説明

N,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法

本発明は、塩基の存在下、一般式(1):


式中、R及びR1’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、炭化水素基を示す、
で示されるシュウ酸ジエステルと一般式(2):
O−NHR (2)
式中、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、炭素原子数1〜4のアルキル基を示す、
で示されるN−アルキル−O−アルキルヒドロキシルアミン又はその酸塩とを反応させることを特徴とする、一般式(3):


式中、R及びRは、前記と同義である、
で示されるN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬・農薬等の合成中間体として有用なN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの新規な製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、N,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドを製造する方法としては、ピリジンの存在下、塩化オキサリルとN,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩とを反応させて、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドを製造する方法が開示されている(例えば、J.Org.Chem.,60,5016(1995)参照)。しかしながら、この方法では、毒性の高いホスゲンと一酸化炭素に分解しやすい塩化オキサリルを出発原料として使用している上に、目的物の単離操作において、発ガン性の高い塩化メチレンを用いなければならないという問題があり、N,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの工業的な製法としては不適であった。
【発明の開示】
【0003】
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、安全な出発原料を用い、繁雑な操作を必要とせず、高収率でN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドを製造出来る、工業的に好適なN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法を提供することである。
【0004】
本発明は、塩基の存在下、一般式(1):
【0005】

【0006】
式中、R及びR1’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、炭化水素基を示す、
で示されるシュウ酸ジエステルと一般式(2):
【0007】
O−NHR (2)
【0008】
式中、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、炭素原子数1〜4のアルキル基を示す、
で示されるN−アルキル−O−アルキルヒドロキシルアミン又はその酸塩とを反応させることを特徴とする、一般式(3):
【0009】

【0010】
式中、R及びRは、前記と同義である、
で示されるN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の反応において使用するシュウ酸ジエステルは、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、R及びR1’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素原子数1〜8のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基が好ましい。なお、これらの基は、各種異性体も含む。
【0012】
本発明の反応において使用するN−アルキル−O−アルキルヒドロキシルアミンは、前記の一般式(2)で示される。その一般式(2)において、R及びRは、それぞれ、同一又は異なっていても良い、炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体も含む。なお、該N−アルキル−O−アルキルヒドロキシルアミンは、遊離のN−アルキル−O−アルキルヒドロキシルアミン(水和物も含む)だけでなく、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の酸性塩としても使用することが出来、又、その水溶液として使用しても良い。なお、これらのN−アルキル−O−アルキルヒドロキシルアミンは、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0013】
前記のN−アルキル−O−アルキルヒドロキシルアミン又はその酸塩の使用量は、シュウ酸ジエステル1モルに対して、好ましくは0.5〜5.0モル、更に好ましくは1.5〜3.0モルである。
【0014】
本発明の反応において使用する塩基としては、例えば、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド(相当するアルコール溶液も含む);水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン類が挙げられるが、好ましくはアルカリ金属アルコキシド、更に好ましくはナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドが使用される。なお、これらの塩基は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0015】
前記塩基の使用量は、シュウ酸ジエステル1モルに対して、好ましくは0.5〜10モル、更に好ましくは1.5〜モルである。
【0016】
本発明の反応は溶媒中で行うのが好ましい。使用する溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル等の二トリル類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等の炭酸ジエステル類が挙げられるが、好ましくはアルコール類、ニトリル類、芳香族炭化水素類、更に好ましくはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが使用される。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0017】
前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性等により適宜調節するが、シュウ酸ジエステル1gに対して、好ましくは0.1〜100g、更に好ましくは0.5〜50gである。
【0018】
本発明の反応は、例えば、シュウ酸ジエステル、N−アルキル−O−アルキルヒドロキシルアミン又はその酸塩、塩基及び溶媒を混合して、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは−40〜100℃、更に好ましくは−20〜50℃であり、反応圧力及び反応時間は特に制限されない。
【0019】
本発明において得られるN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドとしては、例えば、R及びRが、それぞれ、同一でも異なっていてもよい、炭素原子数1〜4のアルキル基である化合物が挙げられる。
【0020】
なお、最終生成物であるN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドは、例えば、反応終了後、濾過、濃縮、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって単離・精製される。
【0021】
本発明において得られるN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドは、例えば、特表2002−541104、特表2004−509059又はバイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ(Bioorg.Med.Chem.Lett.12(2002)pp.3001−3004)等に記載された方法により、有用な医薬又は農薬へと導くことができる。
【0022】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
実施例1(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積1000mlのフラスコに、98質量%シュウ酸ジエチル126.8g(0.85mol)、98.1質量%N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩169.0g(1.70mol)及びメタノール100mlを加えた後、液温を5〜10℃に保ちながら、28質量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液656.0g(3.40mol)をゆるやかに滴下し、攪拌しながら同温度で3時間反応させた。反応終了後、攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積2000mlのフラスコに、酢酸107.1g(1.79mol)及び水893gを加えて5℃に冷却した後、液温を5〜15℃に保ちながら、前記反応液をゆるやかに滴下し攪拌した。次いで、反応液を減圧下で濃縮した後、酢酸エチル1500mlで抽出した。得られた有機層(酢酸エチル層)を再び減圧下で濃縮した後にn−ヘプタン240gを加え、液温を5〜10℃に保ちながら、30分間攪拌した。析出した結晶を濾過し、冷却したn−ヘプタンで洗浄した後に減圧下で乾燥させ、白色結晶として、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミド92.3gを得た(単離収率:61.6%)。
なお、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの物性値は以下の通りであった。
【0024】
融点;89.5〜92.0℃
H−NMR(CDCl,δ(ppm));3.24(6H,s)、3.74(6H,s)
【0025】
実施例2(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積25mlのフラスコに、99質量%シュウ酸ジメチル1.01g(8.47mmol)、98.1質量%N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩1.68g(16.94mmol)及びメタノール1mlを加えた後、液温を5〜10℃に保ちながら、28質量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液6.54g(33.88mmol)をゆるやかに滴下し、攪拌しながら同温度で3時間反応させた。反応終了後、攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積25mlのフラスコに、2mol/l酢酸10ml(2.00mmol)を加えて5℃に冷却した後、液温を5〜15℃に保ちながら、前記反応液をゆるやかに滴下し攪拌した。この溶液を高速液体クロマトグラフィーにより分析(絶対定量法)したところ、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが1.21g生成していた(反応収率:80.9%)。
【0026】
実施例3(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
実施例2において、99質量%シュウ酸ジメチル1.01g(8.47mmol)を98質量%シュウ酸ジエチル1.26g(8.47mmol)に、メタノールをエタノールに変えたこと以外は、実施例2と同様に反応を行った。その結果、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが1.29g生成していた(反応収率:86.4%)。
【0027】
実施例4(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
実施例2において、99質量%シュウ酸ジメチル1.01g(8.47mmol)を99質量%シュウ酸ジイソプロピル1.49g(8.47mmol)に、メタノールをエタノールに変えたこと以外は、実施例2と同様に反応を行った。その結果、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが1.23g生成していた(反応収率:82.4%)。
【0028】
実施例5(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
実施例2において、99質量%シュウ酸ジメチル1.01g(8.47mmol)を99質量%シュウ酸ジブチル1.73g(8.47mmol)に、メタノールをエタノールに変えたこと以外は、実施例2と同様に反応を行った。その結果、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが1.24g生成していた(反応収率:83.1%)。
【0029】
実施例6(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
実施例2において、99質量%シュウ酸ジメチル1.01g(8.47mmol)を99質量%シュウ酸ジフェニル2.07g(8.47mmol)に、メタノールをエタノールに変えたこと以外は、実施例2と同様に反応を行った。その結果、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが0.85g生成していた(反応収率:57.1%)。
【0030】
実施例7(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
実施例3において、エタノールをイソプロピルアルコールに変えたこと以外は、実施例3と同様に反応を行った。その結果、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが1.21g生成していた(反応収率:80.8%)。
【0031】
実施例8(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
実施例3において、エタノールをアセトニトリルに変えたこと以外は、実施例3と同様に反応を行った。その結果、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが1.18g生成していた(反応収率:78.8%)。
【0032】
実施例9(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
実施例3において、エタノールをジメチルカーボネートに変えたこと以外は、実施例3と同様に反応を行った。その結果、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが1.13g生成していた(反応収率:75.7%)。
【0033】
実施例10(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
実施例3において、エタノールをジメチルホルムアミドに変えたこと以外は、実施例3と同様に反応を行った。その結果、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが1.16g生成していた(反応収率:77.5%)。
【0034】
実施例11(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
実施例3において、エタノールをテトラヒドロフランに変えたこと以外は、実施例3と同様に反応を行った。その結果、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが1.25g生成していた(反応収率:83.6%)。
【0035】
実施例12(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
実施例3において、エタノールをトルエンに変えたこと以外は、実施例3と同様に反応を行った。その結果、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが1.05g生成していた(反応収率:71.0%)。
【0036】
実施例13(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容積25mlのフラスコに、99質量%シュウ酸ジメチル1.01g(8.47mmol)、98.1質量%N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩1.68g(16.94mmol)及びジメチルスルホキシド5mlを加えた後、液温を5〜25℃に保ちながら、95質量%ナトリウムメトキシド粉末1.93g(33.88mmol)を数回に分けて添加し、攪拌しながら同温度で1.5時間反応させた。反応終了後、攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積25mlのフラスコに、2mol/l酢酸10ml(2.00mmol)を加えて5℃に冷却した後、液温を5〜15℃に保ちながら、前記反応液をゆるやかに滴下し攪拌した。この溶液を高速液体クロマトグラフィーにより分析(絶対定量法)したところ、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが0.91g生成していた(反応収率:61.0%)。
【0037】
実施例14(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積200mlのフラスコに、98質量%シュウ酸ジエチル12.63g(84.7mmol)、98.8質量%N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩16.72g(169.4mmol)及びメタノール10mlを加えた後、液温を3〜7℃に保ちながら、28質量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液65.36g(338.8mmol)をゆるやかに滴下し、攪拌しながら3〜8℃で3時間反応させた。反応終了後、攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積300mlのフラスコに、2mol/l塩酸90ml(180mmol)を加えて5℃に冷却した後、液温を5〜15℃に保ちながら、前記反応液をゆるやかに滴下し攪拌した。この溶液を高速液体クロマトグラフィーにより分析(絶対定量法)したところ、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが13.25g生成していた(反応収率:88.8%)。
【0038】
実施例15(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積200mlのフラスコに、98質量%シュウ酸ジエチル12.63g(84.7mmol)、98.8質量%N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩16.72g(169.4mmol)及びメタノール10mlを加えた後、液温を−10〜−7℃に保ちながら、28質量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液65.36g(338.8mmol)をゆるやかに滴下し、攪拌しながら−9〜−7℃で3時間反応させた。反応終了後、攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積300mlのフラスコに、2mol/l塩酸90ml(180mmol)を加えて5℃に冷却した後、液温を5〜15℃に保ちながら、前記反応液をゆるやかに滴下し攪拌した。この溶液を高速液体クロマトグラフィーにより分析(絶対定量法)したところ、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが13.12g生成していた(反応収率:87.9%)。
【0039】
実施例16(N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドの合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積200mlのフラスコに、98質量%シュウ酸ジエチル12.63g(84.7mmol)、98.8質量%N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩20.07g(203.3mmol)及びメタノール10mlを加えた後、液温を3〜7℃に保ちながら、28質量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液71.90g(372.7mmol)をゆるやかに滴下し、攪拌しながら3〜7℃で3時間反応させた。反応終了後、攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積300mlのフラスコに、1.7mol/l塩酸110ml(187mmol)を加えて5℃に冷却した後、液温を5〜15℃に保ちながら、前記反応液をゆるやかに滴下し攪拌した。この溶液を高速液体クロマトグラフィーにより分析(絶対定量法)したところ、N,N’−ジメトキシ−N,N’−ジメチルオキサミドが14.32g生成していた(反応収率:96.0%)。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、医薬・農薬等の合成中間体として有用なN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの新規な製法に関する。
本発明により、安全な出発原料を用い、繁雑な操作を必要とせず、高収率でN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドを製造出来る、工業的に好適なN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法を提供することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基の存在下、一般式(1):

式中、R及びR1’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、炭化水素基を示す、
で示されるシュウ酸ジエステルと一般式(2):
O−NHR (2)
式中、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、炭素原子数1〜4のアルキル基を示す、
で示されるN−アルキル−O−アルキルヒドロキシルアミン又はその酸塩とを反応させることを特徴とする、一般式(3):

式中、R及びRは、前記と同義である、
で示されるN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項2】
塩基がアルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩及びアミン類からなる群より選択される少なくとも1種のものである請求の範囲第1項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項3】
塩基がリチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン及びトリブチルアミンからなる群より選択される少なくとも1種のものである請求の範囲第1項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項4】
塩基がナトリウムメトキシド及びナトリウムエトキシドからなる群より選択される少なくとも1種のものである請求の範囲第1項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項5】
塩基がシュウ酸ジエステル1モルに対して、0.5〜10モルの量で使用される請求の範囲第1項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項6】
塩基がシュウ酸ジエステル1モルに対して、1.5〜6モルの量で使用される請求の範囲第1項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項7】
反応を溶媒中で行う請求の範囲第1項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項8】
溶媒が、アルコール類;ニトリル類;脂肪族炭化水素類;ハロゲン化脂肪族炭化水素類;芳香族炭化水素類;ハロゲン化芳香族炭化水素類;エーテル類;アミド類;カルボン酸エステル類;スルホキシド類;及び炭酸ジエステル類からなる群より選択される少なくとも1種のものである請求の範囲第3項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項9】
溶媒が、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ヘキサン、ヘプタン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、ジメチルスルホキシド、炭酸ジメチル及び炭酸ジエチルからなる群より選択される少なくとも1種のものである請求の範囲第3項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項10】
溶媒が、シュウ酸ジエステル1gに対して、0.1〜100gの量で使用される請求の範囲第1項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項11】
溶媒が、シュウ酸ジエステル1gに対して、0.5〜50gの量で使用される請求の範囲第1項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項12】
式(1)で示されるシュウ酸ジエステルのR及びR1’が、アルキル基;シクロアルキル基;アラルキル基;及びアリール基からなる群より選択される少なくとも1種のものである請求の範囲第1項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項13】
式(1)で示されるシュウ酸ジエステルのR及びR1’が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、トリル基及びナフチル基からなる群より選択される少なくとも1種のものである請求の範囲第1項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項14】
式(2)で示されるN−アルキル−O−アルキルヒドロキシルアミンのR及びRが、それぞれ、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基からなる群より選択される少なくとも1種のものである請求の範囲第1項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項15】
式(2)で示されるN−アルキル−O−アルキルヒドロキシルアミン又はその酸塩の使用量が、式(1)で示されるシュウ酸ジエステル1モルに対して、0.5〜5.0モルである請求の範囲第1項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。
【請求項16】
式(2)で示されるN−アルキル−O−アルキルヒドロキシルアミン又はその酸塩の使用量が、式(1)で示されるシュウ酸ジエステル1モルに対して、1.5〜3.0モルである請求の範囲第1項記載のN,N’−ジアルコキシ−N,N’−ジアルキルオキサミドの製法。

【国際公開番号】WO2005/026108
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【発行日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513892(P2005−513892)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013136
【国際出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】