説明

NELLペプチドの発現系

本発明は、NELLペプチドの調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による支援を受けた研究開発のもとで行われた発明の権利に関する声明
本研究は、NIH/NIDR助成金番号DE9400及びCRC/NIH助成金番号RR00865による支援を受けた。米国政府は本発明に特定の権利を有しうる。
本願は、2005年8月5日に米国に出願された米国出願番号10/544,553の一部継続出願である。なお、米国出願番号10/544,553は、2004年2月9日に国際出願されたPCT/US2004/003808および2006年2月16日に国際出願されたPCT/US2006/005473の米国への移行出願である。参照により上記出願にて教示される全内容が組み込まれている。
【0002】
本発明は、一般にNELLペプチド又は関連物質の発現および精製方法に関する。
【0003】
成長因子は、生体内又は試験管内で規定された細胞集団の増殖及び分化に影響を及ぼすペプチド等の物質である。
【0004】
骨形成は、長骨(軟骨内の骨形成)及び扁平骨(膜内の骨形成)の発達中に起きる。さらに、骨形成は、骨格の整合性を維持するために成人で継続して生じる骨再形成中にも起きる。また、骨形成は、骨折又は手術で骨創傷が生じた場合等の骨修復中にも起きる。長骨および扁平骨の胎生発育には、個々の骨形成メカニズムが関与すると考えられているが、修復には、膜内骨形成が関与すると考えられている。
【0005】
いずれのメカニズムによる骨形成にも、成長因子により調節される骨芽細胞の活性が関与する。骨芽細胞は、骨髄間質細胞(間葉幹細胞:MSCとしても知られる)のプールに由来する。これらの細胞は種々の組織に存在するが、骨髄間質で優勢である。MSCは、多能性であり、骨芽細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、筋細胞及び脂肪細胞を含む多様な細胞種に分化することができる。成長因子は、骨形成性細胞の増殖、分化及び骨芽細胞の石灰化に影響を与えると考えられ、そのそれぞれが骨形成に影響を与える。
【0006】
例えば、頭蓋骨癒合症の患者及び中裂移植の患者で骨を修復させる場合は、自家骨が用いられてきた。頭蓋縫合が早期に閉鎖してしまう頭蓋骨癒合症(CS)は、3,000人に1人の乳児で起きており、最も一般的なヒトの頭蓋及び顔面の変形の1つである。縫合の閉鎖が早過ぎると、頭蓋の二形性を生じ、手術による矯正を必要とする可能性がある。ヒトのCSにおける早過ぎる縫合の閉鎖は、頭蓋冠の過形成及び骨融合という2つのおそらく別個の過程により生じる可能性がある。最近では、CBFA−1が介在する経路による頭蓋縫合の早過ぎる融合に線維芽細胞成長因子2(FGF2)および線維芽細胞成長因子 受容体1(FGFRl)が関与するとみなされている(8)。縫合の遅延閉鎖として現れる鎖骨頭蓋異形成症には、CBFA1のミスセンス変異が関連している。
【0007】
例えば、腸骨稜又は頭蓋冠からの自家骨を利用して自家骨移植処置が行われている。これらの供給部位は、腸骨稜については、疼痛、歩行障害、大腿の知覚異常等の病的状態と無関係ではなく、頭蓋冠移植については、感染、神経障害及び血腫を含む病的状態と無関係ではない。さらに、供給部位は、容積が限定され、且つ手術時間及び入院期間を長くする可能性がある。
【0008】
異種移植材料も利用されており、動物モデルでは成長因子も検討されている。例えば、bFGFは骨の再生及び修復に使用可能である。骨形成性成長因子の別のファミリーには、骨形態形成タンパク質(BMP)がある。具体的には、BMP−2組換えタンパク質が下顎連続性障害及び口蓋裂を再生し、自家骨微粒子及び骨髄と同等又はそれ以上の結果が得られたことが明らかにされている。BMP及びその他の骨形成因子の臨床応用については研究が続けられている。しかしながら、最小の有効性を上げるのに使用するBMP投与量のコストが臨床での使用の限定要因になっている。
【0009】
脊椎固定は、脊柱の1以上の椎骨をその間での動きがもはや生じないように一体化する手術法である。適応には、骨折(破壊)した椎骨の治療、変形の矯正、動きによる疼痛の除去、不安定性の治療、及び一部の頸椎椎間板ヘルニアの治療が挙げられる。手術には、椎骨間に骨移植片を留置して椎骨間のしっかりした結合を得ることが含まれる。その処置には、プレート、ネジ、ケージ及び最近では、骨形態形成タンパク質2及び7を留置して骨移植片の安定及び癒合を助けること等の補完治療も含まれる。自家骨移植は臨床的に好ましい方法ではあるが、未だに30〜50%の失敗率を有する。自家骨移植は別個の手術であり、重大な病的状態ももたらす。
【0010】
軟骨は、密性結合組織の一種である。硬いゲル状の基質に分散された軟骨細胞からなる。軟骨は、無血管組織(血管が存在しない)であり、栄養素は基質を介して拡散する。軟骨は、関節、胸郭、耳、鼻、咽喉及び椎間板の間にみられる。軟骨には主に、硝子質(例えば、肋骨軟骨、鼻、気管及び気管支の軟骨、及び関節の関節軟骨)、弾性(例えば、外耳、外耳道、耳管の一部、喉頭蓋、及び喉頭部軟骨の一部)及び線維軟骨[例えば、半月板(例えば、手首の三角線維軟骨複合体、膝半月板)、椎間板、側頭下顎骨関節板、恥骨結合、及び骨と結合している腱及び靱帯の一部]の3種類がある。軟骨の主な目的の一つは、(軟骨内骨化中に)骨沈着が開始できるようなフレームワークを提供することである。軟骨のもう一つの重要な目的は、関節接合している骨を動かすための平滑表面を提供することである。例えば、関節軟骨(最も顕著には膝関節においてみられる関節軟骨)は、一般に非常に低摩擦で、耐摩耗性が高く、且つ再生性に乏しいことを特徴とする。軟骨は膝関節の耐圧縮性及び耐荷重性の大半に関与しており、軟骨がなければ、歩行には痛みを伴い、不可能である。さらに、軟骨のもう一つの重要な目的は、堅いが柔軟性のあるサポート(例えば、鼻軟骨、脊椎円板、気管軟骨、膝半月板、気管支軟骨)を提供することである。例えば、半月板等の軟骨は、関節の安定、潤滑、及び力伝達に極めて重要な役割を果たしている。体重の負荷を受けながら、半月板は、脛骨上の均衡のとれた位置に大腿骨を保持し、接触面を増やすことにより、圧縮力を分散させて、結果的に平均応力を2〜3倍縮小させている。しかも、半月板は関節液と相互に作用し、その摩擦係数は、氷上の氷の5倍も潤滑性に優れたものとしている。また、例えば、椎間板には、スペーサーとしての機能、緩衝装置としての機能、及び動作単位としての機能を含むいくつかの重要な機能がある。椎間板のゲル状の中央部は、髄核と呼ばれる。髄核の80〜90%が水で構成されている。核の固形部は、II型コラーゲン及び非凝集性のプロテオグリカンである。髄核周辺の外側の靱帯の輪は、線維輪と呼ばれ、油圧式に核をシールし、椎間板が荷重されると、椎間板内圧力を上昇させる。線維輪は、ラジアルタイヤの層とは異なり重なり合う半径方向のバンド(radial band)を有し、これにより、線維輪を介して、垂直荷重下で破裂することなくねじり応力が分散される。椎間板は油圧シリンダーとして機能する。線維輪は核と相互作用する。核に圧力がかかると、輪状線維が封じ込め機能を発揮し、核の突出やヘルニアを防ぐ。
【0011】
軟骨は、摩耗、損傷又は疾患により破損する。加齢に伴い、人体の軟骨中の水及びタンパク質の含有量が変化する。この変化により、軟骨がより弱く、より脆く薄くなる。変形性関節症は、軟骨障害の一般的状態であり、動作が限定され、骨損傷とともに常に疼痛を伴う。急性ストレスと慢性疲労が組み合わされることで、変形性関節症は、関節接合している表面の摩耗に直接的に現れ、極端な例では、骨が関節に露出することもある。また、例えば、保護安定化半月板の損失は、関節弛緩症の増加、又は関節の不安定化の原因となる異常な動きを引き起こす。過剰な動き及び接触面の狭小化により、早期の関節炎の病変を進める。細胞レベルでは、まず、関節軟骨の表層から細胞が失われた後に、軟骨が割れ、その後薄くなって、浸食が起き、最終的には下層の骨が剥き出しになる。最も初期の関節炎の病変は、半月板全体が損失してから3週間で現れる。また、例えば、半月板及び脊椎骨を束にする関節(面関節)の双方が部分的に軟骨で構成されるため、これらの面が、時間の経過に伴う摩耗及び裂傷の対象となる(退行性変化)。内部の核が水分を失うために、半月板のスペースが狭小化し、余剰の輪状靱帯が膨隆する。核の脱水が進むと、輪状線維に亀裂や裂傷が起きる。通常の軟組織の張力が失われることで、脊髄分節を、亜脱臼させる場合もあり(例えば、関節の部分的な脱臼)、骨棘形成(骨の突起)、大孔狭窄、機械的不安定、及び疼痛が引き起こされる。輪状線維が伸張又は破裂した場合、圧力を受けた核物質の隆起、又はヘルニアを生じさせ、且つ神経組織を圧迫し、疼痛及び脆弱性をもたらす可能性がある。この状態は、神経圧迫(pinched nerve)、椎間板脱出(slipped disc)又は椎間板ヘルニア(herniated disc)と呼ばれる。神経根障害は、脊椎骨間の板が損傷することにより起きる神経の刺激をいう。また、機械的機能障害は、椎間板変性及び疼痛(例えば椎間板変性疾患)の原因となる可能性がある。例えば、通過していく力の増加に耐えるために椎間板の限界を超える負荷をかける、ある外傷性傷害の結果として、椎間板が損傷を受ける可能性があり、輪状線維の内部又は外部が裂ける可能性もある。増大するストレスにさらされると、こうした裂けた線維が炎症反応の病巣になる可能性があり、直接的に又は深部傍脊柱筋群の補完的防御的な痙攣を介して、疼痛を引き起こすことがある。軟骨損傷又は障害に対し、いくつかの異なる治療の選択肢がある。
【0012】
変形性関節症は、米国の高齢者において、第二番目の障害の原因である。一般に比較的穏やかに始まり、時間と摩耗により激しさを増す退行性疾患である。軽度から中等度の症状を経験する患者にとっては、いくつかの非外科的治療により対処可能な障害である。補装具の使用、及び抗炎症薬(例えば、ジクロフェナク、イブプロフェン及びナプロキセン)、COX−2選択的阻害薬、ヒドロコルチゾン、グルコサミン、及びコンドロイチン硫酸等の薬物治療の利用により、軟骨の欠損による疼痛を緩和することが示されてきた。また、退行性過程を遅らせることができるという主張もある。
【0013】
全関節置換を除く関節軟骨の外科治療のほとんどが、種々の治療群に分類できる。炎症及び疼痛を止めるために罹患し弱体化した軟骨を除去する治療には、切削(軟骨切除術)及び創面切除術(デブリドマン)が含まれる。別の治療グループとして、穿孔、マイクロフラクチャー術、軟骨形成術及びスポンジアリゼーション(spongialization)等の軟骨形成を促すためのさまざまな研磨処置がある。研磨、穿孔、及びマイクロフラクチャーは、20年前に始められた。骨の軟骨下板に対する血管損傷の後は、軟骨組織の自然治癒現象に頼る。また、現在試験的に行われているレーザー光治療は、別分類となり、罹患した軟骨の除去と軟骨再形成とを組合わせ、さらに軟骨増殖を誘導する。追加治療には、自己軟骨の移植(例えば、ジェンザイム社のカーティセル(Carticel)等)が含まれる。
【0014】
半月板軟骨により適用可能な他の治療には、早期の外科的介入及び損傷した構造の縫合による修復、又は重度損傷の場合の半月板の同種移植が含まれる。
【0015】
椎間板ヘルニア及び坐骨神経痛患者の大多数が外科手術を受けることなく治癒するが、もし外科手術が必要とされる場合、処置には椎間板ヘルニアの除去と、椎弓切開術(脊髄の周辺の脊柱の骨に小さな孔を形成する)、椎弓切除(神経組織に隣接する骨壁の除去)、経皮的な針技術(経皮的椎間板切除術)、椎間板の溶解処置(化学的髄核融解術)及びその他が含まれる。保存療法に反応せず、個人生活を送れない機械的な疼痛症候群患者では、脊椎固定術、椎間板内電熱凝固術(あるいは環状形成術)、後部動的安定化、人工椎間板技術又は、タンパク質、ペプチド、遺伝子治療、又は、ヌクレオチドを用いて行われる種々の分子療法による未だ試験的な椎間板再生療法により、その問題に対処可能である。軟骨疾患の治療としては、多くの方法が開示されてきたが、多くが人工的又は機械ベースの解決法であり、通常の軟骨組織生態の再形成を求めないのは明らかである。したがって、軟骨形成を促す方法が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、骨の発育、障害、又は、骨外傷性傷害において骨形成を誘導する組成物及び方法が必要とされる。
【0017】
したがって、軟骨形成及び再生を誘導する組成物及び方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、NELL1及びNELL2タンパク質の発現及び精製方法に関する。その方法では、
分泌シグナルペプチドをエンコードする核酸を有するフレーム内に、少なくとも1つのNELLペプチドをエンコードする少なくとも1つの核酸を含む核酸構築物を提供し;
前記核酸構築物により哺乳類細胞を形質転換し;
前記NELLペプチドを発現させうる条件下で前記哺乳類細胞を培養する
ことが含まれる。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記哺乳類細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。また、前記方法には、細胞株から分泌されるNELLペプチドを回収し;かつ該NELLペプチドを実質的に精製することが含まれる。さらに、いくつかの実施形態では、前記方法に、前記NELLペプチドの骨形成の誘導活性を調べることも含まれる。
【0020】
ここで説明する発現系により産生されるNELLタンパク質は、単独でも使用可能であるが、骨又は軟骨形成、又は再生に供する他の物質と併用することもできる。いくつかの実施形態では、ここで説明するNELLタンパク質は、所望のあらゆる剤形の組成物を形成するために使用できる。NELLタンパク質組成物及び剤形については、US11/392,294及びPCT/US2006/005473に例示されており、その教示は、そのまま本願明細書に包含される。いくつかの実施形態では、前記組成物又は剤形には、キャリア、例えば医薬品としての条件を満たしたキャリアが含まれることがある。いくつかの実施形態では、基材に細胞及び/又はNELL1ペプチドが含まれることがあり、骨軟骨、円板又は、移植片の近傍のその他の組織の修復を促進できる。
【0021】
本発明の実施形態には、各種の臨床的応用において骨形成分化、骨芽細胞の石灰化及び/又は骨形成を誘導する方法を含む。また、本発明には、各種の臨床的応用において軟骨細胞分化及び/又は軟骨細胞石灰化を誘導する方法も含まれる。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明は、既知の成長因子よりも大きな効果を与えることが可能であり、及び/又は他の成長因子の活性を強化することができる。したがって、より低用量の各成長因子を臨床的に使用可能である。これは少なくとも臨床治療がより安価になる点で意義深い。さらに、少なくともNELL1が骨形成分化、骨芽細胞の石灰化及び骨形成を向上し、臨床率及びBMP単独による治療効果を改善できる点で、本発明は有利である。また、NELL1が軟骨細胞分化及び/又は軟骨細胞石灰化を向上し、臨床率及びBMP単独による治療効果を改善できる点においても、本発明は有利である。
【0023】
NELLタンパク質組成物及び剤形については、US11/392,294及びPCT/US2006/005473に例示されており、その教示は、そのまま本願明細書に包含される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1A〜1Bは、NELLペプチドの製造方法の1つを示すフローチャートである。
図2A〜2Bは、シグナルペプチド−NELL1−FLAG核酸構築物を例示している。下線のアミノ酸配列は、メリチンシグナルペプチドに由来する。アラニンとプロリンの間の結合は、ハイファイブ(HighFive)細胞による分泌の推定的切断部位である。RTVLGFG−−−−からの残基は、ラット/ヒトNELL1タンパク質の成熟タンパク質に由来する。
図3A〜3DはNELL1−FLAGの細胞外発現の産生物を例示している。図3Aは、UnoQ溶出液含有の精製済みNELL1ペプチドを示すCBB染色SDS−PAGEゲルである。このとき、NELL1ペプチドは、無血清培地にてHighFive細胞から産生した(産生率:約3mg/L培地)。図3Bは、抗FLAG抗体を用いたウェスタンブロットである。図3Cは、UnoQ溶出液含有の精製済みNELL1ペプチドを示すCBB染色SDS−PAGEゲルである。このとき、NELL1ペプチドは、無血清培地にてCOS7細胞から産生した(産生率:0.1mg/L培地より大きい)。図3Dは、抗FLAG抗体を用いたウェスタンブロットである。
図4A〜4Cには、CHO発現系によるNELL1ペプチドの産生を例示した。図4Aは、本願実施例に使用したcDNA構造の核酸配列及び3つの異なるシグナルペプチドのアミノ酸配列を示している。図4Bは、抗c−myc抗体を用いたウェスタンブロットである。抗c−mycアガロースを用いた免疫沈降後に、異なる構築物の形質転換によるNELL1分泌を検出している。図4Cは、抗c−myc又はマウス抗ヒトNELL1抗体によるウェスタンブロットである。ウサギ抗ヒトNell−1抗体−NHS活性セファロースを用いた免疫沈降後に、NELL1分泌を検出している。
【0025】
本発明は、NELL1及びNELL2タンパク質の発現及び精製方法に関する。その方法では、
分泌シグナルペプチドをエンコードする核酸を有するフレーム内に、少なくとも1つのNELLペプチドをエンコードする少なくとも1つの核酸を含む核酸構築物を提供し;
前記核酸構築物により哺乳類細胞を形質転換し;
前記NELLペプチドを発現させうる条件下で前記哺乳類細胞を培養する
ことが含まれる。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記哺乳類細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である。また、前記方法には、細胞株から分泌されるNELLペプチドを回収し;かつ該NELLペプチドを実質的に精製することが含まれる。さらに、いくつかの実施形態では、前記方法に、前記NELLペプチドの骨形成の誘導活性を調べることも含まれる。
【0027】
ここで説明する発現系により産生されるNELLタンパク質は、単独でも使用可能であるが、骨又は軟骨形成、又は再生に供する他の物質と併用することもできる。いくつかの実施形態では、ここで説明するNELLタンパク質は、所望のあらゆる剤形の組成物を形成するために使用できる。いくつかの実施形態では、前記組成物又は剤形には、キャリア、例えば医薬品としての条件を満たしたキャリアが含まれることがある。いくつかの実施形態では、基質に細胞及び/又はNELL1ペプチドが含まれることがあり、骨軟骨、半月板又は、移植片の近傍のその他の組織の修復を促進できる。
【0028】
本発明の実施形態には、各種の臨床的応用において骨形成分化、骨芽細胞の石灰化及び/又は骨形成を誘導する方法を含むものもある。また、本発明には、各種の臨床的応用において軟骨細胞分化及び/又は軟骨細胞石灰化を誘導する方法も含まれる。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明は、既知の成長因子よりも大きな効果を与えることが可能であり、及び/又は他の成長因子の活性を強化することができる。したがって、より低用量の各成長因子を臨床的に使用可能である。これは少なくとも臨床治療がより安価になる点で意義深い。さらに、少なくともNELL1が骨形成分化、骨芽細胞の石灰化及び骨形成を向上し、臨床率及びBMP単独による治療効果を改善できる点で、本発明は有利である。また、NELL1が軟骨細胞分化及び/又は軟骨細胞石灰化を向上し、臨床率及びBMP単独による治療効果を改善できる点においても、本発明は有利である。
【0030】
NELLタンパク質組成物及び剤形については、US11/392,294及びPCT/US2006/005473に例示されており、その教示は、そのまま本願明細書に包含される。
【0031】
定義
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は本明細書では交換可能に使用してもよく、アミノ酸残基の重合体を言う。各用語は、天然に生じるアミノ酸重合体に適用されるのと同様に、1以上のアミノ酸残基が相当する天然に生じるアミノ酸の人工的な化学的類縁体であるアミノ酸重合体にも適用されてもよい。
【0032】
用語「抗体」は、例えば、未処理の免疫グロブリン、L鎖及びH鎖の可変領域しか含有しないFv断片、ジスルフィド結合で結合したFv断片、可変領域及び定常領域の一部を含有するFab又は(Fab)’2断片、単鎖抗体などのような種々の形態の改変抗体又は改造抗体を含んでもよい。抗体は、未処理の分子を含んでもよいのと同様にその断片、例えば、Fab及びF(ab’)2’、及び/又はエピトープ決定基に結合できる単鎖抗体(例えば、scFv)を含んでもよい。抗体は、動物(例えば、マウス又はラット)又はヒト起源であってもよく、或いはキメラ抗体であってもよく、又はヒト化されてもよい。抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、又はモノクローナル抗体(「mAb」)、例えば、NELL1タンパク質又はNELL2タンパク質によりエンコードされたポリペプチドに特異性を持つモノクローナル抗体であってもよい。
【0033】
用語「捕捉剤」は、他の分子を特異的に結合し、例えば、抗体−抗原、レクチン−炭水化物、核酸−核酸、ビオチン−アビジンなどのような結合複合体を形成する分子を言ってもよい。
【0034】
用語「特異的に結合する」は、生体分子(例えば、タンパク質、核酸、抗体など)を言ってもよく、異質集団の分子(例えば、タンパク質とその他の生物製剤)において存在する生体分子を同定するような結合反応を言う。従って、指定された条件下(例えば、抗体の場合は免疫アッセイ条件、核酸の場合はストリンジェントなハイブリッド形成条件等)で、特定のリガンド又は抗体は、その特定の「標的」分子に結合してもよく、試料に存在するそのほかの分子には有意な量では結合できない。
【0035】
用語「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」は、共に共有結合する少なくとも2つのヌクレオチドを言う。本発明の核酸は、場合によっては、例えば、リンアミド結合、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、o−メチルリンアミダイト結合、及び/又はペプチド核酸主鎖及び結合を含む代替主鎖を有してもよい核酸アナログを含んでもよいが、一本鎖でもよいし、二本鎖でもよく、ホスホジエステル結合を含有してもよい。核酸アナログは正の主鎖及び/又は非リボースの主鎖を有してもよい。核酸はまた、1以上の炭素環式の糖を含んでもよい。リボース−リン酸の主鎖の修飾を行なって、例えば標識のような追加部分の付加を促進してもよいし、又は例えば、生理的環境におけるそのような分子の安定性高め、半減期を延ばしてもよい。
【0036】
用語「特異的なハイブリッド形成」は、プローブがその標的の部分配列に優先的にハイブリッド形成し、他の配列により少ない程度にハイブリッド形成してもよい条件を含むストリンジェントな条件下での特定のヌクレオチド配列への核酸分子の優先的な結合、二本鎖形成、又はハイブリッド形成を言う。
【0037】
用語「NELL1cDNA」は、配列番号1、3及び5を指し、「NELL2cDNA」は、配列番号7、9、11及び13を指す。
【0038】
NELLペプチド
NELL1は主として骨に分布する810アミノ酸のペプチドである。成人では、NELL1は頭蓋顔面の骨に高レベルで発現され、長骨では低レベルで発現される。骨芽細胞の分化、骨形成及び骨再生における役割については、これまでに研究されてきている。NELL2は、神経細胞及び脳に分布する816アミノ酸のペプチドである。
【0039】
ヒトのNELL1遺伝子は、プロモータ領域に少なくとも3つのCbfa1反応エレメントを含む。Cbfa1はNELL1のプロモータにおけるこれらの反応エレメントに特異的に結合する。NELL1の発現は、発達中及び成人の少なくとも前骨芽細胞、骨芽細胞及び肥大軟骨細胞で内生的に発現されるこの転写因子の制御下にあってもよい。鎖骨頭蓋骨形成不全症は、少なくとも部分的にはCbfaの破壊により生じると考えられている発達上の頭蓋欠陥である。
【0040】
NELL1ペプチドは、NELL1遺伝子又はcDNAにより発現されるタンパク質であり、配列番号2、4及び6を含む。NELL1ペプチドには、骨形成細胞の分化、骨芽細胞の分化又は骨形成を誘導する能力を保持するNELL1ペプチド断片が含まれてもよい。NELL2ペプチドは、NELL2遺伝子又はcDNAにより発現されるタンパク質であり、配列番号8、10、12及び14を含む。NELL2ペプチドには、NELL2ペプチド配列全体と同様の活性を保持するNELL2ペプチド断片が含まれる場合がある。
【0041】
ここで言う用語「誘導体」とは、NELLペプチド由来のあらゆる化合物もしくは生体化合物、又は化学物質もしくは生体物質、構造的にそれらと同等の物質(structural equivalent)又は立体配座がそれらと同等の物質(conformational equivalent)を指す。例えば、こうした誘導体には、プロドラッグ型、ペグ化型、又は、NELLペプチドをより安定化し、又はより優れた親骨性又は親油性をもたせるその他のあらゆるNELLペプチドの形態が含まれてもよい。いくつかの実施形態では、誘導体は、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(アミノ酸)、炭素数が1〜20のヒドロカルビル短鎖、又は生体適合ポリマーと結合したNELLペプチドであってもよい。いくつかの実施形態では、用語「誘導体」には、NELLペプチドミメティックスが含まれる可能性がある。ここで使用する用語「ミメティック(mimetic;模倣物)」は、その主鎖に少なくとも1つの非ペプチド結合をもつペプチドを指す。ペプチド結合は、1つのアミノ酸分子のカルボン酸基と別のアミノ酸分子のアミノ基との間に形成される化学的結合である。
【0042】
ペプチドミメティックスの合成については、この分野の文献に詳述されている。以下に、ペプチドミメティックスを含むペプチド合成の基本的手順の一例を説明する。
【0043】
ペプチド合成を開始する前に、アミノ酸のアミン端末(出発物質)をFMOC(9−フルオロメチルカーバメート)又は他の保護基で保護してもよく、開始剤としては、メリフィールド樹脂(遊離アミン)等の固形単体が使用される。次に、以下のステップ(1)〜(3)の反応を行い、所望のペプチドが得られるまでこれを繰り返す。(1)カルボジイミド化学を用いて、遊離アミンをカルボキシル末端と反応させ、(2)アミノ酸配列を精製し、且つ(3)FMOC保護基等の保護基を弱酸性条件で除去して遊離アミンを得る。その後、ペプチドを樹脂から切断して、独立のペプチド又はペプチドミメティックスを得ることができる。
【0044】
1つの実施形態においては、その方法には分泌シグナルペプチドをエンコードする核酸配列のあるフレーム内に、NELL1又はNELL2ペプチド等のNELLペプチドをエンコードする核酸配列を提供することが含まれる。1つの実施形態においては、分泌シグナルペプチドが、分泌されたハナバチタンパク質由来の分泌シグナルペプチドである。例えば、核酸配列は、メリチンシグナル配列、ドロスフィラ免疫グロブリン結合タンパク質シグナル配列、ウマインターフェロン−ガンマ(eIFN−gamma)シグナルペプチド、ヘビホスホリパーゼA2阻害物質シグナルペプチド、ヒト及び/又はニワトリリゾチームシグナルペプチドを含むがこれら例示に限定されない群から選択できる。哺乳類発現系については、プロトリプシン先導配列も使用可能である。
【0045】
1つの実施形態においては、その方法にはNELLペプチドをエンコードする核酸構築物で昆虫細胞株を形質転換し;且つ、NELLペプチドを発現及び/又は分泌させる条件下で昆虫細胞株を培養することが含まれる。例えば、NELLペプチドをエンコードする核酸構築物により、一時的に又は安定的にその細胞株を形質転換することができる。
【0046】
NELLペプチド発現系
NELLペプチドは、あらゆる生物系で発現可能である。例えば、NELLペプチドの発現は、細菌系、酵母系、植物系又は動物系で可能である。
【0047】
いくつかの実施形態では、NELLペプチドは、この技術分野で周知の無細胞発現系で発現される。例えば、大腸菌無細胞タンパク質翻訳系、又はコムギ胚芽無細胞タンパク質翻訳系が挙げられる。
【0048】
いくつかの実施形態では、NELLペプチドは、タバコ、トウモロコシ、コメ、又はダイズ由来のトランスジェニック植物細胞系において発現可能である。
【0049】
このような発現系には、ウイルス性キャリア、又はウイルス性ベクター、ペプチドキャリア、又は短鎖ポリマー分子等のキャリアが含まれうる。
【0050】
いくつかの実施形態では、NELLペプチドは、昆虫細胞にて発現される。昆虫系で発現されるNELL1及びNELL2ペプチドは、そのタンパク質の機能的形態である。
【0051】
培地1リットルあたり約10μg程度の低濃度のNELL1及びNELL2タンパク質を産生するのに、COS7細胞を使用することができるが、発現には、血清含有培地が必要となる。シグナルペプチドについては、NELL1及びNELL2内因性シグナルペプチドにより、COS7細胞での発現が可能になる。
【0052】
本発明の1つの実施形態では、昆虫細胞株を用いたNELL1又はNELL2ペプチド等の機能的NELLペプチドを発現する方法が含まれる。1つの実施形態では、昆虫細胞はHighFive細胞、Sf9及び他のSf細胞であってもよい。
【0053】
1つの実施形態では、その方法には、NELL1又はNELL2ペプチド等の機能的NELLペプチドをエンコードする核酸配列を提供することが含まれる。その核酸配列は、少なくともNELLペプチドの機能部分をエンコードするcDNA又はゲノムDNAであってもよい。例えば、そのような核酸配列は、ヒトNELL1(配列番号1)、ラットNELL1(配列番号3)、マウスNELL1(配列番号5)、又は、ヒトNELL2(配列番号7)、ラットNELL2(配列番号9)、マウスNELL2(配列番号11)、ニワトリNELL2(配列番号13)を含む非限定的な群から選択することができる。また、その核酸配列には、充分な配列相似性を有するような配列、例えば、上記した配列のいずれかの部分との配列相似性が少なくとも約75%であるような配列が含まれる。
【0054】
さらに、その核酸には、NELL1又はNELL2ペプチド等のNELLペプチドをエンコードする核酸配列を発現する発現ベクターが含まれてもよい。例えば、そのような発現ベクターとしては、pIZT/V5−His(インビトロジェン社)が挙げられ、選択マーカーには、ブラストサイジン及びネオマイシン等がある。
【0055】
さらに、前記核酸配列には、遺伝子発現レベルをモニターするためのレポーター生成物をエンコードする付加的な核酸、又は、ペプチド発現レベルをモニターするため、この技術分野において公知の方法を用いて視覚化可能なペプチド標識をエンコードする付加的な核酸も含まれる可能性がある。付加的な配列は、前記核酸の発現又は発現されるペプチド産物の機能性を阻害しないように、選択可能である。
【0056】
1つの実施形態では、本発明には、昆虫細胞においてNELL1及び/又はNELL2ペプチド等のNELLペプチドを発現する核酸構築物が含まれる可能性がある。前記核酸配列は、少なくともNELLペプチドの機能部分をエンコードするcDNA又はゲノムDNAであってもよい。例えば、前記核酸配列は、ヒトNELL1(配列番号1)、ラットNELL1(配列番号3)、マウスNELL1(配列番号5)を含むが非限定的な群、又は、ヒトNELL2(配列番号7)、ラットNELL2(配列番号9)、マウスNELL2(配列番号11)、ニワトリNELL2(配列番号13)を含むが非限定的な群から選択できる。また、前記核酸配列には、充分な配列相似性を有するような配列、例えば、上記した配列のいずれかの部分との配列相似性が少なくとも約75%であるような配列が含まれてもよい。
【0057】
本発明の1つの実施形態では、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)等の哺乳類細胞においてNELL1及び/又はNELL2ペプチド等のNELLペプチドを発現する核酸構築物が含まれる。前記核酸配列は、少なくともNELLペプチドの機能部分をエンコードするcDNA又はゲノムDNAであってもよい。例えば、前記核酸配列は、ヒトNELL1(配列番号1)、ラットNELL1(配列番号3)、マウスNELL1(配列番号5)を含むが非限定的な群、又は、ヒトNELL2(配列番号7)、ラットNELL2(配列番号9)、マウスNELL2(配列番号11)、ニワトリNELL2(配列番号13)を含むが非限定的な群から選択できる。また、前記核酸配列には、充分な配列相似性を有するような配列、例えば、上記した配列のいずれかの部分との配列相似性が少なくとも約75%であるような配列が含まれてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞)におけるNELL1及び/又はNELL2ペプチドの産生について、NELL1及び/又はNELL2の発現系には、内因性シグナルペプチドを発現する核酸又はcDNAが含まれる可能性がある。いくつかの実施形態では、NELL1及び/又はNELL2ペプチドの発現系には、NELL2シグナルペプチドを発現する核酸又はcDNAが含まれる可能性がある。NELL1ペプチドの発現系にNELL2シグナル核酸又はcDNAを取り込むことで、NELL1ペプチドの産生をより効果的にできる。
【0059】
前記核酸構築物には、シグナルペプチドをエンコードする核酸配列が含まれてもよい。前記核酸には、NELLペプチドをエンコードする核酸配列を発現する発現ベクターが含まれてもよい。さらに、前記核酸配列には、遺伝子発現レベルをモニターするためのレポーター生成物をエンコードする付加的な核酸、又は、ペプチド発現レベルをモニターするため、この技術分野において公知の方法を用いて視覚化可能なペプチド標識をエンコードする付加的な核酸が含まれてもよい。
【0060】
核酸構築物は、ベクターにより形質転換される宿主細胞の生存又は増殖に必要なタンパク質をエンコードする遺伝子等の選択遺伝子(選択可能なマーカーとも言われる)を含有するのであれば、発現及びクローニングベクターから構成されてもよい。この遺伝子の存在により、前記ベクターを削除する宿主細胞は、形質転換宿主に対して、増殖又は複製において利点が得られないことが確認できる。典型的な選択遺伝子は、(a)例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、又はテトラサイクリン等の抗生物質又は他の毒素に対する耐性を与える、(b)栄養要求性の不良を補完するタンパク質をエンコードする。
【0061】
また、核酸構築物には、宿主生物に認識されNELLをエンコードする核酸に操作可能に結合されるプロモーターが含まれる可能性もある。プロモーターは、制御下にある核酸の転写及び翻訳を制御する構造遺伝子の開始コドンの上流に配置される非翻訳配列(一般に約100〜1000塩基対以内)であり、誘導及び構成的プロモーターを含む。誘導プロモーターは、例えば、栄養素の有無、又は温度変化等の培養条件の何らかの変化に対応して、制御下にあるDNAからの転写レベルの上昇を開始させるプロモーターである。現時点で、各種の宿主細胞候補により認識される多数のプロモーターがよく知られている。
【0062】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれる場合、操作可能に結合できる。例えば、プレ配列用のDNA、又は分泌リーダー配列は、ポリペプチドの分泌に関与する前駆タンパク質として発現される場合、操作可能に該ポリペプチド用DNAに結合する;プロモーター又はエンハンサーは、コード配列の転写に作用する場合、操作可能に該コード配列に結合する;又は、リボソーム結合部位が、翻訳を促進するように配置されている場合、操作可能に該コード配列に結合する。
【0063】
本発明の1つの実施形態では、機能性NELLペプチドを発現する細胞が含まれる可能性がある。例えば、その細胞はCHO細胞であってもよい。1つの実施形態では、その細胞は、NELLペプチドをエンコードする核酸構築物で形質転換される可能性がある。例えば、その細胞株は、一時的又は安定的にNELLペプチドをエンコードする核酸構築物で形質転換されてもよい。1つの実施形態では、NELL発現性核酸(例えば、cDNAなど)は、(昆虫細胞又は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)等の)トランスフェクト細胞に対してコンピテントである遺伝子発現ベクター又はウイルス粒子にクローニングされる可能性がある。
【0064】
また、その核酸配列には、昆虫分泌シグナルペプチドをエンコードする核酸配列をもつフレーム内にNELL1又はNELL2ペプチド等のNELLペプチドをエンコードする核酸配列が含まれる可能性がある。
【0065】
本発明の1つの実施形態では、機能性NELLペプチドを発現する細胞が含まれ、機能タンパク質を分泌できる場合がある。
【0066】
本発明の1つの実施形態では、NELL1又はNELL2ペプチド等のNELLペプチドを有するポリペプチド(アミノ酸配列)が含まれ、分泌シグナルペプチドが含まれる可能性がある。
【0067】
例えば、NELLペプチドのアミノ酸配列は、ヒトNELL1(配列番号2)、ラットNELL1(配列番号4)、マウスNELL1(配列番号6)を含むが非限定的な群、又は、ヒトNELL2(配列番号8)、ラットNELL2(配列番号10)、マウスNELL2(配列番号12)、ニワトリNELL2(配列番号14)を含むが非限定的な群から選択できる。また、そのアミノ酸配列には、充分な配列相似性を有するような配列、例えば、上記した配列のいずれかの部分との配列相似性が少なくとも約75%であるような配列が含まれる可能性もあり、又は、NELL1ペプチドと同様の活性のある結合ドメインを含む可能性もある。
【0068】
ペプチド精製
いくつかの実施形態では、本発明には、標準的なペプチド精製手順に準じて、培地に分泌されるNELL1及び/又はNELL2ペプチドを精製する方法が含まれる。本発明の精製方法としては、非限定的な例として、以下が挙げられる。
【0069】
また、その方法には、分泌されたNELLペプチドを回収し、且つ/又は使用に際してNELLペプチド精製することも含まれる可能性がある。ペプチド産物について、各種の機能性アッセイ又は発現アッセイにて活性試験を行う可能性がある。例えば、どのアッセイにおいても、もしNELLペプチドが、所定のパラメータに関しコントロール物質に対して顕著な効果を有する場合、そのNELLペプチドは、測定パラメータに作用する機能性を有すると言える。
【0070】
1つの実施形態では、選択された細胞が選択された核酸配列を発現し、NELLペプチドを発現及び/又は分泌するか否かを検証する。1つの実施形態では、NELLペプチドの有無、量、及び/又は活性が検証される。
【0071】
1つの実施形態では、その技術分野の当業者に周知の多くの方法のいずれかにより、NELLペプチドを検出及び定量した。これらには、電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超拡散クロマトグラフィー等の生化学的な分析方法、又は、流体又はゲル内沈降反応、(一元又は二重)免疫拡散法、免疫電気泳動法、放射性免疫分析(RIA)、酵素免疫測定法(ELISAs)、免疫蛍光分析、ウェスタンブロッティング等の各種の免疫学的方法等が含まれる。
【0072】
1つの実施形態では、ウェスタンブロット(免疫ブロット)分析を使用して、選択されたサンプル中のNELLペプチドの有無を検出及び定量する。この技法には、タンパク質サンプルをゲル電気泳動法により分子量ベースで分離し、分離したタンパク質を適切な固形単体(ニトロセルロース膜、ナイロン膜、又は、誘導体化ナイロン膜など)に転写し、且つそのサンプルを標的ペプチドに特異的に結合する抗体とともにインキュベートすること等が含まれる。
【0073】
本発明の分析は、この技術分野の当業者に周知の標準的な方法に従って、(標的ポリペプチドの有無(陽性又は陰性)又は量で)評価してもよい。評価法は、分析形式及び標識の選択により決められる。例えば、ウェスタンブロット分析であれば、酵素標識により産生される着色生成物を可視化することにより評価される。正しい分子量で明瞭に可視化された着色のバンド又はスポットが、陽性結果として評価され、明瞭に可視化された着色のバンド又はスポットがない場合には、陰性として評価される。バンド強度又はスポット強度が、標的ポリペプチド濃度の定量的尺度となる。
【実施例】
【0074】
組換えタンパク質の産生及び精製方法は、この分野の当業者に周知の技術であり、複数の営利企業がタンパク質産生サービスを提供している。以下の例は、本発明を説明するために提示するが、本発明を限定するものではない。一般的に、発現の宿主は、細菌類、酵母及び菌類、哺乳類細胞、植物、トランスジェニック動物(例えば、山羊乳)であってもよく、また、コムギ胚芽又は大腸菌抽出物等に基づく無細胞発現系であってもよい。一般的に、発現エレメントは、原核生物、酵母、哺乳類及び植物プロモーター、又はウイルス性プロモーターであってよい。タンパク質発現ストラテジーとしては、細胞内又は細胞外ストラテジー、融合タンパク質ストラテジー及びディスプレイストラテジーが挙げられる。組換えタンパク質の後処理プロセスには、集菌、溶菌、ろ過、限外ろ過、沈殿、及び/又は、タンパク質回収、中間精製、最終精製、及び最適化を包含するその他のタンパク質処理/精製ストラテジーが含まれてよい。
【0075】
実施例1 NELLペプチドの発現
cDNA断片は、発現ベクターPiZT/V5−His(3.4kb)(EcoRV部位、インビトロジェン社)内にライゲーションされ、メリチンシグナルペプチド、ラット成人NELL1及びFLAG標識配列のBamHI−EcoRI cDNA断片を含有した。図2A〜2Bは、本実施例において使用したcDNA構築物の核酸配列及び対応するペプチド配列の予測を示している。
【0076】
HighFive細胞(BTI−TN−5B1−4)を、無血清培地に適応させ、細胞をNELL1ペプチド発現ベクターで形質転換した。NELL1FLAG構築物を発現する細胞集団のみを選択するように、細胞をゼオシン(Zeocin)処理した。生存した細胞集団は、安定した形質転換細胞であることが確認された。細胞外培地を回収し、NELL1ペプチドの有無を調べた。NELL1ペプチドを精製して以下の機能分析に用いた。
【0077】
図2Aは、UnoQ溶出液に含有される精製済みのNELL1ペプチドのCBB染色SDS−PAGEゲルである。前記培地をUnoQカラム(バイオラッドラボラトリーズ社)に添加した。図2Bは、抗FLAG抗体を使用したウェスタンブロットを示す。このウェスタンブロットにより、タンパク質ラダーを参照してNELL1−FLAGの発現が示される。ペプチド:140kDa(細胞内前駆物質)、130kDa(成熟形態;90kDaペプチド)、400kDa(分泌形態、ホモ三量体)。上記の例では、発現系の生産性は、約3mg NELL1ペプチド/L培地だった。
【0078】
ペプチドをまったく発現も分泌もしない(例えば、酵母を含む細菌発現)、又は、ペプチド産生が非常に低い(例えば、大腸菌融合ペプチド系、CHO−dhfr細胞、>10mcg/L)他の発現系と比較すると、上述の系(哺乳類及び昆虫細胞)での産生は、大量の機能タンパク質を産生する点で予想外に十分に効果的であった。
【0079】
組換えラットNELL1タンパク質の発現及び精製
昆虫細胞によるC末端FLAG標識NELL1ペプチドの産生については、pTB701−NELL1−FLCプラスミド(黒田ほか、Biochemical and Biophysical Research Communications参照)由来のFLAGエピトープ配列に融合しているラットNELL1cDNAを昆虫発現ベクターpIZT/V5−His(インビトロジェン社)に挿入することにより、pIZT−NELL1−FLCプラスミドを構築した。さらに、PCR法により、NELL1オリジナル分泌シグナル配列をミツバチメリチンシグナル配列と置換した。HighFive細胞を、インビトロジェン社から購入し、HighFive細胞用の無血清培地(インビトロジェン社)にて培養した。FuGene6(ロシュ社)を用いて、HighFive細胞をpIZT−NELL1−FLCプラスミドで形質転換した。形質転換から48時間後に、400mg/mlのゼオシン(インビトロジェン社)により細胞を選択した。安定した発現細胞株が樹立されるまで、3〜4日ごとに選択培地を交換した。免疫沈降及びウェスタンブロット分析によりNELL1分泌を確認した。Highfive細胞が培地においてNELL1ペプチド(140kDa)を発現していることがわかった。
【0080】
UNO Q−1カラム(バイオラッド社)を用いた陰イオン交換クロマトグラフィーにより、ゼオシン耐性HighFive細胞の培地から組換えラットNELL1−FLCペプチドを精製した。NELL1ペプチドを500mMのNaClで溶出した。
【0081】
COS7細胞によるC末端FLAG標識NELL1ペプチドの産生については、pTB701−NELL1−FLCプラスミド由来のFLAGエピトープ配列に結合したラットNELL1cDNAを哺乳類発現ベクターpcDNA3.1(インビトロジェン社)に挿入することにより、pcDNA3.1−NELL1−FLCプラスミドを構築した。10%FBSを添加したDMEMでCOS7細胞を培養した。内因性NELLシグナルペプチドプラスミドを用いて、エレクトロポレーション法によりpcDNA3.1−NELL1−FLCでCOS7細胞を形質転換した。形質転換から48時間後に、NELL1ペプチド検出のため、培地について免疫沈降及びウェスタンブロット分析を行った。
【0082】
図3Cに、NELL1−FLAG含有のUnoQ溶出液のCBB染色SDS−PAGEゲルを示す。これらの発現分析により、COS細胞は、シグナル配列を含むようにする等、分泌効率を向上するためにNELLのN末端を修飾しなければ、機能性NELLペプチドを発現しないことが示された。図3Dは、NELL1−FLAGの発現を示す抗FLAG抗体によるウェスタンブロットの結果である。
【0083】
組換えラットNELL2タンパク質の発現及び精製
昆虫細胞によるC末端FLAG標識NELL2ペプチドの産生については、pTB701−NELL2−FLCプラスミド由来のFLAGエピトープ配列に融合したラットNELL2cDNAを昆虫発現ベクターpIZT/V5−His(インビトロジェン社)に挿入することにより、pIZT−NELL1−FLCプラスミドを構築した。HighFive細胞をインビトロジェン社より購入し、HighFive無血清培地(インビトロジェン社)にて培養した。FuGene6(ロシュ社)を用いて、pIZT−NELL1−FLCプラスミドでHighFive細胞を形質転換した。形質転換から48時間後に、400mg/mlのゼオシン(インビトロジェン社)で細胞を選択した。安定した発現細胞株が樹立されるまで、3〜4日ごとに選択培地を置換した。免疫沈降及びウェスタンブロット分析により、培地でのNELL2発現を確認した。Highfive細胞が培地においてNELL1ペプチド(140kDa)を発現していることがわかった。
【0084】
UNO Q−1カラム(バイオラッド社)を用いた陰イオン交換クロマトグラフィーにより、ゼオシン耐性HighFive細胞の培地から、組換えラットNELL2−FLCペプチドを精製した。NELL2−FLCペプチドを500mMのNaClで溶出した。
【0085】
実施例2 哺乳類系でのNELL1の発現
本発明には、非ウイルス性DNAデリバリーによるrhNELL1産生に用いる哺乳類発現系が含まれてもよいが、該発現系は表1に挙げる一般的な安定した懸濁液系に限定されない。ベクター設計、宿主細胞株培養、形質転換、安定した細胞株の選択、及びHEK293やCHO系におけるrhNell−1の精製を含む比較的詳細な手順を以下に示すが、該手順は、この技術分野において周知のものである。
【0086】
表1に、rhNell1の産生に使用した哺乳類の発現系をまとめた。
【表1】

【0087】
A.チャイニーズハムスター卵巣細胞系#1
ベクター設計:
cDNA断片を発現ベクターp3XFlag−CMV(シグマ社)にライゲーションした。得られた発現構築物、pCMV−rhNELL3Xflagには、プレプロトリプシン先導配列、ヒト成人NELL1コーディング領域のcDNA断片及びC末端3Xflag配列が含まれる。
【0088】
ホスト細胞株:
CHO−K1は接着細胞株であり、無血清培地の懸濁培地に適応可能である。pCMV−rhNell−1−3Xflagの構築物を、リポフェクトアミン(インビトロジェン社)又はリン酸カルシウム処理して形質転換した。約2週間にわたってG418(400〜600μg/ml)を細胞培地に添加し、安定した細胞株を選択した。さらに、rhNELL1産生率の高い単一クローンを得るため、限界希釈法により安定した形質転換細胞を選別した。選択された安定した細胞株は、rhNell−1産生のために、実験室規模又は工業規模のバイオリアクターに使用できる。
【0089】
精製方法:
抗flag抗体M2(シグマ社)アフィニティーカラムにより、rhNELL1ペプチド含有培地又は細胞溶解物を天然条件下で精製し、3Xflagペプチドで溶出した。
【0090】
B.チャイニーズハムスター卵巣細胞系#2
ベクター設計:
図4Aに、cDNA構築物の核酸配列及び該構築物に用いられる3つの異なるシグナルペプチドのアミノ酸配列を示す。
【0091】
ホスト細胞株:
CHO−K1は、接着細胞株であり、無血清培地の懸濁培地に適応可能である。リポフェクトアミン(インビトロジェン社)又はリン酸カルシウム処理を行って、pcDNA3.1−hNELL1−c−myc/His、pIL2−hNELL1−c−myc/His又はpN2−hNELL1−c−myc/Hisの構築物を形質転換した。約2週間にわたってG418(400〜600μg/ml)を細胞培地に添加して、安定した細胞株を選択した。さらに、rhNELL1産生率の高い単一クローンを得るため、限界希釈法により安定した形質転換細胞を選別した。選択された安定した細胞株は、rhNell−1産生のために、実験室規模又は工業規模のバイオリアクターに使用できる。
【0092】
精製方法:
抗c−mycアガロースによる免疫沈降により、rhNELL1ペプチド含有培養液又は細胞溶解物を精製した。図4Bは、抗c−mycアガロースを用いた免疫沈降後の異なる構築物の形質転換に起因する、NELL1分泌を検出する抗c−myc抗体によるウェスタンブロットの結果である。図4Cは、ウサギ抗ヒトNell−1抗体−NHS活性セファロースによる免疫沈降後のNELL1分泌を検出する抗c−myc又はマウス抗ヒトNELL1抗体によるウェスタンブロットの結果である。
【0093】
C.チャイニーズハムスター卵巣細胞系#3
ベクター設計:
NELL1又はNELL2リーダーペプチド配列のいずれかを用いて独自開発のcDNA構築物(Aragnen Biosciences社、ロンザ(Lonza)社又はサイトバンス(Cytovance)社)を構築した。
【0094】
ホスト細胞株:
独自開発のCHO細胞株は、接着細胞株であり、無血清培地の懸濁培地に適応可能である。特許構築物を形質転換した。約2週間にわたって適切な因子を細胞培地に添加して、安定した細胞株を選択した。さらに、rhNELL1産生率の高い単一クローンを得るために、限界希釈法により安定した形質転換細胞を選別した。選択された安定した細胞株は、rhNell−1産生のために、実験室規模又は工業規模のバイオリアクターに使用できる。
【0095】
精製方法:
この技術分野において周知の分析的・調製的タンパク質精製方法により、rhNELL1ペプチド含有培地又は細胞溶解物を精製した(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、免疫アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなど)。
【0096】
濃縮方法:
rhNELL1を凍結乾燥又は限外ろ過法により濃縮した。
【0097】
D.HEK293系
ベクター設計:
cDNA断片を発現ベクターpSecTagA(インビトロジェン社)にライゲーションした。得られた発現構築物、pSec−hNell−1−Tagには、ネズミ免疫グロブリンκ鎖リーダー配列、ヒト成人NELL1コーディング領域のcDNA断片、及びC末端へのMyc及びHis配列の二重修飾が含まれる。
【0098】
ホスト細胞株:
無血清培地に適応させ、懸濁形態で成長させたヒト胎児腎臓細胞株HEK−293を、NELL1ペプチド発現ベクターpSec−hNell−1−Tagで形質転換した。rhNell−1精製のために馴化培地を回収する前に、細胞を一過性形質転換として数日間培養し、又は安定した発現細胞株を選択するためにゼオシン(250μg/ml)処理を行った。さらに、rhNell−1産生率の高い単一クローンを得るため、安定した形質転換細胞を限界希釈法で選別した。選択された安定した細胞株は、rhNell−1産生のために、実験室規模又は工業規模のバイオリアクターに使用できる。
【0099】
精製方法:
Ni2+アフィニティーカラムにより、天然条件下でrhNell−1ペプチド含有培地を精製し、1Mイミダゾールで溶出した。少なくとも1000体積のPBS(pH7.4)に対して4℃で20時間の大規模な透析後、rhNell−1について、完全性、純度及びバイオ活性試験を行った。
【0100】
また、既存のリーダー配列をラット血清アルブミン、CD33、tPA及びヒトインターロイキン−2リーダー配列等の新たなものと置換し、又は、DHFR又はGS等の遺伝子増幅の標的を主鎖配列に添加するために、親ベクターの組換えを行い、結果として新たな発現ベクター及び発現系ができる。本発明では、ヒトNell−1の天然シグナルペプチドはタンパク質分泌を導くには充分に効果的ではなく、外来の先導配列がよく機能しなかった場合すらある。したがって、タンパク質内にHis標識及びタンパク質分解的切断部位「MPHHHHHHGGGDDDDKDPM」を有するスペーサーによるヒト顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)等の低分子の天然分泌タンパク質のフレーム内融合発現ベクターを構築する必要があった可能性もある。Nell−1精製に用いるエピトープ標識としては、6XHistidines、3XFlag、Myc、GST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)、EGFP又はCTHS(SUMO(ユビキチン類似因子)のC末端側半分)などが挙げられるが、上記表1に示したプラスミドpSecTagのようにHis及びMycの二重標識であってもよい。
【0101】
さらに、特定の条件下でのrhNell−1の発現制御又は誘導を検証するために、IRESによるジシストロン又はマルチシストロンベクターを構築してもよかった。より継続的な増殖及びアポトーシスの遅延を得るための、又はTet(テトラサイクリン)誘導系及びFIp−In特定部位統合系等の特別な要求に対応可能な宿主細胞株の遺伝子組換えは、rhNell−1産生を向上させると考えられる。
【0102】
上述したrhNell−1産生のための安定した発現系の他に、我々は、予備的な代替手段又は安定した系に相互補完可能な手段として、数ミリグラムの精製済みのプラスミドベクター(pREP4)を用いて、陽イオンポリマーPEIでHEK293又はBHK懸濁細胞を形質転換する大規模な一過性トランスフェクション(LST)アプローチを確立するという可能性を除外しない。
【0103】
実施例3 培養液中のNELL2タンパク質の精製
pIZT−FLC−NELL2を保有するHighFive細胞を無血清培地(1L)で約3日間培養した。その培地を3000xgで5分間遠心し、上澄みを回収した。PMSFを終濃度1mMになるように添加した。飽和硫酸アンモニウム溶液(80%飽和(v/v))を添加して、溶液を4℃で1時間静置した。その溶液を15000xgで30分間遠心し、沈殿物を回収した。沈殿物を4℃で50mlの20mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTAに溶解し、4℃で20mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTAにおいて平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーUnoQカラム(6ml、バイオラッド社)に添加した(速度1ml/分、FPLC(アマシャムファルマシア社)を使用)。そのカラムを同一バッファーで十分に洗浄した。
【0104】
次に、結合しているタンパク質を0M〜1.5MのNaCl勾配で同一バッファーにて溶出した。抗FlagM2(シグマ社)抗体を用いて、NELL2−FLAG画分をウェスタンブロットで同定した。陽性の画分を1つの試験管に回収した。最終生成物をセルロース製のシームレスチューブ(和光純薬工業株式会社、カットオフ分子量12000)に1LのPBSに対して4℃で一晩透析した。得られた生成物を−70℃で保存した。
【0105】
本発明の具体的な実施形態を示し、説明してきたが、本技術分野における当業者にとって、本発明から広義に逸脱しない限り変更及び修正を行うことが可能であることは自明である。したがって、添付の請求項は、本発明の真の精神及び範囲内に含まれるような全ての変更及び修正をその範囲内に包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1A】図1Aは、NELLペプチドの製造方法の1つを示すフローチャートである。
【図1B】図1Bは、NELLペプチドの製造方法の1つを示すフローチャートである。
【図2A】図2Aに、シグナルペプチド−NELL1−FLAG核酸構築物の核酸配列及び対応するペプチド配列の予測を示す。下線のアミノ酸配列は、メリチンシグナルペプチドに由来する。アラニンとプロリンの間の結合は、ハイファイブ(HighFive)細胞による分泌の推定的切断部位である。RTVLGFG−−−−からの残基は、ラット/ヒトNELL1タンパク質の成熟タンパク質に由来する。
【図2B】図2Bに、シグナルペプチド−NELL1−FLAG核酸構築物の核酸配列及び対応するペプチド配列の予測を示す。
【図3】図3A〜3Dに、NELL1−FLAGの細胞外発現の産生物を示す。図3Aは、UnoQ溶出液含有の精製済みNELL1ペプチドを示すCBB染色SDS−PAGEゲルである。このとき、NELL1ペプチドは、無血清培地にてHighFive細胞から産生した(産生率:約3mg/L培地)。図3Bは、抗FLAG抗体を用いたウェスタンブロットである。図3Cは、UnoQ溶出液含有の精製済みNELL1ペプチドを示すCBB染色SDS−PAGEゲルである。このとき、NELL1ペプチドは、無血清培地にてCOS7細胞から産生した(産生率:0.1mg/L培地より大きい)。図3Dは、抗FLAG抗体を用いたウェスタンブロットである。
【図4A】図4Aは、CHO発現系によるNELL1ペプチドの産生を示す、本願実施例に使用したcDNA構造の核酸配列及び3つの異なるシグナルペプチドのアミノ酸配列を示している。
【図4B】図4Bは、CHO発現系によるNELL1ペプチドの産生を示す、抗c−myc抗体を用いたウェスタンブロットである。抗c−mycアガロースを用いた免疫沈降後に、異なる構築物の形質転換に起因するNELL1分泌を検出している。
【図4C】図4Cは、CHO発現系によるNELL1ペプチドの産生を示す、抗c−myc又はマウス抗ヒトNELL1抗体によるウェスタンブロットである。ウサギ抗ヒトNell−1抗体−NHS活性セファロースを用いた免疫沈降後に、NELL1分泌を検出している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分泌シグナルペプチドをエンコードする核酸を有するフレーム内に、少なくとも1つのNELLペプチドをエンコードする少なくとも1つの核酸を含む核酸構築物を提供し;
前記核酸構築物により哺乳類細胞を形質転換し;
前記NELLペプチドを発現させうる条件下で前記哺乳類細胞を培養する
哺乳類細胞におけるペプチドの発現方法。
【請求項2】
前記哺乳類細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である請求項1の方法。
【請求項3】
前記分泌シグナルペプチドがNELL1又はNELL2ペプチドのシグナル配列である請求項2の方法。
【請求項4】
前記核酸がNELL1又はNELL2をエンコードし、
NELL1が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群から選択され、
NELL2が、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、および配列番号14からなる群から選択される請求項2の方法。
【請求項5】
細胞株から分泌されるNELLペプチドを回収し;かつ該NELLペプチドを実質的に精製する請求項2の方法。
【請求項6】
細胞株から分泌されるNELLペプチドを回収し;かつ該NELLペプチドを実質的に精製する請求項3の方法。
【請求項7】
前記NELLペプチドの骨形成の誘導活性を調べる請求項5の方法。
【請求項8】
前記NELLペプチドの骨形成の誘導活性を調べる請求項6の方法。
【請求項9】
精製には、クロマトグラフィー精製が含まれる請求項1の方法。
【請求項10】
精製には、クロマトグラフィー精製が含まれる請求項2の方法。
【請求項11】
哺乳類細胞においてNELLペプチドを発現する核酸構築物であって、分泌シグナルペプチドをエンコードする核酸を有するフレーム内に、少なくとも1つのNELLペプチドをエンコードする少なくとも1つの核酸を有する核酸構築物。
【請求項12】
前記昆虫分泌シグナルペプチドが、NELL1又はNELL2ペプチドのシグナル配列である請求項11の核酸。
【請求項13】
前記核酸がNELL1又はNELL2をエンコードし、
NELL1が配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6からなる群から選択され、
NELL2が配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、および配列番号14からなる群から選択される請求項11の核酸。
【請求項14】
前記哺乳類細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である請求項11の核酸構築物。
【請求項15】
NELLペプチドを発現する哺乳類細胞株であって、分泌シグナルペプチドをエンコードする核酸を有するフレーム内に、少なくとも1つのNELLペプチドをエンコードする少なくとも1つの核酸からなる核酸構築物を含む哺乳類細胞株。
【請求項16】
前記哺乳類細胞株がチャイニーズハムスター卵巣細胞からなる請求項15の細胞。
【請求項17】
前記CHO細胞がNELL1又はNELL2ペプチドを分泌する請求項16の細胞。
【請求項18】
前記分泌シグナルペプチドがNELL1又はNELL2ペプチドのシグナル配列である請求項16の細胞。
【請求項19】
前記核酸がNELL又はNELL2ペプチドをエンコードし、
NELL1が配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号6からなる群から選択され、
NELL2が配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、および配列番号14からなる群から選択される請求項16の細胞。
【請求項20】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、およびその組合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む組換えペプチドであって、請求項16に記載の細胞株で生成される組換えペプチド。
【請求項21】
さらにNELL1又はNELL2分泌ペプチドを含む請求項20の組換えペプチド。
【請求項22】
請求項20に記載の組換えペプチドを有効量含み、任意にキャリアを含む骨形成又は軟骨形成を誘導する組成物。
【請求項23】
請求項20に記載の組換えペプチドに対する抗体。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2010−509917(P2010−509917A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537277(P2009−537277)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/084074
【国際公開番号】WO2008/060941
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(508085729)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (6)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【住所又は居所原語表記】1111 Franklin Street, 12th Floor, Oakland, CA, 94607−5200, US
【Fターム(参考)】