説明

N−ビニル−2−ピロリドンおよびその製造方法

【課題】 保存安定性に優れたNVPの製造方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも1つの結晶化工程を有するN−ビニル−2−ピロリドンの精製方法を含み、少なくとも1以上の結晶化工程のいずれかに供される晶析原料のガスクロマトグラフィーにより分析される安定性関与成分(A)を100〜30,000ppmの範囲内に調整することを特徴とするN−ビニル−2−ピロリドンの製造方法と特定のN−ビニル−2−ピロリドン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−ビニル−2−ピロリドンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N−ビニル−2−ピロリドン(以下、「NVP」と略称する場合もある。)は、反応性希釈剤として有用であり、その重合物は、生態適合性、安定性、親水性などの長所、利点があることから、従来、医薬品、化粧品、粘接着剤、塗料、分散剤、インキ、電子部品、フォトレジスト材料などの種々の分野で幅広く用いられている。
【0003】
これらの分野では不純物を除去する要求が強いため、NVPを高純度に精製する方法が求められており、例えば、特許文献1には、結晶析出工程と、塔型の精製装置に供給して精製する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、不純物を含む母液を安定剤の存在下に晶析を行ってNVPを精製する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−345993
【特許文献2】特開2004−345994
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献は前記課題を解決する上でかなり有用であったが、さらに有用な製造方法の開発が望まれていた。
【0006】
本発明はこのような観点からなされたものであり、より保存安定性に優れたNVPの製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
また、本発明を保存安定性に優れたN−ビニル−2−ピロリドンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも1つの結晶化工程を有するN−ビニル−2−ピロリドンの精製方法を含み、少なくとも1以上の結晶化工程のいずれかに供される晶析原料のガスクロマトグラフィーにより分析される安定性関与成分(A)を100〜30,000ppmの範囲内に調整することを特徴とするN−ビニル−2−ピロリドンの製造方法、に関する。
【0009】
また本発明は、安定性関与成分(A)は10ppm以上、2,000ppm以下および安定性関与成分(B)は2,000ppm以下であるN−ビニル−2−ピロリドン、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のNVPの製造方法によれば、保存安定性に優れたNVPを得ることができる。
【0011】
また本発明のNVPは、保存安定性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のNVPの製造方法は、少なくとも1つの結晶化工程を有するN−ビニル−2−ピロリドンの精製方法を含み、少なくとも1以上の結晶化工程のいずれかに供される晶析原料のガスクロマトグラフィーにより分析される安定性関与成分(A)を100〜30,000ppmの範囲内に調整することを特徴とする。また、本発明のNVPの製造方法は、NVPの精製方法であることが好ましい。
【0013】
本発明で用いられる晶析原料は、合成法によって限定されるものではないが、例えば、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンを気相脱水反応することで得られる粗製NVPなどが挙げられる。また、かかる合成後に蒸留精製を施すことが好ましい。
【0014】
本発明に使用することができる結晶化工程は、NVPの融点が13.5℃であることから、常温では液体であり、NVPを含む母液を冷却することによってNVPの結晶を析出させる方法であれば、特に制限されることはない。結晶化工程は1以上である。かかる結晶化工程を行うことができる装置としては、強制循環型、多段晶析装置、運搬層型、分級層型、タービュレント型混合分級層、ダブルクリスタライザー、直接冷媒接触冷却晶析装置、凝集物生成方法などの連続晶析装置;タンク式晶析器、スエンソン−ウォーカー晶析器、ホワード晶析器、ドラムフレーカなどの冷却式晶析装置などが例示できる。本明細書では、横型多段冷却晶析装置を代表例として説明する。
【0015】
不純物を含むNVPの精製は、横型多段冷却晶析装置(CDC)を用いて連続的に結晶を析出させることが好ましい。すなわち、晶析原料NVPを連続的にCDCに供給する。供給された原料を、CDCの内部に設けられた複数の冷却板によって冷却し、連続的に結晶化する。析出した結晶を含む母液(NVP融液)は、CDCから排出させてろ過し、NVPの結晶を得る。ろ液にはNVPが含まれるので、CDCの原料として再使用する。
【0016】
CDC内での結晶析出後の母液(結晶と母液の混合スラリー)では、装置内での流動性を確保する観点から、スラリー濃度(スラリー中の結晶濃度)が、例えば5〜60質量%の範囲にあるように結晶の析出量を調整する。
【0017】
前記安定性関与成分(A)は、少なくとも1以上の結晶化工程に供される晶析原料を分析することが好ましい。
【0018】
前記安定性関与成分(A)は、ガスクロマトグラフィーで検出される晶析原料中に含まれる特定の成分であって、その成分を上記の範囲内に入るように晶析原料を調整する。
【0019】
晶析原料中の不純物については、晶析原料全体に対し、通常、10質量%以下程度、好ましくは6質量%以下程度が好ましい。余りにも不純物純度が低い場合、例えば実施例で得られた生成物中の不純物量よりも少ないと本発明の精製工程を経る必要性が少ない。
【0020】
晶析原料は、通常、蒸留NVPを中心とするが、晶析後の母液、後述する結晶精製工程からのNVPを含む洗浄液、または2番目以降の結晶化工程のNVPを含む原料などの回収NVPを加えてもよい。例えば、第2の結晶化工程から第1の結晶化工程に供される場合、第2の結晶化工程から第1と第2の結晶化工程に供される場合、第3の結晶化工程から第2の結晶化工程に供される場合などが挙げられる。ここで、第3の結晶化工程は、第1の結晶化工程と第2の結晶化工程と第3の結晶化工程を直列に接続した場合の第3の結晶化工程などが挙げられる。
【0021】
前記安定性関与成分(A)は、ガスクロマトグラフィー(GC)によって測定する。測定機器及び測定条件は、実施例で説明する。該成分(A)には、MEA(モノエタノールアミン)、GBL(γ−ブチロラクトン)、NMP(N−メチルピロリドン)、2−Py(2−ピロリドン)、軽質分(GCでNVPより先に出てくるもの)が含まれる。しかし、安定剤は含まない。該成分(A)を所定の範囲内に調整することにより、保存安定性に優れたNVPを得ることができる。その際、NVPの着色、臭気に関しても改善することができる。
【0022】
分析用のサンプリングは、少なくとも蒸留NVPと結晶化工程の直前とで行うことが好ましい。GCにより成分(A)を分析する。なお、後述のLCにより成分(B)を分析する。分析結果から該成分(A)と(B)の量を調整し、母液の回収量と母液の廃棄量とを算出する。その外の調整方法には、母液のろ過、活性炭などによる不純物の吸収、遠心分離による不純物の除去、不純物の抽出や凝集などによる除去方法などが挙げられる。
【0023】
該調整は、通常、蒸留NVPと回収NVPとの比率を変えることによって行う。また、回収NVPの一部を廃棄し、あるいは回収NVPの少なくとも一部を蒸留工程で処理してもよい。
【0024】
該成分(A)の割合としては、晶析原料全体に対する成分(A)の割合であって、質量ppmで表され、100〜30,000ppm、好ましくは100〜20,000ppm、より好ましくは100〜15,000ppm、最も好ましくは100〜10,000ppmの範囲である。この範囲において、保存安定性に優れたNVPが得られるからである。
【0025】
本発明において、前記安定性関与成分(A)が所定の範囲内に収まり、かつ、液体クロマトグラフィーにより分析された安定性関与成分(B)が1〜10,000ppmの範囲内に収まるように晶析原料を調整することが好ましい。
【0026】
安定性関与成分(B)には、液体クロマトグラフィー(LC)で測定される晶析原料中に含まれるポリマー成分、特にNVP成分を少なくとも一部含むポリマー及び晶析原料系中のアルデヒドをラジカル発生源とするポリマーが含まれる。測定機器及び測定条件については、実施例で説明する。サンプリング箇所は、GCの場合と同じ箇所である。
【0027】
該成分(B)の割合としては、晶析原料全体に対する成分(B)の割合であって、質量ppmで表され、1〜10,000ppm、好ましくは8,000ppm以下、より好ましくは5,000ppm以下、最も好ましくは3,000ppm以下の範囲である。この範囲において、保存安定性に優れたNVPが得られるからである。
【0028】
本発明において、さらに1以上の結晶精製工程を有することが好ましい。結晶化工程と結晶精製工程との間には、例えばベルト状のろ過器を用いることができる。ここで、結晶精製工程とは、発汗現象を利用して結晶を精製する工程であれば特に制限されることなく、例えば、流下液膜型装置、塔型精製装置などが挙げられる。かかる精製装置を用いることにより、NVPの精製精度をさらに向上させることができる。
【0029】
本発明のNVPは、前記安定性関与成分(A)が10ppm以上、2,000ppm以下及び前記安定性関与成分(B)が2,000ppm以下である。この範囲に設定することにより、NVPの保存安定性が優れたものとなるからである。
【0030】
次に、図面に基づいてさらに詳細に本発明について説明する。
【0031】
図1は本発明のNVPの精製方法の一例を示すフローチャートである。図1において、蒸留NVP1と、結晶化工程2からのろ液である回収NVPとが晶析原料となる。蒸留NVPを得る蒸留工程と結晶化工程は、連続に行ってもよく、またはバッチ方式で行ってもよい。バッチ方式の場合には、タンクなどの貯蔵装置で蒸留NVPを保管する。かかる保管中に、蒸留NVPの純度は低下する傾向にある。蒸留工程と結晶化工程との関係は、以下の図においても、図1と同様である。
【0032】
図2は本発明のNVPの精製方法の別の例を示すフローチャートである。図2において、蒸留NVP1と、結晶化工程2からのろ液、結晶精製工程4からのろ液と発汗液とを含む回収NVPとが晶析原料となる。
【0033】
図3は本発明のNVPの精製方法のその他の例を示すフローチャートである。図3において、二つの結晶化工程と一つの結晶精製工程が含まれ、二つの結晶化工程はそれぞれ直接に結晶精製工程と結ばれている。ここで、第1の結晶化工程2aは蒸留NVP1を原料とし、第2の結晶化工程2bは第1の結晶化工程2aからのろ液と、第2の結晶化工程2bからのろ液と結晶精製工程4からのろ液と発汗液とを含む回収NVPとを晶析原料とする。
【0034】
第1の結晶化工程には蒸留NVPのみが供給され、第2の結晶化工程には回収母液が供給される。このとき、蒸留NVPは回収母液に比べて不純物量(成分A,B)が少ないため、純度の高い結晶が得られる。よって、結晶精製工程に供給される結晶の純度は、図1,2,4のように回収母液が原料となっている結晶を供給している場合に比べて高いため、製品NVPの純度が向上する。また、結晶精製工程の負荷が低くなることから、生産量の増加にもつながる。
【0035】
図4は本発明のNVPの精製方法のその他の別の例を示すフローチャートである。図4において、二つの結晶化工程と一つの結晶精製工程が含まれ、二つの結晶化工程はそれぞれ直接に結晶精製工程と結ばれている。ここで、第1の結晶化工程2aは蒸留NVP1と第2の結晶化工程2bからのろ液と結晶精製工程4からのろ液と発汗液とを含む回収NVPとを晶析原料とし、第2の結晶化工程2bは第1の結晶化工程2aからのろ液だけを晶析原料とする。
【0036】
図1〜4において、符号「S」はサンプリング箇所を示す。
【0037】
図1〜4に示される方法において、図3または図4に示されるプロセスが好まし。すなわち、結晶化工程及び結晶精製工程を有するN−ビニル−2−ピロリドンの精製方法であって、第1の結晶化工程で得られた結晶を該結晶精製工程に供給し、第1の結晶化工程から生じたNVPを含む回収液を第2の結晶化工程に供給し、第2の結晶化工程で得られた結晶を該結晶精製工程に供給し、第2の結晶化工程から生じたNVPを含む回収液と該結晶精製工程から生じたNVPを含む回収液とを第1の結晶化工程及び/又は第2の結晶化工程に供給するプロセスである。なかでも、図3に示されるプロセスが最も好ましい。
【0038】
NVPは非常に不安定な化合物であり、保存期間や安定剤の有無または添加量などの条件によって安定性が変動するものであるが、本発明方法によれば、従来品と同程度の高純度である上に、保存安定性に優れたNVPを提供することができる。着色及び臭いに関する特性についても改良することができる。なお、安定剤としては、NVP用に用いられるものであれば特に制限されることはないが、例えばアンモニア、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、水酸化ナトリウムなどの塩基が挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0040】
(晶析原料NVPの調製方法)
晶析原料NVPは、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンを触媒の存在下、360℃気相分子内脱水反応した後、得られた反応ガスを冷却捕集し、さらに、これを15hPaの圧力下、蒸留塔のボトム温度180℃で蒸留精製することにより調製する。
【0041】
当該晶析原料NVPはストックタンクに保管していたものを使用した。
【0042】
また、晶析原料NVPは、1番目の結晶化工程からの晶析母液を含んでいてもよく、2番目以降の結晶化工程からの晶析母液でもよい。さらには、結晶精製工程からの洗浄液を含んでいてもよい。
【0043】
前記晶析原料NVPおよび晶析精製により得られたNVPの純度および安定性関与成分(A)はガスクロマトグラフィーで、安定性関与成分(B)は液体クロマトグラフィーで測定する。また、得られたNVPの保存安定性試験についても下記の方法で行う。
【0044】
(ガスクロマトグラフィーによる測定方法)
ガスクロマトグラフィー(装置:島津製作所製タイプGC−14B、カラム:SPELCO製タイプSPB−1(30m×0.53mm×1.0μm film thickness),キャリアガス:He,流量:3.3mL/min.、温度:100〜280℃)を用いて、NVPの純度および安定性関与成分(A)を測定する。
【0045】
サンプルを希釈せずに1μL打ち込む。
【0046】
測定条件(昇温条件):図4に示す。
【0047】
(A)成分は、当該GC条件でNVPのリテンションタイムよりも先に検出される全ての成分を意味する。
【0048】
安定性関与成分(A)(ppm):GCの全エリアに対する各物質のエリア比で算出する。
【0049】
(液体クロマトグラフィーによる測定方法)
液体クロマトグラフィー(カラム:昭和電工製Shodex Asahipak GF−310 HQ,溶媒:水、温度:40℃、流量:1.5mL/min.)を用いて測定を行い、市販のポリビニルピロリドン(日本触媒製:K−30)を用いて検量線を作成し、安定性関与成分(B)を測定する。
【0050】
安定性関与成分(B)(ppm):ポリビニルピロリドン(日本触媒製:K−30)を用いて検量線を作成し、ピークのエリア比から算出する。
【0051】
測定液:20%水溶液。
【0052】
打ち込み量:40μL。
【0053】
ピークトップがリテンションタイム=4.0〜4.5のピークを(B)成分とする。
【0054】
(保存安定性の試験方法)
内径3cm、高さ20cmのステンレススチール(SUS304)製の容器中に、得られたNVP100gを投入し、窒素置換し、容器の密閉後、40℃で一定にしたオーブン(三洋電機株式会社製)に保管する。
【0055】
保存開始時および1ヶ月後の色相と粘度を測定することによって保存安定性を評価する。1ヶ月後の色相(APHA)が100以下、かつ、粘度が20mPa・s以下を満たしている場合を合格とし、どちらか1つでも範囲外の場合は不合格とする。
【0056】
(色相の測定方法/APHA法)
色度試験用試薬(色度1,000:和光純薬製)を純水で希釈し、各種の色度標準液を調整する。25mLの比色管にサンプルNVPを25mL加え、標準液と比較して同色度のAPHA番号を測定値とする。
【0057】
(粘度の測定方法)
100mLのトールビーカーにサンプルNVP80gを加え、B型粘度計(25℃、ローター番号1(必要に応じて低粘度用アダプターを取り付ける)、回転数60rpm、芝浦システム株式会社、VDA型)で3分間測定したときのその値をその粘度とする。
【0058】
(実施例1)
蒸留精製したNVP(安定性関与成分(A)が90ppm、安定性関与成分(B)が300ppm)と晶析工程からの回収母液を3:7(質量比)の割合で混合し、安定性関与成分(A)が118ppm及び安定性関与成分(B)が768ppmに調整した晶析原料NVPを横型多段冷却晶析装置(CDC、ガウダ社製)に連続的に供給した。
【0059】
このとき、晶析原料の一部は、安定性関与成分(A)を100〜30,000ppmの範囲、安定性関与成分(B)を1〜10,000ppmの範囲に維持するように、2kg/hで系外に抜き出した。
【0060】
母液の廃棄は、晶析装置からの母液と結晶精製工程から排出された母液と発汗液を混合したものから2kg/hで系外に排出した。
【0061】
晶析装置への原料供給速度を75kg/h、スラリー濃度を20%に調整し、温度6.5℃、滞留時間が4時間の条件で晶析操作を行った。
【0062】
このとき、NVP粗結晶の発生速度は15kg/hであった。
【0063】
次いで、上記スラリーを晶析装置から排出し、ベルト状ろ過機でろ過した。ろ過後のケーキは連続的に結晶精製工程(塔型精製装置、呉羽テクノエンジ株式会社製「KCP]))に供給し、滞留時間1時間、塔頂部において30〜50℃の温水で昇温させることによって、精製NVPを10.5kg/hで得た。
【0064】
得られた精製NVPの純度は99.9955%、安定性関与成分(A)は30ppm、安定性関与成分(B)は125ppmであった。この精製NVPに安定剤N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン 10ppm添加し、保存安定性を確認した。試験開始時の色相は5、粘度は2mPa・sであった。1ヶ月経過後の色相は10、粘度は4mPa・sで合格であった。
【0065】
(実施例2)
蒸留精製したNVP(安定性関与成分(A)が160ppm、安定性関与成分(B)が
250ppm)と晶析工程からの回収母液を4:6(質量比)の割合で混合し、安定性関与成分(A)が1,113ppm及び安定性関与成分(B)が138ppmに調整した晶析原料NVPを横型多段冷却晶析装置(上記と同じ)に連続的に供給したことを除いては、実施例1と同様に行った。
【0066】
このとき、晶析原料の一部は、安定性関与成分(A)を100〜30,000ppmの範囲、安定性関与成分(B)を1〜10,000ppmの範囲に維持するように、2kg/hで系外に抜き出した。
【0067】
母液の廃棄は、晶析装置からの母液と結晶精製工程から排出された母液と発汗液を混合したものから2kg/hで系外へ排出した。
【0068】
得られた精製NVPの純度は99.9896%、安定性関与成分(A)は90ppm、安定性関与成分(B)は300ppmであった。この精製NVPに安定剤N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン 10ppm添加し、保存安定性を確認した。試験開始時の色相は5、粘度は2mPa・sであった。1ヶ月経過後の色相は10、粘度は3mPa・sで合格であった。
【0069】
(実施例3)
蒸留精製したNVP(安定性関与成分(A)が510ppm、安定性関与成分(B)が400ppm)と晶析工程からの回収母液を2:8(質量比)の割合で混合し、安定性関与成分(A)が8,982ppm及び安定性関与成分(B)が1,089ppmに調整した晶析原料NVPを横型多段冷却晶析装置(上記と同じ)に連続的に供給したことを除いては、実施例1と同様に行った。
【0070】
このとき、晶析原料の一部は、安定性関与成分(A)を100〜30,000ppmの範囲、安定性関与成分(B)を1〜10,000ppmの範囲に維持するように、4kg/hで系外に抜き出した。
【0071】
母液の廃棄は、晶析装置からの母液と結晶精製工程から排出される母液と発汗液を混合したものから4kg/hで系外へ排出した。
【0072】
得られた精製NVPの純度は99.9923%、安定性関与成分(A)は50ppm、安定性関与成分(B)は100ppmであった。この精製NVPに安定剤N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン 10ppm添加し、保存安定性を確認した。試験開始時の色相は5、粘度は2mPa・sであった。1ヶ月経過後の色相は10、粘度は3mPa・sで合格であった。
【0073】
(実施例4)
晶析原料NVPの安定性関与成分(A)が20,974ppmおよび安定性関与成分(B)が1,809ppmに調整された以外は、実施例3と同様に行った。
【0074】
得られた精製NVPの純度は99.9898%、安定性関与成分(A)は90ppm、安定性関与成分(B)は100ppmであった。この精製NVPに安定剤N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン 10ppm添加し、保存安定性を確認した。試験開始時の色相は5、粘度は2mPa・sであった。1ヶ月経過後の色相は10、粘度は3mPa・sで合格であった。
【0075】
(実施例5)
晶析原料NVPの安定性関与成分(A)が27,370ppmおよび安定性関与成分(B)が2,520ppmに調整され、系外への排出量が4.5kg/hである以外は、実施例3と同様に行った。
【0076】
得られた精製NVPの純度は99.9875%、安定性関与成分(A)は100ppm、安定性関与成分(B)は110ppmであった。この精製NVPに安定剤N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン 10ppm添加し、保存安定性を確認した。試験開始時の色相は5、粘度は3mPa・sであった。1ヶ月経過後の色相は10、粘度は4mPa・sで合格であった。
【0077】
(実施例6)
安定性関与成分(A)が865ppm及び安定性関与成分(B)が211ppmに調整された蒸留NVPを第1の横型多段冷却晶析装置に連続的に供給した。
【0078】
原料供給速度を180kg/h、スラリー濃度を5%に調整し、温度12.0℃、滞留時間が1時間の条件で晶析操作を行った。
【0079】
このとき、NVP粗結晶の発生速度は9kg/hであった。
【0080】
ついで、上記スラリーを第1晶析装置から排出し、ベルト状ろ過機でろ過した。ろ過後のケーキは連続的に結晶精製工程に供給し、残りの母液は第2の横型多段冷却晶析装置に連続的に供給した。
【0081】
第2の横型多段冷却晶析装置への晶析原料NVPは、安定性関与成分(A)が5,638ppm及び安定性関与成分(B)が1,860ppmとなるよう、第1の横型多段冷却晶析装置から得られた母液と第2の横型多段冷却晶析装置から回収された母液をおよそ1:5(質量比)の割合で混合した液を用いた。
【0082】
このとき、晶析原料の一部は、安定性関与成分(A)を100〜30,000ppmの範囲、安定性関与成分(B)を1〜10,000ppmの範囲に維持するように、9kg/hで系外に抜き出した。
【0083】
母液の廃棄は、第2の横型多段冷却晶液装置からの母液と結晶精製装置から排出される母液と発汗液を混合したものから9kg/hで系外へ排出した。
【0084】
第2の横型多段冷却晶析装置は、上記調整された晶析原料NVPを供給速度1、000kg/h、スラリー濃度20%に調整し、温度6.5℃、滞留時間が4時間の条件で晶析操作を行った。このときNVP粗結晶の発生速度は、200kg/hであった。
【0085】
得られたスラリーを第2の晶析装置から排出し、第1の晶析装置から排出されたスラリーと混合して、ベルト状ろ過機でろ過した。ろ過後のケーキは連続的に結晶精製工程に供給し、残りの母液は第2の横型多段冷却晶析装置に連続的に供給した。
【0086】
結晶精製工程は、滞留時間を55分、塔頂部において30〜50℃の温水で昇温させることによって、精製NVPを165kg/hで得た。
【0087】
得られた精製NVPの純度は99.9968%、安定性関与成分(A)は20ppm、安定性関与成分(B)は100ppmであった。この精製NVPに安定剤N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン10ppmを添加し、保存安定性を確保した。試験開始時の色相は5、粘度は2mPa・sであった。1ヶ月経過後の色相は10、粘度は3mPa・sで合格であった。
【0088】
(比較例1)
晶析原料NVPの安定性関与成分(A)が82ppmおよび安定性関与成分(B)が1985ppmである以外は、実施例1と同様に行った。
【0089】
得られた精製NVPの純度は99.9975%、安定性関与成分(A)は8ppm、安定性関与成分(B)は100ppmであった。この精製NVPに安定剤N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン 10ppm添加し、保存安定性を確認した。試験開始時の色相は5、粘度は2mPa・sであった。1ヶ月経過後には保存安定性を確認するSUS容器内でゲル化しており、サンプルを取り出すことは不可能であったため不合格とした。
【0090】
(比較例2)
晶析原料NVPの安定性関与成分(A)が16,300ppmおよび安定性関与成分(B)が12,500ppmである以外は、実施例1と同様に行った。
【0091】
得られた精製NVPの純度は95.9560%、安定性関与成分(A)は33,000ppm、安定性関与成分(B)は1,200ppmであった。この精製NVPに安定剤N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン 10ppm添加し、保存安定性を確認した。試験開始時の色相は15、粘度は2mPa・sであった。1ヶ月経過後の色相は260、粘度は35mPa・sで不合格であった。
【0092】
実施例によれば、NVP純度96質量%程度の晶析原料から、99.99質量%程度の高純度NVPを得ることができた。
【0093】
また、NVPの保存安定性についても、実施例によれば、経時後の色相及び粘度の測定値が所定の範囲内であった。比較例では、安定剤を加えたにも拘わらず、所定の範囲内には収まらなかった。
【0094】
なお、NVP純度と、安定性関与成分(A),(B)を足したものが100%を超える場合がある。これは、NVP純度と該成分(A)は、GC測定により算出しており、検出される成分ピークの全面積で100%とし、一方、該成分(B)はLC測定で、ポリマーの検量線に基づいて検出しているために生じたものである。微量な成分を異なる基準に基づいて求めたことにより発生したものであり、特に問題はないと考える。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明のNVPの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図2】本発明のNVPの製造方法の別の例を示すフローチャートである。
【図3】本発明のNVPの製造方法のその他の例を示すフローチャートである。
【図4】本発明のNVPの製造方法のその他の別の例を示すフローチャートである。
【図5】GCの分析条件を示す図面である。
【符号の説明】
【0096】
1 蒸留NVP、
2 結晶化工程、
3 製品、
4 結晶精製工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの結晶化工程を有するN−ビニル−2−ピロリドンの精製方法を含み、少なくとも1以上の結晶化工程のいずれかに供される晶析原料のガスクロマトグラフィーにより分析される安定性関与成分(A)を100〜30,000ppmの範囲内に調整することを特徴とするN−ビニル−2−ピロリドンの製造方法。
【請求項2】
結晶化工程で回収されたN−ビニル−2−ピロリドンを晶析原料の一部として用いることを特徴とする請求項1記載のN−ビニル−2−ピロリドンの製造方法。
【請求項3】
液体クロマトグラフィーにより分析される安定性関与成分(B)が1〜10,000ppmの範囲内に収まるように晶析原料を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のN−ビニル−2−ピロリドンの製造方法。
【請求項4】
さらに1以上の結晶精製工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のN−ビニル−2−ピロリドンの製造方法。
【請求項5】
結晶化工程及び結晶精製工程よりなる群から選ばれた少なくとも1つの工程で回収されたN−ビニル−2−ピロリドンを晶析原料の一部として用いることを特徴とする請求項4記載のN−ビニル−2−ピロリドンの製造方法。
【請求項6】
安定性関与成分(A)は10ppm以上、2,000ppm以下および安定性関与成分(B)は2,000ppm以下であるN−ビニル−2−ピロリドン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−120487(P2009−120487A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41501(P2006−41501)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】