説明

MRI装置

【課題】
シェーディングが低減された画像を取得するのに適したMRI装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
MRI装置100は、本スキャン期間MCに被検体14の撮像部位14aからMR信号を受信する受信コイル8と、ナビゲータ期間NAVに、被検体14にナビゲータRFパルスPnavを送信するとともに、被検体14からナビゲータエコーを受信する送受信コイル10と、を有している。送受信コイル10は、被検体14の撮像部位14aとは異なる別の部位14bに近接又は接触するように配されており、したがって、ナビゲータ期間に撮像部位14aが励起されることが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲータエコー法を用いて被検体を撮像するMRI装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の呼吸に起因して発生する画像のアーチファクトを除去するために、呼吸同期法を使用したMRI装置が知られている。呼吸同期法の一つとして、ナビゲータエコー法が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−26076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ナビゲータエコー法を使用して撮像する場合、撮像された画像の一部が暗くなるアーチファクト(シェーディング)が生じることがある。シェーディングが生じると、撮像部位の一部を視認することができず、被検体の撮像部位の正確な情報を得ることが困難になる。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑み、シェーディングが低減された画像を取得するのに適したMRI装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決する本発明のMRI装置は、
被検体に静磁場を印加する静磁場コイル、
本スキャン期間に被検体の撮像部位からMR信号を受信する本スキャン用受信コイル、および
上記被検体の上記撮像部位とは異なる別の部位に近接又は接触するように配され、ナビゲータ期間に、上記別の部位にナビゲータRFパルスを送信するナビゲータ用送信コイル、
を有している。
【発明の効果】
【0006】
被検体に静磁場を印加すると、被検体の組織は、静磁場方向に一定の大きさを持つ磁化を有する。ナビゲータ用送信コイルは、被検体の組織が静磁場方向に一定の大きさの磁化を有しているときに、ナビゲータRFパルスを送信する。ナビゲータ用送信コイルは、撮像部位とは異なる別の部位に近接又は接触するように配されるので、ナビゲータRFパルスは、当該別の部位に送信されるが、撮像部位には送信されない。したがって、撮像部位の組織がナビゲータRFパルスによって励起されることはない。撮像部位の組織がナビゲータRFパルスによって励起されないので、ナビゲータ期間に、撮像部位の中で磁化が乱されることはなく、この結果、撮像部位は、ナビゲータ期間の間、静磁場方向に一定の大きさの磁化を有したままの状態になる。この状態で、ナビゲータ期間から本スキャン期間に移行する。
本スキャン期間では、撮像部位からMR信号が収集される。上記のように、撮像部位が静磁場方向に一定の大きさの磁化を有している状態で、ナビゲータ期間から本スキャン期間に移行するので、本スキャン期間に撮像部位の組織は満遍なく励起され、撮像部位の中のどの領域からも十分な強度のMR信号が得られる。したがって、撮像部位の中の一部の領域から得られるMR信号の強度が実質的にゼロになる又は小さくなるという現象が発生せず、MR画像の一部が暗くなるアーチファクト(シェーディング)が低減又は防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、発明を実施するための最良の形態の一例であるMRI装置について説明する。しかし、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0008】
図1は、ナビゲータによる呼吸同期法を用いて被検体を撮像するMRI装置100のブロック図である。このMRI装置100は発明を実施するための最良の形態の一例である。
【0009】
MRI装置100は、被検体14を支持するクレドール12と、クレドール12を移動させる駆動部(図示せず)と、を有している。
【0010】
また、MRI装置100は、マグネットシステム50を有している。マグネットシステム50は、静磁場コイル2、勾配コイル4、送信コイル6、受信コイル8、およびナビゲータ用送受信コイル10を有している。
【0011】
静磁場コイル2は、ボア16に、静磁場を形成する。
【0012】
勾配コイル4は、互いに垂直な3軸(x軸、y軸、およびz軸)の方向に、勾配磁場を印加する。
【0013】
送信コイル6は、被検体14にRFパルスを送信する。
【0014】
受信コイル8は、被検体14の撮像部位14aに近接又は接触するように設置されている。被検体14の撮像部位14aから受け取ったMR信号を電気信号に変換する。尚、受信コイル8は、撮像部位14aにRFパルスを送信する送信コイルを兼ねるように構成されていてもよい。
【0015】
ナビゲータ用送受信コイル10は、被検体14の呼吸による体動を検出するために用いられる。ナビゲータ用送受信コイル10は、撮像部位14aとは異なる別の部位14bに近接又は接触するように配されている。ナビゲータ用送受信コイル10は、撮像部位14aとは異なる別の部位14bにナビゲータRFパルスを送信するとともに、当該別の部位14bからナビゲータエコーを受信する。ナビゲータ用送受信コイル10は、受信したナビゲータエコーを電気信号に変換する。MRI装置100は、ナビゲータ用送受信コイル10を有することによって、シェーディングが低減又は防止されたMR画像を取得することができる。この理由については、後に詳しく説明する。
【0016】
また、MRI装置100は、マグネットシステム50を制御する制御部60を有している。制御部60は、勾配コイル駆動部18、送信部22、受信部28、データ処理部30、シーケンサ32、表示部34、および操作部36、を有している。
【0017】
勾配コイル駆動部18は、勾配コイル4に駆動信号20を供給し、勾配コイル4を駆動する。送信部22は、送信コイル6に駆動信号24を供給し、送信コイル6を駆動する。また、送信部22は、ナビゲータ用送受信コイル10に駆動信号26を供給し、ナビゲータ用送受信コイル10を駆動する。
【0018】
受信部28は、受信コイル8から、撮像部位14aのMR信号Sfovを受け取る。また、受信部28は、ナビゲータ用送受信コイル10から、ナビゲータエコーSnavを受け取る。受信部28は、これらMR信号SfovおよびナビゲータエコーSnavをAD変換し、デジタル化されたMR信号Sfov’およびナビゲータエコーSnav’を出力する。
【0019】
データ処理部30は、受信部28から出力されたMR信号Sfov’およびナビゲータエコーSnav’を受け取り、メモリに記憶する。データ処理部30は、受け取った信号Sfov’およびSnav’を用いて撮像部位14aの画像信号38を出力する。
【0020】
シーケンサ32は、勾配コイル駆動部18、送信部22、および受信部28を制御する。
【0021】
表示部34は、データ処理部30から画像信号38を受け取り、撮像部位14aを表示する。
【0022】
操作部36はシーケンサ32に接続されている。操作部36は、MRI装置100を操作する操作者によって操作される。操作者は、操作部36を介して、各種の指令や情報等をシーケンサ32に送信する。操作者は、表示部34および操作部36を通じてインタラクティブにMRI装置100を操作することができる。
【0023】
次に、上記のように構成されたMRI装置100の撮像動作について説明する。この撮像動作の説明に当たっては、MRI装置100で被検体14の腎臓を撮像する例を取り上げて説明する。しかし、本発明のMRI装置を用いて、腎臓以外の他の組織を撮像することもできる。
【0024】
被検体14の腎臓を撮像するために、まず、被検体14に受信コイル8およびナビゲータ用送受信コイル10を取り付ける。
【0025】
図2は、被検体14に受信コイル8およびナビゲータ用送受信コイル10が取り付けられた様子を示す図である。
【0026】
受信コイル8は、被検体14の腎臓KIを含む撮像部位14aに近接又は接触するように配されている。一方、ナビゲータ用送受信コイル10は、撮像部位14aとは異なる別の部位14bに近接又は接触するように配されている。当該別の部位14bには、肝臓LIと肺PUとの境界部分14c(横隔膜)が含まれている。
【0027】
被検体14が呼吸をすると、肝臓LIと肺PUとの境界部分14c(横隔膜)の位置はz方向に変動する。したがって、ナビゲータ用送受信コイル10を、肝臓LIと肺PUとの境界部分14cを含む別の部位14bに近接させておくことによって、MRI装置100は、被検体14の呼吸による体動を検出することができる。
【0028】
肝臓LIおよび肺PUは、脂肪や筋肉の下に存在しているので、ナビゲータ用送受信コイル10の感度はできるだけ大きいことが望まれる。そこで、ナビゲータ用送受信コイル10としては、8の字コイルやサドルコイルなどを使用することができる。
【0029】
図3および図4は、ナビゲータ用送受信コイル10として使用可能な8の字コイルの例である。
【0030】
図3および図4の8の字コイルCE1およびCE2は、両方とも、縦長の構造を有しているが、図3の8の字コイルCE1の8の字コイルエレメントAは、図4の8の字コイルCE2の8の字コイルエレメントBとは異なる構造を有している。図3の8の字コイルCE1は、長手方向Lzに対し垂直の方向Lxに感度を有しているが、一方、図4の8の字コイルCE2は、長手方向Lzに感度を有している。
【0031】
静磁場方向がy方向又はz方向の場合は、図3の8の字コイルCE1が使用される。
【0032】
図5は、静磁場方向がy方向又はz方向の場合に図3の8の字コイルCE1がどのように配置されるかを説明する図である。
【0033】
肝臓LIと肺PUとの境界部分14cは、z方向に移動する。したがって、z方向に移動する境界部分14cを検出できるように、8の字コイルCE1は、長手方向Lzがz方向に一致するように配置される。8の字コイルCE1は、長手方向Lzに対し垂直の方向Lxに感度を有している(図3参照)。したがって、8の字コイルCE1の長手方向Lzをz方向に一致させることによって、8の字コイルCE1の感度方向は、静磁場方向(y方向又はz方向)に対して垂直の方向(x方向)となり、被検体からMR信号を効率よく受診することができる。
【0034】
一方、静磁場方向がx方向又はy方向の場合は、図4の8の字コイルCE2が使用される。
【0035】
図6は、静磁場方向がx方向又はy方向の場合に図4の8の字コイルCE2がどのように配置されるかを説明する図である。
【0036】
肝臓LIと肺PUとの境界部分14cは、z方向に移動する。したがって、z方向に移動する境界部分14cを検出できるように、8の字コイルCE2は、長手方向Lzがz方向に一致するように配置される。8の字コイルCE2は、長手方向Lzに感度を有している(図4参照)。したがって、8の字コイルCE2の長手方向Lzをz方向に一致させることによって、8の字コイルCE2の感度方向は、静磁場方向(x方向又はy方向)に対して垂直の方向(z方向)となり、被検体からMR信号を効率よく受診することができる。
【0037】
図5および図6の説明から、静磁場方向がy方向である場合は、8の字コイルCE1およびCE2のどちらでも使用することが可能である。本形態では、静磁場方向がz方向である場合の例を考える。したがって、図3に示す8の字コイルCE1が使用される。
【0038】
尚、本形態では、ナビゲータ用送受信コイル10は8の字コイルであるが、ループコイルなどの別のコイルを使用することも可能である。しかし、ループコイルは、8の字コイルやサドルコイルと比べると、感度領域が小さいので、脂肪や筋肉の下に存在している肝臓LIおよび肺PUからのMR信号を効率よく受信できない恐れがある。したがって、ナビゲータ用送受信コイル10としては、ループコイルよりも、8の字コイルやサドルコイルが好ましい。
【0039】
受信コイル8およびナビゲータ用送受信コイル10を被検体14に取り付けた後、ナビゲータエコー法を用いて腎臓KIの撮像を行う。以下に、ナビゲータエコー法を用いて腎臓KIの撮像を行う例について説明する。
【0040】
図7は、MRI装置100が撮像部位14aのデータを収集するときのタイムスケジュールTSを示す図である。
【0041】
タイムスケジュールTSは、複数のスキャン期間SC1、SC2、SC3、・・・を有している。各スキャン期間は、ナビゲータ期間NAVと、本スキャン期間MSと、を有している。ナビゲータ期間NAVは、撮像部位14aとは別の部位14bからナビゲータエコーを収集するための期間である。一方、本スキャン期間MSは、腎臓KIを含む撮像部位14aのデータを収集するための期間である。
【0042】
図8は、図7に示すタイムスケジュールを実行するフローチャートの一例である。
【0043】
ステップS1において、MRI装置100は、ナビゲータ期間NAVに、ナビゲータエコーを収集する。
【0044】
ステップS2において、MRI装置100は、収集したナビゲータエコーから、被検体14の体動が小さい間に本スキャンが実行可能であるか否かを判断する。実行できないと判断された場合、ステップS1に戻る。ステップS1では、ナビゲータ期間NAVが再度設けられ、ナビゲータエコーが収集される。したがって、被検体14の体動が小さい間に本スキャンが実行可能であると判断されるまで、ステップS1およびS2のループが繰返し実行される。被検体14の体動が小さい間に本スキャンが実行可能であると判断された場合、ステップS3に進む。
【0045】
ステップS3において、MRI装置100は、本スキャン期間MSに本スキャンを実行し、腎臓KIを含む撮像部位14aのデータを収集する。
【0046】
ステップS4では、被検体14の撮像部位14aの全領域に渡って本スキャンが終了したか否かを判断する。本スキャンが終了していなければ、ステップS1に戻る。一方、本スキャンが終了していれば、ステップS5に進み、撮像を終了する。
【0047】
次に、図8に示すフローチャートに従って、MRI装置100がどのように腎臓KIを含む撮像部位14aのデータを収集しているかについて、具体的に説明する。
【0048】
MRI装置100は、撮像を開始すると、ステップS1に進む。
【0049】
(1)ステップS1におけるMRI装置100の動作
MRI装置100は、ナビゲータ期間NAVに、被検体14からナビゲータエコーを収集するためのナビゲータ用パルスシーケンスを実行する。ナビゲータ用パルスシーケンスとしては、種々のパルスシーケンスが考えられる。以下に、ナビゲータ用パルスシーケンスの一例について説明する。
【0050】
図9は、ナビゲータ期間NAVに実行されるナビゲータ用パルスシーケンスの一例を示す図である。
【0051】
ナビゲータ用パルスシーケンス51が実行される間、送信部22(図1参照)は、送信コイル6をディスエーブル状態に設定し、ナビゲータ用送受信コイル10をイネーブル状態に設定する。
【0052】
ナビゲータ用送受信コイル10は、ナビゲータ期間NAVにナビゲータRFパルスPnavを送信する。ナビゲータ用送受信コイル10は、撮像部位14aとは異なる別の部位14bに近接するように配されているので(図2参照)、ナビゲータRFパルスPnavは当該別の部位14bに送信されるが撮像部位14aに送信されない。したがって、撮像部位14aの中のどの領域の組織も、ナビゲータ期間NAVに励起されることはなく、この結果、ナビゲータ期間NAVに、撮像部位14aの中で磁化は変化しない。
【0053】
一方、勾配コイル4は、ナビゲータ用送受信コイル10がナビゲータRFパルスPnavを送信した後、負の勾配パルスGz1および正の勾配パルスGz2を印加する。ナビゲータRFパルスPnavの送信によって、撮像部位14aとは異なる別の部位14bの組織は励起されているので、勾配パルスGz1およびGz2が印加されると、ナビゲータ用送受信コイル10は、当該別の部位14bからナビゲータエコーを受信する。しかし、撮像部位14aにナビゲータRFパルスPnavは送信されていないので、撮像部位14aに勾配パルスGz1およびGz2が印加されても、ナビゲータ用送受信コイル10は、撮像部位14aから、ナビゲータエコーを受信することはない。
【0054】
また、撮像部位14aにナビゲータRFパルスPnavは送信されていないので、撮像部位14aの組織は、ナビゲータRFパルスによって励起されることはない。したがって、ナビゲータ期間NAVの間に、撮像部位14aの磁化は変化せず、撮像部位14aの中で磁化が乱されることはない。この結果、撮像部位14aの中のどの領域も、ナビゲータ期間NAVの間、静磁場方向に一定の大きさの磁化を有したままの状態になる。
【0055】
以上のようにして、ナビゲータ用パルスシーケンス51が実行され、ステップS1が終了する。ステップS1が終了すると、ステップS2に進む。
【0056】
(2)ステップS2におけるMRI装置100の動作
ナビゲータ用送受信コイル10は、ナビゲータエコーを受信すると、ナビゲータエコー
Snavを受信部28に出力する。受信部28は、ナビゲータエコーSnavをデジタル変換し、デジタル変換したナビゲータエコーSnav’をデータ処理部30に出力する。データ処理部30は、受け取ったナビゲータエコーSnav’を用いて、肝臓LIと肺PUとの境界部分14cのz方向の位置を計算する(図2参照)。データ処理部30は、計算した肝臓LIと肺PUとの境界部分14cのz方向の位置から、被検体14の体動が小さい間に、撮像部位14aを撮像するための本スキャンが実行可能であるか否かを判断する。この判断は、以下のようにして行われる。
【0057】
図10は、被検体14の体動が小さい間に本スキャンが実行可能であるか否かをどのように判断するかの説明図である。
【0058】
タイムスケジュールTSの下には、グラフが示されている。横軸は時間tであり、縦軸は、肝臓LIと肺PUとの境界部分14cのz方向の位置POSを表している。位置POSは、1つのラインL1によって、2つの領域R1およびR2に分けられている。領域R1はラインL1の上の領域であり、領域R2はラインL1の下の領域である。
【0059】
領域R1は、被検体14の呼吸による体動が大きい領域を表している。領域R2は、被検体14の呼吸による体動が小さい領域を表している。
【0060】
グラフに示されている曲線70は、肝臓LIと肺PUとの境界部分14cのz方向の位置POSの時間的変化を表している。曲線70上の白丸は、ナビゲータ期間NAV毎にデータ処理部30が計算した位置POSを示す。曲線70の領域R1の部分は、体動の大きい期間(M1、M2、M3、・・・)であり、曲線70の領域R2の部分は、体動の小さい期間(m1、m2、・・・)である。
【0061】
1番目のナビゲータ期間NAV#1では、肝臓LIと肺PUとの境界部分14cの位置POSは、白丸Y1で表されている。白丸Y1は体動の大きい期間M1内に存在している。したがって、データ処理部30は、被検体14の呼吸による体動が大きく、本スキャンを実行することはできないと判断する。この場合、データ処理部30は、シーケンサ32に、図4に示すナビゲータ用パルスシーケンス51が再度実行されるように指令を送る。シーケンサ32は、この指令を受けると、ナビゲータ用パルスシーケンス51が再度実行されるように、勾配コイル駆動部18および送信部22を制御する。したがって、ステップS2からステップS1に戻り、ナビゲータ用パルスシーケンス51が再度実行される。MRI装置100は、ステップS2において、被検体14の呼吸による体動が小さいと判断されるまで、ステップS1およびS2のループを繰返し実行する。図10では、ナビゲータ期間NAV#1〜NAV#i-1の白丸Y1〜Yi-1は、体動の大きい期間M1内に存在している。したがって、本スキャン用パルスシーケンスを実行することはできないと判断される。
【0062】
しかし、i番目のナビゲータ期間NAV#iでは、白丸Yiは領域R2内に存在している。したがって、データ処理部30は、被検体14の呼吸による体動が小さく、本スキャンが実行可能であると判断し、ステップS2からステップS3に進む。
【0063】
(3)ステップS3におけるMRI装置100の動作
データ処理部30は、本スキャンが実行可能であると判断した場合、シーケンサ32に、本スキャン用パルスシーケンスが実行されるように指令を送る。シーケンサ32は、この指令を受けると、勾配コイル駆動部18および送信部22を制御する。この結果、体動の小さい期間m1に、本スキャン期間MS#1が設けられる。本スキャン期間MS#1の間、送信部22(図1参照)は、送信コイル6をイネーブル状態に設定し、ナビゲータ用送受信コイル10をディスエーブル状態に設定する。受信コイル8は、本スキャン期間MS#1に、腎臓KIを含む撮像部位14aのデータを収集する。
【0064】
ナビゲータ期間NAV#1〜NAV#iの間、撮像部位14aにナビゲータRFパルスPnavは送信されていないので、撮像部位14aの組織は、ナビゲータRFパルスによって励起されることはない。したがって、ナビゲータ期間NAV#1〜NAV#iの間に、撮像部位14aの中で磁化は変化せず、撮像部位14aの中で磁化が乱されることはない。この結果、撮像部位14aの中のどの領域も、ナビゲータ期間NAV#1〜NAV#iの間、静磁場方向に一定の大きさの磁化を有したままの状態になる。この状態で、ナビゲータ期間NAV#iから本スキャン期間MS#1に移行する。したがって、本スキャン期間MS#1に本スキャン用パルスシーケンスが実行されると、撮像部位の中は一様に励起され、撮像部位の全体からMR信号が得られる。
【0065】
尚、本スキャン用パルスシーケンスは、既知のパルスシーケンスであるので、詳しい説明は省略する。
【0066】
本スキャンが実行された場合、ステップS3からステップS4に進む。
【0067】
(4)ステップS4におけるMRI装置の動作
本スキャンが実行されると、MRI装置100は、被検体14の撮像部位14aの全領域に渡って本スキャンが終了したか否かを判断する。図10では、本スキャン期間MS#1が終了しても、被検体14の撮像部位14aの全領域に渡って本スキャンは終了していない。したがって、ステップS1に戻り、スキャン期間SC1から次のスキャン期間SC2に移行する。
【0068】
スキャン期間SC2も、スキャン期間SC1と同様に、ステップS1〜ステップ4が実行される。ナビゲータ期間NAV#i+1〜NAV#j-1の白丸Yi+1〜Yj-1は、体動が大きい期間M2に属しているので、本スキャン用パルスシーケンスは実行できないと判断される。しかし、ナビゲータ期間NAV#jにおける白丸Yjは、体動が小さい期間m2に属しているので、ナビゲータ期間NAV#jの後に本スキャン期間MS#2に移行する。その結果、本スキャン期間MS#2に、腎臓KIを含む撮像部位14aのデータが収集される。したがって、受信コイル8は、体動が小さい期間M2に、腎臓KIを含む撮像部位14aのデータを収集する。
【0069】
尚、ナビゲータ期間NAV#i+1〜NAV#jの間、撮像部位14aにナビゲータRFパルスPnavは送信されていないので、撮像部位14aの組織は、ナビゲータRFパルスPnavによって励起されることはない。したがって、ナビゲータ期間NAV#i+1〜NAV#jの間に、撮像部位14aの中で磁化は変化せず、撮像部位14aの中で磁化が乱されることはない。この結果、撮像部位14aの中のどの領域も、ナビゲータ期間NAV#i+1〜NAV#jの間、静磁場方向に一定の大きさの磁化を有したままの状態になる。この状態で、ナビゲータ期間NAV#jから本スキャン期間MS#2に移行する。したがって、本スキャン期間MS#2に本スキャン用パルスシーケンスが実行されると、撮像部位の中のどの領域も一様に励起され、撮像部位の全体からMR信号が得られる。
【0070】
スキャン期間SC2が終了した後、次のスキャン期間SC3に移行する。
【0071】
スキャン期間SC3では、ナビゲータ期間NAV#j+1における白丸Yj+1は、体動が小さい期間m2に位置している。しかし、体動が小さい期間m2には、ナビゲータ期間NAVj+1の直前に既に本スキャン期間MS#2が設けられている。したがって、ナビゲータ期間NAV#j+1の直後にも本スキャン期間MS#3を設けてしまうと、本スキャン期間MS#3が終了する前に、体動の小さい期間m2から体動の大きい期間M3に遷移してしまう恐れがある。本スキャン期間MS#3が終了する前に、体動の大きい期間M3に遷移してしまうと、体動が大きいときにデータが収集されることになるので、画像を再構成する上では好ましくない。したがって、本形態のMRI装置100は、体動の大きい期間から体動の小さい期間に変化した場合、体動が小さくなったことを最初に検出したナビゲータ期間の直後にのみ本スキャン期間を設けるように設定されている。
【0072】
例えば、体動の小さい期間m2では、体動が小さくなったことを最初に検出したナビゲータ期間は、ナビゲータ期間NAV#jである。したがって、体動の小さい期間m2では、ナビゲータ期間NAV#jの直後にのみ本スキャン期間MS#2が設けられる。したがって、ナビゲータ期間NAV#j+1における白丸Yj+1が、体動が小さい期間m2に属していても、ナビゲータ期間NAV#j+1の直後に本スキャンを実行することなく、ナビゲータ期間NAV#j+2、#j+3、・・・#k-1、#kが繰り返される。
【0073】
ナビゲータ期間NAV#k-1の白丸Yk-1は体動が大きい期間M3に属しているが、次のナビゲータ期間NAV#kの白丸Ykは体動が小さい期間m3に属している。したがって、ナビゲータ期間NAV#kの直後に本スキャン期間MS#3が設けられ、体動が小さい期間m3にデータ収集を行うことができる。
【0074】
尚、ナビゲータ期間NAV#j+1〜NAV#kの間、撮像部位14aにナビゲータRFパルスPnavは送信されていないので、撮像部位14aの組織は、ナビゲータRFパルスPnavによって励起されることはない。したがって、ナビゲータ期間NAV#j+1〜NAV#kの間に、撮像部位14aの中で磁化は変化せず、撮像部位14aの中で磁化が乱されることはない。この結果、撮像部位14aの中のどの領域も、ナビゲータ期間NAV#j+1〜NAV#kの間、静磁場方向に一定の大きさの磁化を有したままの状態になる。この状態で、ナビゲータ期間NAV#kから本スキャン期間MS#3に移行する。したがって、本スキャン期間MS#3に本スキャン用パルスシーケンスが実行されると、撮像部位の中のどの領域も一様に励起され、撮像部位の全体からMR信号が得られる。
【0075】
このように、体動が小さい期間m1、m2、m3、・・・に、腎臓KIを含む撮像部位14aのデータ収集を繰返し行い、撮像部位14aの全領域の本スキャンが終了するまで、ステップS1〜ステップS4のループを実行する。撮像部位14aの全領域の本スキャンが終了すると、ステップS4からステップS5に進み、撮像を終了する。
【0076】
上記の例では、どのナビゲータ期間であっても、撮像部位14aの中で磁化は変化せず、撮像部位14aの中で磁化が乱されることはない。したがって、撮像部位14aの中のどの領域も静磁場方向に一定の大きさの磁化を有している状態で、ナビゲータ期間から本スキャン期間に移行する。この結果、本スキャン期間において、撮像部位の中のどの領域も満遍なく励起され、撮像部位のどの領域からも十分な強度のMR信号が得られる。したがって、撮像部位の一部の領域から得られるMR信号の強度が実質的にゼロになる又は小さくなるという現象が発生せず、MR画像の一部が暗くなるシェーディングが低減又は防止される。
【0077】
また、本形態では、図9に示すナビゲータ用パルスシーケンス51を使用しているが、別のナビゲータ用パルスシーケンスを使用することもできる。
【0078】
図11は、別のナビゲータ用パルスシーケンスの例である。
【0079】
図11に示すパルスシーケンス510は、スライス選択RFパルスP90およびP180を使用している。図9のナビゲータ用パルスシーケンス51はスライス非選択パルスPnavを使用しているが、図11に示すように、スライス選択RFパルスを使用してもナビゲータエコーを得ることができる。
【0080】
尚、図11のパルスシーケンス510では、ナビゲータ期間NAVに送信されるRFパルスは、2つのスライス選択パルスであるが、一方、図9に示すパルスシーケンス51では、ナビゲータ期間NAVに送信されるRFパルスは、1つのスライス非選択パルスである。このため、図11に示すパルスシーケンス510よりも図9に示すパルスシーケンス51を使用した方が、ナビゲータ期間NAVが短くなり、この結果、位置POSの測定間隔PM(図10参照)が短くなる。したがって、図9に示すパルスシーケンス51を使用することにより、本スキャン期間MS#1、MS#2、・・・をより最適なタイミングで開始することができる。
【0081】
また、図9に示すパルスシーケンス51を実行することにより、撮像部位14aとは異なる別の部位14bの組織は、横磁化成分を発生する。横磁化成分が残ったままで次のナビゲータ期間に移行すると、境界部分14cの位置POSの計算値の精度が低下する恐れがある。したがって、ナビゲータ期間に発生した横磁化成分は、次のナビゲータ期間が開始される前に、完全に消滅させることが好ましい。横磁化成分を完全に消滅させるには、正の勾配パルスGz2を印加した後に、キラー勾配パルスGkを印加すればよい。キラー勾配パルスGkを印加することによって、ナビゲータ期間NAVに発生した横磁化成分が消滅するので、次のナビゲータ期間でも、境界部分14cの位置の高精度で計算することができる。
【0082】
尚、本形態のタイムスケジュールTSでは、ナビゲータ用パルスシーケンスが繰返し実行され、被検体14の体動が小さいと判断された場合、本スキャンが実行されている。しかし、別のタイムスケジュールを採用することもできる。
【0083】
図12は、別のタイムスケジュールの一例である。
【0084】
図12のタイムスケジュールTS’のスキャン期間SC1、SC2、SC3、・・・は、図7に示すタイムスケジュールTSのスキャン期間SC1、SC2、SC3、・・・とは異なり、本スキャン期間MSの後にナビゲータ期間NAVを有している。
【0085】
図13は、図12のタイムスケジュールTS’を用いて被検体14から腎臓KIのデータをどのように収集しているのかを説明する図である。
【0086】
1番目の本スキャン期間MS#1に本スキャン用パルスシーケンスが実行され、撮像部位14aのデータが収集される。1番目の本スキャン期間MS#1の直後には1番目のナビゲータ期間NAV#1が設けられている。ナビゲータ期間NAV#1にナビゲータ用パルスシーケンス(例えば、図9に示すナビゲータ用パルスシーケンス51や、図11に示すナビゲータ用パルスシーケンス510など)が実行される。1番目のナビゲータ期間NAV#1では、肝臓LIと肺PUとの境界部分14cの位置POSは、白丸Y1で表されている。白丸Y1は体動の大きい期間M1内に存在している。したがって、データ処理部30は、本スキャン期間MS#1に収集されたデータは、呼吸による体動が大きい期間M1に収集されたデータであると判断し、本スキャン期間MS#1に収集されたデータを再構成画像としては採用しない。
【0087】
スキャン期間SC1の後、次のスキャン期間SC2に移行する。
【0088】
スキャン期間SC2の本スキャン期間MS#2では、肝臓LIと肺PUとの境界部分14cの位置POSは、白丸Y2で表されている。白丸Y2は体動の大きい期間M1内に存在している。したがって、データ処理部30は、本スキャン期間MS#2に収集されたデータは、呼吸による体動が大きい期間M1に収集されたデータであると判断し、本スキャン期間MS#2に収集されたデータを再構成画像としては採用しない。
【0089】
スキャン期間SC2の後、次のスキャン期間SC3に移行する。
【0090】
スキャン期間SC3の本スキャン期間MS#3では、肝臓LIと肺PUとの境界部分14cの位置POSは、白丸Y3で表されている。白丸Y3は体動の小さい期間m1内に存在している。したがって、データ処理部30は、本スキャン期間MS#3に収集されたデータは、呼吸による体動が小さい期間m1に収集されたデータであると判断し、本スキャン期間MC#3に収集されたデータを再構成画像として採用する。
【0091】
以下、同様にして、データ収集が繰返し行われる。
【0092】
図12および図13に示すやり方でも、図9に示すパルスシーケンス51や図11に示すパルスシーケンス510を使用することができる。しかし、図9に示すパルスシーケンス51は、図11に示すパルスシーケンス510よりも、ナビゲータ期間NAVが短いので、図9のパルスシーケンス51を使用した方が、本スキャンが体動の小さい期間に行われたか否かの判断を高精度で行うことができる。
【0093】
尚、ナビゲータ用送受信コイル10は、ナビゲータRFパルスPnavを送信する機能とナビゲータエコーを受信する機能とを有している。しかし、ナビゲータ用送受信コイル10の代わりに、ナビゲータRFパルスPnavを送信する機能を有するナビゲータ用送信コイルと、ナビゲータエコーを受信する機能を有するナビゲータ用受信コイルと、を別個に備えてもよい。ナビゲータ用送受信コイル10の代わりに、ナビゲータ用送信コイルを、撮像部位14aとは異なる別の部位14bに近接又は接触するように配しても、撮像部位14aにナビゲータRFパルスPnavが送信されないようにすることができる。したがって、シェーディングの低減又は防止されたMR画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】ナビゲータによる呼吸同期法を用いて被検体を撮像するMRI装置100のブロック図である。
【図2】被検体14に受信コイル8およびナビゲータ用送受信コイル10が取り付けられた様子を示す図である。
【図3】ナビゲータ用送受信コイル10として使用可能な8の字コイルの一例である。
【図4】ナビゲータ用送受信コイル10として使用可能な8の字コイルの別の例である。
【図5】静磁場方向がy方向又はz方向の場合に図3の8の字コイルCE1がどのように配置されるかを説明する図である。
【図6】静磁場方向がx方向又はy方向の場合に図4の8の字コイルCE2がどのように配置されるかを説明する図である。
【図7】MRI装置100が撮像部位14aのデータを収集するときのタイムスケジュールTSを示す図である。
【図8】図7に示すタイムスケジュールを実行するフローチャートの一例である。
【図9】ナビゲータ期間NAVに実行されるナビゲータ用パルスシーケンスの一例を示す図である。
【図10】被検体14の体動が小さい間に本スキャンが実行可能であるか否かをどのように判断するかの説明図である。
【図11】別のナビゲータ用パルスシーケンスの例である。
【図12】別のタイムスケジュールの一例である。
【図13】図12のタイムスケジュールTS’を用いて被検体14から腎臓KIのデータをどのように収集しているのかを説明する図である。
【符号の説明】
【0095】
1 MRI装置
2 静磁場コイル
4 勾配コイル
6 送信コイル
8 受信コイル
10 送受信コイル
12 クレドール
14 被検体
16 ボア
18 勾配コイル駆動部
20、24、26 駆動信号
22 送信部
28 受信部
30 データ処理部
32 シーケンサ
34 表示部
36 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に静磁場を印加する静磁場コイル、
本スキャン期間に被検体の撮像部位からMR信号を受信する本スキャン用受信コイル、および
前記被検体の前記撮像部位とは異なる別の部位に近接又は接触するように配され、ナビゲータ期間に、前記別の部位にナビゲータRFパルスを送信するナビゲータ用送信コイル、
を有するMRI装置。
【請求項2】
前記ナビゲータ期間に、負の極性の勾配パルスおよび正の極性の勾配パルスを印加する勾配コイルを有する、請求項1に記載のMRI装置。
【請求項3】
前記ナビゲータRFパルスが送信された後、前記負の極性の勾配パルスと前記正の極性の勾配パルスが順に印加されるように、前記ナビゲータ用送信コイルおよび前記勾配コイルを制御する制御部、
を有する、請求項2に記載のMRI装置。
【請求項4】
前記勾配コイルは、前記ナビゲータ期間にキラー勾配パルスを印加する、請求項3に記載のMRI装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記正の極性の勾配パルスが印加された後、前記キラー勾配パルスが印加されるように、前記勾配コイルを制御する、請求項4に記載のMRI装置。
【請求項6】
前記ナビゲータ用送信コイルは、8の字コイルエレメントを有している、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項7】
前記ナビゲータ用送信コイルは、前記別の部位からナビゲータエコーを受信する受信コイルも兼ねている、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項8】
前記別の部位は、前記被検体の肺と肝臓との間の境界部分を含んでおり、
前記ナビゲータ用送信コイルは、前記境界部分からのナビゲータエコーを受信する受信コイルも兼ねている、請求項7に記載のMRI装置。
【請求項9】
前記本スキャン用受信コイルは、前記本スキャン期間に、前記被検体にスキャンパルスを送信する送信コイルを兼ねている、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−106573(P2009−106573A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282725(P2007−282725)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】