では周知である。タグ付きMCM7断片を、Ni+2イオン(Qiagen製Ni−NTA)を荷電したキレート化アガロースを用いて精製して、免疫原として使用した。免疫原性MCM7 N末端ポリペプチド断片のアミノ酸配列を配列番号8で提供する。
【0055】
基本的に、Kohler et al.(1975)Nature 256:495〜496に記述されるように、マウスの免疫およびハイブリドーマ融合を実行した。溶液中の免疫原性タグ付きMCM7断片によってマウスを免疫した。抗体産生細胞を免疫マウスから単離して、骨髄腫細胞と融合させて、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを形成した。これらのハイブリドーマを選択培地で培養した。結果として生じた細胞を段階希釈によってプレーティングし、MCM7に特異的に結合する(かつ無関係の抗原には結合しない)抗体の産生に関してアッセイした。目的のモノクローナル抗体がMCM7タンパク質とだけに反応し、ヘキサヒチジンタグとは反応しなかったことを確認するために、選択したハイブリドーマをMCM7−FLAGタグ付きタンパク質に対してスクリーニングした。次いで、選択したモノクローナル抗体(mAB)を分泌するハイブリドーマを培養した。
【0056】
組換えプロテインAコート樹脂(STREAMLINE(登録商標)、Amersham,Inc.)を使用して「消耗した」ハイブリドーマ細胞(すなわち、生存率が0〜15%に低下するまで増殖した細胞)の培養培地の上清から、抗体を精製した。低pHを使用して抗体を溶出し、その後直ちにpHを中和した。280nMの著しい吸光度を有する画分をプールした。得られたプールをPBSに対して透析した。精製した抗体をさらに特徴決定を行なった。MCM7モノクローナル抗体2E6.2は、IgGアイソタイプであると決定された。この抗体のエピトープマッピングの詳細については、後述する。
【0057】
実施例2: MCM6に対するマウスモノクローナル抗体の生成
MCM6に特異的なマウスモノクローナル抗体を生成した。抗原(免疫原性ポリペプチド)は、組換えFLAGタグ付きMCM6タンパク質であった。HEK293細胞中でCell & Molecular Technology,Inc.製の専用発現ベクターを用いて抗原を発現させたか、またはもう1つの方法としてTni細胞中でバキュロウイルス発現系を用いて抗原を発現させた。FLAGタグ付きMCM6のコード配列を配列番号9に示す。抗FLAG M2親和性ゲルマトリックスおよび溶出のためのFLAGペプチド(Sigma Chemical Co.[ミズーリ州セントルイス])を使用してFLAGタグ付きMCM6を細胞溶解産物から精製した。FLAGタグ付きMCM6タンパク質を免疫原として使用した。免疫原性FLAGタグ付きMCM6ポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号10に提供する。
【0058】
基本的に、Kilpatrick et al.(1997)Hybridoma 16(4):381〜389に記述されるようにRIMMS技術によってマウス免疫およびリンパ球融合を実行した。免疫原性FLAGタグ付きMCM6によってマウスを免疫した。組換えMCM6タンパク質を使用して非クローン化ハイブリドーマ上清の一次スクリーニングを行った。組換えMCM6タンパク質の別々のバッチを使用して二次スクリーニングおよびクローン化ハイブリドーマ上清のスクリーニングを行った。次いで、選択されたモノクローナル抗体(mAB)を分泌するハイブリドーマを培養した。
【0059】
組換えプロテインAコート樹脂(STREAMLINE(登録商標)、Amersham,Inc.)を使用して「消耗した」ハイブリドーマ細胞(すなわち、生存率が0〜15%に低下するまで増殖した細胞)の培養培地の上清から、抗体を精製した。低pHを使用して抗体を溶出し、その後直ちにpHを中和した。280nMの著しい吸光度を有する画分をプールした。得られたプールをPBSに対して透析した。精製した抗体をさらに特徴決定を行なった。MCM6モノクローナル抗体9D4.3は、IgG2aアイソタイプであると決定された。この抗体のエピトープマッピングの詳細については、後述する。
【0060】
実施例3:ハイブリドーマ細胞からのモノクローナル抗体の単離
以下の手順を用いてハイブリドーマ細胞からモノクローナル抗体を単離する。
【0061】
培地の調製
・無菌の1,000mlの保存瓶に、ハイクローン(Hyclone)のウシ胎仔血清(FBS)100mlを加える。
・MEM非必須アミノ酸溶液10mlを加える。
・ペニシリン−ストレプトマイシン−L−グルタミン溶液10mlを加える。
・約1000mlになるに充分な量のExCell610−HSF培地を加える。
・瓶に無菌キャップを取り付け、きつく締める。静かに回転させて、混合させる。
・真空ポンプシステムに1000mlの無菌アセテート真空フィルターユニット(0.2μm)を接続する。
・培地溶液の約半分を無菌アセテート真空フィルターユニットに静かに注いで、真空の電源を入れる。
・培地の最初の半分を濾過したら、残りの培地をフィルターユニットに注ぎ、濾過を続ける。
・培地をすべて濾過したら、真空フィルターユニットから真空ホースを取り外し、真空ポンプの電源を切る。フィルター瓶からフィルターユニットの受取部分を取り外す。新しい無菌瓶のキャップを瓶に取り付ける。
・2℃〜10℃で保存する。遮光する。
【0062】
最初のハイブリドーマ細胞培養
・事前に37℃に温めたHO槽中でハイブリドーマ凍結保存培養物のバイアルを解凍する。
・凍結バイアルの外側に70%エタノールをスプレーする。
・解凍したバイアルを生物学的安全キャビネットに移す。
・凍結バイアルから細胞を取り出し、細胞を15ml遠心管に移す。
・細胞培養培地7mlを、解凍した細胞を含む15ml遠心管に滴下して加える。
・解凍した細胞および培養培地を含む15ml遠心管を5分間、200gの力で遠心分離する。
・細胞が遠心分離機内にある間に、45mlの細胞培養培地を無菌T−225フラスコに加える。
・遠心分離した後、遠心管に細胞ペレットが存在するかを目視検査する。
・細胞ペレットを取り出さないよう気をつけながら遠心管から培地を取り除く。注:細胞ペレットが崩れている場合、遠心分離ステップを繰り返す。
・ペレット状の細胞を含む15ml遠心管に5mlの細胞培養培地を加える。細胞ペレットをピペッティングして培地中に再懸濁させる。
・再懸濁させた細胞の内容物全部および培養培地を、45mlの培地を含むT−225フラスコに移す。
・T−225フラスコにキャップを取り付ける。
・顕微鏡下でインタクトな細胞が存在するかを観察する。T−225フラスコを直ちにCOインキュベーターに入れ、細胞を一晩インキュベートする。
【0063】
ハイブリドーマ細胞株の増殖
・細胞培養物の生存率、濃度、および夾雑の存在のモニタリングを継続して行う。
・最初のT−225フラスコからの細胞懸濁液をモニタリングし、濃度が約600,000細胞/ml〜800,000細胞/mlになり、培地が計200〜250mlになるように調整する。
・細胞を除去して、最小限の細胞密度の必要性を満たすために必要に応じて培地をさらに加える。細胞懸濁液を分けて、新たに1つの無菌T−225フラスコに移す。2つのT−225フラスコをCOインキュベーター内に置く。
・濃度が約600,000細胞/ml〜800,000細胞/mlになり、フラスコの培地が各々計200〜250mlになるまで、2つのT−225フラスコからの細胞をモニタリングする。
・細胞を除去して、最小限の細胞密度の必要性を満たすために必要に応じて培地をさらに加える。細胞懸濁液を分けて、新たに2つの無菌T−225フラスコに移し、計4つのT−225フラスコにする。すべてのフラスコをCOインキュベーターに戻す。
・細胞をモニタリングし、細胞濃度が約600,000細胞/ml〜800,000細胞/mlになり、T−225フラスコあたり約250mlの合計体積(すなわち、合計約1,000ml)になるまで4つのT−225フラスコ内の体積を調整する。
・細胞が0〜15%の最終生存率で増殖を消耗するまで、4つのT−225フラスコの細胞のモニタリングを継続する。ここで、細胞培養上清は、清澄化プロセスを行える状態になる。
【0064】
上清の清澄化
・卓上の遠心分離機の電源を入れる。500ml遠心管アダプターをローターバケットに設置し、蓋を閉めて、温度を4℃±4℃に設定する。
・無菌技法を用いて、今や消耗したT−225フラスコ4つのすべてからの培地を2本の500ml円錐形遠心管に注ぐ。
・2本の500ml遠心管のバランスがとれていることを確実にする。それらのバランスをとる必要がある場合、1つの遠心管から他管に上清を移す。
・消耗した上清を1350g(±40g)で15分間、2℃〜10℃で遠心分離する。
・遠心分離が完了した後、上清を1000mlの無菌保存瓶に無菌でデカンテーションしぎ、無菌キャップをしっかり締める。
・無菌で1mlを微量遠心管に移す。試料の入った微量遠心管を2℃〜10℃で(遮光して)保存する。
・清澄した上清試料は、Easy−Titer(登録商標)Assayを用いてIgG評価を行える状態である。
【0065】
緩衝液の調製
結合緩衝液:
・約600mlのDI HOをきれいなビーカーに加える。
・77.28mlのホウ酸溶液(4% W/V)を加える。室温できれいなスタラーバーで攪拌する。
・塩化ナトリウムを233.76g量り取り、攪拌しながら溶液に加える。
・溶液をDI HOで約950mlにして、攪拌を続ける。
・塩化ナトリウムが溶解して溶液が澄んできたら、水酸化ナトリウムでpHを9.0±0.2に調整する。
・溶液を取り出してきれいな1000mlメスシリンダーに入れ、1000mlになるに充分な量のDI HOを加える。
・完成した緩衝液を適切な保存瓶に移す。この緩衝液を使用するまで7日間保存しておくことが可能である。
・この全プロセスを繰り返して、さらに0.2リットル〜1.0リットルの結合緩衝液を調製する。
【0066】
溶出緩衝液
・一塩基性リン酸ナトリウムを1.725g量り取り、きれいなスタラーバー付きのきれいな250mlビーカーに入れる。
・クエン酸ナトリウムを3.676g量り取り、同じきれいな250mlビーカーに入れる。
・約175mlのDI HOを加えて、溶解するまで室温で攪拌する。
・塩化ナトリウムを4.38g量り取り、攪拌を続けながら溶液に加える。
・DI HOで約225mlの溶液にして、攪拌を続ける。
・塩化ナトリウムが溶解して溶液が澄んできたら、塩酸でpHを3.5±0.2に調整する。
・溶液を取り出してきれいな250mlメスシリンダーに入れ、250mlになるに充分な量のDI HOを加える。
・真空ポンプシステムに500mlの無菌アセテート真空フィルターユニット(0.2μm)を接続して、溶液を濾過滅菌する。
・フィルターを取り外して、容器を無菌キャップで閉じる。
【0067】
抗体吸着
・清澄にした上清(約1L)を、きれいなスタラーバー付きのきれいな4000mlプラスチック製ビーカーに注ぐ。
・ほぼ同量(約1L)の結合緩衝液を、清澄にした上清を含んでいるきれいな4000mlプラスチック製ビーカーに加える。きれいなスタラーバーを加える。
・ビーカーをきれいなプラスチック製ラップで覆い、「抗体結合」のラベルを付ける。
・必要となるSTREAMLINE(登録商標)プロテインAの概算量を表1のデータを用いて算出する。
【0068】
【表1】

・きれいなディスポーザブルカラムと止め栓アセンブリーをリングスタンドとクランプに取り付ける。止め栓を閉じる。
・瓶を数回反転させることにより適当量のSTREAMLINEプロテインAビーズを混合させる。必要体積を取り出して、ディスポーザブルカラムに入れる。
・STREAMLINEプロテインAビーズを10mlのDI HOで洗浄する。止め栓を開いて、DI HOを排出させる。止め栓を閉じる。さらに10mlのDI HOを用いて繰り返す。
・STREAMLINEプロテインAビーズを10mlの結合緩衝液で洗浄する。止め栓を開いて、結合緩衝液を排出させる。止め栓を閉じる。さらに10mlの結合緩衝液で繰り返す。
・STREAMLINEプロテインAビーズを約10mlの清澄にした上清および結合緩衝液の溶液(4000mlビーカーから)中で再懸濁させ、清澄にした上清および結合緩衝液の溶液を含んでいる4000mlビーカーにビーズを移す。残っているビーズをすべて移すために、必要に応じて繰り返す。完了したら、カラムおよび止め栓を廃棄する。
・2℃〜10℃で約18時間、混合物を勢いよく混合させる。
・混合が完了したら、攪拌プレートの電源を切って、緩衝化された上清およびビーズ懸濁液を有する「抗体結合」ビーカーを取り出して、実験台エリアに戻す。STREAMLINEプロテインAビーズをビーカーの底に沈澱させる(約5分間)。
・きれいなディスポーザブルカラムおよび止め栓アセンブリーをリングスタンドおよびクランプに取り付ける。止め栓を閉じる。
・きれいな250ml瓶または適切な容器に「結合後のカラム洗浄」とラベルを付ける。
・きれいなプラスチック製ビーカーに「結合後の上清」とラベルを付ける。
・ビーズを4000mlビーカーの底に残しながら、4000mlビーカーから上清をラベルが付いたきれいな2リットルのプラスチック製ビーカーにデカンティングする。「結合後の上清」溶液を含んでいる2000mlビーカーをきれいなラップで覆い、2℃〜10℃で保存する。
・デカンティングした4000ml「抗体結合」ビーカーに、約15mlの結合緩衝液を加える。STREAMLINEプロテインAビーズを再懸濁させ、これらをカラムに移す。止め栓を開いて、結合緩衝液を「結合後のカラム洗浄」容器に排出させる。排出が完了したら、止め栓を閉める。
・前述のステップのように、さらに結合緩衝液を加えて、混合させ、カラムに移すことで、「抗体結合」ビーカー中の残っているSTREAMLINEプロテインAビーズをすべて移す。排出が完了したら、止め栓を閉める。
・カラム中のSTREAMLINEプロテインAビーズを洗浄するために必要な結合緩衝液の概算量を表2のデータを用いて算出する。
【0069】
【表2】

・カラム内のSTREAMLINEプロテインAビーズを、適切な体積の結合緩衝液で、適切な回数洗浄し、「結合後のカラム洗浄液」の容器に溶出液(efluent)を続けて収集する。
・完了したら、止め栓を閉じる。「結合後のカラム洗浄液」容器を2℃〜10℃で保存する。
・カラム内のSTREAMLINEプロテインAビーズを溶出させるために必要な溶出緩衝液および中和緩衝液の合計体積を表3から決定する。
【0070】
【表3】

・9本の無菌の円錐形遠心管に「溶出抗体」、画分番号(1〜9)のラベルを付ける。
・画分ごとに必要な適切な体積(上記の表Cから決定されるとおり)の中和緩衝液を9本各々の「溶出抗体」画分管に入れ、カラムの止め栓の放出口下にしっかりと設置する。
・画分ごとに必要とされる適切な体積(上記の表3から決定されるとおり)の溶出緩衝液を用いて画分ごとにカラム画分内にSTREAMLINEプロテインAビーズを溶出させ、その間に中和緩衝液を含む「溶出抗体」の各管に溶出液を収集する。
・溶出が完了したら、「溶出抗体」の各画分の管を何回か静かに回旋させて混合させる。画分番号3から約50μlを取り出して、pH試験紙片の上に置いて、溶出液がおよそ6.5〜8.5の間のpHに中和されていることを確認する。必要に応じて、pHを範囲内にするために必要なさらなる中和緩衝液または溶出緩衝液を加える。
・pH評価が完了したら、各画分からの試料の吸光度スキャンを280nm〜400nmで行って、透析プロセスに進む前に溶出液中のIgGの概算濃度を決定する。
【0071】
A280〜A400値が0.200以上である場合、溶出液プールの一部として画分を受け入れる。
【0072】
A280〜A400値が0.200未満である場合、溶出液プールの一部として画分を拒絶する。
・無菌の円錐形遠心管に「溶出抗体」、「溶出液プール」のラベルを付け、プールの一部として受け入れられたすべての画分を合わせる。
・溶出液プールからの試料の吸光度スキャンを行って、透析プロセスに進む前に溶出液中のIgGの概算濃度を決定する。
・溶出液プールの体積を推定して、IgGの概算合計mgを算出する。
・溶出液プールの体積: (ml)× IgG(mg/ml)= 合計IgG(mg)
抗体透析
・「溶出抗体」管を2℃〜10℃で取り出す。
・溶出液の概算体積と表4のデータを使用して、抗体溶出液を透析するために必要な透析チューブの概算の長さを算出する。
【0073】
【表4】

・必要な適切な長さの透析チューブをカットする(Spectra/Por(登録商標)2 再生セルロース膜、12,000〜14,000ダルトン分子量カットオフ(MWCO)、直径16mm、Spectrum Laboratories Inc.,カタログ番号132678)。
・1000mlのDI HO中で透析膜チューブを30分以内で水和させる。
・抗体溶出液を透析するために必要な透析緩衝液の概算体積を表5のデータを使用して算出する。
【0074】
【表5】

・適切量の透析緩衝液を適切な大きさのプラスチック製ビーカーに入れる。ビーカーに「透析抗体」のラベルを付ける。きれいなスタラーバーを加えて、冷蔵庫内または2〜10℃の冷温室内の攪拌プレートの上にビーカーを置く。
・透析チューブをDI HOで完全に洗い流す。透析チューブの一端から約7cmのところで結び目を2つ作り、しっかりと結ぶ。
・透析チューブに約5mlのDI HOを加える。
・透析チューブに「溶出抗体」収集チューブからの溶出抗体を満たす。
・透析チューブの他端(開放端)を端から約7cmのところで結び目を2つ作り、しっかりと結ぶ。ヘッドスペースが表4から算出されたものとほぼ同じであることを確実にする。
・充填して閉じた透析チューブを、適切な体積(表5から)の1×PBSを含む透析リザーバー内に設置する。
・ビーカーをきれいなプラスチック製ラップで覆う。透析試料が自由に回転するが透析物の渦に引き込まれないように、攪拌プレート上の速度を調節する。透析は、2℃〜10℃で、24時間内に、緩衝液を計3回交換して行うべきである。
【0075】
抗体濾過
・無菌収集チューブに「透析した抗体」のラベルを付ける。
・透析ビーカーから透析した試料チューブを取り外す。透析チューブの一端を切って開放端にして、透析した試料を「透析した抗体」の遠心管に移す。
・別の無菌収集チューブに「透析した抗体」のラベルを付ける。
・最終の透析した体積を保持する適切な容量の無菌ルアーロック(Luer Lok)シリンジを選択する。
・Acrodisc(登録商標)シリンジフィルターをシリンジの開口部に取り付ける(0.2μm HT Tuffryn(登録商標)膜、低タンパク質結合、Gelman Laboratories、カタログ番号4192)。シリンジからプランジャーを取り外し、シリンジを真っすぐ立てながら、「透析した抗体」の管から透析したモノクローナル抗体をシリンジに移す。プランジャーを交換する。
・開けた、無菌で「精製抗体」のラベルが付いた収集チューブの口部の上にAcrodisc(登録商標)シリンジフィルターを保持し、シリンジのプランジャーを押し下げて精製抗体を濾過して「精製抗体」の管に入れる。
・濾過が完了したら、「精製抗体」の管にキャップを取り付け、2℃〜10℃で保存する。
・A280手順を用いて精製したモノクローナル抗体の濃度を決定する。
【0076】
実施例4:エピトープマッピングのための一般法
一般的アプローチ
エピトープマッピングを行って、特定のモノクローナル抗体によって認識される抗原性タンパク質内の直鎖状アミノ酸配列(すなわちエピトープ)を同定する。エピトープマッピングのための一般的アプローチは、一般に異種発現系における全長タンパク質ならびにタンパク質の様々な断片(すなわち切断型)の発現を必要とする。次いで、これらの種々の組換えタンパク質を使用して、特異的モノクローナル抗体が標的タンパク質の1つ以上の切断型に結合できるかどうかを決定する。反復切断の使用および重なるアミノ酸領域を有する組換えタンパク質の産生を介して、研究中のモノクローナル抗体によって認識される領域を同定することが可能である。ウェスタンブロット解析またはELISAを使用して、研究中の特異的モノクローナル抗体が1つ以上の組換えタンパク質断片に結合できるかどうかを決定する。このアプローチは、エピトープを含むペプチド領域を最終的に同定することができ、場合によっては、エピトープを8〜15アミノ酸配列まで正確に精密化することができる。エピトープは、8〜15アミノ酸の連続する直鎖状配列であり得、またはペプチド鎖の異なる部分から構成されるタンパク質上の部位に結合する抗体とは不連続であり得る。不連続のエピトープは、通常、マッピングが不可能である。
【0077】
構築物の設計および作製
エピトープマッピングの第1のステップは、入れ子遺伝子の切断の設計である。しばしば、遺伝子は、さらなる解析のために4つの同等の部分に分けられる。
【0078】
遺伝子クローニング戦略
一般のクローニング戦略は、クローン化遺伝子断片のPCRに基づく生成から開始される。クローン化断片を効率的に発現させるために、特に、小さいアミノ酸領域を使用するときは、クローン化断片は、融合タンパク質(すなわち、その系で安定して発現される別の担体タンパク質に融合される)として発現される。緑色蛍光タンパク質(GFP)は、担体タンパク質として頻繁に使用される。GFPは、それに続くインビトロタンパク質発現ステップの間に切断断片を安定化させ、発現を向上させるために、融合パートナーとして含まれる。GFPは、また、抗GFP抗体を使用する融合タンパク質発現の追跡を可能にする。
【0079】
GFPタンパク質構築物を作製するためのクローニングは、メガプライミングアプローチまたはpScreen−GFPベクターへのプラスミドクローニングの使用によるいずれかを用いて実行される。通常、切断断片は、メガプライミングと呼ばれる技法を用いて、GFPおよびタンパク質発現に必要な制御配列に融合される。
【0080】
メガプライミングは、2つ以上のDNA断片を、それぞれの断片の端で相同領域をアニールし、アニールされた一本鎖DNAを、耐熱性DNAポリメラーゼを用いて伸長させることによって連結することである。このプロセスは、2つ以上の小さい断片をそれらが共有する配列によって結合し、1つの大きなDNA断片を作製する。この大きな断片は、次いで、標準PCRを用いて増幅される。
【0081】
メガプライミングが成功裏に使用できない場合、切断断片は、GFPおよびタンパク質発現制御配列を含むプラスミドにクローニングされ得る。このクローニングは、エピトープマッピングに必要なGFP/断片融合物を作製する。プロトコールの残りの部分は、次いで、以下に記述するように行うことが可能である。
【0082】
タンパク質の発現
例えば、メガプライミングによって作製された発現構築物は、次いで、迅速翻訳系(RTS)に導入される。RTSは、大腸菌(E.coli)溶解産物由来の無細胞タンパク質発現系である。この系は、DNA鋳型からのタンパク質の迅速な(3〜4時間)発現を可能にする。
【0083】
RTSが適切なレベルのタンパク質発現を生成しない場合は、切断断片は、GFPタンパク質発現プラスミドにクローニングされる。これらの融合プラスミドは、次いで、タンパク質発現のために最適化された大腸菌(E.coli)系に形質転換される。タンパク質発現は、細菌の増殖培養物中で誘導され、増殖の後細胞は溶解される。複雑な細胞溶解産物中のタンパク質は、次いで、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分離され、およびプロトコールの残りの部分は、以下と同様である。
【0084】
タンパク質検出およびエピトープマッピング
RTSによって生成されたタンパク質断片は、PAGEを用いて分離され、次いでニトロセルロース膜上に移される。膜結合タンパク質は、次いで、溶けた研究中の抗体に曝露される。抗体/タンパク質の結合は、当該技術分野で公知の比色技法を用いて同定される。
【0085】
全長タンパク質および切断タンパク質断片の一部のサブセットの抗体結合は、陽性の結果を構成する。タンパク質の特定の部分が欠如して抗体結合を除去する場合、エピトープは、この断片の上に位置する。
【0086】
マッピングされる抗体がニトロセルロース膜に結合されたタンパク質を認識しない場合は、例えば、ELISAまたは免疫沈降等の抗体/タンパク質相互作用を検出するための代替法が用いられる。抗体/タンパク質相互作用を検出するための方法は、当該技術分野で周知である。
【0087】
エピトープ位置の精密化
上述のプロトコールは、エピトープの位置をタンパク質の約4分の1まで絞り込むだけなので、エピトープの位置をさらに解明するために、エピトープを含むことが決定されたタンパク質の4分の1で、プロセスを繰り返す必要がある。非常に大きなタンパク質に関しては、エピトープを8〜15アミノ酸まで絞り込むために、このプロセスを2回または3回繰り返すことが必要になり得る。
【0088】
実施例5:MCM6モノクローナル抗体9D4.3のためのエピトープの特徴付け
MCM6モノクローナル抗体9D4.3のエピトープマッピングを、基本的に上記の実施例4に記述したように実行した。具体的には、PCRを用いて、全長MCM6タンパク質の4つのMCM6遺伝子切断物を作製し、続いてRTSによってGFP融合タンパク質として組換えMCM6タンパク質断片を生成し、最終的に、ウェスタンブロット法によって特定のMCM6断片に結合する抗体を検出した。RTSでの頑強で安定な発現を確実にするために、第2ラウンドのPCRにおいてGFPをMCM6遺伝子切断物と連結させた。
【0089】
9D4.3抗体に結合する断片を同定するために、MCM6タンパク質断片をウェスタンブロット法によって解析した。9D4.3モノクローナル抗体およびGFP抗体を用いてウェスタンブロットを直接プローブした。断片4と命名されたMCM6切断生成物を用いて陽性バンドが検出された。断片4を5つのより小さい断片に分割し、上記のプロセスを繰り返してエピトープを絞り込んだ。
【0090】
MCM6タンパク質断片の第2のセットも、ウェスタンブロット法によって解析し、9D4.3抗体に結合する断片を同定した。9D4.3モノクローナル抗体およびGFP抗体を用いてウェスタンブロットを直接プローブした。モノクローナル抗体9D4.3は、4−4と命名したMCM6の領域に結合することが示された。この断片を再び6つのより小さい断片に分割し、上記のプロセスを繰り返してエピトープを絞り込んだ。
【0091】
MCM6タンパク質断片を再び前述のとおりのウェスタンブロット法によって解析した。9D4.3モノクローナル抗体およびGFP抗体を用いてウェスタンブロットを直接プローブした。4−4−1と命名したMCM6断片を用いて陽性バンドが検出された。さらに断片を生成して、エピトープ領域を絞り込んだ。ウェスタンブロット解析は、MCM6抗体9D4.3のエピトープがアミノ酸配列IDSEEELINKKRI(配列番号5)を含むことを示した。
【0092】
結果
最初の結果は、MCM6モノクローナル抗体9D4.3のエピトープがMCM6タンパク質のC末端領域内に位置することを示した。MCM6タンパク質の連続する切断は、9D4.3によって認識されるエピトープが13アミノ酸の領域内に位置し、特に、配列番号3(IDSEEELINKKRI(配列番号5))のアミノ酸残基760〜772に対応することを示した。追加のラウンドのRTSによって、エピトープの位置をさらに精密化することが可能になり得る。
【0093】
実施例6:MCM7モノクローナル抗体2E6.2のエピトープの特徴付け
MCM7モノクローナル抗体2E6.2のエピトープマッピングを基本的に実施例5に上述したように行った。全長MCM7遺伝子配列(配列番号1)を、遺伝子断片を設計するための出発配列として用いた。
【0094】
結果
MCM7モノクローナル抗体2E6.2のエピトープを、配列番号1(PAELMRRFELYF(配列番号6))のアミノ酸残基127〜138を含むタンパク質領域内に位置すると決定した。追加のラウンドのRTSによって、エピトープの位置をさらに精密化することが可能になり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MCM7またはその変異体もしくは断片に特異的に結合することができるモノクローナル抗体であって、該モノクローナル抗体が、
(a)特許寄託番号PTA−6669としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株2E6.2によって産生されるモノクローナル抗体、
(b)ハイブリドーマ細胞株2E6.2によって産生されるモノクローナル抗体の結合特性を有するモノクローナル抗体、
(c)ハイブリドーマ細胞株2E6.2によって産生されるモノクローナル抗体に結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体、
(d)配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体、
(e)競合結合アッセイにおいて、ハイブリドーマ細胞株2E6.2によって産生されるモノクローナル抗体と競合するモノクローナル抗体、および
(f)(a)〜(e)のモノクローナル抗体の抗原結合断片であるモノクローナル抗体であって、該断片がMCM7、またはその変異体もしくは断片に特異的に結合できる能力を保持するモノクローナル抗体、
からなる群から選択される、モノクローナル抗体。
【請求項2】
特許寄託番号PTA−6669としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株2E6.2。
【請求項3】
請求項1に記載のモノクローナル抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞株。
【請求項4】
MCM6またはその変異体もしくは断片に特異的に結合することができるモノクローナル抗体であって、該モノクローナル抗体が、
(a)特許寄託番号PTA−6911としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株9D4.3によって産生されるモノクローナル抗体、
(b)ハイブリドーマ細胞株9D4.3によって産生されるモノクローナル抗体の結合特性を有するモノクローナル抗体、
(c)ハイブリドーマ細胞株9D4.3によって産生されるモノクローナル抗体に結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体、
(d)配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体、
(e)競合結合アッセイにおいて、ハイブリドーマ細胞株9D4.3によって産生されるモノクローナル抗体と競合するモノクローナル抗体、および
(f)(a)〜(e)のモノクローナル抗体の抗原結合断片であるモノクローナル抗体であって、該断片がMCM6、またはその変異体もしくは断片に特異的に結合できる能力を保持する、モノクローナル抗体、
からなる群から選択される、モノクローナル抗体。
【請求項5】
特許寄託番号PTA−6911としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株9D4.3。
【請求項6】
請求項4に記載のモノクローナル抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞株。
【請求項7】
請求項1に記載の少なくとも1つのモノクローナル抗体を含む、高悪性度子宮頚部疾患を診断するためのキット。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体が、特許寄託番号PTA−6669としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株2E6.2によって産生されるモノクローナル抗体である、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
請求項4に記載の少なくとも1つのモノクローナル抗体を含む、高悪性度子宮頚部疾患を診断するためのキット。
【請求項10】
前記モノクローナル抗体が、特許寄託番号PTA−6911としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株9D4.3によって産生されるモノクローナル抗体である、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
少なくとも2つのモノクローナル抗体を含むキットであって、第1の抗体が、特許寄託番号PTA−6669としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株2E6.2によって産生されるMCM7モノクローナル抗体であり、第2の抗体が、特許寄託番号PTA−6911としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株9D4.3によって産生されるMCM6モノクローナル抗体である、キット。
【請求項12】
各抗体が、別々の抗体試薬としてまたは抗体カクテルとして提供される、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記キットが、さらに、ペルオキシダーゼブロッキング試薬、タンパク質ブロッキング試薬、バイオマーカータンパク質に結合する抗体を検出するための化学物質、対比染料、青味剤、および使用説明書を含む、請求項7に記載のキット。
【請求項14】
パップ染色用の試薬をさらに含む、請求項7に記載のキット。
【請求項15】
患者において高悪性度子宮頚部疾患を診断するための方法であって、
(a)患者から子宮頚部試料を採取することと、
(b)該試料を、MCM7に特異的に結合する請求項1に記載の少なくとも1つのモノクローナル抗体と接触させることと、
(c)MCM7への該抗体の結合を検出することと
を含む、方法。
【請求項16】
前記モノクローナル抗体が、特許寄託番号PTA−6669としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株2E6.2によって産生されるモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
患者において高悪性度子宮頚部疾患を診断するための方法であって、
(a)患者から子宮頚部試料を採取することと、
(b)該試料をMCM6に特異的に結合する請求項4に記載の少なくとも1つのモノクローナル抗体と接触させることと、
(c)MCM6への該抗体の結合を検出することと
を含む、方法。
【請求項18】
前記モノクローナル抗体が、特許寄託番号PTA−6911としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株9D4.3によって産生されるモノクローナル抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記試料を、MCM7に特異的に結合する少なくとも1つのモノクローナル抗体と接触させることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記モノクローナル抗体が、特許寄託番号PTA−6669としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株2E6.2によって産生されるモノクローナル抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が、個別の抗体試薬としてまたは抗体カクテルとして前記子宮頚部試料と順次接触する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
MCM7モノクローナル抗体を結合するためのエピトープを含む単離されたポリプチドであって、該ポリペプチドが、
(a)配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(b)配列番号6と少なくとも90%の配列同一性を有しかつ抗原活性を有するポリペプチド
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項23】
MCM6モノクローナル抗体を結合するためのエピトープを含む単離されたポリプチドであって、該ポリペプチドが、
(a)配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(b)配列番号5と少なくとも90%の配列同一性を有しかつ抗原活性を有するポリペプチド
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項24】
MCM7抗体を生成するための方法であって、請求項22に記載のポリペプチドによって動物を免疫することを含む、方法。
【請求項25】
MCM7モノクローナル抗体を生成するための方法であって、
(a)免疫応答を誘発する条件下で請求項22に記載のポリペプチドによって動物を免疫することと、
(b)該動物から抗体産生細胞を単離することと、
(c)該抗体産生細胞を培養中の不死化細胞と融合させて、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞を形成することと、
(d)該ハイブリドーマ細胞を培養することと、
(e)培養物からモノクローナル抗体を単離することと
を含む、方法。
【請求項26】
MCM6抗体を生成するための方法であって、請求項2に記載のポリペプチドによって動物を免疫することを含む、方法。
【請求項27】
MCM6モノクローナル抗体を生成するための方法であって、
(a)免疫応答を誘発する条件下で請求項23に記載のポリペプチドによって動物を免疫することと、
(b)該動物から抗体産生細胞を単離することと、
(c)該抗体産生細胞を培養中の不死化細胞と融合させて、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞を形成することと、
(d)該ハイブリドーマ細胞を培養することと、
(e)培養物からモノクローナル抗体を単離することと
を含む、方法。

【公表番号】特表2009−520024(P2009−520024A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547211(P2008−547211)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/031136
【国際公開番号】WO2007/073411
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(507006097)トリパス イメージング, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】