説明

MRI装置

【課題】 呼吸同期撮影を能率良く行うMRI装置を実現する。
【解決手段】 MRI装置は、静磁場、勾配磁場およびRF磁場を被検者に印加して磁気共鳴信号を収集する信号収集手段(100,130,140,150,160)と、被検者の呼吸を検出する呼吸検出手段(110,112)と、磁気共鳴信号と呼吸検出信号に基づいて予め定められた呼吸位相における画像を再構成する画像再構成手段(170)とを有するMRI装置であって、呼吸検出信号に基づいて呼吸状態を被検者に表示する表示手段(182)を具備する。表示手段は被検者が視覚的に認識可能な態様で呼吸状態を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置に関し、とくに、静磁場、勾配磁場およびRF(radio frequency)磁場を被検者に印加して磁気共鳴信号を収集し、被検者の呼吸を検出し、磁気共鳴信号と呼吸検出信号に基づいて予め定められた呼吸位相における画像を再構成するMRI装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置で腹部や肺野等を撮影する場合は、呼吸同期の撮影が行われる。すなわち、被検者の呼吸を検出し、予め定められた呼吸位相における磁気共鳴信号を用いて画像を再構成する。呼吸の検出には、腹部に装着したベローズ(bellows)等が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−275380号公報(第3−4頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
呼吸同期の撮影を行う正しくためには、所望の呼吸位相における呼吸の深さが常に一定でなければならない。しかし、呼吸の深さは変化するものであるから、所望の呼吸位相における所望の呼吸深さ状態での磁気共鳴信号が毎回得られるとは限らない。このため、信号収集が完了するまでにかなりの時間を要する。
【0004】
そこで、本発明の課題は、呼吸同期撮影を能率良く行うMRI装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための本発明は、静磁場、勾配磁場およびRF磁場を被検者に印加して磁気共鳴信号を収集する信号収集手段と、被検者の呼吸を検出する呼吸検出手段と、磁気共鳴信号と呼吸検出信号に基づいて予め定められた呼吸位相における画像を再構成する画像再構成手段とを有するMRI装置であって、前記呼吸検出信号に基づいて呼吸状態を被検者に表示する表示手段、を具備することを特徴とするMRI装置である。
【0006】
前記表示手段は被検者が視覚的に認識可能な態様で呼吸状態を表示することが、伝達可能な情報量が多い点で好ましい。
前記表示手段は目盛によって呼吸の深さを表示することが、精密な表示が可能な点で好ましい。
【0007】
前記目盛は呼吸の深さの目標を示す標識を有することが、目標が明確な点で好ましい。
前記表示手段は光点の発光位置により呼吸の深さを表示することが、表示が簡便な点で好ましい。
【0008】
前記発光位置は5段階であることが、呼吸の深さを適切に量子化する点で好ましい。
前記発光位置は3段階であることが、呼吸の深さを簡便に量子化する点で好ましい。
前記発光位置はそれぞれ色相が異なることが、呼吸の深さの認識性が良い点で好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、MRI装置が、静磁場、勾配磁場およびRF磁場を被検者に印加して磁気共鳴信号を収集する信号収集手段と、被検者の呼吸を検出する呼吸検出手段と、磁気共鳴信号と呼吸検出信号に基づいて予め定められた呼吸位相における画像を再構成する画像再構成手段とを有するMRI装置であって、前記呼吸検出信号に基づいて呼吸状態を被検者に表示する表示手段を具備するので、被検者は表示された呼吸状態に基づいて自ら呼吸状態を調整することができ、これによって呼吸同期撮影を能率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、本発明は発明を実施するための最良の形態に限定されるものではない。図1にMRI装置のブロック(block)図を示す。本装置は発明を実施するための最良の形態の一例である。本装置の構成によって、MRI装置に関する本発明を実施するための最良の形態の一例が示される。
【0011】
同図に示すように、本装置はマグネットシステム(magnet system)100を有する。マグネットシステム100は主磁場コイル(coil)部102、勾配コイル部106およびRFコイル部108を有する。これら各コイル部は概ね円筒状の形状を有し、互いに同軸的に配置されている。
【0012】
マグネットシステム100の概ね円柱状の内部空間(ボア:bore)に、撮像の被検者1がクレードル(cradle)500に搭載されて図示しない搬送手段により搬入および搬出される。
【0013】
主磁場コイル部102はマグネットシステム100の内部空間に静磁場を形成する。静磁場の方向は概ね被検者1の体軸の方向に平行である。すなわちいわゆる水平磁場を形成する。主磁場コイル部102は例えば超伝導コイルを用いて構成される。なお、超伝導コイルに限らず常伝導コイル等を用いて構成してもよい。
【0014】
また、マグネットシステムは、水平磁場方式のものに変えて、静磁場の方向が被検者1の体軸に垂直は垂直磁場方式のものを用いるようにしてもよい。垂直磁場方式では例えば永久磁石が静磁場発生に利用される。
【0015】
勾配コイル部106は、互いに垂直な3軸すなわちスライス(slice)軸、位相軸および周波数軸の方向において、それぞれ静磁場強度に勾配を持たせるための3つの勾配磁場を生じる。
【0016】
静磁場空間における互いに垂直な座標軸をx,y,zとしたとき、いずれの軸もスライス軸とすることができる。その場合、残り2軸のうちの一方を位相軸とし、他方を周波数軸とする。また、スライス軸、位相軸および周波数軸は、相互間の垂直性を保ったままx,y,z軸に関して任意の傾きを持たせることも可能である。本装置では被検者1の体幅の方向をx方向とし、体厚の方向をy方向とし、体軸の方向をz方向とする。
【0017】
スライス軸方向の勾配磁場をスライス勾配磁場ともいう。位相軸方向の勾配磁場を位相エンコード(encode)勾配磁場ともいう。周波数軸方向の勾配磁場をリードアウト(read out)勾配磁場ともいう。リードアウト勾配磁場は周波数エンコード勾配磁場と同義である。このような勾配磁場の発生を可能にするために、勾配コイル部106は図示しない3系統の勾配コイルを有する。以下、勾配磁場を単に勾配ともいう。
【0018】
RFコイル部108は静磁場空間に被検者1の体内のスピン(spin)を励起するためのRF磁場を形成する。以下、RF磁場を形成することをRF励起信号の送信ともいう。また、RF励起信号をRFパルス(pulse)ともいう。
【0019】
励起されたスピンが生じる電磁波すなわち磁気共鳴信号は、RFコイル部108によって受信される。磁気共鳴信号は、周波数ドメイン(domain)すなわちフーリエ(Fourier)空間についてのサンプリング(sampling)信号となる。
【0020】
位相軸方向および周波数軸方向の勾配により、磁気共鳴信号のエンコードを2軸で行えば、磁気共鳴信号は2次元フーリエ空間についてのサンプリング信号として得られ、スライス勾配をも利用してエンコードを3軸で行えば3次元フーリエ空間についての信号として得られる。各勾配は、2次元あるいは3次元フーリエ空間における信号のサンプリング位置を決定する。以下、フーリエ空間をkスペース(k−space)ともいう。
【0021】
勾配コイル部106には勾配駆動部130が接続されている。勾配駆動部130は勾配コイル部106に駆動信号を与えて勾配磁場を発生させる。勾配駆動部130は、勾配コイル部106における3系統の勾配コイルに対応して、図示しない3系統の駆動回路を有する。
【0022】
RFコイル部108にはRF駆動部140が接続されている。RF駆動部140はRFコイル部108に駆動信号を与えてRFパルスを送信させ、被検者1の体内のスピンを励起する。
【0023】
RFコイル部108には、また、データ(data)収集部150が接続されている。データ収集部150は、RFコイル部108が受信した受信信号をディジタルデータ(digital data)として収集する。
【0024】
勾配駆動部130、RF駆動部140およびデータ収集部150にはシーケンス(sequence)制御部160が接続されている。シーケンス制御部160は、勾配駆動部130ないしデータ収集部150をそれぞれ制御して磁気共鳴信号の収集を遂行する。以下、磁気共鳴信号の収集をスキャンともいう。
【0025】
シーケンス制御部160は、例えばコンピュータ(computer)等を用いて構成される。シーケンス制御部160はメモリ(memory)を有する。メモリはシーケンス制御部160用のプログラム(program)および各種のデータを記憶している。シーケンス制御部160の機能は、コンピュータがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。マグネットシステム100ないしシーケンス制御部160からなる部分は、本発明における信号収集手段の一例である。
【0026】
データ収集部150の出力側はデータ処理部170に接続されている。データ収集部150が収集したデータがデータ処理部170に入力される。データ処理部170は、例えばコンピュータ等を用いて構成される。データ処理部170はメモリを有する。メモリはデータ処理部170用のプログラムおよび各種のデータを記憶している。
【0027】
データ処理部170はシーケンス制御部160に接続されている。データ処理部170はシーケンス制御部160の上位にあってそれを統括する。本装置の機能は、データ処理部170がメモリに記憶されたプログラムを実行することによりを実現される。
【0028】
データ処理部170は、データ収集部150が収集したデータをメモリに記憶する。メモリ内にはデータ空間が形成される。このデータ空間はkスペースに対応する。データ処理部170は、kスペースのデータを逆フ−リエ変換することにより画像を再構成する。データ処理部170は、本発明における画像再構成手段の一例である。
【0029】
被検者1には呼吸センサ(sensor)112が装着され、それを通じて呼吸検出部110により被検者1の呼吸が検出され、呼吸検出信号がデータ処理部170に入力される。データ処理部170は、呼吸検出信号に基づいて呼吸同期の磁気共鳴撮影を行い、所定の呼吸位相における画像を再構成する。
【0030】
呼吸センサ112および呼吸検出部110からなる部分は、本発明における呼吸検出手段の一例である。なお、呼吸検出は、磁気共鳴撮影によって得られる横隔膜像の運動に基づいて行うようにしてもよい。
【0031】
データ処理部170には、表示部180および操作部190が接続されている。表示部180はグラフィックディスプレー(graphic display)等で構成される。操作部190はポインティングデバイス(pointing device)を備えたキーボード(keyboard)等で構成される。
【0032】
表示部180は、データ処理部170から出力される再構成画像および各種の情報を表示する。操作部190は、使用者によって操作され、各種の指令や情報等をデータ処理部170に入力する。使用者は表示部180および操作部190を通じてインタラクティブ(interactive)に本装置を操作することが可能である。
【0033】
データ処理部170には、また、表示器182が接続されている。表示器182も例えばグラフィックディスプレー等で構成される。表示器182は本発明における表示手段の一例である。表示器182は被検者1の近傍に設けられ、データ処理部170から出力される呼吸状態像を表示する。呼吸状態表示については後にあらためて説明する。
【0034】
図2に、スキャン用のパルスシーケンス(pulse sequence)の一例を示す。このパルスシーケンスはグラディエントエコー(Gradient Echo)法によるパルスシーケンスである。
【0035】
同図において、(1)はRF励起のシーケンスを示す。(2)−(4)はいずれも勾配磁場のシーケンスを示す。(5)は磁気共鳴信号のシーケンスを示す。勾配磁場のシーケンスのうち、(2)はスライス勾配、(3)は周波数エンコード勾配、(4)は位相エンコード勾配勾配である。なお、静磁場は一定の磁場強度で常時印加されている。以下同様である。
【0036】
先ず、α°パルスによるスピン励起が行われる。α°励起はスライス勾配Sliceの下での選択励起である。α°励起後に、周波数エンコード勾配Readおよび位相エンコード勾配Phaseが所定のシーケンスで印加され、磁気共鳴信号すなわちエコーが読み出される。
【0037】
このようなパルスシーケンスが、繰り返し時間TRで所定回数繰り返され、そのつど、エコーが読み出される。繰り返しのたびにエコーの位相エンコードが変更され、所定回数の繰り返しによって、2次元kスペース全体についてのエコー信号収集が行われる。なお、スライス方向にも位相エンコードを行うときは、3次元kスペースについてのエコー信号収集が行われる。2次元kスペースのエコーデータを2次元逆フーリエ変換することにより2D画像が再構成される。3次元kスペースのエコーデータを3次元逆フーリエ変換することにより3D画像が再構成される。
【0038】
図3に、表示器182に表示される呼吸状態像の一例を示す。同図に示すように、呼吸状態像は、呼吸に伴う体動の波形として示される。このように、被検者が視覚的に認識可能な態様で呼吸状態を表示するので、伝達可能な情報量を多くすることができる。
【0039】
波形の上昇過程は吸気であり頂上が吸気から呼気への折返し点である。波形の下降過程は呼気であり谷底が呼気から吸気への折返し点である。呼吸状態像に関して、呼気から吸気への折返し点の目標範囲が2本の平行線によって設定されている。この範囲は呼吸の深さの目標範囲となる。
【0040】
このような呼吸状態像を表示器182に表示して被検者1に見せ、呼気から吸気への折返し点が目標範囲に入るように被検者自身に呼吸を調節させる。これによって、呼吸の深さを常に一定にすることができる。このため、毎回の呼吸における最大呼気時の磁気共鳴信号を全て画像再構成に用いることが可能になる。すなわち、能率のよい呼吸同期撮影を行うことができる。
【0041】
呼吸状態表示はこのような画像に限らず、例えば、図4ないし図6に示すような画像としてもよい。図4は、計器を模擬した画像であって、目盛401に沿って移動する指針402によって呼吸状態を示す。目盛の所定の位置に帯状の標識403が設けられ、最大呼気状態の目標範囲とされる。
【0042】
このような呼吸状態像を表示器182を通じて被検者1に見せて被検者自身に呼吸を調節させることにより、呼吸の深さを常に一定にすることができる。なお、計器を模擬した画像の変わりに実際の計器を用いるようにしてもよい。計器の目盛によって呼吸の深さを表示するので精密な表示が可能となる。また、目盛は呼吸の深さの目標を示す標識を有するので目標が明確になる。
【0043】
図5は、縦一列に並んだ5つの光点501−505を模擬した画像であって、1つだけ発光する光点の位置によって呼吸状態を示す。ここで、光点505が発光する状態が呼吸の深さの目標とされる。光点501−505はそれぞれ発光色を異ならせることにより、段階の識別を容易にすることができる。光点の発光位置により呼吸の深さを表示するので表示が簡便になる。また、発光位置が5段階なので、呼吸の深さを適切に量子化することができる。
【0044】
このような呼吸状態像を表示器182を通じて被検者1に見せて被検者自身に呼吸を調節させることにより、呼吸の深さを常に一定にすることができる。なお、光点を模擬した画像の変わりに実際の発光器を用いるようにしてもよい。
【0045】
図6は、縦一列に並んだ3つの光点601−603を模擬した画像であって、1つだけ発光する光点の位置によって呼吸状態を示す。ここで、光点603が発光する状態が呼吸の深さの目標とされる。光点601−603はそれぞれ発光色を異ならせることにより、段階の識別を容易にすることができる。発光位置が3段階なので、呼吸の深さを簡便に量子化することができる。
【0046】
このような呼吸状態像を表示器182を通じて被検者1に見せて被検者自身に呼吸を調節させることにより、呼吸の深さを常に一定にすることができる。なお、光点を模擬した画像の変わりに実際の発光器を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を実施するための最良の形態の一例のMRI装置のブロック図である。
【図2】パルスシーケンスの一例を示す図である。
【図3】呼吸状態表示の一例を示す図である。
【図4】呼吸状態表示の一例を示す図である。
【図5】呼吸状態表示の一例を示す図である。
【図6】呼吸状態表示の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 被検者
100 マグネットシステム
102 主磁場コイル部
106 勾配コイル部
108 RFコイル部
110 呼吸検出部
112 呼吸センサ
130 勾配駆動部
160 RF駆動部
160 データ収集部
160 シーケンス制御部
170 データ処理部
180 表示部
182 表示器
190 操作部
500 クレードル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場、勾配磁場およびRF磁場を被検者に印加して磁気共鳴信号を収集する信号収集手段と、被検者の呼吸を検出する呼吸検出手段と、磁気共鳴信号と呼吸検出信号に基づいて予め定められた呼吸位相における画像を再構成する画像再構成手段とを有するMRI装置であって、
前記呼吸検出信号に基づいて呼吸状態を被検者に表示する表示手段、
を具備することを特徴とするMRI装置。
【請求項2】
前記表示手段は被検者が視覚的に認識可能な態様で呼吸状態を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載のMRI装置。
【請求項3】
前記表示手段は目盛によって呼吸の深さを表示する、
ことを特徴とする請求項2に記載のMRI装置。
【請求項4】
前記目盛は呼吸の深さの目標を示す標識を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載のMRI装置。
【請求項5】
前記表示手段は光点の発光位置により呼吸の深さを表示する、
ことを特徴とする請求項2に記載のMRI装置。
【請求項6】
前記発光位置は5段階である、
ことを特徴とする請求項5に記載のMRI装置。
【請求項7】
前記発光位置は3段階である、
ことを特徴とする請求項5に記載のMRI装置。
【請求項8】
前記発光位置はそれぞれ色相が異なる、
ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のMRI装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−158762(P2006−158762A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356496(P2004−356496)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】