説明

Mycinose生合成遺伝子を導入した微生物

【課題】ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドのラクトン環のC−23位にMycinoseを付加したロザミシン誘導体を産生できる放線菌株、及びそれを用いたロザミシン誘導体の製造方法を提供すること。
【解決手段】ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株にMycinose生合成遺伝子を導入することにより得られる、ロザミシン(Rosamicin)のラクトン環のC−23にミシノースを付加したロザミシン誘導体を産生できる放線菌株。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドのラクトン環のC−23位にミシノースを付加したロザミシン誘導体を産生できる放線菌株、及びそれを用いたロザミシン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放線菌はグラム陽性菌で複雑な形態分化と多様な二次代謝を特徴とする菌群である。放線菌のなかには生理活性物質生産菌も数多く報告されており、現在までに発見された10,000を越える微生物由来の抗生物質、抗ウィルス剤、殺虫剤、抗がん剤及び免疫抑制剤等の生理活性物質のうち、そのほぼ3分の2は放線菌に由来するものである。放線菌が生産する抗生物質にマクロライド抗生物質というカテゴリーがあり、大環状ラクトンに数個の糖がグリコシド結合した構造をもつ化合物の総称である。マクロライド抗生物質はブドウ球菌やレンサ球菌などのグラム陽性菌、クラミジア、リケッチア、マイコプラズマに対する強い抗菌活性があるために化学療法剤としてよく使用されている。
【0003】
現在、既存の抗生物質に対する耐性菌の蔓延に伴って、新たな化学療法剤の開発が急務となっているが、構造が複雑なマクロライド抗生物質のラクトン環の構造変換や糖修飾を行うことは有機化学的な手法では非常に難しい。そこで、分子生物学的技術が発展した現在ではマクロライド抗生物質の生合成ならびにその遺伝子の解析が上述した有用性を背景に多くの研究者により行われ、14員環のerythromycin、16員環のtylosinなどの生合成遺伝子が解明されている。アグリコン部分のラクトン環の生合成遺伝子は、低級カルボン酸残基の縮合回数分のモジュールとよばれるアシル鎖伸長反応単位[β-ketoacyl synthase (KS)、acyltransferase (AT)、dehydratase (DH)、enoyl reductase (ER)、β-ketoacyl reductase (KR)、enoyl reductase (ER)、acylcarrier proein (ACP)]が連続しており、この基本構造はこれまでに解明された生合成遺伝子に共通している。この規則性を利用し、ErythromycinやTylosinなどでは、アシル鎖伸長反応単位の総数の変化や置換、β位炭素の修飾(KR、DHあるいはER)の一部を欠如させるなどによって、ポリケタイド合成酵素(PKS)の再構成を行い、種々の構造をもつ新規化合物の合成に成功している。
【0004】
また、マクロライド抗生物質は母核であるラクトン環のみでは抗菌活性を示さず、ラクトン環に数個の還元糖が付加することにより活性を有するようになる。例えば、先に挙げたerythromycinではdesosamine、cladinose、tylosinではmycaminose、mycarose、mycinoseが付加しており、これらの糖を欠失させた場合、抗菌活性は示さない。このようにマクロライド抗生物質における付加糖は抗菌活性に重要な役割をもっており、ラクトン環の構造変換のみならず、糖修飾の多様性を組み合わせることによって新たなマクロライド抗生物質の生産が可能になると思われる。これまでに、グリコシル化経路を有さないStreptomyces lividansでのdesosamine生合成遺伝子発現システムを構築し、erythromycinの前駆体である6-deoxyerythronolide Bの50種以上のアナログの生合成酵素をコードする遺伝子を挿入した各プラスミドを導入することにより、desosamineの付加したポリケタイドライブラリーの構築にMcDanielらが成功している。しかしながら、16員環マクロライド抗生物質産生菌に、抗生物質の重要な構成要素である糖の生合成遺伝子を導入して安定的に発現させ,抗菌活性を有する新たな化合物を産生させることは現在まで知られていない。
【0005】
【非特許文献1】Tang, L., and McDaniel, R. 2001. Construction of desosamine containing polyketide libraries using a glycosyltransferase with broad substrate specificity. Chem. Biol. 6. 547-55.
【非特許文献2】Anzai, Y., Kinoshita, K., Seki, T., and Kato, F. 2004. Hybrid biosynthesis by targeted inactivation of polyketide synthases in the mycinamicin producer, Micromonospora griseorubida. J. Antibiot. 57. 819-822.
【非特許文献3】Perez, M., Lombo, F., Baig, I., Brana, A.F., Rohr, J., Salas, J. A., and Mendez, C. 2006. Combinatorial Biosynthesis of Antitumor Deoxysugar Pathways in Streptomyces griseus: Reconstitution of "Unnatural Natural Gene Clusters" for the Biosynthesis of Four 2,6-d-Dideoxyhexoses .Appl. Environ. Microbiol. 72. 6644-6652.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドのラクトン環のC−23位にミシノースを付加したロザミシン誘導体を産生できる放線菌株、及びそれを用いたロザミシン誘導体の製造方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、ロザミシン(Rosamicin)生産菌を宿主として用いて還元糖生合成遺伝子を導入することによって、ロザミシン(Rosamicin)に新たに還元糖を付加したロザミシン誘導体を産生できる新規な放線菌株を構築することを試みた。その結果、ロザミシン(Rosamicin)を生産できる放線菌株にmycinose生合成遺伝子を導入することによって、ロザミシン(Rosamicin)のラクトン環のC−23位にミシノースを付加したロザミシン誘導体を産生できる新規な放線菌株を取得することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株にmycinose生合成遺伝子を導入することにより得られる、ロザミシン(Rosamicin)のラクトン環のC−23位にマイシノースを付加したロザミシン誘導体を産生できる放線菌株。
(2) ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株が、Micromonospora rosaria、Micromonospora capiratae, Micromonospora YS-02930Kのいずれかである、(1)に記載の放線菌株。
(3) ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株が、Micromonospora rosaria である、(1)又は(2)に記載の放線菌株。
(4) ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株が、Micromonospora rosaria IFO13697 である、(3)に記載の放線菌株。
(5) アプラマイシン耐性遺伝子プロモーター制御下でmycinose生合成遺伝子が導入されている、(1)から(4)の何れかに記載の放線菌株。
【0009】
(6) Mycinose生合成遺伝子が、Micromonospora griseorubida由来のmycinose生合成遺伝子である、(1)から(5)の何れかに記載の放線菌株。
(7) Mycinose生合成遺伝子が、Micromonospora griseorubida由来のmycCI遺伝子、mycCII遺伝子、mydI遺伝子、mycE遺伝子、mycD遺伝子、mycF遺伝子、及びmydH遺伝子である、(1)から(6)の何れかに記載の放線菌株。
(8) (1)に記載のロザミシン誘導体が、23−0−マイシノシル−12、13−デエポキシロザミシン、23−O−マイシノシル−20−デオキソー20−ジヒドロー12、13−デエポキシロザミシンである、(1)から(7)の何れかに記載の放線菌株。
(9) 受託番号NITE P−621を有する放線菌株。
【0010】
(10) ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株にmycinose生合成遺伝子を導入することにより得られる放線菌株を培養し、生成されるロザミシン(Rosamicin)のラクトン環のC−23位にMycinoseを付加したロザミシン誘導体を回収することを含む、ラクトン環のC−23位にMycinoseを付加したロザミシン誘導体の製造方法。
(11) ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株が、Micromonospora rosariaである、(10)に記載の方法。
(12) ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株が、Micromonospora rosaria IFO13697である、(10)又は(11に記載の方法。
(13) アプラマイシン耐性遺伝子プロモーター制御下でMycinose生合成遺伝子が導入されている、(10)から(12)の何れかに記載の方法。
【0011】
(14) Mycinose生合成遺伝子が、Micromonospora griseorubida由来のmycinose生合成遺伝子である、(10)から(13)の何れかに記載の方法。
(15) Mycinose生合成遺伝子が、Micromonospora griseorubida由来のmycCI遺伝子、mycCII遺伝子、mydI遺伝子、mycE遺伝子、mycD遺伝子、mycF遺伝子、及びmydH遺伝子である、(10)から(14)の何れかに記載の方法。
(16)(1)に記載のロザミシン誘導体が、23−O−マイシノシル−12、13−デエポキシロザミシン、23−O-マイシノシルー20−デオキソ−20−ジヒドロー12,13−デエポキシロザミシンである、(10)から(15)の何れかに記載の方法。
(17) ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株にmycinose生合成遺伝子を導入することにより得られる放線菌株が、受託番号NITE P−621を有する放線菌株である、(10)から(16)の何れかに記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドのラクトン環のC−23位にMycinoseを付加したロザミシン誘導体を産生できる放線菌株が提供される。当該放線菌株を用いることによって、ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドのラクトン環のC−23位にMycinoseを付加したロザミシン誘導体を製造することができる。本発明の方法により製造されるロザミシン誘導体は、抗菌活性などの生理活性を有するものであり、創薬に応用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
土壌放線菌Micromonospora rosariaが産生する16員環マクロライド抗生物質であるrosamicinはC-5にアミノ糖desosamineをもつ。一方、Micromonospora griseorubidaが産生する16員環マクロライド抗生物質であるmycinamicinはrosamicinと同じくC-5にdesosamineをもち、さらにC-21に中性糖mycinoseを有する(図1)。そこで、本発明では、M. rosariaにM. griseorubidaのmycinose生合成遺伝子の導入を行い、rosamicinのラクトン環のC-23にmycinoseを付加したrosamicin誘導体生産株を作製し、生産された物質の単離、精製、構造解析を行った。そして、rosamicin、mycinamicin II、tylosin誘導体であるdesmycosinとの各被検菌株に対する最小生育阻止濃度(MIC)の比較を行った。
【0014】
現在までにrosamicinの生合成遺伝子の全容は解明されていない。上述したtylosinの他に16員環マクロライド抗生物質で生合成遺伝子が解明されているものはMycinamicin、niddamycin、rosaramicinであり、いずれもアグリコン部分のラクトン環の生合成遺伝子は低級カルボン酸残基の縮合回数分のモジュールが連続している規則性を持つ。そのために、rosamicinの生合成遺伝子も同様な規則性をもつと考えられる(図2)。Rosamicinの生合成遺伝子の解明が出来れば、他のポリケタイド生合成遺伝子と組み合わせることでハイブリッド新規マクロライド抗生物質を生産する放線菌株の作製が可能であると考えられる。
【0015】
Rosamicinのラクトン環部分の生合成に関与するPKS遺伝子の一つであるrosA IIIはモジュール4と5をコードしていると考えられている。このrosA IIIを欠損したnull mutantの作製が可能となれば、例えばmycinamicinのラクトン環部分の生合成に関与するモジュール4と5をコードするPKS遺伝子mycA IIIを導入することでrosamicin のC-6のエチル基がメチル基に変換されたrosamicin誘導体生産菌株を作製することができると考えられる。
【0016】
さらに、この3.8kbのKpn I DNA断片を用いてrosamicin PKS遺伝子破壊株の取得を行う。Rosamicin PKS遺伝子破壊株はrosamicinのラクトン環生合成反応が途中で停止し、rosamicinを生産しない。一方で、desosamine生合成とその付加反応を触媒する酵素活性は保たれた状態である。このrosamicin PKS遺伝子破壊株に多種多様な基質を前駆物質として供給した微生物変換を行うことにより、様々な基質にdesosamineが付加した化合物ライブラリーを作製できるものと考えられる。そして、この化合物ライブラリー中から、desosamineの付加により新たな生理活性を有する化合物の獲得が期待される。
【0017】
上記の仮説を踏まえ、本発明者らは、遺伝子操作技術によりApr耐性遺伝子(Apr:アプラマイシン)がM. rosaria IFO13697で発現することが確認できていることに着目して、Apr耐性遺伝子プロモーター制御下でmycinose生合成遺伝子をM. rosaria IFO13697に導入したM. rosaria TPMA0001を作製した。M. rosaria TPMA0001の培養代謝産物中には、UV吸収285 nmをもち、抗菌活性を示す分子量741の新たな代謝産物IZ1とIZ2(分子量757)を確認することができた。また、その抗菌活性(生物活性)は実施例の表3に示した。
【0018】
mycinose生合成遺伝子をM. rosaria IFO13697に導入したM. rosaria TPMA0001は、
受託番号NITE P−621として、2008年8月1日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−6 郵便番号292−0818)に寄託されている。
【0019】
本発明によるロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドのラクトン環のC−23位にMycinoseを付加したロザミシン誘導体を産生できる放線菌株は、ロザミシン(Rosamicin)を産生できる放線菌株にMycinose生合成遺伝子を導入することにより得られることを特徴とする。
【0020】
ロザミシン(Rosamicin)を産生できる放線菌株の種類は特に限定されないが、例えば、Micromonospora rosaria、Micromonospora capillata, Micromonospora chalcea var. izumensis などを挙げることができる。ロザミシン(Rosamicin)を産生できる放線菌株の具体例としては、Micromonospora rosaria IFO13697、Micromonospora capillata MCRL0904, Micromonospora chalcea var. izumensis ATCC21561などを挙げることができる。
【0021】
本発明においては、mycinose生合成遺伝子は、宿主である放線菌株において発現できるように導入されている。mycinose生合成遺伝子は、適当なプロモーターの制御下で導入することができ、好ましくは、アプラマイシン耐性遺伝子プロモーター制御下でmycinose生合成遺伝子が導入されている。
【0022】
本発明で用いるmycinose生合成遺伝子としては、例えば、Micromonospora griseorubida由来のmycinose生合成遺伝子を用いることができ、具体的には、Micromonospora griseorubida由来のmycCI遺伝子、mycCII遺伝子、mydI遺伝子、mycE遺伝子、mycD遺伝子、mycF遺伝子、及びmydH遺伝子を用いることができる。Micromonospora griseorubida由来のMycinose生合成遺伝子は、Anzai, Y., Saito, N., Tanaka, M., Kinoshita, K., Koyama, Y., and Kato, F. 2003. Organization of the biosynthetic gene cluster for the polyketide macrolide mycinamicin in Micromonospora griseorubida. FEMS Microbiol. Lett. 218. 135-141. Inouye, M., Suzuki, H., Takada, Y., Muto, N., Horinouchi, S., Beppu, T. 1994. A gene encoding mycinamicin III O-methyltransferase from Micromonospora griseorubida. Gene. 1994 .141. 121-124.などの文献に記載されている。また、Micromonospora griseorubida由来のmycCI遺伝子、mycCII遺伝子、mydI遺伝子、mycE遺伝子、mycD遺伝子、及びmydH遺伝子の塩基配列は、DNA Data Bank of Japan(DDBJ) に、登録番号AB089954として登録されている。mycF遺伝子の塩基配列はD16097として登録されている。
【0023】
Mycinose生合成遺伝子は、ベクターに組み込んで、放線菌に導入することができる。ベクターとしては、例えばプラスミドベクター、ファージベクター、コスミドベクター、BACベクター等、多様なベクターやプラスミドが使用できる。Mycinose生合成遺伝子を含む組み換えベクターは、放線菌に導入される。組み換えベクターを放線菌に導入する方法としては、放線菌やベクターの種類によって効率のよい方法を選択することができる。放線菌のベクターを使用する場合は、大腸菌との接合による伝達、放線菌ファージによる感染、宿主菌のプロトプラストへの導入などにより行うことができる。
【0024】
本発明による放線菌株は、ロザミシン(Rosamicin)のラクトン環のC−23にミシノースを付加したロザミシン誘導体を産生できることを特徴とする。ロザミシン(Rosamicin)のラクトン環のC−23にミシノースを付加したロザミシン誘導体は、好ましくは、23−O−ミシノシル−20−デオキソ−20−ジヒドロ−12,13−デエポキシロザミシンである。
【0025】
本発明によれば、上記したロザミシン(Rosamicin)を産生できる放線菌株にmycinose生合成遺伝子を導入することにより得られる放線菌株を培養し、生成されるロザミシン(Rosamicin)のラクトン環のC−23にミシノースを付加したロザミシン誘導体を回収することによって、ロザミシン(Rosamicin)のラクトン環のC−23にミシノースを付加したロザミシン誘導体を製造することができる。
【0026】
培地としては、例えば、炭素源としてグルコース、シュクロース、水飴、デキストリン、澱粉、グリセロール、糖蜜、動・植物油等を含み、窒素源としては大豆粉、小麦胚芽、コーン・スティープ・リカー、綿実粕、肉エキス、ポリペプトン、マルトエキス、イーストエキス、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素等を含む通常の培地を用いることができる。必要に応じ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、塩素、リン酸(リン酸水素2カリウム等)、硫酸(硫酸マグネシウム等)、及びその他の無機塩類を添加することができる。また、必要に応じて、各種ビタミン、グルタミン酸ナトリウム等、アスパラギン(DL-アスパラギン等)等のアミノ酸、ヌクレオチド等の微量栄養素、抗生物質等の選抜薬剤を添加することもできる。
【0027】
培地のpHは、例えばpH5.5〜pH8程度である。培養法としては、好気的条件での固体培養法、振とう培養法、通気撹拌培養法又は深部好気培養法により行うことができる。培養温度は、通常は15℃〜40℃である。
【0028】
培養物からロザミシン誘導体を採取するためには、通常の分離手段、例えば溶剤抽出法、イオン交換樹脂法、吸着又は分配カラムクロマトグラフィー法、ゲル濾過法、透析法、沈殿法、結晶化法等を単独で、又は適宜組み合わせて抽出精製することができる。
【0029】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されることはない。
【実施例】
【0030】
(A)実験材料
(1) 使用菌株
Micromonospora rosaria IFO13697
Escherichia coli DH5α
Escherichia coli JM109
Escherichia coli ET12567/pUZ8002
Escherichia coli S17-1
Micrococcus luteus ATCC9341
Staphylococcus aureus ATCC25923
Salmonella typhimurium ATCC14028
【0031】
(2) プラスミド
【表1】

【0032】
Ampr:Ampicillin resistance
Aprr: Apramycin resistance
Tsrr: Thiostrepton resistance
Tetr: Tetracycline resistance
【0033】
(3) プライマー
mycDend-F-Ap 5'- ggtcgacgggcccgacgtgc-3'(配列番号1)
mycDend-R-Hd 5'- aagcttctacccggtgagcgtcctgg-3' (配列番号2)
Apr-F-EV 5'- gatatcggttcatgtgcagctccatc-3' (配列番号3)
Apr-R-Nc 5'- gctgatgccatgggtcgatc-3' (配列番号4)
mycF-F-Hd 5'- ctgcagtcagcatctcgggttcggac-3' (配列番号5)
mycF-R-Ps 5'- aagcttcgcccaccaggcaaggaggt-3' (配列番号6)
mydH-F-Ps 5'- ctgcaggttgctcgactggaaggggg-3' (配列番号7)
mydH-R-Xb 5'- tctagatcacgcccgacggtcggggg-3' (配列番号8)
【0034】
(4) 使用培地
*試薬は、断りのない限りナカライテスク試薬特級及び、和光純薬特級を使用した。
(i) Luria-bertani broth(LB)
BactoTM tryptone 10.0 g
BactoTM yeast extract 5.0 g
NaCl 5.0 g
Distilled water to 1000mL, adjust pH to 7.2 with NaOH, autoclave.
(LA=LB+1.6% agar)
【0035】
(ii) SOC Medium
BactoTM tryptone 20.0 g
BactoTM yeast extract 5.0 g
NaCl 0.5 g
Distilled water to 980mL, adjust pH to 7.2 with NaOH, autoclave, cool, and then add to the each bottle in the order listed after autoclave.
2.0 M MgCl2・6H2O 5 mL
1.0 M Glucose 20 mL
【0036】
(iii)MR0.1S
BactoTM tryptone 5.0 g
Sucrose 34.2 g
MgCl2・6H2O 10.0 g
Soluble Starch 20.0 g
S-3 meat 8.0 g
Trace element solution 1000μL
Distilled water to 980mL, adjust pH to 7.2 with NaOH, autoclave, cool, and then add to the each bottle in the order listed after autoclave.
0.25 M TES Buffer (pH 7.2) 100 mL
0.5% KH2PO4 10 mL
0.4% FeSO4・7H2O 1000μL
【0037】
(iv)BBLTM Trypticase SoyTM Broth(TSB)
BBLTM Trypticase SoyTM broth 30.0 g
Distilled water to 1000 mL, autoclave.
(TSA=TSB+2.0% agar)
【0038】
(v)Heart Infusion Broth(HIB)
Heart Infusion Broth(栄研化学) 25.0 g
Distilled water to 1000 mL, autoclave.
(HIA=HIB+1.6% agar)
(HISA=HIB+0.8% agar)
【0039】
(vi)Mueller Hinton Broth(MHB)
Mueller Hinton Broth 21.0 g
Distilled water to 1000 mL, autoclave.
【0040】
(5)使用緩衝液
(i)TE buffer
2.0 M Tris-HCl(pH 8.0) 5 mL
0.5 M EDTA・2Na(pH 8.0) 2 mL
Distilled water to 1000 mL, autoclave.
(ii)50×TAE buffer
Tris base 242.0 g
Glacial CH3COOH 57.1 mL
EDTA・2Na(0.5M, pH8.0) 100.0 mL
Distilled water to 1000 mL, autoclave.
(iii)10×TBE buffer
Tris base 162.0 g
EDTA・2Na 9.3 g
Boric acid 27.5 g
Distilled water to 1000 mL, autoclave.
(iv)Trace element solution
ZnCl2 40 mg
FeCl3・6H2O 200 mg
CuCl2・2H2O 10 mg
MnCl2・4H2O 10 mg
Na2B4O7・10H2O 10 mg
(NH4)6Mo7O24・4H2O 10 mg
Distilled water to 1000 mL, autoclave.
(v)Saline-EDTA
NaCl 8.7 g
EDTA・2Na 37.25 g
Distilled water to 1000 mL, adjust pH 8.0 with NaOH, autoclave.
(vi)Tris-SDS
Tris base 12.2 g
Distilled water to 1000 mL, adjust pH 9.0 with NaOH, autoclave,
cool and then add:
SDS 10.0 g
(vii)20×SSC
NaCl 175.32 g
Sodium citrate 88.22 g
Distilled water to 1000 mL, autoclave.
【0041】
(6)酵素試薬
・各種制限酵素は宝酒造及び東洋紡より購入した。
・Lysozymeは生化学工業より購入した。
・Bacterial Alkaline Phosphatase、Ligation Kit、DNA Blunting Kit、PCR Kitは宝酒造より購入した。
・QIAGENRPCR Clonig KitはQIAGENより購入した。
・PhototopeTM-Star Detection Kit、NEBlot Phototope Kit及びGPSR-1 Genome Priming SystemはBioLabsより購入した。
・SequeiTherm EXCELTMII DNA sequencing Kit LCはAmersham Biosciencesより購入した。
【0042】
(7)抗生物質
・Ampicillin、Apramycin、Nalidixic acid、Tetracyclineはナカライテスクより購入した。
・Thiostrepton、RosamicinはSigmaより購入した。
【0043】
(8) 遺伝子操作用、電気泳動用試薬
・臭化エチジウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、尿素、グリシン、N,N,N',N'-メチルエチレンジアミン(TEMED)、は和光純薬より購入した。
・クロロホルム、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)はナカライテスクより購入した。
・アガロースは宝酒造より購入した。
・イソアミルアルコールは半井化学薬品より購入した。
・FicollはPharmaciaより購入した。
・ハイブリバックはコスモバイオより購入した。
・HybondTM-N+membraneはAmersham Biosciencesより購入した。
・LongRangerは宝株式会社より購入した。
【0044】
(9)その他
・RENDOL、KORECTOR−E、RENFIX 、X-Ray Film、印画紙は富士フィルムより購入した。
・シリカゲル 60 F254、シリカゲル 60はメルク株式会社により購入した。
【0045】
実施例1:M.rosaria IFO13697へのMycinose生合成遺伝子の導入図式(図4)
pBluescriptR II SK(+)にmycFの一部、mycCI、mycCII、mydI、mycE、mycDを含むBamHI断片を挿入したプラスミドpMC01(図3)からmycCI、mycCIIの一部を含む1.4kb NcoI-ApaI DNA断片を抽出した。その断片をmycDの3'末端領域のHindIII-ApaI断片とライゲーションした。mycDの3'末端領域のHindIII-ApaI断片はプライマーmycDend-F-Ap、mycDend-R-Hdを用いてpSETP7EFDを鋳型としたPCRにより得た。ライゲーション後、NcoI×HindIIIで消化してmycCI、mycCIIの一部、 mycDの3'末端を含む1.8kb DNA断片を抽出した。
【0046】
この断片とApr耐性遺伝子プロモーター領域のEcoRV-NcoI断片をライゲーションした後、EcoRV×Hind IIIで消化してApr耐性遺伝子プロモーター、mycC I、mycC IIの一部、mycDの3'末端を含む1.9kb DNA断片を得た。Apr耐性遺伝子プロモーター領域のEcoRV-NcoI断片はプライマーApr-F-EV、Apr-R-Ncを使用してpSETP7EFDを鋳型としたPCRで得た。
【0047】
さらに、Apr耐性遺伝子プロモーター、mycCI、mycCIIの一部、mycDの3'末端を含む1.9kb DNA断片とリボソーム結合サイト(RBS) (30bp)を付加したmycF領域のHindIII-PstI断片をライゲーションした。そして、EcoRV×PstIで消化してApr耐性遺伝子プロモーター、mycCI、mycCIIの一部、mycDの3'末端、mycFを含む2.9 kb DNA断片を獲得した。この断片をEcoRV×PstIで消化したLITMUS28に挿入してプラスミドpLMNADFを作製した。RBSを付加したmycF領域のHindIII-PstI断片はプライマーmycF-F-Hd、mycF-R-Psを使用してpSETP7EFDを鋳型としたPCRで得た。pMC01をApaIで消化して抽出したmycCII、mydI、mycE、mycDの一部を含む3.2kb DNA断片をApaIで消化したpLMNADFに挿入して、Apr耐性遺伝子プロモーター、mycCI、mycCII、mydI、mycE、mycD、mycFを含むプラスミドpLAPCDFを作製した。
【0048】
このpLAPCDFをEcoRV×PstIで消化して得られたApr耐性遺伝子プロモーター、mycCI、mycCII、mydI、mycE、mycD、mycFを含む6.1kb DNA断片とRBSを付加したmydH領域のPstI−XbaI断片をライゲーションした。RBSを付加したmydH領域のPstI−XbaI断片はプライマーmydH-F-Ps、mydH-R-Xbを使用してpSETP7EFDを鋳型としたPCRで得た。ライゲーション後、EcoRV×XbaIで消化してApr耐性遺伝子プロモーター、mycCI、mycCII、mydI、mycE、mycD、mycF、mydHを含む6.8kb DNA断片を抽出した。この断片をpSET152のEcoRV-XbaIサイトに挿入し、pSETmycinoseを構築した。
【0049】
実験方法
(1)E. coliからのプラスミド DNAの調製
以下に示す2種類の方法に従った。方法a) は少量のプラスミド DNAを、方法b) はQIAGEN Plasmid Kitを用いて大量のプラスミド DNAを調製するために用いた。
[試薬・培地]
・LB
・Lysozyme solution ・Alkaline-SDS solution
50 mM グルコース 1.0% SDS
25 mM Tris-HCl (pH 8.0) 0.2 M水酸化ナトリウム
10 mM EDTA
・ High Salt solution ・3 M酢酸ナトリウム (pH 5.2)
3 M酢酸カリウム ・2-プロパノール
1.8 M蟻酸 ・70%エタノール
・RNase solution (10 mg/mL) ・100%エタノール
・TE飽和フェノール ・TE buffer
・クロロホルム /イソアミルアルコール (= 48 / 2)
【0050】
方法 a)
1. 小試験管にLB3 mLを入れ、必要に応じて抗生物質を加え、菌を接種して37 ℃で一晩振とう培養した。
2. 培養液1.5 mLをエッペンドルフチューブに移し、4 ℃、6,000 rpm、10 min.遠心し、上清を捨てた(2回)。
3. Lysozyme sol. 150μL加え菌体を完全に懸濁させ、37 ℃で15 min.インキュベートした。
4. Alkaline-SDS sol. 300μLを加えて充分に混合した後、氷中で10 min.インキュベートした。
5. High salt sol. 225μLを加えて充分に混合した後、氷中で20 min.以上インキュベートした。
6. 4 ℃、16,000 rpm、15 min.遠心し、上清600μLを新たなエッペンドルフチューブに移し、2-プロパノール600μLを加えてよく混合後、-80 ℃で30 min.もしくは-20 ℃で2 hr.インキュベートした。
7. 4 ℃、16,000 rpm、10 min.遠心し、上清を捨てた後、70%エタノールで2回洗浄し、減圧乾燥した。
8. 沈殿にRNase sol. 200μLを加えて37 ℃、30 min.インキュベートした。
9. TE飽和フェノール200μL加え混合し、16,000 rpm、5 min.遠心し、水層を新たなエッペンドルフチューブに移した。
10. TE飽和フェノール100μLとクロロホルム/イソアミルアルコール(= 48 / 2) 100μLを加え混合し、16,000 rpm、5 min.遠心した。
11. 水層を新たなエッペンドルフチューブに移した。
12. 3 M酢酸ナトリウム(pH 5.2) 25μLと100%エタノール600μLを加えてよく混和し、-80 ℃で30 min.もしくは-20 ℃で2 hr.以上インキュベートした。
13. 4 ℃、16,000 rpm、10 min.遠心し、上清を捨てた。
14. 70%エタノールで洗浄し、減圧乾燥した。
15. 沈殿をTE buffer 20μLに溶解した。
【0051】
[試薬・培地・キット]
・QIAGEN Plasmid Midi kit (QIAGEN) ・LB
Buffer P1, P2, P3 Buffer QBT
Buffer QC Buffer QF
QIAGEN-tip 100
・2-プロパノール ・70%エタノール
【0052】
方法 b)
1. 300 mL三角フラスコにLB 40 mLを入れ、必要に応じて抗生物質を加え、菌を接種して37 ℃で一晩振とう培養した。
2. 培養液を高速遠心機により4 ℃、6,000 rpm、10 min.遠心分離し、菌体を回収した。
3. 菌体をBuffer P1を 4 mL添加後、再懸濁した。
4. Buffer P2 を4 mL 添加後、充分に混合し、5 min.室温でインキュベートした。
5. 冷却したBuffer P3を4 mL添加し、転倒混和して充分に混和した後、20 min.氷上でインキュベートした。
6. 4 ℃、16,000 rpm、15 min.遠心し(ブレーキslow)、プラスミド DNAを含む遠心上清を回収した。
7. 回収した上清を再度4 ℃、16,000 rpm、15 min.遠心し(ブレーキslow)、プラスミドを含む上清を回収した。
8. QUAGEN-tip 100にBuffer QTB 4 mLを加え、カラムが空になるまで静置流出し、平衡化した。
9. 7で得られた遠心上清をQUIAGEN-tipに添加し、自然落下によりカラムに添加した。
10. QUIAGEN-tipをBuffer QC 10 mLで洗浄した(2回)。
11. Buffer QF 5 mLで溶出した。
12. 溶出したDNA溶液に室温の2-プロパノール3.5 mLを添加し、DNAを沈澱させた。混合後直ちに、4 ℃、16,000 rpm、10 min.遠心し、上清を注意深く除いた。
13. DNAペレットを室温70%エタノール2mLで洗浄し、4 ℃、16,000 rpm、10 min.遠心した。ペレットが移動しないように遠心上清を注意深く除いた。
14. DNAペレットを30 min.以上エバポレーターで減圧乾燥させ、適量のTE Bufferに溶解した。
【0053】
(2)放線菌のtotal DNAの抽出
[試薬・培地]
・TSB ・Tris-SDS
・Lysozyme solution (2 mg/mL) ・saline-EDTA
・2-プロパノール ・70% エタノール
・TE飽和フェノール ・3 M 酢酸ナトリウム (pH 5.2)
・クロロホルム / イソアミルアルコール (=48 / 2) ・100% エタノール
・TE buffer
【0054】
方法
1. 選択薬剤を含むTSB 5 mLでM. rosaria を3〜4日間、27 ℃で振とう培養した。
2. 前培養液1 mLを0.2 % glycineおよび選択薬剤を含むTSB broth 40 mLに接種し、4〜6日、27 ℃で振とう培養した。
3. 50 mLファルコンチューブにて3,000 rpm、10 min.遠心した。
4. 上清を除去し、Saline-EDTA 20 mL加え懸濁し、ホモジナイズした。
5. ホモジナイズしたM. rosariaをファルコンチューブに戻し、3,000 rpm、10 min.遠心した。
6. 上清を捨て、Saline-EDTAを5 mL加え、37 ℃で30 min.インキュベートした。
7. 60 ℃にしておいたTris-SDSを15 mL加えて、60 ℃で10 min.インキュベートした。
8. TE飽和フェノールを20 mL加え、ロータリーシェーカーにて20 min.振とうし、3,000 rpm、20 min.遠心分離した。
9. 上清を別のチューブにとって、TE飽和フェノールを10 mL加え、ロータリーシェーカーにて10 min.振とうした後、15,000 rpmで10 min.遠心分離した。
10. 上清を別のチューブに移し、TE飽和フェノール7 mLとクロロホルム /イソアミルアルコール(=48 / 2)7 mLを加えて30 sec.混合し、15,000 rpmで10 min.遠心した。
11. 上清を別のチューブにとり、等量の2-プロパノールと3 M酢酸ナトリウム 2.5 mL加えてガラス棒にtotal DNAを巻き取った。
12. ガラス棒に巻き取ったDNAを100%エタノールで洗い、減圧乾燥してTE Buffer 5 mLに溶かした。
13. 必要に応じて濃縮した。
【0055】
(3)アガロースゲル電気泳動
[試薬]
・1×TAE buffer ・10×Loading buffer
・アガロースゲル ・臭化エチジウム染色液
【0056】
方法
1. サンプルDNAに1/10容量のLoading bufferを加え、アガロースゲルにアプライし、50 Vもしくは100 Vの定電圧で泳動を行った。
2. 臭化エチジウム染色液に15 min.浸した。
3. UV照射下で写真撮影を行った。
【0057】
(4)制限酵素によるDNAの切断
[試薬]
・10×Restriction buffer ・制限酵素
【0058】
方法
1. 切断反応は、反応溶液50μLあたりプラスミドを1〜2μL加え、それぞれの添付Bufferを1/10容量ずつ加えた。また、必要に応じてRNaseを加えた。
2. 制限酵素は、DNA 1μgあたり1〜3unit使用し、それぞれ制限酵素の至適条件下で反応させた。
【0059】
(5)アガロースゲルからのDNA抽出
[試薬・キット]
・DNA Clean II Kit (フナコシ)
・TE buffer
・6 M NaI
・NEW WASH
・ Glass milk
【0060】
方法
1. アガロースゲル電気泳動を行い、目的とするDNAバンドの部分を切り出した。
2. ゲルを1.5 mLエッペンドルフチューブに入れて重量を測定した。
3. ゲルの3倍量の6M NaIを加え、55 ℃でインキュベートし、ゲルを溶解した。
4. Glass milk 5μLをよく混合した後、溶液に加え、室温で5 min.インキュベートした。
5. 4 ℃、12,000 rpm、1 min.遠心を行い、上清を捨てた。
6. 沈殿にWash sol. 500μLを加え懸濁し、1 min.遠心後、上清を取り除いた。(この操作を2回繰り返した。)
7. 遠心エバポレーターにより減圧乾燥した。
8. 沈殿をTE buffer 10μLに懸濁し、55 ℃、3 min.インキュベートした。
9. 4 ℃、12,000 rpm、1 min.遠心を行い、上清を新しいエッペンドルフチューブに移した。
10. 沈殿をTE buffer 5μLで懸濁し、55 ℃、3 min.インキュベートした。
11. 4 ℃、12,000 rpm、1 min.遠心を行い、上清をエッペンドルフチューブに移した。
【0061】
(6)Bacterial Alkaline Phosphatase処理
[試薬]
・Alkaline Phosphatase (E.coli C75) ・3 M酢酸ナトリウム (pH 5.2)
・10× Alkaline Phosphatase buffer ・2-プロパノール
500 mM Tris-HCl ・70%エタノール
10 mM塩化マグネシウム ・クロロホルム
・TE飽和フェノール ・100%エタノール
・TE buffer
【0062】
方法
1. エッペンドルフチューブ内で次の反応液を調製し、全量200μLとした。
DNA fragment solution 180μL
10×Alkaline Phosphatase buffer 20μL
Alkaline Phosphatase(0.3〜0.6 unit/mL) 2μL
2. 65 ℃で30 min.インキュベートした。
3. 液量と等量のTE飽和フェノールを加え、1 min.混和した。
4. 4 ℃、16,000 rpm、5 min.遠心し、水層を新たなチューブに移した。
5. 液量と等量のクロロホルム /TE飽和フェノールを加えて1 min.混和した。
6. 4 ℃、16,000 rpm、5 min.遠心した。(この操作を2回繰り返した。)
7. 水層を新たなチューブに移し、液量と等量のクロロホルムを加えて1 min.混和した。
8. 4 ℃、16,000 rpm、5 min.遠心し、水層を新たなチューブに移した。
9. 液量の1/10容量の3 M酢酸ナトリウム (pH 5.2)と3倍量の100%エタノールを加え、-80 ℃で30 min.もしくは-20 ℃で2 hr.以上インキュベートした。
10. 4 ℃、16,000 rpm、10 min.遠心した。
11. 上清を捨て、70%エタノールで洗浄し、減圧乾燥した。
12. TE bufferに溶解してサンプルとした。
【0063】
(7) DNA断片のライゲーション
[試薬・キット]
・DNA Ligation Kit Mighty Mix
【0064】
方法
1. 直鎖状DNAを含む溶液にMighty Mixを等量もしくは2倍量加えた。
2. 16 ℃で30 min.以上もしくは4 ℃で一晩インキュベートを行い、DNAサンプルとした。
【0065】
(8)DNA末端のブランティング及びライゲーション
[試薬・キット]
・DNA Blunting Kit ・DNA Ligation Kit Mighty Mix
T4DNA Polymerase
Dilution buffer
10×Blunting buffer
【0066】
方法
1. エッペンドルフチューブに、ベクターDNAおよびインサートDNAを混ぜ、10×Blunting buffer 1μlを加え、滅菌水を加えて全量を9μlとした。
2. 70 ℃で、5 min.インキュベートした。
3. 37 ℃で、3 min.インキュベートした。
4. T4DNA Polymerase 1μlを静かに加えて、さらに37 ℃で5 min.インキュベートした。
5. ボルテックスを用いて激しく攪拌した。
6. この反応液に、等量のMighty Mix solutionを加えて、16 ℃で30 min.もしくは4 ℃で一晩インキュベートした。
【0067】
(9)形質転換
[試薬・培地]
・competent cell(E. coli JM109、ET12567/pUZ8002、S17-1)
・SOC ・LA
【0068】
方法
1.competent cellを氷中で融解し、competent cell懸濁液に対して10〜20%容量のDNA溶液を加えて穏やかにピペッティングし、氷中で30 min.インキュベートした。
2. 42 ℃、45 sec.の熱処理を行った後、2 min.氷冷した。
3. 9倍量のSOCを加え、37 ℃で75 min.振とう培養した。
4. 選択薬剤を含む20 mL LA plate に1/10量の菌液を塗布した。
5. 6,000 rpm、10 min.遠心し、上清を100μL残して取り除き、菌体を懸濁して選択薬剤等を含む 20 mL LA plateに塗布し、37 ℃で一晩培養した。
【0069】
(10)エレクトロポレーション
[使用機器]
・MicroPulserTM(BIO RAD)
[試薬・培地]
・competent cell(E. coli DH5α) ・SOC
・LA
【0070】
方法
1. E. coli DH5α electron cell 100μLにDNA溶液2μL加え、穏やかにピペッティングし、セルに移し、1 min.氷中でインキュベートした。
2. E. coliに電圧をかけたのち、1 min.氷中でインキュベートした。
3. セルにSOC 900μLを加え、懸濁した後、1.5 mL エッペンドルフチューブに移した。
4. 37 ℃、75 min.インキュベートした。
5. 選択薬剤を含む20 mL LA plateに菌液100μLを塗布した。
6. 残りの菌液を6,000 rpm、10 min.遠心した。
7. 上清800μL除去し、菌液を懸濁し、選択薬剤を含む20 mL LA plateに塗布し、37 ℃で一晩培養した。
【0071】
(11)接合
[試薬・培地]
・TSB ・LB
・MR0.1S ・選択薬剤
・Nalidixic acid
【0072】
方法
1. 選択薬剤を含む TSB 5mLにM. rosariaを接種し、27 ℃で3〜4日間振とう培養した。
2. 選択薬剤を含むLB 3 mLでE. coli形質転換株を37 ℃で一晩振とう培養した。
3. 選択薬剤を含むLB 10 mLを加えた40 mLナルゲンチューブに2.の培養液500μL加え、37 ℃で180 min.振とう培養した。
4. 3.を6,000 rpm、10 min.遠心した。
5. 上清を除去した。
6. TSB 10 mLで5.をよく懸濁させた。
7. 6,000 rpm、10 min.遠心した。
8. 4〜7.の操作を再度行った。
9. TSB 500μLに懸濁した。
10. 1.の培養液を15 mLチューブに移し、3,000 rpmで10 min.遠心した。
11. 上清を除去した。
12. TSB 5 mLでよく懸濁させた。
13. 3,000 rpm、10 min.遠心した。
14. 菌体量と等量のTSBで懸濁した。
15. 9.の懸濁液と14.の懸濁液を混ぜ、MR0.1S平板に150μLずつ塗布した。
16. 27 ℃で20〜24 hr.培養した。
17. 選択薬剤を1 mLずつ15.のシャーレに添加した。
18. クリーンベンチ(UV Off)で40 min.乾燥させた。
19. 27 ℃で培養した。
【0073】
(12)トランスポゾンの挿入
[試薬・キット]
・10×GPS buffer ・pGPS1.1
・Tns ABC Transposase ・Start solution
【0074】
方法
1. 10×GPS buffer 1μL、pGPS1.1 0.5μL、約0.1μgのプラスミドDNAをエッペンドルフチューブにとり、滅菌水を加えて、total 9μLとした。
2. Tns ABC Transposase 0.5μLを加えて、37 ℃で10 min.インキュベートした。
3. Start solution 0.5μLを加えて混合し、37 ℃で1 hr.インキュベートした。
4. 75 ℃で10 min.インキュベートした。
5. E. coliに形質転換した。
【0075】
実施例2:Southern hybridization による遺伝子導入の確認データ(図5)
実施例1で得られた菌株のうち2株についてApr耐性遺伝子プロモーター制御下のmycinose生合成遺伝子(mycCI、CII、D、E、F、mydH、I)が導入されているか確認するためにサザンハイブリダイゼーションを行った。各M. rosariaのtotal DNAをEcoRV×XbaIで消化し、プローブにはmydIの一部とmycEの一部を含む1.0kb BglII断片、mycFを含む1.0kb HindIII-PstI断片、mydHを含む0.7kb PstI-XbaI断片を用いた。これら全てのプローブにおいて、Apr耐性遺伝子プロモーター、mycCI、mycCII、mydI、mycE、mycD、mycF、mydHを含む6.8kbの位置でシグナルが得られた(図5)。この結果より、Apr耐性遺伝子プロモーター制御下のmycinose生合成遺伝子(mycCI、CII、D、E、F、mydH、I)が導入されていることが確認できた。これらの株をM. rosaria TPMA0001とした。しかし、2株のうちの1株では各プローブにおいて23 kb以上の位置においてもシグナルが観察された。このため、以降の研究は23 kb以上の位置でのシグナルが観察されなかった株で行った。
【0076】
サザンハイブリダイゼーション
a)プローブ作製
[試薬・キット]
・NEBlot Phototope Kit
nuclease free H2O dNTP mix(contains dNTPs and Biotin-dATP)
5×labeling mix Klenow Fragment
・0.2 M EDTA・2Na(pH 8.0) ・7.5 M酢酸アンモニウム
・100%エタノール ・70%エタノール
【0077】
方法
1. DNA溶液2μLと nuclease free H2O 32μLで総量を34μLとした。
2. 5 min.熱変性を行い、氷中で急冷し5 min. インキュベートした。
3. 4 ℃で軽く遠心した後、次の反応液を調製し、全量を50μLとした。
5×labeling mix 10μL
dNTP mix 5μL
Klenow Fragment 1μL
4. 37 ℃で一晩インキュベートした後、0.2 M EDTAを5μL加えた。
5. 27μL容量の7.5 M酢酸アンモニウムと200μLの100%エタノール入れ、-80 ℃で30 min.インキュベートした。
6. 16,000 rpmで10 min.遠心し、上清を取り除き70%エタノールで洗浄し、減圧乾燥した。
7. TE Buffer 20μLに溶解した。
【0078】
b) サザントランスファー
[使用機器]
・BIORAD Vacum Blotter Model 785(BIORAD)
[試薬]
・0.25 M塩酸 ・0.5 M 塩化ナトリウム
・HybondTM-N+membrane ・20×SSC
【0079】
方法
1. 濃度調整をした各total DNAを制限酵素処理し、50 Vで電気泳動した。
2. ゲルを0.25 N 塩酸で15 min.振とうした。
3. 再留水で2回ゲルを洗浄し、0.5N水酸化ナトリウムで30 min.振とうした。
4. 再留水で2回ゲルを洗浄した。
5. Vacume Blotterを用いてHybrid-N+membraneにDNAを移した。
6. 2×SSCで10 min.振とうした。
7. メンブレンを乾燥させ、UV固定を行った。
【0080】
c) ハイブリダイゼーション
[試薬・キット]
・Prehybridization solution ・20×SSC
6×SSC ・X-RAY firm
5×Denhardt's reagent ・RENDOL(現像液)
0.5% SDS ・RENFIX(定着液)
100 mg/mL Salmon sperm DNA ・ハイブリバック
・Blocking solution (pH 7.2) ・Wash solution II (pH 7.2)
5% SDS 10 mM Tris-HCl
25 mMリン酸ナトリウム 10 mM塩化ナトリウム
125 mM塩化ナトリウム 1 mM塩化マグネシウム
・phototopeTM-Star Detection Kit (BioLabs)
Streptavidin
BAP(Biotin Alkaline Phosphatase) solution
25× CDP Star Diluent
25 mM CDP-Star solution
【0081】
方法
1. メンブレンをハイブリバックに入れ、Prehybridization solutionを加え、空気を抜いてシールした後、68 ℃で1.5 hr.インキュベートした。
2. プローブ3μLに滅菌水 50μLを添加して10 min.熱変性させた後、10 min.氷冷した。
3. メンブレンの入ったハイブリバックにプローブを添加し、68 ℃、一晩インキュベートした。
4. 2×SSC、0.1 % SDS solution 30 mLにメンブレンを入れ、室温で5 min.洗浄した (2 回)。
5. 0.1×SSC、0.1 % SDS solution 30 mLにメンブレンを入れ、68 ℃で30 min.洗浄した (2 回)。
6. Blocking solution 30 mL にメンブレンを入れ、室温で5 min.振とうした。
7. Streptavidin solutionを15μL加えたBlocking solution 15 mLを6.に添加し、更に室温で5 min.振とうした。
8. 10倍希釈したBlocking solution (Wash solutionI) 30 mLにメンブレンを入れ、室温で5 min.洗浄した (2回) 。
9. BAP solution 30μLを添加したBlocking solution 30 mLにメンブレンを入れて、室温で5 min.振とうした。
10. 30 mLのBlocking solutionで5 min.洗浄した。
11. 10倍希釈したWash solution II 30 mLで5 min.洗浄した (2回) 。
12. メンブレンをハイブリバックにいれ、滅菌水3 mLに25 mM CDP-Star Reagent 12μLとCDP-Star Assay Buffer 240μLを加え、これをメンブレンに5 min.なじませた。
13. 液を捨て、空気を抜いてハイブリバックを密封した。
14. フィルムホルダーにメンブランを留め、その上にX-RAY firmを置いて、30 min.感光した。
15. X-RAY firmを現像液に入れてシグナルが出てくるまで浸し、水を入れたトレーで30 sec.洗い、定着液に3 min.表裏返しながら浸した。
16. 水道水で洗浄した。
【0082】
(14)PCR
[使用機器]
・GeneAmpR PCR system 9700(Applied Biosystem)
[試薬・キット]
Ex Taq 0.5μL
10×PCR Buffer 2.5μL
dNTP Mixture 4.0μL
DNA template 0.5μL
primer F 0.5μL
primer R 0.5μL
滅菌水 16.5μL / 25μL
【0083】
方法
1. 上記に示す反応液を調製した。
2. 1.の反応液を混合後、GeneAmpR PCR System 9700を用いて、次のプログラムで反応を行った。
(94 ℃ 2 min) → (94 ℃ 30 sec. 55 ℃ 30 sec及び72 ℃ 2 min)を35サイクル → 72 ℃ → 4 ℃
3. 反応終了後、4 ℃に保存した。
【0084】
(15)ダイデオキシ法による塩基配列の決定
a) シークエンスゲルの作製
[試薬・キット]
・尿素 ・TEMED
・10% APS ・10×TBE
・Long Ranger gel solution
【0085】
方法
1. ガラス板を再留水とエタノールでよく磨き、ゲル板を組み立てた。
2. 以下のものを混合し、再留水で全量を60 mLとし、スターラーで約1 hr.撹拌後、吸引ろ過し、脱気した。
尿素 25.2 g
10×TBE 6.0 mL
Long RangerR gel solution 4.5 mL
3. 2.の液に40μLのTEMEDと400μLの10% APSを加え、穏やかに混ぜ、ゲル板の上側から素早く液をガラス板の間に流し込んだ。
4. 上端にスペーサーを差し、一晩放置しゲルを固めた。
5. ゲルが完全に固まったら、上端のスペーサーを抜いてコームを差し込み、シークエンスゲルとして用いた。
【0086】
b) 2本鎖DNAを用いたDye primerシークエンス
[使用機器]
・LI-COR model 4000(LI-COR)
[試薬・キット]
・SequeiTherm EXCELTMIIDNA sequencing Kit LC
3.5× Reaction buffer
SequiTherm DNA polymerase
ddNTP termination mix
・IRD800-labeled Primer、IRD700-labeled Primer (Aloka)
・Stop solution (Aloka)
【0087】
方法
1. 1サンプルあたりReaction buffer 7.2μL、SequiTherme DNA polymerase 1μL、滅菌水3.8μLを用い、これをpremix 1とした。
2. premix 1にDNA template 5μL、IRD700 0.5μLとIRD800 1μLを入れpremix 2とした。
3. 4本のPCR用チューブにそれぞれpremix 2を4μLとddATP、ddCTP、ddGTP、ddTTPのいずれかのtermination mix 2μL分注し、全量6μLとし以下の反応を行った。
95 ℃ 5 min. → (95 ℃ 30 sec. 50 ℃ 30 sec. 70 ℃ 60 sec.)を30 cycle → 4 ℃
4. stop solutionを3μLずつ加えた。
5. 94 ℃、3 min.処理した後、0.8μLをシークエンスにloadingした。
6. LI-COR model 4000でシークエンス解析を行った。
【0088】
実施例3:培養代謝産物の抽出
[試薬・培地]
・TSB ・28%アンモニア水
・酢酸エチル ・メタノール
【0089】
a) Small scale
方法
1. 中試験管にTSB 5 mL添加し、M. rosariaの菌体を接種し、27 ℃で6日間振とう培養した。
2. 15 mLチューブに培養液を移し、28%アンモニア水を加えてpH 9〜11とした。
3. 等量の酢酸エチルを加え、5 min.振とうした。
4. 4 ℃、3,500 rpmで10 min.遠心した。
5. 酢酸エチル層を新しい15 mLチューブに移し、遠心エバポレーターにより減圧乾固した。
6. 適当な濃度になるようにメタノールに溶解した。
【0090】
b) Large scale
方法
1. 中試験管にTSB 5 mL添加し、M. rosariaの菌体を接種し、27 ℃で3日間振とう培養した。
2. 坂口フラスコ 32本にそれぞれTSB 300 mL添加し、前培養した菌液800μLを接種し、27 ℃で6日間振とう培養した。
3. 培養液に28%アンモニア水を加えてpH 9〜11とした。
4. 等量の酢酸エチルを加え、振とうした。
5. 分液ロートで酢酸エチル層を分取した。
6. 水層については3.〜5.を2回行った。
7. 分取した酢酸エチル層をエバポレーターにより蒸発乾固した。
8. 適当な濃度になるようにメタノールに溶解した。
【0091】
培養代謝産物の抽出
[試薬・培地]
・TSB ・28%アンモニア水
・酢酸エチル ・メタノール
【0092】
a) Small scale
方法
1. 中試験管にTSB 5 mL添加し、M. rosariaの菌体を接種し、27 ℃で6日間振とう培養した。
2. 15 mLチューブに培養液を移し、28%アンモニア水を加えてpH 9〜11とした。
3. 等量の酢酸エチルを加え、5 min.振とうした。
4. 4 ℃、3,500 rpmで10 min.遠心した。
5. 酢酸エチル層を新しい15 mLチューブに移し、遠心エバポレーターにより減圧乾固した。
6. 適当な濃度になるようにメタノールに溶解した。
【0093】
b) Large scale
方法
1. 中試験管にTSB 5 mL添加し、M. rosariaの菌体を接種し、27 ℃で3日間振とう培養した。
2. 坂口フラスコ 32本にそれぞれTSB 300 mL添加し、前培養した菌液800μLを接種し、27 ℃で6日間振とう培養した。
3. 培養液に28%アンモニア水を加えてpH 9〜11とした。
4. 等量の酢酸エチルを加え、振とうした。
5. 分液ロートで酢酸エチル層を分取した。
6. 水層については3.〜5.を2回行った。
7. 分取した酢酸エチル層をエバポレーターにより蒸発乾固した。
8. 適当な濃度になるようにメタノールに溶解した。
【0094】
実施例4:カラムクロマトグラフィー
[試薬]
・シリカゲル60 ・クロロホルム
・メタノール ・28%アンモニア水
【0095】
方法
1. クロロホルムにシリカゲル60を懸濁して、直径3 cm×長さ24.5 cmのカラムを作製した。
2. 展開溶媒(クロロホルム:メタノール:28%アンモニア=100 : 10 : 1)でカラムを置換した。
3. サンプルを加え、展開溶媒で50 mL×25画分溶出した。
4. 溶出液をエバポレーターで蒸発乾固した。
5. 適当な濃度になるようにメタノールに溶解した。
【0096】
実施例5:TLCによる抗菌性試験
[試薬・培地]
・シリカゲル 60 F254 ・クロロホルム
・メタノール ・28%アンモニア水
・HI Broth ・HI Agar
・HI Soft Agar
【0097】
方法
1. HI Broth 3 mLにM. luteus ATCC9341を植菌し、37 ℃で一晩振とう培養した。
2. サンプル2μLをシリカゲルTLC板にスポットし、メタノールを除去した後、クロロホルム:メタノール:28%アンモニア水=100 : 10 : 1で展開した。
3. TLC板から溶媒を除去し、M. luteus ATCC9341を加えたHI Soft Agarを重層した。
4. 室温に10 min.放置後、クリーンベンチで30 min.風乾させ、4℃に4 hr.放置後、37 ℃で一晩培養し、阻止帯を観察した。
【0098】
実施例6:TLCによる糖発色試験
[試薬]
・P-アニスアルデヒド酸性試薬 ・クロロホルム
メタノール 85 mL
氷酢酸 10 mL
硫酸 5 mL
p-アニスアルデヒド 0.5 mL
・メタノール ・28%アンモニア水
・シリカゲル 60 F254
【0099】
方法
1. メタノールに溶解したサンプル2μLをシリカゲルTLC板にスポットし、クロロホルム:メタノール:28%アンモニア水=100 : 10 : 1で展開した。
2. TLCプレートをよく風乾させて後、p-アニスアルデヒド酸性試薬を噴射し、170 ℃に放置し、発色を確認した。
【0100】
結果
結果を図7に示す。
【0101】
実施例7:HPLCによる分析
[使用機器]
・Diode Array Detector L-2410 (HITACHI)
・pump L-2130 (HITACHI)
・TSK-GEL ODS-80TM 150×4.6mm (TOSOH)
[試薬]
・アセトニトリル ・TFA
【0102】
方法
移動相にアセトニトリル:0.06% TFA=35 : 65を用いて,流速1.0 mL/min.もしくは0.8 mL/min.、UVスペクトル200〜300 nmの範囲でサンプルを分析した。
【0103】
結果
M. rosaria IFO13697及びM. rosaria TPMA0001の酢酸エチル抽出物のHPLC分析の結果を図6に示す。
【0104】
実施例8:HPLCによる分取
[使用機器]
・PU-1580(日本分光)
・R1-17(shodex)
・YMC-Park pro C18 150×20mm(YMC HPLC)
[試薬]
・アセトニトリル ・TFA
【0105】
方法
移動相にアセトニトリル:0.06% TFA=35 : 65(IZ1分取時)もしくはアセトニトリル:0.06% TFA=30 : 70(IZ2分取時)を用いて、流速5 mL/min.、UVスペクトル280 nmでサンプルを分取した。
【0106】
実施例9:LC-MS分析
[使用機器]
・LCMS-2010 (SIMADZU)
・column oven CTO-10AVP (SHIMADZU)
・pump LC-10AVP (SHIMADZU)
・フォトダイオードアレイSPD-M10A (SHIMADZU)
・STR ODS-II150×2.0mm (SHINWA CHEMICAL)
[試薬]
・アセトニトリル ・TFA
【0107】
方法
移動相にアセトニトリル:0.06% TFA=35 : 65を用いて、流速0.2 mL/min.、UVスペクトル200〜300 nm、m/z 500〜800の範囲でサンプルを分析した。
【0108】
結果
IZ1及びIZ2のMS分析の結果を図7に示す。
【0109】
実施例10:NMR解析
[使用機器]
・JEOL ECP-500型 FT-NMR(1H : 500 MHz、13C : 125MHz) (日本電子)
[試薬]
・テトラメチルシラン(TMS : δ0.00 ppm) ・重クロロホルム
【0110】
方法
1. 十分に乾燥させたサンプルを重クロロホルムに溶解した。
2. NMR sumpling tubeに高さ40〜42 mmになるようにサンプルを加えた。
3. TMSを1μL添加して測定した。
【0111】
IZ1のNMR解析の結果を表2に示す。
【表2】

【0112】
上記したNMRスペクトルによる解析の結果から、IZ1の構造は、以下に示す23−O−ミシノシル−20−デオキソ−20−ジヒドロ−12,13−デエポキシロザミシンであることが推定された。
【0113】
【化1】

【0114】
実施例11:MIC測定
MIC測定は普通ブロス(液体培地)にて表3に示す各薬剤を希釈し、菌の発育の有無で判定した。薬剤は倍々希釈(100ug/ml〜0.02ug/mlの範囲)して用いた。結果を表3に示す。何れの化合物も強い抗菌活性を有していることが判明した。
【0115】
【表3】

【0116】
【化2】

【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、Mycinamicin II、Rosamicinの構造式を示す。
【図2】図2は、Rosamicinの推定生合成経路を示す。
【図3】図3は、pMC01の構造を示す。
【図4】図4は、M.rosaria IFO13697へのmycinose生合成遺伝子の導入の概要を示す。
【図5】図5は、Apr耐性遺伝子プロモーター制御下のmycinose生合成遺伝子導入株のサザンハイブリダイゼーションを示す。
【図6】図6は、M. rosaria IFO13697及びM. rosaria TPMA0001の酢酸エチル抽出物のHPLC分析の結果を示す。
【図7】図7は、IZ1及びIZ2のMS分析の結果、及びTLCによる糖発色試験の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株にmycinose生合成遺伝子を導入することにより得られる、ロザミシン(Rosamicin)のラクトン環のC−23にミシノースを付加したロザミシン誘導体を産生できる放線菌株。
【請求項2】
ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株が、Micromonospora rosaria,Micromonospora capiratae, Micromonospora YS-02390Kのいずれかである、請求項1に記載の放線菌株。
【請求項3】
ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株が、Micromonospora rosariaである、請求項1又は2に記載の放線菌株。
【請求項4】
ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株が、Micromonospora rosaria IFO13697である、請求項3に記載の放線菌株。
【請求項5】
アプラマイシン耐性遺伝子プロモーター制御下でmycinose生合成遺伝子が導入されている、請求項1から4の何れかに記載の放線菌株。
【請求項6】
Mycinose生合成遺伝子が、Micromonospora griseorubida由来のMycinose生合成遺伝子である、請求項1から4の何れかに記載の放線菌株。
【請求項7】
Mycinose生合成遺伝子が、Micromonospora griseorubida由来のmycCI遺伝子、mycCII遺伝子、mydI遺伝子、mycE遺伝子、mycD遺伝子、mycF遺伝子、及びmydH遺伝子である、請求項1から5の何れかに記載の放線菌株。
【請求項8】
請求項1に記載のロザミシン誘導体が、23−0−マイシノシルー12,
13−デエポキシロザミシン、23−0−マイシノシルー20−デオキシ−20−ジヒドロー12,13−エポキシロザミシンである、請求項1から7の何れかに記載の放線菌株。
【請求項9】
受託番号NITE P−621を有する放線菌株。
【請求項10】
ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロロライドを産生出来る放線菌にmicinose生合成遺伝子を導入する事により得られる放線菌株を培養し、生成されるロザミシン(Rosamicin)のラクトン環のC−23にミシノースを付加したロザミシン誘導体を回収することを含む、ロザミシン(Rosamicin)のラクトン環のC−23にミシノースを付加したロザミシン誘導体の製造方法。
【請求項11】
ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株が、Micromonospora rosariaである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株が、Micromonospora rosaria IFO13697である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
アプラマイシン耐性遺伝子プロモーター制御下でmycinose生合成遺伝子が導入されている、請求項10から12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
Mycinose生合成遺伝子が、Micromonospora griseorubida由来のmycinose生合成遺伝子である、請求項10から13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
Mycinose生合成遺伝子が、Micromonospora griseorubida由来のmycCI遺伝子、mycCII遺伝子、mydI遺伝子、mycE遺伝子、mycD遺伝子、mycF遺伝子、及びmydH遺伝子である、請求項10から14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載のロザミシン誘導体が、23−O−マイシノシル−12、13−デエポキシロザミシン、23−Oーマイシノシルー20−デオキシ−20−ジヒドロー12、13−デエポキシロザミシンである、請求項10から15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
ロザミシン(Rosamicin)類似の16員環マクロライドを産生できる放線菌株にmycinose生合成遺伝子を導入することにより得られる放線菌株が、受託番号NITE P−621を有する放線菌株である、請求項10から16の何れかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−51243(P2010−51243A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219889(P2008−219889)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月5日 社団法人日本薬学会第128年会要旨集にて発表 平成20年3月26日 社団法人日本薬学会第128年会にて発表
【出願人】(508104880)SANSHO株式会社 (5)
【Fターム(参考)】