説明

N−メチルピロリドンの製造方法

金属酸化物触媒を使用した2段階連続式製造工程であって、1段階反応生成物のγ−ブチロラクトンの精製工程無しに連続して2段階反応を行い、最終生成物であるN−メチルピロリドンと沸点の差(約2℃)が小さくて分離が難しい反応中間体であるγ−ブチロラクトンが反応後にほとんど残っていないため、分離精製が容易であり、工程が単純で大量生産および精製設備の投資費用が少ない有利な長所を有する、高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法を提供する。本発明による高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法は、金属酸化物固体触媒存在下にで、1,4−ブタンジオールを水素雰囲気下で脱水素反応してγ−ブチロラクトンを製造する第1工程;および金属酸化物固体触媒存在下で、前記第1工程で得られたγ−ブチロラクトンを精製無しに直ちに導入してモノメチルアミンと脱水反応させる第2工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−メチルピロリドンの製造方法に関し、より詳しくは、金属酸化物を活性成分として含む固体触媒を用いた2段階連続式製造工程であって、1段階反応生成物であるγ−ブチロラクトンの精製工程無しに連続して2段階反応を行うことができ、最終生成物であるN−メチルピロリドンとの沸点の差(約2℃)が小さくて分離が難しい反応中間体であるγ−ブチロラクトンが反応後にほとんど残っていないため、分離精製が容易であり、工程が単純であるのでN−メチルピロリドンを大量生産することができる高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N−メチルピロリドンは、現在環境規制が激しくなるに伴って、高分子重合および加工用溶剤、ペイント製造溶剤、金属表面洗浄剤、医薬品合成および精製溶媒、半導体および電子素材の加工溶剤、リチウム電池製造溶剤などの分野において環境に優しい無毒性製品として需要が増加している製品である。
【0003】
N−メチルピロリドンは、工業的にモノメチルアミンおよびγ−ブチロラクトンを脱水反応させて製造し、大きく触媒を使用しない方法および触媒を使用する方法の2種類に分類することができる。
【0004】
触媒を使用しない製造方法としては、γ−ブチロラクトンおよびモノメチルアミンを原料にして、回分式反応器で280℃、4時間反応して90〜93%の収率でN−メチルピロリドンを製造する方法が開示された(下記非特許文献1)。また、下記特許文献1には、γ−ブチロラクトン、水、モノメチルアミンを高圧回分式反応器に入れて、240〜265℃、50気圧、3時間反応して94.3%のN−メチルピロリドンを製造した方法が開示された。
【0005】
触媒を使用した製造方法としては、γ−ブチロラクトンおよびモノメチルアミンを280℃、常圧、銅イオン交換Yゼオライト触媒存在下で連続反応させて、98%の収率でN−メチルピロリドンを製造する方法が開示された(下記非特許文献2)。また、300℃でクロムイオン交換ZSM−5ゼオライト触媒を使用した連続反応によってγ−ブチロラクトンおよびモノメチルアミンからN−メチルピロリドンを98.2%の収率で製造する方法が開示された(下記非特許文献3)。また、下記特許文献2は、アルミナ、シリカアルミナ、活性炭、シリカゲル、シリカマグネシアなどの触媒を用いてγ−ブチロラクトンおよびモノメチルアミンからN−メチルピロリドンを63〜93%の収率で製造する方法を開示している。
【0006】
しかし、前記製造方法は、収率が低く、生成物であるN−メチルピロリドンとの沸点の差(約2℃)が小さいγ−ブチロラクトンが未反応物として存在して分離精製が難しく、不純物として残存しやすいという問題点がある。
【0007】
また、既存の製造方法の大部分は、1,4−ブタンジオールまたはマレイン酸無水物から予め製造して分離精製したγ−ブチロラクトンから出発してN−メチルピロリドンを製造する。
【0008】
そして、既存に知られたN−メチルピロリドン製造のための中間体であるγ−ブチロラクトンの1,4−ブタンジオールを原料とする製造方法としては、銅(Cu)/クロム(Cr)触媒または銅(Cu)/クロム(Cr)触媒に亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)を添加した触媒存在下で脱水素させる方法、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)などが1種以上含有された触媒存在下で酸素などの酸化剤を使用して脱水素反応させる方法、銅(Cu)/亜鉛(Zn)触媒にアルカリ金属またはアルミニウム(Al)を添加した触媒存在下で脱水素させる方法などがある。
【0009】
前記方法のうち、銅/クロム触媒を用いた1,4−ブタンジオールの脱水素反応が最も一般的なγ−ブチロラクトンの製造方法であるが、銅/クロム触媒はクロムなどの重金属を使用するので環境汚染のおそれがあり、反応時に副反応が発生してテトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)などの副産物が生成されγ−ブチロラクトンへの転換率および選択性を低下させるという短所がある。したがって、下記特許文献3では、銅/クロム触媒に亜鉛またはマンガンを添加して前記の短所を克服しようとしたが、収率が95%であり触媒寿命が約1ヶ月と短いため、依然として問題点が残っている。
【0010】
下記特許文献4および下記特許文献5には、パラジウム、銀などを含む触媒を用いて酸素などの酸化剤存在下で1,4−ブタンジオールを脱水素反応してγ−ブチロラクトンを製造する方法を開示しているが、触媒寿命が短く、選択性および転換率が低いという短所がある。
【0011】
下記特許文献6には、銅/亜鉛触媒にアルミニウムを添加した触媒を用いて1,4−ブタンジオールの脱水素反応によってγ−ブチロラクトンを製造する方法を開示しているが、収率が低く、触媒寿命が短いという短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平1−190667号公報
【特許文献2】特開昭49−20582号公報
【特許文献3】特公平4−17954号公報
【特許文献4】特開平2−27349号公報
【特許文献5】特公昭61−212577号公報
【特許文献6】英国登録特許公報第1,066,979号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】J.Amer.Chem.Soc.,71(1949)896
【非特許文献2】Bull.Chem.Soc.Japan,50(10)(1977)2517
【非特許文献3】J.Org.Chem.,50(1994)3998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、反応性が優れた金属酸化物固体触媒を用いて反応中間体であるγ−ブチロラクトンの精製無しに連続式2段階工程の反応を行うことによって、最終生成物であるN−メチルピロリドンとの沸点の差(約2℃)が小さいため分離が難しい反応中間体であるγ−ブチロラクトンが反応後にほとんど残らないようにすることによって、高純度および高収率のN−メチルピロリドンを大量生産することができる、N−メチルピロリドンの製造方法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の他の目的は、1,4−ブタンジオールからγ−ブチロラクトンを製造する第1工程において、クロムなどの環境に有害な金属を含まない触媒を用いることにより環境汚染のおそれがなく、副反応を最少化して収率を増加させ、反応中に水素の流れによる触媒の還元で活性度が増加すると同時に、触媒のコークス生成速度を減少させて触媒の寿命を延長することができ、連続式工程によって高収率のγ−ブチロラクトンを大量生産することができる、γ−ブチロラクトンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は前記の目的を達成するために、金属酸化物固体触媒存在下で、1,4−ブタンジオールを水素雰囲気下で脱水素反応してγ−ブチロラクトンを製造する第1工程、および金属酸化物固体触媒存在下で、前記第1工程で得られたγ−ブチロラクトンを精製無しに直ちに導入してモノメチルアミンと脱水反応させる第2工程を含む、高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明者は、N−メチルピロリドン製造用触媒およびこれを用いたN−メチルピロリドンの製造工程に関する研究を重ねる過程において、触媒として固体金属酸化物を使用する場合、優れた触媒活性を示してγ−ブチロラクトンおよびN−メチルピロリドンの製造に効果が大きく、合成したγ−ブチロラクトンの精製なしにもN−メチルピロリドンへの反応進行が精製γ−ブチロラクトンと比較して差がないことを発見し、連続式工程への適用が容易であってN−メチルピロリドンを大量生産することができるのを確認し、これに基づいて本発明を完成した。
【0019】
したがって、本発明は、1,4−ブタンジオールを脱水素反応させてγ−ブチロラクトンを製造し、製造されたγ−ブチロラクトンおよびモノメチルアミンを脱水反応させてN−メチルピロリドンを製造する工程において、特定の金属酸化物からなる群より1種以上選択される活性成分を含む固体触媒を使用する。また、本発明は、モノメチルアミンと反応させるγ−ブチロラクトンを既存のように精製過程を経ずに直ちに使用することができるという特徴がある。
【0020】
このような本発明のN−メチルピロリドンの製造方法は、金属酸化物固体触媒を使用する連続式2段階工程を含む。
【0021】
本発明の連続式2段階工程において、第1工程は、脱水素反応によって水素の流れの下で1,4−ブタンジオールを反応させてγ−ブチロラクトンを製造し、第2工程は、脱水反応を含み、前記1工程の反応生成物であるγ−ブチロラクトンを精製無しにモノメチルアミンと反応させてN−メチルピロリドンを製造する。
【0022】
この時、本発明によれば、前記金属酸化物固体触媒は、第1段階反応(脱水素反応)用固体触媒および第2段階反応(脱水反応)用固体触媒の種類を互いに異にして使用する。
【0023】
前記第1段階工程で使用する固体触媒は、11族金属元素を含む酸化物群から1種以上選択される活性成分を含む。
【0024】
また、第1工程の触媒の活性をより向上させるために、本発明は助触媒を通常の含量範囲内でさらに含むことができる。前記助触媒は2族の金属元素を含む酸化物群から1種以上選択されるものを使用することができる。
【0025】
前記第1工程の金属酸化物固体触媒は、構造的な安定性を確保するために、担体を通常の含量範囲内でさらに含むことができる。前記担体の種類は本発明が属する技術分野で通常的なものを使用することができるため、特に限定されない。好ましくは、前記担体は、13族および14族の金属元素を含有する酸化物群から1種以上選択されるものを使用することができる。
【0026】
前記第1工程で使用する金属酸化物固体触媒は、既存の触媒のようにクロムを含んでいないため、触媒製造過程および廃棄過程で重金属による環境汚染のおそれがなく、副反応を最少化してテトラヒドロフランなどの副産物の生成を抑制することによって、γ−ブチロラクトンへの転換率および選択性を高めて高収率のγ−ブチロラクトンを生産することができるという長所がある。
【0027】
また、前記第1段階連続式工程は脱水素反応であるにも拘わらず水素を共に注入することによって反応中に触媒を還元して活性度を増加させ、触媒のコークス生成速度を減少させて触媒の寿命を延長することができるという長所がある。
【0028】
本発明の前記第2段階工程で使用する固体触媒は、4族、6族、8族、11族、12族、13族、および14族金属元素を含有する酸化物群から1種以上選択される活性成分を含む。
【0029】
また、前記第2工程の金属酸化物固体触媒は、構造的な安定性を確保するために、担体を通常の含量範囲内でさらに含むことができる。前記担体の種類は本発明が属する技術分野で通常的なものを使用することができるため、特に限定されない。好ましくは、前記担体は、13族および14族の金属元素を含有する酸化物群から1種以上選択されるものを使用することができる。
【0030】
また、前記第2工程で使用する金属酸化物固体触媒は、既存の触媒を使用する工程のように精製されたγ−ブチロラクトンを使用するのではなく、1段階反応で製造されたものを精製無しに直ちに使用しても精製γ−ブチロラクトンを使用したことと差がなくて工程が単純になり、2段階反応後に最終生成物であるN−メチルピロリドンと沸点の差(約2℃)が小さくて分離精製が難しいγ−ブチロラクトンがほとんど残っていないため、高純度および高収率のN−メチルピロリドンを製造することができるという長所がある。
【0031】
一方、本発明による第1工程および第2工程で使用する金属酸化物固体触媒の製造方法は、特に限定されず、本願が属する技術分野における通常の知識を有する者によって製造されることができる。
【0032】
この時、前記第1段階工程における1,4−ブタンジオール:水素のモル比は、1:0.1乃至1:5で添加し、好ましくは、1:1.0乃至1:3.5で添加する。即ち、最小限の触媒寿命延長効果を達成し、水素分圧を維持して選択性を向上させるために、1,4−ブタンジオール:水素のモル比は、1:0.1以上であるのが好ましく、触媒寿命延長効果の上昇率および選択性の向上、ならびに水素の再循環費用の経済性を考慮して、1,4−ブタンジオール:水素のモル比は、1:5以下で添加するのが好ましい。
【0033】
前記脱水素反応段階の反応原料である1,4−ブタンジオールおよび水素は、不純物を含まない純粋なものを使用することが最も好ましいが、不純物を含むものを使用しても本発明の効果に影響を与えるのではないため、特にその純度が限定されない。
【0034】
また、前記第2段階工程におけるγ−ブチロラクトン:モノメチルアミンのモル比は、1:0.5乃至1:5で添加し、好ましくは、1:1.0乃至1:3.5で添加する。即ち、N−メチルピロリドンへの転換率が低くなることを防止するために、γ−ブチロラクトン:モノメチルアミンのモル比は、1:0.5以上であることが好ましく、転換率の上昇効果および経済性を考慮してγ−ブチロラクトン:モノメチルアミンのモル比を1:5以下で添加するのが好ましい。
【0035】
前記脱水反応段階の反応原料のうちのγ−ブチロラクトンは、反応中間体として1段階反応後精製無しに使用することが可能である。モノメチルアミンは水溶液を使用することが好ましく、その含量が特に限定されないが、一般に40重量%のモノメチルアミン水溶液を使用し、それより低い含量のモノメチルアミンも使用が可能である。
【0036】
また、本発明の各段階は連続式に行われ、前記連続式反応段階は本発明が属する技術分野における通常の段階を組み合せることができ、特にこれに限定されない。
【0037】
前記のような本発明の好ましい反応条件の例を挙げれば、反応物が反応器内に留まる時間を示す質量空間速度(Weight Hourly Space Velocity、WHSV)が0.1乃至5.0hr−1であるのが好ましい。即ち、反応器に投入される反応物の量が少ない場合、経済的な生産性を達成し難いため、質量空間速度が0.1hr−1以上であるのが好ましく、最大の反応効率を考慮して5.0hr−1以下で反応させるのが好ましい。
【0038】
また、前記連続式工程における反応物の流れは、下端投入−上端除去(bottom−up)方式および上端投入−下端除去(top−down)方式のすべてを利用することができ、特に制限されないが、そのうちのチャンネリング(Channeling)現象を防止することができる下端投入−上端除去方式を利用するのがより好ましい。
【0039】
前記第1段階工程である脱水素反応工程は、150乃至350℃の温度で行うのが好ましい。即ち、最小限の反応活性化エネルギーを供給するために反応温度が150℃以上であるのが好ましく、加温する場合、収率の上昇效果および経済性を考慮すると同時に高温における副産物生成の可能性の増加および触媒変形による触媒寿命短縮などを考慮して、350℃以下の温度で行うのが好ましい。
【0040】
また、前記脱水素反応工程は反応圧力を常圧乃至20気圧に維持するのが好ましい。即ち、最小限の転換率を考慮して常圧以上であるのが好ましく、高圧を維持するための費用など反応の経済性および転換率の上昇效果を考慮して20気圧以下であるのが好ましい。
【0041】
本発明は前記のような構成を有する第1段階工程である脱水素反応によって1,4−ブタンジオールの転換率が95%以上、γ−ブチロラクトンの選択性が98%以上となるようにする。
【0042】
また、前記第2段階工程である脱水反応工程は、150乃至400℃の温度で行うのが好ましい。即ち、最小限の反応活性化エネルギーを供給するために反応温度が150℃以上であるのが好ましく、加温する場合、収率の上昇效果および経済性を考慮すると同時に高温における副産物生成の可能性の増加および触媒変形による触媒寿命短縮などを考慮して、400℃以下の温度で行うのが好ましい。
【0043】
前記脱水反応工程は反応圧力を常圧乃至100気圧に維持するのが好ましい。即ち、最小限の転換率を考慮して常圧以上であるのが好ましく、高圧を維持させるための費用など反応の経済性および転換率の上昇效果を考慮して100気圧以下であるのが好ましい。
【0044】
本発明は前記のような構成を有する第2段階工程である脱水反応によってγ−ブチロラクトンの転換率が99%以上、N−メチルピロリドンの選択性が97%以上となるようにする。
【0045】
また、本発明によるN−メチルピロリドンの製造方法において、反応後に得られる生成物から、反応中にモノメチルアミン水溶液で投入された水を除去する方法は特に限定されず、通常、本発明が属する技術分野で利用される方法である蒸留などを利用することができる。
【0046】
本発明によるN−メチルピロリドンの製造方法は、反応性が優れた金属酸化物固体触媒を用いた連続式2段階工程であって、第1段階工程であるγ−ブチロラクトンの製造工程は、11族金属元素を含む金属酸化物触媒を用いた連続式製造工程であって、クロムなどの環境に有害な金属を含まない触媒を使用するので環境汚染のおそれがなく、副反応を最少化してγ−ブチロラクトンへの転換率および選択性を高めて高収率のγ−ブチロラクトンを生産することができ、反応中に水素の流れによって触媒を還元することによって活性度を増加させると同時に触媒のコークス生成速度を減少させて触媒寿命を延長することができるという長所がある。
【0047】
また、本発明の第2段階工程であるN−メチルピロリドンの製造工程は、4族、6族、8族、11族、12族、13族、および14族のうちで選択された金属元素を含む金属酸化物触媒を用いた連続式製造工程であって、1段階反応生成物であるγ−ブチロラクトンの精製工程無しに連続して2段階反応を行うので工程が単純であり、最終生成物であるN−メチルピロリドンと沸点の差(約2℃)が小さくて分離し難い反応中間体であるγ−ブチロラクトンが反応後にほとんど残っていないため分離精製が容易で高純度および高収率のN−メチルピロリドンを生産することができ、大量生産および設備に有利であるという長所がある。
【0048】
以下、本発明の好ましい実施例を記載する。しかし、次の実施例は本発明をより明確に表現するための目的で記載するものに過ぎず、本発明の内容はこれに限定されない。
【実施例】
【0049】
実施例1:1段階反応
直径1.27cm、長さ25.4cmである管型反応器に触媒A8gを満たし、反応器外部に電気加熱テープ(electrical heating tape)を付着し反応温度を240℃に維持した。
【0050】
反応物である1,4−ブタンジオールは加圧ポンプによって質量空間速度(WHSV)=1.0hr−1の速度で反応器下端(bottom−up)に注入した。この時、1,4−ブタンジオールおよび水素のモル比は1:2に維持し、反応圧力は5気圧を維持した。
【0051】
反応終了後、γ−ブチロラクトンの選択性および1,4−ブタンジオールの転換率はガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、選択性99.20%であるγ−ブチロラクトンを得、1,4−ブタンジオールの転換率は99.33%であった。
【0052】
実施例2乃至5:1段階反応
下記表1のように、反応圧力、反応温度、質量空間速度(WHSV)を変化させた以外は、実施例1と同一な方法でγ−ブチロラクトンを製造した。
【0053】
【表1】

【0054】
比較例1:触媒比較反応(回分式反応)
1,4−ブタンジオール20gを高圧反応器(250ml)に入れて、E−113TU(CALSICAT社 Copper chromite触媒)触媒2g(1,4−ブタンジオール基準10重量%)を投入した後、5気圧になるように水素ガスを満たし、210℃で攪拌しながら3時間反応させた。
【0055】
次に、単純フィルターによって触媒を除去し、ガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、選択性96.00%であるγ−ブチロラクトンを得、1,4−ブタンジオールの転換率は86.00%であり、テトラヒドロフランが1.43%の選択性で生成された。
【0056】
比較例2:触媒比較反応(回分式反応)
次の表2のように、触媒量および反応圧力を変化させたことを除いては、比較例1と同一な方法でγ−ブチロラクトンを製造した。
【0057】
【表2】

【0058】
実施例6:1段階反応
直径2.54cm、長さ15.24cmである管型反応器に触媒B90gを満たし、反応器外部に電気加熱テープ(electrical heating tape)を付着して反応温度を220℃に維持した。
【0059】
反応物である1,4−ブタンジオールは、加圧ポンプによって質量空間速度(WHSV)=1.0hr−1の速度で反応器下端(bottom−up)に注入した。この時、1,4−ブタンジオールおよび水素のモル比は1:2に維持し、反応圧力は常圧を維持した。
【0060】
反応終了後、γ−ブチロラクトンの選択性および1,4−ブタンジオールの転換率はガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、選択性99.32%であるγ−ブチロラクトンを得、1,4−ブタンジオールの転換率は99.21%であった。
【0061】
実施例7乃至13:1段階反応
次の表3のように、反応圧力、反応温度、質量空間速度(WHSV)、モル比を変化させた以外は、実施例6と同一な方法でγ−ブチロラクトンを製造した。
【0062】
【表3】

【0063】
比較例3:触媒比較反応(回分式反応)
1,4−ブタンジオール20gを高圧反応器(250ml)に入れて、DEH−7(UOP社 Pt触媒)触媒4g(1,4−ブタンジオール基準20重量%)を投入した後、30気圧になるように窒素ガスを満たして220℃で攪拌しながら3時間反応させた。
【0064】
次に、単純フィルターによって触媒を除去し、ガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、選択性16.00%であるγ−ブチロラクトンを得、1,4−ブタンジオールの転換率は63.28%であり、テトラヒドロフランが79.00%の選択性で生成された。
【0065】
比較例4:触媒比較反応(回分式反応)
次の表4のように、反応圧力および使用ガスを変化させたことを除いては、比較例3と同一な方法でγ−ブチロラクトンを製造した。
【0066】
【表4】

【0067】
実施例14:2段階反応
直径2.54cm、長さ15.24cmである管型反応器に触媒C98gを満たし、反応器外部に電気加熱テープ(electrical heating tape)を付着して反応温度を280℃に維持した。
【0068】
反応物である実施例6で製造されたγ−ブチロラクトンおよび40重量%のモノメチルアミン水溶液は、それぞれ加圧ポンプによってモル比を1:1.5に維持させ、質量空間速度(WHSV)=0.2hr−1の速度で反応器下端(bottom−up)に注入した。この時、圧力は50気圧を維持した。反応時に使用されたγ−ブチロラクトンは1段階反応後に生成物として得たものを精製無しに使用した。
【0069】
反応終了後、N−メチルピロリドンの選択性およびγ−ブチロラクトンの転換率はガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、選択性99.73%であるN−メチルピロリドンを得、γ−ブチロラクトンの転換率は100.00%であった。
【0070】
実施例15乃至26:2段階反応
次の表5のように、反応温度、反応圧力、質量空間速度(WHSV)、モル比を変化させた以外は、実施例14と同一な方法でN−メチルピロリドンを製造した。
【0071】
【表5】

【0072】
実施例27:2段階反応
直径2.54cm、長さ15.24cmである管型反応器に触媒D65gを満たし、反応器外部に電気加熱テープ(electrical heating tape)を付着して反応温度を300℃に維持した。
【0073】
反応物である実施例6で製造されたγ−ブチロラクトンおよび40重量%のモノメチルアミン水溶液は、それぞれ加圧ポンプによってモル比を1:1.5に維持させ、質量空間速度(WHSV)=1.0hr−1の速度で反応器下端(bottom−up)に注入した。この時、圧力は50気圧を維持した。反応時に使用されたγ−ブチロラクトンは、1段階反応後に生成物として得たものを精製無しに使用した。
【0074】
反応終了後、N−メチルピロリドンの選択性およびγ−ブチロラクトンの転換率はガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、選択性97.25%であるN−メチルピロリドンを得、γ−ブチロラクトンの転換率は99.94%であった。
【0075】
実施例28乃至32:2段階反応
次の表6のように、反応温度、反応圧力、質量空間速度(WHSV)を変化させた以外は、実施例27と同一な方法でN−メチルピロリドンを製造した。
【0076】
【表6】

【0077】
実施例33:2段階反応
直径2.54cm、長さ15.24cmである管型反応器に触媒E40.9gを満たし、反応器外部に電気加熱テープ(electrical heating tape)を付着して反応温度を280℃に維持した。
【0078】
反応物である実施例6で製造されたγ−ブチロラクトンおよび40重量%のモノメチルアミン水溶液は、それぞれ加圧ポンプによってモル比を1:1.5に維持させ、質量空間速度(WHSV)=1.0hr−1の速度で反応器下端(bottom−up)に注入した。この時、圧力は50気圧を維持した。反応時に使用されたγ−ブチロラクトンは、1段階反応後に生成物として得たものを精製無しに使用した。
【0079】
反応終了後、N−メチルピロリドンの選択性およびγ−ブチロラクトンの転換率はガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、選択性99.45%であるN−メチルピロリドンを得、γ−ブチロラクトンの転換率は99.87%であった。
【0080】
実施例34乃至36:2段階反応
次の表7のように、反応温度、反応圧力、質量空間速度(WHSV)を変化させた以外は、実施例33と同一な方法でN−メチルピロリドンを製造した。
【0081】
【表7】

【0082】
実施例37:2段階反応
1段階実施例で製造された高純度のGBLのみならず、純度が落ちるGBLを別途に製造して低い純度を有するGBLを使用した場合も、本願の金属酸化物触媒を使用した2段階反応進行時に問題がないことを示す実験を実施した。
【0083】
直径2.54cm、長さ15.24cmである管型反応器に触媒C98gを満たし、反応器外部に電気加熱テープ(electrical heating tape)を付着して反応温度を280℃に維持した。
【0084】
反応物であるγ−ブチロラクトンおよび40重量%のモノメチルアミン水溶液は、それぞれ加圧ポンプによってモル比を1:1.5に維持させ、質量空間速度(WHSV)=0.2hr−1の速度で反応器下端(bottom−up)に注入した。この時、圧力は50気圧を維持した。反応時に使用されたγ−ブチロラクトンは、1段階反応後に生成物として得たものを精製無しに使用した。
【0085】
反応終了後、N−メチルピロリドンの選択性およびγ−ブチロラクトンの転換率はガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、選択性98.05%であるN−メチルピロリドンを得、γ−ブチロラクトンの転換率は100.00%であった。
【0086】
実施例38乃至39:2段階反応
次の表8のように、反応温度、質量空間速度(WHSV)を変化させた以外は、実施例37と同一な方法でN−メチルピロリドンを製造した。
【0087】
【表8】

【0088】
実施例40:2段階反応
1段階の実施例で製造された高純度のGBLのみならず、純度が落ちるGBLを別途に製造して低い純度を有するGBLを使用した場合も、本願の金属酸化物触媒を使用した2段階反応進行時に問題がないことを示す実験を実施した。また、一般的な40重量%のモノメチルアミン水溶液の含量より低い場合にも2段階反応進行に問題がなかった。
【0089】
即ち、直径2.54cm、長さ15.24cmである管型反応器に触媒C98gを満たし、反応器外部に電気加熱テープ(electrical heating tape)を付着して反応温度を280℃に維持した。
【0090】
反応物であるγ−ブチロラクトンおよび35重量%のモノメチルアミン水溶液は、それぞれ加圧ポンプによってモル比を1:1.3に維持させ、質量空間速度(WHSV)=0.15hr−1の速度で反応器下端(bottom−up)に注入した。この時、圧力は50気圧を維持した。反応時に使用されたγ−ブチロラクトンは1段階反応後に生成物として得たものを精製無しに使用した。
【0091】
反応終了後、N−メチルピロリドンの選択性およびγ−ブチロラクトンの転換率はガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、選択性98.54%であるN−メチルピロリドンを得、γ−ブチロラクトンの転換率は100.00%であった。
【0092】
実施例41乃至42:2段階反応
次の表9のように、反応温度、反応圧力、モル比を変化させた以外は、実施例40と同一な方法でN−メチルピロリドンを製造した。
【0093】
【表9】

【0094】
実施例43:2段階反応
1段階の実施例で製造された高純度のGBLのみならず、純度が落ちるGBLを別途に製造して低い純度を有するGBLを使用した場合も、本願の金属酸化物触媒を使用した2段階反応進行時に問題がないことを示す実験を実施した。また、一般的な40重量%のモノメチルアミン水溶液の含量より低い場合にも2段階反応進行に問題がなかった。
【0095】
即ち、直径2.54cm、長さ15.24cmである管型反応器に触媒F98gを満たし、反応器外部に電気加熱テープ(electrical heating tape)を付着して反応温度を280℃に維持した。
【0096】
反応物であるγ−ブチロラクトンおよび35重量%のモノメチルアミン水溶液は、それぞれ加圧ポンプによってモル比を1:1.5に維持させ、質量空間速度(WHSV)=0.15hr−1の速度で反応器下端(bottom−up)に注入した。この時、圧力は50気圧を維持した。反応時に使用されたγ−ブチロラクトンは1段階反応後の生成物として得たものを精製無しに使用した。
【0097】
反応終了後、N−メチルピロリドンの選択性およびγ−ブチロラクトンの転換率はガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、選択性98.50%であるN−メチルピロリドンを得、γ−ブチロラクトンの転換率は100.00%であった。
【0098】
【表10】

【0099】
実施例44:2段階反応
本実験も、1段階実施例で製造された高純度のGBLのみならず、純度が落ちるGBLを別途に製造して低い純度を有するGBLを使用した場合も、本願の金属酸化物触媒を使用した2段階反応進行時に問題がないことを示す実験を実施した。また、一般的な40重量%のモノメチルアミン水溶液の含量より低い場合にも2段階反応進行に問題がなかった。
【0100】
即ち、直径2.54cm、長さ15.24cmである管型反応器に触媒C98gを満たし、反応器外部に電気加熱テープ(electrical heating tape)を付着して反応温度を280℃に維持した。
【0101】
反応物であるγ−ブチロラクトンおよび30重量%のモノメチルアミン水溶液は、それぞれ加圧ポンプによってモル比を1:1.5に維持させ、質量空間速度(WHSV)=0.2hr−1の速度で反応器下端(bottom−up)に注入した。この時、圧力は50気圧を維持した。反応時に使用されたγ−ブチロラクトンは1段階反応後の生成物として得たものを精製無しに使用した。
【0102】
反応終了後、N−メチルピロリドンの選択性およびγ−ブチロラクトンの転換率はガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、選択性98.40%であるN−メチルピロリドンを得、γ−ブチロラクトンの転換率は99.94%であった。
【0103】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物固体触媒存在下で、1,4−ブタンジオールを水素雰囲気下で脱水素反応してγ−ブチロラクトンを製造する第1工程、および
金属酸化物固体触媒存在下で、前記第1工程で得られたγ−ブチロラクトンを精製無しに直ちに導入してモノメチルアミンと脱水反応させる第2工程
を含む、高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法。
【請求項2】
前記第1工程で使用される固体触媒は、11族の金属元素を含有する酸化物群から1種以上選択される活性成分を含む、請求項1に記載の高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法。
【請求項3】
前記第1工程で使用される固体触媒は、13族および14族の金属元素を含有する酸化物群から1種以上選択される活性成分を有する担体をさらに含む、請求項2に記載の高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法。
【請求項4】
前記第1工程で使用される固体触媒は、2族の金属元素を含有する酸化物群から1種以上選択される活性成分を有する助触媒をさらに含む、請求項2に記載の高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法。
【請求項5】
前記第2工程で使用される固体触媒は、4族、6族、8族、11族、12族、13族、および14族の金属元素を含有する酸化物群から1種以上選択される活性成分を含む、請求項1に記載の高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法。
【請求項6】
前記第2工程で使用される固体触媒は、13族および14族の金属元素を含有する酸化物群から1種以上選択される活性成分を有する担体をさらに含む、請求項5に記載の高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法。
【請求項7】
前記第1工程における1,4−ブタンジオール:水素は、1:0.1乃至1:5のモル比で添加する、請求項1に記載の高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法。
【請求項8】
前記第2工程におけるγ−ブチロラクトン:モノメチルアミンは、1:0.5乃至1:5のモル比で添加する、請求項1に記載の高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法。
【請求項9】
前記第1工程および第2工程における質量空間速度が、0.1乃至5.0hr−1である、請求項1に記載の高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法。
【請求項10】
前記第1工程は150乃至350℃の温度で行う、請求項1に記載の高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法。
【請求項11】
前記第2工程は150乃至400℃の温度で行う、請求項1に記載の高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法。
【請求項12】
前記第1工程における反応圧力が、常圧乃至20気圧である、請求項1に記載の高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法。
【請求項13】
前記第2工程における反応圧力が、常圧乃至100気圧である、請求項1に記載の高純度および高収率N−メチルピロリドンの製造方法。

【公表番号】特表2011−507830(P2011−507830A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539279(P2010−539279)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005790
【国際公開番号】WO2009/082086
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(510170925)イス・ケミカル・カンパニー・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】