説明

MIMO検波方式

【課題】 MIMOの信号検波において,最尤検出と同程度のビット誤り率特性を維持しつつ,演算量を大幅に削減できる検波方式を提供することを目的とする.
【解決手段】メトリック生成手段に相当するメトリック生成回路31は,端子29−1から29−4を通り入力する受信信号,端子30から入力する伝送路のチャネル情報,及び信号候補生成回路44が出力する送信信号候補を基に,送信信号候補に対応するメトリックを生成する.最小メトリック検出手段に相当する最小メトリック検出器32は,このメトリックと送信信号候補を入力として,最小となるメトリックを探索し,その最小値に対応する送信信号候補のビットを求め,判定値として端子33へ出力する.送信信号候補生成手段に相当する送信信号候補生成回路44は,受信信号に雑音生成回路38が発生する生成雑音を加え,線形変換回路35によりチャネル情報から求める重み係数を用いて線形合成を行った後,量子化の一種である硬判定を行い,送信信号候補を生成する.

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,携帯電話システム等の無線通信に関するものであり,特に複数の送受信アンテナを用いて空間多重伝送を行うMIMO(Multiple Input Multiple Output)方式に関するものである.
【背景技術】
【0002】
携帯電話システム等の無線通信において,周波数帯域を広げずに伝送速度を高める技術として,複数の送受信アンテナを用いて空間多重伝送を行うMIMO伝送が知られている.
図1に,送信アンテナ数K(Kは2以上の整数)のMIMO伝送用送信機の構成を示す.まず,入力端子1から送信ビット系列がシリアル・パラレル変換器2−1へ入力され,K個のビット系列に分けられる.ビット系列は,各々対応するベースバンド変調回路3−1から3−Kへ端子7−1を通って入力され,送信信号に相当する複素シンボルが変調信号として生成される.この複素シンボルは同相成分と直交成分の2成分を持つが,一つの信号と見なす.ベースバンド変調回路3−1の出力である変調信号は,端子7−2と端子7−3を通り変調器4−1へ入力される.発振器6が出力するキャリア信号が端子7−4から入力し,変調器4−1は,このキャリア信号を用いて変調信号をRF周波数帯へ周波数変換し,端子8を通して対応する送信アンテナ5−1で送信する.他の変調信号についても同様の操作が行われる.
【0003】
図1の変調器4の構成を図2に示す.端子7−2と端子7−3からそれぞれ,変調信号である複素シンボルの同相成分と直交成分が入力され,端子7−4からキャリア信号が入力される.乗算器9−1は変調信号の同相成分にキャリア信号を乗算し,乗算器9−2は変調信号の直交成分に,移相器10の出力である位相が90度回転したキャリア信号を乗算する.これらの乗算結果は加算器11で足し合わされ,増幅器12で増幅された後,端子8から出力される.
【0004】
また,図1のベースバンド変調回路3について,MIMOシングルキャリア伝送用の構成を図3に示す.端子7−1からビット系列が複素シンボル生成回路13に入力され,ビットに応じて複素シンボルが生成される.複素シンボルの同相成分と直交成分がそれぞれ,端子7−2及び7−3から出力される.
【0005】
さらに,MIMO−OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送用のベースバンド変調回路3の構成を,図4に示す.まず,端子7−1からビット系列がシリアル・パラレル変換器2−2へ入力され,サブキャリア数N(Nは2以上の整数)のビット系列に分けられる.N個のビット系列はそれぞれ,対応する複素シンボル生成回路13−1から13−Nへ入力され,複素シンボルが生成される.IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)回路はこれらの複素シンボルに対して,各サブキャリアに応じたキャリア信号を乗算して合成し,マルチキャリア信号を生成する.ガードインターバル付加器15は,このマルチキャリア信号の最後の部分をガードインターバルとして先頭に付加してOFDM変調信号を生成し,その同相成分と直交成分をそれぞれ,端子7−2及び7−3へ出力する.
【0006】
次に,受信アンテナ数L(Lは2以上の整数)のMIMOシングルキャリア伝送用の受信機の構成を図5に示す.まず,受信アンテナ16−1から16−Lで受信した受信波はそれぞれ,対応する受信回路20−1から20−Lにおいてベースバンドへ周波数変換され,受信信号として出力される.受信回路20−1は,増幅器12,ハイブリッド17,乗算器9−1と9−2,移相器10,低域通過フィルタ18−1と18−2,及びA/D変換器19−1及び19−2から構成され,増幅器12とハイブリッド17は受信波を増幅後分岐し,移相器10は発振器6が出力するキャリア信号の位相を90度回転させ,乗算回路9−1及び9−2は増幅された受信波にキャリア信号とキャリア信号の位相を90度回転したものをそれぞれ乗算して,2つの乗算結果を出力する.これらの乗算結果は低域通過フィルタ18−1及び18−2で高周波成分が除去された後,ベースバンド信号である受信信号の同相成分と直交成分が抽出される.A/D変換器19−1及び19−2は受信信号をディジタル信号に変換して出力する.信号検出器21は,受信信号と,伝送路のチャネル情報として伝送路推定回路43が出力するインパルス応答の推定値を基に,送信信号である複素シンボルを検出し送信ビット系列の判定値を出力端子22へ出力する.伝送路推定回路43は,入力端子23から入力する既知のトレーニング信号と,受信信号を用いて,伝送路のインパルス応答を推定し,この推定値を出力する.
【0007】
また,図6にMIMO−OFDM伝送用受信機の構成を示す.まず,受信アンテナ16−1から16−Lで受信した受信波はそれぞれ,対応するOFDM受信回路26−1から26−Lにおいてベースバンドへ周波数変換された後,各サブキャリア成分に分離され,受信信号として出力される.OFDM受信回路26−1は受信回路20−1,ガードインターバル除去回路24,及びFFT(Fast Fourier Transform)演算回路25から構成され,受信回路20−1は,発振器6が出力するキャリア信号を用いて受信波をベースバンドへ周波数変換する.ガードインターバル除去回路24は,周波数変換された信号からガードインターバルに相当する部分を除去し,FFT演算回路25は,IFFTの逆操作であるFFTを行い,各サブキャリア成分へ分離し,受信信号として出力する.したがって,サブキャリア数N個の同相成分と直交成分が生成される.信号検出はサブキャリア毎に行い,第1サブキャリアに相当する受信信号は信号検出器21−1へ入力され,第Nサブキャリアに相当する受信信号は信号検出器21−Nへ入力される.信号検出器21−1から21−Nは,受信信号と,DFT(Discrete Fourier Transform)回路27が出力するチャネルの周波数応答推定値をチャネル情報として用い,送信信号である複素シンボルを検出し送信ビット系列の判定値を出力する.パラレル・シリアル変換回路28は,信号検出器21−1から21−Nが出力する送信ビット系列の判定値をパラレル・シリアル変換して出力端子22へ出力する.DFT回路27は,伝送路推定回路43が出力する伝送路のインパルス応答の推定値にDFTを行い,各サブキャリア周波数における周波数応答の推定値を出力する.
【0008】
図5及び図6の信号検出器21に適用できる各種検出方式の内,最適方式はビット誤り率を最小にできる最尤検出(非特許文献1参照)である.最尤検出に基づく信号検出器21の構成を図7に示す.まず,各受信アンテナからの受信信号が端子を介してメトリック生成回路31へ入力する.具体的には,端子29−1と29−2からは受信アンテナ16−1の受信信号の同相成分及び直交成分が,端子29−3と29−4からは受信アンテナ16−Lの受信信号の同相成分及び直交成分が,それぞれ入力する.伝送路のチャネル情報として端子30から,MIMOシングルキャリア伝送の場合には伝送路のインパルス応答の推定値が,MIMO−OFDM伝送の場合には伝送路の周波数応答の推定値が入力する.メトリック生成手段に相当するメトリック生成回路31は,受信信号,伝送路のチャネル情報,及び信号候補生成回路34が出力する送信信号候補を基に,送信信号候補に対応するメトリックを生成する.このメトリックについて以下数式を用いて,MIMOシングルキャリア伝送を例に説明する.なお,ベースバンドの信号は全て,同相成分を実部,直交成分を虚部とする複素表示で表すものとする.
【0009】

kは整数)送信アンテナと第p受信アンテナ間のインパルス応答をhpk,第k送信アンテナからの送信信号,即ち複素シンボルをsとすると,y

と表すことができる.なお,nは第p受信アンテナの受信信号に加わる雑音であり,pが

数選択性と仮定した.

となる.

トを求め,判定値として端子33へ出力する.なお,この最小メトリック検出器32は最

と第p受信アンテナ間の周波数応答の推定値に置き換えればよい.
このように最尤検出は,数式2のメトリックを送信信号候補の数だけ計算しなければならず,複素シンボルの多値数をMとするとM回計算する必要がある.したがって,MやKが大きい値のとき演算量が膨大になってしまうという問題がある.
【0010】
以上説明したように,最尤検出はビット誤り率を最小にできるものの,演算量が膨大になるという問題がある.この演算量を削減できる準最適検波方式として,受信信号に線形操作を行う線形受信が知られている.線形受信の一種であるMMSE(Minimum Mean Square Error)(非特許文献2参照)に基づく信号検出器21の構成を図8に示す.まず,各受信アンテナからの受信信号が端子を介して線形変換回路35へ入力する.具体的には,端子29−1と29−2からは受信アンテナ16−1の受信信号の同相成分及び直交成分が,端子29−3と29−4からは受信アンテナ16−Lの受信信号の同相成分及び直交成分が,それぞれ入力する.伝送路のチャネル情報として端子30から,MIMOシングルキャリア伝送の場合には伝送路のインパルス応答の推定値が,MIMO−OFDM伝送の場合には伝送路の周波数応答の推定値が入力する.線形変換回路35は,チャネル情報から算出する重み付け係数を用いて受信信号に線形操作である線形合成を行い,K個の合成信号を生成する.硬判定器36−1から36−Kはそれぞれ,合成信号に量子化の一種である硬判定を行い,合成信号に最も近い複素シンボルを求める.その複素シンボルから送信ビットを推定し,判定値としてパラレル・シリアル変換器28へ入力する.パラレル・シリアル変換器28は判定値をパラレル・シリアル変換して端子33へ出力する.
【0011】
上記の線形変換回路35の動作について数式を用いて説明する.まず,L次元受信信号ベクトルy,K次元送信信号ベクトルs,L次元雑音ベクトルnを以下のように定義する.

を(p,k)成分とするL×K行列とする.合成信号を成分とするK次元ベクトルをxとすると

と表すことができる.ここで,Wは重み付け係数を成分とするK×L行列,IはK×K単位行列である.WはHから求めることができ,xを硬判定したものがsの推定値となる.
この線形受信は最尤検出に較べ演算量を大幅に削減できるものの,送信信号候補の数を実質1にしていることと等価で,ビット誤り率が著しく劣化するという問題がある.
【0012】
【非特許文献1】X.Zhu and R.D.Murch,“Performance analysis of maximum likelihood detection in a MIMO antenna system,” IEEE Transaction on Communications,vol.50,no.2,pp.187−191,February 2002.
【非特許文献2】Simon Haykin,Adaptive Filter Theory Third Edition,Prentice−Hall出版,1996年.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように,MIMO検波方式の内,最尤検出は最適検波方式であり最小ビット誤り率を達成できるが,演算量が膨大になってしまう.この演算量を削減するため,従来から線形受信等の準最適検波方式が提案されているが,演算量を削減するとビット誤り率が大幅に劣化するという問題があった.
【0014】
本発明は,このような課題に鑑みてなされたものであり,最尤検出と同程度のビット誤り率特性を維持しつつ,演算量を大幅に削減できる検波方式を提供することを目的とする.
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のMIMO検波方式によれば,上記目的は前記特許請求の範囲に記載した手段により達成される.即ち,本発明のMIMO検波方式は,(i)受信信号,伝送路のチャネル情報,及び複数の送信信号候補から,送信信号候補に対応するメトリックを生成するメトリック生成手段,(ii)メトリックの最小値を探索し,その最小値に対応する送信信号候補のビットを判定値として出力する最小メトリック検出手段,(iii)受信信号とチャネル情報を基に,線形操作と量子化により複数の送信信号候補を生成する送信信号候補生成手段とから構成される.従来技術と異なる点は,線形操作と量子化により複数の送信信号候補を求め,そのメトリックを生成することにある.
また,本発明のMIMO検波方式は,複数の受信アンテナで受信した受信波を周波数変換して得られる信号を受信信号とし,伝送路のインパルス応答の推定値をチャネル情報にできる.
また,本発明のMIMO検波方式は,複数の受信アンテナで受信した受信波を周波数変換した後,各サブキャリア成分に分離して得られる信号を受信信号とし,伝送路の周波数応答の推定値をチャネル情報にできる.
さらに,本発明のMIMO検波方式の(iii)送信信号生成手段は,受信信号に生成した雑音を加算し,チャネル情報から求める重み付け係数を用いて線形操作を行った後,量子化により複数の送信信号候補を生成する.
加えて,本発明のMIMO検波方式の(iii)送信信号生成手段は,受信信号に対してチャネル情報から求める重み付け係数を用いて線形操作を行い,初期値を求め,初期値とチャネル情報と受信信号とを基に更新値をさらに求め,初期値に更新値を加えた後,量子化により複数の送信信号候補を生成する.
【発明の効果】
【0016】
本発明は,以下に記載されるような効果を奏する.
請求項1記載の発明のMIMO検波方式によれば,最尤検出と同程度のビット誤り率特性を維持しつつ,演算量を大幅に削減できる.
請求項2記載の発明のMIMO検波方式によれば,MIMOシングルキャリア伝送に適用できる.
請求項3記載の発明のMIMO検波方式によれば,MIMO−OFDM伝送に適用できる.
請求項4記載の発明のMIMO検波方式によれば,送信信号候補の数を抑え演算量を削減できる.
請求項5記載の発明のMIMO検波方式によれば,送信信号候補の数をさらに抑え演算量を大幅に削減できる.
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下,本発明を実施するための最良の形態について説明する.
まず,第1の発明のMIMO検波方式を用いた信号検出器21の構成(請求項4)を図9に示す.図7に示す従来の最尤検出に基づく信号検出器21との違いは,信号候補生成回路34を送信信号候補生成手段に相当する送信信号候補生成回路44に置き換えた点にある.なお,送信信号候補生成回路44は,加算回路37−1から37−L,雑音生成回路38,線形変換回路35,量子化器39−1から39−K,及びパラレル・シリアル変換器40から構成され,以下では送信信号候補生成回路44の動作について詳述する.
【0018】
送信信号候補数をC(Cは2以上の整数)とする.雑音生成回路38はC回人工的に複素ガウス信号を生成するが,1回目は値が零となる信号をL個生成し,2回目以降は平均値零,分散ξで互いに無相関となる複素ガウスをL個発生させる.加算回路37−1から37−Lは,受信信号に雑音生成回路38が生成する生成雑音を加算する.具体的には,端子29−1と29−2から入力する受信アンテナ16−1の受信信号の同相成分及び直交成分については,それぞれ1番目の生成雑音の同相成分及び直交成分を加算し,端子29−3と29−4から入力する受信アンテナ16−Lの受信信号の同相成分及び直交成分については,それぞれL番目の生成雑音の同相成分及び直交成分を加算する.加算回路3

信号を生成する.この合成信号を成分とするK次元ベクテルをxとすると

るK×L行列であり,1回目は生成雑音が加わっていないことと等価なので数式7のWと等しくなるが,2回目以降は分散ξの生成雑音が新たに加わっているのでWと異なる.なお,MMSEではなくZF(Zero Forcing)による線形合成を行うこともでき

とすることもできる.量子化器39−1から39−Kはそれぞれ,上記の合成信号に量子化の一種である硬判定を行い,合成信号に最も近い複素シンボルを求め,パラレル・シリアル変換器40へ入力する.パラレル・シリアル変換器40はこの複素シンボルをパラレル・シリアル変換し,送信信号候補として出力する.
このように,従来の最尤検出では全ての送信信号候補に対してメトリックを計算する必要があったが,本発明では送信信号候補数をCに削減でき,演算量を大幅に削減できる.また,従来のMMSEでは送信信号候補の数を実質1としているのに対し,本発明はMMSEによる送信信号候補を含むC個の送信信号候補に対してメトリックを計算し,最小メトリックに相当する送信信号候補を選択するので,MMSEよりもビット誤り率が改善できる.
なお,繰り返し処理を行う場合,受信信号の代わりに,最小メトリックに対応する送信信号候補もしくはそのxを使うこともでき,さらなるビット誤り率改善が期待できる.
【0019】
次に,第2の発明のMIMO検波方式を用いた信号検出器21の構成(請求項5)を図10に示す.図7に示す従来の最尤検出に基づく信号検出器21との違いは,信号候補生成回路34を送信信号候補生成手段に相当する送信信号候補生成回路45に置き換えた点にある.なお,送信信号候補生成回路45は,線形変換回路35,量子化器41−1から41−K,更新値演算回路42,加算回路37−1から37−K,量子化器39−1から39−K,及びパラレル・シリアル変換器40から構成され,以下では送信信号候補生成回路45の動作について詳述する.
【0020】
まず,各受信アンテナからの受信信号が端子を介して線形変換回路35へ入力する.具体的には,端子29−1と29−2からは受信アンテナ16−1の受信信号の同相成分及び直交成分が,端子29−3と29−4からは受信アンテナ16−Lの受信信号の同相成分及び直交成分が,それぞれ入力する.線形変換回路35は,端子30から入力するチャネル情報から重み付け係数を算出し,この重み付け係数を用いて受信信号に線形操作である線形合成を行い,K個の合成信号を生成する.この合成信号が初期値xに相当する.量子化器41−1から41−Kはそれぞれ,合成信号に量子化の一種である硬判定を行い,合成信号に最も近い複素シンボルを求め更新値演算回路42に入力する.更新値演算回路42は,初期値を硬判定した複素シンボル,受信信号,並びにチャネル情報から更新値を求める.加算回路37−1から37−Kは初期値に更新値を加算し,量子化器39−1から39−Kはこの加算結果に対して量子化の一種である硬判定を行い,加算結果に最も近い複素シンボルを求めパラレル・シリアル変換器40へ入力する.パラレル・シリアル変換器40はこの複素シンボルをパラレル・シリアル変換し,送信信号候補として出力する.
【0021】
上記の更新値演算回路42の動作について以下,数式を用いて詳述する.まず,合成信号を硬判定して得られる複素シンボル,即ち量子化器41−1から41−Kの出力を成分

ある.また,Pは数式13で定義するK×K行列である.
μはr=0では0とする.即ち,r=0の送信信号候補はxを単に硬判定したものとなり,MMSEと同じになる.rが1以上では


このように,μはK(M−1)+1個値が存在する.送信信号候補は,xにuを加算した後,硬判定したものであるから,μの数,即ちK(M−1)+1個存在する.したがって,従来の最尤検出では全ての送信信号候補に対してメトリックを計算する必要があったが,本発明では送信信号候補数をK(M−1)+1に削減でき,演算量を大幅に削減できる.また,従来のMMSEでは送信信号候補の数を実質1としているのに対し,本発明はMMSEによる送信信号候補を含むK(M−1)+1個の送信信号候補に対してメトリックを計算し,最小メトリックに相当する送信信号候補を選択するので,MMSEよりもビット誤り率が改善できる.

く線形操作を行ってもよい.また,初期値としてxの代わりにxの硬判定値を用いることも可能である.さらに,数式12のuの代わりに

としてもよい.ただし,eは零ベクトルとならない任意のL次元ベクトルである.
【0022】
最後に,本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである.
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来のMIMO無線送信機のブロック構成図である.
【図2】図1の変調器のブロック構成図である.
【図3】MIMOシングルキャリア伝送における,図1のベースバンド変調回路のブロック構成図である.
【図4】MIMO−OFDM伝送における,図1のベースバンド変調回路のブロック構成図である.
【図5】MIMOシングルキャリア伝送における,従来の無線受信機のブロック構成図である.
【図6】MIMO−OFDM伝送における,従来の無線受信機のブロック構成図である.
【図7】図5と図6の信号検出器で,従来の最尤検出を用いたブロック構成図である.
【図8】図5と図6の信号検出器で,従来のMMSEを用いたブロック構成図である.
【図9】図5と図6の信号検出器で,第1の発明のブロック構成図である.
【図10】図5と図6の信号検出器で,第2の発明のブロック構成図である.
【符号の説明】
【0024】
1入力端子,2シリアル・パラレル変換器,3ベースバンド変調回路,4変調器,5送信アンテナ,6発振器,7端子,8端子,9乗算器,10移相器,11加算器,12増幅器,13複素シンボル生成回路,14IFFT演算回路,15ガードインターバル付加器,16受信アンテナ,17ハイブリッド,18低域通過フィルタ,19A/D変換器,20受信回路,21信号検出器,22出力端子,23入力端子,24ガードインターバル除去回路,25FFT演算回路,26OFDM受信回路,27DFT回路,28パラレル・シリアル変換器,29端子,30端子,31メトリック生成回路,32最小メトリック検出器,33端子,34信号候補生成回路,35線形変換回路,36硬判定器,37加算回路,38雑音生成回路,39量子化器,40パラレル・シリアル変換器,42更新値演算回路,43伝送路推定回路,44送信信号候補生成回路,45送信信号候補生成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号と,伝送路のチャネル情報と,複数の送信信号候補とを基に,前記送信信号候補に対応するメトリックを生成するメトリック生成手段と,
前記メトリックの最小値を探索し,その最小値に対応する前記送信信号候補のビットを判定値として出力する最小メトリック検出手段と,
前記受信信号と前記チャネル情報を基に,線形操作と量子化により複数の前記送信信号候補を生成する送信信号候補生成手段とから構成されることを特徴とするMIMO検波方式.
【請求項2】
請求項1の前記受信信号は,複数の受信アンテナで受信した受信波を周波数変換して得られる信号とし,請求項1の前記チャネル情報は,伝送路のインパルス応答の推定値とすることを特徴とするMIMO検波方式.
【請求項3】
請求項1の前記受信信号は,複数の受信アンテナで受信した受信波を周波数変換した後,各サブキャリア成分に分離して得られる信号とし,請求項1の前記チャネル情報は,伝送路の周波数応答の推定値とすることを特徴とするMIMO検波方式.
【請求項4】
請求項1の前記送信信号生成手段は,前記受信信号に生成した雑音を加算し,前記チャネル情報から求める重み付け係数を用いて線形操作を行った後,量子化により複数の前記送信信号候補を生成することを特徴とするMIMO検波方式.
【請求項5】
請求項1の前記送信信号生成手段は,前記受信信号に対して前記チャネル情報から求める重み付け係数を用いて線形操作を行い,初期値を求め,前記初期値と前記チャネル情報と前記受信信号とを基に更新値をさらに求め,前記初期値に前記更新値を加えた後,量子化により複数の前記送信信号候補を生成することを特徴とするMIMO検波方式.

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−300586(P2007−300586A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152638(P2006−152638)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】