N−[8−(2−ヒドリキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの結晶多形体
本発明は、N-[-8-(2-ヒドリキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム(「SNAC」)の結晶多形体に関し、この多形体には、SNACの、水和物2種、メタノール溶媒和物1種、およびエタノール溶媒和物1種が含まれる。より具体的には、本発明は、SNACの多形体を6種提供する(以下、I〜VI型と呼ぶ)。本発明はまた、SNACの非晶形も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年5月6日出願の米国仮出願第60/569,476号、および2004年10月15日出願の米国仮出願第60/619,418号の利益を主張する。両出願は参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム結晶多形体、非晶質N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム、これらを含有する医薬組成物、これらの調製方法、および、これらを用いて活性剤の送達を容易にする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
米国特許第5,650,386号は、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸およびその塩類、ならびにさまざまな活性剤の送達を容易にするためのこれらの使用について開示している。
【特許文献1】米国特許第5,650,386号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、N-[-8-(2-ヒドリキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム(「SNAC」)の結晶多形体に関し、この多形体には、SNACの水和物2種、メタノール/水溶媒和物1種、およびエタノール/水溶媒和物1種が含まれる。より具体的には、本発明は、SNACの多形体を6種提供する(以下、I〜VI型と呼ぶ)。本発明はまた、SNACの非晶形も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様は、(A)(i) 1種以上のSNACのI〜IV型および/または(ii)非晶質SNACと、(B)活性剤(例えば、ヘパリン)とを含む医薬組成物である。好ましい態様では、本医薬組成物は、SNACのI〜IV型または非晶質SNACの1種を、医薬組成物中のSNACの総重量100%に対して少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、または99.9重量%含む。別の好ましい態様では、本医薬組成物は、SNACのI〜IV型の1種を、医薬組成物中のSNACの総重量100%に対して少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、または99.9重量%含む。
【0006】
本発明のさらに別の態様は、本発明の医薬組成物を投与することによって、動物(例えば人間等)に活性剤を投与する、または動物への活性剤の送達を容易化するための方法である。
【0007】
さらに別の態様は、ヘパリンを含有する本発明の医薬組成物の抗血栓効果のための有効量を、経口投与することによって、治療を必要とする動物(例えば人間等)の血栓症を治療する方法。
【0008】
さらに別の態様は、SNACのIII型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、SNACのI型を形成させるのに十分な時間、少なくとも50℃(しかし好ましくは110℃未満)に加熱する工程を含む、SNACのI型の調製方法である。
【0009】
さらに別の態様は、非晶質SNACを、SNACのI型を形成させるのに十分な時間、約30℃〜約90℃、好ましくは約40℃〜約80℃に加熱する工程を含む、SNACのI型の調製方法である。
【0010】
さらに別の態様は、I型以外のいずれかの結晶形のSNACを凍結乾燥させてI型を得る工程を含む、SNACのI型の調製方法である。例えば、本方法は、SNACのII型〜IV型の1種以上および/または非晶質SNACを凍結乾燥させてI型を得る工程を含んでいてよい。
【0011】
さらに別の態様は、SNACのI型と、少なくとも1種類の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物(例えば下記に記載するもの)との粉砕混合物または直接圧縮混合物を含む医薬組成物(例えば錠剤)である。この医薬組成物は、SNACのI型と、少なくとも1種の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物との混合物を、粉砕(例えばボールミル粉砕)または圧縮(例えば直接圧縮)することにより調製することができる。
【0012】
さらに別の態様は、撹拌することなくSNACの溶媒和物(例えばエタノール溶媒和物またはメタノール溶媒和物)を乾燥(例えばタンブル乾燥)させる工程と、乾燥させたSNACを十分な時間湿気に曝してSNACのII型を得る工程とを含む、SNACのII型の調製方法である。好ましくは、乾燥工程および曝露工程は、密閉容器内で行う。乾燥させたSNACは、湿った環境で貯蔵して、SNACのII型以外の全ての残存SNACがSNACのII型に変換するようにする。
【0013】
さらに別の態様は、SNACのII型と、少なくとも1種類の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物(例えば下記に記載するもの)との直接圧縮混合物を含む医薬組成物(例えば錠剤)である。この医薬組成物は、SNACのII型と、少なくとも1種の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物との混合物を、圧縮(例えば直接圧縮)することにより調製することができる。
【0014】
さらに別の態様は、SNACのI型、II型、IV型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、75%、80%、85%、90%、またはそれ以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法である。
【0015】
さらに別の態様は、非晶質SNACを、湿気(例えば、0%より高い相対湿度、好ましくは5%または10%より高い相対湿度)に十分な時間曝してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法である。
【0016】
さらに別の態様は、SNACのI型、II型、IV型、V型、もしくはVI型または非晶質SNACまたはこれらの混合物を〔少なくとも1種類の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物(例えば下記に記載するもの)と共に、あるいは非存在下で〕十分な時間湿式造粒してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法である。一つの実施形態では、SNACのI型を湿式造粒する。
【0017】
さらに別の態様は、SNACのV型もしくはVI型またはこれらの混合物を、30%、35%、40%、50%、またはそれ以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を生産する工程を含む、SNACのIII型の調製方法である。
【0018】
さらに別の態様は、SNACのIV型を、10%、20%、30%、またはそれ以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法である。
【0019】
さらに別の態様は、水からSNACを結晶化させる工程を含む、SNACのIII型の調製方法である。
【0020】
さらに別の態様は、SNACのI型を十分な時間湿式造粒してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法である。
【0021】
さらに別の態様は、SNACのIII型と、少なくとも1種類の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物(例えば下記に記載するもの)との直接圧縮混合物を含む医薬組成物、例えば錠剤である。この医薬組成物は、SNACのIII型と、少なくとも1種の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物との混合物を、圧縮(例えば直接圧縮)することにより調製することができる。
【0022】
さらに別の態様は、SNACのI型、II型、III型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、約110℃または約150℃とSNACの融点との間の温度(例えば、150℃または170℃)に十分な時間加熱してIV型を得る工程を含む、SNACのVI型の調製方法である。
【0023】
さらに別の態様は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でメタノール溶液からSNACを結晶化させる工程を含む、SNACのV型の調製方法である。好ましくは、メタノール溶液が実質的にまたは完全に無水である。特定の理論に基づくものではないが、メタノール溶媒和物が時間とともに大気中の水とメタノールを交換してメタノール-水共溶媒和物であるV型をもたらすと考えられる。例えば、V型は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でSNAC(SNAC のI〜IV型もしくはVI型またはこれらの混合物)の飽和メタノール溶液を調製し、この溶液を例えば(氷浴中などで)室温以下に冷却することにより調製することができる。得られた析出物を濾過し乾燥させることができる。
【0024】
さらに別の態様は、SNACのI〜IV型またはVI型の、メタノールとの平衡化工程を含む、SNACのV型の調製方法である。好ましくは、このメタノール溶液は、実質的にまたは完全に無水である。例えば、V型は、I〜IV型もしくはVI型のいずれか、またはこれらの混合物をメタノール中、少なくとも30%、40%、または50%の相対湿度でスラリー化し、このスラリー化した混合物を、V型を形成させるのに十分な時間(例えば数日間)常温に保持することにより調製することができる。
【0025】
さらに別の態様は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でエタノール溶液からSNACを結晶化させる工程を含む、SNACのVI型の調製方法である。好ましくは、このエタノール溶液は、実質的にまたは完全に無水である。例えば、VI型は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でSNAC(SNAC のI〜V型またはこれらの混合物)の飽和エタノール溶液を調製し、この溶液を室温以下に冷却することにより調製することができる。
【0026】
さらに別の態様は、I型〜V型のいずれかを、エタノール中、少なくとも10%、20%、または30%の相対湿度でスラリー化する工程を含む、SNACのVI型の調製方法である。好ましくは、このエタノール溶液は、実質的にまたは完全に無水である。例えば、VI型は、エタノールにI型〜V型のいずれかを添加して析出物を形成させ、このスラリー化した混合物をVI型を形成させるのに十分な時間常温に保持することにより調製することができる。
【0027】
さらに別の態様は、非晶質SNACを形成させるのに十分な時間、SNACのIII型を(例えば真空下で)脱水する工程を含む、非晶質SNACの調製方法である。
【0028】
(発明の詳細な説明)
[定義]
用語「多形」は、ある物質の結晶学的に異なる形態を指す。
【0029】
本明細書で用いる用語「水和物」には、これらだけに限定するものではないが、(i)分子の形で結合する水を含有する物質、および(ii)1分子以上の結晶水を含有する結晶性物質または遊離水を含有する結晶性物質が含まれる。
【0030】
本明細書で用いる用語「SNAC」は、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムをいう。特に記載がない限り、本明細書における用語「SNAC」はSNACの全ての多形体をいう。
【0031】
本明細書で用いる用語「SNAC 1/3水和物」は、1分子の水が3分子のSNACと結びついたSNACの結晶形をいう。
【0032】
本明細書で用いる用語「SNAC 3水和物」は、3分子の水が各分子のSNACと結びついたSNACの結晶形をいう。
【0033】
本明細書で用いる用語「溶媒和物」は、これらだけに限定するものではないが、溶媒の分子またはイオンと、SNACの分子またはイオンと、の分子またはイオン性錯体である。本明細書で用いる用語「共溶媒和物」は、これらだけに限定するものではないが、2種以上の溶媒の分子またはイオンと、SNACの分子またはイオンとの、分子またはイオン性錯体である。
【0034】
本明細書で用いる用語「送達剤」は、SNACを指し、その結晶多形体を含む。
【0035】
「薬剤の有効量」は、ある期間にわたってそれを投与した生体の状態を治療または予防するのに有効な、例えば所望の投薬間隔の間に治療効果を与える活性剤(例えば、ヘパリン)の量である。当業者に認識されているように、有効な用量は、投与経路、賦形剤の使用法、および状態を治療するための他の薬剤との併用によってさまざまである。
【0036】
用語「治療」、「治療する」、または「治療した」は、状態(例えば、疾患)、その状態の症状、またはその状態の素因を、治し、治癒し、緩和し、軽減し、変質させ、修復し、寛解させ、好転させ、あるいはこれらに影響を及ぼすために活性剤を投与することをいう。
【0037】
「送達剤の有効量」は、任意の投与経路〔例えば、これらだけに限定するものではないが、経口(例えば、胃腸管の生体膜を介して)、経鼻、経肺、経皮膚、経膣および/または経眼経路を含む本出願で検討した投与経路等〕を介した所望量の活性剤の吸収を促進する送達剤の量である。
【0038】
本明細書で用いる用語「ヘパリン」は、全ての形態のヘパリンを指し、これらだけに限定するものではないが、未分画ヘパリン、ヘパリノイド、デルマタン、コンドロイチン、低分子量ヘパリン〔例えば、チンザパリン(tinzaparin)(チンザパリンナトリウムを含む)〕、極低分子量ヘパリン、および超低分子量ヘパリンを含む。好ましいヘパリンの種類は、未分画ヘパリン〔例えば、ヘパリンナトリウム(例えば米国薬局方(USP)ヘパリンナトリウム)〕である。用語「低分子量ヘパリン」は、一般に、少なくとも80重量%のヘパリンが約3000から約9000ダルトンの間の分子量を有しているヘパリンをいう。低分子量ヘパリンの限定されない例として、チンザパリン、エノキサプリン、ダルテパリンが挙げられる。チンザパリンは、肺塞栓症を伴うかまたは伴わない急性深部静脈血栓の治療において、ワルファリンナトリウムと併用して投与する場合に、FDAにより奨励されている。チンザパリンのナトリウム塩は、登録商標Innohep(登録商標)の名でPharmion Corporation of Boulder社から市販されている。用語「極低分子量ヘパリン」は、一般に、少なくとも80重量%のヘパリンが約1500から約5000ダルトンの間の分子量を有しているヘパリンをいう。極低分子量ヘパリンの限定されない例として、ベミパリン(bemiparin)が挙げられる。用語「超低分子量ヘパリン」は、一般に、少なくとも80重量%のヘパリンが約1000から約2000ダルトンの間の分子量を有しているヘパリンをいう。超低分子量ヘパリンの限定されない例として、フォンディパリナックス(fondiparinux)が挙げられる。
【0039】
用語「インスリン」は、全ての形態のインスリンを指し、これらだけに限定するものではないが、天然由来のインスリンおよび合成形態のインスリン、例えば、それぞれその全体が本明細書に援用されている米国特許第4,421,685号および同5,534,488号に記載されたインスリンが挙げられる。
【0040】
本明細書で用いる用語「AUC」は、完全な投薬間隔、例えば24時間間隔にわたる台形公式で算出した血漿濃度-時間曲線下面積を意味する。
【0041】
用語「平均値」は、薬物動態学的な値の前に置かれる場合(例えば、平均ピーク)、特に記載がない限り、薬物動態学的な値の相加平均値を表す。
【0042】
本明細書で用いる用語「約」は、一般に、所与の値の10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内を意味する。あるいは、用語「約」は、ある値が、入手可能な道具の測定の質のいかんによって決まるようなタイプの値の科学的に許容可能な誤差範囲内に入り得ることを意味する。
【0043】
[無水SNAC I型]
SNACの結晶多形体I型は、無水である。I型は、室温で安定であり、ミル摩砕(例えばボールミル摩砕)または圧縮(例えば直接圧縮)された場合でも結晶形が変換しない。しかし、I型は、十分な量の水と共に十分な時間湿式造粒するとIII型に変換する。示差走査熱量測定(DSC)によると、I型は、約198℃の溶融開始温度を有する(図2参照)。SNACのI型は、図1に示すXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを有する。I型の特徴的なXRPDピーク位置(角度2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°で表示)および格子面間隔(d-spacing)を以下の表1に提示する。表1において「"U”」とマークされたXRPDピーク位置は、I型に固有のものである。例えば、2.98°(2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°)のピークは、I型に固有である。
【0044】
【表1】
【0045】
I型は、実施例1に記載の手順で調製することができる。
【0046】
I型は、SNACのIII型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、少なくとも50℃(しかし好ましくは110℃未満)の温度に加熱することによっても調製できる。
【0047】
I型は、非晶質SNACを、SNACのI型を形成させるのに十分な時間、約30℃〜約90℃、好ましくは約40℃〜約80℃に加熱することによっても調製できる。
【0048】
I型を調製する別の方法は、I型以外のいずれかの結晶形のSNACを凍結乾燥させてI型を得る方法である。例えば、SNACのII型〜IV型の1種以上および/または非晶質SNACを凍結乾燥させてI型を得ることができる。
【0049】
本発明はまた、SNACの90、80、70、または60%未満(SNACの総重量100%に対して)が結晶質であるSNACのI型を含む医薬組成物を提供する。
【0050】
本発明はまた、SNACのI型と、少なくとも1種類の活性剤または医薬品として許容可能な添加物(例えば下記に記載するもの)との、粉砕(例えば、ボールミル粉砕)混合物または直接圧縮混合物を含む医薬組成物(例えば、錠剤)を提供する。好ましくは、この医薬組成物(または粉砕混合物または直接圧縮混合物)は、医薬組成物(または粉砕混合物または直接圧縮混合物)中のSNACの総重量に対して少なくとも50、60、70、80、90、95、96、97、98、または99重量%のSNACのI型を含む。
【0051】
[SNAC水和物 II型]
結晶多形体II型は、SNACの水和物である。特定の理論に基づくものではないが、本発明者らは、II型は1/3水和物〔すなわち、3モルのSNACにつき約1モルの水を有する(SNAC 1/3水和物ともいう)〕であると理論上想定している。II型は、室温で安定である。DSCによると、II型は、約199℃の溶融開始温度を有する(図7参照)。SNACのII型は、図6に示すXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを有する。II型の特徴的なXRPDピーク位置(角度2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°で表示)および格子面間隔を以下の表2に提示する。表2において「"U”」とマークされたXRPDピーク位置は、II型に固有のものである。例えば、3.29、11.96、および17.76°(2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°)のピークは、II型に固有である。
【0052】
【表2】
【0053】
SNACのII型は、撹拌することなくSNACの溶媒和物(例えば、エタノール溶媒和物またはメタノール溶媒和物)を乾燥(例えば、タンブル乾燥)させる工程と、乾燥させたSNACを十分な時間湿気に曝してSNACのII型を得る工程によって調製することができる。好ましくは、乾燥工程および曝露工程は、密閉容器内で行う。曝露工程は、乾燥工程の後で行ってよい。乾燥させたSNACは、任意で、湿った環境〔通常の環境条件または湿潤環境(相対湿度10または20%またはそれ以上)〕で貯蔵して、SNACのII型以外の全ての残存SNACがII型に変換するようにすることができる。SNACのエタノール溶媒和物は、実施例2に記載の手順により調製することができる。
【0054】
[SNAC水和物 III型]
SNACの結晶多形体III型は、SNACの水和物である。特定の理論に基づくものではないが、本発明者らは、III型は3水和物〔すなわち、1モルのSNACにつき約3モルの水を有する(SNAC3水和物ともいう)〕であると理論上想定している。III型は、室温で安定であり、圧縮(例えば直接圧縮)された場合でも結晶形が変換しない。示差走査熱量測定(DSC)によると、III型は、約198℃の溶融開始温度を有する(図12参照)。SNACのIII型は、図11に示すXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを有する。III型の特徴的なXRPDピーク位置(角度2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°で表示)および格子面間隔を以下の表3に提示する。表3において「"U”」とマークされたXRPDピーク位置は、III型に固有のものである。例えば、6.69、13.58、および16.80°(2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°)のピークは、III型に固有である。
【0055】
【表3】
【0056】
III型は、I型、II型、IV型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、75%、85%、90%、またはそれ以上の相対湿度を有する環境に十分な時間(例えば、7日間またはそれ以上)曝してIII型を得る工程により調製することができる。例えば、III型は、I型、II型、またはIV型〜VI型のいずれかを、75%、またはそれ以上の相対湿度を有する環境に少なくとも7日間(例えば、その物質の含水率が少なくとも約15%w/wになるまで)曝すことにより調製することができる。その物質の含水率が15%w/wよりかなり高い場合、その物質の含水率が約15%w/wになるまで通常の環境条件で乾燥させることが好ましい。
【0057】
III型は、非晶質SNACを、湿気(例えば、0%より高い相対湿度、好ましくは5%または10%より高い相対湿度)に十分な時間曝してIII型を得る工程により調製することができる。
【0058】
III型は、SNACのI型、II型、IV型、V型、もしくはVI型または非晶質SNACまたはこれらの混合物を湿式造粒(水性造粒)する工程によっても調製することができる。一つの実施形態では、SNACのI型を湿式造粒する。得られたIII型は、その後SNACのI型を再び得るように導いてもよい(例えば、50℃)。
【0059】
さらに別のIII型の調製方法は、SNACのV型もしくはVI型またはこれらの混合物を、30%、35%、40%、50%、またはそれ以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を得る工程による。別のIII型の調製方法は、SNACのIV型またはこれらの混合物を、10%、20%、30%、またはそれ以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を得る工程による。
【0060】
III型は、水からSNACを結晶化させる工程によっても調製することができる。形成された結晶は、例えば、通常の環境条件で濾過し、乾燥させることにより単離することができる。好ましくは、乾燥は、40または35℃未満で行う。
【0061】
本発明はまた、SNACのIII型と、少なくとも1種類の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物(例えば下記に記載するもの)との直接圧縮混合物を含む医薬組成物、例えば錠剤を提供する。好ましくは、この医薬組成物(または直接圧縮混合物)は、III型を、医薬組成物(または直接圧縮混合物)中のSNACの総重量に対して少なくとも50、60、70、80、90、95、96、97、98、または99重量%含む。
【0062】
[無水SNAC IV型]
SNACの結晶多形体IV型は、無水である。IV型は、室温で安定である。さらに、IV型は、通常の環境条件で、I型よりアセトニトリルへの溶解性が低く、I型より熱力学的に安定である。示差走査熱量測定(DSC)によると、IV型は、約199℃の溶融開始温度を有する(図17参照)。SNACのIV型は、図16に示すXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを有する。IV型の特徴的なXRPDピーク位置(角度2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°で表示)および格子面間隔を以下の表4に提示する。表4において「"U”」とマークされたXRPDピーク位置は、IV型に固有のものである。例えば、8.61、17.04、および23.28°(2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°)のピークは、IV型に固有である。
【0063】
【表4】
【0064】
IV型は、SNACのI型、II型、III型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、約110℃または約150℃と、SNACの融点との間の温度に十分な時間加熱してIV型を得る工程によって調製することができる。例えば、SNACのII型を、脱溶媒された物質の転移温度より高いがSNACの融点より低い温度(例えば、脱溶媒は、10℃/分の加熱速度で約130〜140℃から開始して起こる)に、IV型が形成されるまで(例えば、数時間)(例えば、乾燥器内で)加熱することができる。形成された後、IV型を冷却し、回収することができる。
【0065】
本発明はまた、SNACの少なくとも50、60、70、80、または90%(SNACの重量100%に対して)が結晶質であるSNACのIV型を含む医薬組成物を提供する。
【0066】
[SNACのメタノール-水共溶媒和物 V型]
SNACの結晶多形体V型は、メタノール-水の共溶媒和物である(1モルのSNACにつき約0.8モルのメタノールおよび約2モルの水を有する)。示差走査熱量測定(DSC)によると、V型は、約197℃の溶融開始温度を有する(図22参照)。SNACのV型は、図21に示すXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを有する。V型の特徴的なXRPDピーク位置(角度2θ:2θ0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°で表示)および格子面間隔を以下の表5に提示する。表5において「"U”」とマークされたXRPDピーク位置は、V型に固有のものである。例えば、6.59、9.96、10.86、13.87、17.29、および19.92°(2θ:2θ0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°)のピークは、V型に固有である。
【0067】
【表5】
【0068】
V型は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でメタノール溶液からSNAC〔SNAC のI〜IV型もしくはVI型またはこれらの混合物(例えば、I型およびIII型の混合物)〕を結晶化させる工程により調製することができる。好ましくは、このメタノール溶液は実質的にまたは完全に無水である。例えば、V型は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でSNAC(SNAC のI〜IV型もしくはVI型またはこれらの混合物)の飽和メタノール溶液を調製し、この溶液を例えば(氷浴中などで)室温以下に冷却することにより調製することができる。得られた析出物を濾過し乾燥させることができる。
【0069】
V型は、SNACのI〜IV型またはVI型の、メタノールとの平衡化工程によっても調製することができる。好ましくは、このメタノール溶液は、実質的にまたは完全に無水である。例えば、V型は、I〜IV型もしくはVI型のいずれか、またはこれらの混合物をメタノール中、少なくとも30%、40%、または50%の相対湿度で(例えば、溶液からのSNACの析出を引き起こすために)スラリー化し、このスラリー化した混合物を、V型を形成するのに十分な時間(例えば数日間)常温に保持することにより調製することができる。好ましくは、過剰(すなわち、SNACに対するメタノールのモル比が1より大きい)のメタノールを用いる。
【0070】
[SNACのエタノール-水共溶媒和物 VI型]
SNACの結晶多形体VI型は、エタノール-水の共溶媒和物である(1モルのSNACにつき約0.6モルのエタノールおよび約2モルの水を有する)。示差走査熱量測定(DSC)によると、VI型は、約197℃の溶融開始温度を有する(図27参照)。SNACのVI型は、図26に示すXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを有する。VI型の特徴的なXRPDピーク位置(角度2θ:2θ0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°で表示)および格子面間隔を以下の表6に提示する。表6において「"U”」とマークされたXRPDピーク位置は、VI型に固有のものである。例えば、9.60、10.43、12.68、および16.58°(2θ:2θ0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°)のピークは、VI型に固有である。
【0071】
【表6】
【0072】
VI型は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でエタノール溶液からSNAC(SNAC のI〜V型またはこれらの混合物)を結晶化させる工程により調製することができる。例えば、VI型は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でSNAC(SNAC のI〜V型またはこれらの混合物)の飽和エタノール溶液を調製し、得られた溶液を室温以下に(例えば氷浴中などで)冷却することにより調製することができる。その後、得られた析出物を濾過し乾燥させることができる。
【0073】
VI型は、I型〜V型のいずれかを、エタノール中、少なくとも約10%、20%、または30%の相対湿度でスラリー化する工程によっても調製することができる。例えば、VI型は、エタノールにI型〜V型のいずれかを添加して析出物を形成させ、このスラリー化した混合物をVI型を形成させるのに十分な時間(例えば、数日間)常温に保持する工程により調製することができる。得られた固体を、例えば濾過し、空気乾燥することにより回収することができる。
【0074】
[非晶質SNAC]
非晶質SNACは、通常の環境条件で不安定であり、湿気に曝すとIII型に変換する。非晶質SNACは、SNACのIII型を非晶質SNACを形成するのに十分な時間、(例えば減圧下で)脱水することにより調製することができる。非晶質SNACは、SNACのV型またはVI型を、非晶質SNACを形成するのに十分な時間、(例えば減圧下で)脱水することによっても調製することができる。
【0075】
前述した手順のいずれかにより調製した結晶は、当技術分野で公知の任意の方法によって回収(recover)することができる。
【0076】
[活性剤]
本発明に用いるために好適な活性剤には、これらだけに限定するものではないが、殺虫
剤、薬理学的作用剤および治療用薬剤を含む、生物学的活性剤および化学的活性剤がある
。
【0077】
好適な生物学的または化学的活性剤として、これらだけに限定するものではないが、タンパク質;ポリペプチド;ペプチド;ホルモン;多糖類、ムコ多糖類、特にムコ多糖類の混合物;炭水化物;脂質;小さな極性有機分子(すなわち、分子量500ダルトン以下を有する極性有機分子);その他の有機化合物;および特に、単独では胃腸粘膜を通過せず(または投与した用量のほんの一部だけが通過する)、かつ/あるいは胃腸管中の酸および酵素による化学分解を受けやすい化合物;またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0078】
好適な生物学的活性剤のさらなる例として、これらだけに限定するものではないが、その供給源が合成、天然または組換えのものを含む以下のものが挙げられる:ヒト成長ホルモン (hGH)、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)、ウシ成長ホルモンおよびブタ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出ホルモン;成長ホルモン放出因子(例えば、GRF類似体);α、βおよびγを含むインターフェロン;インターロイキン-1;インターロイキン-2;亜鉛、ナトリウム、カルシウムおよびアンモニウムを含む対イオンを場合によっては有するブタ、ウシ、ヒトおよびヒト組換えを含むインスリン;IGF-1を含むインスリン様成長因子;未分画ヘパリン、ヘパリン類似物質、デルマタン、コンドロイチン、低分子量ヘパリン、極低分子量ヘパリン、超低分子量ヘパリンを含むヘパリン;サケ、ウナギ、ブタおよびヒトを含むカルシトニン;エリスロポイエチン;心房性ナトリウム排泄増加因子;抗原;モノクローナル抗体;ソマトスタチン;プロテアーゼ阻害剤;副腎皮質刺激ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン;オキシトシン;黄体形成ホルモン放出ホルモン;卵胞刺激ホルモン;グルコセレブロシダーゼ;トロンボポイエチン;フィルグラスチム;プロスタグランジン類;サイクロスポリン;バソプレシン;クロモリンナトリウム(クロモグリン酸ナトリウムもしくはクロモグリン酸二ナトリウム);バンコマイシン;デスフェリオキサミン(DFO);イバンドロネート、アレンドロネート、チルドロネート、エチドロネート、クロドロネート、パミドロネート、オルパドロネート、およびインカドロネート、ならびに医薬品として許容可能なそれらの塩(例えば、イバンドロン酸ナトリウム)を含むビスホスホネート;ガリウム塩(例えば、硝酸ガリウム、硝酸ガリウム九水和物、およびガリウムマルトレート等);アシクロビル、および医薬品として許容可能なその塩(例えば、アシクロビルナトリウム);副甲状腺ホルモン(PTH)(その断片を含む);抗片頭痛剤(例えば、BIBN-4096BSおよび他のカルシトニン遺伝子関連タンパク質拮抗薬等);(グラム陽性作用性の、殺菌作用性の、リポペプチド性の、および環状ペプチド性の抗生物質を含み、ダプトマイシンを含む)抗生物質、抗菌物質、および抗真菌物質を含む抗菌剤;ビタミン類;これらの化合物の類似体、断片、模倣体もしくはポリエチレングリコール(PEG)修飾誘導体;またはこれらの任意の組合せ。
【0079】
1つの態様では、この活性剤は、イバンドロネートまたは医薬品として許容可能なその塩(例えば、イバンドロン酸ナトリウム)である。別の実施形態では、活性剤は、ガリウム塩、例えば、硝酸ガリウム、硝酸ガリウム九水和物等である。さらに別の実施形態では、活性剤は、アシクロビルまたは医薬品として許容可能なその塩(例えば、アシクロビルナトリウム)である。さらに別の実施形態では、活性剤は、ヘパリンである。さらに別の実施形態では、活性剤は、インスリンである。
【0080】
[医薬組成物]
本医薬組成物は、固体形態であることが好ましく、固形の剤形であることが好ましい。この固形剤形は、カプセル、錠剤、または粒子(例えば、粉末またはサッシェ等)であってよい。粉末は、液体と混合して投与されるサッシェの形態であってよい。固形剤形は、局所送達システム(例えば、軟膏、クリーム、または半固体等)であってもよい。企図する固形剤形には、持続放出システム、または制御放出システムが含まれる。好ましくは、固形剤形は、経口投与のためのものである。
【0081】
粉末は、カプセルに詰め、あるいは錠剤に圧縮し、粉末形態で用い、あるいは軟膏、クリーム、または半固体に組み入れることができる。固形剤形を形成させる方法は、当技術分野で周知である。
【0082】
固形剤形中の送達剤の量は、送達に有効な量であり、当業者に公知の方法によって、いずれかの特定の化合物または生物学的もしくは化学的な活性剤に対して決めることができる。
【0083】
投与後、単位投与剤形中の活性剤は循環中に取り込まれる。この活性剤の生物学的利用能は、血液中の既知の薬理学的活性、例えばヘパリンによる血液凝固時間の増大またはカルシトニンによる循環カルシウム濃度の低下を測定することによって容易に評価される。あるいは、活性剤自体の循環濃度を直接測定することができる。
【0084】
固形剤形は、医薬品として許容可能な添加剤、例えば、賦形剤、担体、希釈剤、安定化剤、可塑剤、結合剤、流動促進剤、崩壊剤、膨張剤、潤滑剤、着色剤、皮膜形成剤、香味剤、保存剤、投与賦形剤、界面活性剤、および前述のいずれかの添加剤の任意の組み合わせを含んでいてよい。好ましくは、これらの添加剤は、医薬品として許容可能な添加剤、例えば、参照により本明細書に援用する「Remington's, The Science and Practice of Pharmacy」(Gennaro, A.R., ed., 19th edition, 1995, Mack Pub. Co.)に記載されたものである。
【0085】
好ましい結合剤として、これらだけに限られないが、デンプン、ゼラチン、糖(例えば、ショ糖、モラセス、およびラクトース等)、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、天然または合成のガム(例えば、アカシア等)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、およびワックスが挙げられる。
【0086】
好ましい流動促進剤として、これらだけに限られないが、タルク、および二酸化ケイ素(シリカ)(例えば、ヒュームドシリカおよびコロイド状二酸化ケイ素)が挙げられる。
【0087】
好ましい崩壊剤として、これらだけに限られないが、デンプン、グリコール酸ナトリウムデンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、粘土、セルロース(例えば、精製セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、アルギン酸塩、プレゼラチン化コーンスターチ、およびガム類(例えば、寒天、グアールガム、イナゴマメ、カラヤガム、ペクチンガム、およびトラガカントガム等)が挙げられる。好ましい崩壊剤は、グリコール酸ナトリウムデンプンである。
【0088】
好ましい膨張剤として、これらだけに限られないが、デンプン(例えば、米デンプン等)、微結晶性セルロース、ラクトース(例えば、ラクトース一水和物)、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、およびリン酸三カルシウムが挙げられる。
【0089】
好ましい潤滑剤として、これらだけに限られないが、ステアリン酸、ステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム等)、タルク、ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール、水素化綿実油、およびヒマシ油が挙げられる。
【0090】
好ましい界面活性剤として、これらだけに限られないが、ドデシル硫酸ナトリウム、水酸化大豆レシチン、ポリソルベート、およびポリエチレンオキシドとエチレンオキシドとのブロック共重合体が挙げられる。
【0091】
[送達システム]
本発明の医薬組成物で用いる活性剤の量は、標的適応症のための個々の活性剤の目的を果たすのに有効な量である。組成物中の活性剤の量は通常、薬理学的、生物学的、治療的または化学的に有効な量である。しかし、この量は、組成物を投与単位形態で用いる場合、より少量であり得る。というのは、投与単位形態は複数の送達剤化合物/活性剤組成物を含むことがあり、あるいは分割された薬理学的、生物学的、治療的または化学的有効量を含むことがあるからである。これにより、総有効量を、合計で有効量の活性剤を含む累積単位で投与することができる。
【0092】
用いる活性剤の総量は当業者に公知の方法で決めることができる。しかし、本発明の組成物は他の組成物、または活性剤のみを含む組成物よりも効率よく活性剤を送達できるので、従来の投与単位形態または送達システムで用いたものよりも低用量の生物学的または化学的活性剤を対象に投与して、同じ血中濃度および/または治療効果を達成することができる。
【0093】
一般に、送達剤の活性剤に対する重量比は、約0.1:1から約1000:1の範囲であり、好ましくは約1:1から約300:1の範囲である。この重量比は、活性剤、および活性剤が投与される個々の適応症によって変動する。
【0094】
現在開示されている送達剤は、生物学的および化学的な活性剤の送達、特に、経口、舌下、頬側、十二指腸内、結腸内、直腸、膣、粘膜、肺、鼻腔内、および眼内経路における送達を容易にする。
【0095】
本発明の化合物および組成物は、これらだけに限定するものではないが、ニワトリなどのトリ;齧歯動物、げっ歯類、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、霊長類および特にヒトなどの哺乳動物;ならびに昆虫を含む任意の動物に、生物学的または化学的活性剤を投与するのに有用である。
【0096】
本化合物および組成物は、活性剤がその標的領域(すなわち、送達組成物の活性剤が放出されるべき領域)に到達し、それを投与された動物の体内に到達する前に遭遇する条件により、本化合物および組成物がなければ破壊されるか効果が弱められるであろう化学的または生物学的活性剤の送達に特に好都合である。特に、本発明の化合物および組成物は、活性剤の経口投与、特に、通常は経口送達できない活性剤、または改善された送達が所望される活性剤の経口投与に有用である。
【0097】
本化合物と活性剤とを含む組成物は、活性剤を送達剤なしで投与するのに比較して、活性剤の選択された生物学的システムへの送達と、活性剤の生物学的利用能の増大および改善とに有用である。より多量の活性剤をある期間にわたって送達することにより、または、活性剤を特定の期間内(例えばより速くまたは遅く送達するため)もしくはある期間にわたって(例えば、徐放性送達等)送達することにより、送達を改善することができる。
【0098】
本発明の別の態様は、動物に本発明の組成物を投与することによる、疾患の治療または予防、または所望の生理的効果の達成(例えば、下記の表に記載)のための方法である。活性剤に特異的な適応は、参照により本明細書に援用する「the Physicians’ Desk Reference」(54th Ed., 2000, Medical Economics Company, Inc., Montvale, NJ)で探すことができる。下記の表の活性剤には、これらの類似体、断片、模倣体、およびポリエチレングリコール-修飾誘導体が含まれる。
【0099】
【表7A】
【表7B】
【表7C】
【発明を実施するための最良の形態】
【0100】
以下の実施例は、制限することなく本発明を例示するものである。別段の記載がない限り、部はすべて重量部である。
【0101】
[DSC]
列挙した融点は示差走査熱量測定(DSC)で判定した。示した値は、Windows(登録商標)用Perkin Elmer Pyris 1ソフトウェアで得た。機器は、温度についてはインジウムおよび亜鉛の融点を用いて、エンタルピーについてはインジウムの融解のエンタルピーを用いて較正した。較正はインジウム標準を用いて定期的に確認した。小穴のある波形の蓋を有するアルミニウム容器に試料を密封した。次いで、窒素雰囲気中30〜250℃まで、10℃/分で試料を加熱した。分析する前に、未粉砕の試料を乳鉢と乳棒で軽く粉砕して、試料容器の表面との熱的接触を向上させた。
【0102】
[XRPD]
メリーランド州コロンビアのShimadzu Scientific Instruments, Inc.から入手可能なShimadzu XRD-6000粉末回折計を使用して粉末X線回折解析を行った。機器は、シリコン粉末を用いて較正した。NIST #675低角度回折標準で試験するとこの較正が正確であることが分かった。試料にCuKα線を照射した(λ=1.54056Å)。未粉砕の試料を乳鉢と乳棒で軽く粉砕し、なめらかで一様な表面で分析できるように試料を調製した。2〜40°2θの間の回折パターンを指紋領域として用いてロットに存在する結晶構造を同定した。
【0103】
[熱重量分析(TGA)]
Windows(登録商標)ソフトウェア用Pyris 1と共にPerkin Elmer TGA7熱重量分析計を使用して、SNACの熱重量分析を実施した。機器は、アルメルとニッケルのキュリー点を用いて温度の較正をした。窒素雰囲気中、30℃から300℃まで試料を加熱し、重量の百分率変化を温度関数として記録した。分析する前に、未粉砕のロットを乳鉢と乳棒で軽く粉砕して、粒子径による影響を減らし、白金の試料容器の内部表面との接触を向上させた。
【0104】
[水分の吸着-解離挙動]
SGA-100 Symmetric Vapor Sorption Analyzer(フロリダ州ハイアレアのVTI Corporationから入手可能)を使用して収着分析を実施した。機器は、PVPおよびNaClを用いて較正した。分析する前に、試料(溶媒和物を除く)を乾燥させて60℃で一定重量にした。溶媒和物の試料は、分析前に乾燥させなかった。相対湿度(RH)5%からRH95%まで、次いで再びRH5%での試料の平衡含水量を25℃で測定した。
【0105】
Perkin Elmer Spectrum BX FT-IRでKBrディスクを使用してFTIRを実施した。試料1mgを150mgのKBrに広げた。分解能は4cm-1であり、32スキャンを平均した。
【実施例】
【0106】
[実施例1]
(SNACのI型の調製)
SNACのI型を以下のとおりに調製した。SNACの遊離酸〔すなわち、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸〕を、その全体を参照により本明細書に援用する国際公開番号WO00/59863号の実施例1に記載の方法により、適切な出発物質を用いて調製した。
【0107】
SNACのI型は、SNACの遊離酸から以下の手順で調製した。この手順は、国際公開番号WO00/59863号の実施例12にも記載されている。
【0108】
清浄な300ガロン反応器に、0.5%トルエンで変性したエタノール321Lを装入した。撹拌しながら、SNACの遊離酸109kg(無水)を加えた。反応器を28℃まで加熱し、25℃以上の温度に維持した。精製水(USP)34Lおよび水酸化ナトリウム15.78kgの溶液を調製し、24℃まで冷却し、25〜35℃に反応温度を保ちながら15分かけて撹拌している反応器に加えた。混合物をさらに15分間撹拌した。
【0109】
隣接する反応器に、0.5%トルエンで変性したエタノール321Lを装入した。サキュレーターを用いて反応器を28℃まで加熱した。第一の反応器の溶液を、25℃より高い温度を保ちながら30分間かけて第二の反応器に加えた。内容物を撹拌し、ヘプタン418Lを加えた。反応混合物を10℃まで冷却し、遠心分離し、次いでヘプタン60Lで洗浄した。生成物を集め、Stokesオーブン中82℃および26″Hgの減圧下で約65時間(週末にわたり)乾燥させた。SNAC一ナトリウム(すなわち、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸の一ナトリウム塩)107.5kgが回収された。
【0110】
I型のXRPD、DSC、TGA、FTIR、および吸着/解離スペクトルを、それぞれ図1〜図5に示す。
【0111】
[実施例2]
(SNACのII型の調製)
SNACのII型は、以下のように調製した。実施例1の手順を最後の乾燥工程を除いて繰り返した。次いで、得られたSNACのエタノール溶媒和物を、タンブル乾燥機中で乾燥させ、凝集させた(ボールを形成した)。この乾燥機は、内部撹拌装置を有していなかった。SNACをタンブル乾燥機から取り出し、Comil(登録商標)ミリング機(カナダ、オンタリオ州ウォータールーのQuadro Engineering Inc.から入手可能)で製粉し、バットで乾燥させた。SNACは、少なくとも3年間、ステンレス鋼ドラム内に収納した2重にしたポリエチレンバック中で貯蔵した。
【0112】
II型のXRPD、DSC、TGA、FTIR、および吸着/解離スペクトルを、それぞれ図6〜図10に示す。
【0113】
[実施例3]
(SNACのIII型の調製)
SNACのIII型は、SNACのI型を、90%の相対湿度を有する環境に、I型がXRPDで検出されなくなるまで曝すことにより調製した。次いで、この物質を、フードの下で水分含有量が約15%w/wになるまで乾燥させた。
【0114】
III型のXRPD、DSC、TGA、FTIR、および吸着/解離スペクトルを、それぞれ図11〜図15に示す。
【0115】
[実施例4]
(SNACのIV型の調製)
IV型は、II型を、乾燥空気オーブン中で2時間、170℃で加熱することにより調製した。IV型は、DECによる約198℃の溶融開始温度を有していた。XRPD、DSC、TGA、FTIR、および吸着/解離スペクトルは図16〜図20に示すとおりである。
【0116】
[実施例5]
(SNACのV型の調製)
SNACのV型は、SNACのI型をメタノール中で1週間スラリー化することにより調製した。得られた析出物を減圧濾過し、1時間空気乾燥させた。調製されたV型は、DSCによる約197℃の溶融開始温度を有していた。XRPD、DSC、TGA、FTIR、および吸着/解離スペクトルは図21〜25に示すとおりである。
【0117】
[実施例6]
(SNACのVI型の調製方法)
VI型は、I型をエタノール中で1週間スラリー化することにより調製した。得られた析出物を減圧濾過し、1時間空気乾燥させた。調製されたVI型は、DSCによる約197℃の溶融開始温度を有していた。XRPD、DSC、TGA、FTIR、および吸着/解離スペクトルは図26〜図30に示すとおりである。
【0118】
[実施例7]
(SNACのI型またはIII型とヘパリンUSPとを含有するカプセルの調製)
SNAC(I型またはIII型)と、ヘパリンUSP(30,000IU)とを含有するカプセル(サイズ1、ニュージャージ州のCapsugel of Morris Plainsから入手可能)(表7に示す)は、以下のように調製した。SNAC(実施例1および3で調製したI型またはIII型)およびヘパリンをメッシュ♯35を通してふるいにかけた。指定された量のヘパリンとSNACとを秤量し、清浄な、乾燥させたガラス製の8オンスの乳鉢に移した。ヘパリンの体積と同等の体積のSNACを乳鉢に加え、乳棒で2分間混合した。残りのSNACをこの混合物に加え、再び2分間混合した。カプセルを充填して適切な量を含有させる。
【0119】
【表8】
【0120】
(カニクイザル(Cynos monkey)への投与)
カニクイザル(Cynomolgus monkeys)(雄の平均体重は4.1kg、雌は3.0kg)は、投与の前少なくとも24時間絶食させた。SNAC/ヘパリンのカプセル3個をチューブの先に挿入し、カプセルを空気フラッシュさせて胃の中に送り出した。食餌は投与2時間後に元に戻した。常に水は自由に摂取できるようにした。投与前、および投与後10、20、30、および50分、および1、1.5、2、3、4、および6時間経過時に、約1.3mlの全血をクエン酸管に集めた。この血液試料を10分間、2500RPMで遠心分離にかけ、得られた血漿250μLを、Organon Teknika COAG-A-MATE MTX/MTX II machine を使用するXa因子アッセイに用いた。アッセイに対する標準範囲は、ヘパリン0〜2 IU/mL であった。
【0121】
ヘパリンと共に用いたSNACのI型およびIII型の結果を、それぞれ図31および図32に示す。結果は、サルの性別および体重について平均化した。すなわち、データポイントは、サル4個体(雄3.9kg、雄4.2kg、雌3.2kg、雌2.9kg)であった。全てのサルについてのSNACの各型に対するそれぞれの時点の結果を平均し、図33に示した。
【0122】
[実施例8]
(SNACのI型またはIII型とヘパリンUSPとを含有するカプセルの調製)
SNAC(I型またはIII型)と、ヘパリンUSP(30,000IU)とを含有するカプセル(サイズ1、ニュージャージ州のCapsugel of Morris Plainsから入手可能)(上記表7に示す)を、実施例7に記載された手順で調製した。
【0123】
(カニクイザルへの投与)
実施例7に記載された手順を、雄のサル2個体(平均体重5.6kg)および雌のサル2個体(平均体重6.9kg)で繰り返した。
【0124】
ヘパリンと共に用いたSNACのI型およびIII型の結果を、それぞれ図34および図35に示す。結果は、サルの性別および体重について平均化した。すなわち、データポイントは、サル4個体(雄5.7kg、雄5.6kg、雌7.6kg、雌6.3kg)であった。全てのサルについてのSNACの各型に対するそれぞれの時点の結果を平均し、図36に示した。
【0125】
[実施例9]
実施例1〜4で調製したSNACのI型〜IV型の固有の溶解速度を、以下のように測定した。
【0126】
SNACのI型〜IV型の固有の溶解速度は、ウッズ装置(Wood’s apparatus)で測定した。SNACのI型、II型、III型、またはVI型の300mgのペレットを、ダイスに調製した。溶解媒体に接触可能なペレットの表面積は、0.484cm2であった。ペレットを、Carverプレス機上で1200-1400 lbsで圧縮してディスクを形成させた。次いで、ダイスを溶解装置のシャフトに取り付けた。このダイスを50rpmで回転させ、37℃(pH6.3)に保持した脱気した溶解媒体900mLに浸した。溶解試験は、水中で3回行った。試料は、297.5nmでのオンライン式の紫外分光法により分析した。固有の溶解速度は、シンク条件下の溶解プロファイルの初期の直線部分から決定した。
【0127】
結果を図37および図38に示す。算出したI型〜IV型の溶解速度を下記の表8に示す。
【表9】
【0128】
[実施例10]
SNACのI型〜IV型のそれぞれのアセトニトリルへの溶解性を、周囲湿度および25℃で測定した。アセトニトリルを溶媒として選択したのは、SNACが比較的溶解しにくい数少ない溶媒であり、その溶液を無限希釈に近づけることが可能だからである。溶解性データを下記の表9に示す。
【表10】
【0129】
[実施例11]
SNACのI型に対する粉砕の影響を以下のように測定した。粉砕はボールミル中で行った。試料を20時間後に取り出して、XRPDで解析した。
【0130】
図39に示すように、ボールミル粉砕の前後のSNAC試料のXRPDパターンは実質的に同じである。
【0131】
[実施例12]
SNACのI型に対する湿式造粒の影響を以下のように測定した。SNACのI型を、ガラス製乳鉢中、乳棒を使用し、20%w/wの水を加えて手で湿式造粒した。この顆粒をXRPDで解析した。
【0132】
湿式造粒の前後のSNAC試料のXRPDパターンを図40に示す。湿式造粒後の試料は、III型のXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを示す。
【0133】
[実施例13]
SNACのI型およびIII型に対する圧縮の影響を以下のように測定した。各試料約300mgを、Carverプレス機上で押込み圧4500 lb、保圧時間1分で押し固めた。圧縮サイクルを20回繰り返した。組成物中のSNACの結晶形をXRPDで解析した。
【0134】
SNACのI型およびIII型についての結果を、それぞれ図41および図42に示す。これらの図に示すように、いずれの試料の結晶形も実質的に変化しなかった。
【0135】
[実施例14]
(非晶質SNACの調製)
非晶形は、III型を真空オーブン中、25℃、0.3インチHgで4日間乾燥させることにより調製した。乾燥させた物質は、非晶形と、もとのSNACのIII型約10%との混合物であった。より長時間、かつ、より高い真空度にすると、実質的により高純度の非晶形が得られるであろう。
【0136】
III型を約10%含有する非晶質SNACのXRPD、DSC、TGA、FTIR、および吸着/解離スペクトルを、それぞれ図43〜図47に示す。
【0137】
上記で言及した全ての特許、出願、文献、および試験法は、参照により本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】Figure 1は、実施例1で調製したSNACのI型のX線粉末回折図(XRPD)である。
【図2】Figure 2は、実施例1で調製したSNACのI型の示差走査熱量測定(DSC)走査図である。
【図3】Figure 3は、実施例1で調製したSNACのI型の熱重量分析(TGA)である。
【図4】Figure 4は、実施例1で調製したSNACのI型のFTIRスペクトルである。
【図5】Figure 5は、実施例1で調製したSNACのI型の水分吸着/解離曲線である。
【図6】Figure 6は、実施例2で調製したSNACのII型のX線粉末回折図(XRPD)である。
【図7】Figure 7は、実施例2で調製したSNACのII型の示差走査熱量測定(DSC)走査図である。
【図8】Figure 8は、実施例2で調製したSNACのII型の熱重量分析(TGA)である。
【図9】Figure 9は、実施例2で調製したSNACのII型のFTIRスペクトルである。
【図10】Figure 10は、実施例2で調製したSNACのII型の水分吸着/解離曲線である。
【図11】Figure 11は、実施例3で調製したSNACのIII型のX線粉末回折図(XRPD)である。である。
【図12】Figure 12は、実施例3で調製したSNACのIII型の示差走査熱量測定(DSC)走査図である。
【図13】Figure 13は、実施例3で調製したSNACのIII型の熱重量分析(TGA)である。
【図14】Figure 14は、実施例3で調製したSNACのIII型のFTIRスペクトルである。
【図15】Figure 15は、実施例3で調製したSNACのIII型の水分吸着/解離曲線である。
【図16】Figure 16は、実施例4で調製したSNACのIV型のX線粉末回折図(XRPD)である。
【図17】Figure 17は、実施例4で調製したSNACのIV型の示差走査熱量測定(DSC)走査図である。
【図18】Figure 18は、実施例4で調製したSNACのIV型の熱重量分析(TGA)である。
【図19】Figure 19は、実施例4で調製したSNACのIV型のFTIRスペクトルである。
【図20】Figure 20は、実施例4で調製したSNACのIV型の水分吸着/解離曲線である。
【図21】Figure 21は、実施例5で調製したSNACのV型のX線粉末回折図(XRPD)である。
【図22】Figure 22は、実施例5で調製したSNACのV型の示差走査熱量測定(DSC)走査図である。
【図23】Figure 23は、実施例5で調製したSNACのV型の熱重量分析(TGA)である。
【図24】Figure 24は、実施例5で調製したSNACのV型のFTIRスペクトルである。
【図25】Figure 25は、実施例5で調製したSNACのV型の水分吸着/解離曲線である。
【図26】Figure 26は、実施例6で調製したSNACのVI型のX線粉末回折図(XRPD)である。
【図27】Figure 27は、実施例6で調製したSNACのVI型の示差走査熱量測定(DSC)走査図である。
【図28】Figure 28は、実施例6で調製したSNACのVI型の熱重量分析(TGA)である。
【図29】Figure 29は、実施例6で調製したSNACのVI型のFTIRスペクトルである。
【図30】Figure 30は、実施例6で調製したSNACのVI型の水分吸着/解離曲線である。
【図31】Figure 31は、実施例7で調製したSNACのI型とヘパリンとのカプセルを経口投与した後の時間に対するカニクイザルの血漿ヘパリン濃度である。
【図32】Figure 32は、実施例7で調製したSNACのIII型とヘパリンとのカプセルを経口投与した後の時間に対するカニクイザルの血漿ヘパリン濃度である。
【図33】Figure 33は、実施例7で調製したSNACのI型またはIII型とヘパリンとのカプセルを経口投与した後の時間に対するカニクイザルの血漿ヘパリン濃度である。
【図34】Figure 34は、実施例8で調製したSNACのI型とヘパリンとのカプセルを経口投与した後の時間に対するカニクイザルの血漿ヘパリン濃度である。
【図35】Figure 35は、実施例8で調製したSNACのIII型とヘパリンとのカプセルを経口投与した後の時間に対するカニクイザルの血漿ヘパリン濃度である。
【図36】Figure 36は、実施例8で調製したSNACのI型またはIII型とヘパリンとのカプセルを経口投与した後の時間に対するカニクイザルの血漿ヘパリン濃度である。
【図37】Figure 37は、37℃で脱塩水中に15分間溶解したSNACのI型またはIII型のペレットの量(重量)である(実施例9)。
【図38】Figure 38は、37℃で脱塩水中に15分間溶解したSNACのI型、II型、III型またはIV型のペレットの量(重量)である(実施例9)。
【図39】Figure 39は、ボールミル粉砕の前後のSNACのI型のX線粉末回折図(XRPD)である(実施例11)。
【図40】Figure 40は、湿式造粒の前後のSNACのI型のX線粉末回折図(XRPD)である(実施例12)。
【図41】Figure 41は、圧縮の前後のSNACのI型のX線粉末回折図(XRPD)である(実施例13)。
【図42】Figure 42は、圧縮の前後のSNACのIII型のX線粉末回折図(XRPD)である(実施例13)。
【図43】Figure 43は、実施例14で調製した、(約10%のSNACのIII型を含有した)非晶質SNACのX線粉末回折図(XRPD)である。
【図44】Figure 44は、実施例14で調製した、(約10%のSNACのIII型を含有した)非晶質SNACの示差走査熱量測定(DSC)走査図である。
【図45】Figure 45は、実施例14で調製した、(約10%のSNACのIII型を含有した)非晶質SNACの熱重量分析(TGA)である。
【図46】Figure 46は、実施例14で調製した、(約10%のSNACのIII型を含有した)非晶質SNACのFTIRスペクトルである。
【図47】Figure 47は、実施例14で調製した、(約10%のSNACのIII型を含有した)非晶質SNACの水分吸着/解離曲線である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年5月6日出願の米国仮出願第60/569,476号、および2004年10月15日出願の米国仮出願第60/619,418号の利益を主張する。両出願は参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム結晶多形体、非晶質N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム、これらを含有する医薬組成物、これらの調製方法、および、これらを用いて活性剤の送達を容易にする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
米国特許第5,650,386号は、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸およびその塩類、ならびにさまざまな活性剤の送達を容易にするためのこれらの使用について開示している。
【特許文献1】米国特許第5,650,386号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、N-[-8-(2-ヒドリキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム(「SNAC」)の結晶多形体に関し、この多形体には、SNACの水和物2種、メタノール/水溶媒和物1種、およびエタノール/水溶媒和物1種が含まれる。より具体的には、本発明は、SNACの多形体を6種提供する(以下、I〜VI型と呼ぶ)。本発明はまた、SNACの非晶形も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様は、(A)(i) 1種以上のSNACのI〜IV型および/または(ii)非晶質SNACと、(B)活性剤(例えば、ヘパリン)とを含む医薬組成物である。好ましい態様では、本医薬組成物は、SNACのI〜IV型または非晶質SNACの1種を、医薬組成物中のSNACの総重量100%に対して少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、または99.9重量%含む。別の好ましい態様では、本医薬組成物は、SNACのI〜IV型の1種を、医薬組成物中のSNACの総重量100%に対して少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、または99.9重量%含む。
【0006】
本発明のさらに別の態様は、本発明の医薬組成物を投与することによって、動物(例えば人間等)に活性剤を投与する、または動物への活性剤の送達を容易化するための方法である。
【0007】
さらに別の態様は、ヘパリンを含有する本発明の医薬組成物の抗血栓効果のための有効量を、経口投与することによって、治療を必要とする動物(例えば人間等)の血栓症を治療する方法。
【0008】
さらに別の態様は、SNACのIII型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、SNACのI型を形成させるのに十分な時間、少なくとも50℃(しかし好ましくは110℃未満)に加熱する工程を含む、SNACのI型の調製方法である。
【0009】
さらに別の態様は、非晶質SNACを、SNACのI型を形成させるのに十分な時間、約30℃〜約90℃、好ましくは約40℃〜約80℃に加熱する工程を含む、SNACのI型の調製方法である。
【0010】
さらに別の態様は、I型以外のいずれかの結晶形のSNACを凍結乾燥させてI型を得る工程を含む、SNACのI型の調製方法である。例えば、本方法は、SNACのII型〜IV型の1種以上および/または非晶質SNACを凍結乾燥させてI型を得る工程を含んでいてよい。
【0011】
さらに別の態様は、SNACのI型と、少なくとも1種類の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物(例えば下記に記載するもの)との粉砕混合物または直接圧縮混合物を含む医薬組成物(例えば錠剤)である。この医薬組成物は、SNACのI型と、少なくとも1種の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物との混合物を、粉砕(例えばボールミル粉砕)または圧縮(例えば直接圧縮)することにより調製することができる。
【0012】
さらに別の態様は、撹拌することなくSNACの溶媒和物(例えばエタノール溶媒和物またはメタノール溶媒和物)を乾燥(例えばタンブル乾燥)させる工程と、乾燥させたSNACを十分な時間湿気に曝してSNACのII型を得る工程とを含む、SNACのII型の調製方法である。好ましくは、乾燥工程および曝露工程は、密閉容器内で行う。乾燥させたSNACは、湿った環境で貯蔵して、SNACのII型以外の全ての残存SNACがSNACのII型に変換するようにする。
【0013】
さらに別の態様は、SNACのII型と、少なくとも1種類の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物(例えば下記に記載するもの)との直接圧縮混合物を含む医薬組成物(例えば錠剤)である。この医薬組成物は、SNACのII型と、少なくとも1種の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物との混合物を、圧縮(例えば直接圧縮)することにより調製することができる。
【0014】
さらに別の態様は、SNACのI型、II型、IV型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、75%、80%、85%、90%、またはそれ以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法である。
【0015】
さらに別の態様は、非晶質SNACを、湿気(例えば、0%より高い相対湿度、好ましくは5%または10%より高い相対湿度)に十分な時間曝してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法である。
【0016】
さらに別の態様は、SNACのI型、II型、IV型、V型、もしくはVI型または非晶質SNACまたはこれらの混合物を〔少なくとも1種類の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物(例えば下記に記載するもの)と共に、あるいは非存在下で〕十分な時間湿式造粒してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法である。一つの実施形態では、SNACのI型を湿式造粒する。
【0017】
さらに別の態様は、SNACのV型もしくはVI型またはこれらの混合物を、30%、35%、40%、50%、またはそれ以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を生産する工程を含む、SNACのIII型の調製方法である。
【0018】
さらに別の態様は、SNACのIV型を、10%、20%、30%、またはそれ以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法である。
【0019】
さらに別の態様は、水からSNACを結晶化させる工程を含む、SNACのIII型の調製方法である。
【0020】
さらに別の態様は、SNACのI型を十分な時間湿式造粒してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法である。
【0021】
さらに別の態様は、SNACのIII型と、少なくとも1種類の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物(例えば下記に記載するもの)との直接圧縮混合物を含む医薬組成物、例えば錠剤である。この医薬組成物は、SNACのIII型と、少なくとも1種の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物との混合物を、圧縮(例えば直接圧縮)することにより調製することができる。
【0022】
さらに別の態様は、SNACのI型、II型、III型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、約110℃または約150℃とSNACの融点との間の温度(例えば、150℃または170℃)に十分な時間加熱してIV型を得る工程を含む、SNACのVI型の調製方法である。
【0023】
さらに別の態様は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でメタノール溶液からSNACを結晶化させる工程を含む、SNACのV型の調製方法である。好ましくは、メタノール溶液が実質的にまたは完全に無水である。特定の理論に基づくものではないが、メタノール溶媒和物が時間とともに大気中の水とメタノールを交換してメタノール-水共溶媒和物であるV型をもたらすと考えられる。例えば、V型は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でSNAC(SNAC のI〜IV型もしくはVI型またはこれらの混合物)の飽和メタノール溶液を調製し、この溶液を例えば(氷浴中などで)室温以下に冷却することにより調製することができる。得られた析出物を濾過し乾燥させることができる。
【0024】
さらに別の態様は、SNACのI〜IV型またはVI型の、メタノールとの平衡化工程を含む、SNACのV型の調製方法である。好ましくは、このメタノール溶液は、実質的にまたは完全に無水である。例えば、V型は、I〜IV型もしくはVI型のいずれか、またはこれらの混合物をメタノール中、少なくとも30%、40%、または50%の相対湿度でスラリー化し、このスラリー化した混合物を、V型を形成させるのに十分な時間(例えば数日間)常温に保持することにより調製することができる。
【0025】
さらに別の態様は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でエタノール溶液からSNACを結晶化させる工程を含む、SNACのVI型の調製方法である。好ましくは、このエタノール溶液は、実質的にまたは完全に無水である。例えば、VI型は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でSNAC(SNAC のI〜V型またはこれらの混合物)の飽和エタノール溶液を調製し、この溶液を室温以下に冷却することにより調製することができる。
【0026】
さらに別の態様は、I型〜V型のいずれかを、エタノール中、少なくとも10%、20%、または30%の相対湿度でスラリー化する工程を含む、SNACのVI型の調製方法である。好ましくは、このエタノール溶液は、実質的にまたは完全に無水である。例えば、VI型は、エタノールにI型〜V型のいずれかを添加して析出物を形成させ、このスラリー化した混合物をVI型を形成させるのに十分な時間常温に保持することにより調製することができる。
【0027】
さらに別の態様は、非晶質SNACを形成させるのに十分な時間、SNACのIII型を(例えば真空下で)脱水する工程を含む、非晶質SNACの調製方法である。
【0028】
(発明の詳細な説明)
[定義]
用語「多形」は、ある物質の結晶学的に異なる形態を指す。
【0029】
本明細書で用いる用語「水和物」には、これらだけに限定するものではないが、(i)分子の形で結合する水を含有する物質、および(ii)1分子以上の結晶水を含有する結晶性物質または遊離水を含有する結晶性物質が含まれる。
【0030】
本明細書で用いる用語「SNAC」は、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムをいう。特に記載がない限り、本明細書における用語「SNAC」はSNACの全ての多形体をいう。
【0031】
本明細書で用いる用語「SNAC 1/3水和物」は、1分子の水が3分子のSNACと結びついたSNACの結晶形をいう。
【0032】
本明細書で用いる用語「SNAC 3水和物」は、3分子の水が各分子のSNACと結びついたSNACの結晶形をいう。
【0033】
本明細書で用いる用語「溶媒和物」は、これらだけに限定するものではないが、溶媒の分子またはイオンと、SNACの分子またはイオンと、の分子またはイオン性錯体である。本明細書で用いる用語「共溶媒和物」は、これらだけに限定するものではないが、2種以上の溶媒の分子またはイオンと、SNACの分子またはイオンとの、分子またはイオン性錯体である。
【0034】
本明細書で用いる用語「送達剤」は、SNACを指し、その結晶多形体を含む。
【0035】
「薬剤の有効量」は、ある期間にわたってそれを投与した生体の状態を治療または予防するのに有効な、例えば所望の投薬間隔の間に治療効果を与える活性剤(例えば、ヘパリン)の量である。当業者に認識されているように、有効な用量は、投与経路、賦形剤の使用法、および状態を治療するための他の薬剤との併用によってさまざまである。
【0036】
用語「治療」、「治療する」、または「治療した」は、状態(例えば、疾患)、その状態の症状、またはその状態の素因を、治し、治癒し、緩和し、軽減し、変質させ、修復し、寛解させ、好転させ、あるいはこれらに影響を及ぼすために活性剤を投与することをいう。
【0037】
「送達剤の有効量」は、任意の投与経路〔例えば、これらだけに限定するものではないが、経口(例えば、胃腸管の生体膜を介して)、経鼻、経肺、経皮膚、経膣および/または経眼経路を含む本出願で検討した投与経路等〕を介した所望量の活性剤の吸収を促進する送達剤の量である。
【0038】
本明細書で用いる用語「ヘパリン」は、全ての形態のヘパリンを指し、これらだけに限定するものではないが、未分画ヘパリン、ヘパリノイド、デルマタン、コンドロイチン、低分子量ヘパリン〔例えば、チンザパリン(tinzaparin)(チンザパリンナトリウムを含む)〕、極低分子量ヘパリン、および超低分子量ヘパリンを含む。好ましいヘパリンの種類は、未分画ヘパリン〔例えば、ヘパリンナトリウム(例えば米国薬局方(USP)ヘパリンナトリウム)〕である。用語「低分子量ヘパリン」は、一般に、少なくとも80重量%のヘパリンが約3000から約9000ダルトンの間の分子量を有しているヘパリンをいう。低分子量ヘパリンの限定されない例として、チンザパリン、エノキサプリン、ダルテパリンが挙げられる。チンザパリンは、肺塞栓症を伴うかまたは伴わない急性深部静脈血栓の治療において、ワルファリンナトリウムと併用して投与する場合に、FDAにより奨励されている。チンザパリンのナトリウム塩は、登録商標Innohep(登録商標)の名でPharmion Corporation of Boulder社から市販されている。用語「極低分子量ヘパリン」は、一般に、少なくとも80重量%のヘパリンが約1500から約5000ダルトンの間の分子量を有しているヘパリンをいう。極低分子量ヘパリンの限定されない例として、ベミパリン(bemiparin)が挙げられる。用語「超低分子量ヘパリン」は、一般に、少なくとも80重量%のヘパリンが約1000から約2000ダルトンの間の分子量を有しているヘパリンをいう。超低分子量ヘパリンの限定されない例として、フォンディパリナックス(fondiparinux)が挙げられる。
【0039】
用語「インスリン」は、全ての形態のインスリンを指し、これらだけに限定するものではないが、天然由来のインスリンおよび合成形態のインスリン、例えば、それぞれその全体が本明細書に援用されている米国特許第4,421,685号および同5,534,488号に記載されたインスリンが挙げられる。
【0040】
本明細書で用いる用語「AUC」は、完全な投薬間隔、例えば24時間間隔にわたる台形公式で算出した血漿濃度-時間曲線下面積を意味する。
【0041】
用語「平均値」は、薬物動態学的な値の前に置かれる場合(例えば、平均ピーク)、特に記載がない限り、薬物動態学的な値の相加平均値を表す。
【0042】
本明細書で用いる用語「約」は、一般に、所与の値の10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内を意味する。あるいは、用語「約」は、ある値が、入手可能な道具の測定の質のいかんによって決まるようなタイプの値の科学的に許容可能な誤差範囲内に入り得ることを意味する。
【0043】
[無水SNAC I型]
SNACの結晶多形体I型は、無水である。I型は、室温で安定であり、ミル摩砕(例えばボールミル摩砕)または圧縮(例えば直接圧縮)された場合でも結晶形が変換しない。しかし、I型は、十分な量の水と共に十分な時間湿式造粒するとIII型に変換する。示差走査熱量測定(DSC)によると、I型は、約198℃の溶融開始温度を有する(図2参照)。SNACのI型は、図1に示すXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを有する。I型の特徴的なXRPDピーク位置(角度2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°で表示)および格子面間隔(d-spacing)を以下の表1に提示する。表1において「"U”」とマークされたXRPDピーク位置は、I型に固有のものである。例えば、2.98°(2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°)のピークは、I型に固有である。
【0044】
【表1】
【0045】
I型は、実施例1に記載の手順で調製することができる。
【0046】
I型は、SNACのIII型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、少なくとも50℃(しかし好ましくは110℃未満)の温度に加熱することによっても調製できる。
【0047】
I型は、非晶質SNACを、SNACのI型を形成させるのに十分な時間、約30℃〜約90℃、好ましくは約40℃〜約80℃に加熱することによっても調製できる。
【0048】
I型を調製する別の方法は、I型以外のいずれかの結晶形のSNACを凍結乾燥させてI型を得る方法である。例えば、SNACのII型〜IV型の1種以上および/または非晶質SNACを凍結乾燥させてI型を得ることができる。
【0049】
本発明はまた、SNACの90、80、70、または60%未満(SNACの総重量100%に対して)が結晶質であるSNACのI型を含む医薬組成物を提供する。
【0050】
本発明はまた、SNACのI型と、少なくとも1種類の活性剤または医薬品として許容可能な添加物(例えば下記に記載するもの)との、粉砕(例えば、ボールミル粉砕)混合物または直接圧縮混合物を含む医薬組成物(例えば、錠剤)を提供する。好ましくは、この医薬組成物(または粉砕混合物または直接圧縮混合物)は、医薬組成物(または粉砕混合物または直接圧縮混合物)中のSNACの総重量に対して少なくとも50、60、70、80、90、95、96、97、98、または99重量%のSNACのI型を含む。
【0051】
[SNAC水和物 II型]
結晶多形体II型は、SNACの水和物である。特定の理論に基づくものではないが、本発明者らは、II型は1/3水和物〔すなわち、3モルのSNACにつき約1モルの水を有する(SNAC 1/3水和物ともいう)〕であると理論上想定している。II型は、室温で安定である。DSCによると、II型は、約199℃の溶融開始温度を有する(図7参照)。SNACのII型は、図6に示すXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを有する。II型の特徴的なXRPDピーク位置(角度2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°で表示)および格子面間隔を以下の表2に提示する。表2において「"U”」とマークされたXRPDピーク位置は、II型に固有のものである。例えば、3.29、11.96、および17.76°(2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°)のピークは、II型に固有である。
【0052】
【表2】
【0053】
SNACのII型は、撹拌することなくSNACの溶媒和物(例えば、エタノール溶媒和物またはメタノール溶媒和物)を乾燥(例えば、タンブル乾燥)させる工程と、乾燥させたSNACを十分な時間湿気に曝してSNACのII型を得る工程によって調製することができる。好ましくは、乾燥工程および曝露工程は、密閉容器内で行う。曝露工程は、乾燥工程の後で行ってよい。乾燥させたSNACは、任意で、湿った環境〔通常の環境条件または湿潤環境(相対湿度10または20%またはそれ以上)〕で貯蔵して、SNACのII型以外の全ての残存SNACがII型に変換するようにすることができる。SNACのエタノール溶媒和物は、実施例2に記載の手順により調製することができる。
【0054】
[SNAC水和物 III型]
SNACの結晶多形体III型は、SNACの水和物である。特定の理論に基づくものではないが、本発明者らは、III型は3水和物〔すなわち、1モルのSNACにつき約3モルの水を有する(SNAC3水和物ともいう)〕であると理論上想定している。III型は、室温で安定であり、圧縮(例えば直接圧縮)された場合でも結晶形が変換しない。示差走査熱量測定(DSC)によると、III型は、約198℃の溶融開始温度を有する(図12参照)。SNACのIII型は、図11に示すXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを有する。III型の特徴的なXRPDピーク位置(角度2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°で表示)および格子面間隔を以下の表3に提示する。表3において「"U”」とマークされたXRPDピーク位置は、III型に固有のものである。例えば、6.69、13.58、および16.80°(2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°)のピークは、III型に固有である。
【0055】
【表3】
【0056】
III型は、I型、II型、IV型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、75%、85%、90%、またはそれ以上の相対湿度を有する環境に十分な時間(例えば、7日間またはそれ以上)曝してIII型を得る工程により調製することができる。例えば、III型は、I型、II型、またはIV型〜VI型のいずれかを、75%、またはそれ以上の相対湿度を有する環境に少なくとも7日間(例えば、その物質の含水率が少なくとも約15%w/wになるまで)曝すことにより調製することができる。その物質の含水率が15%w/wよりかなり高い場合、その物質の含水率が約15%w/wになるまで通常の環境条件で乾燥させることが好ましい。
【0057】
III型は、非晶質SNACを、湿気(例えば、0%より高い相対湿度、好ましくは5%または10%より高い相対湿度)に十分な時間曝してIII型を得る工程により調製することができる。
【0058】
III型は、SNACのI型、II型、IV型、V型、もしくはVI型または非晶質SNACまたはこれらの混合物を湿式造粒(水性造粒)する工程によっても調製することができる。一つの実施形態では、SNACのI型を湿式造粒する。得られたIII型は、その後SNACのI型を再び得るように導いてもよい(例えば、50℃)。
【0059】
さらに別のIII型の調製方法は、SNACのV型もしくはVI型またはこれらの混合物を、30%、35%、40%、50%、またはそれ以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を得る工程による。別のIII型の調製方法は、SNACのIV型またはこれらの混合物を、10%、20%、30%、またはそれ以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を得る工程による。
【0060】
III型は、水からSNACを結晶化させる工程によっても調製することができる。形成された結晶は、例えば、通常の環境条件で濾過し、乾燥させることにより単離することができる。好ましくは、乾燥は、40または35℃未満で行う。
【0061】
本発明はまた、SNACのIII型と、少なくとも1種類の活性剤および/または医薬品として許容可能な添加物(例えば下記に記載するもの)との直接圧縮混合物を含む医薬組成物、例えば錠剤を提供する。好ましくは、この医薬組成物(または直接圧縮混合物)は、III型を、医薬組成物(または直接圧縮混合物)中のSNACの総重量に対して少なくとも50、60、70、80、90、95、96、97、98、または99重量%含む。
【0062】
[無水SNAC IV型]
SNACの結晶多形体IV型は、無水である。IV型は、室温で安定である。さらに、IV型は、通常の環境条件で、I型よりアセトニトリルへの溶解性が低く、I型より熱力学的に安定である。示差走査熱量測定(DSC)によると、IV型は、約199℃の溶融開始温度を有する(図17参照)。SNACのIV型は、図16に示すXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを有する。IV型の特徴的なXRPDピーク位置(角度2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°で表示)および格子面間隔を以下の表4に提示する。表4において「"U”」とマークされたXRPDピーク位置は、IV型に固有のものである。例えば、8.61、17.04、および23.28°(2θ:2θ±0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°)のピークは、IV型に固有である。
【0063】
【表4】
【0064】
IV型は、SNACのI型、II型、III型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、約110℃または約150℃と、SNACの融点との間の温度に十分な時間加熱してIV型を得る工程によって調製することができる。例えば、SNACのII型を、脱溶媒された物質の転移温度より高いがSNACの融点より低い温度(例えば、脱溶媒は、10℃/分の加熱速度で約130〜140℃から開始して起こる)に、IV型が形成されるまで(例えば、数時間)(例えば、乾燥器内で)加熱することができる。形成された後、IV型を冷却し、回収することができる。
【0065】
本発明はまた、SNACの少なくとも50、60、70、80、または90%(SNACの重量100%に対して)が結晶質であるSNACのIV型を含む医薬組成物を提供する。
【0066】
[SNACのメタノール-水共溶媒和物 V型]
SNACの結晶多形体V型は、メタノール-水の共溶媒和物である(1モルのSNACにつき約0.8モルのメタノールおよび約2モルの水を有する)。示差走査熱量測定(DSC)によると、V型は、約197℃の溶融開始温度を有する(図22参照)。SNACのV型は、図21に示すXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを有する。V型の特徴的なXRPDピーク位置(角度2θ:2θ0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°で表示)および格子面間隔を以下の表5に提示する。表5において「"U”」とマークされたXRPDピーク位置は、V型に固有のものである。例えば、6.59、9.96、10.86、13.87、17.29、および19.92°(2θ:2θ0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°)のピークは、V型に固有である。
【0067】
【表5】
【0068】
V型は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でメタノール溶液からSNAC〔SNAC のI〜IV型もしくはVI型またはこれらの混合物(例えば、I型およびIII型の混合物)〕を結晶化させる工程により調製することができる。好ましくは、このメタノール溶液は実質的にまたは完全に無水である。例えば、V型は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でSNAC(SNAC のI〜IV型もしくはVI型またはこれらの混合物)の飽和メタノール溶液を調製し、この溶液を例えば(氷浴中などで)室温以下に冷却することにより調製することができる。得られた析出物を濾過し乾燥させることができる。
【0069】
V型は、SNACのI〜IV型またはVI型の、メタノールとの平衡化工程によっても調製することができる。好ましくは、このメタノール溶液は、実質的にまたは完全に無水である。例えば、V型は、I〜IV型もしくはVI型のいずれか、またはこれらの混合物をメタノール中、少なくとも30%、40%、または50%の相対湿度で(例えば、溶液からのSNACの析出を引き起こすために)スラリー化し、このスラリー化した混合物を、V型を形成するのに十分な時間(例えば数日間)常温に保持することにより調製することができる。好ましくは、過剰(すなわち、SNACに対するメタノールのモル比が1より大きい)のメタノールを用いる。
【0070】
[SNACのエタノール-水共溶媒和物 VI型]
SNACの結晶多形体VI型は、エタノール-水の共溶媒和物である(1モルのSNACにつき約0.6モルのエタノールおよび約2モルの水を有する)。示差走査熱量測定(DSC)によると、VI型は、約197℃の溶融開始温度を有する(図27参照)。SNACのVI型は、図26に示すXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを有する。VI型の特徴的なXRPDピーク位置(角度2θ:2θ0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°で表示)および格子面間隔を以下の表6に提示する。表6において「"U”」とマークされたXRPDピーク位置は、VI型に固有のものである。例えば、9.60、10.43、12.68、および16.58°(2θ:2θ0.2, 0.1, 0.05, or 0.01°)のピークは、VI型に固有である。
【0071】
【表6】
【0072】
VI型は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でエタノール溶液からSNAC(SNAC のI〜V型またはこれらの混合物)を結晶化させる工程により調製することができる。例えば、VI型は、少なくとも約30%、40%、または50%の相対湿度でSNAC(SNAC のI〜V型またはこれらの混合物)の飽和エタノール溶液を調製し、得られた溶液を室温以下に(例えば氷浴中などで)冷却することにより調製することができる。その後、得られた析出物を濾過し乾燥させることができる。
【0073】
VI型は、I型〜V型のいずれかを、エタノール中、少なくとも約10%、20%、または30%の相対湿度でスラリー化する工程によっても調製することができる。例えば、VI型は、エタノールにI型〜V型のいずれかを添加して析出物を形成させ、このスラリー化した混合物をVI型を形成させるのに十分な時間(例えば、数日間)常温に保持する工程により調製することができる。得られた固体を、例えば濾過し、空気乾燥することにより回収することができる。
【0074】
[非晶質SNAC]
非晶質SNACは、通常の環境条件で不安定であり、湿気に曝すとIII型に変換する。非晶質SNACは、SNACのIII型を非晶質SNACを形成するのに十分な時間、(例えば減圧下で)脱水することにより調製することができる。非晶質SNACは、SNACのV型またはVI型を、非晶質SNACを形成するのに十分な時間、(例えば減圧下で)脱水することによっても調製することができる。
【0075】
前述した手順のいずれかにより調製した結晶は、当技術分野で公知の任意の方法によって回収(recover)することができる。
【0076】
[活性剤]
本発明に用いるために好適な活性剤には、これらだけに限定するものではないが、殺虫
剤、薬理学的作用剤および治療用薬剤を含む、生物学的活性剤および化学的活性剤がある
。
【0077】
好適な生物学的または化学的活性剤として、これらだけに限定するものではないが、タンパク質;ポリペプチド;ペプチド;ホルモン;多糖類、ムコ多糖類、特にムコ多糖類の混合物;炭水化物;脂質;小さな極性有機分子(すなわち、分子量500ダルトン以下を有する極性有機分子);その他の有機化合物;および特に、単独では胃腸粘膜を通過せず(または投与した用量のほんの一部だけが通過する)、かつ/あるいは胃腸管中の酸および酵素による化学分解を受けやすい化合物;またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0078】
好適な生物学的活性剤のさらなる例として、これらだけに限定するものではないが、その供給源が合成、天然または組換えのものを含む以下のものが挙げられる:ヒト成長ホルモン (hGH)、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)、ウシ成長ホルモンおよびブタ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出ホルモン;成長ホルモン放出因子(例えば、GRF類似体);α、βおよびγを含むインターフェロン;インターロイキン-1;インターロイキン-2;亜鉛、ナトリウム、カルシウムおよびアンモニウムを含む対イオンを場合によっては有するブタ、ウシ、ヒトおよびヒト組換えを含むインスリン;IGF-1を含むインスリン様成長因子;未分画ヘパリン、ヘパリン類似物質、デルマタン、コンドロイチン、低分子量ヘパリン、極低分子量ヘパリン、超低分子量ヘパリンを含むヘパリン;サケ、ウナギ、ブタおよびヒトを含むカルシトニン;エリスロポイエチン;心房性ナトリウム排泄増加因子;抗原;モノクローナル抗体;ソマトスタチン;プロテアーゼ阻害剤;副腎皮質刺激ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン;オキシトシン;黄体形成ホルモン放出ホルモン;卵胞刺激ホルモン;グルコセレブロシダーゼ;トロンボポイエチン;フィルグラスチム;プロスタグランジン類;サイクロスポリン;バソプレシン;クロモリンナトリウム(クロモグリン酸ナトリウムもしくはクロモグリン酸二ナトリウム);バンコマイシン;デスフェリオキサミン(DFO);イバンドロネート、アレンドロネート、チルドロネート、エチドロネート、クロドロネート、パミドロネート、オルパドロネート、およびインカドロネート、ならびに医薬品として許容可能なそれらの塩(例えば、イバンドロン酸ナトリウム)を含むビスホスホネート;ガリウム塩(例えば、硝酸ガリウム、硝酸ガリウム九水和物、およびガリウムマルトレート等);アシクロビル、および医薬品として許容可能なその塩(例えば、アシクロビルナトリウム);副甲状腺ホルモン(PTH)(その断片を含む);抗片頭痛剤(例えば、BIBN-4096BSおよび他のカルシトニン遺伝子関連タンパク質拮抗薬等);(グラム陽性作用性の、殺菌作用性の、リポペプチド性の、および環状ペプチド性の抗生物質を含み、ダプトマイシンを含む)抗生物質、抗菌物質、および抗真菌物質を含む抗菌剤;ビタミン類;これらの化合物の類似体、断片、模倣体もしくはポリエチレングリコール(PEG)修飾誘導体;またはこれらの任意の組合せ。
【0079】
1つの態様では、この活性剤は、イバンドロネートまたは医薬品として許容可能なその塩(例えば、イバンドロン酸ナトリウム)である。別の実施形態では、活性剤は、ガリウム塩、例えば、硝酸ガリウム、硝酸ガリウム九水和物等である。さらに別の実施形態では、活性剤は、アシクロビルまたは医薬品として許容可能なその塩(例えば、アシクロビルナトリウム)である。さらに別の実施形態では、活性剤は、ヘパリンである。さらに別の実施形態では、活性剤は、インスリンである。
【0080】
[医薬組成物]
本医薬組成物は、固体形態であることが好ましく、固形の剤形であることが好ましい。この固形剤形は、カプセル、錠剤、または粒子(例えば、粉末またはサッシェ等)であってよい。粉末は、液体と混合して投与されるサッシェの形態であってよい。固形剤形は、局所送達システム(例えば、軟膏、クリーム、または半固体等)であってもよい。企図する固形剤形には、持続放出システム、または制御放出システムが含まれる。好ましくは、固形剤形は、経口投与のためのものである。
【0081】
粉末は、カプセルに詰め、あるいは錠剤に圧縮し、粉末形態で用い、あるいは軟膏、クリーム、または半固体に組み入れることができる。固形剤形を形成させる方法は、当技術分野で周知である。
【0082】
固形剤形中の送達剤の量は、送達に有効な量であり、当業者に公知の方法によって、いずれかの特定の化合物または生物学的もしくは化学的な活性剤に対して決めることができる。
【0083】
投与後、単位投与剤形中の活性剤は循環中に取り込まれる。この活性剤の生物学的利用能は、血液中の既知の薬理学的活性、例えばヘパリンによる血液凝固時間の増大またはカルシトニンによる循環カルシウム濃度の低下を測定することによって容易に評価される。あるいは、活性剤自体の循環濃度を直接測定することができる。
【0084】
固形剤形は、医薬品として許容可能な添加剤、例えば、賦形剤、担体、希釈剤、安定化剤、可塑剤、結合剤、流動促進剤、崩壊剤、膨張剤、潤滑剤、着色剤、皮膜形成剤、香味剤、保存剤、投与賦形剤、界面活性剤、および前述のいずれかの添加剤の任意の組み合わせを含んでいてよい。好ましくは、これらの添加剤は、医薬品として許容可能な添加剤、例えば、参照により本明細書に援用する「Remington's, The Science and Practice of Pharmacy」(Gennaro, A.R., ed., 19th edition, 1995, Mack Pub. Co.)に記載されたものである。
【0085】
好ましい結合剤として、これらだけに限られないが、デンプン、ゼラチン、糖(例えば、ショ糖、モラセス、およびラクトース等)、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、天然または合成のガム(例えば、アカシア等)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、およびワックスが挙げられる。
【0086】
好ましい流動促進剤として、これらだけに限られないが、タルク、および二酸化ケイ素(シリカ)(例えば、ヒュームドシリカおよびコロイド状二酸化ケイ素)が挙げられる。
【0087】
好ましい崩壊剤として、これらだけに限られないが、デンプン、グリコール酸ナトリウムデンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、粘土、セルロース(例えば、精製セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、アルギン酸塩、プレゼラチン化コーンスターチ、およびガム類(例えば、寒天、グアールガム、イナゴマメ、カラヤガム、ペクチンガム、およびトラガカントガム等)が挙げられる。好ましい崩壊剤は、グリコール酸ナトリウムデンプンである。
【0088】
好ましい膨張剤として、これらだけに限られないが、デンプン(例えば、米デンプン等)、微結晶性セルロース、ラクトース(例えば、ラクトース一水和物)、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、およびリン酸三カルシウムが挙げられる。
【0089】
好ましい潤滑剤として、これらだけに限られないが、ステアリン酸、ステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム等)、タルク、ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール、水素化綿実油、およびヒマシ油が挙げられる。
【0090】
好ましい界面活性剤として、これらだけに限られないが、ドデシル硫酸ナトリウム、水酸化大豆レシチン、ポリソルベート、およびポリエチレンオキシドとエチレンオキシドとのブロック共重合体が挙げられる。
【0091】
[送達システム]
本発明の医薬組成物で用いる活性剤の量は、標的適応症のための個々の活性剤の目的を果たすのに有効な量である。組成物中の活性剤の量は通常、薬理学的、生物学的、治療的または化学的に有効な量である。しかし、この量は、組成物を投与単位形態で用いる場合、より少量であり得る。というのは、投与単位形態は複数の送達剤化合物/活性剤組成物を含むことがあり、あるいは分割された薬理学的、生物学的、治療的または化学的有効量を含むことがあるからである。これにより、総有効量を、合計で有効量の活性剤を含む累積単位で投与することができる。
【0092】
用いる活性剤の総量は当業者に公知の方法で決めることができる。しかし、本発明の組成物は他の組成物、または活性剤のみを含む組成物よりも効率よく活性剤を送達できるので、従来の投与単位形態または送達システムで用いたものよりも低用量の生物学的または化学的活性剤を対象に投与して、同じ血中濃度および/または治療効果を達成することができる。
【0093】
一般に、送達剤の活性剤に対する重量比は、約0.1:1から約1000:1の範囲であり、好ましくは約1:1から約300:1の範囲である。この重量比は、活性剤、および活性剤が投与される個々の適応症によって変動する。
【0094】
現在開示されている送達剤は、生物学的および化学的な活性剤の送達、特に、経口、舌下、頬側、十二指腸内、結腸内、直腸、膣、粘膜、肺、鼻腔内、および眼内経路における送達を容易にする。
【0095】
本発明の化合物および組成物は、これらだけに限定するものではないが、ニワトリなどのトリ;齧歯動物、げっ歯類、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、霊長類および特にヒトなどの哺乳動物;ならびに昆虫を含む任意の動物に、生物学的または化学的活性剤を投与するのに有用である。
【0096】
本化合物および組成物は、活性剤がその標的領域(すなわち、送達組成物の活性剤が放出されるべき領域)に到達し、それを投与された動物の体内に到達する前に遭遇する条件により、本化合物および組成物がなければ破壊されるか効果が弱められるであろう化学的または生物学的活性剤の送達に特に好都合である。特に、本発明の化合物および組成物は、活性剤の経口投与、特に、通常は経口送達できない活性剤、または改善された送達が所望される活性剤の経口投与に有用である。
【0097】
本化合物と活性剤とを含む組成物は、活性剤を送達剤なしで投与するのに比較して、活性剤の選択された生物学的システムへの送達と、活性剤の生物学的利用能の増大および改善とに有用である。より多量の活性剤をある期間にわたって送達することにより、または、活性剤を特定の期間内(例えばより速くまたは遅く送達するため)もしくはある期間にわたって(例えば、徐放性送達等)送達することにより、送達を改善することができる。
【0098】
本発明の別の態様は、動物に本発明の組成物を投与することによる、疾患の治療または予防、または所望の生理的効果の達成(例えば、下記の表に記載)のための方法である。活性剤に特異的な適応は、参照により本明細書に援用する「the Physicians’ Desk Reference」(54th Ed., 2000, Medical Economics Company, Inc., Montvale, NJ)で探すことができる。下記の表の活性剤には、これらの類似体、断片、模倣体、およびポリエチレングリコール-修飾誘導体が含まれる。
【0099】
【表7A】
【表7B】
【表7C】
【発明を実施するための最良の形態】
【0100】
以下の実施例は、制限することなく本発明を例示するものである。別段の記載がない限り、部はすべて重量部である。
【0101】
[DSC]
列挙した融点は示差走査熱量測定(DSC)で判定した。示した値は、Windows(登録商標)用Perkin Elmer Pyris 1ソフトウェアで得た。機器は、温度についてはインジウムおよび亜鉛の融点を用いて、エンタルピーについてはインジウムの融解のエンタルピーを用いて較正した。較正はインジウム標準を用いて定期的に確認した。小穴のある波形の蓋を有するアルミニウム容器に試料を密封した。次いで、窒素雰囲気中30〜250℃まで、10℃/分で試料を加熱した。分析する前に、未粉砕の試料を乳鉢と乳棒で軽く粉砕して、試料容器の表面との熱的接触を向上させた。
【0102】
[XRPD]
メリーランド州コロンビアのShimadzu Scientific Instruments, Inc.から入手可能なShimadzu XRD-6000粉末回折計を使用して粉末X線回折解析を行った。機器は、シリコン粉末を用いて較正した。NIST #675低角度回折標準で試験するとこの較正が正確であることが分かった。試料にCuKα線を照射した(λ=1.54056Å)。未粉砕の試料を乳鉢と乳棒で軽く粉砕し、なめらかで一様な表面で分析できるように試料を調製した。2〜40°2θの間の回折パターンを指紋領域として用いてロットに存在する結晶構造を同定した。
【0103】
[熱重量分析(TGA)]
Windows(登録商標)ソフトウェア用Pyris 1と共にPerkin Elmer TGA7熱重量分析計を使用して、SNACの熱重量分析を実施した。機器は、アルメルとニッケルのキュリー点を用いて温度の較正をした。窒素雰囲気中、30℃から300℃まで試料を加熱し、重量の百分率変化を温度関数として記録した。分析する前に、未粉砕のロットを乳鉢と乳棒で軽く粉砕して、粒子径による影響を減らし、白金の試料容器の内部表面との接触を向上させた。
【0104】
[水分の吸着-解離挙動]
SGA-100 Symmetric Vapor Sorption Analyzer(フロリダ州ハイアレアのVTI Corporationから入手可能)を使用して収着分析を実施した。機器は、PVPおよびNaClを用いて較正した。分析する前に、試料(溶媒和物を除く)を乾燥させて60℃で一定重量にした。溶媒和物の試料は、分析前に乾燥させなかった。相対湿度(RH)5%からRH95%まで、次いで再びRH5%での試料の平衡含水量を25℃で測定した。
【0105】
Perkin Elmer Spectrum BX FT-IRでKBrディスクを使用してFTIRを実施した。試料1mgを150mgのKBrに広げた。分解能は4cm-1であり、32スキャンを平均した。
【実施例】
【0106】
[実施例1]
(SNACのI型の調製)
SNACのI型を以下のとおりに調製した。SNACの遊離酸〔すなわち、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸〕を、その全体を参照により本明細書に援用する国際公開番号WO00/59863号の実施例1に記載の方法により、適切な出発物質を用いて調製した。
【0107】
SNACのI型は、SNACの遊離酸から以下の手順で調製した。この手順は、国際公開番号WO00/59863号の実施例12にも記載されている。
【0108】
清浄な300ガロン反応器に、0.5%トルエンで変性したエタノール321Lを装入した。撹拌しながら、SNACの遊離酸109kg(無水)を加えた。反応器を28℃まで加熱し、25℃以上の温度に維持した。精製水(USP)34Lおよび水酸化ナトリウム15.78kgの溶液を調製し、24℃まで冷却し、25〜35℃に反応温度を保ちながら15分かけて撹拌している反応器に加えた。混合物をさらに15分間撹拌した。
【0109】
隣接する反応器に、0.5%トルエンで変性したエタノール321Lを装入した。サキュレーターを用いて反応器を28℃まで加熱した。第一の反応器の溶液を、25℃より高い温度を保ちながら30分間かけて第二の反応器に加えた。内容物を撹拌し、ヘプタン418Lを加えた。反応混合物を10℃まで冷却し、遠心分離し、次いでヘプタン60Lで洗浄した。生成物を集め、Stokesオーブン中82℃および26″Hgの減圧下で約65時間(週末にわたり)乾燥させた。SNAC一ナトリウム(すなわち、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸の一ナトリウム塩)107.5kgが回収された。
【0110】
I型のXRPD、DSC、TGA、FTIR、および吸着/解離スペクトルを、それぞれ図1〜図5に示す。
【0111】
[実施例2]
(SNACのII型の調製)
SNACのII型は、以下のように調製した。実施例1の手順を最後の乾燥工程を除いて繰り返した。次いで、得られたSNACのエタノール溶媒和物を、タンブル乾燥機中で乾燥させ、凝集させた(ボールを形成した)。この乾燥機は、内部撹拌装置を有していなかった。SNACをタンブル乾燥機から取り出し、Comil(登録商標)ミリング機(カナダ、オンタリオ州ウォータールーのQuadro Engineering Inc.から入手可能)で製粉し、バットで乾燥させた。SNACは、少なくとも3年間、ステンレス鋼ドラム内に収納した2重にしたポリエチレンバック中で貯蔵した。
【0112】
II型のXRPD、DSC、TGA、FTIR、および吸着/解離スペクトルを、それぞれ図6〜図10に示す。
【0113】
[実施例3]
(SNACのIII型の調製)
SNACのIII型は、SNACのI型を、90%の相対湿度を有する環境に、I型がXRPDで検出されなくなるまで曝すことにより調製した。次いで、この物質を、フードの下で水分含有量が約15%w/wになるまで乾燥させた。
【0114】
III型のXRPD、DSC、TGA、FTIR、および吸着/解離スペクトルを、それぞれ図11〜図15に示す。
【0115】
[実施例4]
(SNACのIV型の調製)
IV型は、II型を、乾燥空気オーブン中で2時間、170℃で加熱することにより調製した。IV型は、DECによる約198℃の溶融開始温度を有していた。XRPD、DSC、TGA、FTIR、および吸着/解離スペクトルは図16〜図20に示すとおりである。
【0116】
[実施例5]
(SNACのV型の調製)
SNACのV型は、SNACのI型をメタノール中で1週間スラリー化することにより調製した。得られた析出物を減圧濾過し、1時間空気乾燥させた。調製されたV型は、DSCによる約197℃の溶融開始温度を有していた。XRPD、DSC、TGA、FTIR、および吸着/解離スペクトルは図21〜25に示すとおりである。
【0117】
[実施例6]
(SNACのVI型の調製方法)
VI型は、I型をエタノール中で1週間スラリー化することにより調製した。得られた析出物を減圧濾過し、1時間空気乾燥させた。調製されたVI型は、DSCによる約197℃の溶融開始温度を有していた。XRPD、DSC、TGA、FTIR、および吸着/解離スペクトルは図26〜図30に示すとおりである。
【0118】
[実施例7]
(SNACのI型またはIII型とヘパリンUSPとを含有するカプセルの調製)
SNAC(I型またはIII型)と、ヘパリンUSP(30,000IU)とを含有するカプセル(サイズ1、ニュージャージ州のCapsugel of Morris Plainsから入手可能)(表7に示す)は、以下のように調製した。SNAC(実施例1および3で調製したI型またはIII型)およびヘパリンをメッシュ♯35を通してふるいにかけた。指定された量のヘパリンとSNACとを秤量し、清浄な、乾燥させたガラス製の8オンスの乳鉢に移した。ヘパリンの体積と同等の体積のSNACを乳鉢に加え、乳棒で2分間混合した。残りのSNACをこの混合物に加え、再び2分間混合した。カプセルを充填して適切な量を含有させる。
【0119】
【表8】
【0120】
(カニクイザル(Cynos monkey)への投与)
カニクイザル(Cynomolgus monkeys)(雄の平均体重は4.1kg、雌は3.0kg)は、投与の前少なくとも24時間絶食させた。SNAC/ヘパリンのカプセル3個をチューブの先に挿入し、カプセルを空気フラッシュさせて胃の中に送り出した。食餌は投与2時間後に元に戻した。常に水は自由に摂取できるようにした。投与前、および投与後10、20、30、および50分、および1、1.5、2、3、4、および6時間経過時に、約1.3mlの全血をクエン酸管に集めた。この血液試料を10分間、2500RPMで遠心分離にかけ、得られた血漿250μLを、Organon Teknika COAG-A-MATE MTX/MTX II machine を使用するXa因子アッセイに用いた。アッセイに対する標準範囲は、ヘパリン0〜2 IU/mL であった。
【0121】
ヘパリンと共に用いたSNACのI型およびIII型の結果を、それぞれ図31および図32に示す。結果は、サルの性別および体重について平均化した。すなわち、データポイントは、サル4個体(雄3.9kg、雄4.2kg、雌3.2kg、雌2.9kg)であった。全てのサルについてのSNACの各型に対するそれぞれの時点の結果を平均し、図33に示した。
【0122】
[実施例8]
(SNACのI型またはIII型とヘパリンUSPとを含有するカプセルの調製)
SNAC(I型またはIII型)と、ヘパリンUSP(30,000IU)とを含有するカプセル(サイズ1、ニュージャージ州のCapsugel of Morris Plainsから入手可能)(上記表7に示す)を、実施例7に記載された手順で調製した。
【0123】
(カニクイザルへの投与)
実施例7に記載された手順を、雄のサル2個体(平均体重5.6kg)および雌のサル2個体(平均体重6.9kg)で繰り返した。
【0124】
ヘパリンと共に用いたSNACのI型およびIII型の結果を、それぞれ図34および図35に示す。結果は、サルの性別および体重について平均化した。すなわち、データポイントは、サル4個体(雄5.7kg、雄5.6kg、雌7.6kg、雌6.3kg)であった。全てのサルについてのSNACの各型に対するそれぞれの時点の結果を平均し、図36に示した。
【0125】
[実施例9]
実施例1〜4で調製したSNACのI型〜IV型の固有の溶解速度を、以下のように測定した。
【0126】
SNACのI型〜IV型の固有の溶解速度は、ウッズ装置(Wood’s apparatus)で測定した。SNACのI型、II型、III型、またはVI型の300mgのペレットを、ダイスに調製した。溶解媒体に接触可能なペレットの表面積は、0.484cm2であった。ペレットを、Carverプレス機上で1200-1400 lbsで圧縮してディスクを形成させた。次いで、ダイスを溶解装置のシャフトに取り付けた。このダイスを50rpmで回転させ、37℃(pH6.3)に保持した脱気した溶解媒体900mLに浸した。溶解試験は、水中で3回行った。試料は、297.5nmでのオンライン式の紫外分光法により分析した。固有の溶解速度は、シンク条件下の溶解プロファイルの初期の直線部分から決定した。
【0127】
結果を図37および図38に示す。算出したI型〜IV型の溶解速度を下記の表8に示す。
【表9】
【0128】
[実施例10]
SNACのI型〜IV型のそれぞれのアセトニトリルへの溶解性を、周囲湿度および25℃で測定した。アセトニトリルを溶媒として選択したのは、SNACが比較的溶解しにくい数少ない溶媒であり、その溶液を無限希釈に近づけることが可能だからである。溶解性データを下記の表9に示す。
【表10】
【0129】
[実施例11]
SNACのI型に対する粉砕の影響を以下のように測定した。粉砕はボールミル中で行った。試料を20時間後に取り出して、XRPDで解析した。
【0130】
図39に示すように、ボールミル粉砕の前後のSNAC試料のXRPDパターンは実質的に同じである。
【0131】
[実施例12]
SNACのI型に対する湿式造粒の影響を以下のように測定した。SNACのI型を、ガラス製乳鉢中、乳棒を使用し、20%w/wの水を加えて手で湿式造粒した。この顆粒をXRPDで解析した。
【0132】
湿式造粒の前後のSNAC試料のXRPDパターンを図40に示す。湿式造粒後の試料は、III型のXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを示す。
【0133】
[実施例13]
SNACのI型およびIII型に対する圧縮の影響を以下のように測定した。各試料約300mgを、Carverプレス機上で押込み圧4500 lb、保圧時間1分で押し固めた。圧縮サイクルを20回繰り返した。組成物中のSNACの結晶形をXRPDで解析した。
【0134】
SNACのI型およびIII型についての結果を、それぞれ図41および図42に示す。これらの図に示すように、いずれの試料の結晶形も実質的に変化しなかった。
【0135】
[実施例14]
(非晶質SNACの調製)
非晶形は、III型を真空オーブン中、25℃、0.3インチHgで4日間乾燥させることにより調製した。乾燥させた物質は、非晶形と、もとのSNACのIII型約10%との混合物であった。より長時間、かつ、より高い真空度にすると、実質的により高純度の非晶形が得られるであろう。
【0136】
III型を約10%含有する非晶質SNACのXRPD、DSC、TGA、FTIR、および吸着/解離スペクトルを、それぞれ図43〜図47に示す。
【0137】
上記で言及した全ての特許、出願、文献、および試験法は、参照により本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】Figure 1は、実施例1で調製したSNACのI型のX線粉末回折図(XRPD)である。
【図2】Figure 2は、実施例1で調製したSNACのI型の示差走査熱量測定(DSC)走査図である。
【図3】Figure 3は、実施例1で調製したSNACのI型の熱重量分析(TGA)である。
【図4】Figure 4は、実施例1で調製したSNACのI型のFTIRスペクトルである。
【図5】Figure 5は、実施例1で調製したSNACのI型の水分吸着/解離曲線である。
【図6】Figure 6は、実施例2で調製したSNACのII型のX線粉末回折図(XRPD)である。
【図7】Figure 7は、実施例2で調製したSNACのII型の示差走査熱量測定(DSC)走査図である。
【図8】Figure 8は、実施例2で調製したSNACのII型の熱重量分析(TGA)である。
【図9】Figure 9は、実施例2で調製したSNACのII型のFTIRスペクトルである。
【図10】Figure 10は、実施例2で調製したSNACのII型の水分吸着/解離曲線である。
【図11】Figure 11は、実施例3で調製したSNACのIII型のX線粉末回折図(XRPD)である。である。
【図12】Figure 12は、実施例3で調製したSNACのIII型の示差走査熱量測定(DSC)走査図である。
【図13】Figure 13は、実施例3で調製したSNACのIII型の熱重量分析(TGA)である。
【図14】Figure 14は、実施例3で調製したSNACのIII型のFTIRスペクトルである。
【図15】Figure 15は、実施例3で調製したSNACのIII型の水分吸着/解離曲線である。
【図16】Figure 16は、実施例4で調製したSNACのIV型のX線粉末回折図(XRPD)である。
【図17】Figure 17は、実施例4で調製したSNACのIV型の示差走査熱量測定(DSC)走査図である。
【図18】Figure 18は、実施例4で調製したSNACのIV型の熱重量分析(TGA)である。
【図19】Figure 19は、実施例4で調製したSNACのIV型のFTIRスペクトルである。
【図20】Figure 20は、実施例4で調製したSNACのIV型の水分吸着/解離曲線である。
【図21】Figure 21は、実施例5で調製したSNACのV型のX線粉末回折図(XRPD)である。
【図22】Figure 22は、実施例5で調製したSNACのV型の示差走査熱量測定(DSC)走査図である。
【図23】Figure 23は、実施例5で調製したSNACのV型の熱重量分析(TGA)である。
【図24】Figure 24は、実施例5で調製したSNACのV型のFTIRスペクトルである。
【図25】Figure 25は、実施例5で調製したSNACのV型の水分吸着/解離曲線である。
【図26】Figure 26は、実施例6で調製したSNACのVI型のX線粉末回折図(XRPD)である。
【図27】Figure 27は、実施例6で調製したSNACのVI型の示差走査熱量測定(DSC)走査図である。
【図28】Figure 28は、実施例6で調製したSNACのVI型の熱重量分析(TGA)である。
【図29】Figure 29は、実施例6で調製したSNACのVI型のFTIRスペクトルである。
【図30】Figure 30は、実施例6で調製したSNACのVI型の水分吸着/解離曲線である。
【図31】Figure 31は、実施例7で調製したSNACのI型とヘパリンとのカプセルを経口投与した後の時間に対するカニクイザルの血漿ヘパリン濃度である。
【図32】Figure 32は、実施例7で調製したSNACのIII型とヘパリンとのカプセルを経口投与した後の時間に対するカニクイザルの血漿ヘパリン濃度である。
【図33】Figure 33は、実施例7で調製したSNACのI型またはIII型とヘパリンとのカプセルを経口投与した後の時間に対するカニクイザルの血漿ヘパリン濃度である。
【図34】Figure 34は、実施例8で調製したSNACのI型とヘパリンとのカプセルを経口投与した後の時間に対するカニクイザルの血漿ヘパリン濃度である。
【図35】Figure 35は、実施例8で調製したSNACのIII型とヘパリンとのカプセルを経口投与した後の時間に対するカニクイザルの血漿ヘパリン濃度である。
【図36】Figure 36は、実施例8で調製したSNACのI型またはIII型とヘパリンとのカプセルを経口投与した後の時間に対するカニクイザルの血漿ヘパリン濃度である。
【図37】Figure 37は、37℃で脱塩水中に15分間溶解したSNACのI型またはIII型のペレットの量(重量)である(実施例9)。
【図38】Figure 38は、37℃で脱塩水中に15分間溶解したSNACのI型、II型、III型またはIV型のペレットの量(重量)である(実施例9)。
【図39】Figure 39は、ボールミル粉砕の前後のSNACのI型のX線粉末回折図(XRPD)である(実施例11)。
【図40】Figure 40は、湿式造粒の前後のSNACのI型のX線粉末回折図(XRPD)である(実施例12)。
【図41】Figure 41は、圧縮の前後のSNACのI型のX線粉末回折図(XRPD)である(実施例13)。
【図42】Figure 42は、圧縮の前後のSNACのIII型のX線粉末回折図(XRPD)である(実施例13)。
【図43】Figure 43は、実施例14で調製した、(約10%のSNACのIII型を含有した)非晶質SNACのX線粉末回折図(XRPD)である。
【図44】Figure 44は、実施例14で調製した、(約10%のSNACのIII型を含有した)非晶質SNACの示差走査熱量測定(DSC)走査図である。
【図45】Figure 45は、実施例14で調製した、(約10%のSNACのIII型を含有した)非晶質SNACの熱重量分析(TGA)である。
【図46】Figure 46は、実施例14で調製した、(約10%のSNACのIII型を含有した)非晶質SNACのFTIRスペクトルである。
【図47】Figure 47は、実施例14で調製した、(約10%のSNACのIII型を含有した)非晶質SNACの水分吸着/解離曲線である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム1/3水和物。
【請求項2】
実質的に図6に示した通りのX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの水和物の結晶多形体。
【請求項3】
2θが3.29、11.96および17.76の角度(2θ±0.2°)にピークを有するX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの水和物の結晶多形体。
【請求項4】
前記結晶多形体が示差走査熱量測定で判定して、約199℃に溶融開始温度を有する、請求項3に記載の結晶多形体。
【請求項5】
N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム3水和物。
【請求項6】
実質的に図11に示した通りのX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム水和物の結晶多形体。
【請求項7】
2θが6.69、13.58および16.80の角度(2θ±0.2°)にピークを有するX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの水和物の結晶多形体。
【請求項8】
前記結晶多形体が示差走査熱量測定で判定して、約198℃に溶融開始温度を有する、請求項7に記載の結晶多形体。
【請求項9】
実質的に図16に示した通りのX線粉末回折パターンを示す、無水N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの結晶多形体。
【請求項10】
2θが8.61、17.04および23.28の角度(2θ±0.2°)にピークを有するX線粉末回折パターンを示す、無水N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの結晶多形体。
【請求項11】
前記結晶多形体が示差走査熱量測定で判定して、約198℃に溶融開始温度を有する、請求項10に記載の結晶多形体。
【請求項12】
N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのメタノール-水共溶媒和物。
【請求項13】
メタノール:水:N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの比が約0.8:2:1である、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのメタノール-水共溶媒和物。
【請求項14】
実質的に図21に示した通りのX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのメタノール-水共溶媒和物の結晶多形体。
【請求項15】
2θが6.59、9.96、10.86、13.87、17.29および19.92の角度(2θ±0.2°)にピークを有するX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのメタノール-水共溶媒和物の結晶多形体。
【請求項16】
前記結晶多形体が示差走査熱量測定で判定して、約197℃に溶融開始温度を有する、請求項15に記載の結晶多形体。
【請求項17】
N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのエタノール-水共溶媒和物。
【請求項18】
エタノール:水:N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの比が約0.6:2:1である、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのエタノール-水共溶媒和物。
【請求項19】
実質的に図26に示した通りのX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのエタノール-水共溶媒和物の結晶多形体。
【請求項20】
2θが9.60、10.43、12.68および16.58の角度(2θ±0.2°)にピークを有するX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのエタノール-水共溶媒和物の結晶多形体。
【請求項21】
前記結晶多形体が示差走査熱量測定で判定して、約197℃に溶融開始温度を有する、請求項15に記載の結晶多形体。
【請求項22】
非晶質N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム。
【請求項23】
(A)(i)請求項1〜21のいずれかの結晶多形体または(ii)非晶質N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムと、(B)活性剤とを含む、医薬組成物。
【請求項24】
前記活性剤がヘパリンである、請求項23の医薬組成物。
【請求項25】
前記活性剤が低分子量ヘパリンである、請求項24の医薬組成物。
【請求項26】
請求項23の医薬組成物を投与する工程を含む、活性剤をこれを必要とする動物に投与する方法。
【請求項27】
前記活性剤がヘパリンである、請求項26の方法。
【請求項28】
SNACのIII型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、SNACのI型を形成させるのに十分な時間、少なくとも50℃に加熱してSNACのI型を得る工程を含む、SNACのI型の調製方法。
【請求項29】
前記SNACを、SNACのI型を形成させるのに十分な時間、約50℃〜約110℃に加熱する、請求項28の調製方法。
【請求項30】
非晶質SNACを、SNACのI型を形成させるのに十分な時間、約30℃〜約90℃に加熱する工程を含む、SNACのI型の調製方法。
【請求項31】
前記非晶質SNACを、約40℃〜約80℃に加熱する、請求項30の調製方法。
【請求項32】
I型以外のいずれかの結晶形のSNACを凍結乾燥させてI型を得る工程を含む、SNACのI型の調製方法。
【請求項33】
SNACのII型〜VI型の1種以上および/または非晶質SNACを凍結乾燥させてI型を得る工程を含む、請求項32の調製方法。
【請求項34】
撹拌することなくSNACの溶媒和物を乾燥させる工程と、乾燥させたSNACを十分な時間湿気に曝してSNACのII型を得る工程とを含む、SNACのII型の調製方法。
【請求項35】
前記溶媒和物がエタノール溶媒和物またはメタノール溶媒和物である、請求項34の調製方法。
【請求項36】
SNACのI型、II型、IV型、V型、もしくはVI型または非晶質SNACまたはこれらの混合物を、75%以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法。
【請求項37】
SNACのI型を十分な時間湿式造粒してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法。
【請求項38】
SNACのV型もしくはVI型またはこれらの混合物を、30%以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法。
【請求項39】
SNACのIV型を、10%以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法。
【請求項40】
非晶質SNACを、十分な時間湿気に曝してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法。
【請求項41】
SNACを水から結晶化させる工程を含む、SNACのIII型の調製方法。
【請求項42】
SNACのI型、II型、III型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、約110℃とSNACの融点との間の温度に十分な時間加熱してIV型を得る工程を含む、SNACのVI型の調製方法。
【請求項43】
前記SNACのII型を、約150℃とSNACの融点との間の温度に十分な時間加熱してIV型を得る工程を含む、請求項42の調製方法。
【請求項44】
SNACを、少なくとも約30%の相対湿度でメタノール溶液から結晶化させる工程を含む、SNACのV型の調製方法。
【請求項45】
前記メタノール溶液が実質的に無水である、請求項44の調製方法。
【請求項46】
SNACのI〜IV型またはVI型の、メタノールとの平衡化工程を含む、SNACのV型の調製方法。
【請求項47】
前記平衡が水の非存在下で達成される、請求項46の調製方法。
【請求項48】
メタノール中のI型〜IV型もしくはVI型のいずれか、またはこれらの混合物を、少なくとも30%の相対湿度でスラリー化する工程と、このスラリー化した混合物を、V型を形成させるのに十分な時間常温に保持する工程を含む、SNACのV型の調製方法。
【請求項49】
SNACを、少なくとも約30%の相対湿度でエタノール溶液から結晶化させる工程を含む、SNACのVI型の調製方法。
【請求項50】
前記エタノール溶液が実質的に無水である、請求項49の調製方法。
【請求項51】
少なくとも約30%の相対湿度でSNACの飽和エタノール溶液を調製する工程と、得られた溶液を室温以下に冷却する工程とを含む、SNACのVI型の調製方法。
【請求項52】
前記方法が水の非存在下で行われる、請求項51の調製方法。
【請求項53】
エタノール中のI型〜IV型のいずれかを、少なくとも30%の相対湿度でスラリー化する工程を含む、SNACのVI型の調製方法。
【請求項54】
SNACのI型と、少なくとも1種類の活性剤または医薬品として許容可能な添加物との粉砕混合物を含む、医薬組成物。
【請求項55】
SNACのI型と、少なくとも1種類の活性剤または医薬品として許容可能な添加物との直接圧縮混合物を含む、医薬組成物。
【請求項56】
SNACのIII型と、少なくとも1種類の活性剤または医薬品として許容可能な添加物との直接圧縮混合物を含む、医薬組成物。
【請求項57】
SNACのIII型、V型、またはVI型を、非晶質SNACを形成させるのに十分な時間脱水する工程を含む、非晶質SNACの調製方法。
【請求項58】
SNACのIII型、V型、またはVI型を、真空下で脱水する、請求項57の調製方法。
【請求項59】
SNACのIII型を脱水して非晶質SNACを形成させる、請求項57の調製方法。
【請求項1】
N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム1/3水和物。
【請求項2】
実質的に図6に示した通りのX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの水和物の結晶多形体。
【請求項3】
2θが3.29、11.96および17.76の角度(2θ±0.2°)にピークを有するX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの水和物の結晶多形体。
【請求項4】
前記結晶多形体が示差走査熱量測定で判定して、約199℃に溶融開始温度を有する、請求項3に記載の結晶多形体。
【請求項5】
N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム3水和物。
【請求項6】
実質的に図11に示した通りのX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム水和物の結晶多形体。
【請求項7】
2θが6.69、13.58および16.80の角度(2θ±0.2°)にピークを有するX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの水和物の結晶多形体。
【請求項8】
前記結晶多形体が示差走査熱量測定で判定して、約198℃に溶融開始温度を有する、請求項7に記載の結晶多形体。
【請求項9】
実質的に図16に示した通りのX線粉末回折パターンを示す、無水N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの結晶多形体。
【請求項10】
2θが8.61、17.04および23.28の角度(2θ±0.2°)にピークを有するX線粉末回折パターンを示す、無水N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの結晶多形体。
【請求項11】
前記結晶多形体が示差走査熱量測定で判定して、約198℃に溶融開始温度を有する、請求項10に記載の結晶多形体。
【請求項12】
N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのメタノール-水共溶媒和物。
【請求項13】
メタノール:水:N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの比が約0.8:2:1である、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのメタノール-水共溶媒和物。
【請求項14】
実質的に図21に示した通りのX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのメタノール-水共溶媒和物の結晶多形体。
【請求項15】
2θが6.59、9.96、10.86、13.87、17.29および19.92の角度(2θ±0.2°)にピークを有するX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのメタノール-水共溶媒和物の結晶多形体。
【請求項16】
前記結晶多形体が示差走査熱量測定で判定して、約197℃に溶融開始温度を有する、請求項15に記載の結晶多形体。
【請求項17】
N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのエタノール-水共溶媒和物。
【請求項18】
エタノール:水:N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムの比が約0.6:2:1である、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのエタノール-水共溶媒和物。
【請求項19】
実質的に図26に示した通りのX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのエタノール-水共溶媒和物の結晶多形体。
【請求項20】
2θが9.60、10.43、12.68および16.58の角度(2θ±0.2°)にピークを有するX線粉末回折パターンを示す、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムのエタノール-水共溶媒和物の結晶多形体。
【請求項21】
前記結晶多形体が示差走査熱量測定で判定して、約197℃に溶融開始温度を有する、請求項15に記載の結晶多形体。
【請求項22】
非晶質N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウム。
【請求項23】
(A)(i)請求項1〜21のいずれかの結晶多形体または(ii)非晶質N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸一ナトリウムと、(B)活性剤とを含む、医薬組成物。
【請求項24】
前記活性剤がヘパリンである、請求項23の医薬組成物。
【請求項25】
前記活性剤が低分子量ヘパリンである、請求項24の医薬組成物。
【請求項26】
請求項23の医薬組成物を投与する工程を含む、活性剤をこれを必要とする動物に投与する方法。
【請求項27】
前記活性剤がヘパリンである、請求項26の方法。
【請求項28】
SNACのIII型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、SNACのI型を形成させるのに十分な時間、少なくとも50℃に加熱してSNACのI型を得る工程を含む、SNACのI型の調製方法。
【請求項29】
前記SNACを、SNACのI型を形成させるのに十分な時間、約50℃〜約110℃に加熱する、請求項28の調製方法。
【請求項30】
非晶質SNACを、SNACのI型を形成させるのに十分な時間、約30℃〜約90℃に加熱する工程を含む、SNACのI型の調製方法。
【請求項31】
前記非晶質SNACを、約40℃〜約80℃に加熱する、請求項30の調製方法。
【請求項32】
I型以外のいずれかの結晶形のSNACを凍結乾燥させてI型を得る工程を含む、SNACのI型の調製方法。
【請求項33】
SNACのII型〜VI型の1種以上および/または非晶質SNACを凍結乾燥させてI型を得る工程を含む、請求項32の調製方法。
【請求項34】
撹拌することなくSNACの溶媒和物を乾燥させる工程と、乾燥させたSNACを十分な時間湿気に曝してSNACのII型を得る工程とを含む、SNACのII型の調製方法。
【請求項35】
前記溶媒和物がエタノール溶媒和物またはメタノール溶媒和物である、請求項34の調製方法。
【請求項36】
SNACのI型、II型、IV型、V型、もしくはVI型または非晶質SNACまたはこれらの混合物を、75%以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法。
【請求項37】
SNACのI型を十分な時間湿式造粒してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法。
【請求項38】
SNACのV型もしくはVI型またはこれらの混合物を、30%以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法。
【請求項39】
SNACのIV型を、10%以上の相対湿度を有する環境に十分な時間曝してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法。
【請求項40】
非晶質SNACを、十分な時間湿気に曝してIII型を得る工程を含む、SNACのIII型の調製方法。
【請求項41】
SNACを水から結晶化させる工程を含む、SNACのIII型の調製方法。
【請求項42】
SNACのI型、II型、III型、V型、もしくはVI型またはこれらの混合物を、約110℃とSNACの融点との間の温度に十分な時間加熱してIV型を得る工程を含む、SNACのVI型の調製方法。
【請求項43】
前記SNACのII型を、約150℃とSNACの融点との間の温度に十分な時間加熱してIV型を得る工程を含む、請求項42の調製方法。
【請求項44】
SNACを、少なくとも約30%の相対湿度でメタノール溶液から結晶化させる工程を含む、SNACのV型の調製方法。
【請求項45】
前記メタノール溶液が実質的に無水である、請求項44の調製方法。
【請求項46】
SNACのI〜IV型またはVI型の、メタノールとの平衡化工程を含む、SNACのV型の調製方法。
【請求項47】
前記平衡が水の非存在下で達成される、請求項46の調製方法。
【請求項48】
メタノール中のI型〜IV型もしくはVI型のいずれか、またはこれらの混合物を、少なくとも30%の相対湿度でスラリー化する工程と、このスラリー化した混合物を、V型を形成させるのに十分な時間常温に保持する工程を含む、SNACのV型の調製方法。
【請求項49】
SNACを、少なくとも約30%の相対湿度でエタノール溶液から結晶化させる工程を含む、SNACのVI型の調製方法。
【請求項50】
前記エタノール溶液が実質的に無水である、請求項49の調製方法。
【請求項51】
少なくとも約30%の相対湿度でSNACの飽和エタノール溶液を調製する工程と、得られた溶液を室温以下に冷却する工程とを含む、SNACのVI型の調製方法。
【請求項52】
前記方法が水の非存在下で行われる、請求項51の調製方法。
【請求項53】
エタノール中のI型〜IV型のいずれかを、少なくとも30%の相対湿度でスラリー化する工程を含む、SNACのVI型の調製方法。
【請求項54】
SNACのI型と、少なくとも1種類の活性剤または医薬品として許容可能な添加物との粉砕混合物を含む、医薬組成物。
【請求項55】
SNACのI型と、少なくとも1種類の活性剤または医薬品として許容可能な添加物との直接圧縮混合物を含む、医薬組成物。
【請求項56】
SNACのIII型と、少なくとも1種類の活性剤または医薬品として許容可能な添加物との直接圧縮混合物を含む、医薬組成物。
【請求項57】
SNACのIII型、V型、またはVI型を、非晶質SNACを形成させるのに十分な時間脱水する工程を含む、非晶質SNACの調製方法。
【請求項58】
SNACのIII型、V型、またはVI型を、真空下で脱水する、請求項57の調製方法。
【請求項59】
SNACのIII型を脱水して非晶質SNACを形成させる、請求項57の調製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図2】
【図3】
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【図10】
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【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【公表番号】特表2007−536275(P2007−536275A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511696(P2007−511696)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/016126
【国際公開番号】WO2005/107462
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(500139958)エミスフェアー・テクノロジーズ・インク (28)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/016126
【国際公開番号】WO2005/107462
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(500139958)エミスフェアー・テクノロジーズ・インク (28)
【Fターム(参考)】
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