説明

MRIシステムの主磁場ドリフトを制御するシステム、方法及び装置

【課題】主磁場の変化すなわちドリフトを制御するためのシステム、方法及び装置を提供する。
【解決手段】磁気共鳴撮像(MRI)内の超伝導マグネットの常温ボアの温度を制御するための装置(300)は、常温ボアの表面上に位置決めされた複数の常温ボア熱センサ(320)と、常温ボアの表面上に位置決めされた複数のヒータ素子(324)と、を含む。ヒータ素子熱センサ(326)は複数のヒータ素子(324)の各々と結合されると共に対応するヒータ素子(324)の温度を監視するように構成される。複数の常温ボア熱センサ(320)及び複数のヒータ素子熱センサ(326)には制御器(322)を結合させている。制御器(322)は、複数のヒータ素子(324)の各々を制御して常温ボアの所定温度を維持するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には磁気共鳴撮像(MRI)システムに関し、また具体的にはMRIシステムの動作時に主磁場Bのドリフトを制御するためのシステム、方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像(MRI)は、X線やその他の電離放射線を用いずに人体の内部の画像を作成することが可能な医用撮像様式の1つである。MRIは強力なマグネットを用いて強力で均一な静磁場(すなわち、「主磁場」)を発生させている。人体(あるいは、人体の一部)が主磁場内に置かれると、組織の水の中の水素原子核に関連する核スピンが偏向を受ける。このことは、これらのスピンに関連する磁気モーメントが主磁場の方向に特異的に整列することになり、これによって当該軸(慣例では、「z軸」)の方向に小さな正味の組織磁化が得られることを意味する。MRIシステムはさらに、電流を加えたときに空間変動する振幅がより小さい磁場を発生させる傾斜コイルと呼ばれる構成要素をさらに備える。典型的には傾斜コイルは、z軸に沿って整列すると共に、x軸、y軸またはz軸のうちの1つの方向で位置に応じて振幅が直線的に変動するような磁場成分を発生させるように設計されている。傾斜コイルの効果は単一の軸に沿って、その磁場強度に対してまた同時に核スピンの共鳴周波数に対してわずかな傾斜を生成させることにある。その軸が直交した3つの傾斜コイルを使用すれば、身体内の各箇所において標識共鳴周波数を生成することによってMR信号が「空間エンコード」される。水素原子核の共鳴周波数、あるいはその近傍の周波数にあるRFエネルギーのパルスを発生させるためには無線周波数(RF)コイルが使用される。RFコイルを使用すると核スピン系に対して制御された方式でエネルギーが追加される。次いで核スピンがその静止エネルギー状態まで緩和して戻ると、RF信号の形でエネルギーが放たれる。この信号はMRIシステムによって検出されて、コンピュータや周知の再構成アルゴリズムを用いて画像になるように変換される。
【0003】
MRIシステムでは均一な主磁場Bが必要であり、この磁場は撮像ボリューム内において広範なパルスシーケンス及びプロトコルにわたって時間的に一様かつ一定に維持すべきである。主磁場が変化すなわちドリフトすると、MR画像のデータ収集及び再構成を含むMRIシステムの動作性能に悪影響を及ぼしかねない。患者スキャン中に、磁場傾斜を発生させる傾斜コイルアセンブリの傾斜コイル(複数のこともある)は、大量の熱を放散させる。傾斜コイルが発生させる熱は、例えば放射、対流または伝導による加熱によってマグネット常温ボアの温度上昇を生じさせる可能性がある。さらにマグネット常温ボア温度は、うず電流のために上昇することがある。マグネット常温ボア表面は低透磁率のステンレス鋼から製作されるのが典型的であるが、こうしたステンレス鋼は常磁性として知られるような残留透磁率を有することがある。キュリーの法則によれば、常磁性材料の透磁率は材料の温度変化に伴って変化する。したがって傾斜コイル及びうず電流が発生させた熱によってマグネットのステンレス鋼常温ボアが加熱されるとステンレス鋼常温ボアの透磁率が変化する。典型的には常温ボアの透磁率は、常温ボアの温度の上昇に伴って低下することになる。マグネット常温ボアの透磁率の変化は主磁場を変化すなわちドリフトさせ、これがさらに画質にネガティブな影響を与える可能性がある。
【特許文献1】米国特許第7301343号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主磁場の変化すなわちドリフトを制御するためのシステム、方法及び装置を提供することが望ましい。マグネット常温ボアの温度及び透磁率に基づいて主磁場の変化すなわちドリフトを制御または補償すると有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、磁気共鳴撮像(MRI)システム内の超伝導マグネットの常温ボアの温度を制御するための装置は、常温ボアの表面上に位置決めされた複数の常温ボア熱センサと、常温ボアの表面上に位置決めされた複数のヒータ素子と、その各々が複数のヒータ素子のうちの1つと結合されると共に対応するヒータ素子の温度を監視するように構成された複数のヒータ素子熱センサと、複数の常温ボア熱センサ及び複数のヒータ素子熱センサと結合させた制御器であって、該複数のヒータ素子の各々を制御して常温ボアの所定温度を維持するように構成された制御器と、を含む。
【0006】
別の実施形態では、常温ボアの表面上に位置決めされた複数のヒータ素子を含んだ磁気共鳴撮像(MRI)システム内の超伝導マグネットの常温ボアの温度を制御するための方法は、常温ボアの温度を監視する工程と、複数のヒータ素子内の各ヒータ素子の温度を監視する工程と、各ヒータ素子の温度を調整して常温ボアの所定温度を維持する工程と、を含む。
【0007】
別の実施形態では、磁気共鳴撮像(MRI)システム内の超伝導マグネットの常温ボアの温度を制御するための装置は、常温ボアの表面上に位置決めされた複数の常温ボア熱センサと、常温ボアの表面上に位置決めされた複数のヒータ素子と、その各々が複数のヒータ素子の1つの部分組と結合されると共に対応するヒータ素子部分組の温度を監視するように構成された複数のヒータ素子熱センサと、複数の常温ボア熱センサ及び複数のヒータ素子熱センサと結合させた制御器であって、複数のヒータ素子の該部分組を制御して常温ボアの所定温度を維持するように構成された制御器と、を含む。
【0008】
別の実施形態では、超伝導マグネットの内部に装着されかつこれによって円周方向に囲繞された傾斜コイルアセンブリを含む磁気共鳴撮像(MRI)システムの超伝導マグネットの常温ボアの温度を制御するための装置は、傾斜コイルアセンブリの外側表面の周りに配置させたうず電流シールドと、常温ボアの表面上に位置決めされた複数のヒータ素子と、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、同じ参照番号が同じ部分を示している添付の図面に関連して取り上げた以下の詳細な説明によりさらに完全に理解できよう。
【0010】
図1は、一実施形態による例示的な磁気共鳴撮像システムのブロック概要図である。このMRIシステム10の動作は、キーボードその他の入力デバイス13、制御パネル14及びディスプレイ16を含むオペレータコンソール12から制御を受けている。コンソール12は、リンク18を介してコンピュータシステム20と連絡していると共に、オペレータがMRIスキャンを指示し、得られた画像を表示し、画像に対して画像処理を実行しかつデータ及び画像をアーカイブするためのインタフェースを提供する。コンピュータシステム20は、例えばバックプレーン20aを用いることにより提供されるような電気的接続及び/またはデータ接続を介して互いに連絡させた多数のモジュールを含む。データ接続は直接配線のリンクとすること、あるいは光ファイバ接続やワイヤレス通信リンクその他とすることがある。コンピュータシステム20のモジュールには、画像プロセッサモジュール22、CPUモジュール24、並びに画像データアレイを保存するためのフレームバッファを含むことができるメモリモジュール26が含まれる。代替的な一実施形態では、画像プロセッサモジュール22は、CPUモジュール24上の画像処理機能によって置き換えることができる。コンピュータシステム20は、アーカイブ用媒体デバイス、永続的またはバックアップ用記憶メモリまたはネットワークとリンクさせている。コンピュータシステム20はさらにリンク34を介して単独のシステム制御コンピュータ32と連絡させることもある。入力デバイス13は、マウス、ジョイスティック、キーボード、トラックボール、タッチ作動スクリーン、光学読取り棒、音声制御器、あるいは同様な任意の入力デバイスや同等の入力デバイスを含むことができ、また入力デバイス13は対話式幾何学指定のために使用することができる。
【0011】
システム制御コンピュータ32は、電気的接続及び/またはデータ接続32aを介して互いに連絡させた1組のモジュールを含む。データ接続32aは、直接配線のリンクとすること、あるいは光ファイバ接続やワイヤレス通信リンクその他とすることがある。代替的実施形態では、コンピュータシステム20及びシステム制御コンピュータ32のモジュールは同じコンピュータシステムまたは複数のコンピュータシステム上で実現させることができる。システム制御コンピュータ32のモジュールは、CPUモジュール36と、通信リンク40を介してオペレータコンソール12と接続したパルス発生器モジュール38と、を含む。別法としてパルス発生器モジュール38は、スキャナ装置(例えば、マグネットアセンブリ52)内に組み込まれることがある。システム制御コンピュータ32は、実行すべきスキャンシーケンスを指示するオペレータからのコマンドをこのリンク40を介して受け取っている。パルス発生器モジュール38は、発生させるRFパルス及びパルスシーケンスのタイミング、強度及び形状、並びにデータ収集ウィンドウのタイミング及び長さを記述した命令、コマンド及び/または要求(例えば、無線周波数(RF)波形)を送出することによって所望のパルスシーケンスを繰り出す(すなわち、実行する)システム構成要素を操作している。パルス発生器モジュール38は傾斜増幅器システム42に接続されて、スキャン中に使用される傾斜パルスのタイミング及び形状を制御する傾斜波形と呼ぶデータを生成している。パルス発生器モジュール38はさらに、生理学的収集制御器44から患者データを受け取ることができ、この生理学的収集制御器44は、患者に装着した電極からのECG信号など患者に接続した異なる多数のセンサからの信号を受け取っている。パルス発生器モジュール38はスキャン室インタフェース回路46と接続されており、スキャン室インタフェース回路46はさらに、患者及びマグネット系の状態に関連付けした様々なセンサからの信号を受け取っている。このスキャン室インタフェース回路46を介して、患者位置決めシステム48はスキャンのために患者テーブルを所望の位置に移動させるコマンドを受け取っている。
【0012】
パルス発生器モジュール38が発生させる傾斜波形は、G増幅器、G増幅器及びG増幅器からなる傾斜増幅器システム42に加えられる。各傾斜増幅器は、収集した信号の空間エンコードに使用する磁場傾斜パルスを生成させるように全体を番号50で示す傾斜コイルアセンブリ内の物理的に対応する傾斜コイルを励起させている。傾斜磁場コイルアセンブリ50は、超伝導主コイル54を備えた偏向用超伝導マグネットを含むマグネットアセンブリ52の一部を形成している。マグネットアセンブリ52は、全身用RFコイル56、表面または並列撮像コイル76あるいはこれら両者を含むことがある。RFコイルアセンブリのコイル56、76は、送信と受信の両方をするように構成されること、あるいは送信単独または受信単独向けに構成されることがある。患者または撮像対象70はマグネットアセンブリ52の円筒状の患者撮像ボリューム72内部に位置決めされることがある。システム制御コンピュータ32内の送受信器モジュール58は、RF増幅器60により増幅を受けて送信/受信スイッチ62によりRFコイル56、76に結合されるようなパルスを発生させている。患者内の励起された原子核が放出して得られた信号は、同じRFコイル56により検知し、送信/受信スイッチ62を介して前置増幅器64に結合させることができる。別法として、励起された原子核により放出された信号は並列コイルや表面コイル76など単独の受信コイルによって検知されることがある。増幅したMR信号は、送受信器58の受信器部分で復調され、フィルタ処理され、さらにディジタル化される。送信/受信スイッチ62は、パルス発生器モジュール38からの信号により制御し、送信モードではRF増幅器60をRFコイル56と電気的に接続させ、受信モードでは前置増幅器64をRFコイル56に接続させている。送信/受信スイッチ62によりさらに、送信モードと受信モードのいずれに関しても単独のRFコイル(例えば、並列コイルや表面コイル76)を使用することが可能となる。
【0013】
RFコイル56により検知されたMR信号は送受信器モジュール58によりディジタル化され、システム制御コンピュータ32内のメモリモジュール66に転送される。典型的には、MR信号に対応したデータフレームは、画像作成のために後で変換を受けるまでメモリモジュール66内に一時的に保存される。アレイプロセッサ68は周知の変換方法(フーリエ変換が最も一般的)を用いて、MR信号から画像を作成する。これらの画像はリンク34を介してコンピュータシステム20に伝達され、ここで画像はメモリ内に保存される。この画像データは、オペレータコンソール12から受け取ったコマンドに応じて、長期記憶内にアーカイブしたり、画像プロセッサ22によりさらに処理してオペレータコンソール12に伝達しディスプレイ16上に表示させたりすることができる。
【0014】
図2は、一実施形態による例示的なマグネットアセンブリ(例えば、図1に示したマグネットアセンブリ52)の側方立面断面概要図である。マグネットアセンブリ200は、形状が円筒状または環状であり、上述した図1のMRIシステムやMR画像を取得するための同様または同等の任意のシステムと適合する。以下では円筒状のマグネットアセンブリトポロジーを記載しているが、マグネットアセンブリの別のトポロジーにより本明細書に記載した本発明の実施形態を利用することもできることを理解されたい。マグネットアセンブリ200は、超伝導マグネット202、傾斜コイルアセンブリ204及びRFコイル206(ただし、これらだけに限らない)を含む。マグネットコイル、クライオスタット要素、支持体、懸架部材、端部キャップ、ブラケット、その他などの様々な別の要素は明瞭にするために図2から省略してある。円筒状の患者ボリュームまたはスペース208は、患者ボアチューブ210によって囲繞されている。RFコイル206は、患者ボアチューブ210の外側表面上に装着されかつ傾斜コイルアセンブリ204の内部に装着されている。傾斜コイルアセンブリ204はRFコイル206の周りで共軸性の離間関係で配置させると共に、傾斜コイルアセンブリ204はRFコイル206を円周方向に囲繞している。傾斜コイルアセンブリ204は、マグネット202の常温ボア218の内部に装着されており、またマグネット202によって円周方向に囲繞されている。
【0015】
患者または撮像対象70(図1参照)は、患者テーブルまたはクレードル(図2では図示せず)上で中心軸212(例えば、z軸)に沿ってマグネットアセンブリ200内に挿入されることがある。中心軸212は、マグネット202が発生させる主磁場Bの方向と平行にマグネットアセンブリ200のチューブ軸に沿って整列させている。RFコイル206は、患者または対象に無線周波数パルス(複数のこともある)を印加し、対象から戻されるMR情報を受け取るために使用される。傾斜コイルアセンブリ204は時間依存の傾斜磁気パルスを発生させており、これが撮像ボリューム208内の各点の空間エンコードに用いられる。
【0016】
超伝導マグネット202は例えば、その各々が同一の大きな電流を流すことが可能な半径方向で整列させかつ長手方向に離間させた幾つかの超伝導主コイル(図示せず)を含むことがある。超伝導主コイルは、患者ボリューム208の内部に磁場Bを生成するように設計される。超伝導マグネット202は、超伝導コイルの温度を適当な臨界温度未満に維持し当該コイルが零点抵抗をもつ超伝導状態となるように設計されたマグネット容器216(または、クライオスタット)内部の極低温環境内に封入されている。マグネット容器216は例えば、マグネットコイルを周知の方式で収容しまた冷却するヘリウム容器と熱シールド(低温シールド)を含むことがある。常温ボア218はマグネット容器216の円柱状の内側表面によって画定されており、また典型的にはステンレス鋼などの金属から製作されている。
【0017】
動作時に傾斜コイルアセンブリ204から放散される熱は(例えば、放射、対流または伝導によって)マグネットアセンブリ200の常温ボア218の温度を上昇させることがある。常温ボア218もさらに傾斜コイルアセンブリ204の動作時に発生するうず電流のために加熱されることがある。常温ボア218の温度が上昇するにつれて、常温ボアの透磁率が変化し(キュリーの法則に従って低下するのが一般的)、これが主磁場Bの変化すなわちドリフトを生じさせる可能性がある。このため、常温ボア218の温度上昇及び透磁率低下に伴って主磁場が増大することがある。温度誘導による透磁率の変化に由来する主磁場の変化すなわちドリフトを制御する(例えば、最小化する)ために、常温ボア218の温度を一定温度に維持させることがある。
【0018】
図3は、一実施形態による超伝導マグネットの常温ボアの温度を制御するためのシステムのブロック概要図である。システム300は、図1及び2に関連して上述したマグネットアセンブリ及びMRIシステム、並びに同様または同等の任意のマグネットアセンブリ及びMRIシステムと適合している。システム300は、複数の常温ボア熱センサ320と、複数のヒータ素子324と、各ヒータ素子324用の熱センサ326と、少なくとも1つの制御器322と、少なくとも1つの電流源328と、を含む。複数の常温ボア熱センサ320は、常温ボアの表面に取り付けられる。図2では、複数の常温ボア熱センサ220が常温ボア218上に位置決めされるように表している。4つの常温ボア熱センサ220を表しているが、使用される熱センサ220の数はこれより少ないことや多いことがあり得ることを理解されたい。図3を見ると、常温ボア熱センサ320は例えば、熱電対、サーミスタ、抵抗温度デバイス(RTD)、その他とすることがある。一実施形態ではそのRTDは、RTD内の金属量を最小限にするために非金属ハウジング(例えば、4ワイヤ白金、Teflon収容RTD)を備えたRTDである。別の実施形態ではそのRTDは、RTD上のRFノイズを短絡除去するために短絡用コンデンサを含むことがある。常温ボアの平均温度を得るために常温ボア表面上に常温ボア熱センサ320が位置決めされる。例えば様々な実施形態では、常温ボア表面上で4カ所や8カ所に常温ボア熱センサ320が位置決めされることがある。常温ボア熱センサ320の各々の箇所は、常温ボアの平均温度を十分にトラッキングできるように選択される。常温ボア熱センサ320は常温ボア上の対応する箇所における温度を指示する制御器(複数のこともある)322に対して信号(複数のこともある)を提供する。
【0019】
常温ボアの内部表面には複数のヒータ素子324が取り付けられる。図3には2つのヒータ素子324を図示しているが、システム300で使用されるヒータ素子324の数はこれより多いことがあることを理解されたい。各ヒータ素子324には単独の1つの熱センサ326を接続させかつ熱的に接触させ、対応するヒータ素子324の温度を監視することがある。図4は、一実施形態による常温ボアの一定温度を維持するために使用される常温ボア上の例示的なヒータ素子アレイの概要図である。図4は、常温ボアの内部表面の分解図を表している。アレイ400は、複数のヒータ素子424を含むと共に、常温ボアの温度440を一定の所定温度に維持するように構成される。ヒータ素子424は、接着剤(例えば、両面テープやのり)を用いて常温ボア440に取り付けられることがある。アレイ400内のヒータ素子424の数は常温ボア表面440の均一な加熱を実現するのに必要となる常温ボア表面440上の箇所数に基づくことが好ましい。一実施形態ではアレイ400は、50個を超えるヒータ素子424を含む。各ヒータ素子424は、単独の1つの熱センサまたは温度監視デバイス426(例えば、熱電対、サーミスタ、抵抗温度デバイス(RTD)、その他)に接続させかつこれと熱的に接触させることがある。図4では明瞭にするために熱センサ(または、温度監視デバイス)426を3つだけしか図示していないが、アレイ400内の各ヒータ素子424を単独の1つの熱センサ424と結合させることがあることを理解されたい。代替的な一実施形態では、アレイ400のヒータ素子424を部分組すなわちグループに分割することがあり、また各ヒータ素子の部分組すなわちグループは単独の1つの熱センサ426と結合させている。各熱センサ426は対応するヒータ素子(複数のこともある)424の温度を監視するように構成される。各熱センサ426は図3に示すように、対応するヒータ素子(複数のこともある)424の温度を指示する信号(複数のこともある)を制御器322に提供する。
【0020】
図3を見ると、制御器322は常温ボア熱センサ(複数のこともある)320及びヒータ素子熱センサ(複数のこともある)326と結合されている。制御器(複数のこともある)322は例えば、MRIシステムのコンピュータシステム20(図1参照)またはシステム制御部32(図1参照)内に組み入れられることがある。制御器322は、各ヒータ素子324を制御し常温ボアの温度を一定の所定温度に維持するように構成される。制御器322は例えば、計測された常温ボアの温度入力値及びヒータ素子(複数のこともある)324の温度入力値に基づいてヒータ素子324温度の比例/積分/微分(PID)制御を実現させることがある。制御器322は、温度制御式電流源などの電流源(複数のこともある)328と結合させている。電流源(複数のこともある)328はヒータ素子324と結合させている。一実施形態では各ヒータ素子324は単独の1つの電流源328と結合させている。別の実施形態では、複数のヒータ素子324を部分組すなわちグループに分割することがあり、また各ヒータ素子324の部分組すなわちグループは単独の1つの電流源328と結合させている。電流源(複数のこともある)328はAC(交流)電流源とし、MRIシステムの磁場(複数のこともある)との干渉を生じさせないことが好ましい。
【0021】
常温ボアの温度及びヒータ素子324の温度に基づいて、制御器322は電流源(複数のこともある)328に制御信号を提供し、これにより各ヒータ素子324が発生させた熱を制御して一定の常温ボアの所定温度を維持するように各ヒータ素子324に提供する電流を調整または変化させている。幾つかの例では、例えばうず電流に由来する局所的加熱のために常温ボアの加熱が均一でないことがある。したがって制御器322及び対応する電流源(複数のこともある)328は各ヒータ素子(または、ヒータ素子の部分組)324に提供する電流を調整を個別に調整しており、これにより局所加熱の具体的箇所においてヒータ素子324に提供される熱は常温ボアの温度を一定に維持する(すなわち、一定の所定温度を維持する)ように制御される。一実施形態ではこの一定の所定温度を周囲温度を超える高い温度とし、これにより常温ボア温度が傾斜コイル加熱による影響を受けないようにしている。例えばこの高い温度は、最大出力での傾斜加熱から予測される最大常温ボア温度を超える温度とすることがある。さらに、所定温度を高く選択することによって、常温ボアの一定温度を維持するために必要に応じてヒータ素子324を抑制(turned down)する(すなわち、温度低下させる)ことがある。各ヒータ素子324を制御して一定温度を維持することによって、常温ボアの透磁率の温度誘導による変化が低減または排除されると共に、主磁場のドリフトが最小限となる。
【0022】
上で言及したように、常温ボア218(図2参照)はさらに傾斜コイルアセンブリ204(図2参照)の動作時に発生する(すなわち、誘導される)うず電流のために加熱されることがある。うず電流が常温ボアを直接加熱させないようにするために、傾斜コイルアセンブリの外部表面上にうず電流シールドが設けられる。図5は、一実施形態によるうず電流シールド及びヒータ素子アレイを含む様々な素子の相対的位置を表しているマグネットアセンブリの断面概要図である。マグネットアセンブリ500は、超伝導マグネット502、傾斜コイルアセンブリ504、RFコイル506及び患者ボリュームまたはスペース508(ただし、これらだけに限らない)を含む。傾斜コイルアセンブリ504を囲繞するうず電流シールド530と常温ボアの内部表面518上のヒータ素子アレイとを組み合わせて用いることによって、常温ボア518を一定温度に維持している。うず電流シールド530は伝導性の金属から構成されており、数表皮厚(skin depth)すなわち数ミリメートルの厚さを有する。例えばうず電流シールド530は傾斜コイルアセンブリ504の周りに数層の銅(例えば、銅箔)を巻き付けて構成させることがある。うず電流シールド530は(例えば、傾斜コイル円筒の長さ方向に)傾斜コイルアセンブリ504の全長にわたって延びることや、あるいは傾斜コイル504の寸法長を超えて延びることがある。うず電流シールド530はうず電流を減衰させると共に、うず電流が常温ボア518を直接加熱するのを防止する。さらにうず電流シールド530の熱伝導率がうず電流シールド530の周囲のうず電流が発生させる熱を分散させることによって、うず電流の局所的な熱特性を低減するまたは無くすことを可能にする。
【0023】
マグネットアセンブリ500はさらに、常温ボア518に取り付けられアレイヒータ素子を含む。常温ボア518のヒータ素子アレイは、常温ボア518を一定温度に保つために所定の温度を維持するように構成される。図6は、一実施形態による常温ボア表面上の例示的なヒータ素子アレイの概要図である。図6は、常温ボアの内部表面の分解図を表している。ヒータ素子アレイ600は、図1及び2に関して上述したマグネットアセンブリや、同様または同等の任意のマグネットアセンブリに適合する。ヒータ素子アレイ600は常温ボアの内部表面640に取り付けられる。アレイ600は複数のヒータ素子642を含むと共に、常温ボアの温度を一定の所定温度に維持するように構成される。ヒータ素子642は接着剤を用いて常温ボア640に取り付けられることがある。アレイ600内のヒータ素子642の数は、常温ボア表面640の均一な加熱を実現するのに必要な常温ボア表面640上における箇所数に基づくことがある。一実施形態ではその一定の所定温度は周囲温度を超える高い温度である。例えばこの高い温度は、最大出力での傾斜加熱から予測される最大常温ボア温度を超える温度とすることがある。一実施形態では、ヒータ素子アレイ600はグループで制御を受ける。別法として、アレイ600内の各ヒータ素子642は個別に制御されることや、図3及び4に関連して上述のようにヒータ素子642の部分組が個別に制御されることがある。
【0024】
図2を見ると、主磁場Bのドリフトはさらに、マグネット常温ボア218の透磁率を低下させることによって制御されることがある。言及したように、常温ボア218は典型的にはステンレス鋼などの金属から製作される。常温ボア218向けに使用する金属(例えば、ステンレス鋼)の透磁率を低減させるために、マグネットへの組み上げ前に常温ボア218を焼きなまし処理することができる。常温ボア218を焼きなまし処理するには、1850〜2050°Fの範囲の温度まで常温ボア218を所定の時間期間(例えば、30分間)にわたって加熱する。次いで常温ボア218は室温まで急速に冷却させる。焼きなましは、常温ボア218向けに使用する金属の透磁率の低下を含め常温ボア218向けに使用する金属の材料特性を変化させる。透磁率が低下したため、常温ボア218の(例えば、傾斜コイルからの)加熱に起因する主磁場のドリフトが低下する。常温ボアの焼きなましはさらに、製造過程中に金属の低温加工によって生じる透磁率上昇を低減させることができる。さらに焼きなましは、常温ボア218の製造に使用する溶接の透磁率、並びに主磁場の均一性に対する溶接の影響を低減することができる。
【0025】
この記載では、本発明(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による本発明の製作及び使用を可能にするために例を使用している。本発明の特許性のある範囲は添付の特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。任意の処理法や方法の各工程の順序及びシーケンスは、代替的な実施形態に応じて変更されるまたは順序構成し直されることがある。
【0026】
本発明に対してその精神を逸脱することなく別の多くの変更や修正を実施することができる。こうした変更及びその他の変更の範囲は、添付の特許請求の範囲から明らかとなろう。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一実施形態による例示的な磁気共鳴撮像システムのブロック概要図である。
【図2】一実施形態による例示的なマグネットアセンブリの側方立面断面図である。
【図3】一実施形態による磁気共鳴撮像(MRI)システム内の超伝導マグネットの常温ボアの温度を制御するためのシステムのブロック概要図である。
【図4】一実施形態による常温ボアの一定温度を維持するために使用される常温ボア上の例示的なヒータ素子アレイの概要図である。
【図5】一実施形態によるうず電流シールド及びヒータ素子アレイを含む様々な素子の相対的位置を表しているマグネットアセンブリの断面概要図である。
【図6】一実施形態による常温ボア表面上の例示的なヒータ素子アレイの概要図である。
【符号の説明】
【0028】
10 MRIシステム
12 オペレータコンソール
13 入力デバイス
14 制御パネル
16 ディスプレイ
18 リンク
20 コンピュータシステム
20a バックプレーン
22 プロセッサモジュール
24 CPUモジュール
26 メモリモジュール
32 システム制御コンピュータ
32a データ接続
34 リンク
36 CPUモジュール
38 パルス発生器モジュール
40 通信リンク
42 傾斜増幅器システム
44 生理学的収集制御器
46 スキャン室インタフェース回路
48 患者位置決めシステム
50 傾斜コイルアセンブリ
52 マグネットアセンブリ
54 マグネット
56 RFコイル
58 送受信器モジュール
60 RF増幅器
62 送信/受信スイッチ
64 前置増幅器
66 メモリモジュール
68 アレイプロセッサ
70 患者、撮像対象
72 円筒状の患者撮像ボリューム
76 表面コイル、並列撮像コイル
200 マグネットアセンブリ
202 超伝導マグネット
204 傾斜コイルアセンブリ
206 RFコイル
208 患者ボリューム、患者スペース
210 患者ボアチューブ
212 中心軸
216 マグネット容器
218 常温ボア
220 常温ボア熱センサ
300 常温ボアの温度を制御するためのシステム
320 常温ボア熱センサ
322 制御器
324 ヒータ素子
326 各ヒータ素子用の熱センサ
328 電流源
400 ヒータ素子アレイ
424 ヒータ素子
426 熱センサ
440 常温ボア
500 マグネットアセンブリ
502 超伝導マグネット
504 傾斜コイルアセンブリ
506 RFコイル
508 患者ボリューム、患者スペース
518 常温ボア
530 うず電流シールド
600 ヒータ素子アレイ
640 常温ボア表面
642 ヒータ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴撮像(MRI)システム内の超伝導マグネットの常温ボア(218、440)の温度を制御するための装置(300)であって、
前記常温ボアの表面上に位置決めされた複数の常温ボア熱センサ(220、320)と、
前記常温ボアの表面上に位置決めされた複数のヒータ素子(324)と、
その各々が前記複数のヒータ素子(324)のうちの1つと結合されると共に該対応するヒータ素子の温度を監視するように構成された複数のヒータ素子熱センサ(326)と、
前記複数の常温ボア熱センサ(220、320)及び前記複数のヒータ素子熱センサ(326)と結合させた制御器(322)であって、該複数のヒータ素子(324)の各々を制御して常温ボアの所定温度を維持するように構成された制御器(322)と、
を備える装置。
【請求項2】
前記所定温度は周囲温度を超える高い温度である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各ヒータ素子(324)及び制御器(322)と結合された少なくとも1つの電流源(328)をさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの電流源(328)は前記制御器(322)から少なくとも1つの制御信号を受け取っている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの制御信号に応答して、前記少なくとも1つの電流源(328)は各ヒータ素子(324)に提供する電流を調整している、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
磁気共鳴撮像(MRI)システム内の超伝導マグネットの常温ボア(218、440)の温度を制御するための装置(300)であって、
前記常温ボアの表面上に位置決めされた複数の常温ボア熱センサ(220、320)と、
前記常温ボアの表面上に位置決めされた複数のヒータ素子(324)と、
その各々が前記複数のヒータ素子(324)の1つの部分組と結合されると共に該対応するヒータ素子部分組の温度を監視するように構成された複数のヒータ素子熱センサ(326)と、
前記複数の常温ボア熱センサ(220、320)及び前記複数のヒータ素子熱センサ(326)と結合させた制御器(322)であって、複数のヒータ素子の前記部分組を制御して常温ボアの所定温度を維持するように構成された制御器(322)と、
を備える装置。
【請求項7】
磁気共鳴撮像(MRI)システムの超伝導マグネットの常温ボア(218、518、640)の温度を制御するための装置であって、該MRIシステムは該超伝導マグネット(502)の内部に装着されかつこれによって円周方向に囲繞された傾斜コイルアセンブリ(504)を含むと共に、
前記傾斜コイルアセンブリ(504)の外側表面の周りに配置させたうず電流シールド(530)と、
前記常温ボア(518、640)の表面上に位置決めされた複数のヒータ素子(642)と、
を備える装置。
【請求項8】
前記うず電流シールド(530)は伝導性の金属から構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記複数のヒータ素子(642)は常温ボアの所定温度を維持するように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記常温ボアの表面上に位置決めされた複数の常温ボア熱センサ(220、320)をさらに備える請求項7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−119261(P2009−119261A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283887(P2008−283887)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】