説明

MEMSセンサ

【課題】熱による温度特性の変化の影響を低減したMEMSセンサを提供する。
【解決手段】センサ温度を測定するための温度センサ3が搭載された信号処理用LSI1と、前記信号処理用LSI上に搭載されたMEMSセンサチップ2と、を有し、前記MEMSセンサチップ2を前記信号処理用LSI1の発熱部上に搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの構造に係り、特に、MEMS技術を応用したMEMSセンサの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上に機械的構造物を作成できるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術は各種センサ、光応用機器に応用されている。
【0003】
そして、MEMS技術を応用して作成されたセンサ、すなわち、MEMSセンサは半導体プロセスを利用して作成したセンサであるのでそれ自身は小さく出力信号は、微小出力となることが多い。そのため、一般的には後段に信号処理用LSIを搭載する。
【0004】
一方、MEMSセンサの製造プロセスと半導体の製造プロセスとでは、深堀エッチングをはじめとした部分で親和性は無く、また犠牲層などの扱いも異なり、またMEMSセンサチップと処理回路を並べると面積的な問題も生じるため、MEMSセンサチップと信号処理用LSIは別チップとなることが多い。
【0005】
その際、例えば特許文献1に記載のように、MEMSセンサチップに信号処理用LSIを重ねるような構成とすることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−53100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように重ねられたMEMSセンサチップと信号処理用LSIのチップは、接着剤、接着シートなどの接着部材により接着される。一般的にMEMSチップ側の発熱はほとんど無く、主として信号処理用LSIのチップの発熱が主体となる。そのため、接着部材を介してMEMSチップ側へ熱が伝わる。
【0008】
また、MEMSチップと信号処理用LSIのチップとを任意の位置に接着すると信号処理用LSIの発熱部の位置によってMEMSチップ上に温度勾配が生じる可能性がある。MEMSチップ上の温度勾配は、センシングエレメント内に温度勾配を持つこととなり温度による影響で性能劣化の原因ともなりうる。
【0009】
さらに、信号処理用LSIに搭載しているセンサ自身の温度特性補正用の温度センサ部もMEMSセンサエレメント上に温度勾配がある場合、補正が困難となる。
【0010】
本発明の目的は、熱による温度特性の変化の影響を低減したMEMSセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のMEMSセンサは、センサ温度を測定するための温度センサが搭載された信号処理用LSIと、前記信号処理用LSI上に搭載されたMEMSセンサチップと、を有し、前記MEMSセンサチップを前記信号処理用LSIの発熱部上に搭載する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱による温度特性の変化の影響を低減したMEMSセンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施例におけるMEMSセンサの上面図。
【図2】第1の実施例におけるMEMSセンサの斜視図。
【図3】第1の実施例におけるMEMSセンサの上面図。
【図4】MEMSセンサの上面図の一例。
【図5】第2の実施例におけるMEMSセンサの上面図。
【図6】第3の実施例におけるMEMSセンサの上面図。
【図7】第4の実施例におけるMEMSセンサの上面図。
【図8】第5の実施例におけるMEMSセンサの上面図。
【図9】第6の実施例におけるMEMSセンサの上面図。
【図10】温度特性を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、信号処理用LSIが信号処理動作をするときに発生する熱がどの部位から主に発生するかがシミュレーション技術等で予め分かることからMEMSセンサチップをその直上に配置し、さらに位置関係の調整によりMEMSセンサエレメント全体の温度勾配が最小となるように配置することでセンサの性能を向上させている。
【0015】
(実施例1)
図1乃至図4を用いて本発明の一実施例である第1の実施例について説明する。
【0016】
図1において、1が信号処理用LSI、2がMEMSセンサチップ、3が温度測定部、10が信号処理用LSI1の発熱部である。図3(a)のように、信号処理用LSI1に発熱部10、温度測定部3が配置されている場合について説明する。本センサは、図2の(a)に示すよう、信号処理用LSI1上に前記MEMSセンサチップ2を搭載し図2(b)に示す斜視図のように接着用の部材(図示せず)により固定する。
【0017】
図4のように、信号処理用LSI1上の任意の位置にMEMSセンサチップ2を配置すると、MEMSセンサチップ2の一部が発熱部10によって熱せられ、MEMSセンサチップ2上に熱の不均一がおき、温度勾配により、センサエレメント内部で温度が不均一となる。これにより、特に差分を取る検出方法で測定精度低下が懸念される。そこで、信号処理用LSI1の発熱部10とセンサチップ2は、図1に示すよう発熱部10の直上にセンサチップ2を配置する。これにより、センサエレメント内部での温度勾配が減少することができる。
【0018】
また、信号処理用LSI1の発熱部10と温度測定部3の位置関係は図1に示すよう、発熱部10に隣接するのではなく、信号処理用LSI1の発熱部10とMEMSセンサチップ2の間の熱抵抗、また、信号処理用LSI1とセンサチップ2の持つ熱容量を考慮して、熱抵抗、熱容量と一致、もしくは、それぞれの比が一致するように配置する。
【0019】
以上のような構成によって、MEMSセンサチップ2上の温度勾配を減少させ、さらに過渡時の温度特性も補正でき、熱による温度特性の変化の影響を低減することが可能となる。
【0020】
(実施例2)
次に、他の一実施例である第2の実施例について図5を用いて説明する。図1乃至図4記載と同様の構成要素には同符号を付し説明を省略する。
【0021】
図5(a)のように、発熱部10と他の発熱部11が信号処理用LSI1上にあるとする。この際、図5(b)のよう半導体レイアウトで他の発熱部11を発熱部10の近傍にさらに他の発熱部12のように配置する。発熱部10とさらに他の発熱部12の直上に図5(c)のようにMEMSセンサチップ2を配置する。
【0022】
また、図5(a)であるが図5(d)のように発熱部10と他の発熱部11を半導体レイアウトで形状を変更したさらに他の発熱部12のようにし、信号処理用LSI1の中央部分に発熱部をまとめて配置し図5(e)のようにMEMSセンサチップ2を搭載してもよい。
【0023】
このようにしてMEMSセンサチップ上のセンサエレメントの温度勾配を減少させることで、熱による温度特性の変化の影響を低減することが可能となる。
【0024】
(実施例3)
次に、図6を用いて他の一実施例である第3の実施例について説明する。図1乃至図5記載と同様の構成要素には同符号を付し説明を省略する。
【0025】
本実施例では、信号処理用LSI1の発熱部10がMEMSセンサチップ2よりも小さい場合について説明する。
【0026】
信号処理用LSI1の発熱部10が小さいと発熱面積が小さいため、伝熱で伝わっていく熱によりMEMSセンサチップ2上のセンサエレメントに温度勾配ができてしまうことが多い。そこで、図6(a)のよう発熱部10を複数個に分割し(本実施例では一例として2つに分割した例とした。)、MEMSセンサチップ2上のセンサエレメントに温度勾配ができにくいように図6(b)のように配置した。
【0027】
このような構成により、信号処理用LSI1の発熱部10がMEMSセンサチップ2よりも小さい場合であっても、MEMSセンサチップ上のセンサエレメントの温度勾配を減少させ、熱による温度特性の変化の影響を低減することが可能となる。
【0028】
(実施例4)
次に、図7を用いて他の一実施例である第4の実施例について説明する。図1乃至図6に記載と同様の構成要素には同符号を付して説明を省略する。
【0029】
本実施例では、信号処理用LSI1の発熱部10とMEMSセンサチップ2との形状が大きく異なっている場合について説明する。
【0030】
信号処理用LSI1の発熱部10が図7(a)のような形状だったとする。MEMSセンサチップ2の形状が図7(b)のように発熱部10に比較して縦長の形状だったと仮定する。本実施例の場合では、図7(b)のようにMEMSセンサチップ2上のセンサエレメントに温度勾配が極小になるようにMEMSセンサチップ2を配置する。
【0031】
このような構成により、信号処理用LSI1の発熱部10とMEMSセンサチップ2との形状が大きく異なっている場合であっても、MEMSセンサチップ上のセンサエレメントの温度勾配を減少させ、熱による温度特性の変化の影響を低減することが可能となる。
【0032】
(実施例5)
次に、図8を用いて他の一実施例である第5の実施例について説明する。図1乃至図7に記載と同様の構成要素には同符号を付して説明を省略する。
【0033】
本実施例では、図8(a)のような、信号処理用LSI1上に発熱部10と温度測定部3が配置されているとする。発熱部10での単位時間当たりの発熱量を積分し、その積分値と発熱部の面積から算出した発熱部の中心を101とする。一方、図8(b)のようにMEMSセンサチップ2にMEMSセンサエレメント20にひとつ搭載されている例である。図8(b)にMEMSセンサチップ2上にMEMSセンサエレメント20が配置され、そのMEMSセンサエレメント20のセンサ部分の面積から算出した中心201のようになっているとする。
【0034】
この際、発熱部10の中心101とMEMSセンサエレメント20の中心201とが一致するように図8(c)のように配置する。これによって、信号処理用LSI1の発熱部10から伝熱した熱が比較的均一にMEMSセンサチップ2上のMEMSセンサエレメント20のセンサ部分に伝わることとなる。それにより、特性の安定が図れる。
【0035】
一方、信号処理用LSI1上の温度検出部3は、発熱部10の発熱が信号処理用LSI1上を伝熱した温度を測定する。MEMSセンサエレメント20のセンサ部の温度が時間特性が特性50のようになっているとすると、温度検出部3の検出温度は、半導体プロセスのレイアウトにより特性51のようになるように、熱抵抗、熱容量を考慮して配置する。もしくは、特性52のように特性50に比例するような配置とする。
【0036】
このような構成により、熱による温度特性の変化の影響を低減することが可能となる。
【0037】
(実施例6)
次に、図9を用いて他の一実施例である第6の実施例について説明する。図1乃至図8に記載と同様の構成要素には同符号を付して説明を省略する。
【0038】
本実施例では、図9(a)のような、信号処理用LSI1上に発熱部10と温度測定部3が配置されているとする。発熱部10での単位時間当たりの発熱量を積分し、その積分値と発熱部の面積から算出した発熱部の中心を101とする。一方、図9(b)のようにMEMSセンサチップ2にMEMSセンサエレメントが複数個、この実施例では3個の場合を示す。図9(b)にMEMSセンサチップ2上にMEMSセンサエレメント21、MEMSセンサエレメント22、MEMSセンサエレメント23が配置され、実施例5と同様それぞれのMEMSセンサエレメントのセンサ部分の面積から算出した中心をそれぞれ中心202、中心203、中心204となっているとする。これらセンサ部分の面積から総合的に算出した中心を201とする。
【0039】
この際、発熱部10の中心101とMEMSセンサエレメント21、MEMSセンサエレメント22、MEMSセンサエレメント23から算出した中心201とが一致するように図9(c)のように配置する。これによって、信号処理用LSI1の発熱部10から伝熱した熱が比較的均一にMEMSセンサチップ2上のMEMSセンサエレメント21、MEMSセンサエレメント22、MEMSセンサエレメント23、のセンサ部分に伝わることとなる。それにより、特性の安定が図れる。
【0040】
一方、信号処理用LSI1上の温度検出部3は、発熱部10の発熱が信号処理用LSI1上を伝熱した温度を測定する。MEMSセンサエレメント21、MEMSセンサエレメント22、MEMSセンサエレメント23のセンサ部の温度が時間特性が特性50のようになっているとすると、温度検出部3の検出温度は、半導体プロセスのレイアウトにより特性51のようになるように、熱抵抗、熱容量を考慮して配置する。もしくは、特性52のように特性50に比例するような配置とする。
【0041】
なお、各実施例において、本発明のMEMSセンサの一例として、加速度、角速度等の外的印加信号を検知、処理を行って出力するセンサがあげられるが、これらに限定されるものではない。また、加速度センサと角速度センサを同一に搭載したMEMSセンサや、あるいは、2軸加速度センサと角速度センサ、3軸加速度センサと角速度センサを同一に搭載したもの等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 信号処理用LSI
2 MEMSセンサチップ
3 温度検出部
10、11、12 発熱部
20、21、22、23 MEMSセンサエレメント
101 発熱部の中心
201、202、203、204 MEMSセンサエレメントの中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ温度を測定するための温度センサが搭載された信号処理用LSIと、
前記信号処理用LSI上に搭載されたMEMSセンサチップと、を有し、
前記MEMSセンサチップは前記信号処理用LSIの発熱部上に搭載したことを特徴とするMEMSセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のMEMSセンサにおいて、
前記MEMSセンサチップは、加速度センサであることを特徴とするMEMSセンサ。
【請求項3】
請求項1に記載のMEMSセンサにおいて、
前記MEMSセンサチップは、角速度センサであることを特徴とするMEMSセンサ。
【請求項4】
請求項1に記載のMEMSセンサにおいて、
前記MEMSセンサチップは、加速度センサと角速度センサからなることを特徴とするMEMSセンサ。
【請求項5】
請求項1に記載のMEMSセンサにおいて、
前記MEMSセンサチップは、2軸の加速度センサと角速度センサからなることを特徴とするMEMSセンサ。
【請求項6】
請求項1に記載のMEMSセンサにおいて、
前記MEMSセンサチップは、3軸の加速度センサと角速度センサからなることを特徴とするMEMSセンサ。
【請求項7】
請求項1に記載のMEMSセンサにおいて、
前記信号処理用LSIの発熱部と前記MEMSセンサのセンシング部との間の持つ熱抵抗、熱容量と同等の熱抵抗、熱容量を持つ位置に前記温度センサを配置したことを特徴とするMEMSセンサ。
【請求項8】
請求項1に記載のMEMSセンサにおいて、
前記信号処理用LSIの発熱部とMEMSセンサのセンシング部との間の持つ熱抵抗、熱容量とそれぞれ同一の比の熱抵抗、熱容量を持つ位置に前記温度センサ部を配置することを特徴MEMSセンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate